説明

ニッケル−コバルトスーパーキャパシタ及びその製造方法

新規な電極を含む改良されたキャパシタが開示される。一つの電極組成物が、混合金属酸化物の遷移金属ニッケル及びコバルトをモル比0.5:1以上で含み、選択的に、バインダー及びカーボンナノチューブを含む。作製したキャパシタは、従来よりも早い電圧スキャン速度での高い比静電容量値を含む優れた特性により特徴付け可能である。優れた結果をもたらす電極の形成方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年7月21日に出願された米国特許仮出願シリアルNo.61/227,407に基づき優先権主張する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バッテリーに電力が貯蔵されることが一般的である。エネルギー貯蔵の別装置としてはキャパシタがあり、ごく最近においては、通称、スーパーキャパシタがある。電力貯蔵のためのキャパシタの改良を進展するために多大な労力が払われている。
【0003】
容量に対する要求は、特定電位において電荷を分離する能力である。試作のキャパシタは、2つの金属プレートから成り、プレート間で電位差を持つ。充電状態においては、一方のプレートが正味の正電荷を持ち、他方が正味の負電荷を持つ。容量は、プレート面積及びプレート間の間隔から算出可能である。プレート間に固体誘電体材料を配置することにより容量を増加させることができ、なぜなら、プレート間の電位差の同一により各プレートの正味荷電がより大きくなるためである。
【0004】
キャパシタ技術における近年の進展により、カーボンといった高比表面積の導電材料により金属プレートが代替され、液状電解質により固体誘電体が代替されてきている。カーボン電極の場合、電解質中のイオンが電極表面近傍で移動する二重層構造により容量が増加する。この場合、多孔性による電極面積の増加及び電荷分離間隔の減少という2つの事に起因して容量が増加する。
【0005】
高比表面積材料の合成における近年の進展により、ファラデーキャパシタと通称される、第2のメカニズムに基づくキャパシタの改良も行われている。ファラデーキャパシタは、液状電解質と共に固体電極から成る。これらのキャパシタの動作原理は、ある電位の界面での可逆反応に基づく。キャパシタの第2タイプは、異なる特性を持つ。電荷転送反応が、外側多孔質層の界面において生じ、基板(集電体)が、外側(外部)層とは異なる材料である。材料構造内におけるイオンの置換又は結合のいずれかの反応により、高比表面積材料(一般的には、酸化物又は窒化物)の構造内にイオンが組み込まれる。一つの実施例を挙げれば、Piao等「ACインピーダンス測定により研究されたリチウムイオンのグラファイト電極へのインターカレーション」j. Electrochem Soc. 146, 2794−2798(1999)参照。この反応(又はプロセス)の可逆性に安定性が依存するだろう。もし還元又は酸化反応が、可逆反応よりも多くの種を消費するのであれば、又は、表面に形成される別の種があるのであれば、可逆性が変更される。
【0006】
近年、キャパシタの第3タイプ、「ハイブリッド」キャパシタも報告されている。このキャパシタにおいては、二重層及びファラデーメカニズムの双方が使用され、容量が向上し、各メカニズムの動作利点が活用される。
【0007】
液状電解質は、酸、塩基、又は塩の高濃度の水性であるか、有機又は無機溶媒に塩が溶解した非水性である。そのような使用のために入手可能な溶媒及び塩の種類は広く、想定される用途(例えば、低温対高温)に応じて所望のメリットを確保できる。イミダゾリウムカチオンに基づくイオン液が、近年、様々な電気化学装置における非水性電解質として注目されている(Koch等、j. Electrochem. Soc. 143:155, 1996)。これらの電解質は、カーボン二重層キャパシタでの使用のため従前に研究されてきた第4級オニウム塩基の多数と比較して顕著な有利点を有する。
【0008】
水性の系(約1Vに限定)と比較して非水性電解質の電解キャパシタにより電気化学的安定性が(4Vまで)増加し、これにより、より大きなエネルギー貯蔵量(E=1/2CV2)が達成される。しかしながら、水性の系と比較して非水性電解質の導電性が低いため、電力特性が低く観察される。加えて、電解キャパシタに使用される多孔性材料に関して、非水性電解質において使用される高誘電率溶媒に典型的に付随する高粘度が、多孔質電極の導電性にとって好ましくない。更に、非水性電解質で典型的な低いイオン濃度により、パッケージ装置に必要な電解質容量が増加してしまう。
【0009】
物理的な一体性を確保するべくバインダーにより結合したカーボンブラック又はカーボンナノチューブ(CNT)フィルムといった高比表面積導電性媒体上に配置されたナノ多孔性遷移金属化合物から固体電極を構成可能である。遷移金属化合物内へイオンが移動するならば、容量メカニズムがファラデー又は可能性としてハイブリットであり、他方、遷移金属化合物にイオンが進入しないのであればメカニズムが純に二重層である。カーボンと金属酸化物又は混合金属酸化物の複合材から電極を形成する方法を開示する多数の報告が従来技術において為されている。
【0010】
例えば、Leela Mohana Reddy等「非対称フレキシブルスーパーキャパシタスタック」ナノスケールリサーチレター、巻3、号4 /4月、2008は、ゾル−ゲル法により合成した金属酸化物とマルチウォール構造カーボンナノチューブ(MWNTs)の複合材を有するスーパーキャパシタの作製を開示する。Fan等は、「コバルト−ニッケル酸化物/カーボンナノチューブ複合材の作製及び容量特性」Electrochim. Acta, 52 (2007) 2959において、ニッケル−コバルト酸化物/カーボンナノチューブ(CNT)複合材の作製について報告している。Kuan−Xin等は、「ニッケル及びコバルト混合酸化物/カーボンナノチューブ薄フィルムの電着及びその電荷蓄積特性」j. Electrochem. Soc., 153, A1568−A1574(2006)において、カーボンナノチューブのフィルム上に混合金属酸化物を電気化学的に堆積する方法について報告している。
【0011】
米国特許番号5,079,674において、Malaspinaが、金属酸化物とカーボンブラックから構成された複合スーパーキャパシタについて記述している。その方法においては、カーボンブラックが、金属塩の溶液に加えられ、その水酸化物又は酸化物となり、フルオロカーボンポリマーが加えられ、そして、生成物がシート状に形成されて約80℃と125℃間の温度のオーブンにおいて乾燥される。これにより得られるシート材料は、セパレーター上に積層され、所望形状に切断され、そして、スーパーキャパシタを形成するべく組み立てられる。Malaspinaは、特定の実施例又は容量データを開示するものではなく、材料特性への合成条件の効果の記述もない。
【0012】
Yoon等は、「スーパーキャパシタのためのCoNi酸化物/カーボン−ナノファイバー複合電極」Int. j. Electrochem. Sci., 3 (2008) 1340 − 1347において、スーパーキャパシタ用のコバルト−ニッケル酸化物/VGCF(気相成長カーボンファイバー)複合材の合成について報告している。この方法では、計量されたVGCFがコバルト−ニッケル硝酸塩溶液に加えられ、1時間にわたり超音波処理され、次に、ニッケルフォーム(泡、foam)へ落下され、2時間にわたり250℃でアニールされる。Yoon等は、コバルト−ニッケル酸化物/VGCF複合電極が、スキャン速度5mV・s-1で1271Fg-1のピーク比静電容量値を呈示したことを報告する。しかしながら、ニッケルフォーム基板の重量、VGCFの重量のいずれもが比静電容量の計算に含まれていない。3次元のニッケルフォーム基板は、大容量のため非常に高比表の面積を提供することを含めて、より一般的な2次元の金属箔型の集電体よりも有利であるが、そのコスト、大きな容量及び重量に起因する欠点を持つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
多大な研究開発にも関わらず、エネルギー貯蔵用のキャパシタの改良の必要性が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の測定においては、本発明により、電極を備えるキャパシタが提供され、ここで、前記電極は、Ni及びCoを0.5:1よりも大きいモル比で含み、(a)前記電極は、1MのKOHの水性電解質中で電圧スキャン速度20mV/sで測定したとき、少なくとも450F/g・cm2の比静電容量を有する、又は(b)前記電極は、50mV/sで測定された第1比静電容量と20mV/sで測定された第2比静電容量を有し、ここで更に、前記第2比静電容量に対する前記第1比静電容量の比率が少なくとも0.6である、又は、(c)IRスペクトラムにおけるOH伸縮の吸収が、1000〜4000cm-1の範囲内の他の吸収と少なくとも同等の強度である、という各特性の1以上を更に含む。
【0015】
上記の比静電容量において(単位「cm2」で表現された)電極の表面積は、電極の巨視的面積である。例えば、平面1cm2×1cm2の集電体上に堆積された電極の場合、表面積は1cm2である。発泡金属上に堆積された電極にとっては、表面積は、発泡金属の表面積になる。好ましくは、電極が、少なくとも0.5mg、より好ましくは、少なくとも0.8mgの質量を持つ。好適な形態においては、電極が、少なくとも0.5mg/cm2、より好ましくは0.8mg/cm2の表面積当たりの質量を持つ。
【0016】
好ましくは、キャパシタが、50mV/sで測定された第1比静電容量と20mV/sで測定された第2比静電容量を有し、ここで更に、第2比静電容量に対する第1比静電容量の比率が少なくとも0.6、より好ましくは、少なくとも0.8であり、そして、幾つかの実施形態においては、0.9〜1.0の範囲内にある。代替的に、電極は、平均電圧スキャン速度100mV/sで、より好ましくは平均電圧スキャン速度200mV/s、更により好ましくは平均電圧スキャン速度300mV/sで、好ましくは少なくとも0.5(又は少なくとも0.7、又は0.5〜約0.8の範囲内)の正規化容量を持つ。
【0017】
好ましくは、電極は、0.1〜2mgの範囲内の質量を持つ。また、好ましくは、電極は、1MのKOHの水性電解質で20mV/s電圧スキャン速度で測定するとき、少なくとも550F/gの比静電容量を持つ。カーボンナノチューブ母材を含む電極が他の形態のカーボンよりも驚くべきことに良好であることが発見されたため、電極は、好ましくは、少なくとも5重量%のカーボンナノチューブを含む。
【0018】
幾つかの好適な形態においては、電極が、集電体を含み、当該複合体の高濃度層が、前記集電体に近く配置され、前記高濃度層が、前記集電体からより離れた当該複合体の第2層よりも導電性が良い。
【0019】
本発明は、更に此処に開示した電極材料、電解質、第2電極、及び第1電極と第2電極との間で電気通路を形成可能な回路を備えるキャパシタを更に提供する。電解質は、非水性液体又は水性液体であろう。第1及び第2電極は、同一又は2つの異なる金属酸化物から構成可能である。
【0020】
本発明は、請求項15乃至17のいずれか一項に記載のキャパシタと、光起電セルとを備える、ソーラーエネルギーシステムも包含する。
【0021】
別の側面においては、本発明は、電極の製造方法を提供し、当該製法は、少なくともNi及びCoをモル比0.5:1で含む組成物を形成し、前記組成物を反応させてゲルを形成し、ゲルを乾燥してNi及びCoをモル比0.5:1〜4:1で含む紛体を得て、紛体を圧縮して電極を形成する。
【0022】
更なる側面においては、本発明により提供される電極の製造方法は、少なくともNi及びCoを0.5:1のモル比で含む組成物を形成し、ここで、プロセス温度が、200℃を超えることが無く、より好ましくは、プロセス温度が、50℃を超えることがない。
【0023】
別の側面においては、本発明により提供されるエネルギーの蓄積方法は、此処に記述したキャパシタに対して電位を与え、電位を除き、ここで、電位が除かれた後、電位が、電極間に持続する。
【0024】
本発明のキャパシタは、エネルギーを急速に蓄積し提供することに特に有用である。実施例は、車や電車から制動エネルギーを蓄積する用途、稲妻の衝突、自動車の加速、又は他の対象からのエネルギーの捕獲、又は電気又は電磁装置のための急速なエネルギースパイクの提供を含む。本発明のキャパシタは、太陽、風、及び潮の再生可能なエネルギー源からのエネルギーの蓄積に特に有用である。これらのシステムにおいては、高エネルギー生産の期間において電荷が蓄積され、エネルギーの蓄積が少ない又は無いときに消費可能だろう。キャパシタは、平行プレートを持つかもしれない。代替的に、キャパシタは、例えば、電極とセパレーターとが交互に積層し、筒に曲げられ、そして、電解質が間に注がれ、次に、シールされてスーパーキャパシタエネルギー貯蔵装置が形成される形態をとり得る。
【0025】
用語解説
複合物の「重量%」(重量パーセント組成)は、20℃にて測定された重量によるその%を示す。例えば、(20℃における)Ni2Co酸化物4mgとカーボンナノチューブ6mgの混合により得られた複合電極は、40重量%Ni2Co酸化物と60重量%カーボンナノチューブとなる。
【0026】
本発明においては、「キャパシタ」(又はスーパーキャパシタ)が、典型的にはセパレーターにより分離された2つの電極を含む。電極は、此処に開示された電極の如何なるものを含んでも良いことに注意すべきである。本発明のキャパシタは、二重層構造によりエネルギーを蓄積しても良く、電極材料への電荷のインターカーネーションを介したエネルギー貯蔵も包含しても良い。更に注目すべきは、多くの場合、構造の安定性にセパレーターが望ましいが、幾つかの高い剛性構造においてはセパレーターを省略することも可能である。2つの電極は、充電中にエネルギー源となる外部回路に対して接続、又は接続可能であり、そこにおいて、キャパシタの放電中に有用な反応が為される。
【0027】
「容量」(以下「比静電容量」も参照)は、電荷の保持体の能力である。所定電位に蓄積(又は分離)された電力量の測定でもある。上述のように、エネルギー貯蔵装置の一般的形態は、平行プレートキャパシタである。平行プレートキャパシタにおいては、容量が導電プレートの表面積に正比例し、プレート間の分離間隔に反比例する。プレート上の電荷が+Q及び−Qであり、Vがプレート間の電圧を示すとき、容量(C)が、C=Q/Vにより得られる。容量のSI単位系は、ファラド(F)であり、1ファラドは、ボルト当り1クーロンである。
【0028】
「集電体」は、キャパシタの導電性の構成要素を示す周知の用語であり、電極から電気出力を導くために用いられる。
【0029】
「電流」は、電荷の流れ(現象)又は電荷の流れの速度(量)である。この電荷流は、典型的には、配線といった導体中の電子移動により生じ、他方、電解質においてはイオンにより生じ、プラズマにおいては双方による。
【0030】
「電気回路」は、抵抗器、キャパシタ、電圧源、電流源、及びスイッチといった電気素子の相互接続であり、電流に対して帰還路を与える閉ループを持つ。
【0031】
「電極」は、電解質と接触するキャパシタの導電性構成要素を示す周知の用語である。
【0032】
「電解質」は、1以上のイオン種及びイオンが移動可能な媒体を含む組成物である。幾つかの好適な形態においては、電解質が、溶解イオンを含む水性媒体を含む。他の好適な形態においては、電解質が、好ましくは、100ppm未満の水を含み、かつ溶解した塩を含む非水性液体を含む。
【0033】
「挿入(インターカレーティング)」は、電極へのリチウムの可逆的な包含を意味する。
【0034】
「イオン種」は、イオン、又は電解質の一部としてイオンを形成する化合物(つまり、キャパシタ内の状態下にてイオンを形成する;例えば、適切な溶媒中でイオン化し得るカルボキシル酸)を示す。
【0035】
「リチウム塩」は、電解質に用いられる周知の材料であり、LiN(SO2CF32、 LiBF4又はLiPF6といった化合物を含む。アルカリ水酸化物は、水性電解質に用いられる周知の材料であり、LiOH及びKOHといった化合物を含む。
【0036】
「金属酸化物」は、架橋酸素原子により結合された遷移金属原子を含む。金属酸化物粒子は、B、N、C、Al、Zn等の他の原子も更に含んでも良い。金属酸化物が、加熱による濃縮で減じるヒドロキシル基を含む場合も多い。幾つかの好適な形態においては、金属酸化物が、実質的に遷移金属(又は金属)、酸素、及び、選択的に、水酸化物の形態のHから本質的に構成される。
【0037】
「混合金属酸化物」は、少なくとも2つの異なる遷移金属を含む金属酸化物である。本発明の材料は、典型的には、非晶質相を含み、酸素により架橋されたNi及びCo原子(Ni−O−Co)を含むものと理解され、水酸化物の架橋又は末端を含んでいても良い。
【0038】
「ナノ粒子」は、1〜1000nmの範囲のサイズの粒子であり、好ましくは、1〜100nmの範囲内にある。
【0039】
2点間の「電位」又は「電圧」は、これらの点間で電流を流す電気力を示す略称である。詳細には、電圧が、単位充電当たりのエネルギーに等しい。静電場の場合、2点間の電圧が、これらの点間の電位差に等しい。
【0040】
「セパレーター」は、電解質において陽及び陰極間に配置された多孔質シートである。その機能は、陽及び陰極間の物理的接触の抑制であり、自由イオン輸送を可能とする電解質の貯蔵部として作用する。
【0041】
典型的には、セパレーターは、ポリマー又はセラミックマイクロ多孔質メンブレン(膜)又は不織のクロス(生地)である。マイクロ多孔質メンブレンは、好ましくは、25μm以下の厚みを有し、(塊平均)1μm以下の平均サイズの孔を有する。
【0042】
「ソーラーエネルギーシステム」は、太陽からのエネルギーを利用するシステムである。本願の目的においては、それが、キャパシタと光起電力セルを備える。
【0043】
「比静電容量」は、電極の質量により全容量を除算したものであり、グラム当たりファラドの単位(F/g)を有する。電極内又はその近傍に電荷がどれだけ効率的に貯蔵されているのかの指標として比静電容量が文献で度々報告されている。全容量は、商業用途の材料の値の目安として最も関心がある。本文章において報告される全ての比静電容量値は、バインダー及び導電性の構成要素を含む電極の全質量に基づくものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】図1Aは、電気化学特性の測定用のハーフセル構造を示す。
【図1B】図1Bは、電気化学特性の測定用のハーフセル構造を示す。
【図2】図2は、CNT電極における、CVサイクル番号の関数としての比静電容量を示す。
【図3】図3は、2つの商業キャパシタ及び本発明のキャパシタにおける、電圧スキャン速度の増加時の規格化した容量を示す。
【図4】図4は、Yoon等の開示に従って50℃で夜通し乾燥して用意したサンプルのFTIR透過スペクトルである。スペクトルのx軸が、慣例の単位cm-1で表現されている。
【図5】図5は、Yoon等の開示に従って250℃で2時間乾燥して用意したサンプルのFTIR透過スペクトルである。
【図6】図6は、そのように得られたNi2Co−MWNTのFTIR透過スペクトルである。
【図7】図7は、250℃で2時間乾燥したNi2Co−MWNTのFTIR透過スペクトルである。
【図8】図8は、各々250℃で2時間乾燥した、Yoon等(上)及びNi2Co−MWNT(下)のFTIR透過スペクトルである。
【図9】図9は、Ni2Co電極の比静電容量を示す。
【図10】図10は、Ni2Co電極のサイクル安定性を示す。
【図11】図11は、比静電容量とNi2Co電極の電流密度との関係を示す。
【図12】図12は、金属酸化物電極のフルセルテストを示す。
【図13a】図13aは、4A/gでのフルセルテストを示す。
【図13b】図13bは、20A/gでのフルセルテストを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
スーパーキャパシタ用の固体電極は、例えば、CNT及び/又はカーボンブラックといった導電材料を含む複合材料中のコバルト及びニッケル遷移金属の酸化物、水酸化物、硫化物、燐酸塩(又はこれらの組み合わせ)から形成され得る。複合材料は、典型的には、非晶相を含み、結晶相(X線回析は、材料の結晶化度を図るために使用し得る技術である)を含んでも良い。特性向上のために、材料が、(IR分光法にて観測できるため)ヒドロキシル基を含むべきである。
【0046】
本発明の好適な電極は、モル比が0.5〜6の範囲内のNi及びCoを含むNi及びCoの酸化物を含み、より好ましくは、モル比が4〜1の範囲内にあり、幾つかの実施形態においては、モル比が、4〜2である。ある実施形態においては、追加的な遷移金属要素も、金属酸化物中に含まれるだろう。例えば、Fe、Mn、又はFe及びMnの組み合わせである。他の実施形態においては、電極中の遷移金属が、ニッケル及びコバルトから構成、又は本質的に構成される。ある実施形態においては、電極材料が、Ni−Co酸化物粒子、導電性炭素質材料、及びバインダーから構成、又は本質的に構成されるだろう。
【0047】
粒子状のNi−Co酸化物に加えて、電極は、典型的には、導電相としてのカーボンを含む。カーボン材料は、周知であり、多様な種類のカーボン粒子が電極で使用されるだろう。幾つかの好適な形態においては、カーボン材料が、カーボンナノチューブ(CNT)を含み、幾つかの実施形態においては、電極の質量に対するパーセントとして少なくとも5重量%のCNTを含む。幾つかの好適な形態においては、電極が、40〜90重量%の金属酸化物粒子(好ましくは、ナノ粒子)と、10〜60重量%のカーボンを含む。幾つかの実施形態においては、電極が、65〜90重量%の金属酸化物粒子(好ましくは、ナノ粒子)と、10〜30重量%のカーボンを含む。合成起源が不明な材料の分析のため、カーボン及び金属酸化物の相対重量が、燃焼といった方法によりカーボンを除くことにより求めることができる。導電性構成要素としてカーボンをCNTで代替する場合、良好な性能の電極として特徴づけられるだろう。
【0048】
典型的には、1以上のバインダーが、所望の形状に電極をするため、及び集電体に電極を接続するために加えられる。電極を構成するバインダーが知られている。非限定的なバインダーの例は、PTFE、ナフィオン、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF−HEP)、ZrO2、及びTiO2である。バインダーが導電性を減じるため、バインダーが存在する場合には、電極の質量の5質量%以下のレベルに留めることが好ましい。本発明の目的においては、質量%の計算は、コレクターの質量を含まない。幾つかの好適な形態においては、サポート材料無しで、例えば、発泡金属保持体(metal foam support)無しで、集電体上に直に複合材料が堆積される。幾つかの好適な形態においては、コレクターが、平板である。
【0049】
スーパーキャパシタは、水性又は非水性電解質も含む。電解質としての非水性溶媒の例は、プロピレン炭酸塩(PC)、エチレン炭酸塩(EC)、ジメチル炭酸塩(DMC)、ジエチル炭酸塩(DEC)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、及び2以上の非水性溶媒の混合物である。本技術分野においては知られているように、電解質は、陽及び陰帯電種に即時に分離する物質を更に含む。この物質は、一般的には塩である。本発明においては、塩は、好ましくは、LiイオンとPF6-、BF4-といった対イオンを含む。水性電解質においては、この材料が、KCl、KOH又はLiOHといった陽及び陰に帯電した種に即時に分離する任意の材料であるだろう。
【0050】
幾つかの好適な形態においては、電解質が、10〜30%のエチレン炭酸塩と70〜90%のプロピレン炭酸塩を含む。幾つかの好適な形態においては、炭酸塩溶液は、15〜25%のエチレン炭酸塩と、75〜85%のプロピレン炭酸塩を含む。幾つかの好適な形態においては、電解質が、水性KOHを含む。電解質は、好ましくはカーボンと混合した金属酸化物を含む電極と共に使用することができる。
【0051】
電極は、実施例に記載された任意の特性によっても特徴づけられるかもしれない。例えば、実施例に開示されたものと同一レベル又はより大きな比静電容量(又は、代替的に、全容量)である。
【0052】
電極は、混合されたNiCo酸化物/カーボン/バインダー複合物の複層から構成されるとき、Ni−Co酸化物/カーボン/バインダー複合物の単層の場合よりも高い容量値により特徴づけられるだろう。幾つかの実施形態においては、電極が、同一組成の2つの分離した堆積から成ると良い。幾つかの他の好適な実施形態においては、電極が、異なる組成の2つの層を少なくとも備える。バインダー、カーボン、ニッケル及びコバルトの相対量、Ni−Co比、及びこれらの組み合わせにより組成が異なるかもしれない。混合されたNiCo酸化物/カーボン/バインダー複合物の複層であって、複合物の高濃度層が集電体の近くに配置される、及び/又は(コレクターに近いほうの)第1層が(コレクターからより離れた)第2層よりも導電性が良好な複層から構成されるとき、高い容量値により電極が特徴づけられるだろう。
【0053】
幾つかの実施形態においては、電極の形成方法は、室温での乾燥工程に供されるとき、高い容量値により特徴付けられるだろう。好ましくは、乾燥が、少なくとも5時間、又は好ましくは、少なくとも10時間、又はより好ましくは、少なくとも20時間行われる。幾つかの好適な形態においては、乾燥が、空気又は湿潤環境にて行われる。幾つかの好適な形態においては、5〜30時間の空気乾燥工程を含むプロセスにより電極が製造される。好ましくは、単一の乾燥工程により電極が製造される。好ましくは、80℃以下の温度で乾燥が実行され、より好ましくは、50℃以下、そして、より好ましくは、30℃以下である。電極の製造方法が、第2ステップの乾燥により続かれる真空乾燥の第1ステップに供されるとき、より高い容量値により更に特徴づけられるだろう。好ましくは、真空乾燥工程が、少なくとも5分、より好ましくは、 少なくとも10分、又は少なくとも30分である。幾つかの実施形態においては、真空乾燥が5分〜1時間に亘り実行される。
【0054】
電極は、キセロゲル又はエーロゲルを得るゾル−ゲル法により得られる混合金属酸化物を使用して製造することができ、それは、次に、粉末(パウダー)に粉砕され、電極に組み込まれる。混合金属酸化物は、加水分解方式により製造可能である。代替的に、幾つかの実施形態においては、エポキシドが金属化合物と反応してゲルを形成する。
【0055】
50℃未満の温度で電極を製造しても良いが、幾つかの実施形態においては、30℃以下の温度で電極が製造され得る。幾つかの好適な形態においては、−100℃と30℃の範囲の温度にて構成要素を結合することにより電極が製造されるが、幾つかの形態においては、0℃と室温の間である。
【0056】
全ての乾燥工程を含む全合成過程において、混合金属酸化物が、好ましくは、250℃を超えるまで加熱されず、より好ましくは、200℃を超えるまで加熱されず、更に好ましくは、100℃を超えるまで加熱されず、幾つかの実施形態においては、50℃を超えるまで加熱されず、そして、幾つかの実施形態においては、30℃を超えるまで加熱されない。ある他の実施形態においては、混合金属酸化物は、全合成過程にて室温を超えるまで加熱されない。従って、好ましくは、焼成工程を含まないプロセスにより電極が製造される。
【0057】
本発明の好適な電極は、実施例に開示されているように、より高い比静電容量値を含めて、従来技術よりも早い電圧スキャン速度の良好な性能により特徴付けられる。
【0058】
表面積単位の質量の関数の比静電容量により電極が特徴付けられるかもしれない。文献周知のように、比静電容量は、活性層の厚みの増加に応じて比静電容量が減少し得る。高い比静電容量を得るための一つの方法は、非常に薄層な活性材料を活用することである。しかしながら、多くの用途においては、このアプローチにより、実用を超える所定レベルの全容量を達成するために必要な面積が増加してしまう。従って、単位領域当たりの質量という観点から比静電容量を特定することによって、現実的な環境での測定の実行が確保される。
【0059】
実施例
【0060】
電気化学的な評価
作製電極を、その容量、電位窓(voltage window)、オープン回路電位、及び他のパラメーターにより評価した。図1は、電極の容量の測定に用いられるハーフセル構造を示す。
【0061】
電極の評価に用いられる一般的な実験手順は、次の工程を含む。
・1時間のオープン回路電位
・電気化学インピーダンス分光法(10mV増幅)10KHz〜0.01Hz
・周期的ボルタンメトリー(水性溶液0.7V対SCE〜−0.7V対SCE)
・結果の分析(電流、電圧、及び容量)
【0062】
ここで報告する比静電容量の値は、周期的ボルタンメトリーを使用して測定する。幾つかの電極が、100電圧サイクル又はそれ以上により評価されたが、報告した容量は、ルーチン的に、第2電圧サイクルから決定した。本発明では、比静電容量が第2電圧サイクルから決定可能である。幾つかの実施形態においては、10電圧サイクル又は100電圧サイクル後である。
【0063】
文献の容量測定との比較
全容量と比静電容量の2種類の容量値をここでは報告する。比静電容量は、全容量を電極の質量で除算したものであり、よって、F/gの単位を有する。電極内又は電極近傍に電荷がどれだけ効率的に貯蔵されているのかの指標として比静電容量が文献にて度々報告されている。商業用途の材料の値の指標としては全容量が最も注目される。
【0064】
本発明のデータと公開文献で報告されたデータと比較するときには注意をしなければならない。文献で共通に行われていることは、金属酸化物のみの質量により測定された容量を除算することにより、金属酸化物電極の比静電容量を報告することである。報告された最大容量値は、典型的には、酸化物が全電極質量の約10%である時に生じる。例えば、2006 j. Electrochem. Soc. pp. A1451においては、筆者が、表1に示すように、1mV/秒のスキャン速度により測定されたときのCNTフィルム上に堆積されたバナジウム酸化物の容量のデータを提示する。
【0065】
【表1】

【0066】
表1からは、バナジウム酸化物容量にとっての報告された最高値1230F/gが、実際には最も低い全容量の電極からであることが分かる。多くの場合、電極の導電性構成要素が、二重層容量に貢献し、この説明も為されるべきである。遷移金属化合物が電極質量に10%だけである場合、二重層容量が、ファラデー要素と同じ桁(程度)になるかもしれない。
【0067】
これらの問題を回避するために、本文献にて報告される全ての比静電容量値は、バインダー及び導電性要素を含むが、コレクターの質量を含まない電極(しかしながら、存在するとすれば、フォーム等のサポート材料を含む)の全質量に基づくものとする。
【0068】
金属酸化物/水酸化物の合成及び評価
金属ナノ粒子を合成する2つのアプローチは、加水分解工程、又はキセロゲル工程である。好ましい場合、粒子の水酸化物特性の度合いが高いことが求められ、これは、水酸化物を酸化物へと完全に変えるのに通常必要な温度よりも低い温度で乾燥が行われるためである。これらの物質は、本開示に亘り酸化物として一般的に言及される。Ni2Coといった元素及び数値により材料が識別されるとき、それにより、Co1にNi2の開始モル比で規格された酸化物が示される。酸化物の代表的な合成方法を以下に記述する。
【0069】
サンプル合成方法
酸化物キセロゲルに混合した「in−situ」Ni2Co−CNT(15%)の準備
0.185グラムのNiCl2*6H2O、0.093グラムのCoCl2*6H2Oを2グラムのエタノールに溶解した。この溶液に対して、0.036グラムのCNTを加え、30分間にわたり溶液を超音波処理した。撹拌中のCNT分散溶液中に1グラムのプロピレン酸化物を加えた。一晩にわたり密封して溶液を置き、次に、空気中50℃で乾燥した。
【0070】
混合金属酸化物/水酸化物エーロゲルの準備
2.20gのFeCl3・6H2O、1.85gのNiCl2・6H2O、及び0.59gの水を20gのエタノールに溶解した。10gのプロピレン酸化物(PPO)を素早く撹拌中のアルコール溶液に加え、16分未満内にゲルを形成する。形成したゲルが、室温において数日間密封されて熟される。ゲル中の溶媒(エタノール及び水)をアセトンにより少なくとも3回交換した(一日一回)。アセトン交換ゲルを最終的に超臨界CO2により乾燥した。ニッケル−コバルト混合酸化物/水酸化物が、同様の態様にて用意することができ、1.85gのNiCl2・6H2Oと0.93gのCoCl2*6H2Oで開始する。
【0071】
加水分解による金属酸化物の準備
金属酸化物は、加水分解により用意することができる。例えば、金属含有水性溶液に水酸化物溶液を混ぜることによる。水酸化物溶液を加えることにより、金属酸化物の沈殿が生じる。
【0072】
電極作製
試験用の電極を2つの工程を経て作製した。
【0073】
方法A
・金属酸化物を手で粉砕し(挽き)、微粉にした。
・(もし用いられるならば)導電性構成要素を酸化物粉末に加え、再び粉砕した(挽いた)。
・約20mgのその粉末をすり鉢に加え、次に、溶媒混合の5%から適当量のバインダーを加えた。
・約150mgの1−メチル−2−ピロリジノン(ピロリドン)(NMP)を加えた。
・混合物を再び挽いてペーストにした。次に集電体基板(ステンレス鋼又はニッケル)に対してペーストを塗布した。
・ステンレス鋼電極上の金属酸化物を100℃で1時間加熱し、全ての溶媒を蒸発させた。
・ナイロンフィルターディスク(円板)を次に乾燥した金属酸化物電極上に配置した。次に、電極/フィルターディスク組立品を、測定のために電気化学装置に配置した。
【0074】
フィルターディスクは、テストセル中で電極が同じ位置にあることを確実にするために用いられる。フィルターディスクは、電解質又は電荷の拡散に影響しないように十分な多孔性を有する。
【0075】
方法B
・金属酸化物を手で粉砕し、微粉にし、450℃で焼成した。
・70mgのNi4Co1、25mgのAB、及び109μlの5wt%のナフィオンを2グラムのt(第3)−ブチルアルコールに拡散した。
・この混合物を30分間超音波処理し、次に、一晩、撹拌した。
・ニッケル集電体電極上に堆積する前、撹拌したペーストを30分間超音波処理した。
・堆積するべく、22μLのペースト溶液を採取してNi基板上に落した。
・得られた均一フィルムを空気中で2時間乾燥し、電極材料の重量を記録した。
・空気乾燥したサンプルを次に真空オーブン(〜20psig、100°F)中にて一晩乾燥させた。
・電極/フィルターディスク組立品を次に測定のため電気化学装置に配置した。
【0076】
アセチレンブラック(AB)、ケチェン(Ketjen)ブラック(KB)、カーボンナノチューブ(CNT)、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWNT)、TiO2上に落されたポリピロール、及びカーボンブラックと混合したポリピロールを含む幾つかの異なる導電性媒体を使用した。水性測定のために使用されるNi集電体の活性領域が約1cm2であり、他方、非水性測定のために使用されるステンレス鋼コレクターの活性領域が約1.12cm2である。
【0077】
従来技術の実施例:CNT電極の依存性
図2においてカーボンナノチューブ及びバインダーから構成された電極の比静電容量を示す。95%のCNTと5%のバインダーから電極を構成した。4A/gの電流でガルヴァーニサイクル条件の下で電極を試験した。過渡的影響の後、電極の比静電容量が約50F/gであった。
【0078】
Ni2Co−CNT金属酸化物と2つの商業キャパシタの性能の比較
通常の方法にてNi2Co−CNT(25%)で電極を作製し(方法A)、次に、比静電容量を測定し、そして、購入し同様に試験した2つの商業二重層キャパシタ装置と比較した。1MのKOH中にてハーフセルテスト構成を使用して電気化学測定を行った。図3は、電圧スキャン速度の関数の正規化比静電容量を示す。驚くべきことに、本発明の電極組成物によれば、高い電圧スキャン速度にて高い性能が実証されたことが明らかに分かる。本発明の組成が、早いスキャン速度での性能によって特徴づけできるかもしれない。例えば、少なくとも図3に開示された程度に良い性能である。電極は、好ましくは、平均電圧スキャン速度100mV/s、より好ましくは平均電圧スキャン速度200mV/s、より好ましくは平均電圧スキャン速度300mV/sで、少なくとも0.5(又は少なくとも0.7、又は0.5〜約0.8までの範囲内)の正規化容量を持つ。
【0079】
実施例:Ni2CO−MWNT金属酸化物と従来技術のFTIR透過スペクトルの比較
通常の方法にてNi2Co−MWNT(25%)で電極を作製し(方法A)、次に、250℃で2時間乾燥した。250℃での乾燥の前後で、赤外透過スペクトルを測定し(4000cm-1と500cm-1の間でのスキャニングし)、従来技術のものと比較した。図4及び図5は、従来技術の方法により作製したサンプルのFTIRスペクトルを示し、図6及び図7は、本発明のものを示す。従来技術のFTIRスペクトルと本発明のものとを比較すると、本発明とは異なり、従来技術のスペクトルが、3750cm-1と3000cm-1の間の広い水酸基(−OH)伸縮を有しない。従って、従来技術が純な金属酸化物を形成し、他方、本発明の組成物においては、金属水酸基特性が残存している、と言える。従来技術組成のスペクトルにおけるCH伸縮領域での吸収は、有機溶媒からの汚染によるものと考えられる。従って、好適な形態においては、少なくとも1000〜4000cm-1の範囲内の他の吸収と同等の強度のOH伸縮のIRスペクトルでの吸収により本発明を特徴づけることができる。
【0080】
図8は、各々が250℃で2時間乾燥された、従来技術(上)とNi2CO−MWNT複合物の両方のFTIR透過スペクトルを示す。
【0081】
実施例9:早い充電速度でのNi2Co金属酸化物の性能
混合金属酸化物Ni2Coを合成し、この材料で電極を作製した(方法A)。図9が、これらの電極の性能を示し、双方が、作製後、ABに混合され、そして、作製されるとき、「in−situ」合成方法で形成された酸化物を使用した。76%金属酸化物、19%追加AB、及び5%バインダーを用いて電極を作製した。1MのKOH中のハーフセル試験構成を用いてこれらの測定を実行した。
【0082】
実施例10:水性電解質中のNi2Co金属酸化物の安定性
上述の実施例のNi2Co材料を用いて電極を作製した(方法A)。これらの電極について、4A/gの電流密度で1MのKOH中でガルヴァーニサイクルの下の安定性を試験した。図10は、サイクルの関数として比静電容量を示す。従って、本発明の組成物が、水性電解質中、好ましくは、サイクル2〜10の間で比静電容量が10%の減少よりも少ない、より好ましくは、5%以下の優れた安定性を示している。
【0083】
実施例11:水性電解質中のNi2Co金属酸化物の充電率依存性
通常方法でNi2Co−CNT(25%)を用いて電極を作製し(方法A)、次に、ガルヴァーニサイクル条件の下、様々な電流密度で比静電容量を測定した。電解質として1MのKOHを用いて、ハーフセル構成で試験した。図11に結果を示す。4A/g〜40A/gの特定電流の増加により、比静電容量の40%減少未満になった。従って、本発明の組成物は、電流増加の関数としてのそれらの比静電容量により更に特徴づけ可能である。好適な形態においては、組成物が、(コレクターに対して塗布され、上述のように試験され)4A/g〜10、20の電流増加といった電流増加に応じ、又は、より好ましくは40A/gにより50%未満、より好ましくは40%未満、また更により好ましくは20%未満、比静電容量が減少する。
【0084】
実施例12:水性電解質でのフルセルテスト
フルセルテストを実行し、ここで、金属酸化物電極を陽極及び陰極の両方に用いた。Ni2Co1−CNT(25wt%)複合材料(79.1wt%)、AB(18.6%)、ナフィオン(2.3wt%)から陽極(1.1mg)を構成した。FeOOH−CNT(25wt%)複合材料(79.1wt%)、AB(18.6%)、ナフィオン(2.3wt%)から陰極(1.9mg)を構成した。組み合された電極塊(electrode mass)に基づいて、3A/gの電流密度にて1M及び4MのKOHの双方にて試験を実行した。図12は、1M(濃線)と4M(薄線)のテストの双方にとっての時間を関数とするセル電圧を示す。充電/放電時間、及び対応する容量を表2に示す。
【0085】
【表2】

このデータからエネルギーと電力密度を表3に示すように計算できる。
【0086】
【表3】

【0087】
実施例13:水性電解質でのフルセルテスト
第2のフルセルテストを行い、異なる充電‐放電速度で容量を求めた。Ni2Co1−CNT(25wt%)から陽極(0.8mg)を作製し、FeOOH−CNT(50wt%)から陰極(0.9mg)を作製した。全電極質量4A/gの電流密度で試験したときの時間を関数とする電圧を図13aに示し、20A/gでの試験の結果を図13bに示す。このデータからエネルギーと電力密度を計算でき、これを表4に示す。
【0088】
【表4】

【0089】
実施例14:第1電圧スキャン速度でのNi4Co金属酸化物電極の性能及び再現性
混合金属酸化物Ni4Coを合成し、この材料で電極を作製した(方法B)。方法Bでは、酸化物材料を450℃で焼成し、比静電容量をより再現可能なものとした。表5は、これらの電極の性能を示す。75%のNi4Co、25%のAB、及び5%のバインダーで電極を作製した。1MのKOHのハーフセルテスト構成を用いて20mV/sの第1電圧スキャン速度で5サイクル、これらの測定を実行した。乾燥後の重量のバラツキは、焼成材料を用いたほうが十分に小さかったが、焼成により全体的な性能が低下した。
【0090】
【表5】

【0091】
実施例15:第1電圧スキャン速度での多層Ni4Co金属酸化物電極の性能
75%のNi4Co/25%のAB、及び90%のNi4Co/10%のAB、双方とも5%のバインダーの混合金属酸化物Ni4Coの2つの組成物を合成した。次の変更の他、方法Bによって電極を作製した。
【0092】
金属酸化物ペースト(10μL)の第1層をニッケル集電体に塗布し、4時間にわたり空気乾燥して均一膜を得て、電極材料の重量を記録した。次に、金属酸化物ペースト(10μL)の第2層を第1層に塗布し、6時間にわたり空気乾燥して均一膜を得て、電極材料の重量を記録した。
【0093】
次に、作製電極を方法Bのように完成させた。1MのKOHのハーフセルテスト構成を用いて20mV/sの第1電圧スキャン速度で5サイクル、容量測定を実行した。表6はこれらの電極の性能を示す。金属酸化物の多層構造が単層の堆積層よりも大きい容量を得ることがデータから分かり、第1層が90%のNi4Co1/10%のABのとき容量がより大きい。また、同一材料の2層の堆積の容量が、同一質量の単一堆積層よりも大きい容量を示す。
【0094】
【表6】

【0095】
実施例16:異なる乾燥状態で用意したNi4Co金属酸化物電極の第1電圧スキャン速度での性能
混合金属酸化物Ni4Coを合成し、電極を作製した(方法B)。電気化学測定前の様々な乾燥措置を実行する前、電極を1時間空気乾燥した。表7は、様々な乾燥工程を示し、これらの電極の性能を示す。75%のNi4Co、25%のAB、及び5%のバインダーを用いて電極を作製した。1MのKOHのハーフセルテスト構成を使用し、20mV/sの第1電圧スキャン速度で5サイクル、これらの測定を行った。最高容量は、室温で一晩空気乾燥した電極であり、高温加熱により性能が劣化する。性能における微差が、真空の存在に見られ、1又は2時間の短時間に乾燥された電極は再現可能でなく、容量が非常に低いかもしれない。一般的傾向としては、乾燥時間を長くすることにより容量が大きくなる。
【0096】
【表7】

【0097】
実施例17:電極質量を増加させて用意したNi4Co金属酸化物電極の第1電圧スキャン速度での性能
混合金属酸化物Ni4Coを合成し、堆積されるニッケル量を変更した点を除いて方法Bに準じて電極を作製した。本実験においては、10、22、33、44、又は66μLのペースト溶液をNi基板上に塗布した。湿度調整(22%)された閉じたデシケーターに1時間格納する前、得られた均一なフィルムを1時間空気乾燥した。75%のNi4Co、25%のAB、及び5%のバインダーで電極を作製した。1MのKOHのハーフセルテスト構成を使用し、20mV/sの第1電圧スキャン速度で5サイクル、これらの測定を行った。表8は、これらの電極の性能を示す。電極質量の増加により比静電容量が低下することがデータから分かる。
【0098】
【表8】

【0099】
実施例18:Ni2Co−MWNT金属酸化物電極の焼成の効果
そのように用意されたNi2Co−MWNT材料と250℃で2時間焼成されたNi2Co−MWNT材料を用いて各電極を作製した(方法A)。1MのKOHのハーフセルテスト構成を使用し、20mV/sの第1電圧スキャン速度で5サイクル、これらの測定を実行した。表9に容量の結果を示す。材料の焼成により大きく容量が減じた。
【0100】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を備えるキャパシタであって、
前記電極は、Ni及びCoを0.5:1よりも大きいモル比で含み、
(a)前記電極は、1MのKOHの水性電解質中で電圧スキャン速度20mV/sで測定したとき、少なくとも450F/g・cm2の比静電容量を有する、又は
(b)前記電極は、50mV/sで測定した第1比静電容量と20mV/sで測定した第2比静電容量を有し、ここで更に、前記第2比静電容量に対する前記第1比静電容量の比率が少なくとも0.6である、又は、
(c)IRスペクトラムにおけるOH伸縮の吸収が、1000〜4000cm-1の範囲内の他の吸収と少なくとも同等の強度である、
という各特性の1つ以上を更に有する、キャパシタ。
上記の比静電容量において(単位「cm2」で表現された)電極の表面積は、電極の巨視的面積である。例えば、平面1cm2×1cm2の集電体上に堆積された電極の場合、表面積は1cm2である。発泡金属上に堆積された電極にとっては、表面積は、発泡金属の表面積になる。好ましくは、電極が、少なくとも0.5mg、より好ましくは、少なくとも0.8mgの質量を持つ。好適な形態においては、電極は、少なくとも0.5mg/cm2、より好ましくは0.8mg/cm2の表面積当たりの質量を持つ。
【請求項2】
前記電極がNi及びCoをモル比1:1〜4:1で含有する、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項3】
金属酸化物中の遷移金属が、実質的にNi及びCoから構成される、請求項1又は2に記載のキャパシタ。
【請求項4】
金属酸化物が、3750〜3000cm-1の赤外線帯域における吸収バンドにより特徴付けられる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項5】
前記電極が、5重量%以下のバインダーを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項6】
電極が、カーボンを更に含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項7】
前記電極が、0.1〜2mgの範囲内の質量をもつ、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項8】
前記電極が、1MのKOH水性電解質で電圧スキャン速度20mV/sで測定されたとき、少なくとも550F/gの比静電容量を含む、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項9】
前記電極が、40〜90重量%の金属酸化物ナノ粒子と10〜60重量%のカーボンを含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項10】
前記電極が、少なくとも5重量%のカーボンナノチューブを含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項11】
前記電極が複層から構成される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項12】
前記電極が、集電体を含み、当該複合体の高濃度層が、前記集電体に近く配置され、前記高濃度層が、前記集電体からより離れた当該複合体の第2層よりも導電性が良い、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項13】
前記電極が、1MのKOH水性電解質中で電圧スキャン速度20mV/sで測定するとき、少なくとも650F/gの比静電容量を含む、請求項11に記載のキャパシタ。
【請求項14】
前記電極が、集電体と複合材料の1以上の層から実質的に構成される(前記電極が発泡体の保持体を含まない)、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項15】
請求項1乃至13に記載の第1電極と、電解質と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間で電気通路を形成可能な回路と、を備えるキャパシタ。
【請求項16】
前記電解質が非水性液体である、請求項15に記載のキャパシタ。
【請求項17】
前記第1及び第2電極が、実質的に同一の組成を有する、請求項15又は16に記載のキャパシタ。
【請求項18】
請求項15乃至17のいずれか一項に記載のキャパシタと、光起電セルとを備える、ソーラーエネルギーシステム。
【請求項19】
電極の製造方法であって、
Ni及びCoをモル比0.5:1〜6:1で含む組成物を形成し、
前記組成物を反応させてNi及びCoをモル比0.5:1〜6:1で含むゲルを形成し、
前記ゲルを乾燥してNi及びCoをモル比0.5:1〜6:1で含む紛体を得て、
前記紛体を圧縮して電極を形成する、電極の製造方法。
【請求項20】
プロセス温度が、200℃を超えることがない、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
プロセス温度が、50℃を超えることがない、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記電極が、単一の乾燥工程に晒される、請求項19乃至21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、5時間超乾燥される、請求項19乃至21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
エネルギーの蓄積方法であって、請求項1乃至17のいずれか一項に記載のキャパシタに対して電位差を与え、前記電位差を除き、ここで、前記電位差が除かれた後、前記電位差が、前記電極間に持続する、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【公表番号】特表2013−500588(P2013−500588A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521768(P2012−521768)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/042821
【国際公開番号】WO2011/011561
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(504306714)バテル・メモリアル・インスティテュート (26)
【氏名又は名称原語表記】BATTELLE MEMORIAL INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】505 King Avenue, Columbus, OH 43201−2693 (US)
【Fターム(参考)】