説明

ニッケルの回収

ミレライトの形態でニッケルを含有する固体供給材料から、ニッケルを回収する方法を開示する。この方法は、固体供給材料及びプロセス溶液のスラリーを処理して、ミレライト中の全て又は少なくとも一部のニッケルに、酸浸出性の固体形態を形成させるステップを含む。この方法はまた、処理したスラリーを加圧酸浸出し、スラリーの固形物中のニッケルを溶液中に浸出させるステップを含む。この方法は、最後に、溶液からニッケルを回収するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原鉱又は精鉱から、湿式製錬経路を経てニッケルを回収する方法に関する。
【0002】
本発明は特に、ミレライト(NiS)の形態でニッケルを含有する原鉱又は精鉱からのニッケルの回収に関する。
【0003】
決して他を排除するものではないが、本発明はとりわけ、ミレライト(NiS)の形態でニッケルを含有する原鉱又は精鉱からのニッケル及びコバルトの回収に関する。
【背景技術】
【0004】
原鉱又は精鉱には、ミレライトに加えて、他の硫化鉱物が含まれていてもよい。1種又は複数の他の硫化鉱物中には、ニッケルが存在していてもよい。
【0005】
原鉱又は精鉱には、酸化鉱物が含まれていてもよい。1種又は複数の酸化鉱物中には、ニッケルが存在していてもよい。
【0006】
原鉱又は精鉱には、ミレライト及び酸化鉱物に加えて、他の硫化鉱物が含まれていてもよい。1種又は複数の他の硫化鉱物及び酸化鉱物中には、ニッケルが存在していてもよい。
【0007】
原鉱又は精鉱には、ニッケル及びコバルトに加えて、例えば銅といった他の有価金属が含まれていてもよい。
【0008】
精鉱は、ミレライト及び他の硫化鉱物及び/又は酸化鉱物を含有する特定の鉱体に由来するものであってもよい。或いは、精鉱は、多くの様々な鉱体のブレンドに由来し、ミレライトを含む様々な鉱物を含有するものであってもよい。
【0009】
出願人にとって興味深い鉱物には、ミレライト、ヒーズルウッダイト(Ni)、ゴドレフスカイト(NiFeS)、ペントランダイト((Ni,Fe))、及びバイオラライト(NiFeS)が含まれる。
【0010】
本発明は、ミレライト、ペントランダイトの鉱物、及び場合によっては、例えばバイオラライトといった他の鉱物のブレンドを含有する原鉱及び精鉱のスラリーの、酸性条件下における浸出性の予想外の悪さを調査するために出願人によって実施された研究プログラムの途中でなされた。
【0011】
浸出性の悪さは、出願人が原鉱及び精鉱から妥当なニッケル回収率を達成できるであろうと予測した条件下における加圧酸化酸浸出を含む湿式製錬法を用いて得られた。
【0012】
研究プログラムでは、湿式製錬法において用いられたプロセス溶液における塩化物濃度が、酸性条件下におけるミレライトからのニッケルの浸出性に際立った影響を与えることが見出された。研究プログラムでは、特に、酸性条件下での加圧酸化におけるミレライトからのニッケルの浸出性が、プロセス溶液中の塩化物濃度が特定の閾値を超えて上昇するにつれ低下することが見出された。
【0013】
本発明は、酸性条件下での浸出が必要とされ、湿式製錬法に使用できるプロセス溶液が、酸性条件下でのミレライトからのニッケルの浸出性に悪影響を与えるのに十分な塩化物濃度を有しているような状況においては、プロセスに、引き続いての加圧酸化酸浸出ステップに先立って、ミレライトを少なくとも部分的に酸浸出性の形態に変換するような処理ステップが含まれるべきである、との認識に基づいている。
【0014】
与えられたいかなる状況においても、酸性条件下でのミレライトからのニッケルの浸出性に悪影響を与えるような塩化物の最低濃度は、様々な要因に依存するであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
出願人は、ミレライト処理ステップと、引き続いての(好ましくは酸化条件下における)加圧酸浸出ステップを含む湿式製錬法では、プロセス溶液が酸性条件下でのミレライトからのニッケルの浸出性に悪影響を与えるのに十分な塩化物濃度を含有している状況でも、高いニッケル回収率が達成されることを見出した。
【0016】
出願人はまた、このような湿式製錬法では、先行するミレライト処理ステップを含まない標準的な加圧酸浸出ステップで達成されるものに比べて、原鉱及び精鉱からのより高いコバルト回収率が達成されることも見出した。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、
a)固体供給材料及びプロセス溶液のスラリーを処理して、ミレライト中の全て、又は少なくとも一部のニッケルに、酸浸出性の固形形態を形成させるステップと、
b)ステップ(a)からの処理スラリーを加圧酸浸出して、スラリーの固形物中のニッケルを溶液中に浸出させるステップと、
c)溶液からニッケルを回収するステップと
を含む、ミレライトの形態でニッケルを含有する固体供給材料からニッケルを回収するための方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
典型的には、供給材料には、原鉱又は精鉱が含まれる。
【0019】
供給材料は、ミレライトに加えて、その他のニッケル含有鉱物を含有していてもよい。上に示したように、鉱物は、硫化鉱物及び/又は酸化鉱物であってもよい。
【0020】
供給材料はまた、コバルト及び/又は銅といったその他の有価金属を含有していてもよい。
【0021】
本発明が基づいているところの実験プログラムは、ミレライト、ペントランダイト、及び場合によってはその他の硫化鉱物のブレンドを含有する原鉱及び精鉱について実施された。
【0022】
プロセスは、ニッケルのグレードに左右されるものではなく、経済的継続性を前提として、いかなるニッケルグレードの供給材料にも適用可能である。
【0023】
出願人の現在の見解では、このプロセスは、プロセス用の原鉱又は精鉱中の少なくとも10重量%のニッケルがミレライトの形態をしているような状況において、経済的に実行可能な選択肢となる。
【0024】
典型的には、供給材料は、2〜3重量%のニッケルを有するような低グレードのニッケル原鉱及び精鉱から、20重量%よりも多いニッケルを含有するような高グレードの精鉱までの範囲のものであってもよい。
【0025】
供給材料は、10〜40ミクロンの範囲の粒サイズを有する特定の形態をとっていることが好ましい。与えられたいかなる状況においても、好ましい粒サイズは、供給材料の鉱物学の関数の1つである。
【0026】
プロセス溶液は、少なくとも5g/lの塩化物を含有していることが好ましい。
【0027】
プロセス溶液が少なくとも20g/lの塩化物を含有していることが、より好ましい。
【0028】
プロセス溶液が少なくとも30g/lの塩化物を含有していることが、特に好ましい。
【0029】
ステップ(a)は、供給材料及びプロセス溶液のスラリーの、非酸性条件下での処理を含むことが好ましい。
【0030】
本明細書においては、「非酸性」条件という用語は、スラリーのpHが、pH5.5よりも高いことを意味すると解される。
【0031】
ステップ(a)は、供給材料及びプロセス溶液のスラリーの、5.5〜7の範囲のpHでの処理を含むことが好ましい。これに関連して、ステップ(a)の前には、スラリーは異なるpH、例えばより高いpHであってもよいことに留意されたい。
【0032】
ステップ(a)は、供給材料中の酸可溶性のアルカリ性脈石鉱物の存在によって、又はスラリーにアルカリ試薬を添加することによって、スラリーのpHを5.5〜7の範囲内に調整し、ステップ(a)の間pHをこの範囲内に維持することを含むことが好ましい。
【0033】
ステップ(a)は、供給材料及びプロセス溶液のスラリーの、高温で処理を含むことが好ましい。
【0034】
典型的には、高温は、80〜160℃の範囲である。
【0035】
高温は、少なくとも110℃であることがより好ましい。
【0036】
高温は、少なくとも130℃であることがより好ましい。
【0037】
高温は、155℃を超えないことがより好ましい。
【0038】
高温は、150℃を超えないことがより好ましい。
【0039】
ステップ(a)は、大気条件下、又は加圧条件下で行ってもよい。
【0040】
ステップ(a)は、供給材料及びプロセス溶液のスラリーの、酸化条件下での処理を含むことが好ましい。
【0041】
ステップ(a)は、加圧酸化条件下でのスラリーの処理を含むことがより好ましい。
【0042】
ステップ(a)は、少なくとも実質的に全てのミレライト中の硫化物を硫酸塩に酸化するのに十分なO分圧を備えた加圧酸化条件下での、供給材料及びプロセス溶液のスラリーの処理を含むことが好ましい。
【0043】
ステップ(a)に関連して考慮しなければならない課題の1つは、ミレライト以外の鉱物の、望ましくない酸発生を招くような酸化を最小限にするように、ステップの条件を選択しなければならない、ということである。
【0044】
ステップ(a)はまた、望ましくない酸発生を引き起こすことがなく、供給材料中の他の硫化鉱物を酸化するのに十分なO分圧を備えた加圧酸化条件下での、供給材料及びプロセス溶液のスラリーの処理を含むことが好ましい。例えば、他の硫化鉱物にはヒーズルウッダイト及びゴドレフスカイトなどを含めることができる。
【0045】
典型的には、ステップ(a)は、250〜1000kPa(g)の範囲のO分圧を備えた加圧酸化条件下で、供給材料及びプロセス溶液のスラリーを処理することを含む。
【0046】
ステップ(a)のO分圧は、500〜1000kPa(g)の範囲であることがより好ましい。
【0047】
ステップ(a)の継続時間は、15〜90分間の範囲であることが好ましい。
【0048】
上述の処理ステップ(a)によりミレライト中の硫黄が酸化され、ミレライト中のニッケルは溶液中に溶け出して、ニッケルの一部は溶液中に残存し、残りのニッケルは酸浸出性の水酸化ニッケル及び/又は塩基性の硫酸ニッケルとして沈殿すると、出願人は考えている。
【0049】
したがって、スラリーは、適切な処理時間後に、(a)プロセス溶液中の可溶性ニッケル、(b)ミレライトから沈殿した、水酸化ニッケル及び/又は塩基性の硫酸ニッケル、及び(c)未反応の、又は部分的に反応した、例えばペントランダイト、バイオラライトなどのタイプのニッケル含有鉱物を含むと、出願人は考えている。
【0050】
ステップ(b)は、ステップ(a)からの処理スラリーの、3又はこれよりも小さいpHでの酸浸出を含むことが好ましい。
【0051】
ステップ(b)は、ステップ(a)からの処理スラリーの、2又はこれよりも小さいpHでの加圧酸浸出を含むことがより好ましい。
【0052】
ステップ(b)は、ステップ(a)からの処理スラリーの、硫酸中での加圧酸浸出を含むことが好ましい。
【0053】
ステップ(b)は、ステップ(a)からの処理スラリーの、酸化条件下での加圧酸浸出を含むことが好ましい。
【0054】
ステップ(b)は、ステップ(a)からの処理スラリーの、800〜1200kPa(g)の範囲のO分圧を備えた加圧酸化条件下での加圧酸浸出を含むことが好ましい。
【0055】
ステップ(b)は、ステップ(a)からの処理スラリーの、高温での加圧酸浸出を含むことが好ましい。
【0056】
典型的には、高温とは、100〜160℃の範囲である。
【0057】
高温は、少なくとも130℃であることが好ましい。
【0058】
高温は、155℃を超えないことが好ましい。
【0059】
高温は、150℃を超えないことが好ましい。
【0060】
ステップ(b)の継続時間は、30〜120分間の範囲であることが好ましい。
【0061】
この方法は、ステップ(b)に先立って、又はその一部として、固体供給材料及びプロセス溶液の別のスラリーをステップ(a)からの処理スラリーに添加することを含んでもよい。よって、プロセスは、異なった供給材料が存在し、そのうちの幾つか(例えば、ミレライトを含有する供給材料)がステップ(a)及び(b)の処理を必要とし、他のもの(例えば、大部分がペントランダイトであるような供給材料)はステップ(b)のみの処理を必要とするような状況にも適用される。
【0062】
ステップ(a)及び(b)は、同じ又は異なる容器中で実施してもよい。
【0063】
上述の、本発明の2段階法の実施形態の1つによれば、スラリーは、次のものから形成される:
(a)5.5及び40重量%ニッケルで試金される、ミレライト及びペントランダイトのブレンド(バイオラライト、ヒーズルウッダイト、ゴドレフスカイト及びその他の硫化鉱物が、一緒に又は別々にブレンドの一部であってもよい)の精鉱;及び
(b)25〜35g/lの範囲の塩化物濃度を有するプロセス溶液。
【0064】
スラリーを、濃縮槽中でおよそ固形物30%w/wまで濃縮する。
【0065】
濃縮したスラリーを、オートクレーブに供給する。
【0066】
このスラリーを、オートクレーブ中で150℃、O分圧800〜1000kPa(g)で、30〜60分間処理する。スラリーのpHは、5.5〜7の範囲に維持する。このような条件下で、精鉱中のミレライト(存在する場合には、及びヒーズルウッダイト、及びゴドレフスカイト)分画が酸化されてニッケルが溶液中に溶け出し、ニッケルの一部、典型的には10〜15重量%が溶液中に残存して、残りのニッケルは、精鉱中に潜在しているアルカリ性の脈石の存在によって確定的となる加水分解の結果、酸可溶形態、典型的には水酸化物又は塩基性の硫酸ニッケルとして沈殿する。
【0067】
一旦ミレライトの酸化が完了したら、オートクレーブ中に硫酸を投入し、スラリーのpHを2よりも小さくまで減少させる。スラリーを、150℃で、酸素の存在下、30〜120分間、酸浸出する。このような酸性条件下で、ペントランダイト、バイオラライト及びその他の硫化鉱物、及びミレライト酸化からのニッケル沈殿物は浸出し、ニッケルが溶液中に溶け出す。
【0068】
酸浸出ステップの最後に、プロセス溶液と残存固形物とは分離され、溶液からニッケルを回収するために、プロセス溶液は処理される。
【0069】
特に、プロセス溶液は、別のオートクレーブに移してHSガスを封入することにより、プロセス溶液からNiSが沈殿する。沈殿したNiSを含有するプロセス溶液は、ろ過されるか、濃縮槽に移されて、固形物と液体ストリームとに分離される。固形物ストリームは洗浄されるか、又はろ過された後に洗浄されて、最終的なNiS生成物が形成される。
【0070】
或いは、ニッケルは、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、塩基性の硫酸ニッケル、又はニッケル金属として、プロセス溶液から回収することができる。
【0071】
上に示したように、本発明は、研究プログラムの途中でなされたものである。
【0072】
研究プログラムの最初の段階の結果の抜粋を、本明細書末尾の表1及び表2に示す。
【0073】
表1は、温度150℃、酸素圧1000kPa(g)の酸性条件下でミレライト/ペントランダイトについて行った4対の加圧酸化試験の結果の、ニッケル及びコバルトの回収率を示す。
【0074】
最初の対、試験1と2の場合には、ミレライトとして30〜35重量%のニッケルを含有する、ミレライト/ペントランダイトのブレンドを含有するスラリーを、硫酸中で浸出する。
【0075】
試験1の場合には、スラリーは28g/lと比較的高い塩化物濃度を含有し、試験2の場合には、スラリーは0.3g/lよりも小さい比較的低い塩化物濃度を含有する。
【0076】
試験1では、81.8%と比較的低いニッケル回収率が報告され、試験2では、94.5%と比較的高いニッケル回収率が報告されている。
【0077】
同様に、試験1では、86.2%と比較的低いコバルト回収率が報告され、試験2では、94.6%と比較的高いコバルト回収率が報告されている。
【0078】
これらの結果は、スラリー中の高い塩化物濃度が、ニッケル及びコバルトの回収に著しい悪影響を与えることを示している。
【0079】
表1中の他の3対の結果は、表に示されているような様々な仕込み精鉱について、ニッケル及びコバルト回収に対する、上述のような塩化物濃度の悪影響を裏付けている。
【0080】
表2は、異なる操作条件の下で実施した、本発明の2段階法の一連の試験結果を集約している。
【0081】
試験は、特に、1つのブレンドは30〜35重量%のニッケルをミレライトとして含有(S:Ni比は0.86)し、もう1つのブレンドは75〜80重量%のニッケルをミレライトとして含有(S:Ni比は0.6)する、2種の異なるミレライト/ペントランダイトのブレンドを含有するスラリーについて実施した。
【0082】
試験は、次のものを含む、表に集約した一連の操作条件の下で実施した:
(a)オートクレーブ温度 110℃、130℃、及び150℃、
(b)O分圧 250kPa(g)、500kPa(g)、及び1000kPa(g)、
(c)スラリー濃度 固形物15重量%、固形物16.7重量%、及び固形物25重量%を含有、
(d)非酸性処理浸出時間 10、15、30、45、及び60分間、
(e)酸浸出時間 60、90、及び最高120分間、並びに
(f)様々な硫酸濃度。
【0083】
表2から、本発明の2段階法によれば、プロセス溶液中の高い塩化物濃度にかかわらず、高いニッケル回収率が達成されることは明らかである。
【0084】
研究プログラムにはまた、プログラムにおける、より大きな規模でのパイロットプラント操業が含まれていた。
【0085】
表3及び4は、2回のパイロットプラント稼動を集約している。
【0086】
表3に集約されているパイロットプラントには、ペントランダイト、ミレライト、及びバイオラライトの混合物を少量のその他の硫化鉱物と共に含有する精鉱硫化物であって、約28g/Lの塩化物を含有するプロセス水中で80%が10〜15ミクロンを通過するように粉砕されたものの浸出が含まれている。精鉱スラリー(pH8.2)を、2段階の加圧酸化プロセスに供した。ステップ(a)では、スラリーを「非酸性」条件下、143℃(仕込み1)、全圧179psigで浸出した。80分間の浸出の間、スラリーのpHは7.4から6.4まで低下し、Ehは300mVから380mVまで増加した。pHの変化は、プロセスにおいていくらかの酸が産生されたが、アルカリ性脈石鉱物によって消費されたことを示している。ステップ(a)の後、ミレライトの全てと、ペントランダイト及びバイオラライトの一部は酸化されたが、高いpHにおいて生じた加水分解のため、溶液中のニッケル及びコバルトの濃度は低かった。ステップ(b)では、温度を150℃に昇温し、全圧210psiで、硫酸を用いてpHが2よりも小さくなるまでスラリーを酸化し、酸性酸化条件下でさらに120分間浸出した。ステップ(a)において酸化され、再沈殿した全てのニッケルは、溶液中に抽出された。120分後、ほとんどの残存ニッケル硫化鉱物は溶解し、全ニッケル抽出率は95.5%、及び全コバルト抽出率は90.1%となった。
【0087】
表4に集約されているパイロットプラント稼動は、より高いミレライト含量の他の精鉱について、前の稼動時のものと実質的に同じプロセス条件を用いて実施された。表4から、プロセスにより、全ニッケル抽出率96.3%、及び全コバルト抽出率94.1%が達成されたことがわかる。
【0088】
上述の本発明については、本発明の思想と範囲を逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ミレライト中の全て、又は少なくとも一部のニッケルが、酸浸出性の固体形態を形成するように、固体供給材料及びプロセス溶液のスラリーを処理するステップと、
b)ステップ(a)からの処理スラリーを加圧酸浸出し、スラリーの固形物中のニッケルを溶液中に浸出させるステップと、
c)溶液からニッケルを回収するステップと
を含む、ミレライトの形態でニッケルを含有する固体供給材料からニッケルを回収するための方法。
【請求項2】
プロセス溶液が少なくとも5g/lの塩化物を含有している請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プロセス溶液が少なくとも20g/lの塩化物を含有している請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)が、非酸性条件下で供給材料及びプロセス溶液のスラリーを処理することを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)が、5.5〜7の範囲のpHで、供給材料及びプロセス溶液のスラリーを処理することを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)が、供給材料中の酸可溶性のアルカリ性脈石鉱物の存在によって、又はスラリーにアルカリ試薬を添加することによって、スラリーのpHを5.5〜7の範囲内に調整し、ステップ(a)の間pHをこの範囲内に維持することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(a)が、供給材料及びプロセス溶液のスラリーを高温で処理することを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
高温が80〜160℃の範囲である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
高温が少なくとも110℃である請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
高温が155℃を超えない請求項7から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
高温が150℃を超えない請求項7から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(a)が、酸化条件下で、供給材料及びプロセス溶液のスラリーを処理することを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(a)が、加圧酸化条件下で供給材料及びプロセス溶液のスラリーを処理することを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(a)が、少なくとも実質的に全てのミレライト中の硫化物を硫酸塩に酸化するのに十分なO分圧を備えた加圧酸化条件下で、供給材料及びプロセス溶液のスラリーを処理することを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(a)がまた、望ましくない酸発生を引き起こすことなく、供給材料中の他の硫化鉱物を酸化するのに十分なO分圧を備えた加圧酸化条件下で、供給材料及びプロセス溶液のスラリーを処理することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(a)が、250〜1000kPa(g)の範囲のO分圧を備えた加圧酸化条件下で、供給材料及びプロセス溶液のスラリーを処理することを含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(a)におけるO分圧が500〜1000kPa(g)の範囲である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(a)の継続時間が15〜90分間の範囲である請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(b)が、ステップ(a)からの処理スラリーを、3又はこれよりも小さいpHで酸浸出することを含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(b)が、ステップ(a)からの処理スラリーを、2又はこれよりも小さいpHで加圧酸浸出することを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(b)が、ステップ(a)からの処理スラリーを硫酸中で加圧酸浸出することを含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(b)が、ステップ(a)からの処理スラリーを酸化条件下で加圧酸浸出することを含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(b)が、ステップ(a)からの処理スラリーを800〜1200kPa(g)の範囲のO分圧を備えた加圧酸化条件下で加圧酸浸出することを含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(b)が、ステップ(a)からの処理スラリーを高温で加圧酸浸出することを含む、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
高温が100〜160℃の範囲である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
高温が少なくとも130℃である請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
高温が155℃を超えない請求項24から26までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
高温が150℃を超えない請求項24から26までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ステップ(b)の継続時間が30〜120分間の範囲である請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(b)に先立って、又はその一部として、固体供給材料及びプロセス溶液の別のスラリーをステップ(a)からの処理スラリーに添加することを含む、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2007−538147(P2007−538147A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516884(P2007−516884)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000724
【国際公開番号】WO2005/113845
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506388956)ダブリューエムシー リソーシーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】