説明

ニッケルコーティングのハンダ付け特性改良方法

【課題】ニッケルコーティングのハンダ付け特性改良方法
【解決手段】本発明は、ニッケルコーティングのハンダ付け特性の改良のための、容易で安価な法に関するもので、このハンダ付け特性の改良は、浸透法によって酸性パラジウム溶液からパラジウム層をニッケルコーティング上に析出させることによって達成される。本発明の方法は、電解析出されたつや消しニッケルコーティング及び化学析出されたニッケル−リン−又はニッケル−ホウ素コーティングのハンダ付け特性の改良にも適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ニッケルコーティングの析出方法は、工業技術的実践において広く普及している。鋼、銅、銅合金、亜鉛ダイカスト及びアルミニウムなどから構成される部品の表面に、耐腐食性、抗変色性、耐摩耗性が達成されるようにニッケルコーティングを析出させる。コーティングは、電解又は化学的に(外部無電流で)析出させる。外部無電流の金属析出の場合には、電気的接触は必要とされない。そのことから、例えば金属型、則ち不導体上に取り付けられた金属製の絶縁表面領域をニッケル化することが可能となる。この方法の対象には、とりわけ導体プレートが挙げられ、その場合に基板材料は合成樹脂又はセラミックにより構成され、金属型は銅で構成される。
【背景技術】
【0002】
つや消し又はつや出しニッケルコーティングを電解析出させるために、既知の商業入手可能な方法が使用できる。つや消しニッケルコーティングは、例えばワットのニッケル浴から析出させる。この浴は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ホウ酸及び湿潤剤を含む。スルファミン酸ニッケル又はメタンスルホン酸ニッケルなどのその他のニッケル塩をベースにした浴は、同じくよく知られている。つや出しニッケルコーティングを析出させるための浴は、ニッケル塩、ホウ酸などの緩衝物質及びつや出しと平坦化に作用する有機添加物を含む。ニッケルコーティングの析出の際には、通常次の条件、則ち40〜70℃の範囲の温度及び1〜6A/dm2の範囲の陰極電流密度が選択される。これらの条件は、とり
わけ浴の型及びニッケル析出方法に依存する。ニッケルコーティングの析出方法は、例えば下記の文献に言及されている。
ロバート・ブルガー(Robert Brugger)著、「ディ ガルバニッシェ フェアニックルング(Die galvanische Vernicklung)」、オイゲン ゲー ロイチェ(Eugen G.Leuze)出版、1984年
ヨット ヴェー デットナー(J.W.Dettner)著、「ハンドブッフ デア ガルヴァノテヒニーク(Handbuch der Galvanotechnik)」、カール ハンザー(Carl Hanser)出版、1966年
【0003】
化学的にニッケル析出させるための浴は、ニッケル塩(硫酸ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル、酢酸ニッケル、次亜リン酸ニッケルなど)、還元剤(次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミノボラン)、錯化剤、安定剤及び反応促進剤や湿潤剤などのその他の添加物を含む。この方法の詳しい説明、浴の組成及び動作条件に関する言及は、例えば文献ヴォルフガング リーデル(Wolfgang Riedel)著、「フンクチオネーレ ヒェミッシェ フェアニッケルング(Funktionelle chemische Vernickelung)」、オイゲン ゲー ロイチェ(Eugen G.Leuze)出版、1989年内に見出される。
【0004】
電解方法の場合には、実際にコーティングを純ニッケルから析出させる。この化学的に析出されたニッケルコーティングは、使用された還元剤に応じてリン(方法の種類に応じて約15重量%まで)又はホウ素(方法の種類に応じて約5重量%まで)などのその他の成分を含む。
【0005】
軟質ハンダは、電気部材や電子部材を製造する際の接合方法として頻繁に使用される。ハンダ付けの際に部品を申し分なく接合するためには、個々の部品の表面をハンダ付け工程中ハンダで十分にぬらさなければならない。これまでハンダ付けのために、大部分がスズ−鉛−軟質ハンダなどの含鉛ハンダを使用してきた。もっとも近年は、スズ−銀−軟質ハンダなどの鉛フリーハンダを使用する傾向がある。
【0006】
ハンダ付け特性は、DIN32506などにしたがってつり上げ浸漬試験によって評価される。
【0007】
ハンダ液でのニッケル表面のぬれ性は比較的悪く、これは活性化フラックスを使用する場合にも同様である。
【0008】
電解析出つや消しニッケルコーティングは、確かに析出直後は良好にハンダ付けができるが、空気に触れながら貯蔵することによってハンダ付け特性は明らかに低下する。このハンダ付け特性の低下は、温度をより高くすることで加速される。したがって析出直後に良好にハンダ付けされているニッケルコーティングは、例えば270℃で10分間貯蔵後にはもはやハンダ付けが不可能である。
【0009】
化学的に析出させたニッケルコーティングのハンダ付け特性は、析出直後にすでに不十分である。
【0010】
スズ又はスズ合金をニッケル表面上に析出させることによって、ハンダ付け特性の劣化問題は取り除かれる。しかしながら、2〜5μmの範囲の膜厚で析出されるこのコーティングで表面を覆うことによって、ニッケルの幾つかの好ましい性質(硬度、耐摩耗性、結合性など)が失われる。スズ又はスズ合金により構成されるコーティングは、電解によってのみニッケル上に析出させることができる。この理由から金属型の金属化は非常な労力を要するか、又は実行不可能である。
【0011】
化学的にニッケル化された金属型をハンダ付けできるようにするために、金コーティングを浸透法によって、又は還元剤を含む無電流浴から析出させる(コームブス チェー エフ ジュニア(Coombs,C.F.Jr.)「プリンテド サーキット ハンドブック(Printed Circuit Handbook)」マック グラウ−ヒル(Mc Graw−Hill)出版、2001年)。
【0012】
金は、ハンダ付け工程中スズ含有ハンダに溶解し、ある濃度から妨害し得る。この方法を使用する場合には、金のこのマイナスの性質と金の高い価格を考慮に入れなければならない。
【0013】
銅及びニッケルなどの金属表面の保護層としてのパラジウムコーティング、或いはニッケルコーティングの使用は、文献にすでに言及されている。
【0014】
米国特許第3,285,754号明細書には、銅、銀、ブリキ、アルミニウム青銅、リン青銅、ベリリウム銅及び非合金金属などの金属表面に浸透法によってパラジウムを析出させて、金属表面に、無電流で申し分のないつや出しパラジウム層を設け、それによって腐食から保護するための特殊な亜硝酸パラジウム錯体の使用が言及されている。米国特許3,285,754号明細書によると、言及された方法によって、4〜100mg/dm2(1平方インチ当たり1/4〜10mgm)のパラジウム量を有するパラジウムコーテ
ィングが析出する。
【0015】
独国特許出願公開第4316679号明細書には、まず銅又はニッケル上にパラジウム層を浸透法によって、それから無電流で自触媒で析出させる方法が言及され、その場合に第1段階では酸化剤を含む酸性溶液が使用される。独国特許出願公開第4316679号による第1段階は、その後の無電流のパラジウム析出のための表面の前処理(活性化)として使用される。塗布されたパラジウム層は、例えば腐食防止として役立つはずであろう。
【0016】
独国特許出願公開第4415211号明細書から、ニッケルコーティングをパラジウムでコーティングしようとする場合には、浸透法によってパラジウムを析出させることによって、表面の前処理が必要でないことが判明する。この特許明細書にしたがって、ニッケルコーティングをハンダ付けできるようにし、腐食から保護するために、ニッケルコーティング上にパラジウムコーティングを直接自触媒析出させる。
【0017】
酸化防止として、及び良好なハンダ付け特性を達成するための、金属表面へのパラジウムの無電流の自触媒析出は、欧州特許出願公開第0697805号明細書などにも言及されている。この方法では、パラジウム塩の他にパラジウム塩用の還元剤を含む浴が使用され、その場合に前述の特許明細書では還元剤として次亜リン酸塩が使用される。その場合にEP0697805によると、0.025〜2.5、好ましくは0.1〜1μmの厚みのパラジウム層が析出する。
【0018】
自触媒の無電流方法は、浴の使用及び維持に関して比較的労を要する。浴は準安定状態で維持されるため、浴の自発的分解の危険が生じる。金属塩の金属への還元が、コーティングされる表面上で合目的に、選択的に進行するのではなく、全パラジウム溶液内及び浴容器の内壁で自発的に進行する場合に、無電流の自触媒析出に関連して、浴の分解という言葉が使われる。
【0019】
浸透法による金属の析出に対する自触媒析出の違いは、浸透法による析出の場合には表面金属が金属塩の還元剤として使用され、したがってコーティングされる金属表面が覆われるとすぐに浸透法による析出が終了する。自触媒方法では、コーティングされる表面上に析出した金属が、溶液に含まれる還元剤による別の金属塩の還元のための触媒として局所で作用する。したがって無電流の自触媒析出金属層の膜厚は、とりわけコーティングされる対象が処理浴内にどれくらい長く放置されるかによって確定される。
【0020】
リードフレーム製造の時に、ニッケルコーティング上にパラジウムを電解析出させる方法は、米国特許第6,139,977号明細書、米国特許第6,159,623号明細書、米国特許第4,911,798号明細書、米国特許第4,911,799号明細書などに言及されている。上述のように電解析出の短所は、互いに絶縁された表面領域を、問題なく処理することが出来ないことにある。
【特許文献1】米国特許第3,285,754号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第4316679号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第4415211号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0697805号明細書
【特許文献5】米国特許第6,139,977号明細書
【特許文献6】米国特許第6,159,623号明細書
【特許文献7】米国特許第4,911,798号明細書
【特許文献8】米国特許第4,911,799号明細書
【非特許文献1】ロバート・ブルガー(Robert Brugger)著、「ディ ガルバニッシェ フェアニックルング(Die galvanische Vernicklung)」、オイゲン ゲー ロイチェ(Eugen G.Leuze)出版、1984年
【非特許文献2】ヨット ヴェー デットナー(J.W.Dettner)著、「ハンドブッフ デア ガルヴァノテヒニーク(Handbuch der Galvanotechnik)」、カール ハンザー(Carl Hanser)出版、1966年
【非特許文献3】ヴォルフガング リーデル(Wolfgang Riedel)著、「フンクチオネーレ ヒェミッシェ フェアニッケルング(Funktionelle chemische Vernickelung)」、オイゲン ゲー ロイチェ(Eugen G.Leuze)出版、1989年
【非特許文献4】コームブス チェー エフ ジュニア(Coombs,C.F.Jr.)「プリンテド サーキット ハンドブック(Printed Circuit Handbook)」マック グラウ−ヒル(Mc Graw−Hill)出版、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の基になる課題は、周知の方法の短所を有さない、ニッケルコーティングのハンダ付け特性の改良するための容易な方法を提供することにある。この課題は、本発明の方法によって解決され、それにより、パラジウム層を浸透法によって酸性のパラジウム塩溶液から析出させることによって、ニッケルコーティングの改良されたハンダ付け特性が達成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の方法によって、下記の長所が達成される。
【0023】
・この方法は、無電流の自触媒析出方法に比べて、浴の操作が容易である。浴の自発的分解の危険は取り除かれる。
・本発明の方法では、電解析出とは対照的に被処理表面の電気的接触が必要ない。互いに絶縁された表面領域は、それによって問題なく処理することができる。
・直流電気析出される層とは対照的に、浸透法によって形成されたパラジウム層は均一な膜厚分布を有する。
・パラジウムを浸透法によってニッケルコーティング上に析出させる際、非常に薄いパラジウム層が形成される。したがって表面上に析出した金属量は非常にわずかである。したがってこの方法は経済的な長所を提供する。
【0024】
パラジウムでコーティングされるニッケルコーティングは、純粋なニッケル製又はすでに先に言及されたように、例えばニッケルの化学的析出で得られるニッケル合金製のコーティングである。本発明の方法に使用するニッケルコーティングは、少なくとも80重量%のニッケルを含む。本発明の好ましい実施形態にしたがって、浸透法によるパラジウム析出のためのニッケルコーティングは、電解析出つや消しニッケルコーティング、化学的析出ニッケル−リンコーティング又は化学的析出ニッケル−ホウ素コーティングである。
【0025】
一般に、ニッケル化された対象は、酸性パラジウム塩溶液中での処理の前後に水で洗浄され、パラジウムでのコーティング加工に続いて乾燥される。ニッケルコーティングの視覚的外観に関しては、通常パラジウム塩溶液の組成(酸の種類及び濃度など)並びに処理条件(温度及び処理時間など)が、ニッケルコーティングが処理によって目に見えるほど腐食されない、則ちニッケルコーティングが処理後に裸眼で確認できるような欠陥を示さないように選択される。
【0026】
酸性パラジウム塩溶液は、生じるパラジウム塩溶液の選択されたpH値で溶解する任意のパラジウム塩を含むことができる。特に好適なものとしては、例えば、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、塩化パラジウム及び/又は酢酸パラジウムである。これらの塩は、市販で入手可能である。
【0027】
パラジウム塩溶液に対するパラジウム濃度は、好ましくは20〜500mg/l、特に好ましくは50〜200mg/lに調整される(それぞれ使用したパラジウム塩の濃度は所望のパラジウム濃度に応じて選択される)。
【0028】
酸の種類及び濃度は、酸性パラジウム塩溶液の製造のために、パラジウム塩溶液がニッケルコーティングを腐食せず、パラジウム塩の還元も引き起こさないように選択される。それに応じて処理時間及び温度は、ニッケルコーティングが目に見えるほど腐食されないように調整される。硫酸、塩酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸及び/又はフェノールスルホン酸などを使用することができる。硫酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、酢酸及び/又はシュウ酸が本発明の方法に特に適する。
【0029】
酸の濃度は、好ましくは5〜100g/lの範囲に調整される。得られるパラジウム塩溶液のpH値は、好ましくは0〜4の範囲にある。本発明の特に好ましい実施形態によれば、低いpH値の場合にパラジウム塩が特に安定であるために、パラジウム塩溶液のpH値は1未満に調整される。
【0030】
パラジウム塩が加水分解する傾向は、pH値の上昇と共に増大する。本発明の方法でpH値を1〜4の範囲の値に調整する場合には、パラジウムイオン用の錯化剤を添加して、パラジウム塩が不溶性化合物へ加水分解するのを比較的長い時間にわたり阻止することが好ましい。
【0031】
パラジウムイオン用の錯化剤は、一般によく知られている。例えばアンモニア及び/又はアミノ化合物を使用することができる。そのような化合物の好ましい例は、メチルアミン、エチレンジアミン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、1,3−ジアミノプロパン、ジエチルアミノプロピルアミン及びテトラキス−(2−イソプロピル)−エチレンジアミンである。
【0032】
パラジウムとアニオン錯体を形成する物質は、同じく錯化剤として本発明の方法に使用することができる。例えばパラジウムイオンを含む塩化物又は臭化物は、[PdCl42-−又は[PdBr42-−錯体を形成する。これらの化合物は、比較的高いpH値で安定であり、それ故、処理溶液の製造に同じく適している。
【0033】
浸透法によるパラジウムの析出は、好ましくは10〜80℃、特に好ましくは室温から60℃までの温度で行われる。ニッケルコーティングを酸性パラジウム塩溶液に曝す時間は、0.5〜10分間の範囲で十分である。
【0034】
本発明の方法は、含鉛ハンダの使用の場合にも、鉛フリーハンダの使用の場合にも、ニッケルコーティングのハンダ付け特性を改良するのに適する。
【0035】
本発明の方法では、パラジウムを浸透法によって析出させる。そのようにして析出したパラジウムの量は非常に少ないので、形成されたパラジウムコーティングは視覚的にほとんど又は全く見られない。析出したパラジウム層を溶解後に分析することによって、析出したパラジウム量が約1〜2mg/dm2量しかないことが算出された。これは、0.0
08〜0.016μmの膜厚に相当する。
【0036】
浸透法によって形成されたパラジウム層が極端に薄いにもかかわらず、本発明の方法がニッケルコーティングのハンダ付け特性を改良することは驚くべきことである。
【実施例】
【0037】
実施例、参照例及び比較例
下記に述べるように異なる方法で、異なるニッケルコーティングで銅板をコーティングした(参照例)。これらのニッケルコーティングをそのハンダ付け特性を試験するか(比較例)、又は本発明による浸透法により酸性パラジウム塩溶液で処理することにより、パ
ラジウム層をその上に析出させた(実施例)。
【0038】
表面のハンダ付け特性は、DIN32506によるつり上げ浸漬試験にしたがって試験した。ハンダ付け特性の試験は、試料の製造直後か、270℃で10分間焼き戻した後に行った。焼き戻すことによって熟成或いはリフローハンダ付け時の実現割合がシミュレートされる。ハンダ付け特性試験用のフラックスとしては、アルコールベースの、ハロゲンフリーのフラックスを使用した(製品「ELI0099」、製造者:フェルダー ゲーエムベーハー(Felder GmbH)ハンダ技術、D−46047オーベルハウゼン、DIN EN29454の型、部品1:2.1.3.A)。DIN32506によるハンダ付け特性試験を実施する際の浸漬速度を、全試験において10mm/秒に、ハンダ浴内の滞留時間を10秒に調整した。ハンダとして軟質ハンダDIN1707−L−Sn60Pbを使用し、ハンダ浴温度を230℃に調整した。代替で、鉛フリーのスズ−銀ハンダでもハンダ付け特性試験を行った(実施例5及び比較例5)。スズ−銀ハンダの組成は、銀が3.5重量%でスズが96.5重量%である。
【0039】
ハンダ付け特性の評価は、表面の視覚的判定によって行った。ハンダ付け特性試験の結果では、試験後の表面の光沢がDIN32506部品2或いは部品3の図1に相当する場合には、非常に良好であると表された。
【0040】
参照例1〜5、実施例1〜5及び比較例1〜5
ニッケルコーティングを、下記に挙げたニッケル浴中で銅板をニッケル化することによって製造した(参照例)。
【0041】
参照例1:
ニッケル浴:
ニッケル(硫酸ニッケルとして) 7g/l
乳酸(92%) 30g/l
酢酸 15g/l
プロピオン酸 2g/l
グリシン 5g/l
水酸化ナトリウム 15g/l
酢酸鉛としての鉛 1mg/l
硫酸カドミウムとしてのカドミウム 1mg/l
次亜リン酸ナトリウム 25g/l
【0042】
銅板を、ニッケル浴中、4.5のpH値、90℃で20分間ニッケル化した。
【0043】
参照例2:
ニッケル浴:
ニッケル(硫酸ニッケルとして) 7g/l
乳酸(92%) 30g/l
酢酸 15g/l
プロピオン酸 2g/l
グリシン 5g/l
水酸化ナトリウム 15g/l
酢酸鉛としての鉛 1mg/l
チオ尿素 2mg/l
次亜リン酸ナトリウム 25g/l
【0044】
銅板を、ニッケル浴中、4.5のpH値、90℃で20分間ニッケル化した。
【0045】
参照例3:
ニッケル浴:
ニッケル(硫酸ニッケルとして) 7g/l
乳酸(92%) 45g/l
酢酸ナトリウム 16g/l
水酸化ナトリウム 15g/l
チオ尿素 2mg/l
次亜リン酸ナトリウム 25g/l
【0046】
銅板を、ニッケル浴中、4.5のpH値、90℃で20分間ニッケル化した。
【0047】
参照例4:
ニッケル浴として、デーエル.−イーエヌゲー.マックス シュレッター ゲーエムベーハー ウント ツェーオー.カーゲー(Dr.−Ing.Max Schloetter GmbH & Co.KG)社(D−73312 ガイスリンゲン/シュタイゲ)で入手可能なSLOTONIP 30−1を使用した。化学ニッケル浴SLOTONIP 30−1は、硫酸ニッケル、還元剤としての次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてのヒドロキシカルボン酸及び安定剤としての酢酸鉛を含む。この浴中で、8〜10重量%のリンを含む化学ニッケル−リンコーティングが析出する。pH値は4.5に、温度は90℃に調整された。ニッケル化のためのこの銅板の処理時間は20分間であった。
【0048】
参照例5:
ニッケル浴として、デーエル.−イーエヌゲー.マックス シュレッター ゲーエムベーハー ウント ツェーオー.カーゲー(Dr.−Ing.Max Schloetter GmbH & Co.KG)社(D−73312 ガイスリンゲン/シュタイゲ)で入手可能なSLOTONIP 30−3を使用した。化学ニッケル浴SLOTONIP 30−3は、硫酸ニッケル、還元剤としての次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてのヒドロキシカルボン酸及び安定剤としての硫黄化合物を含む。この浴中で、7〜8重量%のリンを含む化学ニッケル−リンコーティングが析出する。pH値は4.5に、温度は90℃に調整された。ニッケル−リンコーティングを製造するためのこの銅板の処理時間は20分間であった。
【0049】
実施例1〜5:
参照例1〜5で製造されたニッケルコーティングを水道水で洗浄した。その後ニッケル化銅板を、下記に挙げた酸性パラジウム塩溶液に室温で3分間浸漬した(実施例1〜5)。
【0050】
パラジウム塩溶液は下記の組成を有した:
パラジウム(硝酸パラジウムとして) 200mg/l
硫酸(96%) 100g/l
【0051】
ニッケルコーティングは、パラジウム塩溶液により腐食されず、浸透法によるパラジウム層の析出後のニッケルコーティング表面の外観は、未処理のニッケル化銅板に匹敵するものであった。実施例1〜5による、パラジウムでコーティングしたニッケルコーティングを用いたハンダ付け特性試験の実施において、これらは完全に、非常に均一にハンダでぬらされており、そのためハンダ付け特性を非常に良好と評価した。
【0052】
パラジウム塩溶液中で処理された実施例5のニッケルコーティングは、それ以外で使用されたスズ−鉛ハンダDIN 1707−L−Sn60Pbの代わりに、さらにスズ−銀
ハンダ中でハンダ付け特性試験を受けた(ハンダの組成:銀3.5重量%、スズ96.5重量%)。
【0053】
ハンダ浴温度: 245℃
ハンダ浴中での滞留時間: 10秒
浸漬速度: 10mm/秒
【0054】
パラジウム塩溶液中で処理された板は、ハンダ付け特性の試験後には、完全に、非常に均一にハンダでぬらされていた。
【0055】
実施例5のパラジウム層でコーティングされたニッケルコーティングを硝酸に溶解させ、パラジウム量を定量的に分析した。この分析から、ニッケル上に析出したパラジウム量は1.88mg/dm2に達したことが判明した。
【0056】
比較例1〜5:
それに対して、参照例1〜5で製造されたニッケルコーティングをパラジウム塩溶液中で処理しない場合には(比較例1〜5)、ハンダ付け特性試験の実施において不完全にハンダで覆われただけで、表面は滑らかではなかった。
【0057】
パラジウム塩溶液中で処理せずにハンダ付け特性試験にかけられた、参照例5にしたがって製造されたニッケルコーティング(比較例5)は、スズ−銀ハンダ中でのハンダ付け特性試験でも、不完全にハンダで覆われただけであった。
【0058】
参照例6
銅板を、デーエル.−イーエヌゲー.マックス シュレッター ゲーエムベーハー ウント ツェーオー.カーゲー(Dr.−Ing.Max Schloetter GmbH & Co.KG)社(D−73312ガイスリンゲン/シュタイゲ)で入手可能なニッケル浴NIBODUR GJN中で化学的にニッケル化した。この化学ニッケル浴NIBODUR GJNは、硫酸ニッケル、還元剤としてのジメチルアミノボラン、錯化剤としてヒドロキシカルボン酸、及び安定剤として硫黄化合物を含む。この浴から1〜2重量%のホウ素を含むニッケル−ホウ素コーティングを析出させた。ニッケル化のためにpH値を6.0に、温度を65℃に調節し、処理時間は30分間であった。
【0059】
実施例6
参照例6からのニッケル化銅板を、実施例1〜5と同様のパラジウム塩溶液を用いて室温で3分間処理した。参照例6からの、パラジウムでコーティングされたニッケルコーティングのハンダ付け特性は、270℃で10分間焼き戻した後に評価された。表面は完全にハンダで覆われていて、滑らかであった。
【0060】
比較例6
比較例6では、参照例6にしたがって製造されたニッケルコーティングのハンダ付け特性を、ニッケルコーティング析出直後及び焼き戻し(270℃、10分間)後に試験した。析出直後では、ニッケルコーティングはほぼ完全にハンダでぬらされていたが、実施例6の場合ほど滑らかではなかった。焼き戻しは、パラジウム塩溶液中で処理されていないニッケル表面のハンダ付け結果を非常に悪化させた。表面は不完全にハンダで覆われただけで、もはや滑らかではなかった。
【0061】
参照例7
銅板をつや消しニッケル浴中で電解ニッケル化した。そのために、デーエル.−イーエヌゲー.マックス シュレッター ゲーエムベーハー ウント ツェーオー.カーゲー(
Dr.−Ing.Max Schloetter GmbH & Co.KG)社(D−73312ガイスリンゲン)のニッケル浴NORMAを使用し、この浴は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ホウ酸及び湿潤剤により構成される。
【0062】
実施例7
参照例7からのニッケルコーティングを、実施例1〜6で言及されているものと同じパラジウム塩溶液を用いて処理した。パラジウム塩溶液での処理直後及び焼き戻し(270℃、10分間)後の、パラジウムでコーティングされたニッケルコーティングのハンダ付け特性試験は、申し分のない結果であった。
【0063】
比較例7
比較例7では、参照例7にしたがって製造されたニッケルコーティングのハンダ付け特性を、ニッケルコーティング析出直後及び焼き戻し(270℃、10分間)後に試験した。析出直後はハンダ付け特性は非常に良好で、焼き戻し後は不十分であった。表面はもはや滑らかではなく、不完全にハンダでぬらされただけであった。
【0064】
実施例8〜12
参照例4にしたがって製造(ニッケル浴SLOTONIP 30−1中で化学ニッケル化)されたニッケルコーティングを、下記に示すパラジウム塩溶液で、パラジウム濃度及び酸の種類を変化させて、3分間室温で処理した。パラジウム塩として硝酸パラジウムを使用した。組成及びハンダ試験結果のデータを、表1に示した。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例13:
参照例4にしたがって銅板をニッケル浴SLOTONIP 30−1中で化学ニッケル化することによって製造されたニッケルコーティングを、パラジウム塩溶液中3分間室温で処理した。このパラジウム塩溶液は下記の組成であった。
【0067】
パラジウム(硝酸パラジウムとして) 200mg/l
硫酸(96%) 100g/l
【0068】
この板は、ハンダ付け特性試験後、完全に、そして非常に均一にハンダでぬらされていた。
【0069】
実施例14:
参照例4にしたがって銅板をニッケル浴SLOTONIP 30−1中で化学ニッケル化することによって製造されたニッケルコーティングを、パラジウム塩溶液中3分間室温で処理した。このパラジウム塩溶液は下記の組成であった。
【0070】
パラジウム(酢酸パラジウムとして) 200mg/l
硫酸(96%) 100g/l
【0071】
この板は、ハンダ付け特性試験後、完全に、そして非常に均一にハンダでぬらされていた。
【0072】
実施例15〜18:
参照例4にしたがって銅板をニッケル浴SLOTONIP 30−1中で化学ニッケル化することによって製造されたニッケルコーティングを、パラジウム塩溶液中実施例1のように室温で処理した。その際異なる処理時間を選択した。ハンダ付け特性試験の結果を表2に挙げる。
【表2】

【0073】
実施例19〜22:
参照例4にしたがって銅板をニッケル浴SLOTONIP 30−1中で化学ニッケル化することによって製造されたニッケルコーティングを、パラジウム塩溶液で処理した。パラジウム塩溶液中での処理は、室温で3分間行われた。パラジウム塩濃度は200mg/lであった。溶液を製造するために、硝酸パラジウムを使用した。溶液のその他の成分は、下記の通りである。
【0074】
実施例19:
塩酸(37%) 20ml/l
塩化ナトリウム 5g/l
【0075】
pH値は、水酸化ナトリウムで2.5に調節した。
【0076】
実施例20:
硫酸(96%) 20ml/l
【0077】
pH値は、濃アンモニア溶液で2.3に調節した。
【0078】
実施例21:
硫酸(96%) 5g/l
【0079】
pH値は、エタノールアミンで2.3に調節した。
【0080】
実施例22:
硫酸(96%) 5g/l
【0081】
pH値は、エチルアミンで2.3に調節した。
【0082】
実施例19〜22のハンダ付け特性試験は、ニッケルコーティングのパラジウム塩溶液
での処理直後に行った。ハンダ付け特性試験の結果は、全ての試料で非常に良好であった。
【0083】
実施例23:
実施例20に言及されているようにニッケル化された銅板を、実施例20と同様の組成のパラジウム塩溶液中で3分間処理し、温度を、例えば20から50℃へ変化させて調節した。
【0084】
ハンダ付け特性を、処理直後に試験した。実施例19〜22でのハンダ付け特性試験の結果は、非常に良好であった。
【0085】
実施例24:
参照例4にしたがって製造されたニッケルコーティングを、実施例20のパラジウム塩溶液で処理した。このパラジウム塩溶液のpH値を4.0に、処理温度を80℃に調節した。処理時間は3分間であった。
【0086】
ハンダ付け特性試験の結果は非常に良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケルコーティング上に、浸透法によって酸性パラジウム塩溶液からパラジウム層を析出させることを特徴とする、ニッケルコーティングのハンダ付け特性の改良方法。
【請求項2】
酸性パラジウム塩溶液を製造するために、硫酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、酢酸及び/又はシュウ酸を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
パラジウム塩溶液のpH値を0〜4に調整することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
パラジウム塩溶液のpH値を1未満に調整することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
パラジウム塩溶液のpH値を1〜4の範囲に調整することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項6】
パラジウム塩溶液に、パラジウムイオン用の少なくとも1つの錯化剤を添加することを特徴とする、請求項1ないし5のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
錯化剤として塩化物及び/又は臭化物を使用することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
錯化剤として、アンモニア及び/又はアミノ化合物を使用することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項9】
アミノ化合物が、メチルアミン、エチレンジアミン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、1,3−ジアミノプロパン、ジエチルアミノプロピルアミン及びテトラキス−(2−イソプロピル)−エチレンジアミンから選択されることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
浸透法によってパラジウム析出のためのニッケルコーティングが、電解析出つや消しニッケルコーティング、化学析出ニッケル−リンコーティング及び化学析出ニッケル−ホウ素コーティングから選択されることを特徴とする、請求項1乃至9のうちいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−506836(P2008−506836A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520746(P2007−520746)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007618
【国際公開番号】WO2006/005605
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(504324730)デーエル.−イーエヌゲー.マックス シュレッター ゲーエムベーハー ウント ツェーオー.カーゲー (2)
【Fターム(参考)】