ニューカッスル病ウイルスをベクターとするトリワクチン
本発明は、操作されたニューカッスル病ウイルス(NDV)ワクチンまたは組成物を包含する。前記ワクチンまたは組成物は組換えワクチンであり得る。本発明はまた、トリ病原体抗原、より具体的にはトリインフルエンザタンパク質、エピトープまたは免疫原をコードし、これを発現する組換えベクターを包含する。そのようなワクチンまたは組成物を用いて、動物(特にトリ)を疾病から防御することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による本明細書への包含
本出願は米国仮特許出願61/166,481号(2009年4月3日出願)の権利を主張する。
本発明は、NDVベクタートリワクチンまたは組成物、具体的にはトリインフルエンザワクチンを包含する。本ワクチンは操作されたトリワクチンであり得る。
【背景技術】
【0002】
近年のいくつかの研究は、トリの疾病のためのワクチンベクターとして使用し得るニューカッスル病ウイルス(NDV)の潜在能力を強調している(Krishnamurthy et al., Virology 278, 168-182,2000;Huang et al., J. Gen. Virol. 82, 1729-1736, 2001;Nakaya et al., J. Virol. 75, 11868-11873, 2001;Park et al. PNAS 103, 8203-8208, 2006;Veits et al PNAS 103, 8197-8202, 2006;Ge et al. J. Virol. 81, 150-158, 2007;Romer-Oberdorfer et al. Vaccine 26, 2307-2313, 2008)。
NDVはパラミクソウイルス科、アヴラウイルス属に属する。NDVは、気道および胃腸管、卵管で、さらにいくつかの単離株については神経系で複製する。伝染は空気原性であり、さらに経口ルートおよび糞便ルートによる。NDVは、全ての鳥類種を冒す高接触伝染性の致死的疾病を引き起こし、さらにいくつかの哺乳動物種に感染し得る。この疾病は、ウイルス株および宿主の種に応じて臨床的に明白でないものから病毒性の高い形態まで変動し得る。NDV株が示す連続的な病毒性スペクトルによって以下の3つの異なる病理型にNDV株を分類することができる:レントジェニック、メゾジェニックおよびベロジェニック(Alexander, D. J., Diseases of Poultry, Iowa State Uni. Press, Ames IA, 541-569, 1997)。レントジェニック株は、成体ニワトリに通常は疾病を引き起こさず、米国および他の国々の家禽産業で生ワクチンとして広くもちいられている。中間的な病毒性を有するウイルスはメゾジェニックと称され、一方、高い死亡率をもたらすウイルスはベロジェニックと称される。この疾病は世界中に分布し、産業的家禽生産にとって大きな持続的脅威であり続けている。
【0003】
NDVゲノムはほぼ15kbの非分節マイナス鎖RNAである。このゲノムRNAは、以下の順序で以下のタンパク質をコードする6つの遺伝子を含んでいる:ヌクレオキャプシドタンパク質(NP)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、融合タンパク質(F)、ヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)および大ポリメラーゼタンパク質(L)。未知の機能をもつ2つのまた別のタンパク質VおよびWが、P遺伝子転写時にRNA編集によって生成される(Steward et al., 1993, Journal of General Virology 74:2539-2547)。
近年確立された、非分節マイナスRNAウイルスをクローン化されたcDNAから完全に回収する方法の開発によって、このウイルスグループ(NDVを含む)を遺伝的に操作する可能性が開かれた(Conzelmann, K.K., Ann. Rev. Genet. 32, 123-162, 1998; Roberts and Rose, Virology 247, 1-6, 1998)。このユニークな分子遺伝学的方法論(“リバースジェネティクス”と称される)は、種々のウイルスコード遺伝子の機能を解明するだけでなく(Palese et al., PNAS 93, 11354-11358, 1996; Nagai, Y., Rev. Med. Virol. 9, 83-99, 1999)、異種遺伝子を発現するためにこれらのウイルスを使用することを可能にする手段も提供する(Bukreyev et al., J. Virol. 70, 6634-6641, 1996;Mebatsion et al., PNAS 93, 7310-7314, 1996;Schnell et al., PNAS 93, 11359-11365, 1996;Hasan et al., J. Gen. Virol. 78, 2813-2820, 1997;He et al., Virology 237, 249-260, 1997;Sakai et al., FEBS Lett. 45, 221-226, 1999)。前記によって改善ワクチンおよびワクチンベクターを作製する方法が提供される。
【0004】
NDVのレントジェニックなワクチン株(LaSota)を土台にした、クローン化cDNAに由来する回収系が2つの別個のグループによって1999年に同時に報告された(Peeters et al., 1999;Romer-Oberdorfer et al., 1999)。最初に報告された系では、LaSota株(ATCC-VR699)由来の完全長NDV cDNAが、T7 DNA依存RNAポリメラーゼプロモーターを含むpOLTV5転写ベクターでアッセンブリングされた。個々のNDVトランスクリプターゼ複合体(NP、PおよびL)クローンは真核細胞発現ベクターでクローニングされた。同時トランスフェクションプロトコルによって、感染単層培養にいくつかの感染中心が生成された(Peeters et al., J. Virol. 73, 5001-5009, 1999)。クローン化cDNAからレントジェニックNDVを回収するために報告された第二の系は、完全長のアンチゲノム発現プラスミドおよびサポートプラスミドをアッセンブリングする(Romer-Oberdorfer et al., Journal of General Virology, 80, 2987-2995, 1999)のと本質的に同じ戦略を用いた。レントジェニックなNDVのHitchner B1(Nakaya et al. 2001)またはLaSota株(Huang et al. 2001)を回収するために、最近他の系が開発された。組換えメゾジェニックNDVの回収に利用可能な唯一の系がKurishnamurthy(2000)によって記載された。この系は、トランスフェクションにワクシニアウイルス組換え体(MVA)およびHEP-2細胞を利用した。メゾジェニック株Beaudette Cの完全長クローンおよび同じ株由来のサポートプラスミド(N、PおよびL)がトランスフェクションに用いられた。CATレポーター遺伝子をコードする追加の転写ユニットがHNおよびL遺伝子の間に配置された。CAT遺伝子を発現するrNDVの増殖は遅く、ウイルスは弱毒化された。CAT遺伝子は細胞培養で数継代の間安定的に発現された。
【0005】
トリインフルエンザ(AIV)(時にアビアンフルと呼ばれ、一般的にはトリインフルと認識されている)は、鳥類に順化したインフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザを意味する。AIVは、オルトミクソウイルス科に属する分節状一本鎖マイナスセンスのRNAウイルスで、A型インフルエンザウイルスに分類される。A型ウイルスは動物およびヒトインフルエンザのもっとも頻度の高い原因因子である。この型は多数の株または亜型で発生し、それらは2つの表面脂質エンベロープ膜タンパク質、ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)を基準にして区別される。HAは宿主細胞へのウイルスの進入を促進し、NAは感染細胞の子孫ウイルスの放出を助ける(de Jong et al., J Clin Virol. 35(1):2-13, 2006)。インフルエンザA型ウイルスは、それらの固有のHAおよびNAの内容を基準に亜型に分類される。16の異なるHA亜型および9の異なるNA亜型が存在する。HAおよびNAタンパク質の多くの異なる組み合わせが可能である。インフルエンザAウイルスの亜型は、それらのHAおよびNA表面タンパク質にしたがって名付けられる。例えば、“H7N2ウイルス”は、H7亜型のHAタンパク質およびN2亜型のNAタンパク質を有するインフルエンザA亜型を指す。同様に、“H5N1”ウイルスはH5亜型のHAおよびN1亜型のNAを有する。H5N1亜型は、アジア、ロシア、中東、ヨーロッパおよびアフリカの最近の流行と明確に関係している(Olsen et al., Science 21;312(5772):384-8, 2006)。
【0006】
インフルエンザAウイルスは、ヒト、ブタ、ウマ、アザラシ、クジラ、家禽、ネコ、イヌ、イタチおよび他の動物に感染することができるが、野鳥がそれらの天然の宿主である。水鳥が主要なインフルエンザ保菌動物を構成し、それらからウイルス系列が進化しそれらの宿主に順化した(例えばヒト、ブタおよびウマインフルエンザ)。宿主特異性は絶対的ではなく、高度に病原性のトリインフルエンザ(HPAI)H5N1亜型のヒト、ネコ、イヌおよびブタ種への感染能力によって例証されるように、種間伝染が発生し得る。
高度に病原性のインフルエンザAウイルス亜型のH5N1ウイルスは、大流行の潜在的脅威として地球規模で懸念される新たに出現したトリインフルエンザウイルスである。H5N1は、アジア、ヨーロッパおよびアフリカ中のその数が増え続けている多くの国々で数百万の家禽を殺している。B型インフルエンザと異なり、A型インフルエンザは抗原性シフトを生じ(少なくとも2つのウイルス株が一緒になって新規な亜型を形成する)、疫学専門家、感染症研究者および他の健康関連専門家は、ヒトインフルエンザウイルスとトリインフルエンザ(特にH5N1)の同時存在が種特異的ウイルス間での遺伝的素材の交換の機会を提供し、ヒトに容易に伝染し致死性である新規な強毒インフルエンザ株を作出する恐れがあることを深刻に懸念している(Food Safety Research Information Office, “A Focus on Avian Influenza”. 2006年5月作成、2007年11月更新)。
H5N1の最初の流行が1997年に発生して以来、臨床的に重大で致死的なヒトの感染をもたらすHPAI H5N1のトリからヒトへの伝染の数は増え続けている。しかしながら、トリとヒトの間に存在する大きな種の障壁があるので、ウイルスは簡単にはヒトまで到達しない。数百万の鳥類がその発見以来このウイルスに感染したが、インドネシア、ラオス、ベトナム、ルーマニア、中国、トルコおよびロシアをまとめておよそ200人がトリインフルエンザのために死亡しただけである。
動物(ヒトを含む)のAIVに対する感受性を考慮すれば、AIVを防ぎ動物を防御する手段は必須である。したがって、インフルエンザに対する有効なワクチンが希求される。
本出願中のいずれの記録の引用または認定も、そのような記録が本発明に対する先行技術として利用可能であることを容認するものではない。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、部分的には、ニューカッスル病ウイルス(NDV)の腸向性AVINEW(商標)株によって発現されるAIVヘマグルチニン遺伝子はトリで高度に免疫原性であるという出願人らの発見に基づいている。
本発明は、NDVをベクターとするトリワクチンまたは組成物に関し、前記は、ある種のトリ抗原(より具体的にはトリインフルエンザ抗原)を保持しこれを発現する、固有の腸向性を有する操作NDVベクターの有効量および医薬的または獣医的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクルを含むことができる。前記腸向性NDVは、メリアル社(Merial Limited)により市販されているAVINEW(商標)改変生ワクチンのNDV株であり得る。
トリインフルエンザ抗原はヘマグルチニンであり得る。トリインフルエンザHA抗原はH5亜型のHAであり得る。
本発明はまたトリをワクチン免疫する方法に関し、前記方法は、有効量の組換えNDVベクターおよび医薬的または獣医的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクルを含むことができるワクチンの有効量をトリに投与する工程を含む。投与は、経卵接種(in ovo)、点眼、スプレー、飲み水、または非経口(皮下、筋肉内、経皮)投与によることができる。
本発明は、Avinew NDVのゲノムを改変し操作Avinew NDVを作製する方法を提供し、前記方法は、Avinew NDVゲノムに単離ポリヌクレオチドを前記Avinew NDVゲノムの非必須領域に導入する工程を含む。前記非必須領域は、非必須タンパク質をコードするオープンリーディングフレームもしくはオープンリーディングフレームの非必須部分;またはAvinew NDVゲノムのNP遺伝子の上流、もしくは2つの遺伝子の間(遺伝子間領域)、もしくはL遺伝子の下流に位置する非翻訳(または非コード)領域であり得る。
【0008】
本発明はさらにプライム-ブーストプロトコルを用いるワクチンまたは組成物の投与に関する。本発明は、本発明のワクチン(有効量の操作NDVベクターおよび医薬的または獣医的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクルを含むことができる)の投与の前にトリインフルエンザワクチンでトリをプライミングすることに関する。或いは、本発明はさらに、トリインフルエンザワクチンの投与の前に本発明のワクチン(少なくとも1つのトリインフルエンザ抗原を発現する操作NDVベクターおよび医薬的または獣医的に許容できる担体)でプライミングすることに関する。
本発明はさらに免疫応答を誘引または誘導する方法を実施するためのキットを包含し、前記キットは、組換えインフルエンザの免疫学的組成物もしくはワクチン、または不活化免疫学的組成物もしくはワクチンのいずれか1つおよび前記方法を実施するための指示書を含むことができる。
したがって、以前に公知であった生成物、前記生成物の作製方法、または前記生成物を使用する方法のいずれも本発明の範囲内に包含しないことは本発明の目的であり、したがって、出願人らはその権利を留保し、これにより以前に公知であった生成物、プロセスまたは方法のいずれの権利も放棄を明言する。さらにまた、本発明は、USPTO(35 U.S.C. セクション112、第一パラグラフ)またはEPO(EPCの83章)の記載説明および権限付与要件に適合しない、いずれの生成物、プロセス、または前記生成物の作製方法、または前記生成物の使用方法も本発明の範囲内に包含されず、したがって、出願人らはそれらについての権利を留保するとともに、これにより以前に記載されたいずれの生成物、前記生成物の作製プロセス、または前記生成物の使用方法を本発明から除外する。
前記の実施態様および他の実施態様は以下の詳細な説明に記載され、または前記説明から明白であり、前記説明に包含されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】図1Aは完全長NDVゲノムの遺伝地図を示す。
【図1B】図1Bは、完全長NDVゲノムの2つの代表的なトランスジーン挿入部位にインフルエンザHAを挿入した2つの操作NDVの遺伝地図を示す図である。
【図1C】図1CはNDVリバースジェネティクス系の流れ図の例である。
【図1D】図1Dは、NDVリバースジェネティクスを用いて操作NDV感染性粒子を回収する方法を示す。
【図2】リバースジェネティクス開発のための転写プラスミドでのAVINEW全ゲノムのクローニングおよびPとMの間のトランスジーンの容易なクローニングを可能にする固有の制限部位(PacIおよびFseI)の挿入を示す模式図である。
【図3】プラスミドpIV029のプラスミドマップを示す。
【図4a】4a−4oはプラスミドpIV029の挿入物の配列を提供する。斜字体は非AVINEW(商標)配列に該当し、さらに下線付き斜字体はPとM遺伝子の間の内部PacI-FseI挿入に該当し;斜字体はHDVリボザイム(3'末端)に該当し、さらに下線付き斜字体はT7プロモーター(5’末端)およびターミネーター(3’末端)に該当する。転写開始配列(GS=Gene Start(遺伝子開始点))および転写停止配列(GE=Gene End(遺伝子終点))がマップに示されてあり、配列には下線が付されている。円で囲んだT(図4cの3190位)は取り囲まれたヌクレオチドに該当し(PacI-FseI挿入の前)、これは転写ベクターへアッセンブリングされたAVINEW(商標)ゲノム中のT(配列番号:24の3190位)である(TはPacI-FseI制限部位を作出するために用いたプライマーに由来する)。コンセンサスAVINEW(商標)ゲノム(配列番号:1)では、対応する3150位のヌクレオチドはCである。
【図4b】図4a続き。
【図4c】図4b続き。
【図4d】図4c続き。
【図4e】図4d続き。
【図4f】図4e続き。
【図4g】図4f続き。
【図4h】図4g続き。
【図4i】図4h続き。
【図4k】図4i続き。
【図4l】図4k続き。
【図4m】図4l続き。
【図4n】図4m続き。
【図4o】図4n続き。
【図5】プラスミドpIV32のプラスミドマップを示す。
【図6】プラスミドpIV33のプラスミドマップを示す。
【図7】プラスミドpIV034のプラスミドマップを示す。
【図8】プラスミドpNS151のプラスミドマップを示す。
【図9】NDV挿入カセットによりAIV HA遺伝子をNDVゲノムに導入する模式的方法を示す。
【図10】プラスミドpIV039のプラスミドマップを示す。
【図11A】11Aは操作されたNDV vAVW02によるHA発現を示す。挿入物を含まないvAVW01を陰性コントロールとして用いる。HA発現は、ウイルス接種発育卵の尿嚢液(図11Aの左パネル)で、または感染CHO細胞溶解物(図11Aの右パネル)でウェスタンブロットによって検出される。
【図11B】11Bは操作されたNDV vAVW02によるHA発現を示す。挿入物を含まないvAVW01を陰性コントロールとして用いる。HA発現は、感染CHO細胞において抗H5陽性であるニワトリ血清を用いる感染細胞の免疫蛍光によって(図11B)検出される。
【図12】DNAおよびタンパク質配列に割り当てられた配列番号を示す表である。
【図13】ワクチン免疫SPF鶏の種々のグループの1日齢子孫ニワトリの抗MDVおよび抗AI(H5N1 Cl2またはH5N9LP抗原のどちらかに対するもの)母親由来抗体(MDA)のHI力価を示す。
【図14】操作NDVにより誘導されるトリインフルエンザ防御をSPFのニワトリで評価するためのワクチン免疫/チャレンジのタイムコースおよびプロトコルを示す。
【図15】day-of-ageにvAVW01(v01または01;挿入遺伝子無し)またはvAVW03(v03または03;AI HA挿入)でワクチン免疫した、無MDA(SPF)またはNDVのMDA(21A)、またはNDVおよびH5のMDAまたは、H5のみのNDA(21B)をもつニワトリの生存率のカイネティクス図を示す。
【図16】vAVW01またはvAVW03でワクチン免疫したMDAをもたない(SPF)またはMDAを有するニワトリの口腔スワブ(綿棒拭き取り標本)(AおよびC)および総排泄腔スワブから出るAIVの比較を示す。CおよびDの結果は、チャレンジ後の種々の時点における、vAVW01-免疫ニワトリとvAVW03-免疫ニワトリのHPAI H5N1チャレンジによるウイルス排出の平均レベルのlog10比として表されている。
【図17A】ワクチン免疫後(D21)およびチャレンジ後(D35)のvAVW03誘導AIV HI力価(H5N9(A)クレード2.2(B)抗原を使用)に対するNDV MDAの影響を示す(SPF:無MDA;NDV:抗NDV MDA)。図に記入した数字は、陽性血清数/検査総数に対応する。NDV MDAの存在下では、NDV MDAをもたないSPF鶏と比較して、AIV HI力価はワクチン免疫後により高かったが、チャレンジ後は増加しなかった。
【図17B】ワクチン免疫後(D21)およびチャレンジ後(D35)のvAVW03誘導AIV HI力価(H5N1クレード2.2(B)抗原を使用)に対するNDV MDAの影響を示す(SPF:無MDA;NDV:抗NDV MDA)。図に記入した数字は、陽性血清数/検査総数に対応する。NDV MDAの存在下では、NDV MDAをもたないSPF鶏と比較して、AIV HI力価はワクチン免疫後により高かったが、チャレンジ後は増加しなかった。
【図18】無MDA(SPF)、AI H5N9およびNDVのMDA(H5N9+NDV)、NDVのMDA(NDV)、またはAI H5N1のMDA(H5N1)をもつニワトリをvAVW01またはvAVW03でワクチン免疫した後のD21におけるNDV HI力価を示す。NDV MDAはvAVW01またはvAVW03で誘導されるNDV HI力価のレベルにマイナスの影響をもたなかった。
【図19】AVINEW(G1)、vAVW02(G2)およびvAVW03(G3)でD0およびD21に2回ワクチン免疫した後のNDV HI力価を示す。
【図20】vAVW02(G2)またはvAVW03(G3)でD0およびD21に2回ワクチン免疫した後のAI H5N1 HI力価を示す。
【図21】vAVW02(G2)またはvAVW03(G3)でD0およびD21に2回ワクチン免疫した後のAI H5N1 SN力価を示す。
【図22A】22Aは、vAVW03の1回(D0)または2回(D0およびD14)の点眼投与によって誘導されたNDV HI力価を示す。
【図22B】22Bは、vAVW03の1回(D0)または2回(D0およびD14)の点眼投与によって誘導されたAIV SN力価を示す。
【図23A】23A−23Dは、ワクチン非接種(グループ1)またはワクチン接種して(グループ2:D0にvAVW03を1回投与;グループ3:D0およびD14にvAVW03を2回投与;グループ4:D0にvFP89およびD14にvAVW03D28でプライム-ブースト)、HPAI H5N1単離株で28日目にチャレンジしたMuscovyアヒルのヒナの口腔咽頭スワブ(AおよびC)および総排泄腔スワブ(BおよびD)のウイルス負荷(AおよびB)および陽性サンプルのパーセンテージ(CおよびD)のカイネティクスを示す。
【図23B】23A−23Dは、ワクチン非接種(グループ1)またはワクチン接種して(グループ2:D0にvAVW03を1回投与;グループ3:D0およびD14にvAVW03を2回投与;グループ4:D0にvFP89およびD14にvAVW03D28でプライム-ブースト)、HPAI H5N1単離株で28日目にチャレンジしたMuscovyアヒルのヒナの口腔咽頭スワブ(AおよびC)および総排泄腔スワブ(BおよびD)のウイルス負荷(AおよびB)および陽性サンプルのパーセンテージ(CおよびD)のカイネティクスを示す。
【図23C】23A−23Dは、ワクチン非接種(グループ1)またはワクチン接種して(グループ2:D0にvAVW03を1回投与;グループ3:D0およびD14にvAVW03を2回投与;グループ4:D0にvFP89およびD14にvAVW03D28でプライム-ブースト)、HPAI H5N1単離株で28日目にチャレンジしたMuscovyアヒルのヒナの口腔咽頭スワブ(AおよびC)および総排泄腔スワブ(BおよびD)のウイルス負荷(AおよびB)および陽性サンプルのパーセンテージ(CおよびD)のカイネティクスを示す。
【図23D】23A−23Dは、ワクチン非接種(グループ1)またはワクチン接種して(グループ2:D0にvAVW03を1回投与;グループ3:D0およびD14にvAVW03を2回投与;グループ4:D0にvFP89およびD14にvAVW03D28でプライム-ブースト)、HPAI H5N1単離株で28日目にチャレンジしたMuscovyアヒルのヒナの口腔咽頭スワブ(AおよびC)および総排泄腔スワブ(BおよびD)のウイルス負荷(AおよびB)および陽性サンプルのパーセンテージ(CおよびD)のカイネティクスを示す。
【図24A】24A−24Dは、ワクチン非接種(グループ1)またはワクチン接種して(グループ2:D0にvAVW03を1回投与;グループ3:D0およびD14にvAVW03を2回投与;グループ4:D0にvFP89およびD14にvAVW03D28でプライム-ブースト)、HPAI H5N1単離株で42日目にチャレンジしたMuscovyアヒルのヒナの口腔咽頭スワブ(AおよびC)および総排泄腔スワブ(BおよびD)のウイルス負荷(AおよびB)および陽性サンプルのパーセンテージ(CおよびD)のカイネティクスを示す。
【図24B】24A−24Dは、ワクチン非接種(グループ1)またはワクチン接種して(グループ2:D0にvAVW03を1回投与;グループ3:D0およびD14にvAVW03を2回投与;グループ4:D0にvFP89およびD14にvAVW03D28でプライム-ブースト)、HPAI H5N1単離株で42日目にチャレンジしたMuscovyアヒルのヒナの口腔咽頭スワブ(AおよびC)および総排泄腔スワブ(BおよびD)のウイルス負荷(AおよびB)および陽性サンプルのパーセンテージ(CおよびD)のカイネティクスを示す。
【図24C】24A−24Dは、ワクチン非接種(グループ1)またはワクチン接種して(グループ2:D0にvAVW03を1回投与;グループ3:D0およびD14にvAVW03を2回投与;グループ4:D0にvFP89およびD14にvAVW03D28でプライム-ブースト)、HPAI H5N1単離株で42日目にチャレンジしたMuscovyアヒルのヒナの口腔咽頭スワブ(AおよびC)および総排泄腔スワブ(BおよびD)のウイルス負荷(AおよびB)および陽性サンプルのパーセンテージ(CおよびD)のカイネティクスを示す。
【図24D】24A−24Dは、ワクチン非接種(グループ1)またはワクチン接種して(グループ2:D0にvAVW03を1回投与;グループ3:D0およびD14にvAVW03を2回投与;グループ4:D0にvFP89およびD14にvAVW03D28でプライム-ブースト)、HPAI H5N1単離株で42日目にチャレンジしたMuscovyアヒルのヒナの口腔咽頭スワブ(AおよびC)および総排泄腔スワブ(BおよびD)のウイルス負荷(AおよびB)および陽性サンプルのパーセンテージ(CおよびD)のカイネティクスを示す。
【図25】トリインフルエンザHAタンパク質間の配列アラインメントおよびアミノ酸レベルの配列同一性パーセンテージを提供する。
【図26】トリインフルエンザHAタンパク質間の配列アラインメントおよび核酸レベルの配列同一性パーセンテージを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明(実施例により提供されるが、ただし記載したこの具体的な態様にのみ本発明を限定しようとするものではない)は、添付の図面と一緒にして最善の理解が得られよう。
本開示では、特に特許請求の範囲では以下に注意されたい。例えば「含む」(“comprises”、“comprised”、“comprising”など)の用語は、米国特許法でそれらに帰された意味を有し、例えばそれら用語は「含有する」(“includes”、“included”、“including”など)を意味することができる。さらに、例えば「本質的になる」(“consisting essentially of”、および“consists essentially of”)のような用語は、米国特許法でそれらに帰された意味を有し、例えばそれらは、明示的に列挙されていない成分を許容するが、先行技術で見出されるかまたは本発明の基本的もしくは新規な特徴に影響を与える成分は排除する。
特段の説明がなければ、本明細書で用いられる全ての技術用語および学術用語は、本開示が属する分野で通常の技量を有する者が一般的に認識する意味と同じ意味を有する。単数用語の“a”、“an”および“the”は、文脈が明らかにそうでないことを示していないかぎり複数の対応物を含む。同様に、「又は」(“or”)という用語も、文脈が明らかにそうでないことを示していないかぎり「および」(“and”)を含むことが意図される。
【0011】
本発明では、AVINEWワクチン株がベクターとして用いられる。AVINEWは、世界中で広くもちいられている生NDVワクチン(Merial Limited)である。このワクチン株は天然には非病毒性であり、呼吸系および腸の二重向性を示す。さらにまた、AVINEW株はアヒルに感染し得るNDV遺伝子グループ(クラスII、遺伝子型I)に属する。LaSota(その向性は本質的に気道に向いている)とは対照的に、AVINEW株は呼吸器系副反応を誘導しない。
本発明は、操作されたNDVベクターの有効量および医薬的または獣医的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクルを含むことができるトリワクチンに関する。
本発明は、動物(例えばトリ)で免疫学的応答を誘引するタンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原を発現する任意の操作されたNDVベクターを包含する。前記タンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原は、インフルエンザタンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原、例えば、動物(例えばトリ)で応答を誘引、誘導または刺激するタンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたはそのフラグメント(ただしこれらに限定されない)であり得る。
“動物”とは哺乳動物、鳥類などが意図される。動物または宿主には哺乳動物およびヒトが含まれる。前記動物は、ウマ科の動物(例えばウマ)、イヌ科の動物(例えばイヌ、オオカミ、キツネ、コヨーテ、ジャッカル)、ネコ科の動物(例えばライオン、トラ、イエネコ、野生ネコ、他の大型のネコ類および、他のネコ科の動物(チーターおよびオオヤマネコを含む))、ヒツジ類(例えばヒツジ)、ウシ科の動物(例えばウシ)、ブタ類(例えばブタ)、鳥類(例えばニワトリ、アヒル、ガン、シチメンチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、ダチョウ、エミュー、およびヒクイドリ)、霊長類(例えば原猿類、メガネザル、有尾猿類、テナガザル、無尾猿類)、および魚類から成る群から選択できる。“動物”という用語には、胚および胎児期を含む全ての発育段階の個々の動物が含まれる。
【0012】
ある実施態様では、トリインフルエンザ免疫学的組成物またはワクチンは、操作されたベクターおよび医薬的または獣医的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクルを含む。前記操作されたベクターは、インフルエンザタンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原をコードするポリヌクレオチドを含むことができるNDV発現ベクターであり得る。前記インフルエンザタンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原は、ヘマグルチニン、マトリックスタンパク質、ノイラミニダーゼ、非構造タンパク質、核タンパク質、ポリメラーゼ、また前記の任意のフラグメントであり得る。
別の実施態様では、インフルエンザタンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原は、インフルエンザに感染したトリまたはトリインフルエンザ株に由来し得る。トリインフルエンザタンパク質、抗原、エピトープまたは免疫原は、ヘマグルチニン(HA)(例えばHA前駆体、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、またはH16タンパク質(ただしこれらに限定されない))、マトリックスタンパク質(例えばマトリックスタンパク質M1またはM2(ただしこれらに限定されない))、ノイラミニダーゼ(例えば、NA1、NA2、NA3、NA4、NA5、NA6、NA7、NA8または、NA9(ただしこれらに限定されない))、非構造(NS)タンパク質(例えばNS1またはNS2(ただしこれらに限定されない))、核タンパク質(NP)およびポリメラーゼ(例えばPAポリメラーゼ、PB1ポリメラーゼ1またはPB2ポリメラーゼ2(ただしこれらに限定されない))であり得る。
【0013】
トリインフルエンザ抗原は、ヘマグルチニン、例えばH5 HAであり得る。ある実施態様では、H5はH5N1 A/シチメンチョウ/トルコ1/2005(クレード2.2)、A/ニワトリ/インドネシア/7/2003(クレード2.1)、A/アヒル/ラオス/3295/2006(クレード2.3)、A/ニワトリ/西ジャワ/PWT-WIJ/2006(クレード2.1)株から単離される。
別の実施態様では、トリインフルエンザタンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原は、インフルエンザに感染したトリまたは任意の亜型の最近の単離株に由来するトリインフルエンザ株に由来し得る。
本明細書で用いられるように、“抗原”または“免役原”は、特異的な免疫応答を宿主動物において誘導する物質を意味する。抗原は、ある生物体全体(殺滅、弱毒または生);ある生物のサブユニットまたは一部分;免疫原性特性を有するエピトープ、ポリペプチド、ペプチド、タンパク質またはそのフラグメントを発現する挿入物を含む組換えベクター;宿主動物に提供されたとき免疫応答を誘導することができる核酸の断片またはフラグメント;タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、エピトープ、ハプテン、または前記の任意の組合せを含むことができる。或いは、免疫原または抗原は毒素または抗毒素を含むことができる。
本明細書で用いられる“免疫原性タンパク質またはペプチド”という用語にはまた、いったん宿主に投与されたら、それに対して誘導された液性および/または細胞性の免疫応答タイプを引き起こすことができるという意味で免疫学的に活性であるペプチドおよびポリペプチドが含まれる。好ましくは、タンパク質フラグメントは、全タンパク質と実質的に同じ免疫学的活性を有するものである。したがって、本発明のタンパク質フラグメントは少なくとも1つのエピトープまたは抗原決定基を含むか、実質的に前記から成るか、または前記から成る。エピトープ(抗原決定基としてもまた知られている)という用語は、免疫系によって認識される巨大分子の部分であり、液性タイプ(B細胞)および/または細胞性タイプ(T細胞)の免疫反応を誘導することができる。
【0014】
“免疫原性タンパク質またはペプチド”という用語は、当該ポリペプチドが機能して本明細書に定義した免疫学的応答を生じるかぎり、当該配列の欠失、付加および置換もまた意図される。これに関して、特に好ましい置換は、一般的に性質として保存的、すなわちアミノ酸ファミリー内で生じる置換であろう。例えばアミノ酸は一般的に以下の4つのファミリーに分割される:(1)酸性−アスパラギン酸およびグルタミン酸;(2)塩基性−リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性−グリシン、アスパラギン、グルタミン、シスチン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンはときに芳香族アミノ酸として分類される。ロイシンのイソロイシンによる(またはその逆の)隔離的置換、アスパラギン酸のグルタミン酸による(またはその逆の)隔離的置換、スレオニンのセリンによる(またはその逆の)隔離的置換、またはあるアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸による保存的置換は生物学的活性に大きな影響を与えないであろうということは合理的に推測される。したがって、対応分子と実質的に同じアミノ酸配列を有するが、当該タンパク質の免疫原性に実質的に影響を及ぼさない小さなアミノ酸置換を有するタンパク質は、当該対応ポリペプチドの規定範囲内である。
【0015】
エピトープという用語は、免疫系によって認識される巨大分子の部分であり、液性タイプ(B細胞)および/または細胞性タイプ(T細胞)の免疫反応を誘導することができる。前記用語はまた、“抗原決定基”または“抗原性決定部位”と互換的に用いられる。同じエピトープを認識する抗体は、ある抗体が別の抗体と標的抗原との結合を阻止する能力を示す簡単な免疫アッセイで区別することができる。
ある組成物またはワクチンに対する“免疫学的応答”は、宿主における問題の組成物またはワクチンに対する細胞媒介および/または抗体媒介免疫応答の発達である。通常は、“免疫学的応答”には、1つまたは2つ以上の以下の作用(ただしこれらに限定されない)が含まれる:問題の組成物またはワクチンに含まれる1つの抗原または複数の抗原に対して特異的な抗体、B細胞、ヘルパーT細胞および/または細胞傷害性T細胞の産生。好ましくは、新規感染に対する抵抗性が強化されるか、および/または疾病の臨床的重篤性が軽減されるように、宿主は治療的または防御的免疫学的応答を示すであろう。そのような防御は、通常感染宿主が示す症状の軽減または消失、回復期間の短縮、および/または感染宿主におけるウイルス力価の低下によって提示されるであろう。
【0016】
本明細書で用いられる“免疫原性”タンパク質またはポリペプチドはまた、上記に記載の免疫学的応答を誘引するアミノ酸配列を意味する。本明細書で用いられる“免疫原性”タンパク質またはポリペプチドには、タンパク質の完全長配列、そのアナローグ、またはその免疫原性フラグメントが含まれる。“免疫原性フラグメント”とは、1つまたは2つ以上のエピトープを含み、したがって上記に記載した免疫学的応答を誘引するタンパク質のフラグメントを意味する。そのようなフラグメントは、当分野で公知の多数のエピトープマッピング技術を用いて認定することができる。例えば以下を参照されたい:Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66(Glenn E. Morris, Ed., 1996)。例えば、線状エピトープは、例えば固相上で多数のペプチド(前記ペプチドは当該タンパク質分子の部分に対応する)を同時に合成し、前記ペプチドが固相に結合している間にこのペプチドを複数の抗体と反応させることによって決定することができる。そのような技術は当分野で公知であり、例えば以下に記載されている:米国特許4,708,871号;Geysen et al. 1984;Geysen et al. 1986(前記文献はいずれも参照によりその全体が本明細書に含まれる)。同様に、コンフォーメーションエピトープは、アミノ酸の空間的形状を例えばX線結晶学および二次元核磁気共鳴によって決定することにより容易に認定することができる。例えば上掲書(Epitope Mapping Protocols)を参照されたい。T. parvaのタンパク質に特に応用可能な方法は、PCT出願PCT/US2004/022605号(前記文献は参照により本明細書に含まれる)に詳しく記載されている。
合成抗原、例えばポリエピトープ、フランキングエピトープおよび他の組換え体または合成により誘導した抗原もまたこの定義に含まれる。例えば以下の文献(Bergmann et al. 1993;Bergmann et al. 1996;Suhrbier, 1997;Gardner et al. 1998)を参照されたい。本発明の目的のための免疫原性フラグメントは、当該分子の通常は少なくとも約3つのアミノ酸、好ましくは少なくとも約5つのアミノ酸、より好ましくは少なくとも約10−15のアミノ酸、もっとも好ましくは約15−25のアミノ酸またはそれより多いアミノ酸を含むであろう。フラグメントの長さについて決定的な上限は存在せず、フラグメントにはほぼ完全長のタンパク質配列、または当該タンパク質の少なくとも1つのエピトープを含む融合タンパク質さえも含まれよう。
【0017】
したがって、エピトープを発現するポリヌクレオチドの最小構造物は、インフルエンザタンパク質またはポリプロテインのエピトープもしくは抗原決定基をコードするヌクレオチドを含むか、または本質的に前記から成るか、または前記から成るものである。タンパク質全体またはポリプロテインのフラグメントをコードするポリヌクレオチドは、より有利には全タンパク質またはポリプロテインをコードする配列の最低限15ヌクレオチド、有利には約30−45ヌクレオチド、好ましくは約45−75、少なくとも57、87または150の連続するかまたは隣接するヌクレオチドを含むか、または本質的に前記から成るか、または前記から成る。エピトープ決定方法、例えばオーバーラップペプチドライブラリーの作製(Hemmer et al. 1998)、ペプスキャン(Pepscan)(Geysen et al., 1984;Geysen et al., 1985;Van der Zee R. et al., 1989;Geysen, 1990;Multipin.RTM. Peptide Synthesis Kits de Chiron)およびアルゴリズム(De Groot et al., 1999)(PCT出願第PCT/US2004/022605号)(前記文献はいずれも参照により本明細書にその全体が含まれる)は、煩雑な実験を要することなく本発明の実施に用いることができる。本明細書に引用されさらに参照により含まれる他の記述もまた、免疫原または抗原のエピトープ、したがってそのようなエピトープをコードする核酸分子を決定する方法のために参考にすることができる。
“ポリヌクレオチド”はヌクレオチドの任意の長さのポリマー型であり、任意の組合せのデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドおよびアナローグを含む。ポリヌクレオチドは三次元構造を有することができ、公知または未知の任意の機能を果たすことができる。“ポリヌクレオチド”という用語には、二本鎖、一本鎖および三本鎖のヘリックス分子が含まれる。別に規定または要求されなければ、本明細書に記載の発明のポリヌクレオチドの実施態様はいずれも、DNA、RNAまたはハイブリッド分子の二本鎖形および前記二本鎖形を形成する公知のまたは推測される2つの相補形の各々を包含する。
【0018】
“コドン最適化”という用語は、選択された宿主での発現/翻訳のために、タンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープ、ドメインまたはフラグメントをコードする核酸配列を最適に構成するプロセスを意味する。一般的には、遺伝子の発現レベルは多くの因子、例えばプロモーター配列および調節エレメントに左右される。もっとも重要な因子の1つは、宿主の典型的なコドン使用頻度への転写遺伝子のコドン使用頻度の適応である(G. Lithwich and H. Margalit, Genome Res. 2003, 13:2665-2673)。したがって、翻訳選別下では原核細胞ゲノム中の高度に発現される遺伝子は顕著なコドン使用頻度の偏りを有する。これが、それらがもっとも豊富なtRNA種によって認識される小さなコドンサブセットを用いる理由である(T. Ikemura, J Mol Biol, 1981, 151:389-409)。このコドン適応を調節する力は翻訳選別と呼ばれ、その強さは急速に増殖する細菌で重要である(Rocha, E.P., Genome Res. 14, 2279-2286, 2004;Sharp, P.M. et al., Nucleic Acids Res. 33, 1141-1153)。宿主がまれにしか用いないコドンを遺伝子が含んでいる場合、その発現レベルは最大ではないであろう。これは異種タンパク質の発現(Gustafsson, C. et al., Trends Biotechnol. 22, 346-353, 2004)およびDNAワクチン(C. Ivory and K. Chadee, Genet. Vaccines Ther. 2, 17, 2004)の限界の1つであり得る。極めて多くの合成遺伝子が再設計されてそれらの発現レベルを高めた。合成遺伝子データベース(SGDB)(G. Wu et al., Nucleic Acids Res. 35, D76-D79, 2007)は、合成遺伝子に関する200を超える公表実験の情報を含んでいる。最適な量である種のタンパク質を発現させるために新規な宿主に挿入される核酸配列の設計プロセスでは、コドン使用頻度の最適化は、通常最初の工程の1つである(C. Gustafsson, Trends Biotechnol. 22, 346-353, 2004)。コドン使用頻度の最適化は、基本的には、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を改変することなく宿主のコドン使用頻度をより厳密に反映するように標的遺伝子内の稀なコドンを変更することを必要とする(Gustafsson, C., Trends Biotechnol. 22, 346-353, 2004)。したがって、最適化プロセスのために通常用いられる情報は、最適化されるべきDNAまたはタンパク質配列および宿主のコドン使用頻度表(参照セット)である。
【0019】
いくつかの公開ウェブサーバーおよび当業者によるある程度のコドン最適化を可能にする独立して使用可能なアプリケーションが存在する:‘GeneDesign’’(S.M. Richardson et al. Genome Res. 16, 550-556, 2006)、‘Synthetic Gene Designer’(G. Wu et al. Protein Expr. Purif. 47, 441-445, 2006)および‘Gene Designer’(A. Villalobos et al. BMC Bioinformatics 7, 285, 2006)は、合成遺伝子設計(コドン最適化工程を含む)のためのプラットフォームを提供するパッケージである。各サーバーまたはプログラムで利用できるコドン使用頻度最適化のための方法に関しては、開発された最初のプログラムは‘1アミノ酸-1コドン’アプローチのみを用いた。より最近のプログラムおよびサーバーは、ある程度のコドン使用頻度の多様性を作出するためにさらに別の方法を含む。この多様性は、天然の高度に発現される遺伝子のコドン使用頻度の多様性を反映し、最適化プロセスにおいて追加の基準(例えば制限部位の回避)の導入を可能にする。本明細書に記載のほとんどのアプリケーションおよびウェブサーバーは以下の3つのコドン最適化の方法を提供する:全コドンの完全な最適化、モンテカルロ(Monte Carlo)アプローチを用いる参照セットの相対的コドン使用頻度を基準にした最適化、およびクェリー配列と最適化配列との間の変化を最少にしながら最適化を最大にするように設計された新規なアプローチ。本明細書のある実施態様では、NDVのタンパク質補完物をコードする配列はトリ細胞での発現のために最適化されたコドンであり、好ましい実施態様では、NDV P、LおよびNPをコードする核酸配列はトリ細胞での発現のために最適化されたコドンである。さらに別の実施態様では、組換えタンパク質、抗原、ペプチド、ポリペプチド、フラグメント、ドメインまたはエピトープをコードする核酸配列はトリでの発現のために最適化されたコドンである。別の実施態様では、コドン最適化配列は、トリ発現用AIVタンパク質、抗原、ペプチド、ポリペプチド、フラグメント、ドメインまたはエピトープをコードする。さらに別の実施態様では、コドン最適化配列は、トリ発現用AIV HAおよび/またはNタンパク質、抗原、ペプチド、ポリペプチド、フラグメント、ドメインまたはエピトープをコードする。
【0020】
以下はポリヌクレオチドの非限定例である:遺伝子もしくは遺伝子フラグメント、エクソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、siRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、改変ヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナローグ、ウラシル、他の糖と連結基(例えばフルオロリボースとチオレート)、およびヌクレオチド分枝を含むことができる。ヌクレオチド配列は、ポリマー形成後に標識成分を用いて例えば連結によって改変することができる。本定義における他のタイプの改変には、キャップ、1つまたは2つ以上の天然に存在するヌクレオチドのアナローグによる置換、およびタンパク質、金属イオン、標識成分、他のヌクレオチドまたは固相に当該ポリヌクレオチドを結合させるための手段の導入が含まれる。ポリヌクレオチドは、化学合成により入手するかまたは微生物から誘導することができる。
本発明はさらに、インフルエンザタンパク質、抗原、エピトープまたは免疫原をコードするポリヌクレオチドの相補鎖を含む。相補鎖は任意の長さのポリマーが可能であり、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドおよび前記の任意の組合せのアナローグであり得る。
“タンパク質”、“ペプチド”、“ポリペプチド”および“ポリペプチドフラグメント”という用語は本明細書で互換的に用いられ、任意の長さのアミノ酸残基のポリマーを意味する。ポリマーは線状でも分枝状でもよく、改変アミノ酸またはアミノ酸アナローグを含むことができ、さらにアミノ酸以外の化学的成分によって中断されていてもよい。前記用語はまた、天然にまたは介入により、例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質添加、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは改変(例えば標識成分または生物活性成分との連結)によって改変されたアミノ酸ポリマーを包含する。
【0021】
“単離”ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、その天然の状態では前記に随伴する物質が実質的に存在しないものである。実質的に存在しないとは、これらの物質の少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%が存在しないことを意味する。
ハイブリダイゼーション反応は、種々の“ストリンジェンシー”の条件下で実施することができる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーを高める条件は周知である。例えば以下を参照されたい:“Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, second edition(Sambrook et al., 1989)。関連する条件の例には以下が含まれる(ストリンジェンシーが増加する順序で記載されてある):25℃、37℃、50℃および68℃のインキュベーション温度;10 x SSC、6 x SSC、1 x SSC、0.1 x SSCの緩衝液濃度(SSCは0.15 M NaClおよび15mMのクエン酸緩衝液)および他の緩衝系を用いる前記の等価物;0%、25%、50%および75%のホルムアミド濃度;5分から24時間のインキュベーション時間;1、2または3回以上の洗浄工程;1、2または15分の洗浄インキュベーション時間;および6 x SSC、1 x SSC、0.1 x SSC、または脱イオン水の洗浄溶液。
【0022】
本発明はさらに、インフルエンザポリペプチドの機能的に等価の変種および誘導体並びに機能的に等価の前記のフラグメントをコードするポリヌクレオチド(したがって前記はそれらによってコードされるポリペプチドの固有の特性に顕著に影響を及ぼすことなく強化または減弱させることができる)を包含する。これら機能的に等価の変種、誘導体およびフラグメントは、インフルエンザの活性を維持する能力を提示する。例えば、コードされるアミノ酸配列を変化させないDNAの変更は、アミノ酸残基の保存的置換、1つまたは数個のアミノ酸の欠失もしくは付加、およびアミノ酸アナローグによるアミノ酸残基の置換をもたらす変更と同様に、コードされるポリペプチドの特性に顕著には影響を及ぼさない変更である。保存的アミノ酸置換は、グリシン/アラニン;バリン/イソロイシン/ロイシン;アスパラギン/グルタミン;アスパラギン酸/グルタミン酸;セリン/スレオニン/メチオニン;リジン/アルギニン;およびフェニルアラニン/チロシン/トリプトファンである。ある実施態様では、変種は、問題のインフルエンザポリヌクレオチドまたはポリペプチドと少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性または同一性を有する。
【0023】
ある特徴では、本発明はインフルエンザポリペプチド、具体的にはトリインフルエンザポリペプチドを提供する。別の特徴では、本発明は、配列番号:15、17、19、21または23に示す配列を有するポリペプチド、および前記の変種またはフラグメントを提供する。
別の特徴では、本発明は、本発明のトリHAポリペプチド、具体的には、配列番号:15、17、19、21または23に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリペプチドを提供する。
さらに別の特徴では、本発明は、上記で認定したインフルエンザポリペプチド(配列番号:15、17、19、21または23)のフラグメントおよび変種(周知の分子生物学技術を用いて当業者は容易に調製することができる)を提供する。
変種は、本発明の抗原性ポリペプチド、具体的には配列番号:15、17、19、21または23に示すアミノ酸配列と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一性のアミノ酸配列を有する相同なポリペプチドである。
インフルエンザポリペプチドの免疫原性フラグメントは、配列番号:2、4、5、8、10、12または14に示す配列を有するインフルエンザポリペプチドまたはその変種の少なくとも8、10、15、または20の連続するアミノ酸、少なくとも21アミノ酸、少なくとも23アミノ酸、少なくとも25アミノ酸または少なくとも30アミノ酸を含む。別の実施態様では、インフルエンザポリペプチドのフラグメントは、完全長のインフルエンザポリペプチドで見出される特異的な抗原性エピトープを含む。
【0024】
別の特徴では、本発明は、インフルエンザHAポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号:15、17、19、21または23に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。さらに別の特徴では、本発明は、配列番号:15、17、19、21または23に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリペプチド、または保存的変種、対立遺伝子変種、ホモローグ、またはこれらポリペプチドの1つの少なくとも8もしくは少なくとも10の連続するアミノ酸を含む免疫原性フラグメント、またはこれらポリペプチドの組合せをコードするポリヌクレオチドを提供する。インフルエンザHAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、特定の動物種での発現のためにコドンを最適化することができる。HAタンパク質は、高病原性トリインフルエンザ配列(多重塩基性アミノ酸:RERRRKKR−配列番号:25)から低病原性トリインフルエンザ配列(RETR−配列番号:26)に切断部位で改変することができる。
別の特徴では、本発明は、配列番号:14、16、18、21、22に示すヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドまたはその変種を提供する。さらに別の特徴では、本発明は、配列番号:14、16、18、21、22に示す配列を有するポリヌクレオチドの1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドまたはその変種を提供する。
【0025】
本発明の目的のために、配列同一性または相同性は、オーバーラップおよび同一性を最大にしながら配列ギャップを最小限にしてアラインメントを実施したときに配列を比較することによって決定される。特に、配列同一性は、多数の数学的アルゴリズムのいずれかを用いて決定することができる。2つの配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムの非制限的な例は、Karlinら(1993)が改変したKarlinら(1990)のアルゴリズムである。
配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムの別の例はMyersら(1988)のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムはALIGNプログラム(バージョン2.0)である(前記はGCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの部分である)。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを利用するとき、PAM120ウエート残基表、12のギャップ長ペナルティーおよび4のギャップペナルティ−を用いることができる。局所配列相同性をもつ領域の認定およびアラインメントのために有用なさらに別のアルゴリズムは、Pearsonら(1988)が記載したFASTAアルゴリズムである。
一般的には、アミノ酸配列の比較は、公知の構造のポリペプチドのアミノ酸配列を未知の構造のポリペプチドのアミノ酸配列とアラインメントさせることによって達成される。続いて配列のアミノ酸を比較し、相同なアミノ酸のグループを一緒のグループに入れる。この方法によって、ポリペプチドの保存領域が検出され、アミノ酸の挿入および欠失が明らかにされる。アミノ酸配列間の相同性は、市販のアルゴリズムを用いることによって決定できる(上記の相同性に関する記載もまた参照されたい)。本明細書で別に記載したものに加えて、BLAST、ギャップ付加BLAST、BLASTN、BLASTPおよびPSI-BLASTプログラム(National Center for Biotechnology Informationにより提供)についてもまた述べておく。これらのプログラムは当分野でこの目的のために広くもちいられ、2つのアミノ酸配列の相同な領域のアラインメントを実施できる。
【0026】
一組の検索プログラムのいずれにおいても、ギャップ付加アラインメントルーチンはデータベース検索自体と一体である。ギャップ付加は所望の場合にはOFFにできる。長さ1のギャップのための初期設定ペナルティー(Q)は、タンパク質およびBLASTPについてはQ=9であり、BLASTNについてはQ=10であるが、任意の整数に変更できる。ギャップ伸長のための残基毎の初期設定ペナルティー(R)は、タンパク質およびBLASTPについてはR=2であり、BLASTNについてはR=10であるが、任意の整数に変更できる。配列アラインメントを実施してオーバーラップおよび同一性を最大にしながら配列ギャップを最小限にするために、QおよびRの値を任意に組み合わせて用いることができる。初期設定のアミノ酸比較マトリックスはBLOSUM62であるが、他のアミノ酸比較マトリックス(例えばPAM)も利用できる。
前記とは別にまたは前記に加えて、例えばヌクレオチドまたはアミノ酸配列に関して“相同性”または“同一性”という用語は2つの配列間の相同性の定量的な測定を示すことができる。パーセント配列同一性は(Nref−Ndif)x100/Nrefとして計算できる。式中、Ndifはアラインメントを実施したとき同一でない残基の総数であり、Nrefは配列の一方の残基の数である。したがって、DNA配列AGTCAGTCは、配列AATCAATC(Nref=8;Ndif=2)と75%の配列同一性を有するであろう。
前記とは別にまたは前記に加えて、配列に関して“相同性”または“同一性”とは、2つの配列の短い方の配列中のヌクレオチド数またはアミノ酸数で割ったヌクレオチドまたはアミノ酸が同一である位置の数を意味することができる。この場合、2つの配列のアラインメントを、WilburとLipmanのアルゴリズム(Wilbur et al. 1983(前記文献は参照により本明細書に含まれる))にしたがって、例えば20ヌクレオチドのウインドウサイズ、4ヌクレオチドのワード長および4のギャップペナルティ、並びにコンピュータ支援解析を用いて決定し、さらにアラインメントを含む配列データの解釈は市販のプログラム(例えばVector NTIソフトウェアTM、Invitrogen Inc. CA, USA)を用いて簡便に実施することができる。RNA配列が、DNA配列と類似である、またはある程度の配列同一性もしくは相同性を有するという時、DNA配列中のチミジン(T)はRNA配列のウラシル(U)と等価であるとみなされる。したがって、RNA配列は本発明の範囲内であり、DNA配列のチミジン(T)をRNA配列のウラシル(U)と等価とみなすことによってDNA配列から誘導することができる。
さらに、煩雑な実験を実施することなく、当業者は、多くの他のプログラムまたは参考文献をパーセント相同性の決定のために参考にすることができる。
【0027】
本発明はさらに、ベクター分子または発現ベクターに含まれ、さらにプロモーターエレメントおよび場合によってエンハンサーに機能的に連結されたインフルエンザポリヌクレオチドを包含する。
“ベクター”は、標的細胞にin vitroまたはin vivoでデリバーされるべき異種ポリヌクレオチドを含む組換えDNAまたはRNAプラスミド、バクテリオファージ、またはウイルスを意味する。異種ポリヌクレオチドは、本発明の目的または治療のために問題の配列を含むことができ、さらに場合によって発現カセットの形態を有することができる。本明細書で用いられるように、ベクターは最終的な標的細胞または標的主体において複製能力を有する必要はない。前記用語はウイルスベクターと同様にクローニング用ベクターも含む。
“操作された”または“組換え体”という用語は、天然には存在しないか、または天然の状態では見出されない編成で別のポリヌクレオチドに連結された半合成または合成起源のポリヌクレオチドを意味する。
“異種”は、ある実体が、比較されている実体の残りの部分と遺伝的に別個の実体に由来することを意味する。例えば、あるポリヌクレオチドを、異なる起源に由来するプラスミドまたはベクターに遺伝子工学技術によって取り込むことができ、前記ポリヌクレオチドはしたがって異種ポリヌクレオチドである。その本来のコード配列から取り外され、本来の配列以外のコード配列に機能的に連結されたプロモーターは異種プロモーターである。
【0028】
本発明のポリヌクレオチドは、追加の配列、例えば同じ転写ユニット内の追加のコード配列、制御エレメント(例えばプロモーター)、リボソーム結合部位、5’UTR、3’UTR、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、同じもしくは異なるプロモーターの制御下にある追加の転写ユニット、クローニング、発現、相同組換えおよび宿主細胞の形質転換を可能にする配列、並びに本発明の実施態様を提供するために所望し得る任意の構築物を含むことができる。
有利には、インフルエンザポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原を発現するためのエレメントが本発明のベクターに存在する。最低限の態様では、前記は、開始コドン(ATG)、終止コドンおよびプロモーター、並びに場合によってある種のベクター(例えばプラスミドおよびある種のウイルスベクター、例えばポックスウイルス以外のウイルスベクター)のためのポリアデニル化配列を含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成る。ポリヌクレオチドがポリプロテインフラグメント(例えばインフルエンザペプチド)を有利にはベクター内でコードするとき、ATGはリーディングフレームの5’に配置され、終止コドンは3’に配置される。発現を制御する他の成分も存在し得る。前記他の成分は、例えばエンハンサー配列、安定化配列、例えばイントロンおよび/または非翻訳5’または3’配列、並びにタンパク質の分泌を可能にするシグナル配列である。
【0029】
本発明の遺伝子の遺伝子生成物をin vivoまたはin vitroで発現するためのベクターまたは組換え体またはプラスミドを作製および/または投与する方法は、所望される任意の方法、例えば以下の文献に開示された方法または以下の文献に引用された文献に開示された方法または前記に類似する方法であり得る:米国特許4,603,112号;4,769,330号;4,394,448号;4,722,848号;4,745,051号;4,769,331号;4,945,050号;5,494,807号;5,514,375号;5,744,140号;5,744,141号;5,756,103号;5,762,938号;5,766,599号;5,990,091号;5,174,993号;5,505,941号;5,338,683号;5,494,807号;5,591,639号;5,589,466号;5,677,178号;5,591,439号;5,552,143号;5,580,859号;6,130,066号;6,004,777号;6,130,066号;6,497,883号;6,464,984号;6,451,770号;6,391,314号;6,387,376号;6,376,473号;6,368,603号;6,348,196号;6,306,400号;6,228,846号;6,221,362号;6,217,883号;6,207,166号;6,207,165号;6,159,477号;6,153,199号;6,090,393号;6,074,649号;6,045,803号;6,033,670号;6,485,729号;6,103,526号;6,224,882号;6,312,682号;6,348,450号;6,312,683号;および6,596,279号;米国特許出願920,197(1986年10月16日出願);WO 90/01543;W091/11525;WO 94/16716;WO 96/39491;WO 98/33510;EP 265785;EP 0 370 573;Andreansky et al., 1996;Ballay et al., 1993;Felgner et al., 1994;Frolov et al., 1996;Graham, 1990;Grunhaus et al., 1992;Ju et al., 1998;Kitson et al., 1991;McClements et al., 1996;Moss, 1996; Paoletti, 1996;Pennock et al., 1984;Richardson (Ed), 1995;Smith et al., 1983;Robertson et al., 1996;Robinson et al., 1997;およびRoizman, 1996。本明細書に引用した文献および参照により本明細書に含まれる文献は、本発明の実施に有用なベクターの例を提供するだけでなくまた、本発明の組成物のベクターまたは本発明の組成物に含まれるベクターによって発現されるべき非インフルエンザペプチドまたはそのフラグメントのための供給源を提供することができる。
【0030】
本発明はまた、ベクター(例えば発現ベクター)を含む調製物、例えば予防または治療用組成物に関する。前記調製物は、1つまたは2つ以上のインフルエンザポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原を含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成る(さらに有利には前記を発現する)1つまたは2つ以上のベクター、例えば発現ベクター(例えばin vivo発現ベクター)を含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成り得る。前記ベクターは、医薬的または獣医的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクル中にインフルエンザ抗原、エピトープまたは免疫原をコードする(さらに有利には前記を発現する)ポリヌクレオチドを含み、さらに前記を発現する。したがって、本発明の実施態様にしたがえば、調製物中の他のベクターまたは複数のベクターは、インフルエンザポリペプチド、抗原、エピトープもしくは免疫原(例えばヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ、核タンパク質)またはそのフラグメントを構成する1つまたは2つ以上の他のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成り、さらに適切な環境下でベクターはそれらを発現する。
別の実施態様にしたがえば、調製物中のベクターまたは複数のベクターは、インフルエンザポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原の1つまたは2つ以上のタンパク質またはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチドを含むか、または本質的に前記から成るか、または前記から成り、前記ベクターまたは複数のベクターは前記ポリヌクレオチドを発現する。本発明の調製物は、少なくとも2つのベクターを含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成り、前記ベクターは、異なるインフルエンザ単離株に由来し同じタンパク質および/または異なるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成り、さらに有利には妥当な条件下で、または適切な条件下で、または適切な宿主細胞で前記をin vivoで発現する。調製物は、インフルエンザポリペプチド、抗原、融合タンパク質またはそのエピトープをコードし、さらに有利には前記をin vivoで発現するポリヌクレオチドを含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成る。本発明はまた、異なるインフルエンザタンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原、例えば異なる種(ニワトリ、シチメンチョウ、アヒルおよびガンを含む鳥類の種に加えて例えばヒト、ウマ、ブタ、アザラシ、クジラを含むがただしこれらに限定されない)に由来するインフルエンザポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原をコードするものを含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成るベクターの混合物を目的とする。
【0031】
プラスミドという用語は、本発明のポリヌクレオチドおよび、細胞内または所望の宿主もしくは標的の細胞内での前記のin vivo発現に必要なエレメントを含む任意の転写ユニットを含み、さらにこれに関しては、スーパーコイルプラスミドおよびその全てのトポロジー異性体、開環状プラスミドは、線状のプラスミドと同様に本発明の範囲内に含まれることを記載しておく。
各プラスミドは、異種ペプチド配列、変種、アナローグまたはフラグメントをコードするポリヌクレオチドに加えて、場合によって、組換えタンパク質、抗原、エピトープまたは免疫原をコードするポリヌクレオチドと融合され、プロモーターと機能的に連結されているかまたはプロモーターの制御下にあるかまたはプロモーターに依存するものを含むか収納するかまたは本質的にそれらから成る。一般的には、真核細胞で機能する強力なプロモーターを利用するのが有利である。好ましい強力なプロモーターは、ヒトまたはネズミ起源の前初期サイトメガロウイルスプロモーター(CMV-IE)であり、場合によっては別の起源(例えばラットまたはモルモット由来)であってもよい。CMV-IEプロモーターは現実に存在するプロモーターセグメントであり得るが、エンハンサーセグメントを随伴していてもいなくてもよい。以下の文献を参照することができる:EP-A-260 148;EP-A-323 597;米国特許5,168,062号、5,385,839号および4,968,615号;並びにPCT出願WO87/03905号。CMV-IEタンパク質は、有利にはヒトCMV-IE(Boshart et al., 1985)またはネズミCMV-IEである。
【0032】
より一般的な関係では、プロモーターはウイルス起源または細胞起源である。本発明の実施で有用であり得るCMV-IE以外の強力なウイルスプロモーターは、SV40ウイルスの初期/後期プロモーターまたはラウス肉腫ウイルスのLTRプロモーターである。本発明の実施で有用であり得る強力な細胞性プロモーターは、細胞骨格の遺伝子のプロモーター、例えばデスミンプロモーター(Kwissa et al., 2000)またはアクチンプロモーター(Miyazaki et al., 1989)である。
これらプロモーターの機能的なサブフラグメント(すなわち適切な促進活性を維持するこれらプロモーターの部分)も本発明の範囲内に含まれ、例えばPCT出願WO98/00166号または米国特許6,156,567号の切端CMV-IEプロモーターを本発明の実施に用いることができる。したがって、本発明の実施に用いられるプロモーターには、適切な促進活性を維持し、したがってプロモーターとして機能する、好ましくは当該誘導体またはサブフラグメントが誘導された実際に存在するまたは完全長のプロモーターの活性と実質的に類似する(例えば、完全長CMV-IEプロモーター活性に対して米国特許6,156,567号の切端CMV-IEプロモーターの活性に類似する)完全長プロモーターの誘導体およびサブフラグメントが含まれる。したがって、本発明の実施に用いられるCMV-IEプロモーターは、完全長プロモーターのプロモーター部分および/または完全長プロモーターのエンハンサー部分を誘導体およびサブフラグメントと同様に含むか、または本質的に前記から成るか、または前記から成る。
好ましくは、プラスミドは、他の発現制御エレメントを含むかまたは本質的に前記から成る。安定化配列、例えばイントロン配列、好ましくはhCMV-IE(PCT出願WO89/01036号)、ウサギβグロブリン遺伝子のイントロンII(van Ooyen et al. 1979)を取り込むことが特に有利である。
プラスミドおよびポックスウイルス以外のウイルスベクターのためのポリアデニル化シグナル(ポリA)に関しては、ウシ成長ホルモン(bGH)遺伝子のポリ(A)シグナル(米国特許5,122,458号を参照されたい)またはウサギβグロブリン遺伝子のポリ(A)またはSV40ウイルスのポリ(A)シグナルが有用であり得る。
【0033】
本発明の別の実施態様にしたがえば、発現ベクターは、適切な細胞系でタンパク質のin vitro発現に用いられる発現ベクターである。発現タンパク質は、分泌後にまたは分泌前に(分泌されない場合は、典型的には細胞溶解が発生するかまたは細胞溶解が実施される)培養上清中でまたは培養上清から採集し、場合によって、例えば限外濾過のような濃縮方法によって濃縮し、および/または精製手段、例えばアフィニティー型、イオン交換型またはゲルろ過型クロマトグラフィーの方法によって精製する。
“宿主細胞”は、遺伝的に改変されているか、または外因性ポリヌクレオチド、例えば組換えプラスミドまたはベクターの投与によって遺伝的に改変することができる原核細胞または真核細胞を意味する。遺伝的改変細胞に言及するとき、前記用語は最初に改変された細胞またはその子孫細胞の両方を意味する。有利な宿主細胞には、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、結腸癌(Caco-2)細胞、COS7細胞、MCF-7細胞、MCF-10A細胞、Madin-Darbyイヌ腎(MDCK)株、ミンク肺(Mv1Lu)細胞、MRC-5細胞、U937細胞およびVERO細胞が含まれるが、ただしこれらに限定されない。所望の配列を含むポリヌクレオチドを適切なクローニングベクターまたは発現ベクターに挿入し、このベクターを順次適切な宿主細胞に複製および増幅のために導入することができる。ポリヌクレオチドは、当分野で公知の任意の手段によって宿主細胞に導入することができる。問題のポリヌクレオチドを含むベクターを多数の適切な任意の手段により宿主細胞に導入することができる。前記手段には、直接取り込み;エンドサイトーシス;トランスフェクション;F-接合;エレクトロポレーション;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストランまたは他の物質を利用するトランスフェクション;微小発射体ボンバードメント;リポフェクション;および感染(ベクターが感染性である場合、例えばレトロウイルスベクター)が含まれる。ベクターまたはポリヌクレオチドどう縫うの選択はしばしば宿主細胞の特性に依存するであろう。
【0034】
本発明のある実施態様では、ベクターはニューカッスル病ウイルス(NDV)ベクターである。トリパラミクソウイルス1とも称される(APMV1、パラミクソウイルス科、パラミクソウイルス亜科、アヴラウイルス属)ニューカッスル病ウイルスはトリの病原体であり、その天然に存在する株は広域の疾病重篤性を示す。NDVは獣医用ワクチンベクターとして特に有利である。なぜならば、ベクター自体が必要とされる家禽ワクチンとして機能するからである。NDV株の病原型は、無症状腸型(例えばUlster 2C、Queensland V4)、レントジェニック型(例えばHitchner B1, F(例えばAsplin)、La Sota)、メゾジェニック型(例えばH, Mukteswar, Rakin, Beaudette C株)またはベロジェニック型(例えばTexas GB, NY parrot 70181, Italien, Milano, Herts 33/56)である。NDVベクターを土台にするインフルエンザベクターワクチンの利点には以下が含まれるが、これらに限定されない:(1)液性、細胞性および粘膜応答を含む広範囲の免疫を誘導する;(2)NPおよびMタンパク質を発現せず、したがってDIVA(ワクチン免疫された動物からの感染動物の識別(differentiate infected from vaccinated animals))に適合する;(3)迅速な免疫開始を誘導する;(4)二価性である;(5)事故による放出の場合に不活化ワクチンよりも環境に対して製造リスクが少ない。
【0035】
NDVのある種の特徴は、外来ウイルスタンパク質を発現する組換えNDV(rNDV)または操作NDVは非常に良好なワクチン候補であろうということを示唆している。NDVは、多くの細胞株および卵で非常に高い力価にまで増殖し、強力な液性および細胞性免疫応答をin vivoで誘引する。NDVは自然には気道および食道の粘膜表面から感染し、したがって呼吸器系疾病の病原体(例えばAIV)の防御抗原のデリバリーに特に有用である。さらにまた、市販の生NDVワクチンは米国および他の大半の国々で広く用いられている。生NDV組換え体を土台にするワクチンもまた、他の組換え生ワクチンベクターを凌ぐ利点を有し得る。第一に、外来タンパク質はほんの少しのNDVタンパク質とともに発現される。対照的に、ポックスウイルスおよびヘルペスウイルスベクターは、それらの大きなサイズのゲノムに由来する別の多数のタンパク質を発現する。ワクチンの適用で特異的な免疫応答が発生する場合、限られた数のタンパク質を発現させることは有利であり得る。第二に、NDVは、DNA期無しに感染細胞の細胞質で複製し、このことは、宿主細胞のDNAにウイルスゲノムが組み込まれるという問題を除去する。このウイルスは検出可能な遺伝的組換えを受けない。
【0036】
リバースジェネティクスのまた別の応用は、本明細書で述べるようにより有効で優れたNDVワクチンの開発である。従来のNDVワクチンは、天然に存在するレントジェニックな株(例えばHitchner B1およびLaSota)を利用する。他の弱毒生ワクチンで認められるように、従来のNDVワクチンは病毒性復帰のためになお疾病を引き起こす可能性がある。ベクターとしてのNDVワクチン株の選択は重要である。なぜならば、Hitchner B1 NDV株に関して報告された最初のデータは失望するものであったからである。後にLaSota NDV株で得られたデータは頼もしいものであった。この株を土台とするワクチン候補は中国およびメキシコの野外で用いられている。
本明細書の発明は、組換え体由来抗原のトリへのデリバリー用ベクターとしてNDV AVINEW(商標)ワクチン株の本出願人の使用を開示する。より具体的には、抗原はインフルエンザウイルス(AIV)抗原であり得る。AVINEW(商標)は、メリアル社(Merial Ltd.)が開発し、世界中で用いられている生NDVワクチンである。このワクチン株は天然には非病毒性で、呼吸系および腸の二重向性を示す。トリにおけるこの枝分かれした向性は、トリでの遺伝子デリバリーにAVINEW(商標)骨格を利用する組換えNDV(rNDV)または操作NDVワクチンに、母親由来抗体(MDA)のNDVそれ自体に対する妨害に関して固有の生物学的特徴を与えることができる。MDAに対するそのような耐性は、顕著なレベルのNDV特異的MDAを本来的に有するか、或いはより通常的な組換えNDV免疫に対して抵抗性を有する可能性がある市場流通のトリおよび野生型のトリの能動免疫を可能にすることができる。
さらにまた、AVINEW(商標)株は、アヒルに感染し得るNDV遺伝子グループまたはタイプ(クラス2、遺伝子型I)に属している。LaSota(その向性は本質的に気道に向いている)とは対照的に、AVINEW(商標)株は呼吸器系の有害反応を誘導しない。
【0037】
ある実施態様では、NDVベクターはNDV AVINEW(商標)である。NDVベクターはまた米国特許5,118,502号のベクター、具体的にはATCC No. VR2239として寄託された株であってもよい。
本発明のある実施態様は、AVINEWのゲノムDNA配列およびコードされたタンパク質配列を提供する。AVINEW NDV株のゲノムDNA配列は、配列番号:1に示すポリヌクレオチド配列を有する。AVINEWゲノムcDNA配列(配列番号:1)はVG/GA配列(GenBank Accession No. EU289028)とは異なる。AVINEW(配列番号:1)およびVG/GA(EU289028)のゲノム配列間の配列同一性は89.6%である。Avinew株とVG/GA株のタンパク質間のアミノ酸配列同一性は、NPタンパク質(Avinewの配列番号:3とGenBank No. ABZ80386)については95.9%、Pタンパク質(Avinewの配列番号:5に対してGenBank No. ABZ80387)については89.7%、Mタンパク質(Avinewの配列番号:7に対してGenBank No. ABZ80388)については94.2%、Fタンパク質(Avinewの配列番号:9に対してGenBank No. ABZ80389)については92.4%、HNタンパク質(Avinewの配列番号:11に対してGenBank No. ABZ80390)については88.1%、およびLタンパク質(Avinewの配列番号:13に対してGenBank No. ABZ80391)については96.9%である。Avinew株とVG/GA株の遺伝子間の核酸配列同一性は、NP遺伝子(Avinewの配列番号:2に対してEU289028の122−1591bp)については90.6%、P遺伝子(Avinewの配列番号:4に対してEU289028の1887−3074bp)については88.6%、M遺伝子(Avinewの配列番号:6に対してEU289028の3290−4384bp)については90.1%、F遺伝子(Avinewの配列番号:8に対してEU289028の4544−6205bp)については90.0%、HN遺伝子(Avinewの配列番号:10に対してEU289028の6412−8145bp)については84.7%、およびL遺伝子(Avinewの配列番号:12に対してEU289028の8381−14995bp)については90.9%である。完全なゲノム配列および個々の遺伝子配列と他の利用可能なNDV参照配列との比較によって、AVINEW NDV株は、オーストラリアレントジェニック株98-1154およびクィーンズランドV14と遺伝的に近縁であることが示された。NDV 98-1154の完全なゲノムの配列はGenBank AY935491に示されている。AVINEW(配列番号:1)およびAY935491のゲノム配列間の配列同一性は98.8%である。Avinew株およびVG/GA株のタンパク質間のアミノ酸配列同一性は、NPタンパク質(Avinewの配列番号:3に対してGenBank No. AAX45376)については99.8%、Pタンパク質(Avinewの配列番号:5に対してGenBank No. AAX45377)については97.7%、Mタンパク質(Avinewの配列番号:7に対してGenBank No. AAX45378)については98.4%、Fタンパク質(Avinewの配列番号:9に対してGenBank No. AAX45379)については98.7%、HNタンパク質(Avinewの配列番号:11に対してGenBank No. AAX45380)については92.4%、およびLタンパク質(Avinewの配列番号:13に対してGenBank No. AAX45381)については99.5%である。Avinew株およびVG/GA株の遺伝子間の核酸配列同一性は、NP遺伝子(Avinewの配列番号:2に対してAY935491の122−1591bp)については99.0%、P遺伝子(Avinewの配列番号:4に対してAY935491の1887−3074bp)については98.2%、M遺伝子(Avinewの配列番号:6に対してAY935491の3290−4384bp)については98.6%、F遺伝子(Avinewの配列番号:8に対してAY935491の4544−6205bp)については98.8%、HN遺伝子(Avinewの配列番号:10に対してAY935491の6412−8154bp)については93.1%、およびL遺伝子(Avinewの配列番号:12に対してAY935491の8381−14995bp)については98.8%である。クィーンズランドV4についてはGenBankでは部分配列のみ利用可能である。
【0038】
別の実施態様では、本発明は、配列番号:1、2、4、6、8、10、12または24に示す配列を有するポリヌクレオチドおよびその変種またはフラグメントを提供する。本発明はさらに本明細書に開示したポリヌクレオチドの相補鎖も含む。さらに別の実施態様では、本発明は、配列番号:3、5、7、9、11または13に示す配列を有するポリペプチドおよびその変種またはフラグメントを提供する。
別の特徴では、本発明は、配列番号:1または24に示す配列を有するAVINEWのゲノムcDNAを提供する。さらに別の実施態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号:1または24に示す配列を有するポリヌクレオチドの逆相補鎖である。さらに別の実施態様では、本発明のポリヌクレオチドまたはその逆相補鎖は、配列番号:1または24に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
ある実施態様では、本発明は、AVINEWポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、例えば、配列番号:3、5、7、9、11または13に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのフラグメントを提供する。さらに別の特徴では、本発明は、配列番号:3、5、7、9、11または13に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリペプチド、または保存的変種、対立遺伝子変種、ホモローグまたはこれらポリペプチドの1つの少なくとも8または少なくとも10の連続するアミノ酸を含む免疫原性フラグメント、またはこれらのポリペプチドの組合せをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0039】
別の特徴では、本発明は、配列番号:1、2、4、6、8、10、12または24に示すヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドまたはその変種を提供する。さらに別の実施態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号:1、2、4、6、8、10、12または24に示す配列を有するポリヌクレオチドの逆相補鎖である。さらに別の特徴では、本発明は、配列番号:1、2、4、6、8、10、12または24に示す配列を有するポリヌクレオチドまたはその変種の1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドまたはその逆相補鎖を提供する。
ある特徴では、本発明は、当該ワクチンまたは組成物を接種した宿主動物で免疫学的応答を誘導する医薬組成物またはワクチンに関し、前記組成物は、医薬的に許容できる担体および改変AVENEW組換えウイルスを含む。本発明のさらに別の特徴では、操作AVINEWウイルスは、当該ウイルスゲノムの非必須領域内に、病原体由来の抗原性タンパク質をコードする異種DNA配列を含み、前記ワクチンは、宿主に投与されたとき前記病原体によってコードされるタンパク質に特異的な免疫学的応答を誘導することができる。
【0040】
“非必須領域”という用語は、組織培養でのウイルスの複製および増殖に必須ではなく、さらにその欠失または不活化が多様な動物系における病毒性を低下させる可能性があるウイルスゲノムの領域を意味する。いずれの非必須領域またはその一部分もAVINEWゲノムから欠失させることができ、または外来配列をその中に挿入することができ、さらに欠失または挿入から得られた操作AVINEWの生存活性および安定性は、欠失領域またはその部分が実際に非必須であるか否かを確認するために用いることができる。別の実施態様では、AVINEWゲノムの非必須領域は、P遺伝子とM遺伝子との間の領域、またはAVINEWゲノムのM遺伝子とF遺伝子との間の領域である。さらに別の実施態様では、非必須領域は、配列番号:1の3075nt−3289ntまたは4385nt−4543nt、配列番号:24の3115nt−3353ntまたは4449nt−4607ntの領域にある。
本発明のある特徴はトリ抗原を発現するNDVベクターに関する。前記抗原はトリインフルエンザ抗原であり得る。トリインフルエンザ抗原はヘマグルチニン、例えばH5 HAであり得る。
【0041】
トリインフルエンザ遺伝子を発現するNDVベクター、例えば以下のものもまた本発明のために意図される:LaSota NDVワクチン株のP遺伝子とM遺伝子の間の遺伝子間領域に挿入された、野生型HAおよびHPAIV野鳥単離株(A/バーヘッドグース(Bar-Headed goose)/Qinghai/3/2005(H5N1))由来変異HAオープンリィーディングフレームの両者をもつH5亜型トリインフルエンザウイルス(AIV)ヘマグルチニン(HA)を発現するNDVの構築物(例えば以下を参照されたい:Ge et al., Journal of Virology, Jan. 2007, 81(1):105-158);GenBankにアクセッション番号AF375823で寄託された、インフルエンザウイルスを発現するニューカッスル病ウイルス(NDV)ワクチン株Hitchner B1の完全なcDNAクローン(例えば以下を参照されたい:Nakaya et al., Journal of Virology, Dec. 2001, pp. 11868-11873);HPAIV A/ニワトリ/ベトナム/P41/05(H5N1)のH5タンパク質を発現するNDV組換え体(NDVH5Vm)(例えば以下を参照されたい:Roemer-Oberdoerfer et al., Vaccine. 2008 May 2;26(19):2307-13. Epub 2008 Mar 18);トリインフルエンザウイルス(AIV)A/ニワトリ/NY/13142-5/94(H7N2)由来ヘマグルチニン(HA)遺伝子が挿入された、レントジェニックなパラミクソウイルス1型ベクター(NDV B1株)を用いて構築されたrNDV-AIV-H7(例えば以下を参照されたい:Swayne et al., Avian Diseases 47:1047-1050, 2003);リバースジェネティクスによって構築されたH5亜型のNDV発現トリインフルエンザウイルス(AIV)ヘマグルチニン(例えば以下を参照されたい:Veits et al., PNAS, May 23, 2006, 103(21):8197-8202);およびレントジェニックなNDVワクチン株クローン30を土台にした、AIV A/ニワトリ/ベトナム/P41/2005(H5N1)のHA遺伝子を発現する組換えNDV-H5(例えば以下を参照されたい:Veits et al., Vaccine (2008) 26:1688-1696)。
本発明のさらに別の実施態様では、NDV遺伝子を発現するトリインフルエンザウイルス、例えばH5N1トリインフルエンザウイルスのノイラミニダーゼタンパク質の代わりにNDVのヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ遺伝子のエクトドメインを発現するキメラトリインフルエンザウイルス、または融合性の弱毒化されたNDV遺伝子中でH7トリインフルエンザウイルスヘマグルチニンのエクトドメインを発現する二価ワクチン(前記のエクトドメインのみをNDVのFタンパク質由来のトランスメンブレンドメインおよび細胞質ドメインとともに含む)(例えば以下を参照されたい:Park et al., PNAS, May 23, 2006, 103(21):8203-8308)もまた意図される。
【0042】
ある実施態様では、本発明は、タンパク質、抗原、エピトープまたは免疫原のデリバリーおよび標的細胞での発現のための処方物の治療的に有効な量の投与を提供する。予防的または治療的に有効な量の決定は当業者にとって日常的な実験である。別の実施態様では、処方物は、インフルエンザ抗原、エピトープまたは免疫原を発現するポリヌクレオチドを含む発現ベクターおよび医薬的または獣医的に許容できる担体、ビヒクルまたは賦形剤を含む。別の実施態様では、医薬的または獣医的に許容できる担体、ビヒクルまたは賦形剤はトランスフェクションを促進し、および/またはベクターまたはタンパク質の保存を改善する。
医薬的または獣医的に許容できる担体、ビヒクルまたは賦形剤は当業者には周知である。例えば、医薬的または獣医的に許容できる担体またはビヒクルまたは賦形剤は、滅菌水、0.9%のNaCl(例えば食塩水)溶液またはリン酸緩衝液であり得る。本発明の方法に用いることができる、他の医薬的または獣医的に許容できる担体またはビヒクルまたは賦形剤にはポリ-(L-グルタメート)またはポリビニルピロリドンが含まれるが、ただしこれらに限定されない。医薬的または獣医的に許容できる担体またはビヒクルまたは賦形剤は、ベクター(または本発明のベクターからin vitroで発現されるタンパク質)の投与を容易にする任意の化合物または化合物の組合せであり得る。有利には、担体、ビヒクルまたは賦形剤は、トランスフェクションを促進するか、および/またはベクター(またはタンパク質)の保存を改善し得る。用量および用量体積は、本明細書においては一般的な記述で考察され、さらにまた当分野の情報と併せて本開示を熟読することによって、当業者は、いずれの煩雑な実験を実施することなく前記を決定することができる。
【0043】
プラスミドのために有利に(ただし絶対的にというわけではない)適切である第四アンモニウム塩を含む陽イオン性脂質は、有利には以下の式を有する脂質である:
【0044】
【0045】
式中、R1は、12から18個の炭素原子を有する飽和または不飽和直鎖脂肪族基であり、R2は、2または3個の炭素原子を有する他の脂肪族基であり、さらにXはアミンまたはヒドロキシル基(例えばDMRIE)である。別の実施態様では、陽イオン性脂質は中性脂質(例えばDOPE)が会合していてもよい。
これら陽イオン性脂質の中で、DMRIE(N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパンアンモニウム;WO96/34109)がとりわけ好ましく、有利には中性脂質(有利にはDOPE(ジオレオイル-ホスファチジル-エタノールアミン;Behr, 1994)を伴いDMRIE-DOPEを形成する。
有利には、アジュバントを含むプラスミド混合物が即席に形成され、有利には調製物の投与と同時にまたは調製物の投与の少し前に形成され、例えば投与の少し前にプラスミド-アジュバント混合物を形成し、有利には混合物に複合体を形成させるために投与の前に十分な時間、例えば投与前約10分から約60分、例えば投与前約30分が与えられる。
DOPEが存在する場合、DMRIE:DOPEモル比は有利には、約95:約5から約5:約95、より有利には約1:約1、例えば1:1である。
DMRIEまたはDMRIE-DOPEアジュバント:プラスミド質量比は、約50:約1から約1:約10、例えば約10:約1から約1:約5であり、有利には約1:約1から約1:約2、例えば1:1から1:2である。
【0046】
別の実施態様では、医薬的または獣医的に許容できる担体、賦形剤、またはビヒクルは油中水エマルジョンであり得る。適切な油中水エマルジョンには、4℃で安定かつ液状である油を基剤とする油中水ワクチンエマルジョンが含まれる。前記ワクチンエマルジョンは、6から50v/v%(好ましくは12から25v/v%)の抗原含有水相、50から94v/v%の油相であって全体としてまたは部分として非代謝性油(例えば鉱物油、例えばパラフィン油)および/または代謝性油(例えば植物油、または脂肪酸、ポリオールまたはアルコールエステル)を含むもの、0.2から20p/v%(好ましくは3から8p/v%)の界面活性剤を含み、後者は全体としてもしくは部分としてまたは混合物としていずれかのポリグリセロールエステルであり、前記ポリグリセロールエステルは、好ましくはポリグリセロール(ポリ)リシンオレエートまたはポリオキシエチレンリシン油または他の水素添加ポリオキシエチレンリシン油である。油中水エマルジョンで用いることができる界面活性剤の例には、エトキシル化ソルビタンエステル(例えばポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween 80(商標);前記はAppliChem, Inc.(Cheshire, CT)から入手できる)およびソルビタンエステル(例えばソルビタンモノオレエート(Span 80(商標);前記はSigma Aldrich(St. Louis, MO)から入手できる)が含まれる。さらにまた、油中水エマルジョンに関しては、米国特許6,919,084号(例えばその実施例8)もまた参照されたい(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。いくつかの実施態様では、抗原含有水相は、1つまたは2つ以上の緩衝剤を含む食塩水溶液を含む。適切な緩衝溶液の例はリン酸緩衝食塩水である。有利な実施態様では、油中水エマルジョンは水/油/水の三重エマルジョンである(例えば米国特許6,358,500号を参照されたい:前記文献は参照により本明細書に含まれる)。他の適切なエマルジョンの例は米国特許7,371,395号に記載されている(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
【0047】
本発明の免疫学的組成物またはワクチンは1つまたは2つ以上のアジュバントを含むかまたは本質的に前記から成る。本発明の実施で用いられる適切なアジュバントは以下である:(1)アクリルもしくはメタクリル酸のポリマー、無水マレイン酸およびアルケニル誘導体ポリマー、(2)免疫刺激配列(ISS)、例えば1つまたは2つ以上の非メチル化CpGユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチド(Klinman et al. 1996;WO98/16247)、(3)水中油エマルショョン、例えば以下の文献の147ページに記載されているSPTエマルジョン(M. Powell, M. Newman著、“Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach”, Plenum Press 1995)およびMF59エマルション(同じ文献の183ページに記載されている)、(4)第四アンモニウム塩を含む陽イオン脂質、例えばDDA、(5)サイトカイン、(6)水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム、(7)サポニンまたは(8)本出願に引用および参照により含まれる任意の文献で考察されている他のアジュバント、または(9)前記の任意の組合せまたは混合物。
水中油エマルション(3)(前記は特にウイルスベクターに適切である)は以下を基剤にすることができる:液状軽パラフィン油(欧州薬局方タイプ)、イソプレノイド油(例えばスクワラン、スクワレン)、アルケン(例えばイソブテンまたはデセン)のオリゴマー化から生じる油、直鎖アルキル基を有する酸またはアルコールのエステル、例えば植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコール、ジ(カプリレート/カプレート)、グリセロールトリ(カプリレート/カプレート)およびプロピレングリコールジオレエート、または分枝脂肪アルコールまたは酸のエステル、特にイソステアリン酸エステル。
【0048】
油は乳化剤と一緒に用いられてエマルションを形成する。乳化剤は、非イオン性界面活性剤、例えば以下であり得る:一方ではソルビタン、マンニド(例えばアンヒドロマンニトールオレエート)、グリセロール、ポリグリセロールまたはプロピレングリセロールのエステル、および他方ではオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸、ヒドロキシステアリン酸のエステル(前記エステルは場合によってエトキシル化される)、またはポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、例えばプルロニック、例えばL121。
タイプ(1)のアジュバントポリマーの中では、架橋(特に糖またはポリアルコールのポリアルケニルエーテルによって架橋された)アクリル酸またはメタクリル酸のポリマーがとりわけ好ましい。これらの化合物はカルボマーの名で知られている(Pharmeuropa, 8(2), June 1996)。当業者はまた米国特許2,909,462号を参照することができる。前記文献は、ポリヒドロキシル化合物によって架橋されたそのようなアクリル酸ポリマーを提供する。前記ポリヒドロキシル化合物は、好ましくは8つを超えない少なくとも3つのヒドロキシル基を有し、少なくとも3つのヒドロキシル基の水素原子は、少なくとも2つの炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルによって置換されている。好ましいラジカルは2から4の炭素原子を含むものであり、例えばビニル、アリルおよび他のエチレン系不飽和基である。不飽和ラジカルはまた他の置換基、例えばメチルを含むことができる。カルボポル(Cabopol;BF Goodrich, Ohio,USA)の名で販売されている製品が特に適切である。前記製品はアリルサッカロースまたはアリルペンタエリトリトールによって架橋されている。それらの製品の中では、とりわけCarbopol 974P、934Pおよび971Pを挙げることはできる。
【0049】
無水マレイン酸-アルケニル誘導体コポリマーに関しては、EMA(Monsanto)が好ましい。前記は直鎖または架橋されたエチレン-無水マレイン酸コポリマーであり、それらは、例えばジビニルエーテルによって架橋されている。以下の文献もまた参照できる(J Fields et al. 1960)。
構造に関しては、アクリル酸またはメタクリル酸ポリマーおよびEMAは好ましくは以下の式を有する基本ユニットによって形成される:
【0050】
【0051】
式中、
R1およびR2(同じでも異なっていてもよい)はHまたはCH3を表し、
x=0または1、好ましくはx=1であり、
y=1または2で、x+y=2である。
EMAについてはx=0でy=2であり、カルボマーについてはx=y=1である。
これらのポリマーは水または生理学的塩溶液(20g/LのNaCl)で可溶性であり、pHを例えばソーダ(NaOH)によって7.3から7.4に調整して、発現ベクターを取り込むことができるアジュバント溶液を提供することができる。最終的な免疫学的組成物またはワクチン組成物におけるポリマー濃度は0.01から1.5%w/v、0.05から1%w/v、または0.1から0.4%w/vの範囲であり得る。
【0052】
1つまたは複数のサイトカイン(5)は、免疫学的組成物またはワクチン組成物中でタンパク質の形態であっても、または1つもしくは複数の免疫原またはそのエピトープとともに宿主で同時発現させてもよい。1つもしくは複数の免疫原またはエピトープを発現するベクターと同じベクターによるか、または別個のベクターによる1つまたは複数のサイトカインの同時発現が好ましい。
本発明は、そのようなコンビネーション組成物を、例えば複数の活性化合物を有利には一緒に、さらにアジュバント、担体、サイトカインおよび/または希釈剤とともに混合することによって製造することを含む。
本発明で用いることができるサイトカインには、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターフェロンα(IFNα)、インターフェロンβ(IFNβ)、インターフェロンγ(IFNγ)、インターロイキン-1α(IL-1α)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-11(IL-11)、インターロイキン-12(IL-12)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、腫瘍壊死因子β(TNFβ)、および形質転換増殖因子β(TGFβ)が含まれる(ただしこれらに限定されない)。サイトカインは、本発明の免疫学的組成物またはワクチン組成物と同時に投与するか、および/または連続的に投与できることは理解されよう。したがって、例えば本発明のワクチンはまた、適切なサイトカインをin vivoで発現する外因性核酸分子を含むことができる。適切なサイトカインは、例えばワクチン免疫されるべき宿主または免疫学的応答を誘引されるべき宿主に適合するサイトカイン(例えばトリに投与される調製物にはトリサイトカイン)である。
【0053】
別の実施態様では、本発明の組成物は、以下の文献に記載された化学的または物理的方法を用いて製造することができる(Stauffer et al. Recent Patents on Anti-Infective Drug Discovery, 1:291-296, 2006)。不活化技術のいくつかは下記の表に要約されている。
ある実施態様では、ワクチンは、トリ(例えばニワトリ、アヒル、ガン、シチメンチョウ、ホロホロチョウ、ヤマウズラまたはダチョウ)に投与される。ニワトリには、採卵鶏、繁殖鶏、ブロイラー、愛玩鶏および闘鶏が含まれるが、ただしこれらに限定されない。アヒルには、北京ダック、ジャコウアヒル、ミュールダックおよび野鴨が含まれるが、ただしこれらに限定されない。トリがアヒルまたはニワトリより大きいトリである実施態様では、より大きな用量が意図され得る。例えば、投与が点眼によって実施される実施態様では、適用量の概算は、1ニワトリ用量、2ニワトリ用量、3ニワトリ用量、4ニワトリ用量、5ニワトリ用量、6ニワトリ用量、7ニワトリ用量、8ニワトリ用量、9ニワトリ用量、有利には10ニワトリ用量で、必要な場合には、投薬量は約20ニワトリ用量から約100ニワトリ用量に達する。参考として、5.5 log10 50%卵感染用量(EID50)がほぼ1ニワトリ用量である。
別の実施態様では、投薬量は平均胚感染用量(EID50)であり得る。ある実施態様では、投薬量は、約101 EID50、約102EID50、約103 EID50、約103 EID50、約104 EID50、約105 EID50、約106 EID50、約107 EID50、または約108 EID50であり得る。
【0054】
本発明の免疫学的組成物および/またはワクチンは、本明細書で考察した1つまたは2つ以上の発現ベクターの防御的または治療的応答を誘引するために有効な量を含むか、または本質的に前記から成るかまたは前記から成る。有効な量は、本開示(本明細書に取り込まれた文献を含む)および当分野の知識から、煩雑な実験を実施することなく決定することができる。
有利には、抗原がヘマグルチニンであるときは、投薬量は血球凝集単位(HAU)またはマイクログラムで測定される。有利な実施態様では、投薬量は、約100血球凝集単位(HAU)/用量、約1000HAU/用量または約10000HAU/用量であり得る。ある種の実施態様では、投薬量は1から100μgである。投薬体積は、約0.02mLから2mL、有利には0.03mLから1mL、より有利には0.03mLから0.5mLで、特に有利な実施態様では、体積は約0.03mLから約0.3mLであり得る。
本発明のワクチンは、経卵接種(in ovo)で、飲み水を介して、噴霧、エーロゾル、鼻内点滴、点眼、くちばし浸漬、ウィング-ウェブ穿刺によって、経皮、皮下または筋肉内注射によってトリに投与できる。有利には、ワクチンは、皮下、経卵接種、点眼、噴霧または飲み水によって投与される。
さらに別の実施態様では、ワクチンは、孵化の1から3日前に経卵接種で、または1日齢、2日齢、3日齢、4日齢、5日齢、6日齢、7日齢、8日齢、9日齢、10日齢、11日齢、12日齢、13日齢、14日齢、15日齢、16日齢、17日齢、18日齢、19日齢、20日齢、21日齢のニワトリに投与することができる。
【0055】
本発明のある実施態様では、プライム-ブースト免疫スケジュールを用いることができる。前記は、少なくとも1回の主投与および少なくとも1回のブースター投与(少なくとも1つの共通タンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原を用いる)で構成される。主投与で用いられる免疫学的組成物またはワクチンは、ブースターとして用いられるものと性質が異なる。しかしながら、同じ組成物を主投与およびブーストとして用いることができることに留意されたい。この投与プロトコルは“プライム-ブースト”と称される。
本発明のプライム-ブーストプロトコルの別の特徴では、操作されたトリインフルエンザAvinew NDVワクチンまたは組成物を含む組成物を投与した後で、トリインフルエンザ抗原を含みこれをin vivoで発現する組換えウイルスベクターを含むワクチンもしくは組成物、またはトリインフルエンザ抗原を含む不活化ウイルスワクチンもしくは組成物、またはトリインフルエンザサブユニット(タンパク質)を含むワクチンもしくは組成物、またはトリインフルエンザ抗原を含みこれを発現するDNAプラスミドワクチンもしくは組成物が投与される。同様に、プライム-ブーストプロトコルは、トリインフルエンザ抗原を含みこれをin vivoで発現する組換えウイルスベクターを含むワクチンもしくは組成物、またはトリインフルエンザ抗原を含む不活化ウイルスワクチンもしくは組成物、またはトリインフルエンザサブユニット(タンパク質)を含むワクチンもしくは組成物、またはトリインフルエンザ抗原を含みこれを発現するDNAプラスミドワクチンもしくは組成物の投与後に、操作トリインフルエンザAvinew NDVワクチンまたは組成物を含む組成物の投与を含むことができる。さらにまた、主投与および二次投与の両方が操作トリインフルエンザAvinew NDVワクチンまたは組成物を含む組成物を含むことができることに留意されたい。
【0056】
プライム-ブーストプロトコルは、少なくとも1回のプライム投与および少なくとも1つの共通の抗原を用いる少なくとも1回のブースト投与を含む。プライム投与に用いられるワクチンまたは組成物は、後のブースターワクチンまたは組成物として用いられるものと性質が異なっていてもよい。プライム投与は1回または2回以上の投与を含むことができる。同様に、ブースト投与は1回または2回以上の投与を含むことができる。
好ましくは、多様な投与が約1から6週間離して、または約2から4週間離して実施される。2から6週間毎に繰り返されるブースター、または1年毎のブースターもまた意図される。好ましくは、動物は最初の投与時には少なくとも1日齢である。
免疫学的組成物および/またはワクチンは、1用量当たり約104から約1011、有利には約105から約1010、より有利には約106から約109の、インフルエンザ抗原、エピトープまたは免疫原を発現する組換えアデノウイルスのウイルス粒子を含む。ポックスウイルスを土台とする免疫学的組成物および/またはワクチンの場合には、1用量は102 pfuから109 pfuである。免疫学的組成物および/またはワクチンは、1用量当たり約102から約107、有利には約103から約105 pfuの、インフルエンザ抗原、エピトープまたは免疫原を発現するポックスウイルスまたはヘルペスウイルス組換え体を含む。
トリ免疫学的組成物またはワクチンが不活化トリウイルスである実施態様では、不活化トリウイルスは、オイルエマルジョンワクチンの製造で用いられる多様な種ウイルスに由来することができ、Ulster 2C、B1、LaSotaまたはRoakinが含まれ得る。不活化トリインフルエンザウイルスはまた古典的な不活化ウイルスであってもよい(発育SPF卵で増殖させたH5N9ユーラシア単離株A/ニワトリ/イタリア22A/98を含む全ウイルスベータ-プロピオラクトン(BPL)不活化ワクチン(H5N9-It))。他の不活化ワクチン(アジュバント添加)には以下が含まれる:H5N2およびH5N9亜型の野外ウイルスを土台にした市場で入手できる全ウイルス調製物(Fort Dodge Animal Health, Intervet International, Merial Italia)、または遺伝子操作によって誘導されたH5N3(後者は、A/ニワトリ/ベトナム/C58/04(H5N1)の改変HA遺伝子、A/アヒル/ドイツ/1215/73(H2N3)のノイラミニダーゼ遺伝子、およびA/PR/8/34(H1N1)の内部遺伝子を含む)。
【0057】
ウイルスベクターは弱毒アビポックス発現ベクターであり得る。ある実施態様では、アビポックス発現ベクターは鶏痘ベクター、例えばTROVAC(商標)であり得る。別の実施態様では、アビポックス発現ベクターはカナリポックスベクター、例えばALVAC(商標)であり得る。インフルエンザ抗原、エピトープまたは免疫原はヘマグルチニン、例えばH5であり得る。鶏痘ベクターは、vFP89(US2008/0107681およびUS2008/0107687を参照されたい)またはvFP2211(US2008/0107681およびUS2008/0107687を参照されたい)であり得る。カナリポックスベクターは、vCP2241であり得る(US2008/0107681およびUS2008/0107687を参照されたい)。本発明の方法で用いることができる他のウイルスには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):ワクシニアウイルス、例えば弱毒ワクシニアウイルス、例えばNYVAC、アデノウイルスおよびヘルペスウイルス。
ワクチンの有効性は、最後の免疫の約2から4週間後に動物(例えばトリ)をインフルエンザの病毒株(例えばインフルエンザH5N1、H5N8またはH5N9株)でチャレンジすることによって試験することができる。同種株および異種株の両方をワクチンの有効性試験のチャレンジに用いることができる。動物は、噴霧、鼻内、点眼、眼鼻、IM、気管内、および/または経口によりチャレンジすることができる。チャレンジウイルスは投与経路に応じて総計103から108 EID50であり得る。例えば、投与が噴霧による場合、ウイルス懸濁物は約1から100μmの小滴を生じるようにエーロゾル化され、投与が鼻内、気管内または経口である場合、チャレンジウイルスの総計は約0.05から約5mLである。標的種専用組成物の用量体積、例えばトリ用組成物の用量体積は経卵接種の場合約50μL、点眼の場合約20から約50μL、噴霧の場合約0.25mLから約1mLである。動物は、チャレンジ後毎日14日間、臨床症状および死亡率について観察することができる。さらにまた、動物群を安楽死させ、病理学的所見について評価することができる。チャレンジ後に全ての動物から、口腔咽頭、気管または総排泄腔スワブをウイルス検出のために収集することができる。組織中のウイルス抗原の有無は、免疫組織化学、ウイルス単離もしくは力価測定、または核酸検出(例えば逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR))によって判定することができる。血液サンプルをチャレンジ後に収集し、抗インフルエンザH5N1ウイルス特異的抗体の存在について解析できる。
【0058】
本明細書の開示は例示によって提供され、さらに本発明はそれらに限定されないことは当業者には理解されよう。本明細書の開示および当分野の情報から、当業者は煩雑な実験を実施することなく投与の回数、投与経路、および各免疫プロトコルについて用いられるべき用量を決定することができる。
本発明は、本発明にしたがって作製された治療用組成物の有効量を動物に少なくとも1回投与することを意図する。この投与は、筋肉内(IM)、皮内(ID)もしくは皮下(SC)注射、または鼻内、経卵もしくは経口投与を含む(ただしこれらに限定されない)多様な経路を経ることができる。本発明の治療用組成物はまた、無針装置(例えばPigjet、Dermojet、Biojector、VetjetまたはVitajet装置(Biojet, Oregon, USA))によって投与できる。ある実施態様では動物はトリである。
本発明の別の実施態様は、インフルエンザに対する免疫学的または防御的応答を動物で誘導する方法を実施するためのキットである。前記キットは、組換えNDV免疫学的組成物もしくはワクチンまたは不活化インフルエンザ免疫学的組成物もしくはワクチン、および動物で免疫応答を誘引するために有効な量でのデリバリーの方法を実施するための指示を含む。
本発明をさらに以下の非制限的実施例によって例示する。
実施例
DNA挿入物、プラスミドおよび組換えウイルスベクターの構築は、J. Sambrookらが記載した標準的な分子生物学技術を用いて実施した(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989)。
【実施例1】
【0059】
AVINEW(商標)(NDV)株のリバースジェネティクス開発および異種遺伝子を発現するNDV変異体の作製
本実施例の目的は、AVINEW NDV株のリバースジェネティクスを開発し異種遺伝子を発現する操作NDV変異体を作製することであった。
NDVは、図1Aに示すように6つの主要遺伝子(NP、P、M、F、HNおよびL)を含むマイナスRNAウイルスである。遺伝的に改変したNDVウイルスの作製はリバースジェネティクス系を必要とする。出願人らは、NDVのAVINEWワクチン株を土台にしてリバースジェネティクス系を開発した。この系は、図1Bに示すように、外来遺伝子(例えばインフルエンザのヘマグルチニン(HA))を発現する改変ニューカッスル病ウイルスの作製を可能にする。
実施例1.1:全AVINEW NDVゲノムの転写プラスミドでのクローニングおよび配列解析
AVINEW NDV株のゲノムの配列を決定する目的のために、AVINEW株の全ゲノムを“転写プラスミド”と称するプラスミドでクローニングすることが必要である(図1C参照)。転写プラスミドは、NDVのAVINEW株の完全なゲノムに一致するプラスRNAの作製を可能にする。逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によってAVINEW抽出RNAから増幅させた10個のオーバーラップcDNAフラグメントのセットを連続的に結合させることによりAVINEWゲノムをクローニングする方法は図2に示されている。pIV029(図3参照)と称されるこの最終的なプラスミドは、T7 RNAポリメラーゼ転写シグナル(上流に位置するT7プロモーター)の制御下にあるAVINEWの完全なゲノム配列を含み、肝炎デルタウイルス(HDV)リボザイムで終結する(前記リボザイムは、T7ターミネーターがその後に続く真性のNDVゲノム終結点でRNAを切断するために用いられる)。制限部位をPとMの間に挿入してトランスジーンの挿入を可能にする(図2および3を参照)。
AVINEW(商標)株の完全なゲノムの配列を決定した。AVINEW(商標)ゲノムは長さが15186bpであり、前記はヌクレオキャプシドタンパク質結合モチーフに基づいて予想されるように6ヌクレオチドの倍数である。
pIV029の挿入物の注解付き配列は図4A−4Oに提示されてあり、プラスミドマップは図3に提示されている。図4A−4Oでは、Avinew株の6つのオープンリーディングフレーム(ORF)(NP、P、M、F、HNおよびL)がそれらのアミノ酸配列に翻訳されている。各ORFは、GSおよびGEにより示される、“遺伝子開始”上流配列および“遺伝子終止”下流配列によってフランキングされている。T7プロモーター配列およびT7ターミネーター配列が表示されている。
【0060】
実施例1.2:AVINEW NDVのNP、PおよびL遺伝子を含む発現プラスミドの構築
リバースジェネティクス系では、T7 RNAポリメラーゼプロモーターの制御下でヌクレオキャプシド(NP)、リンタンパク質(P)および大ポリメラーゼタンパク質(L)をコードする“発現プラスミド”と称されるプラスミドを構築することが必要である(図1C参照)。これら3つのタンパク質はウイルスRNAと結合して、最小のNDV感染ユニットであるリボ核タンパク質(RNP)を形成する。NP、PおよびLタンパク質を含むこの複合体はRNA依存RNAポリメラーゼ活性を示す。
発現プラスミドpIV32(図5)、pIV33(図6)およびpIV34(図7)が構築され、T7 RNAポリメラーゼプロモーターおよび口蹄疫ウイルス(FMDV)の内部リボソーム進入部位(IRES)の制御下に、それぞれNP、PおよびL遺伝子を含んでいる。
実施例1.2.1:AVINEW NDVのNP遺伝子を含む発現プラスミドpIV32の構築
発現プラスミドpIV32のマップは図5に示されている。このプラスミドは、T7 RNAポリメラーゼプロモーターおよび口蹄疫ウイルス(FMDV)の内部リボソーム進入部位(IRES)の制御下に、ニューカッスル病ウイルスAVINEW(商標)ワクチン株のヌクレオキャプシド(NP)遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)をコードするヌクレオチド配列を含んでいた。NDV ORF NP(1467bp、配列番号:2)は489アミノ酸ポリペプチド(配列番号:3)をコードする。タンパク質NPはヌクレオキャプシドの主要な構造成分である。このタンパク質はほぼ58kDaである。合計2600個のNP分子がゲノムRNAをしっかりと包みこんでいる。NPはいくつかの他のウイルスコードタンパク質と相互作用し、それらのいずれも複製制御に必要である。(NP-NP、NP-P、NP-(PL)およびNP-V)。NDVゲノムRNA並びにタンパク質PおよびLと結合したNPは、NDVリボ核タンパク質(RNP)複合体を構成し、前記はNVDゲノムの感染形である。
【0061】
実施例1.2.2:AVINEW NDVのP遺伝子を含む発現プラスミドpIV33の構築
発現プラスミドpIV33のマップは図6に示されている。このプラスミドは、T7 RNAポリメラーゼプロモーターおよび口蹄疫ウイルス(FMDV)の内部リボソーム進入部位(IRES)の制御下に、ニューカッスル病ウイルスAVINEW(商標)ワクチン株のリンタンパク質(P)遺伝子のORFをコードするヌクレオチド配列を含んでいた。このプラスミドは、リバースジェネティクス的方法論を用いて、ワクチンベクターとして組換えNDV AVINEW(商標)を作製するために設計された。
NDV ORF P(1185bp、配列番号:4)は、395アミノ酸ポリペプチド、すなわち構造リンタンパク質(配列番号:5)をコードする。このタンパク質は、SDS-PAGEによって決定したとき53から56kDaの分子量を有する。タンパク質Pは、RNAポリメラーゼ複合体の活性に必須であり、Pは大きなサブユニットLと前記複合体を形成する。ポリメラーゼの触媒活性はいずれもLサブユニットと結合しているが、その機能はPとの特異的な相互作用を必要とする。タンパク質LおよびNP並びにNDVゲノムRNAと結合したPは、NDVリボ核タンパク質(RNP)複合体を構成し、前記はNVDゲノムの感染形である。
さらにまた、P遺伝子は、SDS-PAGEでの見かけの分子量が36から38kDaであるタンパク質V(機能は不明)をコードする。PおよびVタンパク質は同じアミノ末端を共有するが、それらのC-末端は多岐にわたる。この相違はRNA編集メカニズムによって生じ、このメカニズムでは鋳型によらない1つのG残基がP遺伝子由来mRNAに挿入される。未編集転写物はPタンパク質をコードし、一方、編集された転写物はVタンパク質をコードする。リンタンパク質であるので、PおよびVは、それらの全長にわたってセリンおよびスレオニン残基に富む。さらにまた、Vタンパク質はC-末端においてシステイン残基に富む。同様に、P遺伝子は、SDS-PAGEでの見かけの分子量が28から33kDaであるタンパク質W(機能は不明)をコードする。このタンパク質もまたRNA編集メカニズムによって生成され、このメカニズムでは鋳型によらない1つのG残基の代わりに2つがP遺伝子由来mRNAに挿入される。
【0062】
実施例1.2.3:AVINEW NDVのL遺伝子を含む発現プラスミドpIV34の構築
発現プラスミドpIV34のマップは図7に示されている。このプラスミドは、T7 RNAポリメラーゼプロモーターおよび口蹄疫ウイルス(FMDV)の内部リボソーム進入部位(IRES)の制御下に、ニューカッスル病ウイルスAVINEW(商標)ワクチン株の大ポリメラーゼタンパク質(L)遺伝子のORFをコードするヌクレオチド配列を含んでいた。このプラスミドは、リバースジェネティクス的方法論を用いて、ワクチンベクターとして組換えNDV AVINEW(商標)を作製するために設計された。
NDV L(6612bp、配列番号:12)は、2204アミノ酸ポリペプチド(前記はLタンパク質(配列番号:13)である)をコードする。パラミクソウイルス科は、他の非分節マイナス鎖RNAウイルスと同様に、2つのサブユニット(大きなタンパク質Lおよびリンタンパク質P)で構成されたRNA依存RNAポリメラーゼを有する。Lタンパク質は複合体にRNAポリメラーゼ活性を付与し、一方、Pタンパク質は転写因子として機能する。タンパク質PおよびNP並びにNDVゲノムRNAと結合したタンパク質Lは、NDVリボ核タンパク質(RNP)複合体を構成し、前記はNVDゲノムの感染形である。
実施例1.3:T7 RNAポリメラーゼを発現させる発現プラスミドの構築
リバースジェネティクス系は、細胞でT7 RNAポリメラーゼが発現されることを要し、この場合NDVウイルスが再生されるであろう(図1C参照)。種々の系を用いてT7 RNAポリメラーゼを発現させることができる。前記には、ベクターとして組換えウイルス(例えばアビポックス)の使用、酵素を構成的に発現する細胞の使用、または発現プラスミドを用いる一過性発現が含まれる。後者の解決法を選択し、HCMV IEプロモーター下にあるT7 RNAポリメラーゼをコードする発現プラスミド(pNS151と称される)を構築した。T7 RNAポリメラーゼは、上記記載の発現プラスミドからNP、PおよびLタンパク質の転写/発現を可能にするだけでなく、NDVゲノム(転写プラスミド中に存在する)をプラスセンスRNAに転写する。このプラスミドのマップは図8に示されている。
【0063】
実施例1.4:リバースジェネティクス系を用いたNDVウイルスの回収
上記に記載した5つのプラスミド(1つはNDVゲノムを含む転写プラスミド、3つはNDV NP、PおよびLを発現する発現プラスミド、およびT7ポリメラーゼを発現する発現プラスミド)をチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に一緒に同時トランスフェクトした。図1Cは、リバースジェネティクス系のメカニズムを説明する模式図である。模式図は、細胞への進入に際して、T7 RNAポリメラーゼが発現され、続いて前記ポリメラーゼが、転写プラスミドからプラスセンスRNA(RNA(+))ゲノムにNDVゲノムを転写し、同様にNP、PおよびL遺伝子を個々の発現プラスミドから転写することを示している。続いて、NP、PおよびLタンパク質転写物は発現されたNP、PおよびLタンパク質として翻訳され、前記は続いてアッセンブリングされてゲノムRNA(+)とともにRNPを形成する。このRNP複合体はマイナス鎖RNAゲノム(RNA(-))を合成し、前記は続いてNDVウイルスの正常な複製周期を開始し、感染性粒子の生成を促進する。トリプシンまたは卵の尿嚢によって提供されるような他の外因性プロテアーゼを培養液に加えて、生成されたウイルスのFタンパク質を切断できる。
この系を用いて、AVINEW NDVの感染性粒子を入手することができる。略記すれば、必要とされる種々のプラスミド(pIV029、pIV32、pIV33、pIV034およびpNS151)をCHO細胞にトランスフェクトした。72時間後、CHO上清を10日齢の発育卵に接種してウイルスを増幅させた。3日後、尿嚢液を収集し、ニワトリ赤血球を用いて血球凝集活性(HA)をチェックした。得られた逆遺伝AVINEW変異体をvAVW01と称した。前記は、PとM遺伝子の間に導入した2つの固有の制限部位(PacIおよびFseI)を除いてAVINEW親ウイルスと同じ配列を含んでいた(図2参照)。
【0064】
実施例1.5:リバースジェネティクス系を用いた外来遺伝子を発現するNDVウイルスの作製
外来抗原を発現する改変NDVウイルスを作製するために、挿入座位の選択が必要であった。NP遺伝子の上流および2つの遺伝子の間を含む種々の座位を選択することができる。この実施例では、AVINEW(商標)NDVのPとM遺伝子の間の部位を選択し、図9に示すように外来遺伝子を挿入した。外来遺伝子は、必要な“開始”および“停止”転写配列とともに挿入する必要があり、さらに、改変NDVゲノムのヌクレオチドの合計数が6の倍数を維持するように、挿入ヌクレオチドの数を予定する必要がある。
本実施例は、トリインフルエンザ由来ヘマグルチニン(HA)遺伝子を発現するAVINEW変異体の作製を詳述する。HA遺伝子をまず初めに転移プラスミドに挿入した(このプラスミドは、pIV029のPacIおよびFseI固有制限部位に外来遺伝子およびフランキング配列の挿入を可能にする)。転移プラスミドの構造は図9に示されている(枠内)。前記は、左から右に、PacI部位、PacI部位から下流にPの3’UTR、Pの遺伝子終点(またはSTOP)配列、P/Mインタージーン、Mの遺伝子開始(またはSTART)配列、Mの5’UTR、マルチクローニング部位、P(PacI部位から上流)の3’UTRおよびFseI部位を含んでいる。HA遺伝子を図9に記載した転移プラスミドのマルチクローニング部位でクローニングし、続いて全PacI/FseI挿入物をpIV029の同じ制限部位でクローニングし、外来遺伝子を含む転写プラスミドを生成した。そのような転写プラスミドの例(pIV039)は、図10に示されている。この実施例では、高度に病原性のH5N1トリインフルエンザウイルスA/ニワトリ/インドネシア/7/2003のHA遺伝子のアミノ酸配列をコードする、切断部位で改変された合成遺伝子が転写プラスミドに挿入された。
リバースジェネティクスによるAVINEW変異体の作製に必要な4つのまた別の発現プラスミド(実施例1.4を参照されたい)と一緒に前記転写プラスミドpIV039を用いて、高度に病原性(HP)のH5N1トリインフルエンザ(AI)ウイルスA/ニワトリ/インドネシア/7/2003に由来するHA遺伝子を発現する、vAVW02と称するAVINEW(商標)変異体を作製した。
同じ方法を用いて、種々のHPAI H5N1または低病原性AI(LPAI)H9N2に由来するHA遺伝子を発現する種々のAVINEW変異体を作製した。種々のH5N1およびH9N2 AI単離株に由来する挿入HA遺伝子の配列に図12に示す配列番号を割り当て、DNAおよびタンパク質配列の両方は配列表に含まれている。出願書類とともにファイルして電子的に提出した配列表の内容は参照によりその全体が本明細書に含まれる。
上記に記載した方法を、種々のHPAI H5N1または低病原性AI(LPAI)H9N2に由来するHA遺伝子を発現する感染性AVINEW変異体の回収のために用いて成功した(表1参照)。
【0065】
表1:種々のトリインフルエンザ単離株から作製され、前記単離株由来の合成HA遺伝子を発現する種々のAvinew変異体。LPAI H5単離株の切断部位の配列とマッチさせるために、HPAI H5N1由来の全てのHA遺伝子の切断部位に変異が導入された。
【0066】
実施例1.6:リバースジェネティクス系を用いた外来遺伝子を発現するNDVウイルスの製造と性状決定
全ての操作AVINEW変異体を発育卵で引き続いて継代することにより増幅し性状を決定した。組換えウイルスは本来のAVINEW(商標)ウイルスと同様な力価(8から10 log EID50/mL)まで増殖し、外来遺伝子挿入は発育卵でのウイルスの複製に顕著な影響を与えないことが示唆された。発育卵で2回目または3回目に得られた感染力価の例は表2に示されている。
H5トランスジーンの発現は、感染CHO細胞での間接免疫蛍光並びに尿嚢液およびCHO感染細胞溶解物でのイムノブロット(ウェスタンブロットまたはWB)によって確認した(例としてvAVW02について図11Aおよび11Bを参照されたい)。H5の電気泳動プロフィルは予想した通りであった。尿嚢液中のプロテアーゼの存在のために、適切なHA切断生成物(すなわちHA1(50kDa)およびHA2(28kDa)が検出された。卵で増殖したウイルスを感染させたCHO細胞では(トリプシン非存在下)、出願人らはHA0型(75kDa)のみを検出した(図11A)。
NDVビリオンの表面での外来HAタンパク質の発現は、例としてvAVW02を用い免疫電子顕微鏡によって確認した(図2B参照)。
【0067】
表2:種々のトリインフルエンザ単離株から作製され前記由来の合成HA遺伝子を発現するAvinew変異体の収量と発現の制御
【実施例2】
【0068】
ニワトリ実験1:操作AVINEW変異体によってニワトリに誘導されるニューカッスル病に対する防御並びにNDおよびAI HI力価
本実験の目的は、AVINEW株ゲノムへの外来遺伝子の挿入がニューカッスル病(ND)に対するニワトリの防御能力を低下させないことを証明することであった。ワクチン免疫スケジュールは図3Aの上段パネルに示されている。AVINEWワクチンおよび2つの操作AVINEW変異体(挿入物を全く含まないvAVW01(表1参照)およびHPAI H5N1 HA挿入物を含むvAVW03)によって誘導された防御率は図3Aの下段の表に示されている。類似レベルのND防御が3つのワクチンの3つの試験用量によって誘導され、この試験条件下ではHerts33株によるベロジェニックNDVチャレンジに対するベクターの防御能力に対してHA挿入の負の影響は存在しないことを示した。
【実施例3】
【0069】
NDVおよび/またはAIに対する母親由来抗体(MDA)をもつまたはもたないSPF鶏で操作AVINEW変異体によって誘導されるH5N1 HPAIに対する防御
実施例3.1:ニワトリ実験2:操作AVINEW変異体の1回投与によりSPF鶏で誘導されるハンガリー(2006)H5N1 HPAIに対する防御
操作AVINEW変異体vAVW03のHPAI H5N1チャレンジに対する有効性をSPF(特定の病原体をもたない、specific pathogen free)鶏で評価した。8匹の1日齢SPF鶏を点眼(ED)および鼻内(IN)ルートによって105 EID50でワクチン免疫した(D0)。H5N1チャレンジ(各雛当たりH5N1クレード2.2 A/アヒル/ハンガリー/11804/2006単離株の6 log10)をワクチン免疫後4週(D28)および6週(D42)で実施した。チャレンジ後2週間までニワトリをモニターした。結果は表3および表Aに示されている。
【0070】
表3:ニワトリ実験2:操作vAVW03変異体によりSPF鶏で誘導されるHPAI H5N1(A/アヒル/ハンガリー/11804/2006)チャレンジに対する防御の有効性を評価するワクチン免疫-チャレンジ実験の臨床的防御結果
aMTD:日数で表した死亡までの平均時間
【0071】
表A:ニワトリ実験2:操作vAVW03変異体によりSPF鶏で誘導されるHPAI H5N1(A/アヒル/ハンガリー/11804/2006)チャレンジに対する防御有効性を評価するワクチン免疫-チャレンジ実験のウイルス排出防御の結果
【0072】
a排出は、チャレンジ後2、4および7日(dpc)に採取した口内および総排泄腔スワブからリアルタイムPCRを用いて判定した。
【0073】
完全および部分的(75%)な臨床的防御がD28およびD42でそれぞれ誘導された。検出可能量のチャレンジウイルスを排出するニワトリの数はワクチン免疫グループで減少した。さらにまたワクチン免疫グループ(2および4)の2dpcにおけるウイルス排出レベルは、コントロールの排出レベルよりもD28およびD42でのチャレンジ後にそれぞれ3 log10および約2 log10以上低かった。総合すれば、これらの結果は、HPAI HA遺伝子を発現するAvinewベクターはSPF鶏で防御能力を有することを示している。
【0074】
実施例3.A:ニワトリ実験A:操作AVINEW変異体の1回投与によりSPF鶏で誘導されるエジプト(2006)H5N1 HPAIに対する防御
操作AVINEW変異体vAVW03のエジプトHPAI H5N1チャレンジに対する有効性をSPF(特定病原体をもたない)鶏で評価した。10匹の1日齢SPF鶏を点眼(ED)および鼻内(IN)ルートによって106 EID50でワクチン免疫した(D0)。H5N1チャレンジ(各雛当たりH5N1クレード2.2 A/ニワトリ/エジプト/06959-NLQP/2006単離株の6 log10)をワクチン免疫後3週(D21)で実施した。チャレンジ後2週間ニワトリをモニターした。結果は表Bに示されている。
【0075】
表B:ニワトリ実験2:操作vAVW03変異体によりSPF鶏で誘導されるHPAI H5N1(A/アヒル/ハンガリー/11804/2006)チャレンジに対する防御有効性を評価するワクチン免疫-チャレンジ実験の臨床的防御結果
優れた(90%)臨床的防御がD21でこのエジプトHPAI H5N1単離株に対して誘導され、HPAI HA遺伝子を発現するAvinewベクターはSPF鶏で防御を誘導することが確認された。
実施例3.B:ニワトリ実験B:操作AVINEW変異体の1または2回投与またはプライム-ブースト免疫スケジュールによりSPF鶏に誘導されるハンガリー(2006)H5N1 HPAIに対する防御
操作AVINEW変異体vAVW03のハンガリー(2006)HPAI H5N1チャレンジに対する有効性を、不活化ワクチンによる1、2回投与またはプライム-ブースト免疫スケジュール後にSPF(特定病原体をもたない)鶏で評価した。8匹の1日齢SPF鶏を点眼(ED)および鼻内(IN)ルートによって105 EID50でD0(グループ2、3および4)およびD14(グループ3)にワクチン免疫した。グループ3のニワトリには、H5N9 A/ニワトリ/イタリア/A22/1998 LPAI単離株を用いて作製した不活化ワクチンを投与した(0.5mL/ニワトリ)。H5N1チャレンジ(各ニワトリ当たりH5N1クレード2.2 A/アヒル/ハンガリー/11804/2006単離株の6 log10)を2回目のワクチン免疫後4週(D42)で実施した。チャレンジ後2週間ニワトリをモニターした。結果は表Cに示されている。
【0076】
表C:ニワトリ実験B:vAVW03変異体を含む種々のワクチン免疫スケジュールにより誘導されるHPAI H5N1(A/アヒル/ハンガリー/11804/2006)チャレンジに対する防御有効性を評価するワクチン免疫-チャレンジ実験の防御結果
*MTD:日数で表した死亡までの平均時間
**dpc:チャレンジ後日数
***不活化(または殺滅)AI H5N9ワクチンは、H5N9 A/ニワトリ/イタリア/A22/1998 LPAI単離株を用いて調製した。
【0077】
優れた臨床的防御が3つのワクチン免疫グループで誘導された。チャレンジウイルスの排出レベルの低下と同様にウイルスを排出するニワトリ数の低下がワクチン免疫によって誘導された。もっとも高い防御実績は、プライム-ブースト免疫スケジュールを受けたグループ4のニワトリで得られた。これらの結果は、HPAI HA遺伝子を発現するAvinewベクターはSPF鶏に防御を誘導することを確認し、さらに防御レベルはプライム-ブースト免疫スケジュールによって改善できることを示している。
【0078】
実施例3.C:ニワトリ実験C:操作vAVW03変異体を含む種々のワクチン免疫スケジュールにより誘導されるSPF鶏での変種エジプト(2008)H5N1 HPAI単離株に対する防御
種々のワクチン免疫スケジュール(表D参照)に含まれる操作AVINEW変異体vAVW03の2008年変種エジプト単離株(A/ニワトリ/エジプト/1709-6/2008)を用いるHPAI H5N1チャレンジに対する有効性を1日齢のSPF(特定病原体をもたない)鶏で評価した。ワクチンスケジュールは表Dに示されている。vAVW03ワクチンを106 EID50/100μLの用量で眼内(50μL)および鼻内(50μL)ルートによりD0(グループ2および3)およびD14(グループ2および4)に投与した。グループ3のニワトリには、H5N1クレード2.3 A/アヒル/Anhui/2006 LPAI単離株由来HA(切断部位で改変)およびNAを含むリバースジェネティクスH5N1株を用いて作製した不活化ワクチンを投与した(0.5mL/ニワトリ)。グループ4のニワトリには、H5N8 HPAI A/シチメンチョウ/アイルランド/1378/1983単離株に由来するHAを発現する鶏痘組換え体vFP89(TROVAC-AIV H5ワクチン、US2008/0107681およびUS2008/0107687を参照されたい)をマレック病ワクチン希釈剤(メリアルの特許物質)で希釈して市販用量(約3.5 log10 TCID50/200μL)で皮下ルートにより首の筋肉にD0に投与した。H5N1チャレンジ(各雛当たりH5N1クレード2.2 A/ニワトリ/エジプト/1709-6/2008単離株の5 log10)を2回目のワクチン免疫後2週(D28)で実施した。チャレンジ後10日間ニワトリをモニターした。結果は表Dに示されている。
【0079】
表D:ニワトリ実験C:vAVW03変異体を含む種々のワクチン免疫スケジュールにより誘導されるHPAI H5N1(A/ニワトリ/エジプト/1709-6/2008)チャレンジに対するSPF鶏での防御有効性を評価するワクチン免疫-チャレンジ実験の臨床的防御結果
* H5N1抗原はA/シチメンチョウ/トルコ/1/2005抗原から調製した;SD=標準偏差
** MTD:日数で表した死亡までの平均時間
【0080】
種々のワクチン免疫スケジュールによって誘導されたHI力価は表Dに示されている。期待されたように、高いHI力価が不活化ワクチンによるブースト後にグループ3で得られた。優れた臨床的防御(93−100%)が3つのワクチン免疫グループで誘導された。A/ニワトリ/エジプト/1709-6/2008単離株(HAタンパク質配列はGenBank(ACD65000.1)で入手できる)はエジプトで最近出現したH5N1抗原変種の1つであり、前記に対して市販の不活化H5ワクチンは古いエジプト株に対するよりも低い防御しか提供し得ないことは記載する価値があろう。これらの結果は、HPAI HA遺伝子を発現するAvinewベクターはSPF鶏で抗原性変種H5N1エジプト単離株に対し防御を誘導することを確認した。
【0081】
実施例3.2:ニワトリ実験3:NDVおよび/またはAI MDAをもつニワトリおよびもたないニワトリで操作AVINEW変異体により誘導されるH5N1 HPAIに対する防御
本実験の目的は、H5N1 HPAI HA遺伝子を発現するAVINEW変種vAVW03により誘導されるHPAI H5N1防御レベルをSPF鶏で評価し、さらにNDVベクターに対するおよび/またはAIに対する母親由来抗体(MDA)により発生し得る干渉を評価することである。
AI防御に対するMDAの影響を評価するために、表4に示すようにSPF繁殖鶏を種々のワクチン免疫スケジュールにより免疫する必要があった。繁殖鶏には以下の3つのグループが存在した:第一のグループ(G1)は、NDV(AVINEWの3回投与および不活化(または殺滅)ワクチンの1回投与)およびAI(H5N9 A/ニワトリ/イタリア/A22/1998 LPAI単離株を土台にした不活化ワクチンの3回投与)に対してワクチン免疫した;第二のグループ(G4)にはNDVのみに対してワクチン免疫した(グループ1と同じ免疫スケジュール);さらに第三のグループ(G5)にはAIのみでワクチン免疫した(A/ガン/Guandon/1996単離株由来のHAおよびNA遺伝子を含むH5N1変異体を土台にした不活化ワクチンの2回投与)(詳細は表4を参照されたい)。
【0082】
表4:NDおよび/またはAI MDAをもつ1日齢のニワトリを得るために用いたSPF繁殖鶏のワクチン免疫スケジュール
*L=生NDVワクチンAVINEW;K=殺滅NDVワクチン(Gallimune 407)
**不活化(または殺滅)AI H5N9ワクチンはH5N9 A/ニワトリ/イタリア/A22/1998 LPAI単離株を用いて調製した。
***不活化(または殺滅)AI H5N1ワクチンは、H5N1 A/ガン/Guandong/1996 HPAI単離株由来のHAおよびNA遺伝子を含むAI変異体を用いて調製した。
【0083】
ニワトリは、これらの免疫繁殖鶏が産んだ卵から孵化し、MDAをもつこれらニワトリでvAVW03により誘導されるHPAI H5N1有効性を、MDAをもたないSPF鶏で誘導されたものと比較した。
図13は、表4に示した免疫繁殖鶏から孵化した1日齢のニワトリで観察された平均MDV力価およびAI HI力価(log2)を示している。NDV力価は、NDワクチン免疫繁殖鶏の両方のグループで非常に高かった(G1およびG4)。H5N1クレード2.2(A/アヒル/ハンガリー/11804/2006)およびH5N9(A/ニワトリ/イタリア/A22/1998)抗原で測定したAI HI力価は、不活化H5N1ワクチンで免疫したG5繁殖鶏のニワトリ子孫でより高かった。これらの結果は、ワクチン免疫SPF鶏から孵化した1日齢のニワトリの予想されるMDAの存在を確認した。
図14は、MDAをもつまたはMDAをもたないSPF鶏の免疫およびチャレンジプロトコルのタイムコースを示す。通常のSPF鶏由来またはワクチン免疫SPF繁殖鶏由来1日齢ニワトリを、A/シチメンチョウ/トルコ1/2005 HPAI H5N1単離株由来HA遺伝子を発現するvAVW03(10匹のニワトリ)またはいずれのHA挿入物も含まず、コントロールとして用いられたvAVW01(10匹のニワトリ)の105 EID50で眼鼻ルートにより免疫した。ワクチン接種後3週間して、全てのニワトリをHPAI H5N1 A/アヒル/ハンガリー/11804/2006単離株の6 log10で眼鼻ルートによりチャレンジした。チャレンジ後2週間、ニワトリを臨床症状および死亡率について観察した。表5は、ワクチン免疫スケジュールおよびトリインフルエンザ防御結果の要約である。
【0084】
表5:SPF繁殖鶏および種々のMDAをもつニワトリでH5N1 HA発現AVINEW(商標)変異体(vAVW03)により誘導されるIA防御
【0085】
vAVW01でワクチン免疫されたAI MDAをもたないニワトリ(グループ1および5)の急速な死亡率(平均死亡時間3.6−3.8日)はチャレンジを立証した(表5および図15を参照されたい)。1日齢のSPF鶏への1回のvAVW03の粘膜投与後、HPAI H5N1防御レベルは90%のニワトリを防御した。驚くべきことに、NDVのみでワクチン免疫された繁殖鶏(表4のG4)から孵化した全てのvAVW03免疫鶏(グループ6)はHPAIチャレンジから防御され、AI防御に抗ベクターNDV MDA干渉は存在しないことが示された。AIV MDAの影響の評価はより困難であった。なぜならば、チャレンジ後コントロールグループで10匹のうち7匹および1匹しか死ななかったからである(グループ3および7)。しかしながら、vAVW03でワクチン免疫された7/9のトリ(グループ4)が防御され、防御はNDV MDAおよびAI MDAの両方の存在下で誘導され得ることが示された。チャレンジ後に死んだワクチン免疫鶏は、非ワクチン免疫鶏と比較してより後の時期に死んだ(表5の平均死亡時間および図15の死亡率カイネティクスを参照されたい)。表6は、口内および総排泄腔のウイルス排出が陽性であるニワトリ数を示し、図16は、チャレンジ後の口内(16A)および総排泄腔(16B)のウイルス排出カイネティクスを示している。vAVW01/vAVW03のウイルス排出レベル比もまた、口内スワブ(16C)および総排泄腔スワブ(16D)について図16に示されている。vAVW03ワクチン免疫鶏は、vAVW01ワクチン免疫鶏と比較してチャレンジ後にはるかに少ないウイルスを排出し、さらに陽性スワブの数も低かった。
【0086】
表6:8つの被検グループのH5N1ウイルス排出を、H5N1 HPAIチャレンジ後2、4および7日後(dpc)の口内スワブおよび総排泄腔スワブでマトリックス遺伝子を標的とするリアルタイム逆転写酵素PCR(RRT-PCR)によって評価した
*v01=vAVW01およびv03=vAVW03
【0087】
図17は、ワクチン免疫後(D21)およびチャレンジ後(D35)のvAVW03誘導AIV HI力価に対するNDV MDAの影響を示す(H5N1 クレード2.2(A/アヒル/ハンガリー/11804/2006)およびH5N9(A/ニワトリ/イタリア/A22/1998)抗原を使用)。NDV MDAの存在下で(NDV)21日目(ワクチン免疫後およびチャレンジ前)には、ワクチン免疫後の平均AIV HI力価はより高く、さらに両抗原に対して検出可能なHI力価をもつニワトリの数はより多かった。35日目(チャレンジ後)には、NDVのみでワクチン免疫された繁殖鶏の子孫でAIVチャレンジ後にAIV HI力価の上昇はなく、10/10(それに対してSPFグループでは9/10)のニワトリが防御された。MDAをもたないSPF鶏で、チャレンジ後のAIV HI力価の明確な増加は、これらのニワトリではチャレンジウイルスがある程度複製することを示唆している。これらの結果は、NDV MDAを有するニワトリでの予想外の良好なAIV抗体誘導および防御を示唆している。
図18はワクチン免疫後(D21)のNDV HI力価を示している。21日目には、vAVW01誘導NDV力価は、vAVW03によって誘導される力価よりも通常高かった。21日目では、NDV HI力価に関してNDV MDAをもつニワトリ(G1(H5+NDV)またはG4(NDV)繁殖鶏由来)と持たないニワトリ(SPFまたはG5(H5N1)繁殖鶏由来)で相違は存在せず、NDV MDAはvAVW01またはvAVW03誘導NDV HI力価に対して干渉しないことを示唆した。
総合すれば、本実験の結果は、1日齢ニワトリへの比較的低い用量(5 log10 EID50)のAVINEW 操作変異体vAVW03の1回の粘膜投与はHPAI H5N1チャレンジに対して優れた防御レベルを誘導することを明確に示している。抗ベクター(NDV)MDAの存在は、AI防御に対して負の影響を与えなかった。対照的に、さらに驚くべきことには、防御およびAI抗体データは、1日齢のニワトリでvAVW03ワクチン免疫時にNDV MDAが存在する場合に、より良好なAI防御が存在することを示唆している。これらの結果はまた、AI防御は、母親由来NDVおよびAI抗体の両方を有するトリでvAVW03により誘導され得ることを示している。
【実施例4】
【0088】
操作AVINEW変異体により誘導されるアヒル雛のH5N1 HPAIに対する防御
アヒルは自然の状態でNDVに感染し、さらにトリインフルエンザAウイルスのための保菌動物である。高度に病原性の株に感染したとしてもAI感染後にアヒルは必ずしも臨床症状を示さないことがあるが、感受性が高いニワトリにウイルスを伝播する。これが、アヒルはAIのトロイの木馬と言われる理由である。本実験の目的は、操作NDVをアヒルでインフルエンザ用ベクターワクチンとして使用できるか否かを調べることであった。
実施例4.1:14日齢モスコビーアヒル雛でのアヒル実験1
本実験の目的は、2つの異なるH5N1クレード(vAVW02はクレード2.1 A/ニワトリ/インドネシア/7/2003のHA遺伝子を発現し、vAVW03はクレード2.2 A/シチメンチョウ/トルコ1/2005を発現する)に由来する合成HA遺伝子を発現する2つのAVINEW操作変異体の(1)免疫原性および(2)前記変異体によって誘導されるH5N1有効性を、親のAvinew株の有効性と通常のモスコビーアヒルで比較することであった。
実施例4.1.1:アヒル実験1:操作Avinew変異体のアヒル雛での免疫原性
1日齢のモスコビーアヒル雛をNDVおよびAIV血清学について試験し、驚くべきことに、7/10のアヒルの雛がNDVについて血清陽性であることが判明し、平均HI力価は3.9 log2であった。AI HI試験については全ての血清が陰性であった。10匹のアヒルから13日齢で採取した別の血液サンプルはND HI力価について陰性を示し、本実験は、アヒルが14日齢のときに開始した。3つのグループを設定し、各々で10匹にワクチンが接種され、7匹が接触コントロールのアヒルであった。接触コントロールはワクチン接種日(D0およびD21)に離し、次の日にグループに戻した。5匹のワクチン非接種コントロールの第四のグループも含まれていた(表7参照)。
【0089】
表7:アヒル実験1:HA発現AVINEW変異体の免疫原性評価のためのグループ設定
【0090】
NDVおよびAI HI試験並びにAI SN試験(MDCK細胞順化M6 11804 H5N1 HPAIハンガリー株を使用)のために、血液サンプルをD0、D21およびD42に採取した。NDV特異的リアルタイムPCR(プライマーM4100およびM4220並びにプローブM4169)(Wise et al. (2004) J Clin Microbiol 42:329-348)のために、咽頭および総排泄腔スワブをワクチン免疫動物でD4、D7およびD12に、接触動物でD7およびD12に採取した。
結果は、有害反応は観察されないことを示し、3つのワクチンはこれらの条件下では安全であることを示した。グループ4(ワクチン非接種コントロール)の全てのサンプルがPCRおよび血清学について陰性であった。グループ1から3のワクチン非接種接触鳥の全てのサンプルはPCRおよび血清学について陰性であり、このワクチンはワクチン免疫鳥から接触動物に伝播しないことを示した。NDV HI力価は図19に示されている。D21には、G1のHI力価(3.6 log2;100%が3 log2以上)はG2(100%が3 log2未満)およびG3(3/10が3 log2以上)のそれより顕著に高かった。しかしながら、2回目の投与後3週間の平均NDV HI力価は、3つのワクチン接種グループ(グループ1、2および3でそれぞれ5.1、5.7および6.1 log2)で類似していた(ANOVA;p=0.682)。
AI H5N1 HI力価は図20に示されている。検出可能なHI力価(3 log2以上)は、G2およびG3のアヒル(ただし4 log2 のHI力価を有していたG2の1匹のアヒルを除く)では最初のワクチン接種後のD21に認められなかった。第二の投与後、全てのアヒルのHI力価は3 log2以上で、平均力価は約4 log2であった。2つのAVINEW変異体AVW02およびAVW03によって誘導されたAI HI力価に顕著な相違は両方の時点で認められなかった。
AI H5N1血清中和(SN)力価は図21に示されている。検出可能なSN力価(2 log2以上)は、G2およびG3のアヒル(ただし2または3 log2 のSN力価を有していたG3の2匹のアヒルを除く)では最初のワクチン接種後のD21に認められなかった。第二の投与後、全てのアヒルのHI力価は3 log2以上で、平均力価は約6.2 log2であった。2つのAVINEW変異体AVW02およびAVW03によって誘導されたAI HI力価に顕著な相違は両方の時点で存在しなかった。
NDV PCR:NDV PCRの結果は表8に示されている。グループ1および3の数匹のアヒルのみが第一および第二のワクチン接種後に陽性であることが判明した。全ての陽性サンプルは、グループ3のD28の1つのスワブを除いて咽頭スワブ由来であった。2回目のAVINEWの投与後D25に陽性であった2匹のアヒルは、最初の投与後D3およびD7の両方で陽性の鳥だけであった。グループ2の全てのサンプルは、抗NDおよび抗AI抗体の誘導にもかかわらず陰性であった。
【0091】
表8:アヒル実験1:咽頭および総排泄腔スワブのNDVリアルタイムPCR試験の結果
(陽性アヒルの数/総数)
*全ての陽性サンプルは、グループ3のD28での3匹の陽性の鳥の1匹(その総排泄腔スワブが陽性であった)を除いて咽頭スワブ由来であった。
【0092】
要約すれば、本実験はAVINEWの安全性を確認し、AVINEW-AI変異体へのHA遺伝子の挿入はアヒルの雛に有害反応を誘導しないことを示した。AVINEWは、1回目の投与後に2つの被検AVINEW-AI変異体よりも顕著に高いNDV HI力価を誘導し、HA遺伝子の挿入はNDVの複製をわずかに障害することを示唆した。AVW-AI変異体の10ニワトリ用量の2回の点眼投与が、全てのアヒルで陽性のNDVおよびAI HI力価とともに陽性のAI SN力価を誘導するために必要であった。2つの異なるクレード(vAVW02ではクレード2.1およびvAVW03ではクレード2.2)由来のHA遺伝子の存在にもかかわず、2つの被検AVINEW-AI変異体のクレード2.2 H5N1抗原に対する免疫原性には相違は存在しなかった。AVINEWおよびvAVW03でワクチン免疫された数匹の鳥のみが主として咽頭スワブにウイルスを排出した。しかしながら、この排出は、全実験を通して陰性を維持した接触アヒルにワクチンウイルスを伝搬するためには不十分であった。この実験の幾匹かのアヒルをその後H5N1ハンガリー単離株でチャレンジした。チャレンジの結果は実施例4.1.2に提示されている。
【0093】
実施例4.1.2:アヒル実験1:モスコビーアヒルで操作Avinew変異体により誘導されるH5N1防御
H5N1チャレンジ実験を、vAVW02またはvAVW03でワクチン免疫した数匹のアヒルで実施した(実施例4.1.1を参照されたい)。vAVW02またはvAVW03の点眼により2回ワクチン免疫したアヒルのうち4匹を9週齢でチャレンジした。グループ1の(AVINEW)の2匹のアヒルを陰性コントロールとして用いた。vAVW02およびvAVW03ワクチン免疫グループの平均H5 HI力価は5.5 log2(4匹が5 log2、4匹が6 log2)で、平均SN力価は4.0 log2(1匹が3 log2、6匹が4 log2、および1匹が5 log2SN力価)であった。8匹のワクチン免疫アヒルおよび2匹のコントロールアヒルを、HPAI H5N1 A/アヒル/ハンガリー/11804/2006(M6 11804)株の4.7 log10 EID50のIM投与によりチャレンジした。チャレンジ後2、7および10日で総排泄腔および咽頭スワブを入手し、さらに剖検時に心臓、膵臓、脳および脾臓をサンプル採取し、PCRおよび組織病理学によって試験した。
結果は表9に要約されている。2匹のコントロールは感染後48時間以内に死んだ。口鼻スワブおよび総排泄腔スワブは、脳、膵臓、心臓および脾臓とともにPCRによりH5N1陽性であった。種々の器官の組織病理学は超急性H5N1感染の徴候を示した。8匹のワクチン免疫アヒルでは、10日間の観察期間中臨床症状は観察されなかった。ウイルス排出は、8匹のワクチン免疫アヒルのうち3匹(G2の2匹およびG3の1匹)の咽頭スワブでチャレンジ3日後に検出されただけであった。これらの陽性アヒルのうちの1匹(G3の1匹)が、総排泄腔スワブのAI PCRについてもまた陽性であった。全ての他のスワブおよび器官は陰性であった。病巣はワクチン免疫アヒルの器官では見出されなかった。
【0094】
表9:アヒル実験1:14日齢のモスコビーアヒルの雛でAVINEWベクターワクチンにより誘導される防御結果の要旨
【0095】
結果は、IMチャレンジは2つのコントロール鳥で非常に激烈であることを示した。完全な臨床的防御および部分的なウイルス排出防御が、H5N1単離株に由来する合成H5遺伝子を発現するAVINEWベクターにより2回の点眼でワクチン免疫した8匹のアヒルで観察された。
【0096】
実施例4.2:1日齢のモスコビーアヒル雛でのアヒル実験2
本実施例のアヒル実験の目的は、クレード2.2 A/シチメンチョウ/トルコ/1/2005由来の合成HA遺伝子を発現するvAVW03 AVINEW変異体の1回または2回投与により1日齢のモスコビーアヒルの雛に誘導される免疫原性(実施例4.2.1)および有効性(実施例4.2.2)を比較することであった。
実施例4.2.1:1日齢のアヒル雛における操作AVINEWの免疫原性
本実験に用いた動物は1日齢のモスコビーアヒルの雛で、前記はいずれもNDV(HI)およびAIV(HIおよびSN)血清学について陰性であることが見出された。3つのグループを設定し、各々において10匹がワクチン免疫アヒルおよび5匹が接触コントロールアヒルであった。接触アヒルはワクチン接種の日(D0およびD21)に離し、次の日に該当グループに戻した。ワクチン非接種コントロールの第三のグループも含まれていた(表10参照)。グループ1および2の10匹のワクチン接種アヒルの雛に、D0(グループ1および2)およびD14(グループ2のみ)に6.5 log10 EID50のvAVW03を含む50μLの点眼によりワクチン接種を実施した。
【0097】
表10:アヒル実験2:HAを発現するAVINEW変異体vAVW03の1回または2回投与の免疫原性を評価するためのグループ設定
【0098】
血液サンプルをD0、D14およびD35に採取し、HI試験を用いてNDV(LaSota抗原)およびAI(M6 11804 HPAI H5N1ハンガリー/2006抗原)抗体について、さらにSN試験(MDCK細胞順化M6 11804 H5N1 HPAIハンガリー株を使用)によりAIについて試験した。
有害な反応は観察されず、1日齢のモスコビーアヒルの雛に対するvAVW03の安全性が確認された。NDV HI力価およびAI SN力価は図22A およびBにそれぞれ提示されている。D14では、vAVW03の1回目投与後2週間で10/20のワクチン免疫アヒルのみが検出可能なNDV HI力価を示し(3 log2以上)、さらに8/20のみが検出可能なH5N1 SN力価を示した。D35では、HIおよびSN力価は、グループ1では同じように低いままで(6/10がNDV HI試験で陽性で(平均は2.9 log2)、8/10がSN H5N1試験で陽性(平均は1.3 log2)であった)、グループ2ではvAVW03の2回目投与後に増加した。コントロールグループ(グループ3)由来サンプルはいずれもNDV HI試験およびH5N1 SN試験の両方で陰性であった。グループ1および2のワクチン非接種接触アヒル由来の全ての血清もまたNDV HIおよびH5N1 SNについて陰性であったが、ただしNDV(3 log2)およびSN H5N1(1 log2)について血清が転換したグループ2の1匹のアヒルを除く。このことは、vAVW03ワクチンは、ワクチン接種されたアヒルから5匹のワクチン非接種接触アヒルのうちの1匹に広がったことを示唆している。この実験の幾匹かのアヒルに引き続いてH5N1ハンガリー単離株をチャレンジした。チャレンジの結果は実施例4.2.2に提示されている。
これらの結果は、1日齢アヒルの雛におけるvAVW03の安全性が確認されたことを示した。1日齢のモスコビーアヒル雛への6.5 log10 EID50のvAVW03の1回点眼投与は、40−50%の鳥で低いNDV HI力価およびH5N1 SN力価を誘導しただけであった。NDVおよびSN H5N1力価における明瞭なブースター効果が、vAVW03の2回目の点眼投与後に観察された。D0およびD14に2回ワクチン免疫されたグループ2のアヒルと接触状態に置いた1匹のワクチン非接種アヒルで低い抗NDVおよび抗H5N1抗体が検出されたことは、以前の実験とは対照的に、水平伝播がこの試験条件下では低い頻度で起こり得ることを示唆している。
【0099】
実施例4.2.2:アヒル実験2:1日齢アヒル雛における操作AVINEW-AI変異体のAI H5N1有効性
クレード2.2のHA遺伝子を発現するvAVW03 AVINEW-AI変異体(実施例4.2.1参照)で1回または2回ワクチン免疫した数匹のアヒルで、H5N1チャレンジ実験を実施した。
グループ1(D0で1回投与)およびグループ2(D0およびD14で2回投与)由来の4匹のアヒルとともに、グループ1および2の鳥と接触させた2匹のワクチン非接種アヒル
並びにグループ3の2匹のワクチン非接種アヒルを5週齢でチャレンジした。10匹のワクチン接種、4匹の接触、および2匹のコントロールアヒルを、HPAI H5N1 A/アヒル/ハンガリー/11804/2006(M6 11804)株の4.7 log10 EID50の口鼻投与によりチャレンジした。総排泄腔スワブおよび咽頭スワブを4日目、7日目および死亡時に採取した。チャレンジ後10日または死亡時に、心臓、膵臓、脳、肝臓および脾臓サンプルを剖検時に採取し、PCRおよび組織病理学により試験した。
個々の結果は表11に示されている。グループ2の2匹のコントロールは感染後48時間以内に死亡した。口鼻スワブおよび総排泄腔スワブは、脳、膵臓、心臓および脾臓とともにPCRによりH5N1について陽性であった。種々の器官の組織病理学は超急性H5N1感染の徴候を示した。グループ1および2の10匹のワクチン免疫アヒルでは、10日間の観察期間中臨床症状は観察されなかった。グループ1の1匹のアヒル(#402)は検出可能なNDVおよびH5N1抗体をもたず、さらに別のアヒル(#403)は低いNDV HI力価を有しただけであった。この結果は、臨床防御に関しては、これらの抗体試験は完全には予想に役立ち得ないことを示した。ウイルス排出は、D4にはグループ1の5匹のアヒルのうち3匹(両スワブで2匹および咽頭スワブで1匹のみ)、グループ2の1匹のアヒルのみ(咽頭スワブのみ)で検出された。D7には、グループ1およびグループ2の1匹のアヒルのみが咽頭スワブでウイルス排出について陽性であった。全ての他のスワブおよび器官は陰性であった。病巣はワクチン接種アヒルの器官では見出されなかった。グループ1および2のワクチン接種鳥と接触状態で維持した全てのワクチン非接種アヒルは2または3日以内に死に、グループ3のコントロールアヒルのように、それらのスワブおよび器官でPCR解析で陽性であった(ただし完全に防御されたグループ2の1匹の接触アヒル(#429)を除く)。興味深いことに、チャレンジ時に低レベルのNDVおよびH5N1抗体を示したのはこのただ1匹のアヒルであり、このワクチンは、ワクチン免疫アヒルからこの接触アヒルに伝搬されたことを示唆した。このアヒルは臨床症状を全く示さず、そのスワブおよび器官はPCRで陰性であった。チャレンジ後に死んだアヒルの種々の器官の組織病理学的病巣の調査を実施し、以下が含まれた:脳(初期リンパ球性脳炎)、肝臓(肝臓実質の複合巣状壊死を示す急性漿液性肝炎)、心臓(間質性浮腫、心筋の点状出血)、膵臓(充血、間質性浮腫)、小腸(充血、粘膜浮腫)、脾臓(充血、マルピギー小体におけるリンパ球枯渇)、肺臓(充血、間質性浮腫、初期巣状間質性肺炎)、気管(粘膜の浮腫)。これらの結果は、軽度の病理組織学的変化(脳炎、種々の器官における浮腫、充血および肝細胞の壊死を含む)を示した。
【0100】
表11:アヒル実験2:1日齢のモスコビーアヒルの雛に1回(D0)または2回(D0およびD14)vAVW03投与して実施したアヒル実験2の個々の防御結果
*T=陽性咽頭スワブ;C=陽性総排泄腔スワブ
【0101】
【0102】
結果は、相対的に低用量を用いたにもかかわらず、口鼻チャレンジは非常に激烈であることを示し、このハンガリーH5N1単離株(アヒルから単離された)は、モスコビーアヒルに対して高レベルの病毒性を有することを示唆した。完全な臨床防御は全てのワクチン接種アヒルで観察され、これは、チャレンジの5週前の1日齢でただ1回のvAVW03の投与を受けだけで、低いかまたは検出不能のNDV HIまたはH5N1 SN力価しか示さなかったアヒルでさえも同様であった。ウイルス排出は、ただ1回の投与を受けたグループ1のアヒル(3/5)と比較して、2回のワクチン投与を受けたグループ2でより少数のアヒル(1/5)で観察された。興味深いことに、おそらくはワクチン接種アヒルからvAVW03ワクチンの水平伝播を受けたために、チャレンジ前に検出可能なNDVおよびH5N1抗体力価を示したただ1匹の接触アヒルは完全に防御された。
【0103】
実施例4.3:1日齢モスコビーアヒル雛でのアヒル実験3
本実施例のアヒル実験の目的は、単独vAVW03または別のH5N1 HPAI単離株に対する他のワクチンと併用したvAVW03によって誘導される、1日齢SPFモスコビーアヒルの雛におけるH5N1防御を確認することであった。
実験設計は表12に示されている。ただ1回のvAVW03投与の免疫原性を、vAVW03の2回投与の免疫原性および異種プライム-ブースト免疫スケジュールの免疫原性と比較した。前記異種プライム-ブースト免疫スケジュールは、TROVAC-AIV H5ベクターワクチン(HPAI H5N8 A/シチメンチョウ/アイルランド/1378/1983単離株の固有のHA遺伝子を発現する鶏痘組換えvFP89、USAで認可)の10ニワトリ用量(約4.5 log10 TCID50/用量)を皮下ルートで用いるD0でのプライミング、続いてD14でのvAVW03の粘膜ルートによる投与から成っていた(詳細は表12参照)。D28およびD42に、各グループの5匹のアヒルをフランスHPAI H5N1クレード2.2 A/ハクチョウ/フランス/06299/06単離株(106 EID50/アヒル)でチャレンジした。
【0104】
表12:アヒル実験3の設計と防御結果
*vAVW03は50μLのワクチン懸濁物(希釈剤として鉱物水を使用)を用い眼鼻ルートにより投与した;TROVAC-AIV H5は0.2mLのワクチン懸濁物(希釈剤としてマレックワクチン希釈剤を使用)を用い皮下ルートにより投与した。
**vAVW03の用量はlog10 EID50で、TROVAC-AIV H5の用量はlog10 TCID50として表されている;TROVAC-AIV H5の用量はこのワクチンの市販バッチの10ニワトリ用量に相当する。
***チャレンジ株は、HPAI H5N1クレード2.2 A/ハクチョウ/フランス/06299/06/単離株であった;6 log10 EID50を眼鼻ルートで投与した;MTDは日数で表した死亡までの平均時間である。
【0105】
全てのワクチン非接種アヒルが臨床症状を示し、チャレンジ後4日以内に死んだ。ワクチン接種アヒルのいずれも臨床症状を示さず、または死ななかった(表12参照).口腔咽頭スワブおよび総排泄腔スワブをチャレンジ後種々の時間で(チャレンジ後2.5、4.5、6.5、9.5および11.5日)採取した。Spackmanらの論文(J Clin Microbiol, 2002, 40:3256-3260)をもとにMを基準にしたリアルタイムRT-PCRによってウイルス負荷を測定した。D28およびD42のチャレンジの結果は、それぞれ図23a−dおよび24a−dに提示されている。
ウイルス排出データは、ワクチン接種アヒルはワクチン非接種コントロールよりも少ないウイルスを排出し、D28(図23a−d)およびD42(図24a−d)のチャレンジ後の陽性鳥のパーセンテージもまた減少することを明瞭に示した。グループ2および3のサンプル間で相違はなく、これらの条件下における1日齢での1回のvAVW03の投与が、D0およびD14での2回のvAVW03免疫と同じ防御を提供することを示した。ウイルス負荷と同様に陽性率も、グループ2および3のものと比較して、異種プライム-ブースト免疫スケジュールを実施したグループ4のアヒルで、特にD28でのチャレンジについて低かった。これらの結果は、vAVW03の前に投与される、同じ亜型に由来する別のHA遺伝子を発現する鶏痘組換え体によるプライミングは、vAVW03の1回または2回投与と比較して防御レベルを改善することを示している。
AI HI力価は、D28およびD42でのチャレンジ前(D28およびD40)並びにチャレンジ後(D42およびD57)にそれぞれサンプル採取した血清サンプルで、抗原としてHPAI H5N1(チャレンジ株に近縁なフランス株06167i H5N1クレード2.2.1)を用いて測定した(表13参照)。グループ4の数匹のアヒルのみがD28で検出可能なHI力価を有した。チャレンジ時にAIに対して検出可能な血清の変換が認められないにもかかわらず、全てのワクチン接種アヒルが激烈なHPAIチャレンジから防御されたことを記載することは意義があろう。この結果は、このような操作NDV AIワクチンの有効性を予測するためにHI試験は用いることはできないということを示した以前の結果を確認した。
D28でのチャレンジから14日後に、HPAI H5N1 HI力価は、グループ2および3ではD28の0からD42の7.2 log2まで増加したが、グループ4では2.3(D28)から6.0(D42)まで増加した。グループ2および3と比較して、グループ4におけるより低いチャレンジ後のHI力価の増加は、このグループでチャレンジウイルは少ししか複製しなかったことを示唆している。グループ4のアヒルにおける、チャレンジウイルス複製のそのような減少は、D28でのチャレンジ後のウイルス排出データで認められた(上記および図23a−dを参照されたい)。
【0106】
表13:アヒル実験3:チャレンジ前およびチャレンジ後の平均AI HI力価
要約すれば、1日齢のモスコビーアヒルの雛へのvAVW03の1回(D0)または2回(D0およびD14)粘膜投与は、D28およびD42に実施したHPAI H5N1チャレンジに対してそれら雛を防御した。vAVW03投与前の鶏痘組換え体(H5N8単離株由来HAを発現)による異種プライミングはD28における早期チャレンジに対する防御を改善した。
【0107】
実施例4.4:アヒル実験4:1日齢モスコビーアヒル雛における免疫持続期間
本実施例のアヒル実験の目的は、vAVW03の1回投与によって、またはアヒル実験3で試験したTROVAC-AIV H5/vAVW03異種プライム-ブースト免疫スケジュールによって誘導される免疫期間を判定することであった。
【0108】
表14:アヒル実験4の設計と臨床的防御の結果
1:D65+D86でチャレンジされるアヒルの数(MTD:日数で表した死亡までの平均時間)
2:vAVW03は50μLのワクチン懸濁物(希釈剤として鉱物水を使用)を用い眼鼻ルートにより投与した;TROVAC-AIV H5は0.2mLのワクチン懸濁物を用い皮下ルートにより投与した;不活化ワクチンは、市販のオイルアジュバント添加不活化ワクチンで、クレード2.3 A/アヒル/Anhui/1/2006単離株由来のHA(切断部位で改変)およびNA遺伝子を含むRe5リバースジェネティクスH5N1単離株を含む。
3:vAVW03の用量はlog10 EID50で、TROVAC-AIV H5の用量はlog10 TCID50として表されている;TROVAC-AIV H5の用量はこのワクチンの市販バッチの10ニワトリ用量に相当する。
4:病的状態を免れた鳥の数−死亡を免れた鳥の数/総数(MTD:日数で表した死亡までの平均時間)
5:チャレンジ株は、HPAI H5N1クレード2.2 A/ハクチョウ/フランス/06299/06/単離株であった;6 log10 EID50を眼鼻ルートで投与した。
【0109】
いずれのアヒルも、チャレンジの前にHP H5N1 06167iクレード2.2.1抗原(チャレンジ株に近縁)に対して検出可能なAI HI抗体を生じなかった。
これらの後期チャレンジは有効であった。なぜならば、チャレンジは100%の罹患率を誘導し、ワクチン非接種コントロールアヒルの大半を死亡させたからである(1匹の病的状態のアヒルがD86の後期チャレンジで生き残った;表14参照)。vAVW03でワクチン免疫された大半の鳥が防御された。すなわち、1/8のみが軽度の臨床症状を示し、D65のチャレンジに生き残り、さらにD86のチャレンジで1/9が臨床症状を示し死亡した。プライム-ブースト(D2でTROVAC AIV-H5およびD15でvAVW03)グループの全ての鳥が両方のチャレンジに生存し、1匹の鳥だけがより早い時期の(D65)のチャレンジで臨床症状を示した。不活化Re5ワクチンで免疫されたグループ4の鳥のいずれも臨床症状を示さずまた死亡もしなかった。
口腔咽頭および総排泄腔のウイルス排出もまたチャレンジ後に調べた。全てのコントロールアヒルは、高レベルで(口腔咽頭および総排泄ルートでそれぞれ6.8および4.9に匹敵するEID50であった)さらに少なくとも9.5日間(生存鳥について)ウイルスを排出した。グループ2および3では、排出レベルはより少なく(それぞれ約1および2 log10低い)、さらにコントロールグループより迅速に減少した。グループ4の排出プロフィルはグループ3で観察されたものに近かった。
結論すれば、モスコビーアヒルの雛(2日齢)へのvAVW03の1回投与は、84日齢まで良好なレベルの防御免疫を提供した。鶏痘ベクターとそれに続くNDVベクターによるプライム-ブースト免疫スケジュールは、NDVベクターの1回投与より良好な防御免疫応答および不活化Re5ワクチンと類似する防御応答を提供する。
【0110】
実施例4.5:アヒル実験5:北京ダックの雛でのvAVW03の有効性
本実験の目的は、北京ダックのHPAI H5N1チャレンジに対するvAVW03の有効性を判定することであった。7日齢の北京ダックの雛を表15に示すようにワクチン免疫した。チャレンジ株は、HPAI H5N1クレード2.2 A/シチメンチョウ/トルコ1/2005単離株であった。眼鼻ルートによる6および7 log10 EID50投与をD28およびD42にそれぞれ用いた。臨床症状(罹患率)および死亡(死亡率)をチャレンジ後に記録した。チャレンジ後(dpc)2、5および8日に採取した頬側スワブおよび総排泄腔スワブのリアルタイムRT-PCRにより、チャレンジ後のウイルス排出を測定した。実験設計および防御結果は表15に示されている。
【0111】
表15:アヒル実験5の設計と防御結果
【0112】
1:vAVW03は50μLのワクチン懸濁物(希釈剤として鉱物水を使用)を用い眼鼻ルートにより投与した;TROVAC-AIV H5は0.2mLのワクチン懸濁物(希釈剤としてマレックワクチン希釈剤を使用)を用い皮下ルートにより投与した。
2: vAVW03の用量はlog10 EID50で、さらにTROVAC-AIV H5の用量はlog10 TCID50として表されている;TROVAC-AIV H5の用量はこのワクチンの市販バッチの10ニワトリ用量に相当する。
3vFP89:鶏痘ベクターAIV H5(US 2008/0107681およびUS 2008/0107687参照)
4Re5:HPAI H5N1 A/アヒル/Anhui/1/2006(クレード2.3)由来の改変HA遺伝子およびNA遺伝子を含むリバースジェネティクス株を土台にしたオイルアジュバント添加不活化ワクチン。
5:2、5または8dpcの頬側スワブまたは総排泄腔スワブで陽性のニワトリの数。
【0113】
これらの結果は、北京ダックはH5N1のチャレンジに比較的耐性であることを示した。なぜならば、チャレンジ後ほぼ半分のワクチン非接種鳥しか臨床症状を示さず、または死亡しなかったからである。それにもかかわらず、それらの大半は検出可能な量のウイルスを排出し、チャレンジ株の活発な複製を示した。全てのワクチン接種アヒルは両方のチャレンジ日に臨床的に防御され、ウイルスを排出する鳥の数はワクチン非接種コントロールと比較して減少した。これらの結果は、vAVW03によって顕著な防御を北京ダックで誘導できることを示している。
【0114】
実施例4.6:アヒル実験6:NDV MDAを有する1日齢の北京ダック雛でのvAVW03の有効性
このアヒル実験6の目的は、vAVW03誘導有効性に対するNDV MDAの影響を評価するために、NDV抗原を含む不活化コンビネーションワクチンでワクチン免疫した繁殖鳥が産んだ北京ダックで、vAVW03の1回投与によって誘導されたHPAI H5N1有効性を評価することであった。NDV MDAを有する2日齢の北京ダックをこの実験で用いた。SPFモスコビーアヒルの雛もまたチャレンジの有効性の実証に用いた。実験の設計および防御データは表16に提示されている。
【0115】
表16:アヒル実験6の設計およびHPAI H5N1チャレンジに対する防御の結果
*ON=眼鼻
**チャレンジ株はHPAI H5N1クレード2.2 A/ハクチョウ/フランス/06299/06単離株であった;眼鼻ルートによりD24に6 log10 EID50を投与した;MTCは日数で表した臨床症状に至る平均時間である;MTDは日数で表した死亡までの平均時間である。
HPAI H5N1チャレンジは、コントロールとして用いたワクチン非接種モスコビーアヒルの雛の急激な死亡率によって立証された(全てがチャレンジ後3.5日で死亡した)。しかしながら、ワクチン非接種北京ダックはH5N1チャレンジに対してはるかに耐性であった。なぜならば、3/5しか臨床症状を示さず、さらにチャレンジ後6.5日で1/5のみが死亡しただけであった。罹患率に対する部分的防御(67から89%)がvAVW03によって誘導され、北京ダックでは明確な用量または投与ルートの影響は認められなかった。
全てのコントロールの北京ダックが口腔咽頭によってウイルスを排出した。ウイルス放出は、ワクチン接種グループでウイルス負荷、放出時間および陽性鳥の数について減少した。
この実験は、NDV MDAを有する北京ダックでvAVW03の1回投与によりAI防御を誘導できることを示している。
【0116】
前記のように本発明の好ましい実施態様を詳細に述べてきたが、本発明の範囲を逸脱することなくそれらの多くの明白な変型が可能であるので、上記で規定した本発明は上記に記載した特定の事柄に限定されないことは理解されよう。
本出願引用文書に引用または参照された全ての文書、および本文書中に引用または参照された全ての文書(“本文書引用文書”)、並びに本文書引用文書中に引用または参照された全ての文書は、本文書または本文書に参照により含まれる任意の文書に記載された任意の製造業者の指示、記載物、製品明細書、および任意の製品に関する製品説明書とともに、参照により本明細書に含まれ、本発明の実施で用いることができる。
【技術分野】
【0001】
参照による本明細書への包含
本出願は米国仮特許出願61/166,481号(2009年4月3日出願)の権利を主張する。
本発明は、NDVベクタートリワクチンまたは組成物、具体的にはトリインフルエンザワクチンを包含する。本ワクチンは操作されたトリワクチンであり得る。
【背景技術】
【0002】
近年のいくつかの研究は、トリの疾病のためのワクチンベクターとして使用し得るニューカッスル病ウイルス(NDV)の潜在能力を強調している(Krishnamurthy et al., Virology 278, 168-182,2000;Huang et al., J. Gen. Virol. 82, 1729-1736, 2001;Nakaya et al., J. Virol. 75, 11868-11873, 2001;Park et al. PNAS 103, 8203-8208, 2006;Veits et al PNAS 103, 8197-8202, 2006;Ge et al. J. Virol. 81, 150-158, 2007;Romer-Oberdorfer et al. Vaccine 26, 2307-2313, 2008)。
NDVはパラミクソウイルス科、アヴラウイルス属に属する。NDVは、気道および胃腸管、卵管で、さらにいくつかの単離株については神経系で複製する。伝染は空気原性であり、さらに経口ルートおよび糞便ルートによる。NDVは、全ての鳥類種を冒す高接触伝染性の致死的疾病を引き起こし、さらにいくつかの哺乳動物種に感染し得る。この疾病は、ウイルス株および宿主の種に応じて臨床的に明白でないものから病毒性の高い形態まで変動し得る。NDV株が示す連続的な病毒性スペクトルによって以下の3つの異なる病理型にNDV株を分類することができる:レントジェニック、メゾジェニックおよびベロジェニック(Alexander, D. J., Diseases of Poultry, Iowa State Uni. Press, Ames IA, 541-569, 1997)。レントジェニック株は、成体ニワトリに通常は疾病を引き起こさず、米国および他の国々の家禽産業で生ワクチンとして広くもちいられている。中間的な病毒性を有するウイルスはメゾジェニックと称され、一方、高い死亡率をもたらすウイルスはベロジェニックと称される。この疾病は世界中に分布し、産業的家禽生産にとって大きな持続的脅威であり続けている。
【0003】
NDVゲノムはほぼ15kbの非分節マイナス鎖RNAである。このゲノムRNAは、以下の順序で以下のタンパク質をコードする6つの遺伝子を含んでいる:ヌクレオキャプシドタンパク質(NP)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、融合タンパク質(F)、ヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ(HN)および大ポリメラーゼタンパク質(L)。未知の機能をもつ2つのまた別のタンパク質VおよびWが、P遺伝子転写時にRNA編集によって生成される(Steward et al., 1993, Journal of General Virology 74:2539-2547)。
近年確立された、非分節マイナスRNAウイルスをクローン化されたcDNAから完全に回収する方法の開発によって、このウイルスグループ(NDVを含む)を遺伝的に操作する可能性が開かれた(Conzelmann, K.K., Ann. Rev. Genet. 32, 123-162, 1998; Roberts and Rose, Virology 247, 1-6, 1998)。このユニークな分子遺伝学的方法論(“リバースジェネティクス”と称される)は、種々のウイルスコード遺伝子の機能を解明するだけでなく(Palese et al., PNAS 93, 11354-11358, 1996; Nagai, Y., Rev. Med. Virol. 9, 83-99, 1999)、異種遺伝子を発現するためにこれらのウイルスを使用することを可能にする手段も提供する(Bukreyev et al., J. Virol. 70, 6634-6641, 1996;Mebatsion et al., PNAS 93, 7310-7314, 1996;Schnell et al., PNAS 93, 11359-11365, 1996;Hasan et al., J. Gen. Virol. 78, 2813-2820, 1997;He et al., Virology 237, 249-260, 1997;Sakai et al., FEBS Lett. 45, 221-226, 1999)。前記によって改善ワクチンおよびワクチンベクターを作製する方法が提供される。
【0004】
NDVのレントジェニックなワクチン株(LaSota)を土台にした、クローン化cDNAに由来する回収系が2つの別個のグループによって1999年に同時に報告された(Peeters et al., 1999;Romer-Oberdorfer et al., 1999)。最初に報告された系では、LaSota株(ATCC-VR699)由来の完全長NDV cDNAが、T7 DNA依存RNAポリメラーゼプロモーターを含むpOLTV5転写ベクターでアッセンブリングされた。個々のNDVトランスクリプターゼ複合体(NP、PおよびL)クローンは真核細胞発現ベクターでクローニングされた。同時トランスフェクションプロトコルによって、感染単層培養にいくつかの感染中心が生成された(Peeters et al., J. Virol. 73, 5001-5009, 1999)。クローン化cDNAからレントジェニックNDVを回収するために報告された第二の系は、完全長のアンチゲノム発現プラスミドおよびサポートプラスミドをアッセンブリングする(Romer-Oberdorfer et al., Journal of General Virology, 80, 2987-2995, 1999)のと本質的に同じ戦略を用いた。レントジェニックなNDVのHitchner B1(Nakaya et al. 2001)またはLaSota株(Huang et al. 2001)を回収するために、最近他の系が開発された。組換えメゾジェニックNDVの回収に利用可能な唯一の系がKurishnamurthy(2000)によって記載された。この系は、トランスフェクションにワクシニアウイルス組換え体(MVA)およびHEP-2細胞を利用した。メゾジェニック株Beaudette Cの完全長クローンおよび同じ株由来のサポートプラスミド(N、PおよびL)がトランスフェクションに用いられた。CATレポーター遺伝子をコードする追加の転写ユニットがHNおよびL遺伝子の間に配置された。CAT遺伝子を発現するrNDVの増殖は遅く、ウイルスは弱毒化された。CAT遺伝子は細胞培養で数継代の間安定的に発現された。
【0005】
トリインフルエンザ(AIV)(時にアビアンフルと呼ばれ、一般的にはトリインフルと認識されている)は、鳥類に順化したインフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザを意味する。AIVは、オルトミクソウイルス科に属する分節状一本鎖マイナスセンスのRNAウイルスで、A型インフルエンザウイルスに分類される。A型ウイルスは動物およびヒトインフルエンザのもっとも頻度の高い原因因子である。この型は多数の株または亜型で発生し、それらは2つの表面脂質エンベロープ膜タンパク質、ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)を基準にして区別される。HAは宿主細胞へのウイルスの進入を促進し、NAは感染細胞の子孫ウイルスの放出を助ける(de Jong et al., J Clin Virol. 35(1):2-13, 2006)。インフルエンザA型ウイルスは、それらの固有のHAおよびNAの内容を基準に亜型に分類される。16の異なるHA亜型および9の異なるNA亜型が存在する。HAおよびNAタンパク質の多くの異なる組み合わせが可能である。インフルエンザAウイルスの亜型は、それらのHAおよびNA表面タンパク質にしたがって名付けられる。例えば、“H7N2ウイルス”は、H7亜型のHAタンパク質およびN2亜型のNAタンパク質を有するインフルエンザA亜型を指す。同様に、“H5N1”ウイルスはH5亜型のHAおよびN1亜型のNAを有する。H5N1亜型は、アジア、ロシア、中東、ヨーロッパおよびアフリカの最近の流行と明確に関係している(Olsen et al., Science 21;312(5772):384-8, 2006)。
【0006】
インフルエンザAウイルスは、ヒト、ブタ、ウマ、アザラシ、クジラ、家禽、ネコ、イヌ、イタチおよび他の動物に感染することができるが、野鳥がそれらの天然の宿主である。水鳥が主要なインフルエンザ保菌動物を構成し、それらからウイルス系列が進化しそれらの宿主に順化した(例えばヒト、ブタおよびウマインフルエンザ)。宿主特異性は絶対的ではなく、高度に病原性のトリインフルエンザ(HPAI)H5N1亜型のヒト、ネコ、イヌおよびブタ種への感染能力によって例証されるように、種間伝染が発生し得る。
高度に病原性のインフルエンザAウイルス亜型のH5N1ウイルスは、大流行の潜在的脅威として地球規模で懸念される新たに出現したトリインフルエンザウイルスである。H5N1は、アジア、ヨーロッパおよびアフリカ中のその数が増え続けている多くの国々で数百万の家禽を殺している。B型インフルエンザと異なり、A型インフルエンザは抗原性シフトを生じ(少なくとも2つのウイルス株が一緒になって新規な亜型を形成する)、疫学専門家、感染症研究者および他の健康関連専門家は、ヒトインフルエンザウイルスとトリインフルエンザ(特にH5N1)の同時存在が種特異的ウイルス間での遺伝的素材の交換の機会を提供し、ヒトに容易に伝染し致死性である新規な強毒インフルエンザ株を作出する恐れがあることを深刻に懸念している(Food Safety Research Information Office, “A Focus on Avian Influenza”. 2006年5月作成、2007年11月更新)。
H5N1の最初の流行が1997年に発生して以来、臨床的に重大で致死的なヒトの感染をもたらすHPAI H5N1のトリからヒトへの伝染の数は増え続けている。しかしながら、トリとヒトの間に存在する大きな種の障壁があるので、ウイルスは簡単にはヒトまで到達しない。数百万の鳥類がその発見以来このウイルスに感染したが、インドネシア、ラオス、ベトナム、ルーマニア、中国、トルコおよびロシアをまとめておよそ200人がトリインフルエンザのために死亡しただけである。
動物(ヒトを含む)のAIVに対する感受性を考慮すれば、AIVを防ぎ動物を防御する手段は必須である。したがって、インフルエンザに対する有効なワクチンが希求される。
本出願中のいずれの記録の引用または認定も、そのような記録が本発明に対する先行技術として利用可能であることを容認するものではない。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、部分的には、ニューカッスル病ウイルス(NDV)の腸向性AVINEW(商標)株によって発現されるAIVヘマグルチニン遺伝子はトリで高度に免疫原性であるという出願人らの発見に基づいている。
本発明は、NDVをベクターとするトリワクチンまたは組成物に関し、前記は、ある種のトリ抗原(より具体的にはトリインフルエンザ抗原)を保持しこれを発現する、固有の腸向性を有する操作NDVベクターの有効量および医薬的または獣医的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクルを含むことができる。前記腸向性NDVは、メリアル社(Merial Limited)により市販されているAVINEW(商標)改変生ワクチンのNDV株であり得る。
トリインフルエンザ抗原はヘマグルチニンであり得る。トリインフルエンザHA抗原はH5亜型のHAであり得る。
本発明はまたトリをワクチン免疫する方法に関し、前記方法は、有効量の組換えNDVベクターおよび医薬的または獣医的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクルを含むことができるワクチンの有効量をトリに投与する工程を含む。投与は、経卵接種(in ovo)、点眼、スプレー、飲み水、または非経口(皮下、筋肉内、経皮)投与によることができる。
本発明は、Avinew NDVのゲノムを改変し操作Avinew NDVを作製する方法を提供し、前記方法は、Avinew NDVゲノムに単離ポリヌクレオチドを前記Avinew NDVゲノムの非必須領域に導入する工程を含む。前記非必須領域は、非必須タンパク質をコードするオープンリーディングフレームもしくはオープンリーディングフレームの非必須部分;またはAvinew NDVゲノムのNP遺伝子の上流、もしくは2つの遺伝子の間(遺伝子間領域)、もしくはL遺伝子の下流に位置する非翻訳(または非コード)領域であり得る。
【0008】
本発明はさらにプライム-ブーストプロトコルを用いるワクチンまたは組成物の投与に関する。本発明は、本発明のワクチン(有効量の操作NDVベクターおよび医薬的または獣医的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクルを含むことができる)の投与の前にトリインフルエンザワクチンでトリをプライミングすることに関する。或いは、本発明はさらに、トリインフルエンザワクチンの投与の前に本発明のワクチン(少なくとも1つのトリインフルエンザ抗原を発現する操作NDVベクターおよび医薬的または獣医的に許容できる担体)でプライミングすることに関する。
本発明はさらに免疫応答を誘引または誘導する方法を実施するためのキットを包含し、前記キットは、組換えインフルエンザの免疫学的組成物もしくはワクチン、または不活化免疫学的組成物もしくはワクチンのいずれか1つおよび前記方法を実施するための指示書を含むことができる。
したがって、以前に公知であった生成物、前記生成物の作製方法、または前記生成物を使用する方法のいずれも本発明の範囲内に包含しないことは本発明の目的であり、したがって、出願人らはその権利を留保し、これにより以前に公知であった生成物、プロセスまたは方法のいずれの権利も放棄を明言する。さらにまた、本発明は、USPTO(35 U.S.C. セクション112、第一パラグラフ)またはEPO(EPCの83章)の記載説明および権限付与要件に適合しない、いずれの生成物、プロセス、または前記生成物の作製方法、または前記生成物の使用方法も本発明の範囲内に包含されず、したがって、出願人らはそれらについての権利を留保するとともに、これにより以前に記載されたいずれの生成物、前記生成物の作製プロセス、または前記生成物の使用方法を本発明から除外する。
前記の実施態様および他の実施態様は以下の詳細な説明に記載され、または前記説明から明白であり、前記説明に包含されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】図1Aは完全長NDVゲノムの遺伝地図を示す。
【図1B】図1Bは、完全長NDVゲノムの2つの代表的なトランスジーン挿入部位にインフルエンザHAを挿入した2つの操作NDVの遺伝地図を示す図である。
【図1C】図1CはNDVリバースジェネティクス系の流れ図の例である。
【図1D】図1Dは、NDVリバースジェネティクスを用いて操作NDV感染性粒子を回収する方法を示す。
【図2】リバースジェネティクス開発のための転写プラスミドでのAVINEW全ゲノムのクローニングおよびPとMの間のトランスジーンの容易なクローニングを可能にする固有の制限部位(PacIおよびFseI)の挿入を示す模式図である。
【図3】プラスミドpIV029のプラスミドマップを示す。
【図4a】4a−4oはプラスミドpIV029の挿入物の配列を提供する。斜字体は非AVINEW(商標)配列に該当し、さらに下線付き斜字体はPとM遺伝子の間の内部PacI-FseI挿入に該当し;斜字体はHDVリボザイム(3'末端)に該当し、さらに下線付き斜字体はT7プロモーター(5’末端)およびターミネーター(3’末端)に該当する。転写開始配列(GS=Gene Start(遺伝子開始点))および転写停止配列(GE=Gene End(遺伝子終点))がマップに示されてあり、配列には下線が付されている。円で囲んだT(図4cの3190位)は取り囲まれたヌクレオチドに該当し(PacI-FseI挿入の前)、これは転写ベクターへアッセンブリングされたAVINEW(商標)ゲノム中のT(配列番号:24の3190位)である(TはPacI-FseI制限部位を作出するために用いたプライマーに由来する)。コンセンサスAVINEW(商標)ゲノム(配列番号:1)では、対応する3150位のヌクレオチドはCである。
【図4b】図4a続き。
【図4c】図4b続き。
【図4d】図4c続き。
【図4e】図4d続き。
【図4f】図4e続き。
【図4g】図4f続き。
【図4h】図4g続き。
【図4i】図4h続き。
【図4k】図4i続き。
【図4l】図4k続き。
【図4m】図4l続き。
【図4n】図4m続き。
【図4o】図4n続き。
【図5】プラスミドpIV32のプラスミドマップを示す。
【図6】プラスミドpIV33のプラスミドマップを示す。
【図7】プラスミドpIV034のプラスミドマップを示す。
【図8】プラスミドpNS151のプラスミドマップを示す。
【図9】NDV挿入カセットによりAIV HA遺伝子をNDVゲノムに導入する模式的方法を示す。
【図10】プラスミドpIV039のプラスミドマップを示す。
【図11A】11Aは操作されたNDV vAVW02によるHA発現を示す。挿入物を含まないvAVW01を陰性コントロールとして用いる。HA発現は、ウイルス接種発育卵の尿嚢液(図11Aの左パネル)で、または感染CHO細胞溶解物(図11Aの右パネル)でウェスタンブロットによって検出される。
【図11B】11Bは操作されたNDV vAVW02によるHA発現を示す。挿入物を含まないvAVW01を陰性コントロールとして用いる。HA発現は、感染CHO細胞において抗H5陽性であるニワトリ血清を用いる感染細胞の免疫蛍光によって(図11B)検出される。
【図12】DNAおよびタンパク質配列に割り当てられた配列番号を示す表である。
【図13】ワクチン免疫SPF鶏の種々のグループの1日齢子孫ニワトリの抗MDVおよび抗AI(H5N1 Cl2またはH5N9LP抗原のどちらかに対するもの)母親由来抗体(MDA)のHI力価を示す。
【図14】操作NDVにより誘導されるトリインフルエンザ防御をSPFのニワトリで評価するためのワクチン免疫/チャレンジのタイムコースおよびプロトコルを示す。
【図15】day-of-ageにvAVW01(v01または01;挿入遺伝子無し)またはvAVW03(v03または03;AI HA挿入)でワクチン免疫した、無MDA(SPF)またはNDVのMDA(21A)、またはNDVおよびH5のMDAまたは、H5のみのNDA(21B)をもつニワトリの生存率のカイネティクス図を示す。
【図16】vAVW01またはvAVW03でワクチン免疫したMDAをもたない(SPF)またはMDAを有するニワトリの口腔スワブ(綿棒拭き取り標本)(AおよびC)および総排泄腔スワブから出るAIVの比較を示す。CおよびDの結果は、チャレンジ後の種々の時点における、vAVW01-免疫ニワトリとvAVW03-免疫ニワトリのHPAI H5N1チャレンジによるウイルス排出の平均レベルのlog10比として表されている。
【図17A】ワクチン免疫後(D21)およびチャレンジ後(D35)のvAVW03誘導AIV HI力価(H5N9(A)クレード2.2(B)抗原を使用)に対するNDV MDAの影響を示す(SPF:無MDA;NDV:抗NDV MDA)。図に記入した数字は、陽性血清数/検査総数に対応する。NDV MDAの存在下では、NDV MDAをもたないSPF鶏と比較して、AIV HI力価はワクチン免疫後により高かったが、チャレンジ後は増加しなかった。
【図17B】ワクチン免疫後(D21)およびチャレンジ後(D35)のvAVW03誘導AIV HI力価(H5N1クレード2.2(B)抗原を使用)に対するNDV MDAの影響を示す(SPF:無MDA;NDV:抗NDV MDA)。図に記入した数字は、陽性血清数/検査総数に対応する。NDV MDAの存在下では、NDV MDAをもたないSPF鶏と比較して、AIV HI力価はワクチン免疫後により高かったが、チャレンジ後は増加しなかった。
【図18】無MDA(SPF)、AI H5N9およびNDVのMDA(H5N9+NDV)、NDVのMDA(NDV)、またはAI H5N1のMDA(H5N1)をもつニワトリをvAVW01またはvAVW03でワクチン免疫した後のD21におけるNDV HI力価を示す。NDV MDAはvAVW01またはvAVW03で誘導されるNDV HI力価のレベルにマイナスの影響をもたなかった。
【図19】AVINEW(G1)、vAVW02(G2)およびvAVW03(G3)でD0およびD21に2回ワクチン免疫した後のNDV HI力価を示す。
【図20】vAVW02(G2)またはvAVW03(G3)でD0およびD21に2回ワクチン免疫した後のAI H5N1 HI力価を示す。
【図21】vAVW02(G2)またはvAVW03(G3)でD0およびD21に2回ワクチン免疫した後のAI H5N1 SN力価を示す。
【図22A】22Aは、vAVW03の1回(D0)または2回(D0およびD14)の点眼投与によって誘導されたNDV HI力価を示す。
【図22B】22Bは、vAVW03の1回(D0)または2回(D0およびD14)の点眼投与によって誘導されたAIV SN力価を示す。
【図23A】23A−23Dは、ワクチン非接種(グループ1)またはワクチン接種して(グループ2:D0にvAVW03を1回投与;グループ3:D0およびD14にvAVW03を2回投与;グループ4:D0にvFP89およびD14にvAVW03D28でプライム-ブースト)、HPAI H5N1単離株で28日目にチャレンジしたMuscovyアヒルのヒナの口腔咽頭スワブ(AおよびC)および総排泄腔スワブ(BおよびD)のウイルス負荷(AおよびB)および陽性サンプルのパーセンテージ(CおよびD)のカイネティクスを示す。
【図23B】23A−23Dは、ワクチン非接種(グループ1)またはワクチン接種して(グループ2:D0にvAVW03を1回投与;グループ3:D0およびD14にvAVW03を2回投与;グループ4:D0にvFP89およびD14にvAVW03D28でプライム-ブースト)、HPAI H5N1単離株で28日目にチャレンジしたMuscovyアヒルのヒナの口腔咽頭スワブ(AおよびC)および総排泄腔スワブ(BおよびD)のウイルス負荷(AおよびB)および陽性サンプルのパーセンテージ(CおよびD)のカイネティクスを示す。
【図23C】23A−23Dは、ワクチン非接種(グループ1)またはワクチン接種して(グループ2:D0にvAVW03を1回投与;グループ3:D0およびD14にvAVW03を2回投与;グループ4:D0にvFP89およびD14にvAVW03D28でプライム-ブースト)、HPAI H5N1単離株で28日目にチャレンジしたMuscovyアヒルのヒナの口腔咽頭スワブ(AおよびC)および総排泄腔スワブ(BおよびD)のウイルス負荷(AおよびB)および陽性サンプルのパーセンテージ(CおよびD)のカイネティクスを示す。
【図23D】23A−23Dは、ワクチン非接種(グループ1)またはワクチン接種して(グループ2:D0にvAVW03を1回投与;グループ3:D0およびD14にvAVW03を2回投与;グループ4:D0にvFP89およびD14にvAVW03D28でプライム-ブースト)、HPAI H5N1単離株で28日目にチャレンジしたMuscovyアヒルのヒナの口腔咽頭スワブ(AおよびC)および総排泄腔スワブ(BおよびD)のウイルス負荷(AおよびB)および陽性サンプルのパーセンテージ(CおよびD)のカイネティクスを示す。
【図24A】24A−24Dは、ワクチン非接種(グループ1)またはワクチン接種して(グループ2:D0にvAVW03を1回投与;グループ3:D0およびD14にvAVW03を2回投与;グループ4:D0にvFP89およびD14にvAVW03D28でプライム-ブースト)、HPAI H5N1単離株で42日目にチャレンジしたMuscovyアヒルのヒナの口腔咽頭スワブ(AおよびC)および総排泄腔スワブ(BおよびD)のウイルス負荷(AおよびB)および陽性サンプルのパーセンテージ(CおよびD)のカイネティクスを示す。
【図24B】24A−24Dは、ワクチン非接種(グループ1)またはワクチン接種して(グループ2:D0にvAVW03を1回投与;グループ3:D0およびD14にvAVW03を2回投与;グループ4:D0にvFP89およびD14にvAVW03D28でプライム-ブースト)、HPAI H5N1単離株で42日目にチャレンジしたMuscovyアヒルのヒナの口腔咽頭スワブ(AおよびC)および総排泄腔スワブ(BおよびD)のウイルス負荷(AおよびB)および陽性サンプルのパーセンテージ(CおよびD)のカイネティクスを示す。
【図24C】24A−24Dは、ワクチン非接種(グループ1)またはワクチン接種して(グループ2:D0にvAVW03を1回投与;グループ3:D0およびD14にvAVW03を2回投与;グループ4:D0にvFP89およびD14にvAVW03D28でプライム-ブースト)、HPAI H5N1単離株で42日目にチャレンジしたMuscovyアヒルのヒナの口腔咽頭スワブ(AおよびC)および総排泄腔スワブ(BおよびD)のウイルス負荷(AおよびB)および陽性サンプルのパーセンテージ(CおよびD)のカイネティクスを示す。
【図24D】24A−24Dは、ワクチン非接種(グループ1)またはワクチン接種して(グループ2:D0にvAVW03を1回投与;グループ3:D0およびD14にvAVW03を2回投与;グループ4:D0にvFP89およびD14にvAVW03D28でプライム-ブースト)、HPAI H5N1単離株で42日目にチャレンジしたMuscovyアヒルのヒナの口腔咽頭スワブ(AおよびC)および総排泄腔スワブ(BおよびD)のウイルス負荷(AおよびB)および陽性サンプルのパーセンテージ(CおよびD)のカイネティクスを示す。
【図25】トリインフルエンザHAタンパク質間の配列アラインメントおよびアミノ酸レベルの配列同一性パーセンテージを提供する。
【図26】トリインフルエンザHAタンパク質間の配列アラインメントおよび核酸レベルの配列同一性パーセンテージを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明(実施例により提供されるが、ただし記載したこの具体的な態様にのみ本発明を限定しようとするものではない)は、添付の図面と一緒にして最善の理解が得られよう。
本開示では、特に特許請求の範囲では以下に注意されたい。例えば「含む」(“comprises”、“comprised”、“comprising”など)の用語は、米国特許法でそれらに帰された意味を有し、例えばそれら用語は「含有する」(“includes”、“included”、“including”など)を意味することができる。さらに、例えば「本質的になる」(“consisting essentially of”、および“consists essentially of”)のような用語は、米国特許法でそれらに帰された意味を有し、例えばそれらは、明示的に列挙されていない成分を許容するが、先行技術で見出されるかまたは本発明の基本的もしくは新規な特徴に影響を与える成分は排除する。
特段の説明がなければ、本明細書で用いられる全ての技術用語および学術用語は、本開示が属する分野で通常の技量を有する者が一般的に認識する意味と同じ意味を有する。単数用語の“a”、“an”および“the”は、文脈が明らかにそうでないことを示していないかぎり複数の対応物を含む。同様に、「又は」(“or”)という用語も、文脈が明らかにそうでないことを示していないかぎり「および」(“and”)を含むことが意図される。
【0011】
本発明では、AVINEWワクチン株がベクターとして用いられる。AVINEWは、世界中で広くもちいられている生NDVワクチン(Merial Limited)である。このワクチン株は天然には非病毒性であり、呼吸系および腸の二重向性を示す。さらにまた、AVINEW株はアヒルに感染し得るNDV遺伝子グループ(クラスII、遺伝子型I)に属する。LaSota(その向性は本質的に気道に向いている)とは対照的に、AVINEW株は呼吸器系副反応を誘導しない。
本発明は、操作されたNDVベクターの有効量および医薬的または獣医的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクルを含むことができるトリワクチンに関する。
本発明は、動物(例えばトリ)で免疫学的応答を誘引するタンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原を発現する任意の操作されたNDVベクターを包含する。前記タンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原は、インフルエンザタンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原、例えば、動物(例えばトリ)で応答を誘引、誘導または刺激するタンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたはそのフラグメント(ただしこれらに限定されない)であり得る。
“動物”とは哺乳動物、鳥類などが意図される。動物または宿主には哺乳動物およびヒトが含まれる。前記動物は、ウマ科の動物(例えばウマ)、イヌ科の動物(例えばイヌ、オオカミ、キツネ、コヨーテ、ジャッカル)、ネコ科の動物(例えばライオン、トラ、イエネコ、野生ネコ、他の大型のネコ類および、他のネコ科の動物(チーターおよびオオヤマネコを含む))、ヒツジ類(例えばヒツジ)、ウシ科の動物(例えばウシ)、ブタ類(例えばブタ)、鳥類(例えばニワトリ、アヒル、ガン、シチメンチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、ダチョウ、エミュー、およびヒクイドリ)、霊長類(例えば原猿類、メガネザル、有尾猿類、テナガザル、無尾猿類)、および魚類から成る群から選択できる。“動物”という用語には、胚および胎児期を含む全ての発育段階の個々の動物が含まれる。
【0012】
ある実施態様では、トリインフルエンザ免疫学的組成物またはワクチンは、操作されたベクターおよび医薬的または獣医的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクルを含む。前記操作されたベクターは、インフルエンザタンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原をコードするポリヌクレオチドを含むことができるNDV発現ベクターであり得る。前記インフルエンザタンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原は、ヘマグルチニン、マトリックスタンパク質、ノイラミニダーゼ、非構造タンパク質、核タンパク質、ポリメラーゼ、また前記の任意のフラグメントであり得る。
別の実施態様では、インフルエンザタンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原は、インフルエンザに感染したトリまたはトリインフルエンザ株に由来し得る。トリインフルエンザタンパク質、抗原、エピトープまたは免疫原は、ヘマグルチニン(HA)(例えばHA前駆体、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、またはH16タンパク質(ただしこれらに限定されない))、マトリックスタンパク質(例えばマトリックスタンパク質M1またはM2(ただしこれらに限定されない))、ノイラミニダーゼ(例えば、NA1、NA2、NA3、NA4、NA5、NA6、NA7、NA8または、NA9(ただしこれらに限定されない))、非構造(NS)タンパク質(例えばNS1またはNS2(ただしこれらに限定されない))、核タンパク質(NP)およびポリメラーゼ(例えばPAポリメラーゼ、PB1ポリメラーゼ1またはPB2ポリメラーゼ2(ただしこれらに限定されない))であり得る。
【0013】
トリインフルエンザ抗原は、ヘマグルチニン、例えばH5 HAであり得る。ある実施態様では、H5はH5N1 A/シチメンチョウ/トルコ1/2005(クレード2.2)、A/ニワトリ/インドネシア/7/2003(クレード2.1)、A/アヒル/ラオス/3295/2006(クレード2.3)、A/ニワトリ/西ジャワ/PWT-WIJ/2006(クレード2.1)株から単離される。
別の実施態様では、トリインフルエンザタンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原は、インフルエンザに感染したトリまたは任意の亜型の最近の単離株に由来するトリインフルエンザ株に由来し得る。
本明細書で用いられるように、“抗原”または“免役原”は、特異的な免疫応答を宿主動物において誘導する物質を意味する。抗原は、ある生物体全体(殺滅、弱毒または生);ある生物のサブユニットまたは一部分;免疫原性特性を有するエピトープ、ポリペプチド、ペプチド、タンパク質またはそのフラグメントを発現する挿入物を含む組換えベクター;宿主動物に提供されたとき免疫応答を誘導することができる核酸の断片またはフラグメント;タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、エピトープ、ハプテン、または前記の任意の組合せを含むことができる。或いは、免疫原または抗原は毒素または抗毒素を含むことができる。
本明細書で用いられる“免疫原性タンパク質またはペプチド”という用語にはまた、いったん宿主に投与されたら、それに対して誘導された液性および/または細胞性の免疫応答タイプを引き起こすことができるという意味で免疫学的に活性であるペプチドおよびポリペプチドが含まれる。好ましくは、タンパク質フラグメントは、全タンパク質と実質的に同じ免疫学的活性を有するものである。したがって、本発明のタンパク質フラグメントは少なくとも1つのエピトープまたは抗原決定基を含むか、実質的に前記から成るか、または前記から成る。エピトープ(抗原決定基としてもまた知られている)という用語は、免疫系によって認識される巨大分子の部分であり、液性タイプ(B細胞)および/または細胞性タイプ(T細胞)の免疫反応を誘導することができる。
【0014】
“免疫原性タンパク質またはペプチド”という用語は、当該ポリペプチドが機能して本明細書に定義した免疫学的応答を生じるかぎり、当該配列の欠失、付加および置換もまた意図される。これに関して、特に好ましい置換は、一般的に性質として保存的、すなわちアミノ酸ファミリー内で生じる置換であろう。例えばアミノ酸は一般的に以下の4つのファミリーに分割される:(1)酸性−アスパラギン酸およびグルタミン酸;(2)塩基性−リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性−グリシン、アスパラギン、グルタミン、シスチン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンはときに芳香族アミノ酸として分類される。ロイシンのイソロイシンによる(またはその逆の)隔離的置換、アスパラギン酸のグルタミン酸による(またはその逆の)隔離的置換、スレオニンのセリンによる(またはその逆の)隔離的置換、またはあるアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸による保存的置換は生物学的活性に大きな影響を与えないであろうということは合理的に推測される。したがって、対応分子と実質的に同じアミノ酸配列を有するが、当該タンパク質の免疫原性に実質的に影響を及ぼさない小さなアミノ酸置換を有するタンパク質は、当該対応ポリペプチドの規定範囲内である。
【0015】
エピトープという用語は、免疫系によって認識される巨大分子の部分であり、液性タイプ(B細胞)および/または細胞性タイプ(T細胞)の免疫反応を誘導することができる。前記用語はまた、“抗原決定基”または“抗原性決定部位”と互換的に用いられる。同じエピトープを認識する抗体は、ある抗体が別の抗体と標的抗原との結合を阻止する能力を示す簡単な免疫アッセイで区別することができる。
ある組成物またはワクチンに対する“免疫学的応答”は、宿主における問題の組成物またはワクチンに対する細胞媒介および/または抗体媒介免疫応答の発達である。通常は、“免疫学的応答”には、1つまたは2つ以上の以下の作用(ただしこれらに限定されない)が含まれる:問題の組成物またはワクチンに含まれる1つの抗原または複数の抗原に対して特異的な抗体、B細胞、ヘルパーT細胞および/または細胞傷害性T細胞の産生。好ましくは、新規感染に対する抵抗性が強化されるか、および/または疾病の臨床的重篤性が軽減されるように、宿主は治療的または防御的免疫学的応答を示すであろう。そのような防御は、通常感染宿主が示す症状の軽減または消失、回復期間の短縮、および/または感染宿主におけるウイルス力価の低下によって提示されるであろう。
【0016】
本明細書で用いられる“免疫原性”タンパク質またはポリペプチドはまた、上記に記載の免疫学的応答を誘引するアミノ酸配列を意味する。本明細書で用いられる“免疫原性”タンパク質またはポリペプチドには、タンパク質の完全長配列、そのアナローグ、またはその免疫原性フラグメントが含まれる。“免疫原性フラグメント”とは、1つまたは2つ以上のエピトープを含み、したがって上記に記載した免疫学的応答を誘引するタンパク質のフラグメントを意味する。そのようなフラグメントは、当分野で公知の多数のエピトープマッピング技術を用いて認定することができる。例えば以下を参照されたい:Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66(Glenn E. Morris, Ed., 1996)。例えば、線状エピトープは、例えば固相上で多数のペプチド(前記ペプチドは当該タンパク質分子の部分に対応する)を同時に合成し、前記ペプチドが固相に結合している間にこのペプチドを複数の抗体と反応させることによって決定することができる。そのような技術は当分野で公知であり、例えば以下に記載されている:米国特許4,708,871号;Geysen et al. 1984;Geysen et al. 1986(前記文献はいずれも参照によりその全体が本明細書に含まれる)。同様に、コンフォーメーションエピトープは、アミノ酸の空間的形状を例えばX線結晶学および二次元核磁気共鳴によって決定することにより容易に認定することができる。例えば上掲書(Epitope Mapping Protocols)を参照されたい。T. parvaのタンパク質に特に応用可能な方法は、PCT出願PCT/US2004/022605号(前記文献は参照により本明細書に含まれる)に詳しく記載されている。
合成抗原、例えばポリエピトープ、フランキングエピトープおよび他の組換え体または合成により誘導した抗原もまたこの定義に含まれる。例えば以下の文献(Bergmann et al. 1993;Bergmann et al. 1996;Suhrbier, 1997;Gardner et al. 1998)を参照されたい。本発明の目的のための免疫原性フラグメントは、当該分子の通常は少なくとも約3つのアミノ酸、好ましくは少なくとも約5つのアミノ酸、より好ましくは少なくとも約10−15のアミノ酸、もっとも好ましくは約15−25のアミノ酸またはそれより多いアミノ酸を含むであろう。フラグメントの長さについて決定的な上限は存在せず、フラグメントにはほぼ完全長のタンパク質配列、または当該タンパク質の少なくとも1つのエピトープを含む融合タンパク質さえも含まれよう。
【0017】
したがって、エピトープを発現するポリヌクレオチドの最小構造物は、インフルエンザタンパク質またはポリプロテインのエピトープもしくは抗原決定基をコードするヌクレオチドを含むか、または本質的に前記から成るか、または前記から成るものである。タンパク質全体またはポリプロテインのフラグメントをコードするポリヌクレオチドは、より有利には全タンパク質またはポリプロテインをコードする配列の最低限15ヌクレオチド、有利には約30−45ヌクレオチド、好ましくは約45−75、少なくとも57、87または150の連続するかまたは隣接するヌクレオチドを含むか、または本質的に前記から成るか、または前記から成る。エピトープ決定方法、例えばオーバーラップペプチドライブラリーの作製(Hemmer et al. 1998)、ペプスキャン(Pepscan)(Geysen et al., 1984;Geysen et al., 1985;Van der Zee R. et al., 1989;Geysen, 1990;Multipin.RTM. Peptide Synthesis Kits de Chiron)およびアルゴリズム(De Groot et al., 1999)(PCT出願第PCT/US2004/022605号)(前記文献はいずれも参照により本明細書にその全体が含まれる)は、煩雑な実験を要することなく本発明の実施に用いることができる。本明細書に引用されさらに参照により含まれる他の記述もまた、免疫原または抗原のエピトープ、したがってそのようなエピトープをコードする核酸分子を決定する方法のために参考にすることができる。
“ポリヌクレオチド”はヌクレオチドの任意の長さのポリマー型であり、任意の組合せのデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドおよびアナローグを含む。ポリヌクレオチドは三次元構造を有することができ、公知または未知の任意の機能を果たすことができる。“ポリヌクレオチド”という用語には、二本鎖、一本鎖および三本鎖のヘリックス分子が含まれる。別に規定または要求されなければ、本明細書に記載の発明のポリヌクレオチドの実施態様はいずれも、DNA、RNAまたはハイブリッド分子の二本鎖形および前記二本鎖形を形成する公知のまたは推測される2つの相補形の各々を包含する。
【0018】
“コドン最適化”という用語は、選択された宿主での発現/翻訳のために、タンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープ、ドメインまたはフラグメントをコードする核酸配列を最適に構成するプロセスを意味する。一般的には、遺伝子の発現レベルは多くの因子、例えばプロモーター配列および調節エレメントに左右される。もっとも重要な因子の1つは、宿主の典型的なコドン使用頻度への転写遺伝子のコドン使用頻度の適応である(G. Lithwich and H. Margalit, Genome Res. 2003, 13:2665-2673)。したがって、翻訳選別下では原核細胞ゲノム中の高度に発現される遺伝子は顕著なコドン使用頻度の偏りを有する。これが、それらがもっとも豊富なtRNA種によって認識される小さなコドンサブセットを用いる理由である(T. Ikemura, J Mol Biol, 1981, 151:389-409)。このコドン適応を調節する力は翻訳選別と呼ばれ、その強さは急速に増殖する細菌で重要である(Rocha, E.P., Genome Res. 14, 2279-2286, 2004;Sharp, P.M. et al., Nucleic Acids Res. 33, 1141-1153)。宿主がまれにしか用いないコドンを遺伝子が含んでいる場合、その発現レベルは最大ではないであろう。これは異種タンパク質の発現(Gustafsson, C. et al., Trends Biotechnol. 22, 346-353, 2004)およびDNAワクチン(C. Ivory and K. Chadee, Genet. Vaccines Ther. 2, 17, 2004)の限界の1つであり得る。極めて多くの合成遺伝子が再設計されてそれらの発現レベルを高めた。合成遺伝子データベース(SGDB)(G. Wu et al., Nucleic Acids Res. 35, D76-D79, 2007)は、合成遺伝子に関する200を超える公表実験の情報を含んでいる。最適な量である種のタンパク質を発現させるために新規な宿主に挿入される核酸配列の設計プロセスでは、コドン使用頻度の最適化は、通常最初の工程の1つである(C. Gustafsson, Trends Biotechnol. 22, 346-353, 2004)。コドン使用頻度の最適化は、基本的には、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を改変することなく宿主のコドン使用頻度をより厳密に反映するように標的遺伝子内の稀なコドンを変更することを必要とする(Gustafsson, C., Trends Biotechnol. 22, 346-353, 2004)。したがって、最適化プロセスのために通常用いられる情報は、最適化されるべきDNAまたはタンパク質配列および宿主のコドン使用頻度表(参照セット)である。
【0019】
いくつかの公開ウェブサーバーおよび当業者によるある程度のコドン最適化を可能にする独立して使用可能なアプリケーションが存在する:‘GeneDesign’’(S.M. Richardson et al. Genome Res. 16, 550-556, 2006)、‘Synthetic Gene Designer’(G. Wu et al. Protein Expr. Purif. 47, 441-445, 2006)および‘Gene Designer’(A. Villalobos et al. BMC Bioinformatics 7, 285, 2006)は、合成遺伝子設計(コドン最適化工程を含む)のためのプラットフォームを提供するパッケージである。各サーバーまたはプログラムで利用できるコドン使用頻度最適化のための方法に関しては、開発された最初のプログラムは‘1アミノ酸-1コドン’アプローチのみを用いた。より最近のプログラムおよびサーバーは、ある程度のコドン使用頻度の多様性を作出するためにさらに別の方法を含む。この多様性は、天然の高度に発現される遺伝子のコドン使用頻度の多様性を反映し、最適化プロセスにおいて追加の基準(例えば制限部位の回避)の導入を可能にする。本明細書に記載のほとんどのアプリケーションおよびウェブサーバーは以下の3つのコドン最適化の方法を提供する:全コドンの完全な最適化、モンテカルロ(Monte Carlo)アプローチを用いる参照セットの相対的コドン使用頻度を基準にした最適化、およびクェリー配列と最適化配列との間の変化を最少にしながら最適化を最大にするように設計された新規なアプローチ。本明細書のある実施態様では、NDVのタンパク質補完物をコードする配列はトリ細胞での発現のために最適化されたコドンであり、好ましい実施態様では、NDV P、LおよびNPをコードする核酸配列はトリ細胞での発現のために最適化されたコドンである。さらに別の実施態様では、組換えタンパク質、抗原、ペプチド、ポリペプチド、フラグメント、ドメインまたはエピトープをコードする核酸配列はトリでの発現のために最適化されたコドンである。別の実施態様では、コドン最適化配列は、トリ発現用AIVタンパク質、抗原、ペプチド、ポリペプチド、フラグメント、ドメインまたはエピトープをコードする。さらに別の実施態様では、コドン最適化配列は、トリ発現用AIV HAおよび/またはNタンパク質、抗原、ペプチド、ポリペプチド、フラグメント、ドメインまたはエピトープをコードする。
【0020】
以下はポリヌクレオチドの非限定例である:遺伝子もしくは遺伝子フラグメント、エクソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、siRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、改変ヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナローグ、ウラシル、他の糖と連結基(例えばフルオロリボースとチオレート)、およびヌクレオチド分枝を含むことができる。ヌクレオチド配列は、ポリマー形成後に標識成分を用いて例えば連結によって改変することができる。本定義における他のタイプの改変には、キャップ、1つまたは2つ以上の天然に存在するヌクレオチドのアナローグによる置換、およびタンパク質、金属イオン、標識成分、他のヌクレオチドまたは固相に当該ポリヌクレオチドを結合させるための手段の導入が含まれる。ポリヌクレオチドは、化学合成により入手するかまたは微生物から誘導することができる。
本発明はさらに、インフルエンザタンパク質、抗原、エピトープまたは免疫原をコードするポリヌクレオチドの相補鎖を含む。相補鎖は任意の長さのポリマーが可能であり、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドおよび前記の任意の組合せのアナローグであり得る。
“タンパク質”、“ペプチド”、“ポリペプチド”および“ポリペプチドフラグメント”という用語は本明細書で互換的に用いられ、任意の長さのアミノ酸残基のポリマーを意味する。ポリマーは線状でも分枝状でもよく、改変アミノ酸またはアミノ酸アナローグを含むことができ、さらにアミノ酸以外の化学的成分によって中断されていてもよい。前記用語はまた、天然にまたは介入により、例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質添加、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは改変(例えば標識成分または生物活性成分との連結)によって改変されたアミノ酸ポリマーを包含する。
【0021】
“単離”ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、その天然の状態では前記に随伴する物質が実質的に存在しないものである。実質的に存在しないとは、これらの物質の少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%が存在しないことを意味する。
ハイブリダイゼーション反応は、種々の“ストリンジェンシー”の条件下で実施することができる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーを高める条件は周知である。例えば以下を参照されたい:“Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, second edition(Sambrook et al., 1989)。関連する条件の例には以下が含まれる(ストリンジェンシーが増加する順序で記載されてある):25℃、37℃、50℃および68℃のインキュベーション温度;10 x SSC、6 x SSC、1 x SSC、0.1 x SSCの緩衝液濃度(SSCは0.15 M NaClおよび15mMのクエン酸緩衝液)および他の緩衝系を用いる前記の等価物;0%、25%、50%および75%のホルムアミド濃度;5分から24時間のインキュベーション時間;1、2または3回以上の洗浄工程;1、2または15分の洗浄インキュベーション時間;および6 x SSC、1 x SSC、0.1 x SSC、または脱イオン水の洗浄溶液。
【0022】
本発明はさらに、インフルエンザポリペプチドの機能的に等価の変種および誘導体並びに機能的に等価の前記のフラグメントをコードするポリヌクレオチド(したがって前記はそれらによってコードされるポリペプチドの固有の特性に顕著に影響を及ぼすことなく強化または減弱させることができる)を包含する。これら機能的に等価の変種、誘導体およびフラグメントは、インフルエンザの活性を維持する能力を提示する。例えば、コードされるアミノ酸配列を変化させないDNAの変更は、アミノ酸残基の保存的置換、1つまたは数個のアミノ酸の欠失もしくは付加、およびアミノ酸アナローグによるアミノ酸残基の置換をもたらす変更と同様に、コードされるポリペプチドの特性に顕著には影響を及ぼさない変更である。保存的アミノ酸置換は、グリシン/アラニン;バリン/イソロイシン/ロイシン;アスパラギン/グルタミン;アスパラギン酸/グルタミン酸;セリン/スレオニン/メチオニン;リジン/アルギニン;およびフェニルアラニン/チロシン/トリプトファンである。ある実施態様では、変種は、問題のインフルエンザポリヌクレオチドまたはポリペプチドと少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の相同性または同一性を有する。
【0023】
ある特徴では、本発明はインフルエンザポリペプチド、具体的にはトリインフルエンザポリペプチドを提供する。別の特徴では、本発明は、配列番号:15、17、19、21または23に示す配列を有するポリペプチド、および前記の変種またはフラグメントを提供する。
別の特徴では、本発明は、本発明のトリHAポリペプチド、具体的には、配列番号:15、17、19、21または23に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリペプチドを提供する。
さらに別の特徴では、本発明は、上記で認定したインフルエンザポリペプチド(配列番号:15、17、19、21または23)のフラグメントおよび変種(周知の分子生物学技術を用いて当業者は容易に調製することができる)を提供する。
変種は、本発明の抗原性ポリペプチド、具体的には配列番号:15、17、19、21または23に示すアミノ酸配列と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一性のアミノ酸配列を有する相同なポリペプチドである。
インフルエンザポリペプチドの免疫原性フラグメントは、配列番号:2、4、5、8、10、12または14に示す配列を有するインフルエンザポリペプチドまたはその変種の少なくとも8、10、15、または20の連続するアミノ酸、少なくとも21アミノ酸、少なくとも23アミノ酸、少なくとも25アミノ酸または少なくとも30アミノ酸を含む。別の実施態様では、インフルエンザポリペプチドのフラグメントは、完全長のインフルエンザポリペプチドで見出される特異的な抗原性エピトープを含む。
【0024】
別の特徴では、本発明は、インフルエンザHAポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号:15、17、19、21または23に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。さらに別の特徴では、本発明は、配列番号:15、17、19、21または23に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリペプチド、または保存的変種、対立遺伝子変種、ホモローグ、またはこれらポリペプチドの1つの少なくとも8もしくは少なくとも10の連続するアミノ酸を含む免疫原性フラグメント、またはこれらポリペプチドの組合せをコードするポリヌクレオチドを提供する。インフルエンザHAポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、特定の動物種での発現のためにコドンを最適化することができる。HAタンパク質は、高病原性トリインフルエンザ配列(多重塩基性アミノ酸:RERRRKKR−配列番号:25)から低病原性トリインフルエンザ配列(RETR−配列番号:26)に切断部位で改変することができる。
別の特徴では、本発明は、配列番号:14、16、18、21、22に示すヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドまたはその変種を提供する。さらに別の特徴では、本発明は、配列番号:14、16、18、21、22に示す配列を有するポリヌクレオチドの1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドまたはその変種を提供する。
【0025】
本発明の目的のために、配列同一性または相同性は、オーバーラップおよび同一性を最大にしながら配列ギャップを最小限にしてアラインメントを実施したときに配列を比較することによって決定される。特に、配列同一性は、多数の数学的アルゴリズムのいずれかを用いて決定することができる。2つの配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムの非制限的な例は、Karlinら(1993)が改変したKarlinら(1990)のアルゴリズムである。
配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムの別の例はMyersら(1988)のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムはALIGNプログラム(バージョン2.0)である(前記はGCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの部分である)。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを利用するとき、PAM120ウエート残基表、12のギャップ長ペナルティーおよび4のギャップペナルティ−を用いることができる。局所配列相同性をもつ領域の認定およびアラインメントのために有用なさらに別のアルゴリズムは、Pearsonら(1988)が記載したFASTAアルゴリズムである。
一般的には、アミノ酸配列の比較は、公知の構造のポリペプチドのアミノ酸配列を未知の構造のポリペプチドのアミノ酸配列とアラインメントさせることによって達成される。続いて配列のアミノ酸を比較し、相同なアミノ酸のグループを一緒のグループに入れる。この方法によって、ポリペプチドの保存領域が検出され、アミノ酸の挿入および欠失が明らかにされる。アミノ酸配列間の相同性は、市販のアルゴリズムを用いることによって決定できる(上記の相同性に関する記載もまた参照されたい)。本明細書で別に記載したものに加えて、BLAST、ギャップ付加BLAST、BLASTN、BLASTPおよびPSI-BLASTプログラム(National Center for Biotechnology Informationにより提供)についてもまた述べておく。これらのプログラムは当分野でこの目的のために広くもちいられ、2つのアミノ酸配列の相同な領域のアラインメントを実施できる。
【0026】
一組の検索プログラムのいずれにおいても、ギャップ付加アラインメントルーチンはデータベース検索自体と一体である。ギャップ付加は所望の場合にはOFFにできる。長さ1のギャップのための初期設定ペナルティー(Q)は、タンパク質およびBLASTPについてはQ=9であり、BLASTNについてはQ=10であるが、任意の整数に変更できる。ギャップ伸長のための残基毎の初期設定ペナルティー(R)は、タンパク質およびBLASTPについてはR=2であり、BLASTNについてはR=10であるが、任意の整数に変更できる。配列アラインメントを実施してオーバーラップおよび同一性を最大にしながら配列ギャップを最小限にするために、QおよびRの値を任意に組み合わせて用いることができる。初期設定のアミノ酸比較マトリックスはBLOSUM62であるが、他のアミノ酸比較マトリックス(例えばPAM)も利用できる。
前記とは別にまたは前記に加えて、例えばヌクレオチドまたはアミノ酸配列に関して“相同性”または“同一性”という用語は2つの配列間の相同性の定量的な測定を示すことができる。パーセント配列同一性は(Nref−Ndif)x100/Nrefとして計算できる。式中、Ndifはアラインメントを実施したとき同一でない残基の総数であり、Nrefは配列の一方の残基の数である。したがって、DNA配列AGTCAGTCは、配列AATCAATC(Nref=8;Ndif=2)と75%の配列同一性を有するであろう。
前記とは別にまたは前記に加えて、配列に関して“相同性”または“同一性”とは、2つの配列の短い方の配列中のヌクレオチド数またはアミノ酸数で割ったヌクレオチドまたはアミノ酸が同一である位置の数を意味することができる。この場合、2つの配列のアラインメントを、WilburとLipmanのアルゴリズム(Wilbur et al. 1983(前記文献は参照により本明細書に含まれる))にしたがって、例えば20ヌクレオチドのウインドウサイズ、4ヌクレオチドのワード長および4のギャップペナルティ、並びにコンピュータ支援解析を用いて決定し、さらにアラインメントを含む配列データの解釈は市販のプログラム(例えばVector NTIソフトウェアTM、Invitrogen Inc. CA, USA)を用いて簡便に実施することができる。RNA配列が、DNA配列と類似である、またはある程度の配列同一性もしくは相同性を有するという時、DNA配列中のチミジン(T)はRNA配列のウラシル(U)と等価であるとみなされる。したがって、RNA配列は本発明の範囲内であり、DNA配列のチミジン(T)をRNA配列のウラシル(U)と等価とみなすことによってDNA配列から誘導することができる。
さらに、煩雑な実験を実施することなく、当業者は、多くの他のプログラムまたは参考文献をパーセント相同性の決定のために参考にすることができる。
【0027】
本発明はさらに、ベクター分子または発現ベクターに含まれ、さらにプロモーターエレメントおよび場合によってエンハンサーに機能的に連結されたインフルエンザポリヌクレオチドを包含する。
“ベクター”は、標的細胞にin vitroまたはin vivoでデリバーされるべき異種ポリヌクレオチドを含む組換えDNAまたはRNAプラスミド、バクテリオファージ、またはウイルスを意味する。異種ポリヌクレオチドは、本発明の目的または治療のために問題の配列を含むことができ、さらに場合によって発現カセットの形態を有することができる。本明細書で用いられるように、ベクターは最終的な標的細胞または標的主体において複製能力を有する必要はない。前記用語はウイルスベクターと同様にクローニング用ベクターも含む。
“操作された”または“組換え体”という用語は、天然には存在しないか、または天然の状態では見出されない編成で別のポリヌクレオチドに連結された半合成または合成起源のポリヌクレオチドを意味する。
“異種”は、ある実体が、比較されている実体の残りの部分と遺伝的に別個の実体に由来することを意味する。例えば、あるポリヌクレオチドを、異なる起源に由来するプラスミドまたはベクターに遺伝子工学技術によって取り込むことができ、前記ポリヌクレオチドはしたがって異種ポリヌクレオチドである。その本来のコード配列から取り外され、本来の配列以外のコード配列に機能的に連結されたプロモーターは異種プロモーターである。
【0028】
本発明のポリヌクレオチドは、追加の配列、例えば同じ転写ユニット内の追加のコード配列、制御エレメント(例えばプロモーター)、リボソーム結合部位、5’UTR、3’UTR、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、同じもしくは異なるプロモーターの制御下にある追加の転写ユニット、クローニング、発現、相同組換えおよび宿主細胞の形質転換を可能にする配列、並びに本発明の実施態様を提供するために所望し得る任意の構築物を含むことができる。
有利には、インフルエンザポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原を発現するためのエレメントが本発明のベクターに存在する。最低限の態様では、前記は、開始コドン(ATG)、終止コドンおよびプロモーター、並びに場合によってある種のベクター(例えばプラスミドおよびある種のウイルスベクター、例えばポックスウイルス以外のウイルスベクター)のためのポリアデニル化配列を含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成る。ポリヌクレオチドがポリプロテインフラグメント(例えばインフルエンザペプチド)を有利にはベクター内でコードするとき、ATGはリーディングフレームの5’に配置され、終止コドンは3’に配置される。発現を制御する他の成分も存在し得る。前記他の成分は、例えばエンハンサー配列、安定化配列、例えばイントロンおよび/または非翻訳5’または3’配列、並びにタンパク質の分泌を可能にするシグナル配列である。
【0029】
本発明の遺伝子の遺伝子生成物をin vivoまたはin vitroで発現するためのベクターまたは組換え体またはプラスミドを作製および/または投与する方法は、所望される任意の方法、例えば以下の文献に開示された方法または以下の文献に引用された文献に開示された方法または前記に類似する方法であり得る:米国特許4,603,112号;4,769,330号;4,394,448号;4,722,848号;4,745,051号;4,769,331号;4,945,050号;5,494,807号;5,514,375号;5,744,140号;5,744,141号;5,756,103号;5,762,938号;5,766,599号;5,990,091号;5,174,993号;5,505,941号;5,338,683号;5,494,807号;5,591,639号;5,589,466号;5,677,178号;5,591,439号;5,552,143号;5,580,859号;6,130,066号;6,004,777号;6,130,066号;6,497,883号;6,464,984号;6,451,770号;6,391,314号;6,387,376号;6,376,473号;6,368,603号;6,348,196号;6,306,400号;6,228,846号;6,221,362号;6,217,883号;6,207,166号;6,207,165号;6,159,477号;6,153,199号;6,090,393号;6,074,649号;6,045,803号;6,033,670号;6,485,729号;6,103,526号;6,224,882号;6,312,682号;6,348,450号;6,312,683号;および6,596,279号;米国特許出願920,197(1986年10月16日出願);WO 90/01543;W091/11525;WO 94/16716;WO 96/39491;WO 98/33510;EP 265785;EP 0 370 573;Andreansky et al., 1996;Ballay et al., 1993;Felgner et al., 1994;Frolov et al., 1996;Graham, 1990;Grunhaus et al., 1992;Ju et al., 1998;Kitson et al., 1991;McClements et al., 1996;Moss, 1996; Paoletti, 1996;Pennock et al., 1984;Richardson (Ed), 1995;Smith et al., 1983;Robertson et al., 1996;Robinson et al., 1997;およびRoizman, 1996。本明細書に引用した文献および参照により本明細書に含まれる文献は、本発明の実施に有用なベクターの例を提供するだけでなくまた、本発明の組成物のベクターまたは本発明の組成物に含まれるベクターによって発現されるべき非インフルエンザペプチドまたはそのフラグメントのための供給源を提供することができる。
【0030】
本発明はまた、ベクター(例えば発現ベクター)を含む調製物、例えば予防または治療用組成物に関する。前記調製物は、1つまたは2つ以上のインフルエンザポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原を含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成る(さらに有利には前記を発現する)1つまたは2つ以上のベクター、例えば発現ベクター(例えばin vivo発現ベクター)を含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成り得る。前記ベクターは、医薬的または獣医的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクル中にインフルエンザ抗原、エピトープまたは免疫原をコードする(さらに有利には前記を発現する)ポリヌクレオチドを含み、さらに前記を発現する。したがって、本発明の実施態様にしたがえば、調製物中の他のベクターまたは複数のベクターは、インフルエンザポリペプチド、抗原、エピトープもしくは免疫原(例えばヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ、核タンパク質)またはそのフラグメントを構成する1つまたは2つ以上の他のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成り、さらに適切な環境下でベクターはそれらを発現する。
別の実施態様にしたがえば、調製物中のベクターまたは複数のベクターは、インフルエンザポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原の1つまたは2つ以上のタンパク質またはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチドを含むか、または本質的に前記から成るか、または前記から成り、前記ベクターまたは複数のベクターは前記ポリヌクレオチドを発現する。本発明の調製物は、少なくとも2つのベクターを含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成り、前記ベクターは、異なるインフルエンザ単離株に由来し同じタンパク質および/または異なるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成り、さらに有利には妥当な条件下で、または適切な条件下で、または適切な宿主細胞で前記をin vivoで発現する。調製物は、インフルエンザポリペプチド、抗原、融合タンパク質またはそのエピトープをコードし、さらに有利には前記をin vivoで発現するポリヌクレオチドを含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成る。本発明はまた、異なるインフルエンザタンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原、例えば異なる種(ニワトリ、シチメンチョウ、アヒルおよびガンを含む鳥類の種に加えて例えばヒト、ウマ、ブタ、アザラシ、クジラを含むがただしこれらに限定されない)に由来するインフルエンザポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原をコードするものを含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成るベクターの混合物を目的とする。
【0031】
プラスミドという用語は、本発明のポリヌクレオチドおよび、細胞内または所望の宿主もしくは標的の細胞内での前記のin vivo発現に必要なエレメントを含む任意の転写ユニットを含み、さらにこれに関しては、スーパーコイルプラスミドおよびその全てのトポロジー異性体、開環状プラスミドは、線状のプラスミドと同様に本発明の範囲内に含まれることを記載しておく。
各プラスミドは、異種ペプチド配列、変種、アナローグまたはフラグメントをコードするポリヌクレオチドに加えて、場合によって、組換えタンパク質、抗原、エピトープまたは免疫原をコードするポリヌクレオチドと融合され、プロモーターと機能的に連結されているかまたはプロモーターの制御下にあるかまたはプロモーターに依存するものを含むか収納するかまたは本質的にそれらから成る。一般的には、真核細胞で機能する強力なプロモーターを利用するのが有利である。好ましい強力なプロモーターは、ヒトまたはネズミ起源の前初期サイトメガロウイルスプロモーター(CMV-IE)であり、場合によっては別の起源(例えばラットまたはモルモット由来)であってもよい。CMV-IEプロモーターは現実に存在するプロモーターセグメントであり得るが、エンハンサーセグメントを随伴していてもいなくてもよい。以下の文献を参照することができる:EP-A-260 148;EP-A-323 597;米国特許5,168,062号、5,385,839号および4,968,615号;並びにPCT出願WO87/03905号。CMV-IEタンパク質は、有利にはヒトCMV-IE(Boshart et al., 1985)またはネズミCMV-IEである。
【0032】
より一般的な関係では、プロモーターはウイルス起源または細胞起源である。本発明の実施で有用であり得るCMV-IE以外の強力なウイルスプロモーターは、SV40ウイルスの初期/後期プロモーターまたはラウス肉腫ウイルスのLTRプロモーターである。本発明の実施で有用であり得る強力な細胞性プロモーターは、細胞骨格の遺伝子のプロモーター、例えばデスミンプロモーター(Kwissa et al., 2000)またはアクチンプロモーター(Miyazaki et al., 1989)である。
これらプロモーターの機能的なサブフラグメント(すなわち適切な促進活性を維持するこれらプロモーターの部分)も本発明の範囲内に含まれ、例えばPCT出願WO98/00166号または米国特許6,156,567号の切端CMV-IEプロモーターを本発明の実施に用いることができる。したがって、本発明の実施に用いられるプロモーターには、適切な促進活性を維持し、したがってプロモーターとして機能する、好ましくは当該誘導体またはサブフラグメントが誘導された実際に存在するまたは完全長のプロモーターの活性と実質的に類似する(例えば、完全長CMV-IEプロモーター活性に対して米国特許6,156,567号の切端CMV-IEプロモーターの活性に類似する)完全長プロモーターの誘導体およびサブフラグメントが含まれる。したがって、本発明の実施に用いられるCMV-IEプロモーターは、完全長プロモーターのプロモーター部分および/または完全長プロモーターのエンハンサー部分を誘導体およびサブフラグメントと同様に含むか、または本質的に前記から成るか、または前記から成る。
好ましくは、プラスミドは、他の発現制御エレメントを含むかまたは本質的に前記から成る。安定化配列、例えばイントロン配列、好ましくはhCMV-IE(PCT出願WO89/01036号)、ウサギβグロブリン遺伝子のイントロンII(van Ooyen et al. 1979)を取り込むことが特に有利である。
プラスミドおよびポックスウイルス以外のウイルスベクターのためのポリアデニル化シグナル(ポリA)に関しては、ウシ成長ホルモン(bGH)遺伝子のポリ(A)シグナル(米国特許5,122,458号を参照されたい)またはウサギβグロブリン遺伝子のポリ(A)またはSV40ウイルスのポリ(A)シグナルが有用であり得る。
【0033】
本発明の別の実施態様にしたがえば、発現ベクターは、適切な細胞系でタンパク質のin vitro発現に用いられる発現ベクターである。発現タンパク質は、分泌後にまたは分泌前に(分泌されない場合は、典型的には細胞溶解が発生するかまたは細胞溶解が実施される)培養上清中でまたは培養上清から採集し、場合によって、例えば限外濾過のような濃縮方法によって濃縮し、および/または精製手段、例えばアフィニティー型、イオン交換型またはゲルろ過型クロマトグラフィーの方法によって精製する。
“宿主細胞”は、遺伝的に改変されているか、または外因性ポリヌクレオチド、例えば組換えプラスミドまたはベクターの投与によって遺伝的に改変することができる原核細胞または真核細胞を意味する。遺伝的改変細胞に言及するとき、前記用語は最初に改変された細胞またはその子孫細胞の両方を意味する。有利な宿主細胞には、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、結腸癌(Caco-2)細胞、COS7細胞、MCF-7細胞、MCF-10A細胞、Madin-Darbyイヌ腎(MDCK)株、ミンク肺(Mv1Lu)細胞、MRC-5細胞、U937細胞およびVERO細胞が含まれるが、ただしこれらに限定されない。所望の配列を含むポリヌクレオチドを適切なクローニングベクターまたは発現ベクターに挿入し、このベクターを順次適切な宿主細胞に複製および増幅のために導入することができる。ポリヌクレオチドは、当分野で公知の任意の手段によって宿主細胞に導入することができる。問題のポリヌクレオチドを含むベクターを多数の適切な任意の手段により宿主細胞に導入することができる。前記手段には、直接取り込み;エンドサイトーシス;トランスフェクション;F-接合;エレクトロポレーション;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストランまたは他の物質を利用するトランスフェクション;微小発射体ボンバードメント;リポフェクション;および感染(ベクターが感染性である場合、例えばレトロウイルスベクター)が含まれる。ベクターまたはポリヌクレオチドどう縫うの選択はしばしば宿主細胞の特性に依存するであろう。
【0034】
本発明のある実施態様では、ベクターはニューカッスル病ウイルス(NDV)ベクターである。トリパラミクソウイルス1とも称される(APMV1、パラミクソウイルス科、パラミクソウイルス亜科、アヴラウイルス属)ニューカッスル病ウイルスはトリの病原体であり、その天然に存在する株は広域の疾病重篤性を示す。NDVは獣医用ワクチンベクターとして特に有利である。なぜならば、ベクター自体が必要とされる家禽ワクチンとして機能するからである。NDV株の病原型は、無症状腸型(例えばUlster 2C、Queensland V4)、レントジェニック型(例えばHitchner B1, F(例えばAsplin)、La Sota)、メゾジェニック型(例えばH, Mukteswar, Rakin, Beaudette C株)またはベロジェニック型(例えばTexas GB, NY parrot 70181, Italien, Milano, Herts 33/56)である。NDVベクターを土台にするインフルエンザベクターワクチンの利点には以下が含まれるが、これらに限定されない:(1)液性、細胞性および粘膜応答を含む広範囲の免疫を誘導する;(2)NPおよびMタンパク質を発現せず、したがってDIVA(ワクチン免疫された動物からの感染動物の識別(differentiate infected from vaccinated animals))に適合する;(3)迅速な免疫開始を誘導する;(4)二価性である;(5)事故による放出の場合に不活化ワクチンよりも環境に対して製造リスクが少ない。
【0035】
NDVのある種の特徴は、外来ウイルスタンパク質を発現する組換えNDV(rNDV)または操作NDVは非常に良好なワクチン候補であろうということを示唆している。NDVは、多くの細胞株および卵で非常に高い力価にまで増殖し、強力な液性および細胞性免疫応答をin vivoで誘引する。NDVは自然には気道および食道の粘膜表面から感染し、したがって呼吸器系疾病の病原体(例えばAIV)の防御抗原のデリバリーに特に有用である。さらにまた、市販の生NDVワクチンは米国および他の大半の国々で広く用いられている。生NDV組換え体を土台にするワクチンもまた、他の組換え生ワクチンベクターを凌ぐ利点を有し得る。第一に、外来タンパク質はほんの少しのNDVタンパク質とともに発現される。対照的に、ポックスウイルスおよびヘルペスウイルスベクターは、それらの大きなサイズのゲノムに由来する別の多数のタンパク質を発現する。ワクチンの適用で特異的な免疫応答が発生する場合、限られた数のタンパク質を発現させることは有利であり得る。第二に、NDVは、DNA期無しに感染細胞の細胞質で複製し、このことは、宿主細胞のDNAにウイルスゲノムが組み込まれるという問題を除去する。このウイルスは検出可能な遺伝的組換えを受けない。
【0036】
リバースジェネティクスのまた別の応用は、本明細書で述べるようにより有効で優れたNDVワクチンの開発である。従来のNDVワクチンは、天然に存在するレントジェニックな株(例えばHitchner B1およびLaSota)を利用する。他の弱毒生ワクチンで認められるように、従来のNDVワクチンは病毒性復帰のためになお疾病を引き起こす可能性がある。ベクターとしてのNDVワクチン株の選択は重要である。なぜならば、Hitchner B1 NDV株に関して報告された最初のデータは失望するものであったからである。後にLaSota NDV株で得られたデータは頼もしいものであった。この株を土台とするワクチン候補は中国およびメキシコの野外で用いられている。
本明細書の発明は、組換え体由来抗原のトリへのデリバリー用ベクターとしてNDV AVINEW(商標)ワクチン株の本出願人の使用を開示する。より具体的には、抗原はインフルエンザウイルス(AIV)抗原であり得る。AVINEW(商標)は、メリアル社(Merial Ltd.)が開発し、世界中で用いられている生NDVワクチンである。このワクチン株は天然には非病毒性で、呼吸系および腸の二重向性を示す。トリにおけるこの枝分かれした向性は、トリでの遺伝子デリバリーにAVINEW(商標)骨格を利用する組換えNDV(rNDV)または操作NDVワクチンに、母親由来抗体(MDA)のNDVそれ自体に対する妨害に関して固有の生物学的特徴を与えることができる。MDAに対するそのような耐性は、顕著なレベルのNDV特異的MDAを本来的に有するか、或いはより通常的な組換えNDV免疫に対して抵抗性を有する可能性がある市場流通のトリおよび野生型のトリの能動免疫を可能にすることができる。
さらにまた、AVINEW(商標)株は、アヒルに感染し得るNDV遺伝子グループまたはタイプ(クラス2、遺伝子型I)に属している。LaSota(その向性は本質的に気道に向いている)とは対照的に、AVINEW(商標)株は呼吸器系の有害反応を誘導しない。
【0037】
ある実施態様では、NDVベクターはNDV AVINEW(商標)である。NDVベクターはまた米国特許5,118,502号のベクター、具体的にはATCC No. VR2239として寄託された株であってもよい。
本発明のある実施態様は、AVINEWのゲノムDNA配列およびコードされたタンパク質配列を提供する。AVINEW NDV株のゲノムDNA配列は、配列番号:1に示すポリヌクレオチド配列を有する。AVINEWゲノムcDNA配列(配列番号:1)はVG/GA配列(GenBank Accession No. EU289028)とは異なる。AVINEW(配列番号:1)およびVG/GA(EU289028)のゲノム配列間の配列同一性は89.6%である。Avinew株とVG/GA株のタンパク質間のアミノ酸配列同一性は、NPタンパク質(Avinewの配列番号:3とGenBank No. ABZ80386)については95.9%、Pタンパク質(Avinewの配列番号:5に対してGenBank No. ABZ80387)については89.7%、Mタンパク質(Avinewの配列番号:7に対してGenBank No. ABZ80388)については94.2%、Fタンパク質(Avinewの配列番号:9に対してGenBank No. ABZ80389)については92.4%、HNタンパク質(Avinewの配列番号:11に対してGenBank No. ABZ80390)については88.1%、およびLタンパク質(Avinewの配列番号:13に対してGenBank No. ABZ80391)については96.9%である。Avinew株とVG/GA株の遺伝子間の核酸配列同一性は、NP遺伝子(Avinewの配列番号:2に対してEU289028の122−1591bp)については90.6%、P遺伝子(Avinewの配列番号:4に対してEU289028の1887−3074bp)については88.6%、M遺伝子(Avinewの配列番号:6に対してEU289028の3290−4384bp)については90.1%、F遺伝子(Avinewの配列番号:8に対してEU289028の4544−6205bp)については90.0%、HN遺伝子(Avinewの配列番号:10に対してEU289028の6412−8145bp)については84.7%、およびL遺伝子(Avinewの配列番号:12に対してEU289028の8381−14995bp)については90.9%である。完全なゲノム配列および個々の遺伝子配列と他の利用可能なNDV参照配列との比較によって、AVINEW NDV株は、オーストラリアレントジェニック株98-1154およびクィーンズランドV14と遺伝的に近縁であることが示された。NDV 98-1154の完全なゲノムの配列はGenBank AY935491に示されている。AVINEW(配列番号:1)およびAY935491のゲノム配列間の配列同一性は98.8%である。Avinew株およびVG/GA株のタンパク質間のアミノ酸配列同一性は、NPタンパク質(Avinewの配列番号:3に対してGenBank No. AAX45376)については99.8%、Pタンパク質(Avinewの配列番号:5に対してGenBank No. AAX45377)については97.7%、Mタンパク質(Avinewの配列番号:7に対してGenBank No. AAX45378)については98.4%、Fタンパク質(Avinewの配列番号:9に対してGenBank No. AAX45379)については98.7%、HNタンパク質(Avinewの配列番号:11に対してGenBank No. AAX45380)については92.4%、およびLタンパク質(Avinewの配列番号:13に対してGenBank No. AAX45381)については99.5%である。Avinew株およびVG/GA株の遺伝子間の核酸配列同一性は、NP遺伝子(Avinewの配列番号:2に対してAY935491の122−1591bp)については99.0%、P遺伝子(Avinewの配列番号:4に対してAY935491の1887−3074bp)については98.2%、M遺伝子(Avinewの配列番号:6に対してAY935491の3290−4384bp)については98.6%、F遺伝子(Avinewの配列番号:8に対してAY935491の4544−6205bp)については98.8%、HN遺伝子(Avinewの配列番号:10に対してAY935491の6412−8154bp)については93.1%、およびL遺伝子(Avinewの配列番号:12に対してAY935491の8381−14995bp)については98.8%である。クィーンズランドV4についてはGenBankでは部分配列のみ利用可能である。
【0038】
別の実施態様では、本発明は、配列番号:1、2、4、6、8、10、12または24に示す配列を有するポリヌクレオチドおよびその変種またはフラグメントを提供する。本発明はさらに本明細書に開示したポリヌクレオチドの相補鎖も含む。さらに別の実施態様では、本発明は、配列番号:3、5、7、9、11または13に示す配列を有するポリペプチドおよびその変種またはフラグメントを提供する。
別の特徴では、本発明は、配列番号:1または24に示す配列を有するAVINEWのゲノムcDNAを提供する。さらに別の実施態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号:1または24に示す配列を有するポリヌクレオチドの逆相補鎖である。さらに別の実施態様では、本発明のポリヌクレオチドまたはその逆相補鎖は、配列番号:1または24に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
ある実施態様では、本発明は、AVINEWポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、例えば、配列番号:3、5、7、9、11または13に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのフラグメントを提供する。さらに別の特徴では、本発明は、配列番号:3、5、7、9、11または13に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリペプチド、または保存的変種、対立遺伝子変種、ホモローグまたはこれらポリペプチドの1つの少なくとも8または少なくとも10の連続するアミノ酸を含む免疫原性フラグメント、またはこれらのポリペプチドの組合せをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0039】
別の特徴では、本発明は、配列番号:1、2、4、6、8、10、12または24に示すヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドまたはその変種を提供する。さらに別の実施態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号:1、2、4、6、8、10、12または24に示す配列を有するポリヌクレオチドの逆相補鎖である。さらに別の特徴では、本発明は、配列番号:1、2、4、6、8、10、12または24に示す配列を有するポリヌクレオチドまたはその変種の1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドまたはその逆相補鎖を提供する。
ある特徴では、本発明は、当該ワクチンまたは組成物を接種した宿主動物で免疫学的応答を誘導する医薬組成物またはワクチンに関し、前記組成物は、医薬的に許容できる担体および改変AVENEW組換えウイルスを含む。本発明のさらに別の特徴では、操作AVINEWウイルスは、当該ウイルスゲノムの非必須領域内に、病原体由来の抗原性タンパク質をコードする異種DNA配列を含み、前記ワクチンは、宿主に投与されたとき前記病原体によってコードされるタンパク質に特異的な免疫学的応答を誘導することができる。
【0040】
“非必須領域”という用語は、組織培養でのウイルスの複製および増殖に必須ではなく、さらにその欠失または不活化が多様な動物系における病毒性を低下させる可能性があるウイルスゲノムの領域を意味する。いずれの非必須領域またはその一部分もAVINEWゲノムから欠失させることができ、または外来配列をその中に挿入することができ、さらに欠失または挿入から得られた操作AVINEWの生存活性および安定性は、欠失領域またはその部分が実際に非必須であるか否かを確認するために用いることができる。別の実施態様では、AVINEWゲノムの非必須領域は、P遺伝子とM遺伝子との間の領域、またはAVINEWゲノムのM遺伝子とF遺伝子との間の領域である。さらに別の実施態様では、非必須領域は、配列番号:1の3075nt−3289ntまたは4385nt−4543nt、配列番号:24の3115nt−3353ntまたは4449nt−4607ntの領域にある。
本発明のある特徴はトリ抗原を発現するNDVベクターに関する。前記抗原はトリインフルエンザ抗原であり得る。トリインフルエンザ抗原はヘマグルチニン、例えばH5 HAであり得る。
【0041】
トリインフルエンザ遺伝子を発現するNDVベクター、例えば以下のものもまた本発明のために意図される:LaSota NDVワクチン株のP遺伝子とM遺伝子の間の遺伝子間領域に挿入された、野生型HAおよびHPAIV野鳥単離株(A/バーヘッドグース(Bar-Headed goose)/Qinghai/3/2005(H5N1))由来変異HAオープンリィーディングフレームの両者をもつH5亜型トリインフルエンザウイルス(AIV)ヘマグルチニン(HA)を発現するNDVの構築物(例えば以下を参照されたい:Ge et al., Journal of Virology, Jan. 2007, 81(1):105-158);GenBankにアクセッション番号AF375823で寄託された、インフルエンザウイルスを発現するニューカッスル病ウイルス(NDV)ワクチン株Hitchner B1の完全なcDNAクローン(例えば以下を参照されたい:Nakaya et al., Journal of Virology, Dec. 2001, pp. 11868-11873);HPAIV A/ニワトリ/ベトナム/P41/05(H5N1)のH5タンパク質を発現するNDV組換え体(NDVH5Vm)(例えば以下を参照されたい:Roemer-Oberdoerfer et al., Vaccine. 2008 May 2;26(19):2307-13. Epub 2008 Mar 18);トリインフルエンザウイルス(AIV)A/ニワトリ/NY/13142-5/94(H7N2)由来ヘマグルチニン(HA)遺伝子が挿入された、レントジェニックなパラミクソウイルス1型ベクター(NDV B1株)を用いて構築されたrNDV-AIV-H7(例えば以下を参照されたい:Swayne et al., Avian Diseases 47:1047-1050, 2003);リバースジェネティクスによって構築されたH5亜型のNDV発現トリインフルエンザウイルス(AIV)ヘマグルチニン(例えば以下を参照されたい:Veits et al., PNAS, May 23, 2006, 103(21):8197-8202);およびレントジェニックなNDVワクチン株クローン30を土台にした、AIV A/ニワトリ/ベトナム/P41/2005(H5N1)のHA遺伝子を発現する組換えNDV-H5(例えば以下を参照されたい:Veits et al., Vaccine (2008) 26:1688-1696)。
本発明のさらに別の実施態様では、NDV遺伝子を発現するトリインフルエンザウイルス、例えばH5N1トリインフルエンザウイルスのノイラミニダーゼタンパク質の代わりにNDVのヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ遺伝子のエクトドメインを発現するキメラトリインフルエンザウイルス、または融合性の弱毒化されたNDV遺伝子中でH7トリインフルエンザウイルスヘマグルチニンのエクトドメインを発現する二価ワクチン(前記のエクトドメインのみをNDVのFタンパク質由来のトランスメンブレンドメインおよび細胞質ドメインとともに含む)(例えば以下を参照されたい:Park et al., PNAS, May 23, 2006, 103(21):8203-8308)もまた意図される。
【0042】
ある実施態様では、本発明は、タンパク質、抗原、エピトープまたは免疫原のデリバリーおよび標的細胞での発現のための処方物の治療的に有効な量の投与を提供する。予防的または治療的に有効な量の決定は当業者にとって日常的な実験である。別の実施態様では、処方物は、インフルエンザ抗原、エピトープまたは免疫原を発現するポリヌクレオチドを含む発現ベクターおよび医薬的または獣医的に許容できる担体、ビヒクルまたは賦形剤を含む。別の実施態様では、医薬的または獣医的に許容できる担体、ビヒクルまたは賦形剤はトランスフェクションを促進し、および/またはベクターまたはタンパク質の保存を改善する。
医薬的または獣医的に許容できる担体、ビヒクルまたは賦形剤は当業者には周知である。例えば、医薬的または獣医的に許容できる担体またはビヒクルまたは賦形剤は、滅菌水、0.9%のNaCl(例えば食塩水)溶液またはリン酸緩衝液であり得る。本発明の方法に用いることができる、他の医薬的または獣医的に許容できる担体またはビヒクルまたは賦形剤にはポリ-(L-グルタメート)またはポリビニルピロリドンが含まれるが、ただしこれらに限定されない。医薬的または獣医的に許容できる担体またはビヒクルまたは賦形剤は、ベクター(または本発明のベクターからin vitroで発現されるタンパク質)の投与を容易にする任意の化合物または化合物の組合せであり得る。有利には、担体、ビヒクルまたは賦形剤は、トランスフェクションを促進するか、および/またはベクター(またはタンパク質)の保存を改善し得る。用量および用量体積は、本明細書においては一般的な記述で考察され、さらにまた当分野の情報と併せて本開示を熟読することによって、当業者は、いずれの煩雑な実験を実施することなく前記を決定することができる。
【0043】
プラスミドのために有利に(ただし絶対的にというわけではない)適切である第四アンモニウム塩を含む陽イオン性脂質は、有利には以下の式を有する脂質である:
【0044】
【0045】
式中、R1は、12から18個の炭素原子を有する飽和または不飽和直鎖脂肪族基であり、R2は、2または3個の炭素原子を有する他の脂肪族基であり、さらにXはアミンまたはヒドロキシル基(例えばDMRIE)である。別の実施態様では、陽イオン性脂質は中性脂質(例えばDOPE)が会合していてもよい。
これら陽イオン性脂質の中で、DMRIE(N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパンアンモニウム;WO96/34109)がとりわけ好ましく、有利には中性脂質(有利にはDOPE(ジオレオイル-ホスファチジル-エタノールアミン;Behr, 1994)を伴いDMRIE-DOPEを形成する。
有利には、アジュバントを含むプラスミド混合物が即席に形成され、有利には調製物の投与と同時にまたは調製物の投与の少し前に形成され、例えば投与の少し前にプラスミド-アジュバント混合物を形成し、有利には混合物に複合体を形成させるために投与の前に十分な時間、例えば投与前約10分から約60分、例えば投与前約30分が与えられる。
DOPEが存在する場合、DMRIE:DOPEモル比は有利には、約95:約5から約5:約95、より有利には約1:約1、例えば1:1である。
DMRIEまたはDMRIE-DOPEアジュバント:プラスミド質量比は、約50:約1から約1:約10、例えば約10:約1から約1:約5であり、有利には約1:約1から約1:約2、例えば1:1から1:2である。
【0046】
別の実施態様では、医薬的または獣医的に許容できる担体、賦形剤、またはビヒクルは油中水エマルジョンであり得る。適切な油中水エマルジョンには、4℃で安定かつ液状である油を基剤とする油中水ワクチンエマルジョンが含まれる。前記ワクチンエマルジョンは、6から50v/v%(好ましくは12から25v/v%)の抗原含有水相、50から94v/v%の油相であって全体としてまたは部分として非代謝性油(例えば鉱物油、例えばパラフィン油)および/または代謝性油(例えば植物油、または脂肪酸、ポリオールまたはアルコールエステル)を含むもの、0.2から20p/v%(好ましくは3から8p/v%)の界面活性剤を含み、後者は全体としてもしくは部分としてまたは混合物としていずれかのポリグリセロールエステルであり、前記ポリグリセロールエステルは、好ましくはポリグリセロール(ポリ)リシンオレエートまたはポリオキシエチレンリシン油または他の水素添加ポリオキシエチレンリシン油である。油中水エマルジョンで用いることができる界面活性剤の例には、エトキシル化ソルビタンエステル(例えばポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween 80(商標);前記はAppliChem, Inc.(Cheshire, CT)から入手できる)およびソルビタンエステル(例えばソルビタンモノオレエート(Span 80(商標);前記はSigma Aldrich(St. Louis, MO)から入手できる)が含まれる。さらにまた、油中水エマルジョンに関しては、米国特許6,919,084号(例えばその実施例8)もまた参照されたい(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。いくつかの実施態様では、抗原含有水相は、1つまたは2つ以上の緩衝剤を含む食塩水溶液を含む。適切な緩衝溶液の例はリン酸緩衝食塩水である。有利な実施態様では、油中水エマルジョンは水/油/水の三重エマルジョンである(例えば米国特許6,358,500号を参照されたい:前記文献は参照により本明細書に含まれる)。他の適切なエマルジョンの例は米国特許7,371,395号に記載されている(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
【0047】
本発明の免疫学的組成物またはワクチンは1つまたは2つ以上のアジュバントを含むかまたは本質的に前記から成る。本発明の実施で用いられる適切なアジュバントは以下である:(1)アクリルもしくはメタクリル酸のポリマー、無水マレイン酸およびアルケニル誘導体ポリマー、(2)免疫刺激配列(ISS)、例えば1つまたは2つ以上の非メチル化CpGユニットを有するオリゴデオキシリボヌクレオチド(Klinman et al. 1996;WO98/16247)、(3)水中油エマルショョン、例えば以下の文献の147ページに記載されているSPTエマルジョン(M. Powell, M. Newman著、“Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach”, Plenum Press 1995)およびMF59エマルション(同じ文献の183ページに記載されている)、(4)第四アンモニウム塩を含む陽イオン脂質、例えばDDA、(5)サイトカイン、(6)水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム、(7)サポニンまたは(8)本出願に引用および参照により含まれる任意の文献で考察されている他のアジュバント、または(9)前記の任意の組合せまたは混合物。
水中油エマルション(3)(前記は特にウイルスベクターに適切である)は以下を基剤にすることができる:液状軽パラフィン油(欧州薬局方タイプ)、イソプレノイド油(例えばスクワラン、スクワレン)、アルケン(例えばイソブテンまたはデセン)のオリゴマー化から生じる油、直鎖アルキル基を有する酸またはアルコールのエステル、例えば植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコール、ジ(カプリレート/カプレート)、グリセロールトリ(カプリレート/カプレート)およびプロピレングリコールジオレエート、または分枝脂肪アルコールまたは酸のエステル、特にイソステアリン酸エステル。
【0048】
油は乳化剤と一緒に用いられてエマルションを形成する。乳化剤は、非イオン性界面活性剤、例えば以下であり得る:一方ではソルビタン、マンニド(例えばアンヒドロマンニトールオレエート)、グリセロール、ポリグリセロールまたはプロピレングリセロールのエステル、および他方ではオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸、ヒドロキシステアリン酸のエステル(前記エステルは場合によってエトキシル化される)、またはポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、例えばプルロニック、例えばL121。
タイプ(1)のアジュバントポリマーの中では、架橋(特に糖またはポリアルコールのポリアルケニルエーテルによって架橋された)アクリル酸またはメタクリル酸のポリマーがとりわけ好ましい。これらの化合物はカルボマーの名で知られている(Pharmeuropa, 8(2), June 1996)。当業者はまた米国特許2,909,462号を参照することができる。前記文献は、ポリヒドロキシル化合物によって架橋されたそのようなアクリル酸ポリマーを提供する。前記ポリヒドロキシル化合物は、好ましくは8つを超えない少なくとも3つのヒドロキシル基を有し、少なくとも3つのヒドロキシル基の水素原子は、少なくとも2つの炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルによって置換されている。好ましいラジカルは2から4の炭素原子を含むものであり、例えばビニル、アリルおよび他のエチレン系不飽和基である。不飽和ラジカルはまた他の置換基、例えばメチルを含むことができる。カルボポル(Cabopol;BF Goodrich, Ohio,USA)の名で販売されている製品が特に適切である。前記製品はアリルサッカロースまたはアリルペンタエリトリトールによって架橋されている。それらの製品の中では、とりわけCarbopol 974P、934Pおよび971Pを挙げることはできる。
【0049】
無水マレイン酸-アルケニル誘導体コポリマーに関しては、EMA(Monsanto)が好ましい。前記は直鎖または架橋されたエチレン-無水マレイン酸コポリマーであり、それらは、例えばジビニルエーテルによって架橋されている。以下の文献もまた参照できる(J Fields et al. 1960)。
構造に関しては、アクリル酸またはメタクリル酸ポリマーおよびEMAは好ましくは以下の式を有する基本ユニットによって形成される:
【0050】
【0051】
式中、
R1およびR2(同じでも異なっていてもよい)はHまたはCH3を表し、
x=0または1、好ましくはx=1であり、
y=1または2で、x+y=2である。
EMAについてはx=0でy=2であり、カルボマーについてはx=y=1である。
これらのポリマーは水または生理学的塩溶液(20g/LのNaCl)で可溶性であり、pHを例えばソーダ(NaOH)によって7.3から7.4に調整して、発現ベクターを取り込むことができるアジュバント溶液を提供することができる。最終的な免疫学的組成物またはワクチン組成物におけるポリマー濃度は0.01から1.5%w/v、0.05から1%w/v、または0.1から0.4%w/vの範囲であり得る。
【0052】
1つまたは複数のサイトカイン(5)は、免疫学的組成物またはワクチン組成物中でタンパク質の形態であっても、または1つもしくは複数の免疫原またはそのエピトープとともに宿主で同時発現させてもよい。1つもしくは複数の免疫原またはエピトープを発現するベクターと同じベクターによるか、または別個のベクターによる1つまたは複数のサイトカインの同時発現が好ましい。
本発明は、そのようなコンビネーション組成物を、例えば複数の活性化合物を有利には一緒に、さらにアジュバント、担体、サイトカインおよび/または希釈剤とともに混合することによって製造することを含む。
本発明で用いることができるサイトカインには、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターフェロンα(IFNα)、インターフェロンβ(IFNβ)、インターフェロンγ(IFNγ)、インターロイキン-1α(IL-1α)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-11(IL-11)、インターロイキン-12(IL-12)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、腫瘍壊死因子β(TNFβ)、および形質転換増殖因子β(TGFβ)が含まれる(ただしこれらに限定されない)。サイトカインは、本発明の免疫学的組成物またはワクチン組成物と同時に投与するか、および/または連続的に投与できることは理解されよう。したがって、例えば本発明のワクチンはまた、適切なサイトカインをin vivoで発現する外因性核酸分子を含むことができる。適切なサイトカインは、例えばワクチン免疫されるべき宿主または免疫学的応答を誘引されるべき宿主に適合するサイトカイン(例えばトリに投与される調製物にはトリサイトカイン)である。
【0053】
別の実施態様では、本発明の組成物は、以下の文献に記載された化学的または物理的方法を用いて製造することができる(Stauffer et al. Recent Patents on Anti-Infective Drug Discovery, 1:291-296, 2006)。不活化技術のいくつかは下記の表に要約されている。
ある実施態様では、ワクチンは、トリ(例えばニワトリ、アヒル、ガン、シチメンチョウ、ホロホロチョウ、ヤマウズラまたはダチョウ)に投与される。ニワトリには、採卵鶏、繁殖鶏、ブロイラー、愛玩鶏および闘鶏が含まれるが、ただしこれらに限定されない。アヒルには、北京ダック、ジャコウアヒル、ミュールダックおよび野鴨が含まれるが、ただしこれらに限定されない。トリがアヒルまたはニワトリより大きいトリである実施態様では、より大きな用量が意図され得る。例えば、投与が点眼によって実施される実施態様では、適用量の概算は、1ニワトリ用量、2ニワトリ用量、3ニワトリ用量、4ニワトリ用量、5ニワトリ用量、6ニワトリ用量、7ニワトリ用量、8ニワトリ用量、9ニワトリ用量、有利には10ニワトリ用量で、必要な場合には、投薬量は約20ニワトリ用量から約100ニワトリ用量に達する。参考として、5.5 log10 50%卵感染用量(EID50)がほぼ1ニワトリ用量である。
別の実施態様では、投薬量は平均胚感染用量(EID50)であり得る。ある実施態様では、投薬量は、約101 EID50、約102EID50、約103 EID50、約103 EID50、約104 EID50、約105 EID50、約106 EID50、約107 EID50、または約108 EID50であり得る。
【0054】
本発明の免疫学的組成物および/またはワクチンは、本明細書で考察した1つまたは2つ以上の発現ベクターの防御的または治療的応答を誘引するために有効な量を含むか、または本質的に前記から成るかまたは前記から成る。有効な量は、本開示(本明細書に取り込まれた文献を含む)および当分野の知識から、煩雑な実験を実施することなく決定することができる。
有利には、抗原がヘマグルチニンであるときは、投薬量は血球凝集単位(HAU)またはマイクログラムで測定される。有利な実施態様では、投薬量は、約100血球凝集単位(HAU)/用量、約1000HAU/用量または約10000HAU/用量であり得る。ある種の実施態様では、投薬量は1から100μgである。投薬体積は、約0.02mLから2mL、有利には0.03mLから1mL、より有利には0.03mLから0.5mLで、特に有利な実施態様では、体積は約0.03mLから約0.3mLであり得る。
本発明のワクチンは、経卵接種(in ovo)で、飲み水を介して、噴霧、エーロゾル、鼻内点滴、点眼、くちばし浸漬、ウィング-ウェブ穿刺によって、経皮、皮下または筋肉内注射によってトリに投与できる。有利には、ワクチンは、皮下、経卵接種、点眼、噴霧または飲み水によって投与される。
さらに別の実施態様では、ワクチンは、孵化の1から3日前に経卵接種で、または1日齢、2日齢、3日齢、4日齢、5日齢、6日齢、7日齢、8日齢、9日齢、10日齢、11日齢、12日齢、13日齢、14日齢、15日齢、16日齢、17日齢、18日齢、19日齢、20日齢、21日齢のニワトリに投与することができる。
【0055】
本発明のある実施態様では、プライム-ブースト免疫スケジュールを用いることができる。前記は、少なくとも1回の主投与および少なくとも1回のブースター投与(少なくとも1つの共通タンパク質、ポリペプチド、抗原、エピトープまたは免疫原を用いる)で構成される。主投与で用いられる免疫学的組成物またはワクチンは、ブースターとして用いられるものと性質が異なる。しかしながら、同じ組成物を主投与およびブーストとして用いることができることに留意されたい。この投与プロトコルは“プライム-ブースト”と称される。
本発明のプライム-ブーストプロトコルの別の特徴では、操作されたトリインフルエンザAvinew NDVワクチンまたは組成物を含む組成物を投与した後で、トリインフルエンザ抗原を含みこれをin vivoで発現する組換えウイルスベクターを含むワクチンもしくは組成物、またはトリインフルエンザ抗原を含む不活化ウイルスワクチンもしくは組成物、またはトリインフルエンザサブユニット(タンパク質)を含むワクチンもしくは組成物、またはトリインフルエンザ抗原を含みこれを発現するDNAプラスミドワクチンもしくは組成物が投与される。同様に、プライム-ブーストプロトコルは、トリインフルエンザ抗原を含みこれをin vivoで発現する組換えウイルスベクターを含むワクチンもしくは組成物、またはトリインフルエンザ抗原を含む不活化ウイルスワクチンもしくは組成物、またはトリインフルエンザサブユニット(タンパク質)を含むワクチンもしくは組成物、またはトリインフルエンザ抗原を含みこれを発現するDNAプラスミドワクチンもしくは組成物の投与後に、操作トリインフルエンザAvinew NDVワクチンまたは組成物を含む組成物の投与を含むことができる。さらにまた、主投与および二次投与の両方が操作トリインフルエンザAvinew NDVワクチンまたは組成物を含む組成物を含むことができることに留意されたい。
【0056】
プライム-ブーストプロトコルは、少なくとも1回のプライム投与および少なくとも1つの共通の抗原を用いる少なくとも1回のブースト投与を含む。プライム投与に用いられるワクチンまたは組成物は、後のブースターワクチンまたは組成物として用いられるものと性質が異なっていてもよい。プライム投与は1回または2回以上の投与を含むことができる。同様に、ブースト投与は1回または2回以上の投与を含むことができる。
好ましくは、多様な投与が約1から6週間離して、または約2から4週間離して実施される。2から6週間毎に繰り返されるブースター、または1年毎のブースターもまた意図される。好ましくは、動物は最初の投与時には少なくとも1日齢である。
免疫学的組成物および/またはワクチンは、1用量当たり約104から約1011、有利には約105から約1010、より有利には約106から約109の、インフルエンザ抗原、エピトープまたは免疫原を発現する組換えアデノウイルスのウイルス粒子を含む。ポックスウイルスを土台とする免疫学的組成物および/またはワクチンの場合には、1用量は102 pfuから109 pfuである。免疫学的組成物および/またはワクチンは、1用量当たり約102から約107、有利には約103から約105 pfuの、インフルエンザ抗原、エピトープまたは免疫原を発現するポックスウイルスまたはヘルペスウイルス組換え体を含む。
トリ免疫学的組成物またはワクチンが不活化トリウイルスである実施態様では、不活化トリウイルスは、オイルエマルジョンワクチンの製造で用いられる多様な種ウイルスに由来することができ、Ulster 2C、B1、LaSotaまたはRoakinが含まれ得る。不活化トリインフルエンザウイルスはまた古典的な不活化ウイルスであってもよい(発育SPF卵で増殖させたH5N9ユーラシア単離株A/ニワトリ/イタリア22A/98を含む全ウイルスベータ-プロピオラクトン(BPL)不活化ワクチン(H5N9-It))。他の不活化ワクチン(アジュバント添加)には以下が含まれる:H5N2およびH5N9亜型の野外ウイルスを土台にした市場で入手できる全ウイルス調製物(Fort Dodge Animal Health, Intervet International, Merial Italia)、または遺伝子操作によって誘導されたH5N3(後者は、A/ニワトリ/ベトナム/C58/04(H5N1)の改変HA遺伝子、A/アヒル/ドイツ/1215/73(H2N3)のノイラミニダーゼ遺伝子、およびA/PR/8/34(H1N1)の内部遺伝子を含む)。
【0057】
ウイルスベクターは弱毒アビポックス発現ベクターであり得る。ある実施態様では、アビポックス発現ベクターは鶏痘ベクター、例えばTROVAC(商標)であり得る。別の実施態様では、アビポックス発現ベクターはカナリポックスベクター、例えばALVAC(商標)であり得る。インフルエンザ抗原、エピトープまたは免疫原はヘマグルチニン、例えばH5であり得る。鶏痘ベクターは、vFP89(US2008/0107681およびUS2008/0107687を参照されたい)またはvFP2211(US2008/0107681およびUS2008/0107687を参照されたい)であり得る。カナリポックスベクターは、vCP2241であり得る(US2008/0107681およびUS2008/0107687を参照されたい)。本発明の方法で用いることができる他のウイルスには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):ワクシニアウイルス、例えば弱毒ワクシニアウイルス、例えばNYVAC、アデノウイルスおよびヘルペスウイルス。
ワクチンの有効性は、最後の免疫の約2から4週間後に動物(例えばトリ)をインフルエンザの病毒株(例えばインフルエンザH5N1、H5N8またはH5N9株)でチャレンジすることによって試験することができる。同種株および異種株の両方をワクチンの有効性試験のチャレンジに用いることができる。動物は、噴霧、鼻内、点眼、眼鼻、IM、気管内、および/または経口によりチャレンジすることができる。チャレンジウイルスは投与経路に応じて総計103から108 EID50であり得る。例えば、投与が噴霧による場合、ウイルス懸濁物は約1から100μmの小滴を生じるようにエーロゾル化され、投与が鼻内、気管内または経口である場合、チャレンジウイルスの総計は約0.05から約5mLである。標的種専用組成物の用量体積、例えばトリ用組成物の用量体積は経卵接種の場合約50μL、点眼の場合約20から約50μL、噴霧の場合約0.25mLから約1mLである。動物は、チャレンジ後毎日14日間、臨床症状および死亡率について観察することができる。さらにまた、動物群を安楽死させ、病理学的所見について評価することができる。チャレンジ後に全ての動物から、口腔咽頭、気管または総排泄腔スワブをウイルス検出のために収集することができる。組織中のウイルス抗原の有無は、免疫組織化学、ウイルス単離もしくは力価測定、または核酸検出(例えば逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR))によって判定することができる。血液サンプルをチャレンジ後に収集し、抗インフルエンザH5N1ウイルス特異的抗体の存在について解析できる。
【0058】
本明細書の開示は例示によって提供され、さらに本発明はそれらに限定されないことは当業者には理解されよう。本明細書の開示および当分野の情報から、当業者は煩雑な実験を実施することなく投与の回数、投与経路、および各免疫プロトコルについて用いられるべき用量を決定することができる。
本発明は、本発明にしたがって作製された治療用組成物の有効量を動物に少なくとも1回投与することを意図する。この投与は、筋肉内(IM)、皮内(ID)もしくは皮下(SC)注射、または鼻内、経卵もしくは経口投与を含む(ただしこれらに限定されない)多様な経路を経ることができる。本発明の治療用組成物はまた、無針装置(例えばPigjet、Dermojet、Biojector、VetjetまたはVitajet装置(Biojet, Oregon, USA))によって投与できる。ある実施態様では動物はトリである。
本発明の別の実施態様は、インフルエンザに対する免疫学的または防御的応答を動物で誘導する方法を実施するためのキットである。前記キットは、組換えNDV免疫学的組成物もしくはワクチンまたは不活化インフルエンザ免疫学的組成物もしくはワクチン、および動物で免疫応答を誘引するために有効な量でのデリバリーの方法を実施するための指示を含む。
本発明をさらに以下の非制限的実施例によって例示する。
実施例
DNA挿入物、プラスミドおよび組換えウイルスベクターの構築は、J. Sambrookらが記載した標準的な分子生物学技術を用いて実施した(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989)。
【実施例1】
【0059】
AVINEW(商標)(NDV)株のリバースジェネティクス開発および異種遺伝子を発現するNDV変異体の作製
本実施例の目的は、AVINEW NDV株のリバースジェネティクスを開発し異種遺伝子を発現する操作NDV変異体を作製することであった。
NDVは、図1Aに示すように6つの主要遺伝子(NP、P、M、F、HNおよびL)を含むマイナスRNAウイルスである。遺伝的に改変したNDVウイルスの作製はリバースジェネティクス系を必要とする。出願人らは、NDVのAVINEWワクチン株を土台にしてリバースジェネティクス系を開発した。この系は、図1Bに示すように、外来遺伝子(例えばインフルエンザのヘマグルチニン(HA))を発現する改変ニューカッスル病ウイルスの作製を可能にする。
実施例1.1:全AVINEW NDVゲノムの転写プラスミドでのクローニングおよび配列解析
AVINEW NDV株のゲノムの配列を決定する目的のために、AVINEW株の全ゲノムを“転写プラスミド”と称するプラスミドでクローニングすることが必要である(図1C参照)。転写プラスミドは、NDVのAVINEW株の完全なゲノムに一致するプラスRNAの作製を可能にする。逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によってAVINEW抽出RNAから増幅させた10個のオーバーラップcDNAフラグメントのセットを連続的に結合させることによりAVINEWゲノムをクローニングする方法は図2に示されている。pIV029(図3参照)と称されるこの最終的なプラスミドは、T7 RNAポリメラーゼ転写シグナル(上流に位置するT7プロモーター)の制御下にあるAVINEWの完全なゲノム配列を含み、肝炎デルタウイルス(HDV)リボザイムで終結する(前記リボザイムは、T7ターミネーターがその後に続く真性のNDVゲノム終結点でRNAを切断するために用いられる)。制限部位をPとMの間に挿入してトランスジーンの挿入を可能にする(図2および3を参照)。
AVINEW(商標)株の完全なゲノムの配列を決定した。AVINEW(商標)ゲノムは長さが15186bpであり、前記はヌクレオキャプシドタンパク質結合モチーフに基づいて予想されるように6ヌクレオチドの倍数である。
pIV029の挿入物の注解付き配列は図4A−4Oに提示されてあり、プラスミドマップは図3に提示されている。図4A−4Oでは、Avinew株の6つのオープンリーディングフレーム(ORF)(NP、P、M、F、HNおよびL)がそれらのアミノ酸配列に翻訳されている。各ORFは、GSおよびGEにより示される、“遺伝子開始”上流配列および“遺伝子終止”下流配列によってフランキングされている。T7プロモーター配列およびT7ターミネーター配列が表示されている。
【0060】
実施例1.2:AVINEW NDVのNP、PおよびL遺伝子を含む発現プラスミドの構築
リバースジェネティクス系では、T7 RNAポリメラーゼプロモーターの制御下でヌクレオキャプシド(NP)、リンタンパク質(P)および大ポリメラーゼタンパク質(L)をコードする“発現プラスミド”と称されるプラスミドを構築することが必要である(図1C参照)。これら3つのタンパク質はウイルスRNAと結合して、最小のNDV感染ユニットであるリボ核タンパク質(RNP)を形成する。NP、PおよびLタンパク質を含むこの複合体はRNA依存RNAポリメラーゼ活性を示す。
発現プラスミドpIV32(図5)、pIV33(図6)およびpIV34(図7)が構築され、T7 RNAポリメラーゼプロモーターおよび口蹄疫ウイルス(FMDV)の内部リボソーム進入部位(IRES)の制御下に、それぞれNP、PおよびL遺伝子を含んでいる。
実施例1.2.1:AVINEW NDVのNP遺伝子を含む発現プラスミドpIV32の構築
発現プラスミドpIV32のマップは図5に示されている。このプラスミドは、T7 RNAポリメラーゼプロモーターおよび口蹄疫ウイルス(FMDV)の内部リボソーム進入部位(IRES)の制御下に、ニューカッスル病ウイルスAVINEW(商標)ワクチン株のヌクレオキャプシド(NP)遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)をコードするヌクレオチド配列を含んでいた。NDV ORF NP(1467bp、配列番号:2)は489アミノ酸ポリペプチド(配列番号:3)をコードする。タンパク質NPはヌクレオキャプシドの主要な構造成分である。このタンパク質はほぼ58kDaである。合計2600個のNP分子がゲノムRNAをしっかりと包みこんでいる。NPはいくつかの他のウイルスコードタンパク質と相互作用し、それらのいずれも複製制御に必要である。(NP-NP、NP-P、NP-(PL)およびNP-V)。NDVゲノムRNA並びにタンパク質PおよびLと結合したNPは、NDVリボ核タンパク質(RNP)複合体を構成し、前記はNVDゲノムの感染形である。
【0061】
実施例1.2.2:AVINEW NDVのP遺伝子を含む発現プラスミドpIV33の構築
発現プラスミドpIV33のマップは図6に示されている。このプラスミドは、T7 RNAポリメラーゼプロモーターおよび口蹄疫ウイルス(FMDV)の内部リボソーム進入部位(IRES)の制御下に、ニューカッスル病ウイルスAVINEW(商標)ワクチン株のリンタンパク質(P)遺伝子のORFをコードするヌクレオチド配列を含んでいた。このプラスミドは、リバースジェネティクス的方法論を用いて、ワクチンベクターとして組換えNDV AVINEW(商標)を作製するために設計された。
NDV ORF P(1185bp、配列番号:4)は、395アミノ酸ポリペプチド、すなわち構造リンタンパク質(配列番号:5)をコードする。このタンパク質は、SDS-PAGEによって決定したとき53から56kDaの分子量を有する。タンパク質Pは、RNAポリメラーゼ複合体の活性に必須であり、Pは大きなサブユニットLと前記複合体を形成する。ポリメラーゼの触媒活性はいずれもLサブユニットと結合しているが、その機能はPとの特異的な相互作用を必要とする。タンパク質LおよびNP並びにNDVゲノムRNAと結合したPは、NDVリボ核タンパク質(RNP)複合体を構成し、前記はNVDゲノムの感染形である。
さらにまた、P遺伝子は、SDS-PAGEでの見かけの分子量が36から38kDaであるタンパク質V(機能は不明)をコードする。PおよびVタンパク質は同じアミノ末端を共有するが、それらのC-末端は多岐にわたる。この相違はRNA編集メカニズムによって生じ、このメカニズムでは鋳型によらない1つのG残基がP遺伝子由来mRNAに挿入される。未編集転写物はPタンパク質をコードし、一方、編集された転写物はVタンパク質をコードする。リンタンパク質であるので、PおよびVは、それらの全長にわたってセリンおよびスレオニン残基に富む。さらにまた、Vタンパク質はC-末端においてシステイン残基に富む。同様に、P遺伝子は、SDS-PAGEでの見かけの分子量が28から33kDaであるタンパク質W(機能は不明)をコードする。このタンパク質もまたRNA編集メカニズムによって生成され、このメカニズムでは鋳型によらない1つのG残基の代わりに2つがP遺伝子由来mRNAに挿入される。
【0062】
実施例1.2.3:AVINEW NDVのL遺伝子を含む発現プラスミドpIV34の構築
発現プラスミドpIV34のマップは図7に示されている。このプラスミドは、T7 RNAポリメラーゼプロモーターおよび口蹄疫ウイルス(FMDV)の内部リボソーム進入部位(IRES)の制御下に、ニューカッスル病ウイルスAVINEW(商標)ワクチン株の大ポリメラーゼタンパク質(L)遺伝子のORFをコードするヌクレオチド配列を含んでいた。このプラスミドは、リバースジェネティクス的方法論を用いて、ワクチンベクターとして組換えNDV AVINEW(商標)を作製するために設計された。
NDV L(6612bp、配列番号:12)は、2204アミノ酸ポリペプチド(前記はLタンパク質(配列番号:13)である)をコードする。パラミクソウイルス科は、他の非分節マイナス鎖RNAウイルスと同様に、2つのサブユニット(大きなタンパク質Lおよびリンタンパク質P)で構成されたRNA依存RNAポリメラーゼを有する。Lタンパク質は複合体にRNAポリメラーゼ活性を付与し、一方、Pタンパク質は転写因子として機能する。タンパク質PおよびNP並びにNDVゲノムRNAと結合したタンパク質Lは、NDVリボ核タンパク質(RNP)複合体を構成し、前記はNVDゲノムの感染形である。
実施例1.3:T7 RNAポリメラーゼを発現させる発現プラスミドの構築
リバースジェネティクス系は、細胞でT7 RNAポリメラーゼが発現されることを要し、この場合NDVウイルスが再生されるであろう(図1C参照)。種々の系を用いてT7 RNAポリメラーゼを発現させることができる。前記には、ベクターとして組換えウイルス(例えばアビポックス)の使用、酵素を構成的に発現する細胞の使用、または発現プラスミドを用いる一過性発現が含まれる。後者の解決法を選択し、HCMV IEプロモーター下にあるT7 RNAポリメラーゼをコードする発現プラスミド(pNS151と称される)を構築した。T7 RNAポリメラーゼは、上記記載の発現プラスミドからNP、PおよびLタンパク質の転写/発現を可能にするだけでなく、NDVゲノム(転写プラスミド中に存在する)をプラスセンスRNAに転写する。このプラスミドのマップは図8に示されている。
【0063】
実施例1.4:リバースジェネティクス系を用いたNDVウイルスの回収
上記に記載した5つのプラスミド(1つはNDVゲノムを含む転写プラスミド、3つはNDV NP、PおよびLを発現する発現プラスミド、およびT7ポリメラーゼを発現する発現プラスミド)をチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に一緒に同時トランスフェクトした。図1Cは、リバースジェネティクス系のメカニズムを説明する模式図である。模式図は、細胞への進入に際して、T7 RNAポリメラーゼが発現され、続いて前記ポリメラーゼが、転写プラスミドからプラスセンスRNA(RNA(+))ゲノムにNDVゲノムを転写し、同様にNP、PおよびL遺伝子を個々の発現プラスミドから転写することを示している。続いて、NP、PおよびLタンパク質転写物は発現されたNP、PおよびLタンパク質として翻訳され、前記は続いてアッセンブリングされてゲノムRNA(+)とともにRNPを形成する。このRNP複合体はマイナス鎖RNAゲノム(RNA(-))を合成し、前記は続いてNDVウイルスの正常な複製周期を開始し、感染性粒子の生成を促進する。トリプシンまたは卵の尿嚢によって提供されるような他の外因性プロテアーゼを培養液に加えて、生成されたウイルスのFタンパク質を切断できる。
この系を用いて、AVINEW NDVの感染性粒子を入手することができる。略記すれば、必要とされる種々のプラスミド(pIV029、pIV32、pIV33、pIV034およびpNS151)をCHO細胞にトランスフェクトした。72時間後、CHO上清を10日齢の発育卵に接種してウイルスを増幅させた。3日後、尿嚢液を収集し、ニワトリ赤血球を用いて血球凝集活性(HA)をチェックした。得られた逆遺伝AVINEW変異体をvAVW01と称した。前記は、PとM遺伝子の間に導入した2つの固有の制限部位(PacIおよびFseI)を除いてAVINEW親ウイルスと同じ配列を含んでいた(図2参照)。
【0064】
実施例1.5:リバースジェネティクス系を用いた外来遺伝子を発現するNDVウイルスの作製
外来抗原を発現する改変NDVウイルスを作製するために、挿入座位の選択が必要であった。NP遺伝子の上流および2つの遺伝子の間を含む種々の座位を選択することができる。この実施例では、AVINEW(商標)NDVのPとM遺伝子の間の部位を選択し、図9に示すように外来遺伝子を挿入した。外来遺伝子は、必要な“開始”および“停止”転写配列とともに挿入する必要があり、さらに、改変NDVゲノムのヌクレオチドの合計数が6の倍数を維持するように、挿入ヌクレオチドの数を予定する必要がある。
本実施例は、トリインフルエンザ由来ヘマグルチニン(HA)遺伝子を発現するAVINEW変異体の作製を詳述する。HA遺伝子をまず初めに転移プラスミドに挿入した(このプラスミドは、pIV029のPacIおよびFseI固有制限部位に外来遺伝子およびフランキング配列の挿入を可能にする)。転移プラスミドの構造は図9に示されている(枠内)。前記は、左から右に、PacI部位、PacI部位から下流にPの3’UTR、Pの遺伝子終点(またはSTOP)配列、P/Mインタージーン、Mの遺伝子開始(またはSTART)配列、Mの5’UTR、マルチクローニング部位、P(PacI部位から上流)の3’UTRおよびFseI部位を含んでいる。HA遺伝子を図9に記載した転移プラスミドのマルチクローニング部位でクローニングし、続いて全PacI/FseI挿入物をpIV029の同じ制限部位でクローニングし、外来遺伝子を含む転写プラスミドを生成した。そのような転写プラスミドの例(pIV039)は、図10に示されている。この実施例では、高度に病原性のH5N1トリインフルエンザウイルスA/ニワトリ/インドネシア/7/2003のHA遺伝子のアミノ酸配列をコードする、切断部位で改変された合成遺伝子が転写プラスミドに挿入された。
リバースジェネティクスによるAVINEW変異体の作製に必要な4つのまた別の発現プラスミド(実施例1.4を参照されたい)と一緒に前記転写プラスミドpIV039を用いて、高度に病原性(HP)のH5N1トリインフルエンザ(AI)ウイルスA/ニワトリ/インドネシア/7/2003に由来するHA遺伝子を発現する、vAVW02と称するAVINEW(商標)変異体を作製した。
同じ方法を用いて、種々のHPAI H5N1または低病原性AI(LPAI)H9N2に由来するHA遺伝子を発現する種々のAVINEW変異体を作製した。種々のH5N1およびH9N2 AI単離株に由来する挿入HA遺伝子の配列に図12に示す配列番号を割り当て、DNAおよびタンパク質配列の両方は配列表に含まれている。出願書類とともにファイルして電子的に提出した配列表の内容は参照によりその全体が本明細書に含まれる。
上記に記載した方法を、種々のHPAI H5N1または低病原性AI(LPAI)H9N2に由来するHA遺伝子を発現する感染性AVINEW変異体の回収のために用いて成功した(表1参照)。
【0065】
表1:種々のトリインフルエンザ単離株から作製され、前記単離株由来の合成HA遺伝子を発現する種々のAvinew変異体。LPAI H5単離株の切断部位の配列とマッチさせるために、HPAI H5N1由来の全てのHA遺伝子の切断部位に変異が導入された。
【0066】
実施例1.6:リバースジェネティクス系を用いた外来遺伝子を発現するNDVウイルスの製造と性状決定
全ての操作AVINEW変異体を発育卵で引き続いて継代することにより増幅し性状を決定した。組換えウイルスは本来のAVINEW(商標)ウイルスと同様な力価(8から10 log EID50/mL)まで増殖し、外来遺伝子挿入は発育卵でのウイルスの複製に顕著な影響を与えないことが示唆された。発育卵で2回目または3回目に得られた感染力価の例は表2に示されている。
H5トランスジーンの発現は、感染CHO細胞での間接免疫蛍光並びに尿嚢液およびCHO感染細胞溶解物でのイムノブロット(ウェスタンブロットまたはWB)によって確認した(例としてvAVW02について図11Aおよび11Bを参照されたい)。H5の電気泳動プロフィルは予想した通りであった。尿嚢液中のプロテアーゼの存在のために、適切なHA切断生成物(すなわちHA1(50kDa)およびHA2(28kDa)が検出された。卵で増殖したウイルスを感染させたCHO細胞では(トリプシン非存在下)、出願人らはHA0型(75kDa)のみを検出した(図11A)。
NDVビリオンの表面での外来HAタンパク質の発現は、例としてvAVW02を用い免疫電子顕微鏡によって確認した(図2B参照)。
【0067】
表2:種々のトリインフルエンザ単離株から作製され前記由来の合成HA遺伝子を発現するAvinew変異体の収量と発現の制御
【実施例2】
【0068】
ニワトリ実験1:操作AVINEW変異体によってニワトリに誘導されるニューカッスル病に対する防御並びにNDおよびAI HI力価
本実験の目的は、AVINEW株ゲノムへの外来遺伝子の挿入がニューカッスル病(ND)に対するニワトリの防御能力を低下させないことを証明することであった。ワクチン免疫スケジュールは図3Aの上段パネルに示されている。AVINEWワクチンおよび2つの操作AVINEW変異体(挿入物を全く含まないvAVW01(表1参照)およびHPAI H5N1 HA挿入物を含むvAVW03)によって誘導された防御率は図3Aの下段の表に示されている。類似レベルのND防御が3つのワクチンの3つの試験用量によって誘導され、この試験条件下ではHerts33株によるベロジェニックNDVチャレンジに対するベクターの防御能力に対してHA挿入の負の影響は存在しないことを示した。
【実施例3】
【0069】
NDVおよび/またはAIに対する母親由来抗体(MDA)をもつまたはもたないSPF鶏で操作AVINEW変異体によって誘導されるH5N1 HPAIに対する防御
実施例3.1:ニワトリ実験2:操作AVINEW変異体の1回投与によりSPF鶏で誘導されるハンガリー(2006)H5N1 HPAIに対する防御
操作AVINEW変異体vAVW03のHPAI H5N1チャレンジに対する有効性をSPF(特定の病原体をもたない、specific pathogen free)鶏で評価した。8匹の1日齢SPF鶏を点眼(ED)および鼻内(IN)ルートによって105 EID50でワクチン免疫した(D0)。H5N1チャレンジ(各雛当たりH5N1クレード2.2 A/アヒル/ハンガリー/11804/2006単離株の6 log10)をワクチン免疫後4週(D28)および6週(D42)で実施した。チャレンジ後2週間までニワトリをモニターした。結果は表3および表Aに示されている。
【0070】
表3:ニワトリ実験2:操作vAVW03変異体によりSPF鶏で誘導されるHPAI H5N1(A/アヒル/ハンガリー/11804/2006)チャレンジに対する防御の有効性を評価するワクチン免疫-チャレンジ実験の臨床的防御結果
aMTD:日数で表した死亡までの平均時間
【0071】
表A:ニワトリ実験2:操作vAVW03変異体によりSPF鶏で誘導されるHPAI H5N1(A/アヒル/ハンガリー/11804/2006)チャレンジに対する防御有効性を評価するワクチン免疫-チャレンジ実験のウイルス排出防御の結果
【0072】
a排出は、チャレンジ後2、4および7日(dpc)に採取した口内および総排泄腔スワブからリアルタイムPCRを用いて判定した。
【0073】
完全および部分的(75%)な臨床的防御がD28およびD42でそれぞれ誘導された。検出可能量のチャレンジウイルスを排出するニワトリの数はワクチン免疫グループで減少した。さらにまたワクチン免疫グループ(2および4)の2dpcにおけるウイルス排出レベルは、コントロールの排出レベルよりもD28およびD42でのチャレンジ後にそれぞれ3 log10および約2 log10以上低かった。総合すれば、これらの結果は、HPAI HA遺伝子を発現するAvinewベクターはSPF鶏で防御能力を有することを示している。
【0074】
実施例3.A:ニワトリ実験A:操作AVINEW変異体の1回投与によりSPF鶏で誘導されるエジプト(2006)H5N1 HPAIに対する防御
操作AVINEW変異体vAVW03のエジプトHPAI H5N1チャレンジに対する有効性をSPF(特定病原体をもたない)鶏で評価した。10匹の1日齢SPF鶏を点眼(ED)および鼻内(IN)ルートによって106 EID50でワクチン免疫した(D0)。H5N1チャレンジ(各雛当たりH5N1クレード2.2 A/ニワトリ/エジプト/06959-NLQP/2006単離株の6 log10)をワクチン免疫後3週(D21)で実施した。チャレンジ後2週間ニワトリをモニターした。結果は表Bに示されている。
【0075】
表B:ニワトリ実験2:操作vAVW03変異体によりSPF鶏で誘導されるHPAI H5N1(A/アヒル/ハンガリー/11804/2006)チャレンジに対する防御有効性を評価するワクチン免疫-チャレンジ実験の臨床的防御結果
優れた(90%)臨床的防御がD21でこのエジプトHPAI H5N1単離株に対して誘導され、HPAI HA遺伝子を発現するAvinewベクターはSPF鶏で防御を誘導することが確認された。
実施例3.B:ニワトリ実験B:操作AVINEW変異体の1または2回投与またはプライム-ブースト免疫スケジュールによりSPF鶏に誘導されるハンガリー(2006)H5N1 HPAIに対する防御
操作AVINEW変異体vAVW03のハンガリー(2006)HPAI H5N1チャレンジに対する有効性を、不活化ワクチンによる1、2回投与またはプライム-ブースト免疫スケジュール後にSPF(特定病原体をもたない)鶏で評価した。8匹の1日齢SPF鶏を点眼(ED)および鼻内(IN)ルートによって105 EID50でD0(グループ2、3および4)およびD14(グループ3)にワクチン免疫した。グループ3のニワトリには、H5N9 A/ニワトリ/イタリア/A22/1998 LPAI単離株を用いて作製した不活化ワクチンを投与した(0.5mL/ニワトリ)。H5N1チャレンジ(各ニワトリ当たりH5N1クレード2.2 A/アヒル/ハンガリー/11804/2006単離株の6 log10)を2回目のワクチン免疫後4週(D42)で実施した。チャレンジ後2週間ニワトリをモニターした。結果は表Cに示されている。
【0076】
表C:ニワトリ実験B:vAVW03変異体を含む種々のワクチン免疫スケジュールにより誘導されるHPAI H5N1(A/アヒル/ハンガリー/11804/2006)チャレンジに対する防御有効性を評価するワクチン免疫-チャレンジ実験の防御結果
*MTD:日数で表した死亡までの平均時間
**dpc:チャレンジ後日数
***不活化(または殺滅)AI H5N9ワクチンは、H5N9 A/ニワトリ/イタリア/A22/1998 LPAI単離株を用いて調製した。
【0077】
優れた臨床的防御が3つのワクチン免疫グループで誘導された。チャレンジウイルスの排出レベルの低下と同様にウイルスを排出するニワトリ数の低下がワクチン免疫によって誘導された。もっとも高い防御実績は、プライム-ブースト免疫スケジュールを受けたグループ4のニワトリで得られた。これらの結果は、HPAI HA遺伝子を発現するAvinewベクターはSPF鶏に防御を誘導することを確認し、さらに防御レベルはプライム-ブースト免疫スケジュールによって改善できることを示している。
【0078】
実施例3.C:ニワトリ実験C:操作vAVW03変異体を含む種々のワクチン免疫スケジュールにより誘導されるSPF鶏での変種エジプト(2008)H5N1 HPAI単離株に対する防御
種々のワクチン免疫スケジュール(表D参照)に含まれる操作AVINEW変異体vAVW03の2008年変種エジプト単離株(A/ニワトリ/エジプト/1709-6/2008)を用いるHPAI H5N1チャレンジに対する有効性を1日齢のSPF(特定病原体をもたない)鶏で評価した。ワクチンスケジュールは表Dに示されている。vAVW03ワクチンを106 EID50/100μLの用量で眼内(50μL)および鼻内(50μL)ルートによりD0(グループ2および3)およびD14(グループ2および4)に投与した。グループ3のニワトリには、H5N1クレード2.3 A/アヒル/Anhui/2006 LPAI単離株由来HA(切断部位で改変)およびNAを含むリバースジェネティクスH5N1株を用いて作製した不活化ワクチンを投与した(0.5mL/ニワトリ)。グループ4のニワトリには、H5N8 HPAI A/シチメンチョウ/アイルランド/1378/1983単離株に由来するHAを発現する鶏痘組換え体vFP89(TROVAC-AIV H5ワクチン、US2008/0107681およびUS2008/0107687を参照されたい)をマレック病ワクチン希釈剤(メリアルの特許物質)で希釈して市販用量(約3.5 log10 TCID50/200μL)で皮下ルートにより首の筋肉にD0に投与した。H5N1チャレンジ(各雛当たりH5N1クレード2.2 A/ニワトリ/エジプト/1709-6/2008単離株の5 log10)を2回目のワクチン免疫後2週(D28)で実施した。チャレンジ後10日間ニワトリをモニターした。結果は表Dに示されている。
【0079】
表D:ニワトリ実験C:vAVW03変異体を含む種々のワクチン免疫スケジュールにより誘導されるHPAI H5N1(A/ニワトリ/エジプト/1709-6/2008)チャレンジに対するSPF鶏での防御有効性を評価するワクチン免疫-チャレンジ実験の臨床的防御結果
* H5N1抗原はA/シチメンチョウ/トルコ/1/2005抗原から調製した;SD=標準偏差
** MTD:日数で表した死亡までの平均時間
【0080】
種々のワクチン免疫スケジュールによって誘導されたHI力価は表Dに示されている。期待されたように、高いHI力価が不活化ワクチンによるブースト後にグループ3で得られた。優れた臨床的防御(93−100%)が3つのワクチン免疫グループで誘導された。A/ニワトリ/エジプト/1709-6/2008単離株(HAタンパク質配列はGenBank(ACD65000.1)で入手できる)はエジプトで最近出現したH5N1抗原変種の1つであり、前記に対して市販の不活化H5ワクチンは古いエジプト株に対するよりも低い防御しか提供し得ないことは記載する価値があろう。これらの結果は、HPAI HA遺伝子を発現するAvinewベクターはSPF鶏で抗原性変種H5N1エジプト単離株に対し防御を誘導することを確認した。
【0081】
実施例3.2:ニワトリ実験3:NDVおよび/またはAI MDAをもつニワトリおよびもたないニワトリで操作AVINEW変異体により誘導されるH5N1 HPAIに対する防御
本実験の目的は、H5N1 HPAI HA遺伝子を発現するAVINEW変種vAVW03により誘導されるHPAI H5N1防御レベルをSPF鶏で評価し、さらにNDVベクターに対するおよび/またはAIに対する母親由来抗体(MDA)により発生し得る干渉を評価することである。
AI防御に対するMDAの影響を評価するために、表4に示すようにSPF繁殖鶏を種々のワクチン免疫スケジュールにより免疫する必要があった。繁殖鶏には以下の3つのグループが存在した:第一のグループ(G1)は、NDV(AVINEWの3回投与および不活化(または殺滅)ワクチンの1回投与)およびAI(H5N9 A/ニワトリ/イタリア/A22/1998 LPAI単離株を土台にした不活化ワクチンの3回投与)に対してワクチン免疫した;第二のグループ(G4)にはNDVのみに対してワクチン免疫した(グループ1と同じ免疫スケジュール);さらに第三のグループ(G5)にはAIのみでワクチン免疫した(A/ガン/Guandon/1996単離株由来のHAおよびNA遺伝子を含むH5N1変異体を土台にした不活化ワクチンの2回投与)(詳細は表4を参照されたい)。
【0082】
表4:NDおよび/またはAI MDAをもつ1日齢のニワトリを得るために用いたSPF繁殖鶏のワクチン免疫スケジュール
*L=生NDVワクチンAVINEW;K=殺滅NDVワクチン(Gallimune 407)
**不活化(または殺滅)AI H5N9ワクチンはH5N9 A/ニワトリ/イタリア/A22/1998 LPAI単離株を用いて調製した。
***不活化(または殺滅)AI H5N1ワクチンは、H5N1 A/ガン/Guandong/1996 HPAI単離株由来のHAおよびNA遺伝子を含むAI変異体を用いて調製した。
【0083】
ニワトリは、これらの免疫繁殖鶏が産んだ卵から孵化し、MDAをもつこれらニワトリでvAVW03により誘導されるHPAI H5N1有効性を、MDAをもたないSPF鶏で誘導されたものと比較した。
図13は、表4に示した免疫繁殖鶏から孵化した1日齢のニワトリで観察された平均MDV力価およびAI HI力価(log2)を示している。NDV力価は、NDワクチン免疫繁殖鶏の両方のグループで非常に高かった(G1およびG4)。H5N1クレード2.2(A/アヒル/ハンガリー/11804/2006)およびH5N9(A/ニワトリ/イタリア/A22/1998)抗原で測定したAI HI力価は、不活化H5N1ワクチンで免疫したG5繁殖鶏のニワトリ子孫でより高かった。これらの結果は、ワクチン免疫SPF鶏から孵化した1日齢のニワトリの予想されるMDAの存在を確認した。
図14は、MDAをもつまたはMDAをもたないSPF鶏の免疫およびチャレンジプロトコルのタイムコースを示す。通常のSPF鶏由来またはワクチン免疫SPF繁殖鶏由来1日齢ニワトリを、A/シチメンチョウ/トルコ1/2005 HPAI H5N1単離株由来HA遺伝子を発現するvAVW03(10匹のニワトリ)またはいずれのHA挿入物も含まず、コントロールとして用いられたvAVW01(10匹のニワトリ)の105 EID50で眼鼻ルートにより免疫した。ワクチン接種後3週間して、全てのニワトリをHPAI H5N1 A/アヒル/ハンガリー/11804/2006単離株の6 log10で眼鼻ルートによりチャレンジした。チャレンジ後2週間、ニワトリを臨床症状および死亡率について観察した。表5は、ワクチン免疫スケジュールおよびトリインフルエンザ防御結果の要約である。
【0084】
表5:SPF繁殖鶏および種々のMDAをもつニワトリでH5N1 HA発現AVINEW(商標)変異体(vAVW03)により誘導されるIA防御
【0085】
vAVW01でワクチン免疫されたAI MDAをもたないニワトリ(グループ1および5)の急速な死亡率(平均死亡時間3.6−3.8日)はチャレンジを立証した(表5および図15を参照されたい)。1日齢のSPF鶏への1回のvAVW03の粘膜投与後、HPAI H5N1防御レベルは90%のニワトリを防御した。驚くべきことに、NDVのみでワクチン免疫された繁殖鶏(表4のG4)から孵化した全てのvAVW03免疫鶏(グループ6)はHPAIチャレンジから防御され、AI防御に抗ベクターNDV MDA干渉は存在しないことが示された。AIV MDAの影響の評価はより困難であった。なぜならば、チャレンジ後コントロールグループで10匹のうち7匹および1匹しか死ななかったからである(グループ3および7)。しかしながら、vAVW03でワクチン免疫された7/9のトリ(グループ4)が防御され、防御はNDV MDAおよびAI MDAの両方の存在下で誘導され得ることが示された。チャレンジ後に死んだワクチン免疫鶏は、非ワクチン免疫鶏と比較してより後の時期に死んだ(表5の平均死亡時間および図15の死亡率カイネティクスを参照されたい)。表6は、口内および総排泄腔のウイルス排出が陽性であるニワトリ数を示し、図16は、チャレンジ後の口内(16A)および総排泄腔(16B)のウイルス排出カイネティクスを示している。vAVW01/vAVW03のウイルス排出レベル比もまた、口内スワブ(16C)および総排泄腔スワブ(16D)について図16に示されている。vAVW03ワクチン免疫鶏は、vAVW01ワクチン免疫鶏と比較してチャレンジ後にはるかに少ないウイルスを排出し、さらに陽性スワブの数も低かった。
【0086】
表6:8つの被検グループのH5N1ウイルス排出を、H5N1 HPAIチャレンジ後2、4および7日後(dpc)の口内スワブおよび総排泄腔スワブでマトリックス遺伝子を標的とするリアルタイム逆転写酵素PCR(RRT-PCR)によって評価した
*v01=vAVW01およびv03=vAVW03
【0087】
図17は、ワクチン免疫後(D21)およびチャレンジ後(D35)のvAVW03誘導AIV HI力価に対するNDV MDAの影響を示す(H5N1 クレード2.2(A/アヒル/ハンガリー/11804/2006)およびH5N9(A/ニワトリ/イタリア/A22/1998)抗原を使用)。NDV MDAの存在下で(NDV)21日目(ワクチン免疫後およびチャレンジ前)には、ワクチン免疫後の平均AIV HI力価はより高く、さらに両抗原に対して検出可能なHI力価をもつニワトリの数はより多かった。35日目(チャレンジ後)には、NDVのみでワクチン免疫された繁殖鶏の子孫でAIVチャレンジ後にAIV HI力価の上昇はなく、10/10(それに対してSPFグループでは9/10)のニワトリが防御された。MDAをもたないSPF鶏で、チャレンジ後のAIV HI力価の明確な増加は、これらのニワトリではチャレンジウイルスがある程度複製することを示唆している。これらの結果は、NDV MDAを有するニワトリでの予想外の良好なAIV抗体誘導および防御を示唆している。
図18はワクチン免疫後(D21)のNDV HI力価を示している。21日目には、vAVW01誘導NDV力価は、vAVW03によって誘導される力価よりも通常高かった。21日目では、NDV HI力価に関してNDV MDAをもつニワトリ(G1(H5+NDV)またはG4(NDV)繁殖鶏由来)と持たないニワトリ(SPFまたはG5(H5N1)繁殖鶏由来)で相違は存在せず、NDV MDAはvAVW01またはvAVW03誘導NDV HI力価に対して干渉しないことを示唆した。
総合すれば、本実験の結果は、1日齢ニワトリへの比較的低い用量(5 log10 EID50)のAVINEW 操作変異体vAVW03の1回の粘膜投与はHPAI H5N1チャレンジに対して優れた防御レベルを誘導することを明確に示している。抗ベクター(NDV)MDAの存在は、AI防御に対して負の影響を与えなかった。対照的に、さらに驚くべきことには、防御およびAI抗体データは、1日齢のニワトリでvAVW03ワクチン免疫時にNDV MDAが存在する場合に、より良好なAI防御が存在することを示唆している。これらの結果はまた、AI防御は、母親由来NDVおよびAI抗体の両方を有するトリでvAVW03により誘導され得ることを示している。
【実施例4】
【0088】
操作AVINEW変異体により誘導されるアヒル雛のH5N1 HPAIに対する防御
アヒルは自然の状態でNDVに感染し、さらにトリインフルエンザAウイルスのための保菌動物である。高度に病原性の株に感染したとしてもAI感染後にアヒルは必ずしも臨床症状を示さないことがあるが、感受性が高いニワトリにウイルスを伝播する。これが、アヒルはAIのトロイの木馬と言われる理由である。本実験の目的は、操作NDVをアヒルでインフルエンザ用ベクターワクチンとして使用できるか否かを調べることであった。
実施例4.1:14日齢モスコビーアヒル雛でのアヒル実験1
本実験の目的は、2つの異なるH5N1クレード(vAVW02はクレード2.1 A/ニワトリ/インドネシア/7/2003のHA遺伝子を発現し、vAVW03はクレード2.2 A/シチメンチョウ/トルコ1/2005を発現する)に由来する合成HA遺伝子を発現する2つのAVINEW操作変異体の(1)免疫原性および(2)前記変異体によって誘導されるH5N1有効性を、親のAvinew株の有効性と通常のモスコビーアヒルで比較することであった。
実施例4.1.1:アヒル実験1:操作Avinew変異体のアヒル雛での免疫原性
1日齢のモスコビーアヒル雛をNDVおよびAIV血清学について試験し、驚くべきことに、7/10のアヒルの雛がNDVについて血清陽性であることが判明し、平均HI力価は3.9 log2であった。AI HI試験については全ての血清が陰性であった。10匹のアヒルから13日齢で採取した別の血液サンプルはND HI力価について陰性を示し、本実験は、アヒルが14日齢のときに開始した。3つのグループを設定し、各々で10匹にワクチンが接種され、7匹が接触コントロールのアヒルであった。接触コントロールはワクチン接種日(D0およびD21)に離し、次の日にグループに戻した。5匹のワクチン非接種コントロールの第四のグループも含まれていた(表7参照)。
【0089】
表7:アヒル実験1:HA発現AVINEW変異体の免疫原性評価のためのグループ設定
【0090】
NDVおよびAI HI試験並びにAI SN試験(MDCK細胞順化M6 11804 H5N1 HPAIハンガリー株を使用)のために、血液サンプルをD0、D21およびD42に採取した。NDV特異的リアルタイムPCR(プライマーM4100およびM4220並びにプローブM4169)(Wise et al. (2004) J Clin Microbiol 42:329-348)のために、咽頭および総排泄腔スワブをワクチン免疫動物でD4、D7およびD12に、接触動物でD7およびD12に採取した。
結果は、有害反応は観察されないことを示し、3つのワクチンはこれらの条件下では安全であることを示した。グループ4(ワクチン非接種コントロール)の全てのサンプルがPCRおよび血清学について陰性であった。グループ1から3のワクチン非接種接触鳥の全てのサンプルはPCRおよび血清学について陰性であり、このワクチンはワクチン免疫鳥から接触動物に伝播しないことを示した。NDV HI力価は図19に示されている。D21には、G1のHI力価(3.6 log2;100%が3 log2以上)はG2(100%が3 log2未満)およびG3(3/10が3 log2以上)のそれより顕著に高かった。しかしながら、2回目の投与後3週間の平均NDV HI力価は、3つのワクチン接種グループ(グループ1、2および3でそれぞれ5.1、5.7および6.1 log2)で類似していた(ANOVA;p=0.682)。
AI H5N1 HI力価は図20に示されている。検出可能なHI力価(3 log2以上)は、G2およびG3のアヒル(ただし4 log2 のHI力価を有していたG2の1匹のアヒルを除く)では最初のワクチン接種後のD21に認められなかった。第二の投与後、全てのアヒルのHI力価は3 log2以上で、平均力価は約4 log2であった。2つのAVINEW変異体AVW02およびAVW03によって誘導されたAI HI力価に顕著な相違は両方の時点で認められなかった。
AI H5N1血清中和(SN)力価は図21に示されている。検出可能なSN力価(2 log2以上)は、G2およびG3のアヒル(ただし2または3 log2 のSN力価を有していたG3の2匹のアヒルを除く)では最初のワクチン接種後のD21に認められなかった。第二の投与後、全てのアヒルのHI力価は3 log2以上で、平均力価は約6.2 log2であった。2つのAVINEW変異体AVW02およびAVW03によって誘導されたAI HI力価に顕著な相違は両方の時点で存在しなかった。
NDV PCR:NDV PCRの結果は表8に示されている。グループ1および3の数匹のアヒルのみが第一および第二のワクチン接種後に陽性であることが判明した。全ての陽性サンプルは、グループ3のD28の1つのスワブを除いて咽頭スワブ由来であった。2回目のAVINEWの投与後D25に陽性であった2匹のアヒルは、最初の投与後D3およびD7の両方で陽性の鳥だけであった。グループ2の全てのサンプルは、抗NDおよび抗AI抗体の誘導にもかかわらず陰性であった。
【0091】
表8:アヒル実験1:咽頭および総排泄腔スワブのNDVリアルタイムPCR試験の結果
(陽性アヒルの数/総数)
*全ての陽性サンプルは、グループ3のD28での3匹の陽性の鳥の1匹(その総排泄腔スワブが陽性であった)を除いて咽頭スワブ由来であった。
【0092】
要約すれば、本実験はAVINEWの安全性を確認し、AVINEW-AI変異体へのHA遺伝子の挿入はアヒルの雛に有害反応を誘導しないことを示した。AVINEWは、1回目の投与後に2つの被検AVINEW-AI変異体よりも顕著に高いNDV HI力価を誘導し、HA遺伝子の挿入はNDVの複製をわずかに障害することを示唆した。AVW-AI変異体の10ニワトリ用量の2回の点眼投与が、全てのアヒルで陽性のNDVおよびAI HI力価とともに陽性のAI SN力価を誘導するために必要であった。2つの異なるクレード(vAVW02ではクレード2.1およびvAVW03ではクレード2.2)由来のHA遺伝子の存在にもかかわず、2つの被検AVINEW-AI変異体のクレード2.2 H5N1抗原に対する免疫原性には相違は存在しなかった。AVINEWおよびvAVW03でワクチン免疫された数匹の鳥のみが主として咽頭スワブにウイルスを排出した。しかしながら、この排出は、全実験を通して陰性を維持した接触アヒルにワクチンウイルスを伝搬するためには不十分であった。この実験の幾匹かのアヒルをその後H5N1ハンガリー単離株でチャレンジした。チャレンジの結果は実施例4.1.2に提示されている。
【0093】
実施例4.1.2:アヒル実験1:モスコビーアヒルで操作Avinew変異体により誘導されるH5N1防御
H5N1チャレンジ実験を、vAVW02またはvAVW03でワクチン免疫した数匹のアヒルで実施した(実施例4.1.1を参照されたい)。vAVW02またはvAVW03の点眼により2回ワクチン免疫したアヒルのうち4匹を9週齢でチャレンジした。グループ1の(AVINEW)の2匹のアヒルを陰性コントロールとして用いた。vAVW02およびvAVW03ワクチン免疫グループの平均H5 HI力価は5.5 log2(4匹が5 log2、4匹が6 log2)で、平均SN力価は4.0 log2(1匹が3 log2、6匹が4 log2、および1匹が5 log2SN力価)であった。8匹のワクチン免疫アヒルおよび2匹のコントロールアヒルを、HPAI H5N1 A/アヒル/ハンガリー/11804/2006(M6 11804)株の4.7 log10 EID50のIM投与によりチャレンジした。チャレンジ後2、7および10日で総排泄腔および咽頭スワブを入手し、さらに剖検時に心臓、膵臓、脳および脾臓をサンプル採取し、PCRおよび組織病理学によって試験した。
結果は表9に要約されている。2匹のコントロールは感染後48時間以内に死んだ。口鼻スワブおよび総排泄腔スワブは、脳、膵臓、心臓および脾臓とともにPCRによりH5N1陽性であった。種々の器官の組織病理学は超急性H5N1感染の徴候を示した。8匹のワクチン免疫アヒルでは、10日間の観察期間中臨床症状は観察されなかった。ウイルス排出は、8匹のワクチン免疫アヒルのうち3匹(G2の2匹およびG3の1匹)の咽頭スワブでチャレンジ3日後に検出されただけであった。これらの陽性アヒルのうちの1匹(G3の1匹)が、総排泄腔スワブのAI PCRについてもまた陽性であった。全ての他のスワブおよび器官は陰性であった。病巣はワクチン免疫アヒルの器官では見出されなかった。
【0094】
表9:アヒル実験1:14日齢のモスコビーアヒルの雛でAVINEWベクターワクチンにより誘導される防御結果の要旨
【0095】
結果は、IMチャレンジは2つのコントロール鳥で非常に激烈であることを示した。完全な臨床的防御および部分的なウイルス排出防御が、H5N1単離株に由来する合成H5遺伝子を発現するAVINEWベクターにより2回の点眼でワクチン免疫した8匹のアヒルで観察された。
【0096】
実施例4.2:1日齢のモスコビーアヒル雛でのアヒル実験2
本実施例のアヒル実験の目的は、クレード2.2 A/シチメンチョウ/トルコ/1/2005由来の合成HA遺伝子を発現するvAVW03 AVINEW変異体の1回または2回投与により1日齢のモスコビーアヒルの雛に誘導される免疫原性(実施例4.2.1)および有効性(実施例4.2.2)を比較することであった。
実施例4.2.1:1日齢のアヒル雛における操作AVINEWの免疫原性
本実験に用いた動物は1日齢のモスコビーアヒルの雛で、前記はいずれもNDV(HI)およびAIV(HIおよびSN)血清学について陰性であることが見出された。3つのグループを設定し、各々において10匹がワクチン免疫アヒルおよび5匹が接触コントロールアヒルであった。接触アヒルはワクチン接種の日(D0およびD21)に離し、次の日に該当グループに戻した。ワクチン非接種コントロールの第三のグループも含まれていた(表10参照)。グループ1および2の10匹のワクチン接種アヒルの雛に、D0(グループ1および2)およびD14(グループ2のみ)に6.5 log10 EID50のvAVW03を含む50μLの点眼によりワクチン接種を実施した。
【0097】
表10:アヒル実験2:HAを発現するAVINEW変異体vAVW03の1回または2回投与の免疫原性を評価するためのグループ設定
【0098】
血液サンプルをD0、D14およびD35に採取し、HI試験を用いてNDV(LaSota抗原)およびAI(M6 11804 HPAI H5N1ハンガリー/2006抗原)抗体について、さらにSN試験(MDCK細胞順化M6 11804 H5N1 HPAIハンガリー株を使用)によりAIについて試験した。
有害な反応は観察されず、1日齢のモスコビーアヒルの雛に対するvAVW03の安全性が確認された。NDV HI力価およびAI SN力価は図22A およびBにそれぞれ提示されている。D14では、vAVW03の1回目投与後2週間で10/20のワクチン免疫アヒルのみが検出可能なNDV HI力価を示し(3 log2以上)、さらに8/20のみが検出可能なH5N1 SN力価を示した。D35では、HIおよびSN力価は、グループ1では同じように低いままで(6/10がNDV HI試験で陽性で(平均は2.9 log2)、8/10がSN H5N1試験で陽性(平均は1.3 log2)であった)、グループ2ではvAVW03の2回目投与後に増加した。コントロールグループ(グループ3)由来サンプルはいずれもNDV HI試験およびH5N1 SN試験の両方で陰性であった。グループ1および2のワクチン非接種接触アヒル由来の全ての血清もまたNDV HIおよびH5N1 SNについて陰性であったが、ただしNDV(3 log2)およびSN H5N1(1 log2)について血清が転換したグループ2の1匹のアヒルを除く。このことは、vAVW03ワクチンは、ワクチン接種されたアヒルから5匹のワクチン非接種接触アヒルのうちの1匹に広がったことを示唆している。この実験の幾匹かのアヒルに引き続いてH5N1ハンガリー単離株をチャレンジした。チャレンジの結果は実施例4.2.2に提示されている。
これらの結果は、1日齢アヒルの雛におけるvAVW03の安全性が確認されたことを示した。1日齢のモスコビーアヒル雛への6.5 log10 EID50のvAVW03の1回点眼投与は、40−50%の鳥で低いNDV HI力価およびH5N1 SN力価を誘導しただけであった。NDVおよびSN H5N1力価における明瞭なブースター効果が、vAVW03の2回目の点眼投与後に観察された。D0およびD14に2回ワクチン免疫されたグループ2のアヒルと接触状態に置いた1匹のワクチン非接種アヒルで低い抗NDVおよび抗H5N1抗体が検出されたことは、以前の実験とは対照的に、水平伝播がこの試験条件下では低い頻度で起こり得ることを示唆している。
【0099】
実施例4.2.2:アヒル実験2:1日齢アヒル雛における操作AVINEW-AI変異体のAI H5N1有効性
クレード2.2のHA遺伝子を発現するvAVW03 AVINEW-AI変異体(実施例4.2.1参照)で1回または2回ワクチン免疫した数匹のアヒルで、H5N1チャレンジ実験を実施した。
グループ1(D0で1回投与)およびグループ2(D0およびD14で2回投与)由来の4匹のアヒルとともに、グループ1および2の鳥と接触させた2匹のワクチン非接種アヒル
並びにグループ3の2匹のワクチン非接種アヒルを5週齢でチャレンジした。10匹のワクチン接種、4匹の接触、および2匹のコントロールアヒルを、HPAI H5N1 A/アヒル/ハンガリー/11804/2006(M6 11804)株の4.7 log10 EID50の口鼻投与によりチャレンジした。総排泄腔スワブおよび咽頭スワブを4日目、7日目および死亡時に採取した。チャレンジ後10日または死亡時に、心臓、膵臓、脳、肝臓および脾臓サンプルを剖検時に採取し、PCRおよび組織病理学により試験した。
個々の結果は表11に示されている。グループ2の2匹のコントロールは感染後48時間以内に死亡した。口鼻スワブおよび総排泄腔スワブは、脳、膵臓、心臓および脾臓とともにPCRによりH5N1について陽性であった。種々の器官の組織病理学は超急性H5N1感染の徴候を示した。グループ1および2の10匹のワクチン免疫アヒルでは、10日間の観察期間中臨床症状は観察されなかった。グループ1の1匹のアヒル(#402)は検出可能なNDVおよびH5N1抗体をもたず、さらに別のアヒル(#403)は低いNDV HI力価を有しただけであった。この結果は、臨床防御に関しては、これらの抗体試験は完全には予想に役立ち得ないことを示した。ウイルス排出は、D4にはグループ1の5匹のアヒルのうち3匹(両スワブで2匹および咽頭スワブで1匹のみ)、グループ2の1匹のアヒルのみ(咽頭スワブのみ)で検出された。D7には、グループ1およびグループ2の1匹のアヒルのみが咽頭スワブでウイルス排出について陽性であった。全ての他のスワブおよび器官は陰性であった。病巣はワクチン接種アヒルの器官では見出されなかった。グループ1および2のワクチン接種鳥と接触状態で維持した全てのワクチン非接種アヒルは2または3日以内に死に、グループ3のコントロールアヒルのように、それらのスワブおよび器官でPCR解析で陽性であった(ただし完全に防御されたグループ2の1匹の接触アヒル(#429)を除く)。興味深いことに、チャレンジ時に低レベルのNDVおよびH5N1抗体を示したのはこのただ1匹のアヒルであり、このワクチンは、ワクチン免疫アヒルからこの接触アヒルに伝搬されたことを示唆した。このアヒルは臨床症状を全く示さず、そのスワブおよび器官はPCRで陰性であった。チャレンジ後に死んだアヒルの種々の器官の組織病理学的病巣の調査を実施し、以下が含まれた:脳(初期リンパ球性脳炎)、肝臓(肝臓実質の複合巣状壊死を示す急性漿液性肝炎)、心臓(間質性浮腫、心筋の点状出血)、膵臓(充血、間質性浮腫)、小腸(充血、粘膜浮腫)、脾臓(充血、マルピギー小体におけるリンパ球枯渇)、肺臓(充血、間質性浮腫、初期巣状間質性肺炎)、気管(粘膜の浮腫)。これらの結果は、軽度の病理組織学的変化(脳炎、種々の器官における浮腫、充血および肝細胞の壊死を含む)を示した。
【0100】
表11:アヒル実験2:1日齢のモスコビーアヒルの雛に1回(D0)または2回(D0およびD14)vAVW03投与して実施したアヒル実験2の個々の防御結果
*T=陽性咽頭スワブ;C=陽性総排泄腔スワブ
【0101】
【0102】
結果は、相対的に低用量を用いたにもかかわらず、口鼻チャレンジは非常に激烈であることを示し、このハンガリーH5N1単離株(アヒルから単離された)は、モスコビーアヒルに対して高レベルの病毒性を有することを示唆した。完全な臨床防御は全てのワクチン接種アヒルで観察され、これは、チャレンジの5週前の1日齢でただ1回のvAVW03の投与を受けだけで、低いかまたは検出不能のNDV HIまたはH5N1 SN力価しか示さなかったアヒルでさえも同様であった。ウイルス排出は、ただ1回の投与を受けたグループ1のアヒル(3/5)と比較して、2回のワクチン投与を受けたグループ2でより少数のアヒル(1/5)で観察された。興味深いことに、おそらくはワクチン接種アヒルからvAVW03ワクチンの水平伝播を受けたために、チャレンジ前に検出可能なNDVおよびH5N1抗体力価を示したただ1匹の接触アヒルは完全に防御された。
【0103】
実施例4.3:1日齢モスコビーアヒル雛でのアヒル実験3
本実施例のアヒル実験の目的は、単独vAVW03または別のH5N1 HPAI単離株に対する他のワクチンと併用したvAVW03によって誘導される、1日齢SPFモスコビーアヒルの雛におけるH5N1防御を確認することであった。
実験設計は表12に示されている。ただ1回のvAVW03投与の免疫原性を、vAVW03の2回投与の免疫原性および異種プライム-ブースト免疫スケジュールの免疫原性と比較した。前記異種プライム-ブースト免疫スケジュールは、TROVAC-AIV H5ベクターワクチン(HPAI H5N8 A/シチメンチョウ/アイルランド/1378/1983単離株の固有のHA遺伝子を発現する鶏痘組換えvFP89、USAで認可)の10ニワトリ用量(約4.5 log10 TCID50/用量)を皮下ルートで用いるD0でのプライミング、続いてD14でのvAVW03の粘膜ルートによる投与から成っていた(詳細は表12参照)。D28およびD42に、各グループの5匹のアヒルをフランスHPAI H5N1クレード2.2 A/ハクチョウ/フランス/06299/06単離株(106 EID50/アヒル)でチャレンジした。
【0104】
表12:アヒル実験3の設計と防御結果
*vAVW03は50μLのワクチン懸濁物(希釈剤として鉱物水を使用)を用い眼鼻ルートにより投与した;TROVAC-AIV H5は0.2mLのワクチン懸濁物(希釈剤としてマレックワクチン希釈剤を使用)を用い皮下ルートにより投与した。
**vAVW03の用量はlog10 EID50で、TROVAC-AIV H5の用量はlog10 TCID50として表されている;TROVAC-AIV H5の用量はこのワクチンの市販バッチの10ニワトリ用量に相当する。
***チャレンジ株は、HPAI H5N1クレード2.2 A/ハクチョウ/フランス/06299/06/単離株であった;6 log10 EID50を眼鼻ルートで投与した;MTDは日数で表した死亡までの平均時間である。
【0105】
全てのワクチン非接種アヒルが臨床症状を示し、チャレンジ後4日以内に死んだ。ワクチン接種アヒルのいずれも臨床症状を示さず、または死ななかった(表12参照).口腔咽頭スワブおよび総排泄腔スワブをチャレンジ後種々の時間で(チャレンジ後2.5、4.5、6.5、9.5および11.5日)採取した。Spackmanらの論文(J Clin Microbiol, 2002, 40:3256-3260)をもとにMを基準にしたリアルタイムRT-PCRによってウイルス負荷を測定した。D28およびD42のチャレンジの結果は、それぞれ図23a−dおよび24a−dに提示されている。
ウイルス排出データは、ワクチン接種アヒルはワクチン非接種コントロールよりも少ないウイルスを排出し、D28(図23a−d)およびD42(図24a−d)のチャレンジ後の陽性鳥のパーセンテージもまた減少することを明瞭に示した。グループ2および3のサンプル間で相違はなく、これらの条件下における1日齢での1回のvAVW03の投与が、D0およびD14での2回のvAVW03免疫と同じ防御を提供することを示した。ウイルス負荷と同様に陽性率も、グループ2および3のものと比較して、異種プライム-ブースト免疫スケジュールを実施したグループ4のアヒルで、特にD28でのチャレンジについて低かった。これらの結果は、vAVW03の前に投与される、同じ亜型に由来する別のHA遺伝子を発現する鶏痘組換え体によるプライミングは、vAVW03の1回または2回投与と比較して防御レベルを改善することを示している。
AI HI力価は、D28およびD42でのチャレンジ前(D28およびD40)並びにチャレンジ後(D42およびD57)にそれぞれサンプル採取した血清サンプルで、抗原としてHPAI H5N1(チャレンジ株に近縁なフランス株06167i H5N1クレード2.2.1)を用いて測定した(表13参照)。グループ4の数匹のアヒルのみがD28で検出可能なHI力価を有した。チャレンジ時にAIに対して検出可能な血清の変換が認められないにもかかわらず、全てのワクチン接種アヒルが激烈なHPAIチャレンジから防御されたことを記載することは意義があろう。この結果は、このような操作NDV AIワクチンの有効性を予測するためにHI試験は用いることはできないということを示した以前の結果を確認した。
D28でのチャレンジから14日後に、HPAI H5N1 HI力価は、グループ2および3ではD28の0からD42の7.2 log2まで増加したが、グループ4では2.3(D28)から6.0(D42)まで増加した。グループ2および3と比較して、グループ4におけるより低いチャレンジ後のHI力価の増加は、このグループでチャレンジウイルは少ししか複製しなかったことを示唆している。グループ4のアヒルにおける、チャレンジウイルス複製のそのような減少は、D28でのチャレンジ後のウイルス排出データで認められた(上記および図23a−dを参照されたい)。
【0106】
表13:アヒル実験3:チャレンジ前およびチャレンジ後の平均AI HI力価
要約すれば、1日齢のモスコビーアヒルの雛へのvAVW03の1回(D0)または2回(D0およびD14)粘膜投与は、D28およびD42に実施したHPAI H5N1チャレンジに対してそれら雛を防御した。vAVW03投与前の鶏痘組換え体(H5N8単離株由来HAを発現)による異種プライミングはD28における早期チャレンジに対する防御を改善した。
【0107】
実施例4.4:アヒル実験4:1日齢モスコビーアヒル雛における免疫持続期間
本実施例のアヒル実験の目的は、vAVW03の1回投与によって、またはアヒル実験3で試験したTROVAC-AIV H5/vAVW03異種プライム-ブースト免疫スケジュールによって誘導される免疫期間を判定することであった。
【0108】
表14:アヒル実験4の設計と臨床的防御の結果
1:D65+D86でチャレンジされるアヒルの数(MTD:日数で表した死亡までの平均時間)
2:vAVW03は50μLのワクチン懸濁物(希釈剤として鉱物水を使用)を用い眼鼻ルートにより投与した;TROVAC-AIV H5は0.2mLのワクチン懸濁物を用い皮下ルートにより投与した;不活化ワクチンは、市販のオイルアジュバント添加不活化ワクチンで、クレード2.3 A/アヒル/Anhui/1/2006単離株由来のHA(切断部位で改変)およびNA遺伝子を含むRe5リバースジェネティクスH5N1単離株を含む。
3:vAVW03の用量はlog10 EID50で、TROVAC-AIV H5の用量はlog10 TCID50として表されている;TROVAC-AIV H5の用量はこのワクチンの市販バッチの10ニワトリ用量に相当する。
4:病的状態を免れた鳥の数−死亡を免れた鳥の数/総数(MTD:日数で表した死亡までの平均時間)
5:チャレンジ株は、HPAI H5N1クレード2.2 A/ハクチョウ/フランス/06299/06/単離株であった;6 log10 EID50を眼鼻ルートで投与した。
【0109】
いずれのアヒルも、チャレンジの前にHP H5N1 06167iクレード2.2.1抗原(チャレンジ株に近縁)に対して検出可能なAI HI抗体を生じなかった。
これらの後期チャレンジは有効であった。なぜならば、チャレンジは100%の罹患率を誘導し、ワクチン非接種コントロールアヒルの大半を死亡させたからである(1匹の病的状態のアヒルがD86の後期チャレンジで生き残った;表14参照)。vAVW03でワクチン免疫された大半の鳥が防御された。すなわち、1/8のみが軽度の臨床症状を示し、D65のチャレンジに生き残り、さらにD86のチャレンジで1/9が臨床症状を示し死亡した。プライム-ブースト(D2でTROVAC AIV-H5およびD15でvAVW03)グループの全ての鳥が両方のチャレンジに生存し、1匹の鳥だけがより早い時期の(D65)のチャレンジで臨床症状を示した。不活化Re5ワクチンで免疫されたグループ4の鳥のいずれも臨床症状を示さずまた死亡もしなかった。
口腔咽頭および総排泄腔のウイルス排出もまたチャレンジ後に調べた。全てのコントロールアヒルは、高レベルで(口腔咽頭および総排泄ルートでそれぞれ6.8および4.9に匹敵するEID50であった)さらに少なくとも9.5日間(生存鳥について)ウイルスを排出した。グループ2および3では、排出レベルはより少なく(それぞれ約1および2 log10低い)、さらにコントロールグループより迅速に減少した。グループ4の排出プロフィルはグループ3で観察されたものに近かった。
結論すれば、モスコビーアヒルの雛(2日齢)へのvAVW03の1回投与は、84日齢まで良好なレベルの防御免疫を提供した。鶏痘ベクターとそれに続くNDVベクターによるプライム-ブースト免疫スケジュールは、NDVベクターの1回投与より良好な防御免疫応答および不活化Re5ワクチンと類似する防御応答を提供する。
【0110】
実施例4.5:アヒル実験5:北京ダックの雛でのvAVW03の有効性
本実験の目的は、北京ダックのHPAI H5N1チャレンジに対するvAVW03の有効性を判定することであった。7日齢の北京ダックの雛を表15に示すようにワクチン免疫した。チャレンジ株は、HPAI H5N1クレード2.2 A/シチメンチョウ/トルコ1/2005単離株であった。眼鼻ルートによる6および7 log10 EID50投与をD28およびD42にそれぞれ用いた。臨床症状(罹患率)および死亡(死亡率)をチャレンジ後に記録した。チャレンジ後(dpc)2、5および8日に採取した頬側スワブおよび総排泄腔スワブのリアルタイムRT-PCRにより、チャレンジ後のウイルス排出を測定した。実験設計および防御結果は表15に示されている。
【0111】
表15:アヒル実験5の設計と防御結果
【0112】
1:vAVW03は50μLのワクチン懸濁物(希釈剤として鉱物水を使用)を用い眼鼻ルートにより投与した;TROVAC-AIV H5は0.2mLのワクチン懸濁物(希釈剤としてマレックワクチン希釈剤を使用)を用い皮下ルートにより投与した。
2: vAVW03の用量はlog10 EID50で、さらにTROVAC-AIV H5の用量はlog10 TCID50として表されている;TROVAC-AIV H5の用量はこのワクチンの市販バッチの10ニワトリ用量に相当する。
3vFP89:鶏痘ベクターAIV H5(US 2008/0107681およびUS 2008/0107687参照)
4Re5:HPAI H5N1 A/アヒル/Anhui/1/2006(クレード2.3)由来の改変HA遺伝子およびNA遺伝子を含むリバースジェネティクス株を土台にしたオイルアジュバント添加不活化ワクチン。
5:2、5または8dpcの頬側スワブまたは総排泄腔スワブで陽性のニワトリの数。
【0113】
これらの結果は、北京ダックはH5N1のチャレンジに比較的耐性であることを示した。なぜならば、チャレンジ後ほぼ半分のワクチン非接種鳥しか臨床症状を示さず、または死亡しなかったからである。それにもかかわらず、それらの大半は検出可能な量のウイルスを排出し、チャレンジ株の活発な複製を示した。全てのワクチン接種アヒルは両方のチャレンジ日に臨床的に防御され、ウイルスを排出する鳥の数はワクチン非接種コントロールと比較して減少した。これらの結果は、vAVW03によって顕著な防御を北京ダックで誘導できることを示している。
【0114】
実施例4.6:アヒル実験6:NDV MDAを有する1日齢の北京ダック雛でのvAVW03の有効性
このアヒル実験6の目的は、vAVW03誘導有効性に対するNDV MDAの影響を評価するために、NDV抗原を含む不活化コンビネーションワクチンでワクチン免疫した繁殖鳥が産んだ北京ダックで、vAVW03の1回投与によって誘導されたHPAI H5N1有効性を評価することであった。NDV MDAを有する2日齢の北京ダックをこの実験で用いた。SPFモスコビーアヒルの雛もまたチャレンジの有効性の実証に用いた。実験の設計および防御データは表16に提示されている。
【0115】
表16:アヒル実験6の設計およびHPAI H5N1チャレンジに対する防御の結果
*ON=眼鼻
**チャレンジ株はHPAI H5N1クレード2.2 A/ハクチョウ/フランス/06299/06単離株であった;眼鼻ルートによりD24に6 log10 EID50を投与した;MTCは日数で表した臨床症状に至る平均時間である;MTDは日数で表した死亡までの平均時間である。
HPAI H5N1チャレンジは、コントロールとして用いたワクチン非接種モスコビーアヒルの雛の急激な死亡率によって立証された(全てがチャレンジ後3.5日で死亡した)。しかしながら、ワクチン非接種北京ダックはH5N1チャレンジに対してはるかに耐性であった。なぜならば、3/5しか臨床症状を示さず、さらにチャレンジ後6.5日で1/5のみが死亡しただけであった。罹患率に対する部分的防御(67から89%)がvAVW03によって誘導され、北京ダックでは明確な用量または投与ルートの影響は認められなかった。
全てのコントロールの北京ダックが口腔咽頭によってウイルスを排出した。ウイルス放出は、ワクチン接種グループでウイルス負荷、放出時間および陽性鳥の数について減少した。
この実験は、NDV MDAを有する北京ダックでvAVW03の1回投与によりAI防御を誘導できることを示している。
【0116】
前記のように本発明の好ましい実施態様を詳細に述べてきたが、本発明の範囲を逸脱することなくそれらの多くの明白な変型が可能であるので、上記で規定した本発明は上記に記載した特定の事柄に限定されないことは理解されよう。
本出願引用文書に引用または参照された全ての文書、および本文書中に引用または参照された全ての文書(“本文書引用文書”)、並びに本文書引用文書中に引用または参照された全ての文書は、本文書または本文書に参照により含まれる任意の文書に記載された任意の製造業者の指示、記載物、製品明細書、および任意の製品に関する製品説明書とともに、参照により本明細書に含まれ、本発明の実施で用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)操作されたNDVベクターおよび(ii)医薬的または獣医的に許容できる担体を含む組成物。
【請求項2】
操作されたNDVベクターがトリインフルエンザHA抗原またはその変種をコードする異種ポリヌクレオチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
操作されたNDVベクターが、配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドに対して相補的なポリヌクレオチドを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
トリインフルエンザHA抗原がH5 HAポリペプチドである、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
HA抗原が改変された切断部位を有する、請求項2−4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
HA抗原が配列番号:15、17、19、21または23に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項2−5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
異種ポリヌクレオチドが配列番号:14、16、18、20または22に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項2−6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
NDVのゲノムを改変して操作NDVベクターを作製する方法であって、NDVゲノムに単離ポリヌクレオチドを前記NDVゲノムの非必須領域に導入する工程を含む、前記方法。
【請求項9】
NDVが配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドに対して相補的なポリヌクレオチドを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
非必須領域がNP遺伝子の上流、APMVゲノムの2つの遺伝子の間、およびL遺伝子の下流に位置する非翻訳領域から成る領域から選択される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
非必須領域がPとM遺伝子の間またはMとF遺伝子の間に位置する、請求項8−10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのトリ病原体に対してトリにおいて防御応答を誘引するかまたはトリをワクチン免疫する方法であって、少なくとも1つの抗原を発現する操作NDVベクターおよび医薬的または獣医的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクルを投与する工程を含む、前記方法。
【請求項13】
NDVベクターが配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドに対して相補的なポリヌクレオチドを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
抗原がトリインフルエンザ抗原である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
トリインフルエンザ抗原がヘマグルチニン(HA)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
トリHA抗原が配列番号:15、17、19、21または23に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
投与が点眼、スプレー、飲み水、経卵接種、筋肉内または皮下投与による、請求項12−16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
投与がプライム-ブーストである、請求項12−17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
プライム-ブーストが、請求項1−7のいずれか1項に記載の組成物のプライム-投与、およびトリ病原体抗原を含みこれをin vivoで発現する組換えウイルスベクターを含むワクチンもしくは組成物、またはトリ病原体抗原を含む不活化ウイルスワクチン、またはトリ病原体抗原(サブユニット)を含むワクチンもしくは組成物、またはトリ病原体抗原を含みこれを発現するDNAプラスミドワクチンもしくは組成物のブースト-投与を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
プライム-ブーストが、トリ病原体抗原を含みこれをin vivoで発現する組換えウイルスベクターを含むワクチンもしくは組成物、またはトリ病原体抗原を含む不活化ウイルスワクチン、またはトリ病原体抗原(サブユニット)を含むワクチンもしくは組成物、またはトリ病原体抗原を含みこれを発現するDNAプラスミドワクチンもしくは組成物のプライム-投与、および請求項1−7のいずれか1項に記載の組成物のブースト-投与を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
プライム-投与が、トリインフルエンザ抗原を含みこれを発現するポックスウイルスを含む組成物を含み、さらにブースト-投与が、トリインフルエンザ抗原を含む請求項1−7のいずれか1項に記載の組成物を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
プライム-ブーストが請求項1−7のいずれか1項に記載の組成物のプライム-投与および請求項1−7のいずれか1項に記載の組成物のブースト-投与を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
トリがニワトリまたはアヒルである、請求項12−22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
配列番号:1と少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む操作されたNDVベクター。
【請求項25】
以下から成る群から選択される単離ポリヌクレオチド:
a)配列番号:1、2、4、6、8、10、12または24に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド;
b)配列番号:3、5、7、9、11または13に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド;
c)a)またはb)に記載のポリヌクレオチドに対して相補的なポリヌクレオチド。
【請求項1】
(i)操作されたNDVベクターおよび(ii)医薬的または獣医的に許容できる担体を含む組成物。
【請求項2】
操作されたNDVベクターがトリインフルエンザHA抗原またはその変種をコードする異種ポリヌクレオチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
操作されたNDVベクターが、配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドに対して相補的なポリヌクレオチドを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
トリインフルエンザHA抗原がH5 HAポリペプチドである、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
HA抗原が改変された切断部位を有する、請求項2−4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
HA抗原が配列番号:15、17、19、21または23に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項2−5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
異種ポリヌクレオチドが配列番号:14、16、18、20または22に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項2−6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
NDVのゲノムを改変して操作NDVベクターを作製する方法であって、NDVゲノムに単離ポリヌクレオチドを前記NDVゲノムの非必須領域に導入する工程を含む、前記方法。
【請求項9】
NDVが配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドに対して相補的なポリヌクレオチドを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
非必須領域がNP遺伝子の上流、APMVゲノムの2つの遺伝子の間、およびL遺伝子の下流に位置する非翻訳領域から成る領域から選択される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
非必須領域がPとM遺伝子の間またはMとF遺伝子の間に位置する、請求項8−10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのトリ病原体に対してトリにおいて防御応答を誘引するかまたはトリをワクチン免疫する方法であって、少なくとも1つの抗原を発現する操作NDVベクターおよび医薬的または獣医的に許容できる担体、賦形剤またはビヒクルを投与する工程を含む、前記方法。
【請求項13】
NDVベクターが配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、または配列番号:1に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドに対して相補的なポリヌクレオチドを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
抗原がトリインフルエンザ抗原である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
トリインフルエンザ抗原がヘマグルチニン(HA)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
トリHA抗原が配列番号:15、17、19、21または23に示す配列を有するポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
投与が点眼、スプレー、飲み水、経卵接種、筋肉内または皮下投与による、請求項12−16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
投与がプライム-ブーストである、請求項12−17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
プライム-ブーストが、請求項1−7のいずれか1項に記載の組成物のプライム-投与、およびトリ病原体抗原を含みこれをin vivoで発現する組換えウイルスベクターを含むワクチンもしくは組成物、またはトリ病原体抗原を含む不活化ウイルスワクチン、またはトリ病原体抗原(サブユニット)を含むワクチンもしくは組成物、またはトリ病原体抗原を含みこれを発現するDNAプラスミドワクチンもしくは組成物のブースト-投与を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
プライム-ブーストが、トリ病原体抗原を含みこれをin vivoで発現する組換えウイルスベクターを含むワクチンもしくは組成物、またはトリ病原体抗原を含む不活化ウイルスワクチン、またはトリ病原体抗原(サブユニット)を含むワクチンもしくは組成物、またはトリ病原体抗原を含みこれを発現するDNAプラスミドワクチンもしくは組成物のプライム-投与、および請求項1−7のいずれか1項に記載の組成物のブースト-投与を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
プライム-投与が、トリインフルエンザ抗原を含みこれを発現するポックスウイルスを含む組成物を含み、さらにブースト-投与が、トリインフルエンザ抗原を含む請求項1−7のいずれか1項に記載の組成物を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
プライム-ブーストが請求項1−7のいずれか1項に記載の組成物のプライム-投与および請求項1−7のいずれか1項に記載の組成物のブースト-投与を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
トリがニワトリまたはアヒルである、請求項12−22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
配列番号:1と少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む操作されたNDVベクター。
【請求項25】
以下から成る群から選択される単離ポリヌクレオチド:
a)配列番号:1、2、4、6、8、10、12または24に示す配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド;
b)配列番号:3、5、7、9、11または13に示す配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも90%の配列同一性を有するポリヌクレオチド;
c)a)またはb)に記載のポリヌクレオチドに対して相補的なポリヌクレオチド。
【図1A】
【図1B】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図4f】
【図4g】
【図4h】
【図4i】
【図4j】
【図4k】
【図4l】
【図4m】
【図4n】
【図4o】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11A】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16−1】
【図16−2】
【図16−3】
【図16−4】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図25−1】
【図25−2】
【図25−3】
【図26−1】
【図26−2】
【図26−3】
【図26−4】
【図26−5】
【図26−6】
【図1C】
【図2】
【図9】
【図11B】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図23D】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図24D】
【図1B】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
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【図4n】
【図4o】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11A】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16−1】
【図16−2】
【図16−3】
【図16−4】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図25−1】
【図25−2】
【図25−3】
【図26−1】
【図26−2】
【図26−3】
【図26−4】
【図26−5】
【図26−6】
【図1C】
【図2】
【図9】
【図11B】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図23D】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図24D】
【公表番号】特表2012−522516(P2012−522516A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503751(P2012−503751)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/029825
【国際公開番号】WO2010/115133
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(304040692)メリアル リミテッド (73)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/029825
【国際公開番号】WO2010/115133
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(304040692)メリアル リミテッド (73)
【Fターム(参考)】
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