説明

ニンニク発酵物とその製造法

【課題】植物由来のL-アミノ酸をバランス良く含有し、生理活性や薬理効果などが高いニンニク発酵物の製造法を提供する。
【解決手段】生ニンニクを皮付き状態のままで、加熱された温水、次亜塩素水又はオゾン水へ浸漬させることにより、雑菌処理する第1予備工程と、その雑菌処理した上記生ニンニクを、育成菌だけから成る乳酸菌が混合された発酵液に浸漬させて、65%〜70%の含水状態に保つ第2予備工程と、上記含水状態の生ニンニクを発酵庫の内部へ搬入して、最初の10日間では温度が35℃〜40℃の範囲内、湿度が65%〜70%の範囲内で第1次的に発酵させる第1本工程と、引き続く次の10日間では、温度が60℃〜65℃の範囲内、湿度が65%〜70%の範囲内で第2次的に発酵させる第2本工程と、引き続く最後の10日間では、温度が55℃〜60℃の範囲内、湿度が65%〜70%の範囲内で熟成させる第3本工程とから成る製造法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生理活性や薬理効果などの高いニンニク発酵物とその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タンパク質はさまざまな性質を持つ20種類のL-アミノ酸から構成されており、細胞内での生命機能を果しているため、そのL-アミノ酸の1種類でも不足し、全体的なバランスが悪くなると、各種疾患を惹起する。
【0003】
このようなL-アミノ酸は微生物を用いた発酵法によって調製できると雖も、その原料や発酵菌の選択、これらの処理方法、発酵する温度・湿度・時間などの諸条件如何では、発酵物が必らずしも生理活性や生体調整機能、薬理効果を有するとは限らず、期待どおりに発酵されないこともある。
【0004】
この点、ニンニク発酵物やその製造法については下記特許文献1〜7に開示されており、そのうちの特許文献1に記載されている「無臭にんにくの製造方法」が、皮付きの生ニンニクを原料とし、乳酸菌を用いて発酵させている点で、本発明に最も近似する公知技術であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4179613号公報
【特許文献2】特開2006−149325号公報
【特許文献3】特許第4080507号公報
【特許文献4】特開2007−275034号公報
【特許文献5】特許第4003217号公報
【特許文献6】特許第4520386号公報
【特許文献7】特許第3313120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載の製造法では、乳酸菌を使用しているとしても、その優良な育成株ではなく、又生ニンニクの雑菌処理を行ってもいない。そのため、目的とするニンニク発酵物を確実に安定良く製造することができない。
【0007】
又、発酵を進行させる第1工程の所要時間(30〜50時間)と乾燥を進行させる第2工程の所要時間(30〜50時間)並びに糖化を進行させる第3工程の所要時間(100時間)が、何れも乳酸菌の活動上不足し、商品となる完全なニンニク発酵物を製造することは困難である。
【0008】
特に、糖化を進行させる第3工程や引き続く第4工程での維持温度が、65℃から75℃までの範囲も含む条件として、高温に過ぎるため、乳酸菌の死滅を招いたり、煮炊き調理物になってしまったりして、生理活性や薬理効果などの高いニンニク発酵物を得られないのである。
【0009】
更に、第4工程の必要性が不可解であり、又保つべき一定湿度の数値が不明であるため、その不足した乾燥状態では、蒸し焼き器を使用したとしても、目的の発酵物ではなく、煮炊き調理物になってしまうおそれもある。
【0010】
尚、自己発酵は野性群の発酵菌によるものであるため、目的とするニンニク発酵物を得ることができない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために請求項1ではニンニク発酵物として、生ニンニクを皮付き状態のままで乳酸菌処理した後発酵庫へ収納して、温度が35℃〜65℃、湿度が65%〜70%、時間が30日の範囲内で発酵させることにより、鱗片の肉質部分だけが黒色に熟成したことを特徴とする。
【0012】
又、請求項2では熟成状態の含水率を60%〜65%に調整したことを特徴とする。
【0013】
他方、請求項3では上記ニンニク発酵物の製造法として、生ニンニクを皮付き状態のままで、加熱された温水、次亜塩素水又はオゾン水へ浸漬させることにより、雑菌処理する第1予備工程と、
【0014】
その雑菌処理した上記生ニンニクを、育成菌だけから成る乳酸菌が混合された発酵液に浸漬させて、65%〜70%の含水状態に保つ第2予備工程と、
【0015】
上記含水状態の生ニンニクを発酵庫の内部へ搬入して、最初の10日間では温度が35℃〜40℃の範囲内、湿度が65%〜70%の範囲内で第1次的に発酵させる第1本工程と、
【0016】
引き続く次の10日間では、温度が60℃〜65℃の範囲内、湿度が65%〜70%の範囲内で第2次的に発酵させる第2本工程と、
【0017】
引き続く最後の10日間では、温度が55℃〜60℃の範囲内、湿度が65%〜70%の範囲内で熟成させる第3本工程とから成ることを特徴とする。
【0018】
又、請求項4では乳酸菌として、ラクトバチルス属やラクトコッカス属、ロイコノストック属などに分類される2種類以上の育成菌を併用することを特徴とする。
【0019】
請求項5では生ニンニクを皮付き状態のままで、乳酸菌が混合された20℃〜30℃の発酵液へ、10分〜15分だけ浸漬させることを特徴とする。
【0020】
更に、請求項6では第1〜3本工程での発酵中にある発酵庫の内部を気密状態に保って、1分間づつ合計6回だけ間歇的に換気させることにより、水溶性硫黄ガスやその他の臭い老廃ガスを外部へ排出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の上記構成から成るニンニク発酵物では、生ニンニクの鱗片(側球)を包み込んでいる薄皮(内袋)が、焦げ付いたような加熱ムラのある褐色に変化せず、生ニンニクのそれとほぼ同じ白色系や淡白い褐色系の乾燥状態を呈し、その薄皮(内袋)に包み込まれた鱗片(側球)の食用となる肉質部分(中身)だけが、各個のほぼ均一な黒色に熟成しているため、形崩れや表面の変質などが起らないこととも相俟って、衛生感に富む優美な外観と均一な品質を得られ、強い臭気も解消されている結果、上記薄皮(内袋)を剥ぎ取って食べることができる。その場合、請求項2の構成を採用するならば、軟らか過ぎたり、硬きに過ぎたりすることがなく、誰でも違和感や抵抗感なく食べられるのである。
【0022】
又、市販されている各種サプリメントと異なって、それ自体が食物であり、人体のタンパク質を構成しているL-アミノ酸と同じ型の豊富なアミノ酸をバランス良く含有しているため、本発明のニンニク発酵物を食べることは、そのL-アミノ酸を摂取(生体へ外部から補給)することにほかならない。その結果、健康機能食品や栄養補助食品としてだけでなく、上記L-アミノ酸を有効成分とする各種疾患の治療剤又は予防剤として提供することもできるのである。
【0023】
つまり、本発明の上記ニンニク発酵物は必須アミノ酸を含む20種類のL-アミノ酸をバランス良く含有しており、生ニンニクと比べて強い抗酸化活性を初め、NK細胞活性などの免疫増強作用や抗腫瘍効果、肝障害の防護作用、抗糖尿病作用、コレステロール低下作用、体内浄化(デトックス)作用、酵素阻害活性などを発揮するため、成人病の治療又は予防に著しく有用である。
【0024】
上記ニンニク発酵物を製造する請求項3の方法では、生ニンニクを皮付き状態のままで使用しつつも、予じめ雑菌処理を行うことや、野性株が混入していない育成株だけの乳酸菌を用いること、温度と湿度並びに所要時間を各々一定の範囲内に保って発酵することにより、生理活性や生体調整機能、薬理効果などの高い上記ニンニク発酵物を、確実に安定良く製造することができる。
【0025】
特に第2予備工程として、育成菌だけから成る乳酸菌が混合された発酵液へ、皮付き状態の生ニンニクを浸漬させることにより、その生ニンニクを発酵作用工程時における65%〜70%の湿度条件とほぼ同じ65%〜70%の含水状態に準備してあるため、生ニンニクを発酵庫の内部へ搬入後でも、その含水状態を維持するだけで足り、その殊更高く加湿するための加湿器又は蒸気発生器やそのミスト状の水噴射ノズル、配水管路などを、発酵庫の内部へ特別に設置する必要がなく、その発酵庫の内部を上記生ニンニクの発酵中に、熱風や水分が抜け出ない気密状態に保って、温度条件の管理さえ行えば良い。発酵庫の必要な設備としても、大幅に簡素化できる効果がある。
【0026】
その場合、請求項4の構成を採用するならば、乳酸菌としての嫌気性のみならず、好気性やその何れでもない通性菌、熱を好む又は嫌う性質などの千変万化な各種の併用により、豊富なL-アミノ酸を産出させることが容易となる。
【0027】
請求項5の構成を採用するならば、乳酸菌を早く立ち上がる環境に保つことができ、その活性の促進により、発酵作用の効率がますます向上する。
【0028】
更に、請求項6の構成を採用するならば、生ニンニクの発酵中に発生する強い刺激臭を、その発酵庫の内部から排出することより、作業者の立ち入りを容易化すると共に、熟成時の腐敗を予防できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】肺癌患者の抗癌剤投与中における本発明の経口摂取と免疫賦活作用状況を示すグラフである。
【図2】本発明を経口摂取させた高血糖患者の血液検査結果を示すグラフである。
【図3】本発明を経口摂取させた高血圧患者の血圧推移グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の構成を具体的に詳述すると、その本発明に係るニンニク発酵物を得るための原料となるニンニクは、オオニンニクやヒメニンニク、セイヨウニンニクなどの可食部分をなす鱗茎、就中これを形作っている複数個の鱗片(側球)である。これらの傷がなく、大きさの揃ったものを多数用意し、水洗いして使えば良い。
【0031】
その場合、ニンニクの鱗片(側球)はその一個づつ薄皮(内袋)に包み込まれた状態にあり、これらが集合した球状の鱗茎も外皮に包み込まれているが、本発明ではその鱗茎の外皮を剥離せず、その皮付き状態のままで使用し、ニンニク発酵物としても皮付き状態のままに仕上げるのである。
【0032】
上記鱗茎の外皮や各鱗片(側球)の薄皮(内袋)を剥離することは、そのための多大な作業時間と労力などを要するばかりでなく、その食用となる中身の肉質部分が裸状態に露出して、雑菌や発酵庫内の熱風・水分などに直接触れ、その影響を受けることになるため、各鱗片(側球)の形崩れやその隣り合う同士の密着、表面の変質などを起しやすく、悉く均一な品質の発酵(熟成)状態を確保することができない。
【0033】
又、発酵させる前に、生ニンニクを煮沸したり、細断(破砕)したりすると、その加熱による変質や切断による表面の酸化などが起生し、延いては生理活性や薬理効果などの高い目的とするニンニク発酵物を得られなくなるため、これらの予備加工が一切施されていない皮付き状態の生ニンニクをそのまま用いる。
【0034】
上記生ニンニクを発酵させるに当っては、その皮付き状態の原料を先ず第1予備工程として雑菌処理する。つまり、水洗いした後、50℃〜60℃の加熱された温水に、上記皮付き状態の原料を10分〜15分浸漬させるのであり、そうすればその原料に付着の雑菌が1/2000/〜1/3000までに死滅する。但し、上記温水に代る次亜塩素水又はオゾン水へ、1分程度浸漬させる処理法でも同様な効果を得られる。
【0035】
又、本発明では発酵菌として、野性株が混入しない育成株だけから成る乳酸菌を用い、しかもそのラクトバチルス属やラクトコッカス属、ロイコノストック属、ストレプトコッカス属、ビフィドバククテリウム属、ペディオコッカス属、エンテロコッカス属などに分類される2種類以上を併用することにより、これらの微生物が有する嫌気性や好気性、熱を好む又は嫌う性質などの異なる各種性能を過不足なく発揮させて、20種類の豊富なL-アミノ酸を生成し得るようになっている。
【0036】
そして、このような2種類以上の育成菌から成る乳酸菌を、次に第2準備工程として20℃〜30℃の温水へ混合させることにより発酵液とし、その発酵液へ上記雑菌処理後の生ニンニクを10分〜15分浸漬させるのである。その際、乳酸菌と上記温水との体積比は0.1%〜1.0%に設定することが好ましい。又、生ニンニク100重量%に対し乳酸菌を、その乾燥菌体重量として0.1重量%〜1.0重量%の比率に添加することが望ましい。
【0037】
そうすれば、上記発酵液へ生ニンニクを10分〜15分浸漬させた程度でも、各種性能を有する乳酸菌の群数が生ニンニクの躯体へ、確実に付着・浸透し、そのすばやく立ち上がり活動し得る環境が整うことになる。しかも、上記発酵液へ生ニンニクを浸漬させることにより、その生ニンニクの含水率が発酵作用工程における湿度とほぼ同じ65%〜70%の状態に保つ。このような準備も上記乳酸菌をすばやく活性させるための環境作りであり、その後に発酵庫内での発酵作用を開始する。
【0038】
即ち、上記した各種乳酸菌の活動(増殖)しやすい含水状態に準備された皮付きの生ニンニクを、次に発酵庫の内部へ搬入する。その発酵庫としては図示しないが、内部に架設された上下数段の簀子状又は網状載置棚や好ましくは電気ヒーターなどの熱源、その発生した熱を風として、庫内の全体に循環・対流させるファン、庫内の雰囲気温度を測定するセンサー並びにその検知出力信号に基いて作動する温度コントローラーなどを具備しており、皮付きの生ニンニクをそのままの裸状態又は網袋に入れて、例えばその1万個程度を載置棚上へ並列状態に搭載する。
【0039】
そうすれば、上記生ニンニクはたとえ2〜3段の積み重ね状態にあっても、その個体同士の隣り合う相互間には必らず空隙が発生し、各個の表面が熱風に触れて、その中身の肉質部分まで支障なく加熱されることになる。
【0040】
その場合、本発明において用いる発酵庫の内部には、加湿器又は蒸気発生器やそのミスト状の水噴射ノズル、配水管路などの設備を特別に設置する必要がなく、上記生ニンニクに与える加熱温度だけを後述する一定の数値範囲に維持制御できれば良い。
【0041】
皮付き状態の生ニンニクは上記したとおり、予じめ発酵液に浸漬されて、発酵作用工程時の湿度条件と同等の含水状態に準備されているため、発酵作用中に発酵庫の内部を高い気密状態に確保して、上記生ニンニクにおける65%〜70%の含水状態を維持すれば足り、殊更加湿する必要はない。発酵庫の内部では水分を与えず、その庫内から熱風や水分が抜け出なければ、生ニンニクが泥濘状態に形崩れしないことは勿論のこと、乾燥してしまうおそれもないからである。
【0042】
そして、上記皮付きの生ニンニクを乳酸菌で発酵させるのであるが、先ず第1本工程では発酵開始時期として10日間だけ、温度を比較的低い35℃〜40℃の範囲内に保ち、湿度を65%〜70%の範囲内に維持して、発酵させ始め、pH4.5程度に仕上げる。その温度が35℃よりも低かったり、逆に40℃よりも高かったりすると、上記した各種性能を有する乳酸菌が洩れなく活性せず、その活性が遅くなるものや衰えるもの、死滅するものなどの発生するおそれがあり、注意を要する。
【0043】
引き続く第2本工程では発酵進行中として10日間だけ、温度を比較的高い60℃〜65℃の範囲内に、湿度を65%〜70%の範囲内に各々維持し乍ら発酵作用を続行することより、pH5.5程度に仕上げる。その温度が60℃よりも低いと、発酵作用が促進せず、65℃よりも高いと、乳酸菌の死滅を招くおそれがある。
【0044】
更に、引き続く最後の第3本工程では熟成時期として10日間だけ、温度を上記第1、2本工程における温度のほぼ中間程度である55℃〜60℃の範囲内に保ち、湿度をそれまでの湿度と同じ65%〜70%の範囲内に維持して、発酵作用を円滑に熟成させる方向へ導き、その熟成状態のpHを6.5程度に仕上げ、熟成状態の含水率を60%〜65%に調整する。
【0045】
上記第3本工程での温度が55℃よりも低かったり、逆に60℃よりも高かったりすると、上記第2本工程から熟成状態への滑らかな移行や、全体的な均一の仕上がり状態を得られない。又、仕上がったニンニク発酵物の含水率が60%以下では硬くなり過ぎる一方、65%以上では軟らかくなり過ぎであり、食用上の違和感や抵抗感を与えるおそれがあるため、誰でも食べやすい上記数値範囲に仕上げ調整する。
【0046】
尚、第1〜3本工程での湿度を65%〜70%の範囲内に維持することは上記したとおり、発酵庫の内部へ水分を与える加湿でなく、その庫内の高い気密状態に基いて、生ニンニクを予じめ準備された65%〜70%の含水状態に保つことで達成するのである。
【0047】
何れにしても、上記10日間づつの第1〜3本工程はこれを中断せず連続的に実行する。さもなければ、全体として充分に且つ均一に仕上がったニンニク発酵物を得られない。又、上記発酵作用を間歇的に中断すると、その一旦停止中に雑菌の付着・繁殖するおそれがあり、第1、2準備工程を行なった意味が無くなる。
【0048】
更に、上記第1〜3本工程での発酵中、発酵庫の内部は温度や湿度、pHなどの発酵条件を遵守するため、気密状態に保たれるが、その内部には水溶性硫黄ガスや炭酸ガス、その他の臭気の強い老廃ガスが発生する。又、特に最後の第3本工程では熟成中に腐敗の起るおそれなしとしない。
【0049】
そこで、上記第1〜3本工程の実行中には1分間づつの合計6回だけ間歇的に換気して、上記老廃ガスを発酵庫の外部へ排出すると共に、腐敗のおそれを予防するのである。この程度の換気を行っても、上記乳酸菌における嫌気性微生物の活動(増殖)に支障を与えることはなく、作業者としてもガスマスクを着用せずに、発酵庫へ立ち入りできる利点がある。
【0050】
本発明のニンニク発酵物は皮付きの仕上がり状態において、食用となる鱗片(側球)の肉質部分だけが黒色に熟成するため、その鱗片(側球)が集合している鱗茎の外皮は勿論のこと、各鱗片(側球)の薄皮(内袋)も剥離して、その中身の黒い肉質部分を食べれば良い。その肉質部分は誰でも食べやすい程度の含水状態にあって、風味が良く、生ニンニクの強烈な刺激臭も消失している。
【0051】
又、上記の方法により製造された本発明のニンニク発酵物は、その成分の分析試験を受けた結果、表1のような必須アミノ酸を含む20種類のL-アミノ酸をバランス良く含有していることが判明した。これは化学合成法によるD型・L型の混合物(工業型アミノ酸)と異なって、天然のタンパク質を構成している成分のL-アミノ酸と同じ型のアミノ酸であり、そのためこれを成分として含む本発明のニンニク発酵物は、高い生理活性や生体調整機能、薬理効果などを発揮し得る。
【0052】
【表1】

【0053】
その結果、本発明のニンニク発酵物はこれを加工食品として使用し、経口摂取させることができるばかりでなく、例えばペースト状やエキス状、固形状、その他の剤形を有する薬剤として使用し、その含有するL-アミノ酸を有効成分として、糖尿病や肝臓病、癌、免疫疾患、高脂血症などの治療又は予防に役立てることも可能である。
【0054】
現在、本発明に係るニンニク発酵物の観察的な500名に対する各種疾患患者のモニター報告によれば、爪が早く伸びる。疲労を感じない。風邪をひかなくなった。便秘が改善された。癌が消えたなどの話がある。以下は、各種疾患に対する本発明の作用機序である。
【0055】
本発明のニンニク発酵物を患者に経口摂取させると、病歴や症状により差は生じるもののほぼ即効的に改善・回復に向かう。病気の原因は免疫力の低下、神経伝達物質の不調、自己免疫不全などに起因する。即ち、偏食、加齢などによるL −アミノ酸の不足によって発生する。治療上、病人はすでに栄養不足で全体活力が失われており、回復を図るためには強制的に本発明を経口摂取させることが必要となる。
【0056】
癌の発生原因はほぼ解明されている。個人差にもよるが、一定年齢を越えると体細胞の活性が衰える。同時に免疫細胞の賦活作用も衰えてくる。この時点で、免疫細胞による癌パトロール隊が癌細胞を抑えきれなくなり、癌が発生する。
【0057】
上記癌細胞を排除・消滅させるためには、免疫細胞群、とりわけNK細胞、キラーT 細胞を中心とする免疫細胞全軍の活性が不可欠である。本発明のニンニク発酵物を食べさせることで、即効的に細胞回復が始まる。即ち、日ごろ冬眠状態にあった各臓器の体性幹細胞へ潤沢なバランスのとれたL-アミノ酸が配達されるため、全体細胞が活性し元気になる。また骨髄造血幹細胞の活性で、即効的に、サイトカインまでも含めた免疫細胞全群の新しい分裂増産が始まる。即効的に免疫細胞を活性、増産出来れば、癌を消滅させることができる。本発明のニンニク発酵物を1日約50g 、1カ月食べさせれば、ほぼ消滅する。癌の種類は問わない。ニンニク発酵物が含有するL-アミノ酸を有効成分として、外部から人間の体内へ供給さえできれば、対症療法(標準療法)で失敗し、致命傷がなければ、余命1カ月からの回復例も多数報告がある。
【0058】
また、L-アミノ酸に含有のアルギニンがエンドルフィン蛋白を産生し、天然のモルヒネとも言われる鎮痛作用を備えている、このため患者は痛くない。又アミノ酸活性によりマクロファージ貪食細胞がNO(窒素)を産生し、癌細胞の核に作用するため、酸素を遮断し殺傷する。免疫細胞賦活作用に関わるアミノ酸はヒスチジン、アルギニン、グルタミンである。本発明のニンニク発酵物を1日当たり約50g、癌患者に食べさせれば、約1カ月で回復する。
【0059】
図1は肺癌患者に対する本発明の経口摂取と抗癌剤投与中における免疫賦活作用状況を示している。副作用のため、本発明の経口摂取が7〜10日間不可能となる。摂取可能後には、素早く免疫細胞数が回復し、癌細胞を撃退する。その場合、仮に抗癌剤を投与しなければ、もっと早く回復する。抗癌剤の副作用で苦しまなくて良い。経口摂取できない場合は、輸液によることもできる。
【0060】
生活習慣病(糖尿病、インスリン抵抗性、高脂血症、高血圧症、動脈硬化、心臓病など)は、慢性的な偏食生活の延長線上で発生する。即ち、食生活の乱れが原因で発生したものである。食生活が悪いとは、L-アミノ酸のバランスが悪いことにほかならない。生活習慣病は臓器細胞の機能の不調・器官細胞の壊死に係る病変である。生活習慣病は全ての臓器に連動あるいは合併する重大な疾患である。本発明のニンニク発酵物を経口又は輸液摂取させれば、改善・完治する。副作用は一切ない。消化器を経由しない、本発明の成分として含有される植物由来のL-アミノ酸であるため、ストレートに細胞幹部に行き届き、各臓器の体性幹細胞を活性し、再生するため、病変部の細胞の修理が行われる。関連のL-アミノ酸は主にスレオニンとシスチンである。臓器疾患は連動しているため、同時進行で病変細胞を修理する必要がある。本発明のニンニク発酵物は免疫細胞の活性に著しく優れている。肝炎ウイルスも撃退でき、造血作用が顕著、解毒力に優れているため、肝臓病治療に有効である。
【0061】
【表2】

表2は本発明の経口摂取による肝臓患者の治療例を示しており、1日当り30gを摂取した240日目の結果である。
【0062】
高血糖に対する本発明の作用機序は、他の生活習慣病と基本的に同じである。内臓諸器官は全て連動して機能しているため、1つの組織器官のみ悪くなったということはあり得ない。1つが悪くなれば、全ての臓器が影響を受ける。高血糖と隣り合わせに連携する疾患が腎不全であるため、二つの疾患は同時に修理しなければならない。
【0063】
1型糖尿病では糖調整ホルモンであるインスリンの産生ができない。又2型糖尿病ではインスリンの産生はできても、肥満などが原因でインスリンが効果しないなど複雑な要因が絡む。本発明に係るニンニク発酵物の経口摂取で、3〜4カ月の期間は要するが、改善に向かう。投与量は1日当たり約40g である。
【0064】
図2は本発明を経口摂取させた高血糖患者の血液検査結果を示すグラフである。
【0065】
腎臓病は生活習慣病の典型である。悪い食生活、食べ過ぎ、アルコールの飲み過ぎ、運動不足などの不摂生、又ストレスで肥満や動脈硬化、高血圧を招き発生する。この悪循環を遮断し、働かなくなった糸球体、ネフロン細胞を修理し、機能を回復させれば、尿毒で透析治療を施すまでに悪くなっていても、本発明のニンニク発酵物を経口摂取させれば、大量の尿が出るまでに回復する。細胞の活性・再生で傷んだ病変細胞が修復されるからである。この場合は塩分を少ない目に、ビタミン類を多い目に摂取するなどの食事制限が必要である。
【0066】
高血圧症は全ての合併症の要として重要な疾患である。これに対する本発明の作用機序は比較的単純である。年を取ると全ての細胞が硬くなる/ 衰えるは、即ち細胞の不活性である。縮んだ血管を押し広げようとして血圧が上がる。老いのため日常的にアミノ酸の配給不足が始まると、細胞が活性しなくなり、さまざまな不具合が発生してくる。そこに本発明のニンニク発酵物を経口摂取させれば、活性し若返る。豊富な血流がよみがえり、血管も柔らかくなる。アミノ酸のバランスが取れていれば、余分な栄養を必要としないため、食欲が落ちるが、心配は要らない。本発明のニンニク発酵物を1日約30g、3週間程度食べれば、正常血圧が確保される。
【0067】
図3は本発明を経口摂取した高血圧患者の血圧推移グラフである。
【0068】
心臓病は即、命を左右する疾患である。しかも、物理的に常時運動を繰り返す。果たして本発明品のニンニク発酵物を食べるだけで、心臓に効果するのか? 外科手術抜きで改善してくるのか? このような条件下で、臨床によるエビデンスを入手するのは困難である。幸いに開発メンバーとして、20年来の重症心疾患患者が参加していた。1名であるが状況を記す。
【0069】
10年前までは病院に通って投薬を受けていたが改善せず、悪い方向をたどり続けた。ついに、5年前には1級心疾患(僧帽弁不良、心房細動、心肥大)を宣告され、弁を取り変えなければ、半年の命と宣告された。以降手術も拒否、治らない薬を止めて、本発明のニンニク発酵物50g を毎日食べ続けた。当時の最高血圧90が、現在では135となり、1級障害認定も外れ、順調に鼓動を続けている。ワーファリンも服用していない。脳梗塞もない。血液はサラサラである。心臓エコーをあてると、心臓壁も厚くなってきているのが解る。
【0070】
本発明のニンニク発酵物は20種類のバランス良いL-アミノ酸を含有しているため、栄養学的に言えば、食べた分の食事量が減る計算である。日本人の平均的な体重を60kgとすると、運動量等により個人差はあるが、厚生省が推奨する必要なアミノ酸は1日80g〜100gである。極論を言えば、本発明のニンニク発酵物をカレーの大匙で山盛り4杯食べると、約100gである。ニンニク発酵物の含水量を差し引いても、ビタミン類と脂質を少し補えば、完璧な栄養となり、食事は要らない計算が成り立つ。
【0071】
メタボリック症候群も生活習慣病に関わる。上記の理論を組み合わせてダイエット治療が可能である。無理なく健康的に栄養の足りた状態で体重が落ちてくる。体のシルエットも理想的に改善してくる。このように、本発明のニンニク発酵物はメタボリック症候群の治療や予防に理想的である。
【0072】
【表3】

表3は本発明を経口摂取したメタボリック症候群患者の検査結果を示している。
【0073】
神経疾患に対する本発明の作用機序は比較的分かりやすい。即ち、L-アミノ酸20種類のうち、およそ1/ 4がそのまま脳神経伝達物質の前駆材料であり、本発明のニンニク発酵物を経口摂取させて、改善・完治に導くことが可能である。潤沢なL −アミノ酸が補給され続ける限り、神経伝達物質の調整が行き届くからであろう。パーキンソン病は病歴に応じ、改善・完治までの時間は比例する。5年病歴でおよそ1年が必要である。またセロトニンやメラトニン伝達物質に影響を受けるうつ病、統合失調症などは、比較的短時間に改善に至る。
【0074】
法定難病の多くは、自己免疫の不全が原因で発生する。最近特に若年層にまで及んでいるのは、ジャンク食品、農薬・環境ホルモンが食生活に影響を及ぼし、栄養障害をきたすための結果であると考えられる。
【0075】
膠原病などに代表される自己免疫不全症候群は、アミノ酸のバランスの悪さと絶対量の不足が原因であると断定できる。なぜなら本発明のニンニク発酵物を経口摂取させれば、改善されてくることで推測できるからである。免疫不全とは、充分な免疫細胞群を作ることができないため、即ち必要細胞が揃わないため、全体のネットワークに不調をきたすと考えれば、理論が成り立つ。リウマチ、シェーグレン、エリトマトーデス、全身硬化症が回復する。痛みが止まった、涙が出る、口の渇きが収まった等の症状の改善報告が寄せられてくる。難病であり原因がつかめていないため、病院からの資料では改善の比較評価することは困難である。
【0076】
感染症はすでに克服された遠い昔話に勘違いするが、実は平凡な風邪さえ治せないのが現状であり、変わった顔ぶれの風邪ウイルスが流行すると、必ず死亡者も発生する。現代医学では免疫力強化のため、ワクチンを用意して待ち構えるが、少し顔つきが違うウイルスが侵入すると混乱する。免疫力賦活と免疫応答の素早い対応ができない限り、今も感染症は脅威である。本発明のニンニク発酵物であれば、L-アミノ酸を含有するため、素早い免疫群の活性も可能で、更に免疫応答に要する時間も短い。
【0077】
医薬品を併用していない、3カ月以上の常時服用者500名にアンケートしたところ、共通する点は風邪をひかなくなった・ひき難くなったである。ロタウイルスが蔓延した幼稚園で、食べていた園児の便が白く感染していたものの元気であった。常時免疫活性で外来ウイルスを寄せ付けないためであろう。
【0078】
発達障害、ADHD、自閉症、てんかんなどはこれまで、今も遺伝系疾患であると考えられていた。しかし、本発明のニンニク発酵物をこれらの患者に経口摂取させたところ、比較的に短い時間で改善・完治した。今も医薬品中心の治療であるため治せないが、完治する答えを見るかぎり、これらの病気の原因はすべて栄養障害であった。1日20g ×150日が治療終了の目安である。年齢によって、終了までの時間が長くなるという結果が出ている。神経伝達物質の不足が原因である。改善に関与するL-アミノ酸は神経伝達物質であるトリプトファン、アルギニン、アスパラギン、フェニルアラニン、チロシンである。
【0079】
本発明のニンニク発酵物を経口摂取したモニターの各種疾患とその治療経過の一覧表を表4として示す。
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のニンニク発酵物は強い刺激臭を発生せず、20種類のL-アミノ酸をバランス良く含有し、高い生理活性や薬理効果などを発揮するため、栄養補助食品としてだけでなく、糖尿病や肝臓病、癌、免疫疾患などの治療剤又は予防剤としても著しく有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ニンニクを皮付き状態のままで乳酸菌処理した後発酵庫へ収納して、温度が35℃〜65℃、湿度が65%〜70%、時間が30日の範囲内で発酵させることにより、食用となる鱗片の肉質部分だけが黒色に熟成したことを特徴とするニンニク発酵物。
【請求項2】
熟成状態の含水率を60%〜65%に調整したことを特徴とする請求項1記載のニンニク発酵物。
【請求項3】
生ニンニクを皮付き状態のままで、加熱された温水、次亜塩素水又はオゾン水へ浸漬させることにより、雑菌処理する第1予備工程と、
その雑菌処理した上記生ニンニクを、育成菌だけから成る乳酸菌が混合された発酵液に浸漬させて、含水率が65%〜70%の状態に保つ第2予備工程と、
上記含水状態の生ニンニクを発酵庫の内部へ搬入して、最初の10日間では温度が35℃〜40℃の範囲内、湿度が65%〜70%の範囲内で第1次的に発酵させる第1本工程と、
引き続く次の10日間では、温度が60℃〜65℃の範囲内、湿度が65%〜70%の範囲内で第2次的に発酵させる第2本工程と、
引き続く最後の10日間では、温度が55℃〜60℃の範囲内、湿度が65%〜70%の範囲内で熟成させる第3本工程とから成ることを特徴とするニンニク発酵物の製造法。
【請求項4】
乳酸菌として、ラクトバチルス属やラクトコッカス属、ロイコノストック属などに分類される2種類以上の育成菌を併用することを特徴とする請求項3記載のニンニク発酵物の製造法。
【請求項5】
生ニンニクを皮付き状態のままで、乳酸菌が混合された20℃〜30℃の発酵液へ、10分〜15分だけ浸漬させることを特徴とする請求項3記載のニンニク発酵物の製造法。
【請求項6】
第1〜3本工程での発酵中にある発酵庫の内部を気密状態に保って、1分間づつ合計6回だけ間歇的に換気させることにより、水溶性硫黄ガスやその他の臭い老廃ガスを外部へ排出することを特徴とする請求項3記載のニンニク発酵物の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−63046(P2013−63046A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204271(P2011−204271)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(511223556)有限会社マグマグジャパン (1)
【Fターム(参考)】