説明

ニードル装置

ニードル装置は、ニッティングニードルのステム(2)の両端に、弾性バックル(5、6)までのびるニッティングスプリングフック又はベアード(3、4)が形成される。ニードル装置は、アンダーウェアの形式のシームレスニッティド品物を作ることができ、編機の構造を簡単化し、製造サイクルの持続時間を短縮することにより製造のコストの有効性を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にリバーシブル及びリブ-トップ領域にニッテッドファブリック(メリヤス生地)のリンクス-リンクス構造の可能性をもって筒型のシームレス編組アウターウェア及びアンダーウェア、例えばトラウザー、パンティ、レギンス、アンダーシャツ、ティーシャツ、プルオーバーなどのような自動化製造用のダブルシリンダ円形編機(メリヤス機)、 2ニードルベッド(針床)又は4ニードルベッド平形横編機、或いは同様な機械のようなダブルベッド編機のニードル装置に関するものである。
【0002】
本発明はさらに編機及びニッティングニードル(メリヤス針)に関する。
【背景技術】
【0003】
高度にしかも完全に自動化した製造は、最新の製造プロセスにとって本質的な要求である。ニッテッドファブリックから成る製品特にアンダーウェアの場合、テキスタイル(製織又は編成品)の製造分野は一般に、ソーイングによって実現化された広範囲の仕上げ作業の要求によって特徴付けられる。これには、完成品に相当な量の手作業が導入され、製造コストが増加するだけでなく、縫目領域におけるニッテッドファブリックの製造品質のある一体の低下も伴う。リバーシブル構造(ウェール)における弾性リブトップをもつシームレスのニッテッドアンダーウェアは、利用価値の観点で理想であると思われるが、今だに実際に存在していない。
【0004】
三本のチューブを相互に接続しているニッテッド品物の自動化製造用の編機は公知である。これは、例えば、トラウザー、パンティ、レギンス、アンダーシャツ、ティーシャツ、プルオーバーなどの場合である。これらの形式の編機の非常に重要な特性は、特に、ジャージィニッテッドファブリックの既知の望ましくない捩れを防ぐために、リバーシブル構造(ウェールと呼ばれる)において特にウエスト開口及びレグ開口の領域にニッテッドファブリックを実現する能力である。
【0005】
これらの編機の一つとして、ニードルベッドを“V”型に配置した2ニードルベッド平形横編機がある。これらの編機では、ループを作る場合には、作動ピストンを備えたニッティングニードルを使用して、ニッティドファブリックのループを相対するニードルベッドへ移せるようにしている。これらの編機の主な欠点は、ニッテッドファブリックのリバーシブル又はリンクス−リンクス構造においてチューブを編む際に、最初に相対したニードルベッドにおいて縁取りループ(purl loop)を作り、そしてそのループを、ニッテッドファブリックの同じコース(メリヤス編における横に並んだ一連のループの列)のジャージィループが形成されることになるニードルベッドに移す必要があることにある。このことは、製造サイクルを不適切に長くするだけでなく、構造上複雑にもなり、これらの編機において、アンダーウェアの場合に絶対的に不十分であるニッテッドファブリックの単に9(E)ピッチまでのリバーシブル構造又は究極的にはリンクス−リンクス構造においてニッテッド品物を作ることが可能となる。このタイプのニードル装置は上記した欠点の根源である。
【0006】
上記のニッテッド品物用の別の公知の形式の編機には、4ニードルベッド平形横編機があり、ニッティングニードルベッドは“X”形状に設けられ、ニードル装置は、ニードルベッドを“V”形状に設けた2ニードルベッド編機のニードル装置と基本的に同じである。ニードルベッドを“V”形状に設けた2ニードルベッド編機と比較して、これらの形式の4ニードルベッド平形横編機の利点は、ニッテッドファブリックの18(E)ピッチまでのニッテッド品物を作ることができることにあることが明らかである。しかし、パンティ、ティーシャツなどのようなアンダーウェアの場合には、これではなお不十分である。さらに、4ニードルベッド平形横編機は実際には2ニードルベッド平形横編機より機械的に二倍複雑である。製造サイクルの持続時間に関しては、縁取りループを相対するニードルへ移すために必要に時間が動作の遅れとなるので、4ニードルベッド平形横編機は2ニードルベッド編機と同様に好ましくない。
【0007】
上記種類の別の形式の編機としては、ニッティングニードルベッドを“X”形状に配置し、しかもダブルシリンダの小径編機から知られたにダブルフックニードルを使用している4ニードルベッド平形横編機もある。この種類の編機の大きな利点は、ダブルフックニードルの製造技術が、24(E)ピッチまでの編機を構成できる0.4mmのニードルステムの厚さまでできていることにある。このことはこれらの編機で作られるニッテッド品物の範囲を相当に広げている。しかし、この種の平形横編機の複雑さは異常である。ダブルヘッドニッティングニードルの作動機構の他に、縁取りループを作るニードルベッドからジャージィループのつきられているニードルベッドへニッティングニードルを切り換える操作時に、縁取りループを作るフック(縦針)からジャージィループを作るフックへ縁取りループを移すのを乾し要するのに必要な別の付加的な補助の特別な機構がある。別の欠点は、縁取りループを、ジャージィループを作るフックへ安全に移すことができるようにするために、ニッテッドファブリックの密度の範囲が相当に限定されることにある。
【0008】
ダブルヘッドラッチニードル(べら針)を用いた当該技術のダブルシリンダ編機は特に特許文献1〜特許文献4から公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US−A−2003/0101775
【特許文献2】US−B−6,220,061
【特許文献3】US−A−5,718,128
【特許文献4】US−A−4,879,884
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一つの特徴によれば、本発明は、ニッテッドファブリックのピッチを相当に限定することなしに、全自動化した生産サイクルにおいてリンクス−リンクス又はリバーシブル構造の種々の形式の管状シームレスニッテッド品物を作るために編機を設計できる新規のニードル及び新規のニードル装置を提供することにより従来技術を改良することにある。幾つかの実施形態によれば、本発明の目的はまた、編機の構造を簡単化でき、またソーイング(縫製)で行われる仕上げ作業をなくししかも製造サイクルにおける遊び時間を低減することによって上記種類のニッテッド品物の製造のコストの有効性大いに改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的は、本発明によるニードル装置によって達成され、本ニードル装置は、ダブルニッティングスプリングベアードすなわちステムの各端部におけるいわゆるスプリングベアード又はスプリングフックを有し、ステムの各端部におけるニッティングフック又はベアードは先端部で終端している弾性バックルを形成し、ステムには、フック又はベアードの各弾性バックルの先端部の近くに、それぞれの先端部に向う凸状部をもつ相応した湾曲部分が設けられる。これらの湾曲部分には、ベアード又は弾性バックルの先端部に対するそれぞれの凹部と、ニードルを動かす作動要素として用いたスライダー又はトランスファジャックの突起部に対するそれぞれの凹部とが設けられている。従って、本発明によれば、ニッティングニードルはいわゆるスプリングベアードニードル又はベアーデッドニードルであり、該ニードルは特徴的にはダブルヘッドを備え、すなわちニードルステムの両端にベアード又はスプリングを備えている。
【0012】
当該技術分野で公知のであり、ダブルフックニッティングニードルすなわちダブルラッチニードルを用いた装置と比較して本発明によるニードル装置の主な利点は、平形横編機の場合には一つのニードルベッドから別のニードルベッドへのニッティングニードルの切換時、或いは円形編機の場合には一つのニードルシリンダから別のニードルシリンダへのニッティングニードルの切換時に、それぞれ、公知のダブルフックニードルの場合のような仕方で、ニッティングニードルのステムに位置したニッテッドファブリックのループの自動ノックオーバーが行われないことにある。従って、編機は、ニッティングニードルが新しいループを形成することなしに編機の一つのニードルベッドから他のニードルベッドへニッティングニードルが切り換わる際にループのノックオーバーを妨げる特別な機構を必要としない。このことは一方では、編機の構造を相当に簡単化し、また他方では製造サイクルを相当にスピードアップする。というのは例えばループを形成しそしてニッティングニードルをその後に新しいループを形成することなく切換えるような動作が、ニッティングカムシステムのキャリジ(笠)の単一の作動装置で簡単に行なわれ得るからである。本発明によるニードル装置の利点は、作動ピストンを備えたニッティングニードルに比較してより一層意義深い。というのは、作動ピストンを備えたニッティングニードルでは、本発明によるニードル装置の場合のような機械的正確さをもつ編機を設けることができないからである。
【0013】
本発明の幾つかの好ましい実施形態によれば、各ニッティングニードルには一対の作動スライダーが設けられ、一方のスライダーは各ニードルベッドに設けられている。作動スライダーの各々には、少なくともニッティングニードルのフックの受け面と、ニードルステムの上記の湾曲部分のレベルに設けられた凹部にニッティングニードルのステムを押す突起部とが設けられる。幾つかの実施形態では、各スライダーは、作動スライダーの自然発生的な偏倚を生じさせるベベル又はノーズ、スライダーの偏倚のピボットポイント、スライダーの軸線方向の変換を切換える少なくとも一つの硬いバットを備えている。幾つかの好ましい実施形態によれば、各スライダーにはまた、作動スライダーの振動偏倚を制御するバットが設けられ、このことは、機械的簡単化のためにニッテッドファブリックにリンクス−リンクスパターンを形成する必要がない場合に、有利である。
【0014】
幾つかの実施形態では、作動スライダーには、作動バットを備えた補助作動スライダーが設けられ、この補助作動スライダーはジョイントによって作動スライダーに揺動的に取付けられる。かかる実施形態では、作動スライダーの硬い作動バットの多数の独立した動作通路を設ける必要がある時に、補助作動スライダーにおけるバットによって硬いバットのそれぞれの動作通路間でトランスファを容易に達成することができる。
【0015】
対の作動スライダーの両方が同じ形式のものである場合、かかる実施形態は、両ニードルベッド又はニードルシリンダにおけるニッティングニードルの同一又は同様な動作通路を設ける必要がある場合に有利である。
【0016】
対の作動スライダーの各々が異なる形式のものである場合、これは、特にニードルベッドの一方又はニードルシリンダの一方においてニッティングニードルの簡単化した動作通路を設けることで十分である場合に有利である。
【0017】
ニッテッドファブリックにリンクス−リンクス及びカーディガンパターンを作るために、常に両作動スライダーの少なくとも一方にパターニング装置を割当てるのが有利である。
【0018】
2ニードルベッド平形横編機に本発明によるニードル装置を適用することは、ケージのピッチの高いレベル(34Eまで)を達成する可能性のために有利である。
【0019】
4ニードルベッド編機に本発明によるニードル装置を適用することは、ニードルベッドからニードルベッドへのニッティングニードルの切換がループの同時形成を必要としない場合に実質的に簡単化されるので、機械の構造の全体的簡単化のために有利である。さらに、ループの形成及び新しいループを形成することなくニードルベッドからニードルベッドへのニッティングニードルのその後の切換のために、機械の動作サイクルの時間を相当に節約できる。
【0020】
ダブルシリンダの小径又は大径編機に本発明によるニードル装置を適用することは、上方及び下方ニードルシリンダにおける作動スライダーの相互に同期化した動きが必要でなく、また編機のパターニングの可能性がダブルフックニードルと比較して広げられるので有利である。
【0021】
本発明の別の特徴によれば、本発明は、少なくとも二つのニードルベッドと、多数のニッティングニードルと、一つのニードルベッドから他のニードルベッドへのニードルのニッティング運動及びトランスファ運動を制御する、各ニードルベッドにおける相応した作動スライダーとを有し、各ニードルがステム及びステムの相対する端部に設けた二つのニッティングニードルヘッド(3、4)を備え、
各ニードルヘッドが先端部で終端するスプリングフックを備え、
ニードルのステムには、一対の湾曲ステム部分が設けられ、各湾曲ステム部分が先端部の相応した先端部の近くに配置され、湾曲ステム部分がそれぞれの先端部に対向した凸状部を備え、
各湾曲ステム部分には、それぞれの先端部に対する第1の凹部と、作動スライダーの突起部と係合する第2の凹部とを備えて成る編機を提供する。
【0022】
本発明のさらに別の特徴によれば、本発明は、ステム及びステムの相対した端部に配置した二つのニッティングニードルヘッドを有し、各ニードルヘッドが先端部で終端するスプリングフックを備え、ニードルのステムが一対の湾曲ステム部分を備え、各湾曲ステム部分が先端部の相応した先端部の近くに配置され、湾曲ステム部分がそれぞれの先端部に向う凸状部を備え、また各湾曲ステム部分には、それぞれの先端部に対する第1の凹部と、作動スライダーの突起部と係合する第2の凹部とを備えて成るニッティングニードルを提供する。
【0023】
以下添付図面を参照して本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】中心ステムの両端にフックを設けた本発明によるダブルヘッドニッティングニードルすなわちダブルヘッドベアーデッド(又はスプリングベアード)ニードルの正面図。
【図1a】中心ステムの両端にフックを設けた本発明によるダブルヘッドニッティングニードルすなわちダブルヘッドベアーデッド(又はスプリングベアード)ニードルの側面図。
【図1b】図1の細部の拡大図。
【図1c】図1aの細部の拡大図。
【図2】簡単化した変形例におけるニードル装置の側面図。
【図3】作動スライダーを備えた簡単化した変形例の一部の拡大図。
【図4】リンクス−リンクス又はリバーシブル及びカーディガンパターンを作ることのできる作動スライダーを備えた可能な変形例の一つを示す図。
【図5a】ジャージィループを形成する例の一つの段階を示す図。
【図5b】ジャージィループを形成する例の一つの段階を示す図。
【図5c】ジャージィループを形成する例の一つの段階を示す図。
【図5d】ジャージィループを形成する例の一つの段階を示す図。
【図5e】ジャージィループを形成する例の一つの段階を示す図。
【図6a】新しいループを形成することなしに一つのニードルベッドから別のニードルベッドへニッティングニードルを切換える段階の一つを示す図。
【図6b】新しいループを形成することなしに一つのニードルベッドから別のニードルベッドへニッティングニードルを切換える段階の一つを示す図。
【図6c】新しいループを形成することなしに一つのニードルベッドから別のニードルベッドへニッティングニードルを切換える段階の一つを示す図。
【図6d】新しいループを形成することなしに一つのニードルベッドから別のニードルベッドへニッティングニードルを切換える段階の一つを示す図。
【図6e】新しいループを形成することなしに一つのニードルベッドから別のニードルベッドへニッティングニードルを切換える段階の一つを示す図。
【図7a】図5aの拡大詳細図。
【図7b】図5bの拡大詳細図。
【図7c】図5cの拡大詳細図。
【図7d】図5dの拡大詳細図。
【図7e】図5eの拡大詳細図。
【図8a】図6aの拡大詳細図。
【図8b】図6bの拡大詳細図。
【図8c】図6cの拡大詳細図。
【図8d】図6dの拡大詳細図。
【図8e】図6eの拡大詳細図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1には、本発明によるニードル装置に用いられ得る本発明によるニッティングニードルを示している。ニッティングニードル1はステム2を有し、ステム2の両端にはニッティングヘッドが設けられ、各ヘッドはそれぞれのニッティングフック又はベアード3、4を備えている。各フック又はベアードは、本質的には、公知のいわゆる“スプリングベアードニードル”又は“ベアーデッドニードル”或いは簡単に“スプリングニードル”と同様な形態で形成される。従って、各フック又はベアードは、先端部7、8で終端する弾性バックルまたはスプリングバックル5、6を形成するようにのびている。従って、ニードル1はいわゆる“スプリングベアードニードル”又は“ベアーデッドニードル”であるが、しかし、先行技術のベアーデッドニードルと違って、ダブルでありすなわちステムの両端にフックを備えている。ニードルは、ステム2及び二つの長い端子フック又はベアード3、4を形成する一部片のスプリング鋼で構成され得る。
【0026】
ニッティングニードル1のステム2には、フックが弾性変形で閉じられる時に弾性バックル5、6の各先端部7、8に達する位置に、湾曲ステム部分9、10が設けられている。各湾曲ステム部分は、相応したスプリングフックの先端部に対向した凸状部を備えている。ステム2の各湾曲ステム部分9、10には、凹部11、12又はスリットが設けられ、これらの凹部11、12又はスリット内にニッティングフック3、4の弾性バックル5、6の先端部7、8が貫通する。湾曲ステム部分にはまた、相応した作動スライダー15、23の突起部17、25が係合する凹部13、14が設けられている。ニッティングニードル1は従ってそれの横断軸線X−Xに対して対称である。
【0027】
ニードル装置は一般に、ニッティングニードル1及び各ニッティングニードル1に対する少なくとも一対の作動スライダー15、23を有し、作動スライダー15、23は同一構造でも異なる構造でもよい。図3にはこれらの可能な構造の一つの形式を示している。図2より拡大して図3に示す作動スライダー15は、ニッティングニードル1の隣接したフック3、4に対する受け面16と、ニッティングニードル1の湾曲部分9、10におけるそれぞれの凹部13、14内へロックする突起部17とを備えている。作動スライダー15には、さらに編機のニードルベッドに設けた摺動凹部に沿ってスライダーを軸方向変位すなわち摺動させるバット19が設けられている。バット19は記載していない周知の仕方でニードルベッドに沿って又はそのまわりに設けたカム輪郭と係合する。さらに、作動スライダー15には、スライダーに直交してのびる軸線のまわりでスライダーを偏倚又は振動させることのできるピボットポイント20が設けられ、作動スライダー15はピボットポイント20に位置決めされている。スライダー15には、スライダーを強制偏倚させるすなわちピボットポイント20のまわりのスライダーの振動(揺動)を制御する別のバット21が設けられている。
【0028】
ニードル装置における各ニッティングニードル1には、図2に示す実施形態に示すような二つの作動スライダー15或いは別の形式の実施形態では図4に示すような二つの作動スライダー23が組み合わされる。幾つかの実施形態では、同一ニードル1に対して互いに異なり図3及び図3に従って構成した一対の作動スライダー15、23を用いることできる。
【0029】
図4によれば、代わりの実施形態では、スライダー23は、ニッティングニードル1のフック3、4の受け面16と、ニッティングニードル1の湾曲部分9、10における凹部13、14内に押し込む突起部17とを備えている。さらにスライダー23には、スライダーの軸方向移動を制御する硬いバット19及びスライダーが摺動収納されるニードルベッドの摺動溝における偏倚すなわち振動を可能にするピボットポイント20が設けられている。
【0030】
作動スライダー23にはさらに、補助揺動スライダー30のヒンジ支持用のジョイント29を形成する突起部が設けられ、補助揺動スライダー30は作動状態を実線で示し、オフ状態を破線(31で)示している。補助揺動スライダー30はジョイント29の座部35を備え、それで二つのスライダー23、30は互いに強く接続され得る。補助揺動スライダー30はさらに振動(揺動)偏倚動きを制御するように構成されたバット32及び軸方向変移動きを制御するように構成されたバット33を備えている。バット33が作動位置からオフ位置へ及びその逆に個々に選択可能であることにより、補助揺動スライダー30は、基本構造を形成するだけでなく異なるカーディガン及びリンクス−リンクスパターンを対しても予め決められる。補助揺動スライダー30は、公知であり従って詳細には示されていない任意のパターニング装置によって作動できる。
【0031】
ニードル装置の基本機能すなわちニッテッドファブリックのループを作ることは、図5a〜図5eに順に示され、そして平形横編機及びダブルシリンダ編機に共通である。参照番号40、41は二つのニードルベッドを示し、これらのニードルベッドは平形ニードルベッドであるか又は円形ニードルベッド(ダブルシリンダ編機のニードルシリンダ)であり得る。図7a〜図7eには、図5a〜図5eに示す種々の位置におけるニードルヘッドを拡大して示している。
【0032】
図5a及び図7aには、ニードル装置の初期の位置を示している。ニッティングニードル1は作動スライダー15の一つに押し込まれ、そして右側ニッティングベッド40における図5aによるウェフト(よこ糸)位置に位置される。
【0033】
ニッティングニードル1のフック3には、例えばニッテッドファブリックのジャージィループ36が位置している。対の作動スライダー15の第2のすなわち反対のスライダーは左側のニッティングニードルベッド41に位置し、新しいジャージィループの形成の全段階中には実際に機能しない。図5b及び図7bに示すように、ニッティングニードル1で押された作動スライダー15は、ニッテッドファブリックのジャージィループ36がニッティングニードル1の湾曲凸状部分9上に動くような位置までニッティングニードルベッド41に向かう方向に動かされる。公知であり図5b及び図7bに示していない導糸針(ガイド)によって、メリヤス糸(スレッド)38は凸状湾曲部分9とニッティングニードル1のニッティングフック3の弾性バックル5の先端部7との間の空間内へ入れられる。図5c及び図7cに示す次の段階では、スライダー15及びニッティングニードル1の後方への動きは、メリヤス糸(スレッド)38が弾性バックル5の下方に位置するようにして行われるが、ニッティングニードル1のステムに位置されるニッテッドファブリックのループ36は湾曲部分9の背後に留まる。その後、図5d及び図7dに示すように、公知のプレッサー39は、弾性バックル5の先端部7がニッティングニードル1の湾曲凸状部分9に設けた凹部又はスリット11内に入るようにして弾性バックル5を押す。これにより、まず弾性バックル5に装着しそしてその後ニッティングフック3に垂れ下がりニッティングスレッド38の新しいジャージィループ37を形成するように、ニッティングニードルベッド40におけるウェフト位置に向う方向の漸進運動によって、ニッテッドファブリックのループ36をニッティングニードル1のステム2に位置決めすることができる。ニードル装置の最終位置は図5e及び図7eに示されている。この位置は実際に図5aに示す初期位置と一致する。
【0034】
ニードル装置の別の重要な特徴は、一つのニードルベッドから別のニードルベッドへニッティングニードル1をそこに新しいループを形成することになしに移せる可能性にある。このプロセスは図6a〜図6e及び図8a〜図8eの細部拡大図に示し、図8a〜図8eの各々はそれぞれ図6a〜図6eのニードル領域を拡大して示している。ニードル装置の初期位置は図6a及び図8aに示されている。ニードル装置のこの位置は図5e及び図7e示す位置と同じである。ニッティングニードルを移すプロセスの初期段階は図6b及び図8bに示されている。右側のニッティングニードルベッド40に位置するニッティングニードル1を動かす作動スライダー15は左側のニッティングベッド41に向う方向に漸進し、最初にニッティングフック3に位置したニッティドファブリック36はニッティングニードル1のステム2上に動かされる。
【0035】
左側のニッティングニードルベッド41に位置した作動スライダー15も動き、ニッティングニードル1に向って漸進する。作動スライダー15のベベル18がニッティングニードル1のフック3に触れる瞬間に、ニードルベッド41におけるピボットポイント20のまわりで作動スライダー15は漸次自然発生的に振動(揺動)偏倚し始める。その後、ニッティングニードル1は両作動スライダー15を動かす。この位置(状態)を図6c及び図8cに示す。公知であり従って図示していないバット21のカムによって、両作動スライダー15内へニッティングニードル1を動かした後、ニードルベッド40におけるピボットポイント20のまわりのスライダー15の強制振動偏倚が行われ、ニッティングニードル1の弾性バックル6は図6d及び図8dに示すようにして作動スライダー15から解放される。それにより、プレッシャー39がニッティングカムシステムの動きの生じる部分に位置されるので、ニッティングニードル1はニッティングニードルベッド41内へ動かされ、ニッティドファブリック36はニッティングニードル1のフック3内へ自然に動き、その結果ニッティングニードル1のフック3の弾性バックル5がなお開放状態に留まる。ニッティングニードル1の移動後のニードル装置の最終位置は図6e及び図8eに示す。
【0036】
ニッティングニードルベッド41における縁取りループの形成プロセスは全体として図5a〜図5eに示すプロセスと対称かつ同じであり、ニッティングニードルベッド41からニッティングニードルベッド40内へのニッティングニードルの移動プロセスは全体として図6a〜図6eに示すプロセスと対称かつ同じであり、従って詳細には説明しない。同じ理由で、スライダー15に代えてスライダー23の使用、或いは二つのスライダーの組合せ使用については説明しない。
【0037】
上記の実施形態の説明から明らかなように、新しいループを形成することなしにニードルベッド40及びニードルベッド41(これらベッドは平形ニードルベッドであるか又はダブルシリンダ編機の円形ニードルベッドである)の間のニッティングニードル1の移動中、編機は、公知のダブルフックニッティングニードルを用いる場合のように、ループを動かすいかなる特殊な機構も必要としない。従って、編機は実質的に簡単化され、加えて、製造サイクルの持続時間は短縮され、縁取りループの形成後、ジャージィループの形成されているニードルベッドへのニッティングニードルのその後の移動はニッティングカムシステムのキャリジの単一動きより可能にされる。また明らかなように、作動ピストンをもたないニッティングニードルが用いられる場合のように、機械的制限はない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によるニッティング装置は2ニードルベッド及び4ニードルベッド平形横編機、並びにダブルシリンダ小径、中径及び大径編機に容易に応用できる編機の全ての共通に用いられたゲージに適用でき、そして作動スライダー15又は23のタイプを代えることによって、単に基本リバーシブル構造(ウェール)を構成する比較的簡単な編機と、特に普通のニッティドアンダーウエアを自動化製造するための、種々雑多のリバーシブル、リンクス−リンクス及びカーディガンパターンのニッティドファブリックを作る編機との両方に応用できる。
【符号の説明】
【0039】
1:ニッティングニードル
2:ステム
3:ニッティングフック又はベアード
4:ニッティングフック又はベアード
5:弾性バックルまたはスプリングバックル
6:弾性バックルまたはスプリングバックル
7:先端部
8:先端部
9:湾曲ステム部分
10:湾曲ステム部分
11:凹部
12:凹部
13:凹部
14:凹部
15:作動スライダー
16:受け面
17:突起部
18:ベベル
19:バット
20:ピボットポイント
21:別のバット
23:作動スライダー
25:突起部
29:ジョイント
30:補助揺動スライダー
32:バット
33:バット
36:ジャージィループ
37:新しいジャージィループ
38:メリヤス糸(スレッド)
39:プレッサー
40:ニードルベッド
41:ニードルベッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平形2ベッド又は4ベッド編機或いはダブルシリンダ編機のような少なくとも二つのニードルベッドを備える編機で特にリンクス−リンクス又はリバーシブルニッティドファブリックを製造するニードル装置であって、各々ステム(2)及びステム(2)の両端に設けられた二つのニッティングニードルヘッド(3、4)を備えた多数のニッティングニードル(1)と、各ニッティングニードル(1)に対して、各々相応したニッティングニードル(1)と係合する突起部(17)を備えた一対の作動スライダー(15;23)とを有するニードル装置において、
各ニッティングニードルヘッドが、先端部(7、8)で終端しているスプリングフック(3、4)を備え、ニッティングニードル(1)のステム(2)には一対の湾曲ステム部分(9、10)が設けられ、湾曲ステム部分(9、10)の各々が先端部(7、8)の相応した先端部の近くに設けられ、湾曲ステム部分(9、10)がそれぞれの先端部凸状部をもち、湾曲ステム部分(9、10)の各々には、それぞれの先端部(7、8)に対する第1の凹部(11、12)と、相応した作動スライダー(15;23)の突起部(17)と係合する第2の凹部(13、14)とが設けられること
ことを特徴とするニードル装置。
【請求項2】
各作動スライダー(15;23)が、少なくとも、ニッティングニードル(1)のスプリングフック(3、4)に対する受け面(16)と、作動スライダー(15;23)を自然発生的に振動偏倚させるベベル(18)と、自然発生的な振動偏倚中にスライダーの振動するピボットポイント(20)とを備えていることを特徴とする請求項1記載のニードル装置。
【請求項3】
各作動スライダー(15;23)が、さらに、軸方向移動を制御する少なくとも一つの硬いバット(19)を備えていることを特徴とする請求項2記載のニードル装置。
【請求項4】
各作動スライダー(15;23)が、振動偏倚を制御する別のバット(21)を備えていることを特徴とする請求項2又は請求項3記載のニードル装置。
【請求項5】
作動スライダー(23)の少なくとも幾つかに、相応しいた作動スライダーを選択的に作動又は非作動にするセレクタ(30)が結合されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のニードル装置。
【請求項6】
セレクタ(30)が相応した作動スライダー(23)に揺動的に接続されることを特徴とする請求項5記載のニードル装置。
【請求項7】
セレクタがジョイント(29)によって相応した作動スライダー(23)に回動的に接続された揺動補助作動スライダー(30)を備え、揺動補助作動スライダー(30)が、軸方向移動を加えるように構成した少なくとも一つのバット(33)と、作動スライダー(23)の振動偏倚を制御するバット(32)とを備えていることを特徴とする請求項6記載のニードル装置。
【請求項8】
各ニードルに同じ形式の二つの作動スライダー(15;23)が組み合わされることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項記載のニードル装置。
【請求項9】
各ニードルに異なる形式の二つの作動スライダー(15;23)が組み合わされることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項記載のニードル装置。
【請求項10】
ニードル(1)の少なくとも一つの作動スライダー(15;23)にバターニング装置が組み合わされることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか一項記載のニードル装置。
【請求項11】
少なくとも二つのニードルベッド(40、41)と、多数のニッティングニードル(1)と、一つのニードルベッドから他のニードルベッドへのニードル(1)のニッティング運動及び移動を制御する各ニードルベッドにおける相応した作動スライダー(15;23)とを有し、各ニードルがステム(2)及びステム(2)の両端に設けられた二つのニッティングニードルヘッド(3、4)を備えている編機において、
各ニードルヘッドが先端部(7、8)で終端するスプリングフック(3、4)を備え、
ニードルのステムが一対の湾曲ステム部分(9、10)を備え、各湾曲ステム部分が先端部(7、8)の相応した先端部の近くに配置され、湾曲ステム部分がそれぞれの先端部に向う凸状部を備え、
各湾曲ステム部分には、それぞれの先端部(7、8)に対する第1の凹部(11、12)と、作動スライダー(15、23)の突起部(17)と係合する第2の凹部(13、14)とを備えていること
を特徴とする編機。
【請求項12】
各ニッティングニードルに対して、各々ニードルベッドの一つに設けられた一対の作動スライダーが設けられることを特徴とする請求項11記載の編機。
【請求項13】
2又は4ニードルベッド、ダブルシリンダ編機を含むグループから選択されることを特徴とする請求項11又は請求項12記載の編機。
【請求項14】
ステム(2)及びステムの相対した端部に配置した二つのニッティングニードルヘッド(3、4)を有するニッティングニードル(1)において、
各ニードルヘッドが先端部(7、8)で終端するスプリングフック(3、4)を備え、ニードルのステムが一対の湾曲ステム部分(9、10)を備え、各湾曲ステム部分が先端部(7、8)の相応した先端部の近くに配置され、湾曲ステム部分がそれぞれの先端部(7、8)に向う凸状部を備え、また各湾曲ステム部分には、それぞれの先端部(7、8)に対する第1の凹部(11、12)と、作動スライダーと係合する第2の凹部(13、14)とを備えていること
を特徴とするニッティングニードルヘッド。

【図1】
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【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図7e】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【公表番号】特表2010−518274(P2010−518274A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549891(P2009−549891)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際出願番号】PCT/IT2008/000077
【国際公開番号】WO2008/099436
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(505386845)ゴールデン レデイ カンパニー ソチエタ ペル アチオーニ (12)
【Fターム(参考)】