説明

ネオアジュバントおよびアジュバント全身性抗癌治療のための結腸直腸癌患者の選択

本発明は、胃腸の癌の患者が疾患再発に遭遇しそうかどうか判定する方法に関し、該方法は、患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1濃度を測定するステップと、患者の術前体液サンプル中のCEA濃度を測定するステップと、患者が疾患再発に遭遇しそうかどうか評価するステップとを含む。本発明は、該方法を適用するためのキットをさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌治療の分野に関する。特に、本発明は、全身性抗癌治療のための結腸直腸癌患者の選別を向上させる方法に関する。特に、本発明は、全身性アジュバント治療のためのリンパ節陰性結腸直腸癌患者の選択およびより低攻撃性のアジュバント全身性治療のためのリンパ節陽性結腸直腸癌患者の選択の改善に関する。さらに、本発明は、結腸直腸癌患者のネオアジュバントおよびアジュバント治療の効果を生化学的に評価できる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
胃腸の癌の一形態である結腸直腸癌(CRC)は、西洋世界において3番目に多く見られる癌であり、2番目に多い癌関連死の原因である。新規症例数は、年間約400,000件である。
【0003】
ステージIII(リンパ節転移陽性)の結腸直腸癌患者は、アジュバント全身性治療を提案される。FULFOXまたはFULFIRIによるいずれかの化学治療法とアジュバント治療は、平均30%の生存率という改善をもたらす。対照的に、ステージII(リンパ節転移陰性)の結腸直腸癌患者の大半は、全身性アジュバント治療を受けない。ステージIIの患者の約15%が致命的となる頻度が最も高い疾患再発に遭遇することを認識していれば、これらの患者はアジュバント化学治療の明らかな候補者である。しかしながら、ステージII患者を予後群に区分する確認された予後マーカーなしでは、85%の患者は、初期の外科処置で治癒されるとはいえ、アジュバント化学治療で処置されるであろう。ステージII結腸直腸癌のアジュバント治療について、最近のASCOの勧告は、現在のところ全体としてこの患者群の全身性アジュバント治療の有益な効果についての証拠はないと結論づけている。しかしながら、この患者群における確かな予後バイオマーカーの欠如が原因で、「高リスクの」ステージIIの患者群におけるアジュバント化学治療の有益な効果を調べる試みがされてこなかった。
【0004】
胃腸の癌腫瘍マーカーの使用についての、2006年最新版のASCOの勧告は、術前の血清癌胎児抗原(CEA)の分析を初めて推奨している(Locker GYら, JCO, 2006, 24: 5313-5327)。CEAがステージ分類および外科治療計画策定を補佐するならば、結腸直腸癌腫患者の術前のCEAが定められ得ることを述べている。増加した術前のCEA(>5 mg/mL)はより悪い予後と相関し得るが、アジュバント治療で患者を治療するかどうか決定するために、CEAの使用を支持するにはデータが不十分である。
【0005】
Holten-Andersenら(2000)は、588名の結腸直腸癌患者から術前に得られた血漿サンプル中のメタロプロテイナーゼ1組織インヒビター(TIMP-1)の測定が、統計学的に非常に重要な予後情報を与えたことを発表した。最も重要なのは、血漿TIMP-1決定により得られた予後情報が疾患ステージに非依存的であるという事実であった。したがって、ステージIおよびIIの患者(デュークスAおよびB患者)(n=217)は、統計学的に非常に重要な予後群に分類できる。TIMP-1値の70パーセンタイルがカットオフポイントとして用いられ、ハザード比2.1(HR);低血漿TIMP-1患者と高血漿TIMP-1患者との間の95%信頼区間(CI):1.3〜3.5をもたらした。同様の方法で、血漿TIMP-1測定を用いて、デュークスステージC(ステージIII)患者(n=94)を統計学的に有意に異なった予後群に分類できた(Holten-Andersenら, Clin Cancer Res 2000)。
【0006】
Holten-Andersenら(2004)は、待機手術を受ける352名の直腸癌(RC)患者の後向きコホート研究も行い、ここで、術前に得られたサンプル中の血漿TIMP-1を測定した。研究により、血漿TIMP-1レベルとリンパ節転移陰性CRC患者生存との間の非依存的関係が確認された。
【0007】
2006年、Holten-Andersenらは、術後6か月に得られたサンプル(n=280)中の血漿TIMP-1を測定することにより、予後情報を得ることができることを報告した。808の血液ドナー血漿の集合に由来する、年齢と性別とで調整した95パーセンタイルをカットオフポイントとして用いて、患者を低血漿TIMP-1と高血漿TIMP-1に分類した。ここでも、血漿TIMP-1の予後の影響は疾患ステージに非依存的であり、それぞれ別個の疾患ステージにある患者が、術後血漿TIMP-1レベルにより生存に関して分類され得ることを意味した。特に関心を引くのが、術後6か月の血漿TIMP-1と生存との間の関係も、それぞれ術後血漿TIMP-1と局所再発までの時間および遠位転移までの時間との間の関係と言い換えられ、血漿TIMP-1の予後への影響を支持した。
【0008】
同じ2006年の研究で、Holten-Andersenらは、術後6か月の血清CEAレベルも決定した。術後のTIMP-1とCEAのレベルとの間の弱いが有意な関係が見出された(p<0.0001;スピアマン順位相関=0.3)。全原因による死をエンドポイントとし、他に記録した臨床病理学的パラメータを含む、術後のTIMP-1およびCEAについて多変量解析を行った。特定のカットポイントにしたがって、高いまたは低いとして評点し、TIMP-1およびCEAは、結腸直腸癌患者生存についての独立した予測値であることが見出された(TIMP-1: HR=1.6; 95% CI: 1.1〜2.3; P=0.02; CEA: HR=3.7; 95% CI: 2.5〜5.6; P<0.0001)。類似の結果が、局所再発までの時間および遠位転移までの時間について得られた。これらの結果は、術後血漿TIMP-1レベルおよび術後血清CEAレベルの測定により得られた予後情報が付加的であることを示し、術後にTIMP-1およびCEAを両方測定することにより、これらの蛋白質の1つだけの測定に比べて、優れた予後情報が得られることを意味する。したがって、術後血漿TIMP-1レベルおよび術後血清CEAレベルの測定により、この研究は、価値あるステージ非依存的予後情報が得られることを示す。
【0009】
Pellegriniら(2000)は、浸潤結腸直腸癌の前浸潤マーカーとして使用するための、可溶性CEAおよびTIMP-1血清レベルの測定を開示している。この研究は、CEA1血清レベルをステージIIからステージIIIへの移行についての進行マーカーとして使用することができ、血清TIMP-1レベルをステージIIIからステージIVへの移行についての進行マーカーとして使用できることを示す。統計学的解析から明らかなとおり、研究されたパラメータ(MMP-1、TIMP-1、CEAおよびp53抗体)の血清レベルを、一般的なパラメータとしての疾患進行に関して、および特定のステージ移行(I〜II、II〜III、III〜IV)に関して、これらの疾患フェーズについての潜在的進行マーカーに焦点を当てるために解析した。このように、著者らは、異なったステージについて別々にではなく、単にステージ移行について研究する。著者らは、関連手法を用いる場合、ステージIIからステージIIIへの移行におけるsCEA(p=0.03)レベルについて、およびステージIIIからステージIVへの移行におけるTIMP-1(p=0.015)レベルについてのみ、有意な値が観察されたと記述している。著者らは、ステージII〜IIIの疾患患者間のCEAレベルにおいて、ならびにステージIII患者とIV患者との間のTIMP-1レベルにおいて、統計学的に有意な差を見出している。
【0010】
CRC患者における血清TIMP-1レベルの研究において、Ishidaら(2003)は血清CEAレベルとの近い相関を見出さず、著者らは、彼らの研究から、TIMP-1の測定は、CRC患者の予後の予測に役立たないであろうと結論づけた。
【0011】
現在、CEAは、結腸直腸癌患者の治療を先導するために使用される、唯一の推奨される血清学的バイオマーカーである。CEAは、結腸直腸癌患者の監視のために認可されており、前のまたは現在の結腸直腸癌を有する患者において血清CEAレベルが上昇した場合に、早期の治療介入を可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
術前患者サンプル中のTIMP-1およびCEAの両方と任意に少なくとも1つの追加(additional)パラメータとの解析が、胃腸の癌再発の独立した予後インデックス(index)を提供することが見出された。
【0013】
本発明者らは、CRC患者におけるステージ非依存的予後マーカーとしての血漿TIMP-1について、2つの独立した研究を以前に発表した(Holten-Andersenら、Clin Cancer Res 2000およびHolten-Andersenら、Eur J Cancer 2004)。本発明者らは、2つの独立した研究、すなわちCRC患者の予後による分離におけるCEAとTIMP-1の測定を組み合わせることによる付随効果についての、1つの仮説を生じる研究(Brunnerら、未発表データ(実施例1に含まれる))と1つの確認研究(Brunnerら、未発表データ(実施例2に含まれる))とを開示した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、主に2つの態様に関する:
I.胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法。これらの方法は、アジュバントまたはネオアジュバント抗癌治療前に行われる、および
II. 胃腸の癌の患者がネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療の後に、疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法。
【0015】
したがって、本発明は、アジュバントまたはネオアジュバント抗癌治療の前および後に、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定することを可能にする。
【0016】
I.胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法。
したがって、本発明の第1の態様は、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法に関し、該方法は、
a)該患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定することと、
b)該患者の術前体液サンプル中のCEA濃度を測定することと、
c)TIMP-1濃度とCEA濃度とを組み合わせて、組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータを得ることと、
d)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであると示すことと、
e)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが該予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すことと
を含む。
【0017】
第2の態様は、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法に関し、該方法は:
a)該患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定することと、
b)該患者の術前体液サンプル中のCEA濃度を測定することと、
c)該患者において術前に少なくとも1つの追加パラメータを測定することと、
d)TIMP-1濃度とCEA濃度と少なくとも1つの追加パラメータとを組み合わせて、組み合わせた追加パラメータを得ることと、
e)組み合わせた追加パラメータが予め規定された組み合わせた追加識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであると示すことと、
f)組み合わせた追加パラメータが該予め規定された組み合わせた追加識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すことと
を含む。
【0018】
II. ネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療の後に、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法。
第3の態様は、ネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療の後に、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法に関し、該方法は:
a)第1時点において、該患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定することと、
b)該第1時点において、該患者の術前血漿サンプル中のCEA全濃度を測定することと、
b)TIMP-1濃度とCEA濃度とを組み合わせて、組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータを得ることと、
c)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであると示すことと、
d)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが該予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すことと、
e)個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうである場合に、第2時点において、該患者の術後血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定することと、
f)該第2時点において、該患者の術後血漿サンプル中のCEA全濃度を測定することと、
g)TIMP-1濃度とCEA濃度とを組み合わせて、組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータを得ることと、
h)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであると示すことと、
i)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが該予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すことと
を含む。
【0019】
第4の態様は、ネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療の後に、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法に関し、該方法は:
a)第1時点において、該患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定することと、
b)該第1時点において、該患者の術前体液サンプル中のCEA濃度を測定することと、
c)該第1時点において、該患者において術前に少なくとも1つの追加パラメータを測定することと、
d)TIMP-1濃度とCEA濃度と少なくとも1つの追加パラメータとを組み合わせて、組み合わせた追加パラメータを得ることと、
e)組み合わせた追加パラメータが予め規定された組み合わせた追加識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであると示すことと、
f)組み合わせた追加パラメータが該予め規定された組み合わせた追加識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すことと、
g)個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうである場合に、第2時点において、該患者の術後血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定することと、
h)該第2時点において、該患者の術後体液サンプル中のCEAの濃度を測定することと、
i)該第2時点において、該患者において術後に少なくとも1つの追加パラメータを測定することと、
j)TIMP-1濃度とCEA濃度と少なくとも1つの追加パラメータとを組み合わせて、組み合わせた追加パラメータを得ることと、
k)組み合わせた追加パラメータが予め規定された組み合わせた追加識別値以上である場合に、患者が疾患再発に遭遇しそうであると示すことと、
l)組み合わせた追加パラメータが該予め規定された組み合わせた追加識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すことと
を含む。
【0020】
したがって、本発明のある実施態様は、患者の胃腸の癌疾患の経過における第1時点と第2時点との間の、TIMP-1血漿レベルとCEA血清または血漿レベルと任意に少なくとも1つの追加パラメータ(例えば式Aの解である予後インデックス)との濃度の変化を測定することに関する。患者の胃腸の癌疾患の経過における第1時点と第2時点との間の、TIMP-1血漿レベルとCEA血清または血漿レベルと任意に少なくとも1つの追加パラメータ(例えば式Aの解である予後インデックス)との濃度の変化を決定することにより、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうかが決定できる。このような決定は、上記に開示のいずれの方法、すなわち、ネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療の後に、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法を用いても行うことができる。
【0021】
TIMP-1、CEAおよび任意に少なくとも1の追加パラメータの測定は、例えば、治療の形態(例えば外科手術、ネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療)の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24か月間前または後あるいはこれ未満前または後のような様々な時点(第1時点および第2時点を含むが、これに限定されない)、例えば2〜23か月の範囲のような治療の形態(例えば外科手術、ネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療)の1〜24か月前または後の範囲、例えば4〜21か月の範囲のような3〜22か月の範囲、例えば6〜19か月の範囲のような5〜20か月の範囲、例えば8〜17か月の範囲のような7〜18か月の範囲、例えば10〜15か月の範囲のような9〜16か月の範囲、例えば12〜13か月の範囲のような11〜14か月の範囲、例えば2〜6か月などの1〜5か月の範囲に行うことができる。1か月間またはこれ未満の時点は、1週間、2週間または3週間を含むが、これに限定されない。これらの時点は、上記に開示の方法(これに限定されないが、本発明の第1、第2および第3および第4の態様として開示された方法のような)に適用すると解釈される。別の実施態様では、治療は放射線治療、免疫治療および/または化学治療を含んでもよい。
【0022】
任意に、前記方法は、いずれか1以上の次のステップを含み得る:
胃腸の癌の患者からの患者サンプルが胃腸の癌の再発を予測するマーカーを含んでいるかどうか同定せよとの依頼を受領するステップ;
術前胃腸の癌の患者から得られた生体サンプルを受領するステップ;
前記選択された患者から得られた生体サンプルをTIMP-1に対する第1抗体またはTIMP-1をエンコードするmRNAを相補するプローブと接触させるステップ;
前記選択された患者から得られた前記生体サンプルをCEAに対する第2抗体 またはCEAをエンコードするmRNAを相補するプローブと接触させるステップ;
前記第1抗体の結合量またはプローブが結合したTIMP-1 mRNAの量を表す第1の値を測定するステップ;
前記第2抗体の結合量またはプローブが結合したCEA mRNAの量を表す第2の値を測定するステップ;
0.11×Log2(CEA)+0.41×Log2(TIMP-1)
で表されるアルゴリズムを用いて、第1の値および第2の値を予後インデックスに変換するように設定されたコンピュータに第1の値および第2の値を入力するステップ;
予後インデックスの解を、複数の予後インデックスを含むデータベースと比較することにより、前記予後インデックスの解が胃腸の癌の再発または胃腸の癌の軽減と関連があるかどうか判定するステップであって、該インデックスのいくつかが胃腸の癌の再発と関連があり、該インデックスのいくつかが胃腸の癌の軽減と関連があるステップ;
および前記予後インデックス解が胃腸の癌の再発または胃腸の癌の軽減と関連があるかどうかについての該判定について、前記依頼をした前記人物に伝達するステップ
を含み得る。
【0023】
本出願において、「0.11×Log2(CEA)+0.41×Log2(TIMP-1)」で表されるアルゴリズムは、「式A」とも呼ばれる。したがって、これらの用語は、本明細書において、置換可能に用いられる。
【0024】
さらなる態様は、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定するキットに関し、該キットは、
a)該患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定するための試薬と、
b)該患者の術前体液サンプル中のCEA濃度を測定するための試薬と、任意に
c)該患者の術前体液サンプル中の少なくとも1の追加腫瘍マーカー濃度を測定するための試薬と
を含む。
【0025】
また、さらなる態様は、ネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療の後に、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定するためのキットに関し、前記方法および前記キットは、
a)該患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定するための試薬と、
b)該患者の術前体液サンプル中のCEA濃度を測定するための試薬と、任意に
c)該患者の術前体液サンプル中の少なくとも1の追加腫瘍マーカー濃度を測定するための試薬と
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】結腸直腸癌(CRC)のステージIIおよびIIIの集団。
【図2】TIMP-1の関数としての多変量モデル(式A)に基づくハザード比。
【図3】デュークスB患者の無病生存率についてのKaplan-Meier推定値。
【図4】デュークスC患者の無病生存率についてのKaplan-Meier推定値。
【図5】フローチャート。
【図6】フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を以下により詳細に記述する。
【0028】
上記のとおり、血清または血漿CEAレベルおよび任意に少なくとも1つの追加パラメータと術前に測定した血漿TIMP-1レベルとを組み合わせることにより、結腸直腸癌に代表される胃腸の癌に苦しむ患者について、優れた予後情報が得られることを示唆する従来技術文献は存在しない。したがって、これらの2つの蛋白質を共通の予後プロファイルに組み合わせ得ることは自明でなかった。
【0029】
幾人かの研究者は、CEAと他のバイオマーカー、例えばCA242およびCA19-9と血清の組み合わせを、これら2つのマーカーの付加的な予後における価値を証明せずに報告している。本発明者らは、また、いずれの付加的な効果も証明せずに、CEA以外のその他のバイオマーカーを彼らのTIMP-1の値に加えている。
【0030】
したがって、術前血漿TIMP-1および術前血清CEAレベルの特定の組み合わせを、予後評価に関して2つのバイオマーカーをそれぞれ決定するよりも優れた共通の予後プロファイル(例えばTIMP-1/CEAパラメータ)に組み合わせ得るということは自明でなかった。
【0031】
術後6か月の血漿TIMP-1および血清CEAレベルを組み合わせ得ることを本発明者らが以前に証明していることから、同じことを術前に得られたTIMP-1およびCEA値に対しても行い得ることは自明であると論じられるかもしれない。しかしながら、Holten-Andersenら(2006)により示されるとおり、かなりの数の被分析患者において、術前血漿サンプルから術後血漿サンプルまで血漿TIMP-1値が変化しており、この文献から組み合わせられたTIMP-1およびCEAの価値を予測することは不可能であったことを意味する。これはCEAについても事実である。
【0032】
現在、約15%の患者が、術後5年にわたって疾患再発または疾患に関連する死に遭遇することが知られているにも拘らず、ステージIIのCRC患者の大部分がアジュバント全身性抗癌治療を受けていない。さらに、約30%のステージIIIのCRC患者が最初の外科処置により治癒される(経験的データから知られている)ものの、これらの患者は最も頻繁にアジュバント全身性抗癌治療を提案される。
【0033】
明らかに、アジュバント全身性治療の恩恵を被るステージIIおよびステージIIIのCRC患者の予後群を同定する方法について、未だ満たされないニーズがある。
【0034】
本発明者らは、術前血漿TIMP-1レベルと組み合わせた術前血清または血漿CEAレベル(例えば、TIMP-1/CEAパラメータ)を用いて、ステージIIおよびステージIIIのCRC患者の患者予後を予測できることを発見した。これらのバイオマーカーの両方を分析することにより、患者が癌再発に遭遇するかどうか予測することを可能にする追加予後情報を得ることができる。血漿TIMP-1レベルおよび血清または血漿CEAレベルは、少なくとも1つの追加パラメータ(例えば、組み合わせた追加パラメータ)とさらに組み合わせてもよい。
【0035】
したがって、予期せぬことに、CEAおよびTIMP-1の量ならびに任意に少なくとも1つの追加パラメータを用いて、疾患ステージに非依存的にCRC再発を予測できる予後インデックスを開発できることを発見した。すなわち、TIMP-1およびCEAを両方決定することにより得られるこの追加予後情報は、これらの蛋白質の一方を決定することだけにより得ることのできる予後情報より優れている。
【0036】
次に、大仮説を生じる研究について記述する。この研究は、驚くべきことに、術前に得られた血液中のTIMP-1およびCEAの測定の組み合わせが、ステージI〜IIIの結腸直腸癌に苦しむ患者の重要な追加予後情報を与えることを示す。したがって、TIMP-1およびCEAの測定は、それぞれ単独のTIMP-1およびCEAより優れた予後情報を提供する。
【0037】
次に、319名の患者から術前に採取した血漿を含む膨大な独立した確認研究について記述する。患者はすべてスウェーデンで処置された。本明細書中に記載されるとおり設定したTIMP-1アッセイを用いて、患者からの対応する血漿TIMP-1レベルを決定し、市販のCEAアッセイを用いて、血清中のCEAレベルを決定した。バイオマーカー分析は、デンマークのコペンハーゲンで行った。その後、TIMP-1およびCEAのデータをスウェーデンに、また臨床データをデンマークに送った。これらの場所において、血漿TIMP-1および血清CEAと患者の生存との間の相関を行った。類似の結果が得られた:CRCに苦しむ患者から術前に得られた血液サンプルにおいて測定した場合、血漿TIMP-1および血清CEAはステージ非依存的予後マーカーであった。したがって、この研究は、術前の血漿において測定されたTIMP-1および血漿CEAの量が、ステージIIおよびステージIIIのCRC患者の統計学的に非常に重要な患者の予後情報を得るために用いられ得ることを確認した(実施例2も参照されたい)。
【0038】
したがって、本発明は(CRC患者に代表される)胃腸の癌の患者を予後群に分離するための改良方法に関し、それによってステージI〜IIIのCRC患者における全身性抗癌治療の使用を導く(ステージIIおよびIIIのCRC患者について、図1参照)。特に、いくつかの実施態様は、患者または患者サンプルにおける術前血清または血漿CEAレベルを表す少なくとも1つの値を、患者または患者サンプルにおける術前血清または血漿TIMP-1レベルを表す少なくとも1つの値と組み合わせた方法に関する。2つの測定値を予め規定されたアルゴリズム(例えば、式A)に入力し、その結果は、CRC再発について正確な予後を提供する予後インデックスまたは解の値を表す。さらに、このアルゴリズムは、腫瘍分化段階、ゲノムの変化(MSS/MSI, p53, ras, 18q-LOH/DCC)、組織学的知見(段階ならびにリンパおよび血管浸潤)、性別、年齢および人種のような人口統計学的患者データおよび非複合体型のTIMP-1、特異的MMPとTIMP-1との複合体、可溶性CD63、可溶性uPA受容体(suPAR)、YKL-40、CA19-9、p66 Shc、MMP、ADAMおよびカリクレインのようなその他のバイオマーカーのような独立した予後変数を後から追加できる。上記マーカーは、腫瘍組織(固定されていないかまたは固定された)中において、および/または血液サンプルもしくは他の体液(尿、便、唾液、粘液、汗)中において測定し得ることが強調される。さらに、アルゴリズムは、TIMP-1レベルが年齢に依存するという事実を補うことができ、年齢の増加と共にTIMP-1レベルが増加することを意味する。さらに、バイオマーカーと人口統計学的変数との間の任意の関係性も、このようなアルゴリズムに組み込むことができる。
アルゴリズム(式A):0.11×Log2(CEA)+0.41×Log2(TIMP-1)は、追加マーカー+YY×Log2(新しいマーカーR)+TT×Log2(新しいマーカーZ)などを加えることにより拡張できる(結果については図2参照)。
【0039】
I.胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法。
本発明の第1の態様は、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法に関する。この方法は、患者から得られた術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定することと、患者から得られた術前体液サンプル中のCEA濃度を測定することを含む。TIMP-1全濃度が予め規定されたTIMP-1識別値以上であり、同時にCEA濃度が予め規定されたCEA識別値以上である場合、このことは、患者が疾患再発に遭遇しそうであることを示す。TIMP-1全濃度が該予め規定されたTIMP-1識別値未満であり、同時にCEA濃度が該予め規定されたCEA識別値未満である場合、このことは、個体が疾患再発に遭遇しそうにないことを示す。
【0040】
したがって、好ましい実施態様では、本発明は、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法に関し、該方法は、
a)該患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定することと、
b)該患者の術前体液サンプル中のCEA濃度を測定することと、
c)TIMP-1濃度とCEA濃度とを組み合わせて、組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータを得ることと、
d)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであると示すことと、
e)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが該予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すことと
を含む。
【0041】
別の好ましい実施態様では、本発明は、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法に関し、該方法は、
a)該患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定することと、
b)該患者の術前体液サンプル中のCEA濃度を測定することと、
c)該患者において術前に少なくとも1つの追加パラメータを測定することと、
d)TIMP-1濃度とCEA濃度と少なくとも1つの追加パラメータとを組み合わせて、組み合わせた追加パラメータを得ることと、
e)組み合わせた追加パラメータが予め規定された組み合わせた追加識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであると示すことと、
f)組み合わせた追加パラメータが該予め規定された組み合わせた追加識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すことと
を含む。
【0042】
任意に、前記方法は、1以上の次のステップを含み得る:
胃腸の癌の患者からの患者サンプルが胃腸の癌の再発を予測するマーカーを含んでいるかどうか同定せよとの依頼を受領するステップ;
術前胃腸の癌の患者から得られた生体サンプルを受領するステップ;
前記選択された患者から得られた生体サンプルをTIMP-1に対する第1抗体またはTIMP-1をエンコードするmRNAを相補するプローブと接触させるステップ;
前記選択された患者から得られた前記生体サンプルをCEA に対する第2抗体またはCEAをエンコードするmRNAを相補するプローブと接触させるステップ;
前記選択された患者から得られた生体サンプルをTIMP-1に対する第1抗体と接触させるステップ;
前記選択された患者から得られた生体サンプルをCEAに対する第2抗体と接触させるステップ;
第1抗体の結合量を表す第1の値を測定するステップ;
第2抗体の結合量を表す第2の値を測定するステップ;
0.11×Log2(CEA)+0.41×Log2(TIMP-1)
で表されるアルゴリズムを用いて、第1の値および第2の値を予後インデックスに変換するように設定されたコンピュータに第1の値および第2の値を入力するステップ;
予後インデックスの解を、複数の予後インデックスを含むデータベースと比較することにより、前記予後インデックスの解が胃腸の癌の再発または胃腸の癌の軽減と関連があるかどうか判定するステップであって、該インデックスのいくつかが胃腸の癌の再発と関連があり、該インデックスのいくつかが胃腸の癌の軽減と関連があるステップ;および
前記予後インデックスの解が胃腸の癌の再発または胃腸の癌の軽減と関連があるかどうかについての判定について、前記依頼をした前記人物に伝達するステップ
を含み得る。
【0043】
II. ネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療の後に、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法。
本発明の別の実施態様は、ネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療の後に、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法に関し、該方法は、
a)第1時点において、該患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定することと、
b)該第1時点において、該患者の術前血漿サンプル中のCEA全濃度を測定することと、
b)TIMP-1濃度とCEA濃度とを組み合わせて、組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータを得ることと、
c)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであると示すことと、
d)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが該予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すことと、
e)個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうである場合、第2時点において、該患者の術後血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定することと、
f)該第2時点において、該患者の術後血漿サンプル中のCEA全濃度を測定することと、
g)TIMP-1濃度とCEA濃度とを組み合わせて、組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータを得ることと、
h)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであると示すことと、
i)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが該予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すことと
を含む。
【0044】
さらなる実施態様では、本発明は、ネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療の後に、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法に関し、該方法は、
a)第1時点において、該患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定することと、
b)該第1時点において、該患者の術前体液サンプル中のCEA濃度を測定することと、
c)該患者において術前に少なくとも1つの追加パラメータを測定することと、
d)TIMP-1濃度とCEA濃度と少なくとも1つの追加パラメータとを組み合わせて、組み合わせた追加パラメータを得ることと、
e)組み合わせた追加パラメータが予め規定された組み合わせた追加識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであると示すことと、
f)組み合わせた追加パラメータが該予め規定された組み合わせた追加識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すことと、
g)個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうである場合に、第2時点において、該患者の術後血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定することと、
h)該第2時点において、該患者の術後体液サンプル中のCEAの濃度を測定することと、
i)該第2時点において、該患者において術後に少なくとも1つの追加パラメータを測定することと、
j)TIMP-1濃度とCEA濃度と少なくとも1つの追加パラメータとを組み合わせて、組み合わせた追加パラメータを得ることと、
k)組み合わせた追加パラメータが予め規定された組み合わせた追加識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであると示すことと、
l)組み合わせた追加パラメータが該予め規定された組み合わせた追加識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すことと
を含む。
【0045】
したがって、ある実施態様では、本発明は、患者の胃腸の癌疾患の経過における第1時点と第2時点との間の、TIMP-1血漿レベルとCEA血清または血漿レベルと任意に少なくとも1つの追加パラメータ(例えば式Aの解である予後インデックス)との濃度の変化の決定に関する。患者の胃腸の癌疾患の経過における第1時点と第2時点との間の、TIMP-1血漿レベルとCEA血清または血漿レベルと任意に少なくとも1つの追加パラメータ(例えば式Aの解である予後インデックス)との濃度の変化を測定することにより、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうかが判定できる。測定は、第1時点と第3のさらなる時点との間に、または第2時点と第3のさらなる時点との間に行われてもよい。このような測定は、上記に開示の任意の方法、すなわち、ネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療の後に、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法で行うことができる。
【0046】
ある実施態様では、本発明は、ネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療の後に、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法に関する。この方法は、第1時点において、患者から得られた術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定すること、および該第1時点において、患者から得られた術前体液サンプル中のCEA濃度を測定すること、さらに、測定したTIMP-1濃度と測定したCEA濃度とを組み合わせて、組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータを得ることを含む。組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値以上である場合に、患者が疾患再発に遭遇しそうであることを示す。組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値未満である場合に、個体が疾患再発に遭遇しそうにないことを示す。
【0047】
患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうな場合、好ましくは、患者は、治療形態(外科手術またはアジュバント治療)で治療される。この方法は、さらに、第2時点において、患者から得られた術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定すること、および該第2時点において、患者から得られた術前体液サンプル中のCEA濃度を測定すること、さらに、測定したTIMP-1濃度と測定したCEA濃度とを組み合わせて、組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータを得ることを含む。組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであることを示す。組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないことを示す。
【0048】
患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうになく、第2時点が治療の間であるならば、治療は続けられる。患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうになく、第2時点が治療終了後であるならば、好ましくは、患者は前記治療によってさらに治療されない。他方、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうならば、好ましくは、患者は別の治療に切り替えられる。ある実施態様では、該治療はより攻撃的な治療である。
【0049】
上記のことは、少なくとも1つの追加パラメータを決定し、方法に含める場合にも適用する(例えば請求項4参照)。
【0050】
ある実施態様では、第1時点は術前である。第1時点は、例えば、治療開始前または初期の治療(例えば外科手術)前の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24か月、例えば2〜23か月の範囲のような治療開始前または初期の治療(例えば外科手術)前の1〜24か月の範囲、例えば4〜21か月の範囲のような3〜22か月の範囲、例えば6〜19か月の範囲のような5〜20か月の範囲、例えば8〜17か月の範囲のような7〜18か月の範囲、例えば10〜15か月の範囲のような9〜16か月の範囲、例えば12〜13か月の範囲のような11〜14か月の範囲、例えば2〜6か月のような1〜5か月の範囲からなる群より選択されてもよい。1か月間またはこれ未満の時点は、1週間、2週間または3週間を含むが、これに限定されない。ある実施態様では、第1時点は、治療開始前または初期の治療(例えば外科手術)前1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30および31日からなる群より選択されてもよい。
【0051】
ある実施態様では、第2時点は術後である。第2時点は治療中および/または治療終了後であってもよい。第2時点は、例えば、治療開始後または治療終了後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24か月、例えば2〜23か月の範囲のような治療開始後または治療終了後1〜24か月の範囲、例えば4〜21か月の範囲のような3〜22か月の範囲、例えば6〜19か月の範囲のような5〜20か月の範囲、例えば8〜17か月の範囲のような7〜18か月の範囲、例えば10〜15か月の範囲のような9〜16か月の範囲、例えば12〜13か月の範囲のような11〜14か月の範囲、例えば2〜6か月のような1〜5か月の範囲からなる群より選択されてもよい。1か月間またはこれ未満の時点は、1週間、2週間または3週間を含むが、これに限定されない。ある実施態様では、第2時点は治療開始後および/または治療終了後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30および31日からなる群より選択されてもよい。
【0052】
したがって、本発明は、ネオアジュバントおよび/またはアジュバント治療の後に、バイオマーカー(例えば、TIMP-1とCEAと任意に少なくとも1つの追加パラメータ)を決定し、それにより、与えられたネオアジュバントまたはアジュバント治療の効果についての情報を得ることに関する。すなわち、本発明は、ネオアジュバントもしくはアジュバント抗癌治療の後に、またはネオアジュバントもしくはアジュバント抗癌治療中に、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定するための方法に関する。
【0053】
与えられたネオアジュバントおよび/またはアジュバント治療の効果の欠如を示す(すなわち、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうである)情報の場合、患者は、1回目の治療として施された抗癌治療様式と交差耐性パターンを示さない抗癌治療様式を有する2回目のネオアジュバントおよび/またはアジュバント治療を提案される。
【0054】
与えられたネオアジュバントおよび/またはアジュバント治療の効果を示す(すなわち、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにない)情報の場合、患者は、ネオアジュバントおよび/またはアジュバント治療(すなわち、1回目の治療)を続ける。
あるいは、医療従業者が患者の胃腸の癌疾患が治癒したことを見出した場合、治療は止められる。
【0055】
ネオアジュバントまたはアジュバント治療の効果についてのこのような情報は、本発明にしたがって、疾患経過における1より多い時点(すなわち、第1および第2時点)において、バイオマーカーのレベルを測定することによって得られ、第2時点は、治療中または治療開始もしくは終了後数か月であり得る。(ネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療の後に、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定するための方法で開示されるように)時点間のバイオマーカーのレベルを比較する場合に、与えられた治療の治療効果の欠如についてのリスク評価を推定できる。
【0056】
任意に、前記方法は、いずれか1以上の次のステップを含み得る:
胃腸の癌の患者からの患者サンプルが胃腸の癌の再発を予測するマーカーを含んでいるかどうか同定せよとの依頼を受領するステップ;
術前胃腸の癌の患者から得られた生体サンプルを受領するステップ;
前記選択された患者から得られた生体サンプルをTIMP-1に対する第1抗体と接触させるステップ;
前記選択された患者から得られた生体サンプルをCEAに対する第2抗体と接触させるステップ;
第1抗体の結合量を表す第1の値を測定するステップ;
第2抗体の結合量を表す第2の値を測定するステップ;
0.11×Log2(CEA)+0.41×Log2(TIMP-1)
で表されるアルゴリズムを用いて、第1の値および第2の値を予後インデックスに変換するように設定されたコンピュータに第1の値および第2の値を入力するステップ;
予後インデックスの解を、複数の予後インデックスを含むデータベースと比較することにより、前記予後インデックスの解が胃腸の癌の再発または胃腸の癌の軽減と関連があるかどうか判定するステップであって、該インデックスのいくつかが胃腸の癌の再発と関連があり、該インデックスのいくつかが胃腸の癌の軽減と関連があるステップ;
および前記予後インデックス解が胃腸の癌の再発または胃腸の癌の軽減と関連があるかどうかについての該判定について、前記依頼をした前記人物に伝達するステップ
を含み得る。
【0057】
いくつかの実施態様では、組み合わされたパラメータを用いて、バイオマーカー;TIMP-1、CEAおよび任意に少なくとも1つの追加腫瘍マーカーの集合値に基づいて、癌患者の疾患再発または死のリスクの兆候を示すリスク評価スコアを得る。
【0058】
ある実施態様では、追加腫瘍マーカーは、血清または血漿可溶性suPAR、血清または血漿CA246、非複合体型のTIMP-1、特異的MMPとTIMP-1との複合体、可溶性CD63、YKL-40、p66 Shc、MMP、ADAMおよびカリクレインならびにそれらの組合せからなる群より選択される。
【0059】
識別値をどのように決定するかについての記述は、「識別値」と称する節で見出すことができる。
【0060】
本発明のいくつかの実施態様は、胃腸の癌疾患について患者が悪い予後を有するかどうか、すなわち疾患再発または疾患に関連する死までのより短い時間を決定する方法も含む。いくつかのアプローチにより、これらの方法は、癌患者からの生体サンプル中のバイオマーカーの一団のレベルを測定することを含み、ここで、測定結果は、疾患についての高いまたは低い傾向を有する患者を示す。ここでも、これらの方法の多くは1以上の次のステップを含み得る:
胃腸の癌の患者からの患者サンプルが胃腸の癌の再発を予測するマーカーを含んでいるかどうか同定せよとの依頼を受領するステップ;
術前胃腸の癌の患者から得られた生体サンプルを受領するステップ;
前記選択された患者から得られた生体サンプルをTIMP-1に対する第1抗体と接触させるステップ;
前記選択された患者から得られた生体サンプルをCEAに対する第2抗体と接触させるステップ;
第1抗体の結合量を表す第1の値を測定するステップ;
第2抗体の結合量を表す第2の値を測定するステップ;
0.11×Log2(CEA)+0.41×Log2(TIMP-1)
で表されるアルゴリズムを用いて、第1の値および第2の値を予後インデックスに変換するように設定されたコンピュータに第1の値および第2の値を入力するステップ;
予後インデックスの解を、複数の予後インデックスを含むデータベースと比較することにより、前記予後インデックスの解が胃腸の癌の再発または胃腸の癌の軽減と関連があるかどうか判定するステップであって、該インデックスのいくつかが胃腸の癌の再発と関連があり、該インデックスのいくつかが胃腸の癌の軽減と関連があるステップ;
および前記予後インデックス解が胃腸の癌の再発または胃腸の癌の軽減と関連があるかどうかについての該判定について、前記依頼をした前記人物に伝達するステップ。
【0061】
胃腸の癌
胃腸の癌は、これらに限定しないが、食道、胃、肝臓、胆管系、膵臓、結腸、直腸および肛門を含む胃腸管の悪性状態を指す。したがって、用語胃腸の癌は、これらに限定しないが、食道癌、胃癌、小腸癌、胆嚢癌、肝臓癌、膵臓癌ならびに結腸癌および直腸癌のような結腸直腸癌のようないくつかの種を包含する属である。
【0062】
したがって、本発明のある実施態様では、胃腸の癌は、食道癌、胃癌、小腸癌、胆嚢癌、肝臓癌、膵臓癌ならびに結腸癌および直腸癌のような結腸直腸癌からなる群より選択される。
【0063】
第2の実施態様では、胃腸の癌は結腸腺癌および直腸腺癌からなる群より選択される腺癌である。
【0064】
好ましい実施態様では、胃腸の癌は結腸直腸癌である。
【0065】
結腸直腸癌(CRC)
本明細書中の用語「結腸直腸癌」(CRC)は、「胃腸の癌」の属の一種として解釈される。
【0066】
本発明に記載のCRCは、結腸、直腸および虫垂における癌性の成長を指す。
【0067】
ステージIIは、結腸直腸癌についてのデュークス分類体系のデュークスBクラスに対応する。したがって、ステージIIIは、結腸直腸癌についてのデュークス分類体系のデュークスCクラスに対応する。
結腸直腸癌、結腸癌、大腸癌およびCRCとの用語は、ここでは、置換可能に用いられる。
【0068】
さらなる実施態様では、結腸直腸癌は、ステージIIの結腸直腸癌およびステージIIIの結腸直腸癌からなる群より選択される。
【0069】
アジュバントまたはネオアジュバント抗癌治療(アジュバントまたはネオアジュバント抗癌療法)
アジュバント抗癌治療は、検出可能な腫瘍組織をすべて切除したが、検出不可能な疾患による再発の統計学的リスクが残る、外科手術後に行われる追加全身性治療のような追加治療を指す。
【0070】
アジュバント抗癌治療は、初期の外科手術による腫瘍組織の切除(すなわち初期の治療)のすぐ後に施される。
【0071】
したがって、本発明のある実施態様では、アジュバント抗癌治療は、初期の治療後7週間未満などの初期の治療後8週間未満、例えば初期の治療後5週間未満などの初期の治療後6週間未満、初期の治療後3週間未満などの初期の治療後4週間未満、初期の治療後1週間未満などの初期の治療後2週間未満で行われる。
【0072】
特定の実施態様では、アジュバント抗癌治療は、初期の治療の後に3〜4週間施される。
【0073】
他方、ネオアジュバント治療は、胃腸管内の腫瘍の外科手術による切除の前に施される化学療法のような初期の治療の前に施される。ネオアジュバント治療についての最も一般的な理由は、外科手術による切除の効果をより促進するように、腫瘍サイズを減少させることである。
【0074】
したがって、本発明のある実施態様では、ネオアジュバント抗癌治療は、初期の治療前7週間未満のような初期の治療前8週間未満、例えば初期の治療前5週間未満のような初期の治療前6週間未満、例えば初期の治療前3週間未満のような初期の治療前4週間未満、例えば初期の治療前1週間未満のような初期の治療前2週間未満で提供される。
【0075】
ある実施態様では、抗癌治療は、ネオアジュバント治療、アジュバント治療および転移性疾患治療からなる群より選択される。
【0076】
特定の実施態様では、アジュバント治療は全身性抗癌治療である。
【0077】
本発明に記載のある実施態様では、初期の外科手術による腫瘍切除の後のアジュバント化学療法は、FOLFOX(点滴による5-フルオロウラシル、ロイコボリンおよびオキサリプラチン)、5-フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン(ゼローダ)、ロイコボリン(LV, フォリン酸)およびオキサリプラチン(エロキサチン)からなる群より選択されるか、またはFOLFIRI(点滴による5-フルオロウラシル、ロイコボリンおよびイリノテカン)からなる。
【0078】
別の実施態様では、アジュバント化学治療は、FOLFOXとベバシズマブとの組合せ、FOLFIRI(点滴による5-フルオロウラシル、ロイコボリンおよびイリノテカン)とベバシズマブとの組合せ、5-フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン、ロイコボリン(LV, フォリン酸)、イリノテカン(カンプトサール)、オキサリプラチン(エロキサチン)、ベバシズマブ(アバスチン)、セツキシマブ(アービタックス)およびパニツムマブ(ベクチビックス)からなる群より選択される。
【0079】
メタロプロテアーゼ-1組織インヒビター(TIMP-1)
TIMP-1は、4つの内生マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)インヒビターのファミリーのうちの1つである。TIMP-1は、ほとんどのMMPに1:1の化学量論で結合する28 kDaの蛋白質である。TIMP-1は、様々な組織および体液中に存在し、血小板のα粒子内に貯蔵され、活性化するとすぐに放出される。TIMP-1の主な機能はMMP阻害であると考えられているが、TIMP-1のいくつかの別の機能が述べられており、例えば、アポトーシス阻害ならびに細胞成長および血管形成の制御である。さらに、いくつかの研究は、TIMP-1が、悪性表現型に導く早期のプロセスにおける役割を果たし得ることを示す。TIMP-1は、遊離型およびメタロプロテアーゼとの複合体型の両方で存在し、重要なパラメータがTIMP-1の全濃度、つまり、遊離型のTIMP-1と複合体型のTIMP-1との合計であることが見出された。遊離型すなわち非複合体型のTIMP-1は、健康な個体の血漿および血清ならびに癌患者の血漿および血清において見られる(Holten-Andersenら、 Clin Chem 2004)。本発明者らは、血液サンプル中の全TIMP-1または非複合体型のTIMP-1を高感度で検出する特異的ELISAを開発した(Holten-Andersenら、Br J Cancer 1999; Holten-Andersenら、Clin Chem 2004)。
【0080】
TIMP-1濃度を表すパラメータは、TIMP-1の固有濃度(concentration proper)であってもよい。固有濃度よりも他の表現は、例えば係数を乗じた濃度のような濃度を表すことができ、このような他の表現は、対応する調整がされているという条件で、本発明の目的のために、等しく有利に用いられ得ると理解される。
【0081】
本発明によれば、TIMP-1レベルは、問題のサンプルのTIMP-1 mRNAの定量的測定または該サンプルのTIMP-1蛋白質濃度の測定のいずれによっても決定できる。
【0082】
ある実施態様では、問題のサンプルのTIMP-1 mRNA濃度は、該サンプルのTIMP-1蛋白質濃度と相関がある。したがって、TIMP-1 mRNA濃度は、該サンプルのTIMP-1蛋白質濃度を反映する。
【0083】
したがって、本発明のある実施態様では、TIMP-1濃度は、サンプルのTIMP-1 mRNA濃度およびサンプルのTIMP-1蛋白質濃度からなる群より選択される。
【0084】
本発明の別の実施態様では、TIMP-1 mRNA濃度は、あるタイプのサンプル中で測定され、TIMP-1蛋白質の決定は、別のタイプのサンプル中で行われる。
【0085】
本発明に記載のある実施態様では、TIMP-1濃度は、遊離型のTIMP-1濃度、複合体型のTIMP-1濃度およびTIMP-1全濃度からなる群より選択される。
【0086】
第2の実施態様では、TIMP-1全濃度は、遊離型のTIMP-1および複合体型のTIMP-1の濃度である。
【0087】
特定の実施態様では、TIMP-1蛋白質濃度は、血漿サンプルのTIMP-1蛋白質濃度である。
【0088】
癌胎児発癌物質(CEA)
癌胎児発癌物質(CEA)は、細胞接着に関わる糖蛋白質である。CEAは、胎児の発達中に発現し、出生前に下方制御される。CEAは、結腸直腸癌患者の治療を先導するために使用される唯一の推奨される血清学的バイオマーカーである。CEAは結腸直腸癌患者の監視のために認可されており、前のまたは現在の結腸直腸癌を有する患者の血清CEAレベルが上昇した場合に、早期の治療介入を可能にする。
【0089】
本発明によれば、CEAレベルは、問題のサンプルのCEA mRNAの定量的測定またはCEA蛋白質濃度の測定(例えば、該サンプルまたは別のタイプのサンプルについてのELISAによって)のいずれによっても測定できる。
【0090】
ある実施態様では、問題のサンプルのCEA mRNA濃度は、該サンプルのCEA蛋白質濃度と相関がある。したがって、CEA mRNA濃度は、該サンプルのCEA蛋白質濃度を反映する。
【0091】
したがって、本発明のある実施態様では、CEA濃度は、体液サンプルのCEA mRNA濃度、体液サンプルまたは別のタイプのサンプルのCEA蛋白質濃度からなる群より選択される。
【0092】
別の実施態様では、CEA濃度は、体液サンプルの血清CEA濃度、体液サンプルの血漿CEA濃度ならびに体液サンプルの血漿および血清中のCEA濃度からなる群より選択される。CEA濃度は、サンプル中のCEAに結合する抗体の量を評価すること(例えば、ELISAのようなイムノアッセイ)によっても測定できる。
【0093】
TIMP-1、CEAおよび追加腫瘍マーカーの濃度の測定は、いくつかの実施態様において、同じサンプルがそれぞれ用いられてもよい。別の実施態様では、TIMP-1、CEAおよび追加腫瘍マーカーの濃度は、患者から得られた個々のサンプルについてそれぞれ行う。
本発明の特定の実施態様では、TIMP-1濃度およびCEA濃度は、同じサンプルを用いて測定する。
【0094】
追加パラメータ
本発明に記載の方法は、臨床結果に関連する他の入手可能なデータを考慮した追加パラメータを含み得る。
【0095】
本発明のある態様は、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法に関し、該方法は、
a)該患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定することと、
b)該患者の術前体液サンプル中のCEA濃度を測定することと、
c)該患者において、術前に少なくとも1つの追加パラメータを測定することと、
d)TIMP-1濃度とCEA濃度と少なくとも1つの追加パラメータとを組み合わせて、組み合わせた追加パラメータを得ることと、
e)組み合わせた追加パラメータが予め規定された組み合わせた追加識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであると示すことと、
f)組み合わせた追加パラメータが該予め規定された組み合わせた追加識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すことと
を含む。
【0096】
また、本発明の別の態様は、ネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療の後に、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法に関し、該方法は、
a)第1時点において、該患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定することと、
b)該第1時点において、該患者の術前体液サンプル中のCEA濃度を測定することと、
c)該患者において、術前に少なくとも1つの追加パラメータを測定することと、
d)TIMP-1濃度とCEA濃度と少なくとも1つの追加パラメータとを組み合わせて、組み合わせた追加パラメータを得ることと、
e)組み合わせた追加パラメータが予め規定された組み合わせた追加識別値以上である場合に、患者が疾患再発に遭遇しそうであると示すことと、
f)組み合わせた追加パラメータが該予め規定された組み合わせた追加識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すことと、
g)個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうである場合に、第2時点において、該患者の術後血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定することと、
h)該第2時点において、該患者の術後体液サンプル中のCEA濃度を測定することと、
i)該第2時点において、該患者において術後に少なくとも1つの追加パラメータを測定することと、
j)TIMP-1濃度とCEA濃度と少なくとも1つの追加パラメータとを組み合わせて、組み合わせた追加パラメータを得ることと、
k)組み合わせた追加パラメータが予め規定された組み合わせた追加識別値以上である場合に、患者が疾患再発に遭遇しそうであると示すことと、
l)組み合わせた追加パラメータが該予め規定された組み合わせた追加識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すことと
を含む。
【0097】
本発明のある実施態様では、少なくとも1つの追加パラメータは、年齢、性別、総合的な臨床状態、腫瘍の位置、疾患ステージ、識別段階、リンパ管、血管浸潤、神経浸潤、同時罹患率、アジュバント治療養生法および個体からの体液サンプル中におけるTIMP-1またはCEAのいずれの形態とも異なる追加腫瘍マーカーからなる群より選択される。
【0098】
本発明の特定の実施態様では、少なくとも1つの追加パラメータは、年齢、性別、総合的な臨床状態、腫瘍の位置、疾患ステージ、識別段階、リンパ管、血管浸潤、神経浸潤、同時罹患率、アジュバント治療養生法および患者からの体液サンプル中におけるTIMP-1またはCEAのいずれの形態とも異なる追加腫瘍マーカーからなる群より選択される。
【0099】
本発明によれば、追加パラメータは、問題の胃腸の癌に関係する腫瘍マーカーであってもよく、ここで、該追加腫瘍マーカーは、TIMP-1でもCEAでもない。
【0100】
本発明に記載のある実施態様では、追加腫瘍マーカーは、血清または血漿可溶性suPAR、血清または血漿CA19.9、血清または血漿CA242、複合体でないTIMP-1、特異的MMPとTIMP-1との複合体、可溶性CD63、YKL-40、p66 Shc、MMP、ADAMおよびカリクレイン類ならびにその組合せからなる群より選択される。
【0101】
任意に、前記方法は、いずれか1以上の次のステップ:
胃腸の癌の患者からの患者サンプルが胃腸の癌再発を予測するマーカーを含むかどうか同定せよとの依頼を受領するステップ;
術前胃腸の癌の患者から得られた生体サンプルを受領するステップ;
前記選択された患者から得られた生体サンプルをTIMP-1に対する第1抗体またはTIMP-1をエンコードするmRNAを相補するプローブと接触させるステップ;
前記選抜患者から得られた前記生体サンプルをCEA またはCEAのエンコードするmRNAを相補するプローブへの二次抗体と接触させるステップ;
前記第1抗体の結合量またはプローブが結合したTIMP-1 mRNAの量を表す第1の値を測定するステップ;
前記第2抗体の結合量またはプローブが結合したCEA mRNAの量を表す第2の値を測定するステップ;
0.11×Log2(CEA)+0.41×Log2(TIMP-1)+WW×Log2(追加パラメータ)
で表されるアルゴリズムを用いて、第1の値および第2の値を予後インデックスに変換するように設定されたコンピュータに第1の値および第2の値を入力するステップ(WWは、行われる回帰分析に基づいて決定され、回帰が線形回帰である(例えば)場合、直線の勾配に対応する。この点では、WWは、追加パラメータの濃度または状態とみなすことができる。);
予後インデックスの解を、複数の予後インデックスを含むデータベースと比較することにより、前記予後インデックスの解が胃腸の癌の再発または胃腸の癌の軽減と関連があるかどうか判定するステップであって、該インデックスのいくつかが胃腸の癌の再発と関連があり、該インデックスのいくつかが胃腸の癌の軽減と関連があるステップ;
および前記予後インデックス解が胃腸の癌の再発または胃腸の癌の軽減と関連があるかどうかについての該判定について、前記依頼をした前記人物に伝達するステップ
を含み得る。
【0102】
数学的手法
組み合わせたパラメータ(例えば、組み合わせたCTIMP-1/CCEAパラメータおよび組み合わせた追加パラメータ)は、ロジスティック回帰分析、またはアルゴリズムを組み立てる一般的な数学的操作により以下に開示されるもののような任意の適切な統計学的手法を用いて得ることができる。基礎データ(それに基づいて数学的操作を行うデータ)が集団の状態を表す一方、統計学的手法は、識別値および予後インデックス(PI)と呼ばれるものを提供するために、しばしばデータに適用される。識別値は既知経過の疾患を有する集団に由来し、ここで、PIは、問題の患者について特定の疾患状態にて決定される。したがって、いくつかの実施態様では、組み合わせるステップは、他の方法は本発明の範囲内であるものの、ロジスティック回帰分析により行う。
【0103】
図5および6は、ある患者が従う治療スキームを維持するならば、問題の患者(図5中、患者はステージIIであり、図6中、患者はステージIIIである)が疾患再発に遭遇しそうかどうかを示すために行われる、本発明の好ましい実施態様による方法の包括的な好ましいステップを示す。これは、予後指標PIと識別値を比較することにより示され、患者が疾患再発に統計学的に遭遇しそうかどうかについての評価が得られる。図5および6でさらに示されるとおり、医療従業者が次にすることを評価し、決定するので、治療などに関する提案は、まだ、医療従業者の責任である。
【0104】
図5および6に示されるフローチャートから明らかなとおり、方法は、TIMP-1およびCEA濃度、すなわちCTIMP-1およびCCEAを決定することにより開始する。これらの濃度を一旦決定したら、これらは数学的操作により(好ましい実施態様について以下にさらに詳細に開示されるとおり)代数的に組み合わされ、多くのこのような代数的組合せは本発明の範囲内である。したがって、本発明は、アルゴリズムを組み立てる代数的組合せを提供する数学的演算子について、記号Fを用いて好ましくかつ有利に開示され得る。数学的演算子Fは、好ましくは、「+」「−」「÷」および「×」のような多数の数学的な基本操作を含むことができ、特に好ましい実施態様では、
PI=F[CCEA; CTIMP-1]
(ここで、
F[PAR_1; PAR_2]=0.11Log2(PAR_1)+0.41Log2(PAR_2))
を含む数学的演算子Fは、特に好ましい実施態様においてFに対応するアルゴリズムである。第1のパラメータPAR_1はCCEAであり、第2のパラメータPAR_2はCTIMP-1であるため、
PI=0.11Log2(CCEA)+0.41Log2(CTIMP-1)。
【0105】
上記に示されるとおり、追加パラメータAPは、PIを推定する際に考慮してもよいため、PI=F[CCEA; CTIMP-1; AP]である。このような場合、好ましくは、Fは次の形態であってもよい:
F[PAR_1; PAR_2, AP]=0.11Log2(PAR_1)+0.41Log2(PAR_2)+WWLog2(AP)
は、別の好ましい実施態様においてFに対応するアルゴリズムである。WWは(上記に開示されるとおり)追加パラメータの濃度または状態である。
【0106】
さらなる実施態様では、F[PAR_1; PAR_2]=PAR_1/Par_2なので、PI=CTIMP-1/CCEAである。
さらに、PIは単独の値または値の集合であってもよい。このことはPIに添え字「i」、例えばPIi(iは1〜nの間から選択される)を与えることにより示される。上記の例では、n=1であり、添え字は省略される。他の場合、nは2に等しく、したがって、予後指標は、PI1およびPI2のような値の集合である。
【0107】
上記の2つの特定した場合において、好ましくは、比較は次の方式で行う:
PV ≧ DVか ? (答え=「はい」または「いいえ」)
はいの場合、「疾患再発がありそうだと示す」
いいえの場合、「疾患再発がなさそうだと示す」。
決定された予後指標PIは識別値DVと比較される。予後指標PIの場合と同様に、識別値は単独の値または値の集合であってもよく、PIと同じようにDVについて、同じ名称(下付き文字)が用いられる。
【0108】
PIおよびDVが値の集合である実施態様は、
PI1,2=F[CCEA; CTIMP-1]→PI1=CCEA, PI2=CTIMP-1
を含む。
この場合、したがってDVは、
DV1,2=[DV1; DV2]
であり、データベースから検索される。この場合、比較は、
PI1 ≧ DV1 および PI2 ≧ DV2 (答え=「はい」または「いいえ」)
はいの場合、「疾患再発がありそうだと示す」
いいえの場合、「疾患再発がなさそうだと示す」。
によって行われる。
【0109】
識別値は、共通してデータベースに保存されており、DVは、ステージIIおよびステージIIIの患者について入手可能である。さらに、好ましくは、保存されたDVは、特定の数学的演算子Fに対応する。DVは、特定のDVがステージIIまたはステージIIIの患者についてのものであるかどうかを示すタグと共に好ましく保存され、比較されたPIおよびDVとしてそれが対応する数学的演算子は、
‐PIは、特定の数学的演算子Fを用いて、ステージII患者について決定され、次いで、比較されるDVは、好ましくは、
‐ステージIIの患者および
‐PIを得るために用いられる特定の数学的演算子
についてであるか
‐PIは、特定の数学的演算子Fを用いてステージIIIの患者について決定され、次いで、比較されるDVは、好ましくは、
‐ステージIIIの患者および
‐PIを得るために用いられる特定の数学的演算子
についてであるか
という点において、互いに一致するのが好ましい。
【0110】
したがって、患者のある集合についてのDVは、上記で概説したような数学的演算子によって、例えばCTIMP-1およびCCEAの決定に基づいて計算する。これは、遡及研究により得られるデータに基づいて行われ、この研究では、それぞれ個々の患者の病気の結末がわかっており、これらの患者について術前に得られたCTIMP-1およびCCEA値を有している(以下の識別値についての記載を参照)。
【0111】
記憶手段と少なくとも組合せステップおよび検索ステップを行うのに適合されたCPUとを含むコンピュータを用いて、方法を行う。好ましくは、比較ステップもコンピュータによって行う。したがって、DVを保存するデータベースはコンピュータシステムに保存されて、CPUはDVにアクセスできる。
【0112】
サンプル分析方法
TIMP-1、CEAおよび少なくとも1つの追加パラメータの決定は、当該技術において公知の任意の適した方法を用いて行ってもよく、例えば蛋白質はELISA、RIA、免疫組織化学、ウェスタンブロッティング、質量スペクトル解析、フローサイトメトリ、抗体媒介プルダウンアッセイおよび抗体アレイを用いて決定してもよい。
【0113】
サンプル中のmRNAのようなRNAの決定に適した分析の他の方法は、PCRの手法、qRT-PCRのようなRT-PCRの手法およびRNA解析に適したマイクロアレイを含む。
【0114】
本発明によるある実施態様では、TIMP-1の決定は、ELISA、RIA、免疫組織化学、ウェスタンブロッティング、質量スペクトル解析、フローサイトメトリ、抗体媒介プルダウンアッセイからなる群より選択されるイムノアッセイの手法により行われる。
【0115】
本発明による第2の実施態様では、CEAの決定は、ELISA、RIA、免疫組織化学、ウェスタンブロッティング、質量スペクトル解析、フローサイトメトリ、抗体媒介プルダウンアッセイからなる群より選択されるイムノアッセイの手法により行われる。
【0116】
本発明による第3の実施態様では、TIMP-1濃度の測定は、組織学的手法、細胞学的手法、PCRの手法、qRT-PCRのようなRT-PCRの手法からなる群より選択される方法を用いて測定される。
【0117】
本発明による第4の実施態様では、CEA濃度の決定は、組織学的手法、細胞学的手法、PCRの手法、qRT-PCRのようなRT-PCRの手法およびCEA遺伝子異常、例えばCEA遺伝子欠損または増幅を検出するための方法からなる群より選択される方法を用いて測定される。
【0118】
問題の蛋白質またはRNAの検出に用いられる試薬は、標識、放射線標識、蛍光標識またはビオチン標識されていてもよい。問題の蛋白質を検出するために用いられる抗体は、放射線標識、発色団標識、蛍光体標識または酵素標識されていてもよい。
【0119】
サンプル(生体サンプル)
本発明による血液サンプルは、全血、血液血漿および血液血清を含む血液サンプルを指す。
【0120】
サンプル(生体サンプル)は、限定されないが、血漿、血清、尿、便および唾液のような体液サンプルも指す。
【0121】
本発明によるサンプル(生体サンプル)は、腫瘍組織および非悪性組織を含む腫瘍組織をさらに含む。
【0122】
識別値
識別値は、例えばいずれのCRC疾患再発またはCRCに関連する死までの時間についての情報のような、完全なフォローアップデータを有するCRC患者コホートにおけるパラメータを測定し、その後、初期の外科手術処置の5年間のフォローアップの間に疾患再発または疾患に関連する死を起こさなかったCRC患者と、CRCについて初期の治療の5年以内に疾患再発を起こすか、または疾患に関連する死に遭遇したかのいずれかの患者とを、最適に区別するバイオマーカー識別値を同定することにより決定される値である。問題のバイオマーカー識別値または共通のアルゴリズム(式A)も、パラメータ値と研究対象コホート中のCRC患者の既知臨床データとの間の関係の分析に基く予め規定された特異性または予め規定された感度に基づいて設定され得る。この方法で決定される識別値は、将来の個別試験の同じ実験設定について有効である。
【0123】
識別値は、遡及的に回収した患者からの物質、例えば結腸直腸癌から術前に得られ、凍結状態で保存された血漿サンプルから得られた情報に基づいて計算され得る。これらのサンプルは、患者の初期の治療の後の任意の時に解凍され、バイオマーカー(例えばTIMP-1およびCEA)含有量について分析され得る。これらの分析の結果は、その後、臨床情報、例えば疾患再発および死までの時間と比較され、それぞれの患者について保存され得る。いくつかの統計学的手法をここで用いて、識別値、すなわち疾患再発の可能性の低い患者と疾患再発の可能性の高い患者とを最もよく分離するバイオマーカー値を定義できる。
【0124】
識別値を規定したら、ここで、上記のような類似するが、独立した遡及的サンプル物質において、この値を試験できる。確認後、識別値を日常の患者管理に用いる準備が整う。識別値の同定は、値が同じではないかもしれないため、2つのステージ、すなわち、ステージIIおよびステージIIIのそれぞれについて行う。
【0125】
予後バイオマーカー(例えばTIMP-1およびCEA)の識別値の同定および確認のための上記の工程は、FDA承認のための現行のガイドラインに沿っており、いくつかの他の予後バイオマーカー研究に近年用いられている(Bogaertら)。
【0126】
ある特定の実験設定では、識別値として役立つ全TIMP-1の濃度閾値は、90%の特異性において、50〜160マイクログラム/Lの全TIMP-1の範囲にあることが見出された。他の実験設定および他のパラメータは、ここでの教示にしたがって決定され得る他の値をもたらす。
【0127】
本発明によるある実施態様では、TIMP-1識別値は、血漿TIMP-1濃度の中央値を指す。
【0128】
本発明による別の実施態様では、TIMP-1識別値は、最高のTIMP-1レベルの少なくとも35%、30%、25%、20%もしくは15%またはこれらに等しくなるように定義したカットポイントに基づく。
【0129】
同じアプローチを用いて、CEAについて識別値を決定する。つまり、CEA識別値は、最高のCEAレベルの少なくとも35%、30%、25%、20%もしくは15%またはこれらに等しくなるように定義したカットポイントに基づく。
【0130】
識別値は、性別、年齢、同時罹患率、他の臨床状態、総合的な健康状態のような入手可能な他のデータにしたがって、さらに調整されてもよい。他の適切な人口統計学的パラメータおよび予め特定したパーセント、例えば65%、60%、55%、50%、45%、40%以上低い(低リスク)か、または少なくとも35%、30%、25%、20%、15%、10%もしくは5%高い(高リスク)に患者を分けるという願望。さらに調整した識別値は、組み合わせた追加識別値を含む。
【0131】
実施例1は、予後インデックスデータを含む。すなわち、再発についての予後は実施例1で決定される。
【0132】
本発明の関係において、特異性は、本発明に記載された方法により正確に同定される低リスク患者の割合として定義される。本発明の関係において、感度は、記載された方法により正確に同定される高リスク患者の割合として定義される。
【0133】
疾患再発に遭遇しそうな個体を区別する識別値の決定において、当業者は特異性レベルを予め決定しなければならない。理想の診断試験は、100%の特異性を有し、すなわち再発する個体だけを検出し、したがって偽陽性の結果がなく、そして100%の感度を有し、すなわち再発するすべての個体を検出し、したがって偽陰性の結果がない試験である。しかしながら、生物学的多様性が原因で、実質的な数の偽陰性の結果を含まずに100%の感度を期待できる方法はない。
【0134】
したがって、本発明の態様は、ステージII(デュークスB/リンパ節転移陰性)およびステージIII(デュークスC/リンパ節転移陽性)のCRC患者を、異なる予後群に分ける方法に関する。術前に得られた血清または血漿中の組み合わせたCEAおよびTIMP-1レベルに基づく悪い予後プロファイルを有する患者は、疾患ステージに関係なく、ネオアジュバントまたはアジュバント全身性抗癌治療を提案される。組み合わせた血清または血漿CEAおよびTIMP-1レベルに基づく良い予後プロファイルを有するステージIIIの患者は、より好ましくない予後プロファイルを有するステージIIIの患者よりもより毒性の低いネオアジュバントまたはアジュバント治療を提案され得る。
【0135】
したがって、本発明は、ネオアジュバントおよび/またはアジュバント治療の後のバイオマーカー(例えばTIMP-1およびCEAならびに少なくとも1つの追加パラメータ)の決定に関し、それによって、あるネオアジュバントまたはアジュバント治療の効果についての情報が得られる。あるネオアジュバントおよび/またはアジュバント治療の効果の欠如を示す情報の場合、患者は、1回目の治療として施された抗癌治療様式と交差耐性パターンを示さない、抗癌治療様式を有する2回目のネオアジュバントおよび/またはアジュバント治療を提案される。ネオアジュバントまたはアジュバント治療の効果についてのこのような情報は、本発明にしたがって、疾病経過において1より多い時点(例えば第1および第2時点において)におけるバイオマーカーレベルを測定することにより得ることができ、第2時点は治療開始の数日または数か月後であってもよい。時点間のバイオマーカーレベルを比較する際、ある治療の治療効果の欠如についてのリスク評価を推定できる。
【0136】
本発明の方法によって、アジュバント治療を現在受けない高リスクステージIIのCRC患者を同定し、アジュバント治療を提案できる。同時に、該方法によって、より毒性の低いアジュバント治療を提案できるか、またはアジュバント治療を提案されない低リスクステージIIIのCRC患者を同定できる。したがって、ある態様において、本発明は、ステージIIのCRC患者の生存率を改善するための方法に関し、該方法は、CEAおよびTIMP-1の測定ならびに術前に回収した血液サンプル中の任意に少なくとも1つの追加パラメータと、その後、疾患再発に関する個々の患者についてのリスク評価を提供する予め規定されたアルゴリズムに、これらの値を入れることとを含む。治療は、患者が癌疾患から生存する可能性を増加させる目的で、細胞毒性化学治療および/または生物学的治療、例えばEGFr抗体、VEGF抗体、キナーゼインヒビターまたは免疫治療であり得る。
【0137】
本発明の第2の態様は、ステージIIIのCRC患者の生存可能性に影響せずにアジュバント治療の毒性を低減させる方法に関し、該方法は、術前に回収した血液サンプル中のCEAおよびTIMP-1の測定と、その後、疾患再発に関する個々の患者についてのリスク評価を提供する予め規定されたアルゴリズムに、これらの値を入れることとを含む。疾患再発または疾患に関連する死の可能性が低い患者には、より毒性の低いアジュバント治療が提案できるか、またはアジュバント治療が提案されないが、疾患再発の可能性が高い患者には、最も効果的な薬剤および利用可能な薬剤の組合せを用いるアジュバント全身性治療が提案される。
【0138】
別の実施態様では、本発明は、ネオアジュバントまたはアジュバント治療の効果を個々の患者において監視できる方法に関し、該方法は、ステージIIおよびステージIIIのCRC患者のアジュバント治療の終了後に得られた血液サンプル中のCEAおよびTIMP-1の測定を含む。CEAおよびTIMP-1の値は、アジュバント治療後の疾患再発または疾患に関連する死に関する個々の患者のリスク評価を提供する予め規定されたアルゴリズムに入れる。アジュバント治療後の疾患再発または疾患に関連する死の可能性が低い患者は、監視を提案され得る一方、アジュバント治療後の疾患再発または疾患に関連する死の可能性が高い患者は、最も効果的な薬剤(例えば、より攻撃性の高い薬剤)および利用可能な薬剤の組合せを用いる追加アジュバント全身性治療を提案される。
【0139】
キット
本発明は、本発明に記載の方法を行うためのキットをさらに提供する。
【0140】
したがって、本発明の態様は、胃腸の癌の患者が疾患再発に遭遇しそうかどうか判定するためのキットに関し、該キットは、
a)該患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定するための試薬と、
b)該患者の術前体液サンプル中のCEA濃度を測定するための試薬と、
c)該患者の術前体液サンプル中の1以上の追加腫瘍マーカー濃度を測定するための試薬と、
d)該患者の治療後体液中のTIMP-1とCEAと1以上の追加腫瘍マーカーの濃度を測定するための試薬と
を含む。
【0141】
ある実施態様では、キットは、TIMP-1、CEAまたは追加腫瘍マーカーに対する抗体を少なくとも含む。
本発明のある態様の関係において記載される実施態様および特徴は、本発明の他の態様にもあてはまることに注意されたい。
本出願に引用されるすべての特許文献および非特許文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0142】
本発明は、これから以下の非限定的な図面および実施例においてさらに詳細に記載される。
【0143】
図面の説明
図1
結腸直腸癌(CRC)のステージIIおよびIIIの集団。
この図は、ステージIIのCRC患者集団のなかで、これらの患者の約15%が術後5年間で疾患再発に遭遇することが知られているが、どの患者も日常的にアジュバント全身性治療を受けないことを表す。ステージIIIのCRC患者の集団のうち、すべてのステージIIIのCRC患者がアジュバント全身性治療で治療されるものの、約30%が最初の外科手術処置により治癒される。図は、本発明が、アジュバント全身性抗癌治療を提案すべきおよびすべきでないステージIIおよびIIIの予後群の同定を可能にすることを表す。
【0144】
図2
TIMP-1の関数としての多変量モデル(式A)に基づくハザード比。
多変量モデルに基づくハザード比は、5、20および50 ng/mlに等しいCEAレベルについてTIMP-1の関数として示される。ベースラインのTIMP-1レベルは80 ng/ml、CEAは2 ng/mlに設定される。
【0145】
図3
デュークスB患者の無病生存率についてのKaplan-Meier推定値。
Kaplan-Meier推定値を、CC(1および2)およびRC(3および4)患者について示す。多変量結果に基づくインデックスの中央値レベルはそれぞれ、CCおよびRC患者を二分するために用いられた。「1」は中央値未満、「2」は中央値を超えるインデックスレベルのCC患者を示す。同様に、「3」は、RC患者についての中央値未満、「4」は中央値を超えるレベルを示す。各層の事象数は軸の左下に示され、開始、24か月、48か月および72か月におけるリスクがある者の数も軸の下に示される。
【0146】
図4
デュークスC患者の無病生存率についてのKaplan-Meier推定値。
Kaplan-Meier推定値を、CC(1および2)およびRC(3および4)患者について示す。多変量結果に基づくインデックスの中央値レベルはそれぞれ、CCおよびRC患者を二分するために用いられた。「1」は中央値未満、「2」は中央値を超えるインデックスレベルのCC患者を示す。同様に、「3」は、RC患者についての中央値未満、「4」は中央値を超えるレベルを示す。各層の事象数は軸の左下に示され、開始、24か月、48か月および72か月におけるリスクがある者の数も軸の下に示される。
【0147】
図5および6
ある患者が従う治療計画を維持する場合に、問題の患者(図5において患者はステージIIであり、図6において患者はステージIIIである)が疾患再発に遭遇しそうかどうかについて示すための、本発明の好ましい実施態様において行われる方法の一般的な好ましいステップが開示される。
【0148】

表1
性別、腫瘍の位置およびデュークスステージに関する血漿TIMP-1および血清CEAの中央値および範囲レベル。各患者カテゴリについて、患者数が示される。
【表1】

【0149】
表2
無病生存者の多変量コックス解析。
【表2】

【実施例】
【0150】
実施例1
この実施例は、結腸直腸癌患者の血漿TIMP-1と血清CEAとの組合せの予後の値を試験するために行われた臨床研究について記述する。
【0151】
背景
現在の推定は、欧州および米国において、1年間に約600,000名の個体が結腸直腸癌(CRC)と診断され、260,000名がCRCで死亡することを示す。初期の診断において、80%の患者は意図された根治的切除を行う一方、残りの20%は対症療法を提案されるだけである。しかしながら、根治的切除を受けた患者のうち、約40〜45%は次の5年以内に疾患再発を起こし、50%のみの長期全生存率をもたらす。
【0152】
根治的切除を受けた患者におけるステージ依存性の5年間の全生存率は、ステージI:90〜95%、ステージII:70〜75%、ステージIII:35〜40%であり、これは臨床的、組織学的および生化学的証拠がないにも拘らず、著しい数の患者において、外科手術前または外科手術中に疾患が広がることを示す。ステージIIIの疾患患者へのアジュバント治療の効果はよく確立されているが、ステージIおよびステージIIの疾患における恩恵が限られているので、これらの患者はアジュバント治療を日常的には提案されない(4〜6)。
【0153】
しかしながら、上記のとおり、いまだ約25%〜30%のステージII疾患患者に疾患再発のリスクがあり、おそらく、このような患者は、何らかの形態のアジュバント治療の恩恵を受けるだろう。難題は、どのようにしてこれらの「リスクがある」患者を同定し、彼らにアジュバント治療を提案し、同時に、初期の外科手術により既に治療された70%〜75%の患者への不要なアジュバント治療の提案を回避するかである。ステージIIのCRC患者を化学治療のために選択することついての現在のリスク因子は、切除した検体中の低いリンパ節数、T4ステージ(TNM分類)、大腸穿孔および乏しい組織分化段階である。
【0154】
上記のとおり、かなりの数のステージIIIの患者がアジュバント治療の恩恵を被っていないようであり、難題は、ステージIIの疾患におけるそれとは正反対のようであり、すなわち低い再発リスクを有する、したがってアジュバント治療を提案すべきでないステージIIIの患者を同定することのようである。
【0155】
血清CEAは、根治的切除を受けたCRC患者における予後バイオマーカーとして、個々の研究者、ASCOおよびEGTM(European Group on Tumour Markers)によって推奨されている。この推奨は、まだ、再手術もしくは対症療法様式の恩恵を被り得る患者を同定することに限定されているか、またはCEAは、外科手術により切除できる間のある時点における肝臓への転移を検出する目的で、患者を術後に監視する目的で用いることができる。
【0156】
CEAは、CRCにおける唯一の推奨可溶性マーカーであるので、CEAに加え得る新しい血清学的バイオマーカーが同定できるならば好ましい。活性型マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)、特にMMP-2およびMMP-9の活性を阻害するメタロプロテイナーゼ1組織インヒビター(TIMP-1)は、このようなマーカーの1つであり得る。この阻害に基づいて、TIMP-1蛋白質の高い腫瘍レベルが患者の良い結果と関連があると考えられている。
【0157】
しかしながら、かなりの数の研究において、高い血漿TIMP-1レベルが、癌疾患再発までの時間の短さおよび癌患者の生存の短さと関連があることが示されている。悪い予後と高いTIMP-1レベルとを繋げるメカニズムは、TIMP-1がMMPの阻害以外の作用、例えば細胞成長促進、血管形成の制御およびアポトーシスの阻害を有するという事実に関連し得る。
【0158】
本研究の目的は、原発CRCの意図された根治的切除を受けた患者における予後インデックスとしての血清CEAと血漿TIMP-1レベルとを組み合わせることの価値を決定することであった。このような予後インデックスは、患者を異なったリスク群に分類することに有用であり得、これによって異なったアジュバント治療が可能となった。
本発明者らは、適用できる場合に、研究報告についてガイドライン所説にしたがった。
【0159】
患者および方法
患者
患者コホート(N=422)は、生検により確認したか、またはバリウム浣腸により疑われた原発結腸直腸腺癌に基づく大腸待機手術が予定されていた。すべての患者は、1991年4月から1993年8月までに参加し、ランダム化されて、二重盲検で臨床対照を用いる多施設(20のデンマークの外科)研究において、ヒスタミン2受容体拮抗薬であるラニチジンまたはプラシーボを受けた。研究は、ヘルシンキII宣言に従って行われ、国の中央倫理委員会による承認を受けた。この承認は、その後のバイオマーカー分析のための血漿および血清サンプルの回収も含んだ。
【0160】
すべての患者は、感染症の臨床的徴候または症状がなく、切除前の2週間以内に全身性ステロイド、抗生物質または抗ウイルス剤で処置された者はいなかった。HIV感染または先の癌のような深刻な病気を併発する患者は、本研究に含まれなかった。すべての患者の結腸または直腸の腺癌は、組織学的に確認された。診断およびCRCのステージは、切除された一次組織から、および関連のリンパ節または存在する場合は遠位の生検から、病理学的に設定した。疾患ステージは、デュークスステージ分類に従って分類した。
【0161】
本研究は、CRC患者への放射線および化学治療が、デンマークにおいてCRC患者に対する標準的な提案の一部でないときに行った。したがって、外科手術の前または後のどちらにおいても、このような治療様式を受けた患者はいなかった。患者はランダム化され、5年までの間1日2回ラニチジンまたはプラシーボを受けた。元の研究では、全長期生存に対してラニチジンの効果はなかった。生存の恩恵は、限られた患者の部分群においてのみ見られた。
【0162】
すべての患者は、外来患者用診療所で追跡され、切除から1か月後の最初の訪問では、手術方法、疾患ステージおよび位置を含む、すべての術中データならびに術後の合併症を症例報告書(CRF)に記録した。その後の訪問において、5年までの3か月毎に、根治的切除を受けた患者での再発または転移を同定するために、患者は、定期的に血液検査および臨床試験を受けた。内視鏡検査、USおよび/またはバリウム浣腸は、適切であれば試験方法に含まれた。
【0163】
血液サンプリング
外科手術前およびラニチジン/プラシーボの最初の注入前に、すべての患者の前腕前部静脈から、血小板の活性化を妨げるように、最小鬱血で血液を回収した。血液は、SOPに従って処理し、血清および血漿は解析まで‐80℃で凍結保存した。対応する血清および血漿サンプルは、589名の患者から入手可能であった。
【0164】
TIMP-1およびCEA
すべての血液サンプルを回収したら、血清中のCEA蛋白質レベルを、固相化学発光EIAキット(Immulite CEA; Diagnostic Products Corporation, Los Angeles, CA)を用いて測定した。アッセイは、0.2 ng/mlの検出限界、約100%の回収率ならびにそれぞれ5%および6%のアッセイ内およびアッセイ間のCVを有する。TIMP-1蛋白質レベルは、低いアッセイ内およびアッセイ間のCVを示す自前の厳密に確認された動態速度ELISAを用いて、EDTA血漿中で測定した。血漿TIMP-1の測定は、分析前、分析中および分析後に十分に確認された。
【0165】
凝固中の細胞崩壊ならびに血小板および顆粒球顆粒からのTIMP-1放出のため、TIMP-1はEDTA血漿中で決定することが推奨される。ELISAは、全TIMP-1(遊離型およびMMPとの複合体型)を決定する。簡単には、親和性純化ヒツジポリクローナル抗TIMP-1抗血清を、96ウェルマイクロタイタープレート中で捕捉抗体として用いた。
【0166】
検出にはマウスモノクローナル抗TIMP-1 IgG1(MAC15)を用い、動態速度アッセイを可能にする二次抗体は、ウサギ抗マウスイムノグロブリン/アルカリホスファターゼ複合体(Dako, Glostrup, Denmark)であった。速度の測定は、Ceres 900プレートリーダー(Bio-Tek Instruments, Winooski, VT)内で、1時間にわたって自動的に収集した。4つのパラメータにフィットさせた標準曲線を、Kineticalc IIソフトウェア(Bio-Tek)を用いて得て、これから各サンプルの全TIMP-1濃度を計算した。本研究では、アッセイ内CVは5.3%であり、アッセイ間CVは7.4%であった。全サンプルについて2回決定し、平均値を次なる計算に用いた。
【0167】
統計
順位統計を用いて、相関係数を計算し、位置についての仮説を試験した。独立性検定は、カイ二乗検定を用いて行った。TIMP-1およびCEAレベルを対数に変換(log2)し、無病生存の一変量および多変量解析のための連続変数として扱った。臨床学的共変量(デュークスステージのステージ、位置、年齢および性別)を、指示変数を用いて評点した。Kaplan-Meier法は、生存可能性を評価するために用い、対数順位検定は、階層の相等性を試験するために用いた。コックス比例ハザードモデルは、多変量解析におけるDFSとともに、一変量解析について適用した。DFSは、外科手術時から局所的再発または遠位転移または癌による死の診断時までと定義される。
【0168】
バイオマーカーと臨床的共変量との間の相互作用(共分散)についての試験も、この解析に含んだ。比例ハザードおよび連続共変量の線形性の仮定は、残りのものを用いて評価した。予後インデックスは、多変量解析からの回帰係数に基づいて構築し、ベースライン共変量について調節した。有意レベルは、5%に設定した。SAS(登録商標)ソフトウェアパッケージ(9.1版;SAS Institute, Cary, NC)は、患者データの管理のためおよびすべての統計学的解析を行うために用いた。
【0169】
結果
臨床研究には、血清および血漿のサンプルが入手可能な589名の患者が参加し、そのうち167名はステージIVのCRCであった。ステージI〜IIIの疾患患者の最終的な数は、したがって422名であった。
【0170】
診断は、本研究のコホートを含むデュークスステージA:54名の患者;デュークスステージB:205名の患者;デュークスステージC:163名の患者であった。患者の235名が結腸癌、187名が直腸癌と診断され、166名が女性、256名が男性であった。年齢中位数は、69歳(33歳〜91歳の範囲)であった。フォローアップ期間は7.9年(5.5年〜9.1年の範囲)であった。事象は186名の患者において記録され;75名が局所再発を起こし、75名が遠位転移を起こし、28名が局所再発および遠位転移の両方を起こした。36患者が、再発が登録されずに癌で死亡した。
【0171】
血清CEAレベルの中央値は、3.0(0.3〜1103.0の範囲)ng/mlであり;283名の患者(67.1%)が5 ng/ml以下のCEAレベルを有し、90名の患者(21.3%)が5 ng/mlより高く20 ng/ml以下のCEAレベルを有し、49名の患者(11.6%)が20 ng/mlより高いCEAレベルを有した。
【0172】
血漿TIMP-1レベルの中央値は131.5(53.7〜549.8の範囲、第1四分位数105.6 ng/ml、第3四分位数173.5 ng/ml)ng/mlであった。血漿TIMP-1レベルは年齢に応じて増加した:rs=0.436;p<0.0001が、血清CEAレベルは年齢とは関係がなかった。血清CEAと血漿TIMP-1との間の相関は:rs=0.20;p<0.0001であった。性別、疾患ステージおよび位置に関するマーカーのレベルを、表1に示す。
【0173】
血清CEA、血漿TIMP-1、疾患ステージ、年齢、性別および疾患の位置を含むDFSの多変量コックス解析は、連続変数としての血清CEAおよび血漿TIMP-1の両方が、DFSについて独立した予測値であることを示した:血清CEA HR:1.1;95%CI:1.0〜1.2;p=0.0053および血漿TIMP-1 HR:1.5;95%CI:1.1〜2.0;p=0.0071。高いレベルのこれらのマーカーは、短いDFSに関連した。
【0174】
さらに、疾患ステージおよび直腸内での位置は、独立して再発リスクに関連したが、年齢および性別はそうでなかった。多変量解析の結果を、表2に示す。ラニチジンでの治療は、多変量モデル(p=0.60)において有意でなく、CEAおよびTIMP-1との有意な相互作用を証明することもできなかった(データは示さず)。
【0175】
臨床学的ベースライン変量について調節された血清CEAと血漿TIMP-1との間の関係についてのインデックスを設定し:0.11×Log2(CEA)+0.41×Log2(TIMP-1)として定義した。
【0176】
図2は、X軸に可変TIMP-1を示し、CEAをそれぞれ5、20および50 ng/mlに設定した、再発率についてのHRを示す。ハザード比の計算についてのベースライン量は、TIMP-1について80 ng/mlおよびCEAについて2ng/mlに設定した。例として、このインデックスは、TIMP-1レベルが倍加する場合に、あるCEAレベルについてのHRが51%増加することを示す。
【0177】
このインデックスに基づいて、CCおよびRCに分類されたデュークスB患者について評価されたDFS確率を図3に示す。それぞれのインデックスの中央値レベルを用いて、患者をCCおよびRCに二分した。図3からわかるとおり、中央値未満のマーカーインデックスを有するCC患者についての事象(DFS)は、切除から24か月後でも非常に少ない患者においてのみ登録された一方、この数字は中央値より高いマーカーインデックスを有する患者ではより高い。低いインデックスおよび高いインデックスを有するRC患者間の違いは、それほど明白でない。デュークスC患者についての類似の図が図4に示される。
【0178】
考察
本研究の結果は、術前の血清CEAレベルおよび血漿TIMP-1レベルの両方が、原発CRCの根治的切除を受けた患者のDFSについての重要な、独立した情報を生じるを示す。両蛋白質について、高いレベルは、患者の悪い結果に関連していた。多変量解析におけるこれら2つのマーカーの独立性は、マーカー中に両バイオマーカーを含める場合に、ステージおよび位置に依存しない疾患再発または遠位転移の危険がある患者の同定が増加することを示した。特に、これはステージIIのCC患者について著しい一方、ステージIIのRC患者ではインデックスは限られた値を有した(図3)。しかしながら、インデックスは、再発リスクが低いかまたは高いステージIIIのCC患者と再発リスクが低いかまたは高いステージIIIのRC患者とを区別することも可能であった(図4)。
【0179】
本研究は、ネオアジュバントまたはアジュバント化学および/もしくは放射線治療を受けていない患者コホートを含んでいた。患者はランダム化され、5年までの間1日2回ラニチジンまたはプラシーボを受けた。元の研究では、全体的な長期生存に対するラニチジンの効果はなかった。限定された患者の部分群だけでわずかな生存の恩恵が見られたが、本研究からの結果に対してラニチジンの効果はなかった。
【0180】
原発CRCへのCEAの使用について、現在の推奨は、繰り返しCEA決定により追跡されるべき患者の同定に限られ、疾患再発の場合の早期の外科的または医療的介入を可能にする。全患者コホートからの以前の結果は、術前CEAがいずれかの予後情報を有することを示さなかった。これは、デュークスステージD患者がこれらの計算に含まれていたという事実によって説明され得る。本研究において、CEA決定がデュークスステージA、BおよびC患者に限定されるということは、CEAが3つすべてのステージを含むステージ非依存的予後情報を有することを示した。
【0181】
以前の報告は、術前の血漿TIMP-1レベルがCRC患者におけるステージ非依存的予後情報を有する;高いTIMP-1レベルがステージ非依存的様式で悪い予後に関連することを示した。これらの結果は、その後のいくつかの研究で確認されている。CEAおよびTIMP-1の共通の生物学的有意性について証拠が欠如しているため、本発明者らは、術前血漿TIMP-1を術前血清CEAに加えることが、再発の危険のある患者の同定を改善するという仮説を挙げた。したがって、CEAおよびTIMP-1は、独立の予後情報を生じ、この情報は、ステージ非依存的でもあるだろう。
【0182】
本研究は、これら2つの蛋白質の組合せが、各々の蛋白質を用いて得ることのできる予後分類を改善したことが示されたことで、我々の仮説を支持する。また、この情報はステージ非依存的である。本患者コホートの利点は、どの患者もアジュバント化学および/または放射線治療を受けていなかったことである。これにより、DFSの記録は、付随するアジュバント治療によるバイアスがかからない。
【0183】
本研究において、直腸の疾患の位置は、非常に悪い独立した予後を有する。RC患者は、直腸のTME(全直腸間膜切除、31)アプローチの導入前において手術を受け、彼らは、術前および/または術後に放射線治療を受けなかった。より最近の結果は、CCおよびRC患者が類似のDFSを有し得るが、CC患者のほうがまだRCよりも良いOSを有することを示す。
【0184】
結論として、術前血清CEAおよび血漿TIMP-1に基づく予後インデックスは、アジュバント治療を提案されるべきステージIIの疾患患者の将来の同定に役立つ。さらに、このインデックスは、例えばステージIIIのCRC患者のうち、より攻撃性の低いまたは高い全身性治療のような、治療の区別を導入することに用いられる。しかしながら、今回の結果は、正しいアジュバント治療が適切な患者に提案される独立した患者コホートについて確認されなければならない。実施例2を参照。
【0185】
実施例2
この実施例は、それぞれデュークスステージB結腸直腸癌患者およびデュークスステージC結腸直腸癌患者における、予後インデックスとしての、血漿TIMP-1および血清CEAの組合せの予測的有効性について記述する。
【0186】
背景
実施例1は、結腸直腸癌の外科手術を予定する患者から術前に得られた血液サンプルを分析する場合、デュークスステージB患者およびデュークスステージC患者の両方において、血漿TIMP-1および血清CEAの同時測定が、統計学的に非常に有意な予後情報を生じることを示す(実施例1)。TIMP-1およびCEAの組合せ測定により得られた予後分類は、これらの蛋白質の1つだけを決定することにより得られるものよりも強力である。ここから本発明者らは、術前に得られた血液サンプルのTIMP-1およびCEAの組合せ測定が、これらの蛋白質の1つだけを測定するよりも良い結腸直腸癌患者の予後分類を提供するという仮説を試験するための確認研究に着手している。
【0187】
患者および方法
結腸または直腸癌の外科手術を行う337名の患者を、本研究において、予測的および連続的に含めた。含まれる基準は:直腸または結腸腺癌を組織学的に確認されていること;術前に回収した血液サンプルが入手可能であること;腫瘍マーカーの研究について血液サンプルを使用することについてのインフォームドコンセントに署名されていることであった。
【0188】
血漿および血清サンプルの入手可能性に基づき、本研究に含まれる最終的な患者数は321名であり、215名の結腸癌および106名の直腸癌、結腸癌患者で再発したのが26名および直腸癌患者で再発したのが29名であった。ステージIIの結腸癌が101名およびステージIIの直腸癌が32名であり、再発はそれぞれ8名および7名であった。ステージIIIの患者群において、結腸癌は57名および直腸癌は35名であり、再発はそれぞれ17名および21名であった。外科手術時点における患者の年齢中位数は72歳(35〜94歳の範囲)であった。観察期間は5.5年(3.9〜7.4年の範囲)であった。
各々の患者について、腫瘍段階、リンパまたは血管侵潤およびアジュバント治療に関する情報が入手可能であった。
【0189】
血液サンプリング
すべての血液サンプルは術前に回収され、直腸癌患者の場合も如何なる放射線治療よりも前であった。血液サンプルは即座にEDTA血漿および血清について処理された。TIMP-1およびCEA含量の解析まで、サンプルを-80℃で貯蔵した。
【0190】
TIMP-1およびCEA ELISA
すべてのアッセイは、臨床病理学的データを知らずに行った。十分に確認したELISAを、血漿中のTIMP-1レベルを測定するために用いた(Holten-Andersenら、Br J Cancer 1999)。簡単には、親和性純化ヒツジポリクローナル抗TIMP-1抗体を、検体中のTIMP-1を捕捉するために用いた。マウスモノクローナル抗TIMP-1 IgG1であるMAC15をTIMP-1検出のために用い、ウサギ抗マウスイムノグロブリン/アルカリホスファターゼ複合体(No. D0314; DAKO, Denmark)を動態速度測定に用いた。速度測定は、1時間にわたって10分毎に収集した。KinetiCalc IIソフトウェア(Bio-Tek Instruments, Winooski, VT)を検体中のTIMP-1レベルを決定するために用いた。MAC15抗体は遊離型およびMMPに結合するTIMP-1の両方を認識し、したがって、アッセイは、全TIMP-1アッセイとして考えることができる。アッセイを行う前に、すべての検体を37℃で解凍した。アッセイ内およびアッセイ間の変動は10%未満であった。
CEA分析は、供給業者から提供される説明書に従って行った。CEAアッセイは、IBL、Hamburg、Germenyから得た。
【0191】
結果
分析されたすべての患者サンプルは、アッセイの検出限界より高いTIMP-1レベルを含んでいた。根治的切除を受けたすべての患者(ステージI〜III)の血漿TIMP-1の中央値は:153.52 mg/ml(範囲:57.43〜588.10 mg/ml)であった;ステージIIおよびステージIIIの患者について別々にTIMP-1値を分析する場合、ステージIIの結腸癌患者は155.31 ng/ml(範囲68.35〜530 ng/ml)の血漿TIMP-1の中央値レベルを有していた。対応する数のステージIIの直腸癌患者は(中央値:158.88;範囲76.28〜344.63)であった。ステージIIIの結腸癌患者において、血漿TIMP-1の中央値レベルは157.54(範囲:72.49〜370)であり、ステージIIIの直腸癌患者において149.22(範囲57.43〜588.10)であった。したがって、ステージIIの患者の血漿TIMP-1レベルは、ステージIIIの患者の血漿TIMP-1レベルまたは全患者コホートで見出されるレベルから有意に異なっていなかった(p>0.05)。同様に、結腸および直腸癌患者の間で血漿TIMP-1レベルに有意な差は見られなかった。
【0192】
TIMP-1(logeTIMP-1)を連続変数として扱う場合、血漿TIMP-1レベルは全患者集団の全生存者と有意に関係した。ステージIIおよびステージIIIの患者コホート(コックス比例ハザードモデル、P<0.0001)だけを含めると、推定ハザード比は3.12(95%CI、1.87〜5.19)であり、logeスケールで1単位異なる患者リスクの増加を示した。loge TIMP-1レベルおよび無病生存の間の関係についての対応する数値は:コックス比例ハザードモデル、P<0.0009、推定ハザード比2.17(95%CI、1.37〜3.44)であり、logeスケールで1単位異なる患者についてのハザードの増加を示した。
【0193】
両方の臨床的エンドポイントについて、より高い血漿TIMP-1値を有する患者はより短い生存およびより短い無病生存を有していた。患者を血漿TIMP-1三分位値に分類する場合の、ステージIIおよびステージIIIの患者コホートの全生存についてのKaplan-Meier曲線を構築した。傾きの試験は、3層間の全生存の有意な差(p<0.0004)を示した。したがって、この分析により、血漿TIMP-1レベルの増加は、継続的に増加する死のリスクと関連があることを確認した。
【0194】
24か月における生存可能性は、第1層未満のTIMP-1レベルの患者では80%を超え、第3層を超えるTIMP-1レベルの患者では約60%であった。その後全患者コホートの無病生存についてのKaplan-Meier曲線を構築した。再度、血漿TIMP-1三分位値にしたがって患者を分類した。傾きの試験は、最低三分位値未満の血漿TIMP-1レベルの患者と比べて、高い血漿TIMP-1患者においてほぼ2倍多い事象を有する3つの患者層における無病生存という統計学的に有意な差(p<0.004)を明らかにした。
【0195】
全生存および無病生存のデータの多変量コックス回帰分析を、年齢、性別、腫瘍の位置、疾患ステージ、分化段階、リンパまたは血管浸潤、アジュバント治療およびlogeTIMP-1値を含めて行った。312名の患者(116名が死亡)は全生存の分析に望ましく、268名の患者(100名が再発)は無病生存の分析に望ましかった。年齢、疾患ステージおよびlogeTIMP-1値だけが、全生存および無病生存についての多変量解析モデルに維持された。高い血漿TIMP-1レベルは、より短い全生存HR 2.35(95%CI。1.51〜3.66;p=0.0006)および無病生存HR 1.86(95%CI:1.12〜3.8;p=0.017)と独立して関連があった。
【0196】
CEA値をモデルに加え、CEAが、疾患段階およびTIMP-1に依存しない全生存および無病生存の独立した予測値であることが見出された。したがって、各疾患ステージについて、血漿TIMP-1値および血清CEA値が予後の影響を加えることができ、このことが血清CEAの決定だけによってまたは血漿TIMP-1の測定だけによって得ることのできる分類よりも優れたステージIIの患者およびステージIIIの患者の予後における分類に導く。
【0197】
考察
この予測的有効性の研究は、ステージIIおよびステージIIIの結腸直腸癌患者における血漿TIMP-1レベルおよび血清CEAレベルと無病生存および全生存との間の非常に有意な関係性を証明する以前の結果を追認した。したがって、本研究は、血漿TIMP-1および血清CEAの測定の組合せに、根治的切除を受けたCRC患者における予後インデックスとしての臨床的使用のための、次なるレベルの証拠をもたらす。
【0198】
実施例3
CRCは高齢者集団に主に見られる病気である。したがって、ステージIIのCRC患者における疾患再発の高いリスクの臨床的重要性は、個々の患者の年齢、同時罹患率および全身状態にも依存する。例えば、良好な全身状態および再発について2より大きいHRを有する60歳のステージIIの疾患患者は、アジュバント治療を提案される可能性が最も高いであろうが、深刻な同時罹患率および悪い全身状態を有する72歳の患者における同様のHRは、アジュバント治療を受けないであろう。したがって、個々のCRC患者についてリスク評価の計算に関連し、そして患者の追加治療を検討する場合、任意の他のパラメータも考慮することがより臨床的に適切であろう。このようなリスク評価は、術前に回収した血漿サンプル中の血漿TIMP-1および血清CEAの測定によって得ることができる。
【0199】
参考文献


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)胃腸の癌の患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定するステップと、
b)前記患者の術前体液サンプル中のCEA濃度を測定するステップと、
c)TIMP-1濃度とCEA濃度とを組み合わせて、組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータを得るステップと、
d)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであると示すステップと、
e)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが前記の予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すステップと
を含む、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法。
【請求項2】
a)胃腸の癌の患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定するステップと、
b)前記患者の術前体液サンプル中のCEA濃度を測定するステップと、
c)前記患者において術前に少なくとも1つの追加パラメータを測定するステップと、
d)TIMP-1濃度とCEA濃度と少なくとも1つの追加パラメータとを組み合わせて、組み合わせた追加パラメータを得るステップと、
e)組み合わせた追加パラメータが予め規定された組み合わせた追加識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであると示すステップと、
f)組み合わせた追加パラメータが前記の予め規定された組み合わせた追加識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すステップと
を含む、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法。
【請求項3】
a)第1時点において、胃腸の癌の患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定するステップと、
b)第1時点において、前記患者の術前血漿サンプル中のCEA全濃度を測定するステップと、
b)TIMP-1濃度とCEA濃度とを組み合わせて、組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータを得るステップと、
c)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであると示すステップと、
d)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すステップと、
e)個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうである場合に、第2時点において、患者の術後血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定するステップと、
f)第2時点において、患者の術後血漿サンプル中のCEA全濃度を測定するステップと、
g)TIMP-1濃度とCEA濃度とを組み合わせて、組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータを得るステップと、
h)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値以上である場合に、患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうであると示すステップと、
i)組み合わせたTIMP-1/CEAパラメータが予め規定された組み合わせたTIMP-1/CEA識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すステップと
を含む、ネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療の後に、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法。
【請求項4】
a)第1時点において、胃腸の癌の患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定するステップと、
b)第1時点において、前記患者の術前体液サンプル中のCEA濃度を測定するステップと、
c)第1時点において、前記患者において術前に少なくとも1つの追加パラメータを測定するステップと、
d)TIMP-1濃度とCEA濃度と少なくとも1つの追加パラメータとを組み合わせて、組み合わせた追加パラメータを得るステップと、
e)組み合わせた追加パラメータが予め規定された組み合わせた追加識別値以上である場合に、患者が疾患再発に遭遇しそうであると示すステップと、
f)組み合わせた追加パラメータが予め規定された組み合わせた追加識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すステップと、
g)個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうな場合に、第2時点において、患者の術後血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定するステップと、
h)第2時点において、患者の術後体液サンプル中のCEA濃度を測定するステップと、
i)第2時点において、患者において術後に少なくとも1つの追加パラメータを測定するステップと、
j)TIMP-1濃度とCEA濃度と少なくとも1つの追加パラメータとを組み合わせて、組み合わせた追加パラメータを得るステップと、
k)組み合わせた追加パラメータが予め規定された組み合わせた追加識別値以上である場合に、患者が疾患再発に遭遇しそうであると示すステップと、
l)組み合わせた追加パラメータが予め規定された組み合わせた追加識別値未満である場合に、個体が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうにないと示すステップと
を含む、ネオアジュバントまたはアジュバント抗癌治療の後に、胃腸の癌の患者が疾患再発または疾患に関連する死に遭遇しそうかどうか判定する方法。
【請求項5】
少なくとも1つの追加パラメータが、年齢、性別、総合的臨床状態、腫瘍の位置、疾患ステージ、検証されたリンパ節の数、識別段階、リンパ管、血管浸潤、神経浸潤、同時罹患率、アジュバント治療養生法および患者からの体液サンプル中におけるTIMP-1またはCEAのいずれの形態とも異なる追加腫瘍マーカーからなる群より選択される請求項2または4に記載の方法。
【請求項6】
追加腫瘍マーカーが、血清または血漿可溶性suPAR(その異型を含む)、血清または血漿CA19.9、血清または血漿CA242、非複合体型のTIMP-1、特異的MMP とTIMP-1との複合体、CEAの異型、可溶性CD63、YKL-40、p66 Shc、MMP、ADAMおよびカリクレイン類ならびにその組合せからなる群より選択される請求項6に記載の方法。
【請求項7】
組合せが、ロジスティック回帰分析により行われる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
TIMP-1濃度が、遊離型TIMP-1濃度、複合体型TIMP-1濃度およびTIMP-1全濃度からなる群より選択される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
TIMP-1全濃度が、遊離型TIMP-1および複合体型TIMP-1濃度である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
TIMP-1濃度が、血漿または腫瘍サンプルのTIMP-1 mRNA濃度および血漿または腫瘍サンプルのTIMP-1蛋白質濃度からなる群より選択される請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
TIMP-1蛋白質濃度が、血漿サンプルのTIMP-1蛋白質濃度である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
CEA濃度が、体液サンプルまたは腫瘍組織のCEA mRNA濃度および体液サンプルまたは腫瘍組織のCEA蛋白質濃度からなる群より選択される請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
CEA濃度が、体液サンプルの血清CEA濃度、体液サンプルの血漿CEA濃度および体液サンプルまたは腫瘍組織サンプルの血漿および血清中のCEA濃度からなる群より選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
TIMP-1濃度およびCEA濃度が、同一のサンプル中で測定される請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
胃腸の癌が、食道癌、胃癌、小腸癌、胆嚢癌、肝臓癌、大腸癌、直腸癌および膵臓癌からなる群より選択される請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
胃腸の癌が、結腸直腸癌である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
結腸直腸癌が、ステージIIの結腸直腸癌およびステージIIIの結腸直腸癌からなる群より選択される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
胃腸の癌が、大腸腺癌および直腸腺癌からなる群より選択される腺癌である請求項16に記載の方法。
【請求項19】
抗癌治療が、ネオアジュバント治療、アジュバント治療および転移性疾患治療からなる群より選択される請求項3または4に記載の方法。
【請求項20】
アジュバント治療が、全身性抗癌治療である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
TIMP-1および/またはCEAの測定が、ELISA、RIA、免疫組織化学、ウェスタンブロッティング、質量スペクトル解析、フローサイトメトリ、抗体媒介プルダウンアッセイおよび遺伝子異常検定からなる群より選択されるイムノアッセイの手段により行われる請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
TIMP-1および/またはCEA濃度が、組織学的手法、細胞学的手法、PCRの手法、qRT-PCRなどのRT-PCRの手法からなる群より選択される手法を用いて測定される請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
体液サンプルが、腫瘍組織、非悪性組織を含む腫瘍組織、血漿、血清、尿、便および唾液からなる群より選択される請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
a)胃腸の癌の患者の術前血漿サンプル中のTIMP-1全濃度を測定するための試薬と、
b)患者の術前体液サンプル中のCEA濃度を測定するための試薬と、
c)患者の術前体液サンプル中において、請求項6に記載の追加腫瘍マーカーの術前濃度を測定するための試薬と
を含む、胃腸の癌の患者が疾患再発に遭遇しそうかどうか判定するためのキット。
【請求項25】
前記キットが、TIMP-1、CEAまたは追加腫瘍マーカーに対する少なくとも1つの抗体を含む請求項24に記載のキット。
【請求項26】
術後の胃腸の癌の患者において胃腸の癌の再発の傾向を同定せよとの依頼を受領するステップと;
術後の胃腸の癌の患者から得られた生体サンプルを受領するステップと;
前記選択された患者から得られた生体サンプルをTIMP-1に対する第1抗体と接触させるステップと;
前記選択された患者から得られた生体サンプルをCEAに対する第2抗体と接触させるステップと;
第1抗体の結合量を表す第1の値を測定するステップと;
第2抗体の結合量を表す第2の値を測定するステップと;
0.11×Log2(CEA)+0.41×Log2(TIMP-1)
で表されるアルゴリズムを用いて、第1の値および第2の値を予後インデックスに変換するように設定されたコンピュータに第1の値および第2の値を入力するステップと;
予後インデックスの解を、複数の予後インデックスを含むデータベースと比較することにより、前記予後インデックスの解が、胃腸の癌の再発または胃腸の癌の軽減と関連があるかどうか判定するステップであって、該インデックスのいくつかが胃腸の癌の再発と関連があり、該インデックスのいくつかが胃腸の癌の軽減と関連があるステップと;
前記予後インデックスの解が、胃腸の癌の再発または胃腸の癌の軽減と関連があるかどうかについての前記判定について、前記依頼をした前記人物に伝達するステップと
を含む、術後の胃腸の癌の患者における再発を同定する方法。
【請求項27】
CPUのようなプロセッサ手段とRAM、ハードディスクドライブのような記憶手段とを含み、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法を行うのに適合されたコンピュータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−523067(P2011−523067A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512829(P2011−512829)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050124
【国際公開番号】WO2009/149714
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(510326979)
【氏名又は名称原語表記】BRUNNER, Nils Aage
【住所又は居所原語表記】Tranevaenget 8, 2. th, DK−2900 Hellerup, DENMARK
【出願人】(510327127)
【氏名又は名称原語表記】NIELSEN, Hans Jorgen
【住所又は居所原語表記】Ved Hjortekaeret 17, DK−2800 Kgs. Lyngby, DENMARK
【Fターム(参考)】