説明

ネコ抗原のアライグマポックスウイルス発現遺伝子

本発明は、各々が少なくとも一つのネコタンパク質をコードする二つ以上の外因性核酸分子を含む、新規の組換えアライグマポックスウイルスベクターであり、核酸分子のうち少なくとも二つが、ヘマグルチニン(ha)遺伝子座またはチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座に挿入され、または核酸分子の少なくとも一つが、ヘマグルチニンおよびチミジンキナーゼ遺伝子座の各々に挿入される、アライグマポックスウイルスベクターに関する。免疫学的に有効な量の組換えアライグマポックスウイルスベクターと、必要に応じて、適切な担体または希釈剤とを含む、一価および多価の組換えネコワクチンが、本明細書に記載される。本発明のワクチンは、ネコに様々なネコ病原体に対する広域的な保護を提供するために、追加的なネコ抗原を必要に応じて含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ネコ抗原の複数の遺伝子を発現する新規の組換えアライグマポックスウイルスベクター、およびネコ病原体により引き起こされる感染または疾患の予防における、多価ワクチンにおけるベクターの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くのネコの感染症は風土病化し、複数のネコがいる環境、特に動物病院、猫飼育場や、より小範囲では動物保護施設において悲惨な状況を生む。ネコの健康に重要な二つの病原体は、ネコカリシウイルス(FCV)およびネコウイルス性鼻気管炎ウイルス(FVR)であり、FVRおよびFCVは全てのネコの呼吸感染のほぼ90%を占める。典型的には、FCV感染は上気道に影響し、時には関節痛および跛行を生じることにより、ウイルス鼻気管炎(FVR)に似た兆候を示す。さらに、感染したネコは、舌上および口の部分に潰瘍を発症する。鼻道、硬口蓋および舌の小水疱およびびらんが、一般に表れる。FCV疾患の他の症状には、高熱、脱毛、皮膚潰瘍、および脚または顔面周囲の浮腫(腫れ)が含まれる。感染株の有毒性により、FCV感染は死に至りうる。伝染の主な方法は経口感染経路によるが、感染したネコの唾液、便または尿に見られる感染性ウイルスの吸入からネコが感染することもある。FCVは接触感染性が高く、感染したネコは、感染後長期間ウイルスを出し続け、回復したネコは、感染性ウイルスを生涯保有し続けうる。無症状のネコも、他の健常なネコに死病を広めうる。最近では、FCV―AriおよびFCV―Divaとそれぞれ命名された、動物保護施設のネコ集団に特に致死的であった、毒性の高い出血性のカリシウイルスの二つの遺伝学的に多様なウイルス株の発生が、北部カリフォルニアおよびニューイングランドにおいて報告されている(非特許文献1;非特許文献2)。
【0003】
ネコウイルス性鼻気管炎ウイルス(FVR)は、Herpesviridae科の、ネコヘルペスウイルス1(FHV―1)である。世界中で家庭および野生のネコに見られるFVRは、鼻炎(鼻の炎症)、熱、結膜炎(眼瞼裏の膜の炎症)、鼻汁および目やに、ならびにくしゃみを特徴とする、ネコの感染性急性上気道感染を引き起こす。ウイルスは、生殖器官にも影響し、妊娠中の合併症を誘発しうる。ウイルス疾病は、鼻気管炎(またはネコヘルペスウイルス感染症)として知られることが多いが、ネコインフルエンザまたはコリーザとしても一般に知られる。ネコのFVR呼吸器病は接触感染性が高く、特に猫飼育場で深刻となりうる。Felidae科の全てのメンバーがFVRに感染するが、若年の子猫および高齢のネコは、肺炎による死を含む、FVRにより引き起こされる深刻な疾患にかかりやすい。シャム(Siamese)やバーミーズ(Burmese)のような特定の品種で、他の品種よりもFVRが重症化することが分かっている。
【0004】
FCVに加えて、FVRにより引き起こされる鼻気管炎は、鼻汁および目やにならびにくしゃみを引き起こすウイルスおよび細菌感染症群である、ネコの上気道感染または疾患症候群の一部である。ネコは、二つ以上の上気道感染に同時にかかることが多い。FCVおよびFVR(FHV―1)が最も一般的な二つの感染症を引き起こすが、呼吸器病症候群には通常クラミジア症も含まれる。
【0005】
ネコクラミジア症は、世界的に広まる病原体Chlamydophila felis(以前はネコChlamydia psittaciとして知られる)により引き起こされる。Chlamydia psittaciネコ間質性肺炎病原体と呼ばれることもあるこの細菌病原体は、ネコの結膜炎ならびに肺炎(間質性肺炎)の原因物質である。結膜炎が主な臨床症状であることが多いが、患っているネコは、軽いくしゃみおよび鼻汁が出ることもある。時には軽い熱による嗜眠および食欲不振が見られるが、Chlamydophila felisに感染したネコは、当初元気に見えるのが一般的である。しかし、治療しないままでおくと、結膜炎が通常八週間以上続き、ネコは数ヶ月間細菌を出す。その後、感染は、より深刻な肺炎のケースへと進行しうる。
【0006】
ネコにおける、接触感染および致死的感染を引き起こす別の深刻な病原体は、ネコ白血病ウイルス(FeLV)である。FeLVによる感染は、他のどの感染症よりも多くのネコに死をもたらす、家ネコの致死的病気の一般的な主因である。ネコは、ウイルスに感染後、何ヶ月または何年もの間疾患の兆候が見られないこともある。FeLVに永続的に(永久に)感染したネコは、貧血および癌の重篤な疾病を発病するリスクが高い。RNAからなり、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)に関係する雌レトロウイルス、FeLVは、ネコ白血病(ガン疾患)、免疫不全および他の癌の原因因子である。罹患したネコの約80〜90%が、FeLV感染と診断されてから三年半以内に死ぬ。典型的に、FeLV感染は、ウイルスが免疫系の細胞を攻撃する、免疫抑制をもたらす。ウイルスにより白血球が破壊または損傷されることにより、ネコが多種多様な他の疾患および二次感染を起こしやすくなる。FeLV感染の接触感染性は高くなく、ウイルスの伝播は、例えば猫飼育場、動物保護施設、複数のネコを飼育する家庭、および生息密度の高い都市ネコなど、ネコの密接な長期間の接触に依存し、ネコの最大30%がウイルスに感染しうる。
【0007】
したがって、FVRおよびFCVは、全てのネコ呼吸病気の大多数を占め;FVR、FCVおよびネコクラミジア症は、ネコ上気道疾患症候群として知られる群として、同じネコに感染することが多く;FeLVによる感染は、致死的であることが多い。ネコにおけるこれらの深刻な感染または致死的病態を防止するための、有効な混合ワクチンの開発は、獣医学技術にとって非常に重要であると考えられる。
【0008】
過去には、一価ワクチンが記載されており、ネコカリシウイルスF9株(特許文献1)、ネコChlamydia psittaci(特許文献2および特許文献3)、ネコ白血病ウイルス(特許文献4)等、様々な抗原を用いて、ネコの疾患を防止するためにいくつかが製造されている。FCV―M8およびFCV―255等の他のカリシウイルス株およびネコ鼻腔気管炎ウイルスも過去に単離され、ワクチン用途に記載されている(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。特許文献5は、FCV―2280株のゲノムからのヌクレオチド配列、およびネコカリシウイルス疾患を防止するためのカプシド遺伝子のヌクレオチド配列を使用したワクチンを記載する。特許文献6は、特にネコカリシウイルスを含む、不活性化されたウイルスワクチンの製剤を開示する。特許文献7は、カリシウイルス等の抗原とあわせて修飾ボツリヌス毒素を使用する経口ワクチンを記載する。
【0009】
確かに、多価ワクチンは、広い病原体群に対するネコの予防接種を可能にし、これがネコにトラウマを与えにくく、ネコ取扱者または獣医師にとってより容易であると考えられる点で、以前の一価ワクチンを上まわる利点を提供する。そのため、ネコ白血病ウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコカリシウイルス、ネコ鼻腔気管炎ウイルス、ネコ後天性免疫不全ウイルス、狂犬病、ネコ伝染性腹膜炎、Borrelia burgdorferi等を含む一つ以上の病原体と組み合わせた、Chlamydophila felis(以前はネコChlamydia psittaciとして知られる)等の、多くの抗原の混合物を含む多価ワクチンが、調製または記載されている(特許文献8)。Rickard単離株ネコ白血病ウイルス、ネコ鼻腔気管炎ウイルス、ネコカリシウイルスおよびネコ汎白血病ウイルスの別の混合物も、同様にワクチンとして開示されている(特許文献9)。
【0010】
残念なことに、過去に使用されるネコカリシウイルス株を含む以前のワクチンはいずれも、新たな出血性ネコカリシウイルス株からネコを適切に保護しない。最近の出血性ネコカリシウイルスの発生においては、ネコがカリシウイルスに対するワクチン接種を受けていた事実にもかかわらず、有意な死亡数がみられた。さらに、ネコのワクチン接種には、ネコが、特定の病原体に対する特異体質性反応、および接種物に対する十分な免疫応答を得るためにアジュバントの添加を必要とする典型的な注射可能製剤に対する肉腫誘導性副作用を有することがあるという、固有の問題がある。
【0011】
深刻なネコの感染または疾患に対する、より良好なネコ免疫のためのネコワクチン組成物を改善する試みにおいて、組換技術に研究努力が向けられている。現在まで、ワクチンとしての組換えアライグマポックスウイルスのテーマについての情報が、相当量公開されている。しかし、アジュバントを含める必要性を回避しながら、ネコにおける十分な免疫応答のための抗原タンパク質を良好に適切に発現する機能的な多価組換えワクチンを見つけ、開発することは、手間のかかる作業である。
【0012】
例えば、特許文献10およびその継続出願である特許文献11は、チミジンキナーゼ遺伝子またはヘマグルチニン遺伝子に挿入される二つ以上の外因性遺伝子を含む、多価組換えアライグマポックスウイルスを扱う。後のネコ病原体による曝露に対してネコを免疫化するためのワクチンとしての多価組換えアライグマポックスウイルスの使用が、これらの二つの関連特許に開示される。外因性遺伝子が挿入される挿入ベクターの構築と;挿入された遺伝子に隣接するのは、アライグマポックスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子またはヘマグルチニン遺伝子に再結合できる配列であり;外来性遺伝子を含む挿入ベクターおよびアライグマポックスウイルスの両方を、感受性宿主細胞へ導入するステップと;生じたプラークから組換えアライグマポックスウイルスを選択するステップを伴う、組換えプロセスにより、多価組換えアライグマポックスウイルスを作製する方法も、開示される。この特許の多価組換えアライグマポックスウイルスは、ネコ細胞において感染および複製することができ、ウイルス複製に必須でないアライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニン遺伝子またはチミジンキナーゼ遺伝子からなる領域に挿入された二つ以上の外因性遺伝子を含み、特に外因性遺伝子は、発現用プロモータに作動可能に連結され;各外因性遺伝子が、ネコ病原体抗原をコードする。同特許は、ネコ白血病ウイルス(FeLV Env)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV Gag)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV Env)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV M)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV N)、ネコカリシウイルス(FCVカプシドタンパク質)、ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPV VP2)、および狂犬病―G等の、ネコ病原体抗原をコードする外因性遺伝子を記載する。
【0013】
特許文献12は、アライグマポックスウイルスゲノムのHindIII「U」ゲノム領域、HindIII「M」ゲノム領域またはHindIII「N」ゲノム領域内の非必須領域に挿入された外来DNA配列を含むアライグマポックスウイルスのウイルスゲノムからなる、組換えアライグマポックスウイルス(RCNV)ワクチンに関する。アライグマポックスウイルスのウイルスゲノムは、ウイルスゲノムのアライグマポックスウイルス宿主域遺伝子における欠失を含むものとして、当該特許中に記載される。同特許は、外来DNA配列をアライグマポックスウイルスゲノムに挿入することにより組換えアライグマポックスウイルスを生成するための、相同ベクターを提供する。
【0014】
特許文献13は、特に、異種抗原に対する動物の免疫化のための特徴的な送達方法に関する。この方法は、異種抗原をコードする核酸分子を有する組換えアライグマポックスウイルスを含む組成物を、結膜経路を介して動物に投与するステップを説明する。同特許は、結膜経路に加えて、鼻腔内ワクチン接種投与経路も開示する。組換えアライグマポックスウイルスにより発現され、特許を受けた方法で使用されうる異種抗原は、カリシウイルス、コロナウイルス、ヘルペスウイルス、免疫不全ウイルス、感染性腹膜炎ウイルス、白血病ウイルス、パルボウイルス抗原、狂犬病ウイルス、バルトネラ、エルシニア、イヌ糸状虫属、トキソプラズマ、ノミ抗原またはノミアレルゲン、ヌカカ抗原またはアレルゲン、ダニ抗原またはアレルゲン、および腫瘍抗原として列挙される。さらに、組換えアライグマポックスウイルスは、サイトカイン、ケモカインおよび他の免疫修飾物質等の免疫修飾物質をコードする核酸分子を含みうる。しかし、そのようなコンストラクトが生成される方法の具体例はない。さらに、特許権者らは、請求される方法の実例において古いコンストラクトのみを使用するため、異種抗原をコードする任意の新規の組換えアライグマポックスウイルスを作製する方法の開示がない。核酸分子の少なくとも一つが心糸状虫PLA2抗原をコードする公知のRCNV/PLA2ポックスウイルスに対する言及が一つあり;実施例は、狂犬病糖タンパク質G(gG)タンパク質を発現する公知の組換えアライグマポックスウイルス、すなわち、RCNV/狂犬病gG(RCN/G)の鼻腔内および/または結膜投与を示すにとどまる。特に、公知のRCNV/狂犬病gGコンストラクトは、ウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子内に、ポックスウイルスp11プロモータに作動可能に連結された狂犬病糖タンパク質Gタンパク質をコードする異種核酸分子を挿入することにより調製される。同特許は、任意の他の新規な形態の組換えアライグマポックスウイルスの作製を説明または示唆しない。
【0015】
特許文献14は、ネコにおいてFHV―1に対する免疫を提供し、ネコのネコウイルス性鼻気管炎(FVR)を阻害する方法において使用できる、ネコヘルペスウイルス(FHV―1)に対する組換えポックスウイルスワクチンに関する。同特許は、ネコヘルペスウイルスgD糖タンパク質前駆体ポリペプチドをコードする遺伝子またはgB前駆体ペプチドをコードする遺伝子を含み発現する、組換えアライグマポックスウイルスを説明するものである。この遺伝子は、ポックスウイルスチミジンキナーゼドナープラスミドに、挿入またはクローニングされる。FHV―1gBまたはFHV―1gDだけを発現するアライグマポックス組換え体が、いずれも疾患の臨床徴候からの保護を誘導するものとして示される。
【0016】
追加的な組換技術が、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)またはネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)等、単一のネコ抗原の発現のために同様に使われている。例えば、特許文献15は、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)により引き起こされる疾患の予防のためのワクチンにおいて有用な組換えアライグマポックスウイルスに関する。同特許の開示によれば、組換えアライグマポックスウイルスは、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)のFIV gagタンパク質(gag)、FIVエンベロープタンパク質(env)、FIV envのアミノ酸1―735からなるポリペプチド、またはその免疫原性フラグメントをコードするDNA配列を含む少なくとも一つの内部遺伝子を有する。同特許中に記載される一つ以上のFIV発現組換えアライグマポックスウイルスを含むワクチンには、薬理学上許容可能な担体または希釈剤、および薬理学上許容可能なアジュバントも含まれうる。特許文献15は、FIVにより引き起こされる疾患を防止または軽減する方法も提供する。これは、このような治療を必要とするネコに上記のワクチンを投与することにより行われる。ポックスウイルスDNAへのFIV gagまたはenv遺伝子の取り込みは、ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子の破壊だけを伴う。
【0017】
同様に、特許文献16は、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)のエンベロープタンパク質を発現し、単独または担体およびアジュバントと組み合わせてワクチンとして有用な、組換えアライグマポックスウイルスに関する。特に同特許は、FIVのエンベロープタンパク質またはその免疫原性フラグメントをコードするDNA配列を含む少なくとも一つの内部遺伝子を有する組換えアライグマポックスウイルスを記載する。
【0018】
特許文献17は、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)のヌクレオカプシドおよび膜貫通タンパク質を発現する、組換えアライグマポックスウイルスを開示する。FIPVの膜貫通(M/E1)タンパク質をコードするDNA配列を含む少なくとも一つの内部遺伝子を有する組換えアライグマポックスウイルスが、同特許において特に説明され、請求されている。
【0019】
特許文献18も、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)のヌクレオカプシドおよび膜貫通タンパク質を発現する組換えアライグマポックスウイルスを説明する。FIPVのヌクレオカプシド(N)タンパク質をコードするDNA配列を含む少なくとも一つの内部遺伝子を有する組換えアライグマポックスウイルスが、同特許において特に説明され、請求されている。
【0020】
特許文献19は、病原体の抗原をコードし発現する任意のソースからのDNAがアビポックスゲノムの非必須領域において存在することにより修飾された、フォウルポックスウイルスまたはカナリアポックスウイルス等の合成組換えアビポックスウイルスにより、哺乳類または鳥類の宿主に予防接種することにより、哺乳類または鳥類の宿主において病原体に対する免疫応答を誘導するための方法に関する。同特許は、狂犬病G抗原、ウシ白血病ウイルスのgp51,30エンベロープ抗原、ネコ白血病ウイルスのFeLVエンベロープ抗原および単純ヘルペスウイルスの糖タンパク質D抗原からなる群より選択される抗原を同定する。特に同特許は、FeLV env遺伝子がp70+p15Eポリタンパク質をコードする配列を含む、糖タンパク質のネコ白血病ウイルス(FeLV)エンベロープ(env)を発現するアビポックスウイルス組換え体の構築を示す。この遺伝子は、FeLV env遺伝子に5’並置されたワクシニアH6プロモータを伴ってプラスミドに挿入されていた。このプラスミドは、ワクシニアヘマグルチニン(ha)遺伝子を含む1802bp Sal I/Hind IIIフラグメントをpUC18ベクターに、最初に挿入することにより得られていた。
【0021】
獣医用ワクチン技術における努力にもかかわらず、様々なネコ抗原に対してネコに適切な防御免疫応答を与える安全かつ有効な混合ワクチンを提供する必要性が、依然として当分野においてはっきりと認識されている。動物保護施設、複数のネコを飼育する家庭等では、毒性の高い出血性のネコカリシウイルス感染がよく見られるため、当分野では別の必要性、出血性(hemorrrhagic)および一般のFCV株により引き起こされる深刻な感染および疾患からネコを保護する広域性ウイルスワクチンを提供することが認識されている。当分野ではさらに別の必要性、急性および慢性のウイルスまたは細菌疾患からネコを保護するために、毒性の出血性FCV株および他のネコ病原体に対する特異的免疫応答を誘発することが可能な多価ワクチンをつくることが認識されている。本発明のネコ多価ワクチンは、優れた抗体価を独自に達成し、少なくとも六つの異なる画分の組換えコンストラクトの新規な組み合わせにより、広域な免疫化を可能にすることにより、従来技術に存在する技術的問題を解決する。
【0022】
以上の目的が、ワクチンがアジュバントの添加なしで、複数のネコ抗原に対するネコの防御免疫応答を誘発する、本明細書に記載の安全かつ有効な組換えネココンビ(混合)ワクチンを提供することにより達成される。
【0023】
本明細書にあげられる全ての特許および刊行物は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第3,944,469号明細書
【特許文献2】米国特許第5,972,350号明細書
【特許文献3】米国特許第5,242,686号明細書
【特許文献4】米国特許第4,264,587号明細書
【特許文献5】米国特許第6,231,863号明細書
【特許文献6】米国特許第5,106,619号明細書
【特許文献7】米国特許第6,051,239号明細書
【特許文献8】米国特許第6,004,563号明細書
【特許文献9】米国特許第5,374,424号明細書
【特許文献10】米国特許第6,241,989号明細書
【特許文献11】米国特許第7,087,234号明細書
【特許文献12】米国特許第6,294,176号明細書
【特許文献13】米国特許第6,106,841号明細書
【特許文献14】米国特許第6,010,703号明細書
【特許文献15】米国特許第5,989,562号明細書
【特許文献16】米国特許第5,820,869号明細書
【特許文献17】米国特許第5,770,211号明細書
【特許文献18】米国特許第5,656,275号明細書
【特許文献19】米国特許第5,505,941号明細書
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】N.C.Pedersen等、“An isolated epizootic of hemorrhagic―like fever in cats caused by a novel and highly virulent strain of feline calicivirus,”Veterinary Microbiol.73:281―300(May 2000)
【非特許文献2】E.M.Schorr―Evans等、An epizootic of highly virulent feline calicivirus disease in a hospital setting in New England,”Journal of Feline Medicine and Surgery 5:217―226(2003)
【非特許文献3】E.V.Davis等、“Studies on the safety and efficacy of an intranasal feline rhinotracheitis―calici virus vaccine,”VM―SAC 71:1405―1410(1976)
【非特許文献4】D.E.Kahn等、“Induction of immunity to feline caliciviral disease,”Infect.Immun.11:1003―1009(1975)
【非特許文献5】D.E.Kahn,“Feline viruses:pathogenesis of picornavirus infection in the cat,”Am.J.Vet.Research 32:521―531(1971)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0026】
発明の要旨
最も広い態様においては、本発明は、アライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニン(ha)および/またはチミジンキナーゼ(tk)挿入遺伝子座で複数のネコウイルス、細菌およびサイトカイン抗原を発現するためのベクターとしてアライグマポックスウイルスを用いた、一価または多価ワクチンとして有用である、安全かつ有効な、アジュバントを含まない組換えネコワクチンを提供する。新規なアライグマポックスウイルスベクターは、アライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニン遺伝子座またはチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入された少なくとも一つの核酸分子と;アライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニン遺伝子座またはチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入された少なくとも二つの核酸分子、または代替的に、アライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニン遺伝子座に挿入された少なくとも一つの核酸分子と、これに付随してチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入された少なくとも一つの核酸分子とをもつように、設計されるのが好ましい。特に、コンストラクトは、ネコカリシウイルス(FCV)カプシドタンパク質、ネコウイルス性鼻気管炎ウイルス(FVR)糖タンパク質D/B(gD/gB)、ネコChlamydia psittaci(FCP、現在では一般にChlamydophila felisとして知られる)エンベロープタンパク質(momp)、ネコ白血病ウイルス(FeLV)gag―pr65―pro/env―gp70/env―gp85、およびネコインターロイキン12(IL―12)P35/P40をコードする核酸分子または遺伝子を発現し、後者の成分はネコにおいてコンビワクチンの免疫原性を増強する免疫修飾物質として含まれる。本発明の一価および多価組換えネコワクチンは、免疫学的に有効な量の組換えアライグマポックスウイルスベクターと、必要に応じて、適切な担体または希釈剤とを含む。コンビワクチン製剤は、宿主免疫応答を増強するためのアジュバントを必要とせず、これにより、従来のいくつかの注射可能ワクチンにより時に生じうるアジュバント関連の肉腫副作用を回避し、有益である。本発明のワクチンは、ネコに様々なネコ病原体に対する広域的な保護を提供するために、一つ以上の追加的なネコ抗原を必要に応じて含む。本発明は、組換えワクチンを投与することにより、ネコにおいてネコ病原体に対する防御免疫応答を誘導する方法にさらに関する。
【0027】
したがって、第一態様は、同じネコ病原体の二つ以上の異なる株からの少なくとも一つのネコタンパク質を各々がコードする二つ以上の外因性の相同な核酸分子を含む組換えアライグマポックスウイルスベクター(rRCNV)を提供し、核酸分子のうち少なくとも二つがヘマグルチニン(ha)遺伝子座またはチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座に挿入され、または、核酸分子の少なくとも一つがヘマグルチニンおよびチミジンキナーゼ遺伝子座の各々に挿入される。二つの外因性核酸が同じ遺伝子座に挿入されるときは、それらは連続し、または介在配列により分離されうる。
【0028】
一実施形態においては、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、アライグマポックスウイルスゲノムの任意の非必須部位に挿入された、ネコウイルス/細菌抗原またはタンパク質をコードする核酸分子をさらに含む。
【0029】
一実施形態においては、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼおよびヘマグルチニン遺伝子座に加えて、アライグマポックスウイルスゲノムの第三非必須部位に挿入された、ネコウイルス/細菌抗原またはタンパク質をコードする核酸分子をさらに含む。
【0030】
一実施形態においては、アライグマポックスウイルスゲノムの第三非必須部位は、セリンプロテアーゼインヒビター部位である。
【0031】
一実施形態においては、アライグマポックスウイルスは、生存しており、複製可能である。
【0032】
一実施形態においては、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、ネコカリシウイルスカプシドタンパク質をコードする核酸分子を含む。
【0033】
一実施形態においては、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、アライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニンまたはチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入されるが、ヘマグルチニン遺伝子座に挿入されるのが好ましい、FCV―2280のネコカリシウイルスカプシドタンパク質をコードする核酸分子を含む。
【0034】
一実施形態においては、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、発現のためのワクシニアウイルス後期プロモータP11または初期―後期プロモータに作動可能に連結されるFCV―2280カプシド遺伝子のヌクレオチド配列を含み、プロモータは、発現のための合成の初期―後期プロモータでありうる。
【0035】
一実施形態においては、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、アライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニン遺伝子座またはチミジンキナーゼに挿入されるが、ヘマグルチニン遺伝子座に挿入されるのが好ましい、FCV―DD1のネコカリシウイルスカプシドタンパク質をコードする核酸分子をさらに含む。
【0036】
一実施形態においては、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、発現のためのワクシニアウイルス後期プロモータに作動可能に連結されるFCV―2280カプシド遺伝子のヌクレオチド配列をさらに含み、FCV―DD1カプシド遺伝子のヌクレオチド配列が、発現のための初期―後期プロモータに作動可能に連結され、プロモータは、発現のための合成の初期―後期プロモータでありうる。
【0037】
一実施形態においては、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、アライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニン遺伝子座またはチミジンキナーゼに挿入されるが、ヘマグルチニン遺伝子座に挿入されるのが好ましい、FCV―255のネコカリシウイルスカプシドタンパク質をコードする核酸分子をさらに含む。
【0038】
一実施形態においては、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、アライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニン遺伝子座またはチミジンキナーゼに挿入されるが、ヘマグルチニン遺伝子座に挿入されるのが好ましい、ネコウイルス性鼻気管炎ウイルス糖タンパク質gDをコードする核酸分子、およびネコウイルス性鼻気管炎ウイルス糖タンパク質gBをコードする核酸分子を、さらに含む。
【0039】
一実施形態においては、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、アライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニン遺伝子座またはチミジンキナーゼに挿入されるが、ヘマグルチニン遺伝子座に挿入されるのが好ましい、ネコ白血病ウイルス抗原gag―pr65―proをコードする核酸分子およびネコ白血病ウイルス抗原env―gp85をコードする核酸分子をさらに含む。
【0040】
一実施形態においては、アライグマポックスウイルスベクターにおいてウイルス抗原をコードするヌクレオチド配列は、発現のための合成初期―後期プロモータに作動可能に連結される。
【0041】
一実施形態においては、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座またはチミジンキナーゼ遺伝子座または両方の遺伝子座に挿入される、ネコ白血病ウイルス抗原gag―pr65―proをコードする核酸分子、ネコ白血病ウイルス抗原env―gp70をコードする核酸分子、およびネコ白血病ウイルス抗原env―gp85をコードする核酸分子をさらに含む。
【0042】
一実施形態においては、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座またはヘマグルチニン遺伝子座に挿入されるが、ヘマグルチニン遺伝子座に挿入されるのが好ましい、Chlamydophila felisタンパク質をコードする核酸分子をさらに含む。
【0043】
一実施形態においては、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座またはヘマグルチニン遺伝子座に挿入されるが、ヘマグルチニン遺伝子座に挿入されるのが好ましい、Chlamydophila felisのエンベロープタンパク質をコードする核酸分子をさらに含む。
【0044】
一実施形態においては、Chlamydophila felisのエンベロープタンパク質遺伝子のヌクレオチド配列は、発現のためのワクシニアウイルス後期プロモータに、作動可能に連結される。
【0045】
一実施形態においては、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、アライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニン遺伝子座またはアライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入されるが、ヘマグルチニン遺伝子座に挿入されるのが好ましい、ネコインターロイキン12のP35タンパク質をコードする核酸分子、およびネコインターロイキン12のP40タンパク質をコードする核酸分子をさらに含む。
【0046】
本発明の第二の態様は、免疫学的に有効な量の本明細書に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクターと、必要に応じて、適切な担体または希釈剤とを含む、ネコワクチンを提供する。
【0047】
一実施形態においては、アライグマポックスウイルスは、生存しており、複製可能である。
【0048】
一実施形態においては、ワクチンは、単回用量または反復用量として投与される。
【0049】
一実施形態においては、ワクチンは、アジュバントを含まない。
【0050】
一実施形態においては、本発明は、本発明のネコウイルス/細菌抗原および/またはサイトカイン、例えばIL―12を発現する組換えアライグマポックスウイルスベクター化コンストラクトの二つ以上を免疫学的に有効な量含む、ネコ混合ワクチンを提供する。混合ワクチンの例には、以下が含まれるが限定されない:(1)rRCNV―Feline3(修飾生FPV、rRCNV―FCV、rRCNV―FVR);(2)rRCNV―Feline4(rRCNV―Feline 3+rRCNV―FCP);(3)rRCNV―Feline4+rRCNV―FeLV;(4)rRCNV―Feline IL―12が、免疫修飾物質として各混合ワクチンにおいて調製されうる。
【0051】
一実施形態においては、ワクチンは、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、Bartonella細菌、FCV―Diva、FCV―Kaos、FCV―Bellingham、FCV―F9、FCV―F4、FCV―M8およびそれらの組み合わせからなる群より選択される一つ以上の追加的なネコ抗原の混合物をさらに含む。
【0052】
一実施形態においては、ワクチンは、rRCNV―FCV2280、rRCNV―FCV2280―FCVDD1、rRCNV―FCV2280―FCVDD1―FCV255、rRCNV―FVR gD/gB、rRCNV―FeLV gag―pr65―pro/env―gp85、rRCNV―FeLV gag―pr65―pro/env―gp70/env―gp85、rRCNV―FCP mompおよびrRCNV―ネコIL―12 P35/P40からなる群より選択される組換えアライグマポックスウイルスベクターの二つ以上の混合物を含む。
【0053】
一実施形態においては、ワクチンは、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、Bartonella細菌、FCV―Diva、FCV―Kaos、FCV―Bellingham、FCV―F9、FCV―F4、FCV―M8およびそれらの組み合わせからなる群より選択される一つ以上の追加的なネコ抗原の混合物をさらに含む。
【0054】
本発明の第三の態様は、有効な免疫化量の少なくとも一つの本明細書に記載のワクチンをネコに投与するステップを含む、ネコにおいてネコ病原体に対する防御免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0055】
一実施形態においては、防御免疫応答は、少なくとも約4.5Log10TCID50/mlである、有効な免疫化量のワクチンを投与することにより誘導される。
【0056】
一実施形態においては、防御免疫応答は、約4.5Log10TCID50/ml〜約7.5Log10TCID50/mlの範囲である、有効な免疫化量のワクチンを投与することにより誘導される。
【0057】
一実施形態においては、防御免疫応答は、液性または抗体媒介性応答である。
【0058】
一実施形態においては、防御免疫応答は、細胞媒介性またはT細胞媒介性免疫応答である。
【0059】
本発明の第四の態様は、本明細書に記載の一つ以上の核酸配列およびプラスミドコンストラクトを提供する。
【0060】
一実施形態においては、プラスミドは、配列番号1、2、3または4のヌクレオチド配列のいずれか一つを含む。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態においては、ネコカリシウイルスカプシドタンパク質をコードする核酸は、FCV―2280またはFCV―DD1等、特定の株からのものである。
【0062】
他の実施形態では、これらの株のいずれかが、別のカリシウイルス株からの同じまたは類似のタンパク質をコードする核酸に置き換えられうる。他のカリシウイルス株は、FCV―2280またはFCV―DD1のいずれかに対して交差防御し、または交差防御しなくてよい。例えば、公知技術の様に、FCV―DD1をコードする核酸が、別の超有毒、有毒性、出血性、または有毒性の全身性ウイルス株により置き換えられうる。例えば、米国特許第7,029,682号;国際公開第2005/072214号、米国特許出願公開第2006/0057159号、.S.6,541,458号;米国特許第6,534,066号および米国特許出願公開第2004/0259225号を参照。
【0063】
本発明の第五の態様は、
a)二つ以上の異なるネコ病原体株からの同じネコタンパク質を各々がコードする、少なくとも一つの外因性核酸と少なくとも一つの相同な外因性核酸であり、少なくとも一つの相同な核酸が、ha遺伝子座またはtk遺伝子座の少なくとも一つに挿入される、外因性核酸;または
b)同じネコ病原体からの少なくとも一つの異なるネコタンパク質を各々の核酸がコードする、少なくとも二つの外因性核酸であり;外因性核酸の一つが、haまたはtk部位の少なくとも一つに挿入され、または、少なくとも一つの核酸が、ha遺伝子座に挿入され、少なくとも一つの核酸がtk遺伝子座に挿入される、外因性核酸を含む、組換えアライグマポックスウイルスベクター(RCNV)を提供する。
【0064】
一実施形態においては、組換えアライグマポックスウイルスベクター(RCNV)は、二つ以上の異なるネコ病原体株からの同じネコタンパク質を各々がコードする、少なくとも二つの相同な外因性核酸分子を含み、相同な外因性核酸分子が、ha遺伝子座、tk遺伝子座、セリンプロテアーゼインヒビター遺伝子座に挿入され、または、少なくとも一つの相同な外因性核酸分子が、ha、tk、またはセリンプロテアーゼインヒビター遺伝子座の各々に挿入される。
【0065】
一実施形態においては、組換えアライグマポックスウイルスベクターは、少なくとも二つの外因性核酸分子を含み、少なくとも二つの外因性核酸分子の少なくとも一つが、ネコカリシウイルスタンパク質、ネコ鼻気管炎の糖タンパク質gB、ネコ鼻気管炎の糖タンパク質gD、ネコ白血病ウイルスからのgagタンパク質、ネコ白血病ウイルスからのenvタンパク質、Chlamydophila felisタンパク質、およびネコインターロイキン12のP35およびP40タンパク質からなる群より選択される一つの異なるネコタンパク質コードする。
【0066】
本発明の第六の態様は、ネコに投与するための、上述の組換えアライグマポックスウイルスベクターの任意の一つ以上を含むワクチンまたは免疫原性組成物を提供する。ワクチンは、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、Bartonella細菌、FCV―Diva、FCV―Kaos、FCV―Bellingham、FCV―F9、FCV―F4、FCV―M8、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、一つ以上の追加的なネコ抗原の混合物をさらに含む、をさらに含みうる。
【0067】
一実施形態においては、上述のワクチンを用いて、記載のワクチンの有効な免疫化量をネコに投与することにより、ネコにおいて、ネコ病原体に対する防御免疫応答を誘導しうる。
【0068】
一実施形態においては、ワクチンの有効な免疫化量は、少なくとも約4.5Log10TCID50/mlである。
【0069】
一実施形態においては、ワクチンの有効な免疫化量が、約4.5Log10TCID50/ml〜約7.5Log10TCID50/mlの範囲である。
【0070】
本発明の第七の態様は、単独または他のネコ抗原または哺乳類のタンパク質との組み合わせにおいて、ネコ病原体に対する防御免疫応答を誘導するための薬物の製剤のための、本発明の任意のベクターまたはワクチンの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1−1】pFD2000A―FDAHプラスミドの核酸配列である(配列番号1)。
【図1−2】pFD2000A―FDAHプラスミドの核酸配列である(配列番号1)。
【図1−3】pFD2000A―FDAHプラスミドの核酸配列である(配列番号1)。
【図2−1】pFD2001TK―FDAHプラスミドの核酸配列である(配列番号2)。
【図2−2】pFD2001TK―FDAHプラスミドの核酸配列である(配列番号2)。
【図3−1】pFD2003SEL―FDAHプラスミドの核酸配列である(配列番号3)。
【図3−2】pFD2003SEL―FDAHプラスミドの核酸配列である(配列番号3)。
【図3−3】pFD2003SEL―FDAHプラスミドの核酸配列である(配列番号3)。
【図4−1】pFD2003SEL―GPV―PV―FDAHプラスミドの核酸配列である(配列番号4)。
【図4−2】pFD2003SEL―GPV―PV―FDAHプラスミドの核酸配列である(配列番号4)。
【図4−3】pFD2003SEL―GPV―PV―FDAHプラスミドの核酸配列である(配列番号4)。
【図5】FCP momp―FDAHの核酸配列である(配列番号5)。
【図6】FCV255―Bmut―N Deletion―FDAHの核酸配列である(配列番号6)。
【図7】FCV2280―N―Deletion―FDAHの核酸配列である(配列番号7)。
【図8】FCVDD1―N Deletion―FDAHの核酸配列である(配列番号8)。
【図9】Feline IL―12 p35―FDAHの核酸配列である(配列番号9)。
【図10】Feline IL―12 P40―FDAHの核酸配列である(配列番号10)。
【図11】FeLV61E Env―gp85―FDAHの核酸配列である(配列番号11)。
【図12】FeLV61E gag―pr65―pro―FDAHの核酸配列である(配列番号12)。
【図13】FeLV61E P27―FDAHの核酸配列である(配列番号13)。
【図14】FVR―gB―FDAHの核酸配列である(配列番号14)。
【図15】FVR―gD―BKXMut―FDAHの核酸配列である(配列番号15)。
【発明を実施するための形態】
【0072】
発明の詳細な説明
本方法および治療方法論が説明される前に、本発明が、特定の方法および記載される実験条件に限定されず、そのような方法および条件が変化しうることが理解されねばならない。本明細書において用いられる用語が、特定の実施形態を説明することを目的とするにとどまり、限定を意図するものではなく、本発明の範囲が添付の請求の範囲によってのみ制限されることも理解されねばならない。
【0073】
本明細書および添付の請求の範囲において用いられるところの、単数形「a」、「an」および「the」には、文脈による別段の明示がない限り、複数形も含まれる。したがって、例えば、「方法」への言及には、本明細書に説明される種類の、および/または本開示を読んだ当業者に明らかとなる、一つ以上の方法および/またはステップが含まれる。
【0074】
したがって、本出願においては、当業者の範囲内の分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術が用いられうる。そのような技術は、文献に十分に説明されている。例えば、Byrd,C M and Hruby,DE,Methods in Molecular Biology,Vol.269:Vaccinia Virus and Poxvirology,Chapter 3,pages 31―40;Sambrook,Fritsch & Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(herein“Sambrook et al.,1989”);DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait ed.1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1985));Transcription And Translation(B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984));Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1986));Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,(1986));B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);F.M.Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(1994)を参照。
【0075】
本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料が、本発明の実施およびテストに使用されうるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。本明細書に記載の全ての刊行物は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0076】
定義
本明細書において用いられる用語は、当業者に認識され、知られている意味を有するが、便宜と完全のために、特定の用語とその意味を以下に記載する。
【0077】
「約」という用語は、20%以内、より好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。
【0078】
「抗原」という用語は、動物における抗体産生またはT細胞応答を刺激しうる、化合物、組成物、または免疫原性物質をさし、動物に注射または吸収される組成物を含む。用語は、個々の巨大分子、または、同種または異種の抗原性巨大分子集団をさすために用いられうる。抗原は、特異的液性または細胞性免疫の産物と反応する。「抗原」という用語は、タンパク質、ポリペプチド、抗原タンパク質フラグメント、核酸、オリゴ糖、多糖、有機または無機化学物質または組成物等を含む部分を広く含む。さらに、抗原は、任意のウイルス、バクテリア、寄生虫、原生動物、または真菌類から導出または入手でき、全生物でありうる。「抗原」という用語には、全ての関連の抗原エピトープが含まれる。同様に、例えば核酸免疫化の場合等において、抗原を発現するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドも、定義に含まれる。合成抗原、例えばポリエピトープ、フランキングエピトープ、および他の組換または合成的に誘導された抗原も、含まれる(Bergmann等(1993)Eur.J.Immunol.23:2777 2781;Bergmann等(1996)J.Immunol.157:3242 3249;Suhrbier,A.(1997)Immunol.and Cell Biol.75:402 408;Gardner等(1998)12th World AIDS Conference,Geneva,Switzerland,Jun.28 Jul.3,1998)。
【0079】
「によりコードされる」または「コードする」とは、ポリペプチド配列をコードする核酸配列をさし、ポリペプチド配列は、少なくとも3〜5アミノ酸、より好ましくは少なくとも8〜10アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも15〜20アミノ酸のアミノ酸配列を含み、ポリペプチドが核酸配列によりコードされる。配列によりコードされるポリペプチドにより免疫学的に同定可能である、ポリペプチド配列も含まれる。したがって、抗原の「ポリペプチド」、「タンパク質」、または「アミノ酸」配列は、抗原のポリペプチドまたはアミノ酸配列に対して、少なくとも70%の類似性、好ましくは少なくとも80%の類似性、より好ましくは約90〜95%の類似性、最も好ましくは約99%の類似性を有しうる。
【0080】
本明細書で用いられるところの「外因性」という用語は、アライグマポックスウイルスゲノムの外部で生成、開始、誘導、または開発される、外来の遺伝子またはそのような外来の遺伝子によりコードされるタンパク質をさす。
【0081】
本発明の文脈において用いられるところの「遺伝子」とは、遺伝的機能が伴う、核酸分子(染色体、プラスミド等)におけるヌクレオチドの配列である。遺伝子は、生物のゲノムの中の特定の物理的位置(「遺伝子座位」または「遺伝子座」)を占めるポリヌクレオチド配列(例えば哺乳類のDNA配列)を含む、例えば生物の遺伝性単位である。遺伝子は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド(例えばtRNA)等の発現産物をコードしうる。あるいは、遺伝子は、発現産物をコードせず、タンパク質および/または核酸の結合等の特定のイベント/機能の遺伝子位置(例えばファージ結合部位)を画定しうる。典型的に、遺伝子は、ポリペプチドコード配列等のコード配列、およびプロモータ配列、ポリアデニル化配列、転写調節配列(例えばエンハンサ配列)等の非コード配列を含む。多くの真核生物遺伝子は、「イントロン」(非コード配列)により中断される「エクソン」(コード配列)を有する。あるケースでは、遺伝子が、別の遺伝子(単数または複数)と配列を共有しうる(例えばオーバーラップ遺伝子)。
【0082】
抗原またはワクチン組成物に対する「免疫応答」は、目的の抗原またはワクチン組成物に存在する分子に対する液性および/または細胞媒介性免疫応答の、対象における発現である。本発明の目的を達成する上では、「液性免疫応答」は、抗体により媒介される免疫応答であり、本発明の抗原/ワクチンに対する親和性をもつ抗体の生成を伴うものであり、一方で「細胞性免疫応答」は、Tリンパ球および/または他の白血球により媒介されるものである。「細胞性免疫応答」は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)のクラスIまたはクラスII分子に伴う抗原エピトープの提示により誘発される。これが、抗原特異的CD4+Tヘルパー細胞またはCD8+細胞障害性リンパ球細胞(「CTL」)を活性化する。CTLは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)によりコードされ、細胞表面に発現されるタンパク質に伴って提示されるペプチド抗原に対する特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の細胞内破壊、またはそのような微生物に感染した細胞の細胞溶解を誘導および促進するのを助ける。細胞性免疫の別の態様は、ヘルパーT細胞による抗原特異的応答に関わる。ヘルパーT細胞は、その表面上のMHC分子に伴ってペプチド抗原を提示する細胞に対する非特異的エフェクター細胞の機能を刺激し、活性を集中するのを助ける働きをする。「細胞性免疫応答」は、CD4+およびCD8+T細胞から誘導されるものを含む、活性化T細胞および/または他の白血球により産生される、サイトカイン、ケモカインおよび他のそのような分子の産生もさす。細胞媒介免疫応答を刺激する特定の抗原または組成物の能力は、リンパ増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL細胞障害能細胞アッセイ、感作した対象における抗原に特異的なTリンパ球のアッセイ、または抗原による再刺激に応答したT細胞によるサイトカイン産生の測定等、多数のアッセイにより決定されうる。そのようなアッセイは、公知技術である。例えば、Erickson等、J.Immunol.(1993)151:4189―4199;Doe等、Eur.J.Immunol.(1994)24:2369―2376を参照。
【0083】
本明細書で互換可能に使用されるところの「免疫学的に有効な量」または「有効な免疫化量」とは、当業者に知られる標準的なアッセイで測定されるところにより、免疫応答、細胞性(T細胞)または液性(B細胞または抗体)応答を誘発するのに十分な抗原またはワクチンの量をいう。本発明において、「免疫学的に有効な量」または「有効な免疫化量」は、約4.5〜7.5Log10TCID50/mLの最低保護用量(力価)である。免疫原としての抗原の有効性は、増殖アッセイにより、T細胞のその特異的標的細胞を溶解する能力を測定するためのクロミウム放出アッセイ等の細胞溶解アッセイにより、または血清中の抗原に特異的な循環抗体のレベルを測定することでB細胞活性のレベルを測定することにより、測定されうる。さらに、免疫化された宿主を注射された抗原に曝露することにより、免疫応答の保護のレベルが測定されうる。例えば、免疫応答が望まれる抗原がウイルスまたは腫瘍細胞である場合には、「免疫学的に有効な量」の抗原により誘導される保護のレベルが、動物のウイルスまたは腫瘍細胞曝露後の生存率または死亡率を検出することにより測定される。
【0084】
本明細書で定義されるところの、アライグマポックスウイルスゲノムにおける「非必須部位」とは、ウイルス感染または複製に必要でない、ウイルスゲノムにおける領域を意味する。アライグマポックスウイルスゲノムにおける非必須部位の例には、チミジンキナーゼ(TK)部位、ヘマグルチニン(HA)部位およびセリンプロテアーゼインヒビター部位が含まれるがこれに限定されない。アライグマポックスウイルスのTK部位は、C.Lutze―Wallace,M.SidhuおよびA.Kappeler,Virus Genes 10(1995),pp.81―84に記載される。アライグマポックスウイルスのTK遺伝子の配列は、PubMedアクセッション番号DQ066544およびU08228にも見つけられる。アライグマポックスウイルスのHA部位は、Cavallaro KFおよびEsposito,JJ,Virology(1992),190(1):434―9に記載される。アライグマポックスウイルスのHA遺伝子の配列は、PubMedアクセッション番号AF375116にも見つけられる。
【0085】
「核酸分子」または「核酸配列」という用語は、タンパク質合成の方向を指示する、すなわちタンパク質をコードおよび発現する、プリンおよびピリミジン塩基の反復単位等の反復ヌクレオチドの長い鎖をさす、その通常の意味を有する。用語が請求項において使用される場合には、核酸は、ネコ抗原をコードする既知の外因性または外来遺伝子をさす。
【0086】
「作動可能に連結される」は、そのように記載される成分が、それらの通常の機能を実行するように配置される、要素の配置をさす。したがって、コード配列(例えば抗原または関心をコードする配列)に作動可能に連結された所与のプロモータは、調節タンパク質および適当な酵素が存在するときに、コード配列の発現をもたらしうる。いくつかの場合には、ある調節要素は、その発現を誘導するように機能する限り、コード配列と連続する必要はない。例えば、介在する非翻訳非転写配列が、プロモータ配列およびコード配列の間に存在でき、プロモータ配列はなお、コード配列に「作動可能に連結される」とみなされうる。したがって、RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAに転写し、これがその後トランスRNAスプライシングされ、コード配列によりコードされるタンパク質に翻訳されるとき、コード配列は、細胞において転写および翻訳制御配列に「作動可能に連結される」。
【0087】
「防御」免疫応答は、哺乳類を感染から保護する働きをする、液性または細胞性免疫応答を誘発するワクチンの能力をさす。ネコ科哺乳類のコントロール集団と比較して統計学的に有意の改善があれば、提供される防御は絶対的である必要はない、すなわち感染が完全に防止または根絶される必要はない。防御は、感染の症状発現の重症度または迅速性を軽減することに限定されうる。
【0088】
単に本明細書で用いられるところの「組換え」という用語は、単に、標準的な遺伝子操作方法により作製されるアライグマポックスウイルスコンストラクトをいう。
【0089】
「複製可能」という用語は、適切な宿主細胞内で複製、複写、または再生することが可能な、微生物、例えばアライグマポックスウイルス等のウイルスをさす。
【0090】
「ワクチン」または「ワクチン組成物」という用語は、本明細書において互換可能に使用され、動物において免疫応答を誘導し、および/または感染による疾患または死亡の可能性から動物を保護する、少なくとも一つの免疫学的に活性の成分を含む医薬組成物をさし、活性成分の免疫学的活性を増強する一つ以上の追加的成分を含んでも、または含まなくてもよい。ワクチンは、医薬組成物に典型的なさらなる成分を、さらに含みうる。
【0091】
「ベクター」は、宿主生物における複製が可能なDNA分子であり、組換えDNA分子を構築するために遺伝子が挿入される。
【0092】
一般的な説明
本発明によれば、複数のネコウイルス、細菌およびサイトカイン抗原を、アライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニン(ha)および/またはチミジンキナーゼ(tk)挿入遺伝子座で発現するためのベクターとしてアライグマポックスウイルスを用いる、特色のある安全かつ有効な組換えネコ混合(コンビ、混合または多価と呼ばれる)ワクチンが、提供される。好ましくは、コンストラクトは、ネコカリシウイルス(FCV)カプシドタンパク質、ネコウイルス性鼻気管炎ウイルス(FVR)糖タンパク質D/B(gD/gB)、ネコChlamydia psittaci(FCP、現在では一般にChlamydophila felisとして知られる)エンベロープタンパク質(momp)、ネコ白血病ウイルス(FeLV)gag―pr65―pro/env―gp70/gp85、およびネコインターロイキン12(IL―12)P35/P40をコードする核酸分子(遺伝子)を発現し、後者の成分は、アジュバントの添加なしでネコにおけるコンビワクチンの免疫原性を増強するための免疫修飾物質として含まれる。この新規の強力な混合ワクチンは、アジュバントを含まず、ネコの一定のワクチン製剤の注射により時折生じるアジュバント関連肉腫の問題を回避することができる固有の能力において、より安全である。都合よく、本発明のrRCNVベクター化ネコワクチンは、ワクチン生産の間の従業員の安全性も改善し、商業生産の間に使用される不活性化および除染処理を病原性ウイルスが生存する一切の機会を完全に除去する。ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPV、修飾生ワクチン株を使用)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、狂犬病ウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)、Bartonella細菌、FCV―Diva、FCV―Kaos、FCV―Bellingham、FCV―F9、FCV―F4、FCV―M8、それらの組み合わせ等の他の抗原が、ネコに様々なネコの病原体に対する広域的な保護を提供するために、多価組換えワクチンの追加的画分として、必要に応じて含まれうる。
【0093】
アライグマポックスウイルス(Herman株)は、Y.F.Hermanにより、Aberdeen,Marylandで1961〜1962年に、臨床症状のないアライグマの気道から最初に単離された(Y.F.Herman,“Isolation and characterization of a naturally occurring pox virus of raccoons,”In:Bacteriol.Proc.,64th Annual Meeting of the American Society for Microbiology,p.117(1964))。いくつかのより早期の研究は、tk遺伝子座でCVS狂犬病G遺伝子を発現するRCNVベクターが、ネコを含む野生動物および家畜に投与されたときに安全であると報告した(例えば、A.D.Alexander等、“Survey of wild mammals in a Chesapeake Bay area for selected zoonoses,”J.Wildlife Dis.8:119―126(1972);C.Bahloul等、“DNA―based immunization for exploring the enlargement of immunological cross reactivity against the lyssaviruses,”Vaccine 16:417―425(1998);S.Chakrabarti等、“Compact,Synthetic,vaccinia virus early/late promoter for protein expression,”BioTechniques 23:1094―1097(1997);およびJ.C.DeMartini等、“Raccoon poxvirus rabies virus glycoprotein recombinant vaccine in sheep,”Arch.Virol.133:211―222(1993)を参照)。本明細書に上述され、当業者に知られるように、ネコ抗原を含む他のRCNVコンストラクトが、ネコへの投与用に過去に作製されている。
【0094】
しかし、過去のコンストラクトはいずれも、ネコ抗原をコードする複数の遺伝子が、アライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニン(ha)および/またはチミジンキナーゼ(tk)挿入遺伝子座で挿入されて、広範な種類のネコ病原体に対して安全かつ有効な活性が提供される、本発明の特色ある設計を提供しない。
【0095】
p70+p15Eポリタンパク質をコードする配列を含むFeLV env遺伝子が用いられる、米国特許第5,505,941号の方法とは対照的に、本発明のコンストラクトは、FeLVのgag―pr65―pro/env―gp70/gp85に集められるタンパク質の異なる固有の組み合わせを用いる。本発明の新規の混合ワクチンにおいてrRCNV―FeLVを生成するためのベクターおよびプロモータも、以前のカナリアポックスウイルスベクターワクチンを作製するために用いられるベクターおよびプロモータと異なる。
【0096】
特に、本発明の混合ワクチンのrRCNV―FCV画分は、二つ以上のFCVカプシド遺伝子を発現する。好ましくは、コンストラクトは、アライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニン遺伝子座からFCV―2280のネコカリシウイルスカプシドタンパク質をコードする単一の核酸分子を含み発現するように作製されうるが、同じヘマグルチニン遺伝子座への、FCV―255のネコカリシウイルスカプシドタンパク質をコードする遺伝子の同時挿入を伴って、または伴わずに、FCV―DD1カプシドタンパク質をコードする遺伝子も挿入することが好ましい。
【0097】
rRCNV―FCVを構築するために本発明において有用なネコカリシウイルス(FCV)カプシド遺伝子を単離するために、任意のネコカリシウイルス(FCV)株が利用されうるが、FCVカプシド遺伝子の少なくとも一つがFCV―DD1株から得られるのが好ましい。このFCV―DD1株は、37C.F.R.§1.808により命じられる条件下で保管され、ブダペスト条約に従って、American Type Culture Collection(ATCC),10801 University Boulevard,Manassas,Virginia 20110―2209,U.S.A.に維持されている。特に、FCV―DD1試料は、2004年9月9日にATCCに保管され、ATCC Patent Deposit Designation PTA―6204に指定された。組換えワクチン画分は、例えばFCV―255(NCBI/GenBankアクセッション番号U07130を参照)、FCV―2280(NCBI/GenBankアクセッション番号X99445を参照)、FCV―Diva(Pedusen,NC,Vet.Microbiol.73:281―300(2000年5月);Schorr―Evans,EM,J Feline Med and Surg 5:217―226(2003)を参照)、FCV―Kaos、FCV―Bellingham、FCV―F9(NCBI/GenBankアクセッション番号Z11536を参照)、FCV―F4(NCBI/GenBankアクセッション番号D90357を参照)、FCV―M8等、一つ以上の追加的FCV単離株のカプシド遺伝子を必要に応じて含みうる。特に好ましいコンストラクトは、FCV―2280、FCV―DD1(米国特許第7,306,807号およびATCC保管番号PTA―6204を参照)およびFCV―255の抗原タンパク質を発現する。
【0098】
rRCNV―FCVコンストラクトが、FCVカプシド抗原をクローニング目的のスクリーニングマーカとして利用でき、従来のLacZ等の外来マーカの使用を回避できることも、固有の特徴として認められる。
【0099】
本発明の混合ワクチンのrRCNV―FVR gB/gD画分は、P11プロモータを用いてgDおよびgBをコードするヌクレオチド配列をアライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニン遺伝子座に誘導および組み合わせて、二つのタンパク質遺伝子、rRCNV―FVR gDおよびrRCNV―FVR gBを特徴的に発現することが可能である。FVR gD(糖タンパク質D)を、既存のプラスミド(pFD2000A FVR gB)にクローニングして、プラスミドpFD2000A FVR gB/gDを生成することにより、コンストラクトが作成される。そこから、blue―to―whiteスクリーニング技術を用いた、COS7細胞、プラスミドpFD2000A FVR gB/gDおよびrRCNV―FeLVのスリーウェイ感染/トランスフェクションにより、プールクローンがつくられる。限界希釈およびクローンスクリーニングのための親としての抗原FeLV P27の新規の使用により、クローンスクリーニングが達成され、これによりスクリーニングのための従来の外来マーカLacZが回避される。
【0100】
本発明の混合ワクチンのrRCNV―FCP momp画分は、ネコChlamydia psittaci(FCP、別名Chlamydophila felis)エンベロープタンパク質(momp)を発現し、プロモータP11を使用して構築される。
【0101】
本発明の混合ワクチンのrRCNV―FeLV画分は、アライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニン遺伝子座でネコ白血病ウイルス抗原gag―pr65―proおよびenv―gp85をコードする核酸分子を発現する。あるいは、コンストラクトは、アライグマポックスウイルスゲノムのチミジンキナーゼ遺伝子座でネコ白血病ウイルス抗原gag―pr65―pro、env―gp85およびenv―gp70をコードする遺伝子を含み発現するように作製されうる。
【0102】
本発明の混合ワクチンの固有のrRCNV―Feline IL―12画分は、同じウイルスにおいて二つの異なる発現レベルのプロモータを誘導することにより(P35ではP11/PSEL、P40ではP7.5/PSEL)、同じ遺伝子座(haまたはtk)にネコIL―12を発現する。ネコインターロイキン12のP35およびP40抗原をコードする核酸分子が、アライグマポックスウイルスゲノムのヘマグルチニン遺伝子座に挿入されるのが好ましい。
【0103】
また、本発明の混合ワクチンは、例えばネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、Bartonella細菌(例えば典型的な猫ひっかき病)、それらの組み合わせ等、組換えコンストラクトとの単純な混合物、懸濁液、エマルション等の混合物の抗原としての他の病原体を必要に応じて含みうる。特定のネコカリシウイルス株のカプシド遺伝子が、生成された組換えポックスウイルスに含まれない場合には、ウイルス抗原が、FCV―255、FCV―2280、FCV―Diva、FCV―Kaos、FCV―Bellingham、FCV―F9、FCV―F4、FCV―M8等、追加的画分として多価ワクチン製剤に別に加えられうる。
【0104】
本発明は、保護を必要とするネコに、アジュバントを含まない強力な新規の組換えワクチンを投与するステップを含む、感染および疾患からネコを保護するための新規の方法を追加的に提供する。本発明の方法においては、様々なネコ病原体により引き起こされる感染または疾患に対する防御免疫応答を誘導するために、免疫学的に有効な量の本発明のワクチンがネコに投与される。ネコに与えられる有効な免疫化量は、ワクチン分野の標準的な値により要求される、病原体による感染からネコを保護するためにワクチンに対する十分な免疫応答が達成される量である。ネコに予防接種し、良好なワクチン接種効果を誘発する、免疫学的に有効な投与量または有効な免疫化量は、例えば標準的な用量漸増研究等のルーチン試験により容易に決定され、または直ちに用量設定されうる。
【0105】
ワクチンは、単回用量で、または、特にブースター注射が必要な場合には反復用量で、投与されうる。ワクチンが、健常なネコに単回接種において投与されて、長期間の保護を提供するのが好ましい。
【0106】
ワクチンは、本明細書に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクターコンストラクトのいずれか一つを、免疫学的に有効な量、含みうる。別の特定の実施形態においては、混合ワクチンは、本明細書に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター化コンストラクトの任意の二つ以上を、免疫学的に有効な量、含みうる。
【0107】
ワクチンは、鼻腔内、経皮的(すなわち全身吸収のために皮膚表面上または皮膚表面部に適用)、非経口、経口等、または、用量の一部が経口的に与えられ、一部が鼻孔内に与えられる、口腔鼻等の組み合わせにより、都合よく投与されうる。非経口投与経路には、筋肉内、皮下、皮内(すなわち注射等により皮膚下に配置)、静脈内等が含まれるがこれに限定されない。筋肉内、皮下、および口腔鼻の投与経路が好まれる。ワクチンが、健常なネコに皮下投与されるのが好ましい。
【0108】
ポックスウイルスベクターは、生存しており、または不活性化ウイルスワクチンを調製する従来の方法により、例えばBEI(バイナリエチレンイミン)、ホルマリン等を用いて、不活性化されればよく、BEIが好ましい不活性化剤であるが、本発明のワクチンには、最適かつ強力な免疫学的効力のために、生アライグマポックスウイルスを用いるのが非常に望ましい。生アライグマポックスウイルスは、複製可能でもあり、すなわち、マスターシードウイルスからのワクチン開発のために、適切な培養において繁殖し、自らの複製を生成できる。
【0109】
液体として投与されるときには、本ワクチンは、従来の水溶液、シロップ剤、エリキシル剤、チンキ等の形において調製されうる。このような製剤は、従来技術において周知であり、ネコへの投与用の適切な担体または溶媒系における抗原および他の添加物の溶解または分散により、典型的に調製される。好適な無毒性の生理的に許容可能な担体または溶媒には、水、生食水、エチレングリコール、グリセロール等が含まれるがこれに限定されない。ワクチンは、凍結乾燥等により冷凍乾燥され、使用の直前に適切な希釈剤を用いて無菌的に再構築または再水和されてもよい。好適な希釈剤には、生食水、イーグル最小必須培地等が含まれるがこれに限定されない。典型的な添加物または補助剤は、例えば、承認された色素、香味剤、甘味剤、およびチメロサール(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム)、ネオマイシン、ポリミキシンB、アンフォテリシンB等の一つ以上の抗菌保存剤である。このような溶液は、例えば、部分的に加水分解されたゼラチン、ソルビトールまたは細胞培養培地の添加により安定化され、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、その混合物等の公知技術の試薬を用いた従来法により緩衝されうる。
【0110】
液状製剤は、他の標準的な補助剤と組み合わせて、懸濁または乳化剤を含む、懸濁液およびエマルションも含みうる。これらのタイプの液状製剤は、従来法により調製されうる。例えば、コロイドミルを用いて懸濁液を調製しうる。例えば、ホモジナイザを用いてエマルションを調製しうる。
【0111】
体液系への注射のために設計される非経口製剤は、適切な等張性およびネコの体液の対応するレベルへのpH緩衝を必要とする。等張性は、必要に応じて塩化ナトリウムおよび他の塩類により適切に調節されうる。ワクチン接種時に、ウイルスが、脱イオン水、生食水、リン酸緩衝食塩水等の生理的に許容可能な担体により解凍され(冷凍の場合)、または再構築される(凍結乾燥の場合)。プロピレングリコール等の適切な溶媒を用いて、製剤の成分の溶解性および液体製剤の安定性を増加させうる。
【0112】
任意の周知の方法を用いて、本発明の遺伝的コンストラクトを調製しうる。例えば、特定の制限部位を利用して、任意の所望の核酸配列を、標準的な方法を用いてアライグマポックスウイルスベクターへ挿入しうる。あるいは、大きな配列の挿入が望ましいとき、または本明細書に記載のように複数の遺伝子を挿入することが望まれるときには、相同的組み換え技術を利用しうる。この方法では、複数の遺伝子が挿入される挿入部位に隣接するプラスミド配列が、遺伝子組換えを媒介するために、アライグマポックスウイルスゲノムに存在する配列と十分な相同性を有する配列を含む。隣接配列は、ヘマグルチニン遺伝子座またはチミジンキナーゼ遺伝子座、またはセリンプロテアーゼインヒビター遺伝子座等、アライグマポックスウイルスの成長および増殖に必須でないアライグマポックスウイルスの領域に相同でなければならない。一つのプロモータを用いて、再結合される二つの外因性遺伝子の発現を誘導しうるが、挿入ベクターにおける、各プロモータが個別の遺伝子に作動可能に連結された二つのプロモータの使用も、効率的な発現を提供する。
【実施例】
【0113】
以下の実施例は、本発明のある態様を示す。しかし、これらの実施例は例示を目的とするにとどまり、本発明の条件および範囲について完全に限定するものではないと理解されなければならない。当然のことながら、典型的な反応条件(例えば温度、反応時間等)が与えられている場合には、一般にあまり好都合ではないものの、指定の範囲を上回る条件および下回る条件の両方が使用されてもよい。実施例は、室温(約23℃〜約28℃)で、大気圧で行われる。本明細書に引用される全ての部分およびパーセントは重量にもとづき、全ての温度は、別段の明示がない限り摂氏で表される。
【0114】
以下の実施例から、本発明のさらなる理解が得られる。これらの実施例は、本発明を、その範囲を制限することなく例示することを意図する。
【0115】
(実施例1)
プラスミドpFD2000A、pFD2001TK、およびpFD2003SELの構築
二つのプラスミドpFD2000AおよびpFD2003SELが、アライグマポックスウイルスゲノムのha遺伝子座に外来遺伝子を送達するために、以下のように構築された。相同的組み換えの精度および頻度を増すために、隣接ha配列が、ワクシニアウイルスからではなく、RCNVゲノムから直接クローニング/修飾される。
【0116】
同様に、プラスミドpFD20001TKが、アライグマポックスウイルスゲノムのtk遺伝子座に外来遺伝子を送達するために、構築された。相同的組み換えの精度および頻度を増すために、隣接tk配列が、ワクシニアウイルスからではなく、RCNVゲノムから直接クローニング/修飾される。
【0117】
(実施例2)
rRCNV―FCVコンストラクトの第一世代
rRCNV―FCV2280 Capsid(P11)が構築され、FCVカプシドの発現が、FCV ELISAおよびウエスタンブロットにより確認された。構築方法および宿主動物における組換えウイルスコンストラクトの評価には、以下の6つの主要ステップが含まれる:(1)FCV2280カプシド遺伝子をプラスミドベクターpFD2000Aにクローニングして、プラスミドpFD2000A FCV2280カプシドを生成;(2)COS7細胞、ステップ1のプラスミドおよびRCNVを用いた、スリーウェイ感染/トランスフェクションにより、プールクローンrRCNV―FCV2280を生成;(3)限界希釈およびFCV ELISAによる純クローンスクリーニング;(4)PCR、ELISA、およびウエスタンブロットによる、rRCNV―FCV2280の分子キャラクタリゼーション;(5)rRCNV―FCVマスターシードを確立;そして(6)rRCNV―FCV2280(P11)の用量漸増研究が、ネコにおいて行われた。曝露研究結果から、rRCNV―FCV2280により7.5Log10TCID50/mLで予防接種されたネコも、FCV255曝露からの有意な保護を示さないことが分かった。
【0118】
さらに、rRCNV―FCV2280 Capsid(PSEL)が、上記と類似のアプローチで構築され、FCVカプシドの発現が、FCV ELISAおよびウエスタンブロットにより確認された。
【0119】
(実施例3)
rRCNV―FCVコンストラクトの第二世代
rRCNV―FCVの第二世代が、実施例2のように構築されたが、FCV2280およびFCV DD1カプシド遺伝子の両方が(5’―372bpヌクレオチド欠失)、ha遺伝子座で挿入され、FCVカプシド発現が、FCV ELISAおよびウエスタンブロットにより確認された。このコンストラクトにおいては、組換えアライグマポックスウイルスは、FCV2280カプシド(P11)およびFCV DD1(PSEL)の両方をha遺伝子座で発現した。マスターシードは、rRCNV―FCV(2280―DD1)と指定された。用量漸増研究がネコにおいて行われ、結果は以下の通りにまとめられた:(1)7.5Log10TCID50/mLで予防接種された10匹のネコにおいて、FCVDD1力価の有意な血清中和が観察されたが、全てのコントロール(10匹)は、血清陰性にとどまった(ρ<0.05);(2)ワクチン接種群(6.5および7.5Log10TCID50/mL)における有意な熱低下が、コントロール(ρ<0.05)と比較して観察された;(3)ワクチン接種群(7.5Log10TCID50/mL)の口部および外部潰瘍(損傷)の有意な減少が、コントロール群(ρ<0.05)と比較して観察された。これらの結果は、rRCNV―FCV(2280―DD1)がワクチン候補として有用であることを示した。
【0120】
(実施例4)
rRCNV―FCVコンストラクトの第三世代
このコンストラクトにおいては、FCVカプシド遺伝子(2280―DD1―255)が、ha遺伝子座で挿入される。rRCNV―FCVの第三世代は、以下の四つの主要なステップにより構築された:(1)FCV255カプシドを(第二世代コンストラクトをつくるために用いられる)既存のプラスミドへクローニングして、プラスミドpFD2000A FCVカプシド(2280―DD1―255)を生成;(2)スリーウェイ感染/トランスフェクションにより、プールクローンを作製:COS7細胞、ステップ1のプラスミドおよびRCNV;(3)限界希釈およびFCV ELISAによるクローンスクリーニング;および(4)FCVカプシド遺伝子のRCNVゲノムへの挿入、そしてFCVカプシドの発現が、FCV PCR、ELISAおよびウエスタンブロットにより決定された。用量漸増研究が、ネコにおいて行われている。このコンストラクトは、ワクチンの効力を増加させ、第二世代コンストラクトと比較して保護スペクトルを広げる。
【0121】
(実施例5)
rRCNV―FVRコンストラクトの第一世代
rRCNV―FVR gD((P11)およびrRCNV―FVR gB((P11)が、実施例2に記載されるのと類似のアプローチにおいて構築された。構築方法は、以下の5つの主要なステップを含む:(1)FVR gD/gB糖タンパク質遺伝子を、プラスミドベクターpFD2000Aへクローニングして、それぞれプラスミドpFD2000A FVR gD、およびpFD2000A FVR gBを生成;(2)COS7細胞、ステップ1のプラスミドおよびRCNVを用いたスリーウェイ感染/トランスフェクションによる、プールクローンrRCNV―FVR gD/gBの生成;(3)プラーク精製/LacZスクリーニングによる、純クローンスクリーニング;(4)PCR、ELISAおよびウエスタンブロットによる、rRCNV―FVR gD(P11)およびrRCNV―FVR gB((P11)の分子キャラクタリゼーション;(5)rRCNV―FVRマスターシードを確立。
【0122】
(実施例6)
rRCNV―FVRコンストラクトの第二世代
rRCNV―FVRの第二世代が、以下の四つの主要なステップにより構築された:(1)FVR gD(糖タンパク質D)を既存のプラスミド(pFD2000A FVR gB)へクローニングして、プラスミドpFD2000A FVR gB/gDを生成;(2)スリーウェイ感染/トランスフェクションによるプールクローンの作製:COS7細胞、ステップ1のプラスミドおよびrRCNV―FeLV(blue―to―whiteスクリーニング、実施例13を参照);(3)限界希釈およびFeLV P27 ELISAによるクローンスクリーニング。このコンストラクトにおいては、FVR gD/gB遺伝子がha遺伝子座で挿入される;および、(4)RCNVゲノムへのFVR gD/gB遺伝子の挿入、そしてFVR gD/gBの発現が、FVR PCRおよびウエスタンブロットにより決定される。用量漸増研究が、ネコにおいて行われている。
【0123】
(実施例7)
rRCNV―FeLVコンストラクトの第一世代
rRCNV―FeLV gag―pr65((P11)およびrRCNV―FeLV env―gp70((P11)が、実施例2に記載されるのと類似のアプローチにおいて構築された。これらの二つのコンストラクトの用量漸増研究により、rRCNV―FeLV env―gp70コンストラクトは、FeLVウイルス血症に対して40%の防止(7.5Log10TCID50/mLで予防接種されたネコの2/5)が見られるが、rRCNV―FeLV gag―pr65は、FeLVウイルス血症からの保護が見られない(予防接種ネコの0/5)ことが示された。
【0124】
(実施例8)
rRCNV―FeLVコンストラクトの第二世代
rRCNV―FeLVの第二世代が、構築された。このコンストラクトにおいては、組換えアライグマポックスウイルスが、ha遺伝子座でFeLV gag―pr65―pro(PSEL)およびFeLV env―gp85(PSEL)の両方を発現した。構築方法およびネコにおけるワクチン候補評価は、以下の6つの主要なステップを含む:(1)FeLV gag―pr65―pro、およびFeLV env gp85をプラスミドベクターpFD2003SELへクローニング;(2)プラスミドpFD2003SEL FeLV gag―pr65―pro(PSEL)―env―gp85(PSEL)を構築;(3)COS7細胞、ステップ2のプラスミドおよびrRCNV―FCVを用いたスリーウェイ感染/トランスフェクションにより、プールクローンrRCNV―FeLVを生成;(3)限界希釈およびFeLV P27 ELISAによる純クローンスクリーニング;(4)PCR、ELISA、およびウエスタンブロットによるrRCNV―FeLVの分子キャラクタリゼーション;(5)rRCNV―FeLVマスターシードを確立;および(6)ネコにおける用量漸増研究。曝露の結果がまとめられた:二回投与計画(3週間隔)において、7.5、6.5、および5.5Log10TCID50/mLのrRCNV―FeLVにより、それぞれ、ネコに皮下ワクチン接種を行ったとき、7/10(70%)、6/10(60%)、および5/10(50%)のネコが、持続的FeLVウイルス血症から保護された。対照的に、予防接種していないネコの9/10(90%)が、持続的FeLVウイルス血症を示した。先の初代コンストラクトの失敗からみて、これらの予想外に良好な結果は、rRCNV―FeLVがワクチン候補として有用であることを示した。
【0125】
(実施例9)
rRCNV―FeLVコンストラクトの第三世代
このコンストラクトにおいては、FeLV gag―pr65―pro/env―gp85遺伝子が、tk遺伝子座で挿入される。rRCNV―FeLVの第三世代は、以下の四つの主要なステップにより構築された:(1)プラスミドpFD2006TK FeLV gag―pr65/env―gp85を生成;(2)スリーウェイ感染/トランスフェクションによりプールクローンを作製:COS7細胞、ステップ1のプラスミドおよびrRCNV―FeLV env―gp70(P11)(初代コンストラクトより、実施例7);(3)限界希釈およびFeLV P27 Elisaによるクローンスクリーニング;および(4)FeLV gag/env遺伝子のRCNVゲノムへの挿入、そしてFeLV gag/envの発現が、FeLV P27 ELISAおよびFeLV gp70ウエスタンブロットにより決定される。用量漸増研究が、ネコにおいて行われている。
【0126】
(実施例10)
rRCNV―FCPコンストラクトの第一世代
rRCNV―FCPエンベロープタンパク質(momp、P11)が、実施例2に記載したのと類似のアプローチで構築された(ha遺伝子座)。構築方法は、以下の5つの主要なステップを含む:(1)FCP momp遺伝子をプラスミドベクターpFD2000Aへクローニングして、プラスミドpFD2000A FCPmomp(P11)を生成;(2)COS7細胞、ステップ1のプラスミドおよびRCNVを用いたスリーウェイ感染/トランスフェクションにより、プールクローンrRCNV―FCPを生成;(3)プラーク精製/LacZスクリーニングによる純クローンスクリーニング;(4)PCRによるrRCNV―FCP momp(P11)の分子キャラクタリゼーション;および(5)rRCNV―FCP mompマスターシードの確立。
【0127】
(実施例11)
rRCNV―Feline IL―12コンストラクトの第一世代
ネコIL―12 P35およびP40遺伝子が、RT―PCRおよびTOPOクローニングにより、ネコのリンパ節組織からクローニングされ、ネコIL―12 P35およびP40遺伝子が配列決定された。rRCNV―Feline IL―12 P35(P11)およびrRCNV―Feline IL―12(P11)が、実施例2のように構築された。ha遺伝子座でのネコIL―12 P35およびP40発現が、P40特異的ウエスタンブロットにより決定された。
【0128】
(実施例12)
rRCNV―Feline IL―12コンストラクトの第二世代
このコンストラクトにおいては、ネコIL―12 P35/P40遺伝子が、ha遺伝子座に挿入される。rRCNV―FeLV IL―12の第二世代は、以下の四つの主要なステップにより構築される:(1)プラスミドpFD2003SEL Feline IL―12 P35/P40を構築;(2)スリーウェイ感染/トランスフェクションによりプールクローンを作製:COS7細胞、ステップ1のプラスミドおよびrRCNV―FeLV(blue―to―whiteスクリーニングまたはネコIL―12 P40 ELISA);(3)限界希釈およびFeLV P27 ElisaまたはFeline IL―12 P40 ELISAによるクローンスクリーニング;および(4)ネコIL―12 P35/P40遺伝子のRCNVゲノムへの挿入、そしてネコIL―12 P35/P40の発現が、ネコIl―12 PCRおよびP40ウエスタンブロットにより決定される。免疫に対するネコIL―12サイトカインの増強効果を評価するために、用量漸増研究(生または不活性化rRCNV―ネコIL―12で調製される各ネコ抗原)が、ネコにおいて行われている。
【0129】
(実施例13)
組換えRCNVベクトル系のためのBlue―To―Whiteスクリーニングマーカ
rRCNV―FeLV gag(初代コンストラクト)、およびrRCNV―FeLV(gag―pr65―pro//env gp85、第二世代コンストラクト)が、任意のRCNVベクター化組換えワクチンを構築するための、blue―to―white(btw)スクリーニングの親として使用される。このシステムの利点は、RCNV野生型(白色プラーク)ではなくrRCNV―FeLV(FeLV P27遺伝子発現のため青色プラーク)を親株として利用することであり、任意の外来性目的遺伝子(または防御抗原)が、ha/tk遺伝子座で挿入されて、対立遺伝子交換によりha/tk DNA配列中で隣接するDNAフラグメントを含むFeLV P27に置換される。従って、FeLV P27抗原ELISAが、96穴プレートスクリーニングシステムにおいて、組換え(白色プラーク)を親株(FeL P27発現のため青色プラーク)から、容易に区別しうる。このシステムを用いて、rRCNV―Feline IL―12およびrRCNV―FVRが構築される。
【0130】
(実施例14)
組換えRCNV―ベクター系におけるスクリーニングマーカとしての挿入された免疫原(Immuogen)の発現
このコンセプトは、rRCNV―FCVの構築において適用された(上記の実施例3および4を参照)。得られた組換えクローンが、FCVカプシド特異的ELISAによりスクリーニングされた。固有の特徴は、スクリーニングのためにLacZ等の外来マーカが必要とされないことである。このコンセプトは、例えばrRCNV―FeLV(P27 ELISA)、rRCNV―ネコIL―12(P40 ELISA)等、免疫原特異的なELISAが利用可能であれば、本発明の全てのrRCNVウイルスコンストラクトにおいて使用できる。
【0131】
(実施例15)
ウイルス安定性
野外環境および実験室条件における微生物の生存性がテストされた。実験室条件下で、コンストラクトrRCNV FIPV―N(ネコ伝染性腹膜炎ウイルスヌクレオカプシド遺伝子を発現する組換えRCNV)が、最高継代で調製されたウイルスストック(MSV+5)を−70、4―8、および37℃で保つことによりテストされている。ウイルスストックの試料が、指定の間隔で除去され、様々な貯蔵条件下でのこのウイルスの安定性を決定するために滴定が行われた。−70℃および4―8℃で90日間、および4―8℃未満で33ヶ月間貯蔵したときに、ウイルス力価の有意な減少がないことにより、安定剤を含むウイルスの凍結乾燥ケーキおよびウイルスの液体懸濁液の両方が、安定していると認められた。37℃で、14日目に液体ウイルスのウイルス力価の有意な減少が観察された。37℃で28日目までに、このアッセイによりウイルスを検出できなくなった。このウイルスは、冷蔵貯蔵されたときに非常に安定しているようである。
【0132】
(実施例16)
rRCNV―Feline IL―12コンストラクトの第二世代
簡単にいうと、ウイルスrRCNV―Feline IL―12が、非病原性Herman株RCNVゲノムの血球凝集(ha)遺伝子座への、ネコIL―12 P35およびP40遺伝子の挿入により構築された。ネコIL―12 P35およびP40遺伝子が、RT―PCRを用いて、ネコのリンパ性節(lymphoid node)からクローニングされた。
【0133】
rRCNV―Rabies G2の構築プロセスは、二つの主要なステップにより提供された。第一に、PCR増幅されたネコIL―12の669bp P35および990bp P40遺伝子が、プラスミドpFD2003SELベクターにサブクローニングされて、プラスミドpFD2003SEL―Feline IL―12 P35―(SEL)―P40が生成された。P35およびP40遺伝子の両方が、それぞれプロモータPSELの制御下で同時発現される。第二に、COS―7細胞における、RCNVおよびプラスミドpFD2003SEL―Feline IL―12(P35―P40)のスリーウェイ共感染/トランスフェクションが行われて、ha遺伝子座での対立遺伝子交換により、rRCNV―Feline IL―12が生成された。ネコIL―12―発現クローンが、四連続ラウンドの限界希釈およびVero細胞におけるP40 ELISAによりスクリーニングされた。クローン候補が、0.05%ラクトアルブミン水解物(LAH)、30μg/mL硫酸ゲンタマイシンおよび5%ウシ胎児血清を添加したMinimum Essential Medium(MEM)を用いてVero細胞においてさらにもう二回増幅され、その後、ネコIL―12 P40遺伝子特異的PCRおよびネコIL―12 P40 ELISAにより確認された。第六継代を用いて、プレマスターシードが調製された。プレマスターシードの1:10,000希釈によりマスターシードが確立され、rRCNV―Feline IL―12と指定された。生ベクターとしてのアライグマポックスウイルスが、ha遺伝子座でネコIL―12 P35およびP40タンパク質をそれぞれ発現できる。ネコIL―12サイトカインの免疫に対する増強効果を評価するために、rRCNV―FPV/FCV/FVR/FCP/FeLV/Rabiesおよび異なる用量のrRCNV―ネコIL―12を用いた用量漸増研究が、ネコにおいて行われている。
【0134】
以上において、本発明の特定の実施形態の詳細な記載が、制限ではなく例示の目的で提供された。本開示に基づいて当業者に明らかな他の全ての変形、派生物および等価物が、請求される本発明の範囲内に含まれるものと理解されねばならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じネコ病原体の二つ以上の異なる株からのタンパク質を各々がコードする二つ以上の外因性の相同な核酸分子を含む、組み換えアライグマポックスウイルスベクター(rRCNV)であって、該核酸分子の少なくとも二つが、ヘマグルチニン(ha)遺伝子座またはチミジンキナーゼ(tk)遺伝子座に挿入されるか、または、該核酸分子の少なくとも一つが、該ヘマグルチニンおよび該チミジンキナーゼ遺伝子座の各々に挿入される、組み換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項2】
前記アライグマポックスウイルスが、生存しており、複製可能である、請求項1に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項3】
前記外因性核酸分子の少なくとも一つが、ネコカリシウイルスカプシドタンパク質をコードする、請求項1に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項4】
前記外因性核酸分子の少なくとも一つが、FCV―2280のネコカリシウイルスカプシドタンパク質をコードする、請求項1に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項5】
前記FCV―2280カプシドタンパク質をコードする核酸分子が、発現のための初期―後期プロモータに作動可能に連結され、前記プロモータが、発現のための合成初期―後期プロモータでありうる、請求項3に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項6】
前記アライグマポックスウイルスゲノムの前記ヘマグルチニン遺伝子座または前記チミジンキナーゼ遺伝子座に挿入された、FCV―DD1のネコカリシウイルスカプシドタンパク質をコードする核酸分子をさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項7】
前記FCV―2280カプシドタンパク質をコードする核酸分子が、発現のためのワクシニアウイルス後期プロモータに作動可能に連結され、前記FCV―DD1カプシドタンパク質をコードする前記核酸分子が、発現のための初期―後期プロモータに作動可能に連結され、該プロモータが、発現のための合成初期―後期プロモータでありうる、請求項6に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項8】
前記アライグマポックスウイルスゲノムの前記ヘマグルチニン遺伝子座または前記チミジンキナーゼ遺伝子座に挿入された、FCV―255のネコカリシウイルスカプシドタンパク質をコードする核酸分子をさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項9】
ネコウイルス性鼻気管炎ウイルス糖タンパク質gDまたはネコウイルス性鼻気管炎ウイルス糖タンパク質gBをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一つに記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項10】
ネコ白血病ウイルスタンパク質をコードする少なくとも一つの外因性核酸分子をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一つに記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項11】
ネコ白血病ウイルスenvタンパク質またはgagタンパク質の少なくとも一つをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子をさらに含む、請求項10に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項12】
前記ウイルス抗原をコードする核酸分子が、発現のための初期―後期プロモータに作動可能に連結され、該プロモータが、発現のための合成初期―後期プロモータでありうる、請求項10に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項13】
異なるネコ病原体からのネコタンパク質をコードする少なくとも一つの異種核酸分子をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一つに記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項14】
Chlamydophila felisタンパク質をコードする少なくとも一つの外因性酸分子をさらに含む、請求項1〜13のいずれかに記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項15】
Chlamydophila felisの外膜タンパク質をコードする少なくとも一つの外因性核酸分子をさらに含む、請求項1に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項16】
前記外膜タンパク質遺伝子の核酸配列が、発現のためのワクシニアウイルス後期プロモータに作動可能に連結される、請求項15に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項17】
前記アライグマポックスウイルスゲノムの前記ヘマグルチニン遺伝子座または前記チミジンキナーゼ遺伝子座に挿入された、ネコインターロイキン12のP35タンパク質をコードする核酸分子と、ネコインターロイキン12のP40タンパク質をコードする核酸分子とをさらに含む、請求項1〜16のいずれか一つに記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項18】
前記アライグマポックスウイルスゲノムの前記チミジンキナーゼおよび前記ヘマグルチニン遺伝子座に加えて、該アライグマポックスウイルスゲノムの第三非必須部位に挿入されたネコタンパク質をコードする核酸分子をさらに含む、請求項1〜17のいずれか一つに記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項19】
前記アライグマポックスウイルスゲノムの前記第三非必須部位が、セリンプロテアーゼインヒビター部位である、請求項18に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター。
【請求項20】
免疫学的に有効な量の、請求項1〜19のいずれか一つに記載の組換えアライグマポックスウイルスベクターと、必要に応じて、適切な担体または希釈剤とを含む、ネコワクチン。
【請求項21】
免疫学的に有効な量の、請求項1〜19のいずれか一つに記載の組換えアライグマポックスウイルスベクターを二つ以上と、必要に応じて、適切な担体または希釈剤とを含む、ネコワクチン。
【請求項22】
前記ワクチンが、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、Bartonella細菌、FCV―Diva、FCV―Kaos、FCV―Bellingham、FCV―F9、FCV―F4、FCV―M8、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、一つ以上の追加的なネコ抗原の混合物をさらに含む、請求項21に記載のネコワクチン。
【請求項23】
前記ワクチンが、rRCNV―FCV2280、rRCNV―FCV2280―FCVDD1、rRCNV―FCV2280―FCVDD1―FCV255、rRCNV―FVR gD、rRCNV―FVR gB、rRCNV―FVR gD+gB、rRCNV―FeLV gag―pr65―pro/env―gp85、rRCNV―FeLV gag―pr65―pro―env―gp85(TK)//env―gp70(HA)、rRCNV―FCP momp、およびrRCNV―ネコIL―12 P35/P40からなる群より選択される、組換えアライグマポックスウイルスベクターの二つ以上の混合物を含む、請求項21に記載のネコワクチン。
【請求項24】
前記ワクチンが、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、Bartonella細菌、FCV―Diva、FCV―Kaos、FCV―Bellingham、FCV―F9、FCV―F4、FCV―M8およびそれらの組み合わせからなる群より選択される一つ以上の追加的ネコ抗原の混合物をさらに含む、請求項21に記載のネコワクチン。
【請求項25】
ネコにおいて、ネコ病原体に対する防御免疫応答を誘導するための方法であって、有効な免疫化量の請求項20〜24のいずれか一つに記載のワクチンを、該ネコに投与するステップを含む、方法。
【請求項26】
配列番号1、2、3または4のいずれか一つのヌクレオチド配列を含む、プラスミド。
【請求項27】
前記ワクチンの有効な免疫化量が、少なくとも約4.5Log10TCID50/mlである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ワクチンの有効な免疫化量が、約4.5Log10TCID50/ml〜約7.5Log10TCID50/mlの範囲である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記ワクチンが、単回用量または反復用量として投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記ワクチンが、アジュバントを含まない、請求項20〜24のいずれかに記載のワクチン。
【請求項31】
a)ネコ病原体の二つ以上の異なる株からの同じネコタンパク質を各々がコードする、少なくとも一つの外因性核酸および少なくとも一つの相同な外因性核酸であって、該少なくとも一つの相同な核酸が、ha遺伝子座またはtk遺伝子座の少なくとも一つに挿入される、外因性核酸;または
b)同じネコ病原体からの少なくとも一つの異なるネコタンパク質を各々の核酸がコードする、少なくとも二つの外因性核酸であって;該外因性核酸のうちの一つが、ha部位またはtk部位の少なくとも一つに挿入されるか、または、少なくとも一つの核酸がha遺伝子座に挿入され、そして少なくとも一つの核酸がtk遺伝子座に挿入される、外因性核酸
を含む、組換えアライグマポックスウイルスベクター(RCNV)。
【請求項32】
ネコ病原体の二つ以上の異なる株からの同じネコタンパク質を各々がコードする、少なくとも二つの相同な外因性核酸分子を含み、該相同な外因性核酸分子が、ha遺伝子座、tk遺伝子座、セリンプロテアーゼインヒビター遺伝子座に挿入されるか、または、少なくとも一つの相同な外因性核酸分子が、ha遺伝子座、tk遺伝子座、またはセリンプロテアーゼインヒビター遺伝子座の各々に挿入される、請求項1または31のいずれかに記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター(RCNV)。
【請求項33】
前記少なくとも二つの外因性核酸分子の少なくとも一つが、ネコカリシウイルスタンパク質、ネコ鼻気管炎の糖タンパク質gB、ネコ鼻気管炎の糖タンパク質gD、ネコ白血病ウイルス由来のgagタンパク質、ネコ白血病ウイルス由来のenvタンパク質、Chlamydophila felisタンパク質、およびネコインターロイキン12のP35およびP40タンパク質からなる群より選択される一つの異なるネコタンパク質をコードする、請求項31に記載の組換えアライグマポックスウイルスベクター(RCNV)。
【請求項34】
免疫学的に有効な量の、請求項1、13、18、31、32および33のいずれか一つより選択される二つ以上の組換えアライグマポックスウイルスベクターを含む、ネコワクチン。
【請求項35】
ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、Bartonella細菌、FCV―Diva、FCV―Kaos、FCV―Bellingham、FCV―F9、FCV―F4、FCV―M8、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、一つ以上の追加的なネコ抗原の混合物をさらに含む、請求項34に記載のネコワクチン。
【請求項36】
ネコにおいて、ネコ病原体に対する防御免疫応答を誘導するための方法であって、有効な免疫化量の請求項34または35のいずれか一つに記載のワクチンを、該ネコに投与するステップを含む、方法。
【請求項37】
前記ワクチンの前記有効な免疫化量が、少なくとも約4.5Log10TCID50/mlである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ワクチンの前記有効な免疫化量が、約4.5Log10TCID50/ml〜約7.5Log10TCID50/mlの範囲である、請求項36に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−528603(P2010−528603A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510314(P2010−510314)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/006732
【国際公開番号】WO2008/150404
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】