説明

ネジ、締結システム、管継手および該ネジの製造方法

【課題】長期にわたって緩みが防止でき、且つ高いシール性が維持できるネジ、該ネジの製造方法、該ネジを用いた締結システム、該ネジを用いた管継手を提供する。
【解決手段】本発明に係るネジ1は、インサート芯3の外周に、外周にネジ山が形成され、該インサート芯3よりも軟らかい材料からなるネジ山部材2が密着して形成され、前記インサート芯3の先端部3aならびに後端部3bもしくは該後端部3bよりも該先端部3a寄りの中間部に、前記ネジ山部材2を軸線方向に挟み込む大径部32、34が形成され、前記先端部3aの大径部32の外周には、前記ネジ山部材2のネジ山に連続するネジ山33が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ、該ネジの製造方法、該ネジを用いた締結システムおよび管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
ネジ部品に関して、長期にわたって緩みを防止することが従来からの課題となっている。
例えば、特許文献1に記載されたネジのように、脚部の軸線に沿って、ネジ山谷部より深い溝を形成し、その溝に金属線とこれを内包する樹脂材とからなる緩み止め部材を嵌挿して、樹脂材が雌ネジに沿って弾力性を有して変形すると共に、金属線が雌ネジによって樹脂材の弾発力に抗して溝内に押圧されることにより緩みを防止する技術が提案されている。
他の例として、特許文献2に記載されたネジのように、脚部の外周面において、雌ネジとの螺合範囲に、雄ネジのネジ溝よりも一段低い幅広の谷底となる取付溝を設け、その取付溝に螺合相手のネジ山に接触して弾性変形する弾性体を装着することにより緩みを防止する技術が提案されている。
その他にも、雄ネジの外周に樹脂を付着させる構成を備えて緩みを防止する技術が提案されている(特許文献3参照)。
【0003】
ただし、上記のように、異種部材の組合せ(結合)によって、緩み止め作用を生じさせるネジにおいては、締結時に相手方のネジから軸線方向に効力を受けることとなるため、しばしば異種部材同士が軸線方向において相互に位置ずれを生じさせ、締結力が低下するという課題が生じ得る。
そのような課題の解決を目的として、例えば、特許文献4に記載されたネジのように、ネジ頭部の軸芯となる第1の部材と、その表面に対して先端部を除く所定位置からネジ頭部に当接する位置にかけて密着結合固定されて一体化形成された別材料からなるネジ山部を持つ第2の部材とを組み合わせた構造であって、第1の部材のネジ芯部の先端部分に、締結時の締結目的部材からの抗力による軸芯方向からの位置ずれ変形を抑制して抜け止め機能として働く略円板状の係止部が、第2の部材の先端面部分に係止可能に設けられて、締結力の保持および外周に設けられる部材の抜け止めを図る技術が提案されている。
【0004】
ところで、配管用に用いられる管用ネジに関しては、従来より、ネジ山がテーパ形状に形成された管用テーパネジが広く用いられている。特に、流体を通過させる用途に使用されるものである以上、長期にわたって緩まないこと、および高いシール性を達成することが課題となっている。
【0005】
そのような課題の解決を目的として、例えば、特許文献5に記載されたネジのように、雄ネジを有するピン部と、雌ネジを有する溝を設けたボックス部とから構成し、この溝にフッ素系樹脂リングを挿入して、管用ネジ継手を構成し、フッ素系樹脂リングを円周方向に均一に圧縮変形させることにより、良好な耐内圧性能を維持する技術が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−240964号公報
【特許文献2】特開平9−177924号公報
【特許文献3】特開平8−42545公報
【特許文献4】特開2004−190800号公報
【特許文献5】特開平10−212889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、テーパネジは締結時において、軸線方向の抗力が生じるのみならず、径方向に圧縮力が作用することとなる。そのため、例えば、螺合されるネジ部同士の間に密着性を高める別部材を設けた場合、当該別部材が軸線方向のねじ込む方向およびそれと逆の方向の両方向に、いわば流出するように変形が生じて、締結が緩むという課題が生じ得る。
また、例えば、ネジ部(例えば、雄ネジ部)を芯材と外周材とからなる二重構造に形成した場合には、外周材が相手のネジ部(例えば、雌ネジ部)から受ける軸線方向の抗力によって、ねじ込む方向と逆方向に変形して芯材と外周材との位置ずれ、および上記同様に、当該外周材が軸線方向のねじ込む方向およびそれと逆の方向の両方向に、いわば流出するように変形が生じて、締結が緩むという課題が生じ得る。これは、特に外周材が樹脂からなる場合に顕著に生じ得る。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、長期にわたって緩みが防止でき、且つ高いシール性が維持できるネジ、該ネジの製造方法、該ネジを用いた締結システム、該ネジを用いた管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
このネジは、インサート芯の外周に、外周にネジ山が形成され、該インサート芯よりも軟らかい材料からなるネジ山部材が密着して形成され、前記インサート芯の先端部ならびに後端部もしくは該後端部よりも該先端部寄りの中間部に、前記ネジ山部材を軸線方向に挟み込む大径部が形成され、前記先端部の大径部の外周には、前記ネジ山部材のネジ山に連続するネジ山が形成されることを要件とする。
【0011】
これによれば、ネジの締結を行う際に、軸線方向のねじ込む方向およびそれと逆の方向の両方向に、流出するように生じる変形を抑止することが可能となり、また、ねじ込む方向と逆方向に変形してインサート芯とネジ山部材との位置ずれが生じることを防止することが可能となる。それにより、長期にわたって緩みを防止することができる。
また、当該ネジ山部材のネジ山に連続するように、先端部の大径部の外周にネジ山を形成することによって、それらを一つのネジとして一体で機能させつつ、上記の効果を最適化することが可能となる。
【0012】
また、前記ネジ山部材は、テーパネジ形状に形成されることを要件とする。
【0013】
特にこのネジは、ネジ山部材をテーパネジ形状に形成する場合、すなわち、径方向の圧縮力が作用する場合に、軟らかい材料からなるネジ山部材が螺合相手のネジ形状に対応して隙間を埋めるように変形して密着するため、シール性が格段に向上する。
【0014】
また、前記インサート芯の内部に、軸線方向に貫通する流体配管を備えることを要件とする。
【0015】
これによれば、管用ネジとして構成することができ、通過流体に対して高いシール性を保つことが可能となる。
【0016】
また、前記流体配管の少なくとも一部の断面形状が、回動工具を嵌入するための多角形もしくは楕円形の貫通孔に形成されることを要件とする。
【0017】
これによれば、外周のネジ山部材に軟らかい材料を使用して前述の効果を達成しつつ、硬い材料を使用するインサート芯に工具連結部を形成することができる。また、インサート芯の小型化、低コスト化が可能となる。
【0018】
また、前記インサート芯の外周形状が、前記ネジ山部材のネジ山の山および谷と山および谷の位置が軸線方向において一致するネジ形状を有することを要件とする。
【0019】
これによれば、インサート芯の外周において、ネジ山部材の厚さを均一化することが可能となり、締結の際に生じる力を均等に作用させることができ、変形防止に効果的である。
【0020】
また、前記インサート芯の外周には、前記ネジ形状を構成するネジ溝を周方向に分断する複数のリブが形成されることを要件とする。
【0021】
これによれば、締結の際、インサート芯とネジ山部材との間に高荷重が加わっても、特に、周方向へ相互に位置ずれ・変形することが防止できる。
【0022】
また、前記インサート芯の外周には、軸線方向に延びる複数の突起部もしくは複数の溝部が形成されることを要件とする。
【0023】
前記同様、これによれば、締結の際、インサート芯とネジ山部材との間に高荷重が加わっても、特に、周方向へ相互に位置ずれ・変形することが防止できる。
【0024】
また、前記インサート芯は、ポリアミドMXD6樹脂もしくはポリフェニレンサルファイド樹脂を用いて構成されることを要件とする。
【0025】
これによれば、強度、耐熱性、弾性強度、耐薬品性、寸法安定性に優れ、工具の嵌入・使用が可能であり、ネジ部材として用いられる場合の高荷重にも耐えられる。
【0026】
また、前記インサート芯に密着して形成されるネジ山部材は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いて構成されることを要件とする。
【0027】
これによれば、熱安定性や寸法精度、電気特性に優れるため、外周のネジ山の材料として好適である。
【0028】
この締結システムは、前記ネジを管用テーパ雄ネジとし、該管用テーパ雄ネジと管用テーパ雌ネジもしくは管用平行雌ネジとを組み合わせて締結を行うことを要件とする。
【0029】
これによれば、汎用性を持たせた管用ネジの締結システムとして実施することが可能となる。
【0030】
この管継手は、一端側に前記のネジからなるネジ部を備え、他端側に外部配管を接続する継手部を備えることを要件とする。
【0031】
これによれば、長期にわたってシール性の高い管継手が実現可能となる。
【0032】
このネジの製造方法、前記インサート芯の形成時もしくは形成後に設けられる位置合せマークが所定位置となるように、該インサート芯を固定機構によって金型内に固定し、前記インサート芯の外周に密着形成されるネジ山部材の材料を前記金型内に充填して、前記インサート芯の外周にネジ山部材を密着形成すると同時に、該ネジ山部材のネジ山が前記インサート芯の先端部の大径部の外周に形成されたネジ山と連続するように形成することを要件とする。
【0033】
これによれば、特に、インサート芯の外周に密着形成されたネジ山部材のネジ山と、該インサート芯の大径部の外周に一体形成されたネジ山とが連続するように形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、螺合するネジ同士の密着性を高めて、締結部のシール性を向上させることが可能であると共に、長期にわたってネジ山の変形を抑止し、変形に起因した締結の緩みを防止することが可能なネジ、該ネジの製造方法、該ネジを用いた締結システム、該ネジを用いた管継手が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳しく説明する。図1は、本発明の第一の実施の形態に係るネジ1の例を示す概略図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は正面断面図である。図2は、そのネジ1のインサート芯3の構成を示す概略図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図、図2(c)は正面断面図である。図3は、そのネジ1のネジ山部材2とインサート芯3との密着部の構成を示す拡大図である。図4は、そのネジ1のインサート芯3の外周部の構成を示す拡大図である。図5は、そのネジ1を備える管継手7の構成を示す概略図である。図6は、本発明の第二の実施の形態に係るネジ1の例を示す概略図であり、図6(a)は平面図、図6(b)は正面断面図である。図7は、そのネジ1を備える管継手7の構成を示す概略図である。図8は、本発明の実施の形態に係る締結システムの構成を示す概略図である。
【0036】
図1に示すように、本実施の形態に係るネジ1は、インサート芯3の外周に、ネジ山部材2が密着して形成されて、雄ネジとして構成される。また、インサート芯3の先端部3aおよび後端部3b(後端部3bよりも先端部3a寄りの中間部でもよい)には、ネジ山部材2を軸線方向に挟み込む大径部32および34がそれぞれ形成される。
【0037】
ここで、ネジ山部材2は、インサート芯3よりも軟らかい材料で構成する。これにより、特に、ネジ山部材2のネジ山をテーパネジ形状に形成する場合に顕著な効果が生じる。より具体的には、締結する際、径方向の圧縮力が作用して、軟らかい材料からなるネジ山部材2が螺合相手のネジ部(ここでは雌ネジ(図8符合8参照))の形状に対応して隙間を埋めるように変形して密着するため、シール性が格段に向上する。なお、前述の通り、軟らかい材料は、径方向の圧縮力によって、軸線方向のねじ込む方向およびそれと逆の方向の両方向に、いわば流出するように変形が生じてしまうが、本実施形態では、インサート芯3の先端部3aおよび後端部3bに設けられる大径部32および34によって、ネジ山部材2のネジ山の両端部が挟み込まれて形成されているため、そのような変形が抑止されて、変形に起因した締結の緩みが長期にわたって防止される。
【0038】
上記変形を抑止するために、変形が生じる位置、すなわちネジ山部材2の山部21aおよび谷部21bの外径位置において、大径部32および34によって挟み込むように構成することが好適である。しかし、大径部32および34の外径は、ネジ山部材2の山部21aの外径よりも大きく形成すれば、挟み込みは十分となるが、先端部3aの大径部32がネジ山部材2の山部21aよりも大径になると、雌ネジとの螺合が不可能となる。したがって、大径部34はネジ山部材2の山部21aよりも大径で、且つ大径部32はネジ山部材2の山部21aと同径である構成が、ネジ山部材2のネジ山の両端部全体に接して抑止を行うために最適であるといえる。当該構成を実現するため、本実施形態では、特に、インサート芯3の先端部3aの大径部32の外周に、ネジ山部材2のネジ山に連続するネジ山33が形成されている。すなわち、ネジ山部材2の山部21aおよび谷部21bと、ネジ山33の山部33aおよび谷部33bとが、それぞれ連続するように形成されて、一つのネジとして一体で機能させると共に、大径部32の外径を、許容範囲内で最適化(最大化)している。
【0039】
加えて、本実施形態では、図3に示すように、インサート芯3の外周形状が、ネジ山部材2のネジ山の山および谷(山部21aおよび谷部21b)と山および谷の位置が軸線方向において一致するネジ形状(山部36aおよび谷部36b)を有する。それによって、インサート芯3に相対的に硬い材料(例えば、高強度樹脂)を使用し、その外周のネジ山部材2に相対的に軟らかい材質(例えば、樹脂)を均一に成形することにより、工具を使用してインサート芯3を回動させても破壊されることなく、且つネジ締めに伴う高荷重によるネジ山部材2のネジ山の欠落・変形・経年変化等がない構造を可能にする。
【0040】
さらに、図4に示すようにインサート芯3の外周には、ネジ形状を構成するネジ溝36bを周方向に分断する凸状のリブ37が複数形成される。また、図2に示すようにインサート芯3の外周には、軸線方向に延びる複数の突起部38、および複数の溝部39が形成され、ネジ山部材2の延出部22によって被覆される。
これらによって、締結の際、インサート芯3とネジ山部材2との間に高荷重が加わっても、特に、周方向へ相互に位置ずれ・変形することが防止でき、経年変化も防止できる。
【0041】
ここで、使用材料の例として、インサート芯3は、ポリアミドMXD6樹脂もしくはポリフェニレンサルファイド樹脂等が好適である。ポリアミドMXD6樹脂は、強度、耐熱性、弾性強度、耐薬品性、寸法安定性に優れ、工具の嵌入・使用が可能であり、ネジ部材として用いられる場合の高荷重にも耐えられる材料で、ガラス繊維を50%含ませることにより、さらに性能を向上させることができる。最適材料はReny(三菱瓦斯化学株式会社登録商標)である。また、ポリフェニレンスルファイド樹脂は、強度や剛性がきわめて高く、耐磨耗性にも優れる。ポリアミドMXD6樹脂よりも靭性が低いものの、食品安全性が高く、アメリカ食品医薬品局および米国科学財団では食品機器厨房用品や水道飲用水に接触する部分への使用を認可しているため、ネジの使用用途によっては最適材料となる。
一方、ネジ山部材2は、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が好適である。熱安定性や寸法精度、電気特性に優れるため、外周のネジ部分の材料として適している。
【0042】
前述の通り、本実施形態に係るネジ1は、高いシール性が達成可能であるため、管用ネジとして実施すると好適である。実施例として、インサート芯3の内部に、当該インサート芯3の径の中心を通って軸線方向に貫通する流体配管を設けることによって、管用ネジとして構成することができる。
【0043】
一般に、管用ネジは、内部に配管を備えるため、回動用の工具を嵌入するための工具連結部は外周部に設けざるを得ない。しかし、本実施形態では、外周部すなわちネジ山部材2は軟らかい材料からなるため、工具連結部を形成するには不適である。その一方で、工具連結部を形成するために、インサート芯3をネジ山部材2の延出部22よりも、後端部1bの方向に長く延出させて形成してしまうと、コンパクト性に欠けることとなる。
【0044】
そこで、本実施形態においては、流体配管と工具連結部との兼用が可能な構造を案出することによって、ネジ1を管用ネジとして好適に実施できる構成を実現した(図1参照)。
より具体的には、インサート芯3の内部に、流体配管とネジ1を回転させる回動工具を嵌入するための工具連結部とを兼用する断面が多角形の貫通孔5を、当該インサート芯3の径の中心を通って軸線方向に貫通するように設けている。
【0045】
一例として、貫通孔5は、軸線方向の一部もしくは全部を正六角形に形成する。それによって、汎用六角レンチを使用して締結することが可能となり、ネジ部品としての汎用性が向上する。
ただし、貫通孔5の断面形状は正六角形には限定されず、他の多角形(例えば星型のような形状も含む)、もしくは楕円等のように正円以外の曲線からなる形状であってもよい。
【0046】
さらに、図8に示すように、本実施形態に係るネジ1を管用テーパ雄ネジとして形成し、これと管用テーパ雌ネジ8、もしくは管用平行雌ネジ(不図示)とを組み合わせて締結を行う締結システムとして構成することが可能である。例えば、JISB203の規格を適用することで、汎用性を高めることが可能となる。
なお、図8中の管用テーパ雌ネジ8は、例えば、流体機器(不図示)等における接続部として形成される等の態様が考えられる。
【0047】
また、好適な実施例として、図5に示すように、一端側に本実施形態に係るネジ1を備え、他端側に外部配管を接続する継手部6を備える管継手7として実施する構成が考えられる。
【0048】
より詳しくは、管継手7は、筒状の本体61を備え、その一端に管80が挿入される開口部62が設けられ、他端がネジ1に接続される。本体61の内部には、管80を接続するための接続機構(不図示)が設けられ、開口部62には、ゴム製のパッキン(不図示)が設けられ、本体61および挿入される管80に隙間なく密着することにより、通過させる流体が漏れないようにシールを行うと共に、前記接続機構および前記パッキンを固定するためのリング状のキャップ部63が設けられる。
本実施形態では、継手部6の筒状の本体61と、ネジ山部材2とを、前記樹脂を用いて一体に形成する。
【0049】
続いて、第二の実施の形態に係るネジ1について説明する。
図6に示すように、前記第一の実施の形態に係るネジ1との相違点として、後端部1bに連結部41が設けられる。当該連結部41は、一例として、インサート芯3に連続して一体で形成される。
【0050】
本実施の形態に係るネジ1を用いて、管継手7を構成する際の実施例として、継手部6を別体として形成しておき、連結部41に連結する構成が考えられる(図7参照)。
この構成によれば、継手部6の多品種化に対応しつつ、ネジ部(ネジ1)の共通化を図り、製造コストの削減、あるいは量産化が可能となる。
【0051】
続いて、本実施の形態に係るネジ1の製造方法について説明する。
前述の通り、ネジ1は、大径部32および34によってネジ山部材2のネジ山が挟み込まれる構成であって、特に、インサート芯3の先端部3aの大径部32の外周に、ネジ山部材2のネジ山に連続するネジ山33が形成される構成を備える。
これを受けて、ネジ1の製造方法における特徴的な構成として、インサート芯3には、製造時もしくは製造後に位置合せマーク51を形成しておき、当該位置合せマーク51が周方向における所定の位置となるように、インサート芯3を固定機構(不図示)によって金型(不図示)内に固定し、次いで、インサート芯3の外周に密着形成されることとなるネジ山部材2の材料を前記金型内に充填して、次いで、インサート芯3の外周にネジ山部材2を密着形成すると同時に、ネジ山部材2のネジ山がインサート芯3の先端部3aの大径部32の外周に形成されたネジ山33と連続するように形成を行う工程を備える。それによって、ネジ山部材2のネジ山と、ネジ山33とが、連続する一つのネジとして一体で機能するように、ネジ1を製造することが可能となる。
なお、位置合せマーク51はどのような形状であっても構わないが、本実施形態では、断面正六角形の貫通孔5の先端部の一辺に位置合せ溝51aを形成すると共に、これに対応する位置合せ突起(不図示)を前記固定機構に設ける構成としている。
【0052】
以上の説明のように、本発明に係るネジによれば、ネジ山部材に軟らかい材料を用いて、螺合するネジとの密着性を高め、締結部のシール性を向上させることが可能であると共に、当該ネジ山部材が必要以上に変形してしまうことを抑止し、変形に起因した締結の緩みを防止することができる。また、それらの効果を、長期にわたって持続させることが可能となる。
また、このネジを用いることにより、締結システム、あるいは管継手として好適に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係るネジの例を示す概略図である。
【図2】図1のネジのインサート芯の構成を示す概略図である。
【図3】図1のネジのネジ山部材とインサート芯との密着部の構成を示す拡大図である。
【図4】図1のネジのインサート芯の外周部の構成を示す拡大図である。
【図5】図1のネジを備える管継手の構成を示す概略図である。
【図6】本発明の第二の実施の形態に係るネジの例を示す概略図である。
【図7】図6のネジを備える管継手の構成を示す概略図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る締結システムの構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ネジ
2 ネジ山部材
3 インサート芯
5 貫通孔
6 継手部
7 管継手
32、34 大径部
33 ネジ山
37 リブ
38 突起部
39 溝部
41 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート芯の外周に、外周にネジ山が形成され、該インサート芯よりも軟らかい材料からなるネジ山部材が密着して形成され、
前記インサート芯の先端部ならびに後端部もしくは該後端部よりも該先端部寄りの中間部に、前記ネジ山部材を軸線方向に挟み込む大径部が形成され、
前記先端部の大径部の外周には、前記ネジ山部材のネジ山に連続するネジ山が形成されること
を特徴とするネジ。
【請求項2】
前記ネジ山部材は、テーパネジ形状に形成されること
を特徴とする請求項1記載のネジ。
【請求項3】
前記インサート芯の内部に、軸線方向に貫通する流体配管を備えること
を特徴とする請求項1または請求項2記載のネジ。
【請求項4】
前記流体配管の少なくとも一部の断面形状が、回動工具を嵌入するための多角形もしくは楕円形の貫通孔に形成されること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のネジ。
【請求項5】
前記インサート芯の外周形状が、前記ネジ山部材のネジ山の山および谷と山および谷の位置が軸線方向において一致するネジ形状を有すること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のネジ。
【請求項6】
前記インサート芯の外周には、前記ネジ形状を構成するネジ溝を周方向に分断する複数のリブが形成されること
を特徴とする請求項5記載のネジ。
【請求項7】
前記インサート芯の外周には、軸線方向に延びる複数の突起部もしくは複数の溝部が形成されること
を特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載のネジ。
【請求項8】
前記インサート芯は、ポリアミドMXD6樹脂もしくはポリフェニレンサルファイド樹脂を用いて構成されること
を特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載のネジ。
【請求項9】
前記インサート芯に密着して形成されるネジ山部材は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いて構成されること
を特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載のネジ。
【請求項10】
請求項3〜9のいずれか一項記載のネジを管用テーパ雄ネジとし、該管用テーパ雄ネジと管用テーパ雌ネジもしくは管用平行雌ネジとを組み合わせて締結を行うこと
を特徴とする締結システム。
【請求項11】
一端側に請求項3〜9のいずれか一項記載のネジからなるネジ部を備え、他端側に外部配管を接続する継手部を備えること
を特徴とする管継手。
【請求項12】
前記インサート芯の形成時もしくは形成後に設けられる位置合せマークが所定位置となるように、該インサート芯を固定機構によって金型内に固定し、
前記インサート芯の外周に密着形成されるネジ山部材の材料を前記金型内に充填して、
前記インサート芯の外周にネジ山部材を密着形成すると同時に、該ネジ山部材のネジ山が前記インサート芯の先端部の大径部の外周に形成されたネジ山と連続するように形成すること
を特徴とする請求項1〜9のいずれか一項記載のネジの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−101430(P2010−101430A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273531(P2008−273531)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【特許番号】特許第4330030号(P4330030)
【特許公報発行日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(302012822)有限会社浜インターナショナル (12)