ネジ供給機
【課題】ネジ携帯冶具に、短時間で所望の本数のネジを正確に供給する。
【解決手段】第1抑止部材26は、供給レール部材上に存在する全てのネジのスライドを抑止する第1状態と抑止しない第2状態との間で遷移し、第2抑止部材28は、供給レール部材22の下端部からn本目よりも上側のネジのスライドを抑止しない第3状態と抑止する第4状態との間で遷移する。そして、リンク部材24は、第1抑止部材が第1状態にあり、第2抑止部材が第3状態にあるときに、ネジ携帯冶具16が供給レール部材に装着されるのと連動して、第2抑止部材28を第4状態とし、その後に、第1抑止部材26を第2状態とする。これにより、ネジ携帯冶具を供給レール部材に装着するのみで、供給レール部材の第1抑止部材と第2抑止部材との間に位置していたネジが、供給レール部材からネジ携帯冶具にほぼ同時に供給される。
【解決手段】第1抑止部材26は、供給レール部材上に存在する全てのネジのスライドを抑止する第1状態と抑止しない第2状態との間で遷移し、第2抑止部材28は、供給レール部材22の下端部からn本目よりも上側のネジのスライドを抑止しない第3状態と抑止する第4状態との間で遷移する。そして、リンク部材24は、第1抑止部材が第1状態にあり、第2抑止部材が第3状態にあるときに、ネジ携帯冶具16が供給レール部材に装着されるのと連動して、第2抑止部材28を第4状態とし、その後に、第1抑止部材26を第2状態とする。これにより、ネジ携帯冶具を供給レール部材に装着するのみで、供給レール部材の第1抑止部材と第2抑止部材との間に位置していたネジが、供給レール部材からネジ携帯冶具にほぼ同時に供給される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、ネジ供給機に関し、特にネジ携帯冶具に対してネジを供給するネジ供給機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動ドライバを用いてワークのネジ留め作業を行う場合、作業者は、ネジ整列供給機から電動ドライバを用いてネジをピックアップしていた。この場合、作業者は、電動ドライバをワークとネジ整列供給機との間で往復させる必要があった。これに対し、最近では、電動ドライバの往復動作を削減する方法として、作業者が、電動ドライバを持たない側の手で、予めネジが装填された携帯冶具(マガジンとも呼ばれる)等を持つ方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−10452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の方法では、ネジ整列供給機が携帯冶具にネジを供給する際に、非接触式のセンサを利用して、ネジの供給量等を電気的に制御する。このため、ネジ整列供給機には外乱によるネジの脱落や誤作動によるネジの過剰供給などが発生し、供給精度が低下するおそれがある。また、特許文献1では、ネジ整列供給機から携帯冶具に対するネジの供給は1本ずつ行われるため、供給本数が多い場合にはネジ供給に長時間を要するおそれがある。
【0005】
そこで本件は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ネジ携帯冶具に対して、短時間で所望の本数のネジを正確に供給することが可能なネジ供給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載のネジ供給機は、ネジを複数本貯留可能で、重力により前記ネジが下方にスライド可能な傾斜を有するレールを含むレール部材と、前記レール上端から前記レール部材に対して前記ネジを供給する供給部と、前記レール部材の下端部近傍に配置され、前記レール上に存在する全てのネジのスライドを抑止する第1状態と抑止しない第2状態との間で遷移する第1抑止部材と、前記レールの下端部から所定本数目よりも上側のネジのスライドを抑止しない第3状態と抑止する第4状態との間で遷移する第2抑止部材と、前記第1抑止部材が第1状態にあり、前記第2抑止部材が第3状態にあるときに、前記レールからネジの供給を受けるネジ携帯冶具が前記レール部材の下端部に装着されることで、当該装着の動きと連動して、前記第2抑止部材を第4状態とし、その後に、前記第1抑止部材を第2状態とする連動機構と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本明細書に記載のネジ供給機は、ネジ携帯冶具に対して、短時間で所望の本数のネジを正確に供給することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(a)は、一実施形態に係るネジ供給機の構成を概略的に示す側面図であり、図1(b)は、図1(a)に対応する平面図である。
【図2】レール部材を示す斜視図である。
【図3】図3(a)は、リンク部材及び第1抑止部材を示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)の分解斜視図である。
【図4】図4(a)は、第2抑止部材を示す斜視図であり、図4(b)は、第2抑止部材を−X側から見た状態を示す図である。
【図5】図5(a)は、ネジ携帯冶具の平面図であり、図5(b)は、ネジ携帯冶具16の側面図である。
【図6】ネジ携帯冶具をバッファユニットに装着する際の、バッファユニットの動きを示す図(その1)である。
【図7】ネジ携帯冶具をバッファユニットに装着する際の、バッファユニットの動きを示す図(その2)である。
【図8】ネジ携帯冶具をバッファユニットに装着する際の、バッファユニットの動きを示す図(その3)である。
【図9】ネジ携帯冶具をバッファユニットに装着する際の、バッファユニットの動きを示す図(その4)である。
【図10】図10(a)〜図10(c)は、第2抑止部材の調整ピン機構の動きを説明するための図である。
【図11】図11(a),図11(b)は、第1抑止部材の動きを説明するための図である。
【図12】ネジ携帯冶具をバッファユニットから取り外す際の、バッファユニットの動きを示す図(その1)である。
【図13】ネジ携帯冶具をバッファユニットから取り外す際の、バッファユニットの動きを示す図(その2)である。
【図14】ネジ携帯冶具をバッファユニットから取り外す際の、バッファユニットの動きを示す図(その3)である。
【図15】ネジ供給機の動作の流れを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ネジ供給機の一実施形態について、図1〜図15に基づいて詳細に説明する。図1(a)は、一実施形態にかかるネジ供給機100の側面図であり、図1(b)は、ネジ供給機100の平面図である。
【0010】
図1(a)に示すように、ネジ供給機100は、供給部としてのネジ供給装置10と、ネジ供給装置10に接続された、バッファユニット12と、を備える。バッファユニット12は、支持部材14により載置面F上で支持されている。
【0011】
ネジ供給装置10は、図1(b)の平面図に示すように、ネジを複数個保持可能なレール部分10aを有している。ネジ供給装置10には、レール部分10aに、規定本数のネジが存在しているか否かを検出するセンサ(例えば、光センサ)が設けられている。また、ネジ供給装置10は、センサの検出結果に基づいて、レール部分10a上に規定本数のネジが存在するように、レール部分10aにネジを1本ずつ供給する機能を有している。
【0012】
バッファユニット12は、図1(a)、図1(b)に示すように、供給レール部材22と、供給レール部材22の側面に設けられた連動部材としてのリンク部材24と、第1抑止部材26と、第2抑止部材28と、を有する。
【0013】
図2には、供給レール部材22が斜視図にて示されている。なお、図2では、供給レール部材22の長手方向をY軸方向とし、これに直交する2方向をX軸方向及びZ軸方向としている。以下においては、この座標系を適宜用いて説明するものとする。供給レール部材22は、Y軸方向に延びるレール部材本体32と、レール部材本体32の+Y側端部に設けられた第1、第2ガイド部材34,36と、レール部材本体32の+X側面に設けられた固定部材44と、を有する。レール部材本体32は、+Z側から溝32aが形成され、XZ断面がU字状の形状を有している。溝32aは、図1(a)、図1(b)に示すように、複数本のネジを貯留可能な、レールとしての機能を有する。
【0014】
第1ガイド部材34は、図2に示すように、レール部材本体32の+X側の面に設けられている。この第1ガイド部材34は、矩形枠状の形状を有しており、その+X側の壁には、ボールプランジャ38が設けられている。第2ガイド部材36は、断面略L字状の形状を有し、レール部材本体32の−Z側面及び−X側面と接触している。固定部材44は、XZ断面がU字状の形状を有している。なお、これら第1ガイド部材34、第2ガイド部材36、及び固定部材44の機能等については、後述する。
【0015】
上記のように構成される供給レール部材22は、図1(a),図1(b)に示すように、−Y側の端部にてネジ供給装置10に接続される。この場合、供給レール部材22は、当該供給レール部材22が保持しているネジが重力により下方にスライド可能な程度の傾斜で、ネジ供給装置10に接続される。この接続状態では、ネジ供給装置10のレール部分10aと、溝32aとが連通するようになっている。
【0016】
図3(a)には、リンク部材24及び第1抑止部材26が斜視図にて示されている。また、図3(b)には、図3(a)の分解斜視図が示されている。リンク部材24は、図3(a)に示すようにY軸方向を長手方向とし、その長手方向中央部近傍に、+Z方向に突出する凸部24aを有している。凸部24aには、引っ張りコイルバネ42の一端が接続されている。引っ張りコイルバネ42の他端は、図1(a)に示すように供給レール部材22(より具体的には、レール部材本体32)に固定されている。また、リンク部材24には、図3(a)に示すように、+X方向に突出する2本のガイドピン24b,24cが設けられている。更に、リンク部材24の+Y側端部近傍には、板状の従属部24dが固定されている。リンク部材24は、レール部材本体32に固定された固定部材44に対して、図3(b)に示すように挿通しており、リンク部材24は、Y軸方向に移動可能とされている。
【0017】
第1抑止部材26は、図3(a)に示すように、+X側から見て略台形状の本体部26aと、本体部26aから+Z方向に突出するように設けられた略L字状の腕部26bと、を有する。第1抑止部材26は、図3(b)に示すように、本体部26aにおいて固定部材44に回動自在に固定される。また、第1抑止部材26には、図3(a)に示すように、圧縮コイルバネ46の一端が接続されている。この圧縮コイルバネ46の他端は、図1(a)に示すように供給レール部材22に接続されている。
【0018】
図4(a)には、第2抑止部材28が斜視図にて示されている。図4(a)に示すように、第2抑止部材28は、XZ断面が略L字状の上下動部52と、上下動部52に保持された調整ピン機構54と、を有する。上下動部52は、YZ方向に広がる面を有する第1部分152Aと、XY方向に広がる面を有する第2部分152Bと、を有する。第1部分152Aには、Y軸及びZ軸に交差する方向に延びるガイド孔52a,52bが貫通形成されている。第2部分152Bには、Y軸方向に延びるガイド孔52cが貫通形成されている。
【0019】
図4(b)には、第2抑止部材28を−X側から見た状態が示されている。図4(b)に示すように、調整ピン機構54は、上下動部52(第2部分152B)上側に設けられた板状部材154と、板状部材154の−Z面に設けられた調整ピン156と、板状部材154及び調整ピン156の、上下動部52に対する位置を固定する固定機構164と、を有する。固定機構164は、ネジ158、ワッシャ(座金)160、及びナット162を含んでいる。固定機構164によると、ネジ158を緩めることで、板状部材154及び調整ピン156を、ガイド孔52cに沿ってY軸方向に移動することができる。また、ネジ158を締めることにより、板状部材154及び調整ピン156のガイド孔52cに対する位置を固定することができる。
【0020】
第2抑止部材28は、図1(a)に示すように、ガイド孔52a、52bにおいて、リンク部材24が有するガイドピン24b,24cに係合する。また、第2抑止部材28は、不図示の規制部材により、その移動方向が図1(a)の矢印B方向のみに規制されている。このため、リンク部材24が長手方向に移動すると、ガイド孔52a,52b及びガイドピン24b,24cによるガイド機能と、規制部材による規制機能とにより、第2抑止部材28は、矢印B方向に移動するようになっている。
【0021】
以上のように構成されるバッファユニット12では、その下端部に、図5(a)、図5(b)に示すようなネジ携帯冶具16を装着することができる。このネジ携帯治具16は、ワークに対してネジ留めを行う作業者が、電動ドライバを持たない側の手で保持するものである。このネジ携帯治具16には、複数のネジを貯留させることが可能である。図5(a)は、ネジ携帯冶具16の側面図であり、図5(b)は、ネジ携帯冶具16の平面図である。これら、図5(a)、図5(b)に示すように、ネジ携帯冶具16は、2枚の板状部材62a、62bと、板状部材62a,62bを連結する連結部材64と、板状部材62aに固定された押圧部材66と、を有する。板状部材62a,62bの間には、隙間68が形成されている。この隙間68は、ネジ供給装置10のレール部分10a及び供給レール部材22(レール部材本体32)の溝32aと、同一の幅寸法を有している。ネジ携帯冶具16では、隙間68においてネジを複数個保持することが可能となっている。押圧部材66は、板状部材62aの長手方向に突出した状態で、板状部材62aに固定されている。なお、図5(a)、図5(b)では、図示を省略しているが、ネジ携帯冶具16の押圧部材66が設けられている側とは反対側の端部には、ネジの脱落を防止し、ネジを貯留するためのストッパ等が設けられている。
【0022】
次に、本実施形態におけるネジ供給機100の動作について、図6〜図15に基づいて詳細に説明する。図6〜図9及び図12〜図14は、ネジ携帯冶具16をバッファユニット12に装着する際又はバッファユニット12からネジ携帯冶具16を取り外す際の、バッファユニット12の動きを示す図である。また、図10は第2抑止部材28の調整ピン機構54の動きを説明するための模式図であり、図11は、第1抑止部材26の動きを説明するための模式図である。また、図15は、ネジ供給機100の動作の流れを示す流れ図である。
【0023】
ネジ供給機100の動作の前提として、ネジ携帯冶具16は、図6に示すように、ネジを1本も保持していないものとする。また、バッファユニット12にはネジが貯留されており、ネジ供給装置10のレール部分10aにも、ネジが規定本数だけ供給されているものとする。この図6の状態では、第2抑止部材28の調整ピン機構54とネジの位置関係は図10(a)のようになっており、調整ピン機構54の調整ピン156とネジは非接触となっている。また、図6の状態では、第1抑止部材26の腕部26bは、図11(a)に示すように、レール部材本体32に貯留されているネジのうち、最下端に位置するネジS1に接触している。これにより、レール部材本体32上の全てのネジのスライドが、腕部26bによって抑止された状態(第1状態)となっている。なお、第1抑止部材26(腕部26b)の図11(a)のような状態を、閉状態とも呼ぶものとする。また、図6に示すリンク部材24の位置を初期位置と呼ぶものとする。
【0024】
このような状態から、作業者は、図6に示すように、供給レール部材22の下端部に対してネジ携帯冶具16の装着を開始する(図15のステップS10参照)。この場合、作業者は、ネジ携帯冶具16の板状部材62a,62bを第2ガイド部材36の2面に沿わせるとともに、押圧部材66を第1ガイド部材34の内部に挿入するようにして、ネジ携帯冶具16を供給レール部材22に装着する。このように、第1ガイド部材34及び第2ガイド部材36を利用することで、ネジ携帯冶具16と供給レール部材22とを正確に位置決めしつつ、供給レール部材22にネジ携帯冶具16を装着することができる。
【0025】
図6の状態から、図7に示すように、作業者が、ネジ携帯冶具16を更に押し込むと、押圧部材66がリンク部材24に接触し、リンク部材24は初期位置から矢印A方向に移動する。なお、図7のリンク部材24の位置を「第1位置」と呼ぶものとする。このリンク部材24の第1位置への移動により、リンク部材24のガイドピン24b,24cも矢印A方向に移動するので、これに連動して、ガイド孔52a,52bを有する第2抑止部材28が矢印B方向に移動する。これにより、図10(b)に示すように、調整ピン機構54も矢印B方向に移動するため、調整ピン156は、ネジS1から所定本目(ここでは4本目)のネジS4と、その上((n+1)本目)のネジS(n+1)(ここでは、ネジS5)との間に入り込む(図15のステップS20参照)。この調整ピン156の入り込みにより、調整ピン156は、供給レール部材22の下端部から4本目のネジよりも上側のネジS5のスライドを抑止していない状態(第3状態)から、抑止している状態(第4状態)に遷移するようになっている。
【0026】
次いで、図8に示すように、作業者がネジ携帯冶具16を、図7の状態から更に押し込むと、リンク部材24は更に矢印A方向に移動する。図8のリンク部材24の位置を「第2位置」と呼ぶものとする。このリンク部材24の第2位置への移動の間、リンク部材24の端部に設けられた従属部24dも矢印A方向に移動する。そして、この移動の間に、従属部24dは第1抑止部材26に接触する。この接触により、第1抑止部材26は、矢印C方向に回動するようになる。この第1抑止部材26の回動は、圧縮コイルバネ46の弾性力に抗して行われる。これにより、第1抑止部材26の腕部26bは、ネジS1に接触した第1状態(図11(a))から、図11(b)に示すような、ネジS1と接触しない第2状態に遷移する(図15のステップS30参照)。なお、以下においては、図11(b)のように、第1抑止部材26がネジのスライドを抑止しない状態(第2状態)を、開状態とも呼ぶものとする。なお、図8に示すようにリンク部材24が第2位置に移動すると、第2抑止部材28も、矢印B方向に更に移動する。このため、調整ピン156も矢印B方向に更に移動して、図10(c)の状態になる。
【0027】
ここまでの動作を経て、図8のようにリンク部材24が第2位置に移動した段階では、第1抑止部材26は、圧縮コイルバネ46の作用により、開状態になる。また、第2抑止部材28の調整ピン156は、4番目のネジS4と5番目のネジS5との間に挿入されている。これにより、図9に示すように、ネジS1〜S4は、重力により下方にスライドし、ネジ携帯冶具16に4本のネジがほぼ同時に供給される(図15のステップS40参照)。一方、ネジS4よりも上側に位置するネジは、第2抑止部材28の調整ピン156により、スライドしないようになっている。なお、ネジ携帯冶具16が図8、図9の位置にある状態では、第1ガイド部材34に設けられているボールプランジャ38により、ネジ携帯冶具16がバッファユニット12の下端部で保持されるようになっている。
【0028】
図9に示すようにネジ携帯冶具16にネジが供給された後は、作業者は、ネジ携帯冶具16を取り外す。この場合、リンク部材24が引っ張りコイルバネ42の弾性力により第2位置から第1位置まで戻ることで、図12に示すように、第1抑止部材26が開状態から閉状態に遷移する。また、リンク部材24が第2位置から初期位置まで戻る間に、第2抑止部材28が矢印B’方向に移動するので、図13に示すように、調整ピン156とネジS5とが非接触状態に戻る(図15のステップS50参照)。
【0029】
上記のように、調整ピン156と、ネジS5とが非接触状態になると、供給レール部材22及びネジ供給装置10のレール部分10a上に存在するネジが、図14に示すように、供給レール部材22の傾斜に沿って、スライドする。このスライドしたネジは、閉状態の第1抑止部材26に接触して、停止する。
【0030】
その後は、ネジ供給装置10が、レール部分10a上に規定本数のネジが存在するまで、ネジを1本ずつ供給する(図15のステップS60参照)。このような動作を経ることにより、図6の初期状態に戻るようになっている。
【0031】
ここで、第2抑止部材28の調整ピン機構54は、前述したように、図4のガイド孔52cに対する位置、すなわち、Y軸方向に関する位置を変更可能である。したがって、作業者は、ネジ携帯冶具16に必要本数のネジが供給されるように、事前に、調整ピン機構54の位置を調整しておけば良い。
【0032】
ここまでの説明から分かるように、本実施形態では、リンク部材24(ガイドピン24b,24c及び従属部24dを含む)と、バネ42,46と、ガイド孔52b,52cと、を含んで連動機構が構成されている。
【0033】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、ネジ供給装置10からネジが供給される供給レール部材22が、ネジを複数本貯留可能で重力によりネジが下方にスライド可能な程度の傾斜を有する溝32aを有し、供給レール部材22の下端部近傍に配置された第1抑止部材26は、溝32a上に存在する全てのネジのスライドを抑止する閉状態(第1状態)と抑止しない開状態(第2状態)との間で遷移する。また、第2抑止部材28は、供給レール部材22の下端部からn本目よりも上側のネジのスライドを抑止しない状態(第3状態)と抑止する状態(第4状態)との間で遷移する。そして、リンク部材24は、第1抑止部材26が第1状態にあり、第2抑止部材が第3状態にあるときに、ネジ携帯冶具16が供給レール部材22に装着されることで、当該装着の動きと連動して、第2抑止部材28を第4状態とし、その後に、第1抑止部材26を第2状態とする。これにより、ネジ携帯冶具16を供給レール部材22に装着するのみで、供給レール部材22に貯留されていたネジのうち、第1抑止部材26と第2抑止部材28との間のネジが、供給レール部材22からネジ携帯冶具16にほぼ同時に供給される。したがって、ネジ携帯冶具16を供給レール部材22に装着するのみで、ネジ携帯冶具16に対して短時間で所望の本数のネジを供給することができる。なお、供給レール部材22に対するネジ供給装置10からのネジの供給は、従来と同様1本ずつ行われるが、本実施形態によれば、作業者はその供給が行われている間にも、ネジ携帯治具16のネジを用いた作業を継続することができる。
【0034】
また、本実施形態では、従来のようにネジ供給において電気的な制御を行わないことから、外乱によるネジの脱落や誤作動によるネジの過剰供給などが発生することがない。このため、所望の本数のネジを正確に供給することができる。
【0035】
また、本実施形態では、上記のようにネジを正確に供給することができるので、ネジの締め忘れを容易に発見することができる。具体的には、供給されるべき本数以上のネジがネジ携帯冶具16に貯留された場合に、ネジの締め忘れがあったと判断することができる。
【0036】
また、本実施形態によると、第1抑止部材26は、供給レール部材22の最も下側に位置するネジに下側から当接しており、ネジ携帯冶具16が供給レール部材22に装着されるときに、ネジ携帯冶具16からの力を受けてリンク部材24が移動し、かつ当該移動による力を受けて第1抑止部材26が第1状態から第2状態に遷移する。したがって、特別な制御等を行うことなく、ネジ携帯冶具16の装着に連動して、第1抑止部材26を第1状態から第2状態に遷移させることができる。
【0037】
また、本実施形態によると、第2抑止部材28の調整ピン156が、溝32aの下端部から所定本数よりも上側に位置するネジに下方側から当接しており、ネジ携帯冶具16が供給レール部材22に装着されるときに、ネジ携帯冶具16から受けた力により移動したリンク部材24から力を受けて、第2抑止部材28が第3状態から第4状態に遷移する。したがって、特別な制御等を行うことなく、ネジ携帯冶具16の装着に連動して、第2抑止部材28を第3状態から第4状態に遷移させることができる。
【0038】
更に、本実施形態では、リンク部材24が第1位置にあるときに、第2抑止部材28が第3状態から第4状態に遷移し、リンク部材24が更に移動して第2位置にあるときに、第1抑止部材26が第1状態から第2状態に遷移する。したがって、特別な制御等を行うことなく、第2抑止部材28の状態遷移のタイミングと、第1抑止部材26の状態遷移のタイミングとをずらすことができる。
【0039】
また、本実施形態では、第2抑止部材28の調整ピン156の位置を変更可能であり、当該変更により、ネジ携帯冶具16に供給するネジの本数を変更する。これにより、作業者の必要とする本数のネジをネジ携帯冶具16に供給することが可能である。
【0040】
なお、上記実施形態では、ネジ携帯冶具16に押圧部材66が設けられており、当該押圧部材66とリンク部材24とが接触する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、リンク部材24を押圧部材66の長さ分だけ長くし、押圧部材66を省略することとしても良い。このようにしても、ネジ携帯冶具16とリンク部材24とが接触するため、上記実施形態と同様のネジ供給を行うことが可能である。
【0041】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 ネジ供給装置(供給部)
22 供給レール部材(レール部材)
24 リンク部材(連動部材、連動機構の一部)
24b,24c ガイドピン(連動機構の一部)
26 第1抑止部材
28 第2抑止部材
32a 溝(レール)
42 引っ張りコイルバネ(連動機構の一部)
46 圧縮コイルバネ(連動機構の一部)
52a,52b ガイド孔(連動機構の一部)
100 ネジ供給機
【技術分野】
【0001】
本件は、ネジ供給機に関し、特にネジ携帯冶具に対してネジを供給するネジ供給機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動ドライバを用いてワークのネジ留め作業を行う場合、作業者は、ネジ整列供給機から電動ドライバを用いてネジをピックアップしていた。この場合、作業者は、電動ドライバをワークとネジ整列供給機との間で往復させる必要があった。これに対し、最近では、電動ドライバの往復動作を削減する方法として、作業者が、電動ドライバを持たない側の手で、予めネジが装填された携帯冶具(マガジンとも呼ばれる)等を持つ方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−10452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の方法では、ネジ整列供給機が携帯冶具にネジを供給する際に、非接触式のセンサを利用して、ネジの供給量等を電気的に制御する。このため、ネジ整列供給機には外乱によるネジの脱落や誤作動によるネジの過剰供給などが発生し、供給精度が低下するおそれがある。また、特許文献1では、ネジ整列供給機から携帯冶具に対するネジの供給は1本ずつ行われるため、供給本数が多い場合にはネジ供給に長時間を要するおそれがある。
【0005】
そこで本件は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ネジ携帯冶具に対して、短時間で所望の本数のネジを正確に供給することが可能なネジ供給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載のネジ供給機は、ネジを複数本貯留可能で、重力により前記ネジが下方にスライド可能な傾斜を有するレールを含むレール部材と、前記レール上端から前記レール部材に対して前記ネジを供給する供給部と、前記レール部材の下端部近傍に配置され、前記レール上に存在する全てのネジのスライドを抑止する第1状態と抑止しない第2状態との間で遷移する第1抑止部材と、前記レールの下端部から所定本数目よりも上側のネジのスライドを抑止しない第3状態と抑止する第4状態との間で遷移する第2抑止部材と、前記第1抑止部材が第1状態にあり、前記第2抑止部材が第3状態にあるときに、前記レールからネジの供給を受けるネジ携帯冶具が前記レール部材の下端部に装着されることで、当該装着の動きと連動して、前記第2抑止部材を第4状態とし、その後に、前記第1抑止部材を第2状態とする連動機構と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本明細書に記載のネジ供給機は、ネジ携帯冶具に対して、短時間で所望の本数のネジを正確に供給することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(a)は、一実施形態に係るネジ供給機の構成を概略的に示す側面図であり、図1(b)は、図1(a)に対応する平面図である。
【図2】レール部材を示す斜視図である。
【図3】図3(a)は、リンク部材及び第1抑止部材を示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)の分解斜視図である。
【図4】図4(a)は、第2抑止部材を示す斜視図であり、図4(b)は、第2抑止部材を−X側から見た状態を示す図である。
【図5】図5(a)は、ネジ携帯冶具の平面図であり、図5(b)は、ネジ携帯冶具16の側面図である。
【図6】ネジ携帯冶具をバッファユニットに装着する際の、バッファユニットの動きを示す図(その1)である。
【図7】ネジ携帯冶具をバッファユニットに装着する際の、バッファユニットの動きを示す図(その2)である。
【図8】ネジ携帯冶具をバッファユニットに装着する際の、バッファユニットの動きを示す図(その3)である。
【図9】ネジ携帯冶具をバッファユニットに装着する際の、バッファユニットの動きを示す図(その4)である。
【図10】図10(a)〜図10(c)は、第2抑止部材の調整ピン機構の動きを説明するための図である。
【図11】図11(a),図11(b)は、第1抑止部材の動きを説明するための図である。
【図12】ネジ携帯冶具をバッファユニットから取り外す際の、バッファユニットの動きを示す図(その1)である。
【図13】ネジ携帯冶具をバッファユニットから取り外す際の、バッファユニットの動きを示す図(その2)である。
【図14】ネジ携帯冶具をバッファユニットから取り外す際の、バッファユニットの動きを示す図(その3)である。
【図15】ネジ供給機の動作の流れを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ネジ供給機の一実施形態について、図1〜図15に基づいて詳細に説明する。図1(a)は、一実施形態にかかるネジ供給機100の側面図であり、図1(b)は、ネジ供給機100の平面図である。
【0010】
図1(a)に示すように、ネジ供給機100は、供給部としてのネジ供給装置10と、ネジ供給装置10に接続された、バッファユニット12と、を備える。バッファユニット12は、支持部材14により載置面F上で支持されている。
【0011】
ネジ供給装置10は、図1(b)の平面図に示すように、ネジを複数個保持可能なレール部分10aを有している。ネジ供給装置10には、レール部分10aに、規定本数のネジが存在しているか否かを検出するセンサ(例えば、光センサ)が設けられている。また、ネジ供給装置10は、センサの検出結果に基づいて、レール部分10a上に規定本数のネジが存在するように、レール部分10aにネジを1本ずつ供給する機能を有している。
【0012】
バッファユニット12は、図1(a)、図1(b)に示すように、供給レール部材22と、供給レール部材22の側面に設けられた連動部材としてのリンク部材24と、第1抑止部材26と、第2抑止部材28と、を有する。
【0013】
図2には、供給レール部材22が斜視図にて示されている。なお、図2では、供給レール部材22の長手方向をY軸方向とし、これに直交する2方向をX軸方向及びZ軸方向としている。以下においては、この座標系を適宜用いて説明するものとする。供給レール部材22は、Y軸方向に延びるレール部材本体32と、レール部材本体32の+Y側端部に設けられた第1、第2ガイド部材34,36と、レール部材本体32の+X側面に設けられた固定部材44と、を有する。レール部材本体32は、+Z側から溝32aが形成され、XZ断面がU字状の形状を有している。溝32aは、図1(a)、図1(b)に示すように、複数本のネジを貯留可能な、レールとしての機能を有する。
【0014】
第1ガイド部材34は、図2に示すように、レール部材本体32の+X側の面に設けられている。この第1ガイド部材34は、矩形枠状の形状を有しており、その+X側の壁には、ボールプランジャ38が設けられている。第2ガイド部材36は、断面略L字状の形状を有し、レール部材本体32の−Z側面及び−X側面と接触している。固定部材44は、XZ断面がU字状の形状を有している。なお、これら第1ガイド部材34、第2ガイド部材36、及び固定部材44の機能等については、後述する。
【0015】
上記のように構成される供給レール部材22は、図1(a),図1(b)に示すように、−Y側の端部にてネジ供給装置10に接続される。この場合、供給レール部材22は、当該供給レール部材22が保持しているネジが重力により下方にスライド可能な程度の傾斜で、ネジ供給装置10に接続される。この接続状態では、ネジ供給装置10のレール部分10aと、溝32aとが連通するようになっている。
【0016】
図3(a)には、リンク部材24及び第1抑止部材26が斜視図にて示されている。また、図3(b)には、図3(a)の分解斜視図が示されている。リンク部材24は、図3(a)に示すようにY軸方向を長手方向とし、その長手方向中央部近傍に、+Z方向に突出する凸部24aを有している。凸部24aには、引っ張りコイルバネ42の一端が接続されている。引っ張りコイルバネ42の他端は、図1(a)に示すように供給レール部材22(より具体的には、レール部材本体32)に固定されている。また、リンク部材24には、図3(a)に示すように、+X方向に突出する2本のガイドピン24b,24cが設けられている。更に、リンク部材24の+Y側端部近傍には、板状の従属部24dが固定されている。リンク部材24は、レール部材本体32に固定された固定部材44に対して、図3(b)に示すように挿通しており、リンク部材24は、Y軸方向に移動可能とされている。
【0017】
第1抑止部材26は、図3(a)に示すように、+X側から見て略台形状の本体部26aと、本体部26aから+Z方向に突出するように設けられた略L字状の腕部26bと、を有する。第1抑止部材26は、図3(b)に示すように、本体部26aにおいて固定部材44に回動自在に固定される。また、第1抑止部材26には、図3(a)に示すように、圧縮コイルバネ46の一端が接続されている。この圧縮コイルバネ46の他端は、図1(a)に示すように供給レール部材22に接続されている。
【0018】
図4(a)には、第2抑止部材28が斜視図にて示されている。図4(a)に示すように、第2抑止部材28は、XZ断面が略L字状の上下動部52と、上下動部52に保持された調整ピン機構54と、を有する。上下動部52は、YZ方向に広がる面を有する第1部分152Aと、XY方向に広がる面を有する第2部分152Bと、を有する。第1部分152Aには、Y軸及びZ軸に交差する方向に延びるガイド孔52a,52bが貫通形成されている。第2部分152Bには、Y軸方向に延びるガイド孔52cが貫通形成されている。
【0019】
図4(b)には、第2抑止部材28を−X側から見た状態が示されている。図4(b)に示すように、調整ピン機構54は、上下動部52(第2部分152B)上側に設けられた板状部材154と、板状部材154の−Z面に設けられた調整ピン156と、板状部材154及び調整ピン156の、上下動部52に対する位置を固定する固定機構164と、を有する。固定機構164は、ネジ158、ワッシャ(座金)160、及びナット162を含んでいる。固定機構164によると、ネジ158を緩めることで、板状部材154及び調整ピン156を、ガイド孔52cに沿ってY軸方向に移動することができる。また、ネジ158を締めることにより、板状部材154及び調整ピン156のガイド孔52cに対する位置を固定することができる。
【0020】
第2抑止部材28は、図1(a)に示すように、ガイド孔52a、52bにおいて、リンク部材24が有するガイドピン24b,24cに係合する。また、第2抑止部材28は、不図示の規制部材により、その移動方向が図1(a)の矢印B方向のみに規制されている。このため、リンク部材24が長手方向に移動すると、ガイド孔52a,52b及びガイドピン24b,24cによるガイド機能と、規制部材による規制機能とにより、第2抑止部材28は、矢印B方向に移動するようになっている。
【0021】
以上のように構成されるバッファユニット12では、その下端部に、図5(a)、図5(b)に示すようなネジ携帯冶具16を装着することができる。このネジ携帯治具16は、ワークに対してネジ留めを行う作業者が、電動ドライバを持たない側の手で保持するものである。このネジ携帯治具16には、複数のネジを貯留させることが可能である。図5(a)は、ネジ携帯冶具16の側面図であり、図5(b)は、ネジ携帯冶具16の平面図である。これら、図5(a)、図5(b)に示すように、ネジ携帯冶具16は、2枚の板状部材62a、62bと、板状部材62a,62bを連結する連結部材64と、板状部材62aに固定された押圧部材66と、を有する。板状部材62a,62bの間には、隙間68が形成されている。この隙間68は、ネジ供給装置10のレール部分10a及び供給レール部材22(レール部材本体32)の溝32aと、同一の幅寸法を有している。ネジ携帯冶具16では、隙間68においてネジを複数個保持することが可能となっている。押圧部材66は、板状部材62aの長手方向に突出した状態で、板状部材62aに固定されている。なお、図5(a)、図5(b)では、図示を省略しているが、ネジ携帯冶具16の押圧部材66が設けられている側とは反対側の端部には、ネジの脱落を防止し、ネジを貯留するためのストッパ等が設けられている。
【0022】
次に、本実施形態におけるネジ供給機100の動作について、図6〜図15に基づいて詳細に説明する。図6〜図9及び図12〜図14は、ネジ携帯冶具16をバッファユニット12に装着する際又はバッファユニット12からネジ携帯冶具16を取り外す際の、バッファユニット12の動きを示す図である。また、図10は第2抑止部材28の調整ピン機構54の動きを説明するための模式図であり、図11は、第1抑止部材26の動きを説明するための模式図である。また、図15は、ネジ供給機100の動作の流れを示す流れ図である。
【0023】
ネジ供給機100の動作の前提として、ネジ携帯冶具16は、図6に示すように、ネジを1本も保持していないものとする。また、バッファユニット12にはネジが貯留されており、ネジ供給装置10のレール部分10aにも、ネジが規定本数だけ供給されているものとする。この図6の状態では、第2抑止部材28の調整ピン機構54とネジの位置関係は図10(a)のようになっており、調整ピン機構54の調整ピン156とネジは非接触となっている。また、図6の状態では、第1抑止部材26の腕部26bは、図11(a)に示すように、レール部材本体32に貯留されているネジのうち、最下端に位置するネジS1に接触している。これにより、レール部材本体32上の全てのネジのスライドが、腕部26bによって抑止された状態(第1状態)となっている。なお、第1抑止部材26(腕部26b)の図11(a)のような状態を、閉状態とも呼ぶものとする。また、図6に示すリンク部材24の位置を初期位置と呼ぶものとする。
【0024】
このような状態から、作業者は、図6に示すように、供給レール部材22の下端部に対してネジ携帯冶具16の装着を開始する(図15のステップS10参照)。この場合、作業者は、ネジ携帯冶具16の板状部材62a,62bを第2ガイド部材36の2面に沿わせるとともに、押圧部材66を第1ガイド部材34の内部に挿入するようにして、ネジ携帯冶具16を供給レール部材22に装着する。このように、第1ガイド部材34及び第2ガイド部材36を利用することで、ネジ携帯冶具16と供給レール部材22とを正確に位置決めしつつ、供給レール部材22にネジ携帯冶具16を装着することができる。
【0025】
図6の状態から、図7に示すように、作業者が、ネジ携帯冶具16を更に押し込むと、押圧部材66がリンク部材24に接触し、リンク部材24は初期位置から矢印A方向に移動する。なお、図7のリンク部材24の位置を「第1位置」と呼ぶものとする。このリンク部材24の第1位置への移動により、リンク部材24のガイドピン24b,24cも矢印A方向に移動するので、これに連動して、ガイド孔52a,52bを有する第2抑止部材28が矢印B方向に移動する。これにより、図10(b)に示すように、調整ピン機構54も矢印B方向に移動するため、調整ピン156は、ネジS1から所定本目(ここでは4本目)のネジS4と、その上((n+1)本目)のネジS(n+1)(ここでは、ネジS5)との間に入り込む(図15のステップS20参照)。この調整ピン156の入り込みにより、調整ピン156は、供給レール部材22の下端部から4本目のネジよりも上側のネジS5のスライドを抑止していない状態(第3状態)から、抑止している状態(第4状態)に遷移するようになっている。
【0026】
次いで、図8に示すように、作業者がネジ携帯冶具16を、図7の状態から更に押し込むと、リンク部材24は更に矢印A方向に移動する。図8のリンク部材24の位置を「第2位置」と呼ぶものとする。このリンク部材24の第2位置への移動の間、リンク部材24の端部に設けられた従属部24dも矢印A方向に移動する。そして、この移動の間に、従属部24dは第1抑止部材26に接触する。この接触により、第1抑止部材26は、矢印C方向に回動するようになる。この第1抑止部材26の回動は、圧縮コイルバネ46の弾性力に抗して行われる。これにより、第1抑止部材26の腕部26bは、ネジS1に接触した第1状態(図11(a))から、図11(b)に示すような、ネジS1と接触しない第2状態に遷移する(図15のステップS30参照)。なお、以下においては、図11(b)のように、第1抑止部材26がネジのスライドを抑止しない状態(第2状態)を、開状態とも呼ぶものとする。なお、図8に示すようにリンク部材24が第2位置に移動すると、第2抑止部材28も、矢印B方向に更に移動する。このため、調整ピン156も矢印B方向に更に移動して、図10(c)の状態になる。
【0027】
ここまでの動作を経て、図8のようにリンク部材24が第2位置に移動した段階では、第1抑止部材26は、圧縮コイルバネ46の作用により、開状態になる。また、第2抑止部材28の調整ピン156は、4番目のネジS4と5番目のネジS5との間に挿入されている。これにより、図9に示すように、ネジS1〜S4は、重力により下方にスライドし、ネジ携帯冶具16に4本のネジがほぼ同時に供給される(図15のステップS40参照)。一方、ネジS4よりも上側に位置するネジは、第2抑止部材28の調整ピン156により、スライドしないようになっている。なお、ネジ携帯冶具16が図8、図9の位置にある状態では、第1ガイド部材34に設けられているボールプランジャ38により、ネジ携帯冶具16がバッファユニット12の下端部で保持されるようになっている。
【0028】
図9に示すようにネジ携帯冶具16にネジが供給された後は、作業者は、ネジ携帯冶具16を取り外す。この場合、リンク部材24が引っ張りコイルバネ42の弾性力により第2位置から第1位置まで戻ることで、図12に示すように、第1抑止部材26が開状態から閉状態に遷移する。また、リンク部材24が第2位置から初期位置まで戻る間に、第2抑止部材28が矢印B’方向に移動するので、図13に示すように、調整ピン156とネジS5とが非接触状態に戻る(図15のステップS50参照)。
【0029】
上記のように、調整ピン156と、ネジS5とが非接触状態になると、供給レール部材22及びネジ供給装置10のレール部分10a上に存在するネジが、図14に示すように、供給レール部材22の傾斜に沿って、スライドする。このスライドしたネジは、閉状態の第1抑止部材26に接触して、停止する。
【0030】
その後は、ネジ供給装置10が、レール部分10a上に規定本数のネジが存在するまで、ネジを1本ずつ供給する(図15のステップS60参照)。このような動作を経ることにより、図6の初期状態に戻るようになっている。
【0031】
ここで、第2抑止部材28の調整ピン機構54は、前述したように、図4のガイド孔52cに対する位置、すなわち、Y軸方向に関する位置を変更可能である。したがって、作業者は、ネジ携帯冶具16に必要本数のネジが供給されるように、事前に、調整ピン機構54の位置を調整しておけば良い。
【0032】
ここまでの説明から分かるように、本実施形態では、リンク部材24(ガイドピン24b,24c及び従属部24dを含む)と、バネ42,46と、ガイド孔52b,52cと、を含んで連動機構が構成されている。
【0033】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、ネジ供給装置10からネジが供給される供給レール部材22が、ネジを複数本貯留可能で重力によりネジが下方にスライド可能な程度の傾斜を有する溝32aを有し、供給レール部材22の下端部近傍に配置された第1抑止部材26は、溝32a上に存在する全てのネジのスライドを抑止する閉状態(第1状態)と抑止しない開状態(第2状態)との間で遷移する。また、第2抑止部材28は、供給レール部材22の下端部からn本目よりも上側のネジのスライドを抑止しない状態(第3状態)と抑止する状態(第4状態)との間で遷移する。そして、リンク部材24は、第1抑止部材26が第1状態にあり、第2抑止部材が第3状態にあるときに、ネジ携帯冶具16が供給レール部材22に装着されることで、当該装着の動きと連動して、第2抑止部材28を第4状態とし、その後に、第1抑止部材26を第2状態とする。これにより、ネジ携帯冶具16を供給レール部材22に装着するのみで、供給レール部材22に貯留されていたネジのうち、第1抑止部材26と第2抑止部材28との間のネジが、供給レール部材22からネジ携帯冶具16にほぼ同時に供給される。したがって、ネジ携帯冶具16を供給レール部材22に装着するのみで、ネジ携帯冶具16に対して短時間で所望の本数のネジを供給することができる。なお、供給レール部材22に対するネジ供給装置10からのネジの供給は、従来と同様1本ずつ行われるが、本実施形態によれば、作業者はその供給が行われている間にも、ネジ携帯治具16のネジを用いた作業を継続することができる。
【0034】
また、本実施形態では、従来のようにネジ供給において電気的な制御を行わないことから、外乱によるネジの脱落や誤作動によるネジの過剰供給などが発生することがない。このため、所望の本数のネジを正確に供給することができる。
【0035】
また、本実施形態では、上記のようにネジを正確に供給することができるので、ネジの締め忘れを容易に発見することができる。具体的には、供給されるべき本数以上のネジがネジ携帯冶具16に貯留された場合に、ネジの締め忘れがあったと判断することができる。
【0036】
また、本実施形態によると、第1抑止部材26は、供給レール部材22の最も下側に位置するネジに下側から当接しており、ネジ携帯冶具16が供給レール部材22に装着されるときに、ネジ携帯冶具16からの力を受けてリンク部材24が移動し、かつ当該移動による力を受けて第1抑止部材26が第1状態から第2状態に遷移する。したがって、特別な制御等を行うことなく、ネジ携帯冶具16の装着に連動して、第1抑止部材26を第1状態から第2状態に遷移させることができる。
【0037】
また、本実施形態によると、第2抑止部材28の調整ピン156が、溝32aの下端部から所定本数よりも上側に位置するネジに下方側から当接しており、ネジ携帯冶具16が供給レール部材22に装着されるときに、ネジ携帯冶具16から受けた力により移動したリンク部材24から力を受けて、第2抑止部材28が第3状態から第4状態に遷移する。したがって、特別な制御等を行うことなく、ネジ携帯冶具16の装着に連動して、第2抑止部材28を第3状態から第4状態に遷移させることができる。
【0038】
更に、本実施形態では、リンク部材24が第1位置にあるときに、第2抑止部材28が第3状態から第4状態に遷移し、リンク部材24が更に移動して第2位置にあるときに、第1抑止部材26が第1状態から第2状態に遷移する。したがって、特別な制御等を行うことなく、第2抑止部材28の状態遷移のタイミングと、第1抑止部材26の状態遷移のタイミングとをずらすことができる。
【0039】
また、本実施形態では、第2抑止部材28の調整ピン156の位置を変更可能であり、当該変更により、ネジ携帯冶具16に供給するネジの本数を変更する。これにより、作業者の必要とする本数のネジをネジ携帯冶具16に供給することが可能である。
【0040】
なお、上記実施形態では、ネジ携帯冶具16に押圧部材66が設けられており、当該押圧部材66とリンク部材24とが接触する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、リンク部材24を押圧部材66の長さ分だけ長くし、押圧部材66を省略することとしても良い。このようにしても、ネジ携帯冶具16とリンク部材24とが接触するため、上記実施形態と同様のネジ供給を行うことが可能である。
【0041】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 ネジ供給装置(供給部)
22 供給レール部材(レール部材)
24 リンク部材(連動部材、連動機構の一部)
24b,24c ガイドピン(連動機構の一部)
26 第1抑止部材
28 第2抑止部材
32a 溝(レール)
42 引っ張りコイルバネ(連動機構の一部)
46 圧縮コイルバネ(連動機構の一部)
52a,52b ガイド孔(連動機構の一部)
100 ネジ供給機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジを複数本貯留可能で、重力により前記ネジが下方にスライド可能な傾斜を有するレールを含むレール部材と、
前記レール上端から前記レール部材に対して前記ネジを供給する供給部と、
前記レール部材の下端部近傍に配置され、前記レール上に存在する全てのネジのスライドを抑止する第1状態と抑止しない第2状態との間で遷移する第1抑止部材と、
前記レールの下端部から所定本数目よりも上側のネジのスライドを抑止しない第3状態と抑止する第4状態との間で遷移する第2抑止部材と、
前記第1抑止部材が第1状態にあり、前記第2抑止部材が第3状態にあるときに、前記レール部材からネジの供給を受けるネジ携帯冶具が前記レール部材の下端部に装着されることで、当該装着の動きと連動して、前記第2抑止部材を第4状態とし、その後に、前記第1抑止部材を第2状態とする連動機構と、を備えるネジ供給機。
【請求項2】
前記連動機構は、前記レールに沿った方向を長手方向とする連動部材を有し、
前記第1抑止部材は、前記レールの最も下側に位置するネジに下側から当接し、
前記ネジ携帯冶具が前記レール部材に装着されるときに、前記ネジ携帯冶具からの力を受けて前記連動部材が前記長手方向へ移動し、当該移動による力を受けて前記第1抑止部材が前記第1状態から前記第2状態に遷移することを特徴とする請求項1に記載のネジ供給機。
【請求項3】
前記第2抑止部材は、前記レールの下端部から所定本数目のネジよりも上側に位置するネジに下側から当接し、
前記ネジ携帯冶具が前記レールに装着されるときに、前記ネジ携帯冶具から受けた力により前記連動部材が前記長手方向へ移動し、当該移動による力を受けて前記第2抑止部材が前記第3状態から前記第4状態に遷移することを特徴とする請求項2に記載のネジ供給機。
【請求項4】
前記連動部材が前記ネジ携帯冶具からの力を受けて、前記長手方向の第1位置に位置したときに、前記第2抑止部材は前記第3状態から前記第4状態に遷移し、
前記連動部材が前記ネジ携帯冶具から更に力を受けて、前記長手方向の第2位置に位置したときに、前記第1抑止部材は前記第1状態から前記第2状態に遷移することを特徴とする請求項3に記載のネジ供給機。
【請求項5】
前記第2抑止部材の、少なくとも前記ネジと接触する部分は、前記レールの長手方向に関する位置を変更可能であり、当該変更により前記所定本数が変更されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のネジ供給機。
【請求項1】
ネジを複数本貯留可能で、重力により前記ネジが下方にスライド可能な傾斜を有するレールを含むレール部材と、
前記レール上端から前記レール部材に対して前記ネジを供給する供給部と、
前記レール部材の下端部近傍に配置され、前記レール上に存在する全てのネジのスライドを抑止する第1状態と抑止しない第2状態との間で遷移する第1抑止部材と、
前記レールの下端部から所定本数目よりも上側のネジのスライドを抑止しない第3状態と抑止する第4状態との間で遷移する第2抑止部材と、
前記第1抑止部材が第1状態にあり、前記第2抑止部材が第3状態にあるときに、前記レール部材からネジの供給を受けるネジ携帯冶具が前記レール部材の下端部に装着されることで、当該装着の動きと連動して、前記第2抑止部材を第4状態とし、その後に、前記第1抑止部材を第2状態とする連動機構と、を備えるネジ供給機。
【請求項2】
前記連動機構は、前記レールに沿った方向を長手方向とする連動部材を有し、
前記第1抑止部材は、前記レールの最も下側に位置するネジに下側から当接し、
前記ネジ携帯冶具が前記レール部材に装着されるときに、前記ネジ携帯冶具からの力を受けて前記連動部材が前記長手方向へ移動し、当該移動による力を受けて前記第1抑止部材が前記第1状態から前記第2状態に遷移することを特徴とする請求項1に記載のネジ供給機。
【請求項3】
前記第2抑止部材は、前記レールの下端部から所定本数目のネジよりも上側に位置するネジに下側から当接し、
前記ネジ携帯冶具が前記レールに装着されるときに、前記ネジ携帯冶具から受けた力により前記連動部材が前記長手方向へ移動し、当該移動による力を受けて前記第2抑止部材が前記第3状態から前記第4状態に遷移することを特徴とする請求項2に記載のネジ供給機。
【請求項4】
前記連動部材が前記ネジ携帯冶具からの力を受けて、前記長手方向の第1位置に位置したときに、前記第2抑止部材は前記第3状態から前記第4状態に遷移し、
前記連動部材が前記ネジ携帯冶具から更に力を受けて、前記長手方向の第2位置に位置したときに、前記第1抑止部材は前記第1状態から前記第2状態に遷移することを特徴とする請求項3に記載のネジ供給機。
【請求項5】
前記第2抑止部材の、少なくとも前記ネジと接触する部分は、前記レールの長手方向に関する位置を変更可能であり、当該変更により前記所定本数が変更されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のネジ供給機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−36961(P2011−36961A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187341(P2009−187341)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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