説明

ネットワークシステムおよび伝送装置並びに接続管理方法

【課題】
従来は、DHCP方式を用いるネットワークシステムにおいて、OLT側で必要のない余計な情報の動的な削除や再登録を行うことができなかった。
【解決手段】
本発明に係るネットワークシステムは、複数の端末装置を管理下に収容する伝送装置と、上位網にアクセスするためのIPアドレスを前記端末装置に割り当てるサーバ装置とを有するネットワークシステムにおいて、前記伝送装置は、前記端末装置と前記サーバ装置との間で送受信される情報をモニタして、前記サーバ装置から前記端末装置にIPアドレスを最初に割り当てる初期シーケンス完了時に、前記端末装置情報を端末情報保持メモリに登録してリンクを管理し、前記端末装置とのリンク断を検出時に前記端末情報保持メモリに登録された当該端末装置情報を削除することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DHCP方式を用いる伝送システムおよび伝送装置並びに接続管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IPv4アドレスの枯渇化が進んでおり、IANA(Internet Assigned Numbers Authority)からのIPv4アドレスの新規払出し分もなくなっている。一方、サーバが動的にIPアドレスをユーザ端末に割り当ててユーザ端末の通信を許可するDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)技術が用いられているが、IPv4アドレスの枯渇化により、数量的にDHCPのような動的な割り当てができず、PPPoE(Point−to−point protocol over Ethernet(登録商標))技術によりイーサネットフレームにPPPをカプセル化する通信プロトコルが主に用いられている。
【0003】
今後は、IPv4よりもアドレス空間が広いIPv6への移行が進むと予想されている。特にIPv6は膨大なアドレス空間を持っているため、様々な機器にIPアドレスを割り当ててプラグインプレイを実現するDHCPv6技術の利用が進んでいくと考えられる。DHCPv6では、DHCPv4で培ったさまざまな技術が踏襲され、今後さらに発展していくことが予想されるが、DHCPv6で定められたメッセージを確実に利用することが今後の課題になると思われる。
【0004】
一方、GEPON(Gigabit Ethernet(登録商標) Passive Optical Network)システムは、光ファイバーケーブルを使用したネットワークで、現在までの主な通信インフラであった電話回線に代わるアクセス系の通信インフラとして急激に増加しており、今日の日本のネットワークインフラではGEPONを使用した通信システムが必要不可欠となっている。
【0005】
このようなGEPONシステムにおいて、DHCP(DHCPv4/v6)を利用する際に、スヌーピングを行う技術が検討されている(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−166082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、GEPONシステムにおける従来のDHCPスヌーピング技術は、DHCPシーケンスのスヌーピングによって、一旦、OLT(Optical Line Terminal)にユーザ端末情報が登録されるが、その後のONU(Optical Network Unit)の接続の有無に関係なく、ネットワーク管理者による手動の端末情報の削除やサーバからのIPアドレスの貸し出し期間の経過、ユーザ端末からの切断要求などの場合以外は、OLTの管理テーブルに端末情報が保持され続けていた。このために、電源断などで実際には接続されていないONU配下のユーザ端末情報が長期間に亘ってOLT内に残り続けることにより、OLTで無駄なメモリが消費されてしまうという問題があった。
【0008】
近年まで主流であったIPv4アドレスによるネットワークシステムではユーザ端末の接続はPPPoEにより行われていたため、サーバから払い出されるユーザ端末の情報は同じものである場合が多く、ONUが一旦切断されて再接続されても同じ情報で再接続されることが殆どであったため、大きな問題にはならなかった。ところが、IPv6アドレス化が進むにつれて、DHCPv6によるネットワークシステムが利用されるようになると、膨大なアドレス空間を管理することになり、実際に使用されていない端末情報などにより無駄なメモリが消費され、OLT内の負荷が増大して誤動作などを引き起こす可能性もある。
【0009】
そこで、OLT側で上記のような必要のない余計な情報の動的な削除や再登録が望まれるが、従来のシステムではユーザ端末の接続状況に応じた動的な動作が行われていなかった。
【0010】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、DHCP方式を用いるネットワークシステムにおいて、OLT側で必要のない余計な情報の動的な削除や再登録を行うことができるネットワークシステムおよび伝送装置並びに接続管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るネットワークシステムは、複数の端末装置を管理下に収容する伝送装置と、上位網にアクセスするためのIPアドレスを前記端末装置に割り当てるサーバ装置とを有するネットワークシステムにおいて、前記伝送装置は、前記端末装置と前記サーバ装置との間で送受信される情報をモニタして、前記サーバ装置から前記端末装置にIPアドレスを最初に割り当てる初期シーケンス完了時に、前記端末装置情報を端末情報保持メモリに登録してリンクを管理し、前記端末装置とのリンク断を検出時に前記端末情報保持メモリに登録された当該端末装置情報を削除することを特徴とする。
【0012】
特に、既に登録を削除された前記端末装置から前記サーバ装置に再接続メッセージが送信され、前記サーバ装置から許可を示すメッセージがあった場合は、前記初期シーケンスを介さずに前記端末装置情報を端末情報保持メモリに再登録することを特徴とする。
【0013】
また、前記端末装置が管理されている状態での確認メッセージ、既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージ、などに対する前記サーバ装置の応答メッセージが当該端末装置の拒否を示す場合、前記端末情報保持メモリに登録された前記端末装置情報を即時に削除せずに、予め設定した時間が経過するまで前記端末情報を保持することを特徴とする。
【0014】
さらに、既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージに対する前記サーバ装置の応答メッセージが前記予め設定した時間内に当該端末装置の拒否を示すメッセージと許可を示すメッセージの両方の応答があった場合、その受信順序に関係なく、許可を示すメッセージを有効として、前記端末装置情報を前記端末情報保持メモリに再登録することを特徴とする。
【0015】
また、既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージに対して、前記接続管理方法の上位網に接続される複数のサーバ装置から返送された応答メッセージが、前記予め設定した時間内に全ての応答メッセージが当該端末装置の拒否を示すメッセージであった場合、または前記予め設定した時間後に許可を示すメッセージがあった場合、のいずれの場合でも前記端末装置情報を再登録しないことを特徴とする。
【0016】
特に、前記伝送装置は、GEPONシステムのOLT装置であり、前記OLT装置の配下に接続されるONU装置を介して前記端末装置を収容することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る伝送装置は、下位側に複数の端末装置を収容し、上位網にアクセスするためのIPアドレスを前記端末装置に割り当てる上位側のサーバ装置との間に配置される伝送装置において、前記伝送装置は、前記端末装置と前記サーバ装置との間で送受信されるメッセージをモニタして、前記端末装置の上位網へのアクセスを制御する制御部と、初期シーケンス時に前記サーバから上位網へのアクセスが許可された前記端末装置情報を登録する端末情報保持メモリと、前記端末装置とのリンク状態を検出するIF部とを備え、前記制御部は、前記IF部が前記端末装置とのリンク断を検出した場合に、前記端末情報保持メモリに登録された当該端末装置情報を削除することを特徴とする。
【0018】
特に、前記制御部は、既に登録を削除された前記端末装置から前記サーバ装置に再接続メッセージが送信され、前記サーバ装置から許可を示すメッセージがあった場合は、前記初期シーケンスを介さずに前記端末装置情報を端末情報保持メモリに再登録することを特徴とする。
【0019】
また、予め設定した時間を計測するタイマー部を更に設け、前記制御部は、前記伝送装置に前記端末装置が管理されている状態での確認メッセージ、既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージ、などに対する前記サーバ装置の応答メッセージが当該端末装置の拒否を示す場合、前記端末情報保持メモリに登録された前記端末装置情報を即時に削除せずに、前記タイマー部がタイムアウトするまで前記端末情報を保持することを特徴とする。
【0020】
さらに、前記制御部は、既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージに対する前記サーバ装置の応答メッセージが前記予め設定した時間内に当該端末装置の拒否を示すメッセージと許可を示すメッセージの両方の応答があった場合、その受信順序に関係なく、許可を示すメッセージを有効として、前記端末装置情報を前記端末情報保持メモリに再登録することを特徴とする。
【0021】
また、前記制御部は、既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージに対して、前記伝送装置の上位網に接続される複数のサーバ装置から返送された応答メッセージが、前記予め設定した時間内に全ての応答メッセージが当該端末装置の拒否を示すメッセージであった場合、または前記予め設定した時間後に許可を示すメッセージがあった場合、のいずれの場合でも前記端末装置情報を再登録しないことを特徴とする。
【0022】
特に、前記伝送装置は、GEPONシステムのOLT装置であり、前記OLT装置の配下に接続されるONU装置を介して前記端末装置を収容することを特徴とする。
【0023】
本発明に係る接続管理方法は、複数の端末装置を管理下に収容する伝送装置と、上位網にアクセスするためのIPアドレスを前記端末装置に割り当てるサーバ装置とを有するネットワークシステムにおける接続管理方法において、前記端末装置と前記サーバ装置との間で送受信されるメッセージを前記伝送装置でモニタして、前記端末装置の上位網へのアクセスを制御し、初期シーケンス時に前記サーバから上位網へのアクセスが許可された前記端末装置情報を端末情報保持メモリに登録し、前記端末装置とのリンク断を検出時に前記端末情報保持メモリに登録された当該端末装置情報を削除することを特徴とする。
【0024】
特に、既に登録を削除された前記端末装置から前記サーバ装置に再接続メッセージが送信され、前記サーバ装置から許可を示すメッセージがあった場合は、前記初期シーケンスを介さずに前記端末装置情報を端末情報保持メモリに再登録することを特徴とする。
【0025】
また、前記接続管理方法に前記端末装置が管理されている状態での確認メッセージ、既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージ、などに対する前記サーバ装置の応答メッセージが当該端末装置の拒否を示す場合、前記端末情報保持メモリに登録された前記端末装置情報を即時に削除せずに、予め設定した時間が経過するまで前記端末情報を保持することを特徴とする。
【0026】
さらに、既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージに対する前記サーバ装置の応答メッセージが前記予め設定した時間内に当該端末装置の拒否を示すメッセージと許可を示すメッセージの両方の応答があった場合、その受信順序に関係なく、許可を示すメッセージを有効として、前記端末装置情報を前記端末情報保持メモリに再登録することを特徴とする。
【0027】
また、既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージに対して、前記接続管理方法の上位網に接続される複数のサーバ装置から返送された応答メッセージが、前記予め設定した時間内に全ての応答メッセージが当該端末装置の拒否を示すメッセージであった場合、または前記予め設定した時間後に許可を示すメッセージがあった場合、のいずれの場合でも前記端末装置情報を再登録しないことを特徴とする。
【0028】
特に、前記伝送装置は、GEPONシステムのOLT装置であり、前記OLT装置の配下に接続されるONU装置を介して前記端末装置を収容することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るネットワークシステムおよび伝送装置並びに接続管理方法は、DHCP方式を用いるネットワークシステムにおいて、OLT側で必要のない余計な情報の動的な削除や再登録を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ネットワークシステム100の構成例を示す図である。
【図2】OLT101の構成例を示す図である。
【図3】MACテーブル204の一例を示す図である。
【図4】端末情報保持メモリ207の一例を示す図である。
【図5】ONU管理テーブル208の一例を示す図である。
【図6】DHCPシーケンスの流れを示す図である。
【図7】ロジカルリンク断発生時のOLT101の処理例を示す図である。
【図8】ロジカルリンク復旧時のOLT101の処理例1を示す図である。
【図9】ロジカルリンク復旧時のOLT101の処理例2を示す図である。
【図10】ロジカルリンク復旧時のOLT101の処理例3を示す図である。
【図11】ロジカルリンク復旧時のOLT101の処理例4を示す図である。
【図12】ロジカルリンク復旧時のOLT101の処理例5を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るネットワークシステムの実施形態について詳しく説明する。
【0032】
図1は、本実施形態に係るネットワークシステム100の構成例を示す図である。図1において、ネットワークシステム100は、OLT101と、光カプラ102と、ONU103(103a、103b、103c)とで構成されるEthernet(登録商標)PONシステムである。そして、OLT101の上位網側にはサーバ105が接続され、ONU103には端末装置としてユーザ端末104(104a、104b、104c)が接続されている。ユーザ端末104a、ユーザ端末104bおよびユーザ端末104cは、それぞれONU103a、ONU103bおよびONU103cを介してユーザデータを送受信し、各ONU103とOLT101との間は光カプラ102を介して時分割多重されてユーザデータが送受信される。そして、ユーザデータはOLT101から上位網に送信され、上位網から受信するデータは各ONU103を介してユーザ端末104に送信される。
【0033】
ここで、OLT101は、各ユーザ端末104のMACアドレスを学習しており、上位網から受信するフレームの宛先のMACアドレスにより各ONUに振り分けて各ユーザ端末104に送られる。
【0034】
尚、以降の説明において、ONU103a、ONU103bおよびONU103cに共通の事項を説明する場合はONU103と表記し、個々の装置を指す場合はアルファベットのa、b、cを付加して例えばONU103aのように表記する。また、ユーザ端末104についても同様に表記する。
【0035】
図1において、ユーザ端末104が上位網にアクセスするにはIPアドレスを取得する必要がある。そこで、IPアドレスを取得するためにサーバ105にIPアドレスの払い出しを要求する。ここで、サーバ105は、DHCPサーバに対応する。尚、本実施形態に係るネットワークシステム100は、IPv6に対応するもDHCPv6を利用する。DHCPプロトコルは、RFCで定められており、特にDHCPv6についてはRFC3315を主として仕様が定められている。
【0036】
次にOLT101の構成例について図2を用いて説明する。図2において、OLT101は、OLT制御部201と、IF部202と、L2フィルタ部203と、MACテーブル204と、パケットキャプチャ部205と、一時情報保持メモリ206と、端末情報保持メモリ207と、ONU管理テーブル208と、タイマー209とで構成される。
【0037】
OLT制御部201は、OLT101全体の動作を制御する。例えばIF部202を介して接続されるONU103の情報を取得して、ONU管理テーブル208に登録する。そして、ONU103とのPON区間のロジカルリンク切断を検出した場合はONU管理テーブル208から削除する。また、パケットキャプチャ部205で各ONU103に接続されるユーザ端末104のMACアドレスをスヌーピングしてMACテーブル204に登録する。ここで、スヌーピングは各ユーザ端末104が上位網との間で送受信する情報をモニタする技術で、サーバ105との間でIPアドレスの払い出しを受ける時のDHCPシーケンス確立時に各ユーザ端末104のMACアドレスやIPアドレス、リース期間などの端末情報を取得する。尚、以降の説明において、OLT101が行う制御は、OLT制御部201の内部に予め記憶されたプログラムによって実行される。また、DHCPスヌーピング自体は、本来レイヤ2のL2スイッチとして使用されるGEPONシステムをよりセキュアな装置とするために考えられた方式であり、既に実現されている技術である。本実施形態に係るネットワークシステム100では、DHCPスヌーピング機能を利用して、DHCP時の端末装置の管理をより効果的に行うことができる。
【0038】
IF部202は、OLT101と複数のONU103との間を接続するための光インターフェースを提供し、各ONUとの間で伝送されるデータを時分割多重して送受信する。また、PON区間のロジカルリンクの確立または切断を検出してOLT制御部201に通知する。
【0039】
L2フィルタ部203は、ONU103から受信するユーザフレームを上位網に送信する。また、L2フィルタ部203は、MACテーブル204に登録されているMACアドレス宛(ユーザ端末104のMACアドレス)のユーザフレームを上位網から受信した場合は、当該MACアドレスに対応するユーザ端末104が接続されているONU103に受信するユーザフレームを送信し、MACテーブル204に登録されていないMACアドレス宛のユーザフレームを上位網から受信した場合は、フィルタリングして、ONU103側に受信するユーザフレームを送信しない。
【0040】
MACテーブル204は、スヌーピングによりパケットキャプチャ部205で取得したユーザ端末104のMACアドレスが登録されている。L2フィルタ部203は、MACテーブル204を参照し、上位網から受信されるユーザフレームのMACアドレスをチェックしてMACテーブル204に登録されているMACアドレス宛のユーザフレームをONU103側に送信する。このようにして、MACテーブル204に登録されているユーザ端末104は上位網にアクセスすることができる。
【0041】
図3は、MACテーブル204の一例を示す図である。図3において、MACテーブル204には、ユーザ端末104毎にMACアドレス、IPアドレスなどの情報が登録される。図4の例では、ユーザ端末104aはONU103aに接続される端末装置で、MACアドレス(55−44−33−22−11−00)、IPv6対応のIPアドレス(12:36:0:・・・)であることがわかる。同様に、ユーザ端末104bおよびユーザ端末104cについてもそれぞれMACアドレスなどが登録される。
【0042】
尚、MACテーブル204は、OLT制御部201により更新される。例えば、PON区間のロジカルリンク断によりOLT制御部201がONU管理テーブル208からONU103を削除すると、当該ONU103に接続されるユーザ端末104情報もMACテーブル204から削除する。図3において、例えばONU103cとOLT101とのPON区間がロジカルリンク断になった場合、ONU103cに対応付けられているユーザ端末104cのMACアドレスおよびIPアドレスなどの情報がMACテーブル204から削除される。そして、ONU103cとOLT101のPON区間のロジカルリンクが復旧後、ユーザ端末104cが上位網に通信しようとしてもユーザ端末104cのMACアドレスがMACテーブル204から削除されているので、上位網から受信するユーザ端末104cのMACアドレス宛のユーザフレームは、ユーザ端末104cが接続されるONU103cに送信されず、ユーザ端末104cは上位網へのアクセスができなくなる。尚、ONU103c側から上位網側に送信されるユーザフレームやDHCP_confirmなどのDHCPシーケンスのフレームは上位側のサーバ105に送信される。
【0043】
パケットキャプチャ部205は、各ユーザ端末104が上位網との間で送受信するフレームをスヌーピングしてOLT制御部201に出力する。
【0044】
一時情報保持メモリ206は、パケットキャプチャ部205でスヌーピングしたユーザ端末情報(MACアドレスなど)を一時的に保持するためのバッファである。
【0045】
端末情報保持メモリ207は、一時情報保持メモリ206で保持されていたユーザ端末情報が確定した段階で当該ユーザ端末情報が記憶される。尚、端末情報保持メモリ207に記憶されると共にMACテーブル204にも登録される。ここで、端末情報保持メモリ207とMACテーブル204とを1つのメモリで構成してもよい。
【0046】
図4は、端末情報保持メモリ207の一例を示す図である。図4において、端末情報保持メモリ207には、ユーザ端末104毎にMACアドレス、IPアドレスおよびIPアドレスのリース期間などの情報が登録される。図4の例では、ONU103aに接続されている端末装置として、ユーザ端末104aが登録され、ユーザ端末104aのMACアドレス(55−44−33−22−11−00)と、IPv6対応のIPアドレス(12:36:0:・・・)と、リース期間(3日間)とが登録されている。同様に、ONU103bおよびONU103cについてもそれぞれに接続されているユーザ端末104bおよびユーザ端末104cに関する端末情報が登録される。
【0047】
このように端末情報保持メモリ207には、ONU103毎に接続されるユーザ端末104の端末情報が登録され、管理される。尚、これらの情報は、ユーザ端末104とサーバ105との間でDHCPシーケンスを確立する時に送受信されるパケットをOLT101がスヌーピングして取得した情報である。
【0048】
ONU管理テーブル208は、ロジカルリンク確立時にIF部202を介して接続されるONU103の情報を保持する。また、ロジカルリンク切断時にONU情報がONU管理テーブル208から削除される。
【0049】
タイマー209は、OLT制御部201の指令に応じて予め設定された時間を計測するタイマーである。
【0050】
図5は、ONU管理テーブル208の一例を示す図である。図5において、ONU管理テーブル208には、OLT101とPON区間のロジカルリンクを形成するONU103が管理され、ロジカルリンク確立時に該当するONU103のMACアドレスが登録され、ロジカルリンク切断時にONU管理テーブル208から削除される。図4の例では、ロジカルリンクが確立されているONU103aのMACアドレス(00−11−22−33−44−55)とONU103cのMACアドレス(11−22−33−44−55−66)とが管理されており、この場合はONU103bはロジカルリンク断などにより削除されている。
【0051】
このようにONU管理テーブル208には、OLT101との間でGEPONを形成するONU103が管理される。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係るネットワークシステム100のOLT101は構成され、PON区間を形成するONU103およびONU103に接続されるユーザ端末104を管理する。
【0053】
[DHCPシーケンス]
次に、DHCPシーケンスについて、図6を用いて詳しく説明する。図6は、ユーザ端末104とサーバ105との間でDHCPシーケンスを行ってIPアドレスの払い出しを受ける場合のメッセージの送受信と、IPアドレスの確認、更新、解放などのメッセージの送受信の流れを示した図である。ここで、確認および更新メッセージは、請求項の再接続メッセージに対応する。
(DHCP初期確立時のシーケンス)
先ず、ユーザ端末104がサーバ105からIPアドレスの払い出しを受ける時のシーケンスについて説明する。図6において、ユーザ端末104は、DHCPサーバの場所を探すためのDHCP_Solicit(要請)メッセージを送信する。DHCP_Solicitメッセージは、ONU103を介してOLT101に送られ、OLT101から上位側に送信される。そして、上位側のサーバ105は、当該メッセージを受信する。ここで、もし複数のサーバがある場合は、各サーバでそれぞれ受信される。この時、OLT101は、DHCP_Solicitメッセージをスヌーピングして、ユーザ端末104のMACアドレスなどの情報を一時情報保持メモリ206に保持する(処理S301)。
【0054】
これを受けたサーバ105は、DHCPサービスの利用が可能であることを示すDHCP_Advertise(広告)メッセージをユーザ端末104に送信する。サーバ105から送信されたDHCP_Advertiseメッセージは、OLT101およびONU103を介してユーザ端末104で受信される。尚、OLT101は、DHCP_Advertiseメッセージについてもスヌーピングによりメッセージ内容をモニタしている。また、ここではサーバ105のみの例を示しているが、複数のサーバがある場合は、複数のサーバにDHCP_Solicitメッセージがマルチキャスト送信され、ユーザ端末104は複数のサーバからDHCP_Advertiseメッセージを受信する。
【0055】
そして、ユーザ端末104は、DHCP_Advertiseメッセージを受信したサーバの中からいずれかのサーバを選択して、IPアドレスの払い出しを要求するDHCP_Request(要求)メッセージを送信する。図6の例では、ユーザ端末104は、サーバ105にDHCP_Requestメッセージを送信する。尚、OLT101は、DHCP_Requestメッセージの内容についてもスヌーピングしている。
【0056】
これを受けたサーバ105は、ユーザ端末104に割り当てるIPアドレスなどのパラメータを含むDHCP_Reply(応答)メッセージをユーザ端末104に送信する。サーバ105から送信されたDHCP_Replyメッセージは、OLT101およびONU103を介してユーザ端末104で受信される。尚、OLT101は、DHCP_Replyメッセージのスヌーピングによりユーザ端末104にIPアドレスが払い出されたことを認識し、DHCP_Replyメッセージに含まれるユーザ端末104のIPアドレスとそのリース期間の情報と、一時情報保持メモリ206に保持されていたユーザ端末104のMACアドレス情報とを関連付けて、端末情報保持メモリ207に登録する(処理S302)。この時点で、DHCPの初期確立のシーケンスが完了する。
【0057】
そして、OLT101のOLT制御部201は、端末情報保持メモリ207に登録されたユーザ端末104のMACアドレス情報などをMACテーブル204にも登録する。これにより、IPアドレスを取得したユーザ端末104が送信するIPフレームは、OLT101のL2フィルタ部203を介して上位網に送信され、上位網から受信するユーザ端末104のMACアドレス宛のフレームは、ユーザ端末104が接続されるONU103に送信されるので、ユーザ端末104は上位のネットワークにアクセスできるようになる。
(DHCP確認時のシーケンス)
次に、ユーザ端末104がサーバ105から割り当てられたIPアドレスが未だ有効であるか否かの確認を行う時のシーケンスについて説明する。図6において、ユーザ端末104は、DHCP_Confirm(確認)メッセージを送信する。DHCP_Confirmメッセージは、ONU103を介してOLT101に送られ、OLT101からサーバ105に送信される。この時、OLT101は、DHCP_Confirmメッセージの内容をスヌーピングしている。
【0058】
これを受けたサーバ105は、ユーザ端末104に割り当てられたIPアドレスが適切であるか否かを示すDHCP_Replyメッセージをユーザ端末104に送信する。サーバ105から送信されたDHCP_Replyメッセージは、OLT101およびONU103を介してユーザ端末104で受信される。尚、OLT101は、DHCP_Replyメッセージの内容をスヌーピングしており、ユーザ端末104に割り当てられていたIPアドレスの許可応答であるか拒否応答であるかを知ることができ、これに基づいて端末情報保持メモリ207の端末情報を維持するか削除するかを制御する(処理S303)。尚、OLT制御部201は、端末情報保持メモリ207から端末情報を削除する場合、MACテーブル204からも当該端末情報を削除するので、上位網から受信するユーザ端末104のMACアドレス宛のフレームは、ONU103側に送信されないので、ユーザ端末104は上位網へのアクセスができなくなる。
(DHCP更新時のシーケンス)
次に、ユーザ端末104がサーバ105から割り当てられたIPアドレスのリース期間を延長する場合のシーケンスについて説明する。図6において、ユーザ端末104は、DHCP_Renew(更新)メッセージを送信する。DHCP_Renewメッセージは、ONU103を介してOLT101に送られ、OLT101からサーバ105に送信される。この時、OLT101は、DHCP_Renewメッセージの内容をスヌーピングしている。
【0059】
これを受けたサーバ105は、ユーザ端末104に割り当てられたIPアドレスのリース期間の延長を許可するか否かを示すDHCP_Replyメッセージをユーザ端末104に送信する。サーバ105から送信されたDHCP_Replyメッセージは、OLT101およびONU103を介してユーザ端末104で受信される。尚、OLT101は、DHCP_Replyメッセージの内容をスヌーピングしており、ユーザ端末104に割り当てられていたIPアドレスのリース期間の延長要求に対して許可応答であるか拒否応答であるかを知ることができ、これに基づいて端末情報保持メモリ207の端末情報のリース期間を更新するか否かを制御する(処理S304)。
(DHCP解放時のシーケンス)
次に、ユーザ端末104がサーバ105から割り当てられたIPアドレスを使わなくなった場合のシーケンスについて説明する。図6において、ユーザ端末104は、DHCP_Release(解放)メッセージを送信する。DHCP_Releaseメッセージは、ONU103を介してOLT101に送られ、OLT101からサーバ105に送信される。この時、OLT101は、DHCP_Releaseメッセージの内容をスヌーピングしており、端末情報保持メモリ207に登録されている当該ユーザ端末104の端末情報を削除する(処理S305)。尚、OLT制御部201は、MACテーブル204からも当該端末情報を削除する。また、図6の場合、DHCP_Releaseメッセージに対してサーバ105から解放要求を許可するか辞退するかを示すDHCP_Replyメッセージをスヌーピングして、当該端末情報削除するか否かを判断してもよい。但し、ユーザ端末104は、解放(Release)した時点で取得していたIPアドレスを使用しないので、この場合は上記の判断は不要である。
【0060】
このようにして、本実施形態に係るネットワークシステム100では、OLT101は、ユーザ端末104とサーバ105との間で送受信されるDHCP制御情報をスヌーピングして、ユーザ端末104の端末情報の登録や削除を行うことができる。ここで、DHCP_ConfirmメッセージやDHCP_Renewメッセージなどサーバ側に再接続を要求するメッセージであれば同様に適用可能である。
[ロジカルリンク断発生時の動作]
次に、DHCPシーケンス完了後にOLT101とONU103との間のPON区間でロジカルリンク断が発生した場合の動作について図7を用いて説明する。
【0061】
図7において、図6で説明したように、DHCPシーケンスが完了してOLT101の端末情報保持メモリ207およびMACテーブル204に端末のMACアドレスなどが登録される(処理S401)。これにより、ユーザ端末104は上位網から受信するユーザ端末104のMACアドレス宛のフレームを受信することができ、ユーザ端末104は上位のネットワークへの通信が可能な状態になる。その後、OLT101とONU103との間のPON区間のロジカルリンク断が発生すると、OLT101のIF部202がロジカルリンク断を検出してOLT制御部201に通知する(処理S402)。これにより、OLT制御部201は、端末情報保持メモリ207およびMACテーブル204に登録されているユーザ端末104の情報を削除する(処理S403)。これにより、L2フィルタ部203は、上位網から受信するユーザ端末104のMACアドレス宛のフレームを通さないので、ユーザ端末104は通信不可の状態になる(状態A)。
[ロジカルリンク復旧時の動作例1]
次に、通信不可の状態AからOLT101とONU103との間のPON区間のロジカルリンクが復旧した場合、図8に示すような動作が行われる。ユーザ端末104は、OLT101のMACテーブル204から端末情報が削除されているので、上位網から受信するユーザ端末104のMACアドレス宛のフレームは、ONU103側に送信されず、上位網にアクセスすることができない。そこで、ユーザ端末104は、最初に割り当てられていたIPアドレスが使用可能か否かをサーバに問い合わせるためのDHCP_Confirmメッセージを送信する。この時、本実施形態に係るOLT101では、DHCP_Confirmメッセージをスヌーピングして、ユーザ端末104の端末情報(MACアドレス、IPアドレスなど)を一時情報保持メモリ206に保持する(処理S404)。
【0062】
そして、図8の例では、サーバ105aからIPアドレスが適切であることを示す許可応答をDHCP_Replyメッセージでユーザ端末104に返信する。OLT101は、このDHCP_Replyメッセージをスヌーピングして、許可応答であれば処理S404で一時情報保持メモリ206に保持していた端末情報を端末情報保持メモリ207およびMACテーブル204に再登録する(処理S405)。これにより、ユーザ端末104は、上位網から受信するユーザ端末104のMACアドレス宛のフレームを受信することができ、ロジカルリンク断の前と同様に上位網と通信することができる。
【0063】
従来は、DHCPの初期確立時のみに端末情報をMACテーブル204に登録していたので、ユーザ端末104がDHCP_Confirmメッセージをサーバ105aに送信して許可応答を受け取り、ユーザ端末104が上位網に通信しようとしてもOLT101のL2フィルタ部203のMACテーブル204からユーザ端末104のMACアドレスが削除されたままなので、ユーザ端末104の通信が阻害されるという問題があった。特にこの場合は、ユーザ端末104はIPアドレスが使用可能であるという応答メッセージをサーバ105aから受け取っているにも拘わらず上位網との間で通信できない点に大きな問題があり、この場合はユーザ端末104が再びDHCP確立シーケンスを実行しなければならなかった。尚、PPPoEのように高価なBRASを用いる場合は、BRASによってユーザ端末104の上位網へのアクセスが制御されるので、OLT101はユーザ端末104のアクセス制御を行う必要がなく、上記のような問題は生じないが、高価なBRASを用いずにDHCPシーケンスをスヌーピングしてOLT101によりアクセス制御を行う場合、上記のような問題が生じる。
【0064】
これに対して、本実施形態に係るOLT101では、図8で説明したように、DHCP_Confirmメッセージに対するDHCP_Replyメッセージをスヌーピングして、許可応答である場合に端末情報を再登録するので、ユーザ端末104はサーバ105aの許可応答を受けて、再び上位網との間で通信を行うことができる。
[ロジカルリンク復旧時の動作例2]
次に、通信不可の状態AからOLT101とONU103との間のPON区間のロジカルリンクが復旧した場合の動作例2について、図9を用いて説明する。図8では、DHCPサーバは、サーバ105aのみであったが、図9の例では、2つのサーバ105a、サーバ105bがDHCP_Replyメッセージをユーザ端末104に返信する。尚、ロジカルリンクが復旧した時点でOLT101のMACテーブル204からユーザ端末104の端末情報が削除されているので、上位網から受信するユーザ端末104のMACアドレス宛のフレームはONU103側に送信されず、ユーザ端末104は上位網にアクセスすることができない。そこで、図8の場合と同様に、ユーザ端末104はIPアドレスの継続使用が可能か否かをサーバに問い合わせるためのDHCP_Confirmメッセージを送信する。ここで、DHCP_Confirmメッセージにはサーバ識別子(Server Indentifier)を含むことができないため、ユーザ端末104からのDHCP_Confirmメッセージに対して、受信した全てのサーバが許可、或いは拒否の応答を返信する。このため、複数のサーバから応答がある場合、OLT101は、許可応答の後で拒否応答を受けたり、逆に拒否応答の後で許可応答を受けることがある。図9の例ではサーバ105aとサーバ105bとに送信される。この時、OLT101は、図8の処理S404と同様に、DHCP_Confirmメッセージをスヌーピングして、ユーザ端末104の端末情報(MACアドレス、IPアドレスなど)を一時情報保持メモリ206に保持する。
【0065】
そして、サーバ105aからIPアドレスが適切であることを示す許可応答をDHCP_Replyメッセージによりユーザ端末104に返信する。この時、OLT101では図8の処理S405と同じ処理が実行され、ユーザ端末104の端末情報を端末情報保持メモリ207およびMACテーブル204に再登録するので、ユーザ端末104は、上位網から受信するユーザ端末104のMACアドレス宛のフレームを受信することができ、ロジカルリンク断の前と同様に上位網と通信することができる。
【0066】
ところが、サーバ105bからもDHCP_Replyメッセージがユーザ端末104に返信される。特にサーバ105bは、ユーザ端末104にIPアドレスを割り当てていないので、拒否応答を示すDHCP_Replyメッセージがユーザ端末104に返信される。この時、OLT101がDHCP_Confirmメッセージに対するDHCP_Replyメッセージの内容(許可応答/拒否応答)に基づいて単純に再登録や削除などの処理を行う場合は、端末情報が再び削除されてしまうことになり、従来と同様に、上位網から受信するユーザ端末104のMACアドレス宛のフレームはONU103側に送信されず、ユーザ端末104と上位網との間の通信が阻害されてしまうという問題が生じる。
【0067】
そこで、本実施形態に係るOLT101は、図9に示すように、ユーザ端末104が送信したDHCP_Confirmメッセージをスヌーピングした時点でタイマー209の動作を開始する(処理S406)。そして、タイマー209がタイムアウトするまでに許可応答を示すDHCP_Replyメッセージをスヌーピングした場合は、タイマー209がタイムアウトするまでに他のサーバ105から受信した拒否応答を示すDHCP_Replyメッセージを無視してユーザ端末104の端末情報を削除しないように制御する(処理S407)。
[ロジカルリンク復旧時の動作例3]
次に、通信不可の状態AからOLT101とONU103との間のPON区間のロジカルリンクが復旧した場合の動作例3について、図10を用いて説明する。図9では、タイマー209の設定時間内に複数のDHCPサーバからDHCP_Replyメッセージがユーザ端末104に返信される場合を示したが、図10では先にサーバ105aから拒否応答を示すDHCP_Replyメッセージが返信される。この場合、OLT101は拒否応答なのでユーザ端末104の端末情報を再登録しない(処理S409)。さらに、図10の例では、サーバ105bから許可応答を示すDHCP_Replyメッセージが返信される。このDHCP_Replyメッセージがタイマー209の所定時間内に受信すれば図9で説明したように、再登録(処理S405)が行われるので、ユーザ端末104は通信可能となるが、図10の例では許可応答を示すDHCP_Replyメッセージがタイムアウト(処理S408)後に受信(正確にはOLT101でスヌーピングした時点)されているので、OLT101はこの許可応答を無視し、再登録を行わない(処理S410)。
【0068】
尚、図9で説明したように、例えば本来のサーバ105aから返信される許可応答をタイムアウト後に受信して、通信が阻害されることがないように、十分なタイマー時間でシステム設計が為されるので、実際には図10のような状態は生じない。特に、本来のサーバ105a以外のサーバ105から許可応答が送信されることは誤認識や誤作動以外には想定されない。また、タイムアウトしないようにすることも考えられるが、この場合は、OLT101がDHCP_Confirmメッセージに対する応答メッセージを永久に待ち続けることになるので、所定時間経過後に処理を終了するためにタイムアウトする必要がある。
[一時情報保持メモリ206の制御]
次に、本実施形態に係るOLT101における一時情報保持メモリ206の制御について説明する。図11は、図10と同様に、通信不可の状態AからOLT101とONU103との間のPON区間のロジカルリンクが復旧した場合、ユーザ端末104はDHCP_Confirmメッセージを送信し、OLT101はこのDHCP_Confirmメッセージをスヌーピングして、ユーザ端末104の端末情報(MACアドレス、IPアドレスなど)を一時情報保持メモリ206に保持する(処理S404)。
【0069】
そして、サーバ105aから拒否応答を示すDHCP_Replyメッセージが返信され、図10で説明したように、拒否応答なのでユーザ端末104の端末情報を再登録しない(処理S409)。ここで、OLT101は、タイマー209がタイムアウト前であるか否かを判別し、タイムアウトしていない場合は処理S404で一時情報保持メモリ206に保持した端末情報を削除せずに維持する(処理S411)。そして、タイマー209がタイムアウトした時に一時情報保持メモリ206に保持されている端末情報を削除する(処理S412)。
【0070】
このように、タイマー209がタイムアウトするまで、DHCP_Confirmメッセージでスヌーピングした端末情報を保持し続けるので、図12に示すように、拒否応答を示すDHCP_Replyメッセージの後で許可応答を示すDHCP_Replyメッセージを受信した時に、一時情報保持メモリ206に保持していた端末情報を直ぐに登録することができる(処理S414)。これにより、タイマー209がタイムアウトするまでの間に受信する拒否応答と許可応答の順序に依らず、1回でも許可応答があった場合は一時情報保持メモリ206に保持されていた端末情報が端末情報保持メモリ207およびMACテーブル204に再登録されるので、上位網から受信するユーザ端末104のMACアドレス宛のフレームを受信することができ、ユーザ端末104と上位網との通信は阻害されず、インターネットなどへのアクセスを行うことができる。
【0071】
以上、各実施形態に係るネットワークシステム100およびOLT101並びにユーザ端末104の接続管理方法について説明してきたように、OLT101およびONU103のPON区間のリンク状態により、ユーザ端末104の端末情報を管理する端末情報保持メモリ207およびMACテーブル204の登録や削除を行うことにより、OLT101内に使われていない端末情報を保持する必要がなくなる。特に、上記の実施形態で説明したようなIPv6に対応するネットワークシステム100においては、膨大なIPアドレス空間を持っているので使われていない端末情報を管理し続けることは非現実的である。
【0072】
そして、決められたシーケンスを利用するユーザ端末104の端末情報のみを登録することにより、余分なメモリ消費を防ぎ、メモリ容量の削減や装置の低価格化を図ることができる。
【0073】
さらに、OLT101側でユーザ端末104と上位網との間の通信を制御することにより、過去に割り当てられたIPアドレスを使用して上位網にアクセスすることを防止し、セキュリティの高い通信サービスを提供することができる。
【0074】
また、上記の実施形態では、ネットワークシステム100は、OLT101とONU103によってPON区間を形成するGEPONを利用したが、OLT101の代わりにL2スイッチを用い、L2スイッチの配下に複数のユーザ端末が接続されるようなネットワークシステムにおいて、L2スイッチでユーザ端末104とサーバ105間のDHCPシーケンスをモニタして、上記の実施形態と同様の処理を行うようにしてもよい。
【0075】
尚、本発明に係るネットワークシステムおよび伝送装置並びに接続管理方法について、各実施例を挙げて説明してきたが、その精神またはその主要な特徴から逸脱することなく他の多様な形で実施することができる。そのため、上述した実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明は、特許請求の範囲によって示されるものであって、本発明は明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0076】
100・・・ネットワークシステム
101・・・OLT
102・・・光カプラ
103・・・ONU
104・・・ユーザ端末
105・・・サーバ
201・・・OLT制御部
202・・・IF部
203・・・L2フィルタ部
204・・・MACテーブル
205・・・パケットキャプチャ部
206・・・一時情報保持メモリ
207・・・端末情報保持メモリ
208・・・ONU管理テーブル
209・・・タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末装置を管理下に収容する伝送装置と、上位網にアクセスするためのIPアドレスを前記端末装置に割り当てるサーバ装置とを有するネットワークシステムにおいて、
前記伝送装置は、前記端末装置と前記サーバ装置との間で送受信される情報をモニタして、前記サーバ装置から前記端末装置にIPアドレスを最初に割り当てる初期シーケンス完了時に、前記端末装置情報を端末情報保持メモリに登録してリンクを管理し、前記端末装置とのリンク断を検出時に前記端末情報保持メモリに登録された当該端末装置情報を削除する
ことを特徴とするネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワークシステムにおいて、
既に登録を削除された前記端末装置から前記サーバ装置に再接続メッセージが送信され、前記サーバ装置から許可を示すメッセージがあった場合は、前記初期シーケンスを介さずに前記端末装置情報を端末情報保持メモリに再登録する
ことを特徴とするネットワークシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のネットワークシステムにおいて、
前記端末装置が管理されている状態での確認メッセージ、既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージ、などに対する前記サーバ装置の応答メッセージが当該端末装置の拒否を示す場合、前記端末情報保持メモリに登録された前記端末装置情報を即時に削除せずに、予め設定した時間が経過するまで前記端末情報を保持する
ことを特徴とするネットワークシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のネットワークシステムにおいて、
既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージに対する前記サーバ装置の応答メッセージが前記予め設定した時間内に当該端末装置の拒否を示すメッセージと許可を示すメッセージの両方の応答があった場合、その受信順序に関係なく、許可を示すメッセージを有効として、前記端末装置情報を前記端末情報保持メモリに再登録する
ことを特徴とするネットワークシステム。
【請求項5】
請求項2または3に記載のネットワークシステムにおいて、
既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージに対して、前記接続管理方法の上位網に接続される複数のサーバ装置から返送された応答メッセージが、前記予め設定した時間内に全ての応答メッセージが当該端末装置の拒否を示すメッセージであった場合、または前記予め設定した時間後に許可を示すメッセージがあった場合、のいずれの場合でも前記端末装置情報を再登録しない
ことを特徴とするネットワークシステム。
【請求項6】
請求項1から5に記載のネットワークシステムにおいて、
前記伝送装置は、GEPONシステムのOLT装置であり、前記OLT装置の配下に接続されるONU装置を介して前記端末装置を収容する
ことを特徴とするネットワークシステム。
【請求項7】
下位側に複数の端末装置を収容し、上位網にアクセスするためのIPアドレスを前記端末装置に割り当てる上位側のサーバ装置との間に配置される伝送装置において、
前記伝送装置は、
前記端末装置と前記サーバ装置との間で送受信されるメッセージをモニタして、前記端末装置の上位網へのアクセスを制御する制御部と、
初期シーケンス時に前記サーバから上位網へのアクセスが許可された前記端末装置情報を登録する端末情報保持メモリと、
前記端末装置とのリンク状態を検出するIF部と
を備え、
前記制御部は、前記IF部が前記端末装置とのリンク断を検出した場合に、前記端末情報保持メモリに登録された当該端末装置情報を削除する
ことを特徴とする伝送装置。
【請求項8】
請求項7に記載の伝送装置において、
前記制御部は、既に登録を削除された前記端末装置から前記サーバ装置に再接続メッセージが送信され、前記サーバ装置から許可を示すメッセージがあった場合は、前記初期シーケンスを介さずに前記端末装置情報を端末情報保持メモリに再登録する
ことを特徴とする伝送装置。
【請求項9】
請求項8に記載の伝送装置において、
予め設定した時間を計測するタイマー部を更に設け、
前記制御部は、前記伝送装置に前記端末装置が管理されている状態での確認メッセージ、既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージ、などに対する前記サーバ装置の応答メッセージが当該端末装置の拒否を示す場合、前記端末情報保持メモリに登録された前記端末装置情報を即時に削除せずに、前記タイマー部がタイムアウトするまで前記端末情報を保持する
ことを特徴とする伝送装置。
【請求項10】
請求項9に記載の伝送装置において、
前記制御部は、既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージに対する前記サーバ装置の応答メッセージが前記予め設定した時間内に当該端末装置の拒否を示すメッセージと許可を示すメッセージの両方の応答があった場合、その受信順序に関係なく、許可を示すメッセージを有効として、前記端末装置情報を前記端末情報保持メモリに再登録する
ことを特徴とする伝送装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の伝送装置において、
前記制御部は、既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージに対して、前記伝送装置の上位網に接続される複数のサーバ装置から返送された応答メッセージが、前記予め設定した時間内に全ての応答メッセージが当該端末装置の拒否を示すメッセージであった場合、または前記予め設定した時間後に許可を示すメッセージがあった場合、のいずれの場合でも前記端末装置情報を再登録しない
ことを特徴とする伝送装置。
【請求項12】
請求項7から11に記載の伝送装置において、
前記伝送装置は、GEPONシステムのOLT装置であり、前記OLT装置の配下に接続されるONU装置を介して前記端末装置を収容する
ことを特徴とする伝送装置。
【請求項13】
複数の端末装置を管理下に収容する伝送装置と、上位網にアクセスするためのIPアドレスを前記端末装置に割り当てるサーバ装置とを有するネットワークシステムにおける接続管理方法において、
前記端末装置と前記サーバ装置との間で送受信されるメッセージを前記伝送装置でモニタして、前記端末装置の上位網へのアクセスを制御し、初期シーケンス時に前記サーバから上位網へのアクセスが許可された前記端末装置情報を端末情報保持メモリに登録し、前記端末装置とのリンク断を検出時に前記端末情報保持メモリに登録された当該端末装置情報を削除する
ことを特徴とする接続管理方法。
【請求項14】
請求項13に記載の接続管理方法において、
既に登録を削除された前記端末装置から前記サーバ装置に再接続メッセージが送信され、前記サーバ装置から許可を示すメッセージがあった場合は、前記初期シーケンスを介さずに前記端末装置情報を端末情報保持メモリに再登録する
ことを特徴とする接続管理方法。
【請求項15】
請求項14に記載の接続管理方法において、
前記接続管理方法に前記端末装置が管理されている状態での確認メッセージ、既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージ、などに対する前記サーバ装置の応答メッセージが当該端末装置の拒否を示す場合、前記端末情報保持メモリに登録された前記端末装置情報を即時に削除せずに、予め設定した時間が経過するまで前記端末情報を保持する
ことを特徴とする接続管理方法。
【請求項16】
請求項15に記載の接続管理方法において、
既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージに対する前記サーバ装置の応答メッセージが前記予め設定した時間内に当該端末装置の拒否を示すメッセージと許可を示すメッセージの両方の応答があった場合、その受信順序に関係なく、許可を示すメッセージを有効として、前記端末装置情報を前記端末情報保持メモリに再登録する
ことを特徴とする接続管理方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の接続管理方法において、
既に登録を削除された前記端末装置からの再接続メッセージに対して、前記接続管理方法の上位網に接続される複数のサーバ装置から返送された応答メッセージが、前記予め設定した時間内に全ての応答メッセージが当該端末装置の拒否を示すメッセージであった場合、または前記予め設定した時間後に許可を示すメッセージがあった場合、のいずれの場合でも前記端末装置情報を再登録しない
ことを特徴とする接続管理方法。
【請求項18】
請求項13から17に記載の接続管理方法において、
前記伝送装置は、GEPONシステムのOLT装置であり、前記OLT装置の配下に接続されるONU装置を介して前記端末装置を収容する
ことを特徴とする接続管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−12899(P2013−12899A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144205(P2011−144205)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】