説明

ネットワークプリントシステム、サーバ装置、方法、およびプログラムならびに記録媒体

【課題】本発明は、各種機器設定が異なる複数のプリンタの中からユーザが任意に選択するプリンタにおいて適切な出力を実現することができるネットワークプリントシステム、サーバ装置、およびプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】印刷サーバ30は、PC12からユーザ識別情報と印刷ファイルを受信し、受信した印刷ファイルをユーザ識別情報と関連付けて記憶する。印刷サーバ30は、MFP20からユーザ識別情報および印刷出力要求を受信したことに応答して、当該ユーザ識別情報に対応する印刷ファイルを抽出すると共に、要求元のMFP20からMFP20が解釈可能なページ記述言語(Page Description Language)等の機器情報を取得する。印刷サーバ30は、抽出した印刷ファイルを、MFP20から取得したページ記述言語(Page Description Language)に変換して印刷データを生成し、MFP20に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークプリントシステムに関し、より詳細には、各種機器設定が異なる複数のプリンタの中からユーザが任意に選択するプリンタにおいて適切な出力を実現することができるネットワークプリントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のクライアントが複数のプリンタを共用するネットワークプリントシステムを採用するオフィスにおいて、ユーザが印刷を命令する場所(たとえばユーザのデスク上のパーソナルコンピュータ)から、出力先の共用プリンタの設置場所が離れている場合、ユーザが出力結果を回収する前に、プリンタ近傍を通りかかった他の社員にその内容を見られてしまう可能性があり、情報セキュリティ上問題があった。
【0003】
この問題点につき、近年、いわゆる「ロケーションフリー印刷」というソリューションが提案されている。「ロケーションフリー印刷」においては、クライアントから送信された印刷データは、ネットワーク上の印刷サーバに一旦スプールされ、その出力については、必要に応じてユーザがプリンタ側から指示することができるため、プリンタの出力は常にユーザの監視下で実行されることになり、その結果、情報漏洩が防止されるというものである。しかしながら、このような印刷方式においては、プリンタ側のプリンタドライバの設定を共通させる必要があるため、ネットワークプリントシステム内に同じ機種のプリンタしか導入できないという制約が生じていた。
【0004】
この点につき、特開9−198213号公報(特許文献1)は、ネットワークプリントシステムにおいて、クライアントコンピュータが、出力先として選択したプリンタに対して、サポートするページ記述言語(Page Description Language)を問い合わせ、プリンタ側からの応答によって得られたページ記述言語(以下、PDLとして参照する)によって印刷データを生成して当該プリンタにこれを伝送する構成について開示するが、特許文献1は、「ロケーションフリー印刷」に対応するものではなかった。
【0005】
また、従来の「ロケーションフリー印刷」においては、たとえばユーザがモノクロ印刷対応機から印刷ジョブを出力しようと試みた場合に、当該印刷ジョブがカラー印刷の設定になっていた場合にはユーザが意図する出力が得られないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、各種機器設定が異なる複数のプリンタの中からユーザが任意に選択するプリンタにおいて適切な出力を実現することができるネットワークプリントシステム、サーバ装置、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、各種機器設定が異なる複数のプリンタの中からユーザが任意に選択するプリンタにおいて適切な出力を実現することができるネットワークプリントシステムにつき鋭意検討した結果、ネットワーク上の印刷サーバに、ユーザの印刷結果の出力要求に応答して対応可能なPDL等の機器情報をプリンタ側から取得させ、取得した当該機器情報に基づいた印刷データの生成プロセスを印刷サーバ側で一元管理する構成を見出し、本発明に至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明によれば、印刷命令を発行する少なくとも一つの情報処理装置と、複数の画像形成装置と、前記印刷命令に対応する印刷出力を前記画像形成装置に実行させるための印刷サーバとを含むネットワークプリントシステムであって、前記情報処理装置は、ユーザ識別情報入力手段と、前記印刷命令に対応する印刷ファイルを、印刷データに変換することなく、前記ユーザ識別情報と共に前記印刷サーバに送信する印刷ファイル送信手段とを含み、前記画像形成装置は、ユーザ識別情報入力手段と、前記印刷サーバに対し、印刷ファイルの印刷出力要求を前記ユーザ識別情報と共に送信する印刷出力要求送信手段と、前記印刷サーバからの要求に応答して、前記印刷サーバに対して機器情報を送信する機器情報送信手段と、前記印刷サーバから送信される印刷データを受信する印刷データ受信手段と、前記印刷データに基づいて印刷結果を出力する印刷結果出力手段とを含み、前記印刷サーバは、前記情報処理装置から送信される前記ユーザ識別情報と前記印刷ファイルとを受信する印刷ファイル受信手段と、受信した前記印刷ファイルを前記ユーザ識別情報と関連付けて記憶する印刷ファイル記憶手段と、前記画像形成装置から前記ユーザ識別情報および前記印刷出力要求を受信する印刷出力要求受信手段と、前記印刷出力要求を受信したことに応答して、要求元の前記画像形成装置の機器情報を取得する機器情報取得手段と、前記画像形成装置から受信した前記ユーザ識別情報に対応する印刷ファイルを抽出する印刷ファイル抽出手段と、抽出された前記印刷ファイルを、受信した前記機器情報に基づいて前記要求元の前記画像形成装置が印刷することのできる印刷データに変換する印刷データ生成手段と、生成した前記印刷データを前記要求元の前記画像形成装置に送信する印刷データ送信手段とを含む、ネットワークプリントシステムが提供される。
【0009】
本発明においては、前記機器情報は、前記画像形成装置が解釈することのできるPDLを含み、前記印刷データ生成部は、前記印刷ファイルを前記PDLに変換することができ、また、前記機器情報は、該画像形成装置が印刷することのできる色モードを含み、前記印刷データ生成部は、前記印刷ファイルを前記色モードに変換することができる。また、本発明においては、前記印刷サーバは、印刷権限を有するユーザ一を前記画像形成装置毎に管理する印刷権限ユーザリストと、前記画像形成装置から送信される前記ユーザ識別情報に基づいて前記印刷権限ユーザリストを参照し、前記要求元の前記画像形成装置について、ユーザの印刷権限の有無を判断する印刷権限判断手段とをさらに含むことができ、前記機器情報取得手段は、ユーザの印刷権限がある場合にのみ、前記要求元の前記画像形成装置に対して機器情報を要求することができる。
【0010】
さらに、本発明によれば、印刷命令を発行する少なくとも一つの情報処理装置と複数の画像形成装置と印刷サーバとを含むネットワークプリントシステムにおいて、前記印刷命令に対応する印刷出力を前記画像形成装置に実行させるためのコンピュータ実行可能な方法であって、該方法は、前記印刷サーバに対し、前記情報処理装置から送信されるユーザ識別情報と前記印刷命令に対応する印刷ファイルとを受信するステップと、受信した前記印刷ファイルを前記ユーザ識別情報と関連付けて記憶するステップと、前記画像形成装置からユーザ識別情報および印刷ファイルの印刷出力要求を受信するステップと、前記印刷出力要求を受信したことに応答して、要求元の前記画像形成装置の機器情報を取得するステップと、前記画像形成装置から受信した前記ユーザ識別情報に対応する印刷ファイルを抽出するステップと、抽出された前記印刷ファイルを、受信した前記機器情報に基づいて前記要求元の前記画像形成装置が印刷することのできる印刷データに変換するステップと、生成した前記印刷データを前記要求元の前記画像形成装置に送信するステップとを実行させる方法が提供される。
【0011】
本発明においては、前記機器情報は、前記画像形成装置が解釈することのできるPDLを含み、前記印刷データに変換するステップは、前記印刷ファイルを前記PDLに変換するステップを含むことができ、また、前記機器情報は、前記画像形成装置が印刷することのできる色モードを含み、前記印刷データに変換するステップは、前記印刷ファイルを前記色モードに変換するステップを含むことができる。また、本発明においては、前記印刷サーバは、印刷権限を有するユーザ一を前記画像形成装置毎に管理する印刷権限ユーザリストを含み、前記画像形成装置から送信される前記ユーザ識別情報に基づいて前記印刷権限ユーザリストを参照し、前記要求元の前記画像形成装置について、ユーザの印刷権限の有無を判断するステップを含むことができ、前記機器情報を取得するステップは、ユーザの印刷権限がある場合にのみ、前記要求元の前記画像形成装置に対して機器情報を要求するステップを含むことができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、コンピュータに、上記方法のステップを実行させるためのコンピュータ実行可能なプログラム、および当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。なお、本発明においては、ユーザ識別情報を、ユーザ名、ユーザID、ユーザ・パスワード、またはこれらの組み合わせとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態のネットワークプリントシステムを示す図。
【図2】本実施形態におけるPC、印刷サーバ、およびMFPの機能ブロックを示す図。
【図3】本実施形態の印刷サーバの動作を示すフローチャート。
【図4】本実施形態のMFPの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を、実施形態をもって説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施形態のネットワークプリントシステム10を示す。ネットワークプリントシステム10は、パーソナル・コンピュータ、またはワークステーションなどとして構成される少なくとも一つの情報処理装置12と、複数の画像形成装置20と、印刷サーバ30とを含んで構成されている。情報処理装置12、画像形成装置20、および印刷サーバ30は、いずれも、ローカルエリア・ネットワーク(LAN)、ワイドエリア・ネットワーク(WAN)、またはインターネットといったネットワーク基盤として構成されるネットワーク50に接続されている。
【0016】
画像形成装置20は、ネットワーク50を介して情報処理装置12(以下、PC12として参照する)からの印刷命令に応答して印刷を実行することのできる、電子写真方式またはインクジェット方式のプリントエンジンを備えるネットワーク・プリンタとして機能する装置であり、例えば、MFP(Multi Function Peripheral)として構成される。以下の説明においては、便宜的に、本実施形態における画像形成装置20をMFP20として参照する。
【0017】
印刷サーバ30は、パーソナル・コンピュータ、またはワークステーションなどとして構成され、ネットワーク50を介してMFP20の印刷処理について一元管理する装置であり、PC12から受付けた印刷命令を自己の管理下にあるMFP20に実行させる。
【0018】
PC12および印刷サーバ30は、いずれも、システム・コントローラとして機能するCPU、アプリケーション・ソフトウェアの実行空間を与えるためのRAM、DRAM、ならびに処理を行うためのデータまたはプログラムなどを格納したROM等のメモリ、ハードディスク装置や光ディスク装置などの外部記憶装置、およびNICを含むネットワーク・インターフェースなどの各種インタフェース部などを含んで構成されており、WINDOWS(登録商標)、UNIX(登録商標)、LINUX(登録商標)、その他の適切なオペレーション・システム(OS)の管理下で、C、C++、VisualC++、VisualBasic、Java(登録商標)などのオブジェクト指向のプログラミング言語により記述された各種アプリケーション・プログラムを実行することによって、後述する各機能手段を実現する。
【0019】
また、MFP20は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク装置、SDカードアダプタ、ネットワーク・インタフェース・カード(NIC)などを含んで構成されており、UNIX(登録商標)、LINUX(登録商標)などのOSにより制御され、かつネットワークアクセスが可能とされている。MFP20は、感光体ドラム、現像装置、定着装置などを含むプリンタ・エンジンおよびプリンタ・コントローラを含んで構成されており、プリンタ・コントローラは、プリンタ・エンジンに対して作像を行わせる。以上、本実施形態のネットワークプリントシステム10を構成する各装置の概要について説明したが、次に、各装置の機能手段について図2を参照して以下説明する。
【0020】
図2は、本実施形態におけるPC12、印刷サーバ30、およびMFP20の機能ブロック図を示す。PC12は、ユーザ識別情報入力部14および印刷ファイル送信部16を含んで構成されている。ユーザは、PC12を操作して所望のファイルを指定し、所定のアプリケーションソフトウェアから印刷を実行するよう命令する。ユーザから印刷命令を受けると、ユーザ識別情報入力部14は、ユーザに対してユーザ識別情報の入力を要求する。なお、本実施形態におけるユーザ識別情報とは、ユーザを一意に識別することのできる情報をいい、ユーザ名、ユーザID、ユーザ・パスワード、またはこれらの組み合わせとすることができる。ユーザからユーザ識別情報の入力がなされると、印刷ファイル送信部16は、ハードディクス等で構成される記憶装置18からユーザが指定する印刷対象ファイルを取り出し、ユーザが入力したユーザ識別情報と共に印刷サーバ30に送信する。なお、本実施形態におけるPC12は、指定された印刷対象ファイルをPDLで記述された印刷データに変換することなく、ネットワーク50を介して印刷サーバ30に送信する。
【0021】
印刷サーバ30は、印刷ファイル受信部31、印刷ファイル記憶部32、印刷ファイル抽出部33、印刷出力要求受信部34、印刷権限判断部35、印刷ファイルリストアップ部36、機器情報取得部37、印刷データ生成部38、および印刷データ送信部39を含んで構成されている。一方、MFP20は、ユーザ識別情報入力部21、印刷出力要求送信部22、ユーザインターフェース部23、印刷ファイル選択部24、機器情報送信部25、印刷データ受信部26、および印刷結果出力部27を含んで構成されている。
【0022】
印刷サーバ30の印刷ファイル受信部31は、PC12の印刷ファイル送信部16から送信された印刷ファイルをユーザ識別情報と共に受信する。印刷ファイル受信部31によって受信された印刷ファイルは、印刷ファイル記憶部32によって、スプールディレクトリ40に一旦スプールされる。なお、本実施形態においては、印刷ファイル記憶部32は、インデックス作成部41を含んで構成されており、インデックス作成部41は、スプールした印刷ファイルのファイル名と、その格納アドレスと、PC12から受信したユーザ識別情報とを関連付けたインデックス・テーブル42を作成・管理する。
【0023】
本実施形態のネットワークプリントシステム10においては、ユーザは、所望のファイルの印刷の実行をPC12に対して命令した後、その出力については、必要に応じてユーザ自身がプリンタ側から事後的に指示する。たとえば、ユーザは、自分のデスク上のPC12から印刷命令を行った後に、会議室に移動し、そこに設置されたMFP20に対して印刷出力を要求することができる。
【0024】
ファイルの印刷出力を要求するユーザに対して、MFP20のユーザ識別情報入力部21は、ユーザ識別情報の入力を要求する。ここでは、先に説明した、PC12のユーザ識別情報入力部14がユーザに対して要求したユーザ識別情報と同じものが要求される。ユーザからユーザ識別情報の入力がなされると、印刷出力要求送信部22は、入力されたユーザ識別情報と共に印刷出力要求を印刷サーバ30に送信する。
【0025】
MFP20から送信されたユーザ識別情報および印刷出力要求は、印刷サーバ30の印刷出力要求受信部34によって受信される。印刷出力要求受信部34は、MFP20から送信されたユーザ識別情報を印刷権限判断部35に転送し、要求元のMFP20についてユーザが印刷権限を有しているか否かの判断を依頼する。本実施形態における印刷権限判断部35は、ネットワークに接続された複数のMFP20のそれぞれについて、MFP20と印刷権限を有するユーザのユーザ識別情報とを関連付けた印刷権限ユーザリスト43を備えており、MFP20から送信されたユーザ識別情報に基づいて印刷権限ユーザリスト43を参照し、ユーザの印刷権限の有無を判断する。
【0026】
印刷権限判断部35は、ユーザが要求元のMFP20について印刷権限の有無の判断結果をMFP20に通知し、当該通知を受けたMFP20のユーザインターフェース部23は、たとえばタッチパネルで構成される表示手段にその結果を表示する。一方、印刷権限判断部35は、ユーザが要求元のMFP20について印刷権限を有していると判断すると、印刷ファイルリストアップ部36に対してユーザ識別情報を渡し、当該ユーザ識別情報に対応するユーザの印刷命令に対応するファイルの一覧の作成を依頼する。ファイル一覧の作成を依頼された印刷ファイルリストアップ部36は、ユーザ識別情報に基づいてインデックステーブル42を参照し、当該ユーザ識別情報に関連付けて格納されたファイル名を抽出してリストを作成し、これをMFP20のユーザインターフェース部23に送信する。
【0027】
ユーザインターフェース部23は、この印刷ファイルリストを受信すると、タッチパネルに受信した印刷ファイルリストを表示する。ユーザは、表示された印刷ファイルリストの中から、タッチパネルを使用して所望のファイルを選択する。印刷ファイル選択部24は、ユーザインターフェース部23を通してユーザのファイル選択を受付けると、選択されたファイル名を印刷サーバ30の印刷ファイル抽出部33に送信する。印刷ファイル抽出部33は、印刷ファイル選択部24から選択されたファイル名を受信すると、当該ファイル名に基づいてインデックステーブル42を参照し、対応する格納アドレスに基づいてスプールディレクトリ40にアクセスして該当するファイルを読み出す。印刷ファイル抽出部33は、読み出したファイルを印刷データ生成部38に送る。
【0028】
一方、印刷権限判断部35は、ユーザが要求元のMFP20について印刷権限を有していると判断すると、機器情報取得部37に対して、MFP20の機器情報を取得するよう依頼する。本実施形態における機器情報とは、MFP20が備えるプリンタ・コントローラが解釈することができるPDLの種類についての情報(以下、PDL情報として参照する)、あるいは、MFP20が印刷可能な色モード(「モノクロ」/「カラー」)ついての情報(以下、色モード情報として参照する)等をいう。機器情報取得部37は、印刷権限判断部35から依頼を受けると、MFP20に対して機器情報取得要求を送信し、MFP20は、これに応答して自身のPDL情報および色モード情報を印刷サーバ30の機器情報取得部37に返信する。取得された機器情報は、機器情報取得部37から印刷データ生成部38に送信される。
【0029】
印刷データ生成部38は、印刷ファイル抽出部33から印刷ファイルを受信し、さらに、機器情報取得部37からMFP20の機器情報を受信すると、受信した機器情報に基づいて印刷ファイルをMFP20が処理可能な印刷データに変換する。たとえば、受信した機器情報に含まれるPDL情報が「PostScript」であった場合には、「PostScript」に対応するプリンタドライバ・プログラムを記憶装置44からロードして実行し、ファイルを「PostScript」で記述されたPDLデータに変換する。本実施形態における印刷データ生成部38は、「PostScript」の他、「PCL」、「RPDL」等、複数のPDLに対応するプリンタドライバ・プログラムを使用することができるように構成されている。また、PC12から受信した印刷ファイルがカラーであるにもかかわらず、MFP20から受信した機器情報に含まれる色モード情報が「モノクロ」であった場合には、印刷データ生成部38は、カラー設定の印刷ファイルを「モノクロ」に対応するPDLデータに変換する。
【0030】
印刷データ生成部38において変換・生成されたPDLデータは、印刷データ送信部39からMFP20に送信される。MFP20の印刷データ受信部26が印刷データを受信すると、プリンタ・ドライバおよびプリンタ・エンジンを含んで構成される印刷結果出力部27によって、PDLデータが解釈され、画像イメージデータに変換されて出力される。以上、本実施形態のネットワークプリントシステム10を、図2に示す機能ブロック図を参照して説明してきたが、本実施形態における印刷サーバ30およびMFP20の動作フローチャートをもとに、より詳細に説明する。
【0031】
図3は、本実施形態の印刷サーバ30の動作を示すフローチャートである。まずステップ101において、PC12からユーザ識別情報および印刷対象ファイルを受信したか否かが判断される。ステップ101において、ユーザ識別情報および印刷対象ファイルを受信した場合には(ステップ101、Yes)、ステップ102に進んで受信した印刷ファイルをスプールすると共に、ステップ103において、印刷ファイルの格納アドレスとユーザ識別情報とを関連付けたファイルインデックスを作成し、ステップ104に進む。一方、ステップ101において、PC12からユーザ識別情報および印刷対象ファイルを受信していない場合には(ステップ101、No)、直接ステップ104に進む。
【0032】
次に、ステップ104において、MFP20からユーザ識別情報および印刷出力要求を受信したか否かが判断される。ステップ104において、ユーザ識別情報および印刷出力要求を受信した場合には(ステップ104、Yes)、ステップ105に進んでユーザの印刷権限の有無が判断される。なお、ステップ104において、MFP20からユーザ識別情報および印刷出力要求を受信していない場合には(ステップ104、No)、そのまま処理を終了する。
【0033】
ステップ105において、ユーザに印刷権限が無いと判断された場合には(ステップ105、No)、ステップ106に進み、要求元のMFP20に対しユーザの印刷権限が無い旨を通知して処理を終了する。一方、ステップ105において、ユーザに印刷権限が有ると判断された場合には(ステップ105、Yes)、ステップ107において、要求元のMFP20に対して機器情報(PDL情報/色モード情報)を要求し、これを取得すると共に、ステップ108において、ユーザが出力可能な印刷ファイルのリストを作成し、これを要求元のMFP20に送信する。
【0034】
次に、ステップ109において、印刷サーバ30は、MFP20から印刷ファイルの選択が有るまで待機する(ステップ109、No)。なお、ステップ109において、設定されたタイムアウト期間を経過した場合には処理を終了する。一方、MFP20から印刷ファイルの選択があった場合には(ステップ109、Yes)、ステップ110に進み、インデックステーブル42を参照してユーザ識別情報に対応する印刷ファイルをスプールディレクトリ40から抽出する。
【0035】
最後に、ステップ111において、MFP20から取得した機器情報(PDL情報/色モード情報)に基づいて、印刷ファイルを印刷データに変換した後、ステップ112において、当該印刷データをMFP20に送信して処理を終了する。以上、本実施形態の印刷サーバ30について、動作フローチャートをもとに説明してきたが、次に、本実施形態のMFP20について、動作フローチャートをもとに説明する。
【0036】
図4は、本実施形態のMFP20の動作を示すフローチャートである。まずステップ201において、ユーザ識別情報の入力および印刷出力要求の有無が判断される。ステップ201において、ユーザ識別情報の入力および印刷出力要求が有った場合には(ステップ201、Yes)、ステップ202に進んで、当該ユーザ識別情報および印刷出力要求を印刷サーバに送信する。一方、ステップ201において、ユーザ識別情報の入力および印刷出力要求がない場合には(ステップ201、No)、そのまま処理を終了する。
【0037】
次に、ステップ203に進んでユーザの印刷権限の有無が判断される。ステップ203において、印刷権限がない場合には(ステップ203、No)、そのまま処理を終了する。一方、ステップ203において、印刷権限があると判断された場合には(ステップ203、Yes)、ステップ204に進み、印刷サーバ30から印刷ファイルリストの送信があるまで待機する(ステップ204、No)。なお、ステップ204において、設定されたタイムアウト期間を経過した場合には処理を終了する。
【0038】
ステップ204において、印刷サーバから印刷ファイルリストが送信されると(ステップ204、Yes)、ステップ205において、印刷ファイルリストを表示して、ステップ206に進み、ユーザの印刷ファイルの選択が済むまで待機する(ステップ206、No)。なお、ステップ206において、設定されたタイムアウト期間を経過した場合には処理を終了する。ステップ206において、ユーザが印刷ファイルの選択をすると(ステップ206、Yes)、ステップ207において、選択された印刷ファイルのファイル名が印刷サーバ30に送信される。
【0039】
次に、ステップ208において、印刷サーバ30から機器情報(PDL情報/色モード情報)の要求があるまで待機する(ステップ208、No)。なお、ステップ208において、設定されたタイムアウト期間を経過した場合には処理を終了する。印刷サーバ30から機器情報(PDL情報/色モード情報)の要求があると(ステップ208、Yes)、ステップ209において、印刷サーバ30に対して機器情報(PDL情報/色モード情報)を送信する。
【0040】
次に、ステップ210において、印刷サーバ30から印刷データの受信があるまで待機する(ステップ210、No)。なお、ステップ210において、設定されたタイムアウト期間を経過した場合には処理を終了する。印刷サーバ30から印刷データを受信すると(ステップ210、Yes)、ステップ211に進み、受信した印刷データを画像イメージデータに変換して印刷結果を出力した後、処理を終了する。
【0041】
以上、説明したように、いわゆる「ロケーションフリー印刷」に本実施形態のネットワークプリントシステムを適用することによって、各種機器設定が異なる複数のプリンタの中からユーザが任意に選択するプリンタにおいて常に適切な出力を実現することができ、また、その際、ユーザの印刷権限が判断されるため、意図しない第三者への情報漏洩を好適に防止することができる。
【0042】
上述した実施形態の各機能は、アセンブリ言語、C、Visual C、C++、Visual C++、Java(登録商標)、Java(登録商標)Beans、Java(登録商標)Applet、Java(登録商標)Script、Perl、Rubyなど、レガシープログラミング言語やオブジェクト指向プログラミング言語などで記述された装置実行可能なプログラムにより実現でき、装置可読な記録媒体に格納して頒布することができる。
【0043】
これまで本発明について実施形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
10…ネットワークプリントシステム、12…PC、14…ユーザ識別情報入力部、16…印刷ファイル送信部、18…記憶装置、20…MFP、21…ユーザ識別情報入力部、22…印刷出力要求送信部、23…ユーザインターフェース部、24…印刷ファイル選択部、25…機器情報送信部、26…印刷データ受信部、27…印刷結果出力部、30…印刷サーバ、31…印刷ファイル受信部、32…印刷ファイル記憶部、33…印刷ファイル抽出部、34…印刷出力要求受信部、35…印刷権限判断部、36…印刷ファイルリストアップ部、37…機器情報取得部、38…印刷データ生成部、39…印刷データ送信部、40…スプールディレクトリ、41…インデックス作成部、42…インデックステーブル、43…印刷権限ユーザリスト、44…記憶装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】特開9−198213号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷命令を発行する少なくとも一つの情報処理装置と、複数の画像形成装置と、前記印刷命令に対応する印刷出力を前記画像形成装置に実行させるための印刷サーバとを含むネットワークプリントシステムであって、
前記情報処理装置は、
ユーザ識別情報入力手段と、
前記印刷命令に対応する印刷ファイルを、印刷データに変換することなく、前記ユーザ識別情報と共に前記印刷サーバに送信する印刷ファイル送信手段と、
を含み、
前記画像形成装置は、
ユーザ識別情報入力手段と、
前記印刷サーバに対し、印刷ファイルの印刷出力要求を前記ユーザ識別情報と共に送信する印刷出力要求送信手段と、
前記印刷サーバからの要求に応答して、前記印刷サーバに対して機器情報を送信する機器情報送信手段と、
前記印刷サーバから送信される印刷データを受信する印刷データ受信手段と、
前記印刷データに基づいて印刷結果を出力する印刷結果出力手段と、
を含み、
前記印刷サーバは、
前記情報処理装置から送信される前記ユーザ識別情報と前記印刷ファイルとを受信する印刷ファイル受信手段と、
受信した前記印刷ファイルを前記ユーザ識別情報と関連付けて記憶する印刷ファイル記憶手段と、
前記画像形成装置から前記ユーザ識別情報および前記印刷出力要求を受信する印刷出力要求受信手段と、
前記印刷出力要求を受信したことに応答して、要求元の前記画像形成装置の機器情報を取得する機器情報取得手段と、
前記画像形成装置から受信した前記ユーザ識別情報に対応する印刷ファイルを抽出する印刷ファイル抽出手段と、
抽出された前記印刷ファイルを、受信した前記機器情報に基づいて前記要求元の前記画像形成装置が印刷することのできる印刷データに変換する印刷データ生成手段と、
生成した前記印刷データを前記要求元の前記画像形成装置に送信する印刷データ送信手段と、
を含む、
ネットワークプリントシステム。
【請求項2】
前記機器情報は、前記画像形成装置が解釈することのできるPDLを含み、
前記印刷データ生成手段は、前記印刷ファイルを前記PDLに変換する、請求項1に記載のネットワークプリントシステム。
【請求項3】
前記機器情報は、該画像形成装置が印刷することのできる色モードを含み、
前記印刷データ生成手段は、前記印刷ファイルを前記色モードに変換する、請求項1に記載のネットワークプリントシステム。
【請求項4】
前記印刷サーバは、印刷権限を有するユーザ一を前記画像形成装置毎に管理する印刷権限ユーザリストと、
前記画像形成装置から送信される前記ユーザ識別情報に基づいて前記印刷権限ユーザリストを参照し、前記要求元の前記画像形成装置について、ユーザの印刷権限の有無を判断する印刷権限判断手段とをさらに含み、
前記機器情報取得手段は、ユーザの印刷権限がある場合にのみ、前記要求元の前記画像形成装置に対して機器情報を要求する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のネットワークプリントシステム。
【請求項5】
前記ユーザ識別情報は、ユーザ名、ユーザID、ユーザ・パスワード、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のネットワークプリントシステム。
【請求項6】
印刷命令を発行する少なくとも一つの情報処理装置と複数の画像形成装置を含むネットワークプリントシステムにおいて、前記印刷命令に対応する印刷出力を前記画像形成装置に実行させるための印刷サーバであって、
前記情報処理装置から送信されるユーザ識別情報と前記印刷命令に対応する印刷ファイルとを受信する印刷ファイル受信手段と、
受信した前記印刷ファイルを前記ユーザ識別情報と関連付けて記憶する印刷ファイル記憶手段と、
前記画像形成装置からユーザ識別情報および印刷ファイルの印刷出力要求を受信する印刷出力要求受信手段と、
前記印刷出力要求を受信したことに応答して、要求元の前記画像形成装置の機器情報を取得する機器情報取得手段と、
前記画像形成装置から受信した前記ユーザ識別情報に対応する印刷ファイルを抽出する印刷ファイル抽出手段と、
抽出された前記印刷ファイルを、受信した前記機器情報に基づいて前記要求元の前記画像形成装置が印刷することのできる印刷データに変換する印刷データ生成手段と、
生成した前記印刷データを前記要求元の前記画像形成装置に送信する印刷データ送信手段と、
を含む、
印刷サーバ。
【請求項7】
前記ユーザ識別情報は、ユーザ名、ユーザID、ユーザ・パスワード、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の印刷サーバ。
【請求項8】
印刷命令を発行する少なくとも一つの情報処理装置と複数の画像形成装置と印刷サーバとを含むネットワークプリントシステムにおいて、前記印刷命令に対応する印刷出力を前記画像形成装置に実行させるためのコンピュータ実行可能な方法であって、該方法は、
前記印刷サーバに対し、
前記情報処理装置から送信されるユーザ識別情報と前記印刷命令に対応する印刷ファイルとを受信するステップと、
受信した前記印刷ファイルを前記ユーザ識別情報と関連付けて記憶するステップと、
前記画像形成装置からユーザ識別情報および印刷ファイルの印刷出力要求を受信するステップと、
前記印刷出力要求を受信したことに応答して、要求元の前記画像形成装置の機器情報を取得するステップと、
前記画像形成装置から受信した前記ユーザ識別情報に対応する印刷ファイルを抽出するステップと、
抽出された前記印刷ファイルを、受信した前記機器情報に基づいて前記要求元の前記画像形成装置が印刷することのできる印刷データに変換するステップと、
生成した前記印刷データを前記要求元の前記画像形成装置に送信するステップと、
を実行させる方法。
【請求項9】
前記機器情報は、前記画像形成装置が解釈することのできるPDLを含み、
前記印刷データに変換するステップは、前記印刷ファイルを前記PDLに変換するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記機器情報は、前記画像形成装置が印刷することのできる色モードを含み、
前記印刷データに変換するステップは、前記印刷ファイルを前記色モードに変換するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記印刷サーバは、印刷権限を有するユーザ一を前記画像形成装置毎に管理する印刷権限ユーザリストを含み、
前記画像形成装置から送信される前記ユーザ識別情報に基づいて前記印刷権限ユーザリストを参照し、前記要求元の前記画像形成装置について、ユーザの印刷権限の有無を判断するステップを含み、
前記機器情報を取得するステップは、ユーザの印刷権限がある場合にのみ、前記要求元の前記画像形成装置に対して機器情報を要求するステップを含む、
請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ユーザ識別情報は、ユーザ名、ユーザID、ユーザ・パスワード、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータに、請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法のステップを実行させるためのコンピュータ実行可能なプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−181948(P2010−181948A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22584(P2009−22584)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】