説明

ネットワーク中継装置

【課題】異なるプロトコルのネットワーク間で、ドメインを同一とした際、二重アドレスを防ぐことを可能とするネットワーク中継装置を提供する。
【解決手段】第1プロトコルで複数の通信局が通信する第1ネットワークと、第2プロトコルで複数の通信局が通信する第2ネットワークとの間に接続され、第2ネットワークに属する通信局をこの通信局が送信する識別信号により認識する第1通信局認識手段と、第1ネットワークに属する通信局をこの通信局が送信する識別信号により認識する第2通信局認識手段と、第1通信局認識手段で識別された通信局の識別信号を、第1プロトコルにより第1仮想識別信号に変換して第1ネットワークに送信する第1仮想識別信号送信手段と、第2通信局認識手段で識別された通信局の識別信号を、第2プロトコルにより第2仮想識別信号に変換して第2ネットワークに送信する第2仮想識別信号送信手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1プロトコルで複数の通信局が同一ドメイン内で通信する第1ネットワークと、第2プロトコルで複数の通信局が同一ドメイン内で通信する第2ネットワークとの間に接続され、前記第1ネットワークに属する前記ドメイン内の通信局と、前記第2ネットワークに属する前記ドメイン内の通信局間の通信を中継するネットワーク中継装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロセスを制御する分散形制御システムまたは異常時にプロセスを安全側に操作する安全制御システムでは、互いにプロトコルの異なる複数のネットワークが実装されており、これらネットワークに属する通信局間で通信を必要とする場合には、ネットワーク中継装置を介在させている。
【0003】
図2は、従来のネットワーク中継装置の構成例を示す機能ブロック図である。第1ネットワーク10(N1)は、独自のプロトコルを使用したネットワーク、例えば、トークンを渡された通信局のみがデータを送信できるトークンバス型である。
【0004】
トークンバス型では、トークンの宛先から何らかの応答があった場合は、全通信局が自身の管理する存在通信局情報に当該宛先アドレスを格納し、応答がなかった場合は、前記情報から当該宛先アドレスを削除することでネットワークに存在する通信局を認識する。
【0005】
第2ネットワーク20(N2)は、オープン化を実現したネットワーク、例えば、イーサネット(登録商標)を使用していて、CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access/Collision Detect)方式で各々の通信局が他の通信局に自身の存在を認識させるために能動的かつ定期的に診断バケットを同報通知している。
【0006】
診断バケットを受信した通信局が、自身の管理する存在通信局情報に当該送信元アドレスを格納し、前記情報を定期的に確認していて、一定時間前記診断パケットを受信していない通信局のアドレスを前記情報から削除することでネットワークに存在する通信局を認識する。
【0007】
これらのネットワークにおいて、通信局は、一つ以上の通信局からなるイーサネットのサブネットに相当するドメイン単位で構成され、ドメイン内で同一アドレスの通信局の接続は排除される。
【0008】
第1ネットワーク10(N1)には、ドメイン11及びドメイン12があり、これらドメインは中継装置13を介して通信できる。ドメイン11には、通信局1,通信局3,通信局5が存在している。
【0009】
同様に、第2ネットワーク20(N2)には、ドメイン21及びドメイン22があり、これらドメインは中継装置23を介して通信できる。ドメイン21には、通信局1,通信局3,通信局5が存在している。異なるドメイン間では、同一アドレスの通信局が存在していてもかまわない。
【0010】
中継装置30は、互いに異なるプロトコルで通信する第1ネットワーク10(N1)と第2ネットワーク20(N2)の通信局間の中継を行ない、ネットワークN1インターフェース31、ネットワークN2インターフェース32、中継インターフェース33を備えている。
【0011】
図示の状態では、ネットワークN1インターフェース31にはドメイン11の通信局2がマウントされ、ネットワークN2インターフェース32にはドメイン21の通信局2がマウントされている。中継インターフェース33はプロトコル変換を行い、ドメイン11の通信局2とドメイン21の通信局2間の通信を中継している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−23057号公報
【特許文献2】特開平10−173695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
異なるプロトコルのネットワーク10,20間で、第1ネットワーク10のドメイン11と第2ネットワーク20のドメイン21を同一ドメインとして運用したい場合に、プロトコルが異なることにより、同一アドレスの通信局を検出する方法も夫々のプロトコルで異なる。
【0014】
従って、既に存在する通信局と同じアドレスの通信局がネットワークに接続されても、自局と同じアドレスの通信局が既に存在する二重アドレスを検出することができないので、同一ドメインとして運用することができない。
【0015】
本発明の目的は、異なるプロトコルのネットワーク間で、ドメインを同一とした際、既に存在する通信局と同じアドレスの通信局がネットワークに接続される二重アドレスを防ぐことを可能とするネットワーク中継装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)第1プロトコルで複数の通信局が同一ドメイン内で通信する第1ネットワークと、第2プロトコルで複数の通信局が同一ドメイン内で通信する第2ネットワークとの間に接続され、前記第1ネットワークに属する前記ドメイン内の通信局と、前記第2ネットワークに属する前記ドメイン内の通信局間の通信を中継するネットワーク中継装置において、
前記第2ネットワークに属する前記ドメイン内の通信局をこの通信局が送信する識別信号により認識する第1通信局認識手段と、
前記第1に属する前記ドメイン内の通信局をこの通信局が送信する識別信号により認識する第2通信局認識手段と、
前記第1通信局認識手段で識別された通信局の識別信号を、前記第1プロトコルにより第1仮想識別信号に変換して前記第1ネットワークに属する前記ドメインに送信する第1仮想識別信号送信手段と、
前記第2通信局認識手段で識別された通信局の識別信号を、前記第2プロトコルにより第2仮想識別信号に変換して前記第2ネットワークに属する前記ドメインに送信する第2仮想識別信号送信手段と、
を備えることを特徴とするネットワーク中継装置。
【0017】
(2)前記第1ネットワークで通信する通信局の前記第1プロトコルはトークンバスであり、前記第2ネットワークで通信する通信局の前記第2プロトコルはCSMA/CDであることを特徴とする(1)に記載のネットワーク中継装置。
【0018】
(3)前記第1プロトコルによる通信局の識別信号は、通信局がネットワークに送信するトークンであり、前記第2プロトコルによる通信局の識別信号は、通信局がネットワークに送信する診断パケットであることを特徴とする(2)に記載のネットワーク中継装置。
【0019】
(4)前記第1仮想識別信号送信手段より送信された仮想識別信号と同一アドレスを有する通信局は、前記第1ネットワークに属する前記ドメイン内への接続が排除されると共に、前記第2仮想識別信号送信手段より送信された仮想識別信号と同一アドレスを有する通信局は、前記第2ネットワークに属する前記ドメイン内への接続が排除されることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のネットワーク中継装置。
【0020】
(5)前記第1ネットワークに属する前記ドメインと前記第2ネットワークに属する前記ドメインは、共通ドメインとして機能することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載のネットワーク中継装置。
【0021】
(6)前記第1ネットワークと前記第2ネットワークは、分散形制御システムまたは安全制御システムの少なくともいずれかに実装されていることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載のネットワーク中継装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、2つの異なるプロトコルのネットワークを同一ドメインとする際、設定ミスなどにより、既に存在する通信局と同じアドレスの通信局がネットワークに接続される二重アドレスを検出し、接続を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用したネットワーク中継装置の一実施例を示す機能ブロック図である。
【図2】従来のネットワーク中継装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明を適用したネットワーク中継装置の一実施例を示す機能ブロック図である。図2で説明した従来構成と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0025】
図1において、本発明を適用したネットワーク中継装置100は、ネットワークN1インターフェース101、ネットワークN2インターフェース102、中継インターフェース103を備える。これら要素は、図2で示したネットワーク中継装置30のネットワークN1インターフェース31、ネットワークN2インターフェース32、中継インターフェース33と同一機能である。
【0026】
ネットワーク中継装置100において従来構成に追加される要素は、第1通信局認識手段104及び第1仮想識別信号送信手段105、並びに、第2通信局認識手段106及び第2仮想識別信号送信手段107である。
【0027】
第1通信局認識手段104は、第2ネットワーク20に属するドメイン21内の通信局をこの通信局が送信する識別信号により認識する。第1仮想識別信号送信手段105は、第1通信局認識手段104で識別された第2ネットワーク20に属するドメイン21内の通信局の識別信号を、第1プロトコルにより第1仮想識別信号に変換して第1ネットワーク10に属するドメイン11に送信する。
【0028】
第2通信局認識手段106は、第1ネットワーク10に属するドメイン11内の通信局をこの通信局が送信する識別信号により認識する。第2仮想識別信号送信手段107は、第2通信局認識手段106で識別された第1ネットワーク10に属するドメイン11内の通信局の識別信号を、第2プロトコルにより第2仮想識別信号に変換して第2ネットワーク20に属するドメイン21に送信する。
【0029】
このように構成することにより、他方のネットワークに存在する通信局と同一のアドレスを持つ通信局を自分のネットワーク上に仮想的に参加させることができる。即ち、他方のネットワークに存在する通信局が仮想的に自分のネットワークに存在することになり、この通信局と同じアドレスの通信局を新規に接続する際、この通信局はネットワークに参加できなくなる。
【0030】
以下、具体的な動作例を説明する。まず、第1通信局認識手段104は、第2ネットワー20のドメイン21に存在する通信局4のアドレスを認識する。通信局4から同報通知される診断パケット4を検出することで、その通信局4を認識することができる。
【0031】
次に、第1仮想識別信号送信手段105は、第1通信局認識手段104により認識した通信局4のアドレス宛に送信されるトークン4を受け取る。トークン4を受け取った後、第1のネットワーク10のドメイン11上に存在する自局より次に若いアドレスの通信局5へ仮想的なトークン5を送信する。
【0032】
以上により、第1ネットワーク10のドメイン11上において、第2ネットワーク20のドメイン21上に存在する通信局4と同じアドレスを持つドメイン11側の通信局4がネットワークに新規に接続される際に、その通信局4は既に巡回しているトークン5を観測し、そのトークン5の送信元アドレスが自局のアドレスと一致するため、第1ネットワーク10のドメイン11に参加することを取り止める。
【0033】
同様に、第2通信局認識手段106は、第1ネットワー10のドメイン11に存在する通信局1、3、5のアドレスを認識する。これら通信局1、3、5から同報通知される識別信号を検出することで、その通信局1、2、3、5を認識することができる。
【0034】
次に、第2仮想識別信号送信手段107は、第2通信局認識手段106により認識した通信局1、3、5のアドレスについて、第2のネットワーク20のドメイン21上に存在する通信局4に仮想的な診断パケット1、2、3、5を送信する。
【0035】
以上により、第2ネットワーク20のドメイン21上において、第1ネットワーク10のドメイン11上に存在する通信局1、2、3、5と同じアドレスの通信局がドメイン21側に新規に接続される際、その通信局は既にドメイン21に仮想的に存在しているので、第2ネットワーク20のドメイン21に参加することを取り止める。
【符号の説明】
【0036】
10 第1ネットワーク(N1)
11 ドメイン
20 第2ネットワーク(N2)
21 ドメイン
100 中継装置
101 ネットワークN1インターフェース
102 ネットワークN2インターフェース
103 中継インターフェース
104 第1通信局認識手段
105 第1仮想識別信号送信手段
106 第2通信局認識手段
107 第2仮想識別信号送信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プロトコルで複数の通信局が同一ドメイン内で通信する第1ネットワークと、第2プロトコルで複数の通信局が同一ドメイン内で通信する第2ネットワークとの間に接続され、前記第1ネットワークに属する前記ドメイン内の通信局と、前記第2ネットワークに属する前記ドメイン内の通信局間の通信を中継するネットワーク中継装置において、
前記第2ネットワークに属する前記ドメイン内の通信局をこの通信局が送信する識別信号により認識する第1通信局認識手段と、
前記第1ネットワークに属する前記ドメイン内の通信局をこの通信局が送信する識別信号により認識する第2通信局認識手段と、
前記第1通信局認識手段で識別された通信局の識別信号を、前記第1プロトコルにより第1仮想識別信号に変換して前記第1ネットワークに属する前記ドメインに送信する第1仮想識別信号送信手段と、
前記第2通信局認識手段で識別された通信局の識別信号を、前記第2プロトコルにより第2仮想識別信号に変換して前記第2ネットワークに属する前記ドメインに送信する第2仮想識別信号送信手段と、
を備えることを特徴とするネットワーク中継装置。
【請求項2】
前記第1ネットワークで通信する通信局の前記第1プロトコルはトークンバスであり、前記第2ネットワークで通信する通信局の前記第2プロトコルはCSMA/CDであることを特徴とする請求項1に記載のネットワーク中継装置。
【請求項3】
前記第1プロトコルによる通信局の識別信号は、通信局がネットワークに送信するトークンであり、前記第2プロトコルによる通信局の識別信号は、通信局がネットワークに送信する診断パケットであることを特徴とする請求項2に記載のネットワーク中継装置。
【請求項4】
前記第1仮想識別信号送信手段より送信された仮想識別信号と同一アドレスを有する通信局は、前記第1ネットワークに属する前記ドメイン内への接続が排除されると共に、前記第2仮想識別信号送信手段より送信された仮想識別信号と同一アドレスを有する通信局は、前記第2ネットワークに属する前記ドメイン内への接続が排除されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のネットワーク中継装置。
【請求項5】
前記第1ネットワークに属する前記ドメインと前記第2ネットワークに属する前記ドメインは、共通ドメインとして機能することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のネットワーク中継装置。
【請求項6】
前記第1ネットワークと前記第2ネットワークは、分散形制御システムまたは安全制御システムの少なくともいずれかに実装されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のネットワーク中継装置。

【図1】
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【図2】
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