説明

ネットワーク化された注入システムにおける投薬ミス防止方法および装置

【課題】薬物を投与する前にプログラムされたポンプデータのチェックを提供するシステムを提供する。
【解決手段】ネットワーク化された薬物供給システム(20)は、薬物を投与するための命令を用いてユーザーによりプログラム可能な注入装置(22)、プログラムされたデータが臨床的に受容可能な用量を与え得るかどうか、またはその薬物が患者に対してアレルギー反応または薬物過敏性反応を引き起こすことが記録された薬物のリストに存在するかどうかを決定するための演算装置(26)を備える。このシステム(20)はさらに、少なくとも1つのモニター(24)、警告装置(28)、およびデータベース(27)をも備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に対してアレルギー反応または薬物反応を引き起こすことが知られた治療的でない投薬量の投与を自動的に抑制するための方法および装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、投与薬物が治療値の範囲外または患者がアレルギー性/過敏性を示す範囲外であるかどうかを決定し、および適切な医療関係者に警告を発し、および/または薬物投与を抑制する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1999年の薬学学会の報告によると、人間のミスに起因する「医療ミス」は1年間に約70,000人から100,000人の死亡をもたらしている。指摘として、医療ミスは、様々な状況、原因に関連する。しかしながら研究によれば、重大ミスの大部分は、静脈内の薬物投与に関連することが示されている。
【0003】
薬物が静脈内に投与される場合、この薬物は、患者にほぼ即座に即効反応を誘発する。したがって、ミスがなされた場合にはこれを補償する時間はほとんどない。多くの危険物質は静脈内に投与される。薬物投与プロセスは、供給システムにおけるいくらかの人間の関与から、薬理的な変量(例えば、正確な用量、正確な薬物、規定時間での供給および投与の特定経路の使用など)までの、多くの変量が組み合わさっている。したがって、ミスの発生が、患者にとっての1以上の有害な影響となり得るという望ましくない可能性と同様に、潜在的なミスを把握することは困難である。
【0004】
静脈内ミスは、薬物の注文、転記、調剤、および投与のプロセス中の任意点において含まれ得る。例えば、注文書が判読できない、不完全、または誤った患者のカルテに基づいて発注される場合には、注文ミスが生じ得る。不適切な小数点(小数点の打ち間違い)または受け入れられない処方箋の略記はさらに、注文ミスにつながり得る。不適切な薬物が選択され、患者のアレルギーが正確に確認されていない場合には、注文ミスはさらに生じ得る。
【0005】
転記ミスは、薬物投与記録(Medication Administration Record:MAR)上に注文が転記されず、不完全に署名がとられ、または不正確に転記されることが原因で生じる。さらに場合によっては、患者のアレルギーが転記されず、またはその転記が判読できない場合もある。
【0006】
調剤ミスは、誤った用量または薬物または患者の誤認の結果として生じる。投薬ミスは患者の治療中であればいつでも生じ、および患者または薬物の確認、または投薬の時間、用量、または経路と関係があり得る。
【0007】
とりわけ、60%から80%の静脈内ミスが人間のミスに起因すると報告されている。その後、ミスの可能性を減少させるための1つの方法は、薬物の注文、転記、調剤および投与を含む薬物供給プロセスの様々な局面を出来る限り自動化することということになる。情報化技術はこのプロセスの一部を自動化するために活用され得る。
【0008】
Englesonらによる米国特許番号5,781,442号では、薬物投与プロセスの一部を自動化する統括した看護管理システムが、開示されている。このシステムはローカルエリアネットワークによりいくつかのコンピュータに接続され、これらのコンピュータは、調剤コンピュータ、ナースステーションコンピュータ、およびベッドサイドコンピュータを有する。これらのコンピュータは、例えば薬物注入ポンプのような、臨床装置に
接続され得る。コンピュータ中のメモリは、患者の治療に関する情報を記憶する。調剤コンピュータは、ベッドサイドコンピュータから通信される情報を、調剤コンピュータに記憶される情報と比較する。この比較により規定条件が満たされる場合、調剤コンピュータは、ポンプ操作パラメータをベッドサイドコンピュータにダウンロードする。次にこのベッドサイドコンピュータは、ダウンロードされた操作パラメータに従って操作するように薬物注入ポンプをプログラムし、ナースまたは技術者がポンプを設定するパラメータを手動で入力する必要性を取り除く。ネットワークからパラメータをダウンロードすることによってポンプが自動的に設定されない場所では、このシステムのみが、投薬の適切な処置が適切な患者になされていることを立証する。ポンプは医療関係者によってその後、手動で設定されなければならない。
【0009】
Englesonらのシステムは一定の警告を有するように設定され得るが、このシステムは、投与用量が特定薬物の適切な治療範囲内であるかどうかのチェックを行わない。さらには、提案される処置が指定患者に対して適切であることを確認した後に、手動プログラムを要求することから、このシステムにはミス検出用の手段ないので、誤った用量および/または供給速度がポンプにプログラムされ得る可能性を導入する。
【0010】
Coutreらによる「Infusion Fluid Management System」という題目の、特許文献1において開示される、他のシステムでは、静脈内投与薬物のすべての必要なデータが入力されたかどうかを自動的にチェックし、矛盾点についてユーザーに注意を喚起する。この患者は薬物注入ポンプシステムおよび調剤管理システムに向けられ、それぞれのシステムは互いに離れて配置され、協同して所定の注入プログラムを管理および分析する。この統合システムは、薬局における注入薬の補給から、注入が完了した後の病院記録の報告の作成までの、患者に対する1以上の薬物調合の注入を管理する。
【0011】
Coutreによる薬局管理システムでは、患者のデータおよび処方薬の注入データが入力される。このシステムは、輸液封入袋および患者のカルテ上に貼るための輸液供給指示および人間が読み取り可能な指示とともに符号化されたバーコードを有するラベルを作り出す。この薬物注入ポンプシステムは、ユーザーが、注入ラベルに含まれるデータを入力するように注意を喚起し、ポンプに付属するバーコードリーダーを用いて、キーパッドまたはスキャンにより手動で入力され得る。患者の確認データはその後、患者のカルテまたは腕輪からバーコードリーダーを介して読み取られる。ポンプ中のプロセッサは、患者の情報が、IVコンテナ(container)上の情報と一致することを確認する。このシステムはその後、患者の規定データと入力データを比較することによって、投薬量を含み、すべてのデータが薬物注入ポンプシステムに正確に入力されたかどうかをチェックする。このシステムはユーザーが、キーパッドによる手動入力により薬剤または薬物の投薬計画を変えることを可能にする。
【0012】
Coutreによるシステムは、ポンプ入力データと「規定データ」とを比較することによって、ポンプ入力用量が規定の薬剤に対して受容可能な薬理的範囲内にあるかどうかをチェック出来ない。それゆえ、このシステムは、発注が判読できずまたは不完全でありまたはその発注書に従来の略記でないものが含まれる場合には、薬剤コンピュータに初めにプログラムされた不正確な用量が検出されないという可能性を許容する。このような比較は転記ミスも検出できない。さらに、このシステムではポンプが患者コード(患者のカルテまたは腕輪から)およびIVコンテナコード両方を読み込むことを必要とするので、このシステムは動作に難儀を要し得る。したがって、ポンプに関する符号化された情報の両方の設定の物理位置が重要で、潜在的に制限しなくても、考慮しなければならない。さらに、電源からの切断、有線のデータ通信を必要とし、所定のデータでプログラムされる必要もあるために、ポンプが周期的に移動するというこのシステムは非現実的であること
がわかりえる。さらには、あるデータ形式で作成された患者のアレルギーおよび変化のデータ(例えば、1次元のバーコードから2次元のバーコードまでのようなデータ)は、患者の治療を管理するために望まれるまたは望まれ得るいずれかの他のデータとともに、それぞれのポンプ別々に、再度プログラムもされなければならない。
【0013】
Albaumらによる米国特許番号5,758,095号は、発注ミス、および薬物の治療用量の範囲外での処方ミスを解消することを試みている。インタラクティブな薬物発注システムは、関係するデータベース中にある情報(例えば、薬物の最大許容用量)に基づいて、処方された薬物の結果として生じ得る潜在的に有害な状況にあるユーザーに警告するための手段を含む。しかしながらこのシステムは、処方される薬を投与するための装置または方法を含まず、薬物供給および投薬量の発注および処方の局面に専ら焦点を当てている。
【0014】
したがって、アプリケーションにより容易に構成、再構成、および移動し得、プログラムされた用量が薬理的に適切であること確保するために、薬物を投与する前にプログラムされたポンプデータのチェックを提供するシステムに対しての必要性が残る。本発明は、これらの問題やその他の問題を解決するために提供される。
【特許文献1】米国特許第5,317,506号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
本発明は、施設の中心的な位置において、供給装置にプログラムされたデータに基づき自動化チェックを提供することによって、病院または保険医療施設における患者に対して、安全にかつ治療範囲で薬物が投与されることを確保するためのシステムおよび方法に関する。このようなデータは、注入される供給速度および/または全容量を含み得る。本発明はさらに、記録された患者のアレルギー反応または薬物過敏反応のチェックを提供するシステムおよび方法に関する。
【0016】
一局面においては、本発明は、処方された薬物の臨床データと供給装置に入力された薬物投薬量データとを比較することによって、患者に対して薬物の治療的でない用量の供給(delivery)を回避する薬物供給システムを提供する。このシステムが、投薬量データが臨床的に受容できない用量を要求することを決定する場合、このシステムはそのユーザーに警告を発する。このシステムはさらに、薬物の供給を回避するために、供給装置を非働化する。
【0017】
他の局面では、本発明は、患者が記録されたアレルギー反応または薬物過敏反応をもつ薬物がその患者に投与されることを回避する薬物供給システムを提供する。このシステムおよび方法は、処方された薬物に対する臨床データと、記録された患者のアレルギー反応または薬物過敏性とを比較する。薬物がアレルギー反応および薬物過敏性反応を与えるとこのシステムが決定する場合、このシステムはユーザーに警告を発する。このシステムはさらに、薬物の供給を回避するために供給装置を非働化もし得る。
【0018】
このシステムは、投薬量データ(指示も含む)を用いてユーザーによりプログラム可能な、患者に薬物を投与するための供給装置、およびその供給装置と通信する演算装置を有する。この演算装置は、供給装置にプログラムされた投薬量データが、臨床的に受容可能な用量を与えるかどうか、および薬物が患者によりアレルギー反応または薬物過敏反応を生じるかどうかを決定する。
【0019】
一実施形態では、供給装置は、静脈内の薬物投与のための、例えば、注入ポンプのような注入装置であり得る。演算装置は、投薬量データが臨床的に受容可能な用量を与えるか
どうかを決定するため、およびその薬物により患者がアレルギー反応または薬物過敏反応を生じるかどうかを決定するための臨床情報のあるデータベースへアクセスする。
【0020】
薬物供給システムはさらに、医療関係者に対する少なくとも1つの信号を生成することが出来る警告装置を有し得、これは臨床的に受容可能な用量およびまたはアレルギー反応または薬物過敏反応を示す。このように生成された信号は、可聴音、視覚的な表示、テキストメッセージおよびページング信号であり得る。
【0021】
注入装置にプログラムされた用量データは、薬物名を有し、少なくとも全投薬量(total dosage)、供給速度(delivery rate)、供給容量(delivery volume)、希釈剤の型(type of diluent)、希釈剤量(amount of diluent)、投与時間(dose time)、供給時間(duration of delivery)、および投与経路(route of
administration)を有する。このシステムはさらに、少なくともプログラムされたデータの一部を表示するための、少なくとも1つのモニターも有する。
【0022】
投薬量および薬物データは一般的に、注入装置に付属のキーパッドにより、さもなくば、注入装置と通信して注入装置に手動で入力される。代替的な実施形態では、投薬量および薬物データは、例えば、バーコードリーダーまたは他の従来手段により、薬物供給命令およびデータを走査することにより入力され得る。
【0023】
本発明の他の局面では、ネットワーク化された薬物供給システムが提示される。この局面では、この薬物供給システムは、患者に投薬量を投与するための薬物供給命令を用いて、ユーザーによりプログラム可能な注入装置を有する。このシステムはさらに、用量が薬理的に受容可能かどうかを決定するために、データベース中に含まれる薬物に対する臨床的な投薬データと用量とを比較するための手段を有する。このシステムはさらに、記録された患者のアレルギー反応または薬物過敏性と、処方された薬物の臨床データとを比較するための手段を有する。さらに、薬物および用量が薬理的に受容可能でない場合、このシステム中には、患者に薬物を投与する前に医療関係者に通告するための警告装置が含まれる。ネットワークは、3つのすべての構成要素(すなわち、注入装置、比較手段、および警告装置)を結合する。
【0024】
注入装置にプログラムされた薬物供給命令は、薬物名および薬物の少なくとも1つの全投薬量、供給速度、供給容量、希釈剤の型、希釈剤量、投与時間、供給時間、および投与経路(これらには限られないが)を有する。この臨床データは、他の薬物とともに、処方された薬物のデータを有するデータベースからアクセス可能である。一実施形態では、データベースはさらに、ネットワークに組み込まれ得る。代替的な実施形態では、データベースは、注入装置を収容する保険医療施設または病院に対し外部にあり得る。このような実施形態では、データベースは、例えばイントラネットまたはインターネットによって、アクセス可能である。さらに他の実施形態では、データベースは、例えば、中央サーバー内にデータベースが含まれるようなセグメントなどの、比較するための手段の一部でもあり得る。
【0025】
しかし、本発明の他の局面は、処方された薬物の治療範囲外の用量の薬物の供給を回避する方法であり得る。この方法は、患者に薬物を供給するための投薬量データを用いて注入装置のプログラムを組むことと、投薬量データが薬物の治療上の範囲内の用量を与えるかどうかを決定することと、および用量が治療範囲外である場合、いずれかの薬物が患者に投与される前に、医療関係者に警告を発することを含む。決定することは、投薬量データと薬物の臨床データとを比較することを有し得る。この方法はさらに、薬物供給を回避するために、注入装置を自動的に非働化することを有し得る。
【0026】
比較することは、処方された薬物の臨床データ、およびその他のデータのデータベースにアクセスすることを含み得、このデータベースでは、そのデータは、どの用量水準が薬理的に薬物を受容可能であるかを特定する。このようなデータベースは、保険医療施設内に、または代替的にはネットワークを通してアクセス可能な施設外に配置され得る。一実施形態では、プログラミング工程において、注入装置は、プロセッサ、警告装置、および少なくとも1つのモニターとともにネットワークに繋がれている。
【0027】
プログラミングにおいては、薬物データは、薬物名を含み得、投薬量は、少なくとも1つの全投薬量、供給速度、供給容量、希釈剤の型、希釈剤量、投与時間、供給時間、および投与経路を含み得る。プログラミングは、注入装置との通信中にキーパッドにより、薬物または投薬量データを注入装置に入力する工程を含み得る。
【0028】
本発明の他の局面は、次に示す詳細な説明および図面を参照して明らかになり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(詳細な説明)
本発明は多くの様々な形式における実施形態が可能であるが、本発明の好ましい実施形態が図面中に示され、明細書中に詳細に記載され得る。本開示は本発明の原理の適例として考えられ得ることが理解され得る。この開示により、本発明の広い局面を例示の実施形態に制限されることは意図されない。
【0030】
本発明は、病院またはその他保険医療施設(以降、全体で「施設(facilities)」と言及される)においての使用に適切な、かつ薬物供給ミスのリスクを減少させるシステムを提供する。さらに重要なことには、本発明は、投与されるようにプログラム化された用量が、処方された薬物の薬理的に受容可能な水準の範囲外に当たる場合に、静脈内(IV)の、硬膜外の、髄膜下の、または皮下の薬物投与を抑制するためのシステムを提供する。臨床的に受容できない用量が供給にプログラムされている場合に、このシステムは即座に、医療関係者に警告を発し、このミスが正される。本発明はさらに、患者がその薬物に対してアレルギーまたは過敏性を示すと決定される場合には、薬物の投与を抑制するためのシステムを提供する。患者が、供給のためにプログラムされた薬物に対し、アレルギー性または過敏性を示す場合には、このシステムは医療関係者に対して警告を発する。
【0031】
図面または具体的には図1のブロック図を参照して、本発明を具現化する、ネットワーク化された薬物供給システム20を概して開示する。このシステム20は注入装置22を含み、この注入装置は、薬物データ、投薬量データおよび患者に対する薬物投与の命令を用いて、ユーザーによりプログラム可能である。このシステム20はさらに、注入装置22にプログラムされたデータの少なくとも一部を表示するための少なくとも1つのモニター24を含む。さらに、投与のためにプログラムされた薬物および投薬量が臨床的に受容可能であるかどうかを決定するための演算装置26(「プロセッサ」とも呼ばれる)を含む。さらには、システム20は、薬物またはその用量が臨床的に受容可能でない場合に、医療関係者に知らせるための警告装置28を有する。このシステム20は、複数の注入装置にプログラムされた用量をチェックするために使用され得るので、典型的には、図1に示されるように、このシステム20は複数の注入装置22を有する。
【0032】
注入装置22および演算装置26は、ネットワーク30を介して相互に連結しており、このネットワーク30は、典型的には図1に示されるように、ローカルエリアネットワーク(LAN)である。例示の目的のために、ネットワークは、ワイヤ接続のネットワークとして示され、このネットワーク内では、薬物供給システムはケーブルで接続されている
。このネットワークはさらに、ワイヤレスネットワークであり得、ここでは薬物供給システムは、ワイヤレスネットワークを介して接続されており、注入装置および演算装置はワイヤレスネットワークを介して統合される。好ましくは、モニター24は、警告装置28とともにネットワーク中に含まれる。一実施形態では、警告装置28は、医療ミスの視覚的な通知を提供するためにモニター24に組み込まれている。さらに、データベース27は薬物供給システム20中に含まれる。データベース27は、注入装置22にプログラムされた用量が治療上の薬物範囲内であるかどうかを決定するための参照として使用される臨床データを有する。データベース27はさらに、特定の薬物に対する患者の過敏性およびアレルギーに関する患者情報を有する。
【0033】
注入装置22は、典型的には、例えば、ぜん動式ポンプのような注入ポンプであり、概して患者のベッドサイドに配置される。注入装置22は概してプログラミング用の適切な手段(例えば、看護師または他の医療関係者によるデータおよびコマンドの手動入力用のキーパッド36)を有する。キーパッド36は典型的には、注入装置22に付属し、さもなくば、薬物および用量データを用いて注入装置22のプログラミングするための注入装置22と通信する。キーパッド36により、ユーザーは、患者および投与薬物を識別し、および記載したように、投与命令を定義するデータを入力することによって、注入装置22をプログラムし得る。注入装置22は、好ましくは、静脈内に薬物を投与し得、供給用にプログラムされた薬物の用量は、典型的には、例えばカテーテル23を通して患者に提供される。薬物投与がさらに硬膜外に、髄膜下に、および皮下になされることも考えられる。
【0034】
モニター24は、例えばナースステーションのような、その施設中の様々な位置に配置され得る。典型的には、モニター24は、注入装置22から離れて配置される。しかしながら、一実施形態では、モニター24は患者のベッドサイドに位置され得る。モニター24は、注入装置22に入力され、表示用モニター24に送信されたある選択データを表示するためのスクリーン38を有する。モニター24は、薬物名、用量、供給速度、全注入容量および供給時間を表示し得る。例えば患者名および患者の病室番号のような、他の関連情報も表示され得る。
【0035】
図2では、モニター24のスクリーン38上に表示され得る情報の形式の一例を示す。具体的には、図2において、スクリーン38は、薬物名(ドブタミン)、供給速度(1時間あたり10ml)、注入量(100ml)を表示する。
【0036】
プロセッサ26は、例えばサーバーコンピューター、パーソナルコンピュータまたはパームユニットであり得る。一実施形態では、プロセッサ26は中央サーバーであり得、このサーバーはデータベース27と関連し、またはデータベース27を有し、またはデータベース27にアクセスし得る。入力データを受信すると、プロセッサ26は、データベース27にアクセスし、注入装置22にプログラムされた投薬量が薬理的に、処方された薬物の受容可能(治療上で)な範囲内にあたるかどうか決定し、患者が処方された薬物に過敏性またはアレルギー性を示すかどうかを決定するために、入力された薬物および用量情報と、データベース27中にある処方された薬物の臨床データとの比較分析を行う。例えば、プロセッサ26は、プログラムされたパラメータ(例えば、注入速度および注入量など)が、薬物に対して定義された治療範囲内の用量を与え得ることを確保するようにチェックをする。このような比較は、単一データベースまたはいくつかの様々なデータベース中に記憶された投薬量関連の情報を使用してなされ得る。
【0037】
一実施形態では、プロセッサは、この薬物データ分析においてさらなる情報を使用し得る。たとえば、プロセッサは、患者の体重、アレルギー、薬物の他の処方箋、病歴、食生活、および必要に応じて他のものも考慮し得る。
【0038】
データベース27中の臨床データは、例えば、薬物のデータ、薬理的に受容可能な投薬量の範囲、規定時間の最大許容投薬量、治療上、薬物が有効でなくなる最低投薬量、供給経路および他の適切なデータを含み得る。データベース27は、プロセッサ26の一部であり得、例えばこれは中央サーバーの一部でもあり得る。代替的には、データベース27は、ネットワーク30と分離した構成要素として組み込まれ得る。例えば、データベース27は、演算装置またはプロセッサ26から離れて配置され得る。例えば、注入装置を収容する病院、保険医療施設の外側であるが、イントラネットまたはインターネットを介してアクセスし易い場所である。
【0039】
図1に示されるように、警告装置28はネットワーク30により、システム20の他の構成要素に接続される。代替的な実施形態では、警告装置28は、医療関係者に医療ミスを通知するためにモニター24に組み込まれ得る。プログラムされたパラメータが、治療範囲外の投薬量および/または患者がアレルギー性または過敏性を示す薬物を与え得ると決定する場合、プロセッサ26は警告装置28を作動する。システム20は範囲外の値であることを検出し、いずれかの薬物が投与を許容される前に、医療関係者にミスを警告するために、警告装置28に少なくとも1つの信号40を生成させる。このように発生する信号40は概して、可聴式の音、視覚的指示、テキストメッセージ、およびページング信号(paging signal)のうち少なくとも1つを構成する。例えば、モニタースクリーン38は、入力値を赤く点滅して表示し得る;または、表示情報のある一部が異なる色またはその他の色が変化して出現し得る。代替的には、信号40は実質的にはテキスト形式であり得る;例えば、「警告:治療範囲外の速度である」または「警告:患者は薬物に過敏性を示す」などの、モニター24に表示されるテキストメッセージである。他の代替的な形式は、主治医に投薬量および/または薬物を正すように警告するために、主治医(例えば、呼出し機(pager)42)またはナースステーションに伝送するためのページング信号41である。
【0040】
他の実施形態では、薬物供給システム20は、医療関係者が問題を警告されることを確保するために、少なくとも2つの種類の信号の組合せを活用する。単一でまたはいずれかの組合せで実施されようと、これらの量それぞれは、注入装置22を誤ってプログラミングした結果として、患者が過敏性を示す薬物または治療的でない用量を投与することを回避するのに有効である。
【0041】
注入装置22にプログラムされた患者識別データは、例えば患者名、年齢、病室番号、主治医名(これらに制限されないが)を含み得る。薬物データは、薬物発注番号および薬物名(これらに制限されないが)を含み得る。注入装置22にプログラムされた供給命令は、薬物名および全投薬量、供給速度、供給容量、希釈剤の型、希釈剤量、投薬時間、供給時間および投与経路のうち少なくとも1つ(これらに制限されないが)を含み得る。好ましくは、供給命令は、全投薬量、供給速度、および供給が開始および終了し得る時間、のうち少なくとも1つを含む。静脈内投与に対して、供給命令はさらに、注入される第1の速度、第1の容量(VTBI)、ピギーバックVTBI、ピギーバック速度または時間、第1の投薬モード、およびポンプチャネル識別を含み得る。
【0042】
他の実施形態では、注入装置22は、適切な情報をプログラミングするための代替手段を組み込む。例えば、薬物調剤指示は、薬物、パッケージ、または薬物を伴う他の材料においてに現れ得る。プログラミング命令は、例えば、線形バーコード、2次元バーコード、技術をエンコードするプリントされたデータ、無線周波数識別技術(radio frequency identification technology)、磁気ストリップ(magnetic strip),磁気テープ、光学式文字認識技術、光学式ホログラム(optical hologram)などの、機械読み取り可能形式であり得る
。これらの代替的な形式のデータは、例えば、ビルトインの(built−in)バーコードスキャナー、装置と通信するタッチスクリーン、無線周波数識別用の読み取り器、ワイヤレス受信器、磁気ストリップ読み取り器、磁気テープ読み取り器、光学式読み取り器、を含む様々な手段により、または外部の無線送受信器により、注入装置にプログラムされ得る。これらの様々なプログラミング手段は注入装置22と通信し得る。
【0043】
特に、薬物供給システム20は、いくつかの様々な薬物を供給するために構成され得る。
【0044】
本発明においては、処方される薬物は典型的には流体であり、これは液体および気体のどちらも含む。好ましい液体処方は、静脈内の非経口処方である。本発明における適切な他の非経口液体処方の例は、髄膜下、硬膜外、動脈内などである。気体状の薬物の例は、例えばセボフルラン、ハロタン、エンフルランのような吸入用の麻酔ガスを含み得る。複数の薬物が、システム20によって同時に供給され得る。
【0045】
複数の薬物が供給され得る場合、薬物は同じ容器、または別々の異なる容器に入れられ得る。静脈内注入においては、通常、付加的な薬物がピギーバックとして供給され得る。図3は、複数容器44aおよび44bに適応するように設定された注入装置22’の一実施形態を示し、それぞれの容器は、注入装置22’において、別々のポンプチャネル32aおよび32bにそれぞれ接続される。それぞれのポンプチャネル32aおよび32bは、キーパッド36’を通して一意にプログラムされ得る。
【0046】
システム20はさらに、患者が過敏性を示す薬物および臨床的に受容不可能な投薬量の供給をも回避し得る。注入装置22にプログラムされた薬物および用量が臨床的に受容可能であるかどうかを決定した後、プロセッサ26は、注入装置22に信号を送信するように構成され、および注入装置22は、その信号を受信しおよびその信号に基づいて作動するように構成される。一実施形態では、注入装置22は、薬物を供給開始する前に、作動信号を受信する。このような実施形態においては、薬物および用量が臨床的に受容可能であることを認識される場合に、プロセッサ26は、薬物の供給を開始するために、注入装置26を作動する信号を注入装置22に送信する。代替的な実施形態では、注入装置は、作動していれば、プログラムされた用量で薬物を供給するように構成される。このような実施形態では、プロセッサ26は、いずれかの薬物が供給されることを回避するために、注入装置26を作動させない信号を注入装置22に送信する。その後、このシステムは、薬物供給工程を再び開始するために、ユーザーの介入(すなわち、ポンプの再プログラミング)を要求し、薬物供給工程は再プログラムデータのチェックを含む。
【0047】
本発明の他の局面では、治療値の範囲外の用量での薬物供給を回避するための方法が提供される。図4は、本発明の方法のフローチャートを示す。この方法において利用され得る装置、ハードウェア、およびデータベースは実質的に上述のとおりである。
【0048】
この方法は、薬物供給システム20の電源をオンにして開始する(参照番号110により示される)。処方される薬物の容器は上述のように、患者に供給するために注入装置22に掛けられる。このユーザーはその後、例えば、患者の名前、病室番号、例としては上述のような投薬量および薬物供給命令のような情報を用いて注入装置22をプログラムする(参照番号112)。プログラミング工程では、例えばキーパッド36、または他の適切な手段(例えば、供給装置と通信するタッチスクリーン)を介した、手動による注入装置22への投薬量データの入力を含む。注入装置22にプログラムされた投薬量データは概して、薬物名、および全投薬量、供給速度、供給容量、希釈剤の型、希釈剤量、投与時間、供給時間、および投与経路のうち少なくとも1つを含む。好ましくは、入力データは、全投薬量、全容量、供給速度および供給開始時間のうち少なくとも1つを含む。複数の
薬物がピギーバック形式で供給され得る場合には、ユーザーは、これらの薬物に対しても、注入装置22に投薬量および供給命令を入力する。
【0049】
注入装置22にプログラムされ得る処方薬物に関する情報は概して、薬物容器にまたは他の適切な手段に提供される。好ましくは、薬物供給指示は薬剤師によって作成され、薬剤師は、薬物を準備し、投与指示のある薬物の容器にラベルを添付する。代替的には、供給指示は、製薬業者によって作成され得、薬物容器に添付される。別の実施形態では、薬物情報は、患者のカルテまたは患者の治療管理システムを含む従来手段を介してアクセスされ得る。
【0050】
ユーザーは、典型的にはシステムを介して薬物注入システム20を作動する;例えば「スタート」ボタンを押すことによって作動する(参照番号114)。
【0051】
参照番号116によって示されるように、必要であれば、システム20は、施設の様々な位置に配置される少なくとも1つのモニター24に入力されるデータを送信する。配置場所は例えば、ナースステーション、患者のベッドサイド、および/または病室の外である。参照番号117によって示されるように、モニター24は、薬物供給工程に関する注入装置22への入力データ(例えば、薬物名、用量、供給速度、注入される全容量、および供給時間)のうち少なくとも一部を、他の関連情報(例えば、患者名および病室番号)とともに表示する。好ましくは、表示データは、注入される薬物名、供給速度、および全容量のうち少なくとも1つを含む。
【0052】
モニター24にデータを送信する前または同時のどちらかの時に、システム20はさらに、注入装置22から供給される薬物の性質および用量についてのデータをマイクロプロセッサ26に送信する(参照番号118)。この方法は、注入装置22への入力データの種類に基づいた(ここでは例えば、入力データが供給速度および供給時間を含み得る)、患者に投与される薬物の全用量の計算を含み得る(参照番号120)。プロセッサ26は、臨床データのデータベース27にアクセスし、この臨床データは、ネットワークを介してアクセス可能な施設内かまたは施設外のどちらか一方に配置される(参照番号122により示される)。プロセッサ26は、この薬物と、データベース中にある過敏性のある薬物データとを比較し、注入装置22にプログラムされた用量に対して、処方薬物の臨床範囲の比較解析を行い(参照番号124)、注入装置22にプログラムされた用量が臨床的に受容可能であるかどうかを決定する(参照番号126)。薬物およびプログラムされた投薬量が、前述のデータベース中に定義される臨床的に受容可能な範囲内である場合、プロセッサ26は注入装置22を作動するために信号を送信するように構成され得、患者に対し薬物の投与を開始する(参照番号128により示される)。
【0053】
プログラムされた供給命令が臨床的に受容不可能な投薬量となっている場合、プロセッサ26は、警告装置28が少なくとも1つの信号40を生成するよう決定および作動する。臨床的に受容不可能な用量を示すと、信号40は医療関係者に医療ミスを通知する。このことが図4中の参照番号130に示されている。この信号40は様々な形式をとり得、可聴音(参照番号132により示される)および視覚的指示(例えば、点滅光、または様々に色変化する光など(例えば、問題を示すためにモニタースクリーン38上で赤く光る)を使用)(参照番号134により示される)含む。信号40はさらに、スクリーン38上に、または他の適切なディスプレイ上に表示されるテキストメッセージ(136)含み得る。さらに、呼出し機42を介して医療関係者またはナースステーションに伝送するためのページング信号(138)を含み得る。この視覚的な通知および/またはテキストメッセージがモニタースクリーン38上で表示され得る(参照番号117)。
【0054】
ほぼ同時に、一実施形態では、プロセッサは、注入装置22を非働化するための信号を
生成し、プログラムされた薬物供給命令にしたがって薬物投与をやめる(参照番号140により示される)。このシステムはその後、ユーザーの介入を要求し(すなわち、ポンプの再プログラム)、再プログラムデータのチェックを含む薬物供給工程を再スタートする。
【0055】
好ましい実施形態では、プロセッサ26が、患者の薬物の過敏性のあるデータおよび臨床値に関する薬物の種類および入力用量データを分析した後に、投薬される用量は臨床的に受容可能である場合には、プロセッサ26は信号を注入装置22に伝送し、薬物の投与を開始するように作動する。このステップは図4において参照番号128により示される。別の実施形態では、このシステムは、この注入装置22が、注入装置22にプログラムされた速度および投薬量により、薬物を供給開始するように構成され得、プロセッサ26からの信号40の受信により供給を停止する。別の実施形態では、システム20は、プロセッサ26がプログラムされた用量が臨床的に受容可能であることを確認するよう規定時間遅延の後、注入装置22が患者に薬物投与を開始するように構成され得る。
【0056】
特定の実施形態が例示または記載されるが、本発明の精神から逸脱することなく、様々な修正例が可能であり、保護範囲は添付する特許請求の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明により、医療ミスを回避するための、ネットワーク化された注入システムの構成要素を示すブロック図である。
【図2】本発明により、図1のモニターのスクリーン上に表示された投薬量供給データ形式の一例を示す。
【図3】調剤された薬物の1以上の容器を適応するよう設定された、図1のネットワーク化された注入システムのポンプの模式図である。
【図4】図1に示されるネットワーク化された注入システムにより使用される全操作フローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対して薬物の治療的でない用量の供給を回避するための薬物供給システムであって、該システムが、
患者に薬物を投与するために、投薬量データを使用してユーザーによってプログラム可能な供給装置と、
該供給装置にプログラムされた該投薬量データが臨床的に受容可能な用量を与えるかどうかを決定するための、該供給装置と通信する演算装置と
を備える、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−185523(P2007−185523A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62671(P2007−62671)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【分割の表示】特願2006−509373(P2006−509373)の分割
【原出願日】平成16年3月24日(2004.3.24)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【Fターム(参考)】