説明

ネットワーク帯域制御システムおよびネットワーク帯域制御方法

【課題】仮想パス計算の計算負荷を均等化し、ネットワーク品質を向上させて帯域制御することができる、ネットワーク帯域制御システムおよびネットワーク帯域制御方法を提供する。
【解決手段】ネットワーク帯域制御システム1の信号振分装置10は、端末装置2から接続要求信号を受信し、計算能力管理装置40から取得した余剰仮想パス計算能力情報に基づき、接続要求信号を各信号処理装置20に振り分けて送信する。信号処理装置20は、仮想パス情報記憶装置30から取得したネットワークの使用済み帯域の情報を用いて、その接続要求信号に示されるセッションの帯域が確保できるか否かを判定し、帯域確保応答情報を端末装置2に送信する。計算能力管理装置40は、信号処理装置20から計算能力情報および未処理信号情報を取得して、余剰仮想パス計算能力情報を生成し、信号振分装置10に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次世代ネットワーク(NGN:Next Generation Network)におけるネットワーク帯域制御システムおよびネットワーク帯域制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインターネットに代表されるIP(Internet Protocol)ネットワークは、通信品質においては、ベストエフォート型と呼ばれ、ネットワークが非常に込み合った状態である輻輳状態では、遅延が発生したりデータパケットが廃棄されることで、通信品質が悪化した状態になる。一方、次世代ネットワーク(NGN)では、地デジ再放送、電話、VOD(Video On Demand)等の様々なサービスを統合するとともに、常に安定した通信品質を保つことが要求されている。
【0003】
ネットワーク上での通信品質を保証するために、次世代ネットワーク(NGN)では、例えば、SIP(Session Initiation Protocol)セッション制御により帯域の制御を行う。具体的には、加入者セッション制御サーバ(SSC:Subscriber Session Control server)内に設けられたネットワーク帯域制御機能(RACS:Resource and Admission Control Subsystem)が、転送ネットワークの帯域をセッションごとに制御することで、ルータでの輻輳を抑止し、ネットワークの品質を向上させる(非特許文献1参照)。
【0004】
このネットワーク帯域制御機能(RACS)は、帯域制御を行うために、例えばSIP信号のSDP(Session Description Protocol)に記述されているメディアタイプ等から、そのSIPセッションが必要とする帯域を計算する。そして、帯域あふれ(転送ネットワークにおいて帯域が確保できないこと)が発生しない場合には、セッション接続を許可し、帯域あふれが発生する場合は、セッション接続を拒否する。なお、このネットワーク帯域制御機能(RACS)が行うSIPセッションが必要とする帯域の計算は、ネットワーク帯域制御機能(RACS)が物理的な転送ネットワークの構成を仮想パスとして抽象化し記憶していることから「仮想パス計算」と呼ばれる。
【0005】
この加入者セッション制御サーバ(SSC)内のネットワーク帯域制御機能(RACS)において行われるこの仮想パス計算は、次世代ネットワーク(NGN)が様々なサービスを統合して実現されるものであるため、そのサービスのセッションごとに実行される仮想パス計算の計算量が膨大となる。このため、加入者セッション制御サーバ(SSC)全体における仮想パス計算の計算負荷の増大が問題となる。
【0006】
この問題を解決する方法として、計算量の多い仮想パス計算を、ロードバランサ(負荷分散装置)が複数のサーバに分散させて実行し、性能向上を図る技術が開示されている(非特許文献2参照)。この非特許文献2には、利用可能なサーバ群の中から最適なサーバを選択する負荷分散アルゴリズムとして、(1)ラウンドロビン方式、(2)コネクション数方式、(3)応答時間方式が記載されている。(1)ラウンドロビン方式は順番にサーバが選択される方式である。(2)コネクション数方式は、処理しているコネクション数(ここではセッション数)が最小のサーバを選択する方式である。(3)応答時間方式は、一番速く応答しているサーバを選択する方式である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】宮坂昌宏他、「NGNにおける帯域管理制御技術」、NTTジャーナル、2008.10、[online]、[平成22年8月23日検索]、インターネット<http://www.ntt.co.jp/journal/0810/files/jn200810022.pdf>
【非特許文献2】上谷一他、「パケットフローから負荷分散の基本を理解する」、[online]、アットマーク・アイティ、[平成22年8月23日検索]、インターネット<http://www.atmarkit.co.jp/fnetwork/rensai/lb01/lb01.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献2に記載されたロードバランサによる(1)〜(3)の方式は、ジョブの内容、例えば計算量等を考慮したものではない。例えば、計算量が「10」のジョブAと計算量「1」のジョブBが存在したとする。この場合、前記した(1)〜(3)の方式では、複数のサーバの負荷が均等となるようにジョブを振り分けることはできない。
ネットワーク帯域制御機能(RACS)における仮想パス計算も同様の課題が存在する。つまり、仮想パス計算は、計算量の大きいものもあれば、計算量の小さいものも存在するため、複数のサーバ(信号処理装置)を設けても、計算量が考慮されておらず、負荷を均等にすることはできない。
【0009】
このような背景に鑑みて、本発明がなされたのであり、本発明は、仮想パス計算を、その計算量に応じて複数の信号処理装置に振り分けて実行し、帯域制御することができる、ネットワーク帯域制御システムおよびネットワーク帯域制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、(1)端末装置から送信された接続要求信号を受信し、前記受信した接続要求信号を複数の信号処理装置に振り分ける信号振分装置と、(2)前記振り分けられた接続要求信号を取得し、前記接続要求信号に示されるセッションが必要とする帯域を計算し、転送ネットワークにおける前記帯域が確保できるか否かを判定する前記信号処理装置と、(3)前記転送ネットワークにおける使用済み帯域の情報が記憶される仮想パス情報記憶装置と、(4)前記信号振分装置が前記接続要求信号を振り分けるために参照する、前記信号処理装置ごとの帯域計算の余剰計算回数を示す余剰仮想パス計算能力を計算する計算能力管理装置と、を備えるネットワーク帯域制御システムであって、前記信号振分装置が、前記信号処理装置ごとの前記余剰仮想パス計算能力を示す余剰仮想パス計算能力情報が記憶される記憶部と、前記端末装置から受信した接続要求信号に付されたメディア数を抽出し、前記抽出したメディア数を仮想パス計算回数として当該接続要求信号に追記するメディア数抽出部と、各信号処理装置の前記余剰仮想パス計算能力の総和に対する、前記余剰仮想パス計算能力の割合が高い前記信号処理装置ほど高い確率で、前記仮想パス計算回数が追記された接続要求信号を振り分け、前記振り分けた信号処理装置に当該接続要求信号を送信する信号振分部と、前記信号処理装置から、前記セッションの帯域が確保できるか否かを示す帯域確保応答情報を受信し、前記端末装置に送信する帯域確保情報通知部と、を備え、前記信号処理装置が、前記信号振分装置から受信した前記接続要求信号に付されたメディアの種類ごとに必要な帯域と、前記仮想パス計算回数を乗算することにより、前記セッションに必要な帯域を算出し、前記仮想パス情報記憶装置から、前記転送ネットワークにおける前記使用済み帯域の情報を取得して、転送に利用可能な帯域を算出し、前記セッションに必要な帯域が、前記転送に利用可能な帯域以下である場合に、前記帯域の確保ができると判定し、前記セッションに必要な帯域が、前記転送に利用可能な帯域を超える場合に、前記帯域の確保ができないと判定し、前記判定の結果を前記帯域確保応答情報として前記信号振分装置に送信する仮想パス計算部と、前記仮想パス計算部が前記セッションに必要な帯域を算出する仮想パス計算を、単位時間あたりに何回行ったかを示す計算能力情報を生成するとともに、前記受信した仮想パス計算回数が追記された接続要求信号のうち、前記仮想パス計算を行っていない各接続要求信号に追記された仮想パス計算回数の総数を計算し、その計算結果を未処理信号情報として生成し、前記生成した計算能力情報および前記未処理信号情報を前記計算能力管理装置に送信する処理状況通知部と、を備え、前記計算能力管理装置が、前記信号処理装置から、前記計算能力情報および前記未処理信号情報を受信する信号送受信部と、前記信号処理装置ごとに、前記計算能力情報に示される単位時間あたりの仮想パス計算の回数から、前記未処理信号情報に示される前記仮想パス計算回数の総数を引いた回数を、前記余剰仮想パス計算能力として算出する余剰計算能力算出部と、前記余剰計算能力算出部が算出した前記信号処理装置ごとの前記余剰仮想パス計算能力を示す前記余剰仮想パス計算能力情報を、前記信号振分装置に送信する仮想パス計算能力情報通知部と、を備えることを特徴とするネットワーク帯域制御システムとした。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、(1)端末装置から送信された接続要求信号を受信し、前記受信した接続要求信号を複数の信号処理装置に振り分ける信号振分装置と、(2)前記振り分けられた接続要求信号を取得し、前記接続要求信号に示されるセッションが必要とする帯域を計算し、転送ネットワークにおける前記帯域が確保できるか否かを判定する前記信号処理装置と、(3)前記転送ネットワークにおける使用済み帯域の情報が記憶される仮想パス情報記憶装置と、(4)前記信号振分装置が前記接続要求信号を振り分けるために参照する、前記信号処理装置ごとの帯域計算の余剰計算回数を示す余剰仮想パス計算能力を計算する計算能力管理装置と、を備えるネットワーク帯域制御システムに用いられるネットワーク帯域制御方法であって、前記信号振分装置が、前記信号処理装置ごとの前記余剰仮想パス計算能力を示す余剰仮想パス計算能力情報が記憶される記憶部を備えており、前記端末装置から受信した接続要求信号に付されたメディア数を抽出し、前記抽出したメディア数を仮想パス計算回数として当該接続要求信号に追記するステップと、各信号処理装置の前記余剰仮想パス計算能力の総和に対する、前記余剰仮想パス計算能力の割合が高い前記信号処理装置ほど高い確率で、前記仮想パス計算回数が追記された接続要求信号を振り分け、前記振り分けた信号処理装置に当該接続要求信号を送信するステップと、を実行し、前記信号処理装置が、前記信号振分装置から受信した前記接続要求信号に付されたメディアの種類ごとに必要な帯域と、前記仮想パス計算回数を乗算することにより、前記セッションに必要な帯域を算出し、前記仮想パス情報記憶装置から、前記転送ネットワークにおける前記使用済み帯域の情報を取得して、転送に利用可能な帯域を算出するステップと、前記セッションに必要な帯域が、前記転送に利用可能な帯域以下である場合に、前記帯域の確保ができると判定し、前記セッションに必要な帯域が、前記転送に利用可能な帯域を超える場合に、前記帯域の確保ができないと判定し、前記判定の結果を前記帯域確保応答情報として前記信号振分装置に送信するステップと、前記仮想パス計算部が前記セッションに必要な帯域を算出する仮想パス計算を、単位時間あたりに何回行ったかを示す計算能力情報を生成するとともに、前記受信した仮想パス計算回数が追記された接続要求信号のうち、前記仮想パス計算を行っていない各接続要求信号に追記された仮想パス計算回数の総数を計算し、その計算結果を未処理信号情報として生成し、前記生成した計算能力情報および前記未処理信号情報を前記計算能力管理装置に送信するステップと、を実行し、前記信号振分装置が、前記信号処理装置から、前記セッションの帯域が確保できるか否かを示す前記帯域確保応答情報を受信し、前記端末装置に送信するステップを実行し、前記計算能力管理装置が、前記信号処理装置から、前記計算能力情報および前記未処理信号情報を受信するステップと、前記信号処理装置ごとに、前記計算能力情報に示される単位時間あたりの仮想パス計算の回数から、前記未処理信号情報に示される前記仮想パス計算回数の総数を引いた回数を、前記余剰仮想パス計算能力として算出するステップと、前記余剰計算能力算出部が算出した前記信号処理装置ごとの前記余剰仮想パス計算能力を示す前記余剰仮想パス計算能力情報を、前記信号振分装置に送信するステップと、を実行することを特徴とするネットワーク帯域制御方法とした。
【0012】
このようにすることで、信号振分装置は、計算能力管理装置が各信号処理装置の計算能力情報と未処理信号情報とを用いて算出した余剰仮想パス計算能力情報に基づいて、接続要求信号を各信号処理装置に振り分けることができる。この余剰仮想パス計算能力情報に示される余剰仮想パス計算能力は、各信号処理装置が、単位時間あたりに仮想パス計算を行える余剰能力を回数で示したものである。そのため、余剰仮想パス計算能力の割合が高い信号処理装置ほど高い確率で、その信号処理装置に接続要求信号を振り分けることにより、仮想パス計算の計算量の負荷を均等化し、遅延の発生を減らし、ネットワーク品質を向上させた帯域制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、仮想パス計算の計算負荷を均等化し、ネットワーク品質を向上させて帯域制御を行う、ネットワーク帯域制御システムおよびネットワーク帯域制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る次世代ネットワーク(NGN)の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態に係るネットワーク帯域制御システムの構成例を示す図である。
【図3】本実施形態に係るネットワーク帯域制御システム全体の処理概要を説明するためのシーケンス図である。
【図4】本実施形態に係る信号振分装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図5】本実施形態に係る余剰仮想パス計算能力情報のデータ構成の一例を示す図である。
【図6】本実施形態に係る信号振分装置の処理の流れを示すシーケンス図である。
【図7】本実施形態に係る信号処理装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図8】本実施形態に係る仮想パス情報のデータ構成の一例を示す図である。
【図9】本実施形態に係る信号処理装置の処理の流れを示すシーケンス図である。
【図10】本実施形態に係る計算能力管理装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図11】本実施形態に係る計算能力管理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
まず、本実施形態に係るネットワーク帯域制御システム1を含む次世代ネットワーク(NGN)の構成例を説明する。図1は、本実施形態に係る次世代ネットワーク(NGN)の構成例を示す図である。
【0017】
図1に示すように次世代ネットワーク(NGN)は、ユーザネットワークと接続され、そのユーザネットワークを介して端末装置2と接続されている。この端末装置2は、例えば、SIP信号の送受信が可能なNGN対応の電話端末である。
【0018】
次世代ネットワーク(NGN)は、例えば光ファイバ等を用いてユーザネットワークに情報を通信する伝送装置から構成されるNGNアクセスネットワークと、大容量のルータ等から構成されるNGNコアネットワークとを備える。そして、このNGNコアネットワークは、SSE(Subscriber Service Edge:加入者サービスエッジ)3とIBE(Intermediate Border gateway Equipment:中継ボーダゲートウェイ装置)6とから構成されるエッジルータを介して接続されパケットの送受信を行う。また、加入者を収容するSSC(Subscriber Session Control server:加入者セッション制御サーバ)4と、中継処理を行うISC(Intermediate Session Control server:中継セッション制御サーバ)5とが、セッション制御サーバとしてサービス全体を制御する。
【0019】
そして、本実施形態における次世代ネットワーク(NGN)では、従来加入者セッション制御サーバ(SSC)内に設けられていたネットワーク帯域制御機能(RACS)7を取り出し、独立した1つのシステムであるネットワーク帯域制御システム1とした。このネットワーク帯域制御システム1をSSE3とSSC4との間に備え、NGNコアネットワークにおける帯域制御を行うものである。
【0020】
(ネットワーク帯域制御システムの構成と処理概要)
図2は、本実施形態に係るネットワーク帯域制御システム1の構成例を示す図である。また、図3は、本実施形態に係るネットワーク帯域制御システム1全体の処理概要を説明するためのシーケンス図である。
本実施形態に係るネットワーク帯域制御システム1は、図1に示したように、処理負荷の大きい仮想パス計算を、従来の加入者セッション制御サーバ(SSC)内のネットワーク帯域制御機能(RACS)7において実行させるのではなく、加入者セッション制御サーバ(SSC)から独立させた上で、仮想パス計算を複数の信号処理装置20に負荷分散させて行う。そして、複数の信号処理装置20への振り分けを、各信号処理装置20が単位時間に処理可能な仮想パス計算回数に基づいて行うことを特徴とする。このようにすることで、単位時間に仮想パス計算を多く処理可能な信号処理装置20により多くの仮想パス計算を割り当てることができ、各信号処理装置20の計算負荷を均等にし、遅延の発生を減らし、ネットワークの品質を向上させるものである。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に係るネットワーク帯域制御システム1は、信号振分装置10と、複数の信号処理装置20(20A,20B,20C,…)と、仮想パス情報記憶装置30と、計算能力管理装置40とを含んで構成される。
【0022】
信号振分装置10は、端末装置2から、不図示のユーザネットワーク、NGNアクセスネットワーク、SSE3(図1参照)を介して、SIP信号(接続要求信号)を受信する。そして、信号振分装置10は、計算能力管理装置40から取得した余剰仮想パス計算能力情報100(後記する図5参照)に基づき、SIP信号を各信号処理装置20(20A,20B,20C,…)に振り分ける。
【0023】
信号処理装置20は、信号振分装置10が振り分けたSIP信号を用いて、仮想パス計算を行い、帯域が確保できるか否かを判定する。
【0024】
仮想パス情報記憶装置30は、NGNコアネットワークのエッジルータであるSSE3(図1参照)ごとの使用済み帯域を示す仮想パス情報200(後記する図8参照)を記憶する。
【0025】
計算能力管理装置40は、各信号処理装置20(20A,20B,20C,…)から、単位時間あたりの仮想パス計算の回数を示す計算能力情報300(詳細は後記)と、仮想パス計算を行っていない未処理のSIP信号に追記された仮想パス計算回数の総数を示す情報である未処理信号情報400(詳細は後記)とを用いて、余剰仮想パス計算能力情報100(図5参照)を生成し、信号振分装置10に送信する。
【0026】
次に図3を用いて、本実施形態に係るネットワーク帯域制御システム1全体の処理概要を説明する。
【0027】
まず、端末装置2は、SIP信号(例えば、INVITE信号)を送信し(ステップS101)、信号振分装置10が、不図示のユーザネットワーク、NGNアクセスネットワーク、およびSSE3(図1参照)を介して、そのSIP信号を受信する。
【0028】
次に、信号振分装置10は、計算能力管理装置40から受信した余剰仮想パス計算能力情報100(図5参照)に基づき、各信号処理装置20(20A,20B,20C,…)に、受信したSIP信号を振り分ける(ステップS102)。そして、信号振分装置10は、SIP信号をその振り分けた信号処理装置20に送信する(ステップS103)。
【0029】
信号処理装置20は、仮想パス情報記憶装置30から仮想パス情報200(図8参照)を取得する(ステップS104)。そして、信号処理装置20は、受信した各SIP信号のメディア数を抽出し、その抽出したメディア数に基づき仮想パス計算を行う(ステップS105)。次に信号処理装置20は、仮想パス情報200を用いて、帯域を確保できるか否かを判定し、帯域を確保できるか否かを示す帯域確保応答情報を、信号振分装置10を介して、端末装置2へ送信する(ステップS106)。
【0030】
また、信号処理装置20は、仮想パス計算を1回実行するごとに、計算が完了したことを示す情報を記憶しておき、単位時間に仮想パス計算を何回実行できたか示す計算能力情報300を生成し(ステップS107)、その生成した計算能力情報300を、計算能力管理装置40に送信する(ステップS108)。
【0031】
さらに、信号処理装置20は、信号振分装置10から受信したSIP信号について、単位時間ごとに、仮想パス計算を行っていない未処理のSIP信号がいくつ保存されているかを示す未処理信号情報400を生成し(ステップS109)、計算能力管理装置40に送信する(ステップS110)。
【0032】
続いて、計算能力管理装置40は、各信号処理装置20から受信した、計算能力情報300と未処理信号情報400とに基づき、各信号処理装置20の余剰計算能力を示す余剰仮想パス計算能力情報100(図5参照)を生成する(ステップS111)。そして、その生成した余剰仮想パス計算能力情報100を、信号振分装置10に送信する(ステップS112)。信号振分装置10は、余剰仮想パス計算能力情報100を受信し記憶部に記憶する。
【0033】
なお、本実施形態に係る信号処理装置20が行う仮想パス計算の計算量は、例えば、SIP信号のSDP(Session Description Protocol)に記載されているメディアタイプにより推定する。このメディアタイプには、音声メディア、映像メディア等があり、例えば、電話サービスであれば、音声メディアを1つを利用するため、1メディア=1セッション必要であり、仮想パス計算は1回必要となる。また、テレビ電話サービスであれば、音声メディアと映像メディアとを利用するため、2メディア必要であり、仮想パス計算は2回必要となる。このように、SDPのメディアタイプを参照することで、そのSIP信号に示されるセッションが必要とする仮想パス計算の回数を確認することができる。よって、信号処理装置20に与える負荷量(計算量)を推定することが可能となる。
【0034】
次に、本実施形態に係るネットワーク帯域制御システム1を構成する各装置について具体的に説明する。
【0035】
<信号振分装置>
図4は、本実施形態に係る信号振分装置10の構成例を示す機能ブロック図である。
信号振分装置10は、ユーザネットワーク、NGNアクセスネットワークおよびSSE3を介して端末装置2に接続され(図1参照)、さらに、加入者セッション制御サーバ(SSC)4に接続される。また、ネットワーク帯域制御システム1内においては、信号処理装置20(20A,20B,20C,…)および計算能力管理装置40と接続されている。
【0036】
図4に示すように、信号振分装置10は、入出力部11と、制御部12と、記憶部13とを備える。
【0037】
入出力部11は、他の装置との間の情報の入出力を行う。例えば、入出力部11は、端末装置2から送信されたSIP信号(接続要求信号)を受信したり、計算能力管理装置40が送信した余剰仮想パス計算能力情報100を受信したり、信号処理装置20が生成した帯域確保応答情報を端末装置2等に送信したりする。この入出力部11は、不図示のキーボード等の入力装置やモニタ等の表示装置等との間で入出力を行う入出力インタフェースと、ネットワークを介して情報の送受信を行うネットワークインタフェースとから構成される。
【0038】
制御部12は、信号振分装置10全体の制御を司り、信号送受信部121と、信号キュー保存部122と、メディア数抽出部123と、信号振分部124と、帯域確保情報通知部125と含んで構成される。なお、この制御部12は、CPU(Central Processing Unit)とRAM(Random Access Memory)等のメインメモリとから構成される。また、制御部12がプログラム処理により実現される場合には、例えば、信号振分装置10の記憶部13に記憶されたプログラムを、CPUがRAMに展開し実行することで制御部12の処理が実現される。
【0039】
信号送受信部121は、ユーザネットワーク、NGNアクセスネットワークおよびSSE3を介して、端末装置2からSIP信号を受信する。また、信号振分部124が振り分けた信号処理装置20(20A,20B,20C,…)に向けて、SIP信号を送信する。また、信号送受信部121は、計算能力管理装置40から余剰仮想パス計算能力情報100(図5参照)を受信し、記憶部13に保存する。さらに、信号送受信部121は、帯域確保情報通知部125の制御により、信号処理装置20(20A,20B,20C,…)から受信した帯域確保応答情報(詳細は後記)を端末装置2や加入者セッション制御サーバ(SSC)4に送信する。
【0040】
信号キュー保存部122は、信号送受信部121が受信したSIP信号をキューとしてメインメモリに保存する。
【0041】
メディア数抽出部123は、信号キュー保存部122に保存されたSIP信号のうち、SIP信号に示されるメディア数を抽出していないSIP信号を取得する。そして、メディア数抽出部123は、取得したSIP信号のSDPの記載からメディア数を抽出し、そのメディア数に基づき、仮想パス計算回数を決定する。例えば、電話サービスでは、音声メディアを利用するため1メディア必要であり、仮想パス計算回数は「1」である。また、テレビ電話サービスであれば、音声メディアと映像メディアの2つのメディアを利用するため、仮想パス計算回数は「2」となる。このようにして、メディア数抽出部123は、抽出したメディア数から仮想パス計算回数を決定する。そして、メディア数抽出部123は、決定した仮想パス計算回数を、そのSIP信号に追記する。
【0042】
信号振分部124は、信号キュー保存部122から、メディア数抽出部123が仮想パス計算回数を追記したSIP信号を取得する。そして、信号振分部124は、記憶部13に記憶された余剰仮想パス計算能力情報100に基づき、SIP信号の各信号処理装置20への振り分けを決定し、振り分けたSIP信号を、信号送受信部121を介して、振り分け先の信号処理装置20(20A,20B,20C,…)に送信する。
【0043】
図5は、本実施形態に係る余剰仮想パス計算能力情報100のデータ構成の一例を示す図である。図5に示すように、余剰仮想パス計算能力情報100には、信号処理装置20(符号101)ごとの余剰仮想パス計算能力(符号102)が示される。信号振分部124は、この余剰仮想パス計算能力情報100を参照し、各信号処理装置20(符号101)の余剰仮想パス計算能力(符号102)の総和に対する、余剰仮想パス計算能力(符号102)の割合が高い信号処理装置20(符号101)ほど高い確率で、SIP信号を振り分ける。例えば、IDが「#1」の信号処理装置20(符号101)の余剰仮想パス計算能力(符号102)が「1000」であり、IDが「#2」の信号処理装置20(符号101)の余剰仮想パス計算能力(符号102)が「500」である場合に、1000対500の割合で、SIP信号の振り分けを行う負荷分散を実行する。なお、この余剰仮想パス計算能力(符号102)の算出方法は、後記する計算能力管理装置40(図10および図11参照)の処理において詳細に説明する。
【0044】
図4に戻り、帯域確保情報通知部125は、信号処理装置20の処理結果である帯域確保応答情報(詳細は後記)を、信号送受信部121を介して受信する。そして、帯域確保情報通知部125は、帯域が確保できる帯域確保OKの帯域確保応答情報については、実際に帯域を確保する制御を実行させるために、端末装置2、加入者セッション制御サーバ(SSC)4の両方に送信する。一方、帯域確保情報通知部125は、帯域が確保できないと判定した帯域確保NGの帯域確保応答情報については、端末装置2に送信する。
【0045】
また、記憶部13は、ハードディスクやフラッシュメモリ等の記憶手段からなり、余剰仮想パス計算能力情報100が記憶される。
【0046】
次に、図6を用いて、信号振分装置10の処理の流れを説明する。図6は、本実施形態に係る信号振分装置10の処理の流れを示すシーケンス図である。
【0047】
まず、信号振分装置10の信号送受信部121は、計算能力管理装置40から余剰仮想パス計算能力情報100(図5参照)を受信し(ステップS201)、記憶部13に記憶する。
【0048】
次に、信号送受信部121は、端末装置2からSIP信号を受信する(ステップS202)。そして、信号送受信部121は、受信したSIP信号を信号キュー保存部122に出力し、信号キュー保存部122が、受信したSIP信号を保存する(ステップS203)。
【0049】
続いて、メディア数抽出部123は、信号キュー保存部122に保存したSIP信号のうち、そのSIP信号に示されるメディア数を抽出していないSIP信号を取得する(ステップS204)。そして、メディア数抽出部123は、取得したSIP信号のメディア数を抽出し、そのメディア数から仮想パス計算回数を決定し、決定した仮想パス計算回数を、SIP信号に追記する(ステップS205)。メディア数抽出部123は、仮想パス計算回数を追記したSIP信号を、信号キュー保存部122に送信する(ステップS206)。そして、信号キュー保存部122は、受信した仮想パス計算回数を追記したSIP信号を保存する。
【0050】
次に、信号振分部124は、信号キュー保存部122から仮想パス計算回数を追記したSIP信号を取得する(ステップS207)。そして、信号振分部124は、記憶部13内の余剰仮想パス計算能力情報100に基づき、SIP信号の各信号処理装置20への振り分けを決定する(ステップS208)。そして、振り分けたSIP信号を、信号送受信部121を介して、振り分け先の信号処理装置20(20A,20B,20C,…)へ送信する(ステップS209)。
【0051】
また、帯域確保情報通知部125は、信号処理装置20(20A,20B,20C,…)の処理結果である帯域確保応答情報を、信号送受信部121を介して取得する(ステップS210)。そして、帯域確保情報通知部125は、取得した帯域確保応答情報を、信号送受信部121を介して、端末装置2等に送信する(ステップS211)。
【0052】
このようにすることで、本実施形態に係る信号振分装置10は、端末装置2から受信したSIP信号を、計算能力管理装置40から取得した余剰仮想パス計算能力情報100(図5参照)に基づき、各信号処理装置20(20A,20B,20C,…)に振り分けることができる。この余剰仮想パス計算能力情報100に示される余剰仮想パス計算能力(符号102)は、各信号処理装置20の余剰能力を仮想パス計算回数で示したものである。よって、各信号処理装置20の余剰仮想パス計算能力に応じて、SIP信号を振り分けることにより、各信号処理装置20の負荷量(計算量)を均等化し、遅延の発生を低減することができる。
【0053】
<信号処理装置>
図7は、本実施形態に係る信号処理装置20の構成例を示す機能ブロック図である。
信号処理装置20は、信号振分装置10、仮想パス情報記憶装置30および計算能力管理装置40に接続される。本実施形態に係るネットワーク帯域制御システム1においては、仮想パス計算を分散して処理するため、複数の信号処理装置20(20A,20B,20C,…)が設置される。また、信号処理装置20は、入出力部21と、制御部22と、記憶部23とを備える。
【0054】
入出力部21は、他の装置との間の情報の入出力を行い、入出力インタフェースおよびネットワークインタフェースから構成される。
【0055】
制御部22は、信号処理装置20全体の制御を司り、信号送受信部221と、処理信号キュー保存部222と、仮想パス計算部223と、処理状況通知部224とを含んで構成される。なお、この制御部22は、CPUとRAM等のメインメモリとから構成される。また、制御部22がプログラム処理により実現される場合には、例えば、信号処理装置20の記憶部23に記憶されたプログラムを、CPUがRAMに展開し実行することで制御部22の処理が実現される。
【0056】
信号送受信部221は、信号振分装置10が振り分けたSIP信号を受信する。なお、このSIP信号は、信号振分装置10において仮想パス計算回数が追記されたSIP信号である。そして、信号送受信部221は、受信したSIP信号を処理信号キュー保存部222に出力する。
【0057】
処理信号キュー保存部222は、信号送受信部221が受信した仮想パス計算回数が追記されたSIP信号をキューとしてメインメモリに保存する。
【0058】
仮想パス計算部223は、処理信号キュー保存部222に保存されたSIP信号を用いて、仮想パス計算を行い、帯域確保が可能か否かの判定を行う。
具体的には、仮想パス計算部223は、処理信号キュー保存部222に保存されたSIP信号を取得する。そして、取得した各SIP信号に付された仮想パス計算回数に基づき、SIPセッションの設定に必要な帯域を算出する。具体的には、例えば、音声メディアの仮想パス計算回数は1回につき、64kbpsの帯域が必要として計算する。また、映像メディアの仮想パス計算回数は1回につき、1Mbpsの帯域が必要として計算する。このメディアごとの1回の仮想パス計算回数に必要な帯域は、予めネットワーク管理者により設定されるものである。
【0059】
そして、仮想パス計算部223は、仮想パス情報記憶装置30から仮想パス情報200を取得し、取得した仮想パス情報200から、転送に利用可能な帯域を算出する。
【0060】
図8は、本実施形態に係る仮想パス情報200のデータ構成の一例を示す図である。図8に示すように、仮想パス情報200は、各SSE(加入者サービスエッジ)3(符号201)ごとに、その総帯域(符号202)と使用済み帯域(符号203)とが記憶される。総帯域(符号202)から使用済み帯域(符号203)を引くことで、そのSSE3が転送に利用可能な帯域が算出できる。
【0061】
また、仮想パス計算部223は、計算により求めたSIPセッションの設定に必要な帯域と、転送に利用可能な帯域とを比較し、設定に必要な帯域が利用可能な帯域以下であれば、帯域を確保できると判定し、帯域確保OKの帯域確保応答情報を生成する。一方、仮想パス計算部223は、設定に必要な帯域が利用可能な帯域を超えていれば、帯域の確保ができないと判定し、帯域確保NGの帯域確保応答情報を生成する。
そして、仮想パス計算部223は、生成した帯域確保応答情報を、信号送受信部221を介して、信号振分装置10に送信する。
【0062】
処理状況通知部224は、仮想パス計算部223から、仮想パス計算が完了する度に、計算が完了したことを示す情報を受信する。そして、処理状況通知部224は、単位時間あたりに何回仮想パス計算を実行しているかを示す計算能力情報300を生成する。そして、処理状況通知部224は、その計算能力情報300を、信号送受信部221を介して、計算能力管理装置40に送信する。
処理状況通知部224は、例えば、1秒間あたりに100回の仮想パス計算を行った場合に、「100計算/秒」を、計算能力情報300として、計算能力管理装置40に送信する。
【0063】
また、処理状況通知部224は、単位時間ごとに処理信号キュー保存部222にアクセスし、仮想パス計算を行っていない未処理の各SIP信号に追記された仮想パス計算回数の総数を計算し、その計算結果を未処理信号情報400として生成する。そして、処置状況通知部224は、その未処理信号情報400を、信号送受信部221を介して、計算能力管理装置40に送信する。例えば、未処理信号情報400として、ある信号処理装置20から、未処理の仮想パス計算回数の総数が「5000計算」であることが、計算能力管理装置40に送信される。
【0064】
また、記憶部23は、ハードディスクやフラッシュメモリ等の記憶手段からなり、仮想パス計算部223が、仮想パス情報記憶装置30から取得した仮想パス情報200が記憶される。
【0065】
次に、図9を用いて、信号処理装置20の処理の流れを説明する。図9は、本実施形態に係る信号処理装置20の処理の流れを示すシーケンス図である。
【0066】
まず、信号処理装置20の信号送受信部221は、信号振分装置10から仮想パス計算回数が追記されたSIP信号を受信する(ステップS301)。そして、信号送受信部221は、受信したSIP信号を処理信号キュー保存部222に出力し、処理信号キュー保存部222が、受信したSIP信号を保存する(ステップS302)。
【0067】
次に、仮想パス計算部223は、処理信号キュー保存部222に保存されたSIP信号を取得する(ステップS303)。また、仮想パス計算部223は、信号送受信部221を介して、仮想パス情報記憶装置30から仮想パス情報200(図8参照)を取得する(ステップS304)。
【0068】
続いて、仮想パス計算部223は、ステップS303で取得した各SIP情報を用いて仮想パス計算を行う(ステップS305)。具体的には、各SIP信号に付された仮想パス計算回数に、各メディアごとに予め設定された仮想パス計算1回につき必要な帯域を乗算することにより、SIPセッションが必要とする帯域を計算する。
また、仮想パス計算部223は、ステップS304で取得した仮想パス情報200を用いて、端末装置2を収容するSSE3において、転送に利用可能な帯域を計算する。
そして、仮想パス計算部223は、そのSIPセッションの必要とする帯域が、転送に利用可能な帯域以下であり、帯域を確保できるか否かを判定する(ステップS306)。ここで、仮想パス計算部223が、帯域を確保できると判定した場合は、帯域確保OKの帯域確保応答情報を生成する。また、仮想パス計算部223は、そのSIPセッションの必要とする帯域が転送に利用可能な帯域を超えており、帯域の確保ができないと判定した場合は、帯域確保NGの帯域確保応答情報を生成する。そして、仮想パス計算部223は、生成した帯域確保応答情報を、信号送受信部221を介して、信号振分装置10に送信する(ステップS307)。
【0069】
次に、処理状況通知部224は、仮想パス計算部223から、仮想パス計算が完了する度に、計算が完了したことを示す情報を受信する(ステップS308)。そして、処理状況通知部224は、単位時間あたりに何回仮想パス計算を実行しているかを示す計算能力情報300を生成し(ステップS309)、信号送受信部221を介して、計算能力管理装置40に送信する(ステップS310)。
【0070】
続いて、処理状況通知部224は、単位時間ごとに、処理信号キュー保存部222にアクセスし、仮想パス計算を行っていない未処理の各SIP信号に追記された仮想パス計算回数の総数を計算し、その計算結果を未処理信号情報400として生成する(ステップS312)。そして、処理状況通知部224は、その未処理信号情報400を、信号送受信部221を介して、計算能力管理装置40に送信する(ステップS313)。
【0071】
このようにすることで、各信号処理装置20(20A,20B,20C,…)は、信号振分装置10が振り分けたSIP信号を受信し、仮想パス計算を分散して行うことができる。また、各信号処理装置20(20A,20B,20C,…)は、受信したSIP信号の仮想パス計算の処理状況を示す情報として、計算能力情報300および未処理信号情報400を、計算能力管理装置40に送信することができる。
【0072】
<仮想パス情報記憶装置>
仮想パス情報記憶装置30は、不図示の入出力部と、制御部と、記憶部とを備えた記憶装置であり、記憶部内には、仮想パス情報200(図8参照)が記憶される。この仮想パス情報200には、NGNコアネットワークのエッジルータであるSSE3(符号201)(図1参照)ごとに、総帯域(符号202)と使用済み帯域(符号203)とが記憶される。この使用済み帯域(符号203)は、不図示のネットワーク管理装置等により、所定の間隔で更新され、現時点での使用済み帯域203が記憶される。そして、この仮想パス情報200は、各信号処理装置20により参照される。
【0073】
<計算能力管理装置>
図10は、本実施形態に係る計算能力管理装置40の構成例を示す機能ブロック図である。計算能力管理装置40は、各信号処理装置20(20A,20B,20C,…)および信号振分装置10に接続される。また、計算能力管理装置40は、入出力部41と、制御部42と、記憶部43とを備える。
【0074】
入出力部41は、他の装置との間の情報の入出力を行い、入出力インタフェースおよびネットワークインタフェースから構成される。
【0075】
制御部42は、計算能力管理装置40全体の制御を司り、信号送受信部421と、余剰計算能力算出部422と、仮想パス計算能力情報通知部423とを含んで構成される。なお、この制御部42は、CPUとRAM等のメインメモリとから構成される。また、制御部42がプログラム処理により実現される場合には、例えば、計算能力管理装置40の記憶部43に記憶されたプログラムを、CPUがRAMに展開し実行することで制御部42の処理が実現される。
【0076】
信号送受信部421は、信号処理装置20が生成した計算能力情報300および未処理信号情報400を、入出力部41を介して受信し記憶部43に保存する。また、仮想パス計算能力情報通知部423の制御により、余剰仮想パス計算能力情報100(図5参照)を、信号振分装置10に送信する。
【0077】
余剰計算能力算出部422は、記憶部43から計算能力情報300および未処理信号情報400を取得し、単位時間あたりの余剰仮想パス計算能力を算出する。
具体的には、例えば、余剰計算能力算出部422は、ある信号処理装置20の計算能力情報300として、「100計算/秒」を取得する。これは、1秒間に100回仮想計算パスを計算できることを意味する。そして、余剰計算能力算出部422は、その信号処理装置20が1分間に処理できる仮想パス計算回数として、100(計算/秒)×60(秒)=6000(計算)を算出する。
また、余剰計算能力算出部422は、未処理信号情報400から、その信号処理装置20が保存する未処理の各SIP信号の仮想パス計算回数の総数が、例えば、「5000計算」であることを取得する。
余剰計算能力算出部422は、1分間に処理できる仮想パス計算回数「6000計算」から未処理のSIP信号の仮想パス計算回数の総数「5000計算」を引いた「1000計算」を余剰仮想パス計算能力として算出する。
そして、余剰計算能力算出部422は、この計算をすべての信号処理装置20に対して実行し、その計算結果を余剰仮想パス計算能力情報100(図5参照)として記憶部43に記憶する。
【0078】
仮想パス計算能力情報通知部423は、余剰計算能力算出部422により、余剰仮想パス計算能力情報100が更新されたことを契機として、その余剰仮想パス計算能力情報100を、信号送受信部421を介して、信号振分装置10に送信する。
【0079】
また、記憶部43は、ハードディスクやフラッシュメモリ等の記憶手段からなり、信号送受信部421が、各信号処理装置20から受信した計算能力情報300や未処理信号情報400、余剰計算能力算出部422が算出した余剰仮想パス計算能力情報100が記憶される。
【0080】
次に、図11を用いて、計算能力管理装置40の処理の流れを説明する。図11は、本実施形態に係る計算能力管理装置40の処理の流れを示すフローチャートである。
【0081】
まず、計算能力管理装置40の信号送受信部421は、各信号処理装置20から、計算能力情報300を受信し(ステップS401)、記憶部43に保存する。また、信号送受信部421は、各信号処理装置20から、未処理信号情報400を受信し(ステップS402)、記憶部43に保存する。
【0082】
次に、余剰計算能力算出部422は、記憶部43から計算能力情報300および未処理信号情報400を取得し、信号処理装置20ごとの単位時間あたりの余剰仮想パス計算能力を算出する(ステップS403)。そして、余剰計算能力算出部422は、その算出結果を、余剰仮想パス計算能力情報100(図5参照)として記憶部43に記憶する。
【0083】
続いて、仮想パス計算能力情報通知部423は、余剰計算能力算出部422が、余剰仮想パス計算能力情報100を更新したことを契機として、余剰仮想パス計算能力情報100を信号振分装置10に送信する(ステップS404)。
【0084】
このようにすることで、計算能力管理装置40は、各信号処理装置20(20A,20B,20C,…)から、計算能力情報300および未処理信号情報400を取得し、各信号処理装置20の余剰の仮想パス計算回数に基づいた余剰仮想パス計算能力情報100を生成することができる。
【0085】
以上のように、本実施形態に係るネットワーク帯域制御システム1およびネットワーク帯域制御方法によれば、各信号処理装置20(20A,20B,20C,…)の余剰の仮想パス計算回数に基づいた余剰仮想パス計算能力情報100を用いて、信号振分装置10が、SIP信号を各信号処理装置20に振り分けることができる。よって、各信号処理装置20の仮想パス計算を均等化し、ネットワーク品質を向上させて帯域制御を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0086】
1 ネットワーク帯域制御システム
2 端末装置
3 SSE(加入者サービスエッジ)
4 SSC(加入者セッション制御サーバ)
5 ISC(中継セッション制御サーバ)
6 IBE(中継ボーダゲートウェイ装置)
7 RACS(ネットワーク帯域制御機能)
10 信号振分装置
11,21,41 入出力部
12,22,42 制御部
13,23,43 記憶部
20 信号処理装置
30 仮想パス情報記憶装置
40 計算能力管理装置
100 余剰仮想パス計算能力情報
200 仮想パス情報
121,221,421 信号送受信部
122 信号キュー保存部
123 メディア数抽出部
124 信号振分部
125 帯域確保情報通知部
222 処理信号キュー保存部
223 仮想パス計算部
224 処理状況通知部
300 計算能力情報
400 未処理信号情報
422 余剰計算能力算出部
423 仮想パス計算能力情報通知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)端末装置から送信された接続要求信号を受信し、前記受信した接続要求信号を複数の信号処理装置に振り分ける信号振分装置と、(2)前記振り分けられた接続要求信号を取得し、前記接続要求信号に示されるセッションが必要とする帯域を計算し、転送ネットワークにおける前記帯域が確保できるか否かを判定する前記信号処理装置と、(3)前記転送ネットワークにおける使用済み帯域の情報が記憶される仮想パス情報記憶装置と、(4)前記信号振分装置が前記接続要求信号を振り分けるために参照する、前記信号処理装置ごとの帯域計算の余剰計算回数を示す余剰仮想パス計算能力を計算する計算能力管理装置と、を備えるネットワーク帯域制御システムであって、
前記信号振分装置は、
前記信号処理装置ごとの前記余剰仮想パス計算能力を示す余剰仮想パス計算能力情報が記憶される記憶部と、
前記端末装置から受信した接続要求信号に付されたメディア数を抽出し、前記抽出したメディア数を仮想パス計算回数として当該接続要求信号に追記するメディア数抽出部と、
各信号処理装置の前記余剰仮想パス計算能力の総和に対する、前記余剰仮想パス計算能力の割合が高い前記信号処理装置ほど高い確率で、前記仮想パス計算回数が追記された接続要求信号を振り分け、前記振り分けた信号処理装置に当該接続要求信号を送信する信号振分部と、
前記信号処理装置から、前記セッションの帯域が確保できるか否かを示す帯域確保応答情報を受信し、前記端末装置に送信する帯域確保情報通知部と、を備え、
前記信号処理装置は、
前記信号振分装置から受信した前記接続要求信号に付されたメディアの種類ごとに必要な帯域と、前記仮想パス計算回数を乗算することにより、前記セッションに必要な帯域を算出し、前記仮想パス情報記憶装置から、前記転送ネットワークにおける前記使用済み帯域の情報を取得して、転送に利用可能な帯域を算出し、
前記セッションに必要な帯域が、前記転送に利用可能な帯域以下である場合に、前記帯域の確保ができると判定し、前記セッションに必要な帯域が、前記転送に利用可能な帯域を超える場合に、前記帯域の確保ができないと判定し、前記判定の結果を前記帯域確保応答情報として前記信号振分装置に送信する仮想パス計算部と、
前記仮想パス計算部が前記セッションに必要な帯域を算出する仮想パス計算を、単位時間あたりに何回行ったかを示す計算能力情報を生成するとともに、前記受信した仮想パス計算回数が追記された接続要求信号のうち、前記仮想パス計算を行っていない各接続要求信号に追記された仮想パス計算回数の総数を計算し、その計算結果を未処理信号情報として生成し、前記生成した計算能力情報および前記未処理信号情報を前記計算能力管理装置に送信する処理状況通知部と、を備え、
前記計算能力管理装置は、
前記信号処理装置から、前記計算能力情報および前記未処理信号情報を受信する信号送受信部と、
前記信号処理装置ごとに、前記計算能力情報に示される単位時間あたりの仮想パス計算の回数から、前記未処理信号情報に示される前記仮想パス計算回数の総数を引いた回数を、前記余剰仮想パス計算能力として算出する余剰計算能力算出部と、
前記余剰計算能力算出部が算出した前記信号処理装置ごとの前記余剰仮想パス計算能力を示す前記余剰仮想パス計算能力情報を、前記信号振分装置に送信する仮想パス計算能力情報通知部と、を備えること
を特徴とするネットワーク帯域制御システム。
【請求項2】
(1)端末装置から送信された接続要求信号を受信し、前記受信した接続要求信号を複数の信号処理装置に振り分ける信号振分装置と、(2)前記振り分けられた接続要求信号を取得し、前記接続要求信号に示されるセッションが必要とする帯域を計算し、転送ネットワークにおける前記帯域が確保できるか否かを判定する前記信号処理装置と、(3)前記転送ネットワークにおける使用済み帯域の情報が記憶される仮想パス情報記憶装置と、(4)前記信号振分装置が前記接続要求信号を振り分けるために参照する、前記信号処理装置ごとの帯域計算の余剰計算回数を示す余剰仮想パス計算能力を計算する計算能力管理装置と、を備えるネットワーク帯域制御システムに用いられるネットワーク帯域制御方法であって、
前記信号振分装置は、
前記信号処理装置ごとの前記余剰仮想パス計算能力を示す余剰仮想パス計算能力情報が記憶される記憶部を備えており、
前記端末装置から受信した接続要求信号に付されたメディア数を抽出し、前記抽出したメディア数を仮想パス計算回数として当該接続要求信号に追記するステップと、
各信号処理装置の前記余剰仮想パス計算能力の総和に対する、前記余剰仮想パス計算能力の割合が高い前記信号処理装置ほど高い確率で、前記仮想パス計算回数が追記された接続要求信号を振り分け、前記振り分けた信号処理装置に当該接続要求信号を送信するステップと、を実行し、
前記信号処理装置は、
前記信号振分装置から受信した前記接続要求信号に付されたメディアの種類ごとに必要な帯域と、前記仮想パス計算回数を乗算することにより、前記セッションに必要な帯域を算出し、前記仮想パス情報記憶装置から、前記転送ネットワークにおける前記使用済み帯域の情報を取得して、転送に利用可能な帯域を算出するステップと、
前記セッションに必要な帯域が、前記転送に利用可能な帯域以下である場合に、前記帯域の確保ができると判定し、前記セッションに必要な帯域が、前記転送に利用可能な帯域を超える場合に、前記帯域の確保ができないと判定し、前記判定の結果を前記帯域確保応答情報として前記信号振分装置に送信するステップと、
前記仮想パス計算部が前記セッションに必要な帯域を算出する仮想パス計算を、単位時間あたりに何回行ったかを示す計算能力情報を生成するとともに、前記受信した仮想パス計算回数が追記された接続要求信号のうち、前記仮想パス計算を行っていない各接続要求信号に追記された仮想パス計算回数の総数を計算し、その計算結果を未処理信号情報として生成し、前記生成した計算能力情報および前記未処理信号情報を前記計算能力管理装置に送信するステップと、を実行し、
前記信号振分装置は、
前記信号処理装置から、前記セッションの帯域が確保できるか否かを示す前記帯域確保応答情報を受信し、前記端末装置に送信するステップを実行し、
前記計算能力管理装置は、
前記信号処理装置から、前記計算能力情報および前記未処理信号情報を受信するステップと、
前記信号処理装置ごとに、前記計算能力情報に示される単位時間あたりの仮想パス計算の回数から、前記未処理信号情報に示される前記仮想パス計算回数の総数を引いた回数を、前記余剰仮想パス計算能力として算出するステップと、
前記余剰計算能力算出部が算出した前記信号処理装置ごとの前記余剰仮想パス計算能力を示す前記余剰仮想パス計算能力情報を、前記信号振分装置に送信するステップと、を実行すること
を特徴とするネットワーク帯域制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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