説明

ネットワーク評価システム、ネットワーク評価装置、性能評価プログラム及びネットワーク評価方法

【課題】冗長化プロトコルに基づいて構成されたネットワークについて、効率良く通信経路の切り替えに要した時間を測定するとともに、ネットワーク機器の性能を正確に評価する。
【解決手段】相互に接続されているネットワーク評価装置1と試験端末2とをネットワーク4に接続する。ネットワーク評価装置1には、予め試験端末2及びネットワーク機器6,8,10の個々の動作を指示するプログラムが格納されている。このプログラムに基づきネットワーク評価装置1は、各ネットワーク機器6,8,10に対して初期設定情報を通知して、冗長化されたネットワーク4を構築させる。また、試験端末2に対して試験用フレーム12の送信を開始させる。さらに、ネットワーク機器6,8,10に対して擬似的な通信障害を発生させる。そしてネットワーク評価装置1において、通信経路が切り替わるまでに要した時間を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冗長化されたネットワーク内で通信経路が切り替わるまでに要する時間を測定するためのネットワーク評価システム、ネットワーク評価装置、性能評価プログラム、及びネットワーク評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)やBSC(Binary Synchronous Control)等の複数種類の通信プロトコルについて、これらを実装した通信機器の性能をプロトコル別に評価する先行技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この先行技術は、複数種類の通信プロトコルに対応した単一通信試験装置を通信装置に接続し、さらに入出力装置を単一通信試験装置に接続した状態で試験を行うものである。特にこの入出力装置は、各通信プロトコルに固有のコマンドを共通のコマンドに変換する機能を備えている。
【0003】
このため上記の先行技術によれば、作業者が通信プロトコルの種類別に固有のコマンドをいちいち入力する必要がなく、入出力装置に共通のコマンドを入力するだけで、評価対象となる通信プロトコルの種類別に試験を行うことができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−32649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述した先行技術は、プロトコル別のコマンドを入出力装置で共通化するという点では優位であるものの、それによって得られる利便性はあくまで作業者の入力操作を軽減するものでしかなく、試験で得られる評価の精度を特段に向上するものではない。すなわち先行技術の手法では、試験に際してコマンドの入力作業は依然として作業者の人手によって行われるため、作業者の経験や習熟度によって試験を行う条件にバラつきが生じやすく、そこから得られた評価の精度については未だ信頼性に乏しいものである。
【0006】
具体的には、先行技術において試験を行う際の開始タイミングや通信の確立、試験データの送受信等の各種の条件については、いずれも作業者が一つ一つコマンドを入力することによって定められるものであり、操作を行うタイミングや試験結果に基づく評価は、各作業者の判断に依存することになる。このため、たとえ入出力装置の操作性を向上したとしても、個々の作業者の経験や習熟度によって試験時の条件にバラつきが生じることから、作業者は試験を行うごとにその結果を一つ一つ精査し、その上で通信機器の性能を最終的に評価しなければならない。したがって先行技術の手法では、常に安定した精度で評価を行うことができないという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、作業者の経験や習熟度に依存することなく、効率的に高い精度で評価結果を得ることができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための第1の発明は、所定の冗長化プロトコルを用いて中継動作を行う複数のネットワーク機器が相互に接続されることにより、論理的に冗長化された通信経路を形成するネットワークと、ネットワーク内の少なくとも2つのネットワーク機器に接続され、その一方のネットワーク機器に向けて連続的に送信した試験用フレームを通信経路を経由して他方のネットワーク機器から受信しつつ、試験用フレームの送信数及び受信数をそれぞれ記録する試験端末と、ネットワーク及び試験端末に接続された状態で、複数のネットワーク機器及び試験端末に対して個々の動作を指示するネットワーク評価装置と、予め複数のネットワーク機器による冗長化プロトコルを用いた中継動作の実行に必要となる初期設定情報をネットワーク評価装置から各ネットワーク機器に対して通知することにより、ネットワーク内に通信経路を構築させる初期設定手段と、ネットワーク内に通信経路が構築された状態で、ネットワーク評価装置から試験端末に対して試験用フレームを連続的に送信する動作の開始を指示することにより、試験端末による試験用フレームの送信数及び受信数の記録を開始させる開始指示手段と、試験端末により試験用フレームの送信数及び受信数の記録が行われる過程で、ネットワーク評価装置からいずれかのネットワーク機器に対して擬似的な通信障害の発生を指示することにより、複数のネットワーク機器による冗長化プロトコルに基づく通信経路の切り替え動作を開始させる障害発生指示手段と、試験端末にて記録された試験用フレームの送信数及び受信数に基づいて通信経路の切り替えが完了するまでに要した時間を測定する測定手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
第1の発明によれば、例えばIEEEで標準化されたSTP(Spanning Tree Protocol)や、RFC(Request For Comments)で標準化されたRIP(Routing Information Protocol)、OSPF(Open Shotest Path Fast)、及びBGP(Border Gateway Protocol)、または、MMRP(Multi Master Ring Protocol)のように通信機器のベンダーによって独自に開発されたプロトコル等の冗長化プロトコルを実装することが可能なスイッチングハブや、レイヤー2スイッチ、レイヤー3スイッチ及びルータ等、これらネットワーク機器の性能を効率的に評価することができる。すなわち、ネットワーク評価装置から初期設定情報の通知、試験用フレームの送信を開始させるタイミング、及び擬似的な通信障害を発生させるタイミングを自動的に通知し、試験端末及び各ネットワーク機器は、この通知に連動して各動作を行う。したがって、測定を行っている間これらは一つのシステムとして人手を介することなく効率的な動作を実現することができる。このため、例えば測定対象となる冗長化プロトコルについて複数回の測定を実施しても、このシステムは常に一定のタイミングで動作を開始し、通信経路の切り替わりに要した時間を効率的に測定できる。これにより、測定結果から得られた評価の信頼性を飛躍的に向上させることできる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の構成において、初期設定手段は、ネットワーク機器が複数種類の冗長化プロトコルに対応している場合、その中で評価対象とするべき冗長化プロトコルの種類ごとに初期設定情報を通知することを特徴とする。
【0011】
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、例えばネットワーク機器が複数種類の冗長化プロトコルに対応している場合、予め評価対象となる冗長化プロトコルごとの初期設定情報をネットワーク評価装置に記憶させておけば、ネットワーク評価装置から各ネットワーク機器に対して、評価の対象となる冗長化プロトコルについての初期設定情報を自動的にインストールさせることができる。これにより、作業者が手動により評価対象の冗長化プロトコルごとに、各ネットワーク機器へ設定を施さなくても、自動的に評価対象となる冗長化プロトコルに基づいたネットワークを構築でき、スムーズに測定を開始することができる。このため、全ての測定対象となる冗長化プロトコルについて測定を実施しても、全体としての作業時間を大幅に短縮することができる。
【0012】
なおネットワーク評価装置は、複数種類の冗長化プロトコルについて測定を行う場合、各ネットワーク機器に対して一種類ごとの測定が終了した後に初期設定情報を通知するとよい。
【0013】
第3の発明は、所定の冗長化プロトコルを用いて中継動作を行う複数のネットワーク機器が相互に接続されることにより、論理的に冗長化された通信経路を形成するネットワークについての評価を行うネットワーク評価装置である。このネットワーク評価装置は、ネットワーク内の少なくとも2つのネットワーク機器に接続された試験端末に対して動作の指示を行い、この指示に応じて試験端末から一方のネットワーク機器に向けて連続的に試験用フレームの送信を開始させるとともに、通信経路を経由して他方のネットワーク機器から試験端末にて試験用フレームを受信させることにより、試験端末による試験用フレームの送信数及び受信数の記録を開始させる開始指示手段と、試験端末に対する開始指示手段からの指示に先立ち、予め複数のネットワーク機器による冗長化プロトコルを用いた中継動作の実行に必要となる初期設定情報を各ネットワーク機器に対して通知することにより、ネットワーク内に通信経路を構築させる初期設定手段と、試験端末により試験用フレームの送信数及び受信数の記録が行われる過程で、いずれかのネットワーク機器に対して擬似的な通信障害の発生を指示する障害発生指示手段と、試験端末にて記録された試験用フレームの送信数及び受信数に基づいて擬似的な通信障害の発生により通信経路の切り替えが完了するまでに要した時間を測定する測定手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
第3の発明によれば、ネットワーク評価装置が初期設定情報の通知、試験用フレームの送信を開始させるタイミング、及び擬似的な通信障害を発生させるタイミングの各条件を自動的に通知し、さらに測定結果から通信経路が切り替わるまでに要した時間を算出することができる。したがって、作業者は上記の各条件についてコマンドを入力して操作する必要が無く、算出された切り替わり時間からネットワーク機器の性能を評価するだけでよい。したがって、作業者の習熟度や経験に依存することなく効率的に評価を行うことができる。
【0015】
第4の発明は、第3の発明の構成において、初期設定手段は、ネットワーク機器が複数種類の冗長化プロトコルに対応している場合、その中で評価対象とするべき冗長化プロトコルの種類ごとに初期設定情報を通知することを特徴とする。
【0016】
第4の発明によれば、第3の発明の作用に加えてさらに、例えばネットワーク機器が複数種類の冗長化プロトコルに対応している場合、予め評価対象となる冗長化プロトコルごとの初期設定情報をネットワーク評価装置に記憶させておくことができる。これにより、評価に必要な冗長化プロトコルについて、その初期設定情報をネットワーク機器に設定させることができる。このため、作業者が手動でネットワーク機器に評価対象となる冗長化プロトコルについての初期設定情報を設定する必要がなく、その作業時間を大幅に短縮することができ、効率的に測定を行うことができる。
【0017】
なおネットワーク評価装置は、複数種類の冗長化プロトコルについて測定を行う場合、各ネットワーク機器に対して一種類ごとの測定が終了した後に初期設定情報を通知するとよい。
【0018】
第5の発明は、所定の冗長化プロトコルを用いて中継動作を行う複数のネットワーク機器が相互に接続されることにより、論理的に冗長化された通信経路を形成するネットワークについての評価を行うネットワーク評価装置により実行される性能評価プログラムである。この性能評価プログラムは、ネットワーク評価装置に、予め複数のネットワーク機器による冗長化プロトコルを用いた中継動作の実行に必要となる初期設定情報をネットワーク機器に対して通知する手順と、ネットワーク内に通信経路が構築された状態で、ネットワーク内の少なくとも2つのネットワーク機器に接続された試験端末に対し、その一方のネットワーク機器に向けて試験用フレームを連続的に送信する動作の開始を指示するとともに、試験用フレームの送信数と通信経路を経由して他方のネットワーク機器から受信した試験用フレームの受信数とをそれぞれ試験端末にて記録させる指示を行う手順と、試験端末により試験用フレームの送信数及び受信数の記録が行われる過程で、いずれかのネットワーク機器に対して擬似的な通信障害の発生を指示する手順と、試験端末にて記録された試験用フレームの送信数及び受信数に基づいて通信経路の切り替えが完了するまでに要した時間を測定する手順とを実行させる。
【0019】
第5の発明によれば、上述した性能評価プログラムを用いれば、ネットワーク評価装置に初期設定情報、試験用フレームの送信を開始させるタイミング、及び擬似的な通信障害を発生させるタイミングの各条件を自動的に通知しており、冗長化プロトコルに基づいて通信経路が切り替わるまでに要した時間を効率的に測定することができる。またネットワーク評価装置は、プログラムに基づいて所定のタイミングで上記の各条件を実行するため、例えば、測定対象となる冗長化プロトコルについての測定を複数回実施したとしても、測定ごとに上記の各条件を実行するタイミングにばらつきが生じることが無い。このため、安定した精度で測定を実施することができ、その結果から得られた評価の信頼性を飛躍的に向上させることができる。
【0020】
第6の発明は、第5の発明の構成において、ネットワーク評価装置に、ネットワーク機器が複数種類の冗長化プロトコルに対応している場合、その中で評価対象とするべき冗長化プロトコルの種類ごとに初期設定情報を通知する手順をさらに実行させる。
【0021】
第6の発明によれば、第5の発明の作用に加えてさらに、例えばネットワーク機器が複数種類の冗長化プロトコルに対応している場合、予め評価対象となる冗長化プロトコルごとの初期設定情報をネットワーク評価装置に記憶させておくことができる。これにより、評価に必要な冗長化プロトコルについて、その初期設定情報をネットワーク機器に通知させることができる。このため、作業者が手動でネットワーク機器に評価対象となる冗長化プロトコルについての初期設定情報を設定する必要がなく、その作業時間を大幅に短縮することができ、効率的に測定を行うことができる。
【0022】
なお、複数種類の冗長化プロトコルについて測定を行う場合、各ネットワーク機器に対して一種類ごとの測定が終了した後に初期設定情報を通知するとよい。
【0023】
第7の発明は、ネットワーク評価方法を提供する。本発明のネットワーク評価方法は、所定の冗長化プロトコルを用いて中継動作を行う複数の通信機器が相互に接続されることにより、論理的に冗長化された通信経路を形成するネットワークについての評価を行うネットワーク評価方法であって、以下の〔1〕〜〔5〕の工程を有する。
【0024】
〔1〕試験端末を設置する工程
この工程では、ネットワーク内の少なくとも2つのネットワーク機器に接続され、その一方のネットワーク機器に向けて連続的に送信した試験用フレームを通信経路を経由して他方のネットワーク機器から受信しつつ、試験用フレームの送信数及び受信数をそれぞれ記録する試験端末を設置する。なお、試験端末が既存のものであったとしても、当該既存の試験端末が設置されていることにより、評価方法の実施に際して工程〔1〕が実行されたことになる。
【0025】
〔2〕初期設定工程
この工程では、ネットワーク及び試験端末のそれぞれにネットワーク評価装置を接続し、このネットワーク評価装置により複数のネットワーク機器による冗長化プロトコルを用いた中継動作の実行に必要となる初期設定情報を各ネットワーク機器に対して通知することにより、ネットワーク内に通信経路を構築させる。
【0026】
〔3〕開始指示工程
この工程では、ネットワーク内に通信経路が構築された状態で、ネットワーク評価装置から試験端末に対して試験用フレームを連続的に送信する動作の開始を指示することにより、試験端末による試験用フレームの送信数及び受信数の記録を開始させる。
【0027】
〔4〕障害発生指示工程
この工程では、試験端末により試験用フレームの送信数及び受信数の記録が行われる過程で、ネットワーク評価装置からいずれかのネットワーク機器に対して擬似的な通信障害の発生を指示することにより、複数のネットワーク機器による冗長化プロトコルに基づく通信経路の切り替え動作を開始させる。
【0028】
〔5〕測定工程
この工程では、試験端末にて記録された試験用フレームの送信数及び受信数に基づいて通信経路の切り替えが完了するまでに要した時間を測定する。
【0029】
第7の発明によれば、ネットワーク評価装置から初期設定情報、試験用フレームの送信を開始させるタイミング、及び通信断を発生させるタイミングの各条件を自動的に通知しており、試験端末及び各ネットワーク機器はこれらの条件に基づいて自動的にそれぞれの動作を実行することができる。したがって、作業者は測定を行っている間、これらの機器に対して例えばコマンドを入力して指示を与える必要がなく、効率的に測定を行うことができる。
【0030】
また、複数回の測定を実行しても各工程が実行されるタイミングは常に一定に保たれており、測定結果から得られた評価の信頼性を飛躍的に向上させることができる。
【0031】
第8の発明は、第7の発明の構成において、初期設定工程は、ネットワーク機器が複数種類の冗長化プロトコルに対応している場合、その中で評価対象とするべき冗長化プロトコルの種類ごとに初期設定情報を通知することを特徴とする。
【0032】
第8の発明によれば、第7の発明の作用に加えてさらに、例えばネットワーク機器が複数種類の冗長化プロトコルに対応している場合、予め評価対象となる冗長化プロトコルごとの初期設定情報をネットワーク評価装置に記憶させておけば、ネットワーク評価装置から各ネットワーク機器に対して、評価の対象となる冗長化プロトコルについての初期設定情報を自動的にインストールさせることができる。これにより、作業者が手動により評価対象の冗長化プロトコルごとに、各ネットワーク機器へ設定を施さなくても、自動的に評価対象となる冗長化プロトコルに基づいたネットワークを構築でき、スムーズに測定を開始することができる。このため、全ての測定対象となる冗長化プロトコルについて測定を実施しても、全体としての作業時間を大幅に短縮することができる。
【0033】
なお、複数種類の冗長化プロトコルについて測定を行う場合、各ネットワーク機器に対して一種類ごとの測定が終了した後に初期設定情報を通知するとよい。
【発明の効果】
【0034】
以上のように本発明のネットワーク評価システム、ネットワーク評価装置、性能評価プログラム、及びネットワーク評価方法によれば、冗長化プロトコルに基づいて通信経路の切り替わるまでに要した時間を自動化して測定の効率を向上させるとともに、ネットワークの性能を効率よく正確に評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態におけるネットワーク評価装置を用いたネットワークの構成例を概略的に示す図である。
【図2】ネットワーク評価装置で開始指示及び障害発生指示を実行した際のネットワークの構成を概略的に示す図である。
【図3】試験用フレームの構成を概略的に示す図である。
【図4】ネットワーク評価装置,試験端末,ネットワーク機器の機能的な構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】ネットワーク評価装置により実行される性能評価プログラムの処理を示すフローチャートである。
【図6】ネットワーク機器により実行される初期設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】ネットワーク機器により実行される通信障害発生処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】ネットワーク評価装置により実行される通信経路の切り替わり時間を算出する処理を示すフローチャートである。
【図9】ネットワーク評価装置でファイルに出力された試験結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下ではネットワーク評価装置及びこれに実装される性能評価プログラムについて、これらを用いて実行されるネットワーク機器と試験端末との実施形態を中心として説明するが、ネットワーク評価装置、試験端末及び複数のネットワーク機器により構成されたネットワークを組み合わせたものが「ネットワーク評価システム」としての実施形態となる。また「ネットワーク評価方法」は、ネットワーク評価システム、ネットワーク評価装置を利用して実行することができ、その際、性能評価プログラムはネットワーク評価装置に実行されるものである。
【0037】
図1は、本実施形態におけるネットワーク評価装置1を用いたネットワーク4の構成例を概略的に示す図である。ここでは、ネットワーク評価装置1を用いて、ネットワーク4に対して評価対象となる冗長化プロトコルに基づいて通信経路を構成させる手法、及びネットワーク評価装置1及び試験端末2を用いたネットワーク評価システムの構成について説明する。
【0038】
ネットワーク評価装置1及び試験端末2は、それぞれネットワーク4に接続されている。ネットワーク4は複数のネットワーク機器6,8,10により構成されており、これらは相互に接続されている。ネットワーク評価装置1はまた、試験端末2及びネットワーク機器6に接続されており、試験端末2はさらに、ネットワーク機器6及びネットワーク機器8に接続されている。
【0039】
具体的には、ネットワーク評価装置1は、試験端末2と伝送線3(ネットワークケーブル)を介して接続されており、また、ネットワーク機器6のポート6aと伝送線5を介して接続されている。試験端末2は、ネットワーク機器6のポート6bと伝送線7を介して接続されており、さらにネットワーク機器8のポート8aと伝送線9を介して接続されている。また、ネットワーク機器6は、このポート6cが伝送線11を介してネットワーク機器8のポート8bと接続されており、ポート6dが伝送線13を介してネットワーク機器10のポート10aと接続されている。ネットワーク機器10は、このポート10bが伝送線15を介してネットワーク機器8のポート8cと接続されている。
【0040】
ネットワーク評価装置1は、例えばサーバやPC(パーソナルコンピュータ)等により構成されている。またネットワーク評価装置1は、試験端末2及びネットワーク4に対して、通信経路の切り替わりに要した時間を測定するため、個々の動作について指示を与えている。また、測定された結果を測定結果ファイルとして記憶装置26に出力する。なお、図1中では便宜上、記憶装置26をネットワーク評価装置1から分離して記載しているが、記憶装置26は、ネットワーク評価装置1に内蔵された物理メモリやハードディスクドライブ等であってもよい。
【0041】
試験端末2は、例えばトラフィックジェネレータ機能を持つ専用の装置やPC等の端末であり、試験用フレーム12を送信及び受信するとともに、この送信数及び受信数を記録する。なお、試験用フレーム12の構成については、図3を参照してさらに詳しく後述する。
【0042】
また、ネットワーク機器6,8,10は、スイッチングハブや、レイヤー2スイッチ、レイヤー3スイッチ及びルータなどのネットワーク中継機器であり、STP(Spanning Tree Protocol)や、RFC(Request For Comments)で標準化されたRIP(Routing Information Protocol)、OSPF(Open Shotest Path Fast)、及びBGP(Border Gateway Protocol)、または、MMRP(Multi Master Ring Protocol)等の冗長化プロトコルを実装して、冗長化プロトコルに基づいてネットワーク4内に冗長化された通信経路を構成することができる。本実施形態では、ネットワーク評価装置1からネットワーク機器6,8,10に対して冗長化プロトコルに基づく通信経路を構成させるために初期設定情報が通知される。また、試験端末2から送信された試験用フレーム12は、上記の冗長化プロトコルに基づいてネットワーク機器6,8,10によって中継されて宛先のノードへ転送される。以下、ネットワーク評価装置1からネットワーク機器6,8,10へ初期設定情報を通知する際におけるネットワーク評価システムの動作について説明する。また以下の説明により、ネットワーク評価方法の一例についてもまた明らかとなる。
【0043】
〔試験端末の設置(設置工程)〕
ネットワーク評価の開始に先立ち、上記のネットワーク評価装置1、ネットワーク4、試験端末2等の設置を行う。なお、これらが既存のものであってもよい。この場合、敢えて設置する実作業を省略することができる。
【0044】
〔初期設定の通知(初期設定工程)〕
ネットワーク評価装置1には、ネットワーク機器6,8,10を評価対象となる冗長化プロトコルに基づいてフレームの中継を実行させるための初期設定情報が予め記憶されている。具体的には、評価対象の冗長化プロトコルを各ネットワーク機器6,8,10に起動させるための設定情報、及び、IPアドレス(Internet Protocolアドレス)等の試験端末2から送信されたフレームをネットワーク機器6,8,10が転送するために必要な情報が格納されている。
【0045】
ネットワーク評価装置1は、通信経路の切り替わりに要した時間を測定するため、まず、上記の初期設定情報をネットワーク機器6のポート6aに対して送信する。また、初期設定情報は、ネットワーク機器6を介してネットワーク機器8及びネットワーク機器10に対しても送信される。ネットワーク機器6,8,10は、初期設定情報を受信すると、この情報に基づいて、各ポートに必要な情報を設定し、さらに冗長化プロトコルに基づいて、通信経路を構築する。
【0046】
図2は、ネットワーク評価装置1で開始指示及び障害発生指示を実行した際のネットワーク4の構成を概略的に示す図である。図1中に示すネットワーク評価装置1から通知された初期設定情報に基づいて、ネットワーク4には冗長化された通信経路が構成されている。以下、ネットワーク評価装置1から試験端末2及びネットワーク4に対して開始指示及び障害発生指示が通知された際のネットワーク評価システムの構成及び動作について説明する。
【0047】
〔開始指示(開始指示工程)〕
図2中(A):初期設定情報に基づいて、ネットワーク4内には冗長化された通信経路が構成されており、試験端末2から送信されたフレームは、ネットワーク機器6のポート6bに受信されて、ポート6cからネットワーク機器8のポート8bに転送される。試験端末2はネットワーク機器8のポート8aから試験用フレーム12を受信する。
【0048】
ネットワーク4内に冗長化された通信経路が構築されると、ネットワーク評価装置1は、試験端末2に対して試験用フレーム12を連続的に送信する動作の開始させるための情報を送信する。試験端末2は、上記の情報を受けるとポート6bに向けて試験用フレーム12の送信を開始する。このとき、試験端末2は試験用フレーム12の送信数及び受信数の測定を開始する。図2中(A)に示す白抜きの矢印は、試験用フレーム12がネットワーク4内で転送される方向を表している。
【0049】
〔障害発生指示(障害発生指示工程)〕
図2中(B):試験端末2が試験用フレーム12を連続的に送信する過程で、ネットワーク評価装置1は、所定のタイミングでネットワーク機器6に対して擬似的な通信障害の発生させるための情報を送信(指示)する。この擬似的な通信障害は、例えばネットワーク評価装置1に、予め通信障害を発生させるためのプログラムと、このプログラムに基づいて障害を発生させる対象のポート(例えば、ポート6c)情報とを備えた情報を格納している。具体的には図2中(B)に示す、ネットワーク機器6のポート6aに対して上記の情報を送信する。ネットワーク機器6は、この情報に基づいて、ポート6cに障害を発生させる。
【0050】
ネットワーク機器6のポート6cに通信障害が発生すると、各ネットワーク機器6,8,10は、冗長化プロトコルに基づいて通信経路の切り替えを実行する。このとき、試験端末2から連続的に送信された試験用フレーム12は、通信経路の切り替えが完了するまで、これを受信したネットワーク機器6によって破棄される。したがって、試験端末2は通信経路の切り替えが完了するまで、試験用フレーム12を受信することができない。通信経路の切り替えが完了すると、試験端末2から送信された試験用フレーム12は、ネットワーク機器6のポート6dからネットワーク機器10のポート10aに転送され、さらにネットワーク機器10のポート10bからネットワーク機器8のポート8cに転送される。そして、試験端末2は、ポート8aから試験用フレーム12を受信する。図2中(B)に示す白抜きの矢印は、通信経路の切り替えが完了した後の、試験用フレーム12が転送される通信経路を表している。
【0051】
〔測定(測定工程)〕
上記の通信経路の切り替えが完了した後、ネットワーク評価装置1は、試験端末2が試験用フレーム12の送信を開始してから、通信経路の切り替えが完了するまでに、試験端末2で記録された試験用フレーム12の送信数及び受信数に基づいて破棄された試験用フレーム12の総数を算出する。さらに、破棄された試験用フレーム12の総数から通信経路が切り替わるまでに要する時間を測定する。なお、ネットワーク評価装置1が通信経路が切り替わるまでに要する時間を測定する処理については、図8を参照してさらに詳しく後述する。
【0052】
〔試験用フレーム〕
図3は、試験用フレーム12の構成を概略的に示す図である。試験用フレーム12は、MACヘッダ、IPヘッダ及びデータにより構成されており、試験端末2よって生成される。試験端末2は、送信した試験用フレーム12の数を測定するとともに、これをネットワーク4を介して受信した場合のフレーム数を測定している。なお、図3中に示す試験用フレーム12は便宜上、MACヘッダの一部及びIPヘッダの一部及びデータ部を示している。
【0053】
試験用フレーム12は、MACヘッダの一部に宛先MACアドレス12a及び送信元MACアドレス12bの設定が可能なフィールドと、IPヘッダの一部に送信元IPアドレス12c及び宛先IPアドレス12dの設定が可能なフィールドとを備えている。さらに、データ部のデータ12eには64バイトの測定用のデータが設定されている。
【0054】
また、送信元MACアドレス12bには、試験端末2の送信用インタフェースに設定されたMACアドレスが設定され、宛先MACアドレス12aにはネットワーク機器6のポート6bに割り当てられたMACアドレスが設定されている。また送信元IPアドレスには、試験端末2の送信用インタフェースに設定されたIPアドレスが設定され、宛先IPアドレスには、試験端末2の受信用インタフェースに設定されたIPアドレスが設定されている。各ネットワーク機器6,8,10は、実装された冗長化プロトコルに基づいて各フィールドの宛先を参照して試験用フレーム12を転送する。
【0055】
図4は、ネットワーク評価装置1,試験端末2,ネットワーク機器6,8,10の機能的な構成を概略的に示すブロック図である。以下、それぞれの機能的な構成について説明する。
【0056】
〔ネットワーク評価装置〕
ネットワーク評価装置1は、制御部14を備えている。この制御部14は、マイクロコンピュータとして機能する要素であり、CPU16及びメモリ部18を備えている。CPU16は、ネットワーク4内の通信経路が冗長化プロトコルに基づいて切り替わるまでに要した時間を測定するためのプログラム(性能評価プログラム)を格納しており、実施判定部20及び性能測定部22を有している。メモリ部18は、初期設定情報記憶領域24を有している。また、図4中に示す記憶装置26は、便宜上、ネットワーク評価装置1とは別に示しているが、制御部14に格納されている。
【0057】
実施判定部20は、このプログラムを実行する上で測定回数や、評価すべき冗長化プロトコルの数が設定された情報を保持している。また性能測定部22は、初期設定情報の通知する手順、試験端末2に対して試験用フレーム12を連続的に送信する動作の開始を通知する手順、ネットワーク機器6,8,10に対して擬似的な通信障害を発生させるデータを通知する手順、及び、通信経路の切り替えが完了するまでに要した時間を測定する手順をネットワーク評価装置1に実行させる。なお、ネットワーク評価装置1によるプログラムの処理については、図5を用いてさらに詳しく後述する。
【0058】
メモリ部18は、図示しないハードディスクやROM、RAM等のメモリデバイスによって構成されている。初期設定情報記憶領域24は、ネットワーク機器6,8,10に対して冗長化プロトコルを起動させるための設定情報及び、ネットワーク機器6,8,10の各ポートに設定されるIPアドレス等を格納している。また記憶装置26は、試験端末2で測定された試験フレーム12の送信数、及び、受信数や、算出された切り替わり時間等、測定で得られた情報を例えばファイル形式で格納している。なお、初期設定情報記憶領域24は、ネットワーク機器6,8,10がそれぞれ複数種類の冗長化プロトコルに対応している場合、冗長化プロトコルの種類ごとに設定情報、及びIPアドレス等を格納している。
【0059】
〔試験端末〕
試験端末2は、例えばPC(Personal Computer)によって構成されており、その構成要素として制御部28を備えている。この制御部28は、さらにメモリ部30,フレーム送信部32,フレーム受信部34,及び測定部36を備えている。
【0060】
メモリ部30は、図示しないROMやRAM等のメモリデバイスによって構成されており、測定された試験用フレーム12の送信数及び受信数を記憶する。フレーム送信部32は、図示しないポートを備えており、このポートと伝送線7を介して接続されているネットワーク機器6のポート6bに試験用フレーム12を送信する。ネットワーク評価装置1から試験用フレーム12の送信を開始する指示が試験端末2に通知されると、試験用フレーム12は、フレーム送信部32から上記のポート6bへ向けて連続的に送信される。試験端末2には、予め通信速度(例えば、2000Frame/sec)が設定されており、試験用フレーム12は上記の通信速度で連続的に送信される。またフレーム受信部34は、図示しないポートを備えており、ネットワーク機器8のポート8aから試験用フレーム12を受信する。記録部36は、試験用フレーム12の送信数及び受信数を例えばバッファメモリに記録する。
【0061】
〔ネットワーク機器〕
ネットワーク機器6,8,10は、例えば、スイッチングハブやL2スイッチ、L3スイッチ、ルータ等のネットワーク中継機器であり、制御部38を備えている。この制御部38は、例えば図示しないCPU(中央処理装置)をはじめ、ROMやRAM等のメモリデバイス、入出力回路等を有したコンピュータハードウェアであり、各種冗長化プロトコルに基づいてフレームの送受信を行う。
【0062】
制御部38は、メモリ部40,フレーム受信部42及びフレーム送信部44から構成されている。メモリ部40は、例えば図示しないハードディスクやROM、RAM等のメモリデバイスであり、予め冗長化プロトコルを実行するためのプログラムを記憶している。また、ネットワーク評価装置1から初期設定情報が送信されるとこれを記憶したり、さらにネットワーク評価装置1から送信された、擬似的な通信障害を発生させるためのデータを格納したりする。制御部38は、メモリ部40で記憶した初期設定情報に含まれる設定情報に基づいて、評価対象となる冗長化プロトコルを起動して、通信経路を構築する処理を実行したり、特定のポートに対して通信障害を発生させる処理を実行したりする。なお、メモリ部40は、ネットワーク機器6,8,10がそれぞれ複数種類の冗長化プロトコルに対応している場合、それぞれの冗長化プロトコルを実行するためのプログラムを記憶している。
【0063】
フレーム受信部42及びフレーム送信部44は、ネットワーク機器6,8,10における上記の初期設定情報に基づいて設定された各ポートのインタフェースである。フレーム受信部42は、試験用フレーム12を該当ポートで受信する。また、ネットワーク評価装置1から送信される初期設定情報及び通信障害を発生させるためのデータを受信する。フレーム送信部44は、該当するポートから試験用フレーム12を転送する。
【0064】
このように、ネットワーク評価装置1にプログラムされている命令部20の処理が実行されると、ネットワーク機器6,8,10及び試験端末2はそれぞれの動作を実行する。したがって、作業者が直接コマンドなどを入力して上記の動作を指示する必要がないため、作業者の経験や習熟度に依存することなく安定した測定を実施することができる。
【0065】
〔性能評価プログラム〕
図5は、ネットワーク評価装置1により実行される性能評価プログラムの処理を示すフローチャートである。ネットワーク機器の性能評価において、通信経路が切り替わるまでに要した時間の測定は、一つの冗長化プロトコルにつき、所定の回数実施され、評価が必要な冗長化プロトコルの数だけ行う。以下、各手順に沿って説明する。
【0066】
ステップS100:実施判定部20には、例えば、評価対象となる冗長化プロトコルの数が予め設定されており、これに基づいて実施判定部20では、評価対象となっている全ての冗長化プロトコルについて測定が終了したか否かを判断する。全ての冗長化プロトコルについて測定が終了した場合(Yes)は、性能評価プログラムは終了する。上記の測定が終了していない場合(No)、ネットワーク評価装置1は次のステップS102を実行する。
【0067】
ステップS102:ネットワーク評価装置1は、ネットワーク機器6,8,10に対して初期設定情報を通知する。ネットワーク評価装置1は、初期設定情報を通知すると次のステップS104を実行する。
【0068】
ステップS104:性能測定部22には、予め一つの冗長化プロトコルについて実施すべき測定の回数が設定されており、ネットワーク評価装置1は、所定回数分の測定を実施したか否かを判断する。所定回数分実施した場合(Yes)、ステップS100に戻って残りの評価対象となる冗長化プロトコルについて順次試験を開始する。また、所定回数分実施していない場合(No)、ネットワーク評価装置1は、通信経路が切り替わった状態にある各ネットワーク機器6,8,10に対して、それぞれのポートの状態を測定開始前の状態に回復させる指示を通知して、ネットワーク4内の通信経路を測定開始前の状態(初期状態)に戻し、次のステップS106を実行する。
【0069】
ステップS106:ネットワーク評価装置1は、試験端末2に対して試験用フレーム12の送信を開始させる指示を通知する。ネットワーク評価装置1は上記の通知を実行すると、次のステップS108を実行する。なお、試験端末2は、この通知を受信することにより試験用フレーム12をネットワーク機器6のポート6bに対して送信する。また、これと合わせて、試験用フレーム12の送信数及び受信数の記録を開始する。
【0070】
ステップS108:ネットワーク評価装置1は、ネットワーク機器6に対して擬似的な通信障害を発生させる処理を所定のタイミングに基づいて実行する。なお、ネットワーク機器6における通信障害発生処理については、図7を参照してさらに詳しく後述する。ネットワーク評価装置1は、障害の発生をネットワーク機器6に対して指示すると、次のステップS110を実行する。
【0071】
ステップS110:ネットワーク評価装置1は、ネットワーク4内の通信経路が切り替わりに要した時間を測定する処理を実行する。なお、この処理については、図8を参照してさらに詳しく後述する。上記の時間が測定されると、ネットワーク評価装置1は次のステップS112を実行する。
【0072】
ステップS112:ネットワーク評価装置1は、測定された切り替わり時間を記憶装置26へ格納する。そして、測定対象となる各冗長化プロトコルの種類ごとに所定回数分の試験が終了するまで、ステップS104からステップS112を実行する。なお、作業者はネットワーク評価装置1を用いて上記の記憶装置26にファイルとして格納された試験結果を閲覧して、試験結果からネットワーク機器6,8,10の性能を評価することができる。
【0073】
〔初期設定〕
図6は、ネットワーク機器6,8,10により実行される初期設定処理の手順を示すフローチャートである。ネットワーク評価装置1からネットワーク機器6,8,10に対して初期設定情報が通知された際に、ネットワーク機器6,8,10は、それぞれ初期設定処理を実行して、ネットワーク4内に評価対象となる冗長化プロトコルに基づく通信経路を構築する。以下、各手順に沿って説明する。
【0074】
ステップS200:ネットワーク機器6,8,10は、ネットワーク評価装置1から初期設定情報を受信して、次のステップS202を実行する。
【0075】
ステップS202:ネットワーク機器6,8,10は、受信した初期設定情報に含まれる設定情報に基づいて、予めメモリ部30に記憶されている評価対象の冗長化プロトコルを実行するためのプログラムを起動する。これにより、ネットワーク機器6,8,10の各ポートに対して試験用フレーム12を転送するための情報が設定される(ステップS204)。
【0076】
ステップS206:ネットワーク機器6,8,10は、上記の設定に基づいて試験用フレーム12の転送準備が完了すると、この処理を終了する。
【0077】
〔障害発生指示手段〕
図7は、ネットワーク機器6により実行される通信障害発生処理の手順を示すフローチャートである。ネットワーク評価装置1から障害発生の指示がネットワーク機器6に通知された際のネットワーク機器6による試験用フレーム12の処理を示す。以下、各手順に沿って説明する。
【0078】
ステップS300:ネットワーク機器6は、ネットワーク評価装置1から擬似的な通信障害発生の指示を受けると、この指示に基づいてポート6cに通信障害を発生させる。また、冗長化プロトコルに基づいて通信経路を切り替える処理を実行する。なお、上記の処理により図2中(B)に示すネットワーク機器6について、試験用フレーム12を転送するポートをポート6cからポート6dへ切り替える。
【0079】
ステップS302:ネットワーク機器6は、ポートが6dに切り替わるまでの間にポート6bで試験用フレーム12を受信すると、試験用フレーム12を破棄する(ステップS404)。
【0080】
ステップS306:ネットワーク機器6は、上記のポート6cからポート6dへの切り替えが完了していない場合(No)、ステップS302とステップS304の処理を繰り返す(No)。通信経路の切り替えが完了した場合(Yes)、ネットワーク機器6は、ポート6bで受信した試験用フレーム12をポート6dからネットワーク機器10のポート10aへ転送し(ステップS308)、この処理を終了する。
【0081】
〔測定手段〕
図8は、ネットワーク評価装置1により実行される通信経路の切り替わり時間を算出する処理を示すフローチャートである。以下、各手順に沿って説明する。
【0082】
ステップS400:ネットワーク評価装置1、試験端末2で試験用フレーム12の記録が終了したか否かを確認する。記録が終了した場合(Yes)、次のステップS402を実行する。試験が終了していない場合(No)、ネットワーク評価装置1はこの手順を繰り返す。なお、この終了を確認する手順については、予めネットワーク評価装置1及び試験端末2に記録する時間を設定しておき、所定時間が経過した際に自動的に試験端末2に記録したフレーム数をアップロードさせた情報から測定してもよい。
【0083】
ステップS402:ネットワーク評価装置1は、試験端末2から送信された試験用フレーム12の総数をメモリ部18に保存する。
【0084】
ステップS404:ネットワーク評価装置1は、試験端末2で受信した試験用フレーム12の総数をメモリ部18に保存する。
【0085】
ステップS406:ネットワーク評価装置1は、性能測定部22で上記の送信された試験用フレーム12及び受信された試験用フレーム12のそれぞれの総数からネットワーク機器6で破棄された試験用フレーム12の総数を算出する。
【0086】
ステップS408:ネットワーク評価装置1は、性能測定部22でさらに、上記の破棄された試験用フレーム12の総数と通信速度とに基づいて、通信経路が切り替わるまでに要する時間を算出する。そして、上記の測定処理へ復帰(リターン)し、算出結果をファイルへ出力する(図5中のステップS112)。
【0087】
図9は、ネットワーク評価装置1でファイルに出力された試験結果を表す図である。例えば、作業者は試験端末2からファイルにアクセスしてその試験結果を試験端末2のディスプレイに表示させて、冗長化プロトコル毎に通信経路が切り替わるまでに要した時間を把握することができる。
【0088】
図9中の左欄に、冗長化プロトコルの種別を示しており、左から2番目のカラムには、各冗長化プロトコルごとの試験回数を示している。ここでは、試験は一つの冗長化プロトコルに3回試験を行い、3回目の一行下欄に平均の欄を設けている。また右欄には、試験用フレーム12の送信時間を示している。ここでは、全ての試験に対して送信時間を60secに設定している。
【0089】
また、図9中の左から3番目、4番目のカラムはそれぞれ、試験端末2が送信した試験用フレーム12の総数及び受信した試験用フレーム12の総数を示している。また、左から6番目のカラムは破棄された試験用フレーム12の総数を示している。ここでは、試験用フレーム12の送信数と受信数との差が、破棄された試験用フレーム12の総数として算出されている。
【0090】
図9中の左から5番目のカラムは、試験用フレーム12の通信速度を示しており、ここでは2000Frame/secに設定されている。そして、左から7番目はカラムに切り替え時間を示している。ここでは、破棄された試験用フレームの総数を通信速度で割った値が、切替時間として算出されている。
【0091】
このように、全ての測定対象となる冗長化プロトコルについて、試験端末2が試験用フレームを送信する時間、及び、通信速度を一定にしており、試験端末2から送信された試験用フレーム12の総数を一定にできる。このため作業者は、受信フレームの数や、破棄されたフレームの数、及び切り替わり時間から冗長化プロトコルごとのネットワーク機器6,8,10の性能を容易に把握して評価することができる。したがって、作業者の経験及び習熟度に依存することなく、常に一定の条件で試験を行うことができるため、試験結果の信頼性を向上させることができる。
【0092】
また、例えば測定対象となっている冗長化プロトコルについて試験を行っている間も、作業者は試験端末2を操作する必要がない。このため、作業者はすでに行われた別の冗長化プロトコルについての試験結果を閲覧して評価できるため、全体的な作業時間を大幅に短縮することができる。
【0093】
本発明は上述した実施形態に制約されることなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々に変更して実施可能である。例えば、試験端末2、及び、ネットワーク機器6,8,10は一方向の通信に限らず双方向に試験用フレーム12を通信してもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 ネットワーク評価装置
2 試験端末
4 ネットワーク
6,8,10 ネットワーク機器
12 試験用フレーム
14 (ネットワーク評価装置の)制御部
28 (試験端末の)制御部
38 (ネットワーク機器の)制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の冗長化プロトコルを用いて中継動作を行う複数のネットワーク機器が相互に接続されることにより、論理的に冗長化された通信経路を形成するネットワークと、
前記ネットワーク内の少なくとも2つのネットワーク機器に接続され、その一方のネットワーク機器に向けて連続的に送信した試験用フレームを前記通信経路を経由して他方のネットワーク機器から受信しつつ、前記試験用フレームの送信数及び受信数をそれぞれ記録する試験端末と、
前記ネットワーク及び前記試験端末に接続された状態で、前記複数のネットワーク機器及び前記試験端末に対して個々の動作を指示するネットワーク評価装置と、
予め前記複数のネットワーク機器による前記冗長化プロトコルを用いた中継動作の実行に必要となる初期設定情報を前記ネットワーク評価装置から前記各ネットワーク機器に対して通知することにより、前記ネットワーク内に前記通信経路を構築させる初期設定手段と、
前記ネットワーク内に前記通信経路が構築された状態で、前記ネットワーク評価装置から前記試験端末に対して前記試験用フレームを連続的に送信する動作の開始を指示することにより、前記試験端末による前記試験用フレームの送信数及び受信数の記録を開始させる開始指示手段と、
前記試験端末により前記試験用フレームの送信数及び受信数の記録が行われる過程で、前記ネットワーク評価装置からいずれかの前記ネットワーク機器に対して擬似的な通信障害の発生を指示することにより、前記複数のネットワーク機器による前記冗長化プロトコルに基づく前記通信経路の切り替え動作を開始させる障害発生指示手段と、
前記試験端末にて記録された前記試験用フレームの送信数及び受信数に基づいて、前記通信経路の切り替えが完了するまでに要した時間を測定する測定手段と
を備えたことを特徴とするネットワーク評価システム。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワーク評価システムにおいて、
前記初期設定手段は、
前記ネットワーク機器が複数種類の前記冗長化プロトコルに対応している場合、その中で評価対象とするべき前記冗長化プロトコルの種類ごとに前記初期設定情報を通知することを特徴とするネットワーク評価システム。
【請求項3】
所定の冗長化プロトコルを用いて中継動作を行う複数のネットワーク機器が相互に接続されることにより、論理的に冗長化された通信経路を形成するネットワークについての評価を行うネットワーク評価装置であって、
前記ネットワーク内の少なくとも2つの前記ネットワーク機器に接続された試験端末に対して動作の指示を行い、この指示に応じて前記試験端末から一方の前記ネットワーク機器に向けて連続的に試験用フレームの送信を開始させるとともに、前記通信経路を経由して他方の前記ネットワーク機器から前記試験端末にて前記試験用フレームを受信させることにより、前記試験端末による前記試験用フレームの送信数及び受信数の記録を開始させる開始指示手段と、
前記試験端末に対する前記開始指示手段からの指示に先立ち、予め前記複数のネットワーク機器による前記冗長化プロトコルを用いた中継動作の実行に必要となる初期設定情報を前記各ネットワーク機器に対して通知することにより、前記ネットワーク内に前記通信経路を構築させる初期設定手段と、
前記試験端末により前記試験用フレームの送信数及び受信数の記録が行われる過程で、いずれかの前記ネットワーク機器に対して擬似的な通信障害の発生を指示する障害発生指示手段と、
前記試験端末にて記録された前記試験用フレームの送信数及び受信数に基づいて前記擬似的な通信障害の発生により前記通信経路の切り替えが完了するまでに要した時間を測定する測定手段と
を備えたことを特徴とするネットワーク評価装置。
【請求項4】
請求項3に記載のネットワーク評価装置において、
前記初期設定手段は、
前記ネットワーク機器が複数種類の前記冗長化プロトコルに対応している場合、その中で評価対象とするべき冗長化プロトコルの種類ごとに前記初期設定情報を通知することを特徴とするネットワーク評価装置。
【請求項5】
所定の冗長化プロトコルを用いて中継動作を行う複数のネットワーク機器が相互に接続されることにより、論理的に冗長化された通信経路を形成するネットワークについての評価を行うネットワーク評価装置により実行される性能評価プログラムであって、
前記ネットワーク評価装置に、
予め複数のネットワーク機器による前記冗長化プロトコルを用いた中継動作の実行に必要となる前記初期設定情報を前記ネットワーク機器に対して通知する手順と、
前記ネットワーク内に前記通信経路が構築された状態で、前記ネットワーク内の少なくとも2つの前記ネットワーク機器に接続された試験端末に対し、その一方の前記ネットワーク機器に向けて試験用フレームを連続的に送信する動作の開始を指示するとともに、前記試験用フレームの送信数と前記通信経路を経由して他方の前記ネットワーク機器から受信した前記試験用フレームの受信数とをそれぞれ前記試験端末にて記録させる指示を行う手順と、
前記試験端末により前記試験用フレームの送信数及び受信数の記録が行われる過程で、いずれかの前記ネットワーク機器に対して擬似的な通信障害の発生を指示する手順と、
前記試験端末にて記録された前記試験用フレームの送信数及び受信数に基づいて前記通信経路の切り替えが完了するまでに要した時間を測定する手順と
を実行させる性能評価プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の性能評価プログラムにおいて、
前記ネットワーク評価装置に、
前記ネットワーク機器が複数種類の前記冗長化プロトコルに対応している場合、その中で評価対象とするべき前記冗長化プロトコルの種類ごとに前記初期設定情報を通知する手順をさらに実行させる性能評価プログラム。
【請求項7】
所定の冗長化プロトコルを用いて中継動作を行う複数の通信機器が相互に接続されることにより、論理的に冗長化された通信経路を形成するネットワークについての評価を行うネットワーク評価方法であって、
前記ネットワーク内の少なくとも2つの前記ネットワーク機器に接続され、その一方の前記ネットワーク機器に向けて連続的に送信した試験用フレームを前記通信経路を経由して他方の前記ネットワーク機器から受信しつつ、前記試験用フレームの送信数及び受信数をそれぞれ記録する試験端末を設置する工程と、
前記ネットワーク及び前記試験端末のそれぞれにネットワーク評価装置を接続し、このネットワーク評価装置により前記複数のネットワーク機器による前記冗長化プロトコルを用いた中継動作の実行に必要となる初期設定情報を前記各ネットワーク機器に対して通知することにより、前記ネットワーク内に前記通信経路を構築させる初期設定工程と、
前記ネットワーク内に前記通信経路が構築された状態で、前記ネットワーク評価装置から前記試験端末に対して前記試験用フレームを連続的に送信する動作の開始を指示することにより、前記試験端末による前記試験用フレームの送信数及び受信数の記録を開始させる開始指示工程と、
試験端末により前記試験用フレームの送信数及び受信数の記録が行われる過程で、前記ネットワーク評価装置からいずれかの前記ネットワーク機器に対して擬似的な通信障害の発生を指示することにより、前記複数のネットワーク機器による前記冗長化プロトコルに基づく前記通信経路の切り替え動作を開始させる障害発生指示工程と、
前記試験端末にて記録された前記試験用フレームの送信数及び受信数に基づいて前記通信経路の切り替えが完了するまでに要した時間を測定する測定工程と
を備えたことを特徴とするネットワーク評価方法。
【請求項8】
請求項7に記載のネットワーク評価方法において、
前記初期設定工程は、
前記ネットワーク機器が複数種類の前記冗長化プロトコルに対応している場合、その中で評価対象とするべき前記冗長化プロトコルの種類ごとに前記初期設定情報を通知することを特徴とするネットワーク評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−199706(P2011−199706A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65633(P2010−65633)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】