説明

ネット係止部材

【課題】小動物侵入防止用のネットをフェンス面に添設した状態で固定手段を用いて固定する際に、フェンスの片側からの一人による作業によって容易に固定できる。
【解決手段】連通した両開口部の周縁部51a、61aに係止される略U字状の係止片2と、係止片の一端から延び且つ長手方向に沿って複数の高摩擦抵抗部6を備えた延長片4と、延長片をその端部から挿入したときに該高摩擦抵抗部と係合して逆戻りを禁止する逆止構造のストッパ穴部11を有したストッパ片10と、を備え、係止片は各開口部内に差込むことにより反対面側に通過可能であり、且つ引き戻した際に各開口部周縁に係止可能な折り返し部2aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所、変電所等の電力施設において、設置された電気工作物に種々の事故、故障をもたらす原因となる鼠、蛇等の小動物が、これらの施設に侵入することを阻止するための小動物侵入防止ネットをフェンスに添設固定する作業を効率化することができるネット係止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
鼠、蛇、その他の小動物が発電所、変電所等の電力施設に侵入してそこに設置された電気工作物に接触すると、短絡事故、その他の種々の事故や故障、破損の原因となる。
電力施設の敷地の周縁には、部外者の侵入を阻止するためのフェンスを設けるのが一般であるが、フェンスは目の粗い金網、或いは柵であることが多いため、小動物の侵入を阻止する手段としては不十分である。
このため、従来から電力施設の構内に設けたフェンスの面に、小動物の侵入を阻止するための目の細かいネットを添設固定する対策が採られている。
小動物侵入防止用のネットをフェンスの一面に添設した状態で固定する手段として、ナイロン製の結束バンド(インシュロック)が知られている(特許文献1、2、3)。結束バンドは、ナイロン等の可撓性を有した合成樹脂材料を細幅帯状に形成した細長いストラップと、ストラップの基端部に一体化されてストラップを先端から挿通させる挿通穴を有したヘッドと、挿通穴から挿通されたストラップの逆戻りを阻止するために挿通穴内に形成されたストッパと、を備えている。
【0003】
フェンス面に添設したネットをこの結束バンドを用いて固定する作業においては、フェンスの両側に夫々一人ずつ作業員を配しておき、一方の作業員がフェンスの一面側からネットの開口部内にストラップを先端から差し込んでフェンスの反対側へ突出させ、他方の作業員が反対側へ突出したストラップを折り返して隣接する他の開口部内へ差し込んでフェンスの一面側へ先端部を突出させる。一方の作業員は突出してきたストラップの先端部をフェンスの一面側に残っているヘッドの挿通穴に差し込んで絞り込むことによりロックを完了する。
しかし、結束バンドを用いたネットの取付け作業には2人以上の人員を要しているため、従来からフェンスの片側から一人で取付け作業が行える結束手段の開発が望まれていた。
仮に、結束バンドを用いたネットの取付け作業を一人で行うとすれば、フェンスの片側からネットの開口部にストラップ先端を差し込んでフェンスの反対側へ突出させる作業を行ってから、同じ作業員がネットの反対側へ移動して突出したストラップを折り返して片面側へ先端部を突出させ、その後フェンスの片側に戻ってストラップの先端部をヘッドの挿通穴に差し込んで絞り込むことによりロックを完了する3つの作業を順次実施する必要があり、二回の移動を伴う多大な労力と時間を要することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−324857公報
【特許文献2】特開2005−312281公報
【特許文献3】特開2006−160362公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、小動物侵入防止用のネットをフェンス面に添設した状態で固定する手段としてナイロン製の結束バンドが用いられているが、フェンスの両側からの二人による作業が必要となるため、効率が悪かった。また、一人でネットの固定作業を行う場合には、フェンスの両側に交互に二回移動しながら3段階の作業を行う必要があり、労力と時間を要する効率の悪い作業となっていた。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、小動物侵入防止用のネットをフェンス面に添設した状態で固定手段を用いて固定する際に、フェンスの片側からの一人による作業によって容易に固定することができるネット係止部材を提供することを目的としている。
また、一人の作業員がフェンスの一方で第1段階の作業を行ってから、フェンスの他方に移動して第2段階の固定作業を行う一回の移動だけで取付けを完了することができる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に係るネット係止部材は、小動物が通過可能な大開口部を備えたフェンスの一面に該大開口部からの小動物の進入を阻止する小開口部を備えたネットを添設した状態で、連通する前記大開口部と前記小開口部内に差し込まれた後で前記各開口部周縁を係止するネット係止部材であって、前記連通した両開口部の周縁部に係止される略U字状の係止片と、該係止片の一端から延び且つ長手方向に沿って複数の高摩擦抵抗部を備えた延長片と、前記延長片をその端部から挿入したときに該高摩擦抵抗部と係合して逆戻りを禁止する逆止構造のストッパ穴部を有したストッパ片と、を備え、前記係止片は、前記ネットを添設した前記フェンスの一面側から連通した前記各開口部内に差込むことにより反対面側に通過可能であり、且つ引き戻した際に前記各開口部周縁に係止可能な折り返し部を有し、前記延長片は、前記係止片の一端から延び且つ前記折り返し部を前記各開口部周縁に係止した状態で前記フェンスの一面側に突出するように構成されており、前記ストッパ片は、該フェンスの一面側に突出した前記延長片に前記ストッパ穴部を挿通した際に前記ネットの外面に当接して係止されることにより、前記係止片及び前記延長片が前記フェンス及びネットから脱落することを阻止する構成を備えていることを特徴とする。
フェンスにネットを添設させた状態でフェンスの片側からの作業によって、フェンスの大開口部とネットの小開口部内に係止片を差し込んで両開口部の周縁部に係止させることが可能なため、片側から突出した延長片に対してストッパ片を固定すれば、大開口部の周縁部に対して小開口部の周縁部を結束することができ、この作業をフェンスの他方側に移動することなく一人で実施することができる。
【0007】
請求項2の発明は、前記係止片の折り返し部は、拡開変形、又は/及び、圧縮変形可能に構成されていることを特徴とする。
折り返し部を弾性変形可能にすることにより、係止片の先端を両開口部内に差し込んでから各周縁部に係止する作業が容易となる。
請求項3の発明に係るネット係止部材は、可撓性を有した合成樹脂製で細幅帯状のストラップと、該ストラップの一面にその長手方向に沿って形成された高摩擦抵抗部と、該ストラップの基端部に一体化されてストラップを先端から挿通させる挿通穴を有したヘッドと、該挿通穴に挿通されたストラップの逆戻りを阻止するためのストッパと、を備え、前記ストラップの先端寄りの部位には折り返し部を備え、該折り返し部は他のストラップ部分に対して略直線状に伸長したり、原形に復帰可能であることを特徴とする。
所謂結束バンド(インシュロック)を構成するストラップの一部を折り返し部として構成することにより、フェンスの片側からの一人による作業によって両開口部の各周縁部に対して折り返し部を引っ掛けて作業員に向けて引き出すことができる。このため、ストラップ先端部をストッパの挿通穴内に差し込んで締め付けることが容易となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小動物侵入防止用のネットを、金網、或いは格子状のフェンスの一面、又は両面に添設した状態で固定手段を用いて固定する際に、フェンスの片側からの一人による作業によって容易に固定することができる。
また、一人の作業員がフェンスの一方で第1段階の作業を行ってから、フェンスの他方に移動して第2段階の固定作業を行う一回の移動だけで取付けを完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)(b)及び(c)は本発明の一実施形態に係るネット係止部材の全体構成を示す説明図、折り返し部の変形例を示す要部構成図である。
【図2】(a)及び(b)はネット係止部材をフェンス及びネットに組付ける手順を示す説明図である。
【図3】延長片の被係止歯部とストッパ部材との係合状態を示す断面図である。
【図4】(a)及び(b)はネット係止部材を用いてフェンスの一部にネットを添設固定した状態を示す説明図、及び側面図である。
【図5】本発明のネット係止部材の他の構成例を示す説明図である。
【図6】(a)乃至(d)は本発明の変形実施形態に係るネット係止部材の全体構成を示す斜視図、取付け手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)(b)及び(c)は本発明の一実施形態に係るネット係止部材の全体構成を示す説明図、折り返し部の変形例を示す要部構成図であり、図2(a)及び(b)はネット係止部材をフェンス及びネットに組付ける手順を示す説明図であり、図3は延長片の被係止歯部とストッパ部材との係合状態を示す断面図であり、図4(a)及び(b)はネット係止部材を用いてフェンスの一部にネットを添設固定した状態を示す説明図、及び側面図である。
本発明に係るネット係止部材1は、鼠、蛇等の小動物が通過可能な大開口部51を備えたフェンス50の一面(又は、両面)に、大開口部51からの小動物の進入を阻止し得る程度に小さな開口面積を有した小開口部61を備えたネット60を添設した状態で、連通する大開口部51と小開口部61内に一端を差し込まれた後で大開口部周縁(線材部分)及び小開口部周縁に係止、固定(結束)されることによって、ネット60をフェンス50に固定する手段である。
なお、フェンスは金網であってもよいし、縦方向、横方向、或いは斜めへ延びる棒材から成る格子であっても良い。
【0011】
図4では図示説明の都合上から、フェンスを構成する金網の一部にネットを固定した状態を示しているが、実際の設置にあたっては金網全面にネットを固定する。
図1(a)に係るネット係止部材1は、金属、或いは硬質の樹脂からなる線材であり、連通した大開口部51の周縁部51aに係止される略U字状の係止片2と、係止片2の一端から延び且つ長手方向に沿って複数の鋸歯状の凹凸から成る被係止歯部(高摩擦抵抗部)6を備えた延長片4と、延長片4をその先端部から挿入することによって高摩擦抵抗部6と係合して逆戻りを禁止する逆止構造のストッパ穴部11を有したストッパ片10と、を備える。なお、係止片2と延長片4は同一材料から一体形成された略J字体であり、本体Aを構成している。
なお、周縁部51a、61aとは、個々の開口部51、61の外周縁を形成する線材からなる枠状(環状)の部位を指す。フェンスが格子である場合には周縁部とは格子を構成する個々の棒材を指す。
【0012】
係止片2は、ネット60を添設したフェンス50の一面側にいる作業員が、連通した各開口部51、61内に差込むことにより反対面側に通過(突出)可能であり、且つ引き戻した際に両開口部の周縁51a、61aに同時に係止可能な折り返し部2aを有している。折り返し部2aは、剛性を有していても良いし、若干の範囲で弾性的に拡開方向、又は/及び、圧縮方向へ変形可能となるように構成してもよい。折り返し部2aの形状は、図示のように略U字状であっても良いし、V字状、コ字状であってもよい。或いは、図1(b)に示すように折り返し部2aの先端部を若干外向きに突出させることによって、ネットの小開口部内に入りやすくしてもよい。或いは、(c)に示すように折り返し部2aが外側に弾性的に拡開可能となるように構成してもよい。
延長片4は、折り返し部2aを両開口部周縁51a、61aに係止した状態でフェンス50の一面側に突出するように構成されている。
【0013】
ストッパ片10は、フェンス50の一面側に突出した延長片4にストッパ穴部11を挿通した際に小開口部(ネット)の外面側に当接して係止されることにより、係止片2及び延長片4がフェンス及びネットから脱落することを阻止し得る構成を備えている。ストッパ穴部11内には、延長片に設けた被係止歯部6と係合する逆止爪11a(図3)が突設されており、延長片4に対してストッパ片10を矢印で示す挿入方向に移動させる場合には逆止爪11aが被係止歯部6を乗り越えて進行できる一方で、図示のように逆止爪11aが被係止歯部間の溝部内に落ち込んだ際には、ストッパ片10はその位置から逆戻りできなくなる。
ストッパ片10は、ネットの小開口部61よりも大径となるように構成されているため、延長片に対してストッパ片10が固定されることにより、フェンスからネットが脱落することを防止できる。
このように係止片2を大開口部周縁51aに係止させた状態で、延長片4にストッパ片を挿通するだけで、ネット係止部材1をフェンス及びネットに対して固定することができ、しかもネットがフェンスから脱落することを防止できる。
【0014】
次に、図2に基づいてネット係止部材1をフェンス及びネットに対して固定する手順について説明する。
まず、図2(a)に示すようにフェンス50の一面にネット60を添設した状態で、作業員はネット側に位置し、手で把持した本体Aをネット面と略並行となるように添設しつつ、ネットの小開口部61内に折り返し部2aの先端部を差し込む。この際に、ネットを押圧して弾性変形させつつ折り返し部の先端部を差し込むことにより該先端部を反対側に抜けさせることができる。折り返し部の先端を小開口部の反対側に突出させる際に、フェンスの大開口部51の周縁部51aに折り返し部2aを係止する((b))。なお、図1(c)にて説明したように、折り返し部2aが弾性的に拡開できるように構成しておくことにより、この作業はよりスムーズとなる。
続いて、図2(b)に示すように延長片4の先端からストッパ片10のストッパ穴部11を挿通し、適当な位置でストッパ片10を停止させることにより、ストッパ片はその位置で逆戻りできなくなるため、本体Aはフェンスとネットに固定される。ストッパ片から突出した余剰の延長片部分は(b)中に破線で示すように工具により切断すればよい。
上記の作業は、一人の作業員がフェンスの片側に位置して実施することができ、反対側へ移動する必要はない。
なお、作業者がネット側ではなく、フェンス側に位置しても同様な手順で取付け作業を一人で実施することができる。
【0015】
次に、本発明のネット係止部材1を用いたネットの固定作業は、一人の作業員がフェンスの片側から本体Aの延長片4をフェンスとネットの両開口部内に差し込みつつ、折り返し部2aを両開口部の周縁部51a、61aに係止させた後で、フェンスの反対側へ移動して延長部にストッパ片10を挿通して固定することによっても実施できる。この場合には、フェンスの反対側へ一度移動するだけで作業が完了するので、従来の結束バンドのようにフェンスの片側から反対側へ行き、更に片側へ戻る、という二回の移動が不要となり、労力を低減することができる。
なお、図5に示すように係止片2の幅Wをネットの小開口部61の直径Dよりも小さく設定して係止片をその頂部から小開口部61内に差込み可能に構成しておけば、フェンスの片側から小開口部内に係止片を差し込む作業が容易となる。
【0016】
或いは、係止片2をその幅Wを収縮させる方向へ弾性変形可能となるように構成しておくことにより、小開口部61内に係止片の頂部から圧入し、小開口部を通過した後に原形に復帰させることが可能となる。この際、係止片2の断面形状を正三角形、或いは二等辺三角形としておくことにより、三角形の底辺側に凹状に変形する場合(係止片の圧縮時)には変形し易く、頂点側へ凹状に変形する場合(係止片の拡開時)には変形しにくくすることができる。係止片を拡開方向へ変形しにくくすることにより、係止片を大開口部の周縁部51aに係止した状態で折り返し部を拡開させる方向への外力が加わったとしても係止片が周縁部51aから脱落することを防止できる。
このネット係止部材を用いたフェンスとネットとの締結作業を複数箇所に実施することにより、フェンスに対してネットを密着して強固に固定することができ、小動物の進入を阻止することが可能となる。
【0017】
以上のように本実施形態では、フェンスにネットを添設させた状態でフェンスの片側からの作業によって、フェンスの大開口部とネットの小開口部内に係止片を差し込んで両開口部の周縁部に係止させることが可能なため、片側から突出した延長片に対してストッパ片を固定すれば、大開口部の周縁部に対して小開口部の周縁部を結束することができ、この作業をフェンスの他方側に移動することなく一人で実施することができる。
また、折り返し部を弾性変形可能にすることにより、係止片の先端を両開口部内に差し込んでから各周縁部に係止する作業が容易となる。
金属、或いは樹脂から成る一体構造の略J字型の部材本体と、ストッパ片とからなるシンプルな構造であるため、コストを低減でき、取扱性も良好である。
或いは、一人の作業員がフェンスの一方で第1段階の作業を行ってから、フェンスの他方に移動して第2段階の固定作業を行う一回の移動だけで取付けを完了することができる。
【0018】
次に、図6(a)乃至(d)は本発明の変形実施形態に係るネット係止部材の全体構成を示す斜視図、取付け手順を示す説明図である。
この実施形態に係るネット係止部材30は、樹脂製の結束バンド(インシュロック)のように弾性変形が容易なナイロン等の樹脂から構成することにより、係止片をその先端部、或いは頂部からネットの小開口部内に差込みし易くしている。
このネット係止部材30は、ナイロン等の可撓性を有した合成樹脂材料を細幅帯状に形成した細長いストラップ31と、ストラップの31一面にその長手方向に沿って形成された複数の被係止歯部(高摩擦抵抗部)32と、ストラップ31の基端部に一体化されてストラップを先端から挿通させる挿通穴35aを有したヘッド35と、挿通穴35aに先端から挿通されたストラップの逆戻りを阻止するために挿通穴内に形成された図示しないストッパ(逆止係止部)35bと、を備えている。
このネット係止部材30は、ストラップ31の先端寄りの部位にU字状(或いは、V字状、コ字状等)に折り返して変形させた折り返し部33を設けることにより、外力が加わらない場合の全体形状をJ字状とした構成が特徴的である。この折り返し部33は図中に破線で示すように伸長したり、原形に復帰自在であり、折り返し部には被係止歯部を設けず、伸長させた状態でヘッドの挿通穴35a内に挿通容易な構成とする。
【0019】
折り返し部33が屈伸自在であることにより、図6(b)に実線で示したように折り返し部を伸長させた状態でその先端部をネット60の一面側から小開口部61内に差し込んでフェンス及びネットの反対側に突出(移動)させることが可能であり、折り返し部全体が反対側に突出した状態では原形(U字状)に復帰する。このため、作業者がネットの片側に残っているストラップ部分を把持して手前に引くことにより(b)中に破線で示したように、折り返し部33の先端部をネットの反対側から隣接する他の小開口部61内に差し込んで片側に突出させることができる。この際、折り返し部33が大開口部の周縁部51aと小開口部の周縁部61aを同時に係止することができる。
なお、小開口部61内に折り返し部33をそのまま差込み可能な場合には、折り返し部を伸長させずに、その頂部から小開口部内に差し込んで反対側へ突出させてもよい。
このようにフェンスの片側からの一人による作業によって折り返し部33を片側に引き戻した後は、ストラップの先端部(折り返し部の先端部)をヘッドの挿通穴35a内に差し込み、被係止歯部(高摩擦抵抗部)33が形成されたストラップ部分が挿通穴内に達するまで挿通する((c))。折り返し部は伸縮変形自在であり、しかも折り返し部には被係止歯部が形成されていないため、この挿通作業はスムーズに行うことができる。ストラップがこれ以上挿入できない位置まで挿通穴内に差し込んで手を離せば、ネット係止部材30による周縁部51a、61aの結束が完了する((d))。
【0020】
このネット係止部材を用いたフェンスとネットとの締結作業を複数箇所に実施することにより、フェンスに対してネットを密着して強固に固定することができ、小動物の進入を阻止することが可能となる。
このように本実施形態によれば、所謂結束バンド(インシュロック)を構成するストラップの一部を折り返し部として構成することにより、フェンスの片側からの一人による作業によって両開口部の各周縁部に対して折り返し部を引っ掛けて作業員に向けて引き出すことができる。このため、ストラップ先端部をストッパの挿通穴内に差し込んで締め付けることが容易となる。
【符号の説明】
【0021】
1…ネット係止部材、2…係止片、2a…折り返し部、4…延長片、6…高摩擦抵抗部(被係止歯部)、10…ストッパ片、11…ストッパ穴部、11a…逆止爪、30…ネット係止部材、31…ストラップ、35…ヘッド、35a…挿通穴、50…フェンス、51…大開口部、51a…周縁部、60…ネット、61…小開口部、61a…周縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小動物が通過可能な大開口部を備えたフェンスの一面に該大開口部からの小動物の進入を阻止する小開口部を備えたネットを添設した状態で、連通する前記大開口部と前記小開口部内に差し込まれた後で前記各開口部周縁を係止するネット係止部材であって、
前記連通した両開口部の周縁部に係止される略U字状の係止片と、該係止片の一端から延び且つ長手方向に沿って複数の高摩擦抵抗部を備えた延長片と、前記延長片をその端部から挿入したときに該高摩擦抵抗部と係合して逆戻りを禁止する逆止構造のストッパ穴部を有したストッパ片と、を備え、
前記係止片は、前記ネットを添設した前記フェンスの一面側から連通した前記各開口部内に差込むことにより反対面側に通過可能であり、且つ引き戻した際に前記各開口部周縁に係止可能な折り返し部を有し、
前記延長片は、前記係止片の一端から延び且つ前記折り返し部を前記各開口部周縁に係止した状態で前記フェンスの一面側に突出するように構成されており、
前記ストッパ片は、該フェンスの一面側に突出した前記延長片に前記ストッパ穴部を挿通した際に前記ネットの外面に当接して係止されることにより、前記係止片及び前記延長片が前記フェンス及びネットから脱落することを阻止する構成を備えていることを特徴とするネット係止部材。
【請求項2】
前記係止片の折り返し部は、拡開変形、又は/及び、圧縮変形可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のネット係止部材。
【請求項3】
可撓性を有した合成樹脂製で細幅帯状のストラップと、該ストラップの一面にその長手方向に沿って形成された高摩擦抵抗部と、該ストラップの基端部に一体化されてストラップを先端から挿通させる挿通穴を有したヘッドと、該挿通穴に挿通されたストラップの逆戻りを阻止するためのストッパと、を備え、
前記ストラップの先端寄りの部位には折り返し部を備え、該折り返し部は他のストラップ部分に対して略直線状に伸長したり、原形に復帰可能であることを特徴とするネット係止部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−149414(P2012−149414A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7740(P2011−7740)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】