説明

ノイズシミュレータ

【課題】規格外ノイズ波形の発生を容易にして、このノイズ波形によるシミュレーションを容易にする。
【解決手段】他装置に組み込まれた被試験装置20を耐ノイズ試験するためのノイズシミュレータ40は、被試験装置のノイズが印加される部位に発生するノイズ波形をプローブ41で検出し、この検出ノイズ波形をモニタ43に表示し、ノイズ発生部45は検出されたノイズ波形に対して電圧および周期を変更、または電圧と周期の一方を変更したノイズ波形を再生して被試験装置のノイズ印加部位に印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報通信装置等の被試験装置を耐ノイズ試験するためのノイズシミュレータに係り、特に他装置に組み込まれた被試験装置に対し、規格外ノイズ(試験規格などで規定されるノイズとは電圧レベルや周期が異なるノイズ)による耐ノイズ試験にも対応できるノイズシミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信装置のひとつである遠方監視制御装置では、耐ノイズ仕様(振動性サージ、方形波インパルス性ノイズなど)を有することから、耐ノイズ仕様に対する試験を実施している。例えば、振動性サージ試験では、下記仕様のノイズを印加して、装置状態、動作に異常がないかを確認する。
【0003】
(振動性サージ試験のノイズ印加例)
・印加電圧:2.5kV
・印加部位:電源入力P−大地間、電源入力N一大地間、電源入力P―電源入力N間
・試験方法:10秒間 3回印加
上記ノイズ試験を実施する場合、ノイズ仕様に準拠したノイズ発生器を用意し、これを用いて被試験装置に印加することで、ノイズ耐量試験を行う。
【0004】
図3はノイズシミュレータによる被試験装置の耐ノイズ試験方式を示す。ノイズシミュレータ10は、そのノイズ出力端を、遠方監視制御装置などの被試験装置20の電源ラインや大地間、信号線などのノイズが印加される部位に接続する。また、ノイズシュミレータ10と被試験装置20はその筐体を共に接地する。この状態で、ノイズシュミレータ10の電圧設定器11と時間設定器12の操作で規定の印加電圧および印加時間が設定され、スタートボタン13の押下で規定の印加電圧および印加時間を持つノイズを被試験装置20のノイズが印加される部位に印加する。
【0005】
ノイズシミュレータ10としては、特許文献1ではあるモデルに従った波形と振幅のノイズを発生する装置を提案している。また、特許文献2では任意の波形をもつノイズ信号を発生する装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−240626号公報
【特許文献2】特開2008−96391
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のノイズシュミレータは、規定されたノイズ仕様に対する耐ノイズ試験には何ら問題なくできる。
【0008】
しかし、情報通信装置は、規定されたノイズを印加した試験でノイズ耐量が確認されたとしても、装置が組み込まれた環境などにより、規格外ノイズが印加されることがある。また、その規格外ノイズが定量的にどの程度のノイズレベルかを測定することはできても、従来のノイズシュミレータでは同等のノイズ波形を模擬して印加できるものはなかった。
【0009】
本発明の目的は、規格外ノイズ波形の発生を容易にして、このノイズ波形によるシミュレーションを容易にしたノイズシミュレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記の課題を解決するため、被試験装置のノイズが印加される部位に発生するノイズ波形をプローブで検出し、この検出ノイズ波形をモニタに表示し、このノイズ波形に対して電圧および周期を変更、または電圧と周期の一方を変更したノイズ波形を再生して被試験装置のノイズ印加部位に印加できるようにしたもので、以下の構成を特徴とする。
【0011】
(1)他装置に組み込まれた被試験装置を耐ノイズ試験するためのノイズシミュレータであって、
被試験装置のノイズが印加される部位に発生するノイズ波形を検出するプローブと、
前記プローブで検出したノイズ波形を表示およびノイズ波形の電圧と基本周期を表示するモニタと、
前記ノイズ波形に対して電圧および周期を変更、または電圧と周期の一方を変更したノイズ波形を再生して被試験装置のノイズが印加される部位に印加するノイズ発生部と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
(2)被試験装置からの前記ノイズ波形の取得は、前記プローブで検出したノイズ波形を2値化と高速サンプリングでノイズデータとしてメモリに一時保存する構成とし、
被試験装置への前記ノイズ波形の印加は、前記ノイズデータを読み出してその電圧倍率を変更し、周期倍率を変更し、D/A変換でアナログノイズ波形を再生し、このアナログノイズ波形を増幅してノイズ出力とする構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり、本発明によれば、被試験装置のノイズが印加される部位に発生するノイズ波形をプローブで検出し、この検出ノイズ波形をモニタに表示し、ノイズ波形に対して電圧および周期を変更、または電圧と周期の一方を変更したノイズ波形を再生して被試験装置のノイズ印加部位に印加できるようにしたため、規格外ノイズ波形の発生を容易にして、このノイズ波形によるシミュレーションを容易にする。
【0014】
特に、他装置に組み込まれた被試験装置に印加される規格外ノイズ波形の発生およびシミュレーションが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態の被試験装置の耐ノイズ試験の方式を示す図。
【図2】測定波形モニタ43とノイズ発生部45のブロック構成例。
【図3】被試験装置の耐ノイズ試験の従来方式を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、ノイズシミュレータによる被試験装置の耐ノイズ試験方式を示す。情報通信装置となる被試験装置20は、コンピュータ構成の組込み対象装置100の1つのユニットとして他ユニット30と電源や信号線等で接続されて組み込まれる。
【0017】
ノイズシミュレータ40は、規格外ノイズ波形測定手段として、波形測定プローブ41を設ける。この波形測定プローブ41は、装置100内に組み込まれた被試験装置20に対し、他ユニット30からノイズが印加される部位のノイズ波形を検出する。
【0018】
波形測定プローブ41によるノイズ検出は、測定開始釦42の操作で実行し、この検出波形はサンプリングデータとしてRAM等に格納する。
【0019】
ノイズシミュレータ40は、測定波形モニタ43を設ける。この測定波形モニタ43は、プローブ41で検出したサンプリングデータ構成のノイズ波形を取り出し、このノイズ波形のアナログ表示とノイズ電圧(ピーク値)および基本周期(時間)をディジタル表示で行なう。このようなモニタ動作は測定結果釦44の操作で実行する。
【0020】
ノイズシミュレータ40には、ノイズ発生部45が設けられている。このノイズ発生部45は、モニタ43でモニタリングしたノイズ波形を取り込み、このノイズ波形と同じ波形、電圧、周期で再生する。また、ノイズ発生部45は、モニタリングしたノイズ波形と同じ波形で、その電圧を設定倍率で増幅し、さらにはノイズ波形の基本周期を設定倍率で拡大・縮小して再生する。このようなノイズ発生は設定倍率の操作と耐ノイズ試験開始のスタート釦46の操作で実行する。
【0021】
ノイズシミュレータ40のノイズ出力は、耐ノイズ試験に際してケーブル47によって被試験装置20のノイズが印加される部位に印加する。
【0022】
波形測定モニタ43の画面構成を図1中にモニタ画面43Aとして示す。モニタ画面43Aの測定データ表示部には、測定したノイズ波形を表示する測定波形表示領域DAと、測定データの電圧値を数字表示する電圧値表示領域DBと、測定データの基本周期を数字表示する周期表示領域DCをもつ。また、設定データ表示部には、発生するノイズ波形の電圧値表示領域DDと、基本周期表示領域DEと、それらの倍率設定値の操作ボタンと表示領域DF、DGをもつ。
【0023】
以上の構成から成るシミュレータによる耐ノイズ試験の手順を説明する。まず対象となるノイズ印加部のノイズ量を測定する。これには、ノイズ印加対象となる部位に波形測定プローブ41を取り付け、測定開始釦42を押下して他ユニット30が発生しているノイズを測定する。
【0024】
この測定には、高速サンプリングにより、ノイズ電圧値(ピーク値)及びノイズ波形を取り込む。測定したノイズはノイズシミュレータに波形データとして記録され、測定結果釦44を押下することにより測定波形モニタ43に表示してその確認を可能とする。
【0025】
上記の波形データを確認後、スタート釦46を押下することにより、記録した波形データと同等のノイズを発生し、これを被試験装置20へ印加し、耐ノイズ試験を行なう。また、限界値試験用として、手動にて倍率設定することで、ノイズ波形の電圧レベル・周期を変更し、この条件でノイズを印加して耐ノイズ試験を行なう。
【0026】
図2は、測定波形モニタ43とノイズ発生部45のブロック構成例を示し、方形波インパルス性ノイズをプログラマブルコントローラで測定および再生する場合である。入力部のアナログ入力回路P1は波形測定プローブ41で得るノイズ波形を広帯域増幅して取り込み、A/D変換器P2はノイズ波形をオン・オフの方形波インパルス信号に変換し、サンプリング処理部P3は高速サンプリングして方形波インパルス性ノイズデータに変換する。
【0027】
波形記録処理部P4は、方形波インパルス性ノイズデータをノイズ波形データとして内部メモリ等に記録する。このノイズ波形データは測定波形モニタ43に転送されてノイズ波形としてモニタされる。波形再生処理部P5は、ノイズ波形データを読み込み、倍率設定部P6によるノイズ波形の電圧倍率設定値に応じてノイズ波形データを増幅する。
【0028】
サンプリング処理部P7は、方形波インパルス性ノイズデータを設定される周期でサンプリングし、このサンプリング周期を倍率設定部P8で設定する倍率を持たせることで、方形波インパルス性ノイズの基本周期を変更する。
【0029】
出力部のD/A変換器P9は、サンプリング処理部P7の出力になる電圧および周期を加工したサンプリングデータをアナログ波形として再生する。このアナログ波形はアナログ出力部P10で電圧増幅して方形波インパルス性ノイズとして出力する。この出力は図1中のケーブル47を通して被試験装置20に印加される。
【0030】
なお、実施形態では、方形波インパルス性ノイズのシミュレータを示すが、電源に印加する振動性サージのノイズシミュレータに変更することができる。
【0031】
また、実施形態では、ノイズ発生部45は波形測定プローブで41で測定した規格外ノイズ波形と同じ波形または電圧を増幅、周期を拡大・縮小した波形を発生する場合を示すが、この機能に加えて、試験規格などで規定されるノイズ波形を使った耐ノイズ試験にも対応できるノイズシミュレータとすることができる。この場合、ノイズ発生部45に試験規格などで規定されるノイズ仕様の波形を発生できるノイズ発生器を設け、このノイズ発生器の出力をプローブ41で検出するノイズ波形に代えて出力する構成で済む。
【符号の説明】
【0032】
10 ノイズシュミレータ
20 被試験装置
11 電圧設定器
12 時間設定器
13 スタートボタン
40 ノイズシュミレータ
41 波形測定プローブ
42 測定開始釦
43 測定波形モニタ
44 測定結果釦
45 ノイズ発生部
46 測定スタート釦
47 ノイズ印加用ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他装置に組み込まれた被試験装置を耐ノイズ試験するためのノイズシミュレータであって、
被試験装置のノイズが印加される部位に発生するノイズ波形を検出するプローブと、
前記プローブで検出したノイズ波形を表示およびノイズ波形の電圧と基本周期を表示するモニタと、
前記ノイズ波形に対して電圧および周期を変更、または電圧と周期の一方を変更したノイズ波形を再生して被試験装置のノイズが印加される部位に印加するノイズ発生部と、
を備えたことを特徴とするノイズシミュレータ。
【請求項2】
被試験装置からの前記ノイズ波形の取得は、前記プローブで検出したノイズ波形を2値化と高速サンプリングでノイズデータとしてメモリに一時保存する構成とし、
被試験装置への前記ノイズ波形の印加は、前記ノイズデータを読み出してその電圧倍率を変更し、周期倍率を変更し、D/A変換でアナログノイズ波形を再生し、このアナログノイズ波形を増幅してノイズ出力とする構成としたことを特徴とする請求項1に記載のノイズシミュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−261721(P2010−261721A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110253(P2009−110253)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】