説明

ノイズ出力装置、ノイズ出力方法及びノイズ出力プログラム

【課題】 所望のコヒーレンス特性の値を得る「ノイズ出力装置、ノイズ出力方法及びノイズ出力プログラム」を提供することを目的とする。
【解決手段】 コヒーレンス特性の値が1となるモノラルノイズを出力するモノラルノイズ出力部101と、コヒーレンス特性の値が0となる無相関ノイズを出力する無相関ノイズ出力部102と、モノラルノイズ及び無相関ノイズの所定数を所定の順番で組み合わせて混合するノイズ混合部103aとを有することを特徴とする。さらに、当該混合ノイズに対し、所定の周波数帯の混合ノイズを通過させるハイパスフィルタ104と、独立性を保持させるように通過後の混合ノイズの前段数十秒を切り出して後段に付与する独立性保持部105と、所定の周波数帯のモノラルノイズを通過させるローパスフィルタ106とを備え、ノイズ混合部103bが通過後の混合ノイズと通過後のモノラルノイズとを混合することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ出力装置に関し、特に、音響特性を調整する際に使用するノイズ出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステレオ音場における音響特性の調整は、例えば、ノイズ出力装置によって発生させたL(Left)チャンネルとR(Right)チャンネルのピンクノイズ等をスピーカから出力し、当該ピンクノイズをマイクで集音し、その伝達関数を測定した測定結果に基づいて行われることが知られている。
【0003】
特許文献1では、ノイズ出力装置となるテスト信号発生源を使用してホワイトノイズを発生させ、スピーカから出力された当該ホワイトノイズをマイクロホンで集音して測定している。
【特許文献1】特開2003−61199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したようなステレオ音場の調整では、測定結果に基づく理論上の聴感と、実際の聴感とでは異なることがある。これは、ピンクノイズ等を測定した際に、LチャンネルのピンクノイズとRチャンネルのピンクノイズとが互いに関連することで発生する、関連度合(以下、コヒーレンス特性という。)によって生じる。したがって、実際の聴感に相当するステレオ音場の調整を行うには、当該コヒーレンス特性を考慮したノイズを発生させることが望ましい。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、所望のコヒーレンス特性の値を得るノイズ出力装置、ノイズ出力方法及びノイズ出力プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、コヒーレンス特性の値が1となる第1のノイズを出力する第1出力手段と、コヒーレンス特性の値が0となる第2のノイズを出力する第2出力手段と、第1のノイズ及び第2のノイズの所定数を所定の順番で組み合わせて混合する混合手段と、を有することを特徴とするノイズ出力装置である。
この構成によれば、第1のノイズと第2のノイズの所定数を所定の順序で組み合わせることで、コヒーレンス特性が所望の値となるノイズ出力装置が実現できる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、第1のノイズと第2のノイズとを混合した混合ノイズに対し、所定の周波数帯の混合ノイズを通過させる第1通過手段と、独立性を保持させるように通過後の混合ノイズの前段数十秒を切り出して後段に付与する独立性保持手段と、所定の周波数帯の第1のノイズを通過させる第2通過手段と、を備え、混合手段が、通過後の混合ノイズと通過後の第1のノイズとを混合することを特徴とする。
この構成によれば、聴感により近いコヒーレンス特性を有するノイズ出力装置が実現できる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明が、請求項1又は2に記載の発明において、第2の出力手段が、第1のノイズのいずれか一方のチャンネルを分離して時間反転することにより第2のノイズを生成することを特徴とする。
この構成によれば、第1の出力手段があれば、コヒーレンス特性が所望の値となるノイズ出力装置が実現できる。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、コヒーレンス特性の値が1となる第1のノイズを出力し、コヒーレンス特性の値が0となる第2のノイズを出力し、第1のノイズ及び第2のノイズの所定数を所定の順番で組み合わせて混合することを特徴とするノイズ出力方法である。
この構成によれば、第1のノイズと第2のノイズの所定数を所定の順序で組み合わせることで、コヒーレンス特性が所望の値となるノイズ出力装置が実現できる。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、コンピュータを、コヒーレンス特性の値が1となる第1のノイズを出力する第1出力手段と、コヒーレンス特性の値が0となる第2のノイズを出力する第2出力手段と、第1のノイズ及び第2のノイズの所定数を所定の順番で組み合わせて混合する混合手段として機能させることを特徴とするノイズ出力プログラムである。
この構成によれば、第1のノイズと第2のノイズの所定数を所定の順序で組み合わせることで、コヒーレンス特性が所望の値となるノイズ出力装置が実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所望のコヒーレンス特性の値が得られるようになり、ステレオ音場における理論上の音響特性と聴感上の音響特性との差異が抑制されるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係るノイズ出力装置100を備えるコヒーレンス特性測定装置の要部構成を示す機能ブロック図、図2はモノラルノイズのコヒーレンス特性を示すグラフ、図3は無相関ノイズのコヒーレンス特性を示すグラフ、図4は混合ノイズのコヒーレンス特性を示すグラフである。
【0013】
尚、図1に示す各機能ブロックは、DSP(Digital Signal Processor)、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static RAM)、ROM(Read Only Memory)等の半導体記憶装置、及び所要のソフトウェア等により構成され、ROMに格納したプログラムをCPUやDSPが読み込んで、このプログラムに従った演算をCPUで行うことにより、各装置の機能が実現される。また、後述する機能ブロックについても同様とする。
【0014】
コヒーレンス特性測定装置は、図1に示すように、ノイズ出力装置100、増幅装置110、測定装置120等から構成される。また、ノイズ出力装置100は、モノラルノイズ出力部101、無相関ノイズ出力部102、ノイズ混合部103a等から構成される。
【0015】
モノラルノイズ出力部101は、本発明の第1出力手段の一例であって、図2に示すように、LチャンネルとRチャンネルから出力した結果、コヒーレンス特性の値が1となるモノラルなピンクノイズを出力する。尚、ピンクノイズの代わりにホワイトノイズを使用してもよい。ここで、ホワイトノイズとは単位周波数帯域(1kHz)に含まれる成分の強さが周波数に無関係に一定の雑音をいい、ピンクノイズとはホワイトノイズに−3dB/octのローパスフィルタを通したものをいう。ピンクノイズは全周波数帯域にわたり均等なエネルギーを有し,周波数特性グラフ上ではやや右下がりになる。モノラルなピンクノイズは例えばPC(Personal Computer)等によって生成される。以下において、モノラルなピンクノイズを単にモノラルノイズという。
【0016】
無相関ノイズ出力部102は、本発明の第2出力手段の一例であって、図3に示すように、LチャンネルとRチャンネルから出力した結果、コヒーレンス特性の値が0となるピンクノイズを出力する。当該ピンクノイズは、上述したモノラルノイズから生成させてもよい。その場合には、例えば、モノラルノイズのいずれか一方のチャンネルを分離して時間反転することにより生成される。例えば、モノラルノイズのRチャンネルを分離して時間反転し、Lチャンネルをそのままにして、無相関ノイズ出力部102から両方を出力させると、そのコヒーレンス特性の値は0となる。以下において、このような特性を有するピンクノイズを単に無相関ノイズという。
【0017】
ノイズ混合部103aは、本発明の混合手段の一例であって、一又は複数で構成される。ノイズ混合部103aは、モノラルノイズ及び無相関ノイズの所定数を所定の順番で組み合わせて混合する。このように、モノラルノイズ及び無相関ノイズに対し、組み合わせる数及び組み合わせる順番によって、所望のコヒーレンス特性を得ることが可能となる。尚、組み合わせる際には、Lチャンネル及びRチャンネルを対応させて混合する。以下において、混合されたモノラルノイズ及び無相関ノイズを単に混合ノイズという。混合ノイズは増幅装置110へ送信される。
【0018】
増幅装置110は、デジタル信号をアナログ信号に変換するとともに、当該アナログ信号を増幅する。本実施形態では、ラックスマン(LUXMAN)株式会社製のプリメインアンプ(INTEGRATED AMPLIFIER)、製品名LV−113を使用している。増幅されたアナログ信号は測定装置120へ送信される。したがって、受信したデジタル信号としての混合ノイズをアナログ信号の混合ノイズに変換して増幅した後、測定装置120へ送信される。増幅装置110は、その他の公知技術によっても実現できる。
【0019】
測定装置120は、受信した混合ノイズに対しFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)を用いてノイズ出力装置100のコヒーレンス特性を測定する。本実施形態では、株式会社小野測器(ONO SOKKI)製のFFTアナライザ、製品名DS−2000シリーズを使用している。当該測定は、例えば混合ノイズを20秒ずつ6回連続して採取して測定し、測定後、その平均値を算出することによって行われる。この結果、混合ノイズのLチャンネルとRチャンネルとのコヒーレンス特性の値は、図4に示すように、概ね0.5程度を得る。
【0020】
さらに、モノラルノイズと無相関ノイズとの組合数及び組合順序に応じたコヒーレンス特性について図5から図12を参照して説明する。
図5はコヒーレンス特性測定装置の要部構成を示す他の機能ブロック図、図6は混合ノイズのコヒーレンス特性を示す他のグラフである。尚、図1に示されるコヒーレンス特性測定装置の各部と同様の構成には同一符号を付し、その説明を省略する。また、後述するコヒーレンス特性測定装置についても同様とする。
【0021】
ノイズ混合部103bは、図5に示すように、ノイズ混合部103aから出力される混合ノイズに対し、モノラルノイズ出力部101から出力されるモノラルノイズをさらに混合する。したがって、本態様では、モノラルノイズ2本、無相関ノイズ1本を、モノラルノイズ、無相関ノイズ、モノラルノイズの順番で混合している。この結果、最終的にコヒーレンス特性として得られる測定結果は、図6に示すように、概ね0.85程度となる。
【0022】
図7はコヒーレンス特性測定装置の要部構成を示す他の機能ブロック図、図8は混合ノイズのコヒーレンス特性を示す他のグラフである。
ノイズ混合部103bは、図7に示すように、ノイズ混合部103aから出力される混合ノイズに対し、無相関ノイズ出力部102から出力される無相関ノイズをさらに混合する。したがって、本態様では、モノラルノイズ1本、無相関ノイズ2本を、モノラルノイズ、無相関ノイズ、無相関ノイズの順番で混合している。この結果、最終的にコヒーレンス特性として得られる測定結果は、図8に示すように、概ね0.15程度となる。
【0023】
図9はコヒーレンス特性測定装置の要部構成を示す他の機能ブロック図、図10は混合ノイズのコヒーレンス特性を示す他のグラフである。
ノイズ混合部103cは、図9に示すように、ノイズ混合部103bから出力される混合ノイズに対し、無相関ノイズをさらに混合する。すなわち、本態様におけるノイズ出力装置100は、図5に示すノイズ出力装置100に対して、ノイズ混合部103cを追加した態様となっている。したがって、本態様では、モノラルノイズ2本、無相関ノイズ2本を、モノラルノイズ、無相関ノイズ、モノラルノイズ、無相関ノイズの順番で混合している。この結果、最終的にコヒーレンス特性として得られる測定結果は、図10に示すように、概ね0.3程度となる。
【0024】
図11はコヒーレンス特性測定装置の要部構成を示す他の機能ブロック図、図12は混合ノイズのコヒーレンス特性を示す他のグラフである。
ノイズ混合部103cは、図11に示すように、ノイズ混合部103bから出力される混合ノイズに対し、無相関ノイズをさらに混合する。すなわち、本態様におけるノイズ出力装置100は、図7に示すノイズ出力装置100に対して、ノイズ混合部103cを追加した態様となっている。したがって、本態様では、モノラルノイズ2本と無相関ノイズ2本を、モノラルノイズ、無相関ノイズ、無相関ノイズ、モノラルノイズの順番で混合している。この結果、最終的にコヒーレンス特性として得られる測定結果は、図12に示すように、概ね0.7程度となる。このように、モノラルノイズ及び無相関ノイズの所定本数を所定の順番で組み合わせることによって種々のコヒーレンス特性を有するノイズを得ることができる。
【0025】
さらに、上述した混合ノイズをアダプティブサラウンド(登録商標)技術(Adaptive Surround Technology、以下、単にASTという。)を搭載したオーディオ装置により出力させた場合におけるステレオ音場の音響特性の調整について図面を参照して説明する。なお、ASTとは、ステレオソースから5.1chサラウンド音声を生成する技術である。
【0026】
図13はステレオ音場200の調整の様子を模式的に示す機能ブロック図である。ステレオ音場200における音響特性の調整は、図13に示すように、測定装置120に代わり増幅装置110にスピーカ130が形成される。したがって、スピーカ130は増幅された混合ノイズをステレオ音場200に出力する。なお、ノイズ出力装置100と増幅装置110等とからASTを搭載したオーディオ装置を構成するようにしてもよい。そして、当該混合ノイズはステレオ音場200に設置された音響特性測定装置140のマイク140aに集音される。なお、本実施形態ではマイク140aをダミーヘッド(マネキンの頭部)の両耳に備え付けて1/12オクターブ分析で測定している。これにより、あらゆる方向から来る音に対し、直接的に耳に入る音の他に、人間の肩や胸・額などを経由して聞こえる音、頭の後ろから回り込んでくる音、すなわち全方向の音と振動を集音することができる。音響特性測定装置140は、当該混合ノイズの集音結果に基づく測定結果を表示する。したがって、音響特性を調整する作業者等は、表示された測定結果に基づいて車室内等のステレオ音場200の音響特性を調整することとなる。
【0027】
ここで、本実施形態に係る音響特性測定装置140の測定結果について図14及び図15を参照して説明する。
図14は前後にスピーカの搭載された実車内においてダミーヘッドマイクを車両前席に設置し、コヒーレンス特性の値が概ね0.5程度となる混合ピンクノイズを集音した音響特性測定装置140の測定結果を示すグラフ、図15は比較例であって、図14と同様、前後にスピーカの搭載された実車内においてダミーヘッドマイクを車両前席に設置し、コヒーレンス特性の値が概ね1程度となるモノラルピンクノイズを集音した音響特性測定装置140の測定結果を示すグラフである。
【0028】
それぞれ上段が、ダミーヘッドの左右耳の音圧平均をグラフ化したもの、下段が、ダミーヘッドの左右耳の音圧差を示したものである。また、図14及び図15において、グラフa、dは、ステレオ音場200全体(図においてALLと示す。)の測定結果を表しており、グラフb、eは、ステレオ音場200においてフロントスピーカだけを鳴らした(図においてfrontと示す。)の測定結果を表しており、グラフc、fはステレオ音場200のリアスピーカだけを鳴らした(図においてRearと示す。)の測定結果を表している。後述するグラフについても同様とする。
【0029】
本実施形態に係る音響特性は、図14のグラフa〜cに示すように、ステレオ音場200全体、フロントスピーカだけ、リアスピーカだけ鳴らした時も十分に測定できていることが分かる。また、音圧差についても、図14のグラフd〜fに示すように、10dB未満と大きなぶれはなく、聴感上の違和感が少ないことも分かる。一方、比較例に係る音響特性は、図15のグラフa〜cに示すように、ステレオ音場200全体及びフロントスピーカだけを鳴らした時には十分に測定できていることが分かるが、リアスピーカだけを鳴らした時に十分な測定結果が得られないことが分かる。また、音圧差についても、図15のグラフd〜fに示すように、10dBを超える大きなぶれが測定され、聴感上の違和感を生じることとなる。
【0030】
図16はノイズ出力装置におけるノイズ出力処理の一例を示すフローチャートである。ノイズ出力装置100は、まず、モノラルノイズを出力し(ステップS1)、次いで、無相関ノイズを出力する(ステップS2)。ノイズ出力装置100は、次いで、モノラルノイズ及び無相関ノイズを組合数及び組合順序に応じて混合し(ステップS3)、ノイズ出力処理を終了する。これにより、所望のコヒーレンス特性を有する混合ノイズを得ることができる。
【0031】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。
図17から図32は任意に選択された16の楽曲に対して得られるコヒーレンス特性を示すグラフである。より詳しくは、各曲の演奏開始から2分間を20秒ごとに6回に分け測定し、測定結果を平均して得られるコヒーレンス特性のグラフである。
【0032】
図17から図32に示すように、楽曲によってコヒーレンス特性は種々の傾向を有する。ここで、これらのコヒーレンス特性について単純平均を算出すると、図33に示すように、100Hz以下の帯域については、コヒーレンス特性の値が概ね1程度に、100Hzから250Hzにかけては緩やかに下降し、250Hz以上の帯域では、コヒーレンス特性の値が概ね0.5程度に収束されるる。したがって、このようなコヒーレンス特性を測定結果とするノイズ出力装置100を提供することにより、測定結果に基づく理論上の聴感と、実際の聴感との間の差異が減少するようになる。
【0033】
図34は第2実施形態に係るコヒーレンス特性測定装置の要部構成を示す機能ブロック図である。コヒーレンス特性測定装置は、図34に示すように、ノイズ出力装置100、増幅装置110、測定装置120等から構成される。また、ノイズ出力装置100は、モノラルノイズ出力部101、無相関ノイズ出力部102、ノイズ混合部103a、103b、ハイパスフィルタ104、独立性保持部105、ローパスフィルタ106等から構成される。
【0034】
ハイパスフィルタ104は、本発明の第1通過手段の一例であって、入力された混合ノイズの低周波数をカットして、高周波数を選択的に通過させる。また、ローパスフィルタ106は、本発明の第2通過手段の一例であって、入力されたモノラルノイズの高周波数をカットして、低周波数を選択的に通過させる。これらの高低は設計にしたがって決定することができる。本実施形態ではともに200Hz帯を使用しているが、これに限られるものではない。
【0035】
独立性保持部105は、本発明の独立性保持手段の一例であって、両チャンネルの独立性を保持(ディスクリート)させるように、ハイパスフィルタ104を通過した後の混合ノイズの前段数十秒を切り出して後段に付与する。当該切り出しは30秒程度が望ましい。これにより、ローパスフィルタ106を通過した後のモノラルノイズと、ハイパスフィルタ104を通過した後の混合ノイズとを合成したノイズのパワースペクトラム(周波数特性)は、モノラルノイズのパワースペクトラムと概ね一致するようになる。パワースペクトラムの一致については、以下において、さらに詳しく記載する。
【0036】
続いて、第2実施形態に係るコヒーレンス特性測定装置の測定結果等について図35から図44を参照して説明する。
図35はハイパスフィルタ104通過後の混合ノイズのコヒーレンス特性を示すグラフ、図36はハイパスフィルタ104通過後の混合ノイズのLチャンネルのパワースペクトラムを示すグラフ、図37はハイパスフィルタ通過後の混合ノイズのRチャンネルのパワースペクトラムを示すグラフ、図38はローパスフィルタ106通過後のモノラルノイズのコヒーレンス特性を示すグラフ、図39はローパスフィルタ通過後の混合ノイズのLチャンネルのパワースペクトラムを示すグラフ、図40はローパスフィルタ通過後の混合ノイズのRチャンネルのパワースペクトラムを示すグラフ、図41はハイパスフィルタ通過後の混合ノイズのパワースペクトラムとローパスフィルタ通過後の混合ノイズのパワースペクトラムを示すグラフ、図42は実施形態に係るノイズ出力装置100から出力される混合ノイズのコヒーレンス特性のグラフ、図43は合成波形のパワースペクトラムを示すグラフ、図44はモノラルノイズのパワースペクトラムを示すグラフである。
【0037】
モノラルノイズ出力部101から出力されるモノラルノイズ及び無相関ノイズ出力部102から出力される無相関ノイズはノイズ混合部103aで混合され、混合ノイズとなる。当該混合ノイズのコヒーレンス特性は、上述した図4に示すように、概ね0.5程度となる。
【0038】
ハイパスフィルタ104は、当該混合ノイズに対し、低周波数をカットして、高周波数を選択的に通過させる。これにより、ハイパスフィルタ104通過後の混合ノイズのコヒーレンス特性は、図35に示すように、概ね0.5程度に収束していることが分かる。また、ハイパスフィルタ104通過後の混合ノイズのLチャンネルのパワースペクトラムは、図36に示すように、峰状のグラフとなっており、ハイパスフィルタ104通過後の混合ノイズのRチャンネルのパワースペクトラムも、図37に示すように、峰状のグラフとなっている。
【0039】
一方、モノラルノイズ出力部101から出力されるモノラルノイズのコヒーレンス特性は、上述した図2に示すように、概ね1程度となる。ローパスフィルタ106は、当該モノラルノイズに対し、高周波数をカットして、低周波数を選択的に通過させる。これにより、ローパスフィルタ106通過後のモノラルノイズのコヒーレンス特性は、図38に示すように、2.5kHz程度までは概ね1程度で推移するが、2.5kHz以降から10kHzにかけて信号レベルが減少することからコヒーレンス特性の値が下降し、10kHz以降は概ね0程度に収束していることが分かる。また、ローパスフィルタ106通過後のモノラルノイズのLチャンネルのパワースペクトラムは、図39に示すように、25Hzから2.5kHzにかけて下降し、2.5kHz以降は0となっており、ローパスフィルタ106通過後のモノラルノイズのRチャンネルのパワースペクトラムも、図40に示すように、25Hzから2.5kHzにかけて下降し、2.5kHz以降は0となっている。
【0040】
さらに、上述したハイパスフィルタ通過後の両チャンネルのパワースペクトラムについて単純平均を表したグラフと、ローパスフィルタ通過後の両チャンネルのパワースペクトラムについて単純平均を表したグラフを図41に示す。図41において、グラフaが前者を示しており、グラフbが後者を示している。
【0041】
ここで、独立性保持部105は、上述したハイパスフィルタ104通過後の混合ノイズに対して独立性保持処理を行い、さらに、ノイズ混合部106が当該混合ノイズとローパスフィルタ104通過後のモノラルノイズとを混合する。そして、混合結果から得られるノイズのコヒーレンス特性を測定すると、図42に示すように、100Hz以下の帯域については、コヒーレンス特性の値が概ね1程度に、100Hzから250Hzにかけては緩やかに下降し、250Hz以上の帯域では、コヒーレンス特性の値が概ね0.5程度になり、上述した図33に示すコヒーレンス特性と近い形状となる。
【0042】
また、図41に示すパワースペクトラムの両グラフa、bについて単純平均を算出すると、図43に示すように、25Hzから20Khzにかけてほぼ直線上の下降するグラフが得られる。一方、モノラルノイズにおけるパワースペクトラムを算出すると、図44に示すように、図43に示すグラフとほぼ等しく、25Hzから20Khzにかけてほぼ直線上の下降するグラフが得られる。このように、本実施形態に係るノイズ出力装置100を使用することにより、モノラルノイズのパワースペクトラムが概ね同じでありながら、第1実施形態より望ましいステレオ音場100の音響特性を実現することが可能となる。尚、上述した図16に示すように、これらの各機能を実現するようなプログラムを生成することも可能である。
【0043】
図45は第2実施形態に係るノイズ出力装置を使用した音響特性測定装置の測定結果を示すグラフである。比較例に係る音響特性は、上述した図15のグラフに示すように、車室内におけるリアスピーカからの音の測定結果は十分に得られていなかった。一方で、本実施形態に係る音響特性は、図45のグラフa〜cに示すように、ステレオ音場200全体、フロントスピーカ、リアスピーカともに十分に測定できていることが分かる。また、音圧差についても、図45のグラフd〜fに示すように、概ね10dB未満と大きなぶれはなく、聴感上の違和感が少ないことも分かる。このように、ハイパスフィルタ104等を使用することによって車室内等のステレオ音場200の音響特性を調整できるようになる。特にAST等、サラウンドシステムの評価も適切な結果が得られるようになる。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。本発明のプログラムを通信手段により提供することはもちろん、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明のノイズ出力装置によれば、所望のコヒーレンス特性の値が得られるようになり、ステレオ音場における理論上の音響特性と聴感上の音響特性との差異が抑制されるようになるため、産業上の利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1実施形態に係るコヒーレンス特性測定装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【図2】モノラルノイズのコヒーレンス特性を示すグラフである。
【図3】無相関ノイズのコヒーレンス特性を示すグラフである。
【図4】混合ノイズのコヒーレンス特性を示すグラフである。
【図5】第1実施形態に係るコヒーレンス特性測定装置の要部構成を示す他の機能ブロック図である。
【図6】混合ノイズのコヒーレンス特性を示す他のグラフである。
【図7】第1実施形態に係るコヒーレンス特性測定装置の要部構成を示す他の機能ブロック図である。
【図8】混合ノイズのコヒーレンス特性を示す他のグラフである。
【図9】第1実施形態に係るコヒーレンス特性測定装置の要部構成を示す他の機能ブロック図である。
【図10】混合ノイズのコヒーレンス特性を示す他のグラフである。
【図11】第1実施形態に係るコヒーレンス特性測定装置の要部構成を示す他の機能ブロック図である。
【図12】混合ノイズのコヒーレンス特性を示す他のグラフである。
【図13】音響特性測定装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【図14】実施形態に係る音響特性測定装置の測定結果を示すグラフである。
【図15】比較例に係る音響特性測定装置の測定結果を示すグラフである。
【図16】ノイズ出力装置におけるノイズ出力処理の一例を示すフローチャートである。
【図17】楽曲のコヒーレンス特性を示すグラフの一例である。
【図18】楽曲のコヒーレンス特性を示すグラフの一例である。
【図19】楽曲のコヒーレンス特性を示すグラフの一例である。
【図20】楽曲のコヒーレンス特性を示すグラフの一例である。
【図21】楽曲のコヒーレンス特性を示すグラフの一例である。
【図22】楽曲のコヒーレンス特性を示すグラフの一例である。
【図23】楽曲のコヒーレンス特性を示すグラフの一例である。
【図24】楽曲のコヒーレンス特性を示すグラフの一例である。
【図25】楽曲のコヒーレンス特性を示すグラフの一例である。
【図26】楽曲のコヒーレンス特性を示すグラフの一例である。
【図27】楽曲のコヒーレンス特性を示すグラフの一例である。
【図28】楽曲のコヒーレンス特性を示すグラフの一例である。
【図29】楽曲のコヒーレンス特性を示すグラフの一例である。
【図30】楽曲のコヒーレンス特性を示すグラフの一例である。
【図31】楽曲のコヒーレンス特性を示すグラフの一例である。
【図32】楽曲のコヒーレンス特性を示すグラフの一例である。
【図33】楽曲のコヒーレンス特性の平均を示すグラフの一例である。
【図34】第2実施形態に係るコヒーレンス特性測定装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【図35】ハイパスフィルタ通過後の混合ノイズのコヒーレンス特性を示すグラフである。
【図36】ハイパスフィルタ通過後の混合ノイズのLチャンネルのパワースペクトラムを示すグラフである。
【図37】ハイパスフィルタ通過後の混合ノイズのRチャンネルのパワースペクトラムを示すグラフである。
【図38】ローパスフィルタ通過後のモノラルノイズのコヒーレンス特性を示すグラフである。
【図39】ローパスフィルタ通過後の混合ノイズのLチャンネルのパワースペクトラムを示すグラフである。
【図40】ローパスフィルタ通過後の混合ノイズのRチャンネルのパワースペクトラムを示すグラフである。
【図41】ハイパスフィルタ通過後の混合ノイズのパワースペクトラムとローパスフィルタ通過後の混合ノイズのパワースペクトラムを示すグラフである。
【図42】実施形態に係る混合ノイズのコヒーレンス特性を示すグラフである。
【図43】合成波形のパワースペクトラムを示すグラフである。
【図44】モノラルノイズのパワースペクトラムを示すグラフである。
【図45】実施形態に係る音響特性測定装置の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
100 ノイズ出力装置
101 モノラルノイズ出力部
102 無相関ノイズ出力部
103a〜103c ノイズ混合部
104 ハイパスフィルタ
105 独立性保持部
106 ロ―パスフィルタ
110 増幅装置
120 測定装置
130 スピーカ
140 音響特性測定装置
200 ステレオ音場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレンス特性の値が1となる第1のノイズを出力する第1出力手段と、
コヒーレンス特性の値が0となる第2のノイズを出力する第2出力手段と、
前記第1のノイズ及び前記第2のノイズの所定数を所定の順番で組み合わせて混合する混合手段と、
を有することを特徴とするノイズ出力装置。
【請求項2】
前記第1のノイズと前記第2のノイズとを混合した混合ノイズに対し、所定の周波数帯の混合ノイズを通過させる第1通過手段と、
独立性を保持させるように通過後の混合ノイズの前段数十秒を切り出して後段に付与する独立性保持手段と、
所定の周波数帯の前記第1のノイズを通過させる第2通過手段と、を備え、
前記混合手段は、前記通過後の混合ノイズと通過後の第1のノイズとを混合することを特徴とする請求項1に記載のノイズ出力装置。
【請求項3】
前記第2の出力手段は、前記第1のノイズのいずれか一方のチャンネルを分離して時間反転することにより前記第2のノイズを生成することを特徴とする請求項1又は2に記載のノイズ出力装置。
【請求項4】
コヒーレンス特性の値が1となる第1のノイズを出力し、
コヒーレンス特性の値が0となる第2のノイズを出力し、
前記第1のノイズ及び前記第2のノイズの所定数を所定の順番で組み合わせて混合することを特徴とするノイズ出力方法。
【請求項5】
コンピュータを、
コヒーレンス特性の値が1となる第1のノイズを出力する第1出力手段と、
コヒーレンス特性の値が0となる第2のノイズを出力する第2出力手段と、
前記第1のノイズ及び前記第2のノイズの所定数を所定の順番で組み合わせて混合する混合手段として機能させることを特徴とするノイズ出力プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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