説明

ノイズ吸収装置

【課題】 低柔軟性の樹脂を使用して、かつケースのずれ発生が抑制されたノイズ吸収装置を提供する。
【解決手段】 ヒンジ部30は、断面が略半円状に形成されている。ヒンジ部30と第一円周部及び第二円周部とは、接続個所に応力集中箇所を形成せず、かつ滑らかに接続されている。第一円周部の円周方向の他端である第二縁部には、第一円周部円周方向の略接線方向に向けて一対の係止部13が突設されており、係止部13の先端部13Aは、先端から第一ケース部材側に向かって徐々に肉厚に形状化されて、ケースを閉状態にした時に、第二円周部の円周方向の他端である第四縁部付近に形成された一対の係止部嵌通孔21aに係止する係止爪部を形成している。また、一対の係止部嵌通孔21aに隣接する位置には、ずれ防止片23が、それぞれ第二円周部円周方向の略接線方向に向けて延びるように突設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はノイズ吸収装置に関し、特に汎用樹脂からなるケースを使用したノイズ吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノイズ吸収装置では、磁性体のコアで電線外周部を覆い、コアで電線を流れる雑音電流を吸収している。このコアは焼成等により製造されるため脆く、これを保護するため、及び電線へコアを実装するの際の便宜のため二分割された樹脂製のケースでコアを覆ってコアを電線に実装している。
【0003】
コアは装着性を増すために予め二分割されている場合があり、この二分割されたコアの場合は、ケース内の一部分をバネとして用い、二分割されたコアを密着させている。また、ケース内の一部分をバネとして用いることにより、ケース内に収納されるコアを押さえ、コアが暴れることを防止することが可能となる。
【0004】
このケースのバネ特性は、電線等に装着された後も長期に渡って要求されるため、ケースに使用される樹脂にはこの要求を満たす必要があり、例えばナイロン等の物性がこの要求を満たしている。ナイロンをケースに用いた場合、コアを押圧する弾性については、長期間に渡って充分な特性を示すが、柔軟性が低いため二分割されたそれぞれのケースを連結するヒンジが、その動きに追従できずに破損する場合があった。これはケースを煮沸して素材自体の柔軟性を増すことにより解決されているが、煮沸の工程が増えてケースの生産性が低下していた。
【0005】
これを解決するために、特許文献1に示すように、ケースが開いた状態でヒンジが凸状となり、ケースを閉じた状態で、ヒンジが延びてケースの外面に対して略直線状となるように構成されたケースが開示されている。
【特許文献1】特許第2801173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示されるノイズ吸収装置では、ケースを閉じた状態でヒンジを略直線状とするためにヒンジに凸部が設けられているが、この凸部は屈曲等しないため、凸部以外のヒンジ部分に応力が集中する恐れがあった。また、ヒンジの凸部がケースの一部に当接することにより、ケースの外面を常に直線状に保ち、ケースのずれ等を防止しているが、この場合には、ヒンジにかかる負担が大きくなり、ケースに大きな力が掛かった場合は、ヒンジ自体が破損する恐れもあり、ケースのずれ及びずれに起因してケースが外れることを充分に抑制することができなかった。また、ヒンジに凸部を設け、ケースにもその凸部に対応する部分を設けるために、必然的にケース自体が複雑な形状となる。これに応じてケースを形状化する金型も複雑な形状となり、ケースの生産性等も低下していた。
【0007】
そこで、本発明は、低柔軟性の樹脂を使用して、かつケースのずれ発生が抑制されたノイズ吸収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、コアと、コアが内包されるケースと、を備えたノイズ吸収装置であって、ケースは、ヒンジと、ヒンジの一方に連結される第一縁部と自由端となる第二縁部とを備えて第一縁部と第二縁部とを繋いで第一縁部と第二縁部との間にコアを収納可能な第一凹部を画成する第一ケースと、ヒンジの他方に連結されると共に第一縁部に当接可能な第三縁部と自由端となると共に第二縁部に当接可能な第四縁部とを備えて第三縁部と第四縁部とを繋いで第三縁部と第四縁部との間にコアを収容可能な第二凹部を画成する第二ケースとより構成され、ヒンジは、第一縁部と第二縁部とを連結する方向に切断された断面が、第一凹部及び第二凹部に対して突出しかつ略曲線より構成され、第二縁部及び第四縁部には、第二縁部と第四縁部とが当接した状態で第二縁部または第四縁部いずれか一方から他方側に延出され、第一ケースに対する第二ケースの、第二縁部から第一縁部へ向かう方向のずれを抑制する第一ずれ防止片と、第二縁部または第四縁部いずれか一方より延出され、第一ケースに対する第二ケースの、第一縁部から第二縁部へ向かう方向のずれを抑制する第二ずれ防止片と、が設けられているノイズ吸収装置を提供している。
【0009】
このような構成によると、第一ケースと第二ケースとがコアを収納して閉じられた場合に、ヒンジの屈曲角度を例えば90°程度にすることが可能となる。よってケースに使用される樹脂に、高度の屈曲性、柔軟性が不要となる。また第一ずれ防止片と第二ずれ防止片により、第一ケースに対する第二ケースのずれを抑制することが可能となる。よって、ずれによりケースが外れることを防止することが可能となる。また、特にヒンジ部分の構成を簡略化することが可能となるため、ケースを成形する金型も形状を簡略化することが可能となり、ケースの生産性を増すことが可能となる。
【0010】
また第一ずれ防止片または第二ずれ防止片の少なくとも一方には、係止爪部が設けられ、係止爪部が設けられた第一ずれ防止片または第二ずれ防止片によりずれ防止される第一ケースまたは第二ケースには、係止爪部と係合する係止爪収容部が設けられることが好ましい。
【0011】
このような構成によると、第一ケースと第二ケースとの係合が可能になる。よって、ケースが外れることが抑制される。また、第一ずれ防止片または第二ずれ防止片の少なくとも一方を係止爪とすることにより、第一ずれ防止片または第二ずれ防止片以外に新たに係止個所を形成する必要がなくなり、ケース全体としての部品の構成点数を削減することが可能となる。
【0012】
またヒンジの第一縁部と第二縁部とを連結する方向に切断された断面における中央部分は、非中央部分に比較して肉薄に形成されていることが望ましい。このような構成によると、ヒンジの柔軟性を増すことが可能となる。よって、ナイロン等よりも柔軟性が低い素材、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)等をケースの材料として使用することが可能となる。また、柔軟性が増すことによりヒンジの屈曲性も増すため、ヒンジの曲げに対する耐久性を増すことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載のノイズ吸収装置によれば、低柔軟性の樹脂を使用して、かつケースのずれ発生を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第一の実施の形態によるノイズ吸収装置について図1〜図10に基づき説明する。図1は、ノイズ吸収装置1を、ケーブル2に取り付けた状態を示している。図1及び2に示すように、ノイズ吸収装置1は、筒状のケース3と、ケーブル2を挿通させる貫通孔4aを有する磁性体からなる略円筒形のコア4とを備えている。ケース3は、ナイロンを素材として、内部にコア4を挿入可能な第一凹部10a(図3)が画成された第一ケース部材10と、内部にコア4を挿入可能な第二凹部20aが画成された第二ケース部材20と、第一ケース部材10と第二ケース部材20とを接続するヒンジ部30(図3)とを備えている。ケース3は、ヒンジ部30を支点として、図1に示した閉状態(第一ケース部材10と第二ケース部材20との結合状態)若しくは図2に示した開状態に開閉可能である。
【0015】
次に、ケース3の詳細な構造について図2〜図7に基づき説明する。図3は、ノイズ吸収装置1からコア4を取り除き、そしてケース3の開状態を示した図である。図2及び図3に示すように、第一ケース部材10は、ケース3をその軸方向に沿って半割した形状であり、軸方向に直交する断面が略半円状の第一円周部11とその両端に位置する一対の第一端部12とから構成される。第二ケース部材20も第一ケース部材10とほぼ同様の形状であり、第二円周部21とその両端に位置する一対の第二端部22とから構成される。そして、一対のヒンジ部30により、第一円周部11の円周方向の一端である第一縁部11Aと第二円周部21の円周方向の一端である第三縁部21Aとは接続されている。
【0016】
図2に示すように、第一円周部11の円周方向の他端である第二縁部11Bには、第一円周部11円周方向の略接線方向に向けて第一ずれ防止片である一対の係止部13が突設されている。また、係止部13の先端部13Aは、先端から第一ケース部材10側に向かって徐々に肉厚に形状化されて、後述の係止部嵌通孔21aに係止する係止爪部を形成している。第二円周部21の円周方向の他端である第四縁部21B付近には、ケース3を閉状態にしたときに、一対の係止部13をそれぞれ係止するための一対の係止部嵌通孔21aが、第二円周部21を貫通して形成されている。また、一対の係止部嵌通孔21aに隣接する位置には、第二ずれ防止片であるずれ防止片23が、それぞれ第二円周部21円周方向の略接線方向に向けて延びるように突設されている。
【0017】
また、第一ケース部材10の一対の第一端部12には、それぞれ略半円状の第一切欠き12aが形成されており、第二ケース部材20の一対の第二端部22にも、それぞれ第一切欠き12aと同様の第二切欠き22aが形成されている。そして、ノイズ吸収装置1をケーブル2に装着した時には、第一切欠き12aと第二切欠き22aとによって、図1に示すような一対の略円形のケーブル用孔3a(図1)が提供される。第一ケース部材10の一対の第一端部12であって第一切欠き12aの両側には、それぞれコア4を所定位置に保持するための一対のコア保持部材12Aが対向する第一端部12に向かって突設されている。
【0018】
第一円周部11及び第二円周部21は、図3に示すように、それぞれ円周方向略中央にケース3の軸方向に延びる第一平坦部14及び第二平坦部24を有している。第一平坦部14及び第二平坦部24は、ケース3を閉じた際に互いに対向する。第一平坦部14には、一対の第一抑えバネ部15と一対の第一ケーブル保持部16とが設けられている。一対の第一抑えバネ部15は、その周囲がコの字状に切取られており一辺で第一平坦部14に連接されている。また、一対の第一抑えバネ部15は、図3の IV−IV線に沿った断面図である図4に示すようにケース3の内方に向って傾斜するように設けられており、その先端にはコア4を押圧するための第一押圧作用部15Aが規定されている。
【0019】
図3〜図5に示すように、第一ケーブル保持部16は、第一平坦部14のケース3の軸方向両端付近にそれぞれ設けられている。第一ケーブル保持部16は、 IV−IV線に沿った面に対して面対称となるように隣接して配置された一対の第一ケーブル保持片16A、16Bから構成されており、各第一ケーブル保持片16A、16Bは、樹脂により構成された第一アーム部16A1、16B1と第二アーム部16A2、16B2とを備えている。以下では、特に説明の無い限り、第一ケーブル保持片16Aを例に説明する。
【0020】
尚、第二平坦部24にも第一平坦部14と同様に、一対の第二抑えバネ部25と、一対の第二ケーブル保持部26とが設けられている。第二ケーブル保持部26は、第一ケーブル保持部16と同様な構成となっている。
【0021】
図5は、ケーブル保持部16の詳細斜視図である。第一アーム部16A1は、第一平坦部14からコの字形状を切り取った形状に形成されている。第一アーム部16A1は、第一平坦部14と連接された第一連接端161Aと、第一自由端162Aを有している。第一アーム部16A1は、ケース3の軸方向に沿って延びており、第一平坦部14と第一アーム部16A1とが角度αをなすように、ケース3の内方に向って傾斜するように設けられている。
【0022】
第二アーム部16A2は、第一自由端162Aと接続される第二連接端163Aと、第二自由端164Aとを備えており、第一平坦部14に対して略垂直方向に延びている。また、第二アーム部16A2、16B2は、それぞれ辺165A、165Bを有しており、辺165Aと辺165Bとは互いに対向している。このような構成のケーブル保持部16によって、ケーブル2は、辺165A−辺165B間にそれぞれ当接しながら挟まれる。
【0023】
この際、ケーブル2としては、辺165A及び辺165Bにそれぞれ当接しながら挟まれるために、第一アーム部16A1−第一アーム部16B1間の距離よりも大きい外径のケーブルを用いる。このような構成によれば、第一ケーブル保持片16A、16Bは、樹脂により構成されているため、上下左右に弾性的に可動である。そのため、辺165A−辺165B間にケーブル2を配置した際、ケーブル2の直径に応じて辺165A−辺165B間が開くため、直径の異なるケーブル2の位置をそれぞれ固定することができる。
【0024】
図6は、対向する第二アーム部16A2の図3の VI−VI線に沿った断面図である。第二アーム部16A2、16B2は、辺165A−辺165B間の距離が、第二連接端163A、Bから第二自由端164A、Bに向かって徐々に増加するように形成されている。このような構成により、隙間166にケーブル2が入り込みやすくなる。また、辺165A、Bの第二自由端164A、Bは、R状となっている。このような構成によれば、辺165A、Bの第二自由端164A、Bが鋭利な形状ではないため、ケーブル2を傷つける恐れがない。
【0025】
更に前述したように、第一アーム部16A1がケース3の軸方向に沿って延びており、第一平坦部14と第一アーム部16A1とが角度αをなすように、ケース3の内方に向って傾斜するように設けられている。そのため、第一ケーブル保持片16Aがケーブル2を保持した際に、ケーブル保持部16が第一円周部11の外面から外側に突出しにくくなる。このような構成により、美観を損なわず、外部との引っかかりを防止することができる。
【0026】
ヒンジ部30は、図6及び図7に示すように、ケース3の軸方向に直交する断面が、略半円状に形成されている。ヒンジ部30と第一円周部11とは、接続個所に応力集中箇所を形成せず、かつ滑らかに接続されている。ヒンジ部30と第二円周部21とも同様に接続されているため、図8に示すように、第一ケース部材10と第二ケース部材20とを閉状態としたときにヒンジ部30は、第一円周部11の接続個所から第二円周部21の接続個所まで断面が略直線状になるように延ばされる。しかし、第一円周部11との接続個所から第二円周部21との接続個所まで、ヒンジ部30はその断面が滑らかな曲線で形成されているため、応力集中箇所を形成せず、全体として一様に延ばされる。
【0027】
次に、コア4の構造について説明する。図2に示すように、コア4の外周面には、互いに対向する第一平面部4A及び第二平面部4B(図9)がそれぞれ第二平坦部24及び第一平坦部14に対向するように形成されている。コア4をその軸方向から見た図9に示すように、コア4の軸方向両端には、一対のコア保持部材12Aが掛止可能な第一溝4bがコア4の直径方向、かつ貫通孔4aを横切る位置にそれぞれ形成されている。更に、コア4の軸方向両端面であって、一対の第一ケーブル保持部16及び第二ケーブル保持部26に対向する位置には、それぞれ第二溝4cが形成されている。第二溝4cの幅は、第一ケーブル保持部16及び第二ケーブル保持部26の有する幅よりも広く形成されており、図10に示すように第二溝4cは、第一ケーブル保持部16の一部を収容可能に形成されている。
【0028】
次に、ノイズ吸収装置1のケーブル2への装着方法について説明する。始めに、コア4の第一溝4bに第一ケース部材10のコア保持部材12Aを掛止させる。次にコア4の貫通孔4aにケーブル2を挿入させ、第二ケース部材20の係止部嵌通孔21aに、第一ケース部材10の係止部13を嵌通させることにより、ノイズ吸収装置1はケーブル2へ装着される。従って、コア4の第一溝4bにコア保持部材12Aを掛止することができ、第一ケース部材10とコア4が一体となるので、ケーブル2へのノイズ吸収装置1の取り付けを容易に行うことができる。また、一対の第一ケーブル保持部16と一対の第二ケーブル保持部26とにより、四方からケーブル2を挟持するので、ノイズ吸収装置1がケーブル2の所望の位置からずれるのを防止することができる。また、一対の第一抑えバネ部15の第一押圧作用部15A及び一対の第二抑えバネ部25の第二押圧作用部25Aは、それぞれ対向する第一平面部4A及び第二平面部4Bを押圧するので、ケース3内でのコア4のがたつきを防止することができる。
【0029】
また、コア4は、一体型コアであり分割型コアのように接合面がないので、ノイズ吸収装置1のノイズ吸収特性を向上させることができる。更に、コア4をケース3内に収容することにより、コア4を保護することができる。また、第二溝4cは、第一ケーブル保持部16及び第二ケーブル保持部26の一部を収容可能であるので、ケース3の軸方向の長さを縮小することができ、ノイズ吸収装置1の小型化を図ることができる。
【0030】
図1に示すように、一対のずれ防止片23は、ケース3が閉状態のときに第一ケース部材10の内面に当接するので、第一ケース部材10に対して第二ケース部材20が第一縁部11Aから第二縁部11Bへ向かう方向へずれることが抑制される。また、一対の係止部13は、係止部嵌通孔21a内に第二ケース部材20の内周面から外周面にかけて貫くように挿入され、先端部13Aが係止部嵌通孔21aに係止される。よって第一ケース部材10に対して第二ケース部材20が第二縁部11Bから第一縁部11Aへ向かう方向へずれることが抑制される。従って、第一ケース部材10と第二ケース部材20との間にずれが発生しないため、係止部13の係止部嵌通孔21aへの係止による第一ケース部材10と第二ケース部材20との結合が解除されるのを防止することができる。
【0031】
本発明によるノイズ吸収装置1は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、一体型のコア4を図9のA−A線においてコア4の軸方向に沿って、ダイヤモンドカッター若しくはダイサーを用いて2分割に切断して、図11に示すように、分割型コア104A、104Bとして使用しても良い。このようにすれば、コア4を一体型コア若しくは分割型コア104A、104Bとして選択的に使用することができ、ケース3を一体型コア及び分割型コアの両方に使用することができる。更に、コア4をダイヤモンドカッター若しくはダイサーにより切断するので、切断面は平坦に形成される。従って、分割型コアを構成する2つのコアをそれぞれ製造したときに必要な研磨工程を省くことができる。また、1つの金型で一体型コア及び分割型コアを製造することができる。
【0032】
また、図11に示すように一対の第二端部22それぞれに一対の第一端部12に設けたコア保持部材12Aと同様のコア保持部材22Aを同様の場所に設けても良い。かかる構成によれば、上述の分割型コアを構成する2つのコア104A、104Bをそれぞれ第一ケース部材10と第二ケース部材20とに掛止できるので、ケーブルへのノイズ吸収装置1の取り付けを容易に行うことができる。また、ケース3は、第一縁部11Aと第三縁部21Aにおいて、第一ケース部材10と第二ケース部材20とをヒンジ部30により接続する構成であったが、第一端部12と第二端部22とをヒンジ部により接続する構成であっても良い。また、ケース3は、その内部において一度貫通孔4aに貫通させたケーブル2を折り返して再び貫通孔に貫通可能な形状であっても良い。
【0033】
また、図12に示すように、辺265A、265Bの第二自由端264A、264BはC面状であっても良いし、図13に示すように、辺365A及び辺365Bは、略平行に形成されていても良い。また、ケーブル保持部16は、一方のケースのみの両端に設けられていても良いし、一端のみに設けられていても良い。
【0034】
ヒンジ部は、図14に示すように種々の変形例が想定される。図14の(a)から(c)に示すヒンジ部130〜132ように、ヒンジ部130〜132の軸方向と直交する断面形状が、略中央部分が非中央部分より肉薄になるようにしても良い。これらの形状にすることにより、略中央部分の柔軟性が増し、ナイロンより柔軟性が低い素材、例えばPBTを用いたとしてもヒンジの屈曲性を低下させることなく、ケースを製造することが可能となる。また図14の(d)から(g)に示すヒンジ部133〜136のように、断面形状を円と楕円との組み合わせや、円と直線との組み合わせにより構成してもよい。
【0035】
次に、第一ケース部材10と第二ケース部材20とを係止する他の実施例について説明する。図15に示すように、第一ケース部材10の第二縁部11B付近の外周面には、一対の凸部111Aが突設されている。また第二ケース部材21の第四縁部21Bより一対の係止部113が第二円周部21円周方向の略接線方向に延びるように突設されている。この係止部113には係止孔113aが穿設されている。また一対の係止部113間の略中間地点からは、ずれ防止片123が第二円周部21円周方向の略接線方向に延びるように突設されている。ケース3を閉状態にすると、係止部113は、係止孔113aに凸部111Aが嵌合して係止孔113aに係止される。また、ずれ防止片123は、図16に示すように、第一円周部11の第二縁部11B付近内面に当接するように位置する。よって、第一ケース部材10に対して第二ケース部材20が第二縁部11Bから第一縁部11Aへ向かう方向へずれることが抑制される。またずれ防止片123は、第一ケース部材10の内面に当接するので、第一ケース部材10に対して第二ケース部材20が第一縁部11Aから第二縁部11Bへ向かう方向へずれることが抑制される。従って、第一ケース部材10と第二ケース部材20との間にずれが発生しないため、係止部113の凸部111Aへの係止による第一ケース部材10と第二ケース部材20との結合が解除されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態によるノイズ吸収装置をケーブルに取り付けた状態を示した斜視図。
【図2】本発明の実施の形態によるノイズ吸収装置のケースを開いた状態を示した斜視図。
【図3】本発明の実施の形態によるケースの開いた状態を示した図。
【図4】図3の IV−IV線に沿った断面図。
【図5】本実施の形態によるケーブル保持部16周辺の詳細斜視図。
【図6】図3の VI−VI線に沿った断面図。
【図7】本発明の実施の形態によるヒンジ部周辺の詳細断面図。
【図8】本発明の実施の形態によるヒンジ部周辺の閉じた状態の詳細断面図。
【図9】本発明の実施の形態によるコアを軸方向から見た図。
【図10】本発明の実施の形態によるノイズ吸収装置のケースを開いた状態を示した上面図。
【図11】本実施の形態による一体型のコアを分割して、分割したコアをそれぞれ第一ケース部材及び第二ケース部材に取り付けた図。
【図12】本実施の形態によるケーブル保持部の変更例の図。
【図13】本実施の形態によるケーブル保持部の他の変更例の図。
【図14】(a)〜(g)は、本発明の実施の形態によるヒンジ部の変更例を表す断面図。
【図15】本発明の実施の形態による係止部の変更例を表す部分斜視図。
【図16】本発明の実施の形態による係止部の変更例を表す部分断面図。
【符号の説明】
【0037】
1 ノイズ吸収装置 2 ケーブル 3 ケース 3a ケーブル用孔
4 コア 4A 平面部 4B 平面部 4a 貫通孔
4b 第一溝 4c 第二溝 10 第一ケース部材
10a 第一凹部 11 第一円周部 11A 第一縁部
11B 第二縁部 12 端部 12A コア保持部材 13 係止部
13A 先端部 14 平坦部 15 バネ部 15A 押圧作用部
16 ケーブル保持部 16A ケーブル保持片 16A1 アーム部
16A2 アーム部 20 第二ケース部材 20a 第二凹部
21 第二円周部 21a 係止部嵌通孔 21A 第三縁部
21B 第四縁部 22 端部 23 防止片 24 平坦部
25 バネ部 25A 押圧作用部 26 ケーブル保持部
26A1 アーム部 26A2 アーム部 30 ヒンジ部
161 第一自由端 162 第二自由端 163 第一連接端
164 第二自由端 165 辺 166 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、
該コアが内包されるケースと、を備えたノイズ吸収装置であって、
該ケースは、ヒンジと、
該ヒンジの一方に連結される第一縁部と、自由端となる第二縁部とを備え、該第一縁部と該第二縁部とを繋いで該第一縁部と該第二縁部との間に該コアを収納可能な第一凹部を画成する第一ケースと、
該ヒンジの他方に連結されると共に該第一縁部に当接可能な第三縁部と、自由端となると共に該第二縁部に当接可能な第四縁部とを備え、該第三縁部と該第四縁部とを繋いで該第三縁部と該第四縁部との間に該コアを収容可能な第二凹部を画成する第二ケースと、より構成され、
該ヒンジは、該第一縁部と該第二縁部とを連結する方向に切断された断面が、該第一凹部及び該第二凹部に対して突出しかつ略曲線より構成され、
該第二縁部及び該第四縁部には、該第二縁部と該第四縁部とが当接した状態で該第二縁部または該第四縁部いずれか一方から他方側に延出され、該第一ケースに対する該第二ケースの、該第二縁部から該第一縁部へ向かう方向のずれを抑制する第一ずれ防止片と、第二縁部または該第四縁部いずれか一方より延出され、該第一ケースに対する該第二ケースの、該第一縁部から該第二縁部へ向かう方向のずれを抑制する第二ずれ防止片と、が設けられていることを特徴とするノイズ吸収装置。
【請求項2】
該第一ずれ防止片または該第二ずれ防止片の少なくとも一方には、係止爪部が設けられ、該係止爪部が設けられた該第一ずれ防止片または該第二ずれ防止片によりずれ防止される該第一ケースまたは該第二ケースには、該係止爪部と係合する係止爪収容部が設けられることを特徴とする請求項1に記載のノイズ吸収装置。
【請求項3】
該ヒンジの該第一縁部と該第二縁部とを連結する方向に切断された断面における中央部分は、非中央部分に比較して肉薄に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2いずれかに記載のノイズ吸収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−24702(P2006−24702A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200855(P2004−200855)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】