説明

ノズルグリップ

【課題】滑りにくく、振動や脈動、衝撃を効果的に吸収することのできるノズルグリップを提供する。
【解決手段】ノズル26が接続されるノズルグリップ22において、弾性材料から形成されたグリップ本体34を備え、グリップ本体34が、該グリップ本体34の中心軸線から外方に延びる環状ヒダ52bを複数、該グリップ本体34の長手方向(送液方向)に沿って適宜間隔で有し、弾性材料からなる複数のヒダ52bを設けることで、滑り止めの効果が得られる。また、複数の環状ヒダ52bがグリップ本体34の長手方向に沿って設けられることで、送液方向に伝播する振動や衝撃を効果的に吸収することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背負式動力噴霧機等に用いられるノズルを作業者が把持するためのノズルグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
農薬散布等に用いられる従来一般の背負式動力噴霧機においては、タンク内の液体を圧送するポンプの吐出口に可撓性のホースを介してノズルが接続されている。ノズルは、一般に、ランス部と、その先端に設けられた液体を噴出する噴口部とから構成されている。また、ランス部とホースとの間には、ノズルを作業者が把持し操作しやすくなるよう、ノズルグリップが設けられている。
【0003】
従来のノズルグリップは、例えば下記特許文献1に見られるようなものが知られている。図4は、かかるノズルグリップ1を詳細に示す斜視図である。図4に示すノズルグリップ1は、金属製のパイプ(図示しない)と、その表面を取り囲むグリップ本体2とから構成されており、一端にはコック3を介してノズルのランス部4が接続され、他端の雌ねじ部5にはホースが接続されるようになっている。
【特許文献1】特開2006−14647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載のノズルグリップ1を始め、従来のノズルグリップの多くは、作業者の手で把持される部分が硬質樹脂から構成されている。また、その外形形状は円柱形ないしは樽形等の単純な形状が多い。このため、ノズルグリップが液体で濡れた場合、滑りやすいという問題がある。また、噴霧作業時に液体及びホースを経て伝わる振動や脈動、或いはコックの開閉により生ずる衝撃が作業者に伝わりやすいという問題点もある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、滑りにくく、振動や脈動、衝撃を効果的に吸収することのできるノズルグリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意検討した結果、噴霧作業時に液体及びホースを通して伝わる振動や衝撃の多くが送液方向のものであることを見出した。本発明は、かかる知見に基づくものであり、ノズル(26)が接続されるノズルグリップ(22)において、弾性材料から形成されたグリップ本体(34)を備え、グリップ本体(34)が、該グリップ本体(34)の中心軸線から外方に延びる環状ヒダ(52b)を複数、該グリップ本体(34)の長手方向(送液方向)に沿って適宜間隔で有することを特徴としている。
【0007】
弾性材料からなる複数のヒダ(52b)を設けることで、滑り止めの効果が得られる。また、複数の環状ヒダ(52b)がグリップ本体(34)の長手方向に沿って設けられることで、送液方向に伝播する振動や衝撃を効果的に吸収することが可能となる。
【0008】
また、複数の環状ヒダ(52b)の寸法は不均一とすることが好ましい。各ヒダ(52b)の吸振効果に変化を持たせることで、幅広い振動域の吸振が可能となるからである。
【0009】
更に、本発明によるグリップノズル(22)は、その一端に、管状の回転子(42)が回転自在に装着されたブッシュ(40)が取り付けられることが好適である。この回転子(42)に可撓性のホース(20)を接続することで、より戻し機能を持たせることができる。
【発明の効果】
【0010】
上述したように、本発明によれば、弾性材料からなる複数の環状ヒダ(52b)を設けたことにより、滑り防止効果及び防振効果が向上し、ひいてはノズルの操作性、作業性が向上するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明によるノズルグリップが用いられた背負式動力噴霧機を示す斜視図である。図1に示す背負式動力噴霧機10自体は、従来から知られた構成であり、液体ポンプやエンジン等を搭載する背負い枠12と、この背負い枠12の上部に配置され、噴霧すべき液体を貯留した液体タンク14と、当該動力噴霧機10を作業者が背負うための左右一対の背負バンド16(図1にはその一方のみを示す)とを備えている。液体ポンプの吐出口18には可撓性ホース20の一端が接続され、ホース20の他端には本発明によるノズルグリップ22及びコック24を介してノズル26が接続されている。ノズル26は、金属性又は硬質樹脂からなるランス部28と、ランス部28の先端に設けられた噴口部30とから構成されている。
【0013】
図2及び図3は、本発明によるノズルグリップ22の一実施形態を詳細に示す図である。図3から理解される通り、ノズルグリップ22は、パイプ32と、このパイプ32の周囲を囲むよう取り付けられたグリップ本体34とから構成されている。パイプ32は、金属製又は硬質樹脂からなり、ノズルグリップ22の芯として機能している。パイプ32の一端はグリップ本体34の同側の端部から僅かに突出しており、この突出部上に雄ねじ部35を有する接続金具36が嵌合され、接着材等により固定されている。接続金具36の雄ねじ部35にコック24が螺着される。また、パイプ32の他端はグリップ本体34の同側の端部と面一であり、ホース20ら接続される接続金具38が装着されている。
【0014】
接続金具38は、ブッシュ40と、ブッシュ40に対して回転自在となっている管状の回転子42とを備えている。回転子42は、ブッシュ40に挿入される軸部43を有し、この軸部43の、ブッシュ40から突出している部分に止め輪44を装着することで、回転子42とブッシュ40とは相対的に回転自在に一体化される。回転子42とブッシュ40との間には、Oリング46及びバックアップリング48とが介設されており、これによって液体の漏洩が防止されている。接続金具38は、ブッシュ40と回転子42が一体化された状態で、ブッシュ40をパイプ32にねじ込んで固定される。軸部43とは反対側の回転子42の内周面には雌ねじが切られている。この雌ねじ部49に、ホース20の先端にカシメにより取り付けられた雄型接続金具(図示しない)が接続されるようになっている。この接続金具38は、ホース20のねじれや過度の曲がりを解消するより戻し機能を奏するものである。
【0015】
なお、図4に沿って上述した特許文献1に記載のノズルグリップ1の場合、ホースのねじれ等を解消するためには、市販のより戻し金具をノズルグリップ1の雌ねじ部5に接続し、ホースをより戻し金具に接続する必要があった。このため、従来のノズルグリップ1の全長は長く、また重くなり、作業性を損なうものであったが、本実施形態に係るノズルグリップ22にはかかる不具合はなく、噴霧作業時のホース20の曲がり抵抗も少なく、操作性を向上させている。
【0016】
グリップ本体34は、ゴムや軟質樹脂等の弾性材料からなる成形品である。グリップ本体34のパイプ32に密着している部分は肉厚の薄い円筒部50となっている。この円筒部50からは多数のヒダ52a,52bが径方向外方に延びている。
【0017】
本実施形態では、ヒダ52a,52bは、ノズルグリップ22の長手方向(送液方向)と平行に延びる短冊状ヒダ52aと、ノズルグリップ22の長手方向に直交する方向に延びる環状ヒダ52bとがある。短冊状ヒダ52aは、図2及び図3に示すノズルグリップにおいては、ゾーンB,D,Fに配置されており、各ゾーンB,D,Fにおいてノズルグリップ22の中心軸線周りに適当な間隔で複数、形成されている。一方、環状ヒダ52bは、図2及び図3においては、ゾーンA,C,E,Gに配置されており、各ゾーンA,C,E,Gにおいてノズルグリップ22の長手方向に適当な間隔で複数、形成されている。
【0018】
図2及び図3から理解される通り、ヒダ52a,52bの最外周部を繋ぐことで形成される外形形状は、中央部が太い、いわゆる樽形ないしは太鼓状である。また、末端側(接続金具38側)では径が漸次大きくされている。一方、先端側(接続金具36側)は先細りの形状とされている。かかる外形形状は、作業者の手での握りやすさや操作性を考慮したものであるため、図示の形状には限定されない。なお、このように外形形状を円柱形以外としたことで、ヒダ52a,52bの寸法が一定ではなくなり、弾性材料からなるヒダ52a,52bによる振動減衰効果が多様なもの、すなわち幅広い振動域の吸振が可能となる。
【0019】
上述したような構成のノズルグリップ22を作業者が握った状態では、弾性材料からなる多数のヒダ52a,52bによって、ノズルグリップ22が液体で濡れたとしても、作業者の手の滑りが防止される。特に、ノズルグリップ22の周方向の滑りについては短冊状ヒダ52aにより防止され、長手方向の滑りについては環状ヒダ52b、太鼓形状及び末端側の反りによって防止される。また、ノズルグリップ22のグリップ本体34が弾性材料から作られているため、握り心地自体も向上している。なお、ノズルグリップ22がノズル26に向かって先細り形状であるため、コック24の操作が容易となっている。
【0020】
噴霧作業中、ノズルグリップ22には種々の振動がホース20や液体を通じて伝えられる。例えば、液体ポンプやエンジンの振動がノズルグリップ22に伝わる。また、特に液体ポンプがピストンポンプである場合には、液体に脈動が生じやすい。噴霧・停止を手元でコントロールするコック24を開閉することでも、衝撃がノズルグリップ22に伝わる。これらの振動や衝撃は送液方向に伝播するものが大半である。送液方向の振動や衝撃は、主として、ノズルグリップ22の長手方向(送液方向)に沿って並設された弾性の環状ヒダ52bにより吸収され、しかもこれらのヒダ52bの寸法が一様でないことから、幅広い振動域で効率的に吸振される。勿論、グリップ本体34全体が弾性材料からなるため、円筒部50及び短冊状ヒダ52aによっても振動や衝撃は吸収される。このように、本実施形態のノズルグリップ22は防振効果に優れ、作業者は快適に噴霧作業を行うことが可能となる。
【0021】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限られないことは言うまでもない。
【0022】
例えば、短冊状ヒダを設けず、環状ヒダのみとしても、高い防振効果を得ることができる。また、上記実施形態における環状ヒダは平坦であるが、傘状ないしは円錐状のものであってもよい。更に、環状ヒダは周方向に連続している必要はなく、外周縁の一部に溝が形成されているような形態としてもよい。更にまた、本発明によるノズルグリップは、背負式動力噴霧機のノズルに限られず、他の装置のノズルにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるノズルグリップを有する背負式動力噴霧機を示す斜視図である。
【図2】本発明によるノズルグリップを詳細に示す側面図である。
【図3】図2のノズルグリップの断面図である。
【図4】従来のノズルグリップを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
10…背負式動力噴霧機、20…ホース、22…ノズルグリップ、24…コック、26…ノズル、32…パイプ、34…グリップ本体、36,38…接続金具、50…円筒部、52a…短冊状ヒダ、52b…環状ヒダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル(26)が接続されるノズルグリップ(22)において、
弾性材料から形成されたグリップ本体(34)を備え、
前記グリップ本体(34)が、該グリップ本体(34)の中心軸線から外方に延びる環状ヒダ(52b)を複数、該グリップ本体(34)の長手方向に沿って適宜間隔で有することを特徴とするノズルグリップ。
【請求項2】
複数の前記環状ヒダ(52b)の寸法が不均一であることを特徴とする請求項1に記載のノズルグリップ。
【請求項3】
管状の回転子(42)が回転自在に装着されたブッシュ(40)が一端に取り付けられており、ホース(20)が前記回転子(42)に接続されるようになっている請求項1又は2に記載のノズルグリップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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