ノズル機構及び,これを適用した連続する長尺物の搬送装置
【課題】流体の圧力を要件としないノズル機構及び,これを適用した連続する長尺物の搬送装置を提供する。
【解決手段】底面に流体の流入口を有し,前記流体の流入口から流入される流体の流速に対する緩衝機能を有し,長手方向を有する緩衝筐体と,前記緩衝筐体の長手方向に対応する長手方向を有する,上面側に排出パネルを備え,前記緩衝筐体から底面を通して流入し,前記排出パネルから排出される流体の排出量が,前記排出パネルの長手方向に沿う中心領域に対し,前記中心領域から外側方向の領域において多くなるように整流する整流板を備えた整流筐体を有する。
【解決手段】底面に流体の流入口を有し,前記流体の流入口から流入される流体の流速に対する緩衝機能を有し,長手方向を有する緩衝筐体と,前記緩衝筐体の長手方向に対応する長手方向を有する,上面側に排出パネルを備え,前記緩衝筐体から底面を通して流入し,前記排出パネルから排出される流体の排出量が,前記排出パネルの長手方向に沿う中心領域に対し,前記中心領域から外側方向の領域において多くなるように整流する整流板を備えた整流筐体を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ノズル機構及び,これを適用した連続する長尺物の搬送装置に関する。特に連続する長尺物を浮上させた状態で搬送する搬送装置に最適に適用可能なノズル機構に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の表面保護フィルムとして用いられる薄いフィルム等の製造過程において,フィルムに塗布された塗布材の乾燥をしながら連続する長尺の状態でフィルムを搬送し,巻き取りを行う行程を有している。
【0003】
かかる製造過程において,長尺の状態のフィルムに収縮,しわ等の歪を発生させない状態で搬送することが,歩留まり向上のために望まれる。このために,これまで搬送される長尺物を浮上させて巻き取り完了まで,いずれの部分とも接触させないで搬送する方法が提示されている(特許文献1)。これをエアフ.ローティング処理と呼ぶ。
【0004】
かかるエアフ.ローディング処理を用いた特許文献1に記載の発明は,走行する薄い連続する長尺物(以下の説明では,これをウェブと呼ぶ)の片面又は両面に溶液を塗布し,熱風で乾燥させる際に,乾燥工程終了まで何物にも触れさせずに,加熱空気の流れを利用してウェブを保持通過せしめ,効率的なフローティングを実施する風洞を示している。
【0005】
かかる特許文献1に記載された風洞は,複数の熱風吹出し用スロットノズルが交互に吹き出し方向が反対に配列されている。そして,それぞれのスロットノズルのウェブ入口側にウェブ接触防止用の空気吹出し孔と,ウェブ出口側には,減圧用の吸込孔を装備して,時間を掛けてウェブを乾燥させている。
【0006】
したがって,風洞は,熱風吹出し用スリットノズルと,接触防止用の空気吹出し孔と,
減圧用の吸込孔の3箇所にあり,熱風と空.気を送り込み,その混合物を吸い込む構造である。
【0007】
特許文献2には,連続走行されるシート状被乾燥体との対向面に,走行方向と直交して設けられた一対のノズル口から乾燥風を吹き出させてシート状被乾燥体を浮上状態に保持して,連続走行させて乾燥する機構が示されている。さらに,特徴としてノズルロに対して走行方向の前方側と後方側とに位置してシート状被乾燥体に対する浮上圧力を保持する静圧領域保持部が一体に形成されることが示されている。
【0008】
さらに,特許文献3には,被乾燥体(支持体)の搬送速度が高速搬送となった場合でも,支持休の両端部でのバタツキがなく,高速搬送の安定した連続運転が可能で,生産性の向上を図ることが出来るとする発明が示されている。
【0009】
すなわち,特許文献3に記載の発明において,フローティングノズルは,ノズル本体となる筐体部と,当該筐体部の支持体対向面長手方向に沿って形成され,気体の吹き出し口となるノズルスリットと,前記筐体部の長手方向両端部にそれぞれ形成されたフロー制御板とを有している。そして,このフロー制御板は,前記ノズルスリットの端部の覆い(roof)となるように,ノズルスリット中央部に向けて形成された傾斜面を有しているように構成されている。
【0010】
ここで,上記の従来技術を考察すると,特許文献1に記載の発明では,ウェブの搬送速度は風まかせとなる。風洞構造上に基づく吹出スリット及び吹出孔,吸込孔とを設ける構造は製造費用と,送風器の熱風供給や,空気供給において複雑な構造となることは避けられない。
【0011】
特許文献2に記載の発明は,シート状被乾燥体に対する浮上圧力を保持する静圧領域保持部を設けることが要件であり,その詳細は開示がないが,ノズルの形状が大きくならざるを得ないという問題が推測される。
【0012】
また,特許文献3に記載の発明においても,フローティングノズルの詳細は不明であるが,筐体部の長手方向両端部にそれぞれ形成されたフロー制御板を設けている。これは,長手方向両端側に送風熱を逃れるのを防止するものである。
【0013】
このように,従来のエアフ.ローティング処理は,連続する長尺物の搬送において,連続する長尺物を浮上させるために,所定以上の風速を供給可能とするスリット機構を得ようとする考えに基づくことが専らであった。
【0014】
すなわち,かかる従来のノズル機構についての考え方では,流体を高速に当てる構造であり,連続する長尺物のばたつきをなくすことは困難であり,同時に,供給する流体がノズル機構の長手方向に逃れることを回避することが難しいという問題があった。これを回避するための,特許文献3に示されるような機構が必要である。そして,供給する流体がノズル機構の長手方向に逃れる分を補充するためにより更に圧力の高い流体の供給,従って高出力の送風機が必要となる。
【0015】
さらに,長尺物に対し,インクや溶剤を使用してコート樹脂の塗布を施すために,グラビア印刷では60〜120℃,コート樹脂の塗布では溶剤の塗布では120〜250℃の熱風を供給することが必要であり,圧力との組み合わせにより爆発の危険性もあり,消防法の規制の対象となっている。
【特許文献1】特開昭56−51266号公報
【特許文献2】特開平10−339575号公報
【特許文献3】特開2000−24574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記の点に鑑みて,本願発明者等は,上記特許文献1〜3に対する問題点を解決するノズル構造を先の特許出願特願2006年95672号(以降,単に先願という)により提案している。
【0017】
かかる先願に記載のノズル機構の外観斜視図が,図1に示される。図1において,ノズル機構本体1の上面に並行する流体排出溝10a,10bが備えられている。ノズル機構本体1の下側の流入口2から流体が流入される。流入口2と接続された図示しないダクトを通してポンプから送られた流体が流入口2に注入される。
【0018】
図2は,図1のA−A’線に沿うノズル機構本体1の概略断面図であり,流体の流れを説明する図である。
【0019】
ノズル機構本体1の下部側の流入口2から流体が流入される。ノズル機構本体1の内部に略山型の仕切り壁板11が形成されている。この仕切り壁板11によりノズル機構本体1は上下の空間1A,1Bに仕切られている。
【0020】
空間1Aは,流入口2から流入された流体の野圧力及び流速を均一化するための空間である。
【0021】
仕切り壁板11には,中央部近傍にノズル機構本体1の長手方向に沿って複数の孔11aが設けられている。
【0022】
したがって,空間1Aに溜まった流体は,孔11aを通って空間1Bに流れる。空間1Bに流れた流体は,更にノズル機構本体1の上面に並行する流体排出溝10a,10bを通って上方向に排出される。この時,流体排出溝10a,10bの溝幅は狭く,流体の排出速度が高められる。
【0023】
図3は,かかる図1に示す先願のノズル機構において,流体排出溝10a,10bから外部に排出される流体の流れを考察する図である。
【0024】
ノズル機構本体1の両側に糸3の端を固定して流体が排出されている時の糸23の動きを観察した。このとき,ノズル機構本体1の上方向に平板12をかざして糸3の状態を観察した。糸3の中央部近傍が上下に振幅する様子が観察された。
【0025】
これは,図1のノズル機構にあっては,流体排出溝10a,10bの溝幅を狭くして流体の排出速度を高めてエアーフローティング状態を形成している。このためにノズル機構の両側から流体が上方向に排出され,中央部から排出されないので流体の中央部で下方向への回り込みが生じるためであると考えられる。
【0026】
したがって,かかるノズル機構を薄い長尺シート状のウェブの搬送工程に用いる場合は,ウェブに上下振動を与え,ウェブに歪を与えることになる。
【0027】
さらに,シート状のウェブが,液晶表示パネル等に使用するマスクシートである場合は,積層化のために溶剤が塗布され,これを乾燥するための搬送工程にノズル機構が使用される場合は,適時におけるノズル機構の清掃が必要となる。すなわち,搬送工程は,溶剤の舞う雰囲気が形成され,搬送工程起動中あるいは,停止中であっても空気中に舞う溶剤がノズル機構に付着し,堆積する。
【0028】
このように,インクや溶剤等が使用されることにより,長期間の使用によって,ノズル機構に汚れが溜まり,これを定期的に清掃することが必要である。しかし,図1の機構では,流体の流入口2が,ダクトに固定されているので,これを外してからの清掃が必要となる。
【0029】
したがって,本願発明の目的は,上記の従来技術及び,先願で提示のノズル機構における問題に鑑みて,流体の排出速度を要件としないノズル機構及び,これを適用した連続する長尺シート物の搬送装置を提供することにある。
【0030】
同時に搬送される連続する長尺シート物に,堆積するインク,溶剤等の付着物の清掃のために,ノズル機構の分解が容易であり,清掃を簡易に可能とするノズル機構及び,これを適用した連続する長尺物の搬送装置を提供することにある。
【0031】
さらに,本発明は,図1の機構と比べ上下方向に小型化を実現するノズル機構及び,これを適用した連続する長尺物の搬送装置を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記の課題を解決する本発明の第1の側面は,ノズル機構であって,底面に流体の流入口を有し,前記流体の流入口から流入される流体の流速に対する緩衝機能を有し,長手方向を有する緩衝筐体と,前記緩衝筐体の長手方向に対応する長手方向を有する,上面側に排出パネルを備え,前記緩衝筐体から底面を通して流入し,前記排出パネルから排出される流体の排出量が,前記排出パネルの長手方向に沿う中心領域に対し,前記中心領域から外側方向の領域において多くなるように整流する整流板を備えた整流筐体を有する。
【0033】
上記側面において,前記整流筐体における整流板は,前記整流筐体の底面に長手方向の中心線に対して互いに離間して配置され,且つそれぞれ前記中心線から外側方向に傾いて配置された2枚の整流板で構成され,更に前記整流筐体の底面の前記2枚の整流板間の領域は,前記緩衝筐体から流体が流入されないように構成されること我可能である。
さらに,前記排出パネルを,全面に複数の孔が空けられているものとすることが可能である。
【0034】
さらに,前記緩衝筐体と前記整流筐体は,分離可能に構成されるように構成できる。
【0035】
また,上記の課題を解決する本発明の第2の側面は,連続する長尺物を浮上させた状態で搬送する搬送装置であって,それぞれ前記連続する長尺物の搬送方向と垂直な方向の長手方向を有する複数のノズル機構を有し,前記複数のノズル機構は,底面に流体の流入口を有し,前記流体の流入口から流入される流体の流速に対する緩衝機能を有し,長手方向を有する緩衝筐体と,前記緩衝筐体の長手方向に対応する長手方向を有する,上面側に排出パネルを備え,前記緩衝筐体から底面を通して流入し,前記排出パネルから排出される流体の排出量が,前記排出パネルの長手方向に沿う中心領域に対し,前記中心領域から外側方向の領域において多くなるように整流する整流板を備えた整流筐体を有する。
【0036】
本発明の上記特徴は,以下に図面を参照して説明される発明を実施するための最良の形態から更に明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に図面に従い,本発明の実施の形態例を説明する。
【0038】
図4は,本発明に従うノズル機構の実施例の外観斜視図である。基本的構成として図1の構成と同様に,下面側に流体の流入口2を有している。更にノズル機構本体1は,第1の空間を形成する緩衝筐体1Aと,第2の空間を形成する整流筐体1Bにより形成され,それぞれは,両側の掛け止めピン11,12により容易に分離可能に一体化される。
【0039】
緩衝筐体1Aは,図示しないダクトに接続された流入口2から流入される流体の流速に対する緩衝機能を有し,長手方向を有している。整流筐体1Bは,緩衝筐体1Aの長手方向に対応する長手方向を有し,上面側に排出パネル10を備えている。
【0040】
整流筐体1Bは,更に前記緩衝筐体1Aから流入し,前記排出パネル10から排出される流体の排出量が,前記排出パネル10の長手方向に沿う中心領域に対し,外側方向の領域において多くなるように整流する整流板を内部に備えている。
【0041】
図5A〜図5Eは,ノズル機構本体1を構成する緩衝筐体1A及び整流筐体1Bを分解して説明する図である。
【0042】
掛け止めピン11,12を外すことにより,緩衝筐体1A及び整流筐体1Bを分離する
ことができる。図5A,図5Bは,それぞれ図4の矢印c,d方向から見た緩衝筐体1Aの上面側と下面側を示す図である。
【0043】
緩衝筐体1Aは,四角のボックスであり,その上面側には,緩衝筐体1Aの辺部に沿う四角形の開口30が設けられている。図5Aにおいて,下面側に設けられている流体の流入口31の開口31が見える。
【0044】
図5Bに示す緩衝筐体1Aの下面側には,ダクトと接続される流入口2が設けられている。さらに,流体の流入するほぼ楕円形の開口31を有している。また,ダクトと気密状態で接続可能とするために,楕円形の開口31の周囲にパッキング32が設けられている。
【0045】
図5C,図5Dは,それぞれ図4の矢印a,b方向から見た整流筐体1の上面側と下面側を示す図である。
【0046】
図5Cは,矢印a方向,従って排出パネル10を上面から見た図である。排出パネル10には,複数の小さな孔(約1mm径)が設けられたパンチ金属好ましくはステンレス板で成形して,図5Cの右側に示す断面が形成される。すなわち,図5Cの右端に断面形状が示されるように,長手方向と並行して走る山型線が形成されている。したがって,複数の小さな孔の領域に異なる幅の領域11aと11bが形成されている。
【0047】
広い幅の中央部領域11aと,この中央部領域11aの両側に,狭い幅の左右領域11bが形成されている。
【0048】
図5Dは,整流筐体1Bの内側から見た底面21の平面図である。
【0049】
前記図5Cにおける広い幅の中央部領域11aに対応する領域に,前記整流筐体1Bの長手方向の中心線CLに対して互いに離間して配置され,且つそれぞれ前記中心線CLから外側方向に傾いて配置された2枚の整流板20a,20bを有している。
【0050】
さらに,2枚の整流板20a,20bの外側には長手方向に沿って,複数の長楕円の通し孔22が設けられている。
【0051】
したがって,整流筐体1Bの底面21の前記2枚の整流板20a,20b間の領域を除き,緩衝筐体1Aに溜められた流体が複数の長楕円の通し孔22を通して整流筐体1Bに流入される。
【0052】
図5Eは,図5DにおけるC−C’線に沿う断面を示す図である。この図により,整流板20a,20bは,前記中心線CLから外側方向に傾いて配置された状態であることが理解できる。
【0053】
次に,図6により,かかる流体の流入口2の楕円形の開口31を通して流入した流体の流れについて説明する。
【0054】
流体の流入口2の楕円形の開口31から流入した流体は,緩衝筐体1A内で,流体の流速及び圧力が均一化され,整流筐体1Bの底面の複数の通し孔22を通して整流筐体1B内に送られる。
【0055】
ここで,図1の先願構成と比較したときの,本発明の一つの特徴として流体の流入口2の楕円形の開口31から流入した流体は,直接に整流筐体1Bの底面の複数の通し孔22に向かう構成ではない。すなわち,2枚の整流板20a,20b間には,通し孔22は設けられていない。
【0056】
したがって,開口31から流入した流体は,整流筐体1Bの底面に当たり,横方向に広がった後に通し孔22を通過する構成である。
【0057】
これにより緩衝筐体1Aとして流入した流体の流速及び圧力を均一にするための緩衝容積は,図1の構成に比べて小さくて良い。この結果,本発明に従うノズル機構は特に高さ方向において,小型化することが可能である。
【0058】
整流筐体1B内に流入した流体は,整流板20a,20bで囲われた領域で一旦滞留し,その後に排出パネル10の複数の小孔から上方向に排出される。
【0059】
一方,図6において,整流板20a,20bの外側領域においては,複数の長楕円の通し孔22から流入する流体が合流し,排出パネル10の複数の小孔から排出される。そして,整流板20a,20bの外側領域において,整流板20a,20bから離れるほどに,合流する流体が多くなる。
【0060】
これにより,排出パネル10から排出される流体は,前記中心領域(図5Dの中心線CLを基準として)外側方向の領域において多くなるように整流される。例えば,中心領域の流体の排出量を1Xとすると,外側方向の領域に向かうほど,2X,3Xと流体流量が増加する。
【0061】
先願発明を含めて従来技術では専ら排出される流体の流速によりフローティング力を与えようとするのに対し,本発明では,流体の排出される排出量によりフローティング力を与えるものである。
【0062】
さらに,図6に示す断面からも容易に理解できるように,排出パネル10から排出される流体の方向が,いずれも中心に向かうように構成されている。
【0063】
したがって,排出される流体が,下方向に回り込むという流れが形成されず,ノズル機構の長手方向と垂直方向に排出された流体が逃げる方向に,流れが形成される。
【0064】
これにより,排出パネル10上面において,被搬送物であるシート状のウェブが上下に振動するという現象が生じない。
【0065】
かかる点は,本願発明者による図3に説明したと同様の実験観察により確認されている。
【0066】
すなわち,図7は,図3と同様に糸3の両端を本願発明のノズル機構に固定し,流体を排出している時の状態を示す図である。
【0067】
糸3は,中央部近傍が平板12に近接し,上下の振動も無くほぼ円弧状態が維持されていることが確認できた。これは,流体の流排出量は,中央部にも有り流体の下方向への回り込みが生じず,外側程排出量が大きく,且つ全ての排出の方向が中央部に向いているためであると判断にできる。これにより,本発明のノズル機構をシート状ウェブの搬送に使用する場合,流体供給のポンプパワーを大きくすること無く,連続するシート状ウェブを均一に浮上させることが可能である。
【0068】
図8は,シート状ウェブの搬送工程に本発明に従うノズル機構を意使用する例を示す図である。
【0069】
長尺のシート状ウェブ100は,一方側から搬送され,他方側の図示しない巻き取り装置に無接触で送られる。この搬送の過程で,ノズル機構200からダクト110を通して送られる流体として高温の空気が排出されることにより,長尺のシート状ウェブ100に塗布されたインキや溶剤が乾燥された状態で巻き取り装置に巻き取られる。
【0070】
先に説明したように,本発明のノズル機構から排出される流体により長尺のシート状ウェブ100は振動されないので,ウェブ100に対し歪を与えることが回避できる。
【0071】
図9は,さらに,図8を補足するための図である。図8では,ノズル機構が長尺のシート状ウェブ100の一方側に配置されているが,より安定に搬送を可能とするために,図9に示すように,シート状ウェブ100の両側に流体排出の上下方向を交互とするように配置することが可能である。
【0072】
図10は,さらに,本発明のノズル機構を,搬送工程における回転ローラに代えて使用する例である。
【0073】
すなわち,図10(a)に示すように,長尺のシート状ウェブ100の搬送過程において,搬送方向を変えるために途中にローラ6を介する場合がある。しかし,巻き取りローラ5にウェブ100を最終的に巻き取る前に無接触状態にして起きたという要望が有る。かかる場合,本発明に従うノズル機構を図10(b)のように,ローラ6に対応する位置に配置することにより,搬送方向を変えることができ,同時に最終巻き取りまで無接触とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】先願に記載のノズル機構の外観斜視図である。
【図2】図1のA−A’線に沿うノズル機構本体1の概略断面図であり,流体の流れを説明する図である。
【図3】図1に示す先願のノズル機構において,流体排出溝から外部に排出される流体の流れを考察する図である。
【図4】本発明に従うノズル機構の実施例の外観斜視図である。
【図5A】図4の矢印c方向から見た緩衝筐体の上面側を示す図である。
【図5B】図4の矢印d方向から見た緩衝筐体の下面側を示す図である。
【図5C】図4の矢印a方向から見た整流筐体の上面側を示す図である。
【図5D】図4の矢印b方向から見た整流筐体の下面側を示す図である。
【図5E】図5DにおけるC−C’線に沿う断面を示す図である。
【図6】流体の流入口の楕円形の開口を通して流入した流体の流れについて説明する図である。
【図7】図3と同様に糸の両端を本願発明のノズル機構に固定し,流体を排出している時の状態を示す図である。
【図8】シート状ウェブの搬送工程に本発明に従うノズル機構を意使用する例を示す図である。
【図9】図8を補足するための図である。
【図10】本発明のノズル機構を,搬送工程における回転ローラに代えて使用する例である。
【符号の説明】
【0075】
1 ノズル機構本体
1A 緩衝筐体
1B 整流筐体
2 流体の流入口
10 排出パネル
10a,10b 流体排出溝
20a,20b 整流版
21 整流筐体の底面
22 長楕円の通し孔
31 流入口の開口
32 パッキング
5A,5B 掛け止めピン
6 方路変換ローラ
100 シート状ウェブ
【技術分野】
【0001】
本発明は,ノズル機構及び,これを適用した連続する長尺物の搬送装置に関する。特に連続する長尺物を浮上させた状態で搬送する搬送装置に最適に適用可能なノズル機構に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の表面保護フィルムとして用いられる薄いフィルム等の製造過程において,フィルムに塗布された塗布材の乾燥をしながら連続する長尺の状態でフィルムを搬送し,巻き取りを行う行程を有している。
【0003】
かかる製造過程において,長尺の状態のフィルムに収縮,しわ等の歪を発生させない状態で搬送することが,歩留まり向上のために望まれる。このために,これまで搬送される長尺物を浮上させて巻き取り完了まで,いずれの部分とも接触させないで搬送する方法が提示されている(特許文献1)。これをエアフ.ローティング処理と呼ぶ。
【0004】
かかるエアフ.ローディング処理を用いた特許文献1に記載の発明は,走行する薄い連続する長尺物(以下の説明では,これをウェブと呼ぶ)の片面又は両面に溶液を塗布し,熱風で乾燥させる際に,乾燥工程終了まで何物にも触れさせずに,加熱空気の流れを利用してウェブを保持通過せしめ,効率的なフローティングを実施する風洞を示している。
【0005】
かかる特許文献1に記載された風洞は,複数の熱風吹出し用スロットノズルが交互に吹き出し方向が反対に配列されている。そして,それぞれのスロットノズルのウェブ入口側にウェブ接触防止用の空気吹出し孔と,ウェブ出口側には,減圧用の吸込孔を装備して,時間を掛けてウェブを乾燥させている。
【0006】
したがって,風洞は,熱風吹出し用スリットノズルと,接触防止用の空気吹出し孔と,
減圧用の吸込孔の3箇所にあり,熱風と空.気を送り込み,その混合物を吸い込む構造である。
【0007】
特許文献2には,連続走行されるシート状被乾燥体との対向面に,走行方向と直交して設けられた一対のノズル口から乾燥風を吹き出させてシート状被乾燥体を浮上状態に保持して,連続走行させて乾燥する機構が示されている。さらに,特徴としてノズルロに対して走行方向の前方側と後方側とに位置してシート状被乾燥体に対する浮上圧力を保持する静圧領域保持部が一体に形成されることが示されている。
【0008】
さらに,特許文献3には,被乾燥体(支持体)の搬送速度が高速搬送となった場合でも,支持休の両端部でのバタツキがなく,高速搬送の安定した連続運転が可能で,生産性の向上を図ることが出来るとする発明が示されている。
【0009】
すなわち,特許文献3に記載の発明において,フローティングノズルは,ノズル本体となる筐体部と,当該筐体部の支持体対向面長手方向に沿って形成され,気体の吹き出し口となるノズルスリットと,前記筐体部の長手方向両端部にそれぞれ形成されたフロー制御板とを有している。そして,このフロー制御板は,前記ノズルスリットの端部の覆い(roof)となるように,ノズルスリット中央部に向けて形成された傾斜面を有しているように構成されている。
【0010】
ここで,上記の従来技術を考察すると,特許文献1に記載の発明では,ウェブの搬送速度は風まかせとなる。風洞構造上に基づく吹出スリット及び吹出孔,吸込孔とを設ける構造は製造費用と,送風器の熱風供給や,空気供給において複雑な構造となることは避けられない。
【0011】
特許文献2に記載の発明は,シート状被乾燥体に対する浮上圧力を保持する静圧領域保持部を設けることが要件であり,その詳細は開示がないが,ノズルの形状が大きくならざるを得ないという問題が推測される。
【0012】
また,特許文献3に記載の発明においても,フローティングノズルの詳細は不明であるが,筐体部の長手方向両端部にそれぞれ形成されたフロー制御板を設けている。これは,長手方向両端側に送風熱を逃れるのを防止するものである。
【0013】
このように,従来のエアフ.ローティング処理は,連続する長尺物の搬送において,連続する長尺物を浮上させるために,所定以上の風速を供給可能とするスリット機構を得ようとする考えに基づくことが専らであった。
【0014】
すなわち,かかる従来のノズル機構についての考え方では,流体を高速に当てる構造であり,連続する長尺物のばたつきをなくすことは困難であり,同時に,供給する流体がノズル機構の長手方向に逃れることを回避することが難しいという問題があった。これを回避するための,特許文献3に示されるような機構が必要である。そして,供給する流体がノズル機構の長手方向に逃れる分を補充するためにより更に圧力の高い流体の供給,従って高出力の送風機が必要となる。
【0015】
さらに,長尺物に対し,インクや溶剤を使用してコート樹脂の塗布を施すために,グラビア印刷では60〜120℃,コート樹脂の塗布では溶剤の塗布では120〜250℃の熱風を供給することが必要であり,圧力との組み合わせにより爆発の危険性もあり,消防法の規制の対象となっている。
【特許文献1】特開昭56−51266号公報
【特許文献2】特開平10−339575号公報
【特許文献3】特開2000−24574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記の点に鑑みて,本願発明者等は,上記特許文献1〜3に対する問題点を解決するノズル構造を先の特許出願特願2006年95672号(以降,単に先願という)により提案している。
【0017】
かかる先願に記載のノズル機構の外観斜視図が,図1に示される。図1において,ノズル機構本体1の上面に並行する流体排出溝10a,10bが備えられている。ノズル機構本体1の下側の流入口2から流体が流入される。流入口2と接続された図示しないダクトを通してポンプから送られた流体が流入口2に注入される。
【0018】
図2は,図1のA−A’線に沿うノズル機構本体1の概略断面図であり,流体の流れを説明する図である。
【0019】
ノズル機構本体1の下部側の流入口2から流体が流入される。ノズル機構本体1の内部に略山型の仕切り壁板11が形成されている。この仕切り壁板11によりノズル機構本体1は上下の空間1A,1Bに仕切られている。
【0020】
空間1Aは,流入口2から流入された流体の野圧力及び流速を均一化するための空間である。
【0021】
仕切り壁板11には,中央部近傍にノズル機構本体1の長手方向に沿って複数の孔11aが設けられている。
【0022】
したがって,空間1Aに溜まった流体は,孔11aを通って空間1Bに流れる。空間1Bに流れた流体は,更にノズル機構本体1の上面に並行する流体排出溝10a,10bを通って上方向に排出される。この時,流体排出溝10a,10bの溝幅は狭く,流体の排出速度が高められる。
【0023】
図3は,かかる図1に示す先願のノズル機構において,流体排出溝10a,10bから外部に排出される流体の流れを考察する図である。
【0024】
ノズル機構本体1の両側に糸3の端を固定して流体が排出されている時の糸23の動きを観察した。このとき,ノズル機構本体1の上方向に平板12をかざして糸3の状態を観察した。糸3の中央部近傍が上下に振幅する様子が観察された。
【0025】
これは,図1のノズル機構にあっては,流体排出溝10a,10bの溝幅を狭くして流体の排出速度を高めてエアーフローティング状態を形成している。このためにノズル機構の両側から流体が上方向に排出され,中央部から排出されないので流体の中央部で下方向への回り込みが生じるためであると考えられる。
【0026】
したがって,かかるノズル機構を薄い長尺シート状のウェブの搬送工程に用いる場合は,ウェブに上下振動を与え,ウェブに歪を与えることになる。
【0027】
さらに,シート状のウェブが,液晶表示パネル等に使用するマスクシートである場合は,積層化のために溶剤が塗布され,これを乾燥するための搬送工程にノズル機構が使用される場合は,適時におけるノズル機構の清掃が必要となる。すなわち,搬送工程は,溶剤の舞う雰囲気が形成され,搬送工程起動中あるいは,停止中であっても空気中に舞う溶剤がノズル機構に付着し,堆積する。
【0028】
このように,インクや溶剤等が使用されることにより,長期間の使用によって,ノズル機構に汚れが溜まり,これを定期的に清掃することが必要である。しかし,図1の機構では,流体の流入口2が,ダクトに固定されているので,これを外してからの清掃が必要となる。
【0029】
したがって,本願発明の目的は,上記の従来技術及び,先願で提示のノズル機構における問題に鑑みて,流体の排出速度を要件としないノズル機構及び,これを適用した連続する長尺シート物の搬送装置を提供することにある。
【0030】
同時に搬送される連続する長尺シート物に,堆積するインク,溶剤等の付着物の清掃のために,ノズル機構の分解が容易であり,清掃を簡易に可能とするノズル機構及び,これを適用した連続する長尺物の搬送装置を提供することにある。
【0031】
さらに,本発明は,図1の機構と比べ上下方向に小型化を実現するノズル機構及び,これを適用した連続する長尺物の搬送装置を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記の課題を解決する本発明の第1の側面は,ノズル機構であって,底面に流体の流入口を有し,前記流体の流入口から流入される流体の流速に対する緩衝機能を有し,長手方向を有する緩衝筐体と,前記緩衝筐体の長手方向に対応する長手方向を有する,上面側に排出パネルを備え,前記緩衝筐体から底面を通して流入し,前記排出パネルから排出される流体の排出量が,前記排出パネルの長手方向に沿う中心領域に対し,前記中心領域から外側方向の領域において多くなるように整流する整流板を備えた整流筐体を有する。
【0033】
上記側面において,前記整流筐体における整流板は,前記整流筐体の底面に長手方向の中心線に対して互いに離間して配置され,且つそれぞれ前記中心線から外側方向に傾いて配置された2枚の整流板で構成され,更に前記整流筐体の底面の前記2枚の整流板間の領域は,前記緩衝筐体から流体が流入されないように構成されること我可能である。
さらに,前記排出パネルを,全面に複数の孔が空けられているものとすることが可能である。
【0034】
さらに,前記緩衝筐体と前記整流筐体は,分離可能に構成されるように構成できる。
【0035】
また,上記の課題を解決する本発明の第2の側面は,連続する長尺物を浮上させた状態で搬送する搬送装置であって,それぞれ前記連続する長尺物の搬送方向と垂直な方向の長手方向を有する複数のノズル機構を有し,前記複数のノズル機構は,底面に流体の流入口を有し,前記流体の流入口から流入される流体の流速に対する緩衝機能を有し,長手方向を有する緩衝筐体と,前記緩衝筐体の長手方向に対応する長手方向を有する,上面側に排出パネルを備え,前記緩衝筐体から底面を通して流入し,前記排出パネルから排出される流体の排出量が,前記排出パネルの長手方向に沿う中心領域に対し,前記中心領域から外側方向の領域において多くなるように整流する整流板を備えた整流筐体を有する。
【0036】
本発明の上記特徴は,以下に図面を参照して説明される発明を実施するための最良の形態から更に明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に図面に従い,本発明の実施の形態例を説明する。
【0038】
図4は,本発明に従うノズル機構の実施例の外観斜視図である。基本的構成として図1の構成と同様に,下面側に流体の流入口2を有している。更にノズル機構本体1は,第1の空間を形成する緩衝筐体1Aと,第2の空間を形成する整流筐体1Bにより形成され,それぞれは,両側の掛け止めピン11,12により容易に分離可能に一体化される。
【0039】
緩衝筐体1Aは,図示しないダクトに接続された流入口2から流入される流体の流速に対する緩衝機能を有し,長手方向を有している。整流筐体1Bは,緩衝筐体1Aの長手方向に対応する長手方向を有し,上面側に排出パネル10を備えている。
【0040】
整流筐体1Bは,更に前記緩衝筐体1Aから流入し,前記排出パネル10から排出される流体の排出量が,前記排出パネル10の長手方向に沿う中心領域に対し,外側方向の領域において多くなるように整流する整流板を内部に備えている。
【0041】
図5A〜図5Eは,ノズル機構本体1を構成する緩衝筐体1A及び整流筐体1Bを分解して説明する図である。
【0042】
掛け止めピン11,12を外すことにより,緩衝筐体1A及び整流筐体1Bを分離する
ことができる。図5A,図5Bは,それぞれ図4の矢印c,d方向から見た緩衝筐体1Aの上面側と下面側を示す図である。
【0043】
緩衝筐体1Aは,四角のボックスであり,その上面側には,緩衝筐体1Aの辺部に沿う四角形の開口30が設けられている。図5Aにおいて,下面側に設けられている流体の流入口31の開口31が見える。
【0044】
図5Bに示す緩衝筐体1Aの下面側には,ダクトと接続される流入口2が設けられている。さらに,流体の流入するほぼ楕円形の開口31を有している。また,ダクトと気密状態で接続可能とするために,楕円形の開口31の周囲にパッキング32が設けられている。
【0045】
図5C,図5Dは,それぞれ図4の矢印a,b方向から見た整流筐体1の上面側と下面側を示す図である。
【0046】
図5Cは,矢印a方向,従って排出パネル10を上面から見た図である。排出パネル10には,複数の小さな孔(約1mm径)が設けられたパンチ金属好ましくはステンレス板で成形して,図5Cの右側に示す断面が形成される。すなわち,図5Cの右端に断面形状が示されるように,長手方向と並行して走る山型線が形成されている。したがって,複数の小さな孔の領域に異なる幅の領域11aと11bが形成されている。
【0047】
広い幅の中央部領域11aと,この中央部領域11aの両側に,狭い幅の左右領域11bが形成されている。
【0048】
図5Dは,整流筐体1Bの内側から見た底面21の平面図である。
【0049】
前記図5Cにおける広い幅の中央部領域11aに対応する領域に,前記整流筐体1Bの長手方向の中心線CLに対して互いに離間して配置され,且つそれぞれ前記中心線CLから外側方向に傾いて配置された2枚の整流板20a,20bを有している。
【0050】
さらに,2枚の整流板20a,20bの外側には長手方向に沿って,複数の長楕円の通し孔22が設けられている。
【0051】
したがって,整流筐体1Bの底面21の前記2枚の整流板20a,20b間の領域を除き,緩衝筐体1Aに溜められた流体が複数の長楕円の通し孔22を通して整流筐体1Bに流入される。
【0052】
図5Eは,図5DにおけるC−C’線に沿う断面を示す図である。この図により,整流板20a,20bは,前記中心線CLから外側方向に傾いて配置された状態であることが理解できる。
【0053】
次に,図6により,かかる流体の流入口2の楕円形の開口31を通して流入した流体の流れについて説明する。
【0054】
流体の流入口2の楕円形の開口31から流入した流体は,緩衝筐体1A内で,流体の流速及び圧力が均一化され,整流筐体1Bの底面の複数の通し孔22を通して整流筐体1B内に送られる。
【0055】
ここで,図1の先願構成と比較したときの,本発明の一つの特徴として流体の流入口2の楕円形の開口31から流入した流体は,直接に整流筐体1Bの底面の複数の通し孔22に向かう構成ではない。すなわち,2枚の整流板20a,20b間には,通し孔22は設けられていない。
【0056】
したがって,開口31から流入した流体は,整流筐体1Bの底面に当たり,横方向に広がった後に通し孔22を通過する構成である。
【0057】
これにより緩衝筐体1Aとして流入した流体の流速及び圧力を均一にするための緩衝容積は,図1の構成に比べて小さくて良い。この結果,本発明に従うノズル機構は特に高さ方向において,小型化することが可能である。
【0058】
整流筐体1B内に流入した流体は,整流板20a,20bで囲われた領域で一旦滞留し,その後に排出パネル10の複数の小孔から上方向に排出される。
【0059】
一方,図6において,整流板20a,20bの外側領域においては,複数の長楕円の通し孔22から流入する流体が合流し,排出パネル10の複数の小孔から排出される。そして,整流板20a,20bの外側領域において,整流板20a,20bから離れるほどに,合流する流体が多くなる。
【0060】
これにより,排出パネル10から排出される流体は,前記中心領域(図5Dの中心線CLを基準として)外側方向の領域において多くなるように整流される。例えば,中心領域の流体の排出量を1Xとすると,外側方向の領域に向かうほど,2X,3Xと流体流量が増加する。
【0061】
先願発明を含めて従来技術では専ら排出される流体の流速によりフローティング力を与えようとするのに対し,本発明では,流体の排出される排出量によりフローティング力を与えるものである。
【0062】
さらに,図6に示す断面からも容易に理解できるように,排出パネル10から排出される流体の方向が,いずれも中心に向かうように構成されている。
【0063】
したがって,排出される流体が,下方向に回り込むという流れが形成されず,ノズル機構の長手方向と垂直方向に排出された流体が逃げる方向に,流れが形成される。
【0064】
これにより,排出パネル10上面において,被搬送物であるシート状のウェブが上下に振動するという現象が生じない。
【0065】
かかる点は,本願発明者による図3に説明したと同様の実験観察により確認されている。
【0066】
すなわち,図7は,図3と同様に糸3の両端を本願発明のノズル機構に固定し,流体を排出している時の状態を示す図である。
【0067】
糸3は,中央部近傍が平板12に近接し,上下の振動も無くほぼ円弧状態が維持されていることが確認できた。これは,流体の流排出量は,中央部にも有り流体の下方向への回り込みが生じず,外側程排出量が大きく,且つ全ての排出の方向が中央部に向いているためであると判断にできる。これにより,本発明のノズル機構をシート状ウェブの搬送に使用する場合,流体供給のポンプパワーを大きくすること無く,連続するシート状ウェブを均一に浮上させることが可能である。
【0068】
図8は,シート状ウェブの搬送工程に本発明に従うノズル機構を意使用する例を示す図である。
【0069】
長尺のシート状ウェブ100は,一方側から搬送され,他方側の図示しない巻き取り装置に無接触で送られる。この搬送の過程で,ノズル機構200からダクト110を通して送られる流体として高温の空気が排出されることにより,長尺のシート状ウェブ100に塗布されたインキや溶剤が乾燥された状態で巻き取り装置に巻き取られる。
【0070】
先に説明したように,本発明のノズル機構から排出される流体により長尺のシート状ウェブ100は振動されないので,ウェブ100に対し歪を与えることが回避できる。
【0071】
図9は,さらに,図8を補足するための図である。図8では,ノズル機構が長尺のシート状ウェブ100の一方側に配置されているが,より安定に搬送を可能とするために,図9に示すように,シート状ウェブ100の両側に流体排出の上下方向を交互とするように配置することが可能である。
【0072】
図10は,さらに,本発明のノズル機構を,搬送工程における回転ローラに代えて使用する例である。
【0073】
すなわち,図10(a)に示すように,長尺のシート状ウェブ100の搬送過程において,搬送方向を変えるために途中にローラ6を介する場合がある。しかし,巻き取りローラ5にウェブ100を最終的に巻き取る前に無接触状態にして起きたという要望が有る。かかる場合,本発明に従うノズル機構を図10(b)のように,ローラ6に対応する位置に配置することにより,搬送方向を変えることができ,同時に最終巻き取りまで無接触とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】先願に記載のノズル機構の外観斜視図である。
【図2】図1のA−A’線に沿うノズル機構本体1の概略断面図であり,流体の流れを説明する図である。
【図3】図1に示す先願のノズル機構において,流体排出溝から外部に排出される流体の流れを考察する図である。
【図4】本発明に従うノズル機構の実施例の外観斜視図である。
【図5A】図4の矢印c方向から見た緩衝筐体の上面側を示す図である。
【図5B】図4の矢印d方向から見た緩衝筐体の下面側を示す図である。
【図5C】図4の矢印a方向から見た整流筐体の上面側を示す図である。
【図5D】図4の矢印b方向から見た整流筐体の下面側を示す図である。
【図5E】図5DにおけるC−C’線に沿う断面を示す図である。
【図6】流体の流入口の楕円形の開口を通して流入した流体の流れについて説明する図である。
【図7】図3と同様に糸の両端を本願発明のノズル機構に固定し,流体を排出している時の状態を示す図である。
【図8】シート状ウェブの搬送工程に本発明に従うノズル機構を意使用する例を示す図である。
【図9】図8を補足するための図である。
【図10】本発明のノズル機構を,搬送工程における回転ローラに代えて使用する例である。
【符号の説明】
【0075】
1 ノズル機構本体
1A 緩衝筐体
1B 整流筐体
2 流体の流入口
10 排出パネル
10a,10b 流体排出溝
20a,20b 整流版
21 整流筐体の底面
22 長楕円の通し孔
31 流入口の開口
32 パッキング
5A,5B 掛け止めピン
6 方路変換ローラ
100 シート状ウェブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に流体の流入口を有し,前記流体の流入口から流入される流体の流速に対する緩衝機能を有し,長手方向を有する緩衝筐体と,
前記緩衝筐体の長手方向に対応する長手方向を有する,上面側に排出パネルを備え,前記緩衝筐体から底面を通して流入し,前記排出パネルから排出される流体の排出量が,前記排出パネルの長手方向に沿う中心領域に対し,前記中心領域から外側方向の領域において多くなるように整流する整流板を備えた整流筐体を,
有することを特徴とするノズル機構。
【請求項2】
請求項1において,
前記整流筐体における整流板は,前記整流筐体の底面に長手方向の中心線に対して互いに離間して配置され,且つそれぞれ前記中心線から外側方向に傾いて配置された2枚の整流板で構成され,更に
前記整流筐体の底面の前記2枚の整流板間の領域は,前記緩衝筐体から流体が流入されない,
ように構成されていることを特徴とするノズル機構。
【請求項3】
請求項1又は,2において,
前記排出パネルは,全面に複数の小孔が空けられていることを特徴とするノズル機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて,
前記緩衝筐体と前記整流筐体は,分離可能に構成されていることを特徴とするノズル機構。
【請求項5】
連続する長尺物を浮上させた状態で搬送する搬送装置であって,
それぞれ前記連続する長尺物の搬送方向と垂直な方向の長手方向を有する複数のノズル機構を有し,
前記複数のノズル機構は,前記連続する長尺物を挟んで,交互に反対方向に流体を排出するように配置され,
前記複数のノズル機構のそれぞれは,
底面に流体の流入口を有し,前記流体の流入口から流入される流体の流速に対する緩衝機能を有し,長手方向を有する緩衝筐体と,
前記緩衝筐体の長手方向に対応する長手方向を有する,上面側に排出パネルを備え,前記緩衝筐体から底面を通して流入し,前記排出パネルから排出される流体の排出量が,前記排出パネルの長手方向に沿う中心領域に対し,前記中心領域から外側方向の領域において多くなるように整流する整流板を備えた整流筐体を,
有することを特徴とする搬送装置。
【請求項1】
底面に流体の流入口を有し,前記流体の流入口から流入される流体の流速に対する緩衝機能を有し,長手方向を有する緩衝筐体と,
前記緩衝筐体の長手方向に対応する長手方向を有する,上面側に排出パネルを備え,前記緩衝筐体から底面を通して流入し,前記排出パネルから排出される流体の排出量が,前記排出パネルの長手方向に沿う中心領域に対し,前記中心領域から外側方向の領域において多くなるように整流する整流板を備えた整流筐体を,
有することを特徴とするノズル機構。
【請求項2】
請求項1において,
前記整流筐体における整流板は,前記整流筐体の底面に長手方向の中心線に対して互いに離間して配置され,且つそれぞれ前記中心線から外側方向に傾いて配置された2枚の整流板で構成され,更に
前記整流筐体の底面の前記2枚の整流板間の領域は,前記緩衝筐体から流体が流入されない,
ように構成されていることを特徴とするノズル機構。
【請求項3】
請求項1又は,2において,
前記排出パネルは,全面に複数の小孔が空けられていることを特徴とするノズル機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて,
前記緩衝筐体と前記整流筐体は,分離可能に構成されていることを特徴とするノズル機構。
【請求項5】
連続する長尺物を浮上させた状態で搬送する搬送装置であって,
それぞれ前記連続する長尺物の搬送方向と垂直な方向の長手方向を有する複数のノズル機構を有し,
前記複数のノズル機構は,前記連続する長尺物を挟んで,交互に反対方向に流体を排出するように配置され,
前記複数のノズル機構のそれぞれは,
底面に流体の流入口を有し,前記流体の流入口から流入される流体の流速に対する緩衝機能を有し,長手方向を有する緩衝筐体と,
前記緩衝筐体の長手方向に対応する長手方向を有する,上面側に排出パネルを備え,前記緩衝筐体から底面を通して流入し,前記排出パネルから排出される流体の排出量が,前記排出パネルの長手方向に沿う中心領域に対し,前記中心領域から外側方向の領域において多くなるように整流する整流板を備えた整流筐体を,
有することを特徴とする搬送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2008−188547(P2008−188547A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27037(P2007−27037)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【特許番号】特許第4079981号(P4079981)
【特許公報発行日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(300059821)有限会社堀口工業所 (12)
【出願人】(502359024)伊藤忠産機株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【特許番号】特許第4079981号(P4079981)
【特許公報発行日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(300059821)有限会社堀口工業所 (12)
【出願人】(502359024)伊藤忠産機株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
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