説明

ノズル

【課題】低粘度で表面張力の弱い液体を、液垂れすることなく吐出することができるノズルを実現する。
【解決手段】液体の流通経路3を形成する筒状部1と、該筒状部1における該流通経路3下流に設けられ、液体を吐出する複数の細孔4が配設されている底部2とが備えられているとともに、該底部2は、該細孔4が配設されていない液体保持領域5を該筒状部1の内壁面1’全周に接して有しているノズル10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する際に用いるノズルに関するものであり、より詳細には、ノズルからの液垂れを防止して、吐出する液体の量を正確に制御するためのノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体(例えば、薬品、食品等)を容器に充填する場合には、充填用のノズルを容器の開口部に挿入し、このノズルから液体を吐出して容器に充填する液体充填装置が用いられている。このような液体充填装置においては、充填ノズルからの吐出を停止した後に、充填ノズルから充填液が滴下する、いわゆる液垂れ現象が生じることによって、容器ごと(または充填操作ごと)に充填量の差が生じたり、不要な作業(容器外に液垂れした液体の除去など)が発生したりするといった問題が生じる。
【0003】
このような問題を解消するために、従来の液体充填ノズルは、その内部に多孔板を設け、充填する液体の表面張力を利用して液垂れを防止している。このような液垂れを防止するための多孔板として、特許文献1には、ノズル本体の開口部外周縁に合致する円形の輪郭と、複数の縦線部および横線部とからなる金網が開示されている。特許文献1記載の金網は、縦線部および横線部が交差することにより、網目状の孔を形成し、充填を停止した時にノズル内に残存する液体は、網目状の孔の表面張力に起因して金網に留まり、その結果、液垂れが防止される。
【特許文献1】実開昭63−164499号公報(1988年10月26日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の構成では、吐出する液体が、網目状の孔に留まることが可能な程度の表面張力を有している必要がある。このため、有機溶媒のように低粘度で表面張力の弱い液体を容器に吐出する場合は、特許文献1に記載の技術ではその原理から液垂れを防止することができないという問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低粘度で表面張力の弱い液体であっても液垂れを生じることがないノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、多孔板の中央部に溜まった液体を全て排出し得、かつ管壁を伝う液体の液垂れを生じ得ない構成を見出して、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、液体を吐出させる際に用いるノズルを提供する。本発明に係るノズルは、液体の流通経路を形成する筒状部と、該筒状部における該流通経路下流に設けられ、かつ液体を吐出する複数の細孔が配設されている底部とが備えられているとともに、該底部は、該細孔が配設されていない液体保持領域を該筒状部の内壁面全周に接して有していることを特徴としている。
【0008】
従来から、ノズルからの液垂れ防止の目的で多孔板がノズルに設けられているが、本発明に係るノズルの底部は、細孔が配設されていない液体保持領域をノズルの筒状部の内壁面全周にわたって有しており、該液体保持領域は、該筒状部の内壁面全周に接しているので、吐出操作を停止した後にノズルの内壁面を伝う液体は、液体保持領域に留まる。また、上記細孔の孔径は0.2mm〜1.5mmの範囲であり、また、上記細孔の高さは2mm以下であるため、細孔と液体との間には表面張力がほとんど作用しない。その結果、吐出されるべき液体は吐出されてしまう。すなわち、上記の構成によれば、吐出されるべき液体は、底部(多孔板)に設けられている細孔から滴下されてしまい、液垂れ現象の発生を防ぐことが可能となり、本発明に係るノズルを容器への液体の充填に適用すれば、充填されるべき液体の量を首尾よく制御することができるという効果を併せて奏する。
【0009】
なお、上記ノズルの底部は、液体による圧力が均等に付加されるように、厚さが均一であることが好ましい。この場合、底部に設けられた細孔の高さが2mm以下であることから、底部の厚さも2mm以下であることが好ましい。
【0010】
本発明に係るノズルにおいて、上記底部は上記流通経路に沿って連続して備えられていてもよい。
【0011】
本発明に係るノズルは、上記細孔から吐出された液体を拡散するための液体拡散部がさらに備えられていてもよい。
【0012】
かような構成を有するノズルは、容器への液体充填に適用された場合に奏功する。上記の構成によれば、充填されるべき液体が拡散され、充填中に容器内で上昇してくる液面との衝突を軽減し、充填液の泡立ちの発生を防止することが可能となる。従来、液体充填時に生じる発泡を抑制するために充填速度を下げていたが、本発明を用いることにより、充填速度を上げることができ、充填作業を効率よく進めることができる。
【0013】
本発明に係るノズルにおいて、上記液体は1.0×10−4〜1.0×10−3N/cm(10〜100dyn/cm)の範囲の表面張力を有する液体であることが好ましい。
【0014】
本発明に係るノズルにおいて、上記液体が水および/または有機溶媒であることが好ましい。
【0015】
このように、本発明に係るノズルを用いれば、表面張力が弱い液体を吐出する場合であっても、液垂れ現象が発生することなく効率よく吐出することが可能である。
【0016】
本発明に係るノズルにおいて、上記液体保持領域は、吐出操作を停止した後にノズルの内壁面を伝う液体を留めるに十分な領域であればよいので、上記筒状部の内壁面から該液体保持領域端部までの距離は0.5mm以上であることが好ましい。また、液体が液垂れすることなく吐出するためには、筒状部の端部開口部のうち上記液体保持領域によって覆われていない部分の内径が筒状部の内径の1/3以上であることが好ましいので、上記筒状部の内壁面から該液体保持領域端部までの距離は筒状部の内径の1/3以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るノズルは、液体を吐出する複数の細孔が配設されている底部が液体の流通方向下流に設けられており、該底部は細孔が配設されていない液体保持領域を有しているので、液体を吐出する操作を停止した時に筒状部の内壁面を伝う液体が細孔から滴下することがない。これにより、本発明を用いれば、容器から溢れ出た液体を除去するなどの不要な作業を抑えることができる。本発明を容器へ液体の充填に適用すれば、充填されるべき液体の量をより正確に制御することができるので、容器への液体充填量のばらつきを抑えることができる。さらに、本発明を用いれば、液体を容器に効率よく充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態について図1(a)〜(e)に基づいて説明すると以下の通りである。
【0019】
図1(a)は、本実施形態に係るノズル10の構成を概略的に示す斜視図である。図1(a)に示すように、本実施形態に係るノズル10は、筒状部1および底部2を備えて構成されている。
【0020】
筒状部1の断面図を図1(b)に示す。筒状部1は液体の流通経路3を形成する中空部材である。吐出されるべき液体の流通方向は、図1(b)における矢印方向である。よって、矢頭方向が液体の流通方向下流となる。
【0021】
底部2の断面図を図1(c)に示し、平面図を図1(d)に示す。底部2は、図1(a)に示すように、ノズル10においては、底部2は筒状部1の端部開口部に外部から固定されてノズル10を形成する。底部2は、複数の細孔4が設けられているので、本実施形態に係るノズル10の流通経路3を通過する液体(図示せず)は、底部2に設けられた細孔4を介して、流通経路3に沿って吐出され、細孔4以外から漏出することがない。
【0022】
本実施形態に係るノズル10の上方平面図、すなわち、液体の流通方向上流側からの図を図1(e)に示す。図1(e)に示すように、底部2は、細孔が配設されていない液体保持領域5を筒状部1の内壁面1’全周にわたって有しており、液体保持領域5は、筒状部1の内壁面1’全周に接している。すなわち、底部2が液体保持領域5を有していることにより、細孔4は内壁面1’に接することがない。本実施形態に係るノズル10において、筒状部1は略円筒形を有しているので、本実施形態における液体保持領域5は図1(e)に示すようなリング形状を有している。
【0023】
筒状部1の内壁面1’は、底部2の液体保持領域5と接しており、底部2に設けられている複数の細孔4は内壁面1’と接していない。このため、吐出すべき液体の吐出操作を停止した際に、筒状部1の流通経路3に残存する液体、特に内壁面1’に付着している液体が、液体保持領域5に保持されて突き当たり底部2上に留まる。このため、本実施形態に係るノズル10では、液体が底部2の細孔4から滴下せず、液垂れ現象を完全に防止することができる。
【0024】
本実施形態に係るノズル10は、上述したような構成を備えていることにより、底部2に留まるに十分な表面張力を有していない液体を吐出する場合であっても、液垂れを首尾よく防止することができる。具体的には、1.0×10−4〜1.0×10−3N/cm(10〜100dyn/cm)、好ましくは2.0×10−4〜8.0×10−4N/cm(20〜80dyn/cm)の範囲の表面張力を有する液体、具体的には、水、有機溶媒などを用いる場合に本実施形態に係るノズル10が液垂れ防止を実現するためには、液体保持領域5は、吐出操作を停止した後にノズル10の内壁面1’を伝う液体を留めるに十分な領域であればよいので、筒状部1の内壁面1’から液体保持領域5の端部までの距離は0.5mm以上であることが好ましい。また、液体が首尾よく吐出するためには、筒状部1の端部開口部のうち液体保持領域5によって覆われていない部分(示さず)の内径が筒状部1の内径の1/3以上であることが好ましいので、筒状部1の内壁面1’から液体保持領域5の端部までの距離は筒状部1の内径の1/3以下であることが好ましい。
【0025】
なお、水の表面張力は20℃において約7.3×10−4N/cm(73dyn/cm)である。また、有機溶媒としては、メタノール(20℃における表面張力が2.2×10−4N/cm(22dyn/cm))、エタノール(20℃における表面張力が2.2×10−4N/cm(22dyn/cm))、イソプロピルアルコール(20℃における表面張力が2.3×10−4N/cm(23dyn/cm))などのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルグリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチル(20℃における表面張力が2.4×10−4N/cm(24dyn/cm))、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)(20℃における表面張力が4.3×10−4N/cm(43dyn/cm))、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。また、本発明を適用する液体は、例示した有機溶媒の少なくとも2種類を混合した混合物、または水と上記有機溶媒との混合物であってもよい。
【0026】
本発明に係るノズルは、上記の有機溶媒以外であっても、1.0×10−4〜1.0×10−3N/cm(10〜100dyn/cm)の範囲の表面張力を有する有機溶媒であれば、液垂れすることを防ぐことができる。
【0027】
また、本発明に係るノズルを用いて吐出する液体は、水および/または有機溶媒に溶解しているのであれば、有機化合物または無機化合物が混合されていてもよい。ここで、有機化合物には高分子の有機化合物も含まれる。
【0028】
本実施形態において、底部2に設けられている細孔4の孔径は0.2〜1.5mmであることが好ましく、0.8〜1.5mmであることがより好ましく、約1mmであることがさらに好ましい。また、細孔4の高さは、2mm以下であることが好ましい。
【0029】
本実施形態において、底部2に設けられている細孔4の高さが2mm以下であるため、底部2の厚さは、2mm以下であることが好ましく、1.2mm以下であることがより好ましい。なお、底部2の厚さの下限は、ノズル10を適用して充填される液体による圧力に応じて設定すればよいことを、当業者は容易に理解する。
【0030】
また、細孔4は図1のような形態に限定されないので、底部2は、液体保持領域5を有していればメッシュ様であってもよい。
【0031】
なお、液体保持領域5が底部2の一部分であって細孔4を有していない領域である例を用いて説明したが、液体保持領域5は底部2の一部分である必要はなく、リング状部材として底部2とは別々に設けられてもよい。この場合は、ノズル10を構成する際に、底部2は、リング状の液体保持領域5を、細孔4を有する底部本体(図示せず)の上面または下面に接して有していればよい。このような場合、底部本体の全面にわたって細孔4が配設されていてもよく、メッシュ様の底部(多孔板)が設けられたノズルの開口部(吐出端)に外部からリング状の液体保持領域を付設してなるノズルもまた、本発明の範囲に含まれる。
【0032】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態について図2(a)〜(d)に基づいて説明すると以下の通りである。
【0033】
図2(a)は、本実施形態に係るノズル10’の構成を概略的に示す斜視図である。図2(a)に示すように、本実施形態に係るノズル10’は、筒状部1および底部2’を備えて構成されている。図2(a)に示すように、本実施形態において、底部2’は筒状部1の内壁面1’に接するように筒状部1の端部に嵌め込まれている。
【0034】
本実施形態に係るノズル10’の断面図を図2(c)に示す。筒状部1は液体の流通経路3を形成する中空部材である。吐出されるべき液体の流通方向は、図2(c)における矢印方向である。よって、矢頭方向が液体の流通方向下流となる。
【0035】
底部2’は、複数の細孔4が設けられているので、本実施形態に係るノズル10’の流通経路3を通過する液体(図示せず)は、底部2’に設けられた細孔4を介して、流通経路3に沿って吐出され、細孔4以外から漏出することがない。
【0036】
本実施形態に係るノズル10’の上方平面図、すなわち、液体の流通方向上流側からのを図2(b)に示す。図2(b)に示すように、底部2’は、細孔が配設されていない液体保持領域5を筒状部1の内壁面1’全周にわたって有しており、液体保持領域5は、筒状部1の内壁面1’全周に接している。すなわち、底部2’において、細孔4は底部2’の辺縁部までは設けられておらず、細孔4が設けられていない部分が液体保持領域5として機能する。第1の実施形態と同様に、本実施形態に係るノズル10’において、筒状部1は略円筒形を有しているので、本実施形態における液体保持領域5は図2(e)に示すようなリング形状を有している。
【0037】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、筒状部1の内壁面1’は、底部2’の液体保持領域5と接しており、底部2’に設けられている複数の細孔4は内壁面1’と接していない。このため、吐出すべき液体(好ましくは液体)の吐出操作を停止した際に、筒状部1の流通経路3に残存する液体、特に内壁面1’に付着している液体が、液体保持領域5に保持されて突き当たり底部2’上に留まる。このため、本実施形態に係るノズル10’では、液体が底部2’の細孔4から滴下せず、液垂れ現象を完全に防止することができる。
【0038】
本実施形態に係るノズル10’は、上述したような構成を備えていることにより、底部2’に留まるに十分な表面張力を有していない液体を吐出する場合であっても、液垂れを首尾よく防止することができる。具体的には、1.0×10−4〜1.0×10−3N/cm(10〜100dyn/cm)、好ましくは2.0×10−4〜8.0×10−4N/cm(20〜80dyn/cm)の範囲の表面張力を有する液体、具体的には、水、有機溶媒などを用いる場合に本実施形態に係るノズル10’が液垂れ防止を実現するためには、液体保持領域5は、吐出操作を停止した後にノズル10’の内壁面1’を伝う液体を留めるに十分な領域であればよいので、筒状部1の内壁面1’から液体保持領域5の端部までの距離は0.5mm以上であることが好ましい。また、液体が首尾よく吐出するためには、筒状部1の端部開口部のうち液体保持領域5によって覆われていない部分(示さず)の内径が筒状部1の内径の1/3以上であることが好ましいので、筒状部1の内壁面1’から液体保持領域5の端部までの距離は筒状部1の内径の1/3以下であることが好ましい。
【0039】
なお、本実施形態において、ノズル10’を用いて吐出するに好ましい液体は、第1の実施形態において例示した液体である。
【0040】
本実施形態においてもまた、底部2’に設けられている細孔4の孔径は0.2〜1.5mmであることが好ましく、0.8〜1.5mmであることがより好ましく、約1mmであることがさらに好ましい。また、細孔4の高さは、2mm以下であることが好ましい。
【0041】
本実施形態においても、底部2’に設けられている細孔4の高さが2mm以下であるため、底部2’の厚さは、2mm以下であることが好ましく、1.2mm以下であることがより好ましい。なお、底部2’の厚さの下限は、ノズル10’を適用して吐出される液体による圧力に応じて設定すればよいことを、当業者は容易に理解する。
【0042】
なお、本実施形態において、底部2’を配置する位置を筒状部1の端部として説明したが、本発明はこれに限定されず、筒状部1内の液体の流通方向下流に配置されていればよく、図2(d)のような配置であってもよい。
【0043】
また、本実施形態において、単一の底部2’を筒状部1に嵌め込む構成を用いて説明したが、底部2’を複数用いてもよく、その場合、第1の実施形態において使用される底部2を併せて用いてもよい。ただし、複数の底部2’を用いる場合は、これらの間に液体が貯留しない程度の間隔であることが必要である。このような間隔は、本発明を用いて液体を吐出する場合には、液体の表面張力などを考慮して適宜設定されればよい。
【0044】
また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、細孔4は図2のような形態に限定されないので、底部2’は液体保持領域5を有していればメッシュ様であってもよい。
【0045】
なお、液体保持領域5が底部2’の一部分であって細孔4を有していない領域である例を用いて説明したが、液体保持領域5は底部2’の一部分である必要はなく、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、リング状部材として底部2’とは別々に設けられてもよい。この場合は、ノズル10’を構成する際に、リング状の液体保持領域5を底部2’の上面または下面に配置すればよい。
【0046】
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態について図3(a)〜(c)に基づいて説明すると以下の通りである。
【0047】
図3(a)は、本実施形態に係るノズル10’’の構成を概略的に示す側面図である。図3(a)に示すように、本実施形態に係るノズル10’’は、第1の実施形態のような筒状部1および底部2に加えて、液体拡散部6がさらに備えられている。本実施形態に係るノズル10’’における筒状部1および底部2の詳細については、第1の実施形態を参照のこと。
【0048】
図3(b)は液体拡散部6の側面図であり、図3(c)は液体拡散部6の平面図である。また、図3(d)は、液体拡散部6の拡散部本体7の要部構成を示す斜視図である。本実施形態において、液体拡散部6は、拡散部本体7と3本の脚部8から構成される。図3(d)に示すように、拡散部本体7は、筒状部1の外壁と同一の径を有する円柱部7aに筒状部1の外壁と同一の径を有しかつ頂点7’を有する円錐部7bを重ね合わせた形状を有している。脚部8は、筒状部1と拡散部本体7とを連結するために拡散部本体7に設けられている。図3(a)および(b)に示すように、本実施形態における液体拡散部6では、拡散部本体7と脚部8とが一体形成されている。
【0049】
本実施形態に係るノズル10’’において、筒状部1の流通経路(示さず)を通りかつ底部2の細孔(示さず)を介して吐出された液体は、拡散部本体7に接触する。拡散部本体7に接触した液体は、拡散部本体7における液体接触面(すなわち、円錐部7b)に応じて拡散され、脚部8の間からノズル10’’外部へ放出される。すなわち、第1の実施形態に係るノズル10および第2の実施形態に係るノズル10’が垂直流下ノズルであるのに対して、本実施形態に係るノズル10’’は三方拡散ノズルである。
【0050】
底部2の細孔(示さず)を介して吐出された液体は、液体拡散部6によって、図中垂直方向から水平に近い方向へと進路が変更されるため、容器の内壁(示さず)に沿って液体を容器内に充填することができる。また、充填中の容器内において上昇してくる液体と、続いて充填する液体との衝突を抑制することができる。このため、充填時に生じる液体の発泡を防止することができる。
【0051】
本実施形態に係るノズル10’’は、上述したような構成を備えていることにより、底部2に留まるに十分な表面張力を有していない液体を充填する場合であっても、液垂れを首尾よく防止することができる。具体的には、1.0×10−4〜1.0×10−3N/cm(10〜100dyn/cm)、好ましくは2.0×10−4〜8.0×10−4N/cm(20〜80dyn/cm)の範囲の表面張力を有する液体、具体的には、水、有機溶媒などを用いる場合に本実施形態に係るノズル10’’が液垂れ防止を実現するためには、液体保持領域(示さず)は、吐出操作を停止した後にノズル10’’の内壁面(示さず)を伝う液体を留めるに十分な領域であればよいので、筒状部1の内壁面(示さず)から液体保持領域(示さず)の端部までの距離は0.5mm以上であることが好ましい。また、液体が首尾よく吐出するためには、筒状部1の端部開口部のうち液体保持領域(示さず)によって覆われていない部分(示さず)の内径が筒状部1の内径の1/3以上であることが好ましいので、筒状部1の内壁面(示さず)から液体保持領域(示さず)の端部までの距離は筒状部1の内径の1/3以下であることが好ましい。
【0052】
なお、本実施形態において、ノズル10’’を用いて吐出する液体は、第1の実施形態において例示した液体である。
【0053】
本実施形態においてもまた、底部2に設けられている細孔4(示さず)の孔径は0.2〜1.5mmであることが好ましく、0.8〜1.5mmであることがより好ましく、約1mmであることがさらに好ましい。また、細孔4(示さず)の高さは、2mm以下であることが好ましい。
【0054】
本実施形態においても、底部2に設けられている細孔4(示さず)の高さが2mm以下であるため、底部2の厚さは、2mm以下であることが好ましく、1.2mm以下であることがより好ましい。なお、底部2の厚さの下限は、ノズル10’’を適用して充填される液体による圧力に応じて設定すればよいことを、当業者は容易に理解する。
【0055】
このように、本実施形態に係るノズル10’’を用いれば、充填操作停止時の液垂れ現象の発生を防止するだけでなく、容器内での発泡を防止することも可能となる。これにより、充填速度が向上するとともに、充填作業がより効率よく進められる。
【0056】
なお、本実施形態において、第1の実施形態と同様に、底部2は筒状部1の端部開口部に外部から固定されている構成を用いて説明したが、第2の実施形態において使用される底部2’を単数または複数使用してもよい。ただし、複数の底部を用いる場合は、これらの間に液体が貯留しない程度の間隔であることが必要である。このような間隔は、本発明を用いて液体を吐出する場合には、液体の表面張力などを考慮して適宜設定されればよい。
【0057】
また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、細孔4は図2のような形態に限定されないので、底部2は液体保持領域5を有していればメッシュ様であってもよい。
【0058】
なお、液体保持領域5が底部2の一部分であって細孔4を有していない領域である例を用いて説明したが、液体保持領域5は底部2の一部分である必要はなく、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、リング状部材として底部2とは別々に設けられてもよい。この場合は、ノズル10’’を構成する際に、リング状の液体保持領域5を底部2の上面または下面に配置すればよい。
【0059】
本発明に係るノズルにおいて、筒状部および底部の材質は特に限定されず、液体吐出装置に係る技術分野において周知のものが用いられればよい。よって、液体保持領域が底部とは別々に構成される場合、液体保持領域は、筒状部の内壁面を伝う液体を保持することができる材質であれば特に限定されず、底部と同一の材質からなってもよい。
【0060】
さらに、本発明に係るノズルにおける筒状部および底部が別個独立した部材として本発明を説明したが、筒状部と底部とが一体形成されていてもよい。また、本発明に係るノズルにおける液体拡散部についても、筒状部および/または底部とともに一体形成されていてもよい。
【0061】
上述したように、本発明は、液体を吐出するための液体吐出装置に用いられるノズルを提供する。本明細書において、本発明を適用すべき液体吐出装置について詳述しないが、本明細書を読んだ当業者は本発明を如何にして用いるかを容易に理解する。
【0062】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0063】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0064】
異なる底部(多孔板)を有するノズルを作製して、溶液の吐出を行った。溶液の吐出を停止した後にノズルから漏出する液体の有無を調べた結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
なお、実施例4では、単一の開口をメッシュ体が覆う構造を有する底部を用いた。用いたメッシュ体は、線径0.3mmの部材が1インチあたり40個格子状に配置されており(メッシュ0.3×40)、目開きは0.335mmである(※1および※2)。
【0067】
実施例1〜4においてはノズルからの液垂れは生じなかったが、比較例ではノズルからの液垂れが生じた。以上の結果より、底部の厚さが1mm程度であり、細孔の孔径が1.5mm以下であれば、ノズルからの液垂れを抑えることができると考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
液体を吐出させる際に用いるノズルは種々の産業において利用されているので、本発明を用いれば、不要な作業を抑え、作業効率向上を実現する。特に、液体を容器に充填する必要がある技術分野においては、本発明はより正確な量の充填を実現するために広範に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】(a)〜(e)は本発明の一実施形態を示すものであり、ノズルの要部構成を示す図である。
【図2】(a)〜(d)は本発明の一実施形態を示すものであり、ノズルの要部構成を示す図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明の一実施形態を示すものであり、ノズルの要部構成を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 筒状部
1’ (筒状部の)内壁面
2 底部
3 (液体の)流通経路
4 細孔
5 液体保持領域
6 液体拡散部
10 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の流通経路を形成する筒状部と
該筒状部における該流通経路下流に設けられ、液体を吐出する複数の細孔が配設されている底部とが備えられているとともに、
該細孔は、0.2〜1.5mmの範囲の孔径および2mm以下の高さを有し、
該底部は、該細孔が配設されていない液体保持領域を該筒状部の内壁面全周に接して有している
ことを特徴とするノズル。
【請求項2】
前記底部が前記流通経路に沿って連続して備えられていることを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記細孔から吐出された液体を拡散するための液体拡散部がさらに備えられていることを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項4】
前記液体が1.0×10−4〜1.0×10−3N/cmの範囲の表面張力を有する液体であることを特徴とする請求項1に記載のノズル。
【請求項5】
前記液体が水および/または有機溶媒であることを特徴とする請求項7に記載のノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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