説明

ノックアウトロッド調整治具

【課題】ノックアウトロッドの安定性を高めることが可能なノックアウトロッド調整治具を提供する。
【解決手段】一端側の操作部11の操作により他端側が軸線AX方向に変位するよう構成されたシーマ用のノックアウトロッド10の軸線AX方向の寸法を調整するためのノックアウトロッド調整治具1であって、ノックアウトロッド10の他端側を挿入可能な挿入孔2aを有するリング形状で、鉛直方向に並んで設けられてノックアウトロッド10を支持する上部ガイド2及び下部ガイド3と、ノックアウトロッド10の操作部11を定位置に固定する固定ねじ5と、下部ガイド3の下方に設けられて、ノックアウトロッド10の下端12aの軸線AX方向の変位を測定するダイヤルゲージ4と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶胴に缶蓋を巻き締めするシーマのノックアウトロッドの寸法を調整するノックアウトロッド調整治具に関する。
【背景技術】
【0002】
缶胴に缶蓋を巻き締めするシーマにおいては、シーミングチャックにて缶胴に缶蓋を押し付ける。シーミングチャックのノックアウトロッドがその軸線方向に移動可能で、ロッド下端に設けられたノックアウトパッドを押し出すことにより、ノックアウトパッドがシーミングチャック下端から突出する(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−123796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ノックアウトパッドの突出量は、ノックアウトロッドの寸法により決められる。従来、ノックアウトロッドの軸線方向を横向きにした状態で寸法の調整をしている。このため、調整時にノックアウトロッドの安定性が悪く、調整に時間を要する。
【0004】
そこで、本発明はノックアウトロッドの安定性を高めることが可能なノックアウトロッド調整治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のノックアウトロッド調整治具は、一端側の操作部(11)の操作により他端側が軸線(AX)方向に変位するよう構成されたシーマ用のノックアウトロッド(10)の軸線方向の寸法を調整するためのノックアウトロッド調整治具(1)であって、前記ノックアウトロッドの前記他端側を挿入可能な挿入孔(2a)を有するリング形状で、鉛直方向に並んで設けられて該ノックアウトロッドを支持する一対のガイド部材(2、3)と、前記ノックアウトロッドの前記操作部を定位置に固定する固定手段(5)と、前記一対のガイド部材の下方に設けられて、前記ノックアウトロッドの下端の軸線方向の変位を測定する測定手段(4)と、を備えたことにより上記課題を解決する。
【0006】
本発明のノックアウトロッド調整治具によれば、ノックアウトロッドの軸線方向を鉛直にした状態で、ノックアウトロッドの全長の寸法を調整する。ノックアウトロッドの操作部を固定してシーマ本体への組付け状態と同様の状態にして調整することができるので、ノックアウトロッドの安定性を高めることでできる。従って、容易に寸法調整が可能となり、調整に要する時間を短縮することができる。ガイド部材の下方に測定手段が位置しているので、ノックアウトロッドの位置ずれを防止して測定値の安定化も図ることができる。よって、調整ミス等のリスクが減少し、シーマにおける缶の巻き締めに関する品質管理レベルを向上することができる。
【0007】
本発明のノックアウトロッド調整治具の一形態において、前記一対のガイド部材は、前記操作部を引っ掛けて吊り下げる上部ガイド部材(2)と、前記ノックアウトロッドの前記他端側を軸線方向に移動可能に支持する下部ガイド部材(3)と、を有していてもよい。この形態によれば、上部ガイド部材によって操作部を安定して支持することができ、下部ガイド部材によってノックアウトロッドの位置ずれを防止するので、安定した測定を可能とする。
【0008】
本発明のノックアウトロッド調整治具の一形態において、前記一対のガイド部材のそれぞれは、内周側の材質が外周側の材質よりも軟質であってもよい。この形態によれば、ノックアウトロッドの他端側をガイド部材に挿入する際に、ノックアウトロッドの先端部分が傷つくのを防止することができる。
【0009】
本発明のノックアウトロッド調整治具の一形態において、前記一対のガイド部材のそれぞれに前記ノックアウトロッドを挿入する際に、該ノックアウトロッドの先端部分に取り付けて保護するキャップ(8)をさらに備えてもよい。この形態によれば、ノックアウトロッドの他端側をガイド部材に挿入する際に、先端部分にキャップを被せることにより、ガイド部材との接触による破損を確実に防止することができる。
【0010】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0011】
以上、説明したように、本発明のノックアウトロッド調整治具においては、ノックアウトロッドの軸線方向を鉛直にした状態で、ノックアウトロッドの全長の寸法を調整する。ノックアウトロッドの操作部を固定してシーマ本体への組付け状態と同様の状態にして調整することができるので、ノックアウトロッドの安定性を高めることでできる。従って、容易に寸法調整が可能となり、調整に要する時間を短縮することができる。ガイド部材の下方に測定手段が位置しているので、ノックアウトロッドの位置ずれを防止して測定値の安定化も図ることができる。よって、調整ミス等のリスクが減少し、シーマにおける缶の巻き締めに関する品質管理レベルを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の一形態に係るノックアウトロッド調整治具及び調整対象となるノックアウトロッドを示す概略図である。ノックアウトロッド調整治具1は、ノックアウトロッド10の軸線AXが鉛直方向を向くようにしてノックアウトロッド10を保持しながら、ノックアウトロッド10の軸線AX方向の全長を測定しつつ、その寸法を調整する治具である。ノックアウトロッド10は、缶胴に缶蓋を巻き締めするシーマにおいて缶蓋を缶胴に押さえ付けるシーミングチャック内部に設けられ、ノックアウトロッド10が下降することによりシーミングチャックの下端からノックアウトパッドを突出させる。ノックアウトパッドの突出量を調整するために、ノックアウトロッド10の全長の寸法が調整される。ノックアウトロッド10には、一端側に軸線AX方向の寸法を調整するための操作部11と、他端側にノックアウトパッドを押し出すロッド部12とが設けられている。操作部11には、ロッド部12の寸法を調整する調整ねじ13が設けられている。調整ねじ13を調節することにより、ロッド部12が軸線AX方向に伸縮する。
【0013】
ノックアウトロッド調整治具1は、ノックアウトロッド10の操作部11を支持して固定する上部ガイド2と、ロッド部12を軸線方向に移動可能に支持する下部ガイド3と、ロッド部12の下端12aと接触して寸法を測定するダイヤルゲージ4と、ノックアウトロッド10の上端を固定する固定ねじ5と、上部ガイド2及び下部ガイド3及びダイヤルゲージ4及び固定ねじ5を支持する支柱6と、支柱6を支えるスタンド7とを備えている。上部ガイド2及び下部ガイド3は、鉛直方向に並んで支柱6に固定されている。図2は上部ガイド2の構造を示す概略図である。上部ガイド2は、リング形状で、ノックアウトロッド10が挿入される挿入孔2aと、材質の異なる内側部材2b及び外側部材2cとを有する。上部ガイド2の挿入孔2aは、ノックアウトロッド10の操作部11が通らない大きさで形成され、上部ガイド2は、その上面で操作部11の下面を引っ掛けて吊り下げる。外側部材2cは、ステンレス等の硬質の素材で形成されている。一方、ノックアウトロッド10の設置の際に挿入孔2aにロッド部12が接触して傷つくのを防止するため、内側部材2bは、例えば、真鍮や樹脂といった軟質の素材で形成される。下部ガイド3は、挿入孔2aの大きさについてロッド部12が軸線AXの方向に移動可能な程度の大きさとなる点を除いて、上部ガイド2と同様に構成されているので説明を省略する。
【0014】
ダイヤルゲージ4は、下部ガイド3の下方で支柱6に固定されている。ダイヤルゲージ4は、ロッド部12の下端12aと接触して、操作部11に設けられた調整ねじ13を調節することによるノックアウトロッド10の寸法の変位を測定する。ダイヤルゲージ4として各種市販のダイヤルゲージを用いてもよい。固定ねじ5は、上部ガイド2の上方に設けられている。固定ねじ5は、支柱6に固定される支持部材5aにねじ込まれている。固定ねじ5は、ノックアウトロッド10の上端と接触して操作部11の下面を上部ガイド2に押し付けつつ固定する。固定ねじ5及び上部ガイド2により、ノックアウトロッド10はノックアウトロッド調整治具1に固定される。
【0015】
次に、ノックアウトロッド調整治具1によるノックアウトロッド10の調整手順を説明する。まず、ノックアウトロッド10のロッド部12を上部ガイド2及び下部ガイド3の挿入孔2aに通して、ノックアウトロッド10をノックアウトロッド調整治具1に設置する。このとき、ロッド部12の先端部分を保護するため、図3に示すキャップ8を下端12aに取り付けて挿入孔2aに挿入する。キャップ8は、樹脂やゴム等で形成される。固定ねじ5を調節してノックアウトロッド10を固定する。そして、調整ねじ13を調節してノックアウトロッド10の全長を調整する。調整ねじ13によりロッド部12の長さを調節することにより、ロッド部12の下端12aの変位をダイヤルゲージ4で測定する。このようにして、ノックアウトロッド10の全長が設定される。
【0016】
ノックアウトロッド10の軸線AXを鉛直にして寸法を調整するので、ノックアウトロッド10をシーマ本体への組付け状態と同様の状態にして調整することができる。従って、ノックアウトロッド調整治具1にノックアウトロッド10を安定して設置することができ、容易に寸法調整が可能となり、調整に要する時間を短縮することができる。ロッド部12の下端12aの下方にダイヤルゲージ4が位置しているので、ロッド部12の位置ずれを防止して測定値の安定化を図ることができる。よって、調整ミス等のリスクが減少し、シーマにおける缶の巻き締めに関する品質管理レベルを向上することができる。
【0017】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、本形態では、測定手段としてダイヤルゲージ4で説明したが、これに限定されず、光学式等の各種変位センサを利用してもよい。ノックアウトロッド10の上端を固定する手段として固定ねじ5で説明したが、例えば、クランプで両側から挟んで固定する等、適宜の固定方法を用いてもよい。上部ガイド2及び固定ねじ5でノックアウトロッド10を固定する例に限られず、上部ガイド2及び固定ねじ5に代えてクランプで両側から挟んで固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一形態に係るノックアウトロッド調整治具及び調整対象となるノックアウトロッドを示す概略図。
【図2】上部ガイドの構造を示す概略図。
【図3】キャップを示す斜視図。
【符号の説明】
【0019】
1 ノックアウトロッド調整治具
2 上部ガイド(一対のガイド部材)
3 下部ガイド(一対のガイド部材)
4 ダイヤルゲージ(測定手段)
5 固定ねじ(固定手段)
10 ノックアウトロッド
11 操作部
AX 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側の操作部の操作により他端側が軸線方向に変位するよう構成されたシーマ用のノックアウトロッドの軸線方向の寸法を調整するためのノックアウトロッド調整治具であって、
前記ノックアウトロッドの前記他端側を挿入可能な挿入孔を有するリング形状で、鉛直方向に並んで設けられて該ノックアウトロッドを支持する一対のガイド部材と、
前記ノックアウトロッドの前記操作部を定位置に固定する固定手段と、
前記一対のガイド部材の下方に設けられて、前記ノックアウトロッドの下端の軸線方向の変位を測定する測定手段と、
を備えたことを特徴とするノックアウトロッド調整治具。
【請求項2】
前記一対のガイド部材は、前記操作部を引っ掛けて吊り下げる上部ガイド部材と、前記ノックアウトロッドの前記他端側を軸線方向に移動可能に支持する下部ガイド部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載のノックアウトロッド調整治具。
【請求項3】
前記一対のガイド部材のそれぞれは、内周側の材質が外周側の材質よりも軟質であることを特徴とする請求項1又は2に記載のノックアウトロッド調整治具。
【請求項4】
前記一対のガイド部材のそれぞれに前記ノックアウトロッドを挿入する際に、該ノックアウトロッドの先端部分に取り付けて保護するキャップをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のノックアウトロッド調整治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−160598(P2009−160598A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340192(P2007−340192)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【出願人】(392032100)キリンエンジニアリング株式会社 (54)