説明

ノック式シャープペンシル

【課題】芯の補充作業を容易に行うことができるとともに、軸筒の後端側を有効に利用することができるノック式シャープペンシルを提供する。
【解決手段】軸筒の外側面に芯一本が通過できる程度の小孔11を設けるとともに前記芯収容管に芯挿入用の開口21を設け、前記小孔11と前記開口21の位置を整合させ、また、前記開口21の先端内側面に突縁を設けた。芯補充用の小孔11が軸筒の側面に設けられているため、芯を補充する場合には小孔11から簡単に行うことができる。また、前記開口21の先端内側面に、突縁を設けたため、一度芯収容管に補充された芯は、誤って小孔から外へ飛び出るおそれがない。また、芯を補充する際、後端部のノックボタンを取り外す必要がないことは勿論、蓋を開けるといった作業も一切ないため、作業者は手際よくスマートに芯補充をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノック式シャープペンシルに関するものである。さらに詳しくは、芯の補充作業を容易に行うことができるとともに、軸筒の後端側を有効に利用することができるノック式シャープペンシルを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
シャープペンシルは、内部の芯タンクに複数本の芯を格納し、芯送り機構で一本ずつ芯を送出して使用し、格納した芯を使い切ると、補充するようになっている。芯収容管の後端部は開口され、この開口内に消しゴムを保持した消しゴムホルダーが嵌入され、さらに消しゴムを保護するように、ノックボタンが着脱自在に被着されている。そして、芯を補充する際には、先ずノックボタンを取り外し、次いで消しゴムホルダーを取り外して、芯を芯収容管の後端部開口から補充している。この作業は、芯収容管の後端に被着されたノックボタンを押圧前進させて芯を繰出す、いわゆる後端ノック式シャープペンシルも、前記ノックボタンが、軸筒の側面に配されたサイドノック式シャープペンシルも同じである。
そして、この補充作業は、片手でシャープペンシルの軸本体を持ち、他方の手で芯を持って行われるため、消しゴムホルダーおよびノックボタンを机上等に置かなければならず、それらが転げ落ちて紛失してしまう場合がある。紛失した場合は、芯収容管の後端部開口が開放されたままとなり、そのままでは芯が飛び出すおそれがあり、使用困難となる。
そこで、これらの課題を解決するために、芯収容管にキャップを設ける必要のないシャープペンシル(例えば、特許文献1参照)や、軸本体の外側面に、開閉可能な蓋部を設けた芯挿入部をもつシャープペンシル(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【特許文献1】実開昭52−55337号公報
【特許文献2】特開2005−231148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1のシャープペンシルは、芯収容管にキャップを設ける必要がないため、確かにキャップを紛失するおそれはないものの、芯を挿入する小孔が、収容管の尾端頂部に設けられているため、収容管の尾端より後ろを有効に利用できない。必要に応じて芯収容管の尾端に消しゴムを着脱自在に取付けることも可能との記載はあるが、そのような構成をとった場合、芯の補充を行う際に消しゴムを取り外し机上等に置かなければならず、それが転げ落ちて紛失してしまう場合がある。
また、特許文献2のシャープペンシルは、芯挿入部の蓋を開けて、芯を補充するため、後端部の消しゴムキャップや消しゴムホルダーを取り外す必要がなく、それらを紛失するおそれがないものではあるが、芯を補充するためには、蓋部を開けたりキャップを回動するといったワンアクションを必ず必要とし、使用者にとって煩わしい。また、構成が複雑で所要部品点数が増え、安価に製造することができない上、誤って蓋が破損したり蓋を紛失した場合は、芯挿入部が開口したままとなり、使用困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために完成された第1の発明のノック式シャープペンシルは、軸筒内に収納した芯収容管を押圧前進させることによって、軸筒先端の先口より芯を繰出させるノック式シャープペンシルにおいて、軸筒の外側面に芯一本が通過できる程度の小孔を設けるとともに前記芯収容管に芯挿入用の開口を設け、前記小孔と前記開口の位置を整合させたことを特徴とする。
また、第2の発明は、前記開口の先端内側面に突縁を設けたことを特徴とする第1の発明のノック式シャープペンシルである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、芯補充用の小孔が軸筒の側面に設けられているため、芯を補充する場合には小孔から簡単に行うことができる。また、前記開口の先端内側面に、突縁を設けたため、一度芯収容管に補充された芯は、誤って小孔から外へ飛び出るおそれがない。また、前記突縁の先端が先口の方向へ傾斜した構成とした場合は、芯の移動方向に対して逆向きに尖っていて、つり針の返しのような作用が生じるため、芯が誤って開口に進入することをより強固に防止することができ、芯が小孔から外へ飛び出るおそれがない。
また、芯を補充する際、後端部のノックボタンを取り外す必要がないことは勿論、蓋を開けるといった作業も一切ないため、作業者は手際よくスマートに芯補充をすることができる。また、ノックボタン等を取り外す必要がないため、これらを紛失するおそれもない。
また、構成が単純で安価に製造することができる上、芯挿入部に別途蓋等を設けていないため、蓋の破損や蓋の紛失等の心配が一切なく、長期間にわたり安心して使用できる。
さらに、芯収容管の尾端より後ろは、芯を補充するために必要なスペースではないため、消しゴムはもちろんのこと、修正テープ、カッター、物差し等を適宜収納するスペースとして利用でき、シャープペンシルの付加価値を高めることが可能である。この効果は、後端ノック式よりも、前記スペースを確保し易いサイドノック式の方が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図1に基づいて詳細に説明する。図1はノック式シャープペンシルの内部機構を一部省略した断面図を示す。尚、本発明で「前」または「先」とは先口側を指し、「後」または「尾」とは、軸筒の軸線方向の反対側を指す。
軸筒1は、両端が開口された筒状であり、先端には先口3が取り付けられている。軸筒1内には、芯6を収容する筒状の芯収容管2を配設し、芯収容管2の尾端にノックボタン4 が取付けられている。ノックボタン4の取付け方法は、嵌合や螺合等を適宜採用することができる。芯収容管2の先端には、図示略のチャック等が接続されてシャープペンシル中具5を構成している。中具5はチャック、チャックリング、スプリングからなり、従来からあるシャープペンシルの基本内部構成を採用できる。
ここで、軸筒1、芯収容管2、先口3、ノックボタン4の材質は、真鍮やステンレスのような金属や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂を採用できる。
また、前記ノックボタン4は、前記芯収容管2の尾端に取り付ける構成だけでなく、軸筒1の側面に取付けてノックするいわゆるサイドノック式の構成でもよい。この場合、側面に取付けたノックボタンを押圧することで、前記芯収容管2を押圧前進させて先口より芯を繰出させるものであるが、既に公知の構成を適宜採用可能である。
【0007】
前記軸筒1の外側面から内側面に向かって小孔11を穿設する。この小孔11は、芯補充用の孔であり、芯6が一本のみ通過可能な程度の小径なものである。芯6の直径は0.3mm、0.5mm、0.7mm、0.9mm、2.0mm等種々あるが、それぞれの芯6の直径に合わせて穿設すればよい。小孔11の位置は、軸筒の側面であればどこでもよいが、尾端近傍に設けるとより好ましい。
【0008】
前記芯収容管2に芯挿入用の開口21を設ける。開口21の位置は、芯収容管2の側面であればどこでもよいが、ノックボタンを押圧していない通常の状態において、前記小孔11の内側開口部分12と前記開口21の位置が整合されていればよい。ここで、整合しているとは、ぴったり合っていること、または、きちんと合わさっていることを意味する。位置を整合させる方法は、整合位置を示す目印を表示したり、軸筒1内で芯収容管2が回動しないように回動防止用の凹凸部を設けたり、芯収容管2の外側面の形状を筒状から多角柱等にして方向性を持たせる等、構成に応じて適宜対応可能である。
また、開口21の大きさや形状は、前記小孔11から芯6を補充する際に、芯6が滞ることなく滑らかに挿入されるために、少なくとも前記小孔11の内側開口部分12が全て含まれる大きさや形状とすることが好ましい。芯が誤って小孔11から出てしまうことを極力押えるためには、開口21の大きさは小さい方がよく、前記内側開口部分12と開口21は同一形状であることがもっとも好ましい。
【0009】
芯6として、一般的な長さである60mmを使用する場合、開口21の前後方向の長さは30mmよりも短いことが好ましい。芯6は通常円柱形状のため、重心は上面と下面を結ぶ、いわゆる長手方向の中心にある。よって、長手方向の長さが60mmの場合、重心はその中心の位置、つまり両端から30mmの位置にある。従って、この30mmよりも開口21の前後方向の長さが短ければ、芯6が開口21に入り込むことは殆どない。
芯6の長さ60mmと、開口21の前後方向の長さ30mm以下の条件を満たしながら、芯6が滞ることなく滑らかに挿入されるのであれば、芯収容管2の内径および小孔11と芯収容管2が交わる角度は適宜採用可能である。
【0010】
次に、前記開口21の先端内側面に、突縁22を設けた実施の形態を、図2に基づいて詳細に説明する。図2は、突縁22を設けた状態の図1のA部分拡大断面図を示す。
この突縁22は、芯収容管2内に補充された芯6が開口21へ進入することを防止する障壁の役割を果たすものである。前記突縁22は、小孔11から挿入される芯6が、前記開口21を通過した後、芯収容管2内へ進入することを阻害するものでなければ、その寸法や形状は適宜採用可能である。また、その設置方法は、芯収容管2と一体成形してもよいし、突縁22を別部品として用意し、接着、嵌着等の方法で、芯収容管2に設置してもよい。
また、突縁22の先端が先口3の方向へ傾斜した構成とした場合は、芯6が誤って開口に進入することをより強固に防止できる。前記突縁22の先口3方向への傾斜が、小孔11の傾斜と平行以上の角度になると、芯6補充時に芯6が突縁22に衝突することがないため、芯収容管2の径を大きくするといった設計上の制約がなく、デザインの幅が広がる。ここで、突縁22の位置は、開口21の先端だけでなく、開口21全周にわたって設けてもよいものである。
【0011】
次に、前記ノック式シャープペンシルの使用方法について詳細に説明する。
ノック操作により芯6を繰出すには、指先でノックボタン4を押圧すれば、芯収容管2が押圧前進する。そして、芯収容管2の先端に接続された図示略の中具5によって、芯6が繰出される。中具5は、チャック、チャックリング、スプリングからなり従来からよく知られたシャープペンシルの内部構成であるが、念のため詳述すると、チャックが芯6を咬持して前進し、芯6が先口3の先端開口より突出する。そして、この過程でチャックリングが先口の内段に当接してチャックとの係合が外れ、チャックが開いて芯6の咬持を解除する。次にノック操作を解除すると、チャックは後退し、再び芯6を咬持して筆記可能となる。
次に、芯6を補充する場合は、芯補充用の小孔11から一本ずつ行う。この補充作業は、先口3を下にしたシャープペンシルの軸筒1を片手で持ち、他方の手で芯6を持って行う。その際、芯補充用の小孔11は軸筒1の側面に設けられているため、ノックボタン4を外す必要がない。そのため、これを紛失するおそれもない。ノックボタン4を、芯収容管2に螺設した場合には、接触等では簡単に外れることがないため、好ましい。また、仮に芯6を芯収容管2から取出したいときには、芯収容管2の尾端に取付けたノックボタン4を取外して、芯収容管2の尾端開口部を開ければ、取出すことができる。
【0012】
芯収容管2に補充された芯6は、通常の使用状態は勿論のこと、仮に小孔11を下に向けながら、さらに軸筒1の後端側を下に傾けていっても、小孔11から芯6が飛び出すおそれはない。なぜなら、開口21先端に設けた前記突縁22によって、芯6が開口21に進入することを防止しているためである。さらに、突縁22の先端が先口3の方向へ傾斜した構成とした場合は、芯6の移動方向に対して前記突縁22が逆向きに尖っていて、つり針の返しのような作用が生じるため、芯6が誤って開口に進入することをより強固に防止することができる。
【0013】
また、図示しないが、ノックボタンを軸筒1の側面に設けたサイドノック式シャープペンシルであれば、芯収容管2の尾端にノックボタン4を取付ける必要がなく、また芯6を補充するために必要なスペースを芯収容管2の尾端より後ろに確保する必要もないため、芯収容管2の尾端より後側を有効に利用することができる。利用方法は、種々考えられるが、消しゴムはもちろんのこと、修正テープ、カッター、物差し、筆記具等を適宜収納することが可能であり、シャープペンシルの付加価値をより高めることができる。
【0014】
尚、本発明を前記実施例により説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明ノック式シャープペンシルの内部機構を一部省略した断面図
【図2】突縁を設けた状態の図1のA部分拡大断面図
【符号の説明】
【0016】
1 軸筒
11 小孔
12 内側開口部分
2 芯収容管
21 開口
22 突縁
3 先口
4 ノックボタン
5 中具
6 芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に収納した芯収容管を押圧前進させることによって、軸筒先端の先口より芯を繰出させるノック式シャープペンシルにおいて、軸筒の側面に芯一本が通過できる程度の小孔を設けるとともに前記芯収容管に芯挿入用の開口を設け、前記小孔と前記開口の位置を整合させたことを特徴とするノック式シャープペンシル。
【請求項2】
前記開口の先端内側面に突縁を設けたことを特徴とする請求項1に記載のノック式シャープペンシル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−126075(P2009−126075A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304015(P2007−304015)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年6月5日 株式会社 美術出版社発行の「デザインの現場 2007年6月号(vol.24 no.153)」に発表
【出願人】(390017891)シヤチハタ株式会社 (162)
【Fターム(参考)】