説明

ノルボルネン系重合体の製造方法

【課題】本発明は、通常の重合方法で得ることが困難であった、炭素数が3以上のアルコキシカルボニル基含有ノルボルネン重合体の新規製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】メトキシカルボニル基を有するノルボルネン系重合体とアルコールを、金属アルコキシド触媒を用いて、エステル変換してノルボルネン系重合体を得る新規なノルボルネン系重合体製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノルボルネン系重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノルボルネン系化合物がビニル重合したノルボルネン系重合体のフィルムは、厚み方向のレターデーション(Rth)が高いという特徴を有することから、ネガティブCプレートに適用可能である(例えば、特許文献1参照)。さらに、これを延伸加工することよって、ノルボルネン系重合体の主鎖が延伸方向に並び、レターデーション(Re)を発現し、ネガティブ2軸位相差板に適用ができる。すなわち、ノルボルネン系重合体のフィルムは、高いRe,Rthを有する位相差フィルムとして有望である。
【0003】
これらのなかでも、極性基を有するノルボルネン系重合体のフィルムは、高いRe、Rthの発現性に加え、透湿度を有すると予想される。透湿度を適度に有する場合、ポリビニルアルコールの偏光子に貼り付けることができるため、位相差フィルム兼保護フィルムとなり好ましい。特に、極性基がアルコキシカルボニル基のノルボルネンモノマーは合成が簡便であることから、その重合体は位相差フィルム用素材として有望である。
【特許文献1】国際公開第2004/049011号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、発明者らの検討の結果、メトキシカルボニル基を有するノルボルネン重合体フィルムの透湿度は、トリアセチルセルロースより高いことが判明した。フィルムの透湿度が高すぎると、偏光板の耐久性が低下するという問題が生じるため、トリアセチルセロースの透湿度の20〜80%が好ましいとされている。
【0005】
一方で、メトキシカルボニル基より炭素数の多いアルコキシカルボニル基、例えばブトキシカルボニル基を有するノルボルネン重合体フィルムの透湿度は、疎水性が高くなるため、好ましい値になると考えられるが、ブトキシカルボニル基含有ノルボルネンモノマーの重合活性は、メトキシカルボニル基含有ノルボルネンモノマーに比べて、きわめて低く、フィルム作製に十分な分子量が得られにくいことが判明した。非特許文献(オルガノメタリックス2004年23巻1680ページ)にもノルボルネンの側鎖が長いと金属触媒との相互作用が発生し、重合活性が低下することが記述されている。すなわち、高い分子量を有する炭素数が3以上のアルコキシカルボニル基含有ノルボルネンモノマーは、合成が簡便であるものの、通常の重合方法で重合体を得ることは困難である。
【0006】
本発明の課題は、上記の状況を解決するノルボルネン重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、これまで検討されていなかった高分子反応で、上記の課題に取り組んだ。その結果、モノマーからの重合反応で良好に得られるメトキシカルボニル基含有ノルボルネン重合体を原料とし、これに金属アルコキシド触媒を用いたアルコールとのエステル交換反応で達成できることを見出した。さらに、この製法によって得られる重合体フィルムは、耐溶剤性に優れるという副次的な効果を発現することも判明した。アルコールがメタノールの場合は、見かけ上はエステル交換が進行しないが、得られたノルボルネン重合体フィルムの耐溶剤性を向上させることができる。また、この金属アルコキシド触媒によるエステル交換反応は、他のタイプのノルボルネン系重合体にも適用できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
(1)メトキシカルボニル基を有するノルボルネン系重合体とアルコールを、金属アルコキシド触媒を用いて、エステル変換してノルボルネン系重合体を得ることを特徴とするノルボルネン系重合体の製造方法。
(2)前記金属アルコキシド触媒がターシャリーブトキシカリウムであることを特徴とする上記(1)記載のノルボルネン系重合体製造方法。
(3)前記メトキシカルボニル基を有するノルボルネン系重合体が、下記一般式(1)のノルボルネン系重合体であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、R,R,Rは、水素もしくは炭素数1〜20の炭化水素基であり、Lは単結合もしくはアルキレン基を表す。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のノルボルネン系重合体の製造方法から得られたノルボルネン系重合体からなるフィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、広範に利用できる新規なノルボルネン重合体製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0013】
[メトキシカルボニル基を有するノルボルネン系重合体]
本発明におけるメトキシカルボニル基を有するノルボルネン系重合体とは、メトキシカルボニル基を1分子中に少なくとも一つ有するノルボルネン系モノマー(以下該モノマーともいう)を原料とする。
【0014】
メトキシカルボニル基を1分子中に少なくとも一つ有するノルボルネン系モノマーは、以下の一般式で表される。
【0015】
【化2】

【0016】
式中、nは0または1を表し、R、R、R、Rは、水素もしくは炭素数1〜20の炭化水素基もしくはL-COOCHを表し(Lは単結合もしくはアルキレン基を表す)、R、R、R、Rのうちの少なくとも一つは、L-COOCHを表す。
【0017】
、R、R、RがL-COOCHでない場合、好ましくは水素もしくは炭素数1〜6の炭化水素基であり、さらに好ましくは水素もしくはメチル基もしくはフェニル基であり、最も好ましくは水素である。
【0018】
Lは、好ましくは単結合もしくはメチレンであり、さらに好ましくは単結合である。
【0019】
本発明におけるメトキシカルボニル基を有するノルボルネン系重合体は、該モノマーを原料とする重合体であり、具体的には、該モノマーの開環重合体、エチレンと該モノマーの共重合体、該モノマーの付加重合体などである。好ましくは該モノマーの付加重合体もしくは開環重合体であり、さらに好ましくは該モノマーの付加重合体であり、下記の一般式(1)で表される。
【0020】
【化3】

【0021】
、R、Rは、水素もしくは炭素数1〜20の炭化水素基であり、Lは単結合もしくはアルキレン基を表す。
【0022】
、Rは、好ましくは水素もしくは炭素数1〜6の炭化水素基であり、さらに好ましくは水素もしくはメチル基もしくはフェニル基であり、最も好ましくは水素である。
【0023】
は、好ましくは水素もしくは炭素数1〜6の炭化水素基であり、さらに好ましくは水素もしくはメチル基であり、最も好ましくは水素である。
【0024】
Lは、好ましくは単結合もしくはメチレンであり、さらに好ましくは単結合である。
【0025】
メトキシカルボニル基を有するノルボルネン系重合体は、以下の具体例の化合物があげられるが、これに限定されない。
【0026】
【化4】

【0027】
本発明のメトキシカルボニル基を有するノルボルネン系重合体は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエションクロマトグラムで測定されるポリスチレン換算の数平均分子量が10,000〜1,000,000であるのが好ましく、20,000〜500,000であるのがより好ましい。また、ポリスチレン換算の重量平均分子量は15,000〜1,500,000が好ましく、70,000〜700,000がより好ましい。ポリスチレン換算の数平均分子量が10,000以上、重量平均分子量が15,000以上であると、破壊強度が十分となり、ポリスチレン換算の数平均分子量が1,000,000以下、重量平均分子量が1,500,000以下であると、シートとしての成形加工性が低下せず、またキャストフィルム等とするときに溶液粘度が高くならず、扱いやすい。分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜5.0が好ましく、1.1〜4.0がより好ましく、1.1〜3.5がさらに好ましい。ノルボルネン系重合体の分子量分布が大きいと、ノルボルネン系重合体溶液(ドープ)が均一になりにくいため、良好なフィルムが作製しにくくなる。
【0028】
[エステル交換反応]
本発明において、前記のメトキシカルボニル基含有ノルボルネン重合体を金属アルコキシド触媒存在下、アルコールと反応させることで、エステル交換反応が進行する。エステル交換反応は酸触媒でも進行することが一般的に知られているが、本発明の反応はポリマー反応であるため、酸触媒反応では効率よく進行しない。
【0029】
まず、メトキシカルボニル基含有ノルボルネン重合体を適当な溶剤に溶かす。溶剤は、例えばジクロロメタンに代表される塩素系溶剤、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、エーテル(ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールなど)などがあげられるが、反応は加熱を要することから、芳香族炭化水素が好ましく、トルエンがさらに好ましい。
【0030】
ついで、この溶液にアルコールおよび金属アルコキシド触媒を添加する。
【0031】
アルコールを反応させることで、メトキシカルボニル基を他のアルコキシカルボニルに変換する。このアルコールは、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノールなどを自由に選択できる。また反応させるアルコールの量は、変換するメトキシカルボニル基の量に応じて、調整することができる。アルコールはメタノールでもよい。この場合、見かけ上は反応前後で重合体は変わらないが、得られる重合体の溶解性が変わる。
【0032】
金属アルコキシド触媒はこの分野において公知なものが使用できる。具体例として、アルカリ金属アルコキシド、例えばカリウムt−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド及びカリウムプロポキシドなどを用いることができる。好ましくはアルカリt−ブトキシドであり、最も好ましくはカリウムt−ブトキシドである。金属アルコキシド触媒はそれぞれの場合おいて、メトキシカルボニル基を基準にして、0.05〜1000モル当量、特に1〜100モル当量添加する。
【0033】
なお、反応系中に水を存在させてもよい。水の量は、好ましくはアルコールに対し0.001〜10質量%であり、さらに好ましくは0.001〜1質量%であり、もっとも好ましくは0.01〜1質量%である。水の存在によって、得られる重合体の溶解性が変化し、フィルムの耐溶剤性を向上できる。
【0034】
これらの混合物を加熱して、反応を進行させる。反応温度は、25〜150℃が好ましく、40〜120℃がさらに好ましく、70〜120℃がもっとも好ましい。反応時間は、0.5〜10時間が好ましく、0.5〜5時間がさらに好ましく、0.5〜3時間がもっとも好ましい。
【0035】
このエステル交換反応は、平衡反応であるので、副生するメタノールを反応進行とともに除去することが好ましい。このとき、反応溶媒も共に除去されてもよい。反応途中で反応溶媒を適宜添加することも可能である。
【0036】
かようにして、反応を進行させ、最後は酢酸などで中和することが好ましい。反応終了後は、メタノールなどの貧溶媒中で再沈殿させ、目的物を得る。
【0037】
かようにして得られた重合体のメトキシカルボニル基は、反応させたアルコールによって、別のアルコキシカルボニル基に変換されている。アルコールがメタノールの場合、見かけ上は同じ重合体である。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0039】
(合成例1:P−1の合成)
ノルボルネンカルボン酸メチル(東京化成社製:純度は99.9%、エンド/エキソ比率=50/50)62.7gとトルエン65mLを反応容器に仕込んだ。次いでトルエン10mLに溶解したパラジウムアセチルアセトナート(東京化成社製)13.5mgとトリシクロヘキシルフォスフィン(ストレム社製)12mg、塩化メチレン5mLに溶解したジメチルアニリニウム・テトラキスペンタフルオロフェニルボレート(ストレム社製)245mgを反応容器に投入した。加熱を開始し90℃で6時間攪拌した。なお、この間反応溶液の粘度の上昇とともに、トルエンを適宜追加した。得られた反応溶液を、過剰のメタノール中に投入し、重合体P−1を沈殿させた。得られた重合体P−1を110℃で6時間真空乾燥した。収量は46.8g,収率は74%であった。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を測定し、ポリスチレン換算で分子量を求めたところ、数平均分子量(Mn)=46100、重量平均分子量(Mw)=148100であった。
【0040】
【化5】

【0041】
(合成例2:P−2の合成)
水酸化ナトリウム54.5gを水600mLに溶かし、70℃に加熱した。これにノルボルネンカルボン酸メチル(東京化成社製)100.9gを滴下し、3時間攪拌した。氷浴で冷却しながら、濃塩酸130mLを滴下した。酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過し、ろ液をエバポレーションした。
【0042】
残存した液体をジメチルホルムアミド160mL,炭酸カリウム103.0gと混合し、70℃で攪拌した。ブチルアイオダイド159.4gを滴下し、4時間攪拌した。酢酸エチル/水で抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過し、ろ液をエバポレーションした。残存した液体を減圧蒸留した。3mmHg80℃で目的のノルボルネンカルボン酸ブチル95.1gを得た。ガスクロマトグラフィーによる純度は99.9%で、エンド/エキソ比率は50/50であった。
【0043】
得られたノルボルネンカルボン酸ブチルを合成例1と同様に重合し、重合体P−2を得た。収率は51%であった。GPCによる分子量は、Mn=14000、Mw=61300であった。
【0044】
【化6】

【0045】
(実施例1:P−3の合成)
合成例1で得られたP−1 20.5gをトルエン180mLに溶解し、これに50mLのブタノール(和光純薬社製)を添加し、均一な溶液とした。これにt−ブトキシカリウム(和光純薬社製)15.2gを添加した。90℃で2時間攪拌した。その間、低沸点物をディーンシュタックで除去した。これに酢酸20mLを加えた。メタノール中で再沈殿し、白色固体P−3を吸引ろ過した。得られたP−3を120℃で6時間、真空乾燥した。収量は26.0g、収率は99%であった。得られたP−3はメチレンクロライド、メタノール、トルエンには不溶であったが、メチレンクロライド/メタノール混合溶媒には可溶であった。重クロロホルム/重メタノール混合溶媒に溶解し、プロトンNMRを測定したところ、P−1のメトキシカルボニル基は全て消失し、合成例2で得られたP−2のピークと一致した。GPCによる分子量は、Mn=51300、Mw=154000であった。
【0046】
【化7】

【0047】
(実施例2:P−5の合成)
P−4(JSR社ARTON-D4532)10.0gをトルエン100mLに溶解し、シクロヘキサノール(アルドリッチ社製)12.3gを添加し、均一な溶液とした。t−ブトキシカリウム(和光純薬社製)13.8gを添加した。90℃で2時間攪拌した。その間、低沸点物をディーンシュタックで除去した。これに酢酸30mLを加えた。メタノール中で再沈殿し、白色固体を吸引ろ過した。得られた白色固体を120℃で6時間、真空乾燥した。重クロロホルム/重メタノール混合溶媒に溶解し、プロトンNMRを測定したところ、P−5の構造を確認した。積分比より、メトキシカルボニル基含有のユニットとシクロヘキシカルボニル基は、70:30であった。
【0048】
【化8】

【0049】
(実施例3:P−6の合成)
合成例1で得られたP−1を実施例1と同様にメタノールで処理した。得られたP−6はメチレンクロライド、メタノール、トルエンには不溶であったが、メチレンクロライド/メタノール混合溶媒には可溶であった。重クロロホルム/重メタノール混合溶媒に溶解し、プロトンNMRを測定したところ、反応前後で変化はなかった。GPCによる分子量は、反応前後と変化はなかった。
【0050】
【化9】

【0051】
(比較例1)
P−1 20.5gをトルエン180mLに溶解し、これに50mLのブタノール(和光純薬社製)を添加し、均一な溶液とした。これにp−トルエンスルホン酸1水和物(和光純薬社製)25.4gを添加した。90℃で2時間攪拌した。その間、低沸点物をディーンシュタックで除去した。これに酢酸20mLを加えた。メタノール中で再沈殿し、白色固体を吸引ろ過した。得られた白色固体を120℃で6時間、真空乾燥した。重クロロホルムに溶解し、プロトンNMRを測定したところ、P−1のままであった。p−トルエンスルホン酸1水和物の量を2.5g、5.0g、10.0gで同様の実験を行ったが、同様の結果であった。
【0052】
(実施例4)
(製膜)
P−1、P−3およびP−6の各20gを塩化メチレン/メタノール(90/10)90gに溶解し、適度な粘性をもったドープとし、これを加圧ろ過した。得られたドープをA3大の疎水性ガラス板上でアプリケーターを用いて、流延製膜した。これを25℃密閉系で1分間乾燥し、続いて70℃の送風乾燥機中で10分間乾燥した。ガラス板からフィルムを剥ぎ取り、ステンレス製の枠に挟み、これを100℃の乾燥機中で30分間、133℃の乾燥機中で30分間乾燥を行い、透明なフィルムF−1、F−3およびF−6を得た。
【0053】
P−2を同様に製膜したところ、フィルムが脆く、剥ぎ取りができなかった。
【0054】
(フィルム透湿度の測定)
フィルムの透湿度とは単位時間単位面積単位厚みあたりでフィルムを通過する水の量であり、本発明ではフィルムの透湿度は24時間1mあたりで厚み80μmのフィルムを通過する水の量[g]をいう。
【0055】
測定は以下のように行った。面積70mmφのフィルムを40℃、90%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出した。そして、透湿度を調湿後重量−調湿前重量により求めた。これによって得られた透湿度H(実測)を以下の換算式で厚み80μmの透湿度H(80μm)とした。
H(80μm)=H(実測)/厚み(実測)×80
【0056】
富士フイルム社製フジTACの透湿度を上記の手法で測定した。同様にF−1、F−3、F−6を測定した。結果を表1のようにまとめた。
【0057】
(耐溶剤性の試験)
3cm×3cmのフィルムをメチレンクロライド、メタノール、トルエンの3種類の溶剤に1分間浸し、取り出した後のフィルムの状態を観察した。溶解し、形状がくずれている場合は×、変化ない場合は○とした。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
上記の結果のように、F−3は透湿度がトリアセチルセルロースの20〜80%の好ましい範囲にある。さらにF−1にはみられない良好な耐溶剤性が発現している。F−6はF−1と透湿度がほぼ同じであるものの、耐溶剤性が向上している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メトキシカルボニル基を有するノルボルネン系重合体とアルコールを、金属アルコキシド触媒を用いて、エステル変換してノルボルネン系重合体を得ることを特徴とするノルボルネン系重合体の製造方法。
【請求項2】
前記金属アルコキシド触媒がターシャリーブトキシカリウムであることを特徴とする請求項1に記載のノルボルネン系重合体製造方法。
【請求項3】
前記メトキシカルボニル基を有するノルボルネン系重合体が、下記一般式(1)のノルボルネン系重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
【化1】

式中、R、R、Rは、水素もしくは炭素数1〜20の炭化水素基であり、Lは単結合もしくはアルキレン基を表す。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のノルボルネン系重合体の製造方法から得られたノルボルネン系重合体からなるフィルム。

【公開番号】特開2008−231253(P2008−231253A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72911(P2007−72911)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】