説明

ノロ鍋運搬車両

【課題】安定性および耐熱性に優れたノロ鍋運搬車両を提供する。
【解決手段】ノロ鍋運搬車両1を、クローラロ−ダの車体本体を車体本体3とし、該車体本体3の前部に、ノロ鍋運搬装置4を装着して構成すると共に、該ノロ鍋運搬装置4を、基端部が車体前部に上下動自在に支持されるリフトアーム12と、該リフトアームを上下動せしめるリフトシリンダと13L、13Rと、リフトアーム12の先端部に揺動自在に支持され、ノロ鍋2を吊持するべくノロ鍋2に係脱自在に係止するフック14L、14Rとを用いて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所等においてノロ鍋を運搬するためのノロ鍋運搬車両の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、製鉄所等においてノロ鍋を運搬する場合には、クレーン等の据付けの運搬装置を用いたり、ノロ鍋を積んで走行する台車等を用いているが、据付けの運搬装置は、機動性に劣るうえ、天井部等に運搬装置据付けのスペースが必要となる。一方、台車は、該台車にノロ鍋を積んだり降ろしたりする装置が必要である許りか、手間もかかって作業性に劣る。そこで従来、フォークリフトにノロ鍋を保持する保持装置を設け、該保持装置付きフォークリフトを用いてノロ鍋を運搬するようにした技術が提唱されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】実用新案登録第2585396号公報
【特許文献2】実用新案登録第2585397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ノロ鍋は、ノロ鍋自体の重量とノロ鍋に積載される溶融スラグとの重量を合わせると非常に重いものであり(数トン〜数十トン)、また、溶融スラグは高熱のものであるから、ノロ鍋を運搬する車両には、高い安定性と耐熱性とが要求される。
しかるに、特許文献1、2のものは、フォークリフトの車体前端部に設けられるフォークに、ノロ鍋保持装置を着脱自在に取付けたものであるから、フォークリフトの車体本体をよほど大型化しないと、安定性に欠けるという問題がある。さらに、フォークリフトの車体本体についても、前輪と後輪とを有するホイール式のものであって、ノロ鍋を運搬する車両としては、安定性に劣る許りか耐熱性にも劣るという問題があり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、ノロ鍋を運搬するノロ鍋運搬車両であって、該ノロ鍋運搬車両は、クローラロ−ダの車体本体を車体本体とし、該車体本体の前部に、作業装置としてノロ鍋を吊持するノロ鍋運搬装置を装着して構成されることを特徴とするノロ鍋運搬車両である。
請求項2の発明は、ノロ鍋運搬装置は、基端部が車体前部に上下動自在に支持されるリフトアームと、該リフトアームを上下動せしめるリフトシリンダと、リフトアームの先端部に揺動自在に支持され、ノロ鍋を吊持するべくノロ鍋に係脱自在に係止するフックとを用いて構成されることを特徴とする請求項1に記載のノロ鍋運搬車両である。
請求項3の発明は、リフトアームは、基端部が車体前部に上下動自在に支持される左右の第一リフトアームと、該左右の第一リフトアームの先端部間を左右方向に貫通して左右外方に突出する横軸と、該横軸の左右端部に固着される左右の第二リフトアームとを用いて構成されると共に、該左右の第二リフトアームの先端部に、左右のフックがそれぞれ揺動自在に支持されることを特徴とする請求項2に記載のノロ鍋運搬車両である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、ノロ鍋運搬車両は、車体本体としてクローラロ−ダの車体本体が用いられることになり、而して、運搬可能な重量に対してコンパクトな車体でありながら、安定性および耐熱性に優れ、よって、非常に重く、且つ、高熱の溶融スラグが積載されるノロ鍋を、安定した状態で効率よく運搬することができる。
請求項2の発明とすることにより、ノロ鍋運搬装置は、構造簡単で、しかもリフトアームを上下動させるだけの簡単な操作でノロ鍋を吊持したり降ろしたりすることができることになって、作業性の向上に大きく貢献できる。
請求項3の発明とすることにより、左右のフックが支持される左右の第二リフトアーム間の左右幅が、車体前部に支持される左右の第一リフトアーム間の左右幅よりも幅広になり、もって、左右幅の広い大型のノロ鍋を運搬することができる。しかも、左右の第一リフトアームと左右の第二リフトアームとは、左右の第一リフトアームの先端部間を左右方向に貫通する横軸によって連結されているから、左右の第二リフトアーム間の左右幅が幅広になっていても、重量の重いノロ鍋を運搬するのに適した強固な構造のリフトアームとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図において、1はノロ鍋2を運搬するためのノロ鍋運搬車両であって、該ノロ鍋運搬車両1は、クローラロ−ダの車体本体を車体本体3とし、該車体本体3の前部に、作業装置として後述するノロ鍋運搬装置4を装着して構成される。
【0007】
前記ノロ鍋2は、上方側が開口した椀形状のものであって、底部に四本の脚部2aを有している。さらにノロ鍋2の上部には、左右外方に突出する左右の係止ピン5L、5Rが突設されており、該左右の係止ピン5L、5Rに、後述する左右のフック14L、14Rが係脱自在に係止する構成になっている。また、この左右の係止ピン5L、5Rの先端部には、該係止ピン5L、5Rよりも大径円盤状の抜け止め部5La、5Raが形成されていて、該抜け止め部5La、5Raによって、係止ピン5L、5Rに係止した左右のフック14L、14Rの左右方向の抜け止めがなされるように構成されている。
【0008】
一方、ノロ鍋運搬車両1の車体本体3は、前述したようにクローラロ−ダの車体本体であって、汎用のものであるため詳細な説明は省略するが、運転室6、エンジンルーム7等を備えると共に、鉄シューからなるクローラ式の走行装置8を備えており、運搬可能な重量に対してコンパクトな車体でありながら、安定性および耐熱性に優れている。さらに、車体本体3の後部には、車体後側を保護するためのリヤガード9が装着されると共に、追加ウエイト10が装着されている。また、車体本体3の前面部には、遮熱シート(図示せず)が止着された補強板11が取り付けられている。
【0009】
また、作業装置として前記車体本体3の前部に装着されるノロ鍋運搬装置4は、後述するリフトアーム12、左右のリフトシリンダ13L、13R、左右のフック14L、14R等を用いて構成される。
【0010】
前記リフトアーム12は、基端部が車体本体3前部の左右両側部にピン軸15L、15Rを介して上下揺動自在に支持される左右の第一リフトアーム16L、16R、該左右の第一リフトアーム16L、16Rの先端部間を左右方向に貫通する横軸17、該横軸17の左右端部にそれぞれ固着される左右の第二リフトアーム18L、18R等を用いて構成されている。
【0011】
ここで、前記横軸17は、前述したように左右の第一リフトアーム16L、16Rの先端部間を左右方向に貫通しているが、該横軸17の左右両端部は、左右の第一リフトアーム16L、16Rよりも左右外方に突出しており、該突出先端部に、左右の第二リフトアーム18L、18Rの基端部が固着されている。而して、図4に示す如く、左右の第二リフトアーム18L、18R間の左右幅H2は、左右の第一リフトアーム16L、16R間の左右幅H1よりも幅広になっており、これによって、左右幅の広い大型のノロ鍋2を運搬できるようになっている。
尚、図中、19は左右の第一リフトアーム16L、16Rの中間部間に支架される補強用横軸である。さらにノロ鍋運搬装置4には、図4に二点鎖線で示す如く、適宜箇所に遮熱板20が止着されている。
また、前記図4は、ノロ鍋運搬装置4の平面図であるが、該図4では、後述する左右のリフトシリンダ13L、13Rおよび左右のフック押圧用シリンダ21L、21Rに接続される油圧配管は、省略してある。
【0012】
一方、前記左右のリフトシリンダ13L、13Rは、シリンダ筒の基端部が車体本体3前部の左右両側部にそれぞれ揺動自在に軸承され、また、シリンダロッドの先端部が左右の第一リフトアーム16L、16Rの中間部にそれぞれ揺動自在に軸承されていると共に、該左右のリフトシリンダ13L、13Rは同期して伸縮作動するように構成されている。そして、該左右のリフトシリンダ13L、13Rの伸縮作動に基づき、前記左右の第一リフトアーム16L、16Rの基端部を支持するピン軸15L、15Rを支点として、リフトアーム12全体が上下揺動する構成になっている。
【0013】
また、前記左右の第二リフトアーム18L、18Rは、それぞれ所定間隔を存して左右に対向する二枚のアーム板18Laおよび18Lb、18Raおよび18Rbを用いて形成されている。そして、該左右の第二リフトアーム18L、18Rの先端部には、二枚のアーム板18Laおよび18Lb、18Raおよび18Rb間に挟まれる状態で、左右のフック14L、14Rの基端部がピン軸22L、22Rを介してそれぞれ揺動自在に軸承されている。
【0014】
前記左右のフック14L、14Rは、基端部が前述したように左右の第二リフトアーム18L、18Rの先端部に揺動自在に軸承される一方、先端部には前記ノロ鍋2の左右の係止ピン5L、5Rに係脱自在に係止する鉤部14La、14Raが形成されている。そして、ノロ鍋2の左右の係止ピン5L、5Rに左右のフック14L、14Rの鉤部14La、14Raを係止せしめた状態でリフトアーム12を上動させることにより、ノロ鍋2は左右のフック14L、14Rに吊持され、この状態でノロ鍋運搬車両1を走行させることでノロ鍋2を運搬できるようになっている。一方、ノロ鍋2の運搬終了後は、リフトアーム12を下動させてノロ鍋2を降ろした後、さらにリフトアーム12を下動させることにより鉤部14La、14Raが左右の係止ピン5L、5Rから外れるようになっている。
【0015】
ここで、前記左右のフック14L、14Rは、ピン軸22L、22Rよりもさらに基端側が、左右の第二リフトアーム18L、18Rの先端側上面よりも上方に突出している(該突出部を、以下、基端側突出部14Lb、14Rbと称する)。一方、左右の第二リフトアーム18L、18Rには、上記基端側突出部14Lb、14Rbに対向する部位に、左右のフック押圧用シリンダ21L、21Rが取り付けられている。そして、該左右のフック押圧用シリンダ21L、21Rは、縮小時にはロッド先端部が基端側突出部14Lb、14Rbから離間しており、この状態では左右のフック14L、14Rは自重で垂下するようになっている(図5(A)参照)。一方、左右のフック押圧用シリンダ21L、21Rを伸長させると、ロッド先端部が基端側突出部14Lb、14Rbを前方側に押圧し、これにより左右のフック14L、14Rは、鉤部14La、14Raが後方側(車体本体3側)に後退した待機姿勢(図5(B)参照)に揺動変姿するようになっている。
【0016】
そして、ノロ鍋2の左右の係止ピン5L、5Rに左右のフック14L、14Rの鉤部14La、14Raを係止させる場合には、鉤部14La、14Raを係止ピン5L、5Rの下方に位置せしめるべくリフトアーム12を下動せしめ、さらに前記フック押圧用シリンダ21L、21Rを伸長させて左右のフック14L、14Rを待機姿勢にした状態で、該鉤部14La、14Raが左右の係止ピン5L、5Rに近接するまで車体本体3を前進させる(図5(B)参照)。しかる後、フック押圧用シリンダ21L、21Rを縮小させて左右のフック14L、14Rの待機姿勢を解除すると、左右のフック14L、14Rは自重により垂下して、鉤部14La、14Raの上方部分が左右の係止ピン5L、5Rに当接する(図5(C)参照)。この状態でリフトアーム12を上動させると、左右のフック14L、14Rは鉤部14La、14Raの上方部分が係止ピン5L、5Rに摺接しながら上動して、鉤部14La、14Raが左右の係止ピン5L、5Rに自動的に係止する。この様にすることにより、車体本体3を停止させたときに左右の係止ピン5L、5Rに対する鉤部14La、14Raの前後位置が若干ずれた状態であっても、鉤部14La、14Raを左右の係止ピン5L、5Rに容易に係止せしめることができる。
【0017】
叙述の如く構成された本形態において、ノロ鍋運搬車両1は、車体本体3の前部に装着されたノロ鍋運搬装置4でノロ鍋2を吊持して運搬することになるが、該ノロ鍋運搬車両1の車体本体3は、クローラロ−ダの車体本体が用いられており、而して、運搬可能な重量に対してコンパクトな車体でありながら、安定性および耐熱性に優れることになる。よって、非常に重く、且つ、高熱の溶融スラグが積載されるノロ鍋2であっても、該ノロ鍋2を、前記ノロ鍋運搬車両1によって安定した状態で効率よく運搬することができる。
【0018】
また、ノロ鍋2を吊持するノロ鍋運搬装置4は、基端部が前記車体本体3の前部に上下動自在に支持されるリフトアーム12と、該リフトアーム12を上下動せしめる左右のリフトシリンダ13L、13Rと、リフトアーム12を形成する左右の第二リフトアーム18L、18Rの先端部に揺動自在に支持され、ノロ鍋2を吊持するべくノロ鍋2の係止ピン5L、5Rに係脱自在に係止する左右のフック14L、14Rとを用いて構成されている。而して、ノロ鍋運搬装置4は、簡単な構造であり、しかもリフトアーム12を上下動させるだけの簡単な操作でノロ鍋2を吊持したり降ろしたりすることができて、作業性の向上に大きく貢献できる。
【0019】
さらに、前記リフトアーム12は、基端部が車体本体3の前部に上下動自在に支持される左右の第一リフトアーム16L、16Rと、該左右の第一リフトアーム16L、16Rの先端部間を左右方向に貫通して左右外方に突出する横軸17と、該横軸17の左右端部に固着される左右の第二リフトアーム18L、18Rとを用いて構成されと共に、該左右の第二リフトアーム18L、18Rの先端部に、左右のフック14L、14Rがそれぞれ揺動自在に支持されることになる。而して、左右のフック14L、14Rが支持される左右の第二リフトアーム18L、18R間の左右幅H2は、車体本体3に支持される左右の第一リフトアーム16L、16R間の左右幅H1よりも幅広になり、もって、左右幅の広い大型のノロ鍋2を運搬できることになる。しかも、前記左右の第一リフトアーム16L、16Rと左右の第二リフトアーム18L、18Rとは、左右の第一リフトアーム16L、16Rの先端部間を左右方向に貫通する横軸17によって連結されているから、左右の第二リフトアーム18L、18R間の左右幅H2が幅広になっていても、重量の重いノロ鍋2を運搬するのに適した強固な構造のリフトアーム12とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ノロ鍋運搬車両の側面図である。
【図2】ノロ鍋の平面図である。
【図3】車体本体の背面図である。
【図4】ノロ鍋運搬装置の平面図である。
【図5】(A)は垂下状態のフックを示す図、(B)は待機姿勢のフックを示す図、(C)は係止ピンに係止する直前のフックを示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ノロ鍋運搬車両
2 ノロ鍋
3 車体本体
4 ノロ鍋運搬装置
12 リフトアーム
13L、13R 左右のリフトシリンダ
14L、14R 左右のフック
16L、16R 左右の第一リフトアーム
17 横軸
18L、18R 左右の第二リフトアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノロ鍋を運搬するノロ鍋運搬車両であって、該ノロ鍋運搬車両は、クローラロ−ダの車体本体を車体本体とし、該車体本体の前部に、作業装置としてノロ鍋を吊持するノロ鍋運搬装置を装着して構成されることを特徴とするノロ鍋運搬車両。
【請求項2】
ノロ鍋運搬装置は、基端部が車体前部に上下動自在に支持されるリフトアームと、該リフトアームを上下動せしめるリフトシリンダと、リフトアームの先端部に揺動自在に支持され、ノロ鍋を吊持するべくノロ鍋に係脱自在に係止するフックとを用いて構成されることを特徴とする請求項1に記載のノロ鍋運搬車両。
【請求項3】
リフトアームは、基端部が車体前部に上下動自在に支持される左右の第一リフトアームと、該左右の第一リフトアームの先端部間を左右方向に貫通して左右外方に突出する横軸と、該横軸の左右端部に固着される左右の第二リフトアームとを用いて構成されると共に、該左右の第二リフトアームの先端部に、左右のフックがそれぞれ揺動自在に支持されることを特徴とする請求項2に記載のノロ鍋運搬車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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