説明

ノングルテン米粉パン生地とそれを用いたノングルテン米粉パンの製造方法

【課題】 家庭などで簡単においしくノングルテン米粉パンを焼くことのできる、ノングルテン米粉パン生地とそれを用いたノングルテン米粉パンの製造方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】 α化米粉を3〜10質量%の割合で含む米粉に、砂糖、塩、及び水を加えたものを撹拌混捏して得られる、ノングルテン米粉パン生地と、このノングルテン米粉パン生地に、パン酵母を混ぜ、発酵、ガス抜き、焼成することを特徴とする、ノングルテン米粉パンの製造方法と、を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦粉や小麦粉の成分であるグルテンを含まない、ノングルテン米粉パン生地と、それを用いたノングルテン米粉パンの製造方法と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、米の消費拡大の見地から、或いは、小麦粉アレルギー症状を示す人の増加に伴い、小麦粉グルテンを含まないパンとして、米粉を使ったパンが注目を浴びており、そのような米粉パンの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方で、家庭などにてホームベーカリー機能付きの炊飯器等を利用してパンを焼く人達が増えており、そのためのプレミックス粉も市販されている。
【0004】
しかしながら、米粉パンの場合、米粉の種類により吸水などが異なるため、プレミックス粉を用いても、家庭などで簡単においしくノングルテン米粉パンを焼くことは極めて難しいものであった。また、プレミックス粉には増粘剤などが添加されており、無添加でノングルテンの米粉パンを作ることが困難とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−288377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、家庭などで簡単においしくノングルテン米粉パンを焼くことが極めて難しいプレミックス粉というものではなく、家庭などで簡単においしくノングルテン米粉パンを焼くことのできる、ノングルテン米粉パン生地と、それを用いたノングルテン米粉パンの製造方法と、を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、家庭などで簡単においしくノングルテン米粉パンを焼くことのできる方法を提供するため鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は次のとおりのものである。
(1);α化米粉を3〜10質量%の割合で含む米粉に、砂糖、塩、及び水を加えたものを撹拌混捏して得られる、ノングルテン米粉パン生地。
(2);前記米粉100重量部に対し、水を75〜90質量部加えることを特徴とする、前記(1)に記載のノングルテン米粉パン生地。
(3);前記(1)又は前記(2)記載のノングルテン米粉パン生地を容器に充填してなる、容器入りノングルテン米粉パン生地。
(4);前記(1)又は前記(2)記載のノングルテン米粉パン生地に、パン酵母を混ぜ、発酵、ガス抜き、焼成することを特徴とする、ノングルテン米粉パンの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、家庭などで簡単においしくノングルテン米粉パンを焼くことのできる、ノングルテン米粉パン生地が提供される。
また、本発明によれば、前記ノングルテン米粉パン生地を用いて、家庭などで簡単においしくノングルテン米粉パンを焼くことのできる、ノングルテン米粉パンの製造方法が提供される。
このように家庭などで簡単においしくノングルテン米粉パンを焼くことのできる、ノングルテン米粉パン生地は、これまで存在しておらず、これまで全く知られていない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のノングルテン米粉パン生地は、α化米粉を3〜10質量%の割合で含む米粉に、砂糖、塩、及び水を加えたものを撹拌混捏して得られるものである。
【0011】
本発明では、α化米粉を含む米粉を用いる。
ここでα化米粉としては、α化させた米の糊液を乾燥粉末化させたものの他、膨化米・かゆ状の米を用いることもできる。
【0012】
本発明では、このようなα化米粉を3〜10質量%の割合で含む米粉を用いる。米粉中のα化米粉の量が少な過ぎると、充分に糊化したノングルテン米粉パン生地とならないため好ましくない。一方、米粉中のα化米粉の量が多過ぎると、粘りが強く、硬くなってしまうため、好ましくない。
【0013】
なお、米粉の元となる米の種類としては、特に制限はなく、粳米やもち米などを用いることができる。また、粳米の場合、ジャポニカ米のみならず、インディカ米など、広く用いることができる。
【0014】
米の粉砕は、各種公知の粉砕法により行えばよく、特に制限はない。粉砕の程度としては、米粉パンの出来上がりを考慮して決定すればよいが、通常は、200〜300メッシュの篩を通過する程度の米粉が用いられる。
【0015】
原料としては、この他に、砂糖、塩が用いられる。
さらに、必要に応じて、サラダオイル、オリーブオイルなどの植物油や、バターなどの油脂を用いることができる。卵や乳成分は、必要に応じて用いることもできる。但し、ノンアレルギー製品とする場合には、用いることができないことは言うまでもない。
また、本発明においては、増粘剤なども用いる必要がない。
【0016】
本発明のノングルテン米粉パン生地は、上記したようにα化米粉を特定の割合で含む米粉に、砂糖、塩、及び水を加えたものを、撹拌混捏して得られるものである。
【0017】
特に、米粉100重量部に対し、水を75〜90質量部の割合で、好ましくは80〜85質量部の割合で加えることが必要である。水の割合がこの範囲であると、ノングルテンということもあって、撹拌混捏して得られる生地が、水分を多く含む糊のような状態となるので、後からパン酵母を入れても均一に混ぜることができることから、生地の状態で流通させることができる。なお、小麦粉を用いた生地であると、小麦粉がグルテンにより水分を吸収してしまうことから、初めからパン酵母を入れておく必要があり、そのため発酵の問題が生じるため、生地の状態で流通させることは温度管理が難しいため家庭用には困難とされている。
このようにノングルテンの米粉を原料としているため、米粉100重量部に対し、水を75〜90質量部の割合で加えることにより、初めて生地の状態で流通させることができた。
ここで水の割合が少な過ぎると、後でパン酵母を入れたときに、均一に混ぜることが難しくなり充分に発酵させることができないため、好ましくない。一方、水の割合が多過ぎると、発酵によるガスを包み込む生地が弱くなってしまうため、好ましくない。
【0018】
砂糖や塩の割合については、好みに応じて適宜選択すればよいが、通常、砂糖は、米粉100重量部に対し、3〜10質量部前後、塩は1.2〜2質量部前後の割合で用いられる。
【0019】
なお、撹拌混捏は、上記混合物が糊状の生地となって、でん粉のネットワークができるまで行う。通常は、10〜30分間程度撹拌混捏を行えばよいが、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明では、このようにしてノングルテン米粉パン生地としたものであり、プレミックス粉の状態のものとは異なる。ここでプレミックス粉の状態のものであると、家庭などでこれを用いてパンを作るときに、米粉はその種類により、吸水などが異なっていることから、米粉に応じた水分調整を行うことが難しいものとなる。また、プレミックス粉の場合、安定剤や増粘剤などを用いているが、本発明においては、安定剤や増粘剤などを用いる必要がない。
【0021】
本発明においては、上記混合物が撹拌混捏され、糊状の生地の状態のノングルテン米粉パン生地となっていることから、プレミックス粉の状態のものとは異なり、家庭などで生地を混ぜ合わせ捏ねる手間を省くことができる。
本発明のノングルテン米粉パン生地は、既に撹拌混捏されており、しかも後からパン酵母を入れるだけでよく、家庭などで簡単にノングルテン米粉パンを焼くことができる。
【0022】
また、本発明のノングルテン米粉パン生地は、パン酵母が入っていないため、これを冷蔵、冷凍することにより、長く保存することができる。
【0023】
特に、本発明のノングルテン米粉パン生地を容器に充填して、容器入りノングルテン米粉パン生地とすることにより、冷蔵、冷凍する場合は勿論、場合によっては常温でも短期間は保存可能である。従って、本発明のノングルテン米粉パン生地は、広く流通にのせることができる。
【0024】
なお、容器としては、ノングルテン米粉パン生地を密封できるものであれば、フィルム・シート状の容器や、各種成形容器など、特に制限はない。ノングルテン米粉パン生地は、1個ずつでもよいし、或いは複数個まとめて、容器に充填される。
【0025】
本発明は、前記のようにして得られたノングルテン米粉パン生地に、パン酵母を混ぜ、発酵、ガス抜き、焼成することを特徴とする、ノングルテン米粉パンの製造方法をも提供するものである。
ここでパン酵母としては、イースト菌と呼ばれるサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が用いられる。その中でも安全性に優れたパン酵母として、より具体的には、天然に由来する「白神こだま酵母」(登録商標)を用いることができる。
前記のようにして得られたノングルテン米粉パン生地を発酵に適した温度にしてから、このパン酵母を混ぜ合わせて発酵させる。
なお、発酵、ガス抜き、焼成は、常法により行えばよい。
発酵は、通常、一次発酵と二次発酵とが行われ、これにより、炭酸ガスが発生して生地がふくらむ。
一次発酵は、通常、30〜35℃で20分程度行われる。その後、攪拌しガスを抜いた後、二次発酵は、通常、35℃前後で30分程度行われる。ノングルテンの米粉パンは、小麦粉のパンと違い、一次発酵後成型は伴わない。このガス抜きを行うことにより、パン酵母が再び活動して、よりきめ細かな生地となる。
この後、焼成して、目的とするノングルテン米粉パンが得られる。
焼成は、例えばオーブンを用いる場合、200℃前後の温度にて40〜50分程度行う。
得られたノングルテン米粉パンは、さらに卵や乳成分を用いないことで、ノンアレルギー製品とすることができる。
【0026】
前記のようにして得られたノングルテン米粉パン生地を入手した消費者は、家庭などにおいて、これにパン酵母を混ぜ、発酵、ガス抜き、焼成するだけでよく、最も大変な撹拌混捏操作を行う必要がなく、簡単にノングルテン米粉パンを製造することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。
【0028】
<実施例1>
(1)ノングルテン米粉パン生地の製造
α化米粉(株式会社マイオールのマイプラス;商品名)を5質量%の割合で含む米粉(インディカ米、日本製、200メッシュパス)100質量部に、砂糖5質量部、塩1.2質量部、水75〜85質量部を混合し、20分間よく撹拌混捏して、糊化させ、ノングルテン米粉パン生地を得た。
【0029】
(2)容器入りノングルテン米粉パン生地の製造
上記(1)で得られたノングルテン米粉パン生地を、300〜600gずつシート状の容器に充填し、密封して、容器入りノングルテン米粉パン生地を得た。
【0030】
(3)ノングルテン米粉パンの製造
上記(2)で得られた、容器入りノングルテン米粉パン生地を容器から取り出し、これに30℃の温度でパン酵母〔サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)〕を均一に混ぜた後、30℃で20分間一次発酵させた。
一次発酵後、成形し、ガス抜きを行い、次いで焼成用容器に入れ、30℃で30分間二次発酵させた。
しかる後、200℃の温度にて、50分焼成して、ノングルテン米粉パンを製造した。
このようにして得られた、ノングルテン米粉パンは、食感において、通常の小麦粉パンよりもっちりと焼き上がり、米のうまみが感じられた。
また、炊飯器の内釜で二次発酵をとった後、炊飯器にて炊飯することもできる。この方法は、ノングルテンの米粉パンがさらにふんわりと柔らかく食することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、食品業界において広く利用することが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α化米粉を3〜10質量%の割合で含む米粉に、砂糖、塩、及び水を加えたものを撹拌混捏して得られる、ノングルテン米粉パン生地。
【請求項2】
前記米粉100重量部に対し、水を75〜90質量部加えることを特徴とする、請求項1に記載のノングルテン米粉パン生地。
【請求項3】
請求項1又は2記載のノングルテン米粉パン生地を容器に充填してなる、容器入りノングルテン米粉パン生地。
【請求項4】
請求項1又は2記載のノングルテン米粉パン生地に、パン酵母を混ぜ、発酵、ガス抜き、焼成することを特徴とする、ノングルテン米粉パンの製造方法。