説明

ノーマルモードヘリカルアンテナ

【課題】アンテナのサイズの制約を受けることなく、要求される入力インピーダンスを実現可能なノーマルモードヘリカルアンテナを提供する。
【解決手段】第1の導線を螺旋状に巻回することにより形成されるコイルと、給電点が中央部に設けられ、前記第1の導線よりも長さが短い第2の導線と、を備え、前記コイルの中央部の外周側に、前記第1の導線と離間して、前記第2の導線が、前記第1の導線に沿って巻回され、前記第2の導線の両端部が、前記第1の導線に短絡されてなることを特徴とするノーマルモードヘリカルアンテナに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユビキタス通信の小形無線タグや生体埋め込み用の小形無線センサーなどに用いられ、給電部に高周波電圧を印加することにより導体部より電波を空間に放射する機能を有するノーマルモードヘリカルアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
ユビキタス通信においては、販売現場で扱われている商品などに、電波により識別される荷札(RFID;Radio Frequency IDentification)を貼り付け、商品の流通に役立てようとする試みが成されている。ここで重要になるのは、RFIDを如何に小形化してかつ電波に対する応答感度を高くできるかである。このため様々な小形アンテナが開発されている。
【0003】
この用途に適したアンテナとして、ノーマルモードヘリカルアンテナが利用されている(例えば特許文献1、非特許文献1参照)。図1に示すように、ノーマルモードヘリカルアンテナ200の基本構造は、細い導線100をコイル状に巻いたヘリカル構造である(以下、単にヘリカル構造、あるいは基本構造とも記す)。ヘリカル構造では、コイルの中央部に設けられる給電点110で給電される。ここで、ヘリカル構造のアンテナ長をH、半径をa、導線100の半径をd、巻き数をNとしている。
【0004】
ノーマルモードヘリカルアンテナ200の特徴は、アンテナの小形化により発生する大きな容量性リアクタンスを、コイルの誘導性リアクタンスにより打ち消し、純抵抗の入力インピーダンスを実現できることである。従って、ノーマルモードヘリカルアンテナ200は、アンテナの物理寸法が動作波長の数十分の1以下となる超小形アンテナとして好適である。なお、入力インピーダンスが純抵抗になる状態は、自己共振と呼ばれる。このためには、アンテナ長(H)、アンテナ直径(2a)、アンテナ巻き数(N)の関係を適切に選ぶ必要がある。
【0005】
また、図2に示すように、ヘリカル構造200を並列に配置し、両端を導線で接続した構造が提案されており、折り返し構造のノーマルモードヘリカルアンテナ210(以下、単に折り返し構造とも記す)と呼ばれている(非特許文献2参照)。
【0006】
図1に示すヘリカル構造200および図2に示す折り返し構造210において、H=0.025λ、2a=0.016λ、N=10とし、導線100の直径(2d)を0.16mmとした際の入力インピーダンスの計算結果を図3に示す。ここに、λは波長を表している。ヘリカル構造200及び折り返し構造210ともに、周波数が900MHzの点で共振し、アンテナの入力インピーダンスが純抵抗となる。またヘリカル構造200では2.146Ωであった抵抗値が、折り返し構造210では5.334Ωと大きくなっており、折り返し構造210を採用することにより、アンテナの入力インピーダンスを給電線のインピーダンス(50Ω)に近づけることができる。しかし、抵抗値は両構造とも、給電線のインピーダンスに対して非常に小さな値である。
【0007】
これらの小さな抵抗値を給電線のインピーダンスに整合させる方法として、図4(A)に示すタップ給電構造のノーマルモードヘリカルアンテナ220(以下、単にタップ給電構造とも記す)が提案されている(非特許文献3参照)。図4(A)では、アンテナの下半分が導体板120で終端されており、図4(B)の構造と等しい電気特性となる。
【0008】
非特許文献3に記載されている例を基に、H=120mm、2a=13mm、N=12で導線直径を0.2mmとして求めた入力インピーダンスを図5に示す。タップ給電構造220ではない場合に10Ω程度であった入力インピーダンスを、タップ給電構造220にすることにより40Ω程度に大きくでき、給電線のインピーダンスに近い値を達成できる。なお、この場合、L1=20mm、L2=40mmをタップ寸法としている。また自己共振周波数は、タップ給電構造220ではない場合に393MHzであったものが、タップ給電構造220を採用することにより493MHzに変化している。ここで、アンテナの動作波長としてf=493MHzを用いると、H=120mmはH=0.197λのアンテナ長に相当し、ノーマルモードヘリカルアンテナとしては長い部類に属する。L2を大きくすることにより、入力インピーダンスを給電線のインピーダンスである50Ωに一致させることも可能である。
【0009】
ここで、図4(B)に示す構造において、タップ給電を行うことによる入力インピーダンス改善の効果は、図6(A)の伝送線路モデルを用いることにより近似的に評価できる。以下に評価のための計算式を示す(非特許文献4参照)。
【0010】
まず、アンテナとタップに流れる電流の比(α)は次式(1)で求めることができる。

ここで、aおよびa’はアンテナ部とタップ部の導線の半径である。
次に、伝達線路のインピーダンスZiは、タップ部の終端までの線路長であるl1/2を用いて次式(2)で表される。

ここで、Zは半径a、a’及び間隔sの伝送線路の特性インピーダンスで、次式(3)で与えられる。

結局、入力インピーダンスZinは次式(4)となる。

ここで、Zaはタップ無しのアンテナの入力インピーダンスである。
【0011】
図4(B)の構造の各部寸法とZa=10.5Ωを用いて、式(4)のRinを求めた結果を、図6(B)に示す。三角印とX印は電磁界シミュレータを用いた計算値を示す。式(1)から式(4)による計算値と電磁界シミュレータを用いた値は良い対応を示している。図6(B)から分かることは、アンテナの入力抵抗を給電線のインピーダンスである50Ω程度に大きくするためには、給電点間の距離(l)を40mm以上と、可なり大きく取る必要のあることである。
【特許文献1】特開2001−94333号公報
【非特許文献1】Klaus Finkenzeller著、ソフト工学研究所訳、「RFIDハンドブック」第2版、日刊工業新聞社、2002、pp.12−13
【非特許文献2】鄭、道下、山田、“高効率な超小形ノーマルモードヘリカルアンテナの性能”、信学技報、Sept.2005, AP2005-69, pp.25-30
【非特許文献3】J. D. Klaus, Antennas second edition, McGraw-Hill, 1988, p.337
【非特許文献4】C.A.Balanis, Antenna Theory, Analysis and Design, Second Edition, J.Wiley and Sons Inc., 1982, pp.472-475
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上に示したタップ構造を0.05波長の超小形ノーマルモードヘリカルアンテナに適用してみる。図1に示したヘリカル構造200にタップ給電した構造を図7(A)に示す。タップ給電による入力インピーダンス改善の効果を図7(B)に示す。ここで、L1=20mmでL2=20mmとしている。タップ給電により入力インピーダンスは僅かに増加しているが、タップ給電をしない場合の値が2.146Ωと非常に小さいため、タップ給電を行っても入力インピーダンスは5Ω程度にしかなっていない。
【0013】
L1やL2を大きくすれば、入力インピーダンスを大きくすることが期待できるが、アンテナの寸法が50mm程度であることを考えると、タップ部寸法が過大となることが憂慮される。また、数値的にも、給電線の50Ωにまで増大させることは極めて困難である。つまり、従来のタップ給電構造では、0.05波長以下の超小形ノーマルモードヘリカルアンテナの入力インピーダンスを増加させることは困難であり、給電線との効果的なインピーダンス整合を行うことができない。
【0014】
このように、長さが0.2波長程度のノーマルモードヘリカルアンテナにおいては、タップ部の長さを可なり長く取ることができるため、入力インピーダンスを50Ω給電線に整合させることは比較的容易であるのに対し、長さが0.05波長以下の超小形ノーマルモードヘリカルアンテナにおいては、タップ部を長くとることが困難なため、十分な抵抗値の増加を達成することができず、50Ω給電線への整合は不可能である。このように、ノーマルモードヘリカルアンテナにおいては、アンテナのサイズの制約により、要求される入力インピーダンスを実現することが困難な場合がある。
【0015】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、アンテナのサイズの制約を受けることなく、要求される入力インピーダンスを実現可能なノーマルモードヘリカルアンテナを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、第1の導線を螺旋状に巻回することにより形成されるコイルと、給電点が中央部に設けられ、前記第1の導線よりも長さが短い第2の導線と、を備え、前記コイルの中央部の外周側に、前記第1の導線と離間して、前記第2の導線が、前記第1の導線に沿って巻回され、前記第2の導線の両端部が、前記第1の導線に短絡されてなることを特徴とするノーマルモードヘリカルアンテナに関する。
このように、アンテナのヘリカル構造の周囲に沿ってタップを設けるようにすることにより、タップ部の長さを必要に応じて大きく取ることができるようになるため、ノーマルモードヘリカルアンテナのサイズに制約されることなく、タップ部の長さを決めることが可能となる。そして、タップ部の長さを調節することにより、アンテナのサイズの制約を受けずに、アンテナの入力インピーダンスを様々に設定することが可能となる。これにより、アンテナのサイズの大小を問わず、ノーマルモードヘリカルアンテナの入力インピーダンスを給電線のインピーダンスに整合させることも可能となるため、高いアンテナ効率を実現できる。またこれにより、アンテナの通信距離の拡大を達成することもできる。
【0017】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のノーマルモードヘリカルアンテナであって、前記コイルの長さをLとし、当該アンテナでの動作波長をλとした場合に、L/λの値が0.05以下であることを特徴とするノーマルモードヘリカルアンテナに関する。
このような態様によって、特にL/λが0.05以下という超小形のノーマルモードヘリカルアンテナにおいて、入力インピーダンスを給電線のインピーダンスに整合させることが可能となる。これにより、超小形のノーマルモードヘリカルアンテナにおいても、高いアンテナ効率を実現でき、アンテナの通信距離の拡大を達成できるという利点がある。
【0018】
また請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のノーマルモードヘリカルアンテナであって、前記コイルである第1のコイル、及び第3の導線を螺旋状に巻回することにより形成される第2のコイルが、前記第1のコイル及び前記第2のコイルの各巻回軸が平行になるように互いに面対称となる位置に配置され、前記第1のコイルの各端部が、前記各端部と面対称な位置にある前記第2のコイルの各端部とそれぞれ短絡されてなることを特徴とするノーマルモードヘリカルアンテナに関する。
このような態様によって、アンテナ効率をより向上させることが可能となる。
【0019】
また請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のノーマルモードヘリカルアンテナであって、前記第1のコイル及び前記第2のコイルの各コイル長が略等しく、前記第1のコイル及び前記第2のコイルの各コイル長をLとし、当該アンテナでの動作波長をλとした場合に、L/λの値が0.05以下であることを特徴とするノーマルモードヘリカルアンテナに関する。
このような態様によって、特にL/λが0.05以下という超小形のノーマルモードヘリカルアンテナにおいても、入力インピーダンスを給電線のインピーダンスに整合させることが可能となると共に、アンテナ効率をより向上させることが可能となる。
【0020】
また請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のノーマルモードヘリカルアンテナであって、前記第2の導線は、前記第1の導線に沿って、前記第1の導線と一定の間隔を保つように巻回されてなることを特徴とするノーマルモードヘリカルアンテナに関する。
このような態様によって、タップが螺旋状に巻回されるため、タップ給電に伴うアンテナのサイズの増大を最小限に抑えることが可能となる。
【0021】
また請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のノーマルモードヘリカルアンテナであって、前記第2の導線は、前記第1の導線に沿って、直線部分を有するように巻回される
ことを特徴とするノーマルモードヘリカルアンテナに関する。
このような態様によって、アンテナの製造容易化を図ることが可能となる。
【0022】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための最良の形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0023】
アンテナのサイズの制約を受けることなく、要求される入力インピーダンスを実現可能なノーマルモードヘリカルアンテナを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態につき図面とともに説明する。
【0025】
本実施の形態に係るノーマルモードヘリカルアンテナ250を図8に示す。
図8に示すように、本実施の形態に係るノーマルモードヘリカルアンテナ250は、第1の導線100を螺旋状に巻回することにより形成されるコイルと、給電点110が中央部に設けられ、第1の導線100よりも長さが短い第2の導線140と、を備え、コイルの中央部の外周側に、第1の導線100と離間して、第2の導線140が、第1の導線100に沿って巻回され、第2の導線140の両端部が、第1の導線100に短絡されて構成される。ノーマルモードヘリカルアンテナ250を構成する導線100に沿ってタップ線140が配置されている。
【0026】
なお図8において、アンテナ250への給電点をA及びA’で示しており、給電点間の幅をl1で示す。タップ給電の基本構造は図8に示すように、第2の導線140が、第1の導線100に沿って、第1の導線100と一定の間隔を保つように巻回されてなるものであるが、図9の構造260を用いることもできる。
【0027】
図9の構造260は、第2の導線140が、第1の導線100に沿って、直線部分を含むように巻回されるものである。このような構造にすることにより、アンテナの製作を簡便化することが可能となる。
【0028】
図9の構造260における電気特性の解析を、モーメント法による電磁界シミュレータ(FEKO)により行った。検討の周波数は300MHzであり、H=54mm、2a=19mm、N=10、導線直径2dは1 mmにした。
【0029】
図9の構造260において、給電点の幅(l1)の変化による入力インピーダンス変化を図10に示す。図10中のCはコイルの1巻き分の長さであり、l1をC/4から1.5Cまで変化させた。各インピーダンス軌跡において周波数は298MHz〜302MHzにとっており、黒丸印は300MHzの点を示している。l1=Cとなる様にタップを構成すると、入力インピーダンスが2.38Ωであったものを42.14Ωに増大させることができた。このとき、L1=L2=30mmである。
【0030】
次に、図11に示す折り返し構造270について、タップ給電の効果を計算した。図11に示す折り返し構造270は、第1の導線100を螺旋状に巻回することにより形成される第1のコイル、及び第3の導線100を螺旋状に巻回することにより形成される第2のコイルが、第1のコイル及び第2のコイルの各巻回軸が平行になるように互いに面対称となる位置に配置され、第1のコイルの各端部が、各端部と面対称な位置にある第2のコイルの各端部とそれぞれ短絡されて構成される。
【0031】
折り返し構造270におけるタップ給電の結果を図12に示す。なお、折り返し構造270で自己共振となる様にコイルの間隔(P)を適宜設定して20mmとした。またタップの構造を図9のものと同一の寸法とした。折り返し構造270では、タップ給電なしの場合に入力インピーダンスが8.42Ωであったものが、タップ給電により57.26Ωの値に増大させることができる。
【0032】
また、図15に示すように、第2のコイルを複数配置することも可能である。このようにすることにより、アンテナの入力インピーダンスがより増大することが期待できる。
【0033】
次に、基本構造260と折り返し構造270について、タップ給電の有無による入力インピーダンス(Rin)とアンテナ効率(η)およびアンテナ利得(Gr)の変化を表1に示す。ここで、入力インピーダンス(Rin)は放射抵抗(Rr)と導体抵抗(Rl)の和の値である。
【0034】
[表1]

【0035】
基本構造260では、タップ給電によりRrの増大がRlの増大より大きくなっており、アンテナ効率(η)が1dB増大した。一方折り返し構造270では、RrとRlの増大量がほぼ等しくなっている。両構造ともに50Ωの給電線との整合が取られるようになり、アンテナ利得(Gr)はアンテナ効率(η)と等しい値が得られるようになった。
【0036】
次に、基本構造260及び折り返し構造270のそれぞれについて、アンテナを作成して性能を測定した結果を図13及び図14に示す。作成したアンテナの性能と比較することにより、シミュレーションによる計算結果の実現性を確認することができる。
【0037】
試作したアンテナの構造諸元は、図9に示したアンテナ及び図11に示したアンテナと同一とした。折り返し構造270において、並列に配置した各コイルの巻き方向は逆になっている。給電の同軸ケーブルには、平衡不平衡変換のためにシュペルトップ形バランを装着している。
【0038】
まず、試作したアンテナの入力インピーダンスの測定結果を図13に示す。図13(A)は基本構造260、図13(B)は折り返し構造270についてのものである。実測時の自己共振周波数は300MHzより若干ずれているが、入力インピーダンスの軌跡は計算値と測定値でほとんど一致している。
【0039】
次に、試作したアンテナの放射特性の測定結果を図14に示す。図14(A)は基本構造260、図14(B)は折り返し構造270についてのものである。ここで、実測値は、半波長ダイポールアンテナと比較したdBdで示している。基本構造260の指向性ではEθEφ共に計算値と実測結果は良く一致している。一方、折り返し構造270では、Eθについては計算値と測定値とは良く合うものの、Eφについては、計算値よりも測定値の方が高くなっている。この理由は、折り返し構造270では並列に配置された各コイルは逆巻きのため、計算ではEφが非常に小さくなっており、実測では交さ偏波測定の充分な設定精度が得られなかったためと考えられる。
【0040】
次に、基本構造260及び折り返し構造270の各導体抵抗(Rl)の値を評価するため、液体窒素による冷却時の入力インピーダンスを測定した。室温時の入力インピーダンス(Rin(h))は、基本構造260と折り返し構造270でそれぞれ42.95Ωと55.75Ωの値であった。冷却時の温度は-145℃で、入力インピーダンス(Rin(l))は基本構造260と折り返し構造270でそれぞれ37.3Ωと47.5Ωの値が得られた。室温時と冷却時の入力インピーダンスをRin(h)とRin(l)とすると、次式(5)の関係が成り立つ。

式(5)において、0.54は、温度が-145℃の場合の銅線の電気抵抗率である。Rin(h)とRin(l)とが実測値であるため、式(5)よりRr(h)とRl(h)を求めることができる。実験により求まるRrとRlの値を表2に示す。
【0041】
[表2]

【0042】
表2には基本構造260及び折り返し構造270の各電気特性の計算値と実験結果の対応をまとめて示す。RrとRlについては、基本構造260と折り返し構造270ともに、計算値と実験値は良く一致している。またアンテナ利得Grについては、実験値がやや低くなっているが、ほぼ良い対応を示している。この結果より、タップ給電により、期待した効果の得られることが確認できた。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態に係るノーマルモードヘリカルアンテナにおいては、ヘリカル構造の周囲に沿ってタップを設けることにより、タップ部の長さを自由に大きく取ることができる。そしてこれにより、アンテナのサイズの制約を受けることなく、要求される入力インピーダンスを実現することが可能となる。
【0044】
なお、本実施の形態に係るノーマルモードヘリカルアンテナは、タップ給電の伝送線路的動作機構が従来のアンテナと異なるが、アンテナとして機能することを、電磁界シミュレーションによる電気特性の検証及び試作により確認した。
【0045】
本実施の形態に係るノーマルモードヘリカルアンテナによれば、超小形ノーマルモードヘリカルアンテナにおいて、入力インピーダンスを給電線の50Ωに整合させることができ、高いアンテナ効率を実現でき、アンテナの通信距離の拡大を達成することも可能となる。
【0046】
以上発明を実施するための最良の形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、導線にはエナメル線のような一般的な線材の他、プリント基板上にエッチング技術により形成された配線パターン、蒸着技術や薄膜形成技術、半導体プロセス技術により形成された配線パターン等、導体を線状又はパターン状に形成したもの一般が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】基本構造のノーマルモードヘリカルアンテナを示す図である。
【図2】折り返し構造のノーマルモードヘリカルアンテナを示す図である。
【図3】ノーマルモードヘリカルアンテナの入力インピーダンス特性を示す図である。
【図4】タップ給電構造のノーマルモードヘリカルアンテナを示す図である。
【図5】タップ給電による入力インピーダンス特性の効果を示す図である。
【図6】タップ給電による伝送線路モデルを示す図である。
【図7】タップ給電された超小形ノーマルモードヘリカルアンテナ及びその入力インピーダンスを示す図である。
【図8】本実施の形態に係る基本構造のノーマルモードヘリカルアンテナを示す図である。
【図9】本実施の形態に係る基本構造のノーマルモードヘリカルアンテナを示す図である。
【図10】本実施の形態に係る基本構造のノーマルモードヘリカルアンテナの入力インピーダンスを示す図である。
【図11】本実施の形態に係る折り返し構造のノーマルモードヘリカルアンテナを示す図である。
【図12】本実施の形態に係る折り返し構造のノーマルモードヘリカルアンテナの入力インピーダンスを示す図である。
【図13】本実施の形態に係る基本構造及び折り返し構造の各ノーマルモードヘリカルアンテナの入力インピーダンスを示す図である。
【図14】本実施の形態に係る基本構造及び折り返し構造の各ノーマルモードヘリカルアンテナのアンテナ放射特性を示す図である。
【図15】本実施の形態に係る折り返し構造のノーマルモードヘリカルアンテナを示す図である。
【符号の説明】
【0048】
100 導線
110 給電点
120 導体板
140 導線
200 基本構造のノーマルモードヘリカルアンテナ
210 折り返し構造のノーマルモードヘリカルアンテナ
220 タップ給電構造のノーマルモードヘリカルアンテナ
230 タップ給電構造のノーマルモードヘリカルアンテナ
240 タップ給電構造のノーマルモードヘリカルアンテナ
250 タップ給電構造のノーマルモードヘリカルアンテナ
260 タップ給電構造のノーマルモードヘリカルアンテナ
270 折り返し構造のタップ給電構造ノーマルモードヘリカルアンテナ
280 折り返し構造のタップ給電構造ノーマルモードヘリカルアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導線を螺旋状に巻回することにより形成されるコイルと、
給電点が中央部に設けられ、前記第1の導線よりも長さが短い第2の導線と、
を備え、
前記コイルの中央部の外周側に、前記第1の導線と離間して、前記第2の導線が、前記第1の導線に沿って巻回され、
前記第2の導線の両端部が、前記第1の導線に短絡されてなる
ことを特徴とするノーマルモードヘリカルアンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載のノーマルモードヘリカルアンテナであって、
前記コイルの長さをLとし、当該アンテナでの動作波長をλとした場合に、L/λの値が0.05以下であることを特徴とするノーマルモードヘリカルアンテナ。
【請求項3】
請求項1に記載のノーマルモードヘリカルアンテナであって、
前記コイルである第1のコイル、及び第3の導線を螺旋状に巻回することにより形成される第2のコイルが、前記第1のコイル及び前記第2のコイルの各巻回軸が平行になるように互いに面対称となる位置に配置され、
前記第1のコイルの各端部が、前記各端部と面対称な位置にある前記第2のコイルの各端部とそれぞれ短絡されてなる
ことを特徴とするノーマルモードヘリカルアンテナ。
【請求項4】
請求項3に記載のノーマルモードヘリカルアンテナであって、
前記第1のコイル及び前記第2のコイルの各コイル長が略等しく、
前記第1のコイル及び前記第2のコイルの各コイル長をLとし、当該アンテナでの動作波長をλとした場合に、L/λの値が0.05以下であることを特徴とするノーマルモードヘリカルアンテナ。
【請求項5】
請求項1に記載のノーマルモードヘリカルアンテナであって、
前記第2の導線は、前記第1の導線に沿って、前記第1の導線と一定の間隔を保つように巻回されてなる
ことを特徴とするノーマルモードヘリカルアンテナ。
【請求項6】
請求項1に記載のノーマルモードヘリカルアンテナであって、
前記第2の導線は、前記第1の導線に沿って、直線部分を有するように巻回される
ことを特徴とするノーマルモードヘリカルアンテナ。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−195069(P2007−195069A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13150(P2006−13150)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(505054531)
【出願人】(505053970)
【出願人】(504385708)マイティカード株式会社 (11)