説明

ハイドロタルサイト化合物を有するフルオロエラストマー層を含む燃料管理システム

【課題】ハイドロタルサイト化合物を有するフルオロエラストマー層を含む燃料管理システムを提供すること。
【解決手段】使用中に燃料と接触するであろう表面を有する燃料管理システムの構成要素。該表面はフルオロエラストマー層を含む。該フルオロエラストマー層はその中に分散されたハイドロタルサイト化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロエラストマー層、すなわち、フッ素化主鎖を有する硬化したフルオロポリマーとその中に分散されたハイドロタルサイト化合物とを含む層を含む燃料管理システムの構成要素(部材)(component)に関する。具体的には、本発明は、ディーゼル燃料、より具体的には生物起源のディーゼル燃料と接触した時のフルオロエラストマー層の耐性を改善するためのハイドロタルサイト化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロエラストマーの有益な特性は、当該技術ではよく知られており、例えば、高温
耐性、例えば溶剤、燃料および腐食性化学品に対する高い耐性をはじめとする高い耐化学
品性ならびに不燃性を含む。これらの有益な特性のために、フルオロエラストマーは、材
料が高温および/または化学品に暴露される場合に特に幅広い用途を見いだす。
【0003】
例えば、フルオロエラストマーは、それらの燃料に対する優れた耐性のために、および
フルオロエラストマーで達成できる良好なバリア性のために、例えば、燃料タンク、燃料
ポンプ・カプラー、給油口ホース、燃料タンク・キャップシールなどのような燃料貯蔵構
成要素;乗用車または他の自動車における燃料ラインホースおよびチューブ、燃料給油ラ
イン、燃料供給ラインおよび特に高温燃料ラインのような燃料配送構成要素を含む燃料管
理システムで使用されている。
【0004】
硬化するとフルオロエラストマーをもたらすフルオロポリマーは、非フッ素ポリマーよ
り一般に高価であり、従って、総コストを低減するためにフルオロポリマーが他の材料と
組み合わせて使用される材料が開発されてきた。例えば、ホースの外層はその結果非フッ
素エラストマーである多層ホースの内層としてフルオロエラストマーの比較的薄い層を使
用することが提案されてきた。例えば、(特許文献1)は、フルオロゴムまたはフルオロ
樹脂から形成された第1層とエピクロロヒドリンから形成された第2層とよりなる、ラミ
ネート構造を有するホースに関する。(特許文献2)は、フルオロエラストマーの内層と
加硫により十分に接着されているポリ塩化ビニル(PVC)およびアクリロニトリル・ブ
タジエンゴム(NBR)のブレンドから形成された外層とを含む燃料ホースに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,106,914号明細書
【特許文献2】米国特許第6,340,511号明細書
【特許文献3】米国特許第4,745,165号明細書
【特許文献4】米国特許第4,831,085号明細書
【特許文献5】米国特許第4,214,060号明細書
【特許文献6】米国特許第4,501,869号明細書
【特許文献7】米国特許第4,000,356号明細書
【特許文献8】欧州特許第407,937号明細書
【特許文献9】欧州特許第101,930号明細書
【特許文献10】米国特許第4,243,770号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第A0,661,304A1号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開第A0,784,064A1号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第A0,769,521A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、増加した環境上の懸念は、低排出ディーゼル燃料、すなわち、植物油メチルエス
テルを含む生物起源のディーゼル燃料の開発につながった。厳しい条件、すなわち、高温
および高湿度では、現在使用されている燃料管理システムの膨潤および劣化を促進するで
あろう加水分解生成物が形成され得る。改善されたバリア性を有する燃料管理システムを
求める要求が存在する。従って、ディーゼル燃料と、より具体的には生物起源のディーゼ
ル燃料と接触した時に、燃料管理システムで使用されるフルオロエラストマー層の耐性を
改善する方法を見いだすことは望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、本発明は、使用中に燃料と接触する表面であって、フルオロエラスト
マー層を含む表面を有する燃料管理システムの構成要素を提供する。フルオロエラストマ
ー層はその中に分散されたハイドロタルサイト化合物を含む。
【0008】
さらなる態様では、本発明は、フルオロエラストマー層が燃料と、より具体的には生物
起源のディーゼル燃料と接触する時に前記フルオロエラストマー層の膨潤を防止または低
減するための燃料管理構成要素のフルオロエラストマー層でのハイドロタルサイト化合物
の使用に関する。
【0009】
さらにさらなる態様では、本発明は燃料管理システムの構成要素の製造方法であって、
硬化反応に関与することができる1つまたは複数のハロゲンを有するフルオロポリマー
、有機過酸化物およびハイドロタルサイト化合物を含む硬化性フルオロエラストマー組成
物を提供する工程と、
前記硬化性フルオロエラストマー組成物を硬化させ、かつ、成形して使用中に燃料と接
触するであろうフルオロエラストマー層を形成する工程と
を含む方法を提供する。
【0010】
本発明に関連した用語「燃料」とは、燃焼エンジン、具体的にはディーゼルエンジンを
駆動させるために使用される燃料を意味する。本発明に関連した用語燃料は、具体的には
生物起源のディーゼルを含む燃料または燃料混合物を含む。
【0011】
用語「燃料管理システム」とは、貯蔵、供給、計量供給および燃料排ガスの制御に使用
されるような、かつ、燃料に暴露されるまたはそれと接触する構成要素の全体を意味する
。燃料管理システムは、自動車外側システムの構成要素だけでなく自動車中に含まれる構
成要素も含む。限定なしに、燃料管理システムの構成要素には、燃料タンク、給油口ホー
スおよび燃料タンク・キャップシールのような燃料貯蔵構成要素、自動車で使用される燃
料ラインホースまたはチューブ、燃料を自動車の燃料タンクに給油するための燃料給油ホ
ース、バルブ、ダイヤフラムおよび燃料噴射器構成要素のような燃料供給構成要素、迅速
連結O−リングのような燃料連結器構成要素、排ガス制御シール、吸気マニホールド・ガ
スケットおよびソレノイド・アーマチャのような排ガス制御構成要素が含まれる。
【0012】
次の図は、本発明のある実施形態のさらなる例示のために含まれる。これらの図面は本
発明を決してそれらに限定することなく本発明を例示するのに単に役立つに過ぎないこと
が理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で使用されるハイドロタルサイト化合物は、天然または合成ハイドロタルサイト
化合物またはそれらの混合物を含んでもよい。特に好適なハイドロタルサイト化合物は、
合成または天然起源のMgおよび/またはAlハイドロカーボネート鉱物である。天然化
合物の例には、ハイドロタルサイトMgAl(OH)16CO・4HOおよびス
チチタイト(Stichtite)MgCr(OH)16CO・4HO、ピロオ
ーライト(Pyroaurite)MgFe(III)(OH)16CO・4H
O、デサウテルサイト(Desautelsite)MgMn(III)(OH)
CO・4HOなどのようなハイドロタルサイト群のメンバーが挙げられる。
【0014】
ハイドロタルサイト化合物はまた、合成ハイドロタルサイト化合物のものであってもよ
い。合成ハイドロタルサイト化合物の例には、MgAl(OH)16CO・4H
O、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.5Al(OH)
CO、MgAl(OH)12CO・3.5HO、MgAl(OH)14
CO・4HO、MgAl(OH)10CO・1.7HO、MgZnAl
(OH)12CO・wHOおよびMgZnAl(OH)12COが挙げられる
。商業的に入手可能である合成ハイドロタルサイトには、例えば、名称DHT−4ATM
およびDHT−4VTMおよびZHT−4ATMでキスマ・ケミカルズ(Kisuma
Chemicals)BVから入手可能なもの、ならびにチバ・スペシャルティーズ・ケ
ミカルズ(Ciba Specialties Chemicals)から入手可能であ
るハイサイト(Hycite)TM713が含まれる。
【0015】
本発明に関連して使用することができるハイドロタルサイト化合物には、式
[(M2+(M2+](M3+(OH)2x+3y−2(An−
/nwH
(式中、M2+はMg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+よりなる群から選択さ
れた少なくとも1つの2価金属を表し、M2+はZn2+、Cd2+、Pb2+および
Sn2+よりなる群から選択された少なくとも1つの2価金属を表し、M3+は3価金属
イオンを表し、An−は、F、Cl、Br、NO、CO2−、SO2−
Fe(CN)4−、CHCOO、シュウ酸イオンまたはサリチル酸イオンのような
n価アニオンを表し、aおよびbはそれぞれ0〜10の値を表し、xはa+bを表し、そ
して1〜10の値を有し、yは1〜5の整数を表し、かつ、wは実数を表す)
で表すことができるものが特に含まれる。
【0016】
ハイドロタルサイト化合物は、フルオロエラストマーの量に対して0.3〜20重量%
、好ましくは0.5〜10重量%の量でフルオロエラストマー層中に典型的には使用され
る。
【0017】
フルオロエラストマー層は、部分または完全フッ素化された主鎖を有するフルオロポリ
マーを含む。特に好ましいフルオロポリマーは、少なくとも30重量%フッ素化され、好
ましくは少なくとも50重量%フッ素化され、より好ましくは少なくとも65重量%フッ
素化されている主鎖を有するものである。本発明での使用のためのフルオロポリマーの例
には、1つまたは複数の非フッ素化モノマーと場合により組み合わせた1つまたは複数の
フッ素化モノマーのポリマーが挙げられる。フッ素化モノマーの例には、テトラフルオロ
エチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、2−クロロペンタフル
オロプロペン、ジクロロジフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(VDF
)および例えばヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのフッ素化アルキルビニルモノ
マーのような水素および/または塩素原子を有してもよいフッ素化C〜Cオレフィン
;パーフッ素化ビニルエーテル(PVE)をはじめとするフッ素化ビニルエーテルおよび
パーフッ素化アリルエーテルをはじめとするフッ素化アリルエーテルが挙げられる。好適
な非フッ素化コモノマーには、塩化ビニル、塩化ビニリデンならびにエチレン(E)およ
びプロピレン(P)のようなC〜Cオレフィンが含まれる。
【0018】
本発明で使用することができるパーフルオロビニルエーテルの例には、式
CF=CF−O−R
(式中、Rは1つまたは複数の酸素原子を含有してもよいパーフッ素化脂肪族基を表す

に相当するものが挙げられる。
【0019】
特に好ましいパーフッ素化ビニルエーテルは、式
CF=CFO(RO)(RO)
(式中、RおよびRは、1〜6個の炭素原子、特に2〜6個の炭素原子の異なる
線状または分岐パーフルオロアルキレン基であり、mおよびnは独立して0〜10であり
、かつ、Rは1〜6個の炭素原子のパーフルオロアルキルである)に相当する。パー
フッ素化ビニルエーテルの具体例には、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMV
E)、パーフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)、パーフルオロ(n−プロピ
ルビニル)エーテル(PPVE−1)、パーフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエ
ーテル(PPVE−2)、パーフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルビニルエーテル、
パーフルオロ−2−メトキシ−エチルビニルエーテルおよび
CF−(CF−O−CF(CF)−CF−O−CF(CF)−CF
O−CF=CF
が挙げられる。
【0020】
好適なパーフルオロアルキルビニルモノマーは一般式
CF=CF−R または CH=CH−R
(式中、Rは1〜10個、好ましくは1〜5個の炭素原子のパーフルオロアルキル基
を表す)
に相当する。パーフルオロアルキルビニルモノマーの典型的な例はヘキサフルオロプロピ
レンである。
【0021】
本発明に関連した使用のためのフルオロポリマーは、フルオロポリマーを製造するため
の公知重合法のいずれかに従って製造することができる。かかる方法には、水性乳化重合
、懸濁重合および有機溶媒中での重合が限定なしに含まれる。
【0022】
本発明に関連した使用のためのフルオロポリマーは、ほとんどいかなる融点も示さない
実質的に非晶質のポリマーである。かかるフルオロポリマーは、非晶質フルオロポリマー
を硬化すると典型的に得られるフルオロエラストマーを提供するのに特に好適である。非
晶質フルオロポリマーには、例えば、フッ化ビニリデンと各二重結合炭素原子上の少なく
とも1つのフッ素原子置換基を含有する少なくとも1つの末端エチレン系不飽和フルオロ
モノマーであって、前記フルオロモノマーのそれぞれの炭素原子がフッ素でのみで、場合
により塩素、水素、低級フルオロアルキル基または低級フルオロアルコキシ基で置換され
ているフルオロモノマーとの共重合体が含まれる。共重合体の具体例には、例えば、次(
VDF−HFP、TFE−P、VDF−TFE−HFP、VDF−TFE−PVE、TF
E−PVE、E−TFE−PVEおよびCTFEのような塩素含有モノマーに由来する単
位をさらに含む前述の共重合体のいずれか)のようなモノマーの組合せを有する共重合体
が挙げられる。好適な非晶質共重合体のさらなる例には、CTFE−Pにおけるようなモ
ノマーの組合せを有する共重合体が挙げられる。
【0023】
好ましい非晶質フルオロポリマーは、一般に、1つまたは複数の他のフッ素化エチレン
系不飽和モノマーおよび/またはエチレンおよびプロピレンのような1つまたは複数の非
フッ素化C〜Cオレフィンと共重合されたVDF、TFEおよび/またはCTFEに
由来する20〜85モル%、好ましくは50〜80モル%の繰り返し単位を含む。フッ素
化エチレン系不飽和コモノマーに由来する単位は、存在する場合一般に、5〜45モル%
、好ましくは10〜35モル%である。非フッ素化コモノマーの量は、存在する場合一般
に、0〜50モル%、好ましくは1〜30モル%である。
【0024】
フルオロポリマーは典型的には硬化されるであろう。フルオロポリマー層は、当業者に
公知の方法のいずれかによって硬化されてもよく、フルオロポリマー層を硬化させること
ができるように硬化組成物を典型的には含むであろう。硬化組成物は、フルオロポリマー
鎖を互いに連結させ、それによって3次元ネットワークを形成する1つまたは複数の成分
を典型的には含む。かかる成分は触媒、硬化剤および/または硬化助剤を含んでもよい。
【0025】
フルオロポリマー層を硬化させる好ましい実施形態では、いわゆる過酸化物硬化システ
ムが用いられてもよい。典型的な過酸化物硬化システムでは、フルオロポリマーは、過酸
化物硬化反応に関与することができるハロゲンを含む1つまたは複数の硬化部位を備えて
おり、フルオロポリマーを提供するための組成物は有機過酸化物を含有する。過酸化物硬
化反応に関与することができるハロゲンは、典型的には臭素または沃素であり、ポリマー
鎖に沿って分布していてもよく、および/またはフルオロポリマーの末端基に含有されて
いてもよい。典型的には、フルオロポリマー中に含有される臭素または沃素の量は、フル
オロポリマーの総重量に関して0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜2.5重量
%である。MがSi、Ge、SnまたはPbから選択される水素化物機能MHを含む有機
化合物が存在する場合には塩素もまたフルオロポリマーの過酸化物硬化反応に関与できる
ことがさらに見いだされた。従って、塩素原子および/または臭素または沃素を含有する
フルオロポリマーもまた、過酸化物硬化反応での硬化のために使用することができる。フ
ルオロポリマー中の塩素の量は、フルオロポリマーの重量を基準にして0.001重量%
〜10重量%で変わってもよいが、典型的には0.01重量%〜5重量%である。過酸化
物硬化反応での使用のためのフルオロポリマーは、典型的には10〜5×10g/モ
ルの分子量を有し、分子量分布は、2モードまたは多モードだけでなく単一モードでもあ
ることができる。
【0026】
鎖に沿って、過酸化物硬化反応に関与することができるハロゲンを導入するために、フ
ルオロポリマーの基本モノマーの共重合を好適なフッ素化硬化部位モノマーで実施するこ
とができる(例えば、(特許文献3)、(特許文献4)、および(特許文献5)を参照さ
れたい)。かかるコモノマーは、例えば
(a)式
Z−R−O−CX=CX
(式中、各Xは同じものであっても異なるものであってもよく、HまたはFを表し、Zは
BrまたはIであり、Rは、場合により塩素および/またはエーテル酸素原子を含有す
る(パー)フルオロアルキレンC〜C12である)
を有するブロモ−またはヨード−(パー)フルオロアルキル−(パー)フルオロビニルエ
ーテル、例えば、BrCF−O−CF=CF、BrCFCF−O−CF=CF
、BrCFCFCF−O−CF=CF、CFCFBrCF−O−CF=CF
などと、
(b)式
Z’−(R’−CX=CX
(式中、各Xは独立してHまたはFを表し、Z’はBrまたはIであり、R’は、場合
により塩素原子を含有するパーフルオロアルキレンC〜C12であり、rは0または1
である)
を有するもののようなブロモ−またはヨード−(パーフルオロオレフィン)、例えば、ブ
ロモトリフルオロエチレン、4−ブロモ−パーフルオロブテン−1など、または1−ブロ
モ−2,2−ジフルオロエチレンおよび4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブ
テン−1のようなブロモフルオロオレフィンと、
(c)臭化ビニルおよび4−ブロモ−1−ブテンのような非フッ素化ブロモ−オレフィ
ンと、
(d)CTFEのような、例えば塩素含有フッ素化C〜Cオレフィンのような塩素
含有フッ素化モノマーをはじめとする塩素含有モノマーならびに塩化ビニルおよび塩化ビ
ニリデンのような、塩素化C〜Cオレフィンのような非フッ素化塩素含有モノマーと
から選択することができる。
【0027】
硬化部位コモノマーと引き換えにまたはそれに加えて、フルオロポリマーは、(特許文
献6)に記載されているように、ポリマー製造の間に反応媒体中に導入された好適な連鎖
移動剤に由来する、または好適な開始剤に由来する硬化部位成分を末端位に含有すること
ができる。有用な開始剤の例には、n=1〜10のX(CFSONa(ここで、
XはBrまたはIである)が挙げられる。さらに、開始および/または重合は、フルオロ
ポリマーの末端位にハライドを導入するために、例えば塩化カリウム、塩化ナトリウム、
臭化カリウム、臭化または塩化アンモニウムおよび沃化カリウムまたはナトリウムをはじ
めとする金属ハロゲン化物またはハロゲン化アンモニウムのようなハライド塩の存在下に
行われてもよい。
【0028】
連鎖移動剤の例には、式RBr(式中、Rは、場合により塩素原子を含有する、
x価の(パー)フルオロアルキル基C〜C12であり、xは1または2である)を有す
るものが挙げられる。例には、CFBr、Br(CFBr、Br(CF
Br、CFCIBr、CFCFBrCFBrなどが挙げられる。好適な連鎖移動剤
のさらなる例は、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)および(特許文献1
0)に開示されている。
【0029】
好適な有機過酸化物は硬化温度でフリーラジカルを発生させるものである。50℃より
上の温度で分解する過酸化ジアルキルまたはビス(ジアルキルペルオキシド)が特に好ま
しい。多くの場合、第3炭素原子が過酸化酸素に結合したジ−第3ブチルペルオキシドを
使用することが好ましい。このタイプの最も有用な過酸化物の中には2,5−ジメチル−
2.5−ジ(第3ブチルペルオキシ)ヘキシン−3および2,5−ジメチル−2.5−ジ
(第3ブチルペルオキシ)ヘキサンがある。他の過酸化物は、ジクミルペルオキシド、ジ
ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸第3ブチル、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキ
シ−ジイソプロピルベンゼン)、およびジ[1,3−ジメチル−3−(t−ブチルペルオ
キシ)−ブチル]カーボネートのような化合物から選択することができる。一般に、10
0部のフルオロポリマー当たり約1〜3部の過酸化物が使用される。
【0030】
有機過酸化物をベースとする硬化組成物中に通常含まれる別の成分は、有用な硬化を提
供するために過酸化物に協力することができるポリ不飽和化合物よりなる硬化助剤である
。これらの硬化助剤は、100部フルオロポリマー当たり0.1〜10部、好ましくは1
00部フルオロポリマー当たり2〜5部に等しい量で添加することができる。有効な硬化
助剤の例には、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、トリメリット酸トリ
アリル、イソシアヌル酸トリ(メチルアリル)、トリス(ジアリルアミン)−s−トリア
ジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、ヘキサアリルホスホルア
ミド、N,N,N’,N’−テトラアルキルテレフタルアミド、N,N,N’,N’−テ
トラアリルマロンアミド、イソシアン酸トリビニル、2,4.6−トリビニルメチルトリ
シロキサン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、フタル酸ジアリルおよびトリ(
5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレートが挙げられる。イソシアヌル酸トリアリ
ルが特に有用である。他の有用な硬化助剤には、(特許文献11)、(特許文献12)お
よび(特許文献13)に開示されているビス−オレフィンが含まれる。
【0031】
ハイドロタルサイト化合物に加えて、フルオロエラストマー層は、フルオロエラストマ
ー層に一般に使用されるような酸受容体をさらに含有してもよい。かかる酸受容体は、無
機酸受容体または無機酸受容体と有機酸受容体とのブレンドであることができる。無機受
容体の例には、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸
二塩基鉛、酸化亜鉛、炭酸バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸カルシウムなどが挙げ
られる。有機受容体には、エポキシド、ステアリン酸ナトリウム、およびシュウ酸マグネ
シウムが含まれる。ハイドロタルサイト化合物に加えて酸受容体の量は、使用されるハイ
ドロタルサイト化合物の量と使用される酸受容体の性質とに一般に依存するであろう。典
型的には、使用される酸受容体の量は、組成物のハイドロタルサイト成分によってもたら
される利点および改善を排除しないようなものであるべきである。一般に、酸受容体の量
は、使用されるハイドロタルサイトの量より少なく、典型的には使用されるハイドロタル
サイトの重量に対して20重量%未満であろう。ハイドロタルサイトそれ自体が酸受容体
として機能するので、追加の酸受容体の使用は一般に必要ではなく、従って追加の酸受容
体は組成物中に存在する必要がないかもしれない。
【0032】
フルオロエラストマー層を提供するためのフルオロポリマー組成物は、それらが意図さ
れる運転条件に対して十分な安定性を有するという条件で、カーボンブラック、安定剤、
可塑剤、滑剤、フィラー、およびフルオロポリマー配合で典型的に利用される加工助剤の
ようなさらなる添加剤を含有してもよい。
【0033】
フルオロポリマー組成物は、フルオロポリマー、ハイドロタルサイト、硬化組成物およ
び他の添加剤を通常のゴム加工装置で混ぜ合わせることによって調製されてもよい。かか
る装置には、ゴム用ロール機、バンバリー(Banbury)ミキサーのような密閉式ミ
キサー、および混合押出機が含まれる。
【0034】
フルオロポリマー組成物のプレミックスを調製することはさらに可能であり、それによ
ってプレミックスはフルオロポリマーと全組成物の他の成分の部分だがそれらのすべてで
はない部分とを含む。かかるプレミックスの組成物は、所望期間の貯蔵にわたるプレミッ
クスの所望の安定性に依存するであろう。例えば、プレミックスは、フルオロポリマー、
ハイドロタルサイトおよび硬化組成物の1つまたは複数の成分だが硬化性組成物の得るた
めに必要な成分のすべてではない成分を含んでもよい。例えば、硬化組成物が過酸化物を
含む場合には、プレミックスから過酸化物を排除し、フルオロエラストマー層を製造する
ためのフルオロポリマー組成物を調製する時にようやく過酸化物を添加することが一般に
望ましいであろう。
【0035】
燃料管理システムの構成要素を製造するための本発明の方法に従って、硬化反応に関与
することができる1つまたは複数のハロゲンを好ましくは有するフルオロポリマー、有機
過酸化物およびハイドロタルサイト化合物を含む硬化性フルオロエラストマー組成物は、
硬化され、成形されて使用中に燃料と接触するであろうフルオロエラストマー層を形成す
る。例えば、ハイドロタルサイト化合物を有するフルオロエラストマー層は、燃料ホース
または燃料タンクの最内層であってもよい。典型的には、ハイドロタルサイト化合物はフ
ルオロポリマー組成物中に存在し、フルオロポリマー組成物はまた、上に記載されたよう
な硬化組成物を含んでもよい。
【0036】
燃料管理システムを製造するための本発明の一実施形態では、フルオロエラストマーの
比較的薄い層は、ホースまたはタンクの外層が非フルオロポリマーである多層ホースまた
はタンクの最内層として形成される。非フルオロポリマーの例には、シリコーンゴム、ア
クリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム、塩素化およびクロロスル
ホン化ポリエチレンゴム、クロロプレン、エチレンとプロピレンとの共重合体(EPM)
ゴム、エチレン、プロピレンおよびジエンのターポリマー(EPDM)ゴム、酸化エチレ
ンおよびクロロメチルオキシラン(ECO)ゴム、エピクロロヒドリン−酸化エチレン−
アリルグリシジルエーテル・ターポリマー(GECO)、ポリイソブチレン、ポリイソプ
レン、ポリスルフィド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルとNBRとのブレンド、スチレン
・ブタジエン(SBR)ゴム、エチレン−アクリレート共重合体ゴム(VAMAC)、エ
チレン−酢酸ビニルゴムおよびその加水分解された形(EVOH)、ならびにエチレン−
プロピレン−ジエン・ターポリマー(EPDM)、(EVOH)およびポリプロピレンか
ら誘導された熱可塑性エラストマーのような、非フッ素タイプのエラストマーが挙げられ
る。基材のエラストマー層へのフルオロポリマー層の接合は、硬化させるとエラストマー
層を形成する組成物を含む層上へフルオロポリマー層を提供することを含む。特に好まし
い外層はVAMACまたはECOから形成することができる。
【0037】
さらなる外層は、金属基材または例えば非フッ素化ポリマーをはじめとするプラスチッ
ク基材であることができる。非フッ素化ポリマーの例には、ポリアミド、ポリオレフィン
、ポリウレタン、ポリエステル、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリケ
トン、ポリウレア、ポリアクリレート、およびポリメタクリル酸メチル、またはそれらの
混合物が挙げられる。非フッ素化ポリマー基材として有用なポリアミドは一般に商業的に
入手可能である。例えば、周知のナイロンのいずれかのようなポリアミドは多数の製造業
者から入手可能である。特に好ましいポリアミドは、ナイロン−6、ナイロン−6,6、
ナイロン−11およびナイロン−12である。特定のポリアミド材料の選択は多層物品の
ための特定用途の物理的要件をベースにするべきであることが指摘されるべきである。例
えば、ナイロン−6およびナイロン−6,6はナイロン−11およびナイロン−12より
良好な耐熱性を提供するが、ナイロン−11およびナイロン−12はより良好な耐化学品
性を提供する。加えて、ナイロン−6とポリオレフィンとのポリマーブレンドだけでなく
、ナイロン−6,12、ナイロン−6,9、ナイロン−4、ナイロン−4,2、ナイロン
−4,6、ナイロン−7およびナイロン−8のような他のナイロン材料も使用することが
できる。
【0038】
有用なポリオレフィンポリマーには、エチレン、プロピレンなどと、例えば、アクリル
モノマーならびに酢酸ビニルおよび高級アルファ−オレフィンのような他のエチレン系不
飽和モノマーとの共重合体だけでなく、これらのモノマーのホモポリマーも含まれる。か
かるポリマーおよび共重合体は、かかるエチレン系不飽和モノマーの通常のフリーラジカ
ル重合または触媒反応によって製造することができる。ポリマーの結晶化度は変わり得る
。ポリマーは、例えば、半結晶性高密度ポリエチレンであってもよいし、またはエチレン
とプロピレンとのゴム弾性共重合体であることができる。カルボキシル、酸無水物、また
はイミド官能性は、アクリル酸または無水マレイン酸のような機能性モノマーを重合もし
くは共重合させることによって、または重合後にポリマーを変性することによって、例え
ば、グラフトによって、酸化によって、もしくはアイオノマーを形成することによってポ
リマー中へ組み込むことができる。例には、酸変性エチレン・アクリレート共重合体、酸
無水物変性エチレン・酢酸ビニル共重合体、酸無水物変性ポリエチレンポリマー、および
酸無水物変性ポリプロピレンポリマーが挙げられる。
【0039】
燃料管理システムを製造するための本発明の別の実施形態では、ハイドロタルサイトを
含むフルオロエラストマーの比較的薄い層を多層ホースまたはタンクの最内層として使用
することができ、第2層は、熱可塑性フルオロポリマー、特に溶融加工可能な熱可塑性フ
ルオロポリマーを使用することによって形成され、外層は、上に記載されたような非フル
オロケミカル層から形成することができる。用語「熱可塑性フルオロポリマー」とは、明
確な融点、典型的には100℃またはそれ以上が例えばポリマーのDSC走査によって特
定され得るように少なくとも部分的に結晶性であるフルオロポリマーを意味する。用語「
溶融加工可能な」とは、入手可能である典型的な溶融押出装置によってそれが溶融物から
加工できるような溶融粘度をフルオロポリマーが有することが意味する。好ましくは、熱
可塑性フルオロポリマーは、塩素、臭素および沃素から選択された1つまたは複数のハロ
ゲンでハロゲン化されているフルオロポリマーである。かかるハロゲン原子は、例えば、
上にリストされたような臭素または沃素含有コモノマーの共重合によって、またはBrも
しくはI原子を導入する連鎖移動剤および/または開始剤システムの使用によってフルオ
ロポリマーに導入されてもよい。本発明で使用されてもよい熱可塑性フルオロポリマーの
具体例は、次の組合せのモノマー(CTFE−VDF、CTFE−TFE、CTFE−T
FE−HFP、CTFE−TFE−HFP−VDF、CTFE−TFE−HFP−VDF
−PPVE、CTFE−TFE−E)を有する共重合体、臭素または塩素含有E−TFE
共重合体、および臭素または塩素含有TFE−HFP−VDF共重合体である。
【0040】
フルオロエラストマー層を熱可塑性フルオロケミカルおよび/または非フルオロポリマ
ーに接合された多層ホースのような多層をベースとする燃料管理システムは、多層物品の
公知の製造方法のいずれかによって製造することができる。例えば、層のそれぞれは、多
層ホースを形成するために共押出することができる。熱可塑性フルオロケミカル中間層お
よび/または非フルオロケミカル外層へのフルオロエラストマー内層の接合は、120℃
〜200℃の温度に1〜120分間(好ましくは140℃〜180℃に3〜60分間)加
熱することによって達成されてもよい。加熱は、同時に圧力を加えながら、さらに実施さ
れてもよい。しかしながら、生じた物品、例えばホースを、層間の接合強度を高めるため
に、例えば、追加の加熱、圧力、または両方でさらに処理することが望ましいかもしれな
い。多層物品が押出によって製造される場合、追加の熱を供給する一方法は、押出工程の
終わりに多層物品の冷却を遅らせることによる。あるいはまた、追加の熱エネルギーは、
構成要素を単に加工するために必要なものより高い温度で層を積層するまたは押し出すこ
とによって多層ホースに加えることができる。例えば、完成物品を、オーブンまたはオー
トクレーブのような物品の温度を高めるための別個の装置中に入れることができる。これ
らの方法の組合せもまた用いることができる。用いられる特定の方法は、一般に、製造中
である燃料管理システムの構成要素に依存するであろう。
【0041】
別個の層間の接合を改善するために、エチレン系不飽和基のような、フリーラジカル反
応に関与することができる1つまたは複数の基を有する化合物が使用されてもよい。かか
る基を有する化合物は、非フルオロケミカル層および/またはフルオロポリマー層中に存
在してもよい。例えば、不飽和基を有する化合物は、上に記載された過酸化物硬化組成物
の硬化助剤であってもよい。一般に、フルオロポリマー層と非フルオロケミカル層との反
応はまた、例えばフリーラジカル重合開始剤のようなフリーラジカル発生化合物の使用も
含む。フルオロポリマー層が硬化組成物として過酸化物硬化システムを含む場合には特に
、好ましくは、有機過酸化物がフリーラジカル発生化合物として使用される。しかしなが
ら、例えばアゾ化合物のような他のフリーラジカル発生化合物もまた使用することができ
る。
【0042】
燃料管理システムの幾つかの層配置を考慮し、用いることができる。例えば、ハイドロ
タルサイトを含むフルオロケミカルエラストマー層は、最外層として非フルオロケミカル
ポリマーを持った二層構築物中の最内層として提供されてもよい。あるいはまた、熱可塑
性フルオロポリマーが2層の間に提供される多層配置を用いることができる。例えば、ハ
イドロタルサイトを含むフルオロエラストマー層を最内層として用いることができ、最外
層は非フッ素タイプのエラストマーを含む非フッ素化ポリマー層であることができる。
【0043】
一実施形態によれば、最内層としてのハイドロタルサイトを含むフルオロエラストマー
の層が非フッ素ポリマー、特にエチレン−アクリレート共重合体ゴムに接合されている、
燃料管理システムでの使用のためのホースを製造することができる。
【0044】
さらなる実施形態によれば、最内層としてのハイドロタルサイトを含むフルオロエラス
トマーの層が、非フッ素ポリマー、特にエチレン−アクリレート共重合体またはシリコー
ン共重合体に接合されている中間層としての熱可塑性フルオロケミカルに接合されている
、燃料管理システムでの使用のためのホースを製造することができる。
【0045】
さらなる実施形態によれば、最内層としてのハイドロタルサイトを含むフルオロエラス
トマーの層が、非フッ素ポリマー、特にエチレン−アクリレート共重合体またはシリコー
ン共重合体に接合されている中間層としてのエチレン・酢酸ビニルおよびその加水分解さ
れた形(EVOH)のような非フッ素ポリマーに接合されている、燃料管理システムでの
使用のためのホースを製造することができる。
【0046】
図1および図2は、チューブまたはホース、例えば、自動車システムでの燃料ラインと
しての使用に好適なホースの形での本発明による燃料管理システムの構成要素をさらに例
示する。図1について言及すると、内層14に接合された比較的厚い外層18を含む2層
物品10が示されている。外層16は、上に記載されたような非フッ素化ポリマー層であ
り、物品10に構造的完全性を提供するようにデザインされている。外層16はホースの
外面18を形成する。非フッ素化ポリマーはエラストマー(例えば、シリコーンゴム、エ
チレン−アクリルゴムなど)とプラスチック(例えば、ポリアミド)とを含むことができ
る。内層14はハイドロタルサイトを含むフルオロエラストマーである。内層14はホー
スの内面12を形成する。内層14は化学的および熱的安定性をホースに与える。内層1
4はまた、それを燃料から保護する、外層16のためのバリアまたは保護層としての機能
も果たす。層の幾らかまたはすべてが、それらを導電性にするための添加剤を含むことが
できる。構造的完全性をさらに高めるために、繊維、メッシュ、ひも、および/またはワ
イヤースクリーンのような強化材を、別個の層として、または既存層の部分として物品1
0に組み込むことができる。
【0047】
図2について言及すると、より薄い内層24に接合されている中間層26に接合された
比較的厚い外層28を含む3層物品20が示されている。外層28は、上に記載されたよ
うな非フッ素化ポリマー層であることができ、物品20に構造的完全性を提供するように
デザインされている。外層28はホースの外面30を形成する。非フッ素化ポリマーは、
ホースまたはチューブが堅い連結器に取り付けられた時に物品のシーリング性を改善する
ことができるエラストマー(例えば、エチレン−アクリレート共重合体、シリコーン共重
合体、ニトリルゴム、エピクロロヒドリンゴムなど)を含むことができる。内層24はハ
イドロタルサイトを含むフルオロエラストマーである。内層24はホースの内面22を形
成する。内層24は化学的および熱的安定性をホースに与える。ハイドロタルサイトを含
むフルオロエラストマーの耐溶剤性および耐浸透性のために、内層24は、末端での漏洩
を防止するシーリング性を改善する。中間層26は、内層のバリア性を追加することがで
きる熱可塑性フルオロポリマー層であることができる。内層24と中間層26との組合せ
は、ホースおよびシステム内連結からの浸透の総量を最小限にする。層の幾らかまたはす
べてが、それらを導電性にするための添加剤を含むことができる。構造的完全性をさらに
高めるために、繊維、メッシュ、ひも、および/またはワイヤースクリーンのような強化
材を、別個の層として、または既存層の部分として物品20に組み込むことができる。例
えば、図面には示されていないが、強化層は、構成物中の外層28と中間層26との間に
含むことができる。
【0048】
本発明は、次の実施例に関連してしかし本発明をそれらに限定する意図なしに今記載さ
れるであろう。すべての部は特に明記しない限り重量による。
【実施例】
【0049】
すべての部および百分率は特に明記しない限り重量による。
【0050】
省略形
Ca(OH):水酸化カルシウム、レノフィット(Rhenofit)CF、ライン
・ケミー(Rhein Chemie)
トリゴノックス(Trigonox)TM101 45B:有機過酸化物、アクゾ(A
KZO)
パーカリンク(Perkalink)TM301−50D:イソシアヌル酸トリアリル
、シリケート・キャリア上50%、アクゾ
ディアク(DIAK)TM8番:デュポン・ダウ・エラストマーズ(DuPont D
ow Elastomers)から入手可能なイソシアヌル酸トリメタリル
FE−1:テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレ
ン、および硬化部位モノマーとしてブロモトリフルオロエチレンをさらに含むフルオロポ
リマー
FE−2:デュポン・ドゥ・ヌムール(DuPont de Nemours)から入
手可能な、硬化部位を有するフルオロポリマー、GF300TM
MT N−990:カンカーブ(Cancarb)から入手可能なカーボンブラック
バイオディーゼル:ドイツ国グローブス(Globus,Germany)から入手可
能な、RME(菜種油メチルエステル)を含むディーゼル
DHT−4VTM:キスマ・ケミカルズBVから入手可能な、式Mg4.5Al(O
H)13CO・3.5HOに相当するハイドロタルサイト
【0051】
試験方法
フルオロエラストマー組成物の硬化およびレオロジー特性は次の試験方法を用いて評価
した。
物理的性質試験は、150×150×2mmシートをプレスし、180℃金型温度で1
5分間硬化させ、引き続いて約180℃に維持された循環空気オーブン中でシートを2時
間加熱することによって後硬化処理した後に行った。
破断引張強度、破断伸びおよび100%伸びでの応力は、DIN(ドイツ工業標準規格
)53504(S2ダイ)に従って1kNロードセルでインストロン(Instron)
TM機械試験機を用いて測定した。試験検体ストリップ(ダンベル)を後硬化シートから
カットした。すべての試験を、200mm/分の一定のクロスヘッド変位速度で5回実施
した。報告する値は5試験の平均値であった。硬度ショアA(2インチ)、100%伸び
での応力、破断伸び、および破断引張強度は、それぞれ、メガパスカル(MPa)、%、
およびMPaの単位で報告した。
【0052】
実施例
実施例1〜3および比較例C−1〜C−3
実施例1〜3および比較例C−1〜C−3で、硬化性組成物は、2−ロール・ミルで表
1に示すような配合物を混ぜ合わせることに製造した。配合物は、ゴム工業界での習慣で
あるように100重量部のフルオロポリマー当たりの重量部(phr)で提示する。実施
例1〜3は表1に示すようなレベルでハイドロタルサイトを含有し、比較例C−1〜C−
3はハイドロタルサイトの添加なしで製造した。酸受容体として、比較例C−1およびC
−3は3phrCa(OH)を含有し、比較例C−2は3phrMgOを含有した。硬
化したサンプルを、表2に示す温度および時間で水の添加ありまたは添加なしのバイオデ
ィーゼルに曝した。体積膨潤度を表2に記録する。硬化したサンプルの物理的性質は、そ
れらを開放系中150℃で、504時間の還流で、バイオディーゼルまたは実施例2につ
いてはバイオディーゼル+5%HOに浸漬し、引き続き150℃で22時間乾燥する前
および乾燥した後に測定した。結果を表3に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
表2の結果は、フルオロポリマーへのハイドロタルサイトの添加がバイオディーゼルと
接触したフルオロエラストマーの膨潤挙動を著しく改善することを示す。高温でのバイオ
ディーゼルへの延長された暴露でさえも厳しい膨潤を引き起こさなかった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明で得ることができる多層ホースまたはチューブの断面略図である。
【図2】本発明で得ることができる多層ホースまたはチューブの断面略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用中に燃料と接触する表面であって、ハイドロタルサイト化合物が層中に分散された
フルオロエラストマー層を含む表面を有する燃料管理システムの構成要素。
【請求項2】
前記構成要素が燃料ホースを含み、かつ、前記フルオロエラストマー層が前記燃料ホー
スの最内層を構成する請求項1に記載の構成要素。
【請求項3】
前記構成要素が燃料タンクを含み、かつ、前記フルオロエラストマー層が前記燃料タン
クの最内層を構成する請求項1に記載の構成要素。
【請求項4】
前記ハイドロタルサイト化合物がフルオロエラストマーを基準にして0.3〜20重量
%の量で存在する請求項1に記載の構成要素。
【請求項5】
前記ハイドロタルサイト化合物が合成ハイドロタルサイト化合物を含む請求項1に記載
の構成要素。
【請求項6】
前記ハイドロタルサイト化合物が式
[(M2+(M2+](M3+(OH)2x+3y−2(An−
/nwH
(式中、M2+はMg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+よりなる群から選択さ
れる少なくとも1つの2価金属を表し、M2+はZn2+、Cd2+、Pb2+および
Sn2+よりなる群から選択される少なくとも1つの2価金属を表し、M3+は3価金属
イオンを表し、An−はn価アニオンを表し、aおよびbはそれぞれ独立して0〜10の
値を表し、xはa+bを表し、そして1〜10の値を有し、yは1〜5の整数を表し、か
つ、wは実数を表す)
に相当する請求項1に記載の構成要素。
【請求項7】
非フッ素化エラストマーの層を含む多層物品である請求項1に記載の構成要素。
【請求項8】
前記フルオロエラストマー層が(i)部分または完全フッ素化された主鎖を有し、かつ
、過酸化物硬化反応に関与することができるハロゲンを有するフルオロポリマーと(ii
)有機過酸化物とを含む硬化性組成物の硬化した生成物を含む請求項1に記載の構成要素

【請求項9】
前記フルオロポリマーがテトラフルオロエチレンおよび/またはクロロトリフルオロエ
チレンとフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフッ素化ビニルエーテ
ルよりなる群から選択される1種または複数のフッ素化モノマーとから誘導される単位を
含むポリマーである請求項8に記載の構成要素。
【請求項10】
前記フルオロエラストマーが生物起源のディーゼル燃料と接触した時に前記フルオロエ
ラストマー層の膨潤を防止または低減するための燃料管理構成要素のフルオロエラストマ
ー層でのハイドロタルサイト化合物の使用。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に定義されたような燃料管理システムの構成要素の製造方
法であって、
硬化反応に関与することができる1つまたは複数のハロゲンを有するフルオロポリマー
、有機過酸化物およびハイドロタルサイト化合物を含む硬化性フルオロエラストマー組成
物を提供する工程と、
前記硬化性フルオロエラストマー組成物を硬化させ、かつ、成形して使用中に燃料と接
触するであろうフルオロエラストマー層を形成する工程と
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−179003(P2011−179003A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79741(P2011−79741)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【分割の表示】特願2004−567436(P2004−567436)の分割
【原出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】