説明

ハイドロフルオロエーテルを用いた放射性物質の除染用溶剤組成物及び除染材、並びに放射性物質の除染方法

【課題】 本発明は、簡易に低濃度の放射性物質を除染する方法およびその方法に適した除染材、並びに除染用溶剤組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】 COCH、およびCOCからなる群から選択される少なくとも一つを、放射性物質を運搬する媒体として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易に低濃度の放射性物質を除染する方法およびその方法に適した除染材、並びに除染用溶剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、原子力発電所等において放射線に被曝した低濃度の放射性物質は、残存汚染がほとんど認められない状態(クリアランスレベル)まで除去された廃棄物の場合、スクラップ処理が可能になると考えられている。しかしながら、機器、器具類等の再使用を前提としているため、材料を損傷しないおだやかな除染法、水または化学作用が少ない除染法(アルコール、アセトン、合成洗剤など)をひたした布切れで、汚染部分をふく方法(非特許文献1参照)が従来から採用されており、現在でもその除染作業は、主として、例えば、キムタオル((株)クレシア製)のような使い捨てタオルに、50体積%エタノール水溶液を染み込ませたもので、ふき取りにより行なっている。しかしながら、現行の除染材(50体積%エタノール水溶液を染み込ませたキムタオル)では、除染性能が充分ではなく、何回もふき取り操作を行い、その上拭き取り後の清浄度も作業員の感覚に負う所が大きい。さらに、除染材は乾燥した後でなければ廃棄できないため、乾燥性が悪い50体積%エタノール水溶液を染み込ませた使い捨てタオルを使用した場合には、拭き取り後に、ふき取られた表面および、廃棄前の使い捨てタオルの乾燥処理が必要である。また、この50体積%エタノール水溶液は引火性があるという問題点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5−508418号公報
【特許文献2】特許第3482488号公報明細書
【特許文献3】米国特許第5,466,877号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「RADIOISOTOPES」誌、57〜62頁、23巻、12号、(1974年)、社団法人日本アイソトープ協会発行
【発明の概要】
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、低濃度の放射性物質を簡易に除染する方法およびその除染に適した除染材、並びに除染用溶剤組成物を提供することを目的とする。本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意研究を進めた結果、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、及びパーフルオロケトンから選ばれる少なくとも一つを、放射性物質の運搬媒体として含有する除染用溶剤組成物を染み込ませて含有させた除染材が放射性物質の除染に有効であることを見出した。本発明の除染用溶剤組成物をワイプ基材に染み込ませて含有させた除染材(以下、「除染用ワイパー」という)は、特にその除染性能(除染効果)が優れており、現在数回は繰り返して行なっている拭き取り作業を大幅に減らすことが可能である。また、本発明の除染用溶剤組成物は乾燥性が優れているため、現在拭き取り作業後に行なわれている乾燥に要する時間を大幅に短縮すること又は省略することが可能である。さらに、本発明の除染用溶剤組成物は不燃性であるため、引火の危険性も解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の一の態様は、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、およびパーフルオロケトンから選ばれる少なくとも一つを、放射性物質の運搬媒体として含有することを特徴とする放射性物質の除染用溶剤組成物である。ハイドロフルオロエーテル、またはパーフルオロケトンの炭素数は4〜8であることが好ましい。具体的には、ハイドロフルオロカーボンとしては、C10、C、c−C、またはCHF15であることが好ましい。また、ハイドロフルオロエーテルとしては、COCH、COC、CHFOC、またはF(CF(CF)CFO)CHFCFであることが好ましい。さらに、パーフルオロケトンとしては、CFCFC(O)CF(CF、(CFCFC(O)CF(CF、または(CFCFCFC(O)CF(CFであることが好ましい。
【0007】
本発明の除染用溶剤組成物においては、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、グリコールエーテル、またはシリコーン系有機溶剤から選ばれる少なくとも一つの有機溶剤を、さらに本発明の除染用溶剤組成物に含有させることができる。これらの中ではアルコールを含有させることが好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t-ブタノール、またはこれらの混合物を使用することが好ましい。前記有機溶剤は、除染用溶剤組成物の重量全体に対して1〜50重量%含有させることができる。
【0008】
また、本発明の別の態様は、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、およびパーフルオロケトンから選ばれる少なくとも一つを放射性物質の運搬媒体として含有する除染用溶剤組成物を染み込ませて含有させることを特徴とする放射性物質の除染材である。本発明の除染材は、ワイプ基材に本発明の除染用溶剤組成物を染み込ませて含有させることで調製することができる。ワイプ基材としては不織布を用いることが好ましい。また、ワイプ基材は、パルプ、合成繊維、セルロース、再生セルロースから選ばれる少なくとも1種から構成されたものを使用することが好ましい。
【0009】
さらに、本発明の別の態様は、放射性物質を除染する方法であって、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテルおよびパーフルオロケトンから選ばれる少なくとも一つを、放射性物質の運搬媒体として用いることを特徴とする放射性物質の除染方法である。また、本発明は、放射性物質が付着した物品の表面に、本発明の除染用溶剤組成物を染み込ませて含有させた除染材を接触させる工程と、前記除染材中に放射性物質を吸着させることにより回収する工程、とを含むことを特徴とする放射性物質の除染方法である。除染材としては、本発明の除染用ワイパーを使用することができる。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
(1)本発明の除染用溶剤組成物
本発明の放射性物質の除染用溶剤組成物は、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、およびパーフルオロケトンから選ばれる少なくとも一つを、放射性物質の運搬媒体として含有する。本発明において、放射性物質の運搬媒体は、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、およびパーフルオロケトンから選ばれる少なくとも1つから、汚染の種類、被汚染物の種類等により最適なものを選択する。これら除染用溶剤組成物は、常温において液体のもの(沸点が室温以上であるもの)、好ましくは、沸点が30℃〜100℃であることが好ましく、また、炭素数が4〜8であることが好ましい。安全性の観点からは、毒性が低いもの、好ましくは、許容濃度(ppm (Vol))が100ppm以上のものを使用する。また、同様に、引火性が低いもの、好ましくは(JIS K2265による)引火点がないものを使用する。さらに、環境上の観点からは、地球温暖化係数(GWP)が低いものを使用することが好ましい。化合物中のフッ素原子の数が増加すれば不燃性が増し、また、分子量が増加すれば沸点は上昇する傾向があるので、目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、乾燥性を向上させるためには、分子量の小さい化合物を使用するか、揮発性の高い有機溶媒等と混合して使用すればよい。
【0012】
(a)ハイドロフルオロカーボン(HFC)
本発明において使用されるハイドロフルオロカーボンの具体例としては、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,2,2,3,3,4−へプタフルオロシクロペンタン、1H-パーフルオロヘプタンなどを挙げることができる。これらのハイドロフルオロカーボンの中では、除染効果の点、および沸点が30℃〜100℃であり、引火点がなく、また毒性が低いという点から、C10、C、c−C、またはCHF15等が好ましい。上記のハイドロフルオロカーボンは、単独で使用しても良いし、2種類以上のハイドロフルオロカーボンを組合せて使用しても良い。これらのハイドロフルオロカーボンについては、既知の方法により調製することができるが、通常市販されているものを使用してもよいし、例えば、特許文献1に記載の方法等を使用して製造してもよい。
【0013】
(b)ハイドロフルオロエーテル(HFE)
本発明において使用されるハイドロフルオロエーテルの具体例としては、CFCFCHOCHF、CFCHFCFOCH、CFCHOCFCHF、CFCHFCFOCHCF、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、2H-パーフルオロ(5−メチル−3、6−ジオキサノナン)などを挙げることができる。これらのハイドロフルオロエーテルの中では、除染効果の点、および沸点が30℃〜100℃であり、引火点がなく、また毒性が低いという点から、COCH、COC、CHFOC、F(CF(CF)CFO)CHFCF等が好ましい。これらのハイドロフルオロエーテルは既知の方法により調製することができるが、通常市販されているものを使用してもよいし、例えば、特許文献2に記載の方法等により製造してもよい。上記のハイドロフルオロエーテルは、単独で使用しても良いし、2種類以上のハイドロフルオロエーテルを組合せて使用してもよい。
【0014】
(c)パーフルオロケトン
本発明において使用されるパーフルオロケトンの具体例としては、CF(CFC(O)CF、CFCFCFC(O)CFCFCF、CFCFC(O)CF(CF、(CFCFC(O)CF(CF、(CFCFCFC(O)CF(CF、CF(CFC(O)CF(CF、CF(CFC(O)CF(CF、CFCFC(O)CFCFCF、CFOCFC(O)CF(CFなどを挙げることができる。これらのハイドロフルオロエーテルの中では、除染効果の点、および沸点が30℃〜100℃であり、引火点がなく、また毒性が低いという点から、CFCFC(O)CF(CF等が好ましい。これらのパーフルオロケトンは、既知の方法により調製することができるが、通常市販されているものを使用してもよいし、例えば、特許文献3等に記載の方法等により製造してもよい。上記のパーフルオロケトンは、単独で使用しても良いし、2種類以上のパーフルオロケトンを組合せて使用してもよい。
【0015】
また、本発明において、放射性物質の運搬媒体として使用するハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、およびパーフルオロケトンは、それらを単独で使用しても良いが、2種類以上を組合せて使用してもよい。
【0016】
本発明の除染用溶剤組成物には、除染性能を更に向上させるために、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、グリコールエーテル、シリコーン系有機溶剤等の有機溶剤を添加することができる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t-ブタノール等が例示される。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン等が例示される。エーテルとしては、ジエチルエーテル等が例示される。エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル等が例示される。炭化水素としては、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等が例示される。ハロゲン化炭化水素としては、トランス−1,2−ジクロロエチレン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン等が例示される。シリコーン系有機溶剤としては、ヘキサメチルジシロキサン等が例示される。グリコールエーテルとしては、1,2−ジエトキシエタン等が例示される。これらの有機溶剤は単独で使用しても良いし、2つ以上を組合せて使用しても良い。これらの有機溶剤は、アルコール、エーテル等の引火性があるものは、比較的低い濃度で使用することが好ましい。これら有機溶剤の添加量は、燃焼性や適合性等の観点から適宜設定すれば良いが、除染用溶剤組成物の重量全体に対して1〜50重量%の比率で添加することができ、2〜30重量%の比率で添加することが好ましく、3〜15重量%の比率で添加することが更に好ましい。
【0017】
有機溶剤としてアルコールを使用する場合は、アルコールの添加量が上昇すると除染効果は向上するが、使用した除染用溶剤組成物が乾燥するまでの時間は長くなる傾向があるため、除染用溶剤組成物の重量全体に対して、アルコールを2〜30重量%の比率で添加することが好ましく、3〜15重量%の比率で添加することが更に好ましい。
【0018】
次に、本発明の放射性物質の除染材について説明する。
【0019】
(2)本発明の放射性物質の除染材
本発明の放射性物質の除染材は、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、およびパーフルオロケトンから選ばれる少なくとも一つを含むことを特徴とする。本発明の除染材としては、ワイプ基材に上記本発明の除染用溶剤組成物を染み込ませて含有させた除染用ワイパーが好ましい。なお、本発明において「ワイパー」とは、物品の表面をふく際に使用するものの総称を意味する。
【0020】
ワイプ基材としては、液体である本発明の除染用溶剤組成物を保持して、物品の表面をふくのに用いることができる材料から構成されたものであれば特に限定されるものではないが、入手のし易さ、費用の点からは、パルプ、合成繊維、セルロース、再生セルロースから選ばれる少なくとも1種から構成されたものを使用することが好ましい。ワイプ基材の形態としては、上記の材料等を成形加工したものであれば特に限定されないが、ふいて使用する際にある程度の強度を維持できる形態のものを使用することが好ましい。ふき取り効果が高く、繊維が残りづらいという点からは、不織布を使用することが好ましい。
【0021】
使用する不織布としては特に限定されるものではないが、汚染の種類、被汚染物の種類等によって最適なものを選ぶことができる。例えば、パルプ、パルプ/合成繊維、パルプ/レーヨン、パルプ/合成繊維/レーヨン、レーヨン、レーヨン/合成繊維、パルプ/リヨセル、パルプ/合成繊維/リヨセル、リヨセル、リヨセル/合成繊維、合成繊維、綿糸等が挙げられる。合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン及び/或いは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン等のポリオレフィンが挙げられる。
【0022】
また、不織布の厚さは、本発明の除染用ワイパーの用途に応じて適宜選択することができ、通常10μm−3mm程度であることが好ましい。また、不織布の目付け量も、その用途に応じて適宜選択することができ、通常10−500g/mであることが好ましい。
【0023】
本発明の除染用ワイパーに用いる不織布の製法は、特に限定されるものではなく、通常使用されている方法、例えば、ウォータージェット法、ニードルパンチ法、スティッチボンド法、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、スパンボンド法、メルトブローン法、湿式法等によって製造することができる。
【0024】
また、本発明の除染用ワイパーに用いるワイプ基材として、上記の布状の形態に限定されるものではなく、例えば、スポンジ等の多孔質の構造を有するものを使用してもよい。
【0025】
なお、本発明において、ワイプ基材に、除染用溶剤組成物を染み込ませて含有させる方法は、特に限定されるものではなく、通常使用される方法、例えば、ワイプ基材を除染用溶剤組成物に含浸させることや、ワイプ基材に除染用溶剤組成物を噴霧させること等により行うことができる。
【0026】
(3)本発明の放射性物質を除去する方法
本発明の放射性物質を除去する方法は、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、およびパーフルオロケトンから選ばれる少なくとも一つを、放射性物質の運搬媒体として用いることを特徴とするものである。放射性物質の運搬媒体としては、上記本発明の除染用溶剤組成物に関する説明にしたがって、好適な組成物を適宜選択して使用することができる。
【0027】
また、本発明は、放射性物質が付着した物品の表面に、本発明の除染用溶剤組成物を染み込ませて含有させた除染材を接触させる工程と、前記除染材中に放射性物質を吸着させることにより回収する工程、とを含むことを特徴とする放射性物質を除染する方法である。除染材としては、本発明の除染用ワイパーを使用することができる。除染用溶剤組成物本発明の除染材を放射性物質が付着した物品の表面に接触させる工程において、接触させる方法は特に限定されることはないが、放射性物質が付着した物品の表面との接触面積が大きくなる程、除染材中に多くの放射性物質を吸着させることができる。
【0028】
次に、本発明の除染用溶剤組成物の評価方法について以下に説明する。
(除染用溶剤組成物の評価)
本発明の除染用溶剤組成物の評価は以下の1〜3の点について行った。
1.除染性確認試験:除染用溶剤組成物を染み込ませて含有させたワイプ基材に、放射性汚染物質の模擬物質として認知されているヘマタイト(Fe)が付着される量を測定することにより除染性を評価した。
【0029】
具体的には、まず、面積70cmのワイプ基材(ソンタラ(登録商標)、レーヨン/ポリエステル混合製品:デュポン社製)または、キムタオル(パルプ100%:クレシア製)の重量(A)を測定した。その後、表2に示す除染用溶剤組成物を染み込ませて含有させたワイプ基材を、固定治具に取り付け、その固定治具の上におもり(500g)を乗せ、汚染物として放射性汚染物質の模擬物質として認知されているヘマタイト(Fe)(酸化鉄(III)関東化学社製を600 ℃で加熱処理したもの)を付着させた被除染面(ステンレス鋼SUS304-No.1仕上げ面;模擬物質付着量 0.3 mg/cm)を500mm移動させた。その後、固定治具からワイプ基材を取り外し、室温にて2日間ワイプ基材を乾燥し、乾燥後のワイプ基材の重量(B)を測定した。このように測定した重量の差(B−A)からワイプ基材への汚染物付着率[(B−A)/ワイプ基材の面積(70cm)]を求めた。
2.乾燥性試験:除染用溶剤組成物をワイプ基材に染み込ませて含有させた後、室温で天秤に載せ乾燥するまでの時間を測定し乾燥性を評価した。
3.不燃性試験:除染用溶剤組成物を入れたガラスシャーレ中にライターの炎を近づけて引火するか否かにより不燃性を評価した。
【0030】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は実施例に開示されている発明に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
本実施例では、以下の表1に示された除染用溶剤組成物について評価を行った。
【0032】
【表1】

【0033】
(実施例1)除染性試験
除染用溶剤組成物として、バートレル(登録商標)XF、バートレル(登録商標)XE、バートレル(登録商標)X-E10、ノベック7100(登録商標)(3M製)、ノベック7200(登録商標)(3M製)を用い、ワイプ基材として不織布(ソンタラ(登録商標)、レーヨン/ポリエステル混合製品、デュポン社製)を用いて除染性確認試験を行った。結果を表2に示す。
【0034】
(比較例1)
除染用溶剤組成物として50体積%エタノール水溶液、ワイプ基材としてキムタオルを用いた以外は、実施例1と同様の操作により除染性確認試験を行った。結果を表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
(実施例2)乾燥性試験
除染用溶剤組成物としてバートレル(登録商標)XF、バートレル(登録商標)XE,及びバートレル(登録商標)X−E10、ワイプ基材としてキムタオル((株)クレシア製)を用いて、乾燥試験を行った。
【0037】
キムタオルを50mm角に切断したもの(0.05g)を、バートレル(登録商標)XF、バートレル(登録商標)XEおよびバートレル(登録商標)X−E10にそれぞれに1分間浸漬した後、天秤に移してワイプ基材の初期重量になるまでの時間を測定した。表3除染用溶剤組成物の乾燥時間を示す。
【0038】
(比較例2)
除染用溶剤組成物の代わりに50体積%エタノール水溶液を用い、実施例2と同様の操作を行い比較例とした。表3に乾燥時間を示す。
【0039】
【表3】

【0040】
(実施例3)不燃性試験
室温にてバートレル(登録商標)X−E10を、内径85mmのガラスシャーレ中に20ml入れ、ライターの炎をシャーレ上面に近づけたところライターの火が消えた。
【0041】
(比較例3)
室温にてエタノール50%水溶液を、上記実施例3と同様に、内径85mmのガラスシャーレ中に20ml入れ、ライターの炎をシャーレ上面に近づけたところ、ライターの炎を離しても液面上にて青い炎を出しながら燃えつづけた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、原子力発電所や、病院、航空機等において放射性物質が付着した機器等から、該放射性物質を除染する作業において、優れた除染効果を発揮すると共に、除染作業後該機器等からの乾燥性が優れているため、除染後の処理が容易にすることが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OCH、およびCOCからなる群から選択される少なくとも一つを、放射性物質を運搬する媒体として含有することを特徴とする放射性物質の除染用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の除染用組成物を、ワイプ基材に含ませることを特徴とする放射性物質の除染用ワイパー。
【請求項3】
放射性物質を除去する方法であって、請求項1に記載の除染用組成物を、放射性物質の運搬媒体として用いることを特徴とする放射性物質を除去する方法。

【公開番号】特開2010−122230(P2010−122230A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174(P2010−174)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【分割の表示】特願2007−526790(P2007−526790)の分割
【原出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000174851)三井・デュポンフロロケミカル株式会社 (59)
【Fターム(参考)】