説明

ハイブリッド超音波スピーカ及び放送システム

【課題】 被聴者の可聴音帯域全域に渡って満遍なく、大きな音圧減衰を生じにくくし、且つ、指向性を有するハイブリッド超音波スピーカ100及び放送システムを提供する。
【解決手段】 回転双曲面又は円錐内面形状の音響反射器たる音響リフレクター3aと、該音響リフレクター3aの回転双曲面の焦点又は円錐中心軸上の任意の点に配置され、前記音響リフレクター3aに向けて音声波を発生させ、前記音響リフレクター3aにより反射された前記音声波を前記回転双曲面の回転軸又は前記円錐中心軸方向のサウンドビームとして伝搬させる音声発生器たる高性能超小型スピーカ2と、前記回転軸又は前記中心軸方向に超音波を発生させる超音波発生器たる超音波振動発生素子1とを有することを特徴とするハイブリッド超音波スピーカ100及び放送システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声周波数帯域の劣化を克服するために、音声発生器に指向性を持たすべく、超音波発生器を組み合わせたものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、超音波発生器としての超音波振動発生素子の発する超音波を振幅変調(AM:Amplitude Modulation)して、伝搬したい音声の音像を空中に定位させる超音波ビームのサウンドスピーカシステムは開発されており、特許文献に記載のあるものとしては次の(1)の1件を掲げる。
(1)特許文献1
【0003】
これは、音声生成器及び高周波生成器と、これらの出力信号を入力して振幅変調波信号に変換する振幅変調器と、この振幅変調器からの振幅変調波信号を増幅する増幅器と、この増幅器で増幅された信号を音響信号として放射する電気音響変換器とを備えた超指向性スピーカーにおいて、前記電気音響変換器は個々に独立して同心状に配列された複数の基板と、これらの基板のそれぞれに実装した発音素子とを備える構成としたものである。
【特許文献1】特開2004−112211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、超音波ビームのサウンドスピーカシステムの低音域の劣化特性(音圧減衰)を考慮していないために、被聴者にとって低音が聴き取りにくいと言うような短所があった。
【0005】
そこで、本発明は、被聴者の可聴音帯域全域に渡って満遍なく、大きな音圧減衰を生じにくくし、且つ、指向性を有するハイブリッド超音波スピーカ及び放送システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
係る課題を達成するために、本発明は提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、回転双曲面又は円錐側面形状の音響反射器と、該音響反射器の回転双曲面の焦点又は円錐中心軸上の任意の点に配置され、前記音響反射器に向けて音声波を発生させ、前記音響反射器により反射された前記音声波を前記回転双曲面の回転軸又は前記円錐中心軸方向のサウンドビームとして伝搬させる音声発生器と、前記回転軸又は前記中心軸方向に超音波を発生させる超音波発生器とを有することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記超音波発生器を、前記音声発生器の周囲で、前記回転軸又は前記中心軸に垂直な平面上に並設したことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、振動板を備えた音声発生器と、該音声発生器の周囲に配設されて超音波を発生する超音波スピーカとを有することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記音声発生器は、前記振動板が前記超音波発生器の発生する前記超音波の伝播方向に向けて配設されたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の構成に加えて、前記超音波発生器は、超音波をパルス振幅変調して、可聴音を差音として伝搬する変調器を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の構成を備えた、ハイブリッド超音波スピーカが複数、制御器にバス接続され、該制御器は、所望の音声情報を電気音響変換して、パケット情報として前記各ハイブリッド超音波スピーカに伝送させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記、請求項1に記載の発明によれば、回転双曲面又は円錐側面形状の音響反射器と、該音響反射器の回転双曲面の焦点又は円錐中心軸上の任意の点に配置され、前記音響反射器に向けて音声波を発生させ、前記音響反射器により反射された前記音声波を前記回転双曲面の回転軸又は前記円錐中心軸方向のサウンドビームとして伝搬させる音声発生器と、前記回転軸又は前記中心軸方向に超音波を発生させる超音波発生器とを有することを特徴とするので、指向性のある音声を、狙った遠方に向けて発することができる。しかも、複数の異なる振幅等を有する超音波に変調し、伝搬後、鼓膜で差音(difference tone)に復調しているので、振幅等の制御により、様々な音階を有する差音を音声として聴き取れば、被聴者にとっては、可聴音帯域は勿論のこと、可聴音帯域に限らず、全周波数帯域をカバーした音を聴けるため、奥行きのある自然な臨場感を持った音響環境を居乍らにして体験できる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加えて、前記超音波発生器を、前記音声発生器の周囲で、前記回転軸又は前記中心軸に垂直な平面上に並設したことを特徴とするので、複数の前記超音波発生器間の被聴者までの行路長に差が出にくくなり、その結果、位相のズレが生じにくくなるため、音声波の干渉現象が起こりにくく、音濁り等の不自然な音響環境から救済され、極めて指向性の強い良質な音質を得ることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、音声発生器の周囲に超音波スピーカを備えることにより、超音波スピーカと音声発生器とから音声を同時に発生させたとき、音声発生器から発生される可聴音の音声波と超音波スピーカから発生される直進性の高い超音波とが相互に作用しあうことにより、指向性のある音声を、狙った遠方に向けて発し、超音波スピーカが向いた方向において、超音波スピーカの形成する音場と音声発生器の発生する音場とが融合した奥行きのある自然な臨場感を持った音響環境を形成できる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の構成に加え、音声発生器は、振動板が超音波発生器の発生する超音波の伝播方向に向けて配設されていることにより、超音波の進行方向と音声発生器から発生する音声の伝播方向とが一致する。これにより、音声発生器から発生する音声波の伝播方向を超音波の伝播方向と一致させるための構成を必要としないため、ハイブリッド超音波スピーカを簡単な構成により形成することができる。また、音声発生器が発生する音声波は超音波スピーカの他の構成による反射や回析を経ることなく媒質中を伝播させることができる。これにより、音声発生器が発生する音声の損失を少なくし、媒質中を効率よく伝播させることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の何れか1項に記載の効果に加えて、前記超音波発生器は、超音波をパルス振幅変調して、可聴音を差音として伝搬する変調器を備えたことを特徴とするので、側帯波変調(Side Band Modulation)、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)、周波数変調(FM:Frequency Modulation)、パルス周波数変調(PFM:Pulse Frequency Modulation)に比べて、超音波の変換効率が最適である。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5の何れか1項に記載の効果を有する、ハイブリッド超音波スピーカが複数、制御器にバス接続され、該制御器は、所望の音声情報を電気音響変換して、パケット情報として前記各ハイブリッド超音波スピーカに伝送させることを特徴とするので、音声情報の蓄積とデータ処理が簡便にでき、前記制御器から種々の情報機器にインターフェースできる。また、音声発生器の発する音声波にサイドローブが発生することを位相制御回路により抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
〔発明の実施の形態1〕
【0019】
図1乃至図3は、本発明の実施の形態1に示されている。本発明の実施の形態1では、圧電型の超音波発生器としての圧電バイモルフタイプの超音波振動発生素子1に音声発生器としての高性能超小型スピーカ2を組み合わせたハイブリッド超音波スピーカ100の実装構造体(エンクロージャー)の構成を、音響反射器としての音響リフレクター3aの反射面形状を回転双曲面形状とすることで、高性能超小型スピーカ2が発した音声波を略平行サウンドビームに形成して被聴者に伝搬させて、音声周波数広帯域性に優れたハイブリッド超音波スピーカ100の実装構造体(エンクロージャー)を達成している。
【0020】
これは、超音波振動発生素子1の発する超音波をパルス振幅変調(PAM:Pulse Amplitude Modulation)して、伝搬したい音声の音像を空中に定位させる超音波ビームのサウンドスピーカシステムのみによると、2種類以上の振幅を有する超音波をパルス振幅変調して、前記差音として伝搬する変調器を使用しても、前記差音の周波数が可聴音帯域全域に渡って満遍なく、大きな音圧減衰を生じにくい訳ではなく、低音域の劣化特性(音圧減衰)を考慮していないために、被聴者にとって低音が聴き取りにくいと言うような短所があった。
【0021】
そこで、本発明は、高性能超小型スピーカ2の発する音声波を、音響リフレクター3aの反射面形状を回転双曲面形状とすることで、略平行サウンドビームに形成して指向性を持たせ、被聴者に伝搬させて、周波数特性を補正して、特に、低音域の音圧減衰分を補って、音声周波数広帯域性に優れたハイブリッド超音波スピーカ100を実現している。尚、超音波振動発生素子1の発する超音波の共振周波数は40kHz中心である。
【0022】
次に、指向性機能について、詳細に説明する。
【0023】
本来、回転双曲面の一種である回転放物面の焦点から放射された音声波は、その回転放物面で反射され、その回転軸の方向に平行サウンドビームとして直進することが数学的に証明されている。
【0024】
然るに、指向性の優れたスピーカを構成する実装構造体において、音響リフレクター3aとして回転放物面を利用することは、理に適ったことである。
【0025】
しかし、実際には音源を回転放物面の焦点に集約させることは不可能であり、どうしても音源に大きさがある分、謂わば、多焦点とも言えるパラボラアンテナに利用される回転双曲面で、音源の大きさや幅をカバーし、略平行サウンドビームを形成するように工夫したのである。
【0026】
一方、回転双曲面の回転軸又は円錐側面の中心軸を法線とし、その回転双曲面の焦点を通る平面上に圧電バイモルフタイプの超音波振動発生素子1を複数その焦点周辺に並べることで、複数の前記超音波振動発生素子1同士の被聴者までの行路長に差が出にくくなり、その結果、位相のズレが生じにくくなるため、個々の超音波振動発生素子1が発する2種類以上の振幅を有する超音波をパルス振幅変調して、前記差音として伝搬する変調器10を使用して、伝搬したい音声波同士の干渉現象が起こりにくく、音濁り等の不自然な音響環境から救済され、極めて指向性の強い良質な音質を得ることができる。
【0027】
図1及び図2は、これら超音波振動発生素子1、高性能超小型スピーカ2及び音響リフレクター3aの位置関係を模式的に示している。
【0028】
図1に示すように、超音波振動発生素子1を同一面上に密着させて中心部に並べてあるので、それら超音波振動発生素子1を透過する高性能超小型スピーカ2の発する音声波にサイドローブを生じせしめたりすることなく、また、無用な回折等を起こさせたりすることなく、超音波振動発生素子1が超音波ビームを放つことができる。
【0029】
図2に示すように、超音波振動発生素子1の裏側から高性能超小型スピーカ2の発する音声波を透過させることで、超音波が音声波に包み込まれるようにしている。見地を変えると、超音波ビームに音声波が吸い込まれるように指向性を持たされている。
【0030】
以上、圧電バイモルフタイプの超音波振動発生素子1に高性能超小型スピーカ2を組み合わせたハイブリッド超音波スピーカ100の実装構造体(エンクロージャー)の構成における指向性機能について述べた。
【0031】
更に、図4に示すように、このハイブリッド超音波スピーカ100が複数、制御器としての音声パケット処理サーバ6にバス接続され、該音声パケット処理サーバ6は、所望の音声情報としての音声データ4をイントラネット・プロトコルにも接続可能なハイブリッド超音波スピーカシステム(以下、IPSSと略す)モジュール7にて電気音響変換して、イントラネット・プロトコル仕様データ・ヘッダー5を附記してパケット情報として前記各ハイブリッド超音波スピーカ100に伝送させるように構成した放送システムについて以下に述べる。
【0032】
図3に示すように、IPSSモジュール7の電気回路構成を機能別にブロック化してみると、先ず、前記音声パケット処理サーバ6にて、所望の音声データ4をイントラネット・プロトコル仕様データ・ヘッダー5により識別し、パケット化処理されたデータをIPSSデモ・モジュレータ8にて、無線LANのIEEE802.11,ブルツースにも対応可能とする。
【0033】
次に、このディジタル・データをD/Aコンバータ・モジュール9でアナログ・データに変換し、このアナログの音声パケット・データを超音波振動発生素子1用アナログ信号と、高性能超小型スピーカ2用アナログ信号とに分離する。
【0034】
更に、超音波振動発生素子1用アナログ信号は超音波PAM(パルス振幅変調)・位相補償回路10にて変調・位相補償され、超音波アンプ11にて増幅され、超音波振動発生素子1を駆動する。
【0035】
一方、高性能超小型スピーカ2用アナログ信号は高性能超小型スピーカ・フィルタ・イコライザー・遅延回路12にてフィルターを掛けられ、イコライジングされ、位相を調整(波面歪の校正)され、高性能超小型スピーカ・アンプ13にて増幅され、高性能超小型スピーカ2を駆動している。
【0036】
従って、超音波振動発生素子1の発した超音波と、高性能超小型スピーカ2の発した音声波とは、音場空間で干渉を起こすことなく、単独の波として伝搬される。被聴者の位置(鼓膜)において、前記超音波は、変調された2種類以上の振幅を内包するので、復調されて、その差音として聴こえる。前記音声波は、可聴音である音声波成分を聞き取れるように、位相の調整(波面歪の校正)を、電気信号処理段階におけるイコライザー12内の位相補償機能のある遅延回路にて済ましておく。尚、超音波は、パルス矩形波になるため、より少ないエネルギーで伝搬することができる。
【0037】
図4に示すように、被聴者に聴かせたい音声データ4をイントラネット・プロトコル仕様データ・ヘッダー5によってパケット化しておき、音声パケット処理サーバ6に送信する。この音声パケット処理サーバ6は、IPSSモジュール7にバス接続されており、各超音波振動発生素子1及び高性能超小型スピーカ2を駆動する。
〔発明の実施の形態2〕
【0038】
図5は、本発明の実施の形態2に示されている。本発明の実施の形態2では、圧電バイモルフタイプの超音波振動発生素子1に高性能超小型スピーカ2を組み合わせ、音声周波数広帯域性に優れたハイブリッド超音波スピーカ100の実装構造体(エンクロージャー)の構成を、音響リフレクター3aの反射面形状を回転双曲面と円錐側面との複合形状とすることで音声波の略平行サウンドビームを形成することまでは、本発明の実施の形態1と同様である。
【0039】
ここでは、圧電バイモルフタイプの超音波振動発生素子1の形状及び振動方向に工夫を施す。すなわち、該超音波振動発生素子1を一つに限定し、円柱形状にして、その半径方向に膨張収縮するようにバイアスを掛け、その円柱の中心軸を前記回転双曲面の回転軸及び前記円錐中心軸に一致させて、前記回転双曲面の焦点近隣に配置し、放射された超音波ビームは、その円錐側面部分で反射した後、前記回転双曲面の回転軸及び前記円錐中心軸の方向に極めて指向性の強い略平行ビームとして直進する。
【0040】
従って、半径方向に振動する円柱形状の超音波振動発生素子1を唯一つ焦点近隣に配置するだけで、回転双曲面の回転軸又は円錐中心軸を法線とし、回転双曲面の焦点を通る平面上に圧電バイモルフタイプの超音波振動発生素子1を複数並べた本発明の実施の形態1に匹敵する程の功を奏している。
【0041】
図5に示すように、超音波振動発生素子1は、焦点に配置した高性能超小型スピーカ2よりも音響リフレクター3aの開口側の近隣に設置され、その振動方向は、その半径方向になるように設定されているため、発せられる超音波は、音響リフレクター3aの軸方向へ略平行ビームとして直進する。超音波振動発生素子1が一つしかない分、高性能超小型スピーカ2の発する音声波が障害物となる超音波振動発生素子1に当る確率が少なくなり、無用な回折等を起こさせたりすることなく、また、高性能超小型スピーカ2の発する音声波にサイドローブを生じせしめたりすることなく、超音波振動発生素子1が超音波ビームを放つことができる。
【0042】
尚、本発明の実施の形態2では、実施の形態1とは異なり、音響リフレクター3aを回転双曲面と円錐側面との複合形状に設定しているが、これは超音波振動発生素子1が円柱状であることに鑑み、その円柱の長さ分から発せられる超音波の反射部分を円錐側面にし、それ以外の開口側と反対側の音声波反射部分を回転放物面にした複合形状に設定しても良い。実施の形態1に比べて、高性能超小型スピーカ2がかなり小さく、点音源と見なし得るため、上記回転放物面の焦点に収まるからである。
【0043】
また、本発明の実施の形態1及び2の双方について、高性能超小型スピーカ2が発する音声波は、音響リフレクター3aの開口側方向へ直接拡散した成分を遮蔽するために、遮音キャップ3cを設け、更に、音響リフレクター3aの開口側の反対方向へ拡散した成分のうち、真向かいから反射した反射波が入射波と干渉して相殺(位相共役)することを避けるために、音響リフレクター3aの中心部分に高性能超小型スピーカ2と同じ大きさの吸音材3bを貼付することが好ましい。
〔発明の実施の形態3〕
【0044】
図6及び図7は、本発明の実施の形態3に示されている。本実施の形態においては、圧電バイモルフタイプの超音波振動発生素子1に高性能超小型スピーカ2を組み合わせた点は実施の形態1及び2と同様であるが、基板3dの表面に超音波振動発生素子1及び高性能超小型スピーカ2を配設した点が実施の形態1及び2と相違する。なお、上記以外の、図3に示すIPSSモジュール7の構成や、図4に示す音声データ4及び情報処理系統の構成は、実施の形態1及び2と同じである。
【0045】
具体的には、図6の、実施の形態3に係るハイブリッド超音波スピーカ100の発振面を正面から見た模式図に示すとおり、ハイブリッド超音波スピーカ100の発振面は、略円板状に形成された3dの一方の面において、中心部に、高性能超小型スピーカ2が振動板2aを表面に向けて固着された状態で配設され、この高性能超小型スピーカ2の周囲には、複数の有底円筒形の超音波振動発生素子1が、それぞれの底面を基板3dの一方の面に固着された状態で、密集して配設されている。高性能超小型スピーカ2の振動板2aが超音波振動発生素子1から出力される超音波の伝播方向2cに向けて配設されているので、高性能超小型スピーカ2から出力される音声波の伝播方向を超音波振動発生素子1から発生される超音波の伝播方向と一致させる構成(例えば実施の形態1又は2における音響リフレクター3a)を備える必要がなく、ハイブリッド超音波スピーカを簡単な構成により形成することができる。また、高性能超小型スピーカ2が発生する音声波は、他の構成(例えば実施の形態1又は2における音響リフレクター3や、超音波振動発生素子1及び高性能超小型スピーカ2)による反射や回析を経ることなく、超音波の伝播方向2cに伝播させることができるので、高性能超小型スピーカ2が発生する音声の損失を少なくできる。
【0046】
図7は、実施の形態3に係るハイブリッド超音波スピーカ100の発振面を側方から見た模式図であり、同図はハイブリッド超音波スピーカ100の発信の様子を模式的に示している。同図に示すとおり、高性能超小型スピーカ2において、振動板2aと超音波振動発生素子1の底面内周部は略並行であり、高性能超小型スピーカ2から出力される音声の伝播の中心軸2b(即ち、振動板2aの中心部から振動板2aの表面に対して垂直方向に引いた仮想線)は、超音波振動発生素子1から発生される超音波の伝播方向2cと平行である。
【0047】
図6及び図7に示す構成において、超音波振動発生素子1から超音波を発生させるとともに高性能超小型スピーカ2から音声を発生させると、高性能超小型スピーカ2から発生された音声波は超音波振動発生素子1から発生された超音波に周囲を囲まれた状態で空気中に伝播する。そして、超音波振動発生素子1から発生される超音波の伝播方向2cと平行方向である中心軸2b方向においては、高性能超小型スピーカ2から発生される可聴音の音声波と超音波振動発生素子1から発生される直進性の高い超音波とが相互に作用しあい、超音波振動発生素子1の発生する音場と高性能超小型スピーカ2の形成する音場とが融合する。ここで、超音波振動発生素子1の特質上、超音波振動発生素子1から発生される音声(超音波の差音として聴者に聴取される音声)は、原音の周波数特性を忠実に再現することが難しく、聴取される音声の質感が基の音声の質感と相違してしまうことが多い。しかし、実施の形態3においては、原音の周波数特性を損ねることなく音声を出力できる高性能超小型スピーカ2からも音声を発生させて音場を形成し、超音波振動発生素子1の形成した音場と融合させることにより、中心軸2b方向においては、超音波振動発生素子1の形成した音場が補完され、奥行きのある自然な臨場感を持った音響環境を形成することができる。
【0048】
上記実施の形態1乃至3は本発明の例示であり、本発明が上記実施の形態の何れかに限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は以上の通りであるから、音像の定位性に優れ、音場の広帯域感の再現性にも優れており、指向性のある超音波の平行ビームでスピーカシステムを実現できるため、スポット音声サービス事業として、商店、百貨店、スーパーマーケット等の商業施設における商品説明宣伝、また、ホール、ドライブインシアター、博物館、動物園等の文化アミューズメント施設における展示上映説明、更に、駅舎、道路等の公共施設における注意喚起情報提供等に対して適用でき、音響特性再現用のハイファイスピーカ、公共放送用拡声器としても応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態1に係るハイブリッド超音波スピーカ100の発振面を正面から見た模式図である。
【図2】同実施の形態に係るハイブリッド超音波スピーカ100の発振の様子を側方から見た、図1のA−A線に沿った端面の模式図である。
【図3】同実施の形態に係るイントラネット・プロトコルにも接続可能なハイブリッド超音波スピーカシステムモジュール7の電気回路構成の機能別ブロック図である。
【図4】同実施の形態に係る音声データ4をイントラネット・プロトコルにも接続可能なハイブリッド超音波スピーカシステム対応にするためパケット化した情報処理系統の略模式ブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係るハイブリッド超音波スピーカ100の発振の様子を側方から見た模式図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係るハイブリッド超音波スピーカ100の発振面を正面から見た模式図である。
【図7】同実施の形態に係るハイブリッド超音波スピーカ100の発振面を側方から見た模式図である。
【符号の説明】
【0051】
1 (圧電バイモルフタイプ)超音波振動発生素子〔超音波発生器〕
2 高性能超小型スピーカ〔音声発生器〕
2a 振動板
3a 音響リフレクター
3b 吸音材
3c 遮音キャップ
4 音声データ
5 イントラネット・プロトコル仕様データ・ヘッダー
6 音声パケット処理サーバ
7 IPSSモジュール
8 IPSSデモ・モジュレータ
9 D/Aコンバータ・モジュール
10 超音波PAM(パルス振幅変調)・位相補償回路
11 超音波アンプ
12 高性能超小型スピーカ・フィルタ・イコライザー・遅延回路
13 高性能超小型スピーカ・アンプ
14 ディスプレイ制御器
15 ディスプレイ
100 ハイブリッド超音波スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転双曲面又は円錐側面形状の音響反射器と、
該音響反射器の回転双曲面の焦点又は円錐中心軸上の任意の点に配置され、前記音響反射器に向けて音声波を発生させ、前記音響反射器により反射された前記音声波を前記回転双曲面の回転軸又は前記円錐中心軸方向のサウンドビームとして伝搬させる音声発生器と、
前記回転軸又は前記中心軸方向に超音波を発生させる超音波発生器と
を有することを特徴とするハイブリッド超音波スピーカ。
【請求項2】
前記超音波発生器を、前記音声発生器の周囲で、前記回転軸又は前記中心軸に垂直な平面上に並設したことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド超音波スピーカ。
【請求項3】
振動板を備えた音声発生器と、
該音声発生器の周囲に配設されて超音波を発生する超音波スピーカと
を有することを特徴とするハイブリッド超音波スピーカ。
【請求項4】
前記音声発生器は、前記振動板が前記超音波発生器の発生する前記超音波の伝播方向に向けて配設されたことを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド超音波スピーカ。
【請求項5】
前記超音波発生器は、超音波を振幅変調して、可聴音を差音として伝搬する変調器を備えたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のハイブリッド超音波スピーカ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のハイブリッド超音波スピーカが複数、制御器にバス接続され、該制御器は、所望の音声情報を電気音響変換して、パケット情報として前記各ハイブリッド超音波スピーカに伝送させることを特徴とする放送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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