説明

ハウジングの強化方法及びこの方法を用いて製造したハウジング

【課題】ハウジングの強度を高めることができるハウジングの強化方法及びこの方法を用いて製造したハウジングを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るハウジングの強化方法は、サファイア材質のハウジングを準備するステップと、硝酸カリウム、ケイ酸カリウム、珪藻土及び水を含有する噴霧液を使用して、温度が480〜550℃のハウジングに対してスプレーすることによって、該ハウジングの表面にカリウムイオンを含有する強化膜層を形成するステップと、ハウジングの温度が室温まで下がるまで、該ハウジングに対して持続的にスプレーするステップと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングの強化方法及びこの方法を用いて製造したハウジングに関し、特にサファイア材質のハウジングの強化方法及びこの方法を用いて製造したハウジングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信技術の発展に伴い、消費者の携帯式電子装置の機能に対する要求は益々高くなっているが、それと同時に、携帯式電子装置の美観性に対する要求も高くなっている。しかし、従来の携帯式電子装置のハウジングは、通常金属或いはプラスチック材質からなるので、消費者の美観性に対する要求を満足させることができない。
【0003】
従って、サファイア(二酸化鉛を含有するガラス)からなるハウジングが開発された。該ハウジングは、優れた美観性及び装飾性を有するが、サファイア自体比較的脆いので、外力により砕け易く、電子装置のハウジングへの応用が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決するためのもので、ハウジングの強度を高めることができるハウジングの強化方法及びこの方法を用いて製造したハウジングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係るハウジングの強化方法は、サファイア材質のハウジングを準備するステップと、硝酸カリウム、ケイ酸カリウム、珪藻土及び水を含有する噴霧液を使用して、温度が480〜550℃のハウジングに対してスプレーすることによって、該ハウジングの表面にカリウムイオンを含有する強化膜層を形成するステップと、前記ハウジングの温度が室温まで下がるまで、該ハウジングに対して持続的にスプレーするステップと、を備える。
【0006】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係るハウジングは、表面に塩水噴霧処理によって、カリウムイオンを含有する強化膜層が形成されている。当該強化膜層の中のカリウムイオンの濃度は、前記ハウジングの内部に向かって、徐々に零まで低下する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、サファイア材質を利用して電子装置のハウジングを製造し、且つ塩水噴霧処理によって、アルカリ金属イオンの置換拡散を利用して、ハウジングの表面の化学構成成分を変えて、緻密な表面層を形成する。これにより、ハウジングの表面の圧縮応力を増強させ、該ハウジングの機械強度を向上させることができる。また、本発明の強化方法によって得られたハウジングは、良好な化学的安定性、耐腐食性及び耐摩耗性を有し、且つ硬度が高い。また、透き通っており、美観性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例に係るハウジングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施例に係るハウジング10の強化方法は、以下のステップを備える。
【0010】
(1)、注型成形法によってサファイア材質のハウジング10を形成する。
具体的には、ブロック状のサファイアを原料とし、該ブロック状のサファイアを600〜800℃に加熱して溶融状態にした後、この溶融状態のサファイアを成形金型の中に注入して、特定の形状を有するハウジング10を成形する。
【0011】
(2)、ステップ(1)で得られたハウジング10に対して、塩水噴霧処理(salt spray)を行う。
具体的には、完全に冷却されていないハウジング10を、噴霧装置(図示せず)の中に放置する。この際、完全に冷却されていないハウジング10の温度は、480〜550℃であり、この温度下でハウジング10は、完全に定型される。次に、噴霧液を使用して、ハウジング10に対してスプレーする。この噴霧液は、フェライト100重量部に対して、質量が37.5〜42.5%の硝酸カリウム、7.5〜10%のケイ酸カリウム、2.5%の珪藻土を含有し、残りは水である。ハウジング10の温度が室温まで下がるまで、この噴霧液をハウジング10を持続的にスプレーする。
【0012】
塩水噴霧処理を行うことは、二方面の作用を有する。一方では、サファイア材質のハウジング10は、スプレーする過程において、ハウジング10中のアルカリ金属イオン(Na)と噴霧液中のアルカリ金属イオン(K)と、は拡散することで相互交換を行い、体積が大きいKイオンは、ハウジング10のサファイアネットワークの中に割り込み、且つ体積が小さいNaイオンが先に占用したスペースを占有する。サファイアが冷却すると、サファイアネットワークは収縮し、体積が大きいKイオンは、より大きなスペースを必要とするので、ハウジング10の表面には圧縮応力が発生し、且つこの圧縮応力は冷却した該ハウジング10の中に残る。これによって、ハウジング10の表面には、緻密な強化膜層11が形成され、ハウジング10の強化膜層11以外の部分は変化しない。
【0013】
強化膜層11の厚さは、5〜20μmである。強化膜層11中のKイオンの濃度は、当該強化膜層11からハウジング10の内部に向かって、徐徐に零度まで低下する。強化膜層11がサファイア製のハウジング10の表面のマイクロクラックを減少させ、ハウジング10の表面に圧縮応力を形成するため、ハウジング10の抗曲げ及び抗衝撃の強度は大きく高められる。
【0014】
他方では、噴霧液の中の水は、より大きな比熱容量を有し、微粒子状の水噴霧は、迅速に吸熱して100℃の水になってから、ガス化する。次いで、水の比熱容量が大きく、且つ気化熱が高いという特徴を利用して、ガラスが急に冷却して硬化するように、ハウジング10の表面の熱量を瞬時に冷却し、圧縮応力を形成する。これにより、ハウジング10の抗膨張能力を高めることができる。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るハウジング10の全体は、サファイア材質からなり、且つ該ハウジング10の表面には塩水噴霧処理によって、Kイオンを含む強化膜層11が形成されている。また、このKイオンの濃度は、強化膜層11からハウジング10の内部に向かって、徐徐に零度まで低下する。本発明のハウジング10は、携帯電話機等の電子装置のハウジングとして用いることができる。
【0016】
本発明は、サファイア材質を利用して電子装置のハウジングを製造し、且つ塩水噴霧処理によって、アルカリ金属イオンの置換拡散を利用して、ハウジング10の表面の化学構成成分を変えて、緻密な強化膜層11を形成する。これにより、ハウジング10の表面の圧縮応力を増強させ、該ハウジング10の機械強度を向上させることができる。また、本発明の強化方法によって得られたハウジングは、良好な化学的安定性、耐腐食性及び耐摩耗性を有し、且つ硬度が高い。また、透き通っており、美観性に優れている。
【0017】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形又は修正が可能であり、そのような変形又は修正も、本発明の特許請求の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0018】
10 ハウジング
11 強化膜層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイア材質のハウジングを準備するステップと、
硝酸カリウム、ケイ酸カリウム、珪藻土及び水を含有する噴霧液を使用して、温度が480〜550℃のハウジングに対してスプレーすることによって、該ハウジングの表面にカリウムイオンを含有する強化膜層を形成するステップと、
ハウジングの温度が室温まで下がるまで、該ハウジングに対して持続的にスプレーするステップと、
を備えることを特徴とするハウジングの強化方法。
【請求項2】
前記噴霧液は、フェライト100重量部に対して、質量が37.5〜42.5%の硝酸カリウム、7.5〜10%のケイ酸カリウム及び2.5%の珪藻土を含有することを特徴とする請求項1に記載のハウジングの強化方法。
【請求項3】
ブロック状のサファイアを原料とし、当該ブロック状のサファイアを600〜800℃の温度下で溶融状態に加熱した後、この溶融状態のサファイアを成形金型の中に注入することによって、前記サファイア材質のハウジングを製造することを特徴とする請求項1または2に記載のハウジングの強化方法。
【請求項4】
前記強化膜層の厚さは、5〜20μmであることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のハウジングの強化方法。
【請求項5】
表面に塩水噴霧処理によって、カリウムイオンを含有する強化膜層が形成されているハウジングであって、
当該強化膜層の中のカリウムイオンの濃度は、前記ハウジングの内部に向かって、徐々に零まで低下することを特徴とするハウジング。


【図1】
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【公開番号】特開2013−103877(P2013−103877A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235233(P2012−235233)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【出願人】(505177003)深▲セン▼富泰宏精密工業有限公司 (138)
【出願人】(508155310)富士康(香港)有限公司 (185)
【Fターム(参考)】