説明

ハウジング内の給電されるカートリッジ及びその他装置

【課題】従来技術の欠点を解決する、ハウジング内に位置付けたフィルター要素またはフィルター要素に搭載した電機部品の如き装置に電力を供給するシステム及び方法を提供することである。
【解決手段】フィルター要素に流体を通すための一つ以上の入口ポート及び出口ポートを有するキャビティ30にフィルター要素20が挿通される。フィルター要素20は、ハウジングベース10の相当する合致分内に貫入する合致部分を有し得る。キャビティ30を取り巻く伝導性コイル60がハウジングベース10に埋設され、フィルター要素にも類似のコイルが埋設される。フィルター要素の合致部分の小端部には伝導性コイルが埋設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内に位置付けたフィルター要素に関し、詳しくは、ハウジング内に位置付けたフィルター要素またはフィルター要素に搭載した電気部品の如き装置に給電するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
とりわけ資産管理、特には在庫管理に関わる用途での無線通信の使用が普及している。例えば、RFIDタグを使用すると、製造ラインや、サプライチェーンを介しての資産または部品の移動を監視することができる。
【0003】
この概念を更に説明するに、製造企業において、製造設備に入る各部品にRFIDタグを貼付し、次いで、RFIDタグを貼付した部品を製造フローに流してその他の部品と共にサブアセンブリを形成させ、最終的に完成品とするが、RFIDタグを使用することで製造企業内の要員が製造プロセス全体を通して特定部品の動きを追跡することが可能となり、また特定のアセンブリまたは完成品を含む特別の部品を識別することも可能となる。
【0004】
RFIDタグの使用は薬品や製薬業界でも支持されている。薬品のラベル表示及び監視のためのRFIDタグの使用を支持する報告書が2004年2月に米国食品医薬品品質管理局より出されたが、その狙いは、薬品に血統書を付けると共に市場や消費者に偽処方薬が紛れ込むのを制限することにある。
【0005】
RFIDタグは、導入されて以来多数の用途、例えば、フィルター製品の識別やそれら製品をプロセス制御するための情報提供に使用されてきている。米国特許第5,674,381号には、“電子ラベル”をろ過装置及び交換自在のフィルターアセンブリと組み合わせて使用することが開示される。詳しく説明すると、この米国特許には、リード/ライト型のメモリと、ラベル応答性の読み取り手段を有する関連ろ過装置とを備える電子ラベル付きフィルターが記載される。電子ラベルは交換自在のフィルターの実動時間をカウント及び記憶するようになっており、ろ過装置はこのリアルタイムの数値に基づいてフィルターを使用させあるいは使用させないようになっている。この米国特許には、電子ラベルを使用して交換自在のフィルターに関する識別情報を記憶させ得ることも記載される。
【0006】
米国特許出願公開第2005/0205658号には、プロセス装置追跡システムが開示される。このシステムには、プロセス装置と組み合わせて使用するRFIDタグが含まれる。RFIDタグは、“追跡可能な少なくとも一つのイベント”を記憶し得るものとして記載される。追跡可能なそうしたイベントとしては、洗浄日、バッチプロセス日、が挙げられる。この文献には、プロセス装置のデータベースを持つパソコンあるいはインターネットに接続自在のRFIDリーダーも記載される。プロセス装置のデータベースは追跡可能な多数のイベントを含み、“蓄積データに基づいたプロセス装置の有効寿命”を判断する上で有益な情報を提供することができる。この文献には、このタイプのシステムを多様なプロセス装置、例えば、弁、ポンプ、フィルター、紫外線ランプと共に使用することが含まれる。
【0007】
米国特許出願公開第2004/0256328号には、ろ過施設の完全性(integrity)をモニタリングするための装置及び方法が記載される。この文献には、オンボードメモリチップと通信装置とを格納するフィルターをフィルターハウジングと組み合わせて用いることが記載される。フィルターハウジングは監視及び完全性テスターとして機能する。前記文献には、丸形の多重ハウジング内で使用するろ過要素の完全性を保証するために一組の段階を使用することも開示され、それらの段階には、使用するフィルターの形式、限界データ値、製造公開データ、を確認するための処理要求(query)を記憶素子に出すことが含まれる。この文献新居は、情報を外部の監視及び試験用ユニットに中継する内部トランスポンダも説明される。フィルターハウジング上でトランスポンダに隣り合ってアンテナが配設される。
これらの用途の多くではハウジング内部の核装置は電気的に駆動される必要がある。多くの用途の内の幾つかや、将来見込まれる他の用途においてさえも、使用するバッテリーは小型のもので十分であるが、そうした小型バッテリーによって得られる電力量はハウジング内部のエレクトロニクスを駆動するには不十分である。
【0008】
フィルター要素内に、ハウジング内の好適な合致するコネクタに接続するパワーコネクタを組み込むのは問題がある。そうした方法では、温度(特に成型中や蒸気洗浄中の)や流体流れの如き非常に厳しい状況に耐え得る合致用コネクタが必要となり、従って、これらのコネクタ間のシールの品質及び完全性といった点で問題が起こり得るのである。
かくして、ハウジング内に納めたフィルター要素の様な各装置に、品質や安全性を犠牲にすることなく、また、特には、濡れた表面が関与する場所に新規な材料を追加することなく、信頼下に電力を提供することに関する需要がある。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5674381号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0205658号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0256328号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術の欠点を解決する、ハウジング内に位置付けたフィルター要素またはフィルター要素に搭載した電気部品の如き装置に電力を供給するシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、従来技術の欠点を解決する、ハウジング内に位置付けたフィルター要素またはフィルター要素に搭載した電気部品の如き装置に電力を供給するシステム及び方法が提供される。ある場合においては、ハウジング内でワイヤーを使用するのは、流体流れ、圧力または温度といった内部条件上、実用的ではない場合がある。
本発明では電源と、ハウジングに収納した一つ以上の電子部品との間には何らの物理的連結も要さず、システム全体の使用寿命が増長される。
【0012】
一実施例ではハウジングは、ミリポア社から市販入手可能であり且つ商標名Filter Cartridge Housing Series 3000の下に販売されるもののようなフィルターカートリッジ状のフィルター要素を受けるようになっており、ハウジングベースには導伝性の第1のコイルが位置決めされ、フィルター要素内には第2のコイルが位置決めされ、ハウジングベース内のコイルを通して電流が送られる。フィルター要素内の第2のコイルには、変圧器におけるとほぼ同様に誘導による電流が発生する。この電力移行に際しては何らの物理的な電気接点も必要とされず、フィルター要素の第2のコイルに誘起され得る電力量にも制限がない。
【0013】
他の実施例では、フィルター要素がタンジェンシャルフローろ過(TFF)カセットを含み、このカセット内には、先の実施例におけると同じ結果を生じさせるための一つ以上のコイルが配置される。誘導磁界は様々の電子的機能の、例えば通信、検知またはその他動作を妨害する恐れがあるが、フィルターエレクトロニクスにはこの問題を解決するキャパシターのようなエネルギー保存部品が内臓され、かくして、誘導磁界により生じた電力を保存し、誘導磁界が無くなった時にこの保存電力を使用することができる。
【発明の効果】
【0014】
従来技術の欠点を解決する、ハウジング内に位置付けたフィルター要素または、搭載した電気部品の如き装置に電力を供給するシステム及び方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1には、代表的なハウジングベース10及び関連するフィルター要素20が例示される。図示される実施例では、ハウジングベースとフィルター要素とは、ミリポア社から市販入手し得るような、商標名Filter Cartridge Housing Series 3000のものである。フィルター要素は、物質を通す膜と、膜を支持するために必要な、相当する構造部分またはフレームとを有し、これら部品を含むフィルター要素アセンブリは、ステンレス鋼またはその他の幾つかの非腐食性材料から構成される、代表的にはハウジングドームで包囲されることが好ましい。このアセンブリは代表的には入口と出口とを有するが、図1では明瞭化のために省略される。ハウジングベース10は代表的にはキャビティ30の如き合致部分を一つ以上収納し、各キャビティがフィルター要素に合致してフィルター要素を保持するようになっている。
【0016】
各キャビティ30は代表的には、フィルター要素に流体を通すための一つ以上の入口ポート及び出口ポートを有し、このキャビティ30にフィルター要素20が挿通される。フィルター要素20は、ハウジングベース10の相当する合致部分(例えばキャビティ30)内に貫入する、例えば小端部40のような合致部分を有するのが好ましい。フィルター要素の合致部分は、半径方向に伸延してその各峰の間部分に溝50を画定する部材を備える一つ以上の領域部分を有することが好ましい。前記領域部分の各溝50には、好ましくはラバーまたは別の好適な可撓性材料からなる一つ以上のガスケットまたはO−リング(図示せず)を位置決めして、フィルター要素とハウジングベースとの間を液密シールすることが好ましい。
【0017】
好ましい実施例では、キャビティ30を取り巻く伝導性のコイル60がハウジングベース10に埋設される。コイル60は、導伝性を持つ材料製のワイヤーをコイル捲きした構成のものとすることが好ましく、既知の電磁理論によれば、巻き数が大きい程、送電され得る電力量は大きくなる。コイルは、キャビティ壁の表面積に相当する面積を占めるように、言い換えると、図1に示すようにキャビティ壁の長さ全体に渡り伸延するようにしてハウジングに埋設することが好ましい。或いはコイルは、コイルの占有面積をキャビティ壁の表面積よりも小さくし、シリンダー状のキャビティ壁の一部分のみを伸延するようにすることもできる。
【0018】
フィルター要素にも類似のコイルが埋設される。図示される実施例に関して上述したように、フィルター要素の合致部分は、ハウジングベースのキャビティに挿通される小端部を有するが、好ましい実施例ではこの小端部に伝導性のコイルが埋設される。伝導性のコイルは図1に示すように小端部の長さ全体に渡り伸延するのが好ましいが、小端部の一部分のみを伸延するもっと小型のコイルを使用しても良い。
【0019】
図2には、ハウジングべースのキャビティと、フィルター要素との拡大斜視図が示される。コイルはハウジングベース内でキャビティ壁の長さ全体に渡り伸延するように好ましく位置決めされ、フィルター要素内のコイルも同様に小端部の長さ部分に伸延される。フィルター要素をキャビティに正しく座着させると2つのコイルは相互に好ましく同中心状態となって同中心の2つのシリンダー、即ち円筒体を好ましく画定し、かくしてエネルギー送達量を最大化する。各コイル間の距離は重要事項であり、この距離を最小化することが好ましい。
【0020】
別の実施例では、鉄製のコアを使用するなどして磁界を引き伸ばすあるいはそうでなければ誘導(redirect)する。コイルと同中心状態で磁性材料をコイルに挿通するまたはコイルの外側に磁気シールドを挿通して電力移行を最適化し及びまたは外側の電気的部品との相互干渉を低減させる。例えば、ある実施例では鉄製の棒を受け用コイル(以下に説明するTFF実施例における如き)内で用いて電力移行効率を改善し、別の実施例では、磁気シールドを使用して、電磁的な相互干渉を減少または排除し、または、政府機関の定めるような排出基準に対応させ得る。
図2に示す各コイルは何れも、プラスチックケースに全体を収納して、外部環境に露呈されないようにすることが好ましい。そうすることで、システムの信頼性が向上するばかりでなく、フィルターシステム内部が汚染する恐れも減少する。
【0021】
コイルの巻き数は実装時の選択事項であり、ある実施例ではフィルター要素内に、レギュレーション無しでダイレクトに使用できる電圧を発生させるように選択され、別の実施例では、最大量のエネルギーが伝達されるように最大化される。本発明では特別構成は必要とされず、従って、全てのコイル巻き数の組み合わせは本発明の範囲内のものとする。
電源分配回路がハウジングベース内でコイルを駆動するが、このコイルは伝送コイルとしても知られるものである。電力または電圧を発生させてコイルを駆動するこうした方法は当業者にはよく知られたものであり、その説明は省略される。
【0022】
フィルター要素は、誘起される電圧を調整する回路を含み得る。先に言及したようにフィルター要素の、受信コイルとしても知られるコイルに電圧が誘起されるが、この電圧は、受信コイル及び伝送コイルの各巻き数や伝送コイル横断電圧の各値と関係がある。一実施例ではこれらの値は、受信コイルに誘起される電圧を、フィルター要素に収納した回路で直接利用できるように選択され、他の実施例では伝送コイル横断電圧値が調節される。電圧調整は既知であって色々のやり方で実施可能であり、例えば、電力用整流器、ダイオード、キャパシターまたは集積回路を用いて実施され得る。
【0023】
フィルター要素に電力を供給することにより多数の潜在的な用途例を実現可能となる。例えば、LEDのような簡単な装置を使用可能であるし、その他の電動装置、例えば圧力、温度、濃度の各センサ及びその他の検出装置も同様に使用可能である。イーサネット(商標名)、有線または無線のLAN用部品のようなネットワーク部品を含むもっと高度な部品をもフィルター要素内で利用することもできる。内部に標準的なネットワーク装置を組み込めばフィルター要素をネットワークにダイレクトに接続することもできるようになる。実際、そうしたネットワーク部品を使用すると各フィルター要素に認証番号が付与される。
【0024】
別の実施例では、好ましくは硬化処理した部品であるCPU部品をフィルター要素内に埋設し得る。これにより、フィルター要素にオンボード計算及びその他のオペレーションを実行させ、例えばハウジング構成に基づくテスト仕様を算出させ得る。考えられるその他の装置には、Bluetooth(商標名)またはWi-Fi(商標名)用の各部品の如き無線LAN用装置を含むものがある。
上述したように、好ましい実施例ではリテーナコイルはフィルター要素の開放された小端部に位置付けられ、他方、電子部品はフィルター要素の閉じた端部に埋設される。フィルター要素のプラスチックケースに埋設した一本以上のワイヤがコイルから電子部品に電力信号を搬送することが好ましい。
【0025】
説明した実施例では、ハウジングベースは、コイルを埋設した状態で形成されるものと仮定しているが、この点は本発明の要件ではなく、既存のハウジングベースを改変して形成しても良い。そうした実施例では、プラスチック製の小型インサートをハウジングベースのキャビティ内に座着させることが好ましく、小型インサートはキャビティ高さを有し且つ中空円筒形状を有することが好ましい。小型インサート内には、電源に接続するワイヤを一本以上出すようにした伝送コイルを挿入し、図3に示すようにキャビティ内部に配置する。一実施例では、小型インサートはフィルター要素を尚、インサート内に位置決めすることができるような十分に小さい寸法形状のものとされる。フィルター要素が可撓性のガスケットまたはO−リングを有することから、キャビティ直径を多少減少させてもフィルター要素を中空のインサートに嵌入させる際の妨げとはならない。他の実施例では、ハウジングベースがキャビティの直径を増大させるように改変される。この場合、以前はハウジングベースの一部であった容積部分をインサートが占有することになる。ハウジングベースは、伝送コイルが必要とするワイヤをハウジングベースから適宜の回路に送れるようにするためのフィードスルーを含むようにも改変され得ることが好ましい。
【0026】
円筒状のフィルター要素を参照して説明したが、本発明はその他のタイプのフィルター要素にも等しく適用され得るものである。
例えば、タンジェンシャルフローろ過(TFF)用フィルターにも本発明を組み込み可能である。図4に示すように、一つ以上のTFFフィルターまたはカセット100が代表的には平行に配置され、図示しないホルダにより相互に保持される。このホルダは代表的にはTFF形態における何れかの端部位置のプレートから構成され、ボルト又はクランプのような締着機構が各プレート及びカセットに通され、かくしてシステム全体が相互に保持される。TFFカセットには、各カセットを然るべく保持するための凹所、長孔又は溝110を成型することが好ましい。
【0027】
一実施例では、TFFカセット100を押圧し且つ然るべく保持する端部プレートに伝送コイルを埋設する。伝送コイルはTFFカセット100の開放側に面した端部プレートの縁部に沿って創出される溝内に位置付けられることが好ましい。このコイルは、前記溝の内部に成型したプラスチックケースに収納されることが好ましい。伝送コイルに電力を送るワイヤーを、前記端部プレートの孔に通す又はその他の方法を使用して取り付け得る。
【0028】
受信コイル120を、その中心軸が端部プレートと好ましくは直交するようにして配置する。受信コイル120は内側の膜と平行であることが好ましく、外側成形ジャケットの外縁部の周囲に巻き付けられる。受信コイル120は、高電力伝送に影響を及ぼすよう、伝送コイルに近接配置することが好ましい。図5にはそうした実施例が示され、受信コイル120が、代表的な流体通路の外側の位置で外側の成形ジャケット130に埋設される。各受信コイルは、コイル同士の電磁誘導を改善させるため、相互錠止されるような設計のものとされ得る。言い換えると、あるTFFカセットの受信コイル120がTFFカセットの端部を越えて伸延する傾斜端部を有し得、この傾斜端部が隣り合うTFFカセットの受信コイル内の穴140に嵌入される。或いは各受信コイルはTFFカセットを越えて伸延するようには成型されず、かくして組み立て及び使用が容易化される。別の実施例では棒の如き磁性部材を色々の受信コイルの穴140に挿通させることによりエネルギー伝送性が改善される。
【0029】
図6に示す別の実施例では受信コイル120はTFFカセットの外側の成形ジャケット130に埋設される。受信コイル120は外側の成形ジャケット130内に位置付けられ、内部の膜に対して垂直に配向される。言い換えると、受信コイル120の中心軸が内部の膜と平行とされる。図6に示されるように、この位置へは、TFFカセットシステムを完全に組み立てた場合でも尚アクセス可能である。次いで、伝送コイルがTFFカセット内に電力を誘起させるべく外側の成形ジャケット130に近接して又は突き合わせて配置される。伝送コイルをフィクスチャに埋設し、このフィクスチャを成形ジャケットに近接して又は突き合わせて配置することが好ましい。多数のTFFカセット100を相互に積層する場合は多数の伝送コイルを利用することが好ましい。或いは多数の伝送コイルを単一のフィクスチャ内に配置しても良い。多数のフィクスチャはその各々が単一のコイルを収納し、各コイルは各TFFカセットに給電するために使用され得る。
【0030】
本発明を円筒状のTFFフィルター要素に関して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。任意のフィルター要素が、その形状に拘わらず、このフィルター要素内に収納した受信コイルに比較的近接して、給電される伝送コイルを配置することにより、自家発電され得る。上述した2つのフィルター形式は本発明の範囲を単に例示したに過ぎないものであり、これらの実施例に限定しようとするものではない。
別の実施例では各コイルは、完全使い捨て性のフィルターハウジングを供給管又はその他の部品に相互連結するために使用するコネクタの内部に挿通される。伝送コイルを外側のコネクタ内に形成し、受信コイルは使い捨て性のフィルターハウジング内に形成することが好ましい。このように連結すると、流体の相互連結と電気的な相互連結とが共に生じることから、電力をフィルターに送るための配線スキームが簡素化される。加えて、ワイヤーを使用せずに電気的接続が成されるので、この方法によれば清掃可能な及び又は排水可能な導管内に電気的部品が維持されることによるそれら部品の無用な汚染の恐れが低減される。
【0031】
誘導連結法によれば、フィルター要素又はカートリッジ内に電力を発生させ得るが、電力を発生させるために必要な誘導磁界が、無線通信のようなその他機能を不可能ではないにせよ困難とする恐れがあり得る。従って、ある用途ではその他機能を実行する前に誘導磁界を無効にしておく必要があり得る。
一実施例では、フィルター要素はキャパシターのようなエネルギー保存部品を含む。好ましい実施例ではこのキャパシターをその他の電子部品と共にフィルター要素内に封入し、ハウジング内の状況に露呈させないようにされる。例えば、キャパシターを端部キャップ内に位置付け、又はフィルターの、合致部分から最も遠い側の端部に位置付け得る。誘導磁界が有効の時、直ぐには使用されないエネルギーは保存要素に保存され、その後必要となった時に入手される。エネルギー保存部品の大きさは、フィルター要素のエレクトロニクスの消費電力量や、一度の充電に対して要求されるエレクトロニクスの作動時間といった幾つかのファクターに依存する。エネルギー保存部品の大きさを決定するために使用するファクターは当業者には周知のものである。
【0032】
かくして、エネルギー保存部品の大きさ及びエレクトロニクスの合計消費電力量に基づき、自律運転時間(A)が決定され得る。この時間は、キャパシター、又はその他のエネルギー保存部品を再充電するために別の誘導サイクルが必要となる前に可能な、フィルター要素内のエレクトロニクスの最大作動時間である。
フィルター要素を作動させる誘導磁界を有効にすると、エネルギー保存部品を充電できるようになる。次いで誘導磁界を無効にすると、その他の、例えば検出又は無線通信のような機能を実行できるようになる。これらの機能は自律運転時間A未満の時間持続され得、この時間は機能時間(F)と称される。かくして時間Fは、適正運転上は時間A未満のものとすべきである。時間Fを算出するに際しては、再充填モードに入る前にろ過システムを正しくシャットダウンさせるための時間があるよう多少の余裕を持たせるべきであるが、この時間は安全/切替時間(S)と称される。
【0033】
長い情報ストリームを送る、又は冗長な機能を実行させるためには、エネルギー保存部品を複数回充電する必要があり得る。例えば、エネルギー保存部品を充電し、次いでフィルター要素に無線通信の一部分を実行させ、時間Fの後、無線通信をサスペンドさせ、誘導磁界を有効にしてエネルギー保存部品を再充電する。再充電時間(R)の後、誘導磁界を無効にし、フィルター要素の無線通信を再開させる。必要であれば、無線通信を多数回サスペンドさせてエネルギー保存部品を再充填できるようにする。
【0034】
フィルター要素のエレクトロニクスが個別に給電されることから、伝統的なRFIDプロトコル以外のプロトコルを利用すれば、おそらく伝送速度をもっと速めることが可能である。IEEE802.11a、802.11b、802.11g、Bluetooth(商標名)の如きその他の既知の無線プロトコル、又は、振幅変調又は周波数変調を用いる専用プロトコルを使用可能である。
本発明の一実施例では別個の手段を用いて様々のアクティビティの制御及びコーディネートを行う。例えば、これらの手段を、誘導磁界を有効にする時に第1信号をアサートするために使用し得る。第2(または第1信号のデアサーション)信号が、誘導磁界を無効にしたことを通知し、次いで第3信号が、動作又は通信の安全性をエレクトロニクスに通知し、第4(又は第3信号のデアサーション)信号が、誘導磁界が間もなく有効になるので動作をサスペンドするようにエレクトロニクスに通知する。
【0035】
かくして、第1信号から第2(又は第1信号のデアサーション)信号までの時間は、先に再充電時間として定義した時間Rよりも長い又は等しくする必要がある。第2(又は第1信号のデアサーション)信号と第3信号との間は安全/切替時間Sである。第3信号のアサーションから第4(又は第3信号のデアサーション)信号までの時間は機能時間Fとして定義される。結局、第4(又は第3信号のデアサーション)信号と、次の第1信号のアサーションとの間の時間も安全/切替時間Sである。かくして、全シーケンスには再充電時間と、2つの安全/切替時間と、機能時間とが含まれる。上述したようにこのシーケンスを必要に応じて多数回反復させ得る。
更には、説明した実施例ではシーケンスを反復させることが仮定されるが、そうした仮定は本発明上必要とされるものではない。エネルギー保存部品が適正に充填される限り、誘導磁界を無効にしてエレクトロニクスを自律時間に渡り動作させ得る。加えて、エネルギー保存部品を充電した後に機能時間を直ちに開始させる必要はない。各部品は長時間に渡りエネルギーを保存可能であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に従う代表的なハウジングベース及びフィルター要素の断面を示す斜視図である。
【図2】本発明に従うハウジングベース及びフィルター要素の、動作位置での断面を示す部分拡大斜視図である。
【図3】本発明の他の実施例の部分拡大斜視図である。
【図4】TFFカセットを用いる第1実施例の斜視図である。
【図5】TFFカセットを用いる第2実施例の斜視図である。
【図6】本発明の他の実施例の斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
10 ハウジングベース
20 フィルター要素
30 キャビティ
40 小端部
50 溝
60 伝導性のコイル
100 TFFフィルター
120 受信コイル
130 外側成形ジャケット
140 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導伝性のコイルを埋設したフィルター要素を含むフィルターシステム。
【請求項2】
フィルター要素を受けるための第1の合致部分を有するハウジングを更に含み、フィルター要素が、前記第1の合致部分内にシール関係下に挿通するための第2の合致部分を含む請求項1のフィルターシステム。
【請求項3】
導伝性のコイルがフィルター要素の第2の合致部分内に埋設される請求項2のフィルターシステム。
【請求項4】
ハウジング内に第2の導伝性のコイルを埋設した請求項2のフィルターシステム。
【請求項5】
第2の導伝性のコイルが、該第2の導伝性のコイルと関連付けされた回路により給電される請求項4のフィルターシステム。
【請求項6】
導伝性の第2のコイル及びフィルター要素の導伝性のコイルが同中心を有する円筒体を画定する請求項4のフィルターシステム。
【請求項7】
フィルター要素が、内部に膜を有するTFFフィルターを含む請求項1のフィルターシステム。
【請求項8】
フィルター要素のコイルが中心軸を有し、該中心軸がTFFフィルターの膜と平行である請求項7のフィルターシステム。
【請求項9】
フィルター要素のコイルが中心軸を有し、該中心軸がTFFフィルターの膜に対して垂直とされる請求項7のフィルターシステム。
【請求項10】
TFFフィルターが、フィルター要素内に位置決めした磁性部材を更に含む請求項7のフィルターシステム。
【請求項11】
磁性部材が鉄製の棒を含む請求項10のフィルターシステム。
【請求項12】
フィルター要素が電子部品を含んでいる請求項1のフィルターシステム。
【請求項13】
フィルター要素が、コイルの受けるエネルギーを保存するようになっているエネルギー保存部品を更に含む請求項12のフィルターシステム。
【請求項14】
エネルギー保存部品がキャパシターを含む請求項13のフィルターシステム。
【請求項15】
フィルター要素に無線給電する方法であって、
a.フィルター要素内に第1の導伝性のコイルを提供すること、
b.第1の導伝性のコイルに近接して第2の導伝性のコイルを提供すること、
c.交互するエネルギー源を使用して第2の導伝性のコイルに給電すること、
を含む方法。
【請求項16】
交互するエネルギー源を使用して第2の導伝性のコイルに給電することが、連続的に実行される請求項15の方法。
【請求項17】
フィルター要素がエネルギー保存要素を含み、交互するエネルギー源を使用して第2の導伝性のコイルに給電することが、間欠的に実行される請求項15の方法。
【請求項18】
フィルター要素が、エネルギー保存要素を含み、交互するエネルギー源を使用して第2の導伝性のコイルに給電することが、一定間隔で実行される請求項15の方法。
【請求項19】
第2の導伝性のコイルが、フィルター要素を収納するハウジングに埋設される請求項15の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−100224(P2008−100224A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268893(P2007−268893)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】