説明

ハウジング内の軸受レース用取付け装置

本発明は、軸受レース(2)をハウジング(5)内に取付ける装置(1)であって、中空円筒状で特に半径方向外側で軸受レース上にはめることができる母体(8)を持ち、この母体(8)が、ハウジング(5)の環状溝(13)へはまる少なくとも1つのばね素子(11)、及び軸受レース(2)を軸線方向に支持する湾曲された少なくとも1つの肩部(9)を持っているものに関する。少なくとも1つのばね素子(11)が、かぎ状に母体(8)から半径方向外方へかつ少なくとも部分的に軸線方向に戻るように湾曲されて構成されている。取付け装置(1)に少なくとも1つの押し素子が形成され、この押し素子が少なくとも1つのばね素子(11)と作用結合して、少なくとも1つの押し素子の操作により、少なくとも1つのばね素子(11)が特に軸線方向に予荷重をかけられかつ/又は締付け可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内の軸受用取付け装置に関する。
【0002】
この取付け装置は、ハウジングの環状溝へはまる少なくとも1つのばね素子及び軸受レースに軸線方向に支持可能な少なくとも1つの湾曲される肩部を有するほぼ環状又は中空円筒状の母体を持っている。
【0003】
取付け装置は、その母体で軸受レース上に外側ではまり、少なくとも1つのばね素子及び少なくとも1つの湾曲された肩部を介して、この軸受レースをハウジング内で軸線方向に保持するか又は拘束する。
【背景技術】
【0004】
このような取付け装置、拘束スリーブ又は拘束環は、ドイツ連邦共和国特許第19713333号明細書に記載されている。
【0005】
この拘束スリーブ又は拘束環により、車輪軸受の外側軸受レースがハウジング内で軸線方向に拘束される。
【0006】
この場合板から成る拘束環は、大抵の場合中空円筒状に構成される母体をもち、この母体により拘束環が半径方向外側で外側軸受レース(軸受レースとも略称される)上にはまる。
【0007】
拘束環の母体からばね素子が出ている。ばね素子は、拘束環から、外側軸受レース又は車輪軸受の回転軸線に関して半径方向に斜め外方へ拡開されて、ハウジングの環状溝へはまるか係合している。環状溝はハウジングの穴内に形成されて、半径方向内方へ開いている。
【0008】
拘束環の母体から半径方向に回転軸線の方へ、少なくとも円板状の肩部が出ている。肩部は母体から湾曲され、端面で外側軸受レースに係合して、外側軸受レースが拘束環の肩部に軸線方向に支持されるようにしている。
【0009】
上述した従来技術の拘束環では、ばね素子は母体から打抜かれ、半径方向に斜め外方へ拡開されている。
【0010】
こうして拘束環を弱める打抜き部が拘束環の母体に生じる。
【0011】
従ってこの拘束環による軸受の軸受レースのハウジング内への拘束は、しばしば充分強固には行われないので、限られた値以内であっても、外側軸受レースがハウジング内で軸線方向に移動する。
【0012】
拘束環は、組込みの際まず外側軸受レース上へしっかり圧力ばめされる。ハウジングへ外側軸受レースを導入する際、拘束環のばね素子の斜め外方へ向く側が、軸受座の稜へ当たる。
【0013】
各ばね素子は、稜との接触により、打抜き部の方へ弾性的に撓むか、又はそれぞれの打抜き部の中へ撓んで、外側軸受レースが拘束環と共にハウジングへ導入可能になる。
【0014】
軸受レースがその最終位置にあると、ばね素子が開くように撓んで、環状溝に係合する。
【0015】
従来技術によるこのような拘束環を持つ取付け装置ではハウジングにある環状溝の寸法の設定の際、すべての公差が、環状溝に対する拘束環のばね素子の位置(目標位置)に影響を及ぼすことがあるので、ばね素子が目標位置からの許容偏差の限界内で常に自由に環状溝内へ撓むことができる。
【0016】
従ってばね素子は一般に比較的大きい軸線方向遊びで環状溝へはまり、溝内に支持されないか又は遊びなしには支持されない。
【0017】
外側軸受レース従って軸受自体も、荷重を受けて、即ち半径方向及び/又は軸線方向の静的及び/又は動的荷重を受けて、長い作動時間後にこの遊び以内で、ハウジング内で軸線方向に移動することがある。
【0018】
軸受レース又は軸受の軸線方向移動は、軸受の寿命にとっては不利であり、一般に有害なクリック騒音を伴い、軸受に設けられるセンサ装置の測定信号の精度に不利な影響を及ぼす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って本発明の課題は、前記の欠点が回避される取付け装置を提供することである。特に本発明により、動的及び/又は静的負荷を受けてハウジング内で軸受レース又は軸受が軸線方向に動くのを防止されるか、又は少なくとも大幅に制限されるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この課題は、独立請求項に記載の特徴を持つ取付け装置によって解決される。本発明の好ましい展開は従属請求項からわかる。
【0021】
ハウジング内にある特に車輪軸受の軸受レース用の本発明による取付け装置は、中空円筒状で特に半径方向外側で軸受レース上にはめることができる母体を持ち、この母体が、ハウジングの環状溝へはまる少なくとも1つのばね素子、及び軸受レースを軸線方向に支持する湾曲された肩部を持っている。
【0022】
少なくとも1つのばね素子が、かぎ状に母体から半径方向外方へかつ少なくとも部分的に軸線方向に戻るように湾曲されて構成されている。更に取付け装置に少なくとも1つの押し素子例えば押し舌片が形成され、この押し素子が少なくとも1つのばね素子と作用結合して、少なくとも1つの押し素子の操作により、少なくとも1つのばね素子が特に軸線方向に予荷重をかけられかつ/又は締付け可能である。
【0023】
上述した従来技術とは異なり、少なくとも1つのばね素子は母体から打抜かれて外方へ向けられているのではなく、製造の際母体の軸線方向延長部から半径方向外側へ折曲げられている。
【0024】
少なくとも1つのばね素子と作用結合される少なくとも1つの付加的な押し素子、又はハウジングへ軸受の圧入の際押し素子の操作により、少なくとも1つのばね素子が、ハウジングへの軸受の圧入の際、取付け装置例えば拘束環が、軸受レース上にはまって、軸線方向に予荷重をかけられ、そのためハウジングに設けられる環状溝へ係合することができる。
【0025】
少なくとも1つの押し素子の操作による少なくとも1つのばね素子の軸線方向撓みのため、従来の皿ばねにおけるより大きい撓み行程を実現でき、それにより部材の公差により生じる特に取付け装置とハウジング溝との間の間隙を橋絡することができる。
【0026】
少なくとも1つのばね素子に応じて、少なくとも1つの押し素子が、同様にかぎ状に母体から半径方向外方へかつ少なくとも部分的に軸線方向に戻るように湾曲されて構成されている。
【0027】
少なくとも1つの押し素子の操作の際、この押し素子が、軸線方向に戻るように湾曲される範囲の特に端部範囲において軸線方向に負荷可能である。
【0028】
そのために例えば軸受をハウジングへ圧入するために従来技術から公知の普通の組立て工具を使用することができる。これに、即ち少なくとも1つの押し素子への接触面に、圧入過程において押し素子の滑り落ち又は離れ揺動を防止するために、小さい深さの1つの付加的な溝を設けさえすればよい。
【0029】
組立て工具の取外し及び取付け装置の取外し後、少なくとも1つのばね素子が、公差状態に応じて大きいか又は小さい軸線方向予荷重で、区画面例えばハウジング溝の傾斜面に当接せしめられる。
【0030】
ハウジングへの圧入によりハウジング内における少なくとも1つのばね素子の固定に影響を及ぼすことがあるこのばね素子の半径方向内方へ向く塑性変形は、圧入過程の終わりに少なくとも1つの押し素子によりばね素子の再押圧によって、少なくとも部分的に再びなくすことができる。
【0031】
更に少なくとも1つの押し素子と少なくとも1つのばね素子が互いに作用結合されて、少なくとも1つの押し素子の軸線方向に戻るように湾曲される範囲の端部範囲が軸線方向に負荷される際、少なくとも1つのばね素子が、環状溝内でハウジングへ向かって弾性的に予荷重をかけられかつ/又は締付け可能であるようにすることができる。
【0032】
少なくとも1つの押し素子と少なくとも1つのばね素子が互いに作用結合されて、少なくとも1つの押し素子の軸線方向に戻るように湾曲される範囲の端部範囲が軸線方向に負荷される際、少なくとも1つのばね素子の少なくとも部分的に軸線方向に戻るように湾曲される範囲が、母体から半径方向に拡開可能であるようにすることもできる。
【0033】
特になるべく少なくとも1つのばね素子が、特に母体に一体に形成される少なくとも1つのばねカラーから形成され、このばねカラーが第1の曲げ半径を形成しながら折り返されて、ばねカラーが少なくとも部分的に母体から軸線方向に突出するようにしている。
【0034】
特になるべく少なくとも1つの押し素子が特に母体に一体に形成される押しカラーから形成され、押しカラーが第2の曲げ半径を形成しながら折り返されて、押しカラーが少なくとも部分的に特に全体で母体から軸線方向に突出するようにしている。
【0035】
少なくとも1つの押し素子を補強するため、その押しカラーを軸線方向にV字状に形成することができる。
【0036】
更になるべく少なくとも1つの押し素子の押しカラーが、軸線方向に所定の突出量だけ母体からかつ/又は所定の突出量だけ取付け装置の軸線方向端面から突出している。
【0037】
突出量が、取付け装置とハウジングの環状溝との間の間隙又は間隙の大きさに関係して設定され、特に突出量が間隙より大きく設定されている。
【0038】
換言すれば、取付け装置特に拘束環の端面に対する押し素子の突出量が、取付け装置又は拘束環とハウジング溝との間に理論的に生じる間隙よりなるべく大きく選ばれて、取付け後遊びが確実にないようにすることができる。
【0039】
更にハウジング内への軸受の取付けの際少なくとも1つのばね素子の撓み行程が、突出量により決定される。
【0040】
少なくとも1つのばね素子のばねカラーと少なくとも1つの押し素子の押しカラーが、少なくとも部分的に折り返し範囲で、特に第1の曲げ半径及び/又は第2の曲げ半径より上まで、互いに一体に結合することもできる。
【0041】
これによりできるだけ大きい力導入したがって少なくとも1つのばね素子の最大の変形を行うことができる。
【0042】
更に取付け装置のばね作用を改善するため、少なくとも1つのばね素子のばねカラーが少なくとも1つの押し素子の押しカラーより半径方向に大きく突出している。
【0043】
更に少なくとも1つのばね素子のばねカラーと少なくとも1つの押し素子の押しカラーが、少なくとも一部、特にばねカラー及び押しカラーがそれぞれ軸線方向に母体から突出する部分において、軸線方向スリットにより、取付け装置の周方向に互いに分離されている。
【0044】
更に押しカラーが軸線方向にV字状に形成され、かつ/又は取付け装置が板から成り、特に板から成る拘束/クリップ環であるようにすることができる。
【0045】
特に好ましい構成では、少なくとも1つの肩部が、軸線方向に軸受レースに当接し、取付け装置特に拘束環が、中空円筒状母体に一体に形成される肩部から離れるように、中空円筒状母体に軸線方向に続き、中空円筒状母体が、拘束環の一体に形成されて溝状に曲げられる少なくとも1つの区域へ移行し、拘束環が、この区域で半径方向外方へハウジングの環状溝の方へ曲げられ、拘束環が、少なくともこの区域から、一体に形成される少なくとも1つのばね素子及び一体に形成される少なくとも1つの押し素子へ続き、特に少なくとも1つの特に弾性的なばね素子が、軸受レースから離れるように少なくとも1つの押し素子より大きく外方へ拡開され、かつ/又は少なくとも1つのばね素子が軸受レースから離れるように外方へ環状溝の中へ拡開されている。
【0046】
その際区域が、周方向に互いに隣接し特に軸線方向スリットにより分離される複数のばね素子及び押し素子に続き、特にばね素子がそれぞれ2つの隣接する押し素子を持ち、かつ/又はばね及び/又は押し素子の数が取付け装置又は拘束環の(内)径に関係して選ばれている。
【0047】
換言すれば、拘束環の大きさ即ち拘束環の直径従って拘束環の周方向セグメントの長さに応じて、複数の押し素子又は押し舌片を設けて、ばね素子の変形又は撓みを最小にすることができる。
【0048】
更に取付け装置の(軸線方向)ばね作用を改善するため、拘束環が、丸められる移行部の範囲(母体の中空円筒状範囲の一部)に、他の範囲におけるより小さい材料厚さを持っている。
【0049】
更に特になるべく肩部が円板状に形成され、肩部が取付け装置内で軸受レースへ向かって軸線方向に弾性的に予荷重をかけられている。
【0050】
更に軸受レースが、ハウジングに対して固定した軸線方向ストッパに軸線方向に当接し、肩部が軸受レースに軸線方向に当接し、軸受レースが、環状溝内に支持される少なくとも1つのばね素子により、肩部を介して軸線方向ストッパへ向かって軸線方向に弾性的に予荷重をかけられている。
【0051】
更に取付け装置例えば拘束環が、肩部から遠い方にある拘束環の側に、少なくとも1つただしなるべく複数の溝状補強部を、ばね素子及び/又は押し素子に又はばね素子及び/又は押し素子の近くに持つことができる。
【0052】
母体が打抜き部により弱められないので、拘束環は非常に強固である。軸線方向に対する取付け装置の抵抗は、存在する複数のばね素子の各ばね素子がひだ状に補強されていると、ひだ状構成によって高められる。
【0053】
更に取付け装置がこの場合なるべく板から成る拘束環であり、母体がなるべく中空円筒状にただし任意に異なるようにも構成されているようにすることができる。肩部は母体から半径方向内方へ母体に対して直角に又は任意の別の角度で湾曲され、少なくとも部分的に軸線方向へ軸受レースに当接している。板は母体の延長部から半径方向外方へ折り返されるので、拘束環は曲げ個所にひだ状区域を持っている。ばね素子及び押し舌片は、拘束環の構造に応じて区域に統合されるか、又はこの区域から初めて(ばね素子の場合)環状溝へ続いている。従ってひだ状区域がカラーとしてスリットを形成されず、従って取付け装置が極めて強固であると考えられる。その代わりに、スリットがこの区域を通って母体の所まで又は軸線方向に母体の中まで軸線方向に延びている。
【0054】
板は、ばね素子がハウジングの環状溝の中へ拡開されて、少なくとも環状溝へはまるように折り曲げられている。そのためばね素子は、なるべく少なくとも部分的に、回転対称軸線に対しかつ中空円筒状母体に対してなるべく90°より小さい角で傾斜している環状溝の環状面に当接している。
【0055】
本発明の別の構成では、環状溝の両方の側面が、その間に90°より小さい角を環状面によりそれぞれ形成されている。軸受レースに大きい軸線方向荷重が作用する場合、ばね素子が両方の側面に当接し、こうして環状溝内に最適な強さで支持される。
【0056】
取付け装置にある肩部は、なるべく軸線方向にばね弾性的に軸受レースへ向かって締付けられている。このため肩部は、取付け前の初期状態で、中空円筒状母体に対して鋭角で傾斜している。その際母体と肩部は、取付け装置の取付け完了前に、その間に鋭角をなし、取付け装置の取付け完了状態で、軸受レースの端面がこの肩部に当接する。こうして軸受レースは、肩部により軸線方向に弾性的に軸線方向ストッパへ向かって予荷重をかけられている。その代わりに又はそれと同時に、拘束環がばね素子により環状溝内に弾性的に予荷重をかけられて支持されている。その際弾性的に撓むばね素子のエネルギは肩部へ伝達され、肩部から軸線方向ストッパに支持される軸受レースへ伝達される。取付け装置の予荷重のため、軸受レースは、なるべく目標位置とは許容偏差以内で相違している任意の各位置で、拘束環により軸線方向に遊びなしに弾性的に予荷重をかけられて取付け装置内に保持されている。
【0057】
本発明の実施例が図に示されており、以下に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
図1は、車輪軸受3用の取付け装置1を、車輪軸受3の軸受レース2の回転対称軸線2aに沿う縦断面で示している。
【0059】
車輪軸受3は密封される複列(アンギュラコンタクト玉)軸受である。車輪軸受3の外側軸受である軸受レース2は、車両側に固定したハウジング5の穴4内にはまっている。肩部の形の軸線方向ストッパ6が、穴4内へ半径方向に突出している。軸受レース2は軸線方向に軸線方向ストッパ6に支持されている。
【0060】
軸受レース2は、拘束環7により逆の軸線方向に保持されている。拘束環7は、周方向に(セグメント22に)分布又は分割されて、ほぼ軸線方向に延びて車輪軸受3を軸線方向に拘束するばね素子11と、ばね素子11に軸線方向予荷重をかける押し舌片21とを持っている。
【0061】
図2は、拘束環7の一部(ここではセグメントが示されている)を背面図で示している。図3は拘束環7を断面図で示している。図4は拘束環7の一部の斜視図を示している。図5は図1の細部Zを拡大して示している。図6は拘束環7の一部の正面図を示している。
【0062】
拘束環7は板から成り、母体8を持っている。母体8から、(皿ばねを構成する)肩部9が半径方向内方へ湾曲されている。肩部9は、中空円筒状に形成される母体8に対して角αで傾斜している(図5)。角αは90°より小さいが、90°以上であってもよい。
【0063】
母体8は、肩部9から離れるように向く軸線方向側で、ひだ状に形成されて周方向に囲むカラー10,20又は区域10,20に続いている。
【0064】
区域10又は20において、特に図3及び4からわかるように、拘束環7は周方向に囲むように折り返されて、それにより拘束環7に形成されるばね素子11及びそれにより形成される押し舌片21が、母体8からそれぞれ少なくとも部分的に軸線方向に突出するようにしている。
【0065】
折り返し部又は折り返し部の範囲を介して、ばね素子11と押し舌片21が互いに作用結合されるか又は連結されて、例えばハウジング5への車輪軸受3の圧入(軸線方向操作27)におけるように、押し舌片21への軸線方向力導入27の際又は押し舌片21の軸線方向力印加の際、ばね素子11へ軸線方向予荷重をかけることができるようにしている。
【0066】
特に図3からわかるように、押しカラー20は、軸線方向に(図3に示す)規定可能な突出量23だけ、母体8又は拘束環7の軸線方向端面から突出している。
【0067】
押し舌片21の突出量23は、ハウジング5への車輪軸受3の取付け又は圧入の際進行するばね素子11の撓み行程25を決定する。ばね素子11の近くにあるこれらの押し舌片21又は(共通なカラー10,20を介して)ばね素子11に結合されるこれらの押し舌片21により、ばね素子11は、ハウジング5への圧入(軸線方向操作27)の際軸線方向に予荷重をかけられて、そのためにハウジング5に設けられる環状溝13に係合する。
【0068】
周方向に囲むカラー10,20は(セグメントに分割されて)、周方向にカラー10,20の曲げ半径より上で始まる(分離)スリット12を持っている。スリット12は、周方向に押し舌片21からばね素子11を分離し、また押し舌片21を互いに分離している。特に図4からわかるように、曲げ半径より上で始まるばね素子11と押し舌片21との間のスリット12は、母体8の上で軸線方向にカラー10に続いている。
【0069】
図2から更にわかるように、セグメント22は2つのばね素子11を持ち、これらのばね素子の各々が、2つの隣接する押し舌片21(セグメント毎に全部で3つの押し舌片)により囲まれている。
【0070】
ばね素子11は、半径方向外側でかぎ状に母体8から戻るように折り曲げられて、組込まれた状態でハウジング5の環状溝13の中へ、拘束環7から角φで拡開されている。
【0071】
ばね素子11は半径Rで半径方向内方へ曲げられている。φは45°より小さいが45°以上でもよい。
【0072】
押し舌片21も同様に半径方向外方へかぎ状に母体8から戻るように折り曲げられ、この場合押し舌片21が母体8の上にほぼ平行に延びるように、曲げられている。
【0073】
ばね鋼の板から成る拘束環7は、取付け手段又は取付け工具を使用して取付け装置1を取付ける際、まず軸受レース2上にはめられ、軸線方向に押されるか、又はその代わりに軸受環2とハウジング5との間の環状間隙17へ導入される。
【0074】
取付け工具には、今まで普通の取付け工具とは異なり、0.2mmの深さを持つ付加的な溝が加工されており、ハウジング5への軸受3の圧入の際、これらの溝へ押し舌片21の軸線方向端部26がはめられ、それにより圧入の際押し舌片21の外方はね返りが防止される。
【0075】
軸線方向送り又は押込みの際、ばね素子11が穴4の稜8へ当たり、半径方向内方へ撓む。ばね素子11は、半径方向に母体8に当接するまで、最大に撓むことができる。従って内径Dは、ばね素子11の最大板厚Sの2倍と軸受レース2の外径D上にはまる母体8の外径Dとの和より大きい。即ち
D1>(2S+D
【0076】
ばね素子11に結合される押し舌片21により、ばね素子11は、ハウジング5への圧入(軸線方向操作27)の際、軸線方向に予荷重をかけられ、更に送り又は押込みの際、そのために設けられるハウジング5の環状溝13に係合する。
【0077】
そのため環状溝13は、環状面14及び15の形の互いに向き合う2つの側面を持っている。環状面14は軸線方向ストッパ6の方へ向き、かつ回転対称軸線2aに対して傾斜している。環状面14と母体8は、その間に角σをなしている。σは90°より小さいが、90°以上でもよい。
【0078】
環状面14には、ばね素子11が軸線方向予荷重で当接している。環状面15は、環状面14及び回転対称軸線2aの方へ向けられている。環状面14及び15は、環状溝13の溝底16で互いに移行している。溝底16は半径Rで丸められている。環状面14と15は、90°より小さいが90°以上でもよい角βで互いに傾斜している。
【0079】
肩部9は軸受レース2へ向かって弾性的に予荷重をかけられ、少なくとも初期状態で鋭角αが少なくとも90°又は90°より大きくなるまで、弾性的に軸線方向へ撓むことができる。肩部9は、軸線方向に軸線方向ストッパ6へ向かって軸受レース2に予荷重をかけている。肩部9は、ばね素子11を介して逆の軸線方向に、環状面14にほぼ遊びなしに支持されている。
【0080】
ばね素子11が環状溝13内で弾性的にハウジング5へ向かって予荷重をかけられていることが考えられる。この場合弾性予荷重は、肩部9を介して軸受レース2へ伝達され、軸受レースを軸線方向に軸線方向ストッパ6へ押付ける。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】 ばね素子11及び押し舌片21を持つ拘束環7を有する取付け装置1の実施例を示す。
【図2】 ばね素子11お呼び押し舌片21を持つ拘束環7の実施例を示す。
【図3】 ばね素子11及び押し舌片21を持つ拘束環7の部分(セグメント)の実施例を示す。
【図4】 ばね素子11及び押し舌片21を持つ拘束環7の部分(セグメントの一部)の実施例を示す。
【図5】 ばね素子11及び押し舌片21を持つ拘束環7を有する取付け装置1の実施例を示す。
【図6】 ばね素子11及び押し舌片21を持つ拘束環7の部分(セグメントの一部)の実施例を示す。
【符号の説明】
【0082】
1 取付け装置
2 軸受レース
2a 回転対称軸線
3 車輪軸受
4 穴
5 ハウジング
6 軸線方向ストッパ
7 拘束環
8 母体
9 肩部
10 区域/カラー
11 ばね素子
12 スリット
13 環状溝
14,15 環状面
16 溝底
17 環状間隙
18 稜
20 区域/カラー
21 押し舌片
22 セグメント
23 突出量
24 端面
25 撓み行程
26 軸線方向端部
27 軸線方向操作

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受レース(2)をハウジング(5)内に取付ける装置(1)であって、中空円筒状で特に半径方向外側で軸受レース上にはめることができる母体(8)を持ち、この母体(8)が、ハウジング(5)の環状溝(13)へはまる少なくとも1つのばね素子(11)、及び軸受レース(2)を軸線方向に支持する湾曲された肩部(9)を持っているものにおいて、
少なくとも1つのばね素子(11)が、かぎ状に母体(8)から半径方向外方へかつ少なくとも部分的に軸線方向に戻るように湾曲されて構成され、
取付け装置(1)に少なくとも1つの押し素子が形成され、この押し素子が少なくとも1つのばね素子(11)と作用結合して、少なくとも1つの押し素子の操作により、少なくとも1つのばね素子(11)が特に軸線方向に予荷重をかけられかつ/又は締付け可能である
ことを特徴とする、取付け装置。
【請求項2】
少なくとも1つの押し素子が、かぎ状に母体(8)から半径方向外方へかつ少なくとも部分的に軸線方向に戻るように湾曲されて構成され、少なくとも1つの押し素子の操作の際、この押し素子が、軸線方向に戻るように湾曲される範囲の端部範囲特に端面において軸線方向に負荷可能であることを特徴とする、請求項1に記載の取付け装置。
【請求項3】
少なくとも1つの押し素子と少なくとも1つのばね素子が互いに作用結合されて、少なくとも1つの押し素子の軸線方向に戻るように湾曲される範囲の端部範囲が軸線方向に負荷される際、少なくとも1つのばね素子(11)が、環状溝(13)内でハウジング(5)へ向かって弾性的に予荷重をかけられかつ/又は締付け可能であることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の取付け装置。
【請求項4】
少なくとも1つの押し素子と少なくとも1つのばね素子が互いに作用結合されて、少なくとも1つの押し素子の軸線方向に戻るように湾曲される範囲の端部範囲が軸線方向に負荷される際、少なくとも1つのばね素子の少なくとも部分的に軸線方向に戻るように湾曲される範囲が、母体から半径方向に拡開可能であることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の取付け装置。
【請求項5】
少なくとも1つのばね素子(11)が、特に母体に一体に形成される少なくとも1つのばねカラー(10)から形成され、このばねカラー(10)が第1の曲げ半径を形成しながら折り返されて、ばねカラー(10)が少なくとも部分的に母体(8)から軸線方向に突出し、かつ/又は少なくとも1つの押し素子が特に母体に一体に形成される押しカラー(20)から形成され、押しカラー(20)が第2の曲げ半径を形成しながら折り返されて、押しカラー(20)が少なくとも部分的に特に全体で母体(8)から軸線方向に突出するようにしていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の取付け装置。
【請求項6】
少なくとも1つの押し素子の押しカラーが、軸線方向に所定の突出量だけ母体(8)からかつ/又は所定の突出量だけ取付け装置の軸線方向端面から突出していることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の取付け装置。
【請求項7】
少なくとも1つのばね素子のばねカラーと少なくとも1つの押し素子の押しカラーが、少なくとも部分的に折り返し範囲で、特に第1の曲げ半径及び/又は第2の曲げ半径より上まで、互いに一体に結合されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の取付け装置。
【請求項8】
突出量が、取付け装置とハウジングの環状溝との間の間隙又は間隙の大きさに関係して設定され、特に突出量が間隙より大きく設定されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の取付け装置。
【請求項9】
少なくとも1つのばね素子のばねカラー(10)が少なくとも1つの押し素子の押しカラー(20)より半径方向に大きく突出していることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の取付け装置。
【請求項10】
少なくとも1つのばね素子のばねカラーと少なくとも1つの押し素子の押しカラーが、少なくとも一部、特にばねカラー及び押しカラーがそれぞれ軸線方向に母体から突出する部分において、軸線方向スリットにより、取付け装置の周方向に互いに分離されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の取付け装置。
【請求項11】
押しカラーが軸線方向にV字状に形成され、かつ/又は取付け装置(1)が板から成り、特に板から成る拘束/クリップ環(7)であることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の取付け装置。
【請求項12】
少なくとも1つの肩部(9)が、軸線方向に軸受レース(2)に当接し、拘束環(7)が、中空円筒状母体(8)に一体に形成される肩部(9)から離れるように、中空円筒状母体に軸線方向に続き、中空円筒状母体(8)が、拘束環(7)の一体に形成されて溝状に曲げられる少なくとも1つの区域へ移行し、拘束環(7)が、この区域で半径方向外方へハウジング(5)の環状溝(13)の方へ曲げられ、拘束環(7)が、少なくともこの区域から、一体に形成される少なくとも1つのばね素子(11)及び一体に形成される少なくとも1つの押し素子へ続き、特に少なくとも1つの特に弾性的なばね素子(11)が、軸受レース(2)から離れるように少なくとも1つの押し素子より大きく外方へ拡開され、かつ/又は少なくとも1つのばね素子(11)が軸受レース(2)から離れるように外方へ環状溝(13)の中へ拡開されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の取付け装置。
【請求項13】
区域が、周方向に互いに隣接し特に軸線方向スリットにより分離される複数のばね素子に続き、特にばね素子がそれぞれ2つの隣接する押し素子を持ち、かつ/又はばね及び/又は押し素子の数が取付け装置(1)の(内)径に関係して選ばれていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の取付け装置。
【請求項14】
拘束環が、丸められる移行部の範囲に、他の範囲におけるより小さい材料厚さを持っていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の取付け装置。
【請求項15】
少なくとも1つのばね素子(11)が、環状溝(13)内でハウジング(5)へ向かって弾性的に予荷重をかけられていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の取付け装置。
【請求項16】
肩部(9)が円板状に形成され、肩部(9)が取付け装置(1)内で軸受レース(2)へ向かって軸線方向に弾性的に予荷重をかけられていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の取付け装置。
【請求項17】
軸受レース(2)が、ハウジング(5)に対して固定した軸線方向ストッパ(6)に軸線方向に当接し、肩部(9)が軸受レース(2)に軸線方向に当接し、軸受レース(2)が、環状溝(13)内に支持される少なくとも1つのばね素子(11)により、肩部(9)を介して軸線方向ストッパ(6)へ向かって軸線方向に弾性的に予荷重をかけられていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の取付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−505031(P2009−505031A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529460(P2008−529460)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【国際出願番号】PCT/DE2006/001347
【国際公開番号】WO2007/022748
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(506420843)シエフレル・コマンデイトゲゼルシヤフト (80)
【Fターム(参考)】