説明

ハウス用保護ネットと保護ベルトの同時締め付け構造と使用方法

【課題】ハウス保護ネットと多数本の保護ベルトを同時に迅速かつ簡単にしかも均一な張力で、強固な締め付けができ、締め付け・締め戻しが簡単にできる締め付け構造と使用方法を実現する。
【解決手段】ハウスの両側面下部に水平に支持したテンションパイプにハウス保護ネットの両下端と各保護ベルトの両端を予め取付けておいて、それぞれの少なくとも一端側を一斉にテンションパイプに巻き取ることでテンションを加える。その際に、公知の巻取り機と同じ原理の手動駆動手段を利用して、前記テンションパイプを回転させる構造であるため、ハウス用保護ネットと各保護ベルトの両方を一緒に、しかも簡単・迅速に締め付けて均一かつ一定のテンションを維持することが可能となり、ビニールシートや防虫ネットなどの被覆資材の全面を安定よく確実かつ均一にハウスの主骨材に押さえつけることができ、強風であおられたり破れたりするのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ビニールハウス等に被せて被覆資材全体を保護する保護ネットと複数の保護ベルトを同時に迅速かつ簡単に、しかも均一な張力で強固に締め付け・締め戻しが可能なハウス用保護ネットと保護ベルトの同時締め付け構造と使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
南西諸島は冬春期の温暖な気候を利用した野菜、花卉等のハウス栽培が盛んであるが、日本経済の長期にわたる景気低迷、輸入農産物の増大等による農産物の価格低迷が続いている。冬春期を中心に本土出荷している南西諸島では、出荷を平準化すべく、労力の効率的な分配、施設の稼動率向上、生産コストの低減を実現し、夏秋期にも如何に出荷できるかが大きな課題となっている。
【0003】
夏秋期でも出荷できる体勢づくりには、作物の選定、栽培技術、コストダウン、生産技術の確立、施設の耐風性などが大きな課題である。その内、低コスト耐風性施設については、発明者らが開発研究を行って一応の完成を見ており、特願2004−108359号として提案している。その結果、実際の台風にて暴風対耐性も実証され、現在普及段階に至っている。
【特許文献1】特願2004−108359
【特許文献2】実開平5−51
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、台風等の強風対策に際し、保護ネット及び各保護ベルトをハウス両側面の下端に強く引っ張って、銅管パイプに結束するのが通常だが、殆んどが手作業で時間を要し、大規模生産者にとって台風接近時の台風対策はハードな作業となっている。又、保護ネット及び保護ベルトは人力で強く引っ張るため、体力を要し、高齢化の進む生産者にとっては、負担が大きい。しかも、手作業のため、均一な張力が得られにくいなどが課題となっている。加えて、台風通過後に、通常状態に戻すために、保護ネット及び保護ベルトをゆるめたり、外したりする作業も手作業になるので、台風接近時と同様に時間と労力を要する。
【0005】
これに対し、実開平5−51号に記載のように、被覆シートの押さえバンドのみを一斉に巻き取ったり、巻き戻したりする構造が提案されているが、防虫ネットとは別のハウス保護ネットの思想は存在せず、ハウス保護ネットは一緒に巻き取れないため、強風対策としては不十分である。本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、ハウス保護ネットと多数本の保護ベルトを同時に迅速かつ簡単にしかも均一な張力で、強固な締め付けができ、締め付け・締め戻しが簡単にできる締め付け構造と使用方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、ハウスの両側面下部に水平に設けたテンションパイプにハウス保護ネットの両側面下端を取付け、その上に複数本の保護ベルトの両端を取付けてあり、公知の巻取り機と同じ原理のパイプ回転手段で少なくとも片方の前記テンションパイプを回転させる構造とし、
強風の発生前に、前記のテンションパイプを回転させて、前記のハウス保護ネットと各保護ベルトを一斉に巻き取って均一にテンションを加え、強風が治まったらテンションパイプを逆回転させて、前記ハウス保護ネットと各保護ベルトを一斉に緩めて、テンションの無い状態に戻すことを特徴とするハウス保護ネットと保護ベルトの使用方法である。
【0007】
このように、予めテンションパイプにハウス保護ネットの両側面下端を取付け、その上に複数本の保護ベルトの両端を取付けてパイプ回転手段で前記テンションパイプを回転可能な状態にしておき、強風の発生前に、前記のテンションパイプを回転させて、ハウス保護ネットと各保護ベルトを一斉に巻き取って均一にテンションを加えて被覆資材の全面を確実かつ均一にハウス主骨材上に押さえつけておき、強風が治まったら、テンションパイプを逆回転させてハウス保護ネットと各保護ベルトを一斉に緩めて、テンションの無い状態に戻し、下側の被覆資材を巻き上げたり自由に操作可能な方法を採っているため、容易にかつ迅速に台風対策ができ、夏秋期でも農作物を安定的に収穫可能とすることで出荷の平準化を実現できる。
【0008】
請求項2は、ハウスの両側面下部に水平に設けたテンションパイプにハウス保護ネットの両側面下端と複数本の保護ベルトの両端を予め取付けてあり、公知の巻取り機と同じ原理の手動駆動手段で少なくとも片方の前記テンションパイプを回転させる構造とし、ハウス保護ネットと複数の保護ベルトを一斉にかつ簡単・迅速な締め付けを可能としたことを特徴とするハウス保護ネットと保護ベルトの同時締め付け構造である。このように、ハウスの両側面下部に水平に支持したテンションパイプにハウス保護ネットの両下端と各保護ベルトの両端を予め取付けてあって、それぞれの少なくとも一端側を一斉にテンションパイプに巻き取ることでテンションを加える。その際に、公知の巻取り機と同じ原理の手動駆動手段を利用して、前記テンションパイプを回転させる構造であるため、ハウス用保護ネットと各保護ベルトの両方を一緒に、しかも簡単・迅速に締め付けて均一かつ一定のテンションを維持することが可能となり、ビニールシートや防虫ネットなどの被覆資材の全面を安定よく確実かつ均一にハウスの主骨材に押さえつけることができ、強風であおられたり破れたりするのを防止できる。
【0009】
請求項3は、前記の手動駆動手段は、公知の巻取り機におけるハンドルの取付け部を多角柱状に変更して、公知のラチェットレンチを取付けて操作可能としてあることを特徴とする請求項2に記載のハウス用保護ネットと保護ベルトの同時締め付け構造である。当初から、ハンドルの取付け部を有しないで、ラチェットレンチ用の多角柱状となった巻取り機を用いてもよいことは言うまでもない。このように、前記の手動駆動手段は、公知の巻取り機に付属しているハンドルの取付け部を多角柱状に変更して、公知のラチェットレンチを取付けてレバー操作可能としてあるため、テンションパイプが地面付近の低位置にあるにも係わらず、邪魔になる地面を避けて、地面より上側だけでラチェットレンチを往復操作してテンションパイプを一方向に回転操作できる。しかも、ラチェットレンチの操作は、公知の巻取り機のハンドル操作のような回転式ではなく、操作レバーの前後往復操作で足りるため、操作がしやすく、労力を軽減できるので、後継者不足の高齢者農業に適している。
【0010】
請求項4は、前記の少なくとも片方のテンションパイプに前記ハウス保護ネットの端部の取付け手段を設けてあることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のハウス保護ネットと保護ベルトの同時締め付け構造である。前記取付け手段は、テンションパイプに予め設けてあってもよいし、ハウス保護ネットの端部を取付ける際に、取付け位置に応じて、その都度設けてもよい。このように、前記テンションパイプにハウス保護ネットの端部を取付ける手段を設けてあるため、ハウス保護ネットの一端の全長を容易にテンションパイプに取付け固定可能となる。その結果、ハウス保護ネットの全体に均一な張力をかけた状態に維持できる。なお、取付け手段は、フック手段を用いた引っ掛け式でもよいし、ネジ手段などによる固定式でもよいし、特に限定はしない。
【0011】
請求項5は、前記の各保護ベルトの少なくとも一端を前記テンションパイプに取付け固定する構造において、前記テンションパイプに近く操作し易い位置で、前記の各保護ベルトに専用の長さ調節手段を介在させてあることを特徴とする請求項2、請求項3または請求項4に記載のハウス保護ネットと保護ベルトの同時締め付け構造である。このように、前記各保護ベルトの一端を前記テンションパイプに取付け固定する構造において、テンションパイプに近く、かつ操作し易い位置で、各保護ベルトに専用の長さ調節手段を介在させてあるため、各保護ベルトごとに弛まない最適の長さに調節てきる。その結果、各保護ベルトの弛みを無くして、すべて均一な張力となるように設定でき、被覆資材および保護ネットの全体を均一にかつ安定よく、パイプや鉄骨などの主骨材上に押さえつけることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1のように、予めテンションパイプにハウス保護ネットの両側面下端を取付け、その上に複数本の保護ベルトの両端を取付けてパイプ回転手段で前記テンションパイプを回転可能な状態にしておき、強風の発生前に、前記のテンションパイプを回転させて、ハウス保護ネットと各保護ベルトを一斉に巻き取って均一にテンションを加えて被覆資材の全面を確実かつ均一にハウス主骨材上に押さえつけておき、強風が治まったら、テンションパイプを逆回転させてハウス保護ネットと各保護ベルトを一斉に緩めて、テンションの無い状態に戻し、下側の被覆資材を巻き上げたり自由に操作可能な方法を採っているため、容易にかつ迅速に台風対策ができ、夏秋期でも農作物を安定的に収穫可能とすることで出荷の平準化を実現できる。
【0013】
請求項2のように、ハウスの両側面下部に水平に支持したテンションパイプにハウス保護ネットの両下端と各保護ベルトの両端を予め取付けてあって、それぞれの少なくとも一端側を一斉にテンションパイプに巻き取ることでテンションを加える。その際に、公知の巻取り機と同じ原理の手動駆動手段を利用して、前記テンションパイプを回転させる構造であるため、ハウス用保護ネットと各保護ベルトの両方を一緒に、しかも簡単・迅速に締め付けて均一かつ一定のテンションを維持することが可能となり、ビニールシートや防虫ネットなどの被覆資材の全面を安定よく確実かつ均一にハウスの主骨材に押さえつけることができ、強風であおられたり破れたりするのを防止できる。
【0014】
請求項3のように、前記の手動駆動手段は、公知の巻取り機に付属しているハンドルの取付け部を多角柱状に変更して、公知のラチェットレンチを取付けてレバー操作可能としてあるため、テンションパイプが地面付近の低位置にあるにも係わらず、邪魔になる地面を避けて、地面より上側だけでラチェットレンチを往復操作してテンションパイプを一方向に回転操作できる。しかも、ラチェットレンチの操作は、公知の巻取り機のハンドル操作のような回転式ではなく、操作レバーの前後往復操作で足りるため、操作がしやすく、労力を軽減できるので、後継者不足の高齢者農業に適している。
【0015】
請求項4のように、前記テンションパイプにハウス保護ネットの端部を取付ける手段を設けてあるため、ハウス保護ネットの一端の全長を容易にテンションパイプに取付け固定可能となる。その結果、ハウス保護ネットの全体に均一な張力をかけた状態に維持できる。
【0016】
請求項5のように、前記各保護ベルトの一端を前記テンションパイプに取付け固定する構造において、テンションパイプに近く、かつ操作し易い位置で、各保護ベルトに専用の長さ調節手段を介在させてあるため、各保護ベルトごとに弛まない最適の長さに調節てきる。その結果、各保護ベルトの弛みを無くして、すべて均一な張力となるように設定でき、被覆資材および保護ネットの全体を均一にかつ安定よく、パイプや鉄骨などの主骨材上に押さえつけることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明によるハウス保護ネットと保護ベルトの同時締め付け構造と使用方法が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。図1は、本発明によるハウス用保護ネットと保護ベルトの同時締め付け構造を実施したパイプハウスを示す斜視図である。図示のパイプハウスは、最も典型的なかまぼこ型構造であり、その両側面と肩部と屋根部にかけて、パイプ製の主骨材の上にビニールシートや防虫ネットなどの被覆資材を被せてあり、その上に本発明のハウス保護ネット1を被せ、その上に一定間隔に複数本の保護ベルト2…を掛けて、締めつけ可能にしてある。
【0018】
ハウスの両側面下部の地面寄りに鋼管などからなるテンションパイプ3を水平に設けて支持してある。そして、図の背面側下端のテンションパイプは、前記のハウス保護ネット1の一端の網目の中に交互に挿通した状態で主骨材や地中に固定してあり、さらに各保護ベルト2…の一端を巻き付けたり縛りつけるなどの手法で取付け固定してある。
【0019】
これに対し、図に現れているハウス手前側の側面下部のテンションパイプ3は、メガネボルトなどの軸受け孔中に回転可能に挿入支持されており、このテンションパイプ3にハウス保護ネット1の他端側の全長を取付け固定し、しかも各保護ベルト2…の他端を取付け固定してある。そして、テンションパイプ3の妻面側の端部にパイプ回転機4を装備し、テンションパイプ3を回転して前記のハウス保護ネット1と各保護ベルト2…をハウス全長にわたって一斉に巻き取ることで、ハウス保護ネット1と各保護ベルト2…を同時にしかも均一に巻き取って全体的に締めつけることができる。
【0020】
ハウス両側面には、換気窓開閉用のテンションパイプ5を設け、その一端に通常のサイド巻き上げ機6を取付けてある。また、屋根部には屋根開閉用のテンションパイプ7を設け、その一端に、従来の天窓巻き取り機8と遠隔回転ハンドルhを連結してある。したがって、巻き上げ機6や遠隔回転ハンドルhでテンションパイプ5、7を回転させてビニールシートを巻き取りながら上昇させることで、換気窓を開放できる。この操作は、前記のハウス保護ネット1や各保護ベルト2…を緩めた状態で行うことは言うまでもない。なお、9は妻面側の主骨材であり、10は出入口である。
【0021】
図2は、前記のパイプ回転機4や巻き上げ機6、天窓巻き取り機8、遠隔回転ハンドルhの詳細を示す拡大図であり、巻き上げ機6は、妻面側に立っているガイド支柱11に支持された状態で上下動する。この巻き上げ機6は、テンションパイプ5に連結された駆動軸にクランク状ハンドルHを取付けて、手動で回転させる構造で、駆動力を低減すべく回転比を設定したギアを介在させた構造も市販されている。これに対し、本発明によるパイプ回転機4も、ガイド支柱11と同様な支柱12に支持されているが、パイプ回転機4を連結したテンションパイプ3は、前記のようにメガネボルト13などの軸受け孔中に回転可能に挿入支持されていて、上下動は不可能なため、パイプ回転機4も上下動はできない。
【0022】
テンションパイプ3を回転させるパイプ回転機4として、前記のような換気窓開閉用の巻き取り機6をそのまま利用することもできるが、前記テンションパイプ3は、通常地面と殆ど接する程度に地面に近接しているため、地面が邪魔になるクランク状ハンドルHを回転させるには、ハンドルHの回転領域の地面を掘り下げるなどの処理が必要である。しかし、それでもハンドルHの回転操作に不自然な姿勢を要し、高齢者には適しない。
【0023】
そこで本発明では、クランク状ハンドルHよりも操作性の良いパイプ回転機として、図3に斜視図で示すような構造を採用している。この装置は、クランク状ハンドルHで回転させる市販の換気窓巻き取り機6を改良したもので、クランク状ハンドルHは使用しない。そして、クランク状ハンドルHの取付け部を多角柱状体14に変更して、公知のラチェットレンチ15すなわち、予め設定した一方向のみに駆動可能なラチェット式のレンチを取付けて操作可能にしてある。前記の多角柱状体14は、市販の6角ナットを取付け固定することによって容易に実現できる。
【0024】
テンションパイプ3の回転操作に際しては、図4のように、前記の多角柱状体14に市販のラチェットレンチ15を嵌め込んで、その操作レバー15Lを矢印方向に前後操作することによって、6角柱状体14と連結されているテンションパイプ3を回転できる。しかも、クランク状ハンドルHと違って、何周も回転させる必要はなく、操作レバー15Lが地面に接しないように、地面上で80〜120度程度の範囲で矢印方向に前後操作するだけで足りるので、地面が邪魔になって操作不能になるといった問題はない。したがって、テンションパイプ3による保護ネット1や保護ベルト2…の締め付け作業や緩め作業を迅速に行える。
【0025】
なお、従来のクランク状ハンドルHも多角柱状体14に取付けて使用可能にしておけば、本発明のパイプ回転機4とクランク状ハンドルつきのサイド巻き上げ機6とを同じ装置で共用できる。
【0026】
図5は保護ネット1のテンションパイプ3への取付け手段の一例を示す斜視図であり、保護ネット1の端部をテンションパイプ3に取付け固定した状態で、保護ネット1を巻き締めする。したがって、いろいろな手段が考えられるが、図示例では、専用の取付け手段fをネジ16でテンションパイプ3にねじ止め固定してある。すなわち、引っ張りに強い材料をU字状に折り曲げて保護ネット1の端部を引っ掛けた状態でU字状の両腕部を重ねてテンションパイプ3にネジ16で取付け固定してある。
【0027】
この状態で、パイプ回転機4でテンションパイプ3を数回転させると、図示のように保護ネット1が数回巻き取られた状態となる。保護ネット1の取付け部が長過ぎる場合も、その余長部をテンションパイプ3に先に巻き付けてから、図示のように取付け手段fでテンションパイプ3にネジ止めしてもよい。このように、先に保護ネット1の取付け位置を決めてから、テンションパイプ3に取付け固定してもよい。なお、その他に、テンションパイプ3にフックなどをネジ止めして、保護ネット1を引っ掛けて固定することも可能である。
【0028】
なお、図5では、ハウスの主骨材にメガネボルト13を固定して、その軸受け孔中に、テンションパイプ3を挿通して回転可能に支持してあるが、メガネボルト13を螺旋杭状に変更して地中にねじ込み、アンカーボルト状に固定することも可能である。
【0029】
図6は、テンションパイプ3に保護ベルト2を取付け固定する手段を示す斜視図である。図示例では、テンションパイプ3に保護ベルト2の端部を1〜2回巻いた状態でその上から市販のパッカーと呼ばれる押さえ半円筒17を被せて押さえつけた状態で、ビス18でテンションパイプ3に固定してある。この状態でテンションパイプ3を回転して巻き取ると図示の状態となる。あるいは、マジックテープ(登録商標)等の面接着手段の片側のフック側をテンションパイプ3外面に1周分巻き付けて両面接着テープなどで固定しておき、その上に保護ベルト2を巻き付けて固定することもできる。保護ベルト2は布製で無数にリング状部を有しているため、面接着手段のフック側と強力に接着結合される。なお、強力な接着剤を用いて保護ベルト2をテンションパイプ3の外周に巻き付け状態に接着することもできる。いずれにしても、保護ベルト2が空回りしないようにテンションパイプ3に取付け固定できれば足りる。
【0030】
各保護ベルト2…の端部はテンションパイプ3に直接取付け固定することも可能ではあるが、図6のように、調節具19を介在させるのが望ましい。図1のように、保護ベルト2…は所定の間隔で多数使用されるが、それぞれの保護ベルト2…の張力がハウス全体に渡って均一である必要がある。そこで、均一にテンションを発生させるために調節具19を使用し、作業し易い適切な高さ(例えば、腰の高さ程度)において、保護ベルト2の端部とテンションパイプ3への取付けベルト21の端部とを取付けて互いに連結してある。したがって、各保護ベルト2ごとに、その長さを調節して、張力調節を素早く行える。すなわち、保護ベルト2が長過ぎて弛んでいる場合は、調節具19を締めて保護ベルト全長を短めに調節することで、すべての保護ベルト2…のテンションが一定となるように予め最適長さに設定しておく。
【0031】
このようにしてハウス保護ネット1と多数の保護ベルト2…を一斉に巻き取って均一なテンションをつける場合、両端の妻側保護ベルト2は、保護ネット1の妻面側の網目中に交互に挿入して、保護ネットと分離不能にすると、一緒に扱い易くなるし、網目の変形も防ぎやすい。すなわち、網目が正方形の保護ネット1をテンションパイプ3で巻き取って引っ張ると、引っ張り方向に網目が伸びて菱形に変形する恐れがあるが、前記のように両端の保護ベルトを妻側端部の網目に挿入した状態で、両端の保護ベルト2だけを調節具19で特に強力に締めておくと、網目の伸びを抑制できる。また、両端の妻側の保護ベルト2だけを予め妻側の主骨材に引っ掛けたり、連結しておくこともできる。
【0032】
テンションパイプ3を回転させるためのパイプ回転機4は、図示例では片方の妻側だけに設けてあるが、ハウスの全長が30〜40mを越える大型ハウスになると、他方の妻側にも支持支柱12を立ててパイプ回転機4を設け、両側から回転させると、安定よく巻き取ったり巻き戻したりできる。パイプ回転機4は、保護ネットや保護ベルトに軽い駆動力で強力なテンションを加えられるように、減速ギア付きが好ましい。なお、図示装置で使用した保護ネットの線径は例えば3mm程度の樹脂製であり、保護ベルトは幅50mm、厚さ2mm程度の布製である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように本発明による保護ネット及び保護ベルトの同時締め付け構造を使えば、保護ネット全面と各保護ベルトに均一な張力がかかるので、ビニールや防虫ネットなどの被覆材をハウスの主骨材上に均一に押さえ付ける事が可能となり、被覆資材のバタツキや破損を防止することができる。しかも構造が簡素で操作性も良いので、従来は台風時や強風時の風対策に極めて多くの労力と時間を要していたのに対し、短時間で効率よく風対策が行えるようになるので、沖縄などの南西諸島における夏秋期の農作物の安定的出荷が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明によるハウス保護ネットと保護ベルトの同時締め付け構造を実施したパイプハウスの全容を示す斜視図である。
【図2】図1のパイプ回転機やビニールシートの巻き上げ機、天窓巻き取り機、遠隔回転ハンドルの詳細を示す拡大図である。
【図3】ラチェットレンチ式のパイプ回転機を示す斜視図である。
【図4】図3のパイプ回転機の使用状態を示す斜視図である。
【図5】保護ネットのテンションパイプへの取付け手段を例示する斜視図である。
【図6】テンションパイプに保護ベルトを取付け固定する手段とテンション調節手段を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 ハウス保護ネット
2 保護ベルト
3 テンションパイプ
4 パイプ回転機
5 換気窓開閉用のテンションパイプ
6 サイド巻き上げ機
7 屋根開閉用のテンションパイプ
8 従来の天窓巻き取り機
9 妻面側の主骨材
11 ガイド支柱
12 支持支柱
13 メガネボルト
H クランク状のハンドル
14 多角柱状体
15 ラチェットレンチ
15L 操作レバー
f 取付け手段
17 押さえ半円筒
19 テンション調節具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウスの両側面下部に水平に設けたテンションパイプにハウス保護ネットの両側面下端を取付け、その上に複数本の保護ベルトの両端を取付けてあり、公知の巻取り機と同じ原理のパイプ回転手段で少なくとも片方の前記テンションパイプを回転させる構造とし、
強風の発生前に、前記のテンションパイプを回転させて、前記のハウス保護ネットと各保護ベルトを一斉に巻き取って均一にテンションを加え、強風が治まったらテンションパイプを逆回転させて、前記ハウス保護ネットと各保護ベルトを一斉に緩めて、テンションの無い状態に戻すことを特徴とするハウス保護ネットと保護ベルトの使用方法。
【請求項2】
ハウスの両側面下部に水平に設けたテンションパイプにハウス保護ネットの両側面下端と複数本の保護ベルトの両端を予め取付けてあり、公知の巻取り機と同じ原理の手動駆動手段で少なくとも片方の前記テンションパイプを回転させる構造とし、ハウス保護ネットと複数の保護ベルトを一斉にかつ簡単・迅速な締め付けを可能としたことを特徴とするハウス保護ネットと保護ベルトの同時締め付け構造。
【請求項3】
前記の手動駆動手段は、公知の巻取り機におけるハンドルの取付け部を多角柱状に変更した構造にすることで、公知のラチェットレンチを取付けて操作可能としてあることを特徴とする請求項2に記載のハウス保護ネットと保護ベルトの同時締め付け構造。
【請求項4】
前記の少なくとも片方のテンションパイプに前記ハウス保護ネットの端部の取付け手段を設けてあることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のハウス保護ネットと保護ベルトの同時締め付け構造。
【請求項5】
前記の各保護ベルトの少なくとも一端を前記テンションパイプに取付け固定する構造において、前記テンションパイプに近く操作し易い位置で、前記の各保護ベルトに専用の長さ調節手段を介在させてあることを特徴とする請求項2、請求項3または請求項4に記載のハウス保護ネットと保護ベルトの同時締め付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−68448(P2007−68448A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257711(P2005−257711)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(595102178)沖縄県 (36)
【出願人】(504131183)第一農薬株式会社 (1)
【出願人】(504130887)拓南伸線株式会社 (3)
【Fターム(参考)】