説明

ハチ類誘引捕獲器

【課題】ハチ類誘引捕獲器の中に誘引捕獲液の誘引作用によって入り込んだハチ類が再び捕獲口より外に飛び出すのを極力なくして、ハチ類誘引捕獲器におけるハチ類の捕獲率を高める。
【解決手段】内部に誘引捕獲液を入れた上部が開放する容器と、この容器の上部に取り付きハチ類が入り込むための捕獲口を形成した蓋と、からなるハチ類誘引捕獲器において、前記容器と前記蓋とにあっては、蓋の材料における可視光透過率を0%〜30%の範囲内にすると共に、容器の材料における可視光透過率を50%〜99%の範囲内にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スズメバチ類やアシナガバチ類等のハチ類等を誘引して捕獲するためのハチ類誘引捕獲器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハチ類誘引捕獲器としてはいろいろなものが知られていた。
この中で、一般的なハチ類誘引捕獲器は、本出願人が先に出願した特開2004−73144に示すように、上部が開放する容器を備えて、この容器の中に誘引捕獲液を入れると共に、容器の上部に蓋を取り付けて、この蓋にハチ類が入り込むための捕獲口を形成し、さらに、蓋の上方にカバーを備えた構成にしていた。
【0003】
そして、このような構成となるハチ類誘引捕獲器は、容器の内部に入れた誘引捕獲液の誘引作用によってハチ類が誘引され、蓋に形成した捕獲口よりハチ類が中に入り込んで捕獲されるようになっていた。
【0004】
また、このハチ類誘引捕獲器にあっては、容器の中に入れた誘引捕獲液による誘引作用だけでなく、ハチ類の誘引効果を高めるために、容器及び蓋に例えば赤や黒等の特定の色を付けて、この色によってハチ類を誘引するといったことも行っていた。
【0005】
【特許文献1】特開2004−73144公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来のハチ類誘引捕獲器にあっては、容器の中に入れた誘引捕獲液の誘引作用と、容器及び蓋に付けた特定の色の誘引作用によって、ハチ類を誘引するようにしていたが、色による誘引作用は、誘引捕獲液による誘引作用に比べてそれほど大きな効果がなく、しかも、季節や天候あるいは使用する場所等の環境条件によって、また捕獲するハチ類の種類や性別によって大きく変わってゆくものであり、普遍的なものではなかった。このため、実際のハチ類の誘引については、ほとんど容器の中に入れた誘引捕獲液の誘引作用によって効果を発揮しているというのが実情であった。
【0007】
そして、このハチ類誘引捕獲器において、誘引捕獲液の誘引作用によって入り込んだハチ類は、誘引捕獲液を摂取した後、巣に戻ろうとして中で飛び回り、最終的には蓋に形成した捕獲口を見つけて、ここより外に飛び出してゆくため、当該ハチ類誘引捕獲器におけるハチ類の捕獲率が低いといった問題があった。
【0008】
本発明は、前記問題を鑑み、ハチ類誘引捕獲器の中に誘引捕獲液の誘引作用によって入り込んだハチ類が再び捕獲口より外に飛び出すのを極力なくして、ハチ類誘引捕獲器におけるハチ類の捕獲率を高めることを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究、実験を行った結果、ハチ類誘引捕獲器における可視光透過率に着目し、このハチ類誘引捕獲器における可視光透過率を工夫し調節することによって、ハチ類誘引捕獲器の中に入り込んだハチ類が捕獲口より外に飛び出すのを極力なくし、これにより捕獲率を高めることができるということを見出した。
【0010】
第一の発明は、内部に誘引捕獲液を入れた上部が開放する容器と、この容器の上部に取り付きハチ類が入り込むための捕獲口を形成した蓋と、からなるハチ類誘引捕獲器において、前記容器と前記蓋とにあっては、蓋の材料における可視光透過率を、容器の材料における可視光透過率より低くしたハチ類誘引捕獲器である。
【0011】
第二の発明は、第一の発明において、前記蓋の材料における可視光透過率を0%〜30%の範囲内にすると共に、前記容器の材料における可視光透過率を50%〜99%の範囲内にしたハチ類誘引捕獲器である。
【0012】
第三の発明は、第一の発明乃至第二の発明において、前記蓋における外表面積を、当該蓋における外表面積と前記容器における外表面積とを合計した総外表面積の半分以下にしたハチ類誘引捕獲器である。
【0013】
第四の発明は、第一の発明乃至第三の発明において、前記蓋に形成する捕獲口の直径を14mm〜20mmにしたハチ類誘引捕獲器である。
【0014】
第五の発明は、第一の発明乃至第四の発明において、前記蓋に形成する捕獲口を漏斗状にすると共に、その捕獲口の深さ寸法を5mm〜20mmにしたハチ類誘引捕獲器である。
【0015】
第六の発明は、第一の発明乃至第五の発明において、前記蓋及び前記容器にあっては、樹脂シートによる加工成型方式にて作られたハチ類誘引捕獲器である。
【0016】
第七の発明は、第一の発明乃至第六の発明において、前記蓋に形成する捕獲口に対し空間を有しつつ覆うようになる屋根を備えると共に、この屋根の材料における可視光透過率を0%〜50%の範囲内にしたハチ類誘引捕獲器である。
【0017】
第八の発明は、第七の発明において、前記屋根にあっては、樹脂シートによる加工成型方式にて作られたハチ類誘引捕獲器である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蓋の材料における可視光透過率を、容器の材料における可視光透過率より低くし、特に、蓋の材料における可視光透過率を0%〜30%の範囲内に、容器の材料における可視光透過率を50%〜99%の範囲内にしたことにより、上部の蓋側を暗くし、下部の容器側を明るくすることができ、暗い方よりも明るい方を飛ぶというハチ類の習性によって、一旦中に入り込んだハチ類が蓋側に向かわないようにし、蓋の捕獲口より外に飛び出すのをなくして、最終的な捕獲率を高めることができ、ハチ類誘引捕獲器として非常に画期的な商品にすることができる。
【0019】
本発明によれば、蓋における外表面積を、当該蓋における外表面積と容器における外表面積とを合計した総外表面積の半分以下にしたことにより、上部の蓋によって下部の容器が暗くなることをなくして、中に入り込んだハチ類が蓋の捕獲口より外に飛び出すのを極力なくすことができる。
【0020】
本発明によれば、蓋に形成する捕獲口の直径を14mm〜20mmにしたことにより、ハチ類が容器の中に入れた誘引捕獲液により誘引されて、この蓋の捕獲口より中に入り込む際、極めて容易に入り込むようになり、これにより、捕獲率を高めることができる。
【0021】
本発明によれば、蓋に形成する捕獲口を、漏斗状にすると共に、その深さ寸法を5mm〜20mmにしたことにより、この捕獲口よりハチ類が中に入り易くて、一旦中に入ったハチ類が今度は逃げ出し難くすることができ、最終的な捕獲率をさらに高めることができる。
【0022】
本発明によれば、蓋及び容器において、樹脂シートによる加工成型方式にて作られたことにより、従来の一般的な方式である射出成形やブロー成形等で作られたものと比べて、蓋及び容器の軽量化を図り、ひいては、当該ハチ類誘引捕獲器の軽量化を図ることができる。この軽量化によって、いろいろな場所に吊り下げて取り付けることができ、使用場所が限定されるのを極力減らして、汎用性の高い商品にすることができる。また、軽量化によって、当該ハチ類誘引捕獲器の流通時における利便性を高めることができると共に、消費者である使用者においても、その利便性により容易に使用することができ、しかも、廃棄あるいはリサイクルする際、極めて容易に取り扱うことができ、リサイクル性等を高めて、環境に良い商品にすることができる。
【0023】
本発明によれば、蓋に形成する捕獲口に対し空間を有しつつ覆うようになる屋根を備えたことにより、この屋根によって、当該ハチ類誘引捕獲器を野外に設置したとき、雨水等の侵入を防いで、容器の中に入れた誘引捕獲液が希釈されるのを防止することができ、長期にわたる使用が可能となり、商品として優れたものにすることができる。しかも、屋根の材料における可視光透過率を0%〜50%の範囲内にしたことにより、蓋の捕獲口からの容器の中への光の進入を遮って、蓋側の可視光を抑えて遮光性を高めて、中に入り込んだハチ類が蓋側に全く向かわないようにし、蓋の捕獲口より外に飛び出すのをなくして、最終的な捕獲率をさらに高めることができる。
【0024】
本発明によれば、屋根においても、樹脂シートによる加工成型方式にて作られたことにより、従来の一般的な方式である射出成形やブロー成形等で作られたものと比べて、屋根の軽量化を図り、ひいては、当該ハチ類誘引捕獲器のさらなる軽量化を図ることができる。この軽量化によって、いろいろな場所に吊り下げて取り付けることができ、汎用性の高い商品にすることができると共に、当該ハチ類誘引捕獲器の流通時における利便性を高め、さらに、消費者である使用者においても、その利便性により容易に使用することができ、しかも、廃棄あるいはリサイクルする際、極めて容易に取り扱うことができ、屋根においても、リサイクル性等を高めて、環境に非常に良い商品にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明によるハチ類誘引捕獲器の実施形態について、図1、図2、図3を用いて説明する。
このハチ類誘引捕獲器としては、上部が開放する容器1と、この容器1の上部に取り付きハチ類が入り込むための捕獲口2を形成した蓋3と、この蓋3の上方を覆うようになる屋根4と、から構成する。
【0026】
前記容器1は、上部が開放した略コップ状となり、その側面に等間隔に複数の窪み部6を形成する。そして、この容器1の中に誘引捕獲液7を入れるようにしている。なお、この誘引捕獲液7としては、砂糖類、でんぷん糖類、はちみつ、乳酸飲料、果汁、果汁飲料等を主原料として、ある程度の糖分を含有したものである。
【0027】
前記蓋3は、略半球状となり、水平方向において対称となる二ヶ所に捕獲口2をそれぞれ形成する。そして、その外周縁が容器1における上部外周縁に嵌合することで、容器1の上部に取り付くようにしている。
【0028】
この蓋3に形成する捕獲口2にあっては、円形状にすると共に、下方に垂下した漏斗状に形成する。そして、この捕獲口2の下端における直径Dは14mm〜20mm、より好ましくは16mm〜20mmであり、これは、直径Dが14mmより小さいとオオスズメバチ等の大型のハチの捕獲率が低下し、一方、20mmより大きいとチョウや甲虫等のハチ類以外のものが侵入するおそれがある。なお、直径Dが14mmより16mm以上のほうがハチ類の捕獲率が高い。さらに、この漏斗状の捕獲口2における深さ寸法Lは、5mm〜20mm、より好ましくは8mm〜15mmである。これは、捕獲口2における深さ寸法Lが5mm〜20mmであると、ハチ類が中に入り易くかつ中に入ったハチ類がここより飛び出し難く、すなわち逃げ出し難くすることができる。なお、この効果をより一層高めるには、捕獲口2における深さ寸法Lを8mm〜15mmにするのが良い。
【0029】
また、この捕獲口2については、前述した形状に限定されるものではなく、例えば、漏斗状ではなくストレートとなる円筒状のものでの良く、さらに、円形ではなく多角形、三角形、星型、正方形や矩形等で14mm〜20mm程度の大きさで、ハチ類が中に容易に入れる形状のものであれば良い。また、捕獲口2の数についても、前述した二ヶ所に限定されるものではないが、一ヶ所からせいぜい五,六ヶ所程度が好ましい。これ以上数を多くすると、蓋3側での遮光性が低くなり、最終的な捕獲率に悪影響を及ぼすおそれがあるためで、ただし、このような悪影響を及ぼすおそれがないのであれば、それ以上の多数でも良い。
【0030】
前記屋根4は、左右に向かって円筒状となり、下部側が容器1に嵌合すると共に、上部側において、蓋3との間に空間を形成するように、すなわち蓋に形成する捕獲口に対し空間Sを有するようにして、捕獲口2及び蓋3全体を覆うようにしている。また、上端には吊り下げ片10を備えており、この吊り下げ片10にひも等を取り付けて当該ハチ類誘引捕獲器を木等に吊り下げて使用できるようにしている。なお、この屋根4は、一枚の樹脂シートより作られたものであり、図4に示すように、長手方向の一端側に舌状の差込片11を形成し、また、他端側に横長の切り溝12を形成して、この切り溝12に差込片11を差し込むことにより、筒状にする。さらに、長手方向の略中央に容器1を挿入するための容器嵌合孔13と、容器1及び蓋3の外周縁を嵌め込むための二つの嵌合孔14とをそれぞれ形成すると共に、起立可能な吊り下げ片10を形成している。
【0031】
そして、このような構成となるハチ類誘引捕獲器において、前記容器1と前記蓋3とにあっては、蓋3の材料における可視光透過率を、容器1の材料における可視光透過率より低くする。
【0032】
この可視光透過率とは、屋外散乱光下における約400nm〜約700nmの電磁波である光が透過する割合であり、分光光度計を用いて測定することができる。なお、約550nmの電磁波で測定した値を用いると、平均的な可視光透過率にすることができ、便宜上好ましい。
【0033】
そして、この容器1の材料における可視光透過率と蓋3の材料における可視光透過率とにあっては、蓋3の材料における可視光透過率を0%〜30%の範囲内にすると共に、容器1の材料における可視光透過率を50%〜99%の範囲内にする。なお、より好ましくは、蓋3の材料における可視光透過率を0%〜20%の範囲内にすると共に、容器1の材料における可視光透過率を60%〜99%の範囲内にする。
【0034】
また、このような容器1と蓋3とにおいて、蓋3における外表面積を、当該蓋3における外表面積と前記容器1における外表面積とを合計した総外表面積の半分以下にする。例えば具体的に、蓋3における外表面積を100cm程度とし、容器1における外表面積を300cm程度として、総外表面積を400cm程度とすることにより、蓋3における外表面積を総外表面積の半分以下にする。
【0035】
一方、前記屋根4の材料における可視光透過率にあっては、0%〜50%の範囲内にして、遮光性を高めている。
【0036】
また、前記容器1の材料と前記蓋3の材料とにあっては、耐候性や経済性を考えて、樹脂製とするのが好ましいが、樹脂製以外でも良い。そして、樹脂製とした場合、従来一般的に行われる射出成形やブロー成形等で製作することもできるが、できれば樹脂シートによる加工成型方式、具体的には真空成形あるいは圧空成形で製作するのが好ましい。また、使用する樹脂シートの厚みは0.2mm〜1.2mmが好ましく、より好ましいのは、0.3mm〜0.8mmである。また、使用する材料としては、PET、PP、PE、PS、PC、PVC等の汎用性熱可塑性樹脂が挙げられる。そして、樹脂製とした場合の可視光透過率の調節は、樹脂自体の厚みを変えたり、樹脂への顔料の混入、各種無機物の混入、印刷や蒸着やラミネート等が挙げられ、極めて容易に行うことができるが、これに限定されるものではない。また、容器1にあっては、その表面及び内面を光沢処理するのが望ましく、例えば、スリガラス状、半光沢、シボ加工、フロスト処理、サンドブラスト処理等が良く、これにより内部が若干見難くなることで、捕獲したハチ類の死骸を見難くして、使用時の不快感を低減することができる。ただし、容器1の材料における可視光透過率にあっては前記の範囲内であり、これらの処理を行うことにより、多少の可視光透過率の変化が起こるので、この点を考慮する必要がある。さらに、容器1の中に入れた誘引捕獲液7の保護という目的で、紫外線吸収剤等を添加するようにしても良い。
【0037】
また、前記屋根4の材料にあっても、前述した容器1と蓋3と同様、樹脂製とするのが好ましく、樹脂製とした場合、樹脂シートによる加工成型方式、具体的には真空成形あるいは圧空成形で製作するのが良い。その他の点においても前述の容器1や蓋3と同様である。
【0038】
なお、当該ハチ類誘引捕獲器における捕獲対象としては、主に、オオスズメバチ・キイロスズメバチ・クロスズメバチ・ヒメスズメバチ・コガタスズメバチ・モンスズメバチといったスズメバチ類、フタモンアシナガバチといったアシナガバチ類等のハチ類である。ただし、これらに限定されるものではなく、その他の昆虫類、特に、昼光性すなわち視覚を頼って行動する昆虫類でも良い。
【0039】
なお、前述した実施形態において、ハチ類誘引捕獲器を、容器1と蓋3と屋根4とから構成しているが、屋根4をなくして、容器1と蓋3のみから構成するようにしても良い。さらに、容器1や蓋3や屋根4にあっては、前述した形状のものに限定されるものではなく、同様な機能を有するものなら、どのような形状のものでも良い。
【0040】
以上のように、蓋3の材料における可視光透過率を、容器1の材料における可視光透過率より低くし、特に、蓋3の材料における可視光透過率を0%〜30%の範囲内に、容器1の材料における可視光透過率を50%〜99%の範囲内にしたことで、要するに、蓋3の材料における可視光透過率と容器1の材料における可視光透過率とを変えることで、上部の蓋3側を暗くし、下部の容器1側を明るくすることができ、容器1の中に入れた誘引捕獲液7の誘引作用によって蓋3に形成した捕獲口2からハチ類が入り込み、入り込んだハチ類が誘引捕獲液7を摂取した後、中で飛び回るが、このとき、暗い方よりも明るい方を飛ぶというハチ類の習性によって、中に入り込んだハチ類は可視光透過率0%〜30%の範囲となる材料によって作られた暗くなる上部の蓋3側には全く向かうことなく、可視光透過率50%〜99%の範囲となる材料によって作られた明るくなる容器1側の中をひたすら飛び回るようになり、最終的には誘引捕獲液7の上に落ちてしまう。このようにハチ類の習性を利用して、一旦中に入り込んだハチ類が暗くなる蓋3側に向かわないようにし、蓋3の捕獲口2より外に飛び出すのをなくして、最終的な捕獲率を高めることができる。また、蓋3の材料における可視光透過率を0%〜20%の範囲内に、容器1の材料における可視光透過率を60%〜99%の範囲内にすると、その効果はより一層増し、最終的な捕獲率を大幅に高めることができる。
【0041】
また、容器1と蓋3とにおいて、蓋3における外表面積を、当該蓋3における外表面積と容器1における外表面積とを合計した総外表面積の半分以下にしたことで、暗くなる蓋3側の外表面積より明るくなる容器1側の外表面積が常に広くなるようにして、上部に位置する暗くなる蓋3によって下部に位置する容器1が暗くなることをなくし、これにより、中に入り込んだハチ類が蓋3の捕獲口2より外に飛び出すのを極力なくして、捕獲率を一層高めることができる。
【0042】
蓋3に形成する捕獲口2において、その直径Dは14mm〜20mm、より好ましくは16mm〜20mmにしたことで、ハチ類が容器1の中に入れた誘引捕獲液7により誘引されて、この蓋3の捕獲口2より中に容易に入り込むことができ、捕獲率を高めることができる。また、この捕獲口2において、漏斗状にし、その深さ寸法Lを5mm〜20mmにしたことで、この捕獲口2よりハチ類が中に入り易くて、一旦中に入ったハチ類が今度は逃げ出し難くすることができ、ハチ類の捕獲をより効果的に行う、要するに最終的な捕獲率をさらに高めることができる。
【0043】
一方、容器1の材料と蓋3の材料とにあっては、樹脂製としたことで、耐候性や経済性を有しつつ、しかも、可視光透過率の調節を極めて容易に行うことができる。
【0044】
また、容器1と蓋3とにおいて、真空成形あるいは圧空成形といった樹脂シートによる加工成型方式にて製作した場合、従来の一般的な方式である射出成形やブロー成形等で製作するものと比べて、容器1及び蓋3の軽量化を図ることができ、ひいては、当該ハチ類誘引捕獲器の軽量化を図ることができ、いろいろな場所、例えば細き枝等にも当該ハチ類誘引捕獲器を吊り下げて取り付けることができ、使用場所が限定されるのを極力減らすことができる。また、容器1及び蓋3の軽量化によって、当該ハチ類誘引捕獲器の流通時における利便性を高めることができると共に、消費者である使用者においても、その利便性により容易に使用することができる。さらに、容器1及び蓋3の軽量化によって、廃棄あるいはリサイクルする際、極めて容易に取り扱うことができ、リサイクル性等を高めることができる。また、樹脂シートによる加工成型方式につては、従来の一般的な方式である射出成形やブロー成形等で製作するものと比べて、金型等の費用を安くすることができ、低コストでの製作を可能とし、当該ハチ類誘引捕獲器を安価に提供することもできる。
【0045】
さらに、これら容器1と蓋3とにあっては、厚みは0.2mm〜1.2mm、より好ましくは0.3mm〜0.8mmの樹脂シートを使用し、このように薄い樹脂シートによる加工成型方式にて製作することで、薄い樹脂シートの使用によって、材料が嵩張るのをなくして、材料購入時や製作時における製造コストや流通コストを低減することができる。また、製作した容器1と蓋3とにあっては、非常に薄い樹脂製品にすることができ、より一層の軽量化を図ると共に、これらを重ねた際に嵩張るのをなくし、当該ハチ類誘引捕獲器の流通時における利便性をより一層高め、かつ、消費者である使用者における利便性もより一層高めることができ、しかも、廃棄やリサイクルの際の取扱いも、極めて容易に行うことができる。
【0046】
蓋3を覆うようになる屋根4を備え、この屋根4の材料における可視光透過率を0%〜50%の範囲内にしたことで、蓋3側での遮光性を高めて、より一層良好なものにし、中に入り込んだハチ類が蓋3側に全く向かわないようにし、蓋3の捕獲口2より外に飛び出すのをなくして、最終的な捕獲率をさらに高めることができる。また、この屋根4により、当該ハチ類誘引捕獲器を野外に設置したとき、雨水等の侵入を防いで、容器1の中に入れた誘引捕獲液7が希釈されるのを防止することができる。
【0047】
また、屋根4においても、真空成形あるいは圧空成形といった樹脂シートによる加工成型方式にて製作するようにしたことで、従来の一般的な方式である射出成形やブロー成形等で作られたものと比べて、屋根4の軽量化も図り、ひいては、当該ハチ類誘引捕獲器のさらなる軽量化を図ることができる。これにより、いろいろな場所に吊り下げて取り付けることが可能となり、使用場所が限定されるのを極力減らすことができ、また、当該ハチ類誘引捕獲器の流通時における利便性を高めることができると共に、消費者である使用者においても、その利便性により容易に使用することができ、さらに、廃棄あるいはリサイクルする際、極めて容易に取り扱うことができ、屋根4においても、リサイクル性等を高めることができる。
【0048】
次に、本発明によるハチ類誘引捕獲器における実験例について説明する。
図5に示すように、容器1と蓋3とから構成するハチ類誘引捕獲器を使用する。可視光透過率が90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、0%となる材料から作った容器1をそれぞれ用意すると共に、可視光透過率が0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%となる材料から作った蓋3をそれぞれ用意して、これらをそれぞれ組み合わせて実験を行った。なお、このときの可視光透過率は、分光光度計を使用して、約550nmの電磁波で測定した値を用いている。実験方法としては、温室内で行い、容器1の中に誘引捕獲液7を入れると共に、ハチ類誘引捕獲器の中にスズメバチ10匹を入れて、約12時間観察し、約12時間後にハチ類誘引捕獲器の中から逃げ出した個体数を数えて、脱出率(%)を算出する。なお、これを3回繰り返し行って平均による脱出率(%)を出した。その結果を以下の表にまとめた。
【0049】
【表1】

【0050】
この表に示すように、容器1の材料における可視光透過率がいくつであっても、蓋3の材料における可視光透過率が40%以上で脱出率(%)が高く、特に50%以上では脱出率(%)が60%以上と非常に高くなっている。一方、蓋3の材料における可視光透過率がいくつであっても、容器1の材料における可視光透過率が40%以下で脱出率(%)が高く、特に30%以下では脱出率(%)が60%以上と非常に高くなっている。
【0051】
そして、可視光透過率が30%以下の材料から作った蓋3と、可視光透過率が50%以上の材料から作った容器1とを組み合わせたとき、脱出率(%)が20%あるいは全く逃げ出さなかった0%という非常に低い値であった。要するに、蓋3の材料における可視光透過率が0%〜30%の範囲内、容器1の材料における可視光透過率が50%〜90%の範囲内が非常に良好であることがわかる。なお、実験は行っていないが、容器1の材料における可視光透過率が90%以上でも非常に良好であることは明らかである。
【0052】
次に、容器1と蓋3と屋根4とから構成するハチ類誘引捕獲器における屋根4の効果についての実験を行った。実験に使用するハチ類誘引捕獲器にあっては、蓋3は着色したPPを材料として使用し、その可視光透過率が0%のもの、容器1はPETを材料として使用し、その可視光透過率が85%のものを用いて、屋根4については、実験品1として屋根4がないもの、実験品2としてPPを材料として使用し、その可視光透過率が70%のもの、実験品3としてPPを材料として使用し、その可視光透過率が20%のもの、実験品4としてPPを材料として使用し、その可視光透過率が0%のもの、それぞれを用いて、屋根4の有無や相違によってどのような影響が出るかを実験する。実験方法としては、8月から9月にかけて屋外の木の枝に当該ハチ類誘引捕獲器を吊るして、約1ヶ月後に回収し、途中で逃げ出したものは数えることなしに、中に最終的に捕獲したハチ類の捕獲数を数えた。なお、これを3回繰り返し行って平均による数を出した。そして、その結果を以下の表にまとめた。
【0053】
【表2】

【0054】
この表に示すように、実験品1と実験品2については、3回の平均捕獲数は20匹であるのに対し、実験品3については、3回の平均捕獲数は23匹、実験品4については、3回の平均捕獲数は24匹と平均捕獲数が多い。このように屋根の有無や相違によっても捕獲数が変わることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明によるハチ類誘引捕獲器の正面図である。
【図2】本発明によるハチ類誘引捕獲器の右側面図である。
【図3】本発明によるハチ類誘引捕獲器の断面図である。
【図4】本発明によるハチ類誘引捕獲器における屋根の展開図である。
【図5】本発明によるハチ類誘引捕獲器における実験例の説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1…容器、2…捕獲口、3…蓋、4…屋根、6…窪み部、7…誘引捕獲液、10…吊り下げ片、11…差込片、12…切り溝、13…容器嵌合孔、14…嵌合孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に誘引捕獲液を入れた上部が開放する容器と、この容器の上部に取り付きハチ類が入り込むための捕獲口を形成した蓋と、からなるハチ類誘引捕獲器において、
前記容器と前記蓋とにあっては、蓋の材料における可視光透過率を、容器の材料における可視光透過率より低くしたことを特徴とするハチ類誘引捕獲器。
【請求項2】
前記蓋の材料における可視光透過率を0%〜30%の範囲内にすると共に、前記容器の材料における可視光透過率を50%〜99%の範囲内にしたことを特徴とする請求項1記載のハチ類誘引捕獲器。
【請求項3】
前記蓋における外表面積を、当該蓋における外表面積と前記容器における外表面積とを合計した総外表面積の半分以下にしたことを特徴とする請求項1乃至請求項2記載のハチ類誘引捕獲器。
【請求項4】
前記蓋に形成する捕獲口の直径を14mm〜20mmにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のハチ類誘引捕獲器。
【請求項5】
前記蓋に形成する捕獲口を漏斗状にすると共に、その捕獲口の深さ寸法を5mm〜20mmにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4記載のハチ類誘引捕獲器。
【請求項6】
前記蓋及び前記容器にあっては、樹脂シートによる加工成型方式にて作られたことを特徴とする請求項1乃至請求項5記載のハチ類誘引捕獲器。
【請求項7】
前記蓋に形成する捕獲口に対し空間を有しつつ覆うようになる屋根を備えると共に、この屋根の材料における可視光透過率を0%〜50%の範囲内にしたことを特徴とする請求項1乃至請求項6記載のハチ類誘引捕獲器。
【請求項8】
前記屋根にあっては、樹脂シートによる加工成型方式にて作られたことを特徴とする請求項7記載のハチ類誘引捕獲器。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate