ハニカム構造体
【課題】触媒担体として好適に用いることができ、強度を維持したまま、多くの触媒を担持することが可能なハニカム構造体を提供する。
【解決手段】流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を備え、隔壁1の気孔率が45〜70%であり、隔壁1の水銀圧入法により測定された細孔径分布において、その細孔径分布が二峰性分布を示し、その二峰性分布において、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、1〜10μmであり、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、10μm超であり、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比が1:7〜1:1の範囲であるハニカム構造体100。
【解決手段】流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を備え、隔壁1の気孔率が45〜70%であり、隔壁1の水銀圧入法により測定された細孔径分布において、その細孔径分布が二峰性分布を示し、その二峰性分布において、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、1〜10μmであり、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、10μm超であり、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比が1:7〜1:1の範囲であるハニカム構造体100。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、触媒担体として好適に用いることができ、強度を維持したまま、多くの触媒を担持することが可能なハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用、建設機械用、及び産業用定置エンジン、並びに燃焼機器等から排出される排ガスに含まれる、窒素酸化物(NOX)等の被浄化成分を浄化するために、触媒担体上に浄化用の触媒を担持した排ガス浄化装置が提案されている。このような排ガス浄化装置用の触媒担体としては、例えば、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えたハニカム構造体が用いられている(例えば、特許文献1及び2参照)。浄化用の触媒は、ハニカム構造体の隔壁の表面や多孔質の細孔の内部に担持されている。
【0003】
近年、ハニカム構造体に担持する触媒の量を増加させるために、ハニカム構造体の隔壁の気孔率を高くすることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−242133号公報
【特許文献2】特許第4246475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハニカム構造体の隔壁の気孔率を単に高くしたのみでは、触媒の担持性を向上させることはできるものの、触媒担体として必要な強度を維持することが極めて困難になるという問題があった。このように、触媒の担持性の向上(別言すれば、隔壁に担持可能な触媒の量を多くすること)と、ハニカム構造体の強度の向上(別言すれば、触媒担体として必要は強度を維持すること)とは、二律背反(トレードオフ)の関係にあり、両者を両立させることは極めて困難であった。
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、触媒担体として好適に用いることができ、強度を維持したまま、多くの触媒を担持することが可能なハニカム構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体が提供される。
【0008】
[1] 流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、前記隔壁の気孔率が45〜70%であり、前記隔壁の水銀圧入法により測定された細孔径分布において、前記細孔径分布が二峰性分布を示し、前記二峰性分布において、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、1〜10μmであり、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、10μm超であり、前記小細孔の細孔容積と前記大細孔の細孔容積との比が1:7〜1:1の範囲であるハニカム構造体。
【0009】
[2] 前記大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、10μm超、200μm以下である前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0010】
[3] 前記隔壁の厚さが、0.060〜0.288mmである前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【0011】
[4] 前記隔壁が、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスを含む材料からなる前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0012】
[5] 前記ハニカム構造体のセル密度が、15〜140個/cm2である前記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0013】
本発明のハニカム構造体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、隔壁の気孔率が45%〜70%であり、隔壁の水銀圧入法により測定された細孔径分布において、その細孔径分布が小細孔と大細孔とに起因する二峰性分布を示し、この二峰性分布において、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、1〜10μmであり、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、10μm超であり、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比が1:7〜1:1の範囲であるため、強度を維持したまま、多くの触媒を担持することができる。即ち、従来のハニカム構造体においては、触媒の担持性の向上と、ハニカム構造体の強度の向上とは、二律背反の関係にあり、両者を両立させることは極めて困難であった。上記した特定の二峰性分布の細孔径分布とすることにより、強度を維持したまま、触媒の担持性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明のハニカム構造体の一実施形態の一方の端面側を示す平面図である。
【図3】本発明のハニカム構造体の一実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【図4】実施例1〜3及び比較例1〜2のハニカム構造体の細孔径分布を示すグラフである。
【図5】各実施例及び比較例のハニカム構造体における、気孔率(%)とA軸圧縮強度(MPa)との関係を示すグラフである。
【図6A】実施例1のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真である。
【図6B】実施例1のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。
【図7A】実施例2のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真である。
【図7B】実施例2のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。
【図8A】実施例3のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真である。
【図8B】実施例3のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。
【図9A】比較例1のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真である。
【図9B】比較例1のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。
【図10A】比較例2のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真である。
【図10B】比較例2のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0016】
(1)ハニカム構造体:
図1〜図3に示すように、本発明のハニカム構造体100は、流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を備え、隔壁1の気孔率が45〜70%であり、隔壁1の水銀圧入法により測定された細孔径分布において、その細孔径分布が二峰性分布を示し、この二峰性分布において、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、1〜10μmであり、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、10μm超であり、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比(小細孔の細孔容積:大細孔の細孔容積)が1:7〜1:1の範囲であるハニカム構造体100である。
【0017】
ここで、図1は、本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明のハニカム構造体の一実施形態の一方の端面側を示す平面図である。図3は、本発明のハニカム構造体の一実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。本実施形態のハニカム構造体100は、一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、最外周に位置する外周壁3とを有する筒状のハニカム構造体である。
【0018】
本実施形態のハニカム構造体は、排ガスに含まれる窒素酸化物(NOX)等の被浄化成分を浄化する触媒を担持するための触媒担体として好適に用いられるものである。
【0019】
上述したように、多孔質の隔壁1には、緻密な細孔(以下、「小細孔」ともいう)と、上記小細孔よりも細孔径が大きな細孔(以下、「大細孔」ともいう)とが、所定の容積比率で形成されている。このように構成することによって、ハニカム構造体の強度を維持したまま、多くの触媒を担持することができる。即ち、従来のハニカム構造体においては、触媒の担持性の向上と、ハニカム構造体の強度の向上とは、二律背反の関係にあり、両者を両立させることは極めて困難であった。上記した特定の二峰性分布の細孔径分布とすることにより、強度(例えば、A軸圧縮強度)を維持したまま、触媒の担持性を向上させることができる。
【0020】
本実施形態のハニカム構造体においては、隔壁の気孔率が45〜70%である。このように構成することによって、ハニカム構造体の強度を維持しつつ、隔壁に多くの触媒を良好に担持することができる。更に、ハニカム構造体の圧力損失の上昇を抑制することもできる。例えば、気孔率が、45%未満であると、圧力損失が増加することがある。また、気孔率が、70%超であると、強度が弱くなることがある。「隔壁の気孔率」とは、水銀圧入法により測定された気孔率のことを意味する。
【0021】
本実施形態のハニカム構造体においては、隔壁の気孔率が、45〜65%であることが好ましく、50〜60%であることが更に好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体の強度を維持しつつ、圧力損失の上昇を有効に抑制することができる。
【0022】
本実施形態のハニカム構造体は、隔壁の水銀圧入法により測定された細孔径分布(以下、単に「隔壁の細孔径分布」ともいう)において、その細孔径分布が二峰性分布を示すものである。即ち、隔壁の細孔径分布が、単一ピークの分布曲線ではなく、二つピーク(換言すれば、二山の分布)の分布曲線となっている。
【0023】
上記二峰性分布において、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、1〜10μmであり、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、10μm超である。そして、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比(小細孔の細孔容積:大細孔の細孔容積)が1:7〜1:1の範囲である。このように構成することによって、大細孔の細孔内に、触媒をより多く担持することができる。また、大細孔のみが形成された隔壁では、ハニカム構造体の強度が低下してしまうことがあるが、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比を1:7〜1:1の範囲とすることで、ハニカム構造体の強度低下を有効に抑制することができる。
【0024】
本発明における細孔径分布とは、水銀圧入法により測定された隔壁の細孔径を常用対数で示したときの細孔径分布のことである。例えば、横軸を細孔径(常用対数:μm)とし、縦軸をlog微分細孔容積(cc/g)としたグラフにより示すことができる。隔壁の平均細孔径及び細孔径分布は、水銀ポロシメーター(例えば、Micromeritics社製、商品名:Autopore 9500)で測定することができる。
【0025】
「小細孔側の分布」とは、二峰性分布を示す細孔径分布のうち、細孔径がより小さい側の分布(換言すれば、二山の分布のうちの細孔径がより小さい側の分布)のことを意味する。「大細孔側の分布」とは、二峰性分布を示す細孔径分布のうち、細孔径がより大きい側の分布(換言すれば、二山の分布のうちの細孔径がより大きい側の分布)のことを意味する。
【0026】
「小細孔側の分布の最大ピーク値」とは、二峰性分布を示す細孔径分布のうち、細孔径がより小さい側の分布において、細孔容積が最大値を示す分布の頂点の値のことを意味する。「大細孔側の分布の最大ピーク値」とは、二峰性分布を示す細孔径分布のうち、細孔径がより大きい側の分布において、細孔容積が最大値を示す分布の頂点の値のことを意味する。
【0027】
「最大ピーク値における細孔径」とは、細孔容積が最大値を示す分布の頂点における、細孔径の値のことを意味する。即ち、横軸を細孔径とし、縦軸をlog微分細孔容積とした細孔径分布を示すグラフの、log微分細孔容積(別言すれば、縦軸)が最大になる分布の頂点における、細孔径(別言すれば、横軸)の値のことを意味する。従って、「小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径」は、二峰性分布を示す細孔径分布のうち、細孔径がより小さい側の分布の、細孔容積が最大値となる細孔径の値である。一方、「大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径」は、二峰性分布を示す細孔径分布のうち、細孔径がより大きい側の分布の、細孔容積が最大値となる細孔径の値である。
【0028】
「小細孔」とは、二峰性分布を示す細孔径分布のうち、細孔径がより小さい側の分布を構成する細孔のことをいう。また、「大細孔」とは、二峰性分布を示す細孔径分布のうち、細孔径がより大きい側の分布を構成する細孔のことをいう。
【0029】
本実施形態のハニカム構造体においては、上記小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が1〜10μmである。細孔径分布が二峰性分布を示すものであっても、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が10μm超であると、二峰性分布の二つ分布の各最大ピーク値が共に10μm超となり、ハニカム構造体の強度が低下する。また、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が1μm未満であると、触媒の担持性が悪くなり好ましくない。
【0030】
また、本実施形態のハニカム構造体においては、上記大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が10μm超である。大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が10μm以下であると、二峰性分布の二つ分布の各最大ピーク値が共に10μm以下となり、細孔内に触媒を十分に担持することができなくなる。大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径の上限については特に制限はない。但し、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が過剰に大きくなると、ハニカム構造体の強度が低下することがある。このため、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径の上限は、200μm以下であることが好ましく、180μm以下であることが更に好ましく、160μm以下であることが特に好ましい。
【0031】
「小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比」は、「小細孔の細孔容積:大細孔の細孔容積」で表される、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との数の関係のことである。小細孔の細孔容積は、水銀ポロシメーターで求めた細孔容積から、細孔径が10μm以下の細孔の細孔容積の積算値より求められる細孔容積のことである。一方、大細孔の細孔容積は、水銀ポロシメーターで求めた細孔容積から、細孔径が10μm超の細孔の細孔容積の積算値より求められる細孔容積のことである。
【0032】
「小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比が1:7〜1:1の範囲」とは、大細孔の細孔容積に対する小細孔の細孔容積の割合が、1/7〜1の範囲であることを意味する。
【0033】
小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比における、小細孔の細孔容積の比率が上記範囲を超えて小さくなる(換言すれば、小細孔の細孔容積の比率が1:7より小さくなる)と、隔壁に大細孔がより多く形成されることとなり、多くの触媒を担持することができるものの、ハニカム構造体の強度が低下してしまう。一方、小細孔の細孔容積の比率が上記範囲を超えて大きくなる(換言すれば、小細孔の細孔容積の比率が1:1より大きくなる)と、隔壁に大細孔があまり形成されず、触媒の担持性が低下してしまう。
【0034】
小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比は、1:7〜1:1であり、1:6〜1:2であることが好ましく、1:5〜1:3であることが更に好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体の強度低下を良好に抑制しつつ、触媒の担持性に優れたハニカム構造体とすることができる。
【0035】
本実施形態のハニカム構造体における隔壁の厚さについては特に制限はないが、0.060〜0.288mmであることが好ましく、0.108〜0.240mmであることが更に好ましく、0.132〜0.192mmであることが特に好ましい。このように構成することによって、強度が高く、且つ圧力損失が低減されたハニカム構造体とすることができる。
【0036】
「隔壁の厚さ」とは、ハニカム構造体をセルの延びる方向に垂直に切断した断面における、隣接する二つのセルを区画する壁(隔壁)の厚さのことを意味する。「隔壁の厚さ」を測定する方法としては、例えば、画像解析装置(ニコン社製、商品名「NEXIV、VMR−1515」)によって測定する方法を挙げることができる。
【0037】
本実施形態のハニカム構造体は、隔壁がセラミックスを含む材料からなるものであることが好ましい。このようなセラミックスを含む材料からなる隔壁は、大細孔が形成されたものであっても、高い強度が実現されたものであるとともに、耐熱性等にも優れたものである。なお、強度及び耐熱性に優れることより、隔壁が、コージェライト、炭化珪素、アルミニウムチタネート、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスを含む材料からなるものであることが更に好ましい。
【0038】
本実施形態のハニカム構造体の形状は、特に限定されないが、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の柱形状、等が好ましい。図1〜図3においては、ハニカム構造体100が円筒形状の場合の例を示す。本明細書においては、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、及び多角形の柱形状を称して「筒状」ということがある。また、図1〜図3に示すハニカム構造体100は、外周壁3を有するものであるが、外周壁3を有していないものであってもよい。外周壁3は、ハニカム構造体100を作製する過程において、ハニカム成形体を押出成形する際に、隔壁1とともに形成されたものであってもよい。また、押出成形時には外周壁3を形成しなくともよい。例えば、外周壁3は、セラミックス材料をハニカム構造体100の外周に塗工して形成することもできる。
【0039】
本実施形態のハニカム構造体において、セル形状(ハニカム構造体の中心軸方向(セルが延びる方向)に直交する断面におけるセル形状)としては、特に制限はなく、例えば、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、或いはこれらの組合せを挙げることができる。四角形の中でも、正方形、長方形が好ましい。
【0040】
本実施形態のハニカム構造体においては、セル密度が15〜140個/cm2であることが好ましく、31〜116個/cm2であることが更に好ましく、46〜93個/cm2であることが特に好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体の強度を維持しつつ、圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0041】
本実施形態のハニカム構造体を製造する際には、例えば、隔壁に大細孔を形成するために、ハニカム構造体を製造する原料として、平均粒子径が比較的に大きな造孔材が添加されたものを用いることが好ましい。上記造孔材としては、例えば、平均粒子径が100μm以上の造孔材を挙げることができる。造孔材の量としては、ハニカム構造体を製造する原料100質量部に対して、10質量部程度であることが好ましい。例えば、上記原料(即ち、平均粒子径が大きな造孔材が添加された原料)からなる坏土を押出成形してハニカム成形体を得、得られたハニカム成形体を焼成することにより、上記造孔材により、隔壁中に大細孔が形成される。上述した造孔材としては、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を用いることができる。
【0042】
本実施形態のハニカム構造体は、隔壁の細孔内に触媒を担持してハニカム触媒体とし、内燃機関等から排出される排ガスの浄化に利用される。即ち、本実施形態のハニカム構造体は、触媒を担持するための触媒担体として好適に用いられる。ハニカム構造体の隔壁には大細孔が形成されているため、この隔壁の大細孔内に大量の触媒を担持することができる。また、ハニカム構造体の隔壁には所定の比率で小細孔が形成されているため、強度の低下を有効に抑制することができる。
【0043】
触媒の種類については特に制限はないが、金属イオンによりイオン交換処理されたゼオライト、バナジウム、チタニア、酸化タングステン、銀、及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものを挙げることができる。上記イオン交換処理の金属イオンとしては、銅(Cu)、鉄(Fe)等を挙げることができる。
【0044】
隔壁に担持する触媒の量については特に制限はない。例えば、触媒の担持量は、100〜300g/Lであることが好ましく、150〜250g/Lであることが更に好ましい。上記「担持量(g/L)」は、触媒担体としてのハニカム構造体の容積1L(1リットル)当たりに担持される触媒の質量(g)のことである。
【0045】
細孔内に触媒が担持されたハニカム触媒体は、金属製の缶体内に、保持材(マット)を介して挿入保持した状態で、排ガス処理装置として用いられる。金属製の缶体内に収納されたハニカム触媒体(即ち、排ガス処理装置)が、自動車等の排気系(排気路)に搭載される。
【0046】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本実施形態のハニカム構造体を製造する方法(ハニカム構造体の製造方法)の一例について説明する。本実施形態のハニカム構造体の製造方法としては、セラミックス原料を含有する成形原料を混合し混練して坏土を得る坏土調製工程と、得られた坏土をハニカム形状に成形してハニカム成形体を得る成形工程と、得られたハニカム成形体を乾燥し、焼成して、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えたハニカム構造体を得る焼成工程と、を備え、上記坏土調製工程において、セラミックス原料に、粒子径が100μm以上の造孔材を添加して坏土を調整する方法を挙げることができる。
【0047】
このような製造方法によれば、隔壁の水銀圧入法により測定された細孔径分布において、細孔径分布が二峰性分布を示し、この二峰性分布において、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が1〜10μmであり、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が10μm超であり、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比が1:7〜1:1の範囲であるハニカム構造体を良好に得ることができる。
【0048】
上記した造孔材によって、二峰性分布の細孔径分布における大細孔が形成される。一方、二峰性分布の細孔径分布における小細孔は、原料粒子間の隙間によって形成される。従って、大細孔の量(即ち、大細孔の細孔容積)は、添加する造孔材の量によって調整することができる。一方、小細孔の量(即ち、小細孔の細孔容積)は、原料粒子の粒子径によって調整することができる。即ち、本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、造孔材の量や原料粒子の粒子径を調整することにより、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が1〜10μmとなり、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が10μm超となり、且つ、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比が1:7〜1:1の範囲となるハニカム構造体を製造することができる。
【0049】
以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法について、各製造工程毎に更に詳細に説明する。
【0050】
(2−1)坏土調製工程:
まず、本実施形態のハニカム構造体の製造する際には、セラミックス原料を含有する成形原料を混合し混練して坏土を得る(坏土調製工程)。
【0051】
成形原料に含有されるセラミックス原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミックス原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。
【0052】
造孔材は、吸水性樹脂等を好適に用いることができる。
【0053】
造孔材の添加量としては、主原料系(例えば、成形原料に含有されるセラミックス原料)100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましく、1〜8質量部であることが更に好ましく、1〜6質量部であることが特に好ましい。造孔材の添加量が、1質量部未満であると、隔壁中に形成される大細孔の比率が減少し、得られるハニカム構造体に担持できる触媒量が少なくなってしまうことがある。一方、造孔材の添加量が、10質量部を超えると、大細孔の比率が大きくなり過ぎて、得られるハニカム構造体の強度が低下してしまうことがある。
【0054】
造孔材の平均粒子径は、50〜200μmであることが好ましく、80〜170μmであることが更に好ましく、100〜150μmであることが特に好ましい。造孔材の平均粒子径が大き過ぎると、細孔径分布において、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が大きくなり過ぎて、強度が低下することがある。一方、造孔材の平均粒子径が小さ過ぎると、細孔径分布において、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が10μm以下となってしまう。
【0055】
また、成形原料は、上記セラミックス原料及び造孔材に、分散媒、有機バインダー、無機バインダー、界面活性剤等を更に混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0056】
分散媒としては、水を用いることができる。分散媒の添加量は、セラミックス原料100質量部に対して、30〜150質量部であることが好ましい。
【0057】
有機バインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、又はこれらを組み合わせたものとすることが好ましい。また、有機バインダーの添加量は、セラミックス原料100質量部に対して、1〜10質量部が好ましい。
【0058】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸(例えば、ラウリン酸カリ石鹸)、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の添加量は、セラミックス原料100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましい。
【0059】
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0060】
(2−2)成形工程:
次に、得られた坏土をハニカム形状に成形してハニカム成形体を得る(成形工程)。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0061】
ハニカム成形体の形状は、特に限定されず、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の柱形状、等が好ましい。
【0062】
(2−3)焼成工程:
次に、得られたハニカム成形体を乾燥し、焼成して、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えたハニカム構造体を得る(焼成工程)。このようにして、隔壁中に、従来のハニカム構造体に比して大きな気孔が形成されたハニカム構造体を良好に製造することができる。
【0063】
乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組み合わせて行うことが好ましい。
【0064】
ハニカム成形体を焼成(本焼成)する前には、このハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものであり、その方法は、特に限定されるものではなく、ハニカム成形体中の有機物(有機バインダ、界面活性剤、造孔材等)の少なくとも一部を除去することができればよい。一般に、有機バインダーの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、10〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0065】
ハニカム成形体の焼成(本焼成)は、仮焼した成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われるものである。焼成条件(温度、時間、雰囲気)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1350〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、3〜10時間が好ましい。仮焼、本焼成を行う装置は、特に限定されないが、電気炉、ガス炉等を用いることができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明のハニカム構造体を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
実施例1においては、セラミックス原料として、コージェライト化原料を用い、このコージェライト化原料に、造孔材として吸水性樹脂を加えて坏土を調製し、得られた坏土を押出成形してハニカム成形体を得、得られたハニカム成形体を焼成してハニカム構造体を作製した。
【0068】
具体的には、コージェライト化原料として、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用した。このコージェライト化原料100質量部に対して、造孔材として、平均粒子径が120μmの吸水性樹脂を10質量部加えた。更に、バインダーとして、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを5質量部、界面活性剤として、ラウリン酸カリ石鹸を0.5質量部、水を50質量部加えて成形原料を得た。得られた成形原料を、ニーダーを用いて混合、混練した後、真空土練機を用いてシリンダー状の坏土を作製した。
【0069】
次に、得られた坏土を押出成形して、ハニカム成形体を得た。セル形状は、セルの延びる方向に直交する形状が正方形であった。得られたハニカム成形体を、マイクロ波で乾燥させた後、熱風乾燥にて更に乾燥させ、所定の寸法に両端面を切断してハニカム乾燥体を得た。
【0070】
次に、ハニカム乾燥体を、1420℃で4時間加熱することにより焼成を行い、ハニカム構造体を得た。
【0071】
得られたハニカム構造体は、端面の直径が70mm、セルの延びる方向の長さ(軸方向の長さ)が50mmの円柱状のものであった。また、ハニカム構造体の隔壁厚さが0.140mmであり、セル密度が62個/cm2であり、気孔率が65.3%であった。気孔率は、Micromeritics社製、商品名:Autopore 9500を用いて、水銀圧入法により測定した値である。実施例1のハニカム構造体の「隔壁厚さ(mm)」、「セル密度(個/cm2)」、及び「気孔率(%)」を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
得られたハニカム構造体について、隔壁に形成された細孔の細孔径分布を測定した。細孔径分布は、Micromeritics社製、商品名:Autopore 9500によって測定した。図4は、実施例1〜3及び比較例1〜2のハニカム構造体の細孔径分布を示すグラフである。図4においては、横軸が細孔径(常用対数:μm)を示し、縦軸がlog微分細孔容積(cc/g)を示す。
【0074】
また、この細孔径分布を示すグラフより、「小細孔側ピークの細孔径(μm)」、「大細孔側ピークの細孔径(μm)」を求めた。結果を表1に示す。なお、「小細孔側ピークの細孔径(μm)」は、細孔径分布(実施例1においては、二峰性分布の二つの分布)のうち、より細孔径が小さい側の分布の最大ピーク値(即ち、分布の頂点)における細孔径の値である。また、「大細孔側ピークの細孔径(μm)」は、細孔径分布のピーク(実施例1においては、二峰性分布の二つのピーク)のうち、より細孔径が大きい側の分布の最大ピーク値(即ち、分布の頂点)における細孔径の値である。また、「細孔容積比率(−)」を表1に示す。「細孔容積比率(−)」は、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積の比の値(具体的には、「大細孔の細孔容積/小細孔の細孔容積」の値)によって算出した値である。
【0075】
また、得られたハニカム構造体に、触媒としてCuイオンによりイオン交換処理されたゼオライトを担持した。表1に、ハニカム構造体に担持したゼオライトの量(表1においては、「ゼオライト含有量(g/L)」と記す)を示す。触媒としてのゼオライトは、ポアフィリング法で、ハニカム構造体の隔壁の細孔内に担持した。
【0076】
また、得られたハニカム構造体について、以下に示す方法で、「A軸圧縮強度(MPa)」、及び「圧損比(−)」の評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
[A軸圧縮強度(MPa)]
A軸圧縮強度とは、社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505−87に規定されている圧縮強度(MPa)のことである。本実施例においては、ハニカム構造体に、その中心軸方向に圧縮荷重を負荷して、ハニカム構造体が破壊されるときの圧力(A軸圧縮強度)を測定した。
【0078】
[圧損比(−)]
ゼオライトを250g/L担持したハニカム構造体に、室温条件下、0.5m3/分の流速でエアーを流通させ、ハニカム構造体の入口側端面と出口側端面との圧力差(差圧)を測定した。この圧力差を、ハニカム構造体の圧力損失(圧損)とし、比較例1の圧力損失に対する、各実施例及び比較例の圧力損失の比の値(即ち、比較例1の圧力損失を1.00とした際の、各実施例及び比較例の圧力損失の比の値)を、「圧損比(−)」として求めた。
【0079】
(実施例2〜6)
実施例2〜6においては、表1に示す特性になるように原料の粒子径を調整して、「隔壁厚さ」、「気孔率」、「小細孔側ピークの細孔径(μm)」、「大細孔側ピークの細孔径(μm)」、及び「細孔容積比率(−)」が表1に示すようなハニカム構造体を作製した。
【0080】
(比較例1〜9)
比較例1〜9においては、坏土の調製において、吸水性樹脂を加えずに坏土を調整して、「隔壁厚さ」、「気孔率」、「小細孔側ピークの細孔径(μm)」、「大細孔側ピークの細孔径(μm)」、及び「細孔容積比率(−)」が表1に示すようなハニカム構造体を作製した。
【0081】
得られた実施例2〜6及び比較例1〜9のハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で、「A軸圧縮強度(MPa)」、及び「圧損比(−)」の評価を行った。結果を表1に示す。また、実施例2、3及び比較例1、2のハニカム構造体の細孔径分布を図4に示す。
【0082】
また、各実施例と比較例のハニカム構造体における、気孔率(%)とA軸圧縮強度(MPa)との関係を、図5に示す。図5は、各実施例及び比較例のハニカム構造体における、気孔率(%)とA軸圧縮強度(MPa)との関係を示すグラフである。図5において、横軸が気孔率(%)を示し、縦軸がA軸圧縮強度(MPa)を示す。
【0083】
また、実施例1〜3及び比較例1〜2のハニカム構造体について、ハニカム構造体のセルに延びる方向に垂直に切断した断面、及び隔壁の表面を、走査電子顕微鏡(日立ハイテク社製の商品名:S−3700N)によって撮像した。図6Aは、実施例1のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真であり、図6Bは、実施例1のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。図7Aは、実施例2のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真であり、図7Bは、実施例2のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。図8Aは、実施例3のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真であり、図8Bは、実施例3のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。図9Aは、比較例1のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真であり、図9Bは、比較例1のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。図10Aは、比較例2のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真であり、図10Bは、比較例2のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。
【0084】
図6A、図7A、図8A、図9A及び図10Aにおいては、画像(顕微鏡写真)の右上、右下、左上、左下の4箇所に、隔壁によって区画されたセルの略四分の一(1/4)が映し出されている。切断面の撮像は、ハニカム構造体のセルの延びる方向に垂直な面について、倍率100倍で行ったものである。図6B、図7B、図8B、図9B及び図10Bにおいては、ハニカム構造体をセルの延びる方向に平行に切断した断面における、セルを区画している隔壁の表面が映し出されている。隔壁の表面の撮像は、倍率100倍で行ったものである。
【0085】
(結果)
表1、図5に示すように、実施例1〜6のハニカム構造体は、比較例1〜9のハニカム構造体と比較して、同程度の気孔率の場合に、その強度(A軸圧縮強度)が高いことが分かる。換言すれば、比較例1〜9のハニカム構造体と同程度の強度(A軸圧縮強度)を維持する際に、ハニカム構造体の気孔率を高くすることができる。ハニカム構造体の気孔率が高いということは、触媒(例えば、ゼオライト)を隔壁の細孔内により多く担持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のハニカム構造体は、触媒を担持する触媒担体として利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1:隔壁、2:セル、3:外周壁、11:一方の端面、12:他方の端面、100:ハニカム構造体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、触媒担体として好適に用いることができ、強度を維持したまま、多くの触媒を担持することが可能なハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用、建設機械用、及び産業用定置エンジン、並びに燃焼機器等から排出される排ガスに含まれる、窒素酸化物(NOX)等の被浄化成分を浄化するために、触媒担体上に浄化用の触媒を担持した排ガス浄化装置が提案されている。このような排ガス浄化装置用の触媒担体としては、例えば、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えたハニカム構造体が用いられている(例えば、特許文献1及び2参照)。浄化用の触媒は、ハニカム構造体の隔壁の表面や多孔質の細孔の内部に担持されている。
【0003】
近年、ハニカム構造体に担持する触媒の量を増加させるために、ハニカム構造体の隔壁の気孔率を高くすることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−242133号公報
【特許文献2】特許第4246475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハニカム構造体の隔壁の気孔率を単に高くしたのみでは、触媒の担持性を向上させることはできるものの、触媒担体として必要な強度を維持することが極めて困難になるという問題があった。このように、触媒の担持性の向上(別言すれば、隔壁に担持可能な触媒の量を多くすること)と、ハニカム構造体の強度の向上(別言すれば、触媒担体として必要は強度を維持すること)とは、二律背反(トレードオフ)の関係にあり、両者を両立させることは極めて困難であった。
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、触媒担体として好適に用いることができ、強度を維持したまま、多くの触媒を担持することが可能なハニカム構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体が提供される。
【0008】
[1] 流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、前記隔壁の気孔率が45〜70%であり、前記隔壁の水銀圧入法により測定された細孔径分布において、前記細孔径分布が二峰性分布を示し、前記二峰性分布において、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、1〜10μmであり、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、10μm超であり、前記小細孔の細孔容積と前記大細孔の細孔容積との比が1:7〜1:1の範囲であるハニカム構造体。
【0009】
[2] 前記大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、10μm超、200μm以下である前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0010】
[3] 前記隔壁の厚さが、0.060〜0.288mmである前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【0011】
[4] 前記隔壁が、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスを含む材料からなる前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0012】
[5] 前記ハニカム構造体のセル密度が、15〜140個/cm2である前記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0013】
本発明のハニカム構造体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、隔壁の気孔率が45%〜70%であり、隔壁の水銀圧入法により測定された細孔径分布において、その細孔径分布が小細孔と大細孔とに起因する二峰性分布を示し、この二峰性分布において、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、1〜10μmであり、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、10μm超であり、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比が1:7〜1:1の範囲であるため、強度を維持したまま、多くの触媒を担持することができる。即ち、従来のハニカム構造体においては、触媒の担持性の向上と、ハニカム構造体の強度の向上とは、二律背反の関係にあり、両者を両立させることは極めて困難であった。上記した特定の二峰性分布の細孔径分布とすることにより、強度を維持したまま、触媒の担持性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明のハニカム構造体の一実施形態の一方の端面側を示す平面図である。
【図3】本発明のハニカム構造体の一実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【図4】実施例1〜3及び比較例1〜2のハニカム構造体の細孔径分布を示すグラフである。
【図5】各実施例及び比較例のハニカム構造体における、気孔率(%)とA軸圧縮強度(MPa)との関係を示すグラフである。
【図6A】実施例1のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真である。
【図6B】実施例1のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。
【図7A】実施例2のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真である。
【図7B】実施例2のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。
【図8A】実施例3のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真である。
【図8B】実施例3のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。
【図9A】比較例1のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真である。
【図9B】比較例1のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。
【図10A】比較例2のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真である。
【図10B】比較例2のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0016】
(1)ハニカム構造体:
図1〜図3に示すように、本発明のハニカム構造体100は、流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を備え、隔壁1の気孔率が45〜70%であり、隔壁1の水銀圧入法により測定された細孔径分布において、その細孔径分布が二峰性分布を示し、この二峰性分布において、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、1〜10μmであり、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、10μm超であり、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比(小細孔の細孔容積:大細孔の細孔容積)が1:7〜1:1の範囲であるハニカム構造体100である。
【0017】
ここで、図1は、本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明のハニカム構造体の一実施形態の一方の端面側を示す平面図である。図3は、本発明のハニカム構造体の一実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。本実施形態のハニカム構造体100は、一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、最外周に位置する外周壁3とを有する筒状のハニカム構造体である。
【0018】
本実施形態のハニカム構造体は、排ガスに含まれる窒素酸化物(NOX)等の被浄化成分を浄化する触媒を担持するための触媒担体として好適に用いられるものである。
【0019】
上述したように、多孔質の隔壁1には、緻密な細孔(以下、「小細孔」ともいう)と、上記小細孔よりも細孔径が大きな細孔(以下、「大細孔」ともいう)とが、所定の容積比率で形成されている。このように構成することによって、ハニカム構造体の強度を維持したまま、多くの触媒を担持することができる。即ち、従来のハニカム構造体においては、触媒の担持性の向上と、ハニカム構造体の強度の向上とは、二律背反の関係にあり、両者を両立させることは極めて困難であった。上記した特定の二峰性分布の細孔径分布とすることにより、強度(例えば、A軸圧縮強度)を維持したまま、触媒の担持性を向上させることができる。
【0020】
本実施形態のハニカム構造体においては、隔壁の気孔率が45〜70%である。このように構成することによって、ハニカム構造体の強度を維持しつつ、隔壁に多くの触媒を良好に担持することができる。更に、ハニカム構造体の圧力損失の上昇を抑制することもできる。例えば、気孔率が、45%未満であると、圧力損失が増加することがある。また、気孔率が、70%超であると、強度が弱くなることがある。「隔壁の気孔率」とは、水銀圧入法により測定された気孔率のことを意味する。
【0021】
本実施形態のハニカム構造体においては、隔壁の気孔率が、45〜65%であることが好ましく、50〜60%であることが更に好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体の強度を維持しつつ、圧力損失の上昇を有効に抑制することができる。
【0022】
本実施形態のハニカム構造体は、隔壁の水銀圧入法により測定された細孔径分布(以下、単に「隔壁の細孔径分布」ともいう)において、その細孔径分布が二峰性分布を示すものである。即ち、隔壁の細孔径分布が、単一ピークの分布曲線ではなく、二つピーク(換言すれば、二山の分布)の分布曲線となっている。
【0023】
上記二峰性分布において、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、1〜10μmであり、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、10μm超である。そして、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比(小細孔の細孔容積:大細孔の細孔容積)が1:7〜1:1の範囲である。このように構成することによって、大細孔の細孔内に、触媒をより多く担持することができる。また、大細孔のみが形成された隔壁では、ハニカム構造体の強度が低下してしまうことがあるが、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比を1:7〜1:1の範囲とすることで、ハニカム構造体の強度低下を有効に抑制することができる。
【0024】
本発明における細孔径分布とは、水銀圧入法により測定された隔壁の細孔径を常用対数で示したときの細孔径分布のことである。例えば、横軸を細孔径(常用対数:μm)とし、縦軸をlog微分細孔容積(cc/g)としたグラフにより示すことができる。隔壁の平均細孔径及び細孔径分布は、水銀ポロシメーター(例えば、Micromeritics社製、商品名:Autopore 9500)で測定することができる。
【0025】
「小細孔側の分布」とは、二峰性分布を示す細孔径分布のうち、細孔径がより小さい側の分布(換言すれば、二山の分布のうちの細孔径がより小さい側の分布)のことを意味する。「大細孔側の分布」とは、二峰性分布を示す細孔径分布のうち、細孔径がより大きい側の分布(換言すれば、二山の分布のうちの細孔径がより大きい側の分布)のことを意味する。
【0026】
「小細孔側の分布の最大ピーク値」とは、二峰性分布を示す細孔径分布のうち、細孔径がより小さい側の分布において、細孔容積が最大値を示す分布の頂点の値のことを意味する。「大細孔側の分布の最大ピーク値」とは、二峰性分布を示す細孔径分布のうち、細孔径がより大きい側の分布において、細孔容積が最大値を示す分布の頂点の値のことを意味する。
【0027】
「最大ピーク値における細孔径」とは、細孔容積が最大値を示す分布の頂点における、細孔径の値のことを意味する。即ち、横軸を細孔径とし、縦軸をlog微分細孔容積とした細孔径分布を示すグラフの、log微分細孔容積(別言すれば、縦軸)が最大になる分布の頂点における、細孔径(別言すれば、横軸)の値のことを意味する。従って、「小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径」は、二峰性分布を示す細孔径分布のうち、細孔径がより小さい側の分布の、細孔容積が最大値となる細孔径の値である。一方、「大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径」は、二峰性分布を示す細孔径分布のうち、細孔径がより大きい側の分布の、細孔容積が最大値となる細孔径の値である。
【0028】
「小細孔」とは、二峰性分布を示す細孔径分布のうち、細孔径がより小さい側の分布を構成する細孔のことをいう。また、「大細孔」とは、二峰性分布を示す細孔径分布のうち、細孔径がより大きい側の分布を構成する細孔のことをいう。
【0029】
本実施形態のハニカム構造体においては、上記小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が1〜10μmである。細孔径分布が二峰性分布を示すものであっても、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が10μm超であると、二峰性分布の二つ分布の各最大ピーク値が共に10μm超となり、ハニカム構造体の強度が低下する。また、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が1μm未満であると、触媒の担持性が悪くなり好ましくない。
【0030】
また、本実施形態のハニカム構造体においては、上記大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が10μm超である。大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が10μm以下であると、二峰性分布の二つ分布の各最大ピーク値が共に10μm以下となり、細孔内に触媒を十分に担持することができなくなる。大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径の上限については特に制限はない。但し、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が過剰に大きくなると、ハニカム構造体の強度が低下することがある。このため、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径の上限は、200μm以下であることが好ましく、180μm以下であることが更に好ましく、160μm以下であることが特に好ましい。
【0031】
「小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比」は、「小細孔の細孔容積:大細孔の細孔容積」で表される、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との数の関係のことである。小細孔の細孔容積は、水銀ポロシメーターで求めた細孔容積から、細孔径が10μm以下の細孔の細孔容積の積算値より求められる細孔容積のことである。一方、大細孔の細孔容積は、水銀ポロシメーターで求めた細孔容積から、細孔径が10μm超の細孔の細孔容積の積算値より求められる細孔容積のことである。
【0032】
「小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比が1:7〜1:1の範囲」とは、大細孔の細孔容積に対する小細孔の細孔容積の割合が、1/7〜1の範囲であることを意味する。
【0033】
小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比における、小細孔の細孔容積の比率が上記範囲を超えて小さくなる(換言すれば、小細孔の細孔容積の比率が1:7より小さくなる)と、隔壁に大細孔がより多く形成されることとなり、多くの触媒を担持することができるものの、ハニカム構造体の強度が低下してしまう。一方、小細孔の細孔容積の比率が上記範囲を超えて大きくなる(換言すれば、小細孔の細孔容積の比率が1:1より大きくなる)と、隔壁に大細孔があまり形成されず、触媒の担持性が低下してしまう。
【0034】
小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比は、1:7〜1:1であり、1:6〜1:2であることが好ましく、1:5〜1:3であることが更に好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体の強度低下を良好に抑制しつつ、触媒の担持性に優れたハニカム構造体とすることができる。
【0035】
本実施形態のハニカム構造体における隔壁の厚さについては特に制限はないが、0.060〜0.288mmであることが好ましく、0.108〜0.240mmであることが更に好ましく、0.132〜0.192mmであることが特に好ましい。このように構成することによって、強度が高く、且つ圧力損失が低減されたハニカム構造体とすることができる。
【0036】
「隔壁の厚さ」とは、ハニカム構造体をセルの延びる方向に垂直に切断した断面における、隣接する二つのセルを区画する壁(隔壁)の厚さのことを意味する。「隔壁の厚さ」を測定する方法としては、例えば、画像解析装置(ニコン社製、商品名「NEXIV、VMR−1515」)によって測定する方法を挙げることができる。
【0037】
本実施形態のハニカム構造体は、隔壁がセラミックスを含む材料からなるものであることが好ましい。このようなセラミックスを含む材料からなる隔壁は、大細孔が形成されたものであっても、高い強度が実現されたものであるとともに、耐熱性等にも優れたものである。なお、強度及び耐熱性に優れることより、隔壁が、コージェライト、炭化珪素、アルミニウムチタネート、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスを含む材料からなるものであることが更に好ましい。
【0038】
本実施形態のハニカム構造体の形状は、特に限定されないが、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の柱形状、等が好ましい。図1〜図3においては、ハニカム構造体100が円筒形状の場合の例を示す。本明細書においては、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、及び多角形の柱形状を称して「筒状」ということがある。また、図1〜図3に示すハニカム構造体100は、外周壁3を有するものであるが、外周壁3を有していないものであってもよい。外周壁3は、ハニカム構造体100を作製する過程において、ハニカム成形体を押出成形する際に、隔壁1とともに形成されたものであってもよい。また、押出成形時には外周壁3を形成しなくともよい。例えば、外周壁3は、セラミックス材料をハニカム構造体100の外周に塗工して形成することもできる。
【0039】
本実施形態のハニカム構造体において、セル形状(ハニカム構造体の中心軸方向(セルが延びる方向)に直交する断面におけるセル形状)としては、特に制限はなく、例えば、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、或いはこれらの組合せを挙げることができる。四角形の中でも、正方形、長方形が好ましい。
【0040】
本実施形態のハニカム構造体においては、セル密度が15〜140個/cm2であることが好ましく、31〜116個/cm2であることが更に好ましく、46〜93個/cm2であることが特に好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体の強度を維持しつつ、圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0041】
本実施形態のハニカム構造体を製造する際には、例えば、隔壁に大細孔を形成するために、ハニカム構造体を製造する原料として、平均粒子径が比較的に大きな造孔材が添加されたものを用いることが好ましい。上記造孔材としては、例えば、平均粒子径が100μm以上の造孔材を挙げることができる。造孔材の量としては、ハニカム構造体を製造する原料100質量部に対して、10質量部程度であることが好ましい。例えば、上記原料(即ち、平均粒子径が大きな造孔材が添加された原料)からなる坏土を押出成形してハニカム成形体を得、得られたハニカム成形体を焼成することにより、上記造孔材により、隔壁中に大細孔が形成される。上述した造孔材としては、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を用いることができる。
【0042】
本実施形態のハニカム構造体は、隔壁の細孔内に触媒を担持してハニカム触媒体とし、内燃機関等から排出される排ガスの浄化に利用される。即ち、本実施形態のハニカム構造体は、触媒を担持するための触媒担体として好適に用いられる。ハニカム構造体の隔壁には大細孔が形成されているため、この隔壁の大細孔内に大量の触媒を担持することができる。また、ハニカム構造体の隔壁には所定の比率で小細孔が形成されているため、強度の低下を有効に抑制することができる。
【0043】
触媒の種類については特に制限はないが、金属イオンによりイオン交換処理されたゼオライト、バナジウム、チタニア、酸化タングステン、銀、及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものを挙げることができる。上記イオン交換処理の金属イオンとしては、銅(Cu)、鉄(Fe)等を挙げることができる。
【0044】
隔壁に担持する触媒の量については特に制限はない。例えば、触媒の担持量は、100〜300g/Lであることが好ましく、150〜250g/Lであることが更に好ましい。上記「担持量(g/L)」は、触媒担体としてのハニカム構造体の容積1L(1リットル)当たりに担持される触媒の質量(g)のことである。
【0045】
細孔内に触媒が担持されたハニカム触媒体は、金属製の缶体内に、保持材(マット)を介して挿入保持した状態で、排ガス処理装置として用いられる。金属製の缶体内に収納されたハニカム触媒体(即ち、排ガス処理装置)が、自動車等の排気系(排気路)に搭載される。
【0046】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本実施形態のハニカム構造体を製造する方法(ハニカム構造体の製造方法)の一例について説明する。本実施形態のハニカム構造体の製造方法としては、セラミックス原料を含有する成形原料を混合し混練して坏土を得る坏土調製工程と、得られた坏土をハニカム形状に成形してハニカム成形体を得る成形工程と、得られたハニカム成形体を乾燥し、焼成して、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えたハニカム構造体を得る焼成工程と、を備え、上記坏土調製工程において、セラミックス原料に、粒子径が100μm以上の造孔材を添加して坏土を調整する方法を挙げることができる。
【0047】
このような製造方法によれば、隔壁の水銀圧入法により測定された細孔径分布において、細孔径分布が二峰性分布を示し、この二峰性分布において、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が1〜10μmであり、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が10μm超であり、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比が1:7〜1:1の範囲であるハニカム構造体を良好に得ることができる。
【0048】
上記した造孔材によって、二峰性分布の細孔径分布における大細孔が形成される。一方、二峰性分布の細孔径分布における小細孔は、原料粒子間の隙間によって形成される。従って、大細孔の量(即ち、大細孔の細孔容積)は、添加する造孔材の量によって調整することができる。一方、小細孔の量(即ち、小細孔の細孔容積)は、原料粒子の粒子径によって調整することができる。即ち、本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、造孔材の量や原料粒子の粒子径を調整することにより、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が1〜10μmとなり、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が10μm超となり、且つ、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積との比が1:7〜1:1の範囲となるハニカム構造体を製造することができる。
【0049】
以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法について、各製造工程毎に更に詳細に説明する。
【0050】
(2−1)坏土調製工程:
まず、本実施形態のハニカム構造体の製造する際には、セラミックス原料を含有する成形原料を混合し混練して坏土を得る(坏土調製工程)。
【0051】
成形原料に含有されるセラミックス原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミックス原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。
【0052】
造孔材は、吸水性樹脂等を好適に用いることができる。
【0053】
造孔材の添加量としては、主原料系(例えば、成形原料に含有されるセラミックス原料)100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましく、1〜8質量部であることが更に好ましく、1〜6質量部であることが特に好ましい。造孔材の添加量が、1質量部未満であると、隔壁中に形成される大細孔の比率が減少し、得られるハニカム構造体に担持できる触媒量が少なくなってしまうことがある。一方、造孔材の添加量が、10質量部を超えると、大細孔の比率が大きくなり過ぎて、得られるハニカム構造体の強度が低下してしまうことがある。
【0054】
造孔材の平均粒子径は、50〜200μmであることが好ましく、80〜170μmであることが更に好ましく、100〜150μmであることが特に好ましい。造孔材の平均粒子径が大き過ぎると、細孔径分布において、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が大きくなり過ぎて、強度が低下することがある。一方、造孔材の平均粒子径が小さ過ぎると、細孔径分布において、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が10μm以下となってしまう。
【0055】
また、成形原料は、上記セラミックス原料及び造孔材に、分散媒、有機バインダー、無機バインダー、界面活性剤等を更に混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0056】
分散媒としては、水を用いることができる。分散媒の添加量は、セラミックス原料100質量部に対して、30〜150質量部であることが好ましい。
【0057】
有機バインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、又はこれらを組み合わせたものとすることが好ましい。また、有機バインダーの添加量は、セラミックス原料100質量部に対して、1〜10質量部が好ましい。
【0058】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸(例えば、ラウリン酸カリ石鹸)、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の添加量は、セラミックス原料100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましい。
【0059】
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0060】
(2−2)成形工程:
次に、得られた坏土をハニカム形状に成形してハニカム成形体を得る(成形工程)。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0061】
ハニカム成形体の形状は、特に限定されず、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の柱形状、等が好ましい。
【0062】
(2−3)焼成工程:
次に、得られたハニカム成形体を乾燥し、焼成して、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えたハニカム構造体を得る(焼成工程)。このようにして、隔壁中に、従来のハニカム構造体に比して大きな気孔が形成されたハニカム構造体を良好に製造することができる。
【0063】
乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組み合わせて行うことが好ましい。
【0064】
ハニカム成形体を焼成(本焼成)する前には、このハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものであり、その方法は、特に限定されるものではなく、ハニカム成形体中の有機物(有機バインダ、界面活性剤、造孔材等)の少なくとも一部を除去することができればよい。一般に、有機バインダーの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、10〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0065】
ハニカム成形体の焼成(本焼成)は、仮焼した成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われるものである。焼成条件(温度、時間、雰囲気)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1350〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、3〜10時間が好ましい。仮焼、本焼成を行う装置は、特に限定されないが、電気炉、ガス炉等を用いることができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明のハニカム構造体を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
実施例1においては、セラミックス原料として、コージェライト化原料を用い、このコージェライト化原料に、造孔材として吸水性樹脂を加えて坏土を調製し、得られた坏土を押出成形してハニカム成形体を得、得られたハニカム成形体を焼成してハニカム構造体を作製した。
【0068】
具体的には、コージェライト化原料として、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用した。このコージェライト化原料100質量部に対して、造孔材として、平均粒子径が120μmの吸水性樹脂を10質量部加えた。更に、バインダーとして、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを5質量部、界面活性剤として、ラウリン酸カリ石鹸を0.5質量部、水を50質量部加えて成形原料を得た。得られた成形原料を、ニーダーを用いて混合、混練した後、真空土練機を用いてシリンダー状の坏土を作製した。
【0069】
次に、得られた坏土を押出成形して、ハニカム成形体を得た。セル形状は、セルの延びる方向に直交する形状が正方形であった。得られたハニカム成形体を、マイクロ波で乾燥させた後、熱風乾燥にて更に乾燥させ、所定の寸法に両端面を切断してハニカム乾燥体を得た。
【0070】
次に、ハニカム乾燥体を、1420℃で4時間加熱することにより焼成を行い、ハニカム構造体を得た。
【0071】
得られたハニカム構造体は、端面の直径が70mm、セルの延びる方向の長さ(軸方向の長さ)が50mmの円柱状のものであった。また、ハニカム構造体の隔壁厚さが0.140mmであり、セル密度が62個/cm2であり、気孔率が65.3%であった。気孔率は、Micromeritics社製、商品名:Autopore 9500を用いて、水銀圧入法により測定した値である。実施例1のハニカム構造体の「隔壁厚さ(mm)」、「セル密度(個/cm2)」、及び「気孔率(%)」を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
得られたハニカム構造体について、隔壁に形成された細孔の細孔径分布を測定した。細孔径分布は、Micromeritics社製、商品名:Autopore 9500によって測定した。図4は、実施例1〜3及び比較例1〜2のハニカム構造体の細孔径分布を示すグラフである。図4においては、横軸が細孔径(常用対数:μm)を示し、縦軸がlog微分細孔容積(cc/g)を示す。
【0074】
また、この細孔径分布を示すグラフより、「小細孔側ピークの細孔径(μm)」、「大細孔側ピークの細孔径(μm)」を求めた。結果を表1に示す。なお、「小細孔側ピークの細孔径(μm)」は、細孔径分布(実施例1においては、二峰性分布の二つの分布)のうち、より細孔径が小さい側の分布の最大ピーク値(即ち、分布の頂点)における細孔径の値である。また、「大細孔側ピークの細孔径(μm)」は、細孔径分布のピーク(実施例1においては、二峰性分布の二つのピーク)のうち、より細孔径が大きい側の分布の最大ピーク値(即ち、分布の頂点)における細孔径の値である。また、「細孔容積比率(−)」を表1に示す。「細孔容積比率(−)」は、小細孔の細孔容積と大細孔の細孔容積の比の値(具体的には、「大細孔の細孔容積/小細孔の細孔容積」の値)によって算出した値である。
【0075】
また、得られたハニカム構造体に、触媒としてCuイオンによりイオン交換処理されたゼオライトを担持した。表1に、ハニカム構造体に担持したゼオライトの量(表1においては、「ゼオライト含有量(g/L)」と記す)を示す。触媒としてのゼオライトは、ポアフィリング法で、ハニカム構造体の隔壁の細孔内に担持した。
【0076】
また、得られたハニカム構造体について、以下に示す方法で、「A軸圧縮強度(MPa)」、及び「圧損比(−)」の評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
[A軸圧縮強度(MPa)]
A軸圧縮強度とは、社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505−87に規定されている圧縮強度(MPa)のことである。本実施例においては、ハニカム構造体に、その中心軸方向に圧縮荷重を負荷して、ハニカム構造体が破壊されるときの圧力(A軸圧縮強度)を測定した。
【0078】
[圧損比(−)]
ゼオライトを250g/L担持したハニカム構造体に、室温条件下、0.5m3/分の流速でエアーを流通させ、ハニカム構造体の入口側端面と出口側端面との圧力差(差圧)を測定した。この圧力差を、ハニカム構造体の圧力損失(圧損)とし、比較例1の圧力損失に対する、各実施例及び比較例の圧力損失の比の値(即ち、比較例1の圧力損失を1.00とした際の、各実施例及び比較例の圧力損失の比の値)を、「圧損比(−)」として求めた。
【0079】
(実施例2〜6)
実施例2〜6においては、表1に示す特性になるように原料の粒子径を調整して、「隔壁厚さ」、「気孔率」、「小細孔側ピークの細孔径(μm)」、「大細孔側ピークの細孔径(μm)」、及び「細孔容積比率(−)」が表1に示すようなハニカム構造体を作製した。
【0080】
(比較例1〜9)
比較例1〜9においては、坏土の調製において、吸水性樹脂を加えずに坏土を調整して、「隔壁厚さ」、「気孔率」、「小細孔側ピークの細孔径(μm)」、「大細孔側ピークの細孔径(μm)」、及び「細孔容積比率(−)」が表1に示すようなハニカム構造体を作製した。
【0081】
得られた実施例2〜6及び比較例1〜9のハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で、「A軸圧縮強度(MPa)」、及び「圧損比(−)」の評価を行った。結果を表1に示す。また、実施例2、3及び比較例1、2のハニカム構造体の細孔径分布を図4に示す。
【0082】
また、各実施例と比較例のハニカム構造体における、気孔率(%)とA軸圧縮強度(MPa)との関係を、図5に示す。図5は、各実施例及び比較例のハニカム構造体における、気孔率(%)とA軸圧縮強度(MPa)との関係を示すグラフである。図5において、横軸が気孔率(%)を示し、縦軸がA軸圧縮強度(MPa)を示す。
【0083】
また、実施例1〜3及び比較例1〜2のハニカム構造体について、ハニカム構造体のセルに延びる方向に垂直に切断した断面、及び隔壁の表面を、走査電子顕微鏡(日立ハイテク社製の商品名:S−3700N)によって撮像した。図6Aは、実施例1のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真であり、図6Bは、実施例1のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。図7Aは、実施例2のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真であり、図7Bは、実施例2のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。図8Aは、実施例3のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真であり、図8Bは、実施例3のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。図9Aは、比較例1のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真であり、図9Bは、比較例1のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。図10Aは、比較例2のハニカム構造体の端面を拡大した顕微鏡写真であり、図10Bは、比較例2のハニカム構造体の隔壁の表面を拡大した顕微鏡写真である。
【0084】
図6A、図7A、図8A、図9A及び図10Aにおいては、画像(顕微鏡写真)の右上、右下、左上、左下の4箇所に、隔壁によって区画されたセルの略四分の一(1/4)が映し出されている。切断面の撮像は、ハニカム構造体のセルの延びる方向に垂直な面について、倍率100倍で行ったものである。図6B、図7B、図8B、図9B及び図10Bにおいては、ハニカム構造体をセルの延びる方向に平行に切断した断面における、セルを区画している隔壁の表面が映し出されている。隔壁の表面の撮像は、倍率100倍で行ったものである。
【0085】
(結果)
表1、図5に示すように、実施例1〜6のハニカム構造体は、比較例1〜9のハニカム構造体と比較して、同程度の気孔率の場合に、その強度(A軸圧縮強度)が高いことが分かる。換言すれば、比較例1〜9のハニカム構造体と同程度の強度(A軸圧縮強度)を維持する際に、ハニカム構造体の気孔率を高くすることができる。ハニカム構造体の気孔率が高いということは、触媒(例えば、ゼオライト)を隔壁の細孔内により多く担持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のハニカム構造体は、触媒を担持する触媒担体として利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1:隔壁、2:セル、3:外周壁、11:一方の端面、12:他方の端面、100:ハニカム構造体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、
前記隔壁の気孔率が45〜70%であり、
前記隔壁の水銀圧入法により測定された細孔径分布において、前記細孔径分布が二峰性分布を示し、前記二峰性分布において、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、1〜10μmであり、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、10μm超であり、
前記小細孔の細孔容積と前記大細孔の細孔容積との比が1:7〜1:1の範囲であるハニカム構造体。
【請求項2】
前記大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、10μm超、200μm以下である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記隔壁の厚さが、0.060〜0.288mmである請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記隔壁が、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスを含む材料からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記ハニカム構造体のセル密度が、15〜140個/cm2である請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項1】
流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、
前記隔壁の気孔率が45〜70%であり、
前記隔壁の水銀圧入法により測定された細孔径分布において、前記細孔径分布が二峰性分布を示し、前記二峰性分布において、小細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、1〜10μmであり、大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、10μm超であり、
前記小細孔の細孔容積と前記大細孔の細孔容積との比が1:7〜1:1の範囲であるハニカム構造体。
【請求項2】
前記大細孔側の分布の最大ピーク値における細孔径が、10μm超、200μm以下である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記隔壁の厚さが、0.060〜0.288mmである請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記隔壁が、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスを含む材料からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記ハニカム構造体のセル密度が、15〜140個/cm2である請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【公開番号】特開2012−50978(P2012−50978A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169900(P2011−169900)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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