説明

ハニカム状素子の製造方法

【課題】吸湿フィルタや脱臭フィルタなどに用いられるハニカム状素子において、その吸湿剤や吸着剤の材料をそのハニカム構造体内で均一に担持して、複数にスライスしたときも吸湿剤や吸着剤の担持量が安定しており、そのために品質が安定した素子を提供できることを目的とする。
【解決手段】ハニカム構造体3の外周部に、保護板4をまきつけ、保護板の上端面5と保護板の下端面6がハニカム構造体3の通気上端面7と通気下端面8よりも突き出て、距離10をもって空中に浮かせたまま保持する。保護具付きハニカム構造体20を、材料として多孔質吸着剤をもちい、これと無機バインダを分散したスラリー21に含浸22し、引上げ、ブロア23による通風で、ハニカムセル内の余剰液24を吹き落とす。そして、保護具付きハニカム構造体20の上下面を反転させて、通風乾燥することで材料を均一に担持したハニカム状素子が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム状構造を持つ、湿分および有機ガス等の吸着フィルタおよび触媒担体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハニカム状素子は、成分としてセラミック繊維もしくはガラス繊維と有機繊維、さらに山皮などの鉱物を基材紙として漉いた紙をハニカム状に加工し、このハニカム体を焼成することで無機質のハニカム状担体がされたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、そのハニカム状素子について図13および図14を参照しながら説明する。
【0004】
図13に示すように、セラミック紙101は、セラミック繊維、パルプ、山皮、有機および無機バインダからなり、それを波状に加工したセラミック紙102と有機系と無機系の混合接着剤103によって接着した片波成形体104を形成する。図14に示すように図13の片波成形体を積層し、ハニカム状積層体105を得られる。
【0005】
また、この種のハニカム状素子には成分としてセラミック繊維、パルプ、有機質または無機質のバインダよりなるシートをハニカム状に成形し、これにコロイダルシリカもしくはエチルシリケートを含浸させたあとこのケイ素化合物をシリカゲルに変換し、ついで焼成することでシート中の有機質を燃焼除去した結果、触媒担体が得られることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、吸着剤などの材料と無機バインダ等の分散液に含浸させ、その後前述の素子と同様にシート中の有機質を燃焼除去し、吸着素子を得ることが知られている。
【特許文献1】特開平5−64745号公報(第13図、第14図)
【特許文献2】特開平4−18896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、このような有機繊維と無機繊維を混抄した基材紙を、1枚を平らなままの平面シート、他方を波形に成形加工した波形シートとし、前記平面シートと波形シートを波形シートの稜線部で接合し片波成形体を形成(コルゲート加工という)して、積層して得られるハニカム構造体に吸着剤や触媒などの材料を担持するときには、ハニカム構造体を吸着剤や触媒の分散液に含浸をおこなったり、分散液をハニカム構造体のセル内に掛け流して、その後、ブロアなどによって通風を行い、余剰液を吹き落としたのち、同じく通風によって乾燥する。
【0008】
しかしこの際、通風時にハニカム構造体を置く網や、ハニカム構造体の下端面部に分散液が表面張力によって吹き落とされずに付着し、ハニカムの下端面には他の部分よりも液の付着が多くなり、ハニカム構造体中での吸着剤や触媒の担持量にムラが生じてしまう。
【0009】
ハニカム構造体中での担持量にムラが生じると、ハニカム構造体をスライスして、複数のハニカム状素子などを作成する際に、吸着剤や触媒の量が異なるフィルタが出来てしまい、品質のばらつきが出来てしまう。また、材料コストも上がってしまう。また、もっと悪い場合には材料の担持がムラになって多く付着したセルが目詰まりして乾燥してしまい、通風自体が不可能になってしまう場合もある。
【0010】
また、ハニカム構造体を作成する際のコルゲート工程では、波形シートと平面シートの接着はその両端がそろっていることが望ましいが、実際には紙の厚さなどのバラツキによって、両端が蛇行して接合される。そのため、それを積層したハニカム構造体では、その端部にはシートの蛇行部分が見られ、重いハニカムを置くと、シートが曲がってセルを埋めてしまったり、液の張力がかかりやすくなって、よりセルが目詰まりしやすくなってしまう。
【0011】
解決手段として、通風の風速、風量を上げる方法もあるが、あまりに強い風であると、液によってぬれて強度を失ったハニカム構造体が耐えられず、変形してしまう可能性がある。蛇行の対策としては端面部を研摩して、面をそろえる方法もあるが、非常に手間がかかり、蛇行していない部分も研摩するため材料を無駄にしてしまう。
【0012】
また、上記ハニカム構造体の担持においては、基材紙が水を吸うことで膨潤し、サイズが変わってしまったり、変形するため、コルゲート加工したものを接着剤で接着する事を行なう。そのため接着剤部分に材料が担持できず、ハニカム構造体のセル内の表面積を十分に利用できないなどの問題があった。
【0013】
そのため、ハニカム構造体に、吸着剤や触媒を担持する際の材料液への含浸および乾燥の際に、端面に余剰の液が付着せず、ハニカム内で均一に材料が担持する工法の開発が求められている。
【0014】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、ハニカムを材料の液に含浸、乾燥する工程で、担持ムラが無く、均一に材料をセル内に付着させることが出来、また、ハニカムの二つのシートが蛇行していても、端面を研摩することなく、従来の方法より材料を無駄にせず、工程を削減することが出来る、ハニカム状素子の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のハニカム状素子の製造方法としては上記目的を達成するために、コルゲート加工して片波成形体を形成した後、前記片波成形体を積層して得られるハニカム構造体に材料の分散液に対して含浸などの方法によって、材料を浸透させ、その後、ハニカム構造体の通気端面が空中に浮いた状態に保持したまま通風し、ハニカム構造体に担持しなかった液を吹き落とす方法である。
【0016】
この方法で吹き落とされた分散液は、ハニカム構造体の通気端面では、ハニカムを網等の上に直接置いて網とハニカムの通気端面が接触した状態のものに比べ、液の張力が働かず、通気端面に液が付着しづらくなるため、端面の目詰まりもおこりにくくなる。
【0017】
また、本発明のハニカム状素子の製造方法としては、上記目的を達成するために、ハニカム構造体の外周面より広く大きな保護具で、ハニカム構造体の通気端面より保護具の端面が突き出た状態になるように固定し、この保護具付きハニカム構造体に、材料の分散液に対して含浸などの方法によって、材料を浸透させ、その後、ハニカム構造体の通気端面は保護具の端面が突き出しているために、空中に浮いた状態のままで、ハニカム構造体に通風し、ハニカム構造体に担持しなかった液を吹き落とす方法である。
【0018】
また、本発明のハニカム構造体の保護具の形状として、ハニカム構造体が片波成形体を巻取り積層して作成した円柱状で、保護具を金属製の板で円柱上に曲がった形に加工し、前述のハニカム構造体の通気端面に対してそれよりも円柱の高さ方向の長さを長くして、ハニカム構造体の外周部に巻きつけ固定することで、ハニカム構造体の通気端面が材料の分散液に含浸後の通気の際に他の部分と接触しないように、空中に浮かせることが出来る。
【0019】
また、本発明の保護具の形状としては、外周に巻きつける際に、ハニカム構造体の円柱外周距離が変化しても対応できるように保護板の外周距離を調整できるようにし、その距離を一定に保つように留め具を設置する。そして、前述のハニカム構造体の通気端面に対してそれよりも円柱の高さ方向の長さを長くしてハニカム構造体の外周部に巻きつけ固定することで、ハニカム構造体の通気端面が材料の分散液に含浸後の通気の際に他の部分と接触しないように、空中に浮かせることが出来る。
【0020】
また、本発明の保護具の形状としては、外周に沿うように複数に分かれた曲面および平面を持つ保護具を用いてハニカム構造体の外周を固定する。そして、前述のハニカム構造体の通気端面に対してそれよりも保護具の高さ方向の長さを長くしてハニカム構造体の外周部に接触して固定することで、ハニカム構造体の通気端面が材料の分散液に含浸後の通気の際に他の部分と接触しないように、空中に浮かせることが出来る。
【0021】
以上の方法で吹き落とされた分散液は、ハニカム構造体の通気端面では、ハニカムを網等の上に直接置いて網とハニカムの通気端面が接触した状態のものに比べ、液の張力が働かず、通気端面に液が付着しづらくなるため、端面の目詰まりもおこりにくく、よりハニカム構造体の端面付近まで均一な担持ができる。
【0022】
また、保護具にて外周を固定させるため、ハニカム構造体が水を吸って膨潤してもサイズが大きく膨らまず、変形しづらいため、その形状の安定したものが得られる。
【0023】
また、本発明の保護具の形状としては、ハニカム構造体の外周を覆う保護具の内周部に、突起部を設けて、この突起にハニカム構造体が乗るように設置する。こうすることで、ハニカム構造体を保護具に浮いた状態で固定しやすくなり、また工程の途中で、ハニカム構造体の位置がずれて、ハニカム構造体の通気端面が、保護具の端面よりはみ出すことが無くなる。
【0024】
また、本発明の保護具としては、その保護具の表面もしくは一部に材料の付着しにくい表面に加工したものを用いる。特に、材料の分散液にハニカム構造体と共に浸かる部分に関してコーティングをすることで、材料が保護具に付着しても洗い落としやすくなる。特に、ハニカム構造体に担持したい材料が親水性の場合は疎水性の表面にする加工を施す。また、ハニカム構造体に担持したい材料が疎水性の場合は、保護具の表面を親水性にする加工を施すものである。もしくは、フッ素樹脂でその表面を加工する。これにより、保護具が洗浄しやすくなり、保護具を洗浄するための工程を少なくすることが出来、製造コストを下げられる。また保護具に付着する材料が少なくなるため、材料コストの低減が可能である。
【0025】
また、本発明のハニカム状素子の製造方法としては、ハニカム構造体に担持する材料の分散液にコロイダルシリカ、珪酸ソーダ、珪酸リチウムのうち少なくともひとつを含む無機バインダをもちい、担持後、焼成し、有機質分を焼失させることによって、耐熱性の高い無機ハニカム状素子が得られ、触媒担体などとして用いることができる。
【0026】
また、本発明のハニカム状素子の製造方法としては、ハニカム構造体に担持する材料の分散液に少なくともゼオライト、シリカゲル、活性炭、酸化アルミナ、シリカアルミナのうちひとつを含む吸着剤と、無機バインダをもちい、ハニカム構造体に無機バインダを接着剤として吸着剤を担持することで、ハニカム吸着体が得られる。また、吸着剤が変化しない温度で出来る場合は焼成することで、無機成分のみのハニカム吸着体が得られる。また、外周に保護具を用いて含浸、担持する場合、ハニカム構造体の外周部に無駄な吸着剤などの材料を付着させずにすむため、材料費を削減することが出来る。
【0027】
また、本発明のハニカム状素子の製造方法としては、ハニカム構造体を、材料の分散液に含浸し、これを引上げたのち、ハニカム構造体の通気端面を浮かせた状態で、ハニカム構造体の通気端面の上方から通風して、ハニカム構造体に浸透もしくは付着しなかった液を吹き落とす。この工程の後、ハニカム構造体の上下面を反転し、その後上方より通風し、乾燥する。この反転作業を1回以上繰り返す製造方法である。
【0028】
この手段によって、ハニカム構造体の表面に残った液が、下端面に滴り落ちていく現象を防ぐことが出来、これによって、よりハニカム構造体の通気方向の厚さ方向に対して均一に材料を担持させることが出来、材料の担持ムラを少なくすることが出来る。
【0029】
また、本発明のハニカム状素子の製造方法としては、上記の含浸からハニカム構造体の通気端面を浮かせた状態で通風し、反転して再度通風、乾燥を行なう工程において、この含浸から乾燥までの工程を複数回行ない、且つ、含浸の2回目は1回目の含浸から引き上げて上方から通風する工程とは、ハニカム構造体の上下向きを逆にして行い、含浸後ハニカム構造体の上下面を反転して通風、乾燥する工程を行なう製造方法である。
【0030】
この手段によって、1回のみの含浸より多くの材料を担持出来る。また、1回目で補いきれなかった担持量のムラを減らすことが可能である。
【0031】
なお、3回目以降はそれぞれの製造条件で通気端面の上下向きを決定するのが望ましいが、含浸し、これを引上げたのち、ハニカム構造体の通気端面の上方から通風して、ハニカム構造体に浸透もしくは付着しなかった液を吹き落とした後に、ハニカム構造体の上下面を反転し、その後上方より通風し、乾燥する作業は1回以上繰り返すのが望ましい。
【0032】
また、本発明のハニカム状素子の製造方法としては、ハニカム構造体を、材料の分散液に含浸し、これを引上げたのち、ハニカム構造体の通気端面を浮かせた状態でハニカム構造体の通気端面の上方から通風して、ハニカム構造体に浸透もしくは付着しなかった液を吹き落し、その後、ハニカム構造体の上下面を反転し、その後上方より通風し、乾燥する工程において、ハニカム構造体に浸透もしくは付着しなかった液を吹き落とす風の風速のほうがその後に乾燥する工程の風よりも速い製造方法である。
【0033】
この手段によって、浸透もしくは付着できなかった液を吹き落とす場合は、液の張力でもハニカム構造体の通気端面に残らない風速を用い、一方反転して乾燥する場合には、その通気風速を遅くすることで、ハニカム構造体に付着している液の乾燥中の移動を少なくし、また、液が乾燥中に急速に乾燥して材料にクラックが入り、強度が低下するのを防ぐことが出来る。
【0034】
また、本発明のハニカム状素子の製造方法として、コルゲートの巻き取り時に接着剤によって接着しない、特開2005−280168にしめされたように、ハニカム構造体を加工しても、外周を保護具にて固定するため、コルゲートした片波成形体がはがれて変形することもなく、コルゲートの巻取り部に吸着剤や触媒などの材料を担持したハニカム構造体を得ることが出来るため、接着剤をもちいて片波成形体を接着して積層する場合に比べ、より多くの吸着剤や触媒を担持することが出来る。
【0035】
また、本発明のハニカム状素子の製造方法として、上記に示した製造方法によって得られるハニカム構造体をスライスする製造方法である。得られるハニカム構造体は、その材料の担持量が安定しているため、素子毎の差が少なく、品質が安定したものが得られる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、通気端面を他の部分に接触させず浮かせることで材料の分散液に浸透したハニカム構造体内の位置でその材料の担持ムラが生じず、均一に担持でき、また、ハニカム構造体の通気端面に材料が付着して目詰まりすることのないハニカム状素子を得ることが出来る製造方法を提供できる。
【0037】
また、外周を保護具で覆って固定し、通気端面を他の部分に接触させず浮かせることで材料の分散液に浸透したハニカム構造体内の位置でその材料の担持ムラが生じず、またハニカム構造体の通気端面に材料が付着して目詰まりすることのなく、またそれ以外にも、外周を固定するためにコルゲートした片波成形体の積層のために接着剤を用いる必要がなく吸着剤や触媒といった材料をより多く担持でき、かつ、ハニカム構造体の膨潤や変形を小さくしたハニカム状素子を得ることが出来る製造方法を提供できる。
【0038】
また、本発明の保護具の内周部に突起部をハニカム構造体が乗るように設置する。こうすることで、ハニカム構造体を保護具に浮いた状態で固定しやすくなり、浮いた状態で固定させるのが容易になることで、工数の削減が出来る。
【0039】
また、本発明の保護具としては、その保護具の表面もしくは一部に材料の付着しにくい表面に加工したものを用いる。例えば、フッ素樹脂で保護具表面をコーティング加工を施す。これにより、保護具が洗浄しやすくなり、保護具を洗浄するための工程を少なくすることが出来、製造コストを下げられる。また保護具に付着する材料が少なくなるため、材料コストの低減が出来る。
【0040】
また、本発明のハニカム構造体に担持する材料の分散液にコロイダルシリカ、珪酸ソーダ、珪酸リチウムのうち少なくともひとつを含む無機バインダをもちい、担持後、焼成し、有機質分を焼失させることによって、無機成分のみで作られた耐熱性の高いハニカム構造体が得られる。
【0041】
また、本発明のハニカム構造体に担持する材料の分散液に少なくともゼオライト、シリカゲル、活性炭、酸化アルミナ、シリカアルミナのうちひとつを含む吸着剤と、無機バインダをもちい、ハニカム構造体に無機バインダを接着剤として吸着剤を担持することで、ハニカム吸着体が得られる。また、吸着剤が変化しない温度で出来る場合は焼成することで、無機成分のみのハニカム吸着体が得られる。
【0042】
また、更に、外周に保護具を用いて材料を担持する場合、ハニカム構造体の外周部に無駄な吸着剤などの材料を付着させずにすむため、材料費を削減することが出来る。
【0043】
また、本発明の材料の液の含浸と通風を用いたハニカム構造体への担持方法として、ハニカム構造体を、材料の分散液に含浸し、これを引上げたのち、ハニカム構造体の通気端面を浮かせたまま、ハニカム構造体の通気端面の上方から通風して、ハニカム構造体に浸透もしくは付着しなかった液を吹き落とす。この工程の後、ハニカム構造体の上下面を反転し、その後ハニカム構造体の通気端面を浮かせたまま、上方より通風し、乾燥する。この反転作業を1回以上繰り返す方法を用いることで、ハニカム構造体の通気方向の厚さ方向に対して均一に材料を担持させることが出来、材料の担持ムラを少なくすることが出来、また、ハニカム構造体をスライスして、複数のハニカム状素子を得る場合に、その材料の担持量においてばらつきが少ないハニカム状素子が得られる。
【0044】
また、本発明の材料の液の含浸と通風を用いたハニカム構造体への担持方法として、上記含浸方法を複数回行なう場合に、2回目において、含浸の時、1回目の含浸から引き上げた時とハニカム構造体の上下向きを逆にして行い、その後ハニカム構造体の上下面を反転して通風、乾燥する工程とすることで、より均一にハニカム構造体に材料を担持することが出来る。
【0045】
また、本発明のハニカム構造体の材料の液への含浸、引上げ後に、ハニカム構造体の通気端面を浮かせたまま通気端面の上方から通風して、ハニカム構造体に浸透もしくは付着しなかった液を吹き落し、その後、ハニカム構造体の上下面を反転し、その後ハニカム構造体の通気端面を浮かせたまま上方より通風し、乾燥する工程において、ハニカム構造体に浸透もしくは付着しなかった液を吹き落とす風の風速のほうがその後に乾燥する工程の風よりも速くすることで、余剰液をしっかり吹き飛ばしながらも、乾燥では液が急速に乾燥して材料にクラックが入って強度が低下するのを防ぐことが出来る。
【0046】
また、本発明のハニカム状素子の製造方法として、ハニカム構造体の片波成形体を積層する際に、特に接着剤を用いず、その外周を保護具で固定して保形が出来る。そのため、従来接着剤が邪魔をして担持出来なかった部分に吸着剤などの材料を担持出来るため、得られるハニカム状素子の表面積を有効に利用でき、その能力の向上が出来る。
【0047】
また、本発明のハニカム状素子の製造法として、上記のハニカム構造体の材料の浸透から乾燥の工程で得られた素子をスライスして、希望の厚さのハニカム状素子を作成することで、材料の担持量を安定するために、スライスしたハニカム構造体のそれぞれに含浸することに比べ、含浸工程が少なくて済むため、大幅な工数減ができ、かつ、その材料の担持量は安定している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明の請求項1記載の発明は、1枚を平らなままの平面シート、他方を波形に成形加工した波形シートとし、前記平面シートと波形シートを波形シートの稜線部で接合し片波成形体を形成した後、前記片波成形体を積層して得られるハニカム構造体に吸着剤や触媒、無機バインダなどの材料の分散液を浸透せしめ、その後、ハニカム構造体の通気端面が空中に浮いた状態に保持したまま、乾燥する製造方法によって、吸着剤や触媒、無機バインダなどの材料の分散液に浸透したハニカム構造体内の位置でその材料の担持ムラが生じず、均一に担持でき、また、ハニカム構造体の通気端面に材料が付着して目詰まりすることのないハニカム状素子を製造できる。
【0049】
また、本発明の請求項2記載の発明は、前記ハニカム構造体の通気端面を浮かせる方法としてハニカム構造体の外周面より大きく、少なくとも通気方向の長さより長い保護具を通気端面が突き出た状態になるようにしてハニカム構造体を固定する。そしてハニカム構造体に吸着剤や触媒、無機バインダなどの材料の分散液を浸透せしめ、その後、ハニカム構造体の通気端面が空中に浮いた状態に保持したまま、乾燥する製造方法によって、吸着剤や触媒、無機バインダなどの材料の分散液に浸透したハニカム構造体内の位置でその材料の担持ムラが生じず、均一に担持でき、またハニカム構造体の通気端面に材料が付着して目詰まりすることのないハニカム状素子を製造できる。
【0050】
また、本発明の請求項3記載の発明は、前記のハニカム構造体片波成形体を巻取り積層して作成した円柱状とし、保護具が金属製の板を円柱状に巻き型をつけて加工する。これを保護具としてハニカム構造体の通気端面を浮かせたまま固定し、上記方法で含浸し、例えば通気などを行い乾燥をする。この製造方法によって製造方法によって、吸着剤や触媒、無機バインダなどの材料の分散液に含浸したハニカム構造体内のそれぞれの位置でその材料の担持ムラが生じず、均一に担持でき、またハニカム構造体の通気端面に材料が付着して目詰まりすることのないハニカム状素子を製造できる。
【0051】
また、本発明の請求項4記載の発明は、保護具の外周を調整しながらかつ、その円周長さを一定にする手段として、次のように行なう。上記の円柱状に巻き型をつけて加工した保護具の一部にその円周方向の長さが金属板が円柱状に1周以上の長さをもうように、加工する。この長さは、短すぎるとハニカムの円周が大きくなったとき、保護具の巻き板の長さが不足し、外周の一部を保護できなくなってしまうが、一方で長すぎると、板同士の外に広がろうとする力や、板そのものの厚みが邪魔をしてしまうために、ハニカム構造体との隙間が生じて固定が十分にしにくくなるため、金属板の円周方向の長さは目標とする円周にたいして、さらに12分の1周から6分の1周程度の長さにするのが望ましい。また、その円周方向の長さを決定後、その長さ位置を固定できるよう、ネジやボルト、止め具をつかって固定する。これを保護具としてハニカム構造体の通気端面を浮かせたまま固定し、上記方法で含浸し、例えば通気などを行い乾燥をする。この製造方法によって、吸着剤や触媒、無機バインダなどの材料の分散液に含浸したハニカム構造体内のそれぞれの位置でその材料の担持ムラが生じず、均一に担持でき、またハニカム構造体の通気端面に材料が付着して目詰まりすることのないハニカム状素子を製造できる。
【0052】
また、ハニカム構造体を吸着剤や触媒、無機バインダの分散液に含浸したときの膨潤を防ぐことが出来る。
【0053】
また、ハニカム構造体の膨潤や変形を小さくしたハニカム状素子を製造できる。
【0054】
また、本発明の請求項5記載の発明は、ハニカム構造体の外周を覆うように複数に分かれた曲面もしくは平面もしくはその両方をもつ保護具を用いてハニカム構造体の外周をハニカム構造体の通気端面が空中に浮いた状態で固定する。これを保護具としてハニカム構造体の通気端面を浮かせたまま固定し、上記方法で含浸し、例えば通気などを行い乾燥をする。この製造方法によって、吸着剤や触媒、無機バインダなどの材料の分散液に含浸したハニカム構造体内のそれぞれの位置でその材料の担持ムラが生じず、またハニカム構造体の通気端面に材料が付着して目詰まりすることのないハニカム状素子を製造できる。
【0055】
また、こうすることで、楕円形やトラック型や、長方形、正方形などにさまざまなハニカム構造体の通気形状にも、保護具の形状をそのようにすることで対応できる。
【0056】
また、保護具の形状を一定にすることで、安定した形状のハニカム構造体が得られる。なお、ハニカム構造体と保護具の形状が大きく異なると保護具で固定する際の応力によって、ハニカム構造体の通気セルが変形したり、つぶれたりして、ハニカムも圧力損失が上昇もしくは、ハニカム構造体内での圧力損失のムラが生じるため、あらかじめハニカム構造体をその保護具の形状にあった形に加工することが望ましい。
【0057】
また、本発明の請求項6記載の発明は、前記の保護具のハニカム構造体を固定する面に、突起をもうけ、ハニカム構造体の端面を支えることで、保護具の端面がハニカム構造体の端面より突き出た状態にする。これによって、ハニカム構造体の端面を確実に空中に浮かすことが出来る。なお、突起部としては、ハニカム構造体が材料の液を含んで重くなった場合にも、その位置がずれないでまた、その支えが小さいと重みでセルがつぶれるため、重みでもセルがつぶれない程度の大きさと数が必要である。なお、突起としては、保護具の一部をエンボス加工によって、保護具の内部に凸部をもうけたり、保護具内部に、溶接などによって凸部を溶着などするのが望ましい。
【0058】
また、本発明の請求項7記載の発明は、前記の保護具の表面もしくは一部に材料の付着しにくい表面に加工したものを用いる。特に、材料の分散液にハニカム構造体と共に浸かる部分に関してコーティングをすることで、材料が保護具に付着しても洗い落としやすくなる。特に、ハニカム構造体に担持したい材料が親水性の場合は疎水性の表面にする加工を施す。また、ハニカム構造体に担持したい材料が疎水性の場合は、保護具の表面を親水性にする加工を施す。
【0059】
また本発明の請求項8に示すように特に、フッ素樹脂でその表面を加工する。これにより、前記の方法で材料の液に含浸をしたのち、保護具が洗浄しやすくなり、保護具を洗浄するための工程を少なくすることが出来、製造コストを下げられる。また保護具に付着する材料が少なくなるため、材料コストの低減が可能である。
【0060】
また、本発明の請求項9記載の発明は、前記の方法で保護具でのハニカム構造体に材料の液を浸透させる際、その材料の分散液としてコロイダルシリカ、珪酸ソーダ、珪酸リチウムのうち少なくともひとつを含む無機バインダをもちいるものであり、担持後、焼成し、有機質分を焼失させることによって、耐熱性の高い無機ハニカム構造体が得られる。このハニカム構造体は無機バインダによって固められていて硬いが、その担持量が一定であるためにその強度のばらつきも少なく、触媒担体などとして用いることが出来る。
【0061】
また、本発明の請求項10記載の発明は、前期の方法で保護具でのハニカム構造体に材料の液を浸透させる際、その材料の分散液として少なくともゼオライト、シリカゲル、活性炭、酸化アルミナ、シリカアルミナのうちひとつを含む吸着剤と、無機バインダをもちいた分散液として、ハニカム構造体に無機バインダを接着剤として吸着剤を担持することで、ハニカム吸着体が得るものである。また、吸着剤が変化しない温度で焼成することで、無機成分のみのハニカム吸着体がそのハニカム内での担持ムラや目詰まりがないものとして得られる。
【0062】
また、外周に保護具を用いて含浸、担持することで、ハニカム構造体の外周部に無駄な吸着剤などの材料を付着させずにすむため、材料費を削減することが出来る。
【0063】
また、本発明の請求項11記載の発明は、上記の材料の液をハニカム構造体に浸透させるための含浸方法とその後の乾燥方法に関して、材料の分散液にハニカム構造体を含浸後、ハニカム構造体を引上げ、前記の保護具などを用いてハニカム構造体の通気端面を浮かせた状態で、ハニカム構造体の通気端面の上方から通風して、ハニカム構造体に浸透もしくは付着しなかった液を吹き落とす。この工程の後、ハニカム構造体の上下面を反転し、その後上方より通風し、乾燥する。この反転作業を1回以上繰り返す方法を用いることで、ハニカム構造体の通気方向の厚さ方向に対して均一に材料を担持させることが出来、材料の担持ムラを少なくすることが出来る。
【0064】
また、ハニカム構造体をスライスして、複数のハニカム状素子を得る場合に、その材料の担持量においてばらつきが少ないハニカム状素子が得られる。
【0065】
なお、この方法のためには、ハニカム構造体の通気端面はその両方が空中に浮いているのが望ましい。
【0066】
また、本発明の請求項12記載の発明として、上記請求項11記載の発明の含浸方法にて材料の担持を行なったのち、2回目の含浸での担持を行なう際に、2回目においては、1回目の含浸から引き上げ、前記の保護具などをハニカム構造体の通気端面を浮かせながら、上方から通風する工程とは、ハニカム構造体の上下向きを逆にして行うものである。こうすることで1回の含浸よりさらに均一にハニカム構造体に材料を担持することが出来る。
【0067】
また、保護具をつけるタイミングについては、材料液の含浸前でも含浸後でも良いが、含浸前であれば、濡れたハニカム構造体をさわって、汚染等が起こる心配が少なく、余分な材料がハニカム構造体の外周に付着することを防げるため望ましい。
【0068】
なお、3回目以降の含浸はそれぞれの製造条件で通気端面の上下向きを決定するのが望ましいが、含浸し、これを引上げたのち、ハニカム構造体の通気端面の上方から通風して、ハニカム構造体に浸透もしくは付着しなかった液を吹き落とした後に、ハニカム構造体の上下面を反転し、その後上方より通風し、乾燥する作業は1回以上繰り返すのが望ましい。
【0069】
また、本発明の請求項13記載の発明として、上記ハニカム構造体への材料液の含浸、引上げ後に、通気端面の上方から通風して、ハニカム構造体に浸透もしくは付着しなかった液を十分に吹き落し、その後、ハニカム構造体の上下面を反転し、その後上方より通風し、乾燥する工程において、ハニカム構造体に浸透もしくは付着しなかった液を吹き落とす風の風速のほうがその後に乾燥する工程の風よりも速くするものである。余剰液をしっかり吹き飛ばしながらも、乾燥では液が急速に乾燥して材料にクラックが入り、強度が低下するのを防ぐことが出来る。
【0070】
なお、上記、含浸から通風し反転して乾燥する際の、少なくとも1回目の反転のタイミングおよび風速の目安としては、含浸して引上げたのち、ハニカム構造体に浸透および付着しなかった余剰液を吹き落とせるだけの風速、望ましくは5m/秒以上のハニカム構造体の通気端面に対する面風速の風によって余剰液を吹き飛ばし、その後反転するのが望ましい。反転後は乾燥時間が速すぎる場合、急激な乾燥によって担持した材料にクラックが生じ、強度が低下するので、2m/秒以下が望ましい。
【0071】
また、余剰液を吹き落とす時間は、ハニカム構造体の下側の端面、つまり、余剰液が吹き落とされ張力によって付着して液が残る側の端面に、吹き落し作業後に、目詰まりがほとんど見られない程度がよい。あまりに長く強い吹き落し風で通風を行なうのは、ハニカム構造体の上側の端面が急速に乾燥するため、材料にクラックが発生して、素子の強度が低下する可能性があるため望ましくない。
【0072】
また、本発明の請求項14記載の発明は、ハニカム構造体の片波成形体を積層する際に、特に接着剤を用いず、その外周を保護具で固定して保形を行なう。そして材料の分散液に含浸などを行なって、材料を浸透させると、保形のために接着剤を用いなくてはならなかった部分に、材料を浸透させることができ、材料の担持が多く出来、また浸透した材料が接着剤の役割を果たして、積層の接触部分を接着し、保護具を外しても保形が出来るようになる。また、製造方法によっては、有機分を焼き飛ばす焼成工程を行い、焼成によって接着剤が燃えてしまう場合に比べると本発明の方法は、材料が接着剤のあった部分に浸透しているため、焼成後の強度が落ちることはない。なお、積層後、保護具によって固定できない場合は、いったん、少量の接着剤や、接着テープなどで保形しておけばよい。
【0073】
また、本発明の請求項15記載の発明は、上記のハニカム構造体の材料の浸透から乾燥の工程で得られた素子をスライスして、希望の厚さのハニカム状素子を得るものであり、材料の担持量を安定するために、スライスしたハニカム構造体のそれぞれに含浸することに比べ、含浸工程が少なくて済むため、大幅な工数減ができ、かつ、その材料の担持量は安定している。
【0074】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0075】
(実施の形態1)
図1および図2に示すように、平面シート1と波形シート2を接合して作成する片波成形体を巻き取り加工して、円柱状のハニカム構造体3の外周部に、金属製などの一枚の板を円柱状に巻き加工した保護板4を、ハニカムを保護したのちに外力によって変形しない剛性を持ち、かつ曲げ加工および、保護作業性などがよい金属板をまきつけ、ハニカム構造体3を保護する。金属板としては、厚さ0.2乃至1mmのステンレス板などが望ましい。
【0076】
なお、この際のシートの成分は、後述の焼成工程を考え、ガラス繊維やセラミック繊維と、無機質の繊維状鉱物と、有機パルプや有機バインダを混抄したものが望ましく、焼成後、有機分がなくなっても、無機繊維によってその強度と構造が保たれるので望ましい。
【0077】
この際、保護板の上端面5と保護板の下端面6は、ハニカム構造体3の通気上端面7と通気下端面8よりも突き出ており、そのハニカム構造体3の通気上端面7および通気下端面8が、床面9などでハニカムセルの全て、もしくは一部であっても塞がないように距離10をもたせて空中に浮かせたまま保持する。なお、保持するために、保護板によりハニカム構造体を円周方向から押さえ込むために、保護板を留め具11などで、保護板の円周距離をきめて留めるのが望ましい。
【0078】
なお、浮かせるのは床面9につかない片方の端面だけでも良いが、後述の方法のように、反転して通気する場合などは、両端面が浮いた状態でないといけない。なお、浮かせたときの保護板端面とハニカム構造体の端面との距離10については、図3に示すように平面シート1と波形シート2を接合加工する際に、この2枚のシートの端面がずれて接合され、蛇行部分12が出来る。これによって、ハニカム構造体の高さ方向の長さは位置によってずれる。これを考慮した上で、そのずれた端面も床面につかない程度に距離10の距離は余裕を持っておくのがのぞましい。しかしながら一方で、距離10が長すぎる場合は、保護板4をつけたまま材料の液に含浸や掛け流しを行なった際に、材料が板に付着し、材料が無駄になってしまうため、余剰にあるのは望ましくない。そのため、蛇行の距離は通常0〜2mm程度であるため、保護板端面とハニカム構造体の端面の距離10は2〜4mm程度が望ましい。
【0079】
なお、留め具の例としては、図2中のように、フックで引っ張るような留め具11や、図4に示すような、保護板4の外周に長さ調整部13を設けネジ14とボルト15で調整し、固定するもの、図5に示すように、保護板16に付いた、ネジ型の長さ調節部17で、保護板16の円周長さを調節しながら、フック18で保護板16の両端をつなぎ、引張レバー19で、フック18を引っ張って固定する冶具や、保護具に巻きつけるリング(図示せず)などがある。円柱状のハニカム構造体の円周距離に対応できるように、保護板の円周方向を変えられるものが望ましい。
【0080】
上記の方法で得た保護具付きハニカム構造体20を図6にしめすような方法で、材料としてゼオライト、シリカゲル、活性炭、酸化アルミナ、シリカアルミナなどの多孔質吸着剤をもちい、これと無機バインダを分散したスラリー21に含浸22し、十分にハニカム構造体に吸着剤と無機バインダを浸透、付着させたのち、引上げ、ブロア23によって、通風を行い、ハニカムセル内に残った余剰液24を吹き落とす。
【0081】
余剰液24を吹き落としたのちに、図7に示すように、図6の保護具付きハニカム構造体20の上下面を反転させて、通風する。これによって余剰液24を吹き落とした際に、少量残った端面の液が押し戻され、ハニカムセルにそって、下に引き寄せられながら乾燥する。したがって、担持ムラが生じず、均一に担持できるものである。
【0082】
なお、この作業の際の余剰液24を吹き落とすときの風速と時間は、余剰液24が吹き落ち、ハニカム構造体3の通気下端面8に液が張力で残らない程度にする。また時間も同様に、この通気下端面8に液が残らない程度でおこなう。長く行ないすぎる場合、ハニカム構造体の上方の通気上端面7が急速に乾燥してしまうため、材料が乾燥し、収縮によってクラックが発生し、他の部分に比べ、強度が低下しやすくなる。また、反転後の乾燥風に関しては、上記と同様の理由で、速い乾燥はクラックを発生させるため、余剰液を吹き落としたものより遅く、面風速で3m/秒以下が望ましい。
【0083】
そして保護板をとりはずして、得られるハニカム構造体は、材料の担持ムラがなく高性能で低圧力損失、大処理面積の吸着素子として用いることが出来る。また、外した保護板は、洗浄して再び使用することができるが、洗浄に際してはより洗いやすいように、含浸する材料が落ちやすい表面加工をするのが望ましく、表面をフッ素樹脂などでコーティングするのが望ましい。
【0084】
(実施の形態2)
実施の形態1と同一部分は同一番号を付し、詳細な説明は省略する。実施の形態1ではハニカム構造体として、片波成形体を円柱状に巻き取ったが、図8に示すように、その芯部25を板状にして、これを中心にして、トラック状に巻き取った、トラック型ハニカム構造体26を作成しても良い。そして、保護具として、例えば半円形状の曲面を持った曲面状の押し板27と平面状の押し板28を組み合わせて使用することで、さまざまな形状でハニカム構造体の外周を保護できる。当然曲面を持つ曲面状の押し板27は半円形状でなくとも良い。
【0085】
(実施の形態3)
実施の形態1、2と同一部分は同一番号を付し、詳細な説明は省略する。実施の形態2ではトラック型のハニカム構造体であったが、図9に示すように、何枚もの片波成形体を積み重ねて、角柱状ハニカム構造体29とし、これを4面から平面状の押し板30で覆ってもよい。
【0086】
(実施の形態4)
実施の形態1乃至3と同一部分は同一番号を付し、詳細な説明は省略する。実施の形態1乃至3の保護具として、保護具31内部に図10に示すような突起部32を設け、より、ハニカム構造体3の端面部が、空中に浮き、他のものと接触しないようにしてもよい。ただし、突起部32の大きさとしては、ハニカム構造体3の外周部のセルをなるべく塞がないように、ハニカム構造体3を支えられる最小の大きさとし、数も、少なくするのが望ましい。また、突起部32はハニカム構造体3を支える両端部にそなえるのが望ましいが、上下端面で同じ位置に突起がこないようにするのが望ましい。なお、突起としては、保護具31の一部をエンボス加工によって、保護具31の内部に凸部をもうけたり、保護具31内部に、溶接などによって凸部を溶着などするのが望ましい。
【0087】
(実施の形態5)
実施の形態1乃至4と同一部分は同一番号を付し、詳細な説明は省略する。実施の形態1では、材料の液への含浸が1回であったが、含浸から、余剰液落し、そして乾燥の工程は複数回で行なっても良い。この際、1回目の含浸と、余剰液落しの向きを反対にすると、材料の担持ムラがより少なくなる。また、1回目と同様に、余剰液を落とした後、反転して、通風して乾燥するのがよい。
【0088】
(実施の形態6)
実施の形態1乃至5と同一部分は同一番号を付し、詳細な説明は省略する。実施の形態1乃至5で、なお、得られたハニカム構造体は保護板を取り外し、吸着剤が変化しない範囲で焼成を行ない有機分を焼き飛ばすと、無機分のみのハニカム状素子が得られ、高耐熱性の素子が得られる。
【0089】
(実施の形態7)
実施の形態1乃至6と同一部分は同一番号を付し、詳細な説明は省略する。実施の形態1乃至6の材料として、吸着剤を用いたが、吸着剤はとくに用いず、コロイダルシリカ、珪酸ソーダ、珪酸リチウムのうち少なくともひとつを含む無機バインダのみの液に含浸する。そして焼成することで、得られるハニカム構造体は、低圧力損失、大処理面積で、且つ高耐熱性のハニカム状触媒担体素子が得られる。また、得られるハニカム構造体をスライスして、希望のサイズの複数のハニカム状触媒担体素子としてもよい。
【0090】
(実施の形態8)
実施の形態1乃至7と同一部分は同一番号を付し、詳細な説明は省略する。実施の形態1乃至7では、材料を担持したものを、そのままハニカム状の素子としたが、得られたハニカム構造体を希望のサイズにスライスし、ひとつのハニカム構造体から、材料担持量が安定した素子が得てもよい。
【実施例】
【0091】
ハニカム構造体のシートとして、ガラス繊維と無機鉱物と有機繊維と有機バインダーを配合したシートを片波成形体に加工し、これを巻取り、直径195mmの円柱状のハニカム構造体を作成する。また、0.5mmのステンレス板を同じく直径195mmとなるようにまき型が付くように加工する。また、ステンレス板の巻き部分の両端には実施の形態1で示したような、ステンレス板の留め具を設ける。また、ステンレス板は、195mmの直径円柱状に巻いたときに40mm程度重なる部分を設け、ハニカム構造体の直径のずれに対応できるようにする。
【0092】
上記ハニカム構造体に、上記ステンレス板を巻きつけ、留め具によって固定する。このとき、ハニカム構造体の両端面が、ステンレス板の円柱の底面にあたる部分より出ないように浮かせるように固定する。
【0093】
この保護具付きハニカム構造体を、材料の分散液に含浸する。材料の分散液はゼオライトと無機バインダの分散液とする。
【0094】
実施の形態1に示すように十分にハニカム構造体に分散液を含浸し、シート中に浸透、付着させたのち、引上げる。このとき、上面をA面、下面をB面と定め、ブロアによって、A→B方向への上方からの通風を行い、ハニカムセル内に残った余剰液を吹き落とす。
【0095】
余剰液を吹き落としたのちに、ハニカム構造体の上下面を反転させ、つまりB面を上にして、B→A方向への上方からの通風をする。
【0096】
重量測定にて、重量減がなくなったことを確認して、乾燥状態とする。得られたハニカム構造体について、B面を上にして、再度含浸を行なう。このときの分散液は1回目の含浸液と同じ物を用いる。1回目と同様に含浸、引上げ後、B面を上にして、B→A方向への上方からの通風を行い、ハニカムセル内に残った余剰液を拭き落とす。余剰液を吹き落としたのちにハニカム構造体の上下面を反転させ、A面を上にして、A→B方向へ上方から通風を行なう。
【0097】
乾燥後、2回目とまったく同じ方向から含浸、余剰液落し、反転し乾燥を行なう。
【0098】
3回の含浸の後、保護具を外し、ハニカム構造体を焼成し、有機分を焼き飛ばしたのち、円柱高さ方向に垂直になるように7枚にスライスし、それぞれのハニカム状吸着素子を得る。高さ方向による素子の重量を図11に示す。
【0099】
また、1回のみの含浸、2回のみの含浸についても乾燥後、保護具を外し、ハニカム構造体を焼成し、有機分を焼き飛ばしたのち、円柱高さ方向に垂直になるように9枚にスライスし、それぞれのハニカム状吸着素子を得、その素子重量について測定した。高さ方向による素子の重量からそれぞれの素子に担持した量をもとめ、おのおのの含浸1回当りの平均値として、含浸回数によって素子の担持のばらつきが減少するかどうかを検討した。その結果を図12に示す。
【0100】
(比較例1)
実施例の保護具付きハニカム構造体を含浸後、A→B方向に上方から通風し、反転せず、A→B方向に上方から通風して、乾燥した。2回目、3回目の含浸から余剰液落し、乾燥は、B面を上にして、B→A方向に上方から通風し、反転せず、B→A方向に上方から通風して乾燥を行なった。実施例と同様に保護具を外し、ハニカム構造体を焼成し、有機分を焼き飛ばしたのち、円柱高さ方向に垂直になるように7枚にスライスし、それぞれのハニカム状吸着素子を得る。高さ方向による素子の重量を図11に示す。
【0101】
(比較例2)
外周の保護板をつけずに比較例1と同様の方法で含浸、余剰液落し、乾燥を行なった。このときの含浸後のハニカムを、5mm×5mmの網目のステンレス網の上において余剰液落し、乾燥を行なった。比較例1と同様に3回の含浸と、余剰液落し、乾燥を行なった後、ハニカム構造体を焼成し、有機分を焼き飛ばしたのち、円柱高さ方向に垂直になるように7枚にスライスし、それぞれのハニカム状吸着素子を得る。高さ方向による素子の重量を図11に示す。
【0102】
その結果、実施例1において、本発明のハニカム状素子の製造方法が材料の担持量の均一化に効果があることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
吸着剤等を担持したハニカムフィルタの大量の製造で、材料を一定の量均一に担持することが出来、厚いハニカム構造体を作成し、これをスライスしても、担持量が均一な素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施の形態1の保護板で固定したハニカム構造体を示す概略図
【図2】同保護板で固定したハニカムの構造体が床面より浮いていることを示す概略図
【図3】同片波成形体が蛇行している概略図
【図4】同保護板をネジとボトルで固定することを示す概略図
【図5】同フックつき留め具の概略図
【図6】同保護具つきハニカム構造体の含浸と余剰液落し工程の概略図
【図7】同保護具付きハニカム構造体の乾燥工程の概略図
【図8】本発明の実施の形態2のトラック型ハニカム構造体と保護具を示す概略図
【図9】本発明の実施の形態3の角柱状ハニカム構造体と保護具を示す概略図
【図10】本発明の実施の形態4の保護具の突起を示す概略図
【図11】本発明の実施例1、比較例1、2のハニカム高さ方向の素子重量の比較グラフ
【図12】本発明の実施例1の1回、2回、3回含浸によるハニカム高さ方向の担持物の重量比較のグラフ(含浸1回当りの平均量)
【図13】従来技術の片波成形体の概略図
【図14】従来技術のハニカム状積層体の概略図
【符号の説明】
【0105】
1 平面シート
2 波形シート
3 ハニカム構造体
4 保護板
5 保護板の上端面
6 保護板の下端面
7 通気上端面
8 通気下端面
9 床面
10 距離
11 留め具
12 蛇行部分
13 長さ調整部
14 ネジ
15 ボルト
16 保護板
17 長さ調節部
18 フック
19 引張レバー
20 保護具付きハニカム構造体
21 スラリー
22 含浸
23 ブロア
24 余剰液
25 芯部
26 トラック型ハニカム構造体
27 曲面状の押し板
28 平面状の押し板
29 角柱状ハニカム構造体
30 平面状の押し板
31 保護具
32 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚を平らなままの平面シート、他方を波形に成形加工した波形シートとし、前記平面シートと波形シートを波形シートの稜線部で接合し片波成形体を形成した後、前記片波成形体を積層して得られるハニカム構造体に材料の分散液を浸透せしめ、その後、ハニカム構造体の通気端面が空中に浮いた状態に保持したまま、乾燥することを特徴としたハニカム状素子の製造方法。
【請求項2】
ハニカム構造体の外周面より大きく、少なくともハニカム構造体の通気方向より長い保護具で、ハニカム構造体の通気端面より保護具の端面が突き出た状態になるように固定し、この保護具つきのハニカム構造体に材料の分散液を浸透せしめ、これを乾燥すること特徴とした請求項1記載のハニカム状素子の製造方法。
【請求項3】
ハニカム構造体が片波成形体を巻取り積層して作成した円柱状であり、保護具が金属製の板で円柱上に曲がった形に加工されていることを特徴とする請求項2のハニカム状素子の製造方法。
【請求項4】
ハニカム構造体が片波成形体を巻取り積層して作成した円柱状であり、保護具が円柱状でありその外周距離を調整でき、かつ外周距離を一定に固定できる手段をもつことを特徴とする請求項2または3記載のハニカム状素子の製造方法。
【請求項5】
ハニカム構造体の外周に沿うように複数に分かれた曲面もしくは平面もしくはその両方を持つ保護具を用いてハニカム構造体の外周を固定して、ハニカム構造体の通気端面を浮かせ、材料の分散液を浸透せしめ、その後、ハニカム構造体の通気端面が空中に浮いた状態を保持したまま、乾燥することを特徴とする請求項1記載のハニカム状素子の製造方法。
【請求項6】
保護具のハニカム構造体を固定する面に、突起をもうけ、ハニカム構造体の端面を支えることで、保護具の端面がハニカム構造体の端面より突き出た状態にする保護具であることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載のハニカム状素子の製造方法。
【請求項7】
保護具の表面の一部もしくは全てが、材料が付着しにくい表面であるか、もしくは保護具の表面に材料が付着しにくい加工を施されていることを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載のハニカム状素子の製造方法。
【請求項8】
保護具の表面の一部もしくは全てにフッ素樹脂でコーティングがされていることを特徴とする請求項7記載のハニカム状素子の製造方法。
【請求項9】
ハニカム構造体が少なくとも有機繊維と無機繊維を含む材料から構成され、ハニカム構造体に浸透させる材料の分散液が、コロイダルシリカ、珪酸ソーダ、珪酸リチウムのうち少なくともひとつを含む無機バインダであり、これをハニカム構造体に担持、乾燥し、焼成することによってハニカム構造体中の有機成分を焼き飛ばすことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のハニカム状素子の製造方法。
【請求項10】
ハニカム構造体が少なくとも有機繊維と無機繊維を含む材料から構成され、ハニカム構造体に浸透させる材料の分散液が、少なくともゼオライト、シリカゲル、活性炭、酸化アルミナ、シリカアルミナのうちひとつを含む吸着剤と、無機バインダとの水分散液であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のハニカム状素子の製造方法。
【請求項11】
ハニカム構造体通気方向を上下向きにして、材料の分散液に含浸し、これを引上げたのち、通気端面上方より通風によって余剰液を落とし、その後少なくとも1回はハニカム構造体の上下を反転し、上方より通風し、乾燥することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のハニカム状素子の製造方法。
【請求項12】
ハニカム構造体通気方向を上下向きにして、材料の分散液に含浸し、これを引上げたのち、通気端面上方より通風によって余剰液を落とし、その後少なくとも1回はハニカム構造体の上下を反転し、上方より通風して乾燥するという、含浸から乾燥までの工程について、2回目以降の工程のハニカム構造体を1回目の向きと上下を反対向きにして複数回繰り返すことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のハニカム状素子の製造方法。
【請求項13】
余剰液を落とすための風速が通気による乾燥の風速より速いことを特徴とする請求項11または12記載のハニカム状素子の製造方法。
【請求項14】
ハニカム構造体を片波成形体を積層して構成する際に、接触部に接着剤を用いずに、ハニカム構造体の外周を保護具にて成形し、保形して材料の分散液を浸透せしめ、その後ハニカム構造体の通気端面が空中に浮いた状態に保持したまま、乾燥することを特徴とした請求項1乃至13のいずれかに記載のハニカム状素子の製造方法。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の製造方法で作成したハニカム構造体をスライスして複数得ることを特徴とするハニカム状素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−268462(P2007−268462A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98850(P2006−98850)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】