説明

ハニーブッシュの抗糖尿病性抽出物

糖尿病を治療するための、ハニーブッシュ由来の新規かつ有用な組成物が提供される。本発明は、詳細には2型糖尿病の治療に関する。本発明の植物抽出物は、約1mg/kg体重から約5mg/kg体重までの量、好ましくは約2.5mg/kg体重までの量で投与すると
優れた抗糖尿病効果を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然物の分野に関し、より詳細には糖尿病の治療に有用な植物抽出物(植物エキス)および化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
非感染性疾患である糖尿病は、2つの主要な型、即ち1型糖尿病(T1D)および2型糖尿病(T2D)に分別することができる。T1Dは、β細胞の自己免疫性を特徴とする。T2Dでは、膵臓β細胞がインスリンを不十分にしか産生せず、末梢組織(肝臓、筋肉および脂肪組織)がインスリンの作用に対して「抵抗性」になる、即ちグルコースの取込みがこれらの標的組織において非効率になる。β細胞はT2Dの後期段階に破壊されることも多く、患者はインスリン治療に依存するようになる。糖尿病患者のうち、約5〜10%は1型糖尿病であり、90〜95%は2型糖尿病である。主な糖尿病合併症としては、網膜症、脳血管疾患、冠動脈心疾患、ニューロパシー、末梢血管疾患、潰瘍および手足等の切断が挙げられる。こうして糖尿病は、身体全体の複数の器官および組織に影響を及ぼす。糖尿病の発症に寄与する因子としては、民族性(特に、移民の場合、特定の集団でT2D発生率が高い)、肥満、高脂肪食、子宮内環境、インスリン抵抗性および特定の候補遺伝子が挙げられる。
【0003】
2型糖尿病の発生率は、世界的に増加している。遺伝的要因もその役割を担う可能性があるが、生活習慣の変化、例えば高脂肪の西洋食を取り入れたことで肥満となり、それがこの疾患が増加する要因にもなり得る。生活習慣の要因、例えば脂肪摂取量の増加および運動量の減少が、肥満およびインスリン抵抗性に関連することが示されている(非特許文献1および2参照)。ラットでは、高脂肪食はインスリン刺激による解糖およびグリコーゲン合成の低下に関連したインスリン抵抗性の状態を誘発する(非特許文献3参照)。この疾患は、末梢インスリン応答組織、例えば筋肉および脂肪組織がインスリン応答性を著しく低下させ、血中のグルコースおよび脂肪酸の循環が増加した結果である。インスリンへの応答性が低いと解糖が減少し、その一方で、健常な状態ならインスリンによりスイッチが切られている肝臓での糖新生およびグリコーゲン分解が開始する。膵臓β細胞は、過剰なインスリンを産生し、分泌されるインスリン量を増加させることにより、初期インスリン抵抗期を切り抜けることができる(非特許文献4参照)。正常血糖を維持するために結果的に高インスリン血症となり、最終的に細胞の機能不全となり(非特許文献5参照)、顕性糖尿病となる。2型糖尿病が末梢および細胞レベルの両方で生じる傷害に依存することは明白である(非特許文献6参照)。
【0004】
インスリン抵抗性とそれに続くβ細胞の不全が、正常な耐糖能から耐糖能障害を介したT2Dへの進行に影響を及ぼす主因であることは確定されている。田舎から都会への移住に伴う生活習慣の変化が、都会の黒人南アフリカ人の肥満を増加させ、これがインスリン抵抗性につながるが、これはT2Dのもう一つの特徴である。インスリン抵抗状態を補うために、β細胞はより多くのインスリンを産生し、このため既にオーバーワークとなったβ細胞への要求が高まり、β細胞が疲弊して最終的にはβ細胞不全となる。
【0005】
1985年には世界の推定3000万人が糖尿病であった。1995年までにその数は1億3500万人に増加した。近年の世界保健機関(WHO)の推定では、2025年には122%増加して、3億人が糖尿病となるようである。これは、2025年に3億3300万人が糖尿病になり(罹患率6.3%)、4億7200万人が耐糖能障害と診断される(IGT;罹患率9%)という国際糖尿病連合(IDF)の推定と一致する。先進国では5100万人から7200万人に42%増加し(過体重および肥満の人が増加して、糖
尿病になるリスクが上昇)、発展途上国では8400万人から2億2800万人に170%増加する(食事の変化、身体活動の増加および急速な都市化など多数の因子により)と推定される。こうして糖尿病はこれまでは先進国の人々に影響を及ぼす西洋型の生活習慣病の疾患とみなされていたが、現在の傾向から2025年までに糖尿病の全人口の75%が発展途上地域の人になることが示唆されている。発展途上地域の糖尿病発生率を高める別の因子は、発達プログラミングである。発展途上地域の多くの区分では、人々は子宮内で食糧不足(栄養不足)にさらされ、続いて生後に栄養過剰となることが多く、それがヒトにT2Dの素因を与えることが示された。更に現在では総数11億人が過体重であり、3億2000万人が肥満である(IDF)。これが、肥満の多大な世界的経済負担を高めているが、肥満は糖尿病発生の主な危険因子であるため、これはすでに多大となっている糖尿病関連の経済負担を更に悪化させる可能性がある。
【0006】
最小データに基づく南アフリカの控えめな推定値によれば、2000年の560万人から2010年には800万人増加すると予測されている。この最大の増加は、都市化を原因とする可能性が高く、それは黒人人口での生活習慣と、低脂肪食から高脂肪食への食事変化を伴うためである。1998年の数字は、都市の黒人南アフリカ人でT2D発生率が上昇し、その年齢別罹患率が8%近くにのぼり(非特許文献7参照)、1974年に発表された数字4.2%(非特許文献8参照)のほぼ2倍であることを示す。1996年の南アフリカでの死因上位20位のデータ(非特許文献9参照)から、糖尿病が男性の10位、女性の7位であることが明らかとなった。しかし糖尿病の合併症、例えば虚血性心疾患ならびに他の心臓血管および腎臓合併症が、死亡数に著しく寄与しており、調整した数字では、糖尿病が南アフリカでの死因の上位3または4位となる可能性がある。T2Dの発生率は、南アフリカのHIVよりも大きく、つまりT2Dが国家的な注意事項であることは確かである。
【0007】
糖尿病は高くつく疾患であり、南アフリカでの糖尿病治療にかかる経費の情報は入手できないが、間接的な経費が多く存在する。これらには、生活の質の低下、コミュニティーおよび全労働人口に寄与する能力ならびに経済へのその影響が挙げられる。これは、医療支援計画(Medical Aid Schemes)への経費増加により悪化して、医療支援保険料(Medical Aid premiums)を上昇させる。糖尿病は、経済にも直接、影響を及ぼす。南アフリカでの糖尿病関連の会計データはないが、英国で発表されたデータから、現在、糖尿病およびその合併症と診断されている英国の150万人を超える成人では、ナショナル・ヘルス・サービス(National Health
Service)(NHS)の総経費が1年あたり52億ポンドであり、それがNHSの総運営費の9%であることが示された。米国では、推定される直接費用は440億米国ドルであり、生産性の損失を加えるとこの数字は980億米国ドルに上昇する。同様の数字を、他の多くの国々についても得られる。
【0008】
T2Dは、血漿グルコースレベルの上昇により診断される。しかし我々の過去の研究から、血糖値が上昇する時点までに、心臓血管系および膵臓に既に重篤な障害が生じていることが示された。血糖値上昇により糖尿病と診断された後に、例えば食事および運動ならびに/または利用可能な医薬処理などの治療によって血漿グルコースレベルを一時的に改善させることはできるが、疾患の進行を止めることはできない。これらの治療が不能となる割合は、β細胞が低下し続ける割合に関係する。現在の治療は、インスリン注射もしくはインスリン放出の刺激および/または医薬の作用を伴う。
【0009】
膵臓によるインスリン産生の損傷から糖尿病状態に至るまでを説明する理論は多く存在する。2つの論文を参照する(非特許文献10および11参照)。これらの論文は、膵島の炎症がインスリン産生を妨害することを示している。具体的には膵島でインスリンを産生するβ細胞が、免疫攻撃により破壊される。そのようなβ細胞の破壊は、NK(ナチュ
ラルキラー)細胞およびダブルネガティブTリンパ球など複数の型の免疫細胞から攻撃を受けるためと認識されている。
【0010】
糖尿病は、治癒方法が知られておらず、潜行性であると考えられている。しかし、様々な治療を用いて、糖尿病が改善されてきた。例えば糖尿病の測定値を用いて、患者のタンパク質、脂肪、および炭水化物の相対量の均衡が保たれてきた。糖尿病の教育および認識プログラムも、いくつかの国で実行されてきた。加えて中等度または重度の糖尿病状態は、インスリン投与により治療されている。同じく「グルコシド」などの処方薬を用いて、成人発症の糖尿病で損傷されたインスリン産生を活性化させている。他の薬物を用いて、インスリンの有効性を調節している。いずれの場合でも、若年または成人のいずれかで発症した糖尿病の治療は、部分的にしか成功に至っていない。これは、ほとんどの薬物がβ細胞機能改善またはインスリン抵抗性の低下のいずれかを目的としており、疾患が徐々に増悪すると効果が減少するためである。このため患者は、疾患を抑制する薬物の併用(多くの場合、連日)を必要とする。
【0011】
メトホルミンなどのビグアニドは、1950年代後期に2型糖尿病の治療に使用できるようになり、それ以来、効果的な血糖降下剤となった(非特許文献12)。これらの薬剤の厳密な分子メカニズムは、ほとんど知られていない。メトホルミンは、インスリン抵抗改善薬として主に肝臓で作用し、そこでそれはグルコースの放出を抑制する(非特許文献13)。メトホルミンは、呼吸鎖の複合体Iの酵素活性を阻害することが示されたが、それによりミトコンドリア機能および細胞呼吸の両方を減じ、それを行うことでATP/ADP比が低下してAMPにより活性化されたプロテインキナーゼが活性化されると、短期的には触媒反応を起こし、長期的にはインスリン抵抗性改善を起こす(非特許文献14および15参照)。この薬物は、単独療法およびスルホニル尿素またはインスリンとの併用の両方に効果的であることが立証された(非特許文献16参照)。若年性糖尿病は、発生率が増加しつつある世界的現象である。β細胞の発生、分化および機能にとって重要となる幾つかの主要な転写因子が、若年性糖尿病に関与する。これらの幾つかは、現在用いられる治療薬の直接の標的である。現在用いられる糖尿病薬の経費は非常に高く、より安価な代替治療の開発が有利となろう。T2Dの世界的負担は多大である。利用可能な糖尿病治療に持ちこたえて、罹患した患者の生活の質を改善する戦略的行動が必要である。これは、発展途上地域では特に当てはまる。このため、科学者たちは自国の生来の植物抽出物の有効性を研究している。
【0012】
ハニーブッシュ(シクロピア(Cyclopia)種)は、南アフリカ共和国のウエスタン・ケープ州およびイースタン・ケープ州原産であり、蜂蜜のように、快く穏やかに甘い味と芳香を有するハーブティーを製造するために使用される。1990年代に、ハーブティーとしての、および通常の茶(カメリア・シネンシス(Camellia sinensis)の代替物としてのハニーブッシュに対する関心が、現地市場および国際市場の両方で復活した。生産された大部分の茶は、現在国際的に市販されている。
【0013】
ハニーブッシュへの国際的関心は、オランダ人および英国人の茶貿易まで遡る。後にケープタウンとなった入植地が、インドのお茶および東南アジアの香辛料を取引していたオランダの東インド会社の供給拠点として1652年に確立された。植物学者は、その後すぐに岬の豊富な植物相のカタログを作成し始め、ハニーブッシュという植物は1705年までに植物学の文献に記された。ハニーブッシュは入植者により、恐らく観察による原産地の慣習に基づいて、通常の茶の適切な代替物とすぐに認められた。1814年には、ケープ植民地が英国の支配下に入り、数年後には英語が公用語となったが、これは南アフリカの知識を英国と米国を広げるのを促進した。1871年(非特許文献17)には、ランゲバーグ(Langeberg)山とシュバルツバーグ(Swartberg)山に野生で生息する茶(「バーグ茶」(bergtee)と呼ばれる)は、それらの地域で飲料と
して広範囲に使用されていたことに留意する。1898年版のアメリカ薬品解説書(King‘s American Despensatory)には、茶の見出しの下、南アフリカのケープ植民地の茶としてのハニーブッシュの使用を示す1881年からの報告書を参照して、ハニーブッシュは代替物として既に列挙されている。初期の入植者は、ハニーブッシュの煎じ汁を慢性カタルおよび肺結核の去痰薬としても使用していた(非特許文献18)。また、ハニーブッシュの煎じ汁は強壮薬としても使用されていた。非特許文献19によれば、ハニーブッシュは健胃薬(消化の援助薬)として評価されていた。
【0014】
ハニーブッシュという植物は、フィンボス(fynbos)の植物帯(バイオーム)で生育するマメ科(Leguminosae)の潅木である。バイオームは山脈によって境界を分けられた海岸沿いの狭い地域である。フィンボスは、主として小さな革のような葉を有する木のような植物により特徴付けられた植物の種類である(フィンボスは、細かい葉の植物を意味するオランダ語に由来する)。
【0015】
ハニーブッシュ植物は、三出葉、単生花を咲かせる花序、および甘く香る鮮黄色の花により容易に識別される。花は、花弁に目立つ溝があり、がくの基部が割り込んでおり(侵入している)、小花柄の周囲の基部で融合した2つの包葉を有している。シクロピアの属名は、がくの侵入する基部をほのめかすものであり、これは花の独特な外観に寄与している。 ハニーブッシュ植物は木のような茎と、茎に対して比較的低い葉の比と、殻の硬い種子を有する。茶のための最も望ましい構成要素は葉と花であるが、比較的無味の茎も製品に含まれている。
【0016】
大部分のハニーブッシュティーは、いまだ野生集団から収集されているが、産業の急速な成長に伴い栽培が必要になっている。南アフリカのこの狭い地域で識別されているシクロピアは約2ダースの種があるが、ハニーブッシュの商用供給源はシクロピア インターメディア(Cyclopia intermedia)とシクロピア サブターナタ(Cyclopia subternata)から主に得られる。ほとんどの種は分布範囲が非常に限られており、固有の生息地選好を有している。いくつかの種は、山頂、恒常河川、湿地領域、頁岩地帯または湿地の南斜面に限られている。シクロピア マキュレータ(Cyclopia maculata)、シクロピア ゲニストイデス(Cyclopia genistoides)およびシクロピア セシリフローラ(Cyclopia sessiliflora)等のいくつかの種が、家庭での消費用に使用されている。すべてのシクロピア種がお茶を作るのに適しているようであるが、味の品質は変わる場合があり、また、いくつかの種は非常に少量しか存在しない。
【0017】
葉形および葉のサイズは種間で異なるが、大部分は、薄い針のような細長い葉である。すべての種は、それらが特有の甘い蜂蜜の匂いのする特殊な濃黄色の花で覆われているため、開花期に野原で容易に識別される。伝統的に、茶は開花中に、種の開花期間に依存して、初秋または晩春のいずれかに収穫される。しかしながら、製品に対するより大きな需要があるため、今は収穫が夏に起こっている。
【0018】
南アフリカにおけるハニーブッシュの生産は、近年著しく成長している。1999年には、約50トンの植物が輸出され、2005年までに300トンまで成長しており、主な市場はドイツである。ほとんどの茶は輸出されるが、国内消費にも実質的な成長があった。茶は、従来の「発酵」(酸化)製品として主として売られており、緑(「無発酵」)のハニーブッシュは少量であり、最初の商用生産は2001年では地域市場と国際市場の両方で売られている。
【0019】
ハニーブッシュティーは単純なハーブの煎じ汁として作られる。茶代替品としてその初期に認識された利点の1つは、カフェインがないことであり、これは夜間に消費したり、
また、神経過敏に係っていて通常の茶を避けたい人に特に適している。その結果、ハニーブッシュティーは、特定の鎮静特性は有しないかもしれないが、気分を鎮める飲料としての評判を有していた。また、ブッシュ茶は通常の茶よりタンニン酸含量が低いため、いくつかの等級の紅茶または緑茶に関する問題であったり通常の茶が長く浸されすぎた場合の問題であったりする、非常に渋みのある茶にはならない。
【0020】
咳を治療するための茶の従来の使用は、一部分では、イノシトールに類似した修飾した糖であるピニトールの含量(グルコースの1つの位置の水素とメチル基が置き換わっている)によって説明され得る。ピニトールは、その主な供給源である松の木(パインツリー)から共鳴したものであるが、いくつかのマメ科植物の葉に見出され、去痰薬である。ピニトールは、実験室の動物試験で実証されているように血糖値低下作用を有するらしい(インスリンの作用を増加させ得る)ことに関心が向けられており、糖尿病薬と見なされている。ハニーブッシュは、キサントン、フラバノン、フラボン、イソフラボン、クメスタンおよび4−ヒドロキシ桂皮酸を含み、シクロピア種間にはフェノール化合物の質および量に差がある。マンギフェリンとヘスペリジンはシクロピア種における主要なモノマーのポリフェノールである。ポリフェノールは酸化防止剤として役立ち、血中脂質を保護するのを支援し得る。イソフラボンとクメスタンは、フィトエストロゲンとして分類され、ハニーブッシュが最近評価された応用例として、更年期症状の治療に使用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Lipman他,1972年
【非特許文献2】LovejoyおよびDiGirolamo,1992年
【非特許文献3】Kim他,2000年
【非特許文献4】Pirol他,2004年
【非特許文献5】Khan、2003年
【非特許文献6】Khan他,2000年
【非特許文献7】Levitt他,1993年
【非特許文献8】JoffeおよびSeftel
【非特許文献9】Bradshaw他,1996年
【非特許文献10】Diabetes Careに発表されたNerup J, Mandrup−Poulsen T, Molvig J, Helqvist S, Wogensen L, Egeberg J.、「Mechanisms of pancreatic beta−cell destruction in type I diabetes」1988年;11 補足1:p16〜23
【非特許文献11】「Autoimmune Imbalance and Double Negative T Cellls Associated with Resistant, Prone and Diabetic Animals」Hosszufalusi, N., Chan, E.,Granger.,およびCharles, M.;J Autoimmun, 5巻、p305〜18(1992年)
【非特許文献12】VigneriおよびGoldfine,1987年
【非特許文献13】Goldfine,2001年
【非特許文献14】Brunmair他,2004年
【非特許文献15】Tiikkainen他,2004年
【非特許文献16】DavidsonおよびPeters,1997年
【非特許文献17】Smith,1966
【非特許文献18】Watt&Breyer−Brandwijk,1932年
【非特許文献19】Marloth,1925
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
インスリンはその脂肪生成的効果のため、2型糖尿病患者の肥満を促進するという望ましからぬ影響を有する(Moller, D. E.(2001年) Nature 414巻:p821〜827参照)。不幸にも2型糖尿病患者のグルコース輸送を刺激するために現在用いられている他の抗糖尿病薬、例えばメトホルミンも、脂肪生成活性を有する。つまり現行の薬物療法は、血糖値の低下をもたらし得るが、多くの場合、肥満を促進する。したがって高血糖を治療する新しい組成物および治療方法が、望ましい。脂肪生成の副作用を伴わずにグルコース取込みを刺激する組成物が、特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によれば、糖尿病を治療するための、ハニーブッシュ由来の新規かつ有用な組成物が提供される。
意外にも、本発明の植物抽出物を体重kgあたり約1mg〜約5mg、好ましくは約2.5mgの量で投与すると、優れた抗糖尿病効果を示すことが見出された。
【0024】
従って、1〜2.5mg/kg体重の投与量で投与される、シクロピア属植物の水性抽出物
を含む抗糖尿病組成物を提供する。
本発明の治療は、本発明者がハニーブッシュ(シクロピア種、フィンボス)の水性抽出物が血糖値の抑制に効果的であることを見出したことから発見された。本発明による医療用途では、植物を回収し、乾燥させて、水および/またはアルコール、好ましくはエタノールなどの溶媒と混合する。
【0025】
したがって第1の態様において、本発明は、シクロピア属植物の水性抽出物を含む抗糖尿病組成物に関し、シクロピア属は、好ましくはシクロピア ゲニストイデス(Cyclopia genistoides)、シクロピア サブターナタ(Cyclopia subternata)、シクロピア インターメディア(Cyclopia intermedia)、シクロピア セシリフローラ(Cyclopia sessiliflora)、
シクロピア マキュレータ(Cyclopia maculata)、シクロピア ロンギフォリア(Cyclopia longifolia)、シクロピア ピリカータ(Cyclopia plicata)、シクロピア パベセンス(Cyclopia pubescens)、シクロピア ボーキシフロリア(Cyclopia bauxiflolia)、シクロピア マイヤリアナ(Cyclopia meyeriana)、および/またはそれらの組み合わせである。
【0026】
本発明の別の態様において、
(a)シクロピア植物またはその一部を提供するステップ、
(b)前記植物またはその一部を、前記植物抽出物の可溶化に適した水および/またはアルコール、好ましくはエタノールなどの非毒性溶媒と併用するステップ、
(c)前記植物抽出物を回収するステップ、および
(d)任意選択で乾燥させるステップ、
を含む抗糖尿病効果を有する植物シクロピアの治療抽出物を単離する方法が提供される。
【0027】
本発明者は、植物シクロピア属の抽出物を投与すると、特に糖尿病前状態とも呼ばれる糖尿病の初期段階で糖尿病の治療が可能になることを見出した。
つまり本発明は、植物シクロピア属由来の組成物、ならびに高血糖患者、特に2型糖尿病患者および過体重の糖尿病患者を治療する方法に関する。好ましい実施形態において、本発明は、高血糖の患者を治療するためのシクロピア植物抽出物を提供する。
【0028】
本発明は、高血糖の患者の血糖値を低下させる方法も提供する。その方法は、シクロピ
ア植物抽出物を高血糖患者に投与することを含む。その抽出物を注射により患者に投与することはできるが、好ましい投与方法は、経口投与を含む。その方法は、高血糖の患者および糖尿病患者を治療するのに有用である。その方法は、2型糖尿病に罹患していて特にその初期段階にある過体重の患者を治療するのに特に有用である。
【0029】
本発明者は、本発明の抽出物がGlut4およびGlut2の活性を独立した手法で上昇させるため、幾つかの例ではこれらのグルコーストランスポータが両者ともより活性化されるが、他の例ではそれらの一方のみが活性となることも見出した。したがって本発明は、シクロピアの抽出物をGlut4および/またはGlut2の活性を上昇させる量で、ほ乳類に投与するステップを含む、ほ乳類の糖尿病を抑制する方法も提供する。
【0030】
その結果、本発明は、その抽出物の活性成分をスクリーニングするのにも有用である。つまり本発明は更に、Glut4および/またはGlut2の活性を上昇させる化合物を決定するステップを含む、抽出物の特定の化合物をほ乳類における抗糖尿病活性についてスクリーニングする方法を提供する。
【0031】
シクロピアの水蒸気または水性抽出物が血糖の抑制に効果的であることを本発明者が見出したことから、本発明の治療が発見された。使用する場合、その植物を回収して乾燥させ、沸騰水と混合する。その後、抽出物を患者に一定周期で経口摂取させる。シクロピアは、フラボノイドおよび他の第2の植物産物が豊富であることが公知である。
【0032】
シクロピアから特異的なフラボノイドを抽出および分画し、それを糖尿病ラットに投与したところ、抽出物によるものと同様の結果が得られた。具体的に用いられたフラボノイドは、マンギフェリンおよびヘスペリジンであった。その後、これらのフラボノイドを併用すると最も効果的となることが発見された。実に意外なことに、特にマンギフェリンは、血糖の低下に効果的であり、T1DおよびT2Dラット両方の糖尿病症状を概ね改善するのに効果的であることが見出された。従来の知識はこの2種の糖尿病形態が基本的に異なる原因(それぞれβ細胞破壊および筋肉内でのインスリン抵抗性)を有すると教示しているため、この結果は予期せぬものであった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】GMP ARC137の製造に用いられる、シクロピア植物材料の水性抽出物のHPLCフィンガープリントを示す(A=288nmでのクロマトグラム;B=320nmでのクロマトグラム)。
【図2】GMP ARC137のHPLCフィンガープリントを示す(A=288nmでのクロマトグラム;B=320nmでのクロマトグラム)。
【図3】6時間のモニタリング期間でプロットされた、対照サル2匹の1時間あたりの血糖値を示す。ベースライン値(0時間)は、サルが維持食ボーラスを摂取する前の絶食時血糖値を表す。
【図4】対照群のベースライン血糖値から計算された平均血糖値低下率または上昇率を示す。血糖値はベースライン値前後を保持し、サルが維持食を70g摂取した後3、4および5時間目に、わずかに低い値が認められた。
【図5】6時間のモニタリング期間でプロットされた、1mg/kg GMP ARC137を摂取した実験群のサル3匹の血糖値を示す。ベースライン値(0時間)は、サルが1mg/kg GMP ARC137を含む維持食ボーラスを摂取する前の絶食時血糖値を表す。
【図6】ベースライン血糖値から計算された平均血糖値低下率または上昇率を示す。血糖の最大低下率は、1mg/kg GMP ARC137摂取後2時間目に生じた。顕著に低い血糖値が、3および4時間目に依然として保持された。
【図7】6時間のモニタリング期間でプロットされた、2.5mg/kg GMP ARC137を摂取した実験群のサル3匹の血糖値を示す。ベースライン値(0時間)は、サルが2.5mg/kgをGMP ARC137を含む維持食ボーラスを摂取する前の絶食時血糖値を表す。
【図8】ベースライン血糖値から計算された平均血糖値低下率または上昇率を示す。血糖の最大低下率は、1mg/kg GMP ARC137摂取後2時間目に生じた。著しい血糖値低下が、その後、この低下したレベルはモニタリング期間の全6時間にわたり保持された。
【図9】6時間のモニタリング期間でプロットされた、5mg/kg GMP ARC137を摂取した実験群のサル3匹の血糖値を示す。ベースライン値(0時間)は、サルが5.0mg/kg GMP ARC137を含む維持食ボーラスを摂取する前の絶食時血糖値を表す。
【図10】ベースライン血糖値から計算された平均血糖値低下率または上昇率を示す。GMPを受けて2時間目に、わずかな減少ではあるが平均血糖値の割合がベースラインより低い値まで低下し、残りの4時間のモニタリング期間、このレベルが保持された。
【図11】6時間のモニタリング期間でプロットされた、25mg/kg GMP ARC137を摂取した実験群のサル3匹の血糖値を示す。ベースライン値(0時間)は、サルが2.5mg/kgGMP ARC137を含む維持食ボーラスを摂取する前の絶食時血糖値を表す。
【図12】ベースライン血糖値から計算された平均血糖値低下率または上昇率を示す。25mg/kg GMP ARC137を摂取した後の血糖値の割合は、モニタリング期間の1時間ごとのすべての時点でベースライン値よりもわずかに低く、血糖値最大低下率は3時間目に生じた。
【図13】単回の25mg/kg GMP ARC137経口投与の後、3時間実施されたOGTT(1g/kgグルコース)の結果を示す。得られたSTZラットの血漿グルコースレベルは、摂取された時間全ての対照グルコース値と比較して低かった。
【図14】単回の1mg/kg GMP ARC137経口投与の後、3時間実施されたOGTT(1.75g/kgグルコース)の結果を示す。得られたサルNo.78の血漿グルコースレベルは、未処理サルグルコース値と比較すると、最初の90分間低かった。
【図15】7日間、ベルベットモンキーに異なる投与量の抽出物(ARC137)で処理した後の6時間にわたる血漿グルコースの低下率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の記載を、当業者が本発明を製造および使用できるようにし、本発明者が予期する本発明実施の最良の形態を説明するために提供する。しかし、フラボノイドの投与を介して、特に本発明による植物抽出物の投与を介して、インスリン依存性およびインスリン非依存性の両方の糖尿病の治療を提供するために、本発明の一般原理を本明細書に具体的に定義しているため、当業者には容易に様々な改良が明白であろう。
定義
用語「糖尿病」は、一般にグルコースの産生および使用における代謝欠損により、体内で適切な血糖値を保持することができなくなることを特徴とする疾患または状態を意味する。これらの欠損の結果が、高血糖と呼ばれる血糖値の上昇である。2種の主な糖尿病形態が、1型糖尿病および2型糖尿病である。先に記載されたとおり1型糖尿病は、一般にインスリン、つまりグルコース利用を調節するホルモンの絶対的な欠乏の結果である。2型糖尿病は、多くの場合、正常または高いインスリン値であるにもかかわらず起こり、組織がインスリンに適宜応答することができないために生じる可能性がある。ほとんどの2型糖尿病患者は、インスリン抵抗性であり、インスリンの相対的な欠乏を有し、その場合、インスリン分泌物によって末梢組織によるインスリン応答への抵抗を補うことができない。加えて、多くの2型糖尿病は、肥満でもある。他の型のグルコース恒常性障害には耐糖能障害があり、これは正常なグルコース恒常性と糖尿病の間の中間的な代謝状態である。2型糖尿病および耐糖能障害の診断のガイドラインは、米国糖尿病学会(Americ
an Diabetes Association)により要約されている(例えば、The Expert Communittee on the Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus, Diabetes Care,(1992年)2巻(補足1):S5〜19)。
【0035】
用語糖尿病の「症状」としては、非限定的に、多尿症、多飲症、多食症、高インスリン血症、および本明細書で用いられる高血糖が挙げられ、その一般的な用法を含む。例えば「多尿症」は所定の期間に多量の尿が通過することを意味し;「多飲症」は慢性の口渇を意味し;「多食症」は過食を意味し、高インスリン血症は高レベルの血中インスリンを意味する。糖尿病の他の症状としては、例えば特定の感染の感受性上昇(特に真菌およびブドウ球菌感染)、吐気、およびケトアシドーシス(血中ケトン体の産生増加)が挙げられる。
投与量
ハニーブッシュ(シクロピア種)植物抽出物を、治療上有効な量、患者に投与する。本明細書で用いられる用語「治療上有効な量」は、有意義な効果、即ち患者の血糖値の低下を示すのに十分な総量を意味する。有意義な結果を得るのに必要な植物抽出物の投与量は、当業者がこの開示を参照すれば、適切な制御を行いながら日常的試験を実施することにより決定することができる。適切な処理群を対照と比較すれば、特定の投与量が患者の血糖値低下に効果的かどうかが示されよう。経口投与の場合、抽出物は、少なくとも0.1mg/kg体重、好ましくは少なくとも1mg/kg体重、より好ましくは少なくとも2.5mg/kg
体重、より好ましくは少なくとも5mg/kg体重、最も好ましくは少なくとも25mg/kg体重、例えば少なくとも50mg/kg体重、少なくとも75mg/kg体重、少なくとも100mg/kg
体重、少なくとも250mg/kg体重、および少なくとも500mg/kg体重の用量でなければならない。
【0036】
必要な植物抽出物の量は、治療される状態の性質および重症度、ならびに患者が受けた以前の治療の性質に依存する。最終的に投与量は、臨床試験を用いて決定される。最初、医師は動物試験から得られた用量を投与する。有効量は、1回の組成物投与により実現することができる。あるいは有効量は、患者に組成物を多回投与することにより実現される。インビトロでは、生物学的に有効量、即ちグルコース取込みを誘導するのに十分な量を2倍増量で投与して、活性範囲全体を決定する。経口、皮下および静脈内投与の有効性は、臨床試験で決定される。抽出物の単回投与が有利となる場合があるが、多回投与が好ましいと予測される。
送達
ハニーブッシュ植物抽出物の投与は、好ましくは経口投与による。それほど好ましくはないが、抽出物を注射により投与してもよい。経口投与に適した本発明の製剤は、分別単位、例えばそれぞれが所定量の活性化合物を含むカプセル、カシェ、錠剤、ボーラスまたはロゼンジとして;粉末または顆粒として;液体形態として、例えば水溶液、懸濁液、シロップ、エリキシル、エマルション、分散体などとして与えられてもよい。抽出物は、ピルの形態(カプセル中の粉末または濃縮液)、または(紅茶またはコーヒーを飲むのと同様に)水に入れた後で摂取され得ることができる粉末形態(例えば粒子状に圧縮された乾燥粉末)で投与してもよい。
【0037】
非経口投与に適した製剤は、簡便には、例えば好ましくはレシピエントの血液と等張の注射、生理食塩水、ポリエチレングリコール溶液などに、活性化合物の滅菌製剤を含む。有用な製剤は、適切な溶媒で希釈すると、非経口投与に適した溶液が得られる、ハニーブッシュ植物抽出物含有濃縮溶液または固体も含む。
【0038】
本発明の製剤は、前述の成分に加えて、医薬製剤の技術分野で用いられる任意の補助成分、例えば希釈剤、緩衝液、着香剤、着色剤、結合剤、界面活性剤、増粘剤、滑剤、懸濁
剤、防腐剤(酸化防止剤など)などの1種以上を更に含んでいてもよい。
【0039】
適応症に効果的となるのに必要なハニーブッシュ植物の量は、もちろん治療される各ほ乳類により変動し、最終的には医療または獣医の実施担当者の判断にゆだねられる。判断される因子としては、治療される状態、投与経路、製剤の性質、ほ乳類の体重、表面積、年齢および一般状態、ならびに投与される個々の抽出物が挙げられる。日用量の総量を単回投与、多回投与、例えば1日2〜6回、または選択された期間の静脈内注入により投与してもよい。先に引用された範囲を超える投与量またはそれ未満の投与量は、本発明の範囲に含まれ、所望の場合および必要な場合には、それを各患者に投与してもよい。
【0040】
組成物は、生物学的に有効量のハニーブッシュ植物抽出物と、任意選択で相対的に不活性な担体とを含む。そのような担体の多くは、日常的に用いられ、医薬の教科書を参照すれば同定することができる。許容される担体は、生理学的に許容される希釈剤または佐剤である。用語「生理学的に許容される」は、類似物の効果を妨害しない非毒性材料を意味する。担体の特性は、投与経路および組成物中の各化合物または化合物の組み合わせに依存する。そのような製剤の調製は、当該技術分野のレベルに含まれる。組成物は、類似物の活性を高めるか、またはその活性を補う他の薬剤を更に含んでいてもよい。組成物は、充填剤、塩、緩衝物質、安定化剤、可溶化剤、および当業者に周知の他の材料を更に含んでいてもよい。
【0041】
本発明によるキサントンおよびフラボノイドに関しては、以下のことが挙げられる。
マンギフェリンは、ハニーブッシュ中に見出される天然分子である。その分子は、キサントンとして分類される。
【0042】
マンギフェリンは以下の化学構造を有する。
【0043】
【化1】

式中、R1=R3=R6=R7=OHおよびR4=R5=R8=Hである。
【0044】
イソマンギフェリンも、天然分子に存在し、以下の構造を有する。
【0045】
【化2】

式中、R1=R3=R6=R7=OHおよびR2=R5=R8=Hである。
【0046】
その天然源の誘導体はR1、R3、R6またはR7の位置にO−メチル基(−OCH3)
またはグリコシル基(−C6H11O6)を有し得る。
マンギフェリンにより形成されるすべての化合物、その異性体、およびその誘導体は、以下の一般式Iに対応する。
【0047】
【化3】

式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は−H、−OH、−OCH3およびグ
リコシルラジカルから選択される。
【0048】
式Iの化合物は、本発明の直物材料(ハニーブッシュ)からの抽出を含め、種々の手段より入手することが可能である。
代わりに、式Iの化合物は、任意の抽出または精製プロセス(例えば水、アルカノール、またはこれらの溶媒の混合物等の極性溶媒による抽出と、それに続く結晶による精製または当業者に周知の他のプロセスによる精製)を使用して、そのような化合物を含むことが分かっている植物の全部または一部の精製より得られ得る。これらの方法のいくつかが例えばフランス国特許出願公開公報FR−A−2 486 941号で公表されている。化合物は、化学的にまたは酵素的に得られてもよい。これに関し、方法が特に以下の2つの論文に記載されている:Bhatia-V-K et al., Tetrahedron Lett. (14), p. 1741 -2 およびNott-P-E, Phytochemistry, Vol. 6(1 1 ), p. 1597-9。
【0049】
ヘスペリジンもまた、ハニーブッシュに見出される天然分子である。ヘスペリジン (7−[6−O−(6−デオキシ−α−L−マンノピラノシル)−D−グルコピラノシル]オキシ]−2,3−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4H−1―ベンゾピラン−4−オン)と、そのアグリコンであるヘスペレチンが本発明者らにより想定される。本発明者らは、式IIの等価なフラボン/フラバノン誘導体もまた想定する。
【0050】
【化4】

式中、互いに独立して、R1はH、OH、または−O−Glyであり、
R2、R6、R9およびR10は同じであっても異なっていてもよく、H、OH、アルコキ
シ、ヒドロキシアルコキシまたはC3−C7−シクロアルコキシであり、
R3はH、C1−C4アルキルまたはC3−C7−シクロアルコキシであり、
R4はH、OH、−O−Gly、アルコキシ、ヒドロキシアルコキシまたはC3−C7−
シクロアルコキシであり、
R5はH、C1−C4アルキル、OH、アルコキシ、ヒドロキシアルコキシまたはC3−
C7−シクロアルコキシであり、
R7とR8は同じであっても異なっていてもよく、H、OH、アルコキシ、ヒドロキシアルコキシ、C3−C7−シクロアルキル、チオ(C1−C4)アルキル、または―NR11R12であり、
R11およびR12は同じであっても異なっていてもよく、HまたはC1−C4アルキルを意味してよく、アルコキシおよびヒドロキシアルコキシは1−18個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を含んでよく、
Glyは存在してもしなくてもよく、モノまたはオリゴグリシン残基を指す。
【0051】
一般式IIの好ましいフラボン/フラバノン誘導体は、例えば:
1.ヘスペリジン、(ルトシド;ケルセチン−3−ルチノシド、3−[6−O−(6−デオキシ―α−L−マンノピラノシル)−β−D−グリコピラノシル]オキシ]−2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−5,7−ジヒドロキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン;およびそのアグリコン;
2.O−β−ヒドロキシエチルルトシド、ヘスペリジンのモノ、ジ、トリ、およびテトラヒドロキシエチル誘導体の混合物;またはそのアグリコン;およびO−ヒドロキシエチルルトシドの主成分;すなわち
3.トロキセヘスペリジン−(2[3,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−3−[6−O−(6−デオキシ−α−L−マンノピラノシル)−D−グルコピラノシル]オキシ]−5−ヒドロキシ−7−(2−ヒドロキシエトキシ)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン);およびそのアグリコン;
4.モノオキセヘスペリジン−(2−[3,4−ビスヒドロキシフェニル]−3−[6−O−(6−デオキシ−α−L−マンノピラノシル)−D−グルコピラノシル]オキシ]−5−ヒドロキシ−7−(2−ヒドロキシエトキシ)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン);およびそのアグリコン;
5.α−グルコシルヘスペリジン;
6.ナリンギン 7−[2−O−(6−デオキシ−α−L−マンノピラノシル)−D−グルコピラノシル]オキシ]−2,3−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン;およびそのアグリコン;
7.ヘスペリジン(7−[6−O−(6−デオキシ−α−L−マンノピラノシル)−D−グルコピラノシル]オキシ]−2,3−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン;およびそのアグリコンであるヘスペレチン;
8.ジオスミン(3’5,7−トリヒドロキシ−4メトキシフラボン−7−ラムノグルコシド;およびそのアグリコンであるヘスペレチン;
9.ジヒドロロビネチン(3,3’,4’,5’,7−ペンタヒドロキシフラバノン);10.タキシフォリン(3,3’,4’,5,7−ペンタヒドロキシフラバノン);
11.エリオディクチン(3’,4’,5,7−テトラヒドロキシフラバノン−7−ラムノシド);およびそのアグリコンであるエリオジクチオール;
12.フラバノマレイン(3’,4’,7,8−テトラヒドロキシフラバノン−7−グルコシド);およびそのアグリコン;
13.イソケルセチン(3,3’,4’,5,7−ペンタヒドロキシフラバノン−3−(β−D−ピラノシド);およびそのアグリコン;
14.ロイコシアニジン((3,3’,4,4’,5,7−ヘキサヒドロキシフラバン);
15.キルトミネチン(6−8−ジメチル−3’,4’,5,7−テトラヒドロキシフラバノン);
16.6,8−ジメチル−5,7−ジヒドロキシ−4’−チオメチルフラバノン;
17.6,8−ジメチル−4’,5,7−トリヒドロキシ−3’−メトキシフラバノン;18.6,8−ジメチル−5,7−(ジヒドロキシ−4’−ジメチルアミノ)フラバノン。
【0052】
さらに、エリオシトリン、ナリヘスペリジン、およびスコリモサイドが適用可能である(Ferreira et al., 1998, Kamara et al., 2003; Kamara et al., 2004も参照のこと)。
【0053】
異なる種類のハニーブッシュは、異なる性質であるにも関わらず、これらまたは類似のフラボノイドを含む。糖尿病試験動物(ラット)を用いた実験が実施された。本発明のハニーブッシュ抽出物は、これらのモデル系の血糖抑制に効果的であった。更にフラボノイドの合成タイプの投与も、グルコースレベルの低下に効果的であった。しかし、マンギフェリンと他のフラボノイド、特にヘスペリジンとを組み合わせることで、全体的フラボノイド用量をより低くして血糖を最大限に低下させ得るという高い(相乗)効果をもたらすことが、本発明者により見出された。マンギフェリンのモル濃度が、ヘスペリジンのそれの少なくとも2倍である場合に、その効果は最も高められる。
【0054】
本発明により、そして本明細書の以前および以後に記載されるとおり、「糖尿病」は、好ましくは非インスリン依存性糖尿病(2型)を指し;「抗糖尿病」は、糖尿病の発症の予防、および/または発症した糖尿病の治療など、「糖尿病」の「治療」に有用な活性を意味し;糖尿病の原因の予防、ならびに/またはその症状および/もしくは結果の低減もしくは消失も含む。
【0055】
特に、本発明の化合物は、少なくとも以下の二重治療効果を有することが見出された:i)本発明の化合物が耐糖能障害を治療し得る故の、糖尿病の予防;および
ii)本発明の化合物が血糖値を低下し得る故の、発症した糖尿病の実際の治療。
【0056】
好ましくは本発明の抽出物は、マンギフェリンおよび/または医薬として許容されるその塩もしくはプロドラッグの主な特徴を有する化合物を活性成分として含む。より好ましくはその抽出物は、ヘスペリジンの主な特徴を有する化合物も活性成分として含む。最も好ましくはマンギフェリンの分子濃度は、ヘスペリジンのそれの少なくとも2倍である。
【0057】
更なる態様によれば、本発明は、抗糖尿病を有する医薬として用いられる前記抽出物にも関する。
本発明は、有効量の抽出物を含む抗糖尿病活性を有する医薬組成物、ならびに抗糖尿病活性を有するマンギフェリンおよびヘスペリジンに及ぶ。
【0058】
効果的投与量の前記抽出物または前記組成物をヒトまたは動物に投与することにより糖尿病を治療する方法も提供する。
更なる態様によれば、本発明は、摂取すると抗糖尿病活性を有する食品または飲料の製造における前記抽出物の使用にも関する。
【0059】
摂取すると抗糖尿病効果を有する前記抽出物を有効量含む前記食品または飲料も、本発明の一部である。
好ましくは前記抽出物は、活性成分としてマンギフェリンおよび/またはその医薬として許容される塩もしくはプロドラッグを含む。
【0060】
更なる態様によれば、本発明は、抗糖尿病活性を有する医薬として用いられる前記抽出物にも関する。
本発明は、前記抽出物を有効量含む抗糖尿病活性を有する医薬組成物、および抗糖尿病活性を有するマンギフェリンにも及ぶ。
【0061】
活性成分は、シクロピア属の植物からの抽出物、または以下の構造:
【0062】
【化5】

(式中、R1=R3=R6=R7=OHおよびR4=R5=R8=Hである)
を有する化合物(マンギフェリン)であるか、もしくは代わりに以下の構造:
【0063】
【化6】

(式中、R1=R3=R6=R7=OHおよびR2=R5=R8=Hである)
を有する化合物であってよい。
【0064】
その天然源の誘導体はR1、R3、R6またはR7の位置にO−メチル基(−OCH3)ま
たはグリコシル基(−C6H11O6)を有し得る。
マンギフェリンにより形成されるすべての化合物、その異性体、およびその誘導体は、以下の一般式Iに対応する。
【0065】
【化7】

式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は−H、−OH、−OCH3およびグ
リコシルラジカルから選択される。
【0066】
上記化合物はシクロピア属の植物から抽出されてもよいし、もしくは合成で調製してもよく、またはその誘導体であってもよい。
植物は、シクロピア サブターナタ種のものであってもよい。
【0067】
好ましくは、本発明の化合物は、医薬として許容される投与形態で製造される。抗糖尿病組成物または製剤は、医薬賦形剤、希釈剤または担体と混和された抗糖尿病薬からなっていてもよい。所望なら安定化剤およびそのような他の成分をはじめとする他の適切な添加剤を添加してもよい。
【0068】
その組成物を、単位投与形態で製造してもよい。
抗糖尿病薬として、マンギフェリンまたはヘスペリジンと併用したマンギフェリンを、有利には約0.05mg/kg/日〜約2mg/kg/日の投与量でヒトに投与する。好ましい投与量範囲は、約0.1mg/kg/日〜約1.5mg/kg/日である。本発明の抽出物の噴霧乾燥粉末形態を用いる場合、好ましい投与範囲は約0.2mg/kg/日〜約1mg/kg/日であり、特に好ましくは約0.25mg/kg/日〜約0/75mg/kg/日である。マンギフェリンおよびヘスペリジンは、好ましくは1:1〜2:1のモル比である。
【0069】
更なる態様によれば、本発明は、
i)有効量の上述の抽出物またはマンギフェリンもしくはヘスペリジンと併用したマンギフェリンを、
ii)糖尿病を治療する代表的薬剤から選択される他の薬剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、ソルビトールデヒドロゲナーゼ阻害剤、グルコシダーゼ阻害剤、アルドースリダクターゼ阻害剤から選択される他の薬剤1種以上、
と共に含む医薬組成物にも関する。
【0070】
糖尿病の治療に用いられ得る代表的薬剤としては、インスリンおよびインスリン類似体:(例えば、LysProインスリン、インスリンを含む吸入製剤);GLP−1(7−37)(インスリノトロピン)およびGLP−1(7−36)−NH2;スルホニル尿素および類似体;クロルプロパミド、グリベンクラミド、トルブタミド、トラザミド、アセトヘキサミド、グリピジド、グリメピリド、レパグリニド、メグリチニド;ビグアニド:メトホルミン、フェンホルミン、ブホルミン;α2−アンタゴニストおよびイミダゾリン:ミダグリゾール、イサグリドール、デリグリドール、イダゾキサン、エファロキサン、フルパロキサン;他のインスリン分泌促進薬:リノグリリド、インスリノトロピン、エキセンジン−4、BTS−67582,A−4166;グリタゾン:シグリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、トログリタゾン、ダルグリタゾン、ロシグリタゾン;PPAR−γアゴニスト;RXRアゴニスト:JTT−501,MCC−555、MX−6054、DRF2593,GI−262570、KRP−297、LG100268;脂肪酸酸化阻害剤:クロモキシル、エトモキシル、α−グルコシダーゼ阻害剤:プレコース、アカルボース、ミグリトール、エミグリテート、ボグリボース、MDL−25,637,カミグリボース、MDL−73,945;β−アゴニスト:BRL35135、BRL37344、Ro168714、ICID7114、CL−316,243,TAK−667、AZ40140;cAMPおよびcGMPの両方の型のホスホジエステラーゼ阻害剤:シルデナフィル、L686398:L−386,398;脂質低下剤:ベンフルオレクス、アトルバスタチン;抗肥満薬:フェンフルラミン、オルリスタット、シブトラミン;バナデートおよびバナジウム錯体(例えばナグリバン(Naglivan)(登録商標))およびペルオキソバナジウム錯体;アミリンアンタゴニスト:プラムリンチド、AC−137;リポキシゲナーゼ阻害剤:マソプロカル(masoprocal);ソマトスタチン類似体:BM−23014、セグリチド、オクトレオチド;グルカゴンアンタゴニスト:BAY276−9955;インスリンシグナリングアゴニスト、インスリン模倣体、P
TP1B阻害剤:L−783281、TER17411、TER17529;グルコネオゲネシス阻害剤:GP3034;ソマトスタチン類似体およびアンタゴニスト;抗脂肪分解剤:ニコチン酸、アシピモクス、WAG994;グルコース輸送刺激剤:BM−130795;グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤:グルコースシンターゼキナーゼ阻害剤:塩化リチウム、CT98014、CT98023;ガラニン受容体アゴニスト;MTP阻害剤、例えば米国仮特許出願第60/164,803に開示されたもの;成長ホルモン分泌促進薬、例えばPCT公開番号WO97/24369およびWO98/58947に開示されたもの;NPYアンタゴニスト:PD−160170、BW−383,BW1229、CGP−71683A、NGD95−1、L−152804;5−HTおよび5−HT2C受容体アンタゴニストおよび/またはその模倣体などの食欲低下剤:デクスフェンフルラミン、プロザック(Prozac)(登録商標)、ゾロフト(Zoloft)(登録商標);CCK受容体アゴニスト:SR−27897B;ガラニン受容体アンタゴニスト;MCR−4アンタゴニスト:HP−228;レプチンまたは模倣体:レプチン;11−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型阻害剤;ウロコルチン模倣体、CRFアンタゴニスト、およびCRF結合タンパク質:RU−486、ウロコルチンが挙げられる。用いられ得る他の抗糖尿病薬としては、エルゴセットおよびD−キロイノシトールが挙げられる。他の抗糖尿病薬は、当業者に公知である。
【0071】
いずれのグリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤を、本発明の第2の化合物として用いてもよい。用語「グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤」は、グリコーゲンホスホリラーゼの酵素作用を低下、縮小または削減するいずれかの物質もしくは薬剤または物質および/もしくは薬剤の組み合わせを指す。グリコーゲンホスホリラーゼの現在知られる酵素作用は、グリコーゲン巨大分子と無機リン酸との可逆的反応の触媒作用によりグリコーゲンをグルコース−1−リン酸と、一方のグリコシル残基が本来のグリコーゲン巨大分子よりも短いグリコーゲン巨大分子と、に分解すること(グリコーゲン分解の前方方向へ)である。そのような作用は、標準のアッセイに従い(すなわち本明細書の以後に記載されるとおり)当業者により容易に決定される。これらの様々な化合物は、以下の発行されたPCT特許出願:PCT出願国際公開WO96/39384およびWO96/39385に含まれる。しかし他のグリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤も、当業者に公知である。
【0072】
ソルビトールデヒドロゲナーゼ阻害剤を、本発明の第2の化合物として用いてもよい。ソルビトールデヒドロゲナーゼ阻害剤は、フルクトースレベルを低下させ、ニューロパシー、網膜症、腎症、心筋症、微小血管障害、および大血管障害などの糖尿病合併症を治療または予防するのに用いられてきた。米国特許第5,728,704号および同第5,866,578号には、酵素ソルビトールデヒドロゲナーゼを阻害することにより糖尿病合併症を治療または予防する化合物および方法が開示されている。
【0073】
グルコシダーゼ阻害剤は、グリコシドヒドロラーゼ、例えばアミラーゼまたはマルターゼによる、複雑な炭水化物から生体利用性のある単純な糖、例えばグルコースへの酵素的加水分解を阻害する。特に高レベルの炭水化物を取込んだ後は、グルコシダーゼの急速な代謝作用の結果、食事性高血糖の状態になり、脂肪症および糖尿病の患者では、インスリンの分泌が高まり、脂肪合成が増加して、脂肪分解が減少する。多くの場合そのような高血糖の後に多量のインスリンが存在することにより、低血糖が起こる。加えて、低血糖および胃に残留する糜汁(びじゅう)の両方が胃液の産生を促進して、胃潰瘍または十二指腸潰瘍が発生し始めるか、または発生し易くなることが知られている。したがってグルコシダーゼ阻害剤は、胃をとおした炭水化物の通過促進および腸からのグルコース吸収の阻害において有用性を有することが公知である。更に、炭水化物から脂肪組織の脂質への変換と、続く食事性脂肪の脂肪組織沈着物への取込みが、それにしたがって減少するか、または遅延し、その結果、有害な異常を低減または予防するという効果を伴う。
【0074】
いずれのグルコシダーゼ阻害剤を、本発明の抽出物、AまたはEと併用したA、その立体異性体およびプロドラッグ、ならびに本発明の化合物、立体異性体およびプロドラッグの医薬として許容される塩と一緒に用いてもよいが、一般に好ましいグルコシダーゼ阻害剤は、アミラーゼ阻害剤を含む。アミラーゼ阻害剤は、デンプンまたはグリコーゲンからマルトースへの酵素分解を阻害するグルコシダーゼ阻害剤である。そのような酵素分解の阻害剤は、グルコースおよびマルトースなどの生体利用性の糖の量、およびその結果生じる悪性状態を低減することにおいて有利である。
【0075】
様々なグルコシダーゼ阻害剤が、当業者に公知である。しかし本発明の医薬組成物、混合物、方法およびキットの実施において、一般に好ましいグルコシダーゼ阻害剤は、アカルボース、アジポシン、ボグリボース、ミグリトール、エミグリテート、MDL−25637、カミグリボース、テンダミステート、AI−3688、トレスタチン、プラジミシンQ、およびサルボスタチンからなる群から選択されるそれらの阻害剤である。
【0076】
グルコシダーゼ阻害剤カルボース、O−4,6−ジデオキシ−4−[[(1S,4R,5S,6S)−4,5,6−トリヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−2−シクロヘキセン−1−イル]−アミノ]−α−グルコピラノシル−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−D−グルコース、それに関係する様々なアミノ糖誘導体、ならびにアクチノプラネス株(Actinoplanes strains) SE50(CBS961.70)、SB18(CBS957.70)、SE82(CBS615.71)、SE50/13(614.71)およびSE50/110(674.73)が、それぞれ米国特許第4,062,950号および同第4,174,439号に開示されている。
【0077】
アジポシン形態1および2からなるグルコシダーゼ阻害剤アジポシンは、米国特許第4,254,256号に開示されている。加えて、アジポシンの製造および精製の方法は、Namiki他、J.Antibiotics,35,1234〜1236(1982年)に開示されている。グルコシダーゼ阻害剤ボグリボース、3,4−ジデオキシ−4−[[2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]アミノ]−2−C−(ヒドロキシメチル)−D−エピ−イノシトール、およびそれに関係する様々なN−置換擬似アミノ糖が、米国特許第4,701,559号に開示されている。
【0078】
グルコシダーゼ阻害剤ミグリトール、(2R,3R,4R,5S)−1−(2−ヒドロキシエチル)−2−(ヒドロキシメチル)−3,4,5−ピペリジネルトール(piperidinertol)、およびそれに関係する様々な3,4,5−トリヒドロキシピペリジンが、米国特許第4,639,436号に開示されている。
【0079】
グルコシダーゼ阻害剤エミグリテート、p−[2−[(2R,3R,4R,5S)−3,4,5−トリヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)ピペリジノ]エトキシ]安息香酸エチル、それに関係する様々な誘導体およびその医薬として許容される酸付加塩が、米国特許第5,192,772号に開示されている。
【0080】
グルコシダーゼ阻害剤MDL−25637、2,6−ジデオキシ−7−O−β−D−グルコピラノシル−2,6−イミノ−D−グリセロ−L−グルコヘプチトール、それに関係する様々なホモジサッカライドおよびその医薬として許容される酸付加塩が、米国特許第4,634,765号に開示されている。
【0081】
グルコシダーゼ阻害剤カミグリボース、メチル6−デオキシ−6−[(2R,3R,4R,5S)−3,4,5−トリヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)ピペリジノ]−β−D−グルコピラノシドセスキヒドラート、それに関係するデオキシノジリマイシン、様
々な医薬として許容されるその塩、および製造のためのその合成方法が、米国特許第5,157,116号および同第5,504,078号に開示されている。
【0082】
グルコシダーゼ阻害剤プラジミシンQおよびアクチノマジュラ・ベルコスポラ株(Actinomaaura verrucospora strains)R103−3またはA10102の細菌培養によるその製造方法が、それぞれ米国特許第5,091,418号および同第5,217,877号に開示されている。
【0083】
グリコシダーゼ阻害剤サルボスタチン、それに関係する様々な擬似サッカライド、様々な医薬として許容されるその塩およびストレプトマイセス・アルブス株(Streptomyces albus strain)ATCC21838の細菌培養によるその製造方法は、米国特許第5,091,524号に開示されている。
【0084】
いずれのアルドースリダクターゼ阻害剤を、本発明の医薬組成物、方法およびキットに用いてもよい。用語アルドースリダクターゼ阻害剤は、酵素アルドースリダクターゼにより触媒されるグルコースからソルビトールへの生物転換を阻害する化合物を指す。そのような阻害は、標準的アッセイにしたがって当業者により容易に決定される(J. Malone, Diabetes, 29巻:p861−864、1980年、「Red Cell Sorbitol, an Indicator of Diabetic Control」)。以下の特許および特許出願は、それぞれの全体が本明細書に参考として援用され、本発明の組成物、方法およびキットに用いられ得るアルドースリダクターゼ阻害剤を例示しており、それらのアルドースリダクターゼ阻害剤を製造する方法が参照される:米国特許第4,251,528号;同第4,600,724号;同第4,464,382号;同第4,791,126号;同第4,831,045号;同第4,734,419号;同第4,883,800号;同第4,883,410号;同第4,883,410号;同第4,771,050号;同第5,252,572号;同第5,270,342号;同第5,430,060号;同第4,130,714号;同第4,540,704号;同第4,438,272号;同第4,436,745号;同第4,438,272号;同第4,436,745号;同第4,438,272号;同第4,436,745号;同第4,438,272号;同第4,980,357号;同第5,066,659号;同第5,447,946号;同第5,037,831号。
【0085】
様々なアルドースリダクターゼ阻害剤が、以下に具体的に記載および参照されるが、他のアルドースリダクターゼ阻害剤も、当業者には公知であろう。同じく一般の化学的USAN名または他の名称が、適宜、化合物を開示する適切な特許文献の参照と共にカッコ内に記載される。
【0086】
したがって本発明の組成物、方法およびキットに有用なアルドースリダクターゼ阻害剤の例としては、
1. 3−(4−ブロモ−2−フルオロベンジル)−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1−フタラジン酢酸(ポナルレスタット、米国特許第4,251,528号);
2. N[[(5−トリフルオロメチル)−6−メトキシ−1−ナフタレニル]チオキソメチル]−N−メチルグリシン(トルレスタット、米国特許第4,600,724号);3. 5−[(Z,E)−β−メチルシンナミリデン]−4−オキソ−2−チオキソ−3−チアゾリジン酢酸(エパルレスタット、米国特許第4,464,382号、米国特許第4,791,126号、米国特許第4,831,045号);
4. 3−(4−ブロモ−2−フルオロベンジル)−7−クロロ−3,4−ジヒドロ−2,4−ジオキソ−1(2H)−キナゾリン酢酸(ゼナレスタット、米国特許第4,734,419号および米国特許第4,883,800号);
5. 2R,4R−6,7−ジクロロ−4−ヒドロキシ−2−メチルクロマン−4−酢酸
(米国特許第4,883,410号);
6. 2R,4R−6,7−ジクロロ−6−フルオロ−4−ヒドロキシ−2−メチルクロマン−4−酢酸(米国特許第4,883,410号);
7. 3,4−ジヒドロ−2,8−ジイソプロピル−3−オキソ−2H−1,4−ベンゾキサジン−4−酢酸(米国特許第4,771,050号);
8. 3,4−ジヒドロ−3−オキソ−4−[(4,5,7−トリフルオロ−2−ベンゾチアゾリル)メチル]−2H−1,4−ベンゾチアジン二酢酸(SPR−210、米国特許第5,252,572号);
9. N−[3,5−ジメチル−4−[(ニトロメチル)スルホニル]フェニル]−2−メチルベンゼンアセトアミド(ZD5522、米国特許第5,270,342号および米国特許第5,430,060号);
10. (S)−6−フルオロスピロ[クロマン−4,4’−イミダゾリジン]−2,5’−ジオン(ソルビニル、米国特許第4,130,714号);
11. d−2−メチル−6−フルオロスピロ(クロマン−4’,4’−イミダゾリジン)−2’,5’−ジオン(米国特許第4,540,704号);
12. 2−フルオロスピロ(9H−フルオレン−9,4’−イミダゾリジン)−2’,5’−ジオン(米国特許第4,438,272号);
13. 2,7−ジ−フルオロスピロ(9H−フルオレン−9,4’−イミダゾリジン)−2’,5’−ジオン(米国特許第4,436,745号および米国特許第4,438,272号);
14. 2,7−ジ−フルオロ−5−メトキシスピロ(9H−フルオレン−9’,4’−イミダゾリジン)−2’,5’−ジオン(米国特許第4,436,745号、米国特許第4,438,272号);
15. 7−フルオロスピロ(5H−インデノール[1,2−b]ピリジン−5’,3’−ピロリジン)−2’,5’−ジオン(米国特許第4,436,745号;米国特許第4,438,272号);
16. d−シス−6’−クロロ−2’,3’−ジヒドロ−2’−メチル−スピロ(イミダゾリジン−4,4’−4’H−ピラノ(2,3−b)ピラジン)−2’,5’−ジオン(米国特許第4,980,357号);
17. スピロ[イミダゾリジン−4,5’(6H)−キノリン]−2,5−ジオン−3’−クロロ−7’,8’−ジヒドロ−7’,8’−ジヒドロ−7’−メチル−(5’−シス)(米国特許第5,066,659号);
18. (2S,4S)−6−フルオロ−2’,5’−ジオキソスピロ(クロマン−4,4’−イミダゾリジン)−2−カルボキシアミド(フィダレスタット、米国特許第5,447,946号);および
19. 2−[(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)メチル]−6−フルオロスピロ[イソキノリン−4(1H),3’−ピロリジン]−1,2’,3,5’(2H)−テトロン(ミナルレスタット、米国特許第5,037,831号)、
が挙げられる。
【0087】
本発明は、
・抗糖尿病活性を有する医薬の製造における上述の成分i)およびii)の前記組み合わせの使用;
・前記組み合わせの有効な投与量をヒトまたは動物に投与することを含む、糖尿病を治療または予防する方法;ならびに
・糖尿病の治療または予防に有用な上述の活性成分(i)および(ii)を組み合わせたキットまたは単回包装、
にも及ぶ。
【0088】
組み合わせの成分i)およびii)を、同時、別個、またはいずれかの順序で連続して投
与することができる。
好ましくは本発明は、抽出物、または上記化合物、または同化合物含む組成物の有効な投与量をヒトまたは動物に投与することにより血糖値を低下または保持する方法に及ぶ。
【0089】
好ましくは本発明は、抽出物、または上記化合物を含む食品または飲料を摂取することにより血糖値を低下または保持する方法に及ぶ。より好ましくは本発明は、耐糖能障害の治療にも及ぶ。より好ましくは本発明は、上記の抽出物、化合物、組成物および/または食品もしくは飲料の投与を停止した後に、血糖値が実質的に上昇し得ないという保護効果を提供する。
【0090】
本発明は、活性成分をシクロピア サブターナタから抽出する方法も提供する。
本発明による抗糖尿病活性を有する抽出物を、以下の工程により製造してもよい。抗糖尿病薬を含むシクロピア属の植物の抽出物を製造する方法は、回収された植物材料を溶媒で処理して抗糖尿病活性を有する分画を抽出するステップ、植物材料の残留物から抽出溶液を分離するステップ、抽出溶液から溶媒を除去するステップ、および抽出物を回収するステップを含む。そのように回収された抽出物を、例えば適切な抽出手順によって更に精製してもよい。
【0091】
抽出物を、シクロピア属の植物材料、例えば前記植物の葉、茎および根から製造してもよい。本発明の一適用例において、抗糖尿病性抽出物は、シクロピア サブターナタ種から得られる。
【0092】
植物材料を、ワーリング(Waring)ブレンダなどの装置を用いて、適切な溶媒、例えばメタノール/塩化メチレン溶媒の存在下でホモジネートしてもよい。その後、適切な分離手順、例えばろ過または遠心分離により、抽出溶液を残留する植物抽出物から分離してもよい。溶媒を、好ましくは60℃の温度の水浴中で、ロータリーエバポレータにより除去してもよい。
【0093】
その後、分離された粗抽出物を塩化メチレンおよび水で更に抽出した後、塩化メチレン抽出物と水抽出物とに分離してもよい。塩化メチレン抽出物は、好ましくはロータリーエバポレータでの蒸発により除去された溶媒を有していてもよく、得られた抽出物を、メタノール/ヘキサン抽出物により更に精製してもよい。その後、メタノール/ヘキサン抽出生成物を分離して、メタノール抽出物およびヘキサン抽出物を得てもよい。部分的に精製された活性抽出物を得るために、メタノール抽出物を蒸発させて溶媒を除去してもよい。
【0094】
部分的に精製された活性抽出物をメタノールに溶解してもよく、シリカゲルを吸収媒体として用い、クロロホルム/30%メタノール混合物を溶離剤として用いたカラムクロマトグラフィーにより更に分別してもよい。複数の異なる分画を得てもよく、それぞれを適切なバイオアッセイ手順により評価して、抗糖尿病活性を測定してもよい。
【0095】
抗糖尿病活性を有する分画を、好ましくは吸収媒体としてのシリカゲルおよび9:1 クロロホルム:メタノール溶媒を用いたカラムクロマトグラフィーなどにより更に分別してもよく、得られた亜分画を抗糖尿病活性についてバイオアッセイしてもよい。所望なら、従来どおり吸収媒体としてのシリカゲルおよび9:1 クロロホルム:メタノール溶媒でのカラムクロマトグラフィー手順を用いて、抗糖尿病活性を示す亜分画を更に分別および精製してもよい。得られた精製分画を、抗糖尿病活性のための適切なバイオアッセイ手順により再度、評価してもよい。
【0096】
本発明者は、少なくとも一つのそのような精製分画が良好な抗糖尿病活性を有することを見出し、その分画の活性成分が核磁気共鳴をはじめとする従来の化学技術による同定で
、マンギフェリンであることを見出した。この分画をヘスペリジンを含む分画と組み合わせると、糖尿病に対する相乗効果が達成され、さらにはマンギフェリン対ヘスペリジンのモル比が1:1から2:1までの場合に裁量の効果が得られる。
【0097】
抽出物を乾燥させて、例えば噴霧乾燥、凍結乾燥または真空乾燥により、水分を除去して、自由流動性粉末を形成させてもよい。
本発明およびその有効性を更に記載するが、本発明の範囲は以下の実施例および図面により限定されない。
実験
実験1
植物抽出物(実験室規模)
緑色植物材料とは、植物性ポリフェノール、特にキサントンおよびフラボノイドの酵素的/化学的酸化を予防するような手法で乾燥される植物材料を指す。異なる乾燥手順を用いることができる。
【0098】
酸化された植物材料とは、葉および幹の切断後、数時間で酸化される植物材料を指す。後者の工程で、ポリフェノールの酵素的および化学的酸化が開始する。水/酵素混合物を添加すれば、加工の酸化ステップの間に起こる酵素的/化学的変化を補助することができる。
【0099】
以下の実施例において、用いられる植物抽出物を、以下の手順により得た。

使用した調製手順は、破砕した緑色のシクロピア インターメディアの葉および茎10kgを、100kgの水で連続撹拌しながら95〜98℃で30分抽出し(抽出後の採収抽出温度の実測値70℃)、その後連続して遠心分離し、抽出物と不溶性植物材料を分離した。抽出物を熱交換器で室温まで冷却し、その後アリコートをPETボトルに入れて凍結し、使用するまで−20℃にて保管した。また、少量を、インビトロ試験のために実験室の凍結乾燥機で凍結乾燥した。
1.組織細胞:抗糖尿病スクリーニングのためのインビトロアッセイモデル(細胞系)
糖尿病は、多くの器官に異なる影響を及ぼす多因子疾患である。それゆえ、それぞれが糖尿病により影響を受ける異なる器官を表す3種の細胞系の組み合わせと、独特で簡便な非放射線的方法とを用いて、グルコース輸送の代わりにグルコース利用を測定する。
方法
その方法は、3T3−L1脂肪細胞、Chang肝細胞およびC2C12筋細胞によるグルコースの利用を、96穴プレートで細胞系に応じて1〜3時間測定する。これは、細胞を飢餓状態にしてグルコースを添加し、その後、試験試料の存在下または非存在下でインキュベーション培地からのグルコース消失をモニタリングすることにより実施する。グルコース利用の測定前に脂肪細胞および肝細胞を試験試料に48時間、予備暴露して、慢性効果が考慮されるかも確認した。抽出物に48時間暴露された細胞の生存性を対照細胞のそれと比較すれば、潜在的毒性試料を同定することができる。インキュベーション時間をより長くしてグルコース利用または代謝を測定すれば、グルコース輸送だけでなくグルコース代謝に含まれるいずれの経路でも変化が検出される。表1は、細胞系3種で測定された応答を要約している。この組み合わせでは、腸のグルコース吸収を低下させるもの以外の2型糖尿病治療に現在用いられている全種の血糖降下薬の作用機序が網羅される。
【0100】
【表1】

本発明に従って得られた抽出物は、3T3−L1脂肪細胞でのグルコース取込み増加に効果的であり、チアゾリジンに類似した活性を示すことが見出された。抽出物は、CHANG肝細胞において効果的であり、ビグアニジンと類似した活性を示した。
2.ストレプトゾトシンモデル(T1D)または後期T2D
成体雄ウィスター(Wister)ラット(200〜250g)を、試験全体で用いた。成体雄ウィスターラットにストレプトゾトシン(STZ)を36mg/kgの用量で筋肉注
射し、インスリン産生細胞数を低下または枯渇させ、典型的レベルの1型糖尿病または後期T2Dの高血糖を誘発した。ラットは3時間絶食したが、飲水は自由に与えた。STZ注射の72時間後に、血液試料を尾静脈から採取した。グルコースオキシダーゼ法を利用し、グルコメータ(プレシジョンQ.I.D;アボット・ラボラトリーズ(Abbott
Laboratories))を用いることにより血漿グルコース濃度を測定した。血中グルコースレベルが絶食レベルの300%を超えるラットを糖尿病と判断し、試験用に選択した。
STZラットの血漿グルコースに対する抽出物の急性効果
糖尿病ラットにペントバルビタールナトリウム20mg/kgを腹腔内注射して、軽度の麻
酔状態を誘導した。約10〜15分後にはラットが十分に沈静になり、容易でストレスのない取扱いが可能になったが、嚥下反射には影響がなかった。テフロン(登録商標)(Teflon)胃管カテーテルを口および食道から胃に入れて、必要な抽出物を含む水1mlを胃に直接注入した。その後、水を更に約200μl注入して、胃管カテーテルの残留抽
出物を洗浄した。その後、カテーテルを即座に除去して、ラットを回復用のケージに入れた。A群には通常の生理食塩水を与え、B群には植物抽出物5mg/kgを与え、C群には植
物抽出物25mg/kgを与え、D群には植物抽出物50mg/kgを与えた。血漿グルコース(mmol/l)を1、2、3、4、5、6時間の間隔で測定した。 ストレプトゾトシンを注入されてB細胞が低下または枯渇された成体雄ウィスターラットでは、抽出物の急性経口投与により血漿グルコースが6時間、漸進的に低下した。
経口耐糖能試験(OGTT)
16時間絶食した糖尿病STZラットに、軽度麻酔(フローセン)の下で植物抽出物25mg/kgを胃管栄養法で与えた。3時間後に動物に経口グルコースボーラスを1g/kg与え
た。血漿グルコースレベルをmmol/lで、0、1、5、10、15、20、30、60および120分に測定した。植物抽出物を25mg/kg単回経口投与した後に3時間実施された
OGTTの結果から、STZラットの血漿グルコースレベルが、全ての測定時点で、対照グルコース値に比較して低いことが示された(図13)。
3.肥満/インスリン抵抗性ラットモデル(T2D)
離乳後(3週齢)、雄ウィスターラットに、初期段階のT2Dに典型的な徴候を引き起こすべく、12週間の間、自由接触で肥満誘導食を給餌した。12週後、ベースライン測定のために血液を採集した。
抽出物の投与
抽出物を解凍し、0.54%(C1)、1.08%(C2)、1.79%(C3)、2.15%(C4)および2.67%(C5}の抽出物を含むよう脱イオン化水でそれぞれ希釈した。
メトホルミンの投与
塩酸メトホルミン(850mg、Rolab社、Johannesburg所在)を、85mlの蒸留水に溶解させた。溶解させたメトホルミンを、30mlの水に入れて毎日与えた。投与量は蒸留水中10mg/mlで計算し、ラットには20mg/kg体重に等しい1g体重当たり2gを与えた。
ロシグリタゾンの投与
アバンディア(商標)マレイン酸ロシグリタゾン(4mg、GlaxoSmithKline社、南アフリカ共和国Bryanston所在)を、1ml酸性リン酸緩衝液(pH2.3)に溶解させた。溶解させた錠剤を、4mg/kg体重の投与量で30mlの水に入れて与えた。
抽出物、メトホルミン、ロシグリタゾンおよび摂取液量のモニタリング
消費した液体の量は、すべての群で処理期間中ずっとモニタした。同時に、毎朝、液体を動物に与える前に測定した。液体を平日は2日ごとに測定し、週末は3日後に測定した。 平均摂取量を、一週間当たりに接種した液体の平均値として計算した。摂取量は与えた量と残った量の間の差として記録した。
絶食時の血漿グルコース
動物を3時間絶食させた。尾の先端を一対のはさみを用いて切断し、一滴の血液を用いてグルコメータ(プレシジョンQ.I.D;アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories))を用いてグルコースレベルを測定した。
採血
動物を98%酸素と2%フローセン(AstraZeneca Pharmaceuticals社)の吸入により麻酔した。尾部の先端を切断し、血液をエッペンドルフチューブに採取し、氷上に保存した。その後、それを2500rpmで15分間遠心した。マイクロピペットを使用して、50μlアリコートをNuncチューブに入れ、使用するまで−80℃で保管した。
インスリン測定用血清
4℃で遠心分離した後、血漿サンプルはインスリン測定まで−20℃で保管しておく。インスリンは125I標識したヒトインスリンをトレーサとして使用してRIAにより測定
し、ラットインスリンを標準試料(Linco Research社、米国合衆国未じゅー利州St.Charles所在)。
【0101】
静脈グルコース耐性試験(IVGTT)
動物を98%酸素と2%フローセン(AstraZeneca Pharmaceuticals社)の吸入により麻酔した。尾部の先端を切断し、ベースライングルコースを測定し、記録した。0.5mg/kg用量の50%グルコースの静脈注射を20秒間にわたって行なった。血糖値測定は1、2、3、5、10、20、30、40、50および60分目に行った。その後、ラットは安楽死させた。
組織の処理
3ヶ月間抽出物で処理した後、各群の5匹の動物から膵臓を採取した。膵臓全体を除去し、4%緩衝液ホルマリン中で一晩固定し、パラフィン埋設した。4μm厚の連続切片を免疫細胞化学および画像分析用に切断した。
二重免疫細胞化学
連続切片をキシレンで脱ろうし、等級が低下するエタノールで水和した。スライド上の
切片を染色びん中で、50mM Tris緩衝液(TBS)(pH 7.4)に写し、アビジンD−ビオチン化ワサビペルオキシダーゼ(Vectastain社)およびストレプトアビジンビオチン複合体/アルカリホスファターゼ(Dako社)を使用してインスリン(Sigma社)およびグルカゴン(Dako社)について二重染色した。β細胞はインスリン陽性細胞として定義し、α細胞はグルカゴン陽性細胞として定義した。β細胞はFuchinレッド(赤色の沈積物)(Dako社)で視覚化し、α細胞はDAB(褐色の沈積物)(Dako社)で視覚化した。方法の対照は、一次抗血清、二次層の抗体またンはアビジンD−ビオチン化ワサビペルオキシダーゼ複合体/ストレプトアビジンビオチン複合体/アルカリホスファターゼをそれぞれ省略したものが関与した。
画像分析
β細胞およびα細胞を同じ切片に対して測定した。コンピュータ支援測定を、ビデオカメラと接続した標準的なZeiss光学顕微鏡を用いて行った。インスリン陽性細胞とグルカゴン陽性細胞の面積を、全切片に対して測定した。測定した膵臓領域全体に対するインスリン陽性面積およびα陽性面積の比として、各切片において膵臓中のβ細胞とα細胞の体積を計算した。β細胞とα細胞のサイズは、測定した面積全体を、数えた核の数によって除算することにより計算した。膵島サイズの分布は以下のように分類した:(<2500μm)、(2500μm<7500μm)、(7500μm<12500μm)、(12500μm<20000μm)、および(>20000μm)。膵島密度は、組織の合計面積を数えた膵島の数で除算することにより決定した。
統計分析
結果の有意差を試験するために両側(two-tailed)unpaired Student’s t-testを用いた。
全体的結果
本発明の抽出物で処理した肥満/インスリン抵抗性ラットでは、絶食時グルコースレベルが有意に低下した。いくつかの場合では、その低下がメトホルミンまたはロシグリタゾンよりも抽出物で大きかった。
結論
グルコース取込み増加において、チアゾリジン+インスリン(脂肪細胞試験)、およびビグアニド(CHANG肝細胞)と同様の有効性が、植物抽出物により示された。
【0102】
抽出物での処理は、いくつかの場合では、ストレプトゾトシン処理(後期T2D)における血漿グルコースレベルの低下に、メトホルミンおよびロシグリタゾンより効果的であった。
【0103】
上記抽出物が、悪化したグルコースレベルの正常化に有効であることが期待される。
実施例II
この実験により、血漿グルコースレベルを低下させるための、本発明の植物抽出物の最適用量を得る。この実験では、可能な限りヒトの状況に近づけるためにサルを用いた。
使用についての正当性および有用性評価
ベルベット(Vervet)モンキー(クロロセブス・アエチオプス(Chlorocebus aethiops))は、2種のアフリカ産非ヒト霊長類のうちの1種であり、生物医学の研究に最も一般的に用いられる南アフリカの固有種である。いくつかの例外があるが、非ヒト霊長類の使用は、国際的には生物学的考慮よりもむしろ地政学およびロジスティックスによる影響を受けてきた。ベルベットモンキーは、同じ亜科に属することから、マカク(即ちアカゲザル)に分類学的に密接に関連する(Fairbanks 2002年)。
【0104】
ベルベットモンキーは、ウイルス学、細菌学、寄生虫学、神経学、毒性学、生殖学および細胞生物学をはじめとする多くの分野で用いられているが、それらは心臓血管疾患および代謝疾患の分野で特に有用であることが立証されている。その結果として、情報および
データを含む文献が豊富になり、この確立されたモデルの有用性が評価された(de Vries他 2007年、Fairbanks 2002年、Fincham他 1998年、Kavanagh他 2007年、Louw他 1997年、Martin他 1990年、Rudel他 1981年、Smuts他 1992年、SucklingおよびJackson 1993年、Wallace他 2005年、Weight他 1998年)。
【0105】
ベルベットモンキーが一時的な肥満、インスリン抵抗性および2型糖尿病を発症することを強調することが重要である(Fairbanks 2002年、Francis他 1999年、Kavanagh他 2007年、Tigno他 2005年)。特定のコロニーでは雌の25%および雄の16%もの多くが、肥満であることが報告されている(Kavanagh他 2007年)。非ヒトの霊長類は、ヒトと同様に、腎臓、血管および神経学をはじめとする関連の合併症の全てを発症する(Tigno他 2005年)。ベルベットモンキーの幾つかの母集団では、4%もの高い割合が、異常に高い血漿グルコース濃度を有する可能性があり(Fairbanks 2002年、Kavanagh他
2007年)、腹囲と血漿インスリンと血漿トリグリセリド濃度の間には強い正の関連性がある(Kavanagh他 2007年)。肥満および関連の血漿脂質および他の危険因子が、この種で遺伝し得ることも確証された(Kavanagh他 2007年)。
【0106】
ベルベットモンキーが一時的な動脈硬化を発症し、実験的栄養操作に十分に応答して脂質異常症を発症し、最終的に粥状動脈硬化を発症することに留意することも重要である(Fairbanks 2002年、Rudel他 1981年、Fincham他 1998年、SucklingおよびJackson 1993年)。関連する潜在的機序および病巣は、ヒトの状態を模倣しており(Fincham他 1996年、Fincham他 1998年、Rudel他 1981年)、ベルベットモンキーは、詳細に記録されたものより古い、そしてより新しい薬理学的介入法に応答する(Fincham他 1996年、St.Clair他 1981年、Wallace他 2005年)。
霊長類の管理
この試験での霊長類の管理および世話は、研究および訓練における動物の使用(MRC
Guidlines on the Use of Animals in Research and Training)に関する文書化された標準業務手順(Standard Operating Procedures)(Mdhluli 2005年)およびMRCガイドライン(MRC Guidlines) 、南アフリカでの薬物および関連物質の研究、教育、診断および試験における動物使用のための国家規約(National Code for Animal Use in Research、Education, Diafnosis andTesting of Drugs and Releted Substances in South Africa)、ならびに1997年 獣医およびパラ獣医職の法令:実験動物技術者のパラ獣医職の実施に関する規約(Veterinary and Para−Veterinary Professions Act of 1997: Rules relating to the practicing of the Para−Veterinary Profession of Laboratory Animal Technologist)に従った。
サルの選択および永久識別
この試験で選択された個体は全て、健常な成体雄および雌の第2世代飼育繁殖個体で、平均体重はそれぞれ5.56kg(±0.724)および3.16kg(±0.266)であった。平均年齢が雄では12歳、雌では7歳であった。雌ベルベットモンキーは約2.5〜3歳で、雄では約3.0〜4.0歳で飼育下で性的に成熟する(Eley 1992年)。
【0107】
個体は全て、身体検査および過去の臨床記録による判定で明白な病巣を有さず、年齢に応じた正常な体重であり、永久番号をインク刺青で識別された。加えて、個体番号、群の名称、および実験番号をケージに印字した。
環境条件
この試験で使用されたベルベットモンキーは全て、同一の飼育条件下でMRCの技術およびイノベーション理事会(Technology and Innovation Directorate)の霊長類施設(Primate Unit)で飼育された。施設は、密閉された室内環境で24〜26℃、湿度約45%で、1時間内に約15〜20分間換気され、12時間の光照射が保持された、完全に空調管理された14の動物室で構成されている。部屋は全て陽圧に保持され、別々の給気を有している。
飼育
飼育は試験期間中は単独で行われ、90×70×120cmの吊り下げ式のめっきスチールケージで構成され、1室に24匹のサルが飼育された。動物室を1日1回清掃した。ケージの寸法は、単独動物のための南アフリカ国家規約(South Africa National Code)の要件と一致している。
飼料および水
水は自動給水装置によって自由に利用できた。トウモロコシ粉を基にした維持食は、霊長類施設で生産されたもので、3世代での良好な成長および生殖を支えた(Seier 1986年)。添加された微量および多量栄養素を含む乾燥トウモロコシ粉70gを水と硬練りに混合して、サルに午前7:00、午前11:00に、そして栄養を添加していない別の70gを午後3:00に給餌した。これにより、サルごとに1日あたり2412キロジュールが供給され、タンパク質からは12%、脂肪から20%および炭水化物から68%のエネルギーが供給される。加えてりんごまたはオレンジが、正午に70g/匹/日
給餌される。飼料の詳細な組成は、過去に記載された(Fincham他 1987年、Venter他 1993年)。
補助施設
霊長類施設の活動は全て、ケージ清掃、食餌調製および保存、検査化合物の保存および配合、手順(即ち採血)、操作(観察(theatre))および検死のための専用区域および部屋と物理的に完全に分離されている。
飼育環境の強化(environmental enrichment)
一つのケージには、床上80cmにある休息用のねぐら、採餌皿ならびに同種とのグルーミングおよび物理的接触が可能なコミュニケーションパネルが取り付けられている。90×70×200cmの区域の運動ケージは、各サルが週に3回利用でき、居住ケージを離れて居住ケージではできない特定の活動で用いることができる(Seierおよびde Lange 1996年)。そのケージは、同室および隣室の別の動物全てと360°コミュニケーションをとることができる(ガラスパネルを通して)。静かな音楽と鳥の鳴き声が各動物室に放送されて、聴覚的な退屈さが緩和される。他の強化方法は、過去に記載された(Seier他 2004年)。
健康および疾患の制御
動物は全て、年に4回、上瞼の皮膚内にPPDを3000単位注入されることにより、TBに関して試験された。MRCの職員および学生、ならびにサービス業者を、年に2回の気管支分泌物のミコバクテリア培養により、TBについて試験した。霊長類施設の標準操作手順に従って、更なる細菌学および血清学的試験をベルベットモンキーで時々実施し、許容される規準と一致させた(FELASA 1998年)。これは、赤痢菌(Shigella)、サルモネラ菌(Salmonella)、カンピロバクター菌(Campylobacter)およびエルジニア菌(Yersinia)に関する試験を含んでいた。
ベルベットモンキーの取扱い、物質の投与、および試料の採取
ベルベットモンキーの手順および取扱いは、霊長類施設の標準業務手順、および前文に挙げられた他の全てのガイドラインに従った。それらは、実験動物技術の南アフリカ獣医
師評議会(SA Veterinary Council)に登録されている完全に認定された熟練の実験動物技術者により実施および/または監督されている。
観察
動物は全て、1日3回観察して、処理による潜在的な身体副作用を測定した。以下の基準を用いた:姿勢、協応、移動、活発さ、挙動(警戒、恐怖、攻撃、うろたえ、抑うつ、発声)、体腔からの排泄、食欲、糞および尿の状態。
GMP ARC137の調製
霊長類モデルの生物活性を試験するために、本発明による植物抽出物を調製した。生物活性について予め試験された有機認証された緑色のシクロピア サブターナタの葉および茎を、cGMP施設で加工した。
製造の詳細
両方の生成物の製造過程は、以下の施設操作を含んでいた:植物材料の抽出、抽出物と小粒子物質との分離、蒸発、濃縮物のHTST滅菌、濃縮物の真空乾燥および微小生成物粉末のふるい。
抽出物の調製
植物材料を、パーコレータあたり200kgの2つの部分に抽出した。予め93℃に加熱された精製水(2000kg)を、1:10の割合でパーコレータの上部から加え、得られた抽出物を35分間循環させた。抽出が終了したら、部分1を排水して、更なる200kgの精製水で洗浄し、乾燥残渣を3.0%含む総重量1889kgの水性抽出物を得た(乾燥抽出物の収率−28.6%)。部分2を同様の手法で抽出したが、乾燥残渣を2.92%含む水性抽出物1889kgを得た(乾燥抽出物の収率−27.6%)。
【0108】
沈降物を30分毎に排水循環しながら、抽出物を1000l/hの流速で高温遠心分離し
た。遠心分離後に回収した最終抽出物は3753kgであり、乾燥残渣の収率は2.98%であった。
【0109】
遠心分離後に、入口温度78℃未満の水性抽出物を、真空下、55℃未満の平板型エバポレータで472kgおよび乾燥残渣23.98%に濃縮した。
濃縮物を流速385〜445l/h、121〜123℃(約68秒)でHTST滅菌した
。滅菌後に濃縮物を25℃未満に冷却した。精製水を用いて、植物を洗浄し、最終的な滅菌濃縮物485kgを乾燥残渣22.93%で得た。
【0110】
滅菌濃縮物を真空乾燥機(モデル2000(Model 2000))で生成物温度46℃未満で24時間、乾燥させた。乾燥させた後、粉末を2種のふるい(2mm、その後0.5mm)でふるいにかけて、真空乾燥機の羽の回転時に形成された塊を除去した。
【0111】
ふるいにかけた粉末を2つのPEバッグ(34.45kg、46.35kg)に入れ、その後、別々にアルミニウムコートされたファイバードラムに密閉した。
植物材料
植物材料のHPLCフィンガープリントを、本発明の水性抽出物で測定した。植物材料を水浴中、脱イオン精製水(1:10の比)で90〜93℃で30分間抽出し、高温でワットマン4番ろ紙でろ過して凍結し、その後凍結乾燥することにより、抽出物を調製した。HPLC分析では、凍結乾燥抽出物を精製水で再構成した。
【0112】
最終生成物(GMP ARC137)のHPLCフィンガープリントを、精製水で再生された抽出物で測定した。
結果
図1は、288nmおよび350nmの関連検出波長における植物材料の実験室規模水性抽出物のHPLCフィンガープリントを示す。図2は、同じ関連検出波長における、本発明の採収GMP乾燥抽出物のHPLCフィンガープリントを示す。
ベルベットモンキーの用量最適化試験
対照
サル3匹を対照群に無作為化した。対照群のサルは、乾燥抽出物を含まない維持食(ボール形に成形)を配給量70gで1日3回、7日間摂取した。7日目にサルを一晩(13時間)絶食して、ベースライン血液試料を採取した後、サルはボール形維持食ボーラスを摂取した。その後、ケタミン麻酔(10mg/kg体重 筋肉注射)の下、1時間ごとに6時
間、大腿静脈穿刺で血液試料を採取した。
対照群の結果の考察
88番のサルは、モニタリング期間の最初の2時間の間安定した4.5mMol/lの絶食時ベースライン血糖値を示し、その後、血糖値は第3時間目までに、血糖の35.56%の低下率に相当する2.9mMol/lまで顕著に低下し、その後、4時間後に3.6まで、5および6時間後に3.9mMol/lまでわずかに増大した。1082番のサルは、5.2mMol/lというわずかに高い絶食時ベースライン血糖値を示していたが、最初の2時間で1時間目および2時間目にそれぞれ5.3mMol/lおよび5.6mMol/lまでさらに血糖値が増大し、その後3時間目に4.4mMol/lに減少した。血糖値は4時間目および5時間目に4.1 mMol/lおよび3.5mMol/lに低下し続け、その後6時間目に4.7mMol/lにわずかに増大した。5時間目に32.69%という最も高い血糖低下率が観察された。333番のサルは、6時間のモニタリング期間の一時間ごとの時点で4.6mMol/lのベースライン血糖値を超える増加した血糖レベルを示した。6時間目に、サルは、ベースライン血糖値から計算された血糖増加率44.23%に相当する7.5mMol/lの血糖値を有し高血糖となった。この血糖の増加は、長期間の絶食に対する糖尿病動物の典型的な反応である糖新生により引き起こされたものである。
実験群
1mg/kg、2.5mg/kg、5mg/kgおよび25mg/kg GMP ARC137(先に記載されたシクロピア サブターナタの葉および茎の抽出物)を1日3回受ける4つの実験群に、サル9匹を無作為化した。各実験群のサルは全て、ボーラスとして維持食のボール70gに成形されたGMP ARC137の予め計量された一部を1日3回、7日間摂取した。7日目にサルを一晩(13時間)絶食して、ベースライン血液試料を採取した後、サルは各量の乾燥抽出物を含む維持食ボーラスを摂取した。その後、ケタミン麻酔(10mg/kg体重 筋肉注射)の下、1時間ごとに6時間、大腿静脈穿刺で血液試料を採取した。
【0113】
GMP ARC137 1.0mg/kg実験群結果の考察
1084番のサルは、5.7mMol/lの高い絶食時ベースライン血糖値を示した。1.0mg/kgのGMP ARC137を含むボーラスを受けた後、1時間目の血糖値レベルが5.
3mMol/lへまずわずかに低下した後、2時間で血糖レベルは血糖パーセンテージで50.88%の低下に相当する2.8mMol/lに急激に減少し、その後、3時間目に3.9mMol/lに回復した。その後、血糖レベルは4および5時間目にそれぞれ4.2mMol/lおよび4.5mMol/lで安定し、6時間で5.3mMol/lに増加した。
【0114】
1081番のサルは、7.5mMol/lという高血糖症の絶食時ベースライン血糖値を示した。1.0mg/kgのGMP ARC137を含むボーラスを受け取った後、1時間目に血
糖パーセンテージの40%の低下に相当する1.4mMol/lだけ血糖値が減少し、2時間目にはさらに1.6mMol/lだけ4.5mMol/lまで低下し続けた。次の2時間は血糖レベルが4.6mMol/lに維持され、5時間で5.2mMol/lにわずかに増加した。6時間で、血糖値は、ベースライン値より41.33%(3.1mMol/l)低い4.4mMol/lに減少した。
【0115】
266番のサルは、5.3mMol/lの適度に高いベースライン血糖を示した。1.0mg/kgのGMP ARC137を含むボーラスを受けた後、1および2時間目に、血糖値は、
5.0および5.1mMol/lに留まり、その後3および4時間目に5.7mMol/lおよび5.8mMol/lにそれぞれ増加した。5時間で血糖値は7.3mMol/lに急激に増大し、その後6
時間で5.5mMol/lまで減少したが、これは依然として5.3mMol/lベースライン値より高かった。他の2匹のサルとは鋭く対照的に、266番のサルは、1mg/kgの投与量では
GMP ARC137に応答しなかった。1および2時間目に血糖パーセンテージの非常に少量最初に低下した後、グルコースレベルは、5時間で40.38%のピークに増加し、6時間では5.77%に低下した。
【0116】
2.5mg/kg GMP ARC137実験群結果の考察
78番のサルは、4.6mMol/の絶食時ベースライン血糖値を有し、2.5mg/kg GMP
137抽出物を含むボーラスを受けた1時間後に、血糖値の1mMol/l(21.74%)の低下を示した。ベースライン値に対して計算した血糖値の15.22%と28.25%の間の範囲のベースラインレベルよりも低い値が、6時間のモニタリング期間の残りの間の維持された。
【0117】
1083番のサルは、2.5mg/kg GMP ARC137を含むボーラスを受けた後
1時間後に、4.4mMol/lのベースライン血糖値と比較して、5.0mMol/lに血糖値の増加を示した。2時間で、血糖レベルは、3.2mMol/lへと1.8mMol/lだけ著しく減少し、次に、3時間で2.8mMol/lにさらに低下した。その後、血糖レベルは、残るモニタリング期間の間約3.0mMol/lに維持された。
【0118】
1084番のサルは、5.7mMol/lという高い空腹時血糖ベースラインを示した。2.5mg/kg GMP抽出物を含むボーラスを受けた後、1時間で血糖値は5.3mMol/lに上
昇したままだったが、2時間で、血糖パーセンテージの43.6%低下に相当する3.2mMol/lに大幅に減少し、その後、血糖値は、3.7mMol/l(ベースライン血糖値よりも35.7%低いレベル)で安定していた。
【0119】
5.0mg/kg GMP ARC137実験群結果の考察
1079番目のサルは、5mg/kgのGMP ARC137を含むボーラスを受けた後、1
および2時間目に3.7mMol/lのベースライン値から4.5mMol/lおよび4.6mMol/lへの血糖レベルの増加をそれぞれ示した。3時間で、血糖値は3.3mMol/lに減少し、4時間で4.3mMol/lに増加し、次に5および6時間で3.6mMol/lおよび3.8mMol/lというベースライン値の付近でそれぞれ安定した。
【0120】
1081番のサルは、7.5mMol/lの高血糖症の絶食時ベースライン血糖値を示した。
5.0mg/kgのGMP ARC137を含むボーラスを受けた1時間後、血糖値は、7
.2mMol/lとまだ高かった。2時間後に、血糖は4.6mMol/lに急激に減少し、モニタリング期間の最後の4時間の間、血糖値は5mMol/lと6mMol/lの間で安定化した。
【0121】
25mg/kg GMP ARC137実験群結果の考察
119番のサルは、5.5mMol/lという適度に高い絶食時ベースライン血糖値を示した。25mg/kg GMP ARC137を含むボーラスを受けた1時間後、血糖値は4.8mMol/lに減少した。4.9mMol/lの血糖値がさらに2時間維持され、その後4時間で5.4mMol/lにわずかに増加した。その後、血糖レベルは、5時間で4.3mM ol/lにわずかに減少し、6時間で4.9mMol/lに増加した。
【0122】
258番目のサルは、21.2mMol/lという極端に高血糖の血糖ベースライン値を示した。これは、後期2型または1型糖尿病患者が要求するインシュリン支援に臨床的に一致している。25mg/kg GMP ARC137を含むボーラスを受けた1時間後、血糖レ
ベルは4mMol/lだけ減少して17.2mMol/lとなり、その後、2時間で18.2mMol/lに安定化した。3時間で、血糖はさらに4mMol/l低下して14.2mMol/lとなり、これはベースライン血糖値に対して計算した血糖パーセンテージの33.2%の低下を表わしてい
る。4時間で、血糖値は、16.8mMol/lにわずかに増大したが、これはベースライン値よりもまだ20.75%低く、その後5および6時間で14.3および13.3mMol/lにさらに減少した。
【0123】
266番のサルは、5.2mMol/lという適度に高い絶食時ベースライン血糖値を示した。 この値は、25mg/kg GMP ARC137を含むボーラスを受け取った1時間後
には5.8mMol/lにさらに増加した。しかしながら、血糖値は、2および3時間で、4.2mMol/lおよび4.5mMol/lにそれぞれ低下した。その後、モニタリング期間の残りの間血糖レベルは維持されず、4、5および6時間で、6.0、7.0および6.1mMol/lにそれぞれ増加した。5および6時間目の値の増加は、長期間の絶食により糖尿病動物に糖新生が引き起こされたことを強く示唆している。
結果の概要
対照群
対照群では、試験されたサル3匹のうちいずれも、成形維持食の一部を摂取した後、最初の2時間は、ベースライン値からの低下を示さなかった。その後、サル3匹のうち2匹で、ベースライン値に比較してグルコース値の低下が観察された。
1.0mg/kg GMP ARC137処理群の血糖値
1mg/kg GMP ARC137群の結果は、全6時間のモニタリング期間に、サルの
うちの2匹のベースライン血糖値に比較して、血糖値の著しい低下を示した。
2.5mg/kg GMP ARC137処理群の血糖値
2.5mg/kg GMP ARC137を摂取したサル3匹の血糖値は、最初の2時間で
血糖値の著しい低下を示し、その後の残りのモニタリング期間では、低い血糖値が維持された。
5mg/kg GMP ARC137処理群の血糖値
5mg/kg GMP ARC137処理群の263番のサルは、処理ボーラス摂食の開始
後、摂取した後、血糖値決定の朝に処理を拒んだため、研究から除外しなければならなかった。高い絶食ベースライン血糖値(高血糖症)を有する1081番のサルは、5mg/kg
GMP ARC137処理の2時間後に血糖値の著しい低下を示した。モニタリング期間の間、これらのレベルが維持された。1079番のサルはモニタリング期間中維持される正常血糖開始血糖レベルを有した。
25mg/kg GMP ARC137処理群の血糖値
258番のサルは、21.2mMol/lという絶食時ベースライン値を有する重度の高血糖症を示した。血糖値はモニタした核時点で減少しているが、6時間目の血糖レベルは依然として13.3mMol/lであった。このサルは研究から除外した。残りの2つのサルは所与の投与量での処理に応答しなかった。
【0124】
種々の投与量のGMP ARC137を受けたサルにおける結果の比較
266番のサルは1mg/kgおよび25mg/kgのGMP ARC137処理に応答しなかた。1081番のサルは、1mg/kgおよび5mg/kgのGMP ARC137を受け、モニタした6時間にわたって顕著な血糖レベルの低下を示した。これに対し、1mg/kgでのGMP
ARC137処理は低下がもっとも大きく、6時間のモニタリング機関の間もっとも低い血糖レベルを維持した。
【0125】
図15は、ベルベットモンキーを異なる投与量の抽出物(ARC137)で7日間処理した後の6時間の血漿グルコースの低下率を示す(平均データ)。
結論
小規模予備試験では、1〜2.5mg/kgの用量範囲のGMP ARC137が、非ヒト
霊長類(クロロセブス・アエチオプス)の血糖値降下に最も効果的であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用植物抽出物を単離する方法であって、
(a)シクロピア植物またはその一部を提供するステップ、
(b)前記植物またはその一部を、前記植物抽出物の可溶化に適した非毒性溶媒と組み合わせて、前記溶媒を60℃〜95℃、好ましくは90℃〜95℃の温度に加熱するステップ、
(c)前記植物抽出物を回収するステップ、および
(d)任意選択で乾燥させるステップ、
からなる方法。
【請求項2】
前記植物がシクロピア サブターナタである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記植物またはその一部が乾燥粉末形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記植物またはその一部が乾燥粉末形態である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記一部が葉、茎、花、根および結節から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
可溶化された植物抽出物を粉末形態に乾燥させるステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記非毒性溶媒が水およびエタノールの少なくともいずれか一方である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により製造される植物抽出物。
【請求項9】
請求項8に記載の植物抽出物を含む医薬組成物。
【請求項10】
投与単位あたりに治療上有効量の請求項8に記載の植物抽出物を含む、治療効果を得るための投与に適合した投与単位形態の医薬製剤。
【請求項11】
前記治療上有効量が、kg体重あたり約1mg〜約2.5mgである、請求項10に記載の医薬製剤。
【請求項12】
粗植物粉末の製造方法であって、
(a)シクロピア植物またはその一部を提供するステップ、
(b)直射日光の非存在下で前記植物またはその一部を乾燥させるステップ、および
(c)前記乾燥させた植物またはその一部を粉砕して、植物粉末を形成させるステップ、からなる方法。
【請求項13】
前記植物がシクロピア サブターナタである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記一部が葉、茎、花、根および結節から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法により製造される粗植物粉末。
【請求項16】
請求項15に記載の粗植物粉末を含む医薬組成物。
【請求項17】
投与単位あたりに治療上有効量の請求項15に記載の粗植物抽出物を含む、治療効果を得るための投与に適合した投与単位形態の医薬製剤。
【請求項18】
前記治療上有効量が、kg体重あたり約1mg〜約2.5mgである、請求項17に記載の医薬製剤。
【請求項19】
1〜2.5mg/kg体重の用量範囲が投与される、糖尿病の治療のための請求項8に記載の
植物抽出物の第1の医薬使用方法。
【請求項20】
糖尿病の治療のための請求項15に記載の粗植物粉末の第1の医薬使用方法。
【請求項21】
前記組成物が、1〜2.5mg/kg体重の用量範囲で投与される、シクロピア属の植物の水
性抽出物を含む抗糖尿病組成物。
【請求項22】
前記抽出物がシクロピア サブターナタ由来のものである、請求項21に記載の抗糖尿病組成物。
【請求項23】
シクロピア属の植物の水性抽出物を1〜2.5mg/kg体重の用量範囲で投与して、血糖値
を低下させるステップを含む、糖尿病の治療方法。
【請求項24】
前記抽出物がシクロピア サブターナタ由来のものである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
シクロピア サブターナタの抽出物を、1〜2.5mg/kg体重の用量範囲でほ乳類に投与
して、Glut4およびGlut2の少なくともいずれか一方の活性を上昇させるステップを含む、ほ乳類の糖尿病を抑制する方法。
【請求項26】
Glut4およびGlut2の少なくともいずれか一方の活性を上昇させる化合物を測定するステップを含む、請求項21または22の抽出物の特異的化合物を抗糖尿病活性についてスクリーニングする方法。
【請求項27】
前記抽出物を1〜2.5mg/kg体重の用量範囲で投与されることを特徴とする、1または
2型糖尿病を治療する医薬を製造するための、請求項21または22に記載の抽出物の使用方法。
【請求項28】
シクロピア属の植物材料を含む抗糖尿病組成物。
【請求項29】
シクロピア属の植物の水性抽出物を含む抗糖尿病組成物。
【請求項30】
前記抽出物がシクロピア サブターナタ由来のものである、請求項28に記載の抗糖尿病組成物。
【請求項31】
マンギフェリンまたはヘスペリジンおよびそれらの混合物からなる群から選択されるフラボノイドからなる請求項28に記載の抗糖尿病組成物。
【請求項32】
マンギフェリンのモル濃度がヘスペリジンのそれの少なくとも2倍である、請求項31に記載の抗糖尿病組成物。
【請求項33】
シクロピア属の植物の水性抽出物を一定量投与して、血糖値を低下させるステップを含む、糖尿病の治療方法。
【請求項34】
前記抽出物がシクロピア サブターナタ由来のものである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
マンギフェリンまたはヘスペリジンおよびそれらの混合物からなる群から選択されるフラボノイドを一定量投与して、血糖値を低下させるステップを含む、糖尿病の治療方法。
【請求項36】
マンギフェリンのモル濃度がヘスペリジンのそれの少なくとも2倍である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
化合物の群の構成要素がGlut4およびGlut2の少なくともいずれか一方の活性を上昇させることを決定するステップを含む、前記化合物の群をほ乳類の抗糖尿病活性についてスクリーニングする方法。
【請求項38】
1または2型糖尿病を治療する医薬を製造するためのマンギフェリンの使用方法。
【請求項39】
1または2型糖尿病を治療する医薬を製造するための、ヘスペリジンと組み合わせたマンギフェリンの使用方法。
【請求項40】
1または2型糖尿病を治療する天然医薬を製造するための、シクロピア属の使用方法。
【請求項41】
2型糖尿病を治療する方法であって、シクロピア属の植物の抽出物がマンギフェリンまたは化学的にそれに関係する化合物を含む、該治療を必要とするヒトまたは他のほ乳類に前記抽出物の有効な投与量を投与することによる方法。
【請求項42】
前記植物がシクロピア サブターナタである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記抽出物が、回収された植物材料を溶媒で処理して抗糖尿病活性を有する抽出物の溶液を単離するステップ、抽出物の溶液を植物材料の残留物から分離するステップ、前記溶液から溶媒を除去するステップ、および前記抽出物を回収するステップを含むことにより得られる、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記工程が前記抽出物の抗糖尿病活性を溶媒での更なる抽出により濃縮するステップを更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記溶媒処理抽出ステップの前記溶媒が塩化メチレン、水、メタノール、ヘキサン、酢酸エチルまたはそれらの混合物のうちの1種以上である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記工程が前記抽出物の抗糖尿病活性をクロマトグラフィー分離により濃縮するステップを更に含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記クロマトグラフィー分離がクロロホルム、メタノール、酢酸エチル、ヘキサンまたはそれらの混合物のうちの1種以上を溶離剤として用いる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記工程がカラムによるクロマトグラフィー分離を実行すること、分画中の溶離剤をカラムから回収すること、前記分画を評価して抗糖尿病活性を測定すること、および抗糖尿病活性を含む分画を少なくとも1つ選択すること、を含む、請求項46に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公表番号】特表2010−520914(P2010−520914A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553126(P2009−553126)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052863
【国際公開番号】WO2008/110552
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(509257558)
【氏名又は名称原語表記】ZADEC APS
【Fターム(参考)】