説明

ハマナス成分含有酒及びその製造方法

【課題】 ハマナスの成分を含む酒類において、さらに飲用に適するような抽出と調熟効果を生かし、ハマナスの香味を引き立たせて、濃醇で口当たりのよい新規ハマナス成分含有酒及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 ハマナスを、例えばジン、ウオッカ等の蒸留酒又は清酒、ワイン等の醸造酒等のアルコール含有液及び米糖化液存在下で抽出し、かつハマナスの含有する酵素及び/又は添加酵素により、この抽出液を調熟することによって成分バランスが飲用適し、さらに嗜好に適した香味を有し、しかも濃醇で口当たりのよいハマナス成分含有酒を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンC及びビタミンA等生理的効果を有するハマナス成分が含有された酒類及びその製造方法に係り、特に香味に優れた健康酒としてのハマナス成分含有酒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭においてホームメイドの果実酒が作られるようになり、種々の果実を利用した果実酒が楽しまれている。これらの果実酒は、酒税法上リキュールに分類され、このリキュールは素材の種類によって、五つに分類される。すなわち、(1)薬草・ハーブ系、(2)種子系、(3)果実系、(4)果皮系、(5)クリーム系(糖分の多いクリーム状のもの)がある。また製法の面からは、(1)ベースの酒に素材を漬け込みエキスを抽出する浸漬法、(2)素材を酒に漬け、さらに蒸留して造る蒸留法、(3)素材のエッセンス(天然と人工の両者がある)を加えるエッセンス法の3類型がある〔秋本栄司、秋本由紀子、砂糖を使わない手作り果実酒・ハーブ・健康酒、14頁、雄鶏社、東京、1996年〕。
【0003】
ホームメイドで作る果実酒は果実を焼酎又はアルコール(エチルアルコール)と水、時には砂糖を併用して常温で長時間抽出、数週間以上漬ける浸漬法が広く用いられており、その抽出液を飲用に供している。この方法ではアルコールや砂糖が防腐をしつつ抽出を行っている。果実には果実酒に多用されるものがあるが、これらの方法では、長時間抽出で果肉以外の種子成分の抽出成分が多くなり、香味のバランスの崩れが無視できない。良好な抽出と香味が得られず、果実酒原料として使用しにくいものもある。また、濃醇感や香味のバランスも調塾しても調和せず、飲用として必ずしも嗜好に適さない場合がある。
【0004】
ハマナスの果実は熟すと甘酸っぱい味で、別名ハマナシとも呼ばれている。この果実はビタミンCやビタミンAも多く食用になる。このハマナスの果実酒の製品が望まれているが、従来の果実を焼酎又はアルコール(エチルアルコール)と水、時には砂糖を併用して常温で長時間抽出、数週間以上漬ける浸漬法では、熟成感と濃醇感を備えかつ目的にかなう健康酒は得られていない。
【0005】
本件出願に関する技術分野に関しては先行する特許文献は発見されていないが、果実を含めて植物エキスを抽出した酒類に関する特許文献としては下記記載のものがある。
【特許文献1】特開平10−99069号
【特許文献2】特開2002−171957号 上記特許文献のうち、特許文献1は果実の中に鳳仙花エキスを加えるものであり、特許文献2は果実ではなくアガリスク茸のエキスを抽出するものであり、何れも本願発明と目的を異にし、かつ当然のことながらその構成も異なるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ハマナス本来の香味成分を豊富に含有した酒で、ハマナス成分が米糖化液成分と混合調熟して、さらに飲用に適するよう抽出と調熟に工夫がなされ、熟成された新規なハマナス成分含有酒及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ハマナス成分、例えばハマナスの香味成分が豊富で、ハマナスの熟成感と濃醇感の両方を兼ね備え、口当たりの良いハマナス成分含有酒を開発するに至った。
【0008】
本発明を概説すれば、本願発明における発明の第1は、抽出処理したハマナス成分及び米糖化液成分を含有することを特徴とするハマナス成分含有酒に関する。当該第1の発明において、抽出としてはアルコール及び米糖化液が例示される。本発明の第1の態様としては、アルコール7.0〜18.0%v/v、エキス分9.0〜25%w/v、フォルモール態窒素20〜50mgw/v、エキス分(%w/v)に対するフォルモール態窒素(mgw/v)の比率0.8〜5.0であるハマナス成分含有酒であり、抽出されたハマナスの香味がアルコールと米糖液の成分とで熟成し、ハマナスの香味を引き立たせた熟成感と濃醇感のあるハマナス成分含有酒である。
【0009】
本願発明の第2の発明は、ハマナスをアルコール及び米糖化液存在下で40〜50℃でハマナスが含有する酵素及び/又は添加酵素により処理する工程を包含することを特徴とするハマナス成分含有酒の製造方法に関する。
【0010】
本願発明の第1〜5の発明において、原料となるハマナスは、別名ハマナシ(学名: Rosa rugosa Thunb.)、近縁種マイカイ(学名:Rosa maikai Hara.)及びこれらの自然交雑種や栽培種が挙げられる。これらをそれぞれ、単独又は組み合わせて併用して用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ハマナス本来の香味成分を豊富に含有し、熟成感と口当たりのよい濃醇な新規な酒質で、かつハマナス成分が飲用に適合するよう抽出が工夫されており、調塾効果によって口当たりのよいハマナス成分含有酒で従来にない良好なハマナス果実酒類を得ることができる。
【0012】
また、本発明方法を実施することにより上記良質なハマナス成分含有酒を複雑な生産施設を設けることなく得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
抽出用の液としては、アルコール(エチルアルコール)を含有しているものであれば特に限定はなく、95%又は99%v/vアルコールを適宜使用に適する所定のアルコール濃度に設定する。使用対象の酒類としては、例えば蒸留酒である甲類焼酎、果実用焼酎、本格焼酎、ウィスキー、ジン、ウオッカ、ブランディー、ラム、白酒(パイチュウ)等、醸造酒である清酒、ワイン、老酒、みりん、赤酒、濁酒及びそれらのモロミ等を用いる。
【0014】
以下本発明を具体的に説明し、後述の実施例に及ぶ。
本発明により、ハマナス成分、例えば香味成分が豊富で、ハマナス成分の香味と米糖化液成分がバランスよく熟成され、香味の熟成感と濃醇感の両方を兼ね備えた新規ハマナス成分含有酒が提供される。
【0015】
上記における、香味の熟成感と濃醇感の両方を兼ね備えたとは、ハマナス果実の抽出時に、果肉からの成分と種子成分の抽出も平行して行われる。そこで、果実の持つ特性を生かし、果肉及び種子からの成分がバランス良いものとなし、なおかつ米糖化液の成分とアルコール存在下で抽出したハマナスの香味を適切な温度で熟成し、味馴れを達成し、さらに調塾効果でハマナスの香味を引き立たせ、濃醇感のある口当たりのよい酒質に変化させ、嗜好性の高いハマナス成分含有酒にすることを意味する。
【0016】
本発明でのハマナスの使用にあっては、少なくともハマナスの果実を用い、花、花弁、根は併用しなくてもよい。これらハマナスの果実、花、花弁、根は生及び/又はそれぞれの加工品を使用してもよい。また、これらのハマナスの果実、花、花弁、根の形状は特に限定はなく、例えばそのまま、細断状、ピューレ状、ペースト状、及び粉末状であってもよい。
【0017】
本発明において、ハマナスとして生ハマナスまたは加工ハマナスの加工品を例示したが、加工されたハマナスであれば特に限定はないが、加工の処理方法として加熱処理、冷凍処理、電磁処理、放射熱処理、超音波処理、乾燥処理、酵素処理等が挙げられる。加熱処理としては、例えば煮る、蒸す、焼く、炒める、揚げる等が例示される。冷凍処理としては、例えば凍結等があげられる。電磁処理としては、例えはマイクロウエェーブ照射等が挙げられる。放射熱処理としては、例えば近赤外線、遠赤外線処理等が挙げられる。乾燥処理としては、例えば風乾、温風乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。酵素処理としては、例えばアミラーゼ、イソメラーゼ、トランスグルコシダーゼ、プロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、及びペクチナーゼからなる群より選ばれた少なくとも一つ以上の酵素による処理等が例示される。また、ハマナスを自然放置することでハマナス自身が含有する酵素により追塾されたハマナスも本発明の加工ハマナスに包含される。これらの処理は目的に応じて組み合わせてもよい。加工ハマナスの形状は特に限定はなく、例えばそのまま、細断状、ピューレ状、ペースト状、及び粉末状であってもよい。また、処理後固液分離をした液部分及び/または固体部分であってもよく、そのまま、濃縮、希釈されたものであってもよい。
【0018】
本発明における抽出用の液としては、アルコールを含有しているものであれば特に限定はなく、95%又は99%v/vアルコールを、適宜使用に適する所定のアルコール濃度に設定できる。なお、ここでいうアルコールとはエチルアルコールのことをいう。酒類使用としては、例えば蒸留酒である甲類焼酎、果実用焼酎、本格焼酎、ウィスキー、ジン、ウオッカ、ブランディー、ラム、白酒(パイチュウ)等、醸造酒である清酒、ワイン、老酒、みりん、赤酒、濁酒及びそれらのモロミ等が挙げられる。
【0019】
本発明の抽出及び調塾用の液は、米を糖化した液であれば、特に限定はなく、ここでいう糖化は液化及び/又は糖化のことをいう。用いる米は搗精の有無、形状に限定はなく、粒状、粉状、造粒物のいずれであってもよい。米の糖化は、米麹及び/又は酵素で処理して得られる。酵素処理の酵素は、例えばアミラーゼ、イソメラーゼ、トランスグルコシダーゼ、プロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、及びペクチナーゼからなる群より選ばれた少なくとも一つ以上の酵素を用いることができる。これらの酵素は非耐熱性又は耐熱性酵素であってもよい。
【0020】
米は糊化する工程と糖化処理する工程をそれぞれ単独、同時平行して行ってもよい。酵素添加量は糖化液全容量に対して、0.0005〜5.0%w/vで、好ましくは0.00.1〜2.0%w/vである。米麹使用量は米麹用の米及び掛け原料用の米の重量に対する米麹用の米の重量の比率が0〜100%の範囲で設定できる。
【0021】
米麹を用いる糖化処理の場合は5〜50%、好ましくは10〜30%である。固液比は糖化液全体の重量に対しての使用米重量が2〜70%、好ましくは5〜60%である。温度条件と処理時間は米は糊化する工程及び/又は米を糖化する工程の最適温度と処理時間を適宜設定すればよく、例えば米は、糊化する工程は50〜120℃、好ましくは60〜100℃で、処理時間は5分〜24時間、好ましくは10分〜10時間、さらに好ましくは、作業の操作上から1〜7時間である。米を糖化する工程は30〜120℃、好ましくは35〜100℃で、処理時間は5分〜100時間、好ましくは1時間〜96時間である。米糖化液は米糖化物及び/又は固液分離した液部分を用いる。
【0022】
抽出方法は特に限定はないが、ハマナスのアルコール及び米糖化液に対する比率は、重量比で5〜60%、好ましくは10〜50%である。さらに抽出操作上からは15〜45%である。ハマナスの成分、例えば香味成分が引き立ち、米糖化液の成分とのバランスと調熟により、濃醇でハマナスの香味が生かされたハマナスの熟成感の両方を兼ね備えた特性を満足するには、漬け込み温度として、例えば、漬け込みによる抽出では0〜60℃、好適には40〜50℃、さらには最適で42〜48℃であり、抽出時間は1〜15日、好ましくは2〜10日であり、ハマナスを抽出後取り出して抽出液を上記抽出温度の範囲で熟成させてもよい。
【0023】
この時、酵素、例えば滓成分の除去のためペクチナーゼ及び香り成分増強のためエステラーゼ等を作用させてもよい。生ハマナスを用いる場合、2回以上の浸漬法を用いてもよい。すなわち、ハマナスをアルコール及び米糖化液存在下で漬け込み抽出、固液分離後、残ったハマナスはアルコール及び米糖化液へ再度漬け込み再抽出する。この操作を繰り返して1〜5回、香味の上からは1〜3回繰り返す。それぞれ目的にかなう酒質の抽出液が得られるが、品質の安定化を求めるには、再抽出液をブレンドして調合することができる。これによって、ハマナスの果肉部分の抽出成分を主体とし、かつ種子成分の香味の抽出が軽減され、穏和で上品なハマナス成分含有が得られる。
【0024】
生ハマナスの持つ酵素類や添加酵素は、抽出時のアルコール及び米糖化液存在下でハマナス及びアルコールや米糖化液に作用し、例えばペクチナーゼ等によりペクチン及び低分化ペクチンを生成し、またエステラーゼはハマナスにより生成された成分とアルコールが反応してエステル類を生成し、香気成分を生成する。またハマナスに含まれる酸化酵素はアルコールによる反応阻害を受けて抑制される。すなわち、本発明によりハマナスをアルコール及び米糖化液存在下でハマナスが含有する酵素及び/又は添加酵素により処理することを特徴とするハマナス成分含有酒が提供される。
【0025】
本発明において、生ハマナスが含有する酵素としては、アルコール及び米糖化液存在下の浸漬で作用するハマナス及び米糖化液に由来する酵素であれば特に限定はないが、例えばアミラーゼ、プロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、及びペクチナーゼからなる群より選ばれた少なくとも一つ以上の酵素が例示される。
【0026】
また、添加酵素としては、香味成分を生成および、高分子成分を低分子化する酵素であれば特に限定はなく、動植物及び微生物の起源を問わず、例えば、アミラーゼ、イソメラーゼ、トランスグルコシダーゼ、プロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、及びペクチナーゼからなる群より選ばれた少なくとも一つ以上の酵素を用いることができる。
【0027】
添加酵素の添加量としては、特に限定はないが、例えば添加量は抽出時の全容量に対して0.0005〜5.0%w/vであり、0.001〜2.0%w/vである。
またハマナスが合有する酵素及び/又は添加酵素の反応時間としては、特に限定はないが、反応時間としては、例えば、漬け込みによる抽出では0〜60℃、好適には40〜50℃、さらには最適で42〜48℃であり、抽出時間は1〜15日、好ましくは2〜10日であり、ハマナスを抽出後取り出して抽出液を上記抽出温度の範囲で熟成させてもよい。
【0028】
またここで使用するハマナスとしては生ハマナスでも加工ハマナスである加工品でもよい。生ハマナスに比べて含水量の少ない加工ハマナスを用いる場合、ハマナス成分が濃厚になるとこれらの酵素による反応量も多くなり、ハマナスの熟成感を生かし、更に濃醇感が強調された、濃厚なハマナス成分含有酒が得られる。
【0029】
本発明において、ハマナス成分含有酒は濃縮することができる。濃縮方法は特に限定はないが、例えば、凍結濃縮や減圧濃縮が挙げられる。また、ハマナス抽出液へさらにハマナスを入れ、抽出・調熟を繰り返してもよい。抽出・濃縮された液中のアルコール濃度は防腐や品質保持の面から18.0〜45.0%v/vがよく、得られた抽出・濃縮されたハマナス成分含有酒は、そのまま飲用に利用できるが、リキュールとしてカクテルや低アルコール飲料等に混合して利用できる。
【0030】
以下、実施例を示すことにより本発明をより具体的に示す。なお、本発明はもとよりこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
米粉末(3000g)、井水(3000g)及び市販のアミラーゼ(1.6g)及びプロテアーゼ(1.6g)を混合し、50〜60℃で5時間、液化・糖化した。その後100℃まで昇温し、20分保った。その後、55℃まで品温を降下させ、米麹(900g)を添加して3日間糖化した。得られた糖化物(6900g)を試験室の圧搾機で固液分離をし、搾汁(6400ml、7550g)を得た。搾汁はエキス分76.7%w/v、全糖68%w/v、フォルモール態窒素171mgN%w/vであった。これを米糖化液とした。これにフォルモール態窒素の影響を検討するため、全糖68%w/vとなるよう水分30%の分解度が85%になるよう調製した含窒素成分を含まない精製水飴、アミノ酸液及び蒸留水でフォルモール態窒素濃度が(1)15、(2)35、(3)69、(4)100、(5)171、(6)200、(7)300、(8)400、(9)500(何れもmg%w/v)になるよう調製したモデル米糖化液をそれぞれ、640ml調製した。それぞれのフォルモール態窒素濃度に調製したモデル米糖化液(640ml)に本格米焼酎アルコール40%v/v(405ml)及びハマナス果実383gを混合し、45℃で4日間抽出、調塾し、その後井水(334ml)添加して、濾紙濾過してハマナス含有酒を得て官能評価を行った。
【0032】
得られた実験区(1)〜(9)の一般分析値と官能評価(パネルメンバー5名、5段階評価で5が最良、1が最悪として評価)として合計点を得た。以下の表1はこの結果を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1よりエキス分に対するフォルモール態窒素の比率と官能評価の結果、実験区(2)〜(8)までは香り、味及び総合で20点以上が得られられ、ハマナスの香味が引き立ち熟成感と濃醇感があり、口当たりがよいという感想であった。実験区(1)は濃醇感に乏しく味のバランスが崩れていた。実験区(9)は濃醇感が強く味バランス的にもやや劣る傾向にあった。
従って、エキス分に対するフォルモール態窒素の比率は0.4〜5.0が好ましい。
【実施例2】
【0035】
実施例1と同様にして米糖化液を調製した。本格米焼酎アルコール40%v/vと、最終の添加井水の量を調節して、量を調製して2種類のハマナス成分含有酒を調製した。試作(1)はアルコール18.0%v/v、エキス分25.0%w/v、ブドウ糖18.0%w/v、フォルモール態窒素50.4mg%w/v、pH4.4、エキス分(%w/v)に対するフォルモール態窒素(mg%w/v)の比率2.02である。
試作(2)はアルコール7.0%v/v、エキス分9.0%w/v、ブドウ糖5.0%w/v、フォルモール態窒素20.4mg%w/v、pH3.7、エキス分(%w/v)に対するフォルモール態窒素(mgN%w/v)の比率2.27である。これらを調合して種々成分のハマナス成分含有酒を調製し、容量で試作(1)が100%単独、試作(1)が75%と試作(2)が25%の混合、試作(1)が50%と試作(2)が50%の混合、試作(1)が25%と試作(2)が75%の混合の区分をそれぞれ分析し、官能評価を実施例1と同様にして行った。その結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2より、総合で20点以上を示した範囲は試作(1)の100%〜試作(2)の100%であり、ハマナスの香味が引き立ち熟成感と濃醇感があり、口当たりがよいという感想であった。従って、アルコール7.0〜18.0%v/v、エキス分9.0〜25%w/v、フォルモール態窒素20〜50mg%w/v、が目的とする酒質を得る成分範囲であり、更に細かくは、アルコール7.0〜18.0%v/v、エキス分9.0〜25%w/v、ブドウ糖5.0〜18.0w/v、フォルモール態窒素20〜50mg%w/v、pH3.6〜4.4が糖質成分の特定と濃度並びに酸度すなわちpH規定した酒質の成分範囲となる。
【実施例3】
【0038】
実施例1の製造と同様の配合とフローでハマナス成分含有酒を調製する工程で、一方はペクチナーゼを抽出液中に液汁重量当たり0.01%添加して抽出した。対照は無添加で行った。得られた抽出液を濾紙濾過した濾過液をそれぞれ分析及び官能評価をした。一般的な分析値は同様であったが、肉眼による官能評価では外観で、ペクチナーゼ処理した抽出液の照り、つやが対照に比べて優れており、食感では舌触りが良好との評価であった。
【0039】
以上詳述したように、本発明で提供されるハマナス成分及び米糖化液成分を含有するハマナス成分含有酒はアルコール及び米糖化液存在下で、ハマナスが含有する酵素及び/又は添加酵素により処理したハマナス成分を含有することを特徴とするハマナス成分含有酒であり、抽出されたハマナスの香味がアルコールと米糖化液の成分とで調熟し、ハマナスの香味を引き立たせた熟成感と濃醇感があり、口当たりのよい酒質のハマナス成分含有酒となる。また、本発明において、工場生産に適した製造法も提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、ハマナス本来の香味成分を豊富に含有し、熟成感と口当たりのよい濃醇な新規な酒質の嗜好性の高い飲用物として利用できるのは当然であるが、ハマナスの薬効等が確認できれば医薬品或いは医薬部外品として、医薬品産業による製品の生産販売の可能性も十分あるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出処理したハマナス成分及び米糖化液成分を含有することを特徴とするハマナス成分含有酒。
【請求項2】
アルコール 7.0〜18.0%v/v、エキス分 9.0〜25%w/v、フォルモール態窒素 20〜50mg%w/v、エキス分(%w/v)に対するフォルモール態窒素 mg%(w/v)の比率 0.8〜5.0であることを特徴とする請求項1記載のハマナス成分含有酒。
【請求項3】
ハマナスをアルコール及び米糖化液存在下でハマナスが含有する窒素及び/又は添加酵素により処理したハマナス成分を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のハマナス成分含有酒。
【請求項4】
抽出されたハマナスの香味がアルコールと米糖液の成分とで調熟し、ハマナスの香味を引き立たせた熟成感と濃醇感の請求項1乃至3の何れかに記載のハマナス成分含有酒。
【請求項5】
ハマナスをアルコール及び米糖化液存在下で40〜50℃でハマナスが含有する酵素及び/又は添加酵素により処理する工程を含有することを特徴とするハマナス成分含有酒の製造方法。

【公開番号】特開2006−129821(P2006−129821A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324764(P2004−324764)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(596101897)玉乃光酒造株式会社 (1)
【Fターム(参考)】