説明

ハロゲナーゼを含有する核酸断片およびベクター、ならびに化合物のハロゲン化方法

【課題】ハロゲナーゼの存在下で化合物をハロゲン化することを特徴とするハロゲン化法の提供。
【解決手段】ハロゲナーゼが、 (a) 特定の配列または遺伝暗号の縮重に基づいて該配列から誘導される配列にコードされるもの、または、 (b) (a)に記載されたものの機能的断片をコードする核酸配列にコードされるもの、または、 (c) (a)または(b)に記載された配列と標準的な条件下でハイブリダイズする配列にコードされるもの、または、 (d) (a)で特定される配列に対して30%を超える同一性もしくは60%を超える類似性を有する配列にコードされるもの、である、上記方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物の酵素的ハロゲン化方法に関する。本発明はさらに、ハロゲナーゼまたはハロゲナーゼ遺伝子を含有する核酸断片、ベクターおよび生物に関する。
【背景技術】
【0002】
化学合成におけるハロゲン化反応は古くから知られていた。これは、多くのハロゲン化有機化合物の製造に用いられている。この合成反応の不利な点は、合成に特殊なプラントを必要とすることである。該反応の生成物は腐食性が高いことが多く、プラントを腐食から特別に保護する必要がある。合成の際に所望の生成物だけでなく副産物も生成されることが多く、該生成物の異物混入が起こる。この副産物が最終生成物中で許容され得ない場合は、該副産物を念入りに除去しなくてはならない。さらに、多くの副産物は毒性である。種々の反応ではダイオキシンが発生する場合もある。
【0003】
化学的ハロゲン化に替わるものの一つに酵素的合成がある。酵素的合成は一般に非常に選択的であり、つまり概して副産物を生成しない。
【0004】
ハロパーオキシダーゼと呼ばれる酵素が刊行物により開示されている。該酵素は、ハロゲンイオンおよび過酸化水素の存在下で有機化合物をハロゲン化する。その酵素の例としては、ストレプトミセス・アウレオファシエンス(Streptomyces aureofaciens; Krenら、Liebigs Ann./Red., 1997, 11: 2379-83)、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis;Schrijverら、Appl. Environ. Microbiol.,1997, 63, 5: 1911-1916)、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis; van Wageningenら、Chem. Biol., 1998, 5: 155-162)、カルダリオミセス・フマゴ(Caldariomyces fumago;Hohaus ら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 1997, 36, No.18: 2012-2013)、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)またはセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens; von Pee.K.H., Ann. Rev.Microbiol., 1996、50: 375-99)由来のハロパーオキシダーゼが挙げられる。
【0005】
ハロゲン化反応が、かかるハロパーオキシダーゼの真の酵素反応であるのか、副反応に過ぎないのかは完全には明らかにされていない。該酵素は、基質親和性および補基質親和性が低く、酵素としては特異性が低いことが極めて多い。
【0006】
ハロパーオキシダーゼの他にも、他のハロゲン化酵素が刊行物に開示されている。即ち、Kirnerら(J. Bacteriol., 1998, Vol.180,No. 7, p.1939-1943)およびHohausら(Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 1997, 36, No.18,2012-2013)は、塩素原子をトリプトファンの7位に導入するハロゲナーゼを記載している。
【0007】
さらに他の酵素が、Hammerら(Appl. Environ. Microbiol., 1997, Vol. 63, No. 6, 2147-2154)、deSchrijverら(Appl. Environ. Microbiol., 1997, Vol. 63, No. 5, 1911-1916)、Nowak-Thompsonら(J.Bacteriol., 1999, 181: 2166-2174)、Solenbergら(Chem. Biol., 4, 1997: 195-202)、およびDairiら(Biosci.Biotechnol. Biochem. 59, 1995, 1099-1106)により記載されている。
【0008】
アミコラトプシス・メジテラネイ(Amycolatopsis mediterranei)の9.9kbの長さのDNA断片が、GenBank (Y16952)に見出せる。PelzerらはGenBankへの登録の中でこのDNAの2つの機能を記述している。該断片は、オキシゲナーゼとグリコシルトランスフェラーゼをコードする。他の機能については記述していない。
【発明の開示】
【0009】
ハロゲン化有機化合物の産業的生産に用いられてきた酵素はない。従って、本発明の目的は、ハロゲン化有機化合物の産業的合成のための酵素を提供することである。
【0010】
本発明者らは上記目的が本発明の方法、すなわち、ハロゲナーゼの存在下で化合物をハロゲン化することを含むハロゲン化法であって、該ハロゲナーゼが、
(a) 配列番号1で特定される配列または遺伝暗号の縮重に基づいて該配列から誘導される配列によりコードされるもの、または、
(b) (a)に記載されたものの機能的断片をコードする核酸配列によりコードされるもの、または、
(c) (a)または(b)に記載された配列と標準的な条件下でハイブリダイズする配列によりコードされるもの、または、
(d) (a)で特定される配列に対して30%を超える同一性もしくは60%を超える類似性を有する配列によりコードされるもの、である方法によって達成されることを見出した。
【0011】
本発明の上記方法に用いられるハロゲナーゼは、当業者に公知の生物から単離することができる。例えば糖ペプチド性抗生物質などのハロゲン化化合物を生成する生物などから単離することが好ましい。そのような生物の例としては、細菌および真核生物、アスコフィラム(Ascophyllum)またはシネコシスティス(Synechocystis)などの藻類、地衣類、カルダリオミセス(Caldariomyces)などの真菌、酵母およびアクチノミセス目(Actinomycetales)などのグラム陽性細菌、バチルス属、またはシュードモナス(Pseudomonas)などのグラム陰性細菌などの細菌などから見出される。ハロゲナーゼが、ノカルジオ型放線菌類(Actinomycetes)またはストレプトミセス類(Streptomycetes)から単離されることも有利である。
【0012】
ハロゲナーゼまたはハロゲナーゼ類(両者は本明細書中では同義であることとする)が、シュードノカルジア科(Pseudonocardiaceae)および関連する細菌群のメンバー、例えば、シュードノカルジア属(Pseudonocardia)、サッカロモノスポラ属(Saccharomonospora)、サッカロポリスポラ属(Saccharopolyspora)などの、糖ペプチド性抗生物質を産生するものから単離されることが可能であり、特に好ましい。アミコラトプシス(Amycolatopsis)、サーモクリスパム(Thermocrispum)、シュードアミコラタ(Pseudoamycolata)、キブデロスポランギウム(Kibdelosporangium)、アミコラタ(Amycolata)、アクチノポリスポラ(Actinopolyspora)、アクチノキネオスポラ(Actinokineospora)またはアクチノビスポラ(Actinobispora)の例として挙げられるものは、ノルカジア・メジテラネイ(Nocardia mediterranei)、アミコラトプシス・メジテラネイ(Amycolatopsis mediterranei)、ストレプトミセス・メジテラネイ(Streptomyces mediterranei)、ノカルジア種(Nocardia spec.)、アミコラトプシス種(Amycolatopsis spec.)、ストレプトミセス種(Streptomyces spec.)、ノカルジア・オリエンタリス(Nocardia orientalis)、アミコラトプトシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)、ストレプトミセス・オリエンタリス(Streptomyces orientalis)、ストレプトミセス・トヨカエンシス(Streptomyces toyocaensis)またはストレプトミセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)などの属および種である。アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)C329.4、A82846およびATCC19795、ならびにアミコラトプシス・メジテラネイ(Amycolatopsis mediterranei)DSM 5908から得られるものが極めて特に好ましいと言える。該酵素を、ストレプトミセス属(Streptomyces)、特にストレプトミセス・メジテラネイ(Streptomyces mediterranei)の属および種の生物体からも有利に単離することができる。
【0013】
ハロゲナーゼ、またはハロゲナーゼをコードする核酸はさらに、ロドコッカス属(Rhodococcus)、サーモモノスポラ属(Thermomonospora)、バチルス属(Bacillus)、セラチア属(Serratia)、アクチノスポランギウム属(Actinosporangium)、アクチノマデュラ属(Actinomadura)、アクチノプラネス属(Actinoplanes)またはミクロモノスポラ属(Micromonospora)からも単離され得る。
【0014】
ハロゲナーゼの遺伝子は、当業者に公知の様々な技法により上記生物の遺伝子バンクから単離され得る。これらの技法の一つとして、例えば、配列番号1で特定される配列または該配列の一部とのハイブリダイゼーションにより遺伝子バンクから遺伝子を「フィッシング」することが挙げられる。
【0015】
適切な実験手法は、例えば、Sambrook, J.ら (1989) 「分子クローニング: 実験マニュアル(Molecular cloning: A laboratory manual)」, Cold Spring Harbor Laboratory Press、F.M.Ausubelら (1994) 「分子生物学の最新プロトコール(Current protocols in molecular biology)」、John Wiley and Sons,またはD.M.Glover ら、「DNAクローニング(DNA Cloning)」, 第1巻 (1995), IRL Press (ISBN 019-963476-9)などの指南書中に記載されている。例示となる更なる方法としては、PCRクローニング技法がある(実施例参照のこと)。
【0016】
Pelzerら(J. Biotechnol., 56 [1997], 115-128)は、セクション2.4にアミコラトプシス・メジテラネイ(Amycolatopsis mediterranei)の遺伝子(DNA)ライブラリーの調製について記載している。更なる方法としては、当業者に公知の他の生物に関する方法、およびSambrookら(1989)などの指南書に記載されている方法がある。
【0017】
原則的には、少なくとも1コピーのハロゲナーゼ遺伝子を含有する全ての生物を本発明の方法に用いることができる。
【0018】
かかる生物は、天然に該遺伝子を含有する生物であっても、または該遺伝子をクローニングされた形態で含有する生物であってもよい。さらに、該遺伝子を、天然の宿主生物体に導入すること、または他の生物に導入することが可能である。
【0019】
宿主生物には、好ましくは、有機溶媒、反応する物質、温度上昇および圧力変化に有利なように十分な耐性または高い耐性を有する生物を用いる。使用に有利な生物は、少なくとも1つのハロゲナーゼ遺伝子が導入されている上記生物である。
【0020】
上記のまたはその他の有利な条件に合致する宿主は、動物、植物および細菌界の全ての領域で実際に見出すことができる。
【0021】
宿主生物として有利に機能し得る微生物は、真菌、酵母および細菌の中に見出すことができる。
【0022】
本発明の方法に好適な宿主原核生物は、原則的には、グラム陰性またはグラム陽性細菌である。グラム陰性細菌の例として挙げられるものは、エシェリキア属、アエロバクター(Aerobacter)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、シトロバクター(Citrobacter)属、シゲラ(Shigella)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、セラチア(Serratia)属、エルウィニア(Erwinia)属またはサルモネラ(Salmonella)属などのエンテロバクテリア科、またはシュードモナス(Pseudomonas)属、キサントモナス(Xanthomonas)属、ブルクホロデリア(Burkholderia)属、グルコノバクター(Gluconobacter)属、ニトロソモナス(Nitrosomonas)属、ニトロバクター(Nitrobacter)属、メタノモナス(Methanomonas)属、コマモナス(Comamonas)属、セルロモナス(Cellulomonas)属またはアセトバクター(Acetobacter)属などのシュードモナダス科(Pseudomonadaceae)である。
【0023】
グラム陽性細菌の例として挙げられるものは、バチルス属、スポロラクトバチルス属(Sporolactobacillus)またはクロストリジウム属(Clostridium)などの内生胞子形成グラム陽性の好気性または嫌気性細菌、アルトロバクター属(Arthrobacter)、セルロモナス属(Cellulomonas)、クルトバクテリウム属(Curtobacterium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、ミクロバクテリウム属(Microbacterium)またはクルチア属(Kurthia)などのコリネ型細菌、または、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ロドコッカス属、ストレプトミセス属、ノカルジア属、アミコラクトプシス属、シュードノカルジア属、サッカロモノスポラ属、サッカロポリスポラ属またはサーモクリスパム属を含む、シュードノカルジア科、ストレプトミセス科またはノルカジア科などの放線菌目である。使用に好ましい細菌は、エシェリキア属、サルモネラ属、シュードモナス属、コマモナス属、バチルス属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、ストレプトミセス属、アクチノミセス属、マイコバクテリウム属、ゴードナ属、ミクロコッカス属、ロドコッカス属、ノカルジア属またはアミコラトプシス属である。
【0024】
使用に特に好ましい属および種は、大腸菌(Escherichia coli)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、シュードモナス・メンドシナ(Pseudomonas mendocina)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・ムタビリス(Pseudomonas mutabilis)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)、コマモナス・アジドボランス(Comamonas acidovorans)、コマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・プミラス(Bacillus pumilus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・セレウス(Bacilluscereus)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、ストレプトミセス種(Streptomyces sp.)、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、アミコラトプシス・メジテラネイ(Amycolatopsis mediterranei)、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)、ノカルジア・メジテラネイまたはノカルジア・オリエンタリスである。
【0025】
使用に有利な生物は、遺伝情報を導入するために必要な方法がすでに利用可能となっている生物であり、その例としては、エシェリキア、バチルス、シュードモナス、ストレプトミセス、ノカルジア、またはアミコラトプシスなどがある。
【0026】
上述の属の分類学上の位置付けは、近年、大幅な変化に曝されており、不適切な属および種の名前が訂正されつつあるため、未だに流動的である。今までにもしばしば必要とされてきたこのような分類学上の再分類のために、細菌の分類における上述の属の上記に列挙したもの以外の科、属および種もまた、ハロゲナーゼまたはハロゲナーゼ遺伝子を単離するための出発材料生物およびDNAを導入する生物として、本発明の方法に好適である。
【0027】
本発明の方法に好適な宿主真核生物は、原則的には真菌、酵母、植物、植物細胞または動物細胞などのあらゆる生物である。例として挙げるのに好ましい酵母は、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、スポロボロミセス(Sporobolomyces)属、カンジダ(Candida)属、ハンセヌラ(Hansennula)属、ピチア(Pichia)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属またはシゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属である。特に好ましい属および種は、ロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)、ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)、ロドトルラ・グラミニス(Rhodotorula graminis)、ヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)、スポロボロミセス・サルモニカラー(Sporobolomyces salmonicolor)、スポロボロミセス・シバタヌス(Sporobolomyces shibatanus)、サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・ボイジニイ(Candidaboidinii)、カンジダ・ボンビコラ(Candida bombicola)、カンジダ・シリンドラセ(Candida cylindracea)、カンジダ・パラシロシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、ピチア・メタノリカ(Pichia methanolica)またはピチア・パストリス(Pichia pastoris)である。
【0028】
例として挙げられる真菌類は、アスペルギルス、カニンガメラ(Canninghamella)、ビューベリア(Beauveria)、ケカビ(Mucor)、アカパンカビ(Neurospora)、ペニシリウム(Penicillium)またはリゾクトニア(Rhizoctonia)である。本発明の方法への使用に有利な真菌類は、以下の属および種である;アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・カンジダス(Aspergillus candidus)、アスペルギルス・フィキューム(Aspergillus ficuum)、黄色コウジカビ(Aspergillus flavus)、黒色コウジカビ(Aspergillus niger)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、ビューベリア・バシアナ(Beauveria bassiana)、ビューベリア・ブロングニアルティ(Beauveria brongniartii)、ビューベリア・デンサ(Beauveria densa)、ビューベリア・ニベア(Beauveria nivea)、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)、ムコール・ロウキシイ(Mucor rouxii)、ケカビ種(Mucor sp.)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、ペニシリウム・ノタツム(Penicillium notatum)、リゾクトニア・レペンス(Rhizoctonia repens)またはリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)である。
【0029】
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)またはラベンジュラ・ベラ(Lavendulavera)などの植物も好ましい。植物細胞培養物、植物由来のプロトプラストまたはカルス培養物が特に好ましい。
【0030】
本発明の方法では、前記化合物はハロゲナーゼの存在下で対応するハロゲン化化合物に変換される。
【0031】
この場合、ハロゲナーゼは、 (a) 配列番号1で特定される配列または遺伝暗号の縮重に基づいて該配列から誘導される配列によりコードされるか、または、(b)(a)に記載されたものの機能的断片をコードする核酸配列によりコードされるか、または、(c) (a)または(b)に記載された配列と標準的な条件下でハイブリダイズする配列によりコードされるか、または、(d)(a)で特定される配列に対して30%を超える同一性もしくは60%を超える類似性を有する配列によりコードされる。
【0032】
原則的に、当業者に公知のあらゆる方法により、使用する生物に上記(a)〜(d)で特定される配列を導入することができるが、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、パーティクルガンの使用またはマイクロインジェクションにより生物または生物の細胞内に導入することが有利である。微生物に好適な方法については、当業者は、Sambrook,J.ら、(1989)「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular cloning: A laboratory manual)」Cold Spring Harbor Laboratory Press、F.M. Ausubelら、(1994)「分子生物学の最新プロトコール(Current protocols in molecular biology)」John Wiley and Sons、D.M.Glover ら、「DNAクローニング(DNA Cloning)第1巻」(1995)IRL Press (ISBN 019-963476-9)、Kaiserら、(1994)「酵母の遺伝学の方法(Methods in Yeast Genetics)」Cold Spring Harbor Laboratory PressまたはGuthrieら、「酵母の遺伝学および分子生物学への招待(Guide to Yeast genetics and Molecular Biology)」Methods in Enzymology, 1994, Academic Pressの指南書により知得することができる。
【0033】
外来遺伝子の植物ゲノムへの転移は、形質転換と同様に適用される。この場合、一過的または恒常的形質転換のための植物の形質転換および植物組織または植物細胞からの植物の再生についての記載の方法を用いる。適切な方法は、ポリエチレングリコール誘導性DNA取り込み、遺伝子銃の使用、エレクトロポレーション、DNA含有溶液中での乾燥胚のインキュベーション、マイクロインジェクションおよびアグロバクテリウム-介在性遺伝子転移によるプロトプラスト形質転換である。該方法は、例えばB.Jenes ら、「遺伝子転移技法(Techniques for GeneTransfer)」(「トランスジェニック植物(Transgenic Plants)」、第1巻、Engineering and Utilization、S.D.Kung およびR.Wu編、Academic Press (1993)中、128-143頁)、および「ポトリカス(Potrykus)」(Annu.Rev. Plant Physiol. Plant Molec. Biol. 42 (1991)205-225)に記載されている。発現すべき構築物は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の形質転換に適切なベクター、例えばpBin19(Bevan ら、Nucl. Acids Res. 12 (1984) 8711)などにクローニングすることが好ましい。アグロバクテリウム・ツメファシエンスによる植物の形質転換は、例えばHofgen およびWillmitzer (Nucl. AcidsRes. (1988)16、9877)により記載されている。
【0034】
遺伝子改変された植物細胞を、当業者に公知のあらゆる方法により再生することができる。上記のS.D.KungおよびR.Wu、Potrykusによる刊行物またはHofgen およびWillmitzerによる刊行物に適切な方法が記載されている。
【0035】
生物に導入された核酸は、染色体外エレメントとして、またはゲノムに組込まれた形で生物体内にさらに存在し得る。
【0036】
ゲノムへの組込みは、例えば異種組換えまたは相同組換えにより起こる。
【0037】
核酸は少なくとも1種のレポーター遺伝子と一緒に、生物内に導入するDNA構築物中にクローニングすると有利である。レポーター遺伝子は増殖アッセイ、蛍光、化学発光もしくは生物発光アッセイまたは分光測定による簡便な検出を可能にするはずである。例として挙げられるレポーター遺伝子は、ヒドロラーゼ遺伝子、蛍光タンパク質遺伝子、生物発光性遺伝子、グルコシダーゼ遺伝子、パーオキシダーゼ遺伝子、またはルシフェラーゼ遺伝子、β-ガラクトシダーゼ遺伝子、gfp遺伝子、リパーゼ遺伝子、エステラーゼ遺伝子、パーオキシダーゼ遺伝子、β-ラクタマーゼ遺伝子、アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、ホスホトランスフェラーゼもしくはアデニルトランスフェラーゼ遺伝子などの遺伝子がある。これらの遺伝子は、転写活性、すなわち遺伝子発現の簡単な測定および定量を可能にする。
【0038】
しかし、レポーター遺伝子の代わりに、抗生物質耐性遺伝子もしくはその他の耐性遺伝子または生合成系遺伝子を使用することも可能かつ有利である。
【0039】
Pelzerらは、糖ペプチド性抗生物質産生アミコラトプシス・メジテラネイ、具体的にはDSM5908株における特定遺伝子のクローニングシステムについて記載している。
【0040】
Pelzer らにより、DNA導入のための直接的形質転換法の変法が記載されている。DNA取り込みの効率は、培養期間に依存する。定常期初期(52〜55時間)から得られた菌糸を用いる場合に最も優れた結果を得ることができる。Pelzer らの原著論文(J. Biotechnol. 56 [1997],115-128)は、参照として本明細書中に組込むこととする。
【0041】
核酸を、例えば、ストレプトミセス類などの放線菌類に導入する方法の例示として挙げられるさらに有利な方法は、接合(Muth, G.、Brolle, D.F.、Wohlleben,W., 1999、「ストレプトミセスの遺伝学(Genetics of Streptomyces)」 「工業的微生物学およびバイオテクノロジーマニュアル(Manual of Industrial Microbiology and Biotechnology)」、Demain, A.L. および Davies, J.E.編、ASM Press、Washington, D.C.中)、およびPEG誘導性プロトプラスト形質転換(Hopwood, D.A.ら、1985, 「ストレプトミセスの遺伝子操作:実験マニュアル(Genetic manipulation of Streptomyces; a laboratory manual)」、The John Innes Foundation,Norwich, U.K. und W.Wohlleben およびG.Muth, 1993,「ストレプトミセスプラスミドベクター(Streptomyces plasmid vectors)」, p.147-175、K.G. Harley編、「プラスミド:実際の手法(Plasmids: A practical approach)」、Oxford University Press, Oxford and Muth, G., Brolle, D.F.,Wohlleben, W., 1999, 前掲)である。両方法とも、当業者には公知であり、他の放線菌科の菌株にも容易に適用できる。
【0042】
放線菌に存在することが多い強力な制限系を回避するためには、形質転換する核酸を実際の形質転換の前に、f1ファージ複製起点の存在下または非存在下での熱変性(Hillemann ら、1991, Nucleic AcidsRes. 194, 727-731)、またはアルカリ変性/再生(Oh およびChater、1997, J.Bacteriol., 179, 122-127)により、1本鎖DNAに変換すると有利である。
【0043】
宿主生物による制限を回避するために特に有利なのは、例えば大腸菌を放線菌に接合させるなどの種間接合により、放線菌を用いてDNAを転移できることである。このような方法に利用できる放線菌株は少ない。(Baltz,R.H., 1998, Trends in Microbiology, 6, 76,83, Flett ら、1997, FEMS Microbiol.Lett., 155, 223-229)。核酸をエレクトロポレーションにより放線菌株に導入することもまた有利であり得る(Muth, G., Brolle,D.F., Wohlleben, W., 1999, 前掲; Englishら、1998, J. Ind. Microbiology and Biotechnology, 21, 219-224; Lal, R.ら、1991, Appl. Environ. Microbiol. 57,665-671)。電気的導入もまた、エレクトロポレーションの有利な変法として挙げられる。電気的導入は、シャトルベクターを用いてエレクトロポレーションによりDNAを大腸菌から放線菌へ迅速かつ直接転移させることが可能である(Muth,G., Brolle, D. F., Wohlleben, W., 1999)。
【0044】
単一の細胞以外でも、アミコラトプシスおよびノカルジアの菌糸を、CaCl2、ウシ胸腺DNAおよびPEGを添加することにより形質転換することが可能かつ有利である(Pelzerら、1997;Madon J.およびR. Hutter, 1991, J. Bacteriol., 173, 6325-6331、Vrijbloed, J.W.ら、1995,Plasmid 34, 96-104; Kumar,C.V.ら、1995, Appl. Environ. Microbiol. 60, 4086-4093)。
【0045】
上記(a)の機能的断片をコードする核酸配列とは、(a)より短いながらも酵素的触媒活性は維持している配列を意味する。これらの配列は、配列の3'または5'末端が末端切断されていてもよい。酵素活性を失うことなく、読み枠内のコード配列内の一部を欠失させておくことも可能である。
【0046】
原則として、かかる機能的断片では、(a)の配列と比較して5〜30%、好ましくは10〜20%が末端切断されている。(a)の配列より長い配列も、論理的には考えられる。
【0047】
(a)および(b)で特定される配列と標準的な条件下でハイブリダイズする配列とは、例えば42〜58℃の温度にて、0.1〜5x SSCの濃度の水性バッファー溶液中(1xSSC 0.15 M NaCl、15mM クエン酸ナトリウム; pH 7.2)またはさらに50% ホルムアミド存在下(例えば 42℃ 5x SSC および50% ホルムアミド中など)でハイブリダイズする配列を意味する。
【0048】
DNAハイブリダイゼーションのための実験条件は、Sambrook ら、「分子クローニング(Molecular Cloning)」(Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)などの関連の遺伝学の指南書に見て取れる。
【0049】
少なくとも20〜25ヌクレオチド長の短い特異的オリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーションに用いることが有利である。少なくとも25ヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドを用いることが好ましい。しかしながら、50〜200ヌクレオチドを含有するより長いオリゴヌクレオチドまたは全ヌクレオチド配列[上記(a)および(b)参照]までのもっと長いオリゴヌクレオチドを用いることも可能かつ有利である。
【0050】
本発明の方法中では、核酸とは、例えばDNA、cDNA、RNAまたはmRNAを意味する。これらの核酸配列の相同物も含むこととする。
【0051】
相同物とは、例えば、真核または原核細胞性の相同物、末端切断された配列または一本鎖DNAを意味する。これらは、コード配列または非コード配列に対して相同であり得る。
【0052】
本発明の方法には、配列番号1で特定される配列に対して、全長にわたって、配列に由来するアミノ酸のレベル(Blast program, W.GishおよびD.J. States、Nat. Genet., 3, 1993: 266-272)で、30%、好ましくは50%、特に好ましくは60%、極めて好ましくは95%を上回る同一性、60%、好ましくは70%、特に好ましくは80%、極めて好ましくは97%を上回る類似性を有する配列によりコードされるハロゲナーゼを用いることが可能かつ有利である。
【0053】
これらの配列は、ヌクレオチドの欠失、挿入および/または置換により配列番号1から得られる配列であって、この場合および他の全ての場合において、該配列に由来するハロゲナーゼタンパク質の酵素的触媒活性を保持しているものが有利である。
【0054】
本発明の方法では、以下の一般構造式Iで示される化合物が、上記ハロゲナーゼを用いて有利に変換される;
【化4】

[式I中、
R1は、水素、ヒドロキシル、置換または無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C2-C10-アルケニル、C1-C10-アルコキシ-、C2-C10-アルケニルオキシ-、R6R7N-、
【化5】

であり;
R2は、水素、ヒドロキシル、置換または無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C1-C10-アルコキシ、C2-C10-アルケニル、C2-C10-アルケニルオキシ、R6R7N-であり;
R3は、水素、ヒドロキシル、置換または無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C1-C10-アルコキシ、C2-C10-アルケニル、C2-C10-アルケニルオキシ、C1-C10-アルキルカルボニル、C2-C10-アルケニルカルボニル、アリール、ヘテロアリール、
【化6】

であり;
R4およびR5は互いに独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、 ニトロ、シアノ、置換または無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C1-C10-アルコキシ、C2-C10-アルケニル、C2-C10-アルケニルオキシ、置換または無置換のC3-C10-シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、R6R7N-であり、2つの基R4およびR5が隣接する炭素原子上に存在する場合には、R4およびR5は一緒になって、1個以上のO、NまたはSのようなヘテロ原子を含んでいてもよい5員または6員の芳香族環、飽和環または部分飽和環を形成していてもよく、
R6およびR7は互いに独立に、水素または置換もしくは無置換の、分枝状もしく
は非分枝状のC1-C10-アルキルであり、
R8は、置換または無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C2-C10-アルケニル、置換または無置換のアリールであり、
R9は、置換または無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C2-C10-アルケニル、置換または無置換のアリール、ヘテロアリールであり、
Xは、-CH-またはNであり、
Yは、Oまたは Nであり、
mは、0または1であり、
n は、0、1、2または3であり、
p は、0または1である]。
【0055】
上記一般式Iの化合物は、ハロゲナーゼの存在下で、以下の一般式IIで表されるハロゲン化化合物に変換される:
【化7】

[式中、変数および置換基は上記式Iで規定した通りの意味であり、「Hal」は、塩素、フッ素、臭素またはヨウ素であり、好ましくは塩素または臭素である]。
【0056】
原則として、反応に十分なハロゲン原子が反応溶液中に存在する。しかし、ハロゲン供与体を反応溶液中に添加することが有利である。
【0057】
ハロゲン供与体としては、原則的に、全てのハロゲン含有有機または無機化合物を用いることができる。簡便性および経費上の理由で、無機化合物が好ましい。反応溶液にそれらを塩の形態で添加することが有利である。例として挙げられるものとしては、ハロゲンのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩である。
【0058】
式(構造)IおよびIIで表される化合物中のR1は、水素、ヒドロキシル、置換または無置換の、分枝状または非分枝状の、C1-C10-アルキル、C2-C10-アルケニル、C1-C10-アルコキシ、C2-C10-アルケニルオキシ、R6R7N-、
【化8】

である。
【0059】
例として挙げることができるアルキル基は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニルまたはn-デシルなどの、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル鎖である。メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、i-プロピルまたはi-ブチルが好ましい。メチルおよびエチルは特に好ましい。
【0060】
例として挙げることができるアルケニル基は、エテニル、プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチルプロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、5-ヘプテニル、6-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3-オクテニル、4-オクテニル、5-オクテニル、6-オクテニル、7-オクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、4-ノネニル、5-ノネニル、6-ノネニル、7-ノネニル、8-ノネニル、1-デセニル、2-デセニル、3-デセニル、4-デセニル、5-デセニル、6-デセニル、7-デセニル、8-デセニルまたは9-デセニルなどの、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC2-C10-アルケニル鎖、およびこれらの分枝鎖の同族体である。
【0061】
例として挙げることができるアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1-メチルエトキシ、ブトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシ、1,1-ジメチルエトキシ、ペントキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、3-メチルブトキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、2,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、ヘキソキシ、1-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、4-メチルペントキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、2,3-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1-エチルブトキシ、2-エチルブトキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,2,2-トリメチルプロポキシ、1-エチル-1-メチルプロポキシ、1-エチル-2-メチルプロポキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシまたはデシルオキシなどの置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルコキシ鎖、およびこれらの分枝鎖の同族体である。
【0062】
例として挙げることができるアルケニルオキシ基は、エテニルオキシ、プロペニルオキシ、1-ブテニルオキシ、2-ブテニルオキシ、3-ブテニルオキシ、2-メチルプロペニルオキシ、1-ペンテニルオキシ、2-ペンテニルオキシ、3-ペンテニルオキシ、4-ペンテニルオキシ、1-メチル-1-ブテニルオキシ、2-メチル-1-ブテニルオキシ、3-メチル-1-ブテニルオキシ、1-メチル-2-ブテニルオキシ、2-メチル-2-ブテニルオキシ、3-メチル-2-ブテニルオキシ、1-メチル-3-ブテニルオキシ、2-メチル-3-ブテニルオキシ、3-メチル-3-ブテニルオキシ、1,1-ジメチル-2-プロペニルオキシ、1,2-ジメチル-1-プロペニルオキシ、1,2-ジメチル-2-プロペニルオキシ、1-エチル-1-プロペニルオキシ、1-エチル-2-プロペニルオキシ、1-ヘキセニルオキシ、2-ヘキセニルオキシ、3-ヘキセニルオキシ、4-ヘキセニルオキシ、5-ヘキセニルオキシ、1-メチル-1-ペンテニルオキシ、2-メチル-1-ペンテニルオキシ、3-メチル-1-ペンテニルオキシ、4-メチル-1-ペンテニルオキシ、1-メチル-2-ペンテニルオキシ、2-メチル-2-ペンテニルオキシ、3-メチル-2-ペンテニルオキシ、4-メチル-2-ペンテニルオキシ、1-メチル-3-ペンテニルオキシ、2-メチル-3-ペンテニルオキシ、3-メチル-3-ペンテニルオキシ、4-メチル-3-ペンテニルオキシ、1-メチル-4-ペンテニルオキシ、2-メチル-4-ペンテニルオキシ、3-メチル-4-ペンテニルオキシ、4-メチル-4-ペンテニルオキシ、1,1-ジメチル-2-ブテニルオキシ、1,1-ジメチル-3-ブテニルオキシ、1,2-ジメチル-1-ブテニルオキシ、1,2-ジメチル-2-ブテニルオキシ、1,2-ジメチル-3-ブテニルオキシ、1,3-ジメチル-1-ブテニルオキシ、1,3-ジメチル-2-ブテニルオキシ、1,3-ジメチル-3-ブテニルオキシ、2,2-ジメチル-3-ブテニルオキシ、2,3-ジメチル-1-ブテニルオキシ、2,3-ジメチル-2-ブテニルオキシ、2,3-ジメチル-3-ブテニルオキシ、3,3-ジメチル-1-ブテニルオキシ、3,3-ジメチル-2-ブテニルオキシ、1-エチル-1-ブテニルオキシ、1-エチル-2-ブテニルオキシ、1-エチル-3-ブテニルオキシ、2-エチル-1-ブテニルオキシ、2-エチル-2-ブテニルオキシ、2-エチル-3-ブテニルオキシ、1,1,2-トリメチル-2-プロペニルオキシ、1-エチル-1-メチル-2-プロペニルオキシ、1-エチル-2-メチル-1-プロペニルオキシ、1-エチル-2-メチル-2-プロペニルオキシ、1-ヘプテニルオキシ、2-ヘプテニルオキシ、3-ヘプテニルオキシ、4-ヘプテニルオキシ、5-ヘプテニルオキシ、6-ヘプテニルオキシ、1-オクテニルオキシ、2-オクテニルオキシ、3-オクテニルオキシ、4-オクテニルオキシ、5-オクテニルオキシ、6-オクテニルオキシ、7-オクテニルオキシ、1-ノネニルオキシ、2-ノネニルオキシ、3-ノネニルオキシ、4-ノネニルオキシ、5-ノネニルオキシ、6-ノネニルオキシ、7-ノネニルオキシ、8-ノネニルオキシ、1-デセニルオキシ、2-デセニルオキシ、3-デセニルオキシ、4-デセニルオキシ、5-デセニルオキシ、6-デセニルオキシ、7-デセニルオキシ、8-デセニルオキシまたは9-デセニルオキシなどの置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC2-C10-アルケニルオキシ鎖、およびこれらの分枝鎖の同族体である。
【0063】
上記式IおよびII中のR1基に好適な置換基は、原則的に、ハロゲナーゼ反応を阻害しない全ての考えられる置換基であり、例えば、フッ素、塩素または臭素などのハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはベンジルなどの1種以上の置換基が挙げられる。
【0064】
式IおよびIIで表される化合物中のR2は、水素、ヒドロキシル、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C1-C10-アルコキシ、C2-C10-アルケニル、C2-C1o-アルケニルオキシ、R6R7N-である;
【0065】
例として挙げることができるアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニルまたはn-デシルなどの、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル鎖である。メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、i-プロピルまたはi-ブチルが好ましい。
【0066】
例として挙げることができるアルケニル基は、エテニル、プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチルプロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、5-ヘプテニル、6-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3-オクテニル、4-オクテニル、5-オクテニル、6-オクテニル、7-オクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、4-ノネニル、5-ノネニル、6-ノネニル、7-ノネニル、8-ノネニル、1-デセニル、2-デセニル、3-デセニル、4-デセニル、5-デセニル、6-デセニル、7-デセニル、8-デセニルまたは9-デセニルなどの、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC2-C10-アルケニル鎖、およびこれらの分枝鎖の同族体である。
【0067】
例として挙げることができるアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1-メチルエトキシ、ブトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシ、1,1-ジメチルエトキシ、ペントキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、3-メチルブトキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、2,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、ヘキソキシ、1-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、4-メチルペントキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、2,3-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1-エチルブトキシ、2-エチルブトキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,2,2-トリメチルプロポキシ、1-エチル-1-メチルプロポキシ、1-エチル-2-メチルプロポキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシまたはデシルオキシなどの、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルコキシ鎖、およびこれらの分枝鎖の同族体である。
【0068】
例として挙げることができるアルケニルオキシ基は、エテニルオキシ、プロペニルオキシ、1-ブテニルオキシ、2-ブテニルオキシ、3-ブテニルオキシ、2-メチルプロペニルオキシ、1-ペンテニルオキシ、2-ペンテニルオキシ、3-ペンテニルオキシ、4-ペンテニルオキシ、1-メチル-1-ブテニルオキシ、2-メチル-1-ブテニルオキシ、3-メチル-1-ブテニルオキシ、1-メチル-2-ブテニルオキシ、2-メチル-2-ブテニルオキシ、3-メチル-2-ブテニルオキシ、1-メチル-3-ブテニルオキシ、2-メチル-3-ブテニルオキシ、3-メチル-3-ブテニルオキシ、1,1-ジメチル-2-プロペニルオキシ、1,2-ジメチル-1-プロペニルオキシ、1,2-ジメチル-2-プロペニルオキシ、1-エチル-1-プロペニルオキシ、1-エチル-2-プロペニルオキシ、1-ヘキセニルオキシ、2-ヘキセニルオキシ、3-ヘキセニルオキシ、4-ヘキセニルオキシ、5-ヘキセニルオキシ、1-メチル-1-ペンテニルオキシ、2-メチル-1-ペンテニルオキシ、3-メチル-1-ペンテニルオキシ、4-メチル-1-ペンテニルオキシ、1-メチル-2-ペンテニルオキシ、2-メチル-2-ペンテニルオキシ、3-メチル-2-ペンテニルオキシ、4-メチル-2-ペンテニルオキシ、1-メチル-3-ペンテニルオキシ、2-メチル-3-ペンテニルオキシ、3-メチル-3-ペンテニルオキシ、4-メチル-3-ペンテニルオキシ、1-メチル-4-ペンテニルオキシ、2-メチル-4-ペンテニルオキシ、3-メチル-4-ペンテニルオキシ、4-メチル-4-ペンテニルオキシ、1,1-ジメチル-2-ブテニルオキシ、1,1-ジメチル-3-ブテニルオキシ、1,2-ジメチル-1-ブテニルオキシ、1,2-ジメチル-2-ブテニルオキシ、1,2-ジメチル-3-ブテニルオキシ、1,3-ジメチル-1-ブテニルオキシ、1,3-ジメチル-2-ブテニルオキシ、1,3-ジメチル-3-ブテニルオキシ、2,2-ジメチル-3-ブテニルオキシ、2,3-ジメチル-1-ブテニルオキシ、2,3-ジメチル-2-ブテニルオキシ、2,3-ジメチル-3-ブテニルオキシ、3,3-ジメチル-1-ブテニルオキシ、3,3-ジメチル-2-ブテニルオキシ、1-エチル-1-ブテニルオキシ、1-エチル-2-ブテニルオキシ、1-エチル-3-ブテニルオキシ、2-エチル-1-ブテニルオキシ、2-エチル-2-ブテニルオキシ、2-エチル-3-ブテニルオキシ、1,1,2-トリメチル-2-プロペニルオキシ、1-エチル-1-メチル-2-プロペニルオキシ、1-エチル-2-メチル-1-プロペニルオキシ、1-エチル-2-メチル-2-プロペニルオキシ、1-ヘプテニルオキシ、2-ヘプテニルオキシ、3-ヘプテニルオキシ、4-ヘプテニルオキシ、5-ヘプテニルオキシ、6-ヘプテニルオキシ、1-オクテニルオキシ、2-オクテニルオキシ、3-オクテニルオキシ、4-オクテニルオキシ、5-オクテニルオキシ、6-オクテニルオキシ、7-オクテニルオキシ、1-ノネニルオキシ、2-ノネニルオキシ、3-ノネニルオキシ、4-ノネニルオキシ、5-ノネニルオキシ、6-ノネニルオキシ、7-ノネニルオキシ、8-ノネニルオキシ、1-デセニルオキシ、2-デセニルオキシ、3-デセニルオキシ、4-デセニルオキシ、5-デセニルオキシ、6-デセニルオキシ、7-デセニルオキシ、8-デセニルオキシまたは9-デセニルオキシなどの、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC2-C10-アルケニルオキシ鎖、およびこれらの分枝鎖の同族体である。
【0069】
上記式IおよびII中のR2基に好適な置換基は、原則的に、ハロゲナーゼ反応を阻害することのない全ての考えられる置換基であり、例えば、フッ素、塩素または臭素などのハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはベンジルなどの1種以上の置換基が挙げられる。
【0070】
式IおよびIIで表される化合物中のR3は、水素、ヒドロキシル、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C1-C10-アルコキシ、C2-C10-アルケニル、C2-C10-アルケニルオキシ、C1-C10-アルキルカルボニル、C2-C10-アルケニルカルボニル、アリール、ヘテロアリール、
【化9】

である。
【0071】
例として挙げることができるアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニルまたはn-デシルなどの、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル鎖である。メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、i-プロピルまたはi-ブチルが好ましい。
【0072】
例として挙げることができるアルケニル基は、エテニル、プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチルプロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、5-ヘプテニル、6-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3-オクテニル、4-オクテニル、5-オクテニル、6-オクテニル、7-オクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、4-ノネニル、5-ノネニル、6-ノネニル、7-ノネニル、8-ノネニル、1-デセニル、2-デセニル、3-デセニル、4-デセニル、5-デセニル、6-デセニル、7-デセニル、8-デセニルまたは9-デセニルなどの、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC2-C10-アルケニル鎖、およびこれらの分枝鎖の同族体である。
【0073】
例として挙げることができるアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1-メチルエトキシ、ブトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシ、1,1-ジメチルエトキシ、ペントキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、3-メチルブトキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、2,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、ヘキソキシ、1-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、4-メチルペントキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、2,3-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1-エチルブトキシ、2-エチルブトキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,2,2-トリメチルプロポキシ、1-エチル-1-メチルプロポキシ、1-エチル-2-メチルプロポキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシまたはデシルオキシなどの、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルコキシ鎖、およびこれらの分枝鎖の同族体である。
【0074】
例として挙げることができるアルケニルオキシ基は、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC2-C10-アルケニルオキシ鎖、例えば、エテニルオキシ、プロペニルオキシ、1-ブテニルオキシ、2-ブテニルオキシ、3-ブテニルオキシ、2-メチルプロペニルオキシ、1-ペンテニルオキシ、2-ペンテニルオキシ、3-ペンテニルオキシ、4-ペンテニルオキシ、1-メチル-1-ブテニルオキシ、2-メチル-1-ブテニルオキシ、3-メチル-1-ブテニルオキシ、1-メチル-2-ブテニルオキシ、2-メチル-2-ブテニルオキシ、3-メチル-2-ブテニルオキシ、1-メチル-3-ブテニルオキシ、2-メチル-3-ブテニルオキシ、3-メチル-3-ブテニルオキシ、1,1-ジメチル-2-プロペニルオキシ、1,2-ジメチル-1-プロペニルオキシ、1,2-ジメチル-2-プロペニルオキシ、1-エチル-1-プロペニルオキシ、1-エチル-2-プロペニルオキシ、1-ヘキセニルオキシ、2-ヘキセニルオキシ、3-ヘキセニルオキシ、4-ヘキセニルオキシ、5-ヘキセニルオキシ、1-メチル-1-ペンテニルオキシ、2-メチル-1-ペンテニルオキシ、3-メチル-1-ペンテニルオキシ、4-メチル-1-ペンテニルオキシ、1-メチル-2-ペンテニルオキシ、2-メチル-2-ペンテニルオキシ、3-メチル-2-ペンテニルオキシ、4-メチル-2-ペンテニルオキシ、1-メチル-3-ペンテニルオキシ、2-メチル-3-ペンテニルオキシ、3-メチル-3-ペンテニルオキシ、4-メチル-3-ペンテニルオキシ、1-メチル-4-ペンテニルオキシ、2-メチル-4-ペンテニルオキシ、3-メチル-4-ペンテニルオキシ、4-メチル-4-ペンテニルオキシ、1,1-ジメチル-2-ブテニルオキシ、1,1-ジメチル-3-ブテニルオキシ、1,2-ジメチル-1-ブテニルオキシ、1,2-ジメチル-2-ブテニルオキシ、1,2-ジメチル-3-ブテニルオキシ、1,3-ジメチル-1-ブテニルオキシ、1,3-ジメチル-2-ブテニルオキシ、1,3-ジメチル-3-ブテニルオキシ、2,2-ジメチル-3-ブテニルオキシ、2,3-ジメチル-1-ブテニルオキシ、2,3-ジメチル-2-ブテニルオキシ、2,3-ジメチル-3-ブテニルオキシ、3,3-ジメチル-1-ブテニルオキシ、3,3-ジメチル-2-ブテニルオキシ、1-エチル-1-ブテニルオキシ、1-エチル-2-ブテニルオキシ、1-エチル-3-ブテニルオキシ、2-エチル-1-ブテニルオキシ、2-エチル-2-ブテニルオキシ、2-エチル-3-ブテニルオキシ、1,1,2-トリメチル-2-プロペニルオキシ、1-エチル-1-メチル-2-プロペニルオキシ、1-エチル-2-メチル-1-プロペニルオキシ、1-エチル-2-メチル-2-プロペニルオキシ、1-ヘプテニルオキシ、2-ヘプテニルオキシ、3-ヘプテニルオキシ、4-ヘプテニルオキシ、5-ヘプテニルオキシ、6-ヘプテニルオキシ、1-オクテニルオキシ、2-オクテニルオキシ、3-オクテニルオキシ、4-オクテニルオキシ、5-オクテニルオキシ、6-オクテニルオキシ、7-オクテニルオキシ、1-ノネニルオキシ、2-ノネニルオキシ、3-ノネニルオキシ、4-ノネニルオキシ、5-ノネニルオキシ、6-ノネニルオキシ、7-ノネニルオキシ、8-ノネニルオキシ、1-デセニルオキシ、2-デセニルオキシ、3-デセニルオキシ、4-デセニルオキシ、5-デセニルオキシ、6-デセニルオキシ、7-デセニルオキシ、8-デセニルオキシまたは9-デセニルオキシであり、およびこれらの分枝鎖の同族体である。
【0075】
例として挙げることができるアルキルカルボニル基は、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキルカルボニル鎖であり、例えば、メチルカルボニル、エチルカルボニル、n-プロピルカルボニル、1-メチルエチルカルボニル、n-ブチルカルボニル、1-メチルプロピルカルボニル、2-メチルプロピルカルボニル、1,1-ジメチルエチルカルボニル、n-ペンチルカルボニル、1-メチルブチルカルボニル、2-メチルブチルカルボニル、3-メチルブチルカルボニル、2,2-ジメチルプロピルカルボニル、1-エチルプロピルカルボニル、n-ヘキシルカルボニル、1,1-ジメチルプロピルカルボニル、1,2-ジメチルプロピルカルボニル、1-メチルペンチルカルボニル、2-メチルペンチルカルボニル、3-メチルペンチルカルボニル、4-メチルペンチルカルボニル、1,1-ジメチルブチルカルボニル、1,2-ジメチルブチルカルボニル、1,3-ジメチルブチルカルボニル、2,2-ジメチルブチルカルボニル、2,3-ジメチルブチルカルボニル、3,3-ジメチルブチルカルボニル、1-エチルブチルカルボニル、2-エチルブチルカルボニル、1,1,2-トリメチルプロピルカルボニル、1,2,2-トリメチルプロピルカルボニル、1-エチル-1-メチルプロピルカルボニル、1-エチル-2-メチルプロピルカルボニル、n-ヘプチルカルボニル、n-オクチルカルボニル、n-ノニルカルボニルまたはn-デシルカルボニルである。
【0076】
例として挙げることができるアルケニルカルボニル基は、分枝状または非分枝状のC2-C10-アルケニルカルボニル鎖であり、例えば、エテニルカルボニル、プロペニルカルボニル、1-ブテニルカルボニル、2-ブテニルカルボニル、3-ブテニルカルボニル、2-メチルプロペニルカルボニル、1-ペンテニルカルボニル、2-ペンテニルカルボニル、3-ペンテニルカルボニル、4-ペンテニルカルボニル、1-メチル-1-ブテニルカルボニル、2-メチル-1-ブテニルカルボニル、3-メチル-1-ブテニルカルボニル、1-メチル-2-ブテニルカルボニル、2-メチル-2-ブテニルカルボニル、3-メチル-2-ブテニルカルボニル、1-メチル-3-ブテニルカルボニル、2-メチル-3-ブテニルカルボニル、3-メチル-3-ブテニルカルボニル、1,1-ジメチル-2-プロペニルカルボニル、1,2-ジメチル-1-プロペニルカルボニル、1,2-ジメチル-2-プロペニルカルボニル、1-エチル-1-プロペニルカルボニル、1-エチル-2-プロペニルカルボニル、1-ヘキセニルカルボニル、2-ヘキセニルカルボニル、3-ヘキセニルカルボニル、4-ヘキセニルカルボニル、5-ヘキセニルカルボニル、1-メチル-1-ペンテニルカルボニル、2-メチル-1-ペンテニルカルボニル、3-メチル-1-ペンテニルカルボニル、4-メチル-1-ペンテニルカルボニル、1-メチル-2-ペンテニルカルボニル、2-メチル-2-ペンテニルカルボニル、3-メチル-2-ペンテニルカルボニル、4-メチル-2-ペンテニルカルボニル、1-メチル-3-ペンテニルカルボニル、2-メチル-3-ペンテニルカルボニル、3-メチル-3-ペンテニルカルボニル、4-メチル-3-ペンテニルカルボニル、1-メチル-4-ペンテニルカルボニル、2-メチル-4-ペンテニルカルボニル、3-メチル-4-ペンテニルカルボニル、4-メチル-4-ペンテニルカルボニル、1,1-ジメチル-2-ブテニルカルボニル、1,1-ジメチル-3-ブテニルカルボニル、1,2-ジメチル-1-ブテニルカルボニル、1,2-ジメチル-2-ブテニルカルボニル、1,2-ジメチル-3-ブテニルカルボニル、1,3-ジメチル-1-ブテニルカルボニル、1,3-ジメチル-2-ブテニルカルボニル、1,3-ジメチル-3-ブテニルカルボニル、2,2-ジメチル-3-ブテニルカルボニル、2,3-ジメチル-1-ブテニルカルボニル、2,3-ジメチル-2-ブテニルカルボニル、2,3-ジメチル-3-ブテニルカルボニル、3,3-ジメチル-1-ブテニルカルボニル、3,3-ジメチル-2-ブテニルカルボニル、1-エチル-1-ブテニルカルボニル、1-エチル-2-ブテニルカルボニル、1-エチル-3-ブテニルカルボニル、2-エチル-1-ブテニルカルボニル、2-エチル-2-ブテニルカルボニル、2-エチル-3-ブテニルカルボニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニルカルボニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニルカルボニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニルカルボニル、1-エチル-2-メチル-2-プロペニルカルボニル、1-ヘプテニルカルボニル、2-ヘプテニルカルボニル、3-ヘプテニルカルボニル、4-ヘプテニルカルボニル、5-ヘプテニルカルボニル、6-ヘプテニルカルボニル、1-オクテニルカルボニル、2-オクテニルカルボニル、3-オクテニルカルボニル、4-オクテニルカルボニル、5-オクテニルカルボニル、6-オクテニルカルボニル、7-オクテニルカルボニル、ノネニルカルボニルまたはデセニルカルボニルである。
【0077】
該R3基に適する置換基は、原則的に、ハロゲナーゼ反応を妨害しない、考えられ得る全ての置換基であり、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素または臭素)、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはベンジルなどの1つ以上の置換基である。
【0078】
例として挙げることができるアリール基は、例えば、フェニル、メトキシフェニルもしくはナフチル、または環系に6〜18個の炭素原子を有し、かつ24個以下のさらに別の炭素原子(この炭素原子は3〜8個の炭素原子を有するさらなる非芳香族環もしくは環系を形成していてもよい)を有する芳香族環もしくは環系であり、場合に応じて、1個以上の基、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素または臭素)、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシまたは他の基で置換されていてもよい。場合に応じて置換されていてもよいフェニル、メトキシフェニルおよびナフチルが好ましい。
【0079】
例として挙げることができるヘテロアリール基は、1個以上のヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を含み得る1つ以上のヘテロ芳香族3〜7員環を有する単環式芳香族環系または縮合芳香族環系であり、場合に応じて、1個以上の基、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素または臭素)、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、アルキル、アルコキシ、または他の芳香族環もしくは環系、または他の飽和もしくは不飽和非芳香族環もしくは環系などで置換されていてもよい。
【0080】
式IおよびIIの化合物中のR4およびR5は互いに独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C1-C10-アルコキシ、C2-C10-アルケニル、C2-C10-アルケニルオキシ、置換されたまたは無置換のC3-C10-シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、R6R7N-であり、2つの基R4およびR5基が隣接する炭素原子上に存在する場合には、R4およびR5は一緒になって、1個以上のO、NまたはSのようなヘテロ原子を含んでいてもよい別の5員または6員の置換されたまたは無置換の、芳香族環、飽和環または部分飽和環を形成していてもよい。
【0081】
ハロゲンは、フッ素、臭素または塩素であり、好ましくは、塩素である。
【0082】
例として挙げることができるアルキル基は、置換されたまたは無置換の、分岐状または非分岐状のC1-C10-アルキル鎖であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニルまたはn-デシルである。メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、i-プロピルまたはi-ブチルが好ましい。
【0083】
例として挙げることができるアルケニル基は、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC2-C10-アルケニル鎖、例えば、エテニル、プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチルプロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、5-ヘプテニル、6-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3-オクテニル、4-オクテニル、5-オクテニル、6-オクテニル、7-オクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、4-ノネニル、5-ノネニル、6-ノネニル、7-ノネニル、8-ノネニル、1-デセニル、2-デセニル、3-デセニル、4-デセニル、5-デセニル、6-デセニル、7-デセニル、8-デセニルまたは9-デセニルであり、およびこれらの分枝鎖の同族体である。
【0084】
例として挙げることができるアルコキシ基は、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルコキシ鎖、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1-メチルエトキシ、ブトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシ、1,1-ジメチルエトキシ、ペントキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、3-メチルブトキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、2,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、ヘキソキシ、1-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、4-メチルペントキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、2,3-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1-エチルブトキシ、2-エチルブトキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,2,2-トリメチルプロポキシ、1-エチル-1-メチルプロポキシ、1-エチル-2-メチルプロポキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシまたはデシルオキシであり、およびこれらの分枝鎖の同族体である。
【0085】
例として挙げることができるアルケニルオキシ基は、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC2-C10-アルケニルオキシ鎖、例えば、エテニルオキシ、プロペニルオキシ、1-ブテニルオキシ、2-ブテニルオキシ、3-ブテニルオキシ、2-メチルプロペニルオキシ、1-ペンテニルオキシ、2-ペンテニルオキシ、3-ペンテニルオキシ、4-ペンテニルオキシ、1-メチル-1-ブテニルオキシ、2-メチル-1-ブテニルオキシ、3-メチル-1-ブテニルオキシ、1-メチル-2-ブテニルオキシ、2-メチル-2-ブテニルオキシ、3-メチル-2-ブテニルオキシ、1-メチル-3-ブテニルオキシ、2-メチル-3-ブテニルオキシ、3-メチル-3-ブテニルオキシ、1,1-ジメチル-2-プロペニルオキシ、1,2-ジメチル-1-プロペニルオキシ、1,2-ジメチル-2-プロペニルオキシ、1-エチル-1-プロペニルオキシ、1-エチル-2-プロペニルオキシ、1-ヘキセニルオキシ、2-ヘキセニルオキシ、3-ヘキセニルオキシ、4-ヘキセニルオキシ、5-ヘキセニルオキシ、1-メチル-1-ペンテニルオキシ、2-メチル-1-ペンテニルオキシ、3-メチル-1-ペンテニルオキシ、4-メチル-1-ペンテニルオキシ、1-メチル-2-ペンテニルオキシ、2-メチル-2-ペンテニルオキシ、3-メチル-2-ペンテニルオキシ、4-メチル-2-ペンテニルオキシ、1-メチル-3-ペンテニルオキシ、2-メチル-3-ペンテニルオキシ、3-メチル-3-ペンテニルオキシ、4-メチル-3-ペンテニルオキシ、1-メチル-4-ペンテニルオキシ、2-メチル-4-ペンテニルオキシ、3-メチル-4-ペンテニルオキシ、4-メチル-4-ペンテニルオキシ、1,1-ジメチル-2-ブテニルオキシ、1,1-ジメチル-3-ブテニルオキシ、1,2-ジメチル-1-ブテニルオキシ、1,2-ジメチル-2-ブテニルオキシ、1,2-ジメチル-3-ブテニルオキシ、1,3-ジメチル-1-ブテニルオキシ、1,3-ジメチル-2-ブテニルオキシ、1,3-ジメチル-3-ブテニルオキシ、2,2-ジメチル-3-ブテニルオキシ、2,3-ジメチル-1-ブテニルオキシ、2,3-ジメチル-2-ブテニルオキシ、2,3-ジメチル-3-ブテニルオキシ、3,3-ジメチル-1-ブテニルオキシ、3,3-ジメチル-2-ブテニルオキシ、1-エチル-1-ブテニルオキシ、1-エチル-2-ブテニルオキシ、1-エチル-3-ブテニルオキシ、2-エチル-1-ブテニルオキシ、2-エチル-2-ブテニルオキシ、2-エチル-3-ブテニルオキシ、1,1,2-トリメチル-2-プロペニルオキシ、1-エチル-1-メチル-2-プロペニルオキシ、1-エチル-2-メチル-1-プロペニルオキシ、1-エチル-2-メチル-2-プロペニルオキシ、1-ヘプテニルオキシ、2-ヘプテニルオキシ、3-ヘプテニルオキシ、4-ヘプテニルオキシ、5-ヘプテニルオキシ、6-ヘプテニルオキシ、1-オクテニルオキシ、2-オクテニルオキシ、3-オクテニルオキシ、4-オクテニルオキシ、5-オクテニルオキシ、6-オクテニルオキシ、7-オクテニルオキシ、1-ノネニルオキシ、2-ノネニルオキシ、3-ノネニルオキシ、4-ノネニルオキシ、5-ノネニルオキシ、6-ノネニルオキシ、7-ノネニルオキシ、8-ノネニルオキシ、1-デセニルオキシ、2-デセニルオキシ、3-デセニルオキシ、4-デセニルオキシ、5-デセニルオキシ、6-デセニルオキシ、7-デセニルオキシ、8-デセニルオキシまたは9-デセニルオキシであり、およびこれらの分枝鎖の同族体である。
【0086】
例として挙げることができるシクロアルキル基は、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC3-C10-シクロアルキル鎖であって、環または環系に3〜7個の炭素原子を有するものであり、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、1-メチルシクロプロピル、1-エチルシクロプロピル、1-プロピルシクロプロピル、1-ブチルシクロプロピル、1-ペンチルシクロプロピル、1-メチル-1-ブチルシクロプロピル、1,2-ジメチルシクロプロピル、1-メチル-2-エチルシクロプロピル、シクロオクチル、シクロノニルまたはシクロデシルである。また上記シクロアルキル基は、環にS、NおよびOなどのヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0087】
アリール基は、例えば、単環式芳香族環系または縮合芳香族環系を意味し、場合に応じて、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素または臭素)、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、アルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、または他の飽和もしくは不飽和非芳香族環もしくは環系などの1つ以上の基で置換されていてもよい。場合に応じて、置換されたフェニル、メトキシフェニルおよびナフチルが好ましい。
【0088】
ヘテロアリール基は、例えば、1個以上のヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を含み得る1つ以上のヘテロ芳香族3〜7員環を有する単環式芳香族環系または縮合芳香族環系を意味し、場合に応じて、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素または臭素)、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、アルキル、アルコキシ、または他の芳香族環もしくは環系、または他の飽和もしくは不飽和非芳香族環もしくは環系などの1つ以上の基で置換されていてもよい。
【0089】
該R4およびR5基に適する置換基は、原則的に、考えられうる全ての置換基であり、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素または臭素)、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはベンジルなどの1つ以上の置換基である。
【0090】
置換基R6R7N-中のR6およびR7は互いに独立に、水素、または置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキルである。
【0091】
例として挙げることができるアルキル基は、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル鎖であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル-、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニルまたはn-デシルである。メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、i-プロピルまたはi-ブチルが好ましい。
【0092】
該R6およびR7基に適する置換基は、原則的に、ハロゲナーゼ反応を妨害しない、考えられうる全ての置換基であり、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素または臭素)、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはベンジルなどの1つ以上の置換基である。
【0093】
以下の置換基:
【化10】

の中のR8は、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C2-C10-アルケニル、置換されたまたは無置換のアリールである。
【0094】
例として挙げることができるアルキル基は、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル鎖であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル-、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニルまたはn-デシルである。メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、i-プロピルまたはi-ブチルが好ましい。
【0095】
例として挙げることができるアルケニル基は、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC2-C10-アルケニル鎖であり、例えば、エテニル、プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチルプロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、5-ヘプテニル、6-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3-オクテニル、4-オクテニル、5-オクテニル、6-オクテニル、7-オクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、4-ノネニル、5-ノネニル、6-ノネニル、7-ノネニル、8-ノネニル、1-デセニル、2-デセニル、3-デセニル、4-デセニル、5-デセニル、6-デセニル、7-デセニル、8-デセニルまたは9-デセニルであり、およびこれらの分枝鎖の同族体である。
【0096】
アリール基は、例えば、単環式芳香族環系または縮合芳香族環系を意味し、場合に応じて、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素または臭素)、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、アルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリールまたは他の飽和もしくは不飽和非芳香族環もしくは環系などの1つ以上の基で置換されていてもよい。場合に応じて、置換されたフェニル、メトキシフェニルおよびナフチルが好ましい。
【0097】
以下の置換基:
【化11】

の中のR9は、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C2-C10-アルケニル、置換されたまたは無置換のアリール、ヘテロアリールである。
【0098】
例として挙げることができるアルキル基は、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル鎖であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、n-ブチル、1-メチルプロピル-、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニルまたはn-デシルである。メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、i-プロピルまたはi-ブチルが好ましい。
【0099】
例として挙げることができるアルケニル基は、置換されたまたは無置換の、分枝状または非分枝状のC2-C10-アルケニル鎖、例えば、エテニル、プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチルプロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、5-ヘプテニル、6-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3-オクテニル、4-オクテニル、5-オクテニル、6-オクテニル、7-オクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、4-ノネニル、5-ノネニル、6-ノネニル、7-ノネニル、8-ノネニル、1-デセニル、2-デセニル、3-デセニル、4-デセニル、5-デセニル、6-デセニル、7-デセニル、8-デセニルまたは9-デセニルであり、およびこれらの分枝鎖の同族体である。
【0100】
アリール基は、例えば、単環式芳香族環系または縮合芳香族環系を意味し、場合に応じて、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素または臭素)、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、アルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、または他の飽和もしくは不飽和非芳香族環もしくは環系などの1つ以上の基で置換されていてもよい。場合に応じて、置換されたフェニル、メトキシフェニルおよびナフチルが好ましい。
【0101】
ヘテロアリール基は、例えば、1個以上のヘテロ原子(例えば、N、O、またはS)を含み得る1つ以上のヘテロ芳香族3〜7員環を有する、単環式芳香族環系または縮合芳香族環系を意味し、場合に応じて、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素または臭素)、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、アルキル、アルコキシ、または他の芳香族環もしくは環系、または飽和もしくは不飽和非芳香族環もしくは環系などの1以上の基で置換されていてもよい。
【0102】
該R8基およびR9基に適する置換基は、原則的に、ハロゲナーゼ反応を妨害しない、考えられうる全ての置換基であり、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素または臭素)、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはベンジルなどの1つ以上の置換基である。
【0103】
本発明の方法のために、上記のハロゲナーゼに対する少なくとも1つの遺伝子を含んでなる生物を使用することができる。微生物を使用するのが好ましい。
【0104】
上記方法は、ハロゲナーゼを含む生物の粗抽出物を用いてまたは部分精製酵素もしくは完全精製酵素を用いて有利に行なうことができる。
【0105】
上記のように、ハロゲン供与体を該反応に添加することは有利である。ハロゲンが、塩素または臭素を意味することが好ましい。フッ素およびヨウ素はあまり好ましくない。なぜなら、これらは毒性を有しうるために、生物の活動に障害を与えるかもしくは殺してしまいさえするからである。しかしながら、上記反応はフッ素およびヨウ素を用いても可能である。
【0106】
本発明の方法は、増殖細胞または休止細胞を用いて行なうことができる。
【0107】
増殖生物を用いてハロゲン化するには、ハロゲン化のために使用する生物を、これらの生物(好ましくは、微生物)が増殖することが可能である培地中で培養する。
【0108】
この培地は合成培地であってもまたは天然複合培地であってもよい。使用する培地は当業者に公知のものであり、該生物に対して適当であり得る。微生物の増殖のために使用する培地は、通常炭素供給源、窒素供給源、無機塩類および、必要に応じて少量のビタミン類および微量元素を含有する。
【0109】
有利な炭素供給源の例としては、単糖類、二糖類または多糖類などの糖、例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプンまたはセルロース、複合糖供給源(例えば、糖蜜)、糖リン酸エステル(例えば、フルクトース1,6-ビスリン酸)、糖アルコール(例えば、マンニトール)、多価アルコール(例えば、グリセロール)、アルコール(例えば、メタノールまたはエタノール)、カルボン酸(例えば、クエン酸、乳酸または酢酸)、脂肪(例えば、ダイズ油またはナタネ油)、アミノ酸(例えば、アミノ酸混合物(例:カザミノ酸(Difco)もしくは単一アミノ酸もしくはアミノ糖)である。またアミノ酸は同時に窒素供給源として使用することができる。
【0110】
有利な窒素供給源は、有機窒素化合物もしくは無機窒素化合物、またはこれらの化合物を含む物質である。例としては、アンモニウム塩(例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム)、硝酸塩、尿素、または複合窒素供給源(例えば、コーンスティープリカー、醸造用酵母自己分解物(brewer’s yeastautolysate)、大豆ミール(soybean meal)、小麦グルテン、酵母エキス、肉エキス、カゼイン加水分解物、酵母タンパク質またはジャガイモタンパク質が挙げられる。これらは、しばしば炭素供給源としても役立ちうる。
【0111】
無機塩類の例としては、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、モリブデン、マンガン、カリウム、亜鉛、銅および鉄の塩が挙げられる。これらの塩類において陰イオンとして特筆すべきものは塩素イオン、硫酸イオンおよびリン酸イオンである。
【0112】
さらに増殖因子を必要に応じて栄養培地に添加する。増殖因子としては、例えば、ビタミン類または増殖促進因子(例えば、ビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテナートまたはピリドキシン)、アミノ酸(例えば、アラニン、システイン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン、セリン、フェニルアラニン、オルニチンもしくはバリン)、カルボン酸(例えば、クエン酸、ギ酸、ピメリン酸もしくは乳酸)、またはジチオトレイトールなどの物質が挙げられる。
【0113】
該栄養物の混合割合は、生物および発酵の種類に応じて異なり、それぞれの場合において確立されている。培地成分は、必要であれば、個別にもしくは一緒に殺菌した後に発酵開始時にすべてが入っているようにしても、あるいはまた、発酵中に必要に応じて連続的にもしくは段階的に添加するようにしてもよい。
【0114】
培養条件は確立されており、その結果として、生物が最適に増殖し、可能な最大限の収量が得られる。好ましい培養温度は、15〜40℃である。25〜37℃の温度が、特に有利である。pHは、3〜9の範囲で維持されるのが好ましい。5〜8のpH値が特に有利である。一般的に、十分な培養時間は、数時間から何日間までであり、好ましくは、8時間〜21日間まで、特に好ましくは4時間〜14日間までである。最大量の産物は、この時間の間に、培地中に蓄積する。
【0115】
最適培地の有利な条件は、当業者によって、例えば、the textbook Applied Microbial Physiology,A Practical Approach(P.M. Rhodes, P.F. Stanbury編, IRL-Press, 1997, 53-73頁, ISBN 0 19 9635773)中に見出され得る。アミコラプトシスに有利な培地および培養条件は、Nadkarniら(J. Antibiot, 1994, 334-341)中の336および337頁、もしくはDE 42 26 192中実施例16および17(11および12頁)、EP-A-0 468 504中実施例1〜4(4-6頁)および2頁(20-40行目)、ならびにEP-B0521 408中実施例1において、見出すことができる。ハロゲン化すべき化合物を、培地に培養の開始時に添加しても、または発酵中に連続的にもしくは段階的に添加してもよい。次いで転換を、通常の分析方法、例えば薄層クロマトグラフィー、HPLC、もしくはGCを用いて行うことができる。
【0116】
本発明の方法を、連続的に、またはバッチ的もしくは供給バッチ様式で段階的に実施することができる。
【0117】
生物に応じて、発酵中にpHを制御しても、または制御しなくてもよい。発酵は、一般に5〜9、好ましくは6〜9のpHで実施される。
【0118】
糖ペプチド性抗生物質の分析方法は、例えばNadkarniら, (J. Antibiotics 1994: 334-341)に見出すことができる。
【0119】
本発明の方法を、遊離酵素(粗抽出物もしくは精製酵素)を用いて実施する場合、より広い温度範囲において操作することが可能であり、かつ有利である。一方で、この温度範囲は、反応速度によって決定される(このことは、非常に低い温度であれば、反応速度は低くなることを意味する)。しかし他方で、温度範囲は酵素の熱安定性によって決定される(このことは、高い温度であれば、酵素の変性が起こることを意味する)。これらの理由により、温度範囲は、5〜80℃、好ましくは10〜60℃、特に好ましくは20〜40℃であることが有利である。休止期の細胞もまた、この方法において好適であり、適切であれば、酵素のように、固定することが有利である場合がある。より良好な転換のために、細胞膜を不安定にし、前駆体および産物がより容易に反応部位(酵素)に達することができるようにする。該不安定化は、例えば種々のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩(例えば、リチウム、ルビジウム、もしくはカルシウムの塩)を用いて、または溶媒を用いた処理によって行うことができる。
【0120】
本発明の方法で用いられるハロゲナーゼ)またはハロゲナーゼ遺伝子は、NADH-依存的ハロゲナーゼに属するものである。このNADH-依存的ハロゲナーゼは、位置選択性および/または立体選択性に基づくと、ハロペルオキダーゼ(haloperoxidase)とは異なる。
【0121】
さらに、それらは、広い基質特異性を示し、好ましくは芳香族残基をハロゲン化する。
【0122】
好ましいアミコラプトシスメジテラネイ由来のハロゲナーゼは、491アミノ酸からなる(配列番号2)。その遺伝子は、bhaAと呼ばれる。この酵素は、NADH/FAD結合部位を有する。bhaA遺伝子のN末端には、FAD-およびNAD-依存的酵素のADP結合におそらく関与する配列モチーフ(β&βホールド)が存在する。FAD結合を可能とし得るAsp残基が、該タンパク質の304位に保存されている。従ってbhaAはまたFADに結合する可能性がある。増殖期にある細胞には、反応に不可欠であるNADHもしくはNAD+を提供するための問題はない。というのは、これは、増殖している生物の代謝から得ることができるからである。他の必須要素の提供も、問題にはならない。
【0123】
休止期にある細胞もしくは酵素調製物を本発明の方法で用いる場合、他の基質および補助因子を反応溶液に添加するのが有利である。
【0124】
最も単純には、休止期にある細胞において、炭素供給源を添加し、これにより還元型の等価物を再生することができる。
【0125】
本発明の方法を、遊離酵素もしくは固定化酵素を用いて実施する場合、少なくとも1つの天然の、もしくは合成の電子供与体(例えば、NADH、メチルビオロゲンもしくはベンジルビオロゲン)を反応溶液に添加することが有利である。
【0126】
これらの電子供与体を、反応溶液に連続的に添加するか、もしくはさらなる反応において再生することが有利である。これは、例えば電気化学的反応もしくは酵素反応で行うことができる。これらのタイプの再生反応は、例えばEP-B-0023346、DE 29 30 087 C2、DE 33 07 094 A1もしくはDE 36 31 228 A1において記載されている。
【0127】
従って、DE 29 30 087 C2は、例えばギ酸塩の存在下でギ酸デヒドロゲナーゼを用いた、NADからのNADHの再生を記載している。NAD+/NADHの分子量は、ポリエチレングリコールを用いることで有利に増大し、その結果、膜反応器(membrane reactor)中に維持することができ、従って反応に永続的に利用できる(DE 29 30087 C2,コラム1および2を参照されたい)。同じ内容が、EP-B-0023 346およびDE 33 07 094 A1に記載されている。
【0128】
DE 36 31 228は、ビオロゲン(CAVおよびCYV)を用いたNAD+の再生を記載している。別の有利な実施形態は、補助因子再生酵素、例えばギ酸デヒドロゲナーゼとハロゲナーゼとの共発現、または再生を可能にする生物との共存培養である。
【0129】
再生に関する上記刊行物は、参照により本明細書に組み入れる。
【0130】
本発明の方法を、バッファーの存在下で、または遊離酵素もしくは固定化酵素を使用する場合にはpH制御条件下で実施することが有利である。
【0131】
本方法は、4〜10、好ましくは5〜9、特に好ましくは6〜9のpHで実施される。
【0132】
C1〜C8-モノカルボン酸もしくはジカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、クエン酸)を反応溶液に添加することが有利である。これらを、反応バッファーを作製すると同時に用いることができる。
【0133】
本発明は、
ハロゲナーゼをコードする配列を含む核酸断片であって、遺伝子発現および/もしくはタンパク質発現を増大させるための1種以上の同種もしくは異種の調節シグナルに機能し得る形で連結され、および/またはその天然の調節が遮断されており、かつ、該ハロゲナーゼが、
(a) 配列番号1で特定される配列または遺伝暗号の縮重に基づいて該配列から誘導される配列によりコードされるもの、または、
(b) (a)に記載されたものの機能的断片をコードする核酸配列によりコードされるもの、または、
(c) (a)または(b)に記載された配列と標準的な条件下でハイブリダイズする配列によりコードされるもの、または、
(d) (a)で特定される配列に対して30%を超える同一性もしくは60%を超える類似性を有する配列によりコードされるもの、に関する。
【0134】
本発明の核酸断片とは、遺伝子発現を増大するために有利なように1以上の調節シグナルに機能し得る形で連結されている前記ハロゲナーゼ配列もしくはその機能的等価物を意味する。これらの調節配列は、例えば誘導因子もしくは抑制因子が結合する配列であり、従って核酸の発現を制御するものである。これらの新規調節配列に加えて、またはこれらの配列に代えて、これらの配列の天然の調節部が実際の構造遺伝子の前に存在してもよく、適当である場合には、天然の調節が遮断され、遺伝子の発現が増大するように、遺伝子改変しておくこともできる。しかしながら、遺伝子構築物はまた、単純な構造を有する、あまり好ましくない形態で、あってもよい。すなわち、付加された調節シグナルが、配列番号1の配列もしくはその機能的等価物(前記、(a)〜(d)を参照されたい)の前に挿入されてなく、さらにその配列の調節を行う天然のプロモーターが欠失されていないものでもよい。その代わりに、もはや調節が起こらず、遺伝子発現が増大されるように天然の調節配列が変異を受けている。またこれらの改変プロモーターを、天然遺伝子の前に配置し、活性を増大することができる。さらに遺伝子構築物は、プロモーターに機能し得る形で連結された1以上のエンハンサー配列(これによって、核酸配列の発現の増大が可能となる)を含有してることが有利な場合がある。有益な付加的配列をDNA配列の3'末端(例えば、さらなる調節エレメント、もしくはターミネーター)に挿入することも可能である。1以上のハロゲナーゼ遺伝子のコピーが、遺伝子構築物に存在していてもよい。
【0135】
本発明の方法において有利な調節配列は、プロモーター、例えばcos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lacIq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ-PR、またはλ-PLプロモーターであり、これらは、グラム陰性細菌において有利に利用される。さらに有利な調節配列は、例えばグラム陽性プロモーターのamyおよびSPO2、酵母もしくは真菌類プロモーターのADC1、MFα、AC、P-60、CYCl、GAPDH、TEF、rp28、ADH、または植物プロモーターのCaMV/35S(Franckら,Cell 21(1980) 285-294)、PRP1(Wardら, Plant. Mol. Biol. 22 (1993)、SSU、OCS、lib4、usp、STLS1、B33、LEB4、nos、またはユビキチンもしくはファゼオリンプロモーターである。またこの連結物において、例えば、酵母由来のピルビン酸デカルボキシラーゼおよびメタノールオキシダーゼのプロモーターも有利である。他の有利な植物プロモーターの例としては、ベンゼンスルホンアミド誘導性プロモーター(EP388186)、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Gatzら,(1992) Plant J. 2,397-404)、アブシジン酸誘導性プロモーター(EP335528)、およびエタノール誘導性プロモーターもしくはシクロヘキサノン誘導性プロモーター(WO9321334)である。特に有利な植物プロモーターは、プリンおよびその前駆体の生合成が生じる、組織または植物の一部における発現を確実にするプロモーターである。特に、葉特異的発現を確実にするプロモーターについて言及すべきである。言及すべきプロモーターは、ジャガイモ由来の細胞質FBPaseのプロモーター、またはジャガイモ由来のST-LSIプロモーター(Stockhausら,EMBO J.8 (1989) 2445-245)である。また、ダイズ由来のホスホリボシル-ピロホスフェートアミドトランスフェラーゼのプロモーター(またGenbank 寄託番号U87999を参照されたい)、または他の節特異的プロモーター(EP 249676)を用いることが可能であり、有利である。
【0136】
原則として、本発明の方法に対して、上記のような調節配列を有するすべての天然プロモーターを用いることが可能である。さらに、合成プロモーターを用いることが可能であり、有利である。
【0137】
また核酸断片(= 遺伝子構築物)は、上記のように、生物に導入することが可能であるさらなる遺伝子を含有していてもよい。これらの遺伝子は、個別の調節下、もしくはハロゲナーゼ遺伝子と同一の調節領域下にあってよい。これらの遺伝子は、例えば、糖ペプチド性抗生物質、または可能であれば、新規な水素化物の抗生物質の合成を増大させる生合成遺伝子、もしくは補助因子再生酵素である。該核酸断片は、配列番号1を含有していることが好ましい。
【0138】
発現のために、核酸断片を上記宿主生物に、有利にはベクター(例えば、プラスミド、ファージ、もしくは他のDNA)に挿入することで、宿主内での遺伝子の最適な発現が可能となる。好適なプラスミドの例としては、大腸菌(E.coli)のpLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-III113-B1、λgt11もしくはpBdCI、ストレプトミセスのpIJ101、pIJ364、pIJ702もしくはpIJ361、バチルスのpUB110、pC194もしくはpBD214、コリネバクテリウムのpSA77もしくはpAJ667、真菌類のpALS1、pIL2もしくはpBB116、酵母の2μ、pAG-1、YEp6、YEp13もしくはpEMBLYe23、植物のpLGV23、pGHlac+、pBIN19、pAK2004もしくはpDH51、または上記プラスミドの誘導体である。これらのプラスミドは、可能なプラスミドのうちの少ない選択を示す。さらなるプラスミドが当業者に公知であり、例えば書物「クローニングベクター(Cloning Vectors)」(PouwelsP. H.ら編, Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985, ISBN 0444 904018)に見出すことができる。好適な植物ベクターは、とりわけ「植物の分子生物学およびバイオテクノロジーの手法(Methods inPlant Molecular Biology and Biotechnology)」(CRS Press),6/7章, pp. 71-119中に記載されている。
【0139】
核酸断片は、有利には、存在する他の遺伝子の発現のために、選択した宿主生物および遺伝子の最適な発現のために選択される、発現を増大させるためのさらなる3'および/または5'末端調節配列を含有する。
【0140】
これらの調節配列は、意図する遺伝子発現およびタンパク質の発現を可能とするためのものである。このことは、例えば、宿主生物に応じて、遺伝子が誘導後のみに発現および/または過剰発現されるか、または遺伝子がすぐに発現および/または過剰発現されることを意味する。
【0141】
調節配列もしくは因子は、誘導される遺伝子の発現に関して有益な効果を従って該遺伝子の発現を増大させるものがさらに好ましい。調節エレメントの強化は、強力な転写シグナル(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)を用いることで、転写レベルで有利に行うことができる。しかしながら、これ以外にもまた、例えばmRNAの安定性を改良することによって翻訳を増大させることが可能である。
【0142】
基質特異性は、種々の突然変異誘発法(例えば、部位特異的突然変異誘発法、エラープローン(誤読の多い:error-prone)PCR法、および/または遺伝子シャッフリング法)によって所望の動向に、増大および/または改変され得る。
【0143】
また、酵素活性を増大させることが可能かつ有利である。酵素活性もしくは基質特異性の増大は、例えば、触媒部位を改変することによって達成され得る。また、酵素を改変することによって酵素阻害剤が結合しない、または非常に弱くしか結合しないようにし、酵素活性を増大させることができる。
【0144】
酵素を改変するのに有利な方法は、上記したように、例えば部位特異的突然変異誘発法(D.M. Gloverら, DNA Cloning, Vol.1,1995, IRL Press, 第6章, 193頁以下, ISBN 019-963476-9を参照されたい)、dITPを用いたPCRによるランダム突然変異誘発法(Speeら,Nucleic Acids Res., Vol.21, No.3, 1993: 777-778)、またはin vitro組換え技法(Stemmer,Proc. Natl. Acad. Sci., USA, Vol.91,1994: 10747-10751)である。
【0145】
ベクターの他の実施形態において、また本発明の遺伝子構築物を、微生物に、有利には直鎖状DNAの形態で挿入することができ、さらに異種性組換えもしくは相同性組換えによって宿主生物のゲノムに組込むことができる。この直鎖状DNAは、直鎖状プラスミドから成っていても、またはベクターとして核酸断片のみで成っていてもよい。
【0146】
また、細胞において自己複製をする任意のプラスミド(しかし、特には、サッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)由来の2μプラスミドの複製起点を有するプラスミド)がベクターとして使用可能であるが、さらに上記したように、宿主のゲノムに組み込む線状DNA断片も、使用可能である。この組込みは、異種組換えもしくは相同組換えによって起こり得るが、上記のように、相同組換えによって起こることが好ましい(Steinerら,Genetics, Vol.140, 1995: 973-987)。
【0147】
さらにストレプトミセス属、ロドコッカス属、ノカルジア属、またはアミコラトプシス属に好適で、かつ有利なベクターは、例えばMatsushimaら(J.Bacteriol., Vol.169, NO.5, 1987: 2298-2300,表1)、de Schrijverら(Appl. Environ.Microbiol., Vol.63, No.5, 1997: 1911-1916, 表1)、またはBiermanら(Gene116, 1992:43-49,表1)に記載されている。
【0148】
生物内での異種ハロゲナーゼ遺伝子の最適な発現のために、核酸配列を改変し、該生物で用いられる特定のコドン利用性に対して適切になるようにすることが有利である。このコドン利用性は、関連生物中の他の公知遺伝子のコンピューター分析によって容易に確立することができる。
【0149】
ハロゲナーゼ遺伝子発現の増大は、種々のレベルで、例えば遺伝子コピー数の増加、または調節エレメントを改変して遺伝子発現を増強させることによって行うことができる。従って、調節エレメントの強化は、好ましくは、転写レベル(例えば、より強力なプロモーターおよび/またはエンハンサーを使用することによって)で、翻訳レベル(例えば、mRNAの安定性を増大することによって)で行うことができる。糖ペプチド性抗生物質の完全なクローニングを、過剰発現によって達成することが可能であり、かつ有利である。
【0150】
本発明は、さらに配列番号1に記載の配列およびそれらから誘導されるタンパク質配列(配列番号2)に関する。
【0151】
過剰発現については、アミコラトプシスを例にして本明細書で解説することにする。bhaA遺伝子を、強力なエリトロマイシンプロモーター(ermE)の下流に適切な切断部位を作製する増幅を行った後クローニングする。該プロモーターは、アミコラトプシスにおいて良好に機能する。さらに好適なプロモーターは、ファージ718の恒常性ファージプロモーターSF14(Labesら,Microbiology 147, 1997:1503-1512)、またはチオストレプトン誘導性tipAプロモーター(Murakamiら, 1989, J.Bacteriol. 171, 1459-66,Takanoら, 1995, Gene, 166: 133-137)である。遺伝子の発現は、複製可能なベクターを用いて、または組込み型ベクターによって行うことができる。組込み型ベクターによる発現は、例えばファージphiC31の接着部位(Muth,G., Brolle, G.F., Wohlleben, W., 1999)によって、多くの利点を有する。従って、産物(例えば、抗生物質)の調製に対する悪影響はなく、培地への抗生物質添加による遺伝子の安定化は、不必要である。組込みに有利なプラスミドは、例えばpSET152(Biermanら,1992, Gene 116, 43-46)である。言及することができる有利な複製可能なアミコラトプシスベクターは、pMEA100(Moretti,Pら,1985, Plasmid, 14, 126-133)、pMEA300(Vrijbloed, J.M.ら, 1995, Plasmid, 34,96-104)またはpA387(Lal, R.ら, 1991, Appl. Environ. Microbiol. 57, 665-67)およびそれらの誘導体である。
【0152】
発現は、melCプロモーター(Schmitt John, T.およびEngels, J.M., 1992, Appl. Microbiol.Biotechnol. 36, 493-498)、例えばプラスミドpIJ702(Katz, E.ら, 1982, J. Gen. Microbiol.,192, 2703-2714)、またはプラスミドpM4(Quiros, L.M.ら, 1998, Mol. Microbiol., 28,11770-1185)とともにermEプロモーターの下流(Bibb, M.J.およびJanssen, G.R.「抗生物質産生ストレプトミセスにおける抗生物質耐性遺伝子の転写および翻訳の珍しい特徴(Unusual features of transcription and translation of antibiotic resistance genes in antibiotic producing Streptomyces)」,産業上の微生物の遺伝学に関する第5回国際シンポジウム(the fifth International Symposium on the genetics of Industrial Microorganismus)の会報中, pp.309-318, M. Alacevic, D. HranneliおよびZ. Toman, Karlovacによる編集, Yugoslavia:Ojnejin Prica Printing Works)を用いることが可能かつ有利である。
【0153】
本発明には、また配列番号1、または、上記の核酸断片、または記載のベクターを含んでなる生物が含まれる。
【実地例】
【0154】
実施例1 バルヒマイシン(balhimycin)ハロゲナーゼ遺伝子bhaAの同定および単離
バルヒマイシン生合成遺伝子クラスターを、逆遺伝学的手法を用いて、同定し、クローニングした。
【0155】
保存されているプライマーGly1およびGly7は、遺伝子が糖ペプチド性抗生物質生産株であるA. orientalis A82846およびA.orientalis C329.4から単離され、かつ糖ペプチド性抗生物質クロロエレモマイシン(A82846B)およびバンコマイシン(Solenbergら,1997)の生合成に関与する、グリコシルトランスフェラーゼ(GftA-GftE)から得た[プライマーGly1の配列:5'-TCCCCCCGGGIWSSCGCGGIGACGTSGA-3';プライマーGly7の配列:5'-TCCCCCCGGGTGGTGGATSRCSGCSGCSACSCGICCGAA-3'(I:イノシン;S:C/G; W:A/T)]。PCR(下記を参照されたい)を用いて、バルヒマイシン生産株であるA. mediterranei DSM5908の染色体由来の、大きさが約900bpの内在性グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子断片(「bgtfB」)を増幅することができた。
【0156】
PCR:
PCR装置:ロボサイクラーグラジェント40サーモサイクラー(RoboCycler Gradient 40 Thermocycler)(Stratagene)
キット:拡張高適合度PCR系(Expand High Fidelity PCR System) (Boehringer)
PCR混合物(100μl):
プライマーGly1 50pmol
プライマーGly7 50pmol
A. mediterranei DSM5908由来のゲノムDNA 0.1μg
dNTPs(各々) 200μM
10X 反応バッファー 10μl
MgCl2 1.5μM
MSO 3μl
Taq DNAポリメラーゼ 3.5U
PCRプログラム:
変性: 95℃ 5分
ポリメラーゼ付加: 72℃ 10分
変性: 94℃ 70秒
アニーリング: 59〜63℃ 70秒
伸長: 72℃ 90秒
35サイクル
伸長: 72℃ 10分
【0157】
この断片を用いて、A. mediterranei由来のコスミド遺伝子バンクをコスミドベクターpOJ446において構築した後(Gaisser, S.ら,1997, J. Bacteriol. 179: 6271-6278中の「遺伝子バンク構築(construction of the gene bank)」)、サザンハイブリダイゼーション実験(Sambrookら,J., Fritsch, E.F.およびManiatis, T. (1989). Molecular Cloning: a Laboratory Manual,第二版,Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory)を行い、推定バルヒマイシン生合成遺伝子クラスターを同定した。この方法で、約36kbのインサートを有するコスミド16.1を同定することができた。配列解析において、遺伝子プローブに相同性のある領域は、3つのグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子(bgtfA〜bgtfC)の全てをコードすることが見出された。グリコシルトランスフェラーゼに非常に高い類似性を示すこれらの遺伝子から誘導される産物(GtfA〜GtfC)は、以前に他の糖ペプチド性抗生物質生産者から単離されていた(Solenbergら,1997, 上記を参照されたい)。
【0158】
16.1上にあるクラスター内の種々の遺伝子(例えば、グリコシルトランスフェラーゼおよびチトクロームP450-依存性モノオキシゲナーゼの遺伝子)がバルヒマイシン生合成に関与することを、種々の遺伝子不活性化実験によって明確に示すことができた。これによって、バルヒマイシン生合成遺伝子クラスター同定の証拠が提供された。
【0159】
この実験は、Pelzerら(Antimicrob. Agents Chemother. July 1999, Vol 43, No.7, 印刷中、およびJ.Biotechnol., 56, 1977, 115-128)に記載のように、行われた。
【0160】
ハロゲナーゼ遺伝子bhaA(実施例2を参照されたい)の同定後、bhaAには、3つのオキシゲナーゼ遺伝子(oxyA〜C)および3つのグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子(bgtfA〜C)が隣接していることが見出された。前もってベクターpVC19にサブクローニングされていた大きさが約3kbであるBamHI断片の遺伝子の位置を決めることができた。
【0161】
断片の2本鎖配列決定分析(Sanger, F.S.ら, 1977, Proc. Natl. Acad. Sci, USA, 74: 5463-5467)により、平均G/C含量68.8%を有し、大きさが3088bpであることが明かとなった。該ヌクレオチド配列のORF分析(Staden,R.,およびMc Lachlan, A.D., 1982, Nucleic Acids Res., 10: 141-156)により、3つのオープンリーディングフレームを同定するに至った(図1を参照されたい)。遺伝子bhaAは、オキシゲナーゼ遺伝子oxyCの一部分およびグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子bgtfAの一部分が隣接する断片上に位置する。該遺伝子は、ATG開始コドンおよびTGA終止コドンを有する。この配列中には、ストレプトミセスに典型的なプロモーターを見出すことができなかった。潜在的なRBS(リボソーム結合部位)AGAGGは、開始コドン前の11ヌクレオチドに位置する(bhaA遺伝子の配列についての図2を参照されたい。該遺伝子は、各々太字で表している開始コドンおよび停止コドンによって定義される)。
【0162】
実施例2 bhaA遺伝子の機能の解明
bhaA遺伝子の機能を、フレーム内(in frame)欠失突然変異体を作製することによって明らかにした。フレーム内突然変異体を、外来DNA由来に続く遺伝子における極性効果を排除するために作製した。この極性効果は、遺伝子破壊実験もしくは遺伝子置換実験において、しばしば観察される。フレーム内欠失突然変異体を、以下の2工程で作製した。
【0163】
まず第一に、遺伝子置換突然変異体PH3(図5(遺伝子置換突然変異体PH3の作製)を参照されたい)を作製し、フレーム内欠失突然変異体PH4を調製するためだけに使用する(図6(フレーム内欠失突然変異体PH4の作製)を参照されたい)(図3(遺伝子置換用のプラスミド構築およびバルヒマイシンハロゲナーゼ遺伝子bhaAのフレーム内欠失)、ならびに図4(遺伝子置換用のプラスミド構築およびバルヒマイシンハロゲナーゼ遺伝子bhaAのフレーム内欠失)を参照されたい)。必要なベクターを構築するための開始材料プラスミドは、pVC18誘導体(pVC18B3.0)とした。このプラスミドは、大きさが3088bpであるBamHI断片(具体的には、この断片上にはbhaA遺伝子が位置する)を有する(図3(遺伝子置換用のプラスミド構築およびバルヒマイシンハロゲナーゼ遺伝子bhaAのフレーム内欠失)を参照されたい)。DNA単離、制限酵素切断およびクローニングのすべては、特に記載のない限り、Sambrook,J., Fritsch, E.F.およびManiatis, F., 1989, Molecular Cloning: a Laboratory Manual,第二版.Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratoryに記載のように、行われた。
【0164】
このプラスミドを、MluI消化によって直鎖化した。該切断部位は特有(unique)であり、断片のほぼ中間に位置する。次いで、bhaA遺伝子中の969bpのフレーム内欠失の導入を、PCRを用いて行った。これに用いる2つのプライマー(プライマー2および3)は、まずフレーム内欠失を導入し、さらに特有のBglII切断部位がプライマーによって作製されるように、設計された(図3を参照されたい)。
【0165】
プライマーは、以下の配列であった:
プライマー2: 5'-CTCACAGATCTGATACCGCGGGAAA-3'
プライマー3: 5'-CTACCAGATCTACGTGAACGAGGAG-3'
PCR装置: サーモサイクラー(Thermocycler) PTC100 von MJ Research
キット: 拡張高適合度PCR系(Expand High Fidelity PCR System) (Boehringer)
PCR混合物(50μl):
マスターミックス1(25μl):
dNTPミックス 200μM
プライマー2 200nM
プライマー3 200nM
鋳型DNA 1〜10ng
DMSO 1.5μl
マスターミックス2(25μl):
10X PCRバッファー2 5μl
酵素ミックス 0.75μl
マスターミックス1および2を一緒にピペットで移す。
【0166】
PCRプログラム:
変性: 94℃ 3分
アニーリング: 65℃ 30秒
伸長: 68℃ 4分
変性: 94℃ 45秒
10サイクル
アニーリング: 65℃ 30秒
伸長: 68℃ サイクルあたり4分20秒
変性: 94℃ 45秒
15サイクル
伸長: 72℃ 7分
【0167】
PCR断片を再連結して、ベクターpUC18B△を作製した(図4)。それと同時に、遺伝子置換突然変異体PH3を作製するために、クロラムフェニコール耐性遺伝子cat(Gilら,1985, Gene 38, 1-8)をBclI断片としてBglII切断部位に挿入した。このベクターは、pUC8catと命名された(図4)。A.mediterranei DSM5908中に挿入するために、2つのインサートをEcoRI/SphI断片としてベクターpSP1(Pelzerら, 1997)(このベクターは、バルヒマイシン生産体中では複製不可能であり、遺伝子不活性に用いることができる)中にクローニングすることで、プラスミドpPH4(欠失構築物)およびpPH3(遺伝子置換構築物)が得られた(図4)。
【0168】
まず、遺伝子置換突然変異体PH3を産生した。これは、直接的形質転換法(Pelzerら, 1997)で、プラスミドpPH3をバルヒマイシン生産体に形質転換することによって行われた。好適な選択によって(クロラムフェニコール耐性およびエリスロマイシン感受性、図5)、遺伝子置換突然変異体PH3を同定することができ、さらにそれをサザンハイブリダイゼーション(Sambrook、上記を参照されたい)によって確認することできる。
【0169】
次いで、この遺伝子置換突然変異体PH3を、欠失プラスミドpPH4とともに形質転換した。初期選択を、相同的組換えによる完全なベクターの組込みを確認するために行った(クロラムフェニコール耐性およびエリスロマイシン耐性、図6)。次いで、相同的組換えによるベクターの脱離についての選択圧を取り除いた。この方法により、クロラムフェニコール感受性およびエリトロマイシン感受性のコロニーを見出した。サザンハイブリダイゼーションによって、突然変異体PH4がbhaA遺伝子の適当なフレーム内欠失変異体であることを確認することができた。
【0170】
HPLC/MS実験およびアイソトープパターンの分析により、PH4は非クロロ化バルヒマイシン誘導体のみを産生することが明らかとなった。このことは、BhaAは、AAの2および6番目の双方のクロロ化の原因となることを示すことが可能となったことを意味する(以下の実施例を参照されたい)。
【0171】
実施例3
突然変異体PH4の生合成代謝産物
a) エレクトロスプレー(electrospray)質量分析による分析結果
突然変異体pH4
クローンpH4由来の産物スペクトルは、クロロ化の欠如以外は、野生型のものに対応する。糖鎖付加されていない化合物(化合物7、8、9)は、この突然変異体由来の培養濾過液中に検出されるが、野生型由来の産物スペクトルにおいては検出されなかった。図7は、バルヒマイシンの構造を示す。
【0172】
【表1】

【0173】
HPLC/MSによる培養濾過液の調査結果から、クロロ化は、フレーム内突然変異によって起こらなくなっていることが示された。特有のアイソトープ分散を介した質量分析による検出は、化学的に明確であった。突然変異体PH4から検出されたすべての化合物は、野生型で検出される化合物とは68amu = 2 Cl原子の質量差異を示した。
【0174】
MS分析によって、産生される個々の代謝産物の全量についての質的な、悪くとも半質的な結果のみを導き出すことが可能である。しかしながら、生合成産物の分量における特定の傾向を、分子イオンの強度から検出することが可能である。
【0175】
図8:デクロロバルヒマイシン(突然変異体PH4)およびバルヒマイシン(野生型)のES質量スペクトル。特有のアイソトープパターンにより、ハロゲナーゼBhaAの不活性が判明する。線スペクトルは、理論的に予想されるアイソトープ分散に対応する。
【0176】
b) 最適な精製
ペプチドの予備精製
選択に用いられたエリスロマイシンを除去するために、濾過した培養上清を各々、等量の酢酸エチルで3回抽出した。XAD16カラム上にローディングする前に、培養上清を磁製フリット(porcelain frit)(フィルターG3)を通じて再度濾過し、表2に示される段階的勾配で抽出した。画分を、粗ペプチドの含量についてHPLC/MSによって調査し、真空で溶媒を除去した後、凍結乾燥した。
【0177】
【表2】

【0178】
準備的RP 18 HPLC
粗ペプチド画分を、初期勾配物(H20 : ACN(9:1);0.1%TFA)中に溶解し、さらに濾過した(Millex(登録商標)-GV;0.22μm;Millipore)。分離後に回収された画分を、ES-MSによって分析し、凍結乾燥して合わせた。
【0179】
分析パラメーター:
クロマトグラフ Waters 600 マルチ溶媒送達システム
(Multisolvent Delivery System)(Waters)
検出器 Lamda-Max, モデル481(Waters)
カラム Nucleosil RP-C18, 5μm, 20 x 250 mm(Grom,
Herrenberg)
サンプルローディングバルブ Altex 210 バルブ(Beckmann)
ローディング量 粗ペプチド10mg
分離パラメーター:
溶出剤 A:水(0.1%TFA)
B:アセトニトリル(0.1%TFA)
流速 10ml/分
検出波長 214nm
【0180】
【表3】

【0181】
c) エレクトロスプレー質量分析
ES質量スペクトルを、API-IIIトリプル四重極質量分析計(Sciex, Thornhill,Canada)で記録した。特に記載しない限り、サンプルをACN/H2O(1:1、0.1%ギ酸)中に溶解し、スペクトルを陽イオン様式で記録した。サンプルを微小孔径(microbore)ポンプ(140A 溶媒送達システム(Solvent Delivery System), ABI, Weiterstadt)によって、分配(split)後、流速5μl/分で供給した。UV検出器(Linear UVVIS 204, Linear Instruments, Reno, Nevada)を用いて検出した。使用した移動相は、0.1%トリフルオロ酢酸(溶出剤A)および0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル(溶出剤B)であった。分離は、分析カラム(Nucleosil RP-C18, 5μm, 2 x 100 mm, Grom, Herrenberg)で行った。
【0182】
デクロロバルヒマイシン
最適な勾配を用いて、デクロロバルヒマイシン代謝産物を検出した(表4)。
【0183】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】図1は、実施例1で得られたヌクレオチド配列のORF分析の結果を示す。
【図2】図2は、bhaA遺伝子の配列を示す。
【図3】図3は、遺伝子置換用のプラスミド構築およびバルヒマイシンハロゲナーゼ遺伝子bhaAのフレーム内欠失の概略を示す。
【図4】図4は、遺伝子置換用のプラスミド構築およびバルヒマイシンハロゲナーゼ遺伝子bhaAのフレーム内欠失の概略を示す。
【図5】図5は、遺伝子置換突然変異体PH3の作製の概略を示す。
【図6】図6は、フレーム内欠失突然変異体PH4の作製の概略を示す。
【図7】図7は、バルヒマイシンの構造を示す。
【図8】図8は、デクロロバルヒマイシン(突然変異体PH4)およびバルヒマイシン(野生型)のES質量スペクトルの結果を示す。特有のアイソトープパターンにより、ハロゲナーゼBhaAの不活性が判明する。線スペクトルは、理論的に予想されるアイソトープ分散に対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)又は(b)の核酸配列によってコードされるハロゲナーゼの存在下で化合物をハロゲン化することを含むハロゲン化方法:
(a) 配列番号1で特定される核酸配列、
(b) (a)の配列と比較して10〜20%が末端切断されている、(a)の配列の機能的断片の核酸配列。
【請求項2】
ハロゲナーゼ活性を有する以下の(a)又は(b)のタンパク質の存在下で化合物をハロゲン化することを含むハロゲン化方法:
(a) 配列番号2で特定されるアミノ酸配列を含むタンパク質、
(b) 配列番号2で特定される配列と95%を上回る同一性又は97%を上回る類似性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質。
【請求項3】
用いられる化合物が、一般式I:
【化1】

[式I中、
R1は、水素、ヒドロキシル、置換または無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C2-C10-アルケニル、C1-C10-アルコキシ-、C2-C10-アルケニルオキシ-、R6R7N-、
【化2】

であり;
R2は、水素、ヒドロキシル、置換または無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C1-C10-アルコキシ、C2-C10-アルケニル、C2-C10-アルケニルオキシ、R6R7N-であり;
R3は、水素、ヒドロキシル、置換または無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C1-C10-アルコキシ、C2-C10-アルケニル、C2-C10-アルケニルオキシ、C1-C10-アルキルカルボニル、C2-C10-アルケニルカルボニル、アリール、ヘテロアリール、
【化3】

であり;
R4およびR5は互いに独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、 ニトロ、シアノ、置換または無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C1-C10-アルコキシ、C2-C10-アルケニル、C2-C10-アルケニルオキシ、置換または無置換のC3-C10-シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、R6R7N-であり、2つの基R4およびR5が隣接する炭素原子上に存在する場合には、R4およびR5は一緒になって、1個以上のO、NまたはSのようなヘテロ原子を含んでいてもよい5員または6員の芳香族環、飽和環または部分飽和環を形成していてもよく、
R6およびR7は互いに独立に、水素または置換もしくは無置換の、分枝状もしくは非分枝状のC1-C10-アルキルであり、
R8は、置換または無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C2-C10-アルケニル、置換または無置換のアリールであり、
R9は、置換または無置換の、分枝状または非分枝状のC1-C10-アルキル、C2-C10-アルケニル、置換または無置換のアリール、ヘテロアリールであり、
Xは、-CH-またはNであり、
Yは、Oまたは Nであり、
mは、0または1であり、
n は、0、1、2または3であり、
p は、0または1である]
で表される化合物である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ハロゲナーゼを含む微生物または遊離のハロゲナーゼを用いる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種の天然のまたは合成された電子供与体を用いる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
電子供与体の再生が他の反応プロセス中に起こる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ハロゲナーゼを産生する細菌、真菌、酵母、植物細胞または動物細胞を微生物として用いる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
アミコラトプシス属(Amycolatopsis)、ノカルジア属(Nocardia)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、クロストリジウム属(Clostridium)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ゴードナ属(Gordona)、アクチノミセス属(Actinomyces)、エシェリキア属(Escherichia)、サルモネラ属(Salmonella)、バチルス属(Bacillus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ハンセヌラ属(Hansenula)、カンジダ属(Candida)、ピチア属(Pichia)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、スポロボロミセス属(Sporobolomyces)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア属(Yarrowia)、アスペルギルス属(Aspergillus)、ボーベリア属(Beauveria)、カニンガメラ属(Canninghamella)、ケカビ属(Mucor)、アカパンカビ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)またはリゾクトニア属(Rhizoctonia)に属しハロゲナーゼを産生する微生物を用いる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
休止期または増殖期にあるハロゲナーゼを産生する細胞を用いて実施される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
無機ハロゲン化化合物をハロゲン供与体として用いる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
バッファーの存在下またはpH調節条件下で実施される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ハロゲナーゼをコードする配列を含む核酸断片であって、遺伝子発現および/もしくはタンパク質発現を増大させるための1種以上の同種もしくは異種の調節シグナルに機能し得る形で連結され、および/またはその天然の調節が遮断されており、かつ、該ハロゲナーゼが、以下の(a)又は(b)の核酸配列によってコードされる上記核酸断片:
(a) 配列番号1で特定される核酸配列、
(b) (a)の配列と比較して10〜20%が末端切断されている、(a)の配列の機能的断片の核酸配列。
【請求項13】
ハロゲナーゼをコードする配列を含む核酸断片であって、遺伝子発現および/もしくはタンパク質発現を増大させるための1種以上の同種もしくは異種の調節シグナルに機能し得る形で連結され、および/またはその天然の調節が遮断されており、かつ、該ハロゲナーゼが、以下の(a)又は(b)のタンパク質である上記核酸断片:
(a) 配列番号2で特定されるアミノ酸配列を含むタンパク質、
(b) 配列番号2で特定される配列と95%を上回る同一性又は97%を上回る類似性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質。
【請求項14】
請求項12又は13記載の核酸断片を含有するベクター。
【請求項15】
請求項12又は13記載の核酸断片または請求項14記載のベクターを含有する生物。
【請求項16】
配列番号1で特定される配列を有するハロゲナーゼ遺伝子、請求項12又は13記載の核酸断片または請求項14記載のベクターによりコードされるタンパク質の化学合成における使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−75168(P2006−75168A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263159(P2005−263159)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【分割の表示】特願2001−503627(P2001−503627)の分割
【原出願日】平成12年5月19日(2000.5.19)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】