説明

ハロゲンガス又はハロゲン化合物ガスの充填容器用バルブ

【課題】十分な気密性を有するハロゲンおよびハロゲン化合物ガス用バルブを提供すること。
【解決手段】弁座部とダイヤフラムの接触面において、前記弁座部と前記ダイヤフラムの接触面において、前記弁座部における接触面の表面粗さRaの値が、0.1μm以上、10.0μm以下であり、前記弁座部における接触面の曲率半径Rが100mm以上、1000mm以下であり、前記ダイヤフラムの接ガス部表面積Saと前記ダイヤフラムと前記弁座部の接触面積Sbとの面積比率Sb/Saが、0.2%以上、10%以下であり、前記バルブ本体を流通するガスが、ハロゲンガス用またはハロゲン化合物ガス用であることを特徴とするダイレクトタッチ型ダイヤフラムバルブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン又はハロゲン化合物ガスが充填された容器に用いられるダイレクトタッチ型ダイヤフラムバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素ガスは、半導体デバイス、MEMSデバイス、液晶用TFTパネル及び太陽電池等の半導体製造工程における基板のエッチングプロセスやCVD装置等の薄膜形成装置のクリーニングプロセス用ガスとして、重要な役割を担っている。
【0003】
フッ素ガスを供給する方法の一つとして、フッ素ガスをボンベに高圧充填して供給する方法が行われている。その際、フッ素ガスはボンベに充填されてバルブを介して半導体製造装置に供給される。
【0004】
フッ素ガスの充填圧力を向上させ、ボンベの回転頻度を減らすことによって、ボンベの輸送費、作業負担の低減を図ることができることや、高濃度のフッ素ガスを用いることより、クリーニングプロセスを効率的に行うことができることから、フッ素ガスをボンベに高圧かつ高濃度で充填することが望まれている。
【0005】
特許文献1には、半導体製造システムに、高濃度フッ素ガスを高圧力で供給するバルブについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−207480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のバルブは、シートディスクでガスの流路を開閉し、外部との気密をダイヤフラムでシールするバルブであるため、弁室内のガスが滞留しやすいデッドスペースが大きくなる。
【0008】
特許文献1に記載のバルブのように、弁室内のガスが滞留しやすいデッドスペースが大きくなる場合、高圧、高濃度のフッ素ガスを弁室内に導入すると、断熱圧縮により弁室内の温度が上昇しやすい。弁室内の温度が上昇すると、弁室内の表面腐食や樹脂材質の劣化が生じやすくなる。その結果、表面腐食による生成物が弁室内(特に弁座部)に付着し、腐食による生成物が原因で、気密状態が不良になり、リークしやすいという問題点があった。
【0009】
このように、バルブを用いて、フッ素ガスなどのハロゲンを含む腐食性の高いガスを供給する場合、腐食性のガスによってバルブ弁内部の表面腐食を引き起こしやすいため、生成した腐食物が弁座表面部に付着し、十分な気密性を維持することが難しいという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、十分な気密性を有するハロゲンガスまたはハロゲン化合物ガス用の充填容器用バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、バルブ本体に設けられた入口通路及び出口通路に連通する弁室と、前記入口通路の内端開口部に設けられた弁座部と、前記弁座部の上方に設けられ、前記弁室内の気密を保持すると共に、前記入口通路及び前記出口通路を開閉するダイヤフラムと、前記ダイヤフラムの中央部を下方に下降させるステムと、前記ステムを上下方向に移動させる駆動部と、を備えたダイレクトタッチ型ダイヤフラムバルブであって、前記弁座部と前記ダイヤフラムの接触面において、前記弁座部における接触面の表面粗さRaの値が、0.1μm以上、10.0μm以下であり、前記弁座部における接触面の曲率半径Rが100mm以上、1000mm以下であり、前記ダイヤフラムの接ガス部表面積Saと前記ダイヤフラムと前記弁座部の接触面積Sbとの面積比率Sb/Saが、0.2%以上、10%以下であり、前記バルブ本体を流通するガスが、ハロゲンガス又はハロゲン化合物ガスであることを特徴とするダイレクトタッチ型ダイヤフラムバルブである。
【0012】
また、本発明は、前記ダイヤフラムの縦弾性率が150GPa以上、250GPa以下であることを特徴とする上述のバルブである。
【0013】
また、本発明は、前記ハロゲンガスがフッ素ガスであり、フッ素ガスの濃度が20体積%以上100体積%以下、圧力が0MPaG以上14.7MPaG以下まで充填されたボンベ容器に装着されることを特徴とする上述のバルブである。
【0014】
また、本発明は、上述のバルブを有するガス充填容器である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、十分な気密性を有するハロゲンガスまたはハロゲン化合物ガス用の充填容器用バルブを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】バルブの全体図である。
【図2】図1の弁室近傍の拡大図である。
【図3】弁室の横断平面図1である。
【図4】弁室の横断平面図2である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0018】
図1は、本発明に係るバルブ1の縦断面図であって、ダイヤフラム8を弁座12に当離座させて開閉を行うようにしたダイレクトタッチ型ダイヤフラムバルブである。ダイレクトタッチ型ダイヤフラムバルブは一般的に公知であり、本発明の特徴はダイヤフラムと弁座部の構造に関するものである。
【0019】
まず、図1に示すように本発明に係るダイレクトタッチ型ダイヤフラムバルブの全体の構成について説明する。また、図2は、図1に示される弁室7近傍の詳細図である。
【0020】
本発明に係るバルブ1は、バルブ本体2に設けられた入口通路5及び出口通路6に連通する弁室7と、入口通路5の内端開口部に設けられた弁座部12と、弁座部12の上方に設けられ、弁室内12の気密を保持すると共に、入口通路5及び出口通路6を開閉するダイヤフラム8と、ダイヤフラム8の中央部を下方に下降させるステム9と、ステム9を上下方向に移動させる駆動部10を備える。
【0021】
さらに、図1に示すように、バルブ本体2の下部には脚ネジ部3が形成されており、この脚ネジ部3の外周に設けられた雌ネジ部分にてガス充填容器4のガス取出口に取り付けられる。脚ネジ部3の下面にはガスの流通経路となる入口通路5が形成され、この入口通路5の先には、弁室7とガスの出口通路6が順に形成されている。
【0022】
図2に示すように、弁室7に連通する入口通路5の内端部が開口されており、この内端開口部の周囲には凹状の弁座部12が形成される。この弁座部12の上方には、ダイヤフラム8が配置され、このダイヤフラム8の中央部が弁座部12と当離座することができる構成となっている。さらに、このダイヤフラム8の周縁部は弁蓋11で弁室7の周壁に押圧固定してあり、このダイヤフラム8により、弁室7の気密性を保つ構成となっている。
【0023】
なお、弁座部12の材質はハロゲンガスに対する耐食性を有するものであれば、金属や樹脂など特に制限はされないが、水分等のガス分子やパーティクルの吸着の影響を考慮するとハロゲンガスに対する耐食性を有する金属を使用することが好ましい。
【0024】
ダイヤフラム8の上面中央部には、ダイヤフラム8を弁座部12と当離座させるためのステム9が載置してある。さらに、このステム9の上端部にはステム操作用の駆動部10が駆動軸を介して固定されている。ダイヤフラム8の上方に昇降自在に配置され、ダイヤフラム8の中央部を下方へ下降させるステム9と、ステム9を下降もしくは上昇させる駆動部10によって、ダイヤフラム8を当離座させ、ガス流路の開閉を行うことができる構成となっている。
【0025】
具体的には、駆動部10から供給される駆動力によってステム9を下向きに押圧操作すると、ダイヤフラム8は、ガス圧による上向き力やダイヤフラム8の弾性反発力に抗して弁座部12に閉弁接当される。これに対して、ステム9への押圧力を解除すると、ダイヤフラム8の中央部が上向き凸状に弾性復帰し、ガスの入口通路5と弁室7が連通する。
【0026】
駆動部10に用いられる方式としては、特に限定されないが、空気圧などによる空気駆動式(エアーアクチュエーター方式)、モーターなどによる電気駆動式、もしくは、手動式などを使用することができる。
【0027】
一般的なダイレクトタッチ型ダイヤフラムバルブでは、駆動方式(駆動部10)として、空気や窒素などの圧力による気圧駆動式の方式を用いることが多い。気圧駆動式の場合、ダイヤフラム8に掛かる圧力を駆動部に供給する空気などの駆動圧(例えば、0.5〜0.7MPa程度)で固定されていることが多いため、ダイヤフラム8に掛かる圧力を調整することが難しい。ダイヤフラム8と弁座部12の接触状態を調整することは、バルブの弁室7の気密性の観点において、非常に重要であり、ダイヤフラム8に掛かる圧力が大きくなりすぎると、ダイヤフラム8の破損や損傷が大きくなり、逆に、圧力が小さくなりすぎると、気密不良となりリークが起きやすい。
【0028】
そのため、図3および図4に示すように、ダイヤフラムの接ガス部面積Saと弁座部におけるダイヤフラムとの接触面の面積Sbを調整することによって、ダイヤフラム8と弁座部12表面の接触状態を調整することが好ましい。
【0029】
具体的には、面積比Sb/Saが10%より大きくなると接触部面積当たりに掛かる荷重が小さくなり、気密性が不良となる。一方、面積比Sb/Saが0.2%より小さくなると接触部の単位面積に掛かる荷重が逆に大きくなり、ダイヤフラムや弁座部の破損や損傷が起きやすくなるため、面積比Sb/Saを0.2%以上、10%以下にすることが好ましく、さらに、0.5%以上、5%以下とすることが好ましい(後述の実施例1〜5および比較例3〜5参照)。
【0030】
このように、面積比Sb/Saによって、ダイヤフラムに掛かる圧力を調整することができ、ダイヤフラムの破損や損傷またはシール性の不良によるリークを防ぐことができ、タイヤフラムと弁座部の接触面の平滑性を保ち、良好な気密性を得ることが可能となる。
【0031】
次に、本発明に係るバルブ1のガス充填容器4へと取り付け、および、バルブの開閉作用(ガスの流通)について説明する。
【0032】
ガス充填容器4から、貯蔵ガスを取り出す場合には、バルブ1に設けられた駆動部10を操作することによって、ダイヤフラム8を弁座12から隔離させる。これによって、ガス充填容器4内の貯蔵ガスは入口通路5から弁室7に流入する。この弁室7に流入したガスはダイヤフラム8の下面(接ガス部表面)を沿って弁室7内に広がり、ガスが出口通路6から取り出される。
【0033】
ガス充填容器4に、ガスを充填する場合は、ガス充填装置(図示せず)がガスの出口通路6に接続される。ガス充填装置から供給されたガスは出口通路6、弁室7に流入し、弁室7内のダイヤフラム8の下面(接ガス部表面)に沿って流れて、ガスの入口通路5を経てガス充填容器4内に充填される。
【0034】
ガス充填容器4を、例えば、半導体製造設備などに取り付ける際は、弁室7や出口通路6に残留する大気が、不活性ガスによるパージや真空排気により除去される。弁室7が閉鎖された状態で、ガスの出口通路6に真空排気装置(図示せず)が接続され、出口通路6と弁室7内のガスが吸引される。このとき弁室7内のガスが吸引され排除される。
【0035】
次いで、出口通路6にパージガス供給設備(図示せず)が接続され、窒素ガスなどの不活性ガスからなるパージガスが出口通路6を経て弁室7に供給される。パージガスは弁室7内の隅々に行き渡り、弁室7に残留するガスやパーティクルと混合され置換される。そのあと、真空排気処理とパージ処理が繰り返されて弁室7や出口通路6から大気中に含まれる酸素や水分などの不純物が十分に除去されたのち、出口通路6に半導体製造設備などが接続される。
【0036】
また、本発明に係るバルブ1を装着されるガス容器は高圧ガスの耐食性を有するものであれば特に限定されず一般的なものを使用することができ、例えば、高圧のフッ素やフッ素化合物を充填する場合、フッ素ガス耐食性を有するものであれば、ステンレス鋼、炭素鋼、マンガン鋼などの金属を使用することができる。
【0037】
本発明に係るバルブ1は、高圧のフッ素ガスおよびフッ素化合物ガスに適用することが好ましく、例えば、フッ素化合物ガスとしては、COF2、CF3OFなどを挙げることができる。
【0038】
また、フッ素ガスと同様な腐食性を有するハロゲンおよびハロゲン化合物ガスに適用することももちろん可能である。その他の適用可能なハロゲンおよびハロゲン化合物ガスとしては、例えば、Cl2、Br2、HCl、HF、HBr、NF3などが挙げられる。
【0039】
バルブ本体2の材質は、ハロゲンガスに対する耐食性を有するものであれば特に限定されず、機械加工することによって製作される。さらに、水分等のガス分子やパーティクルが接ガス部表面に吸着する影響を少なくし、金属表面の耐食性を向上させる目的から、接ガス部表面には、機械研磨や砥粒研磨、電解研磨、複合電解研磨、化学研磨、複合化学研磨等が施されると好ましい。
【0040】
さらに、バルブ本体2の弁室7内に設けられたダイヤフラム8の下面(接ガス部)と弁座12の接触面をより平滑にすることが特に好ましい。 特に、弁座部12とダイヤフラム8の弁座部接触面12aにおいて、弁座部接触面12aの表面粗さを0.1μm以上、10.0μm以下とすることが好ましく、特に、0.2μm以上、5.0μm以下とすることが好ましい。表面粗さが10.0μmより大きくなると、弁座部接触面12aとダイヤフラム8の接触面に付着物が付きやすくなるため好ましくない。ここに表面粗さ(Ra値)とはJIS B0601:2001に記載されている算術平均粗さを指しており、触針式表面粗さ測定器を用いて測定可能である。
【0041】
また、図2に示されるように、弁座部接触面12aの断面形状における接触面は円弧状をなしており、ダイヤフラム8の下面(接ガス部)と接触する弁座部接触面12aは所定の曲率半径Rを有することが好ましく、図2に示される弁座部接触面12aの曲率半径Rを、100mm以上、1000mm以下にすることが好ましく、特に、150mm以上、450mm以下であることが好ましい。
【0042】
ダイヤフラム8の下面(接ガス部)と接触する弁座部接触面12aを平坦加工する方法は、所定の表面粗さ、曲率半径が得られれば特に限定されないが、例えば、機械研磨や砥粒研磨、電解研磨、複合電解研磨、化学研磨、複合化学研磨等などが挙げられる。
【0043】
バルブ本体2の材質としては、ハロゲンガスに対する耐食性を有するものが好ましく、ハロゲンガスに対する耐食性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、フッ素ガスやフッ素化合物ガスを用いる場合、接ガス部の材質が炭素0.01質量%以上1質量%未満である金属または合金を用いることが特に好ましい。
【0044】
また、ダイヤフラムに用いる材質は、炭素0.1質量%以下、ニッケル70質量%以上、クロム0質量%以上、25質量%以下、銅0質量%以上、25質量%以下、モリブデン0質量%以上、25質量%以下、ニオブ0質量%以上、10質量%以下、とすることが好ましい。例えば、ダイヤフラムの材質としては、ハステロイ、インコネルなどを使用することができる。
【0045】
また、バルブの弁室内のガス流路の開閉を行い、気密状態を調整するにおいてダイヤフラムは
重要な要素であり、弁座部表面との良好な平滑性と気密状態を保つためには、ダイヤフラムの縦弾性係数を150GPa以上、250GPa以下とすることが好ましい。縦弾性係数が、150GPaより小さい場合、繰り返し使用した場合など、強度の問題からダイヤフラムが破損しやすくなり好ましくなく、250GPaより大きい場合、弁座部との良好な密着性が得られにくくなるため好ましくない。
【0046】
また、弁座部と接触するダイヤフラムの表面についても、ダイヤフラムと接触する弁座部と同様に、平坦加工されているものを使用することが好ましい。例えば、弁座部と接触するダイヤフラムの表面粗さRaの値(JIS B0601:2001)を、0.1μm以上、10μm以下とすることが好ましい。なお、ダイヤフラムを平坦加工する方法は、所定の表面粗さを得られるものであれば特に限定されない。また、ダイヤフラムの厚みは、例えば、0.1mm以上、0.5mm以下とし、所定の強度を有するものが好ましい。
【0047】
また、バルブ装置における接ガス部の耐食性を向上させる観点から、フッ素化不動態処理を行うこともできる。ここで言うフッ素不動化処理とは、フッ素ガスを導入して材料の表面にフッ素化合物をあらかじめ生成させる処理のことであり、フッ素化処理によって材料の表面に薄いフッ素化合物を形成することによって、フッ素に対する耐食性を向上させることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0049】
本発明に係るバルブ1の気密性を調べるために、ハロゲンガスとして、希釈フッ素ガスを用いバルブの繰り返し開閉試験を行った。なお、本発明に係るバルブ1のダイヤフラム8の開閉を行うステム9の駆動部10は、空気の圧力を利用した空気圧駆動方式のものを用いた。また、その結果をまとめたものを表1に示す。
【0050】
[実施例1]
ローラーバニシング加工により弁座部の表面積Sbを0.05cm2、表面粗さRa値を0.8μm、曲率半径Rを200mmとしたSUS304製のハウジング(バルブ本体)と、接ガス面の表面積Saが2.25cm2であるインコネル製のダイヤフラム(縦弾性係数207GPa)を有したダイヤフラムバルブを47LのMn鋼製容器に接続し、その容器内に20%F2/N2ガスを10.0MPaGの圧力にて充填した。
【0051】
充填後、ダイヤフラムバルブを真空置換可能なガス設備に接続し、バルブの開閉によりダイヤフラムバルブ内にガスを封入し、その後バルブを閉止し真空置換を行う操作を3000回繰り返した。試験終了後、容器を5.0MPaGのヘリウムガスに置換し、リークディテクターによりリーク量の計測を行ったところ、1×10‐8Pam3 /s以下であり、リークのないことを確認した。
【0052】
なお、ここで言うローラーバニッシング加工とは、一般に公知の方法であり、ローラーを用いて、表面層を除去せず、圧力をかけてこすり金属などの表面の凹凸をなくし平滑にする方法を表す。
【0053】
[実施例2]
ローラーバニシング加工により弁座部の表面積Sbを0.02cm2、表面粗さRa値を0.8μm、曲率半径Rを200mmとしたSUS304製のハウジングと、接ガス面の表面積Saが2.25cm2であるハステロイ製のダイヤフラム(縦弾性係数205GPa)を有したダイヤフラムバルブを47LのMn鋼製容器に接続し、その容器内に20%F2/N2ガスを14.7MPaGの圧力にて充填した。
【0054】
充填後、ダイヤフラムバルブを真空置換可能なガス設備に接続し、バルブの開閉によりダイヤフラムバルブ内にガスを封入し、その後バルブを閉止し真空置換を行う操作を3000回繰り返した。試験終了後、容器を5.0MPaGのヘリウムガスに置換し、リークディテクターによりリーク量の計測を行ったところ、1×10‐8Pam3 /s以下であり、リークのないことを確認した。
【0055】
[実施例3]
ローラーバニシング加工により弁座部の表面積Sbを0.0065cm2、表面粗さRa値を0.8μm、曲率半径Rを200mmとしたSUS316製のハウジングと、接ガス面の表面積Saが2.25cm2であるハステロイ製のダイヤフラム(縦弾性係数205GPa)を有したダイヤフラムバルブを47LのMn鋼製容器に接続し、その容器内に20%F2/N2ガスを14.7MPaGの圧力にて充填した。
【0056】
充填後、ダイヤフラムバルブを真空置換可能なガス設備に接続し、バルブの開閉によりダイヤフラムバルブ内にガスを封入し、その後バルブを閉止し真空置換を行う操作を3000回繰り返した。試験終了後、容器を5.0MPaGのヘリウムガスに置換し、リークディテクターによりリーク量の計測を行ったところ、1×10‐8Pam3 /s以下であり、リークのないことを確認した。
【0057】
[実施例4]
ローラーバニシング加工により弁座部の表面積Sbを0.05cm2、表面粗さRa値を0.2μm、曲率半径Rを200mmとしたSUS304製のハウジングと、接ガス面の表面積Saが2.25cm2であるハステロイ製のダイヤフラム(縦弾性係数205GPa)を有したダイヤフラムバルブを47LのMn鋼製容器に接続し、その容器内に20%F2/N2ガスを10.0MPaGの圧力にて充填した。
【0058】
充填後、ダイヤフラムバルブを真空置換可能なガス設備に接続し、バルブの開閉によりダイヤフラムバルブ内にガスを封入し、その後バルブを閉止し真空置換を行う操作を3000回繰り返した。試験終了後、容器を5.0MPaGのヘリウムガスに置換し、リークディテクターによりリーク量の計測を行ったところ、1×10‐8Pam3 /s以下であり、リークのないことを確認した。
【0059】
[実施例5]
ローラーバニシング加工により弁座部の表面積Sbを0.05cm2、表面粗さRa値を8.0μm、曲率半径Rを200mmとしたSUS304製のハウジングと、接ガス面の表面積Saが2.25cm2であるハステロイ製のダイヤフラムを有したダイヤフラムバルブを47LのMn鋼製容器に接続し、その容器内に20%F2/N2ガスを10.0MPaGの圧力にて充填した。
【0060】
充填後、ダイヤフラムバルブを真空置換可能なガス設備に接続し、バルブの開閉によりダイヤフラムバルブ内にガスを封入し、その後バルブを閉止し真空置換を行う操作を3000回繰り返した。試験終了後、容器を5.0MPaGのヘリウムガスに置換し、リークディテクターによりリーク量の計測を行ったところ、1×10‐8Pam3 /s以下であり、リークのないことを確認した。
【0061】
[実施例6]
ローラーバニシング加工により弁座部の表面積Sbを0.05cm2、表面粗さRa値を0.8μm、曲率半径Rを350mmとしたSUS304製のハウジング(バルブ本体)と、接ガス面の表面積Saが2.25cm2であるインコネル製のダイヤフラム(縦弾性係数207GPa)を有したダイヤフラムバルブを47LのMn鋼製容器に接続し、その容器内に20%F2/N2ガスを10.0MPaGの圧力にて充填した。
【0062】
充填後、ダイヤフラムバルブを真空置換可能なガス設備に接続し、バルブの開閉によりダイヤフラムバルブ内にガスを封入し、その後バルブを閉止し真空置換を行う操作を3000回繰り返した。試験終了後、容器を5.0MPaGのヘリウムガスに置換し、リークディテクターによりリーク量の計測を行ったところ、1×10‐8Pam3 /s以下であり、リークのないことを確認した。
【0063】
[比較例1]
ローラーバニシング加工により弁座部の表面積Sbを0.05cm2、表面粗さRa値を20.0μm、曲率半径Rを200mmとしたSUS304製のハウジングと、接ガス面の表面積Saが2.25cm2であるインコネル製のダイヤフラムを有したダイヤフラムバルブを47LのMn鋼製容器に接続し、その容器内に20%F2/N2ガスを10.0MPaGの圧力にて充填した。
【0064】
充填後、ダイヤフラムバルブを真空置換可能なガス設備に接続し、バルブの開閉によりダイヤフラムバルブ内にガスを封入し、その後バルブを閉止し真空置換を行う操作を3000回繰り返した。試験終了後、容器を5.0MPaGのヘリウムガスに置換し、リークディテクターによりリーク量の計測を行ったところ、3.5×10‐2Pam3 /sであり、気密不良であった。
【0065】
比較例1より、弁座部接触部の表面粗さRaが本発明の範疇から外れた場合、十分な気密性が得られないことが分かる。
【0066】
[比較例2]
ローラーバニシング加工により弁座部の表面積Sbを0.05cm2、表面粗さRa値を8.0μm、曲率半径Rを50mmとしたSUS304製のハウジングと、接ガス面の表面積Saが2.25cm2であるインコネル製のダイヤフラムを有したダイヤフラムバルブを47LのMn鋼製容器に接続し、その容器内に20%F2/N2ガスを10.0MPaGの圧力にて充填した。
【0067】
充填後、ダイヤフラムバルブを真空置換可能なガス設備に接続し、バルブの開閉によりダイヤフラムバルブ内にガスを封入し、その後バルブを閉止し真空置換を行う操作を3000回繰り返した。試験終了後、容器を5.0MPaGのヘリウムガスに置換し、リークディテクターによりリーク量の計測を行ったところ、1.3×10‐1Pam3 /sであり、気密不良であった。
【0068】
比較例2より、弁座部の曲率半径Rが本発明の範疇から外れた場合、十分な気密性が得られないことが分かる。
【0069】
[比較例3]
ローラーバニシング加工により弁座部の表面積Sbを0.0025cm2、表面粗さRa値を0.8μm、曲率半径Rを200mmとしたSUS304製のハウジングと、接ガス面の表面積Saが2.5cm2であるインコネル製のダイヤフラムを有したダイヤフラムバルブを47LのMn鋼製容器に接続し、その容器内に20%F2/N2ガスを10.0MPaGの圧力にて充填した。
【0070】
充填後、ダイヤフラムバルブを真空置換可能なガス設備に接続し、バルブの開閉によりダイヤフラムバルブ内にガスを封入し、その後バルブを閉止し真空置換を行う操作を3000回繰り返した。試験終了後、容器を5.0MPaGのヘリウムガスに置換し、リークディテクターによりリーク量の計測を行ったところ、7×10‐8Pam3 /sであり、十分な気密性は得られなかった。
【0071】
[比較例4]
ローラーバニシング加工により弁座部の表面積Sbを0.25cm2、表面粗さRa値を8.0μm、曲率半径Rを200mmとしたSUS304製のハウジングと、接ガス面の表面積Saが2.25cm2であるハステロイ製のダイヤフラムを有したダイヤフラムバルブを47LのMn鋼製容器に接続し、その容器内に20%F2/N2ガスを10.0MPaGの圧力にて充填した。
【0072】
充填後、ダイヤフラムバルブを真空置換可能なガス設備に接続し、バルブの開閉によりダイヤフラムバルブ内にガスを封入し、その後バルブを閉止し真空置換を行う操作を3000回繰り返した。試験終了後、容器を5.0MPaGのヘリウムガスに置換し、リークディテクターによりリーク量の計測を行ったところ、2×10‐8Pam3 /sであり、十分な気密性は得られなかった。
【0073】
[比較例5]
ローラーバニシング加工により弁座部の表面積Sbを0.4cm2、表面粗さRa値を0.8μm、曲率半径Rを50mmとしたSUS304製のハウジングと、接ガス面の表面積Saが2.25cm2であるインコネル製のダイヤフラムを有したダイヤフラムバルブを47LのMn鋼製容器に接続し、その容器内に20%F2/N2ガスを14.7MPaGの圧力にて充填した。
【0074】
充填後、ダイヤフラムバルブを真空置換可能なガス設備に接続し、バルブの開閉によりダイヤフラムバルブ内にガスを封入し、その後バルブを閉止し真空置換を行う操作を3000回繰り返した。試験終了後、容器を5.0MPaGのヘリウムガスに置換し、リークディテクターによりリーク量の計測を行ったところ、1.5×10‐1Pam3 /sであり、気密不良であった。
【0075】
比較例3〜5より、ダイヤフラムの接ガス部表面積Saとダイヤフラムと弁座部の接触面積Sbとの面積比率Sb/Saが、本発明の範疇から外れた場合、気密不良が生じることが分かる。

【表1】

【符号の説明】
【0076】
1 バルブ
2 バルブ本体
3 脚ネジ部
4 ガス充填容器
5 入口通路
6 出口通路
7 弁室
8 ダイヤフラム
9 ステム
10 駆動部
11 弁蓋
12 弁座
12a 弁座部接触面
12b 弁室側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ本体に設けられた入口通路及び出口通路に連通する弁室と、
前記入口通路の内端開口部に設けられた弁座部と、
前記弁座部の上方に設けられ、前記弁室内の気密を保持すると共に、前記入口通路及び前
記出口通路を開閉するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの中央部を下方に下降させるステムと、
前記ステムを上下方向に移動させる駆動部と、
を備えたダイレクトタッチ型ダイヤフラムバルブであって、
前記弁座部と前記ダイヤフラムの接触面において、前記弁座部における接触面の表面粗さRaの値が、0.1μm以上、10.0μm以下であり、
前記弁座部における接触面の曲率半径Rが、100mm以上、1000mm以下であり、
前記ダイヤフラムの接ガス部表面積Saと前記ダイヤフラムと前記弁座部の接触面積Sbとの面積比率Sb/Saが、0.2%以上、10%以下であり、
前記バルブ本体を流通するガスが、ハロゲンガス又はハロゲン化合物ガスであることを特徴とするダイレクトタッチ型ダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
前記ダイヤフラムの縦弾性率が150GPa以上、250GPa以下、であることを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記ハロゲンガスがフッ素ガスであり、フッ素ガスの濃度が20体積%以上、100体積%以下、圧力が0MPaG以上、14.7MPaG以下、で充填された高圧ガス充填容器に装着される請求項1又は請求項2の何れかに記載のバルブ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載のバルブを有する高圧ガス充填容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−247407(P2011−247407A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20867(P2011−20867)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】