説明

ハロゲン化化合物を含有する薬剤組成物、その調製法及びその使用

【課題】 感染症、炎症等の予防又は処置用(特に、歯科処置における局部使用の消毒薬)として使用する薬剤組成物及び医薬品を提供すること。
【解決手段】 (i)少なくとも1つの次亜塩素酸アルカリ金属、及び(ii)少なくとも1つのタウリンN−ハロアミンを含む薬剤組成物、その調製法および感染症、炎症等の予防又は処置用医薬品としてのその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス、細菌、寄生虫、菌性又は非通常型伝染剤(ATNC)による感染、及び慢性、進行性又は急性炎症の処置用、免疫調節、及び/又は組織癒着の増進処置用、並びに外科手術前、及び/又は中、及び/又は後のすすぎのハロゲン化化合物を主成分とする新規な組成物に関する。本発明の組成物は、局部使用の消毒薬としてとりわけ有用である。
【0002】
本発明の組成物は、一方が少なくとも1つのハロゲン化化合物を含む消毒薬、好ましくは次亜塩素酸アルカリ金属、かつ他方が双性イオン化合物族及び/又はアミノ酸族の1つ又は幾つかの分子のN−ハロゲン化誘導体の、2つのタイプの作用物質の結合に基づく。
【背景技術】
【0003】
発明者は、次亜塩素酸及びN−クロラミンの特性、並びに本発明の消毒化合物を明確にするように、炎症の際に用いられるメカニズムを理解することに関心を抱いた。
【0004】
1)次亜塩素酸アルカリ金属。
【0005】
次亜塩素酸アルカリ金属、及びとりわけ次亜塩素酸カリウム、かつ特にナトリウム(NaOCl)は、その消毒特性により、19世紀初頭から使用されている。次亜塩素酸アルカリ金属は、次亜塩素酸(HOCl)のアルカリ金属塩である。次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒溶液の活性塩素の滴定量は、HOCl及びOClの濃度の和に等しい(非特許文献1)。次亜塩素酸塩の活性形、次亜塩素酸は、哺乳類の防御系において非常に重要な役割を有する、非常に強力な酸化剤である。ミエロペルオキシダーゼの作用で塩素及び過酸化水素の間の反応による酸化呼吸の際に、好中球多核白血球及び単球中で主に合成される(非特許文献2)。次亜塩素酸は、非常に不安定であり、特に第1及び第2アミンと迅速に反応し、多様なクロラミンを与える(非特許文献3)。
【0006】
多核白血球のサイトゾル、及び特に好中球中には、アミノ酸である、タウリンが特に豊富であり、かつ特に次亜塩素酸とは非常に良く反応する。この反応は、タウリンクロラミンを与える。このクロラミンは、次亜塩素酸よりも遥かに毒性が低く、かつ反応しない酸化剤であり、かつあらゆるクロラミン類の中で最も安定している(非特許文献3、非特許文献4)。このように、タウリンは、次亜塩素酸分子を捕捉して、細胞内外の培地中で重要な保護する役割を果たすように見える(非特許文献5〜7)。しかしながら、その長い半減期ゆえに、タウリンクロラミン分子は、形成された場所から非常に遠くに運ばれ、かつそこで無視できない酸化及び/又は塩素化作用を及ぼし得る(非特許文献3)。
【0007】
生理的pH(7.4)で、タウリン及びHOClの反応は、自発的かつ化学量論的(1/1分子)になされ、タウリンN−モノクロラミン(TauCl)を与える。酸性pHで、この反応は、タウリンN−モノクロラミン及びタウリンN,N−ジクロラミン(TauCl)を与える。細胞外培地中で、次亜塩素酸と最も容易に反応する分子は、タウリン及び特に亜硝酸塩(NO)である。それらのそこでの濃度は、おおよそ等しく、TauClよりも毒性の低い誘導体を形成してHOClを捕捉するのは、本質的に亜硝酸塩である。これらの誘導体の形成により、亜硝酸塩は、HOClの殺菌及び免疫特性を減少させる(非特許文献8)。好中球多核白血球の細胞内培地中で、非常に濃縮された(20mモル/l)タウリンが、HOClを捕捉するために必要になる(非特許文献8)。
【0008】
2)次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸、及びN−クロラミドの特性。
【0009】
a)組織溶解能力。
【0010】
水溶液の次亜塩素酸ナトリウムが、腐食性であることも同様に知られている;それは、壊死組織を加水分解することが可能な非特異性剤である。この特性は、水酸化ナトリウムNaOHの存在による。濃度の外に、(特に壊死)組織の溶解は、NaOClと接触する表面(非特許文献9)、接触時間及び使用されるNaOCl溶液の体積(非特許文献10)によって決定される。
【0011】
このように、0.5%未満のNaOCl濃度が、壊死組織を完全に溶解させるために不十分だとしても、この低い濃度は、その毒性減少のために興味深い。壊死組織を溶解させるこの低い能力は、次亜塩素酸溶液を37℃に加熱することによって、この温度でNaOClの安定性が24時間を越えないとしても、補償され得る。
【0012】
b)水溶液のHOCl及びTauClの安定性。
【0013】
−次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl):
次亜塩素酸ナトリウムは、非常に不安定な分子である。活性塩素の5g/l未満の濃度で、その安定性は、2週間を越えない。幾つかの要素がこの安定性に影響を及ぼす:・光:次亜塩素酸ナトリウムは、光に感受性が高く、その調節方法によってそれから保護されねばならない。
・温度:NaOClは、30℃を超える温度に感受性が高い。
・金属又は有機物の存在:HOClから形成される(NaOCl+HO⇔HOCl+NaOH)次亜塩素酸溶液は、有機物との相互作用において消費される。次亜塩素酸溶液が有効であるためには、迅速に作用し得、かつ有機物の量に対して過剰でなければならない。
・pH:特許文献1で説明されたように、10〜10.5のpH値により、次亜塩素酸ナトリウムが、酸化能力の(24ヶ月を超える)優れた安定性を有することが可能になる。
【0014】
−タウリンN−クロラミン(TauCl):
生理的pH(7.4)、かつ37℃で、TauClは、クロラミン類の中で最も安定する[酸化能力の減少は、37℃で時間当たり5%未満である](非特許文献11)。しかしながら、特許文献2が示すように、水溶液で、Ph=7−8でのTauClのナトリウム塩の溶解度は、優良であるが、その酸化能力の安定性は、悪い:8.3のPh値で、2週間で約30%下落し、次に1日当り0.71%減少する(65日で〜61%の低下)。
【0015】
c)毒性及び細胞生存度。
【0016】
毒性は、細胞内蛋白の著しい喪失として定義される。このことは、基質への付着力喪失及び細胞変形という形で現れる。
【0017】
細胞生存度の変化は、ミトコンドリア活性、及びそれ故にエネルギー生成に不可欠な細胞呼吸の、多少不可逆的な減少によって測定される。
【0018】
NaOCl及びTauClに向いた様々な細胞生物の脆弱性は、以下の多数のファクタに左右される:
・細胞表面の露出率。例えば、(例えば上皮又は菌苔中の)細胞組織を利用する系は、単細胞系(原核生物、哺乳類の可動細胞、又はその他の単細胞要素)よりも脆弱でない(表面の細胞が、深部の層のために犠牲にされる)。
・細胞内要素を保護する膜のタイプ、及びそれ故にその酸化剤透過性レベル。最も有効なものは、ウイルスの蛋白殻である。
・DNA(核)のような主要細胞内要素、エネルギー生成(ミトコンドリア)、分泌プロセス(ゴルジ装置)、等を保護する膜の存在。それを有さない原核生物は、それだけ脆弱である。
・細胞のタイプによって異なる(例えばグルタチオン、タウリン、アミノ酸、チオール基等のような)抗酸化剤の細胞内の量。抗酸化剤が最も豊富でないものは、原核生物である。
・(有機物、金属、血液、細胞外マトリックス等のような)抗酸化剤の細胞外の量。
・これらの細胞を洗浄し、かつそれ故に酸化剤の量を希釈する液体の流れ。
・露出時間
・局部物理化学的条件(例えば表面活性、酸化、嗅覚又は味覚特性、安定性、pH、pKa、密度、溶解度、粘度、色調、水−エクタノール分配係数)。
【0019】
生体内治療処置の際に、上述のファクタは、活性剤の適切な分量を決定する際に、それらを臨床状況の現実の必要性、及び追求する目標に適応させ得るために、考慮されねばならない。
【0020】
i)次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)又は次亜塩素酸(HOCl):
【0021】
−ラットのRAW264.7マクロファージ系統細胞に関して。[NaOCl]=1mモル/lで、細胞生存度は、非常に激しく影響される(不可逆性)(非特許文献12)。
【0022】
−マウスのマクロファージに関して、0.125mMを超えるあらゆるHOCl濃度で、細胞死亡率の著しい増加がある。この細胞毒性は、亜硝酸塩NOの過剰によって完全に消滅する(NOのみは、細胞毒性活性を有さない)(非特許文献8)。
【0023】
−ヒトマクロファージ、繊維芽細胞、ケラチノサイトに関する生体外で:
・[NaOCl]=13.433mモル/lで、NaOClの毒性は、非常に迅速であるので、抗酸化剤によって中和される時間がない(生理的に適合できる濃度で)。
・[NaOCl]>6.7165mモル/lで、NaOClは、大きな毒性を有する。
・[NaOCl]<3.358mモル/lで、毒性は、抗酸化剤の付加によって抑制され得る。
・[NaOCl]<1.679mモル/lで、毒性は、抗酸化剤の存在下で非常に低い(非特許文献13)。
【0024】
−HOCl存在下でのマクロファージの付着力喪失が研究された。[NaOCl]=1.0075mモル/lで、2時間の生体外接触の後、95%の細胞が生きているが、40%のみが基質への付着力を保っている。
【0025】
−生体外ヒト内皮細胞に関して(非特許文献14)。
・[HOCl]≦25μモル/lで、HOClは、毒性でない。
・[HOCl]>25μモル/lで、露出時間にも同様に左右される細胞毒性の漸進的増加が観察される。
・[HOCl]=50μモル/lで、細胞収縮があり、その形は、10mn内に丸くなり、かつ細胞は、1時間後に離れ始め、大多数の細胞は、3時間後に離れる。
【0026】
−生体外ヒト繊維芽細胞に関して。
・(15分の露出の後、24時間観察される)[NaOCl]≧1.0075mモル/lで、細胞生存度は、影響される。
・[NaOCl]=16.791mモル/lで、細胞死亡率は、全体である。
・67.165μモル/l<[NaOCl]<671.655μモル/lで、100%の露出した細胞が生きている。
・[NaOCl]<671.655μモル/lで、かつ2%のFCSの存在下で、24時間露出される繊維芽細胞の生存度は影響されず、かつ33.582μモル/lで、最大効率で[NaOCl]の減少により増加する繊維芽細胞の増大及び増殖の増進さえも観察される(非特許文献13)。
・[HOCl]<50μモル/lで、生体外ヒト皮膚繊維芽細胞の生存度に影響しない。
この濃度で、HOClは、細胞アポトーシスを引き起こさない(非特許文献15)。
【0027】
ii)細胞生存度に対するタウリンN−クロラミン[TauCl]の効果:
【0028】
−生体外のラットのC6膠細胞(膠腫細胞)に関して。[TauCl]=0〜2mモル/lで、細胞生存度は、影響しなかった(非特許文献16)。
【0029】
−生体外のヒト皮膚繊維芽細胞に関して
[TauCl]≦100μモル/lで、細胞毒性はない。これらの濃度で、TauClは、細胞アポトーシスを引き起こさない(非特許文献15)。
【0030】
−ヒト滑膜細胞(繊維芽細胞系統)に関して、高濃度のTauCl(400−500μモル/l)の存在下で、細胞は、生存度が保たれる(≧95%)が、形態を変える(〜30−50%の細胞は、丸い形を取り、かつプラスチック表面から分離する)(非特許文献17)。
【0031】
−マウスのTリンパ球に関して
・[TauCl]=30−300μモル/lで、TauClは、(ミトコンドリア活性レベルで証明された)細胞生存度に影響しない。
・300μモル/lで、TauClは、DO−10−11タイプのリンパ球に対して細胞毒性である(非特許文献6、非特許文献7)。
【0032】
−TauClで24時間インキュベートされた、マウスの樹状細胞に関して:
・0.05mモル/l<[TauCl]<0.5mモル/lで、ミトコンドリア活性、及びそれ故にこれらの細胞の生存度は、影響されない。
・[TauCl]>0.5mモル/l、かつ24時間のインキュベーションで、細胞生存度の著しい減少が観察される(非特許文献18)。
【0033】
−マクロファージ又はマクロファージ系統細胞に関して、[TauCl]=0.05〜0.6mモル/lで、細胞生存度は、影響されない。1mモル/lから影響される(非特許文献19)。
【0034】
d)外因性HOCl及び外因性タウリンクロラミンの細胞同化。
【0035】
HOClは、親油性酸化剤であり、かつ従って細胞膜を横断することが、極めて容易である。それは非常に迅速である(〜80%のHOClがヒト繊維芽細胞によって10分で同化される)(非特許文献15)。生体外培養の内皮細胞に関して、[HOCl]=35μモル/lで、50%のHOCl分子は1/2分で、全体は〜15分で、その大多数は10分で消費される(非特許文献14)。
【0036】
TauClは、特異な膜輸送系により同化される。このように、静止状態のラットのRAW264.7細胞に関して、K及びVmaxの生体外値は、それぞれ23.3μモル/l及び51.3pモル/分/10細胞である(タウリンに関して、K=28.1μMかつVmax=90.9pモル/分/10細胞である)。LPSによって増進されたマクロファージに関して、生体外値は、TauClに関して、K=45.9μモル/lかつVmax=82.6pモル/分/10細胞であり、かつタウリンに関して、K=17.3μMかつVmax=116.3pモル/分/10細胞である。
【0037】
TauCl及びタウリンの膜輸送系は、独立しており、かつ2つの同化系は、活性であり、かつ温度、Na及びエネルギーに依存する。
【0038】
血液によるTauCl及びタウリンの体内分布は、肺、肝臓、脾臓、胃、腸及び腎臓のレベルでの迅速な同化という形で現れる。炎症性病変に対して存在する細胞のレベルでのタウリン及びTauClの著しい同化が注目される(炎症/血液の比率は、それぞれ6.43及び4.84である)(非特許文献20)。その他のデータは、腎臓、肝臓、脾臓及び骨髄による迅速な同化を示したが、他方この同化は、心臓及び筋のレベルで遅い(非特許文献21)。
【0039】
e)消毒特性。
【0040】
次亜塩素酸ナトリウムは、非常に強力であり、かつ非常に有効な抗菌、抗ウイルス及び抗かび剤である(非特許文献1、非特許文献9、非特許文献22)。グラム−菌及びグラム+菌に対する殺菌効果が、3.36mモル/l(0.025%)のNaOCl濃度まで、生体外で観察された(非特許文献23)。HIVウイルスを破壊するための最低濃度は、活性塩素19.062mモル/l(0.1%)である。
【0041】
タウリンクロラミンの研究は、タウリンクロラミンが大腸菌の生存度に著しく影響するが、酸性pHにおいてのみであることを証明し、このことは、殺菌活性を有するのは、ジクロラミンであり、タウリンモノクロラミンでないことを示している(非特許文献8)。従ってN−モノクロラミンは、非常に少ない、更にはゼロである消毒活性を有するであろう。
【0042】
3)炎症。
【0043】
炎症は、あらゆるタイプの攻撃に対する防御反応である。攻撃者は、マクロファージ及び樹状細胞(CD)のような前哨細胞によって検出される。応答して、結果として、伝達物質の生成及び放出を経由して免疫系の初期化を招くプロセスが開始されることになる(非特許文献18)。従ってこれらの伝達物質は、免疫系を活性化させ、その応答を攻撃タイプに適応させ、かつその介入を助長する目的の一連の連鎖反応を開始することになる。攻撃者が除去された時、癒着/修復プロセスが置かれる。
【0044】
2つのタイプの免疫が認められる:すなわち先天的(天然)及び後天的(適応性)である。
【0045】
先天的(天然)免疫の細胞成分は、単球(単核食細胞)、好中球多核白血球(PNN)及びナチュラルキラー細胞(NK)からなる。これらの細胞は、幾つもある中で、第1エフェクタ蛋白メカニズムのような補体のカスケードも、反応性C蛋白及びアミロイド蛋白のような種々の認識蛋白も使用する。これらの蛋白は、細菌上に存在するが、真核細胞上に存在しない炭水化物構造に結合され得る。PNNは、第1の防御線の一部をなし、かつ免疫系の主要なエフェクタ細胞であるマクロファージと緊密に協働する;PNNは、急性炎症において非特異性防御の責任を負い、かつマクロファージは、急性及び慢性炎症において同じ役割を有する(非特許文献24)。
【0046】
後天的(適応性)免疫は、リンパ球タイプでの幾つかのものを含み、かつエフェクタ蛋白のような抗体を使用する。T細胞のレセプタ及び抗体は、認識分子である。Bリンパ球は、炭水化物、蛋白及び比較的単純な幾つかの化学構造を認識し、他方Tリンパ球は、ペプチドのみを認識する。樹状細胞は、そこで無視できない役割を演じる。炎症性伝達物質の作用で、DCは、非リンパ組織のリンパ器官への移動を行い、リンパ器官で、抗原捕獲能力を失い、かつTリンパ球を刺激するために、増殖能力を獲得することになる(非特許文献24)。
【0047】
4)炎症の伝達物質。
【0048】
サイトカインは、免疫系で最も重要な細胞間メッセンジャ分子である(非特許文献25)。サイトカインは、活性化免疫細胞によって生成され、オートクリン的にせよ、パラクリン的にせよ、応答標的細胞上のレセプタとの結合後に特殊な生物活性を発生させる。マクロファージ及びTリンパ球は、サイトカインを生成する主要な細胞であるが、しかしながら多くの他の細胞も同様にそれらを生成し、かつ放出し得る。サイトカインは、体液及び細胞免疫応答の本当のレギュレータである。サイトカインは、一致して働き、かつそれらの活性間のバランスは、免疫系の調整にとって重大である。最も知られているものは、TH1(IL−2、INF−γ、TNF−β及びIL−12)及びTH2(IL−4、IL−5、IL−10及びIL−13)のTリンパ球のサイトカイン間の競争である。
【0049】
TH1リンパ球は、細胞免疫中に含まれ、かつマクロファージの細胞毒性活性、細胞毒性Tリンパ球(CTL)及び「ナチュラルキラー」細胞(NK)の原因となる。
【0050】
TH2リンパ球は、体液応答と結び付けられる。例えば、TH2タイプのサイトカインであるIL−10は、マクロファージ及びTH1細胞の有効機能を強力に阻害する(非特許文献26〜28)。
【0051】
サイトカインのレギュレータ機能は、体液性応答の際に、免疫グロブリンのイソタイプ選択に拡張され得る。このようにしてサイトカインの選択的阻害は、免疫応答の調節という結果になる。
【0052】
活性化マクロファージによって生成された、エイコサノイド(プロスタグランジン及びロイコトリエン)、及び一酸化窒素(NO)は、サイトカイン生成の調整に対して大きなインパクトを有する。エイコサノイド(ロイコトリエン、プロスタグランジン)は、組織内で予め形成されない。それらは、細胞膜のリン脂質にそれ自体由来するアラキドン酸から生成される。
【0053】
プロスタグランジン(PG)は、アラキドン酸を環状エンドペルオキシドに変換するシクロオキシゲナーゼ(COX)によって触媒作用を及ぼされる。COXの構成形(COX1)及び誘発形(COX2)が存在する。後者は、炎症誘発剤によって炎症細胞中で活性化される。マクロファージにおいて、このことは、プロスタグランジンE(PGE)及びプロスタサイクリンI(PGI)の合成に主に至らせ、かつ肥満細胞において、プロスタグランジンDの合成に至らせる。
【0054】
プロスタグランジン(特にPGE)及びロイコトリエン(特にLTB)は、免疫応答を変更し、かつこれら種々のエイコサノイドの効果間の均衡は、免疫系の調和の取れた働きを可能にする。
【0055】
一酸化窒素(NO)は、シンテターゼ一酸化窒素の2つの形、従属カルシウムの構成形(cNOS)及び独立カルシウムの誘発形(iNOS)によってL−アルギニンから合成される。cNOSは、同時に内皮中及び神経系中の一酸化窒素の基底形の合成の原因である。iNOSは、マクロファージ、好中球及び肝細胞を含む多様な細胞中にある。一酸化窒素の生成は、マクロファージの細胞毒性、及びその侵入生物を破壊する能力において、かつそれ故に多数の病原体及び腫瘍細胞に対する宿主の非特異防御において重要な役割を演じる。
【0056】
炎症のこれら伝達物質の特性は、先行技術において記載された(非特許文献25〜29)。
【0057】
5)炎症性部位のレベルでの次亜塩素酸及びタウリンN−クロラミンの影響。
【0058】
−細菌に関して
非塩素化グラム+菌(黄色ブドウ球菌、表皮S、大腸菌)による刺激後に、ラットの腹腔マクロファージは、高濃度の一酸化窒素、TNF−α、及びIL−6を放出する。HOClによって塩素化された細菌は、一酸化窒素及びTNF−αを誘発する能力を失い、他方で、IL−6生成及び食作用は、影響されない(非特許文献24)。
【0059】
−内皮に関して
HOClは、内皮の透過性を増加させ、かつ微小循環の内皮への白血球の付着性を助長する。TauClは、PNNの作用により、内皮の透過性増加を軽減する。タウリンのみが、いかなる効果も有さない(非特許文献30)。
【0060】
−細胞増殖に関して
培養中のヒト臍静脈の内皮細胞に対する次亜塩素酸の効果が、研究され、非常に低い濃度(1.2×10の細胞に対して5nモルのHOCl)は、細胞死を引き起こさないが、増殖の一過性停止を引き起こすことが証明された(非特許文献31)。低い分量のHOCl及び生理的クロラミンが、DNA合成及び培養中の皮膚繊維芽細胞の細胞分裂の阻害に至らせることも証明された(非特許文献15)。
【0061】
−(コラーゲン等のような)非遊離蛋白に関して
HOClは、非常に強力な酸化剤である。それは、塩素化によって蛋白を変更し、かつ蛋白を、エンドペプチダーゼによる分解により脆弱にする。この分解は、炎症性部位を取り巻く組織の破壊に寄与する。遥かに強力でない酸化剤であるTauClは、ほとんどこの組織損傷の原因にならないように見える。
【0062】
−コラゲナーゼに関して
TauClは、コラゲナーゼの直接阻害/不活性化を行い、他方コラーゲン自体の蛋白分解感受性に対していかなる効果も有さない。比較すれば、アラニン及びロイシンN−モノクロラミン、並びにHOClは、コラゲナーゼに対していかなる阻害効果も有さない;逆に、アラニン及びロイシンN−モノクロラミンは、コラーゲンの蛋白分解感受性を強化する(非特許文献32)。
【0063】
−遊離蛋白(オボアルブミン、細菌又はその他の酵素)に関して
遊離蛋白の塩素化は、主にマクロファージ及び樹状細胞(DC)である「抗原提示細胞」(APC)によってこれら蛋白の処理及び提示をおそらく容易にして、免疫感覚を増加させる。この塩素化は、TauClよりもHOClにとって10倍重要であるが、生体内では、主にそれの原因となるものは、その安定性によりTauClである(非特許文献18)。
【0064】
−樹状細胞(DC)に関して
2時間ラットのDCでプレインキュベートされた、タウリンN−モノクロラミン(TauCl)は、TauClの濃度に応じて変化する阻害作用を有する。[TauCl]=0.5mモル/lで、TauClは、一酸化窒素、PGE、酸化呼吸によって生成される反応性酸素剤(ROS)、及びサイトカインTNF−α、IL−6、IL−10及びIL−12のDCによる分泌をほぼ完全に阻害する。クラスIIMHC及びB7−2分子の、リポ多糖によって誘発される発現も同様に阻害される。この濃度で、TauClは、DCが長時間露出されるならば、DCにとって毒性であり得る。[TauCl]=0.25mモル/lで、TauClは、より選択的な作用を有する。それは、IL−12、IL−10、PGE、及び一酸化窒素の生成を阻害するが、TNF−α及びROSの生成は阻害しない。その上、TauClへのDCの露出は、TH1リンパ球応答の発達及びTh2の活性の減少を助長するように見える(非特許文献18)。
【0065】
−Tリンパ球に関して
TauClは、Tリンパ球が0.1から0.3mモル/lのTauCl濃度でプレインキュベートされ、かつ分裂促進因子、抗原又はAPCオボアルブミン複合体によって刺激される時に、IL−2、IL−6の放出をTリンパ球によって阻害する(非特許文献6、非特許文献7)。
【0066】
−食細胞に関して
HOClによって塩素化された抗原、及びTauClの存在下にある抗原は、炎症性伝達物質の生成を、それらに食作用を及ぼす食細胞によって増進しない。
【0067】
−マクロファージに関して
タウリンモノクロラミン、タウリンジクロラミン、N−モノクロロエタノールアミン及びN−ジクロロホスホエタノールアミンのようなクロラミンも、NaOCl(次亜塩素酸ナトリウム)も、全てが一酸化窒素の放出を用量依存的に阻害する。クロラミンセリンは、調製直後に活性である(0.3mモル/lのSerCl、85%の一酸化窒素の生成阻害)。それは、溶液中で静止状態にして24時間後に阻害活性を失う(22%の阻害)。従ってSerClの活性の半減期は短い。タウリンN−モノクロラミンは、0.6mモル/lのTauClで98%、一酸化窒素の生成を阻害し、かつ0.1mモル/lで(細胞のタイプに応じて)8〜22%阻害する。この阻害は、iNOS遺伝子の転写レベルで行われる。タウリンのみがこの転写に対して効果がない(非特許文献19)。(おそらくTauClにより)HOCl及びTauClは、COX2の転写後の発現(及びそれ故にPGEの生成)を阻害し(mRNAの発現反応速度の4時間の遅延)、かつTNF−αの転写速度を減少させる;0.4mモル/lのIC50で用量依存的にである(非特許文献33)。TauClは、マクロファージによって、INF−γによるそれらの刺激レベルが何であれ、COX2の発現を阻害する。TauClは、INF−γにより刺激されたマクロファージによってのみ、TNF−α、IL−6の生成及びiNOSの発現を阻害する。それは、刺激レベルが何であれ、IL−1αの生成に関していかなる作用も有さない。天然タウリンのみがこれら全ての伝達物質に対して効果がない。HOClによって酸化される、血漿のリポ蛋白は、iNOSのmRNAの、マクロファージによる合成を減少させる能力、及びそれ故に一酸化窒素の合成を阻害する能力を有する。それらは、アテローム硬化性病変の発達に寄与する(非特許文献34)。
【0068】
−好中球PNに関して
TauClは、一酸化窒素、プロスタグランジンE、インターロイキン−6、TNF−αの生成を用量依存的に阻害する。天然タウリンのみが効果がない。ルミノールに依存した化学発光測定(LCL)により、以下のことが確認又は証明された(非特許文献6〜8):
−ROSは、同時にタウリン及びタウリンN−クロラミンによって減少する。しかしながら、タウリンは、高濃度でLCLに影響し、かつその作用は、TauClの作用よりも遥かに広範でない。
−次亜塩素酸は、ミエロペルオキシダーゼの活性に対して遡及タイプの用量依存阻害を行う。TauCl及びHOClは、これらの剤が好中球から抽出されたミエロペルオキシダーゼに付加される時、生体外で、ミエロペルオキシダーゼの活性に対して類似した効果を有する。次亜塩素酸は、過酸化水素の生成に対して用量依存阻害を行う。(HOCl=0.25mモル/lでの)この阻害は、タウリン(0.5mモル/l)又は亜硝酸塩(0.25mモル/l)によって停止される。TauClは、この生成に関して効果を有さない
−用量依存の化学発光の減少が、HOCl又はTauClで観察され、TauCl(IC50=0.55mモル/l)は、HOCl(IC50=0.1mモル/l)よりも有効でない。
−タウリン及びTauClは、刺激された好中球によりスーパーオキシドアニオン(O)を生成することを阻害する。
−O生成のこの阻害は、(TauClを与えるための)次亜塩素酸とのタウリンの反応とは異なるメカニズムによってなされる。なぜなら、ミエロペルオキシダーゼの特異な阻害因子とのタウリン(又はTauCl)の組み合わせは、協働作用効果を有するからである。この作用メカニズムは、解明すべきこととして残っている。
【0069】
しかしながら、タウリンは、高濃度でLCLに影響し、かつその作用は、TauClの作用よりも遥かに広範でない(非特許文献6、非特許文献7)。
【0070】
−好酸球PNに関して
スルフィドペプチドロイコトリエンLTCスルホキシド及び6−トランス−LTBは、HOClによって細胞外培地中でのみ不活性化される(非特許文献35)。
【0071】
−ラットのC6膠細胞に関して
中枢神経系において、TauClは、用量依存的に、かつ転写後系を通して単球化学誘引蛋白−1(MCP−1)及びマクロファージ炎症性蛋白−2(MIP−2)の、活性化膠細胞による生成を阻害する(非特許文献16)。TauClは、iNOS遺伝子の転写発現、及びそれ故に一酸化窒素の生成も同様に阻害する。それは、転写後メカニズムによって、COX−2蛋白の発現及びそれ故にPGEの生成も同様に阻害する(非特許文献36)。
【0072】
−繊維芽細胞に関して
非特許文献17によれば;TauClは、リウマチ様関節炎に冒された患者において(繊維芽細胞に似た)滑膜細胞の増殖を阻害する。2000年に、同じ細胞タイプ及び同じ病理に関して、彼らは、TauClが、IL−6(IC50値〜225μモル/l)及びIL−8(IC50値〜450μモル/l)の主要な転写ファクタの活性を減少させ、かつそれ故に用量依存的にこれらの遺伝子の転写を減少させる能力を有することを証明した。従ってTauClは、IL−6により炎症誘発性作用を減少させ、かつ炎症性部位に移動するこれらの免疫細胞の機能を一時的に減少させる(IL−8の阻害)。IL−6に関して、この阻害は、(TNF−α又はIL−1β又はIL−17であろうと、)繊維芽細胞を刺激した炎症誘発性伝達物質から独立する。IL−8に関して、この阻害は、TNF−α又はIL−1βによってなされた刺激に関して行われるが、IL−17による刺激に関しては行われない。このことは、形質導入を開始する信号によって辿った道が、TNF−α/IL−1β及びIL−17の間で異なることを示す(非特許文献17)。
【0073】
IL−1βによりRAに冒されたヒト滑膜細胞の刺激に関して、TauClによるIL−6及びIL−8の形質導入阻害は、それらの転写ファクタの2つのレベルで行われる:すなわちNF−κB及びAP−1である。
【0074】
TauClは、自発増殖及びRAに冒された患者の滑膜細胞のbFGFによって開始された増殖を同時に阻害する。
【0075】
少量のHOCl及び生理的クロラミン(NHCl、TauCl及びN−塩素化α−アミノ酸)は、DNA合成、及び培養中のヒト皮膚繊維芽細胞の細胞分裂を同時に阻害することに至らせる(非特許文献15)。
【0076】
−NF−κB及びAP−1転写ファクタに関して
転写がNF−κBの作用によって本質的に左右される全ての遺伝子の発現は、高い確率でTauClの作用によって影響される。IL−1βによるRAに冒されたヒト滑膜細胞の刺激に関して、TauClによるIL−6及びIL−8の形質導入阻害は、それらの転写ファクタの2つのレベルで行われる:すなわちNF−κB及びAP−1であり、かつIL−6及びIL−8のDNAとのこれらのファクタの結合機能を減少してなされる。IL−6の転写は、NF−κBの制御下にあり、他方IL−8に関して、AP−1及びNF−κBの作用は必要である。250μMで、TauClは、AP−1の接着及びそれ故にIL−8の転写に影響せずに、NF−κBの接着及びそれ故にIL−6の転写を選択的に減少させる。500μMのTauClで、NF−κB及びAP−1の接着活性は、両方とも減少され、その結果IL−6及びIL−8の転写が減少する(非特許文献37)。
【0077】
この調整は、酸化還元(redox)メカニズムによって行われる(非特許文献38〜40)。Kontnyら、2000(非特許文献37)
は、弱い酸化剤であるTauClが、これらの転写ファクタの酸化還元細胞規定(statut)に干渉し得るという仮説を発表した。これらの著者は、結論として、NF−κBは、強力な抗炎症生理的ファクタを表し得ることを示唆している。
【0078】
−補体に関して
ヒト補体のC成分は、ヒドロキシル基、次亜塩素酸塩及びクロラミン(TauCl、及び特にNHCl)のような酸化剤によって活性化され得る。活性化は、ペプチドの卵割なしで冒され、かつCの蛋白中のメチオニン残渣の酸化によって誘発される、Cの構造変化に基づく。変化により、2つのコンバターゼC/Cの一方によって、C5a及びC5b中のCの特異卵割後に通常形成されるC結合部位の発現に至る。Cの酸化生成物が、C5Bに似る限り、膜溶解性複合体C5−9の組み合わせを始めることが可能である。
【0079】
走化性断片は、直接生成されないが、活性化された(C5bに似た)Cが、カリクレインのような酵素によって迅速に攻撃され、このことはC5aに似た、かつ走化性活性を有する断片を生成する。Cによって形成される複合体C567も、複合体C5b67のように、走化性であることは、確実らしい。複合体C5b−9は、PNNを毒性でない濃度で刺激することで知られている。(C5bに似た)Cによって形成されるC5−9に対応する複合体は、非常に高い公算で同じ効果を有する。このように、このことは、組織病変を増加する悪循環に至らせ得る(非特許文献41)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0471129号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第4041703号明細書
【非特許文献】
【0081】
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【非特許文献7】Marcinkiewicz J, Grabowska A, Chain BM. “Modulation ofantigen-specific T-cell activation in vitro by taurine chloramine.” Immunology.1998 Jul;94(3):325-30
【非特許文献8】Marcinkiewicz J, Chain B, Nowak B, Grabowska A, Bryniarski K, BaranJ. “Antimicrobial and cytotoxic activity of hypochlorous acid: interactionswith taurine and nitrite.” Inflamm. Res. 2000 Jun;49(6):280-9
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【非特許文献38】Sen CK, Packer L. “Antioxidant and redox regulation of genetranscription.” FASEB J. 1996 May 10(7): 709-20
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【非特許文献41】Vogt w. “Complement activation by myeloperoxidase products released from stimulated polymorphonuclear leukocytes.” Immunobiology. 1996Aug;195(3):334-46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0082】
このようにして、先の観察に基づき、顕著な殺菌作用を有するNaOClが、炎症において、壊死及び化膿した塊の洗浄段階への移行加速に寄与し、局部免疫を増進し、かつ修復プロセスを活性化することが今や証明される(Lelianov ADら、1991)。次亜塩素酸ナトリウムの2つの化合物の結合、(浄化用の)ヒドロキシル基、及び次亜塩素酸、並びに特に後者の塩素化誘導体を原因とする特性である。
本発明は、ウイルス、細菌、寄生虫、菌性又は非通常型伝染剤(ATNC)による感染、及び慢性、進行性又は急性炎症の処置用、免疫調節、及び/又は組織癒着の増進処置用、並びに外科手術前、及び/又は中、及び/又は後のすすぎのハロゲン化化合物を主成分とする新規な組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0083】
従って、本発明は、(i)少なくとも1つのハロゲン化化合物、及び(ii)双性イオン化合物及び/又はアミノ酸から選択される少なくとも1つの化合物の少なくとも1つのN−ハロゲン化誘導体を含む薬剤組成物を対象とする。
【0084】
本発明による組成物において、ハロゲン化化合物(i)は、消毒薬である。
【0085】
本発明による組成物の構成中に入るアミノ酸は、天然アミノ酸、その誘導体又は類似物であり得る。
【0086】
同一又は異なる、本発明の組成物のハロゲン化化合物及びN−ハロゲン化誘導体中のハロゲンとして、フッ素、ヨウ素、臭素及び特に塩素をとりわけ検討する。
【0087】
好適には、ハロゲン化化合物(i)は、次亜塩素酸アルカリ金属、及び好ましくは次亜塩素酸ナトリウムであり、かつN−ハロゲン化誘導体は、(ii)タウリンのN−ハロゲン誘導体、及び好ましくはタウリンN−ハロアミン、及び非常に好ましくはタウリンN−クロラミンである。
【発明の効果】
【0088】
本発明の組成物は、ミエロペルオキシダーゼ活性を増進させることなく、非常に広いスペクトルを有する消毒特性、抗炎症特性、免疫調節特性、及び組織癒着増進特性を有することにおいて注目に値する。
【発明を実施するための形態】
【0089】
本発明の組成物の次亜塩素酸塩の滴定量は、好ましくは活性塩素の1モル/リットル以下であり、かつ予定される臨床用途に適応せねばならない。好適には、本発明の組成物は、次亜塩素酸アルカリ金属を含む。非常に好ましくは、本発明の組成物は、1ピコモル/リットル以上である活性塩素の最小滴定量のために十分量の次亜塩素酸アルカリ金属を含む。
【0090】
本発明の組成物のN−クロラミンの滴定量は、好ましくは5モル/リットル以下であり、かつ予定される臨床用途に適応せねばならない。好適には、本発明の組成物は、タウリンN−クロラミンのようなN−ハロゲン化誘導体を含み、5モル/リットル〜0.01フェムトモル/リットルの濃度を有する。非常に好ましくは、本発明の組成物は、0.01フェムトモル/リットル以上の滴定量のために十分量のタウリンN−クロラミンのようなN−ハロゲン化誘導体を含む。
【0091】
ハロゲン化化合物及びN−ハロゲン化誘導体は、治療用途に則した精製水のような賦形剤で本発明による組成物中に結合される。好ましくは浸透(等張)精製水のことである。この賦形剤は、ハロゲン化化合物及びN−ハロゲン化誘導体と薬剤上適合でき、本発明の組成物の幾つかの物理化学特性(非限定的な例として、表面活性、酸化、嗅覚又は味覚特性、安定性、pH、pKa、密度、溶解度、粘度、色調、水−エクタノール分配係数)を変更することを可能にする種々の剤を含むことができる。本発明の組成物は、幾つかの次亜塩素酸アルカリ金属の分子を中和して希釈効果を有するであろうアミノ酸及び/又は抗酸化剤を含んでも良い。これらの抗酸化剤、これらのアミノ酸及びそれらのハロゲン化誘導体は、中性か、追求する治療効果に向けられた薬剤作用を有し、かつ本発明の組成物に入る活性剤の存在下で、ミエロペルオキシダーゼ活性の直接増進を行わない。
【0092】
本発明は、先に記載した組成物の調製にも関する。実際、この組成物は、ハロゲン化化合物を、N−ハロゲン化誘導体及び1つ又は幾つかの賦形剤と混合することからなる、使用前に調製する形で商品化され得る。この提示形は、組成物及びそれを構成する生成物の時により良い安定性を保証することが必要ならば検討され得る。しかしながら、それを構成する生成物が結合される提示下でも、本発明の組成物は、治療用途に則した精製水のような賦形剤を伴い、商品化され得る。好ましくは浸透(等張)精製水のことである。この賦形剤は、適切な剤の付加によって、組成物の幾つかの物理化学特性(非限定的な例として、表面活性、酸化、嗅覚又は味覚特性、安定性、pH、pKa、密度、溶解度、粘度、色調、水−エクタノール分配係数)を変更する目的で、最終治療混合物の分子全体と薬剤上適合できる種々の剤を更に含むことができる。
【0093】
本発明の組成物は、以下に記載した成分:
−(i)少なくとも1つのハロゲン化化合物、及び
−(ii)双性イオン化合物及び/又はアミノ酸又はそれらの誘導体から選択される少なくとも1つの化合物の少なくとも1つのN−ハロゲン化誘導体を混合して、患者に投与する前に調製されることも同様に可能である。
【0094】
本発明の組成物のハロゲン化化合物及びN−ハロゲン化誘導体の中でハロゲンとして、フッ素、ヨウ素、臭素及び特に塩素をとりわけ検討する。
【0095】
好適には、ハロゲン化化合物(i)は、次亜塩素酸アルカリ金属、及び好ましくは次亜塩素酸ナトリウムであり、かつN−ハロゲン化誘導体(ii)は、タウリンのN−ハロゲン誘導体、及び好ましくはタウリンN−ハロアミン、及び非常に好ましくはタウリンN−クロラミンである。
【0096】
前記ハロゲン化化合物は、好適には以下に記載するような賦形剤中で、溶液又はゲルのような半流動体溶液の形を好適には呈する。この、好適には次亜塩素酸塩の溶液は、細胞生存度を尊重しながら、10〜10.5のpHを得るために、pH調整剤によって、特許EP0471129A1に記載された方法により安定化され得る。
【0097】
前記ハロゲン化化合物は、好適には以下に記載するような賦形剤中で、溶液又はゲルのような半流動体溶液の形を好適には呈する。
【0098】
好適には、本発明の組成物は、上記2つの溶液を治療用途に則した精製水のような1つの少なくとも賦形剤と混合して調製される。好ましくは浸透(等張)精製水のことである。この賦形剤は、適切な剤の付加によって、組成物の幾つかの物理化学特性(非限定的な例として、表面活性、酸化、嗅覚又は味覚特性、安定性、pH、pKa、密度、溶解度、粘度、色調、水−エクタノール分配係数)を変更する目的で、最終混合物の分子全体と薬剤上適合できる種々の剤を更に含むことができる。
【0099】
上記方法の応用例は、少なくとも1つのハロゲン化化合物及び少なくとも1つのN−ハロゲン化誘導体の結合を、全てがミエロペルオキシダーゼを阻害するために治療的な十分量で得るように:
−(i)好適には以上に記載するような賦形剤中で、溶液又はゲルのような半流動体溶液の形を呈する、以上で定義したような、少なくとも1つのハロゲン化化合物、及び
−(iii)好適には以上に記載するような賦形剤中で、溶液又はゲルのような半流動体溶液の形を呈する、以下で「Zw/Aam」とも指し示される、少なくとも1つの双性イオン化合物及び/又は少なくとも1つのアミノ酸及び/又は少なくとも1つの第1又は第2アミンを混合することからなる。
【0100】
この混合物は、以上に定義したような賦形剤で好ましくは作られる。
【0101】
Zw/Aamがアミノ酸である場合、好ましくは、タウリン又はその薬剤類似物のことである。
【0102】
この実施態様において、ハロゲン化消毒化合物(i)が、(次亜塩素酸のアルカリ金属塩である)次亜塩素酸塩であるならば、形成される誘導体は、N−塩素化され、かつとりわけN−クロラミンである。
【0103】
第1主要活性溶液の次亜塩素酸塩の滴定量は、化学量論及び次亜塩素酸及びZw/Aam分子の間の反応の反応性率を考慮に入れるべきである。反応が完全でない場合に関して、存続するZw/Aam分子は、本発明の組成物に入る活性剤の存在下で、ミエロペルオキシダーゼ活性の増進物質であってはならない。
【0104】
l/lの化学量論及び(次亜塩素酸及びタウリンの間のような)完全な反応の状況で、第1活性溶液の次亜塩素酸塩の滴定量は、好ましくは活性塩素の6モル/リットル以下であり、かつ第2溶液のZw/Aam分子の量、及び予定される臨床用途に適応せねばならない。好適には、この調製法において、(i)ハロゲン化溶液は、次亜塩素酸アルカリ金属を含む。非常に好ましくは、(i)ハロゲン化溶液は、6モル/リットル〜1000.01フェムトモル/リットルの活性塩素の滴定量にのために十分量の次亜塩素酸ナトリウムを含む。本発明のこの調製態様の(iii)第2溶液のタウリンの滴定量は、好ましくは1モル/リットル以下であり、かつ予定される臨床用途に適応せねばならない。好適には、本発明のこの調製態様の(iii)第2溶液は、5モル/リットル〜0.01フェムトモル/リットルの濃度で、タウリンを含む。非常に好ましくは、本発明のこの調製態様の(iii)第2溶液は、0.01フェムトモル/リットル以上の滴定量にのために十分量のタウリンN−クロラミンを含む。
【0105】
好適には上記方法の際に付加される賦形剤は、遭遇する様々な臨床条件に適応する処置を行い得るために、第2希釈溶液として有用である。浸透(等張)精製水のことである。この賦形剤は、好ましくは、混合される誘導体及び化合物の各々に対して使用されるものと同一であり、かつそうでない場合、何よりも臨床用途で一緒に混合され得るために薬剤上適合できる。この賦形剤は、適切な剤の付加によって、組成物の幾つかの物理化学特性(非限定的な例として、表面活性、酸化、嗅覚又は味覚特性、安定性、pH、pKa、密度、溶解度、粘度、色調、水−エクタノール分配係数)を変更する目的で、最終治療混合物の分子全体と薬剤上適合できる種々の剤を更に含むことができる。
【0106】
この賦形剤は、主要活性溶液の酸化剤、及びとりわけ次亜塩素酸アルカリ金属を中和して希釈効果を有するであろうアミノ酸及び/又は抗酸化剤を含んでも良い。これらの抗酸化剤、これらのアミノ酸及びそれらのハロゲン化誘導体は、主要活性溶液の酸化剤よりも少ない毒性を有しながら、中性か、追求する治療効果に向けられた薬剤作用を有する。あらゆる場合において、これらは、これらの方法で利用される化合物及び誘導体と薬剤上適合できねばならない。
【0107】
本発明による組成物は、ゲル又はエアロゾルのような局部投与に適応したあらゆる形を呈し得る。
【0108】
先に示したように、本発明の組成物は、ウイルス及び/又は細菌及び/又は寄生虫及び/又は菌性及び/又は非通常型伝染剤(ATNC)による感染;及び/又は慢性、進行性又は急性炎症の処置用;及び/又は免疫調節、及び/又は組織癒着の増進処置用、並びに外科手術前、及び/又は中、及び/又は後のすすぎで、ヒト又は動物においてとりわけ有用である。
【0109】
本発明は、ヘルペスウイルス科のウイルスによる感染の局部からの処置にとりわけ関心を有する。
【0110】
本発明の生成物は、好適には、アテローム硬化の危険増加のような2次効果を回避するために局部的に使用される。それは、外部又は内部、頬、性器、膣、眼球、視覚、洞、鼻、皮膚等のあらゆる粘膜に塗布され得る。本発明の組成物は、この投与に適応したあらゆる形、及び好ましくは半流動体の形、好ましくはセルロースのような薬剤上適合できる1つ又は幾つかの物質、又はアミノ酸、ペプチド、及び/又は蛋白の付加によるゲルの形を呈し得る。
【0111】
本発明の組成物は、臨床条件及び/又は罹患した粘膜に適応させても良い。この適応は、治療溶液の活性生成物の濃度を変更して行われる。
【0112】
かかる濃度の非限定的な例として以下のものを挙げることができる:
【0113】
i)感染処置用。
【0114】
−歯科学処置用で、1〜0.2モル/リットルの次亜塩素酸ナトリウム濃度、及び(例えば、管内に存在する有機物の量に応じた)約100〜0.001ピコモル/リットルのTauClが好ましい。
【0115】
−[多量の有機物(病原菌、血液、多量かつ種々の分泌物、化膿流出等)の存在下で]非常に汚れた角質化した粘膜に関して、活性塩素の0.1〜0.02モル/リットルに等しい次亜塩素酸ナトリウム濃度及び1〜0.001ピコモル/リットルに等しいTauClが好ましくなり得る。
【0116】
−[例えば湿布により粘膜を非常に軽くこすった後の可視有機物の存在下で]中位に汚れた角質化した粘膜に関して、活性塩素の20〜10ミリモル/リットルに等しい次亜塩素酸ナトリウム濃度及び1〜0.01ナノモル/リットルに等しいTauClが好ましくなり得る。
【0117】
−(可視有機物がなく)清潔な角質化した粘膜に関して、勧められる濃度は、NaOClでは活性塩素の10〜2ミリモル/リットル、かつTauClでは50〜1ミクロモル/リットルであり得る。
【0118】
−非常に汚れた角質化していない粘膜に関して、NaOClでは活性塩素の50〜10ミリモル/リットル、かつTauClでは0.1〜0.001ピコモル/リットルであり得る。
【0119】
−中位に汚れた角質化していない粘膜に関して、NaOClでは活性塩素の10〜5ミリモル/リットル、かつTauClでは1〜0.01ナノモル/リットルであり得る。
【0120】
−清潔な角質化していない粘膜に関して、NaOClでは活性塩素の5〜0.8ミリモル/リットル、かつTauClでは50〜1ミクロモル/リットルであり得る。
【0121】
−重要な、かつ非常に敏感な器官(目)に関して、できるだけ毒性が低くなければならず、かつ多量のすすぎの形で行われねばならない:
・汚れた器官、NaOClでは活性塩素の約5〜0.1ミリモル/リットル、かつTauClでは約1〜0.01フェムトモル/リットル。
・汚れていない器官、活性塩素の約0.1〜0.01ミリモル/リットル、かつTauClでは約50〜1ミクロモル/リットル。
【0122】
本発明の特殊な実施形によれば、特にNaOHを捕捉する抗酸化剤の付加が、勧められる。
【0123】
ii)免疫及び/又は組織癒着の増進の目的を有する、汚れていない器官の処置に関して、濃度は、非限定的な例として、NaOClでは500〜1ミクロモル/リットル、かつTauClでは200〜10ミクロモル/リットルであり得る。
【0124】
本発明による組成物は、慢性及び/又は進行性及び/又は急性炎症性疾病又はプロセスの局部処置に有効である。それは、内部及び/又は外部粘膜の外科手術前、及び/又は中、及び/又は後のすすぎ及び開いた傷口のために同様に示される。本発明は、約20〜60秒の時間中、1日当り2〜3回の塗布の薬量で、処置する粘膜を、本発明の組成物、例えば(ENL)と接触させることからなる先に記載された、かつすすぎが続かない、病変及び疾患の処置法にとりわけ関する。用いられる組成物の量は、治療活性剤が、方法によって全て中和されないために十分でなければならない。接触は、静的なままであるべきでない。溶液の濃度は、疾病の治癒までの臨床状況の変化に適応せねばならない。
【0125】
このようにして、本発明は、慢性及び/又は急性歯周炎に関連した病変及び感染の局所処置にとりわけ関する。
【0126】
慢性歯周炎は、主に嫌気細菌の病原作用、及びとりわけアクチノバチルス−アクチノミセテムコミタンス、歯肉ポルフィロモナス(Porphyromonas)、バクテロイデス−フォルシトゥス(forsythus)及び中間プレボテラ(Prevotella)による疾病である。これらの細菌は、歯根膜(歯の支持組織)の進行性破壊という結果になる慢性炎症性プロセスを引き起こす。この疾病の最終段階は、支持骨細胞が失われることに続き、歯(odonte)が抜けることである。
【0127】
慢性歯周炎の処置段階がどのようなものであれ、歯周ポケットの洗浄は、治療溶液が患者によって飲み込まれるまたは吸入されないように、強力な吸引の存在下でなされるべきである。疑わしい場合、ためらわずに多量にすすぐ。
【実施例】
【0128】
i)攻撃処置:歯周ポケットの検査で出血がなくなるまでの2〜3週間。
【0129】
−J1:臨床状況の迅速な評価後に、(歯周ポケットが、あろうとなかろうと)口腔の歯の全ての間隙空間の洗浄が行われる。クロルヘキシジン(治療体積の0.1%)及び酸化水(0.3%)の混合物を主成分とするうがいが処方される。薬量は、10日間(歯磨きとは間隔を置き)1日当り2回、次に永遠に2〜3日毎に1回のうがいである(口臭のある場合には最初の攻撃処置が繰り返されねばならない)。1週間当り2〜3回の診察予定が決めされる。
【0130】
−他の期間では、順番に次のことが実施される:歯周衛生の教育、確認及び動機付け;入念な洗浄(ポケット当り最低1mlの溶液);歯根の入念な歯石取り−表面仕上げ。洗浄は、汚れた角質化した粘膜に対して溶液でなされる。
【0131】
−全ての歯根表面が清潔かつ滑らかである時、期間は、疾病の程度を評価するために、洗浄後、歯周ポケットの検査に割かれ、かつ場合により他の例えば生物学的検査が行われ得る。
【0132】
ii)第1治療処置(4週間)
【0133】
−10日毎に歯周ポケットの念入りな洗浄。洗浄は、非常に汚れた角質化した粘膜用の溶液が使用される、菌苔が多量にある領域(例、歯間分岐部)を除き、中位に汚れた角質化した粘膜用の溶液でなされる。
【0134】
−第1治療処置の最後の期間で、洗浄後に検査が続き、次に歯根表面の表面仕上げが続く。
【0135】
iii)(歯周ポケットが臨床的に消失するまでの)第2治療処置。
【0136】
−10日毎に歯周ポケットの念入りな洗浄。洗浄は、非常に汚れた又は中位に汚れた角質化した粘膜用の溶液が使用される、菌苔が多量にある領域+又は−(例、歯間分岐部)を除き、清潔な角質化した粘膜用の溶液でなされる。
【0137】
−第1治療処置の3期間毎に、洗浄後に検査が続き、次に歯根表面の表面仕上げが続く。
【0138】
iv)保全処置。
【0139】
臨床的治癒が診断された後でも、処置は維持されるが、第2治療処置の手術の所定動作の他の特徴を尊重しながら、2つの診断間の間隔は、2から3週間に変化する。
【0140】
2ヵ月後に、再発を確認せず、むしろ癒着の強化を確認するなら、最終段階、監視に移る。
【0141】
再発が存在すると、臨床条件に応じて、攻撃処置のレベルか、第1又は第2治療段階のレベルで処置を繰り返す。
【0142】
v)監視。
【0143】
6週間毎に診察を決める。場合により起こり得る再発の調査を伴う入念な検査が行われる。
【0144】
−再発がないとき、歯根表面の細心な表面仕上げが続く、中位に汚れた、又は清潔な角質化した粘膜用の溶液による全ての間隙空間の洗浄を行う。
【0145】
−再発が存在すると、臨床条件に応じて、攻撃処置のレベルか、治療段階のレベルで処置を繰り返す。
【0146】
この特殊な応用において、本発明は、使用される充填医用材料が、本発明の組成物及び/又はこれらの成分の1つに結合する骨充填物による外科的歯周処置も検討する。
【産業上の利用可能性】
【0147】
このようにして、本発明の組成物は、消毒、抗炎症、免疫調節及び歯周組織(歯槽骨、歯槽歯靭帯及び歯茎)上の癒着増進作用により、歯周ポケットを除去する目的で、この歯周ポケットの底部の洗浄に使用されるために、注目に値する。
【0148】
(参考文献)







【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1つの次亜塩素酸アルカリ金属塩、及び(ii)少なくとも1つのタウリンN−ハロアミンを含む薬剤組成物。
【請求項2】
タウリンN−ハロアミンのハロゲンは、フッ素、ヨウ素、臭素及び塩素からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項3】
次亜塩素酸アルカリ金属塩は、次亜塩素酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤組成物。
【請求項4】
タウリンN−ハロアミンは、タウリンN−クロラミンであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
【請求項5】
前記組成物の次亜塩素酸ナトリウムの滴定量は、活性塩素の1モル/リットル〜1ピコモル/リットルであることを特徴とする請求項3又は4に記載の薬剤組成物。
【請求項6】
前記組成物のタウリンN−クロラミンの滴定量は、5モル/リットル〜0.01フェムトモル/リットルであることを特徴とする請求項4又は5に記載の薬剤組成物。
【請求項7】
次亜塩素酸アルカリ金属塩及びタウリンN−ハロアミンは、賦形剤で組成物中に結合されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
【請求項8】
賦形剤は、精製水であることを特徴とする請求項7に記載の薬剤組成物。
【請求項9】
次亜塩素酸アルカリ金属塩及びタウリンN−ハロアミンと薬剤上適合でき、剤の付加によって、表面活性、酸化、嗅覚又は味覚特性、安定性、pH、pKa、密度、溶解度、粘度、色調及び水−エクタノール分配係数からなる群から選択される組成物の物理化学特性を変更することを可能にする剤を更に含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
【請求項10】
(i)少なくとも1つの次亜塩素酸アルカリ金属塩、及び
(ii)少なくとも1つのタウリンN−ハロアミン、及び場合により、少なくとも1つの賦形剤を混合することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の薬剤組成物の調製法。
【請求項11】
賦形剤は、精製水であることを特徴とする請求項10に記載の薬剤組成物の調製法。
【請求項12】
タウリンN−ハロアミンのハロゲンは、フッ素、ヨウ素、臭素及び塩素からなる群から選択されることを特徴とする請求項10又は11に記載の薬剤組成物の調製法。
【請求項13】
タウリンN−ハロアミンは、タウリンN−クロラミンであることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の薬剤組成物の調製法。
【請求項14】
次亜塩素酸アルカリ金属塩は、次亜塩素酸ナトリウムであることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の薬剤組成物の調製法。
【請求項15】
次亜塩素酸ナトリウムの滴定量は、6モル/リットル〜1000.01フェムトモル/リットルであることを特徴とする請求項14に記載の薬剤組成物の調製法。
【請求項16】
タウリンN−クロラミンの滴定量は、5モル/リットル〜0.01フェムトモル/リットルであることを特徴とする請求項13から15のいずれか1項に記載の薬剤組成物の調製法。
【請求項17】
ヒト又は動物において、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、菌性感染および非通常型伝染剤(ATNC)による感染からなる群から選択される1種またはそれ以上の感染症の処置用又は予防用の医薬品を調製するための、(i)少なくとも1つの次亜塩素酸アルカリ金属塩、及び(ii)少なくとも1つのタウリンN−ハロアミンを含む混合物の使用。
【請求項18】
ヒト又は動物において、慢性、進行性及び急性炎症からなる群から選択される1種またはそれ以上の炎症の処置用の医薬品を調製するための、(i)少なくとも1つの次亜塩素酸アルカリ金属塩、及び(ii)少なくとも1つのタウリンN−ハロアミンを含む混合物の使用。
【請求項19】
ヒト又は動物において、免疫調節処置用の医薬品を調製するための、(i)少なくとも1つの次亜塩素酸アルカリ金属塩、及び(ii)少なくとも1つのタウリンN−ハロアミンを含む混合物の使用。
【請求項20】
ヒト又は動物において、組織癒着の増進用の医薬品を調製するための、(i)少なくとも1つの次亜塩素酸アルカリ金属塩、及び(ii)少なくとも1つのタウリンN−ハロアミンを含む混合物の使用。
【請求項21】
ヒト又は動物において、外科手術前、外科手術中、又は外科手術後のすすぎ用の医薬品を調製するための、(i)少なくとも1つの次亜塩素酸アルカリ金属塩、及び(ii)少なくとも1つのタウリンN−ハロアミンを含む混合物の使用。
【請求項22】
前記医薬品は、歯周炎に関連した病変及び感染の局部治療に有用であることを特徴とする請求項17から21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記医薬品は、ヘルペスウイルス科のウイルスに関連した病変及び感染の局部治療に有用であることを特徴とする請求項17から21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
次亜塩素酸アルカリ金属塩は、次亜塩素酸ナトリウムであり、タウリンN−ハロアミンは、タウリンN−クロラミンであることを特徴とする請求項17から23のいずれか1項に記載の使用。

【公開番号】特開2010−174050(P2010−174050A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117839(P2010−117839)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【分割の表示】特願2002−559026(P2002−559026)の分割
【原出願日】平成14年1月16日(2002.1.16)
【出願人】(503257860)
【氏名又は名称原語表記】MAINNEMARE,Arnaud
【住所又は居所原語表記】4 rue de la Croix La Rose,F−76460 Neville,France
【Fターム(参考)】