説明

ハロゲン化脂肪族カルボン酸、そのオリゴマーおよび/またはポリマー、ならびに、表面的および内部の新生物を失活化することにおけるそれらの使用

新生物組織を失活化する効果を示すハロゲン化脂肪族カルボン酸、その塩および/またはオリゴマーまたはポリマーが開示される。また、新生物組織と関連する医学的状態の処置のためのこれらの化合物を利用する方法及び使用が開示される。さらに、悪性新生物細胞を除くための外科的手順中に悪性新生物細胞の血管内、リンパ管内及び局所的播種を軽減するかなくし、それにより再発及び転移を防止するか及び/又は潜在的に悪性、前悪性及び/又は悪性の細胞への免疫応答を誘導するための方法及びこれらの化合物の使用が開示される。さらに、ハロゲン化脂肪族カルボン酸の新規のオリゴマー形態、これを含む医薬組成物、及びその使用が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、病理学的な過形成組織、化生組織、異形成組織および新形成(オンコプラシア)組織、例えば、皮膚および可視性の粘膜の腫瘍および病変ならびに内部の新生物などに関連する障害を処置するための化合物、組成物および方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
新形成は、細胞の異常な増殖(例えば、悪性新形成など)を記述する一般的な用語である。この異常な増殖は多くの障害(例えば、ウイルス感染またはガン形成など)の結果であるかもしれず、通常、しこりまたは腫瘍の原因となる。新生物組織が、ウイルス性、良性、前悪性または悪性であるとして特徴づけられ得る。
【0003】
細胞増殖が、成長を促進させるガン原遺伝子と、成長を阻止する腫瘍抑制遺伝子との間のバランスによって調節される。腫瘍形成が、細胞シグナルの解釈(例えば、ガン原遺伝子活性の増強または腫瘍抑制の不活性化など)を左右するそのような細胞要素の変異を生じさせるゲノムの遺伝子変化によって引き起こされ得る。これらのシグナルの解釈は最終的には細胞の成長および分化に影響すると考えられており、また、これらのシグナルの誤った解釈が新生物成長(新形成)を生じさせ得ると考えられている。
【0004】
新形成を処置する現在の方法には、手術、レーザー手術、光線力学的治療、寒冷療法、化学療法および放射線が含まれる。化学療法は、抗腫瘍活性を有する化合物(例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤および抗腫瘍抗生物質など)の投与を伴う。化学療法の効力は多くの場合、悪心および嘔吐、骨髄抑制、腎損傷および中枢神経系抑制を含めて、重篤な副作用によって制限される。
【0005】
放射線治療(放射線療法)は、正常な細胞は、新生物細胞とは対照的に、放射線による処置の後で自身を修復する能力がより大きいことに依拠する。しかしながら、放射線療法は、腫瘍を取り囲む組織の起こり得る感受性によって、また、さらには、放射線に対する抵抗性の発達によって制限される。
【0006】
手術は、疾患組織(例えば、新生物組織)の全体的除去を伴う。腫瘍成長が認められるときには、手術による腫瘍塊の切除が最上の治療と見なされる。しかしながら、手術操作の期間中には、悪性腫瘍細胞の血管内およびリンパ管内への播種が生じることがあり、この結果、不良な予後をもたらす他の身体場所への転移および術後の再発が生じる。
【0007】
皮膚は、身体の外側全体を覆う身体の最大器官であり、表皮層、真皮層および皮下層を含む。皮膚の数多くの障害が知られており、それらは、不快または心理学的ストレスを単に引き起こすにすぎない障害(例えば、発疹など)から、良性またはガン性の皮膚病変を経て、命を脅かす状態(例えば、皮膚ガンなど)にまで及ぶ。
【0008】
世界の高齢化人口における増大とともに、皮膚の新形成によって特徴づけられる皮膚障害、例えば、皮膚が紫外ベータ線ならびに様々な化粧品およびスキンケア製品における化学物質に広範囲にさらされることによって多くの場合には引き起こされる皮膚病変および皮膚ガンなどの発生が付随して増大している。数タイプの皮膚ガンが存在しており、最も一般的なものが基底細胞ガンおよび扁平上皮ガンであり、これらはともに非黒色腫型の皮膚ガンである。
【0009】
基底細胞ガンが、表皮の最下層における細胞の異常な成長から発達する。扁平上皮ガンは、表皮の中間層に見出される扁平上皮細胞における変化を伴う。メラノサイトにおいて生じる悪性メラノーマは、扁平上皮ガンまたは基底細胞ガンよりも一般的ではないが、危険性がはるかに大きい。メラノーマは、皮膚悪性疾患による死亡の第1位の原因である。
【0010】
光線性角化症は、時には扁平上皮ガンに発達する皮膚状態である。光線性角化症(これはまた日光角化症として知られている)は、通常の場合には日光暴露によって引き起こされる前ガン性の皮膚成長である。これらの病変についての最も一般的な部位が、顔、耳、頭皮、首、前腕および手である。日射性口唇炎が、唇に発生し、唇を乾燥させ、ひび割れさせ、うろこ状にし、青白くまたは白くする形態の唇粘膜の光線性角化症である。
【0011】
白斑症(これは別の前駆体状態を表す)が、扁平上皮ガンに発達する可能性を有する舌の表面または口の内側の白い斑点によって現れる。
【0012】
良性(非ガン性)の皮膚腫瘍が出生時に存在することがある(遺伝的であるかもしれない)か、または、その後に発達することがある。いくつかの良性皮膚腫瘍がウイルスによって引き起こされ(例えば、いぼ)、全身性疾患によって引き起こされ(例えば、血液中の過剰なコレステロールおよび脂肪によって引き起こされる黄色板症または黄色腫)、また、環境的要因によって引き起こされる(例えば、日光によって刺激されるほくろ(母斑)および表皮嚢胞)ことが知られている。良性皮膚腫瘍の他の例が、皮膚線維腫;血管腫(例えば、血管腫、ポートワイン母斑、リンパ管腫および化膿性肉芽腫など);脂漏性角化症;および先端線維性軟ゆうまたは懸垂線維腫である。
【0013】
角化棘細胞腫は、高齢者において日光にさらされた皮膚に主に発生する急速に成長する病変である。角化棘細胞腫は通常は孤立性であるが、多数の病変が存在する場合がある。考えられる原因作用因には、紫外光、ヒト乳頭腫ウイルス、および、コールタール誘導体との長期に及ぶ接触が含まれる。
【0014】
良性、前悪性および悪性の皮膚腫瘍において使用される標準的治療が、正確な組織学的サブタイプ、腫瘍サイズ、成長特徴および解剖学的場所を含めて、多くの要因によって決定される。処置はまた、受けた以前の処置、現在の医学的問題および患者の見込みによって決定される。
【0015】
処置選択肢が、外科的および非外科的として分類されるかもしれない。外科的処置には、レーザーまたは電気乾燥および掻爬、病変の単純な局所的切除または広範囲に及ぶ局所的切除、あるいは、モース顕微鏡手術が含まれる。非外科的処置には、放射線治療、光線力学的治療、寒冷療法および局所的薬物治療が含まれる。
【0016】
良性、前悪性および悪性の皮膚腫瘍の外科的処置は、すべての患者において適用可能でないかもしれない。(非外科的手順と比較されるような)外科的技術の攻撃性は、場合により、骨を巻き込むことに起因する重度の外観損傷、視力喪失(腫瘍が目の近くに位置する場合)、および、死亡さえも引き起こすことがある。
【0017】
外科的処置は、目の近くまたは鼻領域に位置する皮膚腫瘍を処置する際には、多数の腫瘍および再発を患う患者を処置する際と同様、特に問題となる。
【0018】
そのうえ、外科的処置には、ブリーチング(bleaching)、感染、潰瘍化、痛み、アレルギー性反応およびエグゼマチック(exematic)反応、治癒問題、同様にまた、肥厚性、ケロイド状および有痛性の瘢痕などの合併症が伴う。そのような合併症は多くの場合、さらなる薬物(例えば、ステロイド(局所的または全身的のどちらか)、抗生物質、防腐剤、抗凝固剤および種々の種類の組織誘導クリームまたは組織誘導薬物など)、同様にまた、密封する親水性包帯および積層物(シリコーン/ナイロンメッシュ、コラーゲン、フィブリンなど)を施すことを必要とする。
【0019】
皮膚および粘膜に関連したガンを処置するために外科的手順を使用するときの大きな問題の1つが、ガン細胞の術中播種、および、そのガン細胞の血管内またはリンパ管内へのその後の貫入である。ガン細胞が手術期間中に患者の血液循環およびリンパ循環の中に散らばることは、非常に不良な予後を伴う術後の腫瘍再発および遠隔転移を発達させる要因の1つである。
【0020】
外科的処置に対する代替が、細胞のDNAを損傷することによって働く放射線治療である。この治療は費用がかかり、また、数週間にわたる頻繁な通院を必要とするので、多くの場合、支援システムが限られる高齢患者のための選択肢ではない。長期間の美容結果が不良であることがあり、また、組織壊死、軟骨炎および骨放射線壊死の合併症が生じることがある。別の欠点が、その後で生じるかもしれない放射線誘導の悪性成長の危険性であり、したがって、放射線は一般に、50歳よりも若い患者における一次処置としては勧められない。
【0021】
光線力学的治療は、光反応性化学物質の局所的投与と、この化学物質を活性化するために十分に強い光による照射とを行い、これにより、化学物質がフリーラジカルを放出し、病原性細胞を破壊することを生じさせることを伴う。この治療は現在、その大きいコストによって、また、数週間続く持続性の皮膚の光線過敏によって制限される。
【0022】
寒冷療法は、異常な組織または患部組織を破壊するために極めて低い低温を適用することである。いぼ、ほくろ、懸垂線維腫、日光角化症および小さい皮膚ガンが、冷凍外科的処置のための候補である。欠点が、周縁抑制がないこと、組織壊死、腫瘍の過剰処置または不十分な処置、および、長い回復期間である。
【0023】
局所的薬物治療は、表在性基底細胞腫および光線性角化症によってのみ、表皮に限定される病変に限定される。局所レチノイドとの併用で使用される5%の5−フルオロウラシル(5−FU)クリーム(Efudex(登録商標)、Valeant Pharmaceuticals)は治療効果を深くし、また、付属器レベルで存続する疾患の危険性を最小限に抑えることができるが、処置は多くの副作用を伴う。
【0024】
イミキモドクリームの5%調製物(Aldara(商標)、3M Pharmaceuticals)(抗ウイルス剤であり、また、インターフェロン誘導剤として)もまた、これが6週間塗布された場合、表在性の基底細胞ガンを症例の80%超において根絶することが示されているが、イミキモドの使用は、そのコスト、薬物禁忌および副作用によって制限されることがある。5−FUの注射剤(Adrucil(登録商標)、Teva Parenteral Medicines,Inc.)またはメトトレキサートの注射剤(Rheumatrex(登録商標)、DAVA Pharmaceuticals)は主に、その臨床的特徴および組織学が角化棘細胞腫と一致する病変に限定される。インターフェロン(Roferon−A(登録商標)、Roche Pharmaceuticals)の病巣内投与が、基底細胞ガンを処置するためにこれまで効果的であるが、この治療様式は数週間にわたる多数回の注射を必要とし、費用がかかり、インフルエンザ様症状を伴う。
【0025】
Solcoderm(登録商標)(これはS.Mardiによって発明された)は、有機酸および無機酸を銅イオンの存在下で含有する水溶液である。この溶液は、病変を組織のミイラ化によって破壊する。これは、日光角化症、ゆうぜい、尖圭コンジローム、血管腫および乳頭腫を含めて、様々な良性皮膚病変の処置のために使用されている。良性皮膚病変におけるSolcodermの使用は、通常の場合には良好な美容結果を与える。Solcodermはまた、基底細胞ガンおよび扁平上皮ガンを含めて、悪性病変の処置においても使用されている。
【0026】
良性、前悪性および悪性の皮膚腫瘍の局所的薬物処置がまた、例えば、米国特許出願第11/275258号、同第11/924354号、同第11/506469号、同第10/530723号、同第10/310824号および同第10/071124号に開示されている。
【0027】
Mardi他は、良性、ウイルス性、前悪性および悪性の転移しない色素沈着性および色素非沈着性の皮膚および可視性の膜性粘膜の病変および腫瘍を処置するための、ハロゲン化および重合されたカルボン酸錯体水和物のセレン化合物を記載する[2001、International journal of Immunorehabilitation、3:23〜31]。
【0028】
2,2−ジクロロプロパン酸(CH−CCl−C(=O)OH;DPA;Dalaphon;CAS番号75−99−0)は、水の消毒剤として広く使用される化学物質であり、有機塩化物系除草剤として、同様にまた、特定の一年草および多年草を駆除するために使用される植物成長調節剤としてもまた使用される。DPAの主要な食用作物使用がサトウキビおよびテンサイに対してである。これはまた、様々な果実、ジャガイモ、ニンジン、アスパラガス、アルファルファおよびアマに対して、同様にまた、森林、家庭園芸において、また、アシおよびスゲの成長を抑制するために水辺または水辺近くで使用される。
【0029】
下記の技術は、除草剤および水の消毒剤としてのDPAの現在知られている活性および使用の一部を記載する;Appl Environ Microbiol.、2003、69(8):4375〜82;Environ Microbiol.、2003、5(1):48〜54;Chem Res Toxicol.、1998、11(11):1332〜8;Bull Environ Contam Toxicol.、1990、45(3):343〜9;Radiat Res.、1973、54(3):388〜97;J Agric Food Chem.、1971、19(1):189〜91;Can J Microbiol.、1964、10:843〜52;Appl Microbiol.、1962、10:206〜10;Plant Physiol.、1961、36(5):698〜709;Plant Physiol.、1961、36(5):688〜97;Can J Microbiol.、1959、5(3):255〜60;およびScience、1954、120(3113):346〜347。
【0030】
DPAは、そのナトリウム塩または混合ナトリウム・マグネシウム塩として市販されている。その純粋な酸形態において、DPAは、不快臭を有する無色の液体である。ナトリウム・マグネシウム塩として、DPAは白色〜灰白色の粉末である。
【0031】
DPAは分子量が142.97グラム/molであり、沸点が185℃〜190℃であり、融点が20℃であり、比重が1.40であり(水=1)、水における溶解度が25℃で90g/100mlであり、オクタノール/水の分配係数が0.76である。
【0032】
ヒト血液におけるDPAの半減期が1.5日〜3日である。DPAおよびその知られている骨格製造物のすべてが容易に水に溶解する。それらは細胞および組織から容易に洗い落とされる。DPAは有機溶媒および脂質に不溶性であるので、動物組織に蓄積しない。DPAの非代謝型形態が、この除草剤を含む飼料が与えられた動物の尿に排出された。摂取量の1%未満が、DPAを含む飼料が与えられた乳牛の乳汁における残留物として現れた。DPAの安全性プロフィルは非常に良好であり、催奇的、分裂促進的または何らかの他の著しい全身的な有害影響が認められたことは何ら報告されていない。
【0033】
EppleおよびKirschnick、Leibigs Annalen、1997、第1号、81頁〜85頁は、クロロカルボン酸のナトリウム塩(例えば、2−クロロプロピオン酸ナトリウム、3−クロロプロピオン酸ナトリウムおよび2−クロロ酪酸ナトリウムなど)におけるオリゴマー化および重合を教示する。
【発明の概要】
【0034】
本発明者らは驚くべきことに、ハロゲン化脂肪族酸(例えば、ジクロロプロピオン酸(DPA)など)が、その塩、錯体およびオリゴマーを含めて、新生物組織に関連する医学的状態(例えば、皮膚および粘膜の病変および腫瘍など)の処置における治療的に強力な薬剤であることを発見している。そのようなハロゲン化脂肪族酸はさらに、内部の新生物(例えば、固形悪性腫瘍など)の処置のために体内使用することができる。
【0035】
本発明者らはさらに、DPAのオリゴマー、具体的にはテトラマーが、悪性細胞を含めて、すべてのタイプの新生物細胞の失活化において非常に効率的であることを発見しており、このことは、悪性細胞の血管内およびリンパ管内への播種を減らし、それどころか、悪性細胞の血管内およびリンパ管内への播種をなくし、したがって、致死的であり得る遠隔転移を回避しながら、新生物組織を除くための外科的手順を、DPA処置に続いて、DPA処置の前に、または、DPA処置と同時に行うことを可能する特徴である。
【0036】
本発明者らはさらに、DPAが、その塩およびオリゴマーを含めて、全身性免疫を誘導することができ、したがって、例えば、悪性細胞の出現または再出現を減らし、または妨げることにおいて、これらが生じる可能性がある場合には効率的に利用できることを発見している。
【0037】
本発明者らはさらに、ダイマー、テトラマーおよびより長いオリゴマーを含めて、DPAの新規なオリゴマーおよびポリマーを設計し、それらを首尾よく調製し、実施している。
【0038】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、新生物組織に関連する医学的状態をその必要性のある対象において処置する方法であって、下記の一般式I:

を有する化合物、その医薬的に許容される塩または錯体、あるいは、そのオリゴマーの失活化有効量を前記対象に投与することを含む方法が提供され、
但し、上記式において、
YはOまたはSである;
Zはヒドロキシまたはチオールである;
Aは、1個〜20個の炭素原子をその骨格鎖に有する、分岐または非分岐の、置換または非置換の飽和した脂肪族炭化水素鎖または不飽和な脂肪族炭化水素鎖である;
Xは前記脂肪族炭化水素鎖のハロゲン置換基である;かつ
nは1〜10の整数であり、ハロゲン置換基の数を表す。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記方法はさらに、前記新生物組織の少なくとも一部を外科的に除くことを含む。
【0040】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、新生物組織に関連する医学的状態を処置するための医薬品の製造における本明細書中に記載される化合物の使用が提供される。
【0041】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、新生物組織に関連する医学的状態を処置することにおいて使用される本明細書中に記載される化合物が提供される。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、YはOである。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Zはヒドロキシである。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、nは1〜4の整数である。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Aは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘプタデシル、オクタデシルおよびノナデシルからなる群から選択される。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Aは、メチル、エチルおよびプロピルからなる群から選択される。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記化合物は、少なくとも1つのハロゲン原子によってそれぞれが独立して置換されるエタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸およびオクタデカン酸からなる群から選択される。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記化合物は、少なくとも1つのハロゲン原子によってそれぞれが独立して置換されるエタン酸、プロパン酸およびブタン酸からなる群から選択される。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記化合物は2つのハロゲン置換基を含む。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記ハロゲン原子のそれぞれが独立して、クロロおよびフルオロからなる群から選択される。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記ハロゲン原子のそれぞれがクロロである。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Xは、上記炭化水素鎖におけるC(=Y)Z成分から炭素原子0個〜2個離れた位置にある炭素原子の置換基である。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Xは、上記炭化水素鎖におけるC(=Y)Z成分に隣接する炭素原子の置換基である。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Aはエチルである。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Xはクロロであり、かつ、nは2である。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記化合物は2,2−ジクロロプロパン酸である。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記化合物はそのオリゴマーの形態である。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記オリゴマーは、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、ヘプタマー、オクタマー、ノナマーおよびデカマーからなる群から選択される。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記オリゴマーは、そのサイズが、上記新生物組織における細胞間空間と選択的に一致し、かつ、上記新生物組織に近接した正常な組織とは一致しないように選択される。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記オリゴマーはテトラマーである。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記オリゴマーは、下記の化合物からなる群から選択される:

【0062】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記化合物は、医薬的に許容される塩または当該塩の錯体の形態である。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医薬的に許容される塩またはその錯体は、セレン塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、銅塩および鉄塩からなる群から選択される。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記化合物は、医薬的に許容されるキャリアをさらに含む医薬組成物の一部を形成する。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記組成物における上記化合物の濃度が上記組成物の総重量の20重量パーセント〜100重量パーセントである。本発明のいくつかの実施形態によれば、上記組成物における上記化合物の濃度が上記組成物の総重量の70重量パーセント〜90重量パーセントである。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記化合物の失活化有効量が1cmの新生物組織直径あたり上記組成物の0.001ml〜5mlである。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記新生物組織は、ウイルス性組織、良性組織、前悪性組織および悪性組織からなる群から選択される。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記方法はさらに、上記新生物組織の少なくとも一部を外科的に除くことを含む。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記方法はさらに、上記化合物を投与した後、上記新生物組織を組織学的に評価することを含む。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医薬品は、上記新生物組織の少なくとも一部を外科的に除くこととの組合せで使用されるためのものである。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医薬品は、上記新生物組織を外科的に除く前に、または、上記新生物組織を外科的に除くのと同時に、または、上記新生物組織を外科的に除いた後で投与される。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医薬品は、上記化合物を投与した後、上記新生物組織を組織学的に評価することが行われ得るようにするものである。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記化合物は、上記新生物組織の少なくとも一部を外科的に除くこととの組合せで使用されるためのものである。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記化合物は、上記新生物組織を外科的に除く前に、または、上記新生物組織を外科的に除くのと同時に、または、上記新生物組織を外科的に除いた後で投与される。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記化合物は、上記化合物を投与した後、上記新生物組織を組織学的に評価することが行われ得るようにするものである。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医学的状態は悪性新生物組織に関連し、かつ、上記方法は、悪性細胞の血管内またはリンパ管内への播種を軽減するか、またはなくすためのものである。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医学的状態は悪性新生物組織に関連し、かつ、上記医薬品は、悪性細胞の血管内またはリンパ管内への播種を軽減するか、またはなくすためのものである。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医学的状態は悪性新生物組織に関連し、かつ、上記化合物は、悪性細胞の血管内またはリンパ管内への播種を軽減するか、またはなくすためのものである。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記悪性細胞の上記播種が外科的手順に関連する。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記新生物組織は皮膚組織または粘膜組織である。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医学的状態は、脂漏性角化症、表皮母斑、線状表皮母斑(片側性)、ヤーダッソーン脂腺母斑、真皮内母斑、有毛母斑、懸垂線維腫および先端線維性軟ゆう、表皮封入体嚢胞、脂腺過形成、多発性汗管腫、透明細胞棘細胞腫、複合母斑、暈状母斑、紡錘細胞母斑(スピッツ母斑)(上皮様)、巨大有毛性母斑、青色母斑、太田母斑、皮膚線維腫、血管線維腫、多発性サクランボ血管腫、化膿性肉芽腫、被角血管腫、リンパ管腫、境界母斑、クモ状母斑(クモ状血管拡張症)、レックリングハウゼン病、神経線維腫症、ステロイド型角質増殖症および乳頭腫症、血管性母斑、脱色素性母斑、火炎状母斑(ポートワイン母斑)、黄色板症、尋常性ゆうぜい、扁平ゆうぜい、尖圭コンジローム、伝染性軟属腫、光線性角化症、皮角、ボーエン病、単純黒子および老人性黒子、悪性黒子、角化棘細胞腫、毛包上皮腫、多発性形成異常母斑、工廠(Arsenal)角化症、ジュビネル(Juvinel)偽黒色腫、表在性基底細胞ガン、基底細胞ガン、結節性基底細胞ガン、基底細胞色素性母斑症候群−基底細胞腫、扁平上皮ガン、メルケル小柱細胞ガン、基底細胞ガンを伴うヤーダッソーン脂腺母斑、表皮性およびステージ1aの表在性拡大型黒色腫、表皮性およびステージ1aの結節性悪性黒色腫、カポジ出血性肉腫(初期の斑状病変、AIDS非関連)、口部の可視性病変、悪性黒子型黒色腫、乳頭腫、線維上皮腫、血管腫および過形成病変または肥厚性病変、神経線維腫症−1(レックリングハウゼン病)、神経線維腫症−2、エロシオネン(Erosionen)(異所性)、ポリープ、ポストヒステレクトミー(Posthysterectomie)、肉芽腫、子宮頸内膜炎、子宮頸のウイルス性いぼ(例えば、伝染性軟属腫および尖形コンジロームなど)、ナボット嚢胞、鼻出血(頸部の侵食から生じる接触出血)からなる群から選択される。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医学的状態は多数の皮膚病変および/または粘膜病変によって特徴づけられる。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医学的状態は末梢神経線維腫症(レックリングハウゼン病)である。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医学的状態は照射(例えば、日光照射および/または光照射)によって引き起こされる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記投与することは局所的に行われる。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医薬品は局所投与のために配合される。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記新生物組織は内部組織である。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医学的状態は、聴神経腫、腺ガン、血管肉腫、星状細胞腫、胆管ガン、膀胱ガン、甲状腺ガン、気管ガン、骨起源の腫瘍(例えば、骨肉腫など)、脳腫瘍(例えば、神経膠腫および神経芽細胞腫など)、乳ガン、子宮頸ガン、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛ガン、結腸ガン、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺ガン、胚性ガン腫、内皮肉腫、脳室上衣細胞腫、上皮ガン、食道ガン、ユーイング腫瘍、線維肉腫、血管芽細胞腫、肝ガン、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、肺ガン(例えば、気管支原性ガン、小細胞肺ガンなど)、リンパ管内皮肉腫、リンパ管肉腫、髄様ガン、髄芽細胞腫、中皮腫、粘液肉腫、膵臓ガン、乏突起膠腫、骨原性肉腫、卵巣ガン、膵臓ガン腫、乳頭状ガン、乳頭状腺ガン、松果体腫、前立腺ガン、直腸ガン、腎臓ガン(例えば、腎細胞ガンおよびウィルムス腫瘍など)、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、皮脂腺ガン、セミノーマ、胃ガン、滑膜腫、汗腺ガン、精巣腫瘍、子宮ガンおよびそれぞれの原発性ガンの転移疾患からなる群から選択される。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記化合物の上記投与することは、上記新生物組織を上記化合物と接触させることによって行われる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記投与することは体内に行われる
【0091】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記投与することは、局所的、定位的または血管内に行われる。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医薬品は体内投与のために配合される。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記投与は、局所的、定位的または血管内に行われる。
【0094】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、悪性新生物組織に関連する医学的状態を有し、当該悪性新生物組織の少なくとも一部を除くための外科的手順を受ける対象の血管内および/またはリンパ管内への悪性細胞の播種を軽減するか、またはなくす方法であって、本明細書中に記載される化合物の失活化有効量を外科的手順の前または外科的手順と同時に対象に投与することを含む方法が提供される。
【0095】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、悪性新生物組織に関連する医学的状態を有し、当該悪性新生物組織の少なくとも一部を除くための外科的手順を受ける対象の血管内および/またはリンパ管内への悪性細胞の播種を軽減するか、またはなくすための医薬品の製造における本明細書中に記載される化合物の使用が提供される。
【0096】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、悪性新生物組織に関連する医学的状態を有し、当該悪性新生物組織の少なくとも一部を除くための外科的手順を受ける対象の血管内および/またはリンパ管内への悪性細胞の播種を軽減するか、またはなくすために特定される本明細書中に記載される化合物が提供される。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記化合物の上記失活化有効量は1cmの新生物組織直径あたり上記組成物の0.001ml〜5mlである。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記新生物組織は皮膚組織または粘膜組織である。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医学的状態は、転移する悪性の皮膚腫瘍または粘膜腫瘍である。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医学的状態は、表在性基底細胞ガン、基底細胞ガン、結節性基底細胞ガン、基底細胞色素性母斑症候群−基底細胞腫、扁平上皮ガン、メルケル小柱細胞ガン、基底細胞ガンを伴うヤーダッソーン脂腺母斑、表皮内およびステージ1aの表在性拡大型黒色腫、表皮内およびステージ1aの結節性悪性黒色腫、カポジ出血性肉腫(初期の斑状病変、AIDS非関連)、ならびに、悪性黒子型黒色腫からなる群から選択される。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医学的状態は多数の皮膚病変および/または粘膜病変によって特徴づけられる。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医学的状態は照射(例えば、日光照射および/または光照射)によって引き起こされる。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記投与することは局所的に行われる。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医薬品は局所投与のために配合される。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記新生物組織は内部組織である。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記化合物の上記投与することは、上記新生物組織を上記化合物と接触させることによって行われる。
【0107】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記投与することは体内に行われる。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記投与することは、局所的、定位的および/または血管内に行われる。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記投与することは外科的手順の期間中に行われる。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医薬品は体内投与のために配合される。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医学的状態は、聴神経腫、腺ガン、血管肉腫、星状細胞腫、胆管ガン、膀胱ガン、甲状腺ガン、気管ガン、骨起源の腫瘍(例えば、骨肉腫など)、脳腫瘍(例えば、神経膠腫および神経芽細胞腫など)、乳ガン、子宮頸ガン、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛ガン、結腸ガン、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺ガン、胚性ガン腫、内皮肉腫、脳室上衣細胞腫、上皮ガン、食道ガン、ユーイング腫瘍、線維肉腫、血管芽細胞腫、肝ガン、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、肺ガン(例えば、気管支原性ガン、小細胞肺ガンなど)、リンパ管内皮肉腫、リンパ管肉腫、髄様ガン、髄芽細胞腫、中皮腫、粘液肉腫、膵臓ガン、乏突起膠腫、骨原性肉腫、卵巣ガン、膵臓ガン腫、乳頭状ガン、乳頭状腺ガン、松果体腫、前立腺ガン、直腸ガン、腎臓ガン(例えば、腎細胞ガンおよびウィルムス腫瘍など)、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、皮脂腺ガン、セミノーマ、胃ガン、滑膜腫、汗腺ガン、精巣腫瘍、子宮ガンまたはそれぞれの原発性ガンの転移疾患からなる群から選択される。
【0112】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、前悪性細胞および/または潜在的悪性細胞に対する全身性免疫応答を誘導する方法であって、本明細書中に記載される化合物の治療効果的な量をその必要性のある対象に投与することを含む方法が提供される。
【0113】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、前悪性細胞および/または潜在的悪性細胞に対する全身性免疫応答を誘導するための医薬品の製造における本明細書中に記載される化合物の使用が提供される。
【0114】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、悪性新生物組織に関連する医学的状態を有し、当該悪性新生物組織の少なくとも一部を除くための外科的手順を受ける対象の血管内および/またはリンパ管内への悪性細胞の播種を軽減するか、またはなくすための本明細書中に記載される化合物が提供される。
【0115】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、悪性細胞に対する全身性免疫応答を誘導する方法であって、本明細書中に記載される化合物の治療効果的な量をその必要性のある対象に投与することを含む方法が提供される。
【0116】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、悪性細胞に対する全身性免疫応答を誘導するための医薬品の製造における本明細書中に記載される化合物の使用が提供される。
【0117】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、悪性細胞に対する全身性免疫応答を誘導するための本明細書中に記載される化合物が提供される。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記投与することは局所的に行われる。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記投与することは体内に行われる。
【0120】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医薬品は局所投与のために配合される。
【0121】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医薬品は体内投与のために配合される。
【0122】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記全身性免疫応答は生来的免疫応答または後天的免疫応答である。
【0123】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記方法はさらに、少なくとも1つの免疫刺激剤を上記対象に投与することを含む。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記医薬品はさらに、少なくとも1つの免疫刺激剤を含む。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記化合物は、少なくとも1つの免疫刺激剤との組合せで使用されるためのものである。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記免疫刺激剤は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子である。
【0127】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、医薬品の製造における本明細書中に記載される化合物の使用が提供される。
【0128】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載される化合物を有効成分として含み、かつ、医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物が提供される。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記組成物は包装材に詰められ、かつ、新生物組織に関連する医学的状態の処置における使用のために当該包装材の内部または表面において印刷されて特定される。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記組成物は包装材に詰められ、かつ、悪性新生物組織に関連する医学的状態を有し、当該悪性新生物組織の少なくとも一部を除くための外科的手順を受ける対象の血管内および/またはリンパ管内への悪性細胞の播種を軽減するか、または妨げることにおける使用のために当該包装材の内部または表面において印刷されて特定される。
【0131】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載される一般式Iを有する化合物のオリゴマーが提供される。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記オリゴマーは、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、ヘプタマー、オクタマー、ノナマーおよびデカマーからなる群から選択される。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記オリゴマーはテトラマーである。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記オリゴマーは、下記の化合物からなる群から選択される:

【0135】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載されるオリゴマーを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物が提供される。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記組成物はさらに、少なくとも1つのセレン含有化合物を含む。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記セレン含有化合物は、セレンの塩、セレンの酸化物、セレンのハロゲン化物、セレンの酸またはそれらの組合せからなる群から選択される。
【0138】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載されるオリゴマーを調製する方法であって、本明細書中に記載される化合物を、そのモノマー形態で、水溶液の存在下、150℃〜250℃の間の温度で加熱し、それにより、当該オリゴマーを得ることを含む方法が提供される。
【0139】
本発明の実施形態の1つの局面によれば、上記水溶液の量が0重量パーセント〜50重量パーセントである。
【0140】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記加熱することは190℃の温度においてである。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記加熱することは、0時間〜12時間の期間にわたってである。
【0142】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記加熱することは、少なくとも2時間の期間にわたってである。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記加熱することは、少なくとも4時間の期間にわたってである。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記加熱することは、少なくとも6時間の期間にわたってである。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記プロセスはさらに、上記オリゴマーをさらなる薬剤と混合することを含む。
【0146】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0147】
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0148】
【図1A】図1Aは、髄膜腫を本発明の例示的な実施形態によるDPAオリゴマーにより処置している期間中に得られるデータを示す写真を示す。図1Aは、頭蓋底部髄膜腫の存在を示す、CTA 3D−MPRによって得られる画像を示す。
【図1B−1C】図1B−1Cは、髄膜腫を本発明の例示的な実施形態によるDPAオリゴマーにより処置している期間中に得られるデータを示す写真を示す。図1Bは、その除去をLTプテリオン開頭術によって行った1日後の腫瘍で、本発明の例示的な実施形態によるDPAオリゴマーを0.3重量%含有する溶液を腫瘍に注射した1分後の腫瘍の画像である。図1Cは、DPAオリゴマーを含有する溶液を腫瘍に注射した3分後の腫瘍の画像である。
【図1D】図1Dは、髄膜腫を本発明の例示的な実施形態によるDPAオリゴマーにより処置している期間中に得られるデータを示す写真を示す。図1Dは、本発明の例示的な実施形態によるDPAオリゴマーを含有する溶液による処置の後での、切除された髄膜腫において行われた失活化プロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0149】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、病理学的な過形成組織、化生組織、異形成組織および新形成(オンコプラシア)組織、例えば、皮膚および粘膜の腫瘍および病変ならびに内部の腫瘍などの新生物組織に関連する障害を処置するための化合物、組成物、その使用およびそれを利用する方法に関連する。
【0150】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部、または、実施例によって例示される細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは、様々な方法で実施、または、実行される。
【0151】
新形成は、細胞の異常な増殖として定義され、ほとんどの場合、しこりまたは腫瘍の原因である。新生物組織に関連する障害には、例えば、ウイルス感染症およびガンが含まれる。新形成を処置する現在の方法には、手術、化学療法および放射線が含まれる。これらの方法はどれもが最適ではなく、また、それぞれが、命を脅かす有害な影響および合併症、痛み、大きいコスト、同様にまた、化学療法および放射線の場合には、治療に対する抵抗性の発達などの欠点に悩まされる。
【0152】
ガン、例えば、皮膚および粘膜に関連するガンなどを処置するために外科的手順を使用するときの大きな問題の1つが、悪性細胞の血管内またはリンパ管内への術中播種である。悪性細胞が手術期間中に患者の循環に脱落することは術後の腫瘍転移の機構の1つであり、非常に不良な予後を伴う。
【0153】
本発明者らは驚くべきことに、ハロゲン化脂肪族酸(例えば、ジクロロプロピオン酸(DPA)など)が、その塩、オリゴマーおよび錯体を含めて、新生物組織に関連する医学的状態(例えば、皮膚および粘膜の病変および腫瘍など)の処置における治療的に強力な薬剤であることを発見している。
【0154】
2,2−ジクロロプロパン酸(CH−CCl−C(=O)OH;DPA;Dalaphon;CAS番号75−99−0)は、水の消毒剤として広く使用される化学物質であり、有機塩化物系除草剤として、また、特定の一年草および多年草を駆除するために使用される植物成長調節剤としてもまた使用される。DPAは、そのナトリウム塩または混合ナトリウム・マグネシウム塩として市販されている。
【0155】
ヒト血液におけるDPAの半減期が1.5日〜3日である。DPAおよびその知られている骨格製造物のすべてが容易に水に溶解する。それらは細胞および組織から容易に洗い落とされる。DPAは有機溶媒および脂質に不溶性であるので、動物組織に蓄積しない。DPAの安全性プロフィルは非常に良好であり、催奇的、分裂促進的または何らかの他の著しい全身的な有害影響が認められたことは何ら報告されていない。
【0156】
医学的障害の処置におけるDPAの使用はこれまで一度も報告されていない。
【0157】
下記の実施例の節において詳述されるように、本発明者らは今回、驚くべきことに、ハロゲン化脂肪族酸DPAおよびそのオリゴマーが、皮組織膚および粘膜組織の新形成状態を処置するための治療的に強力な薬剤であることを発見している。具体的には、様々な皮膚病状に罹患する6938名の患者が含まれた臨床研究において、良性新生物、ウイルス性新生物、前悪性新生物、非転移性悪性新生物および粘膜新生物へのDPAおよびDPAオリゴマーの局所投与により、これらの新生物の効果的な処置がもたらされ、非常に良好な臨床結果がこれら新生物の82.1%において認められ、満足すべきレベルの臨床結果がこられ新生物の99.1%において認められた(表10を参照のこと)。DPAおよびDPAオリゴマーによる処置の後の、2年〜8年の追跡調査期間の期間中における新生物再発のレベルが、良性腫瘍、ウイルス性腫瘍、前悪性腫瘍、非転移性悪性腫瘍および粘膜腫瘍についてそれぞれ、2.3%、6.1%、3.5%、2.8%および1.2%にすぎなかった(表11を参照のこと)。さらに、致死性事例だけでなく、皮膚腫瘍の局地的転移および遠隔転移の発生が全く認められなかった。これらの結果はさらに、DPAおよびDPAオリゴマーによる処置の大きい効力がすべての処置された皮膚腫瘍または皮膚病変において認められ、患者の腫瘍/病変のタイプ、年齢、皮膚の色または性別に依存しなかったことを示す。DPAの安全性に関しては、全身的毒性が処置患者のいずれにおいても何ら検出されず、短期間の局所的アレルギー反応、痛みおよびかゆみのみが、目に見える皮膚の色素沈着減少または色素沈着過度の受け入れられ得る発症、同様にまた、瘢痕形成およびケロイド形成を伴ったが、処置期間中に患者の5.8%において認められただけであった。
【0158】
さらなる研究ではまた、類似した治療パターンが示されている(下記の実施例の節における実施例2を参照のこと)。DPAまたはDPAオリゴマーによる処置、および、2年間の追跡調査期間のとき、2%未満の新生物再発が良性新生物および前悪性新生物について認められ、悪性新生物については新生物再発が全く認められなかった。
【0159】
インビボ動物研究では、DPAまたはDPAオリゴマーによる処置が処置動物の免疫学的応答に悪影響を及ぼさないことが示されている(実施例3を参照のこと)。
【0160】
さらなるインビボ研究では、乳ガンを有するマウスを腫瘍の外科的除去の期間中にDPAオリゴマーにより処置することにより、非処置コントロールと比較された場合、処置動物の低下した転移および高まった生存性がもたらされたことが示されている(実施例5を参照のこと)。
【0161】
髄膜腫に対して行われた研究では、外科的に取り出された腫瘍をDPAオリゴマーにより処置した場合、腫瘍の失活化がもたらされたことが示されている(実施例6および図1A〜Dを参照のこと)。
【0162】
したがって、実施されたハロゲン化脂肪族酸DPAおよびそのオリゴマー形態は実際に非毒性であり、強く限局化された作用を示し、また、生物内に吸収されず、全身的特性、催奇性、胎児毒性または発ガン性を全く有しないことが認められている。これらの化合物は、著しい副作用、または、使用のための禁忌のどちらも示さない。
【0163】
これらの結果はさらに、ハロゲン化脂肪族カルボン酸(例えば、DPAなど)およびそのオリゴマーの有益かつ大きい治療効力を、例えば、ウイルス性腫瘍、良性腫瘍、前悪性腫瘍および悪性腫瘍を含めて、新生物組織に関連する医学的状態の処置において明らかにする。
【0164】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、新生物組織に関連する医学的状態をその必要性のある対象において処置する方法が提供される。この方法は、これらの実施形態によれば、本明細書中に記載される化合物の失活化有効量をそのような対象に投与することによって行われる。
【0165】
表現「新生物組織」は、本明細書中で使用される場合、細胞の制御されない進行性増殖によって形成される組織で、正常な身体制御をもはや受けず、かつ、生理学的機能を全く果たさない本明細書中で定義されるような組織を記述する。新生物組織の成長は典型的にはその近くの正常な組織の成長を上回り、また、その近くの正常な組織の成長と協調せず、通常、しこりまたは腫瘍の原因となる。表現「新生物組織」はまた、本明細書中およびこの技術分野では「腫瘍」として示され、良性腫瘍、ウイルス性腫瘍、前悪性腫瘍および悪性腫瘍を包含する。
【0166】
用語「組織」は、一緒になって特定の機能を行う、必ずしも同一ではないが、同じ起源に由来する細胞の集団を記述する。
【0167】
組織の細胞は、様々な生理学的シグナル分子(例えば、それらの増殖を調節するアポトーシス因子および増殖因子(例えば、トキシン、ホルモン、増殖因子、一酸化窒素またはサイトカインなど)により正常な限界にまで増殖する。新生物組織の場合には、細胞のクローンの成長は、それを取り囲む正常な組織の成長ほどには制御されず、また、それを取り囲む正常な組織の成長と協調しない。
【0168】
用語「失活化する」は、細胞がもはや機能的(または生命維持的)でないように細胞を無能力化し、その一方で、(アポトーシス、溶解などとは対照的に)その構造および内容物には必ずしも影響を与えない物質の能力を記述する。「失活化された」細胞は、細胞が失活化前に機能していた同じ様式で機能することができず、したがって、例えば、成長または分裂をもはや行うことができない。例えば、転移性ガン細胞を、溶解、壊死またはプログラム化された細胞死(アポトーシス)を介して細胞を殺すことによって失活化させることができるだけでなく、もはや分裂することができなくさせることもできる。別の例では、細胞を失活化させることを、脱水または凍結化により達成することができる。
【0169】
用語「失活化有効量」は、処置されている対象の新生物組織のサイズおよび/または成長を著しく低下させるか、あるいは、処置されている対象の新生物組織を完全に消失させる程度に新生物組織を失活化するために効果的な、本明細書中に記載される化合物の量を記述する。
【0170】
したがって、新生物組織に関連する医学的状態の場合、用語「失活化有効量」は、処置されている対象の医学的状態の症状の防止、緩和または改善、および/あるいは、処置されている対象の生存の延長をもたらす程度に新生物組織を失活化するために効果的な、本明細書中に記載される化合物の量を記述する。
【0171】
失活化有効量の決定は、とりわけ本明細書中に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0172】
用語「対象」(あるいは、本明細書中では「患者」として示される)は、本明細書中で使用される場合、処置、観察または実験の対象物となっている動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを示す。
【0173】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、新生物組織に関連する医学的状態を処置するための医薬品の製造における本明細書中に記載される化合物の使用が提供される。
【0174】
上記化合物は、本発明の実施形態によれば、下記のような一般式I:

その医薬的に許容される塩または錯体、あるいは、そのオリゴマー形態によってまとめて表すことができ、
但し、上記式において、
YはOまたはSである;
Zはヒドロキシまたはチオールである;
Aは、1個〜20個の炭素原子をその骨格鎖に有する、分岐または非分岐の、置換または非置換の飽和した脂肪族炭化水素鎖または不飽和な脂肪族炭化水素鎖である;
Xは前記脂肪族炭化水素鎖のハロゲン置換基である;かつ
nは1〜10の整数であり、ハロゲン置換基の数を表す。
【0175】
いくつかの実施形態において、YはOであり、その結果、本明細書中に記載される化合物はハロゲン化脂肪族カルボン酸である。
【0176】
いくつかの実施形態において、Zはヒドロキシである。
【0177】
他の実施形態において、本明細書中に記載される化合物はハロゲン化脂肪族チオカルボン酸であり、その結果、YはSであり、および/または、Zはチオールである。
【0178】
いくつかの実施形態において、nは1〜4の整数である。
【0179】
nが1である化合物は、モノハロゲン化される(された)として示され、nが2である化合物は、ジハロゲン化される(された)として示され、nが2を超える化合物は、ポリハロゲン化される(された)として示される。
【0180】
用語「ヒドロキシ」は−OH基を示す。
【0181】
用語「チオール」は−SH基を示す。
【0182】
表現「脂肪族炭化水素鎖」は、炭素原子が互いに連結され、これにより、脂肪族(非環式)の骨格鎖を形成する、主に炭素原子および水素原子から構成される有機成分を記述する。脂肪族炭化水素鎖は、飽和または不飽和、線状または分岐が可能であり、1つまたは複数のヘテロ原子(例えば、酸素、イオウおよび/または窒素(例えば、−NH−)など)によって中断され得る。
【0183】
いくつかの実施形態において、用語「脂肪族炭化水素鎖」は、アルキル、アルケニルおよびアルキニルのいずれか1つまたはそれらの組合せを包含する。
【0184】
用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を示す。好ましくは、アルキル基は1個〜30個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1個〜30個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの30個までの炭素原子を含むということを意味する。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1個〜20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1個〜10個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1個〜4個の炭素原子を有する。例示的なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘプタデシル、オクタデシルおよびノナデシルが含まれるが、これらに限定されない。
【0185】
用語「アルケニル」は、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素二重結合からなる、上で規定したアルキル基を示す。
【0186】
用語「アルキニル」は、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素三重結合からなる、上で規定したアルキル基を示す。
【0187】
脂肪族炭化水素鎖は非置換であり得るか、あるいは、水素、または、本明細書中上記の一般式においてXによって表されるハロゲンとは異なる1つまたは複数の置換基によって置換され得る。置換されるとき、置換基は、例えば、本明細書中で定義されるようなアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、ニトロ、スルホンアミド、トリハロメタンスルホンアミド、シリル、グアニル、グアニジノ、ウレイド、アミノまたはNRaRb(式中、RaおよびRbはそれぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、カルボニル、スルホニル、トリハロメチルスルホニル、および、一緒になるときには5員または6員の複素脂環式の環である)が可能である。
【0188】
用語「シクロアルキル」は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべてが炭素の単環式環または縮合環(すなわち、炭素原子の隣接する一対を共有する環)基を示す。シクロアルキル基の例が、限定されないが、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンおよびアダマンタンである。シクロアルキル基は置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、本明細書中上記で定義されるようなアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ハロ、カルボニル、チオカルボニル、C−カルボキシ、O−カルボキシ、O−カルバミル、N−カルバミル、C−アミド、N−アミド、ニトロ、アミノおよびNRaRbが可能である。
【0189】
用語「アリール」は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。アリール基の非限定的な例には、フェニル、ナフタレニルおよびアントラセニルがある。アリール基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、ハロ、トリハロメチル、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオカルボニル、C−カルボキシ、O−カルボキシ、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、スルフィニル、スルホニル、アミノ、および上記のNRaRbが可能である。
【0190】
用語「ヘテロアリール」は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。ヘテロアリール基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、アルキル、シクロアルキル、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオカルボニル、スルホンアミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルフィニル、スルホニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、および上記のNRaRbが可能である。
【0191】
用語「複素脂環」は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有する単環基または縮合環基を示す。環はまた、1つまたは複数の二重結合を有することができる。しかしながら、環は完全共役のπ電子系を有しない。複素脂環は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、カルボニル、チオカルボニル、C−カルボキシ、O−カルボキシ、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、スルフィニル、スルホニル、C−アミド、N−アミド、アミノ、および上記のNRaRbが可能である。
【0192】
用語「アルコキシ」は、本明細書中で定義されるように、−O−アルキル基および−O−シクロアルキル基の両方を示す。
【0193】
用語「アリールオキシ」は、本明細書中で定義されるように、−O−アリール基および−O−ヘテロアリール基の両方を示す。
【0194】
用語「チオアルコキシ」は、本明細書中で定義されるように、−S−アルキル基および−S−シクロアルキル基の両方を示す。
【0195】
用語「チオアリールオキシ」は、本明細書中で定義されるように、−S−アリール基および−S−ヘテロアリール基の両方を示す。
【0196】
用語「シアノ」は−C≡N基を示す。
【0197】
用語「カルボニル」は、本明細書中で定義されるように、−C(=O)−R′基(式中、R′は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、(環の炭素を通して結合された)ヘテロアリール、または(環の炭素を通して結合された)ヘテロ脂環式である)を示す。
【0198】
用語「チオカルボニル」は−C(=S)−R′基(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0199】
用語「O−カルバミル」は−OC(=O)−NR’R’’基を示す(ただし、式中、R’は本明細書中で定義される通りであり、R’’は、本明細書中で定義されるように、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、(環炭素を介して結合する)ヘテロアリールまたは(環炭素を介して結合する)複素脂環式である)。
【0200】
用語「N−カルバミル」はR’OC(=O)−NR’’−基を示す(ただし、式中、R’およびR’’は本明細書中で定義される通りである)。
【0201】
用語「O−チオカルバミル」は−OC(=S)−NR’R’’基を示す(ただし、式中、R’およびR’’は本明細書中で定義される通りである)。
【0202】
用語「N−チオカルバミル」はR’’OC(=S)−NR’−基を示す(ただし、式中、R’およびR’’は本明細書中で定義される通りである)。
【0203】
用語「C−アミド」は−C(=O)−NR’R’’基を示す(ただし、式中、R’およびR’’は本明細書中で定義される通りである)。
【0204】
用語「N−アミド」はR’C(=O)−NR’’基を示す(ただし、式中、R’およびR’’は本明細書中で定義される通りである)。
【0205】
用語「C−カルボキシ」は−C(=O)−O−R’基を示す(ただし、式中、R’は本明細書中で定義される通りである)。
【0206】
用語「O−カルボキシ」はR’C(=O)−O−基を示す(ただし、式中、R’は本明細書中で定義される通りである)。
【0207】
用語「ニトロ」は−NO基を示す。
【0208】
用語「スルホンアミド」は「S−スルホンアミド」および「N−スルホンアミド」の両方を包含し、ただし、「S−スルホンアミド」基は−S(=O)−NR’R’’基を示す(ただし、式中、R’は本明細書中で定義される通りであり、R’’はR’について定義される通りである)。「N−スルホンアミド」基はR’S(=O)−NR’’基を記述する(ただし、式中、R’およびR’’は本明細書中で定義される通りである)。
【0209】
用語「トリハロメタンスルホンアミド」基は、TCS(=O)NR’−基を示す(ただし、式中、Tは、本明細書中で定義されるようなハロ基であり、R’は本明細書中で定義される通りである)。
【0210】
用語「グアニジノ」基は−R’NC(=N)−NR’’R’’’基を示す(ただし、式中、R’、R’’およびR’’’は、本明細書中で定義されるように、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、(環炭素を介して結合する)ヘテロアリールまたは(環炭素を介して結合する)複素脂環式である)。
【0211】
用語「グアニル」基はR’R’’NC(=N)−基を示す(ただし、式中、R’およびR’’は本明細書中で定義される通りである)。
【0212】
用語「シリル」は−SiR’R’’R’’’を示す(ただし、式中、R’、R’’およびR’’’は本明細書中で定義される通りである)。
【0213】
用語「ウレイド」基は−NR’C(=O)NR’’R’’’基を示す(ただし、式中、R’、R’’およびR’’’は本明細書中で定義される通りである)。
【0214】
用語「アミノ」基は−NH基を示す。
【0215】
用語「スルホニル」基は−S(=O)−R′基(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0216】
用語「ハロゲン」または「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード原子を示す。
【0217】
いくつかの実施形態において、Aは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘプタデシル、オクタデシルまたはノナデシルである。いくつかの実施形態において、Aは、メチル、エチルまたはプロピルである。いくつかの実施形態において、Aはエチルである。
【0218】
いくつかの実施形態において、上記化合物は、少なくとも1つのハロゲン原子によってそれぞれが独立して置換されるエタン酸(酢酸)、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸またはオクタデカン酸である。
【0219】
いくつかの実施形態において、上記化合物は、少なくとも1つのハロゲン原子によってそれぞれが独立して置換されるエタン酸、プロパン酸およびブタン酸である。
【0220】
いくつかの実施形態において、一般式Iを有する上記化合物は2つ以上のハロゲン置換基を含む(その結果、nは2以上である)。これらのハロゲン置換基は同じまたは異なり得る。炭化水素鎖が2つ以上の炭素原子を含む場合、ハロゲン置換基は炭化水素鎖における同じ炭素原子に存在することができ、または、炭化水素鎖における異なる炭素原子に存在することができる。
【0221】
いくつかの実施形態において、ハロゲン原子のそれぞれが独立して、クロロまたはフルオロである。
【0222】
いくつかの実施形態において、上記化合物は2つのハロゲン置換基を含む。
【0223】
何らかの特定の理論によってとらわれないが、本明細書中に記載されるハロゲン化脂肪族酸の大きい失活化活性は、ハロゲン原子がカルボキシル基(またはチオカルボキシル基)成分のごく近くに位置し、このことにより、化合物の酸性度がハロゲン置換基の電子吸引効果のために高められるためであると推測される。
【0224】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される一般式におけるXは、炭化水素鎖におけるC(=Y)Z成分から炭素原子0個〜2個離れた位置にある炭素原子のハロゲン置換基(1つまたは複数)である。
【0225】
いくつかの実施形態において、Xは、炭化水素鎖におけるC(=Y)Z成分に隣接する炭素原子の置換基である。表現「C(=Y)Z成分に隣接する」は、本明細書中で使用される場合、X置換基が、C(=Y)Z成分から炭素0個離れて、すなわち、カルボキシル基(またはチオカルボキシル基)成分に対してα位に位置することを示すものとする。
【0226】
カルボキシル基(またはチオカルボキシル基)成分から炭素1個離れた位置にある炭素原子は、カルボキシル基(またはチオカルボキシル基)成分に対してβ位に位置する。
【0227】
いくつかの実施形態において、一般式IにおけるAはエチルであり、その結果、化合物はハロゲン化プロピオン酸(これはまた、本明細書中ではハロゲン化プロパン酸として示される)である。
【0228】
いくつかの実施形態において、Xはクロロであり、かつ、nは2であり、その結果、化合物はジハロゲン化、すなわち、二塩素化される。
【0229】
いくつかの実施形態において、化合物は2,2−ジクロロプロパン酸(DPA)である。
【0230】
さらなる例示的化合物には、2−クロロプロパン酸、3−クロロプロパン酸、2,3−ジクロロプロパン酸、3,3−ジクロロプロパン酸、2−クロロブタン酸、2,2−ジクロロブタン酸、3−クロロブタン酸、2,3−ジクロロブタン酸、3,3−ジクロロブタン酸、2,2−ジクロロペンタン酸、2−クロロペンタン酸、3−クロロペンタン酸、2,3−ジクロロペンタン酸、3,3−ジクロロペンタン酸、2−クロロヘキサン酸、2,2−ジクロロヘキサン酸、3−クロロヘキサン酸、2,3−ジクロロヘキサン酸、3,3−ジクロロヘキサン酸、2−フルオロプロパン酸、3−フルオロプロパン酸、2,3−ジフルオロプロパン酸、3,3−ジフルオロプロパン酸、2−フルオロブタン酸、2,2−ジフルオロブタン酸、3−フルオロブタン酸、2,3−ジフルオロブタン酸、3,3−ジフルオロブタン酸、2,2−ジフルオロペンタン酸、2−フルオロペンタン酸、3−フルオロペンタン酸、2,3−ジフルオロペンタン酸、3,3−ジフルオロペンタン酸、2−フルオロヘキサン酸、2,2−ジフルオロヘキサン酸、3−フルオロヘキサン酸、2,3−ジフルオロヘキサン酸、3,3−ジフルオロヘキサン酸、2,2−フルオロクロロプロパン酸、2,3−フルオロクロロプロパン酸、3,3−フルオロクロロプロパン酸、2,2−フルオロクロロブタン酸、2,3−フルオロクロロブタン酸、3,3−フルオロクロロブタン酸、2,2−フルオロクロロペンタン酸、2,3−フルオロクロロペンタン酸、3,3−フルオロクロロペンタン酸、2,2−フルオロクロロヘキサン酸、2,3−フルオロクロロヘキサン酸、3,3−フルオロクロロヘキサン酸、2、2,3−トリクロロプロパン酸、2,3,3−トリクロロプロパン酸、3,3,3−トリクロロプロパン酸、2,2,3−トリフルオロプロパン酸、2,3,3−トリフルオロプロパン酸、3,3,3−トリフルオロプロパン酸、2−クロロ−2,3−ジフルオロプロパン酸、2−クロロ−3,3−ジフルオロプロパン酸、2,2−ジクロロ−3−フルオロプロパン酸、2,2−ジフルオロ−3−クロロプロパン酸、2,2,3−トリクロロブタン酸、2,3,3−トリクロロブタン酸、3,3,3−トリクロロブタン酸、2,2,3−トリフルオロブタン酸、2,3,3−トリフルオロブタン酸、3,3,3−トリフルオロブタン酸、2−クロロ−2,3−ジフルオロブタン酸、2−クロロ−3,3−ジフルオロブタン酸、2,2−ジクロロ−3−フルオロブタン酸、2,2−ジフルオロ−3−クロロブタン酸、2,2,3−トリクロロペンタン酸、2,3,3−トリクロロペンタン酸、3,3,3−トリクロロペンタン酸、2,2,3−トリフルオロペンタン酸、2,3,3−トリフルオロペンタン酸、3,3,3−トリフルオロペンタン酸、2−クロロ−2,3−ジフルオロペンタン酸、2−クロロ−3,3−ジフルオロペンタン酸、2,2−ジクロロ−3−フルオロペンタン酸、2,2−ジフルオロ−3−クロロペンタン酸、2,2,3−トリクロロヘキサン酸、2,3,3−トリクロロヘキサン酸、3,3,3−トリクロロヘキサン酸、2,2,3−トリフルオロヘキサン酸、2,3,3−トリフルオロヘキサン酸、3,3,3−トリフルオロヘキサン酸、2−クロロ−2,3−ジフルオロヘキサン酸、2−クロロ−3,3−ジフルオロヘキサン酸、2,2−ジクロロ−3−フルオロヘキサン酸、2,2−ジフルオロ−3−クロロヘキサン酸、および、それらのどのようなさらなる構造的アナログをも含まれるが、これらに限定されない。
【0231】
本発明の実施形態はさらに、本明細書中に記載される化合物のそれぞれのどのような医薬的に許容される塩、錯体、プロドラッグ、溶媒和物、水和物をも、また、存在するならば、精製されたエナンチオマーを包含する。
【0232】
表現「医薬的に許容される塩」は、親化合物の荷電化学種およびその対イオンを示す。「医薬的に許容される塩」は、典型的には、親化合物の溶解性特性を改変するために、かつ/または、親化合物による生物に対する何らかの著しい刺激を低下させるために、その一方で、投与された化合物の生物学的な活性および性質を無効にしないために使用される。本実施形態の文脈では、医薬的に許容される塩は、例えば、カルボキシレートまたはチオカルボキシレートアニオン、およびカチオンのようなカルボキシルまたはチオカルボキシル部分のイオン化された形態が可能である。
【0233】
いくつかの場合には、親化合物が(塩において関与する静電的相互作用とは対照的に)配位的相互作用を介して別の化学種と相互作用するとき、上記化合物の医薬的に許容される錯体が形成される。そのような錯体を、例えば、カルボキシル基(またはチオカルボキシル基)成分と、この成分に配位結合することができる化学種との間で形成させることができる。例示的な錯体を、金属セレン、金属亜鉛、金属銅および金属鉄など(それらの塩および酸化物を含む)(これらに限定されない)などの化学種と形成させることができる。例示的な錯体が、セレン、セレン酸化物またはセレン塩と形成される。
【0234】
いくつかの実施形態において、医薬的に許容される塩は、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩からなる群から選択される。
【0235】
本明細書中下記で詳しく議論されるように、いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される化合物の医薬的に許容される塩および錯体は、本明細書中に記載される化合物の成績を改善するために使用される。
【0236】
本明細書で使用される用語「プロドラッグ」は、インビボで活性化合物(活性な親薬物)に変換される薬物を指す。プロドラッグは、親薬物の投与を促進するのに典型的に役立つ。それらは、例えば、経口投与によって生物学的に利用可能であるが、親薬物はそうではない。プロドラッグは、医薬組成物で親薬物と比較して改善された溶解度を有することができる。プロドラッグはまた、インビボで活性化合物の徐放を達成するためにもしばしば用いられる。
【0237】
用語「溶媒和物」は、可変化学量論(例えば、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサなど)の複合体を指し、それは溶質(本明細書に記載される化合物)および溶媒によって形成され、それによって溶媒は溶質の生物学的活性を妨げない。適切な溶媒は、例えば、エタノール、酢酸などを含む。
【0238】
用語「水和物」は、上記で定義されたように、溶媒和物を指し、溶媒は水である。
【0239】
いくつかの実施形態において、上記化合物は、本明細書中下記で定義されるように、そのオリゴマーの形態である。
【0240】
一般にはそのような化合物のオリゴマー形態、具体的にはDPAのオリゴマー形態はこれまで記載されたことがなく、したがって、本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、本明細書中に記載される一般式Iを有する化合物のオリゴマーが提供される。本発明の実施形態はさらに、本明細書中に記載されるオリゴマーのそれぞれのどのような医薬的に許容される塩および錯体、プロドラッグ、溶媒和物、水和物をも、また、存在するならば、精製されたエナンチオマーを包含する。
【0241】
用語「オリゴマー」は、本明細書中で使用される場合、順々に縮合された2つ以上の繰り返しユニットを含む化合物を記述する。したがって、「オリゴマー」は、本明細書中に記載される場合、オリゴマーを構成する2つ以上のモノマーユニットの縮合によって製造される。したがって、本明細書中に記載される化合物のオリゴマー形態は、本明細書中に記載される化合物のモノマー形態の多数の繰り返しユニットを記述する。用語「オリゴマー」は、限定されないが、例えば、約50個までのモノマーユニットを取り込むオリゴマーを包含することが意図され、これには、2個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー(すなわち、ダイマー)、3個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー(すなわち、トリマー)、4個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー(すなわち、テトラマー)、5個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー(すなわち、ペンタマー)、6個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー(すなわち、ヘキサマー)、7個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー(すなわち、ヘプタマー)、8個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー(すなわち、オクタマー)、9個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー(すなわち、ノナマー)、10個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー(すなわち、デカマー)、11個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、12個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、13個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、14個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、15個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、16個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、17個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、18個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、19個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、20個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、21個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、22個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、23個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、24個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、25個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、26個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、27個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、28個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、29個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、30個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、31個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、32個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、33個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、34個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、35個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、36個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、37個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、38個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、39個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、40個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、41個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、42個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、43個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、44個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、45個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、46個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、47個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、48個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、49個のモノマーユニットから構成されるオリゴマー、および、50個のモノマーユニットから構成されるオリゴマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0242】
いくつかの実施形態において、オリゴマーは、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、ヘプタマー、オクタマー、ノナマーおよびデカマーからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、オリゴマーはテトラマーである。
【0243】
下記の実施例の節において詳述されるように、DPAの新規なオリゴマーが首尾よく合成され、試験された。
【0244】
本明細書中上記で議論されるように、DPAオリゴマー(本発明のいくつかの実施形態による例示的オリゴマー)の失活化活性が下記の実施例の節において明らかにされる。具体的には、DPAオリゴマーの投与は、ウイルス性、良性、前悪性および悪性の皮膚および粘膜の腫瘍/病変の処置において治療的に有益であった(表10および表11を参照のこと)。
【0245】
例示的なDPAオリゴマーには下記の化合物が含まれるが、これらに限定されない:

【0246】
本明細書中に記載されるオリゴマーは、モノマーユニット間における縮合ならびにエーテル結合およびエステル結合の形成により合成することができる。
【0247】
さらに、本発明の実施形態によれば、本明細書中に記載される新規なオリゴマーを調製するプロセスが提供される。これらのプロセスが下記の実施例の節において詳しく記載される。
【0248】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、本明細書中に記載されるオリゴマーを調製するプロセスであって、本明細書中に記載される化合物を、そのモノマー形態で、水溶液の存在下、150℃〜250℃の温度で加熱し、それにより、オリゴマーを得ることを含む方法が提供される。
【0249】
何らかの特定の理論にとらわれないが、本明細書中に記載されるプロセスは、デヒドロリス(dehydrolysis)、カラメル化および/または熱分解を含むこと、また、これらの反応を行うことは、時間、および、プロセスが行われる温度に依存することが推測される。
【0250】
いくつかの実施形態において、上記水溶液における水の量が、0重量パーセント〜50重量パーセント、または、0.1重量パーセント〜50重量パーセントである。
【0251】
いくつかの実施形態において、上記加熱することは、170℃〜220℃にまで、または、180℃〜200℃の温度においてである。いくつかの実施形態において、上記加熱することは190℃の温度においてである。
【0252】
いくつかの実施形態において、上記加熱することは、0.5時間〜12時間の期間にわたってである。
【0253】
オリゴマーの長さは加熱期間に依存しており、それにより、より長いオリゴマー(すなわち、より多くのモノマーユニットから構成される)が、より長い加熱期間を使用して合成される。DPAのテトラマー形態が、加熱期間が約4時間である本明細書中に記載されるプロセスによって合成される。
【0254】
いくつかの実施形態において、上記加熱することは少なくとも2時間の期間にわたってである。
【0255】
いくつかの実施形態において、上記加熱することは少なくとも4時間の期間にわたってである。
【0256】
いくつかの実施形態において、上記加熱することは少なくとも6時間の期間にわたってである。
【0257】
本明細書中に記載されるプロセスはさらに、さらなる薬剤をオリゴマーと混合することを含む。そのような薬剤は、例えば、セレンまたはセレン含有化合物(例えば、セレン酸化物、セレン塩またはセレン錯体)であり得る。
【0258】
本発明者らは、オリゴマーのサイズがその失活化活性に影響することを認めている。理論によってとらわれないが、新生物組織は、正常な組織と比較した場合、それほど密ではなく、これにより、より大きい細胞間空間を新生物細胞の間に有することが推測される。このより緩い構造は、正常な組織に対してはそれほどではないが、新生物組織内へのより大きいサイズのオリゴマーの選択的浸入を可能にし、それにより、正常な組織に対する化合物の望まれない活性に関連する有害な影響を軽減する。
【0259】
したがって、いくつかの実施形態において、オリゴマーは、そのサイズが新生物組織における細胞間空間と選択的に一致し、新生物組織のごく近傍にある正常な組織とは一致しないように選択される。
【0260】
本明細書中下記において示される臨床研究の結果をさらに分析している間に、本発明者らは驚くべきことに、DPAのテトラマー形態の投与が、良性の皮膚および粘膜の腫瘍および病変を処置するために治療的により有益であり、これに対して、より長いオリゴマーの投与が、前悪性および悪性の皮膚腫瘍および粘膜腫瘍を処置するために治療的により有益であることを発見している。特定の理論によってとらわれないが、活性におけるこの観測された違いは、前悪性および悪性の新生物組織が、良性の新生物組織と比較した場合、より緩く詰め込まれ、それにより、より長いオリゴマーは良性の新生物組織にはそれほど浸入することができないが、前悪性および悪性の新生物組織には浸入することができるためであることが示唆される。対照的に、モノマーまたはテトラマーは、サイズがより小さいので、良性の新生物組織に浸入することができ、したがって、そのような腫瘍/病変を処置するためにより適している。
【0261】
したがって、本発明のいくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法は、良性の新生物組織に関連する医学的状態をその必要性のある対象において処置するためのものであり、本明細書中に記載される化合物のいずれかのオリゴマー状テトラマーの失活化有効量をそのような対象に投与することによって行われる。
【0262】
したがって、本明細書中に記載される化合物のオリゴマー状テトラマーが、良性の新生物組織に関連する医学的状態をその必要性のある対象において処置するために使用される。
【0263】
いくつかの実施形態において、上記オリゴマー状テトラマーは、本明細書中に記載されるDPAテトラマーである。
【0264】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法は、前悪性または悪性の新生物組織に関連する医学的状態をその必要性のある対象において処置するために使用され、本明細書中に記載される化合物のオリゴマー形態の失活化有効量をそのような対象に投与することによって行われ、ただし、この場合、オリゴマーは4つ以上のモノマーユニットを含む(例えば、オリゴマーは、DPAまたは本明細書中に記載されるいずれかの他の化合物のテトラマー、ペンタマーまたはヘキサマーである)。
【0265】
したがって、4つ以上のモノマーユニットから構成される、本明細書中に記載される化合物のオリゴマー形態が、前悪性または悪性の新生物組織に関連する医学的状態をその必要性のある対象において処置するために使用される。
【0266】
下記の実施例の節において例示されるように、DPAのモノマー形態およびテトラマー形態の両方が、良性腫瘍、ウイルス性いぼまたは粘膜腫瘍病変を有する患者を処置するために効果的に使用され、その一方で、より長いオリゴマーが、悪性および前悪性の腫瘍を有する患者を処置するために使用された。すべての処置が、非常に良好な臨床結果を伴った腫瘍の根絶をもたらした(表10を参照のこと)。
【0267】
本明細書中上記で議論されるように、本発明の実施形態はさらに、本明細書中に記載される化合物の本明細書中上記で定義されるどのような医薬的に許容される塩および錯体をも包含する。
【0268】
理論によってとらわれないが、錯体および塩の形成は、本明細書中に記載される化合物の失活化活性を、恐らくは、本明細書中上記で議論されるように、より密に詰め込まれた正常な組織への侵入と比較された場合、より緩く詰め込まれた新生物組織への化合物の選択的浸入を可能にする、上記化合物のより大きいサイズの形態を構築することによってさらに高め得ることが推測される。
【0269】
本明細書中上記で議論されるように、本発明の実施形態による例示的化合物としてであるが、DPAおよびそのオリゴマーの有益な治療活性が、ウイルス性、良性、前悪性および悪性の新生物組織に関連する医学的状態を処置することにおいて明らかにされている。
【0270】
したがって、本明細書中に記載される方法および使用のいずれにおいても、新生物組織は、ウイルス性新生物組織、良性新生物組織、前悪性新生物組織および/または悪性新生物組織が可能である。
【0271】
本発明のいくつかの実施形態において、新生物組織は皮膚組織または粘膜組織である。
【0272】
表現「ウイルス性新生物組織」は、本明細書中で使用される場合、ウイルス感染に起因する組織細胞の異常な成長を記述する。
【0273】
表現「悪性新生物組織」は、本明細書中で使用される場合、その成長が自己制限的ではなく、隣接組織に浸入することができ、かつ、遠隔組織への拡大(転移)が可能であり得る新生物組織を記述する。
【0274】
表現「良性新生物組織」は、悪性でない(すなわち、際限のない攻撃的様式で成長せず、取り囲む組織に浸入せず、かつ、そのほとんどが転移しない)新生物組織を記述する。
【0275】
表現「前悪性新生物組織」は、悪性ではないが、正常な組織および良性新生物組織と比較した場合、悪性になる確率がより大きい新生物組織を記述する。
【0276】
用語「皮膚組織」は、哺乳動物の体の外側を覆う部分を記述し、これには、限定されないが、表皮、真皮および皮下組織が含まれる。典型的には、皮膚組織は、毛包および汗腺などの他の成分を含むことができる。
【0277】
用語「粘膜組織」は、間葉起源および上皮起源の細胞から一部が構成される組織を記述する。粘膜組織の例には、膣組織、口腔組織、角膜組織、直腸組織および内臓の弾性組織が含まれるが、これらに限定されない。
【0278】
用語「病変」は、通常の場合には疾患または外傷によって損傷を受けた、生物の表面または内部に見出されるどのような異常な組織をも記述する。用語「皮膚病変」は、皮膚組織の表面または内部に見出されるどのような異常な組織をも記述する。用語「粘膜病変」は、粘膜組織の表面または内部に見出されるどのような異常な組織をも記述する。
【0279】
用語「腫瘍」は、病的細胞の異常な成長によって形成される腫大または病変を記述する。用語「腫瘍」は、(良性新生物組織から発達する)良性腫瘍、(前悪性新生物組織から発達する)前悪性腫瘍、および、(悪性新生物組織から発達する)悪性腫瘍(これはまた、本明細書中では「転移性悪性腫瘍」として示される)を包含する。
【0280】
用語「皮膚腫瘍」は、皮膚細胞の異常な成長によって形成される腫瘍を記述する。用語「皮膚細胞」は、皮膚を組み立てる細胞、例えば、表皮細胞、真皮細胞、または、皮膚の皮下組織を組み立てる細胞などを記述する。いくつかの良性皮膚腫瘍は、その原因がウイルスであること(例えば、いぼ)、全身性疾患であること(例えば、血液中の過剰な脂肪によって引き起こされる黄色板症または黄色腫)、また、環境的要因であること(例えば、日光によって刺激されるほくろ(母斑)および表皮嚢胞)が知られている。良性皮膚腫瘍の他の例が、皮膚線維腫;血管腫(例えば、血管腫、ポートワイン母斑、リンパ管腫および化膿性肉芽腫など);脂漏性角化症;および先端線維性軟ゆうまたは懸垂線維腫である。
【0281】
用語「粘膜腫瘍」は、粘膜組織を組み立てる細胞の異常な成長によって形成される腫瘍を記述する。
【0282】
用語「ガン」は、悪性細胞の異常な成長によって形成される腫瘍を記述する。ガンの用語は原発性または二次的な腫瘍を包含する。用語「原発性腫瘍」は、腫瘍が最初に生じた当初部位に存在する腫瘍を記述し、用語「二次的腫瘍」は、成長のその当初(原発)部位から原発部位の近くまたは遠方の別の部位に広がった腫瘍を記述する。
【0283】
用語「皮膚ガン」は、皮膚組織の表面もしくは内部に位置し、かつ/または、皮膚細胞の異常な成長に由来するガンを記述する。用語「粘膜ガン」は、粘膜組織の表面もしくは内部に位置し、かつ/または、粘膜組織を組み立てる細胞の異常な成長に由来するガンを記述する。数タイプの皮膚ガンが存在しており、最も一般的なものが基底細胞ガンおよび扁平上皮ガンであり、これらはともに非黒色腫型の皮膚ガンである。良性(非ガン性)の皮膚腫瘍が出生時に存在し得るか、または、その後に発達し得る。
【0284】
したがって、例示的な皮膚新生物組織および粘膜新生物組織には、角化症(これには、光線性角化症、炭化水素角化症、毛孔性角化症、脂漏性角化症が含まれるが、これらに限定されない)、母斑(色素細胞性母斑および表皮性母斑を含み、例示的な母斑が本明細書中下記に列挙される)、アルコドロン(archodron)、嚢胞、血管腫(例えば、血管腫、ポートワイン母斑、リンパ管腫および化膿性肉芽腫など)、線維腫、線維脂肪腫、コンジローム、黒子、棘細胞腫、神経線維腫、過形成、線維腫、いぼ(例えば、ウイルスによって引き起こされるいぼ、例えば、ゆうぜい)、平滑筋腫、汗管腫、肉芽腫、黄色板症、皮角、ジュビネル偽黒色腫、基底細胞ガン、基底細胞腫、扁平上皮ガン、メルケル小柱細胞ガン、基底細胞ガンを伴うヤーダッソーン脂腺母斑、カポジ肉腫、口部の可視性病変、乳頭腫、線維上皮腫、過形成、肥厚性病変、ポリープ、そばかす、黒皮症および黒色腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0285】
そのような新生物組織は様々な医学的状態から発達する:例えば、ウイルス感染(これはウイルス性新生物組織を生じさせる)、全身性疾患(例えば、血液中の過剰なコレステロールまたは脂肪によって引き起こされる黄色板症または黄色腫)、様々なタイプの皮膚ガン、および、環境的要因(例えば、日光によって刺激されるほくろ(母斑)および上皮性嚢胞)など、これらに限定されない。
【0286】
新生物組織、例えば、本明細書中上記で列挙される新生物組織などに関連し、本明細書中に記載される化合物によって処置可能である例示的な医学的状態には、脂漏性角化症、表皮母斑、線状表皮母斑(片側性)、ヤーダッソーン脂腺母斑、真皮内母斑、有毛母斑、懸垂線維腫および先端線維性軟ゆう、表皮封入体嚢胞、脂腺過形成、多発性汗管腫、透明細胞棘細胞腫、複合母斑、暈状母斑、紡錘細胞母斑(スピッツ母斑)(上皮様)、巨大有毛性母斑、青色母斑、太田母斑、皮膚線維腫、血管線維腫、多発性サクランボ血管腫、化膿性肉芽腫、被角血管腫、リンパ管腫、境界母斑、クモ状母斑(クモ状血管拡張症)、レックリングハウゼン病(神経線維腫症)、ステロイド型角質増殖症および乳頭腫症、血管性母斑、脱色素性母斑、火炎状母斑(ポートワイン母斑)、黄色板症、尋常性ゆうぜい、扁平ゆうぜい、尖圭コンジローム、伝染性軟属腫、光線性角化症、皮角、ボーエン病、単純黒子および老人性黒子、悪性黒子、角化棘細胞腫、毛包上皮腫、多発性形成異常母斑、工廠角化症、ジュビネル偽黒色腫、表在性基底細胞ガン、基底細胞ガン、結節性基底細胞ガン、基底細胞色素性母斑症候群−基底細胞腫、扁平上皮ガン、メルケル小柱細胞ガン、基底細胞ガンを伴うヤーダッソーン脂腺母斑、表皮内およびステージ1aの表在性拡大型黒色腫、表皮内およびステージ1aの結節性悪性黒色腫、カポジ出血性肉腫(初期の斑状病変、AIDS非関連)、口部の可視性病変、悪性黒子型黒色腫、乳頭腫、線維上皮腫、血管腫および過形成病変または肥厚性病変、神経線維腫症−1(レックリングハウゼン病)、神経線維腫症−2、エロシオネン(異所性)、ポリープ、ポストヒステレクトミー、肉芽腫、子宮頸内膜炎、子宮頸のウイルス性いぼ(例えば、伝染性軟属腫および尖形コンジロームなど)、ナボット嚢胞、鼻出血(頸部の侵食から生じる接触出血)が含まれるが、これらに限定されない。
【0287】
本明細書中上記で事細かく議論されるように、皮膚または粘膜の腫瘍/病変の外科的除去は頻繁には最上の処置であるが、この選択肢は最適ではなく、この外科的処置をすべての患者において適用可能にしない多くの欠点に悩まされている。
【0288】
例えば、外科的処置は、多数の腫瘍/病変に罹患する患者を処置する際には問題のあるものにする。そのような患者において、不良な美容結果のほかに、すべての腫瘍/病変の外科的除去は、手術創の縁閉鎖を問題のあるものにする過度な皮膚緊張をもたらし得る。そのような場合、多数の腫瘍/病変への本明細書中に記載される化合物の局所投与は、非常に良好な治療結果ならびに美容結果を伴う当該腫瘍/病変の完全な失活化のために特に有益である。
【0289】
したがって、いくつかの実施形態において、医学的状態は多数の皮膚病変および/または粘膜病変によって特徴づけられる。
【0290】
多数の皮膚腫瘍によって特徴づけられる1つの例示的な医学的状態が末梢神経線維腫症(レックリングハウゼン病)である。
【0291】
本明細書中上記でさらに議論されるように、皮膚が照射(例えば、紫外ベータ線など)に広範囲にさらされることによって引き起こされる皮膚過形成によって特徴づけられる皮膚障害(例えば、皮膚病変および皮膚ガンなど)の発生における増大が認められる。
【0292】
したがって、いくつかの実施形態において、医学的状態は照射(例えば、日光照射および/または光照射)によって引き起こされる。
【0293】
下記の実施例の節において例示されるように、本明細書中に記載される化合物は、表面に位置する新生物組織、すなわち、皮膚組織および粘膜組織を失活化することができる。新生物性の皮膚組織および粘膜組織に関連する病態生理学はすべての新生物組織の病態生理学と類似しているので、本発明の化合物はさらに、内部の新生物組織に関連する医学的状態の処置において利用することができる。
【0294】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される化合物は、新生物組織が内部組織である、新生物組織に関連する医学的状態を処置するために投与される。
【0295】
表現「内部組織」は、本明細書中では表現「体内組織」と交換可能に使用され、外側から近づくことができない、対象の身体の内部に位置するどのような組織をも記述する。表現「内部組織」は、本明細書中に記載される皮膚組織および粘膜組織とは異なるどのような組織をも、すなわち、体内部のどのような組織をも包含する。
【0296】
表現「内部の新生物組織」は、過形成が存在する本明細書中で定義されるような内部組織を記述する。内部の新生物組織の限定されない例には、肝臓の新生物組織、甲状腺の新生物組織、胆管の新生物組織、膀胱の新生物組織、骨の新生物組織、脳の新生物組織、乳房の新生物組織、肺の新生物組織、胃腸の新生物組織、結腸の新生物組織、生殖器の新生物組織、上皮の新生物組織、食道の新生物組織、腎臓の新生物組織、膵臓の新生物組織、卵巣の新生物組織、子宮頸部の新生物組織、子宮の新生物組織、精巣の新生物組織、膵臓の新生物組織、前立腺の新生物組織、直腸の新生物組織、胃の新生物組織、汗腺の新生物組織、口腔の新生物組織、眼・網膜の新生物組織、筋肉の新生物組織が含まれる。
【0297】
内部の新生物組織に関連し、本明細書中に記載される化合物によって処置可能である限定されない例示的な医学的状態が、固形悪性腫瘍、例えば、脳、卵巣、結腸、前立腺、腎臓、膀胱、乳房、子宮、子宮頸部および肺のガンなど(これらに限定されない)である。これらのガンはさらに細分化することができる。例えば、脳のガンには、多形性神経膠芽細胞腫、未分化星状細胞腫、星状細胞腫、脳室上衣細胞腫、希突起膠腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、肉腫、血管芽細胞腫および松果体実質性が含まれる。
【0298】
限定されない例には、聴神経腫、腺ガン、血管肉腫、星状細胞腫、胆管ガン、膀胱ガン、甲状腺ガン、気管ガン、骨起源の腫瘍(例えば、骨肉腫など)、脳腫瘍(例えば、神経膠腫および神経芽細胞腫など)、乳ガン、子宮頸ガン、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛ガン、結腸ガン、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺ガン、胚性ガン腫、内皮肉腫、脳室上衣細胞腫、上皮ガン、食道ガン、ユーイング腫瘍、線維肉腫、血管芽細胞腫、肝ガン、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、肺ガン(例えば、気管支原性ガン、小細胞肺ガンなど)、リンパ管内皮肉腫、リンパ管肉腫、髄様ガン、髄芽細胞腫、中皮腫、粘液肉腫、膵臓ガン、乏突起膠腫、骨原性肉腫、卵巣ガン、膵臓ガン腫、乳頭状ガン、乳頭状腺ガン、松果体腫、前立腺ガン、直腸ガン、腎臓ガン(例えば、腎細胞ガンおよびウィルムス腫瘍など)、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、皮脂腺ガン、セミノーマ、胃ガン、滑膜腫、汗腺ガン、精巣腫瘍、子宮ガンおよびそれぞれの原発性ガンの転移疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0299】
本明細書中に記載される化合物の投与を局所的または全身投与のどちらでも行うことができる。本明細書中に記載される化合物の失活化効果を、新生物組織を化合物と直接に接触させることにより達成することができる一方で、間接的な効果もまた、例えば、本明細書中下記において詳述されるように、全身経路を介して新生物細胞に対する免疫系の応答を高めることによって生じ得る。
【0300】
いくつかの実施形態において、化合物を投与することが、新生物組織を化合物と接触させることによって行われる。
【0301】
いくつかの実施形態において、上記投与することは局所的に行われる。
【0302】
いくつかの実施形態において、上記投与することは体内に行われる。
【0303】
用語「局的的(に)」は、本明細書中で使用される場合、本明細書中に記載される化合物が、身体の表面に、例えば、新生物性の皮膚組織または粘膜組織などに投与されることを記述する。
【0304】
用語「体内(に)」は、本明細書中で使用される場合、(身体表面に対するのとは対照的に、すなわち、局所的とは対照的に)身体の内部に行われる投与を記述する。体内投与は、本明細書中に記載される化合物が、化合物と、他の場合には近づくことができない内部の新生物組織との直接的接触を可能にする外科的手順の期間中に投与されることを包含する。
【0305】
体内投与の限定されない例には、局所投与、定位的投与および血管内投与が含まれる。
【0306】
局所投与は、本明細書中で使用される場合、化合物を直接に新生物組織に適用することを記述する。体内局所投与は、化合物を、例えば、外科的手順の期間中に、直接に内部の新生物組織に適用することを記述する。用語「局所投与」は、腫瘍内注入、すなわち、直接的に腫瘍内への薬物の注入による投与もまた包含する。
【0307】
定位的投与では、目標の新生物組織(例えば、腫瘍など)を三次元空間で突き止め、化合物を当該組織に導くために、コンピューター、および、少なくとも2つの面で行われる画像化が使用される。これには、例えば、「直視」下で行われる投与が含まれる。
【0308】
血管内投与は、本明細書中で使用される場合、化合物が新生物組織の血管に投与されることを記述する。
【0309】
例えば、子宮頸部および/または子宮の新生物を、本明細書中に記載される化合物または組成物を、例えば、当該組織を、化合物が浸されたスポンジと接触させることによって当該新生物組織に局所的に適用することによって処置することができる。
【0310】
膀胱ガンを、直視技術を使用して化合物を投与することによって処置することができる。
【0311】
腹部の過形成を、外科的手順の期間中における化合物の局所投与によって処置することができる。
【0312】
本明細書中に記載される化合物の重要な、有益な特徴の1つが、化合物が新生物組織を失活化する一方で、この組織は組織学的評価のために依然として好適であり、それにより、医師がこの組織の特定の組織学的特徴を評価することを可能にすることである。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法および使用のいずれにおいても、新生物組織の組織学的評価が化合物投与の後で行われる。
【0313】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される化合物は、新生物組織の少なくとも一部を外科的に除くことをさらに含む併用療法の中で利用される。そのような場合、化合物の投与は、外科的手順の前、外科的手順の期間中、または、外科的手順の後であり得る。
【0314】
化合物を外科的手順の前に投与することを、本明細書中に記載される方法(投与経路)のいずれかによって行うことができる。いくつかの実施形態において、化合物は、依然として外科的手順の期間中ではあるが、新生物組織を除く前に局所的に投与される。
【0315】
化合物を外科的手順の後で投与することを、新生物組織を外科的に除いた後のインビボで、または、化合物がその除かれた新生物組織に適用されるエクスビボでのどちらでも行うことができる。
【0316】
本明細書中上記で議論されるように、新生物組織の外科的除去は、新生物組織に関連する医学的状態の管理において頻繁に用いられる処置選択肢の1つである。しかしながら、新生物組織が悪性であるとき、外科的操作の期間中において、悪性細胞の血管内およびリンパ管内への播種が生じることがあり、この結果、他の身体場所における転移および術後の再発がもたらされる。したがって、そのような医学的状態を本明細書中に記載される化合物により処置することは、起こり得る播種、および、転移から発達する二次的腫瘍の危険性がはるかにより低くなるので、外科的処置だけと比較した場合、有益である。そのような意見についての裏付けが下記の実施例の節において示される。下記の実施例の節において示されるように、DPAまたはDPAオリゴマーによる処置の後での、2年〜8年の追跡調査期間の期間中における悪性皮膚腫瘍再発のレベルは無視できるほどであり、そのうえ、致死性事例だけでなく、皮膚腫瘍の局地的転移および遠隔転移の発生が全く報告されなかった。
【0317】
したがって、本発明のいくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法は、この方法が、悪性細胞の血管内およびリンパ管内への播種を軽減するか、またはなくすためのものであることによって、悪性新生物組織に関連する医学的障害を処置するためのものである。いくつかの実施形態において、悪性細胞の播種が外科的手順に伴う。
【0318】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、悪性新生物組織に関連する医学的状態を有し、当該悪性新生物組織の少なくとも一部を除くための外科的手順を受ける対象の血管内および/またはリンパ管内への悪性細胞の播種を軽減するか、またはなくす方法が提供される。この方法は、本発明のこの局面によれば、本明細書中に記載される化合物の失活化有効量を外科的手順の前または外科的手順と同時にそのような対象に投与することによって行われる。
【0319】
本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、悪性新生物組織に関連する医学的状態を有し、当該悪性新生物組織の少なくとも一部を除くための外科的手順を受ける対象の血管内および/またはリンパ管内への悪性細胞の播種を軽減するか、またはなくすための医薬品の製造における本明細書中に記載される化合物の使用が提供される。
【0320】
いくつかの実施形態において、悪性新生物組織は皮膚組織または粘膜組織である。いくつかの実施形態において、悪性新生物組織は、本明細書中で定義されるような内部組織である。
【0321】
いくつかの実施形態において、医学的状態は、本明細書中で定義されるような転移する悪性の皮膚腫瘍または粘膜腫瘍である。
【0322】
外科的手順が悪性の新生物性の皮膚組織または粘膜組織の除去のために使用される悪性の皮膚および粘膜の医学的状態で、本明細書中に記載される化合物による処置に好適である悪性の皮膚および粘膜の医学的状態の限定されない例が、表在性基底細胞ガン、基底細胞ガン、結節性基底細胞ガン、基底細胞色素性母斑症候群−基底細胞腫、扁平上皮ガン、メルケル小柱細胞ガン、基底細胞ガンを伴うヤーダッソーン脂腺母斑、表皮内およびステージ1aの表在性拡大型黒色腫、表皮内およびステージ1aの結節性悪性黒色腫、カポジ出血性肉腫(初期の斑状病変、AIDS非関連)、ならびに、悪性黒子型黒色腫である。
【0323】
外科的手順が内部の新生物組織の除去のために使用される悪性の医学的状態で、本明細書中に記載される化合物による処置に好適である悪性の医学的状態の限定されない例が、本明細書中に記載される固形悪性腫瘍であり、これには、聴神経腫、腺ガン、血管肉腫、星状細胞腫、胆管ガン、膀胱ガン、甲状腺ガン、気管ガン、骨起源の腫瘍(例えば、骨肉腫など)、脳腫瘍(例えば、神経膠腫および神経芽細胞腫など)、乳ガン、子宮頸ガン、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛ガン、結腸ガン、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺ガン、胚性ガン腫、内皮肉腫、脳室上衣細胞腫、上皮ガン、食道ガン、ユーイング腫瘍、線維肉腫、血管芽細胞腫、肝ガン、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、肺ガン(例えば、気管支原性ガン、小細胞肺ガンなど)、リンパ管内皮肉腫、リンパ管肉腫、髄様ガン、髄芽細胞腫、中皮腫、粘液肉腫、膵臓ガン、乏突起膠腫、骨原性肉腫、卵巣ガン、膵臓ガン腫、乳頭状ガン、乳頭状腺ガン、松果体腫、前立腺ガン、直腸ガン、腎臓ガン(例えば、腎細胞ガンおよびウィルムス腫瘍など)、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、皮脂腺ガン、セミノーマ、胃ガン、滑膜腫、汗腺ガン、精巣腫瘍、子宮ガンまたはそれぞれの原発性ガンの転移疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0324】
本明細書中に記載される方法および使用のいずれにおいても、本明細書中で定義されるような化合物はさらなる活性な薬剤との組合せで利用することができる。1つの例示的なそのようなさらなる活性な薬剤がセレン含有薬剤である。セレンおよびセレン含有化合物の抗ガン活性がこれまでに報告されている[Clark他、Nutr Cancer、2008、60(2):155〜63]。例えば、SeOは、内因性抗酸化剤(グルタチオン)の濃度を増大させることが知られている。セレン含有化合物(例えば、SeOなど)はまた、免疫刺激剤であること、同様にまた、腫瘍成長および播種を阻害することが知られている。したがって、セレン、または、セレンを含む化合物を、本明細書中に記載されるハロゲン化脂肪族酸と一緒に同時投与することにより、高まった失活化効果が達成され得ることが示唆される。
【0325】
いくつかの実施形態において、セレン含有化合物は、セレンの塩、セレンの酸化物、セレンのハロゲン化物またはセレンの酸である。本発明の実施形態の関連での使用のために好適である例示的なセレン含有化合物には、SeH、SeCl、SeF、SeOCl、SeHまたはSeHが含まれるが、これらに限定されない。
【0326】
いくつかの実施形態、すなわち、本明細書中に記載される方法および使用のいずれにおいても、化合物が処置期間の期間中に1回〜10回の間で投与される。いくつかの実施形態において、化合物が処置期間の期間中に1回または2回投与される。「処置期間」によって、新生物組織をなくすか、または減らすために要求される期間、および/あるいは、新生物組織の再発が全く認められない期間が意味される。
【0327】
理論によってとらわれないが、本明細書中に記載される化合物は、原発性腫瘍に位置する悪性および前悪性の新生物組織を失活化し、その結果、これらの悪性細胞および前悪性細胞の抗原性成分を血管内およびリンパ管内に放出し、それにより、免疫系がこれらの抗原を認識し、かつ、これらの抗原に対する直接的または間接的な免疫応答を発揮することができるようにすることが推測される。この誘導された免疫応答はその後、原発性腫瘍部位における悪性細胞、同様にまた、原発性腫瘍から血管/リンパ管内に播種されている悪性細胞の表面に位置する類似した抗原の特定をもたらすことができ、また、これらの細胞を殺し、それにより、腫瘍細胞の成長を阻害することができ、かつ、転移し、二次的腫瘍を生じさせる悪性細胞の能力を低下させることができる。
【0328】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、悪性細胞に対する全身性免疫応答を誘導する方法であって、治療効果的な量の本明細書中に記載される化合物をその必要性のある対象に投与することを含む方法が提供される。
【0329】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、悪性細胞に対する全身性免疫応答を誘導するための医薬品の製造における本明細書中に記載される化合物の使用が提供される。
【0330】
免疫応答の誘導はさらに、前悪性細胞および/または潜在的悪性細胞が悪性になり得ることを、これらの細胞が悪性タイプの細胞に形質転換される前に、これらの細胞をそれらの抗原性成分の認識により破壊することによって低減するために利用することができる。
【0331】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、前悪性細胞および/または潜在的悪性細胞に対する全身性免疫応答を誘導する方法であって、治療効果的量の本明細書中に記載される化合物をその必要性のある対象に投与することを含む方法が提供される。
【0332】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、前悪性細胞および/または潜在的悪性細胞に対する全身性免疫応答を誘導するための医薬品の製造における本明細書中に記載される化合物の使用が提供される。
【0333】
表現「悪性細胞」は、その成長が自己制限的ではなく、隣接組織に浸入することができ、かつ、遠隔組織への拡大(転移)が可能であり得る新生物細胞を記述する。
【0334】
表現「前悪性細胞」および表現「潜在的悪性細胞」は、悪性ではないが、正常な細胞と比較された場合、悪性になる確率がより大きい細胞を記述するために交換可能に使用される。
【0335】
表現「全身性免疫応答」は、抗原にさらされたときの、生物特異的な体液性免疫細胞および細胞性免疫細胞の全身性の産生および循環を記述し、生物特異的な免疫グロブリン(抗体)および細胞傷害性単核細胞によって特徴づけられる。本明細書中で使用される場合、「抗原」は、哺乳動物に導入されたとき、検出可能な免疫応答を体液性および細胞性の両方で誘導する任意の物質であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「抗原」はまた、免疫応答を誘導することができる抗原の任意の部分(例えば、エピトープ)を含む。
【0336】
いくつかの実施形態において、誘導された全身性免疫応答は生来的免疫応答または後天的免疫応答である。
【0337】
高等生物の免疫系は順応性(後天的)成分および生来的成分から構成される。生来的免疫系は、ほとんどどの抗原に対しても暴露後直ちに、または、暴露後数時間以内に作動する宿主の抗原非特異的な防御機構を示す。生来的免疫系は、微生物を排除するための身体による最初の応答を表す。生来的免疫系は、マクロファージを含む食作用細胞、および、異物を飲み込む(貪食する)ことができる多形核白血球を含む。対照的に、順応性免疫系は、数日かかって現れ、特定の抗原と反応し、これを除く抗原特異的な防御機構を示す。順応性免疫系は生涯にわたって発達する。順応性免疫系は白血球に基づいており、2つの大きな部分、すなわち、体液性免疫系(これは、B細胞によって産生される免疫グロブリンを介して主に作用する)と、細胞媒介免疫系(これはT細胞を介して主に機能する)とに分けられる。
【0338】
全身性免疫応答の誘導を、内因性因子(例えば、TNF−α、インターフェロン−α、インターロイキン−1、インターロイキン−5、インターロイキン−6およびインターロイキン−8、ならびに、これらの組合せなど)の発現をアップレギュレーションすることによって行うことができる。この誘導はさらに、Tヘルパー細胞タイプ−1の活性化を介して行うことができる。この誘導はさらに、サイトカイン(例えば、インターフェロン、IL−10またはIL−12など)の活性化を介して行うことができる。
【0339】
本明細書中に記載される化合物による全身性免疫応答の誘導はさらに、免疫刺激剤と一緒での化合物の同時投与によって強化することができる。
【0340】
したがって、いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される化合物は、少なくとも1つの免疫刺激剤との組合せで利用される。
【0341】
用語「免疫刺激剤」は、対象の免疫応答を刺激する化合物を記述する。例示的な免疫刺激特性が、例えば、サイトカインの分泌、インターロイキンの産生およびリンパ球の機能などに対する影響によって現れ得る。いくつかの実施形態において、免疫刺激剤は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)である。
【0342】
さらなる例示的な免疫刺激剤には、組換えヒトインターロイキン2(rIL−2)、マンノースの多糖(例えば、マンナン)、β(1,3)グルコースの多糖(例えば、グルカン)、β(1,4)アセチル化マンノースの多糖(アセマンナン)、β(1,4)N−アセチルグルコサミンの多糖(キチン)、ヘテロ多糖(例えば、ラムノガラクツロナン(ペクチン)など)、水溶性ポリマー、ムラミルペプチド、グラム陰性細菌由来のリポ多糖(LPS)およびその誘導体、ならびに、任意の他のカチオン性界面活性剤、インターロイキン、インターフェロンおよび増因子が含まれるが、これらに限定されない。
【0343】
本明細書中に記載される化合物の失活化活性はさらに、本明細書中に記載される化合物は新生物組織における血管形成を阻害し、それにより、組織への血液供給を減らすことができることに起因し得る。血管形成の阻害を、血管新生促進性因子の発現をダウンレギュレーションすること、および/または、内因性の血管形成阻害剤(例えば、エンドスタチン、ツムスタチン、インターフェロン、インターロイキンおよび/またはトロンボスポンジンなど)の発現をアップレギュレーションすることを介して達成することができる。
【0344】
本明細書中に記載される化合物の失活化活性はさらに、本明細書中に記載される化合物は、前悪性細胞、悪性細胞および/または潜在的悪性細胞に対する炎症応答を誘導することができることに起因し得る。この炎症応答を、炎症性化学誘引タンパク質の発現をアップレギュレーションすることを介して達成することができる。
【0345】
本明細書中に記載される方法および使用のいずれにおいても、本明細書中に記載される化合物は、それ自体で、または、医薬的に許容されるキャリアをさらに含み得る医薬組成物に配合されてのどちらでも利用することができる。
【0346】
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、上記化合物は、医薬的に許容されるキャリアをさらに含む医薬組成物の一部を形成する。
【0347】
本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、本明細書中に記載される化合物のいずれかを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物が提供される。
【0348】
本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、医薬品の製造における本明細書中に記載される化合物のいずれかの使用が提供される。
【0349】
本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、本明細書中に記載されるオリゴマー(本明細書中に記載される化合物のオリゴマー形態)を有効成分として含み、かつ、医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物が提供される。
【0350】
本発明のいくつかの実施形態の別の局面によれば、医薬品の製造における本明細書中に記載されるオリゴマーの使用が提供される。
【0351】
いくつかの実施形態において、組成物における化合物の濃度は組成物の総重量の20重量パーセント〜100重量パーセントであり、したがって、組成物の20重量パーセント、30重量パーセント、40重量パーセント、50重量パーセント、60重量パーセント、70重量パーセント、80重量パーセント、90重量パーセントまたは100重量パーセントが、それらの間の任意の値を含めて可能である。いくつかの実施形態において、化合物の濃度は組成物の総重量の70重量パーセント〜90重量パーセントである。
【0352】
いくつかの実施形態において、医薬組成物はさらに、本明細書中に記載される少なくとも1つのさらなる活性な薬剤(例えば、セレン含有剤)を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物はさらに、本明細書中に記載される免疫刺激剤を含む。
【0353】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は包装材に詰められ、かつ、新生物組織に関連する医学的状態の処置における使用のために当該包装材の内部または表面において印刷されて特定される。
【0354】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、悪性新生物組織に関連する医学的状態を有し、当該悪性新生物組織の少なくとも一部を除くための外科的手順を受ける対象の血管内および/またはリンパ管内への悪性細胞の播種を軽減または防止することにおける使用のために特定される。
【0355】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に提示される化合物と、他の化学的成分(例えば、医薬的に許容されかつ好適なキャリアおよび賦形剤など)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0356】
本明細書中以降、用語「医薬的に許容されるキャリア」は、交換可能に使用され得るが、生物に対する著しい刺激を生じさせず、かつ、投与された化合物の生物学的な活性および性質を妨げないキャリアまたは希釈剤を示す。キャリアの非限定的な例としては、プロピレングリコール、塩水、乳剤および有機溶媒と水の混合物、並びに固体(例えば粉末)および気体のキャリアである。
【0357】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0358】
薬物の配合および投与のための技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出されることができ、これは参考として本明細書中に組み込まれる。
【0359】
本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用されることができる調製物への化合物の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の医薬的に許容されるキャリアを使用して従来の様式で配合されることできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。投与量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化しうる。正確な配合、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択されることができる(例えば、Finglら、1975「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1 p.1を参照のこと)。
【0360】
医薬組成物は、局所的または全身的な処置または投与が最上であるかどうかに、また、処置されるべき面積に依存する経路の1つまたは複数のどちらかでの投与のために配合することができる。本明細書中上記で議論されるように、本明細書中に記載される組成物の治療効果が、新生物組織を組成物と直接に接触させることにより達成され得る一方で、間接的効果もまた、例えば、新生物細胞に対する免疫系の応答を全身的経路により高めることによって生じ得る。
【0361】
したがって、いくつかの実施形態において、医薬組成物または医薬品は局所投与のために配合される。いくつかの実施形態において、医薬組成物または医薬品は全身投与のために配合される。
【0362】
いくつかの実施形態において、医薬組成物または医薬品は、本明細書中で定義されるような体内投与のために配合される。
【0363】
投与を、経口、吸入または非経口(例えば、静脈内滴注、または、腹腔内、皮下、筋肉内もしくは静脈内への注射による)、定位的、血管内または局所的(眼、膣、直腸、鼻腔内を含む)によって行うことができる。
【0364】
局所的投与のための配合物には、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、坐薬、ドロップ剤、液体剤、噴霧剤および粉末剤が含まれ得るが、これらに限定されない。従来の医薬用キャリア、水性、粉末または油性の基剤、増粘剤などが必要であり得るか、または、望ましい場合がある。
【0365】
経口投与のための配合物には、粉末剤または顆粒剤、水または非水性媒体における懸濁物または溶液物、小袋剤、ピル、カプレット、カプセルまたは錠剤が含まれる。増粘剤、希釈剤、香味剤、分散化助剤、乳化剤またはバインダーが望ましい場合がある。
【0366】
非経口投与のための配合物には、緩衝剤、希釈剤および他の好適な添加物もまた含有し得る無菌溶液が含まれ得るが、これに限定されない。徐放性組成物が処置のために想定される。
【0367】
組成物は、外科的手順の期間中における新生物組織への適用のために配合することができる。そのような場合、配合物は、局所投与、血管内投与のために、または、定位的手順での使用のために好適であるように配合することができる。
【0368】
投与すべき組成物の量は、当然のことながら、処置されている対象、病気の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存する。
【0369】
新生物組織に投与すべき組成物の量の決定は、とりわけ、本明細書中に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0370】
いくつかの実施形態において、上記量は1cmの新生物組織直径あたり組成物の0.001ml〜5mlである。
【0371】
いくつかの実施形態において、上記量は1cmの新生物組織直径あたり組成物の0.01ml〜1mlである。
【0372】
したがって、例えば、0.1mlの量を、直径が2cm〜3cmである新生物組織を処置するために使用することができる。組成物の2mlの量を、直径が5cm〜10cmである新生物組織を処置するために使用することができる。
【0373】
水の消毒剤として一般に使用されることによって、0.2mlのDPAが1リットルの水に加えられることが、これに関して指摘される。したがって、上記で示された量は非毒性であり、また、消毒された水を飲むどのような人によっても経口接種される量の範囲内であることが理解される。
【0374】
本発明の組成物は、所望されるならば、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA(米国食品医薬品局)承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる(例えば、限定されないが、ブリスターパックまたは加圧容器(吸入用)など)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随し得る。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、容器に関連した通知によって適応させることがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きであり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用キャリアに配合された本発明の化合物/オリゴマーを含む組成物もまた、上で詳述されたように、悪性新生物組織に関連する医学的状態を有し、悪性新生物組織の少なくとも一部を除くための外科的手順を受ける対象の血管内および/またはリンパ管内への悪性細胞の播種を軽減するか、または予防するために新生物組織と関連した医学的状態を処置するために調製され、適切な容器に入れられ、かつ標識され得る。
【0375】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0376】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0377】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0378】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0379】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0380】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0381】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0382】
本明細書で使用される場合、用語「治療する/処置する」には、状態の進行を取り消すこと、実質的に阻害すること、遅くすること、または、逆向きにすること、状態の臨床的症状または審美的症状を実質的に改善すること、あるいは、状態の臨床的症状または審美的症状の出現を実質的に防止することが含まれる。
【0383】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0384】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0385】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0386】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0387】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0388】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0389】
化学合成
材料、合成および方法:
DPAを、無色透明で、微粘性の液体物質として、Sigma−Aldrich Agから得た。より低純度のDPAもまた、知られている供給者から得られ、さらなる精製を行うことなく、首尾よく使用された。
【0390】
セレンおよび二酸化セレンを、MERCK Agから得た。
【0391】
DPAは、密封された褐色ガラス容器において−4℃〜+50℃の間の温度で貯蔵されるとき、少なくとも5年の期間中は化学分析的安定性および生物学的(効力)安定性に関して、限定されない量で再現することができる。
【0392】
テトラオリゴマー−ポリマーの形態でのDPAの合成:
DPAの水における70%(v/v)溶液を190℃の温度に加熱し、2時間、4時間または6時間還流し、室温に冷却した。得られた生成物をろ過し、Magnetostrictive Ultrasound Generator(USR)を使用して3回(毎日1時間、3日間連続して)超音波処理し、もう一度ろ過して、褐色に着色した液体を得た。
【0393】
得られた生成物の元素分析は、2時間の還流期間の後では、DPAのダイマーが得られたこと、4時間の還流期間の後では、DPAのテトラマーが得られたこと、そして、6時間の還流期間の後では、DPAのより長いオリゴマーが得られたことを示した。
【0394】
得られたオリゴマーは親油性であるとして特定され、リポソームまたは目に見えない小胞を水溶液において形成する傾向がある。
【0395】
金属セレンと錯化したDPAオリゴマーの合成:
金属セレン(100mg)を250mlのナシ型石英ガラスフラスコに入れ、DPAオリゴマー(100ml、本明細書中上記で記載されるように合成されたもの)をフラスコに注意深く加えた。得られた懸濁物を195℃の温度で6時間還流し、その偽、室温に冷却した。得られた混合物をろ過し、これにより、所望されるDPAオリゴマー−セレン錯体を暗褐色に着色された液体として得た。
【0396】
金属セレンおよびSeOと錯化したDPAオリゴマーの合成:
本明細書中上記で記載されるように合成されたDPAオリゴマー−セレン錯体と、10mlの、SeOの10%(w/v)水溶液とを混合して一緒にした。混合物を(3日間連続して毎日1時間)超音波処理し、その後、生成物を、固体不純物を捨てるためにろ過した。得られた液体をさらなる超音波処理サイクル(3日間連続して毎日1時間)に供し、その後、さらにろ過し、これにより、所望される生成物を暗褐色に着色された液体として得た。
【0397】
一般に、下記において提供される実施例では、DPA、本明細書中に記載されるDPAオリゴマー、または、セレンと錯化したDPAオリゴマーのいずれかを含有する溶液が使用された。これらはすべてがまとめて「DPAまたはDPAオリゴマー」として示される。
【0398】
実施例1
様々な皮膚病状を処置することにおけるDPAの治療効果
プロトコル:
異なる診療所、病院および開業医からの、様々な皮膚病状に罹患する6938名の患者が前方視的に募集され、共通する承認されたプロトコルのもと、DPA、または、本明細書中上記で記載されるように合成されたそのオリゴマーにより処置された。
【0399】
良性腫瘍、ウイルス性いぼまたは粘膜膜性腫瘍に罹患する患者には、DPAのテトラマー形態が投与された。場合により、モノマーとしてのDPAが使用された。前悪性腫瘍または悪性腫瘍に罹患する患者には、DPAのより長いオリゴマーが投与された。
【0400】
ほとんどの場合において、DPAのモノマーまたはオリゴマーが、麻酔または他の特別な状態を用いることなく、1回だけ投与された。レックリングハウゼン病(末梢神経線維腫症の多発性形態)に罹患する患者の場合にだけ、皮膚腫瘍病変の数が100を超えたとき、多数回の処置が行われた。
【0401】
皮膚腫瘍の生検試料が、ラジオエレクトロ焼灼技術を使用し、それにより、腫瘍からの悪性細胞のリンパ血行性播種を避ける生体内固定によって、DPAオリゴマー処置後(病変組織の完全な失活化の後)直ぐに採取された。
【0402】
安全性研究:
DPAオリゴマー処置の安全性が、処置された皮膚病変の外観、局所的皮膚反応、生命徴候測定値、有害事象、および、患者によって服用される併用医薬品を評価することによって評価された。
【0403】
治療効力:
様々な皮膚病状の処置におけるDPAオリゴマーの効力がさらに、短期および長期の追跡調査によって調べられた。
【0404】
短期追跡調査:
皮膚病変/腫瘍をさらに特徴づけ、局地的転移および遠隔転移を検出するためのすべての必要なさらなる検査(例えば、X線、生検および他の実験室検査など)が、患者が保険契約している医療機関で行われた。
【0405】
3週間、6週間および12週間の処置後通院において、臨床評価が、処置された病変が目的部位で視認されたかどうかを明らかにするために行われた。色素沈着した病変は、悪性であることが疑われたので、ラジオエレクトロ技術を使用する、病変からの3mmの周縁部を伴う生検サンプルの切除、および、サンプルを腫瘍の残留または再発の証拠について組織病理学的に調べることによって顕微鏡でさらに評価された。
【0406】
長期追跡調査:
臨床試験に参加する6938名の患者から、これらの患者のうちの4778名(68.8%)についての長期臨床結果がさらに得られた。長期結果が、DPAオリゴマーにより処置された患者について、処置後4年〜8年で報告された。追跡調査に登録された4778名の患者が合計で45474個の腫瘍病変に罹患していた。患者の84%(4021名)が2つ以上の腫瘍病変を処置前に有し、患者の8.4%(411名)が、100を超える悪性および非悪性の腫瘍病変に罹患していた。腫瘍病変の14%(6524個)が、(手術、X線、レーザー、光線手技、化学手技、免疫手技などの後における)処置後の局所的再発であった。
【0407】
病変の病理がこれらの事例(良性および悪性の両方)の1996例において顕微鏡で明らかにされた。
【0408】
長期追跡調査には、局所的再発または無症候性の局地的転移および遠隔転移、同様にまた、新しい原発性病変の発達の検査が含まれた。追跡調査回数に関する厳格な指針は何ら決められなかったが、それぞれの患者が年に少なくとも3回の再検査を受けた。再検査の正確な回数は、医学的検討、例えば、処置された腫瘍のタイプ、および、他の危険因子(例えば、黒色腫の家族歴、患者の不安、または、患者が疾患の徴候および症状を認識することができるかなど)などに依存した。
【0409】
色素沈着した腫瘍について処置された患者はまた、(日常的な理学的検査および作業関連医学検査を担当する)地域の医師によってモニターされた。場合により、例えば、悪性黒色腫を有する患者については、メラノサイトの分化マーカー(悪性黒色腫が生じる場合には典型的には欠くタンパク質−1(TRP−1)、S−100およびHMB−45を含む)の存在の組織学的評価が行われた。
【0410】
それぞれの患者における目的腫瘍領域の目視評価およびビデオ写真がそれぞれの追跡調査集合のときに行われた。
【0411】
統計学的評価;長期追跡調査の結果は、全6938名の患者を考慮に入れる全例(ITT)解析を使用して評価された。
【0412】
臨床結果
治療効力:
短期追跡調査:
DPAオリゴマー処置の短期臨床結果はすべての処置患者において類似していた。
【0413】
長期追跡調査:
DPAオリゴマー臨床試験の結果が表1〜表11に示される。表1〜表5は、処置された様々なタイプの良性腫瘍病変(表1)、ウイルス性腫瘍病変(表2)、前悪性腫瘍病変(表3)、非転移性悪性腫瘍病変(表4)および可視性粘膜腫瘍病変(表5)に従って分けられた4778名の患者の詳細のすべてを示す。
【0414】
表6は、長期追跡調査においてさらに再検査されたそれぞれのカテゴリーにおける患者および腫瘍の数のまとめを示す。表7は、患者の年齢に関するデータを示し、表8は、追跡調査期間の長さに関するデータを示す。表9は、生検・組織学的検査および/または細胞学的検査および/または臨床検査のみを使用する腫瘍のタイプの確定的臨床診断のレベルに関するデータを示す。
【0415】
表10は、DPA投与の効力の臨床結果を2年〜8年の追跡調査期間の期間中において示し、非常に良好な臨床結果が腫瘍の82.1%において認められ、満足すべきレベルの臨床結果が腫瘍の99.1%において認められた。
【0416】
表11は、DPAオリゴマー処置後の腫瘍再発のレベルを2年〜8年の追跡調査期間の期間中において示すデータを示す。結果は、すべての腫瘍タイプの再発レベルが非常に低く、再発率が、良性腫瘍、ウイルス性腫瘍、前悪性腫瘍、非転移性悪性腫瘍および粘膜腫瘍についてそれぞれ、2.3%、6.1%、3.5%、2.8%および1.2%にすぎなかったことを示す。
【0417】
致死性事例だけでなく、皮膚腫瘍の局地的転移および遠隔転移の発生が全く報告されなかった。
【0418】
これらの結果は、DPAオリゴマー処置の大きい効力が、すべての処置された皮膚腫瘍または皮膚病変において認められ、患者の腫瘍/病変のタイプ、年齢、皮膚の色または性別に依存しなかったことを示す。唯一の例外が足底および手掌の過角化性いぼであり、そのような場合、ほんの10%にすぎない治癒率が認められた。そのような病変は非常に抵抗性であることが広く知られており、したがって、そのような治癒率はそれに関して顕著であることを認識しなければならない。
【0419】
DPAオリゴマーによる処置の安全性に関しては、短期間の局所的アレルギー反応、痛みおよびかゆみが、目に見える皮膚の色素沈着減少または色素沈着過度の受け入れられ得る発症、同様にまた、瘢痕形成およびケロイド形成を伴ったが、処置期間中に患者の5.8%において認められた。全身的毒性が患者のいずれにおいても何ら検出されなかった。
【0420】
まとめると、これらの結果は、DPAオリゴマー処置は、ウイルス性、良性、前悪性および非転移性悪性の皮膚および粘膜の腫瘍および病変の処置において使用される非常に効果的な薬物であることを示す。













【0421】
実施例2
ラットにおける毒性学研究および免疫学研究
研究を、ラットへのDPAまたはDPAオリゴマーの投与の影響を評価するために行った。DPAまたはそのオリゴマーの溶液の1%および0.1%(重量比)を使用し、溶液を数日間にわたって毎日投与した。得られたデータ(示されず)は、ラットのどれもが、形態学的変化を、免疫学的応答に関わる組織のいずれにおいても明らかにせず、また、CPP−Igミリオンとして発現されるIgMの生成における異常が試験溶液の数日の毎日使用の後でなかったことを示した。
【0422】
実施例3
様々な皮膚病状を処置することにおけるDPAの治療効果
さらなる臨床試験において、様々な皮膚病状に罹患する患者が募集され、共通する承認されたプロトコルのもと、DPA、または、本明細書中上記で記載されるように合成されたそのオリゴマーにより処置された。
【0423】
良性、前悪性および悪性の腫瘍、ウイルス性いぼまたは粘膜膜性腫瘍に罹患する患者には、DPAのテトラマー形態が投与された。場合により、モノマーとしてのDPAが使用された。
【0424】
ほとんどの場合において、DPAのモノマーまたはオリゴマーが、麻酔または他の特別な状態を用いることなく、1回だけ投与された。
【0425】
DPAオリゴマー処置の安全性および効力が、処置された皮膚病変の外観、局所的皮膚反応、生命徴候測定値、有害事象、および、患者によって服用される併用医薬品を評価することによって評価された。
【0426】
本明細書中下記において詳しく記載されるように様々な表在皮膚病状に罹患する、十分な教育を受けた患者が登録された。患者には、5歳を超える男女の外来患者、および、妊娠している可能性がないか、または、承認された避妊法(子宮内装置、少なくとも1回の月経周期の避妊用錠剤、インプラントまたはペッサリー)を使用し続けている18歳を超える外来女性患者が含まれた。
【0427】
下記のものが研究から除外された:
授乳中の女性または妊婦;承認された避妊法を使用し続けていない、妊娠の可能性がある女性;重篤な進行した疾患(例えば、進行した心臓状態、腎不全の最終段階、神経学疾患の最終段階など)を有する患者;薬物または食事に対するアナフィラキシー反応の重篤なアレルギーの病歴を有する患者;進行した精神医学障害を有する患者;アルコールまたは違法薬物を日常的に摂取する患者;および、進行した悪性皮膚病変を有する患者。
【0428】
研究プロトコル:
患者は、完全な皮膚科学的臨床歴を提供することが要請された。病変の皮膚科学的評価が行われ、臨床診断された。患部組織の臨床パラメーターが測定され、記録された。生検が場合により行われた。
【0429】
多数の病変に罹患する患者では、処置すべき病変の数が決定された。
【0430】
すべての患者が、試験溶液を、マイクロピペットを使用して皮膚病変領域において(0.01cc未満の)局所的に局所適用することによって処置された。皮膚病変は、処置前、試験溶液の局所適用直後、毎週の処置、および、処置後4週間において写真撮影された。その後、患者は、2年の期間の期間中、再発について検査された。
【0431】
臨床結果:
453名の患者が本研究に参加し、合計で2201個の病変が処置された。これらのうち、15例が悪性腫瘍に罹患していた。参加者の年齢分布は下記の通りであった:
5歳〜10歳−20名の患者;11歳〜20歳−41名の患者;21歳〜30歳−62名の患者;31歳〜40歳−80名の患者;41歳〜50歳−116名の患者;61歳〜70歳−98名の患者;71歳〜80歳−31名の患者;および81歳〜90歳−5名の患者。
【0432】
下記の非悪性病変が処置された:
病変 数(合計=2149)
光線性角化症 237
コンジローマ 150
類表皮嚢胞 52
線維脂肪腫 56
血管腫 12
角化棘細胞腫 6
黒子 7
伝染性軟属腫 148
粘膜嚢胞 3
神経線維腫 3
脂腺過形成 18
脂漏性角化症 358
数タイプの線維腫 560
数タイプの母斑 422
数タイプのゆうぜい 117
【0433】
上記事例の約98%において、病変が消散し、再発が処置後2年では認められなかった。下記の事例では、再発が認められた:光線性角化症(6個の病変を有する6名の患者)、線維脂肪腫(3例、3個の病変)および足底ゆうぜい(5例、13個の病変)。
【0434】
悪性皮膚腫瘍を有する患者において、新生物の再発が、示された期間の期間中には認められなかった。
【0435】
これらの結果はさらに、DPAまたはそのオリゴマーの傑出した治療活性を、様々な皮膚病状を処置することにおいて強調する。
【0436】
実施例4
内部組織における悪性腫瘍の失活化
一般的プロトコル:
1つの例示的プロトコルにおいて、原発性腫瘍および/または腫瘍転移物の失活化が、手術時の直視による、DPA、または、本明細書中に記載されるそのオリゴマーの直接の腫瘍内注入によって、あるいは、手術不能病変の失活化のための、または、外科的切除に備えての、手術前または手術時の超音波誘導ニードルまたはCT誘導ニードルによって達成される。
【0437】
DPAまたはそのオリゴマーが、試験化合物がX線透視装置またはCTモニターリングのもとで注入される病変の十分な飽和化を制御するために放射線不透過性溶液と混合される。
【0438】
悪性病変の外科的除去との併用における腫瘍細胞拡大の危険性を最小限にすることが、切除プロセス自体の期間中での腫瘍細胞の拡大を排除するために、病変の完全な切除に先立つ、切除病変および病変床の回りにおける直視下でのDPAまたはそのオリゴマーの局所的適用によって達成される。
【0439】
別の例示的プロトコルでは、腫瘍または腫瘍転移物の失活化が、亜毒性量のDPAまたはそのオリゴマーを輸入血管またはリンパ循環に注入することによって達成される。
【0440】
別の例示的プロトコルでは、原発性腫瘍および/または転移物の物理的な外科的除去が、下記方法の1つを使用して極小の残存疾患からの再発を最小限に抑えるために、抗ガン免疫化によって達成される:
(i)[自己改変された]腫瘍細胞に対する自己免疫様の反応性を誘導するために、DPAまたはそのオリゴマーによって、あるいは、化学的に、あるいは、ウイルス抗原によって改変された腫瘍細胞の溶解物の皮下投与または皮内投与による全身的免疫化;
(ii)DPAまたはオリゴマーによって改変される残存腫瘍細胞に対する免疫化のために前もって調製される患者自身の樹状細胞をパルス投与することによって腫瘍細胞溶解物を使用すること;
(iii)天然型腫瘍抗原または改変された腫瘍抗原に対する同種反応性応答を誘導するために、少なくとも1つのMHCハプロタイプを患者と共有する家族から得られる樹状細胞を負荷するための腫瘍細胞溶解物を使用すること;および
(iv)免疫応答を局所的な残存生存腫瘍細胞に対して原位置で誘導するために、または、どこか他の所で残存腫瘍細胞に対して誘導するために、外科的切除を伴うことなく自己樹状細胞または同種樹状細胞の病巣内注入による原位置腫瘍細胞ワクチンとして、DPAまたはオリゴマーによって失活化される原発性腫瘍または腫瘍転移物を使用すること。
【0441】
まとめると、局所的な腫瘍失活化、手術により誘導された腫瘍拡大を阻止した後での腫瘍切除、および、特定の局所的または全身的な免疫化による抗ガン免疫療法のさらなる誘導の組合せは、原発性ガンおよび転移性ガンにおけるすべての悪性細胞の排除を最適化することによって、固形腫瘍を有する患者の結果を改善するための最適な臨床方法を提供する。
【0442】
インビボ研究:
BALB/cマウスおよび(BALB/cxC57BL/6)F1マウス(F1)に、転移性乳ガン4T1細胞株がわき腹内に皮膚下に接種される。この腫瘍は局所的に成長し、その後、転移物が肺および肝臓において発達する。
【0443】
すべてのマウスに4T1を皮下に接種し、マウスは、局所的腫瘍が視認されると、下記のように処置されるサブグループに分けられる:
第I群:非処置コントロール。
第II群:腫瘍の外科的除去により処置されるコントロール。
第III群:腫瘍の成長および生存に対するDPAの役割を調べるために、増大用量でのDPAオリゴマーの局所注射により処置されるマウス。
第IV群:腫瘍の成長および生存に対するDPAの累積亜毒性用量の影響を調べるために、亜毒性用量により、1回、2回、3回処置されるマウス。
第V群:腫瘍の外科的切除の前に、DPA、または、第IV群でのような亜毒性用量により処置されるマウス。
第VI群:外科的切除の前に腫瘍床の回りがDPAの亜毒性用量により処置されるマウス。
第VII群:腫瘍細胞ワクチンまたは同種反応性リンパ球だけにより処置されるレシピエントとの比較で、腫瘍の外科的切除、その後、F1レシピエントへの腫瘍細胞ワクチン接種、または、F1レシピエントへの同種反応性ドナーリンパ球C57BL/6幹細胞による免疫療法により処置されるマウス。
第VIII群:DPAによる事前の失活化とともに、または、DPAによる事前の失活化を伴うことなく、樹状細胞の病巣内接種により処置されるマウス。
【0444】
実施例5
外科的除去に先立つDPAまたはそのオリゴマーによる原発性腫瘍の失活化のインビボ研究
研究プロトコル:
8週齢のBALB/cマウスに3.5×10個の4T1をSC接種した(転移性乳ガンのモデル)。腫瘍が皮膚下で視認された+11日目に、マウスを下記のように、群あたり16匹で3つの群に分けた:
【0445】
第1群は非処置コントロールとして役立った;第2群には、原発性腫瘍内へのDPAまたはそのオリゴマーの20マイクロリットル注射により処置されるマウスが含まれた;第3群には、20マイクロリットルの生理的食塩水により処置されるマウスが含まれた。処置後1時間で、マウスを麻酔し、原発性腫瘍を手術により除いた。腫瘍接種後3週間で、マウスを屠殺し、肺および脾臓を転移物について調べ、脾臓の重量を記録した。
【0446】
結果:
皮下腫瘍が、DPAまたはそのオリゴマーにより処置されたマウスでは全く視認できなかった。非処置コントロールの第1群において、5匹のマウスが死亡した。DPA処置された第2群では、どのマウスも死亡しなかった。第3群では、4匹のマウスが死亡した。
【0447】
肺転移物が、非処置コントロールの第1群ではすべてのマウスに、第2群の2匹のマウスに、そして、第3群の5匹のマウスに存在した。
【0448】
脾臓重量が記録された。脾臓が肥大し、コントロールの第1群に属するすべてのマウスにおいては腫瘍転移物で満ちていた[平均、0.477グラム];第3群のマウスにおいてはより少なかった[0.262グラム];第2群に属するすべてのマウスにおいてはさらにより少なかった[0.175グラム]。第2群と、第3群との差は、等分散性についてのLevene検定に基づいて有意であり[p=0.039]、また、多重比較グラフに基づいて境界線有意である[p=0.057]。
【0449】
得られた結果は、悪性腫瘍を除くための外科的手順の期間中におけるDPAまたはそのオリゴマーによる処置が原発性腫瘍に対して効果的であることを明瞭に示す。処置が、DPAまたはそのオリゴマーの溶液の無理なく十分に許容される用量を使用して数分以内に原位置で達成された。得られた結果は、腫瘍の外科的除去の期間中におけるDPAまたはそのオリゴマーによる失活化により、損傷した血管またはリンパ管を介した手術外傷の結果としての腫瘍細胞の全身拡大によって引き起こされ得る遅れた遠隔転移の発生が低減されることを明らかにする。
【0450】
実施例6
ヒト髄膜腫のエクスビボ処置
CTA 3D−MPR(図1Aを参照のこと)を使用して示されるような、髄膜腫に罹患する患者が、LTプテリオン開頭術による腫瘍の外科的除去を受けた。翌日、切除された髄膜腫をDPAおよび/またはそのオリゴマーにより処置した。結果が図1B〜図1Dに示され、結果は髄膜腫の優れた失活化を示す。
【0451】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0452】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生物組織に関連する医学的状態をその必要性のある対象において処置する方法であって、下記の一般式Iを有する化合物、その医薬的に許容される塩または錯体、あるいは、そのオリゴマーの失活化有効量を前記対象に投与することを含む方法:

但し、上記式において、
YはOまたはSである;
Zはヒドロキシまたはチオールである;
Aは、1個〜20個の炭素原子をその骨格鎖に有する、分岐または非分岐の、置換または非置換の飽和した脂肪族炭化水素鎖または不飽和な脂肪族炭化水素鎖である;
Xは前記脂肪族炭化水素鎖のハロゲン置換基である;かつ
nは1〜10の整数であり、ハロゲン置換基の数を表す。
【請求項2】
新生物組織に関連する医学的状態を処置するための医薬品の製造における下記の一般式Iを有する化合物、その医薬的に許容される塩または錯体、あるいは、そのオリゴマーの使用:

但し、上記式において、
YはOまたはSである;
Zはヒドロキシまたはチオールである;
Aは、1個〜20個の炭素原子をその骨格鎖に有する、分岐または非分岐の、置換または非置換の飽和した脂肪族炭化水素鎖または不飽和な脂肪族炭化水素鎖である;
Xは前記脂肪族炭化水素鎖のハロゲン置換基である;かつ
nは1〜10の整数であり、ハロゲン置換基の数を表す。
【請求項3】
新生物組織に関連する医学的状態を処置することにおいて使用される下記の一般式Iを有する化合物、その医薬的に許容される塩または錯体、あるいは、そのオリゴマー:

但し、上記式において、
YはOまたはSである;
Zはヒドロキシまたはチオールである;
Aは、1個〜20個の炭素原子をその骨格鎖に有する、分岐または非分岐の、置換または非置換の飽和した脂肪族炭化水素鎖または不飽和な脂肪族炭化水素鎖である;
Xは前記脂肪族炭化水素鎖のハロゲン置換基である;かつ
nは1〜10の整数であり、ハロゲン置換基の数を表す。
【請求項4】
YはOである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法、化合物又は使用。
【請求項5】
Zはヒドロキシである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法、化合物又は使用。
【請求項6】
nは1〜4の整数である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法、化合物又は使用。
【請求項7】
Aは、メチル、エチルおよびプロピルからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法、化合物又は使用。
【請求項8】
前記化合物は2つのハロゲン置換基を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法、化合物又は使用。
【請求項9】
前記ハロゲン原子のそれぞれがクロロである、請求項8に記載の方法、化合物又は使用。
【請求項10】
Xは、前記炭化水素鎖における前記C(=Y)Z成分から炭素原子0個〜2個離れた位置にある炭素原子の置換基である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法、化合物又は使用。
【請求項11】
前記化合物は2,2−ジクロロプロパン酸である、請求項10に記載の方法、化合物又は使用。
【請求項12】
前記化合物はそのオリゴマーの形態である、請求項1〜11のいずれかに記載の方法、化合物又は使用。
【請求項13】
前記オリゴマーは、そのサイズが、前記新生物組織における細胞間空間と選択的に一致し、かつ、前記新生物組織に近接した正常な組織とは一致しないように選択される、請求項12に記載の方法、化合物又は使用。
【請求項14】
前記オリゴマーはテトラマーである、請求項12又は13に記載の方法、化合物又は使用。
【請求項15】
前記オリゴマーは、下記の化合物からなる群から選択される、請求項12〜14のいずれかに記載の方法、化合物又は使用:

【請求項16】
前記化合物は、医薬的に許容されるキャリアをさらに含む医薬組成物の一部を形成する、請求項1〜15のいずれかに記載の方法、化合物又は使用。
【請求項17】
前記組成物における前記化合物の濃度が前記組成物の総重量の20重量パーセント〜100重量パーセントである、請求項16に記載の方法、化合物又は使用。
【請求項18】
前記化合物の失活化有効量が1cmの新生物組織直径あたり前記組成物の0.001ml〜5mlである、請求項16又は17に記載の方法、化合物又は使用。
【請求項19】
前記新生物組織は、ウイルス性組織、良性組織、前悪性組織および悪性組織からなる群から選択される、請求項1〜18のいずれかに記載の方法、化合物又は使用。
【請求項20】
前記新生物組織の少なくとも一部を外科的に除くことをさらに含む、請求項1及び4〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記医薬品は、前記新生物組織の少なくとも一部を外科的に除くこととの組合せで使用されるためのものである、請求項2及び4〜19のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
前記新生物組織の少なくとも一部を外科的に除くこととの組合せで使用されるためのものである、請求項3〜19のいずれかに記載の化合物。
【請求項23】
前記医学的状態は悪性新生物組織に関連し、かつ、方法は、悪性細胞の血管内またはリンパ管内への播種を軽減するか、またはなくすためのものである、請求項1及び4〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記医学的状態は悪性新生物組織に関連し、かつ、前記医薬品は、悪性細胞の血管内またはリンパ管内への播種を軽減するか、またはなくすためのものである、請求項2,4〜19及び21のいずれかに記載の使用。
【請求項25】
前記医学的状態は悪性新生物組織に関連し、かつ、前記化合物は、悪性細胞の血管内またはリンパ管内への播種を軽減するか、またはなくすためのものである、請求項3〜19及び22のいずれかに記載の化合物。
【請求項26】
前記新生物組織は皮膚組織または粘膜組織である、請求項1〜25のいずれかに記載の方法、化合物又は使用。
【請求項27】
前記投与することは局所的に行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記医薬品は局所投与のために配合される、請求項26に記載の使用。
【請求項29】
前記新生物組織は内部組織である、請求項1〜25のいずれかに記載の方法、化合物又は使用。
【請求項30】
前記新生物組織は固形悪性腫瘍である、請求項29に記載の方法、化合物又は使用。
【請求項31】
前記化合物の前記投与は、前記新生物組織を前記化合物と接触させることによって行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記投与することは体内に行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記医薬品は体内投与のために配合される、請求項29又は30に記載の使用。
【請求項34】
悪性新生物組織に関連する医学的状態を有し、前記悪性新生物組織の少なくとも一部を除くための外科的手順を受ける対象の血管内および/またはリンパ管内への悪性細胞の播種を軽減するか、またはなくす方法であって、請求項1〜15のいずれかに記載される化合物の失活化有効量を外科的手順の前または外科的手順と同時にまたは外科的手順の次に対象に投与することを含む方法。
【請求項35】
悪性新生物組織に関連する医学的状態を有し、前記悪性新生物組織の少なくとも一部を除くための外科的手順を受ける対象の血管内および/またはリンパ管内への悪性細胞の播種を軽減するか、またはなくすための医薬品の製造における請求項1〜15のいずれかに記載される化合物の使用。
【請求項36】
悪性新生物組織に関連する医学的状態を有し、前記悪性新生物組織の少なくとも一部を除くための外科的手順を受ける対象の血管内および/またはリンパ管内への悪性細胞の播種を軽減するか、またはなくすために特定される、請求項1〜15のいずれかに記載される化合物。
【請求項37】
前記化合物の失活化有効量は1cmの新生物組織直径あたり前記組成物の0.001ml〜5mlである、請求項34〜36のいずれかに記載の方法、化合物又は使用。
【請求項38】
前記新生物組織は皮膚組織または粘膜組織である、請求項34〜37のいずれかに記載の方法、化合物又は使用。
【請求項39】
前記医学的状態は、転移する悪性の皮膚腫瘍または粘膜腫瘍である、請求項38に記載の方法、化合物又は使用。
【請求項40】
前記医学的状態は、固形悪性腫瘍である、請求項38に記載の方法、化合物又は使用。
【請求項41】
前悪性細胞および/または潜在的悪性細胞に対する全身性免疫応答を誘導する方法であって、請求項1〜15のいずれかに記載される化合物の治療効果的な量をその必要性のある対象に投与することを含む方法。
【請求項42】
前悪性細胞および/または潜在的悪性細胞に対する全身性免疫応答を誘導するための医薬品の製造における請求項1〜15のいずれかに記載される化合物の使用。
【請求項43】
悪性新生物組織に関連する医学的状態を有し、前記悪性新生物組織の少なくとも一部を除くための外科的手順を受ける対象の血管内および/またはリンパ管内への悪性細胞の播種を軽減するか、またはなくすための請求項1〜15のいずれかに記載される化合物。
【請求項44】
悪性細胞に対する全身性免疫応答を誘導する方法であって、請求項1〜15のいずれかに記載される化合物の治療効果的な量をその必要性のある対象に投与することを含む方法。
【請求項45】
悪性細胞に対する全身性免疫応答を誘導するための医薬品の製造における請求項1〜15のいずれかに記載される化合物の使用。
【請求項46】
悪性細胞に対する全身性免疫応答を誘導するための請求項3〜15のいずれかに記載される化合物。
【請求項47】
医薬品の製造における請求項2〜15のいずれかに記載される化合物の使用。
【請求項48】
請求項1〜15のいずれかに記載される化合物を有効成分として含み、かつ、医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物。
【請求項49】
包装材に詰められ、かつ、新生物組織に関連する医学的状態の処置における使用のために前記包装材の内部または表面において印刷されて特定される、請求項48に記載の医薬組成物。
【請求項50】
包装材に詰められ、かつ、悪性新生物組織に関連する医学的状態を有し、前記悪性新生物組織の少なくとも一部を除くための外科的手順を受ける対象の血管内および/またはリンパ管内への悪性細胞の播種を軽減するか、または妨げることにおける使用のために前記包装材の内部または表面において印刷されて特定される、請求項48に記載の医薬組成物。
【請求項51】
下記の一般式Iを有する化合物のオリゴマー形態、その医薬的に許容される塩または錯体、あるいは、そのオリゴマー:

但し、上記式において、
YはOまたはSである;
Zはヒドロキシまたはチオールである;
Aは、1個〜20個の炭素原子をその骨格鎖に有する、分岐または非分岐の、置換または非置換の飽和した脂肪族炭化水素鎖または不飽和な脂肪族炭化水素鎖である;
Xは前記脂肪族炭化水素鎖のハロゲン置換基である;かつ
nは1〜10の整数であり、ハロゲン置換基の数を表す。
【請求項52】
テトラマーである、請求項51に記載のオリゴマー。
【請求項53】
下記の化合物からなる群から選択される、請求項51に記載のオリゴマー:

【請求項54】
請求項51〜53のいずれかに記載のオリゴマーを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物。
【請求項55】
少なくとも1つのセレン含有化合物をさらに含む、請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
請求項51〜53のいずれかに記載のオリゴマーを調製する方法であって、前記一般式Iを有する化合物のモノマー形態を、水溶液の存在下、150℃〜250℃の温度で加熱し、それにより、前記オリゴマーを得ることを含む方法。
【請求項57】
前記加熱は190℃の温度でなされる、請求項56に記載の方法。

【図1A】
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【図1B−1C】
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【図1D】
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【公表番号】特表2012−529497(P2012−529497A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514593(P2012−514593)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000455
【国際公開番号】WO2010/143188
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(512223744)シーマス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】