説明

ハンダ付け装置及びこれを用いたランプの製造方法

【課題】メンテナンス性の向上、ハンダ付け不良の発生防止、製品品質の向上等を図ることのできるハンダ付け装置及びこれを用いたランプの製造方法を提供する。
【解決手段】ランプの口金3に対しハンダ付けを行うためのハンダ付け装置11は、口金3のアイレット部5を上向きにしてランプを保持するチャックと、アイレット部5の上方に配設される遮蔽板16と、当該遮蔽板16のアイレット部5に対応する位置に設けられた貫通孔16aと、当該貫通孔16a及びその近傍に向け高温気体を噴射するジェットヒータ15と、貫通孔16aを介して上方からアイレット部5に向けてハンダ13を供給するハンダ供給装置14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白熱電球等に代表されるランプの口金に対しハンダ付けを行うハンダ付け装置及びこれを用いたランプの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
白熱電球、電球形蛍光ランプ、LED電球等のランプは、フィラメントやLED等の発光体が、ガラスバルブ等からなる電球本体の内部に収容されるとともに、当該電球本体に対し、照明器具のソケット部に挿し込まれる口金が装着されてなる。口金は、ソケット部からの電力供給を受ける部位であり、電球本体内の発光体に繋がる一対のリード線のうちの一方が口金端部のアイレット部に接続され、他方が口金側部のシェル部に接続されている。
【0003】
口金端部のアイレット部に対しリード線をハンダ付けする方法としては、例えばハンダゴテを用いる方法が一般に知られている。
【0004】
しかしながら、ハンダゴテを用いる方法では、ハンダの付着に伴うコテの劣化などに起因してその交換頻度が多くなるなど、メンテナンス作業に多大な労力を要するとともに、コストの増大を招くおそれがあった。
【0005】
これに対し、熱風を噴射して加熱を行うジェットヒータを用いる技術なども知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭58−185367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記ジェットヒータを用いる方法では、ジェットヒータの風圧により、溶融したハンダが周囲に飛散し、メンテナンス作業に多大な労力を要するおそれがある。
【0008】
また、ジェットヒータの風圧により、溶融したハンダがアイレット部からこぼれ落ちたり、ハンダ表面が波打つ等して、ハンダ付け不良となるおそれがある。ひいては、照明器具へのランプ取付時における接触不良などの原因にも繋がり、製品品質の低下が懸念される。
【0009】
さらに、ジェットヒータから噴射される熱風が広範囲に拡散し、意図しない部位が加熱されてしまうおそれもある。例えば、電球形蛍光ランプやLED電球などの場合、電球本体の内部に、点灯回路を実装した樹脂製のプリント基板などが配設されているため、これらが高温に晒されて、製品不良の発生原因となるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、メンテナンス性の向上、ハンダ付け不良の発生防止、製品品質の向上等を図ることのできるハンダ付け装置及びこれを用いたランプの製造方法を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0012】
手段1.ランプの口金に対しハンダ付けを行うためのハンダ付け装置であって、
前記口金のハンダ付け対象部を上向きにして前記ランプを保持する保持手段と、
前記ランプの上方に配設される遮蔽部材と、
前記遮蔽部材における前記ハンダ付け対象部に対応する位置に設けられた貫通孔と、
前記貫通孔の斜め上方位置から当該貫通孔及びその近傍に向け高温気体を噴射する加熱手段と、
前記貫通孔を介して上方から前記ハンダ付け対象部に向けてハンダを供給するハンダ供給手段とを備えたことを特徴とするハンダ付け装置。
【0013】
なお、本手段における「ランプ」とは、発光体を内包した電球(ランプ)本体と、照明器具のソケット部等に挿し込まれる口金とを備えた物品全般を指し、白熱電球、電球形蛍光ランプ、LED電球などを包括する概念である。
【0014】
上記手段1によれば、加熱手段から噴射される高温気体がハンダ付け対象部に直接吹き付けられるのを、遮蔽部材により遮ることができる。これにより、高温噴射気体の風圧によりハンダ付け対象部上に載った溶融ハンダがこぼれ落ちたり、ハンダ表面が波打つ等するのを防止することができ、ハンダ付け不良の発生を低減することができる。結果として、ハンダ形状を安定させ、ハンダ付け品質の向上を図ることができる。ひいては、ランプの接触不良の発生を低減し、製品品質の向上を図ることができる。
【0015】
また、ランプの上方を覆う遮蔽部材を備えることで、仮に溶融したハンダが飛散した場合でも、ランプや他の機構にハンダが付着するのを防止することができ、メンテナンス性が向上する。
【0016】
さらに、遮蔽部材を備えることにより、加熱手段から噴射される高温気体がランプ本体など意図しない部位に吹き付けられ、当該部位が加熱されてしまうといったおそれを低減することができる。結果として、熱の影響による製品不良の発生を抑制することができ、製品品質の向上を図ることができる。
【0017】
加えて、貫通孔に向け高温気体を噴射する構成とすることにより、貫通孔内への熱の集中及び熱の拡散防止等を図ることができるため、貫通孔及びその近傍において効率よくハンダやハンダ付け対象部等の加熱を行うことができる。結果として、生産性の向上を図ることができる。
【0018】
手段2.円形状の前記貫通孔の径が、円形状の前記ハンダ付け対象部の径以下となっていることを特徴とする手段1に記載のハンダ付け装置。
【0019】
上記手段2によれば、貫通孔の径を比較的小さくすることで、ハンダやハンダ付け対象部等の加熱効率をさらに高めるとともに、遮蔽部材本体によりランプ上方を覆う面積をより大きくすることができ、熱や風の遮蔽効果をより高めることができる。結果として、上記手段1の作用効果をさらに高めることができる。
【0020】
手段3.少なくとも前記ランプと前記遮蔽部材との相対位置関係を上下方向に変更可能な可変手段を備えたことを特徴とする手段2に記載のハンダ付け装置。
【0021】
ハンダ付けの開始当初は、ハンダ付け対象部の温度が十分に上昇していないため、ハンダ付け対象部と遮蔽部材との距離をできる限り近づけ、加熱効率を高めることが好ましい。しかし、かかる構成の下、上記手段2のように、貫通孔の径をハンダ付け対象部の径以下とした場合には、ハンダ付け対象部上で徐々にボリュームが大きくなっていくハンダと遮蔽部材とが接触して、完成時のハンダ形状が歪になってしまうおそれがある。
【0022】
これに対し、本手段によれば、上記可変手段を備えることにより、ハンダ付け対象部上の溶融ハンダの増加に合わせて、ランプと遮蔽部材との相対位置関係を変更させつつハンダ付けを行うことが可能となるため、上記不具合の発生を防止することができる。例えば、「前記ランプと前記遮蔽部材との距離を段階的に引離し、複数回に分けて前記ハンダ付け対象部に対しハンダ付けを行う」構成とすることが一例に挙げられる。
【0023】
手段4.前記ランプと前記遮蔽部材との相対位置関係が変更された際に、前記遮蔽部材と前記加熱手段との相対位置関係が維持されるようにしたことを特徴とする手段3に記載のハンダ付け装置。
【0024】
上記手段4によれば、ランプと遮蔽部材との相対位置関係の変更の前後を通じて、貫通孔に向け適正に高温気体を噴射できるため、安定した加熱処理及びハンダ付けを行うことができる。
【0025】
手段5.前記ハンダ付けの開始時には、前記遮蔽部材と前記ハンダ付け対象部とが当接又は近接した状態となることを特徴とする手段3又は4に記載のハンダ付け装置。
【0026】
上記手段5によれば、ハンダ付け開始時においては、遮蔽部材の下面における貫通孔の周縁部と、ハンダ付け対象部の周縁部との間に隙間が形成されず(又はほとんど形成されず)、当該隙間を高温噴射気体が吹き抜けることもない(又はほとんどない)。このため、貫通孔の内壁及びハンダ付け対象部により囲まれた空間内に、溶融ハンダを安定して保持することができるとともに、加熱効率を高めることができる。結果として、上記手段1の作用効果をさらに高めることができる。
【0027】
なお、遮蔽部材とハンダ付け対象部とが近接した状態において、上記作用効果をより確実に得るためには、遮蔽部材の下面とハンダ付け対象部との上下方向における距離が0.5mm以下となることが好ましい。この程度の隙間であれば、ハンダ付け対象部上の溶融ハンダが、その粘性や表面張力等により、当該隙間から流れ出すおそれは極めて小さい。また、ある程度、両者間に隙間を確保しておくことで、ハンダ付け装置の駆動精度の悪さやランプの製造誤差等を吸収することができ、遮蔽部材とハンダ付け対象部との無理な接触を避けることができる。
【0028】
手段6.上記手段3乃至5のいずれかに記載のハンダ付け装置を用いて、ランプの口金に対しハンダ付けを行うハンダ付け工程を備えたランプの製造方法であって、
前記ハンダ付け工程において、
前記遮蔽部材と前記ハンダ付け対象部とを当接又は近接させた状態で、前記ハンダ供給手段より送り出された所定量のハンダを前記加熱手段により溶融して前記ハンダ付け対象部にハンダ付けを行う一次工程と、
前記遮蔽部材と前記ハンダ付け対象部との距離を前記一次工程よりも離間させた状態で、前記ハンダ供給手段より送り出された所定量のハンダを前記加熱手段により溶融して前記ハンダ付け対象部にハンダ付けを行う二次工程とを少なくとも備え、
複数回に分けて前記ハンダ付け対象部に対しハンダ付けを行うことを特徴とするランプの製造方法。
【0029】
上記手段6によれば、上記手段3乃至5と同様の作用効果が奏される。つまり、一次工程においては、遮蔽部材とハンダ付け対象部とを当接又は近接させることにより、ハンダ付け対象部等の加熱効率を高めるとともに、貫通孔の内壁及びハンダ付け対象部により囲まれた空間内に溶融ハンダを安定して保持しつつ、1回目のハンダ付けを行い、二次工程においては、遮蔽部材とハンダ付け対象部との距離をより引離すことで、ハンダ付け対象部上の溶融ハンダと遮蔽部材とが接触するといった不具合を防止しつつ、2回目のハンダ付けを行うといったように、ハンダ付け工程を複数回に分けることで、適正でかつ生産効率のよいハンダ付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ハンダ付け装置を説明するための概略構成図である。
【図2】ハンダ付け作業位置付近の要部を拡大した一部破断拡大図である。
【図3】アイレット部付近の要部を拡大した一部破断拡大図である。
【図4】第1予熱工程を説明するための模式図である。
【図5】第2予熱工程を説明するための模式図である。
【図6】第1ハンダ送出し工程を説明するための模式図である。
【図7】第1ハンダ送出し工程を説明するための模式図である。
【図8】変位工程及び第2ハンダ送出し工程を説明するための模式図である。
【図9】変位工程及び第2ハンダ送出し工程を説明するための模式図である。
【図10】変位工程を行わず、第2ハンダ送出し工程のみを行った場合の状態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、本実施形態において製造されるランプについて説明する。
【0032】
本実施形態に係るランプ1(図1等参照)は、LED電球よりなり、例えばガラスバルブ等からなる電球本体2内に、光源となるLED(発光ダイオード)や、その点灯回路等を実装したプリント基板、点灯回路に接続される外部電力供給用の一対のリード線などが収容されてなる。そして、電球本体2のネック部2a(図2参照)には、図示しない照明器具のソケット部に挿し込まれ、外部電力を受電するための口金3が装着されている。
【0033】
図2,3に示すように、口金3は、ランプ中心線C1を囲むように設けられた筒状のシェル部4と、当該シェル部4よりもさらに、ソケット部への挿込方向(図2等の上方向)へ突出したアイレット部5とが、図示しない絶縁体を介して一体形成されてなる。これらシェル部4及びアイレット部5が上記点灯回路に外部電力を供給するための電極を構成する。ここで、アイレット部5の端面5a(図3参照)が本実施形態におけるハンダ付け対象部に相当する。
【0034】
シェル部4は、例えばニッケルめっきを施した銅などの導電性金属が筒状に成形されてなり、その外周囲にソケット部へ装着するためのネジ部4aが形成されている。シェル部4は、接着剤や加締め加工などにより電球本体2のネック部2aに組付けられている。シェル部4には、電球本体2から導出された一対のリード線(図示略)のうちの一方が接合されている。
【0035】
アイレット部5は、例えばニッケルめっきを施した銅などの導電性金属が略円盤状に成形されてなり、その中央部にはランプ中心線C1に沿ってリード線挿通孔5b(図3参照)が形成されている。そして、上記一対のリード線のうちの他方は、当該リード線挿通孔5bを介して外部に導出され、アイレット部5の端面5aに接合される。当該リード線とアイレット部5との接合は、後述するように、導出されたリード線を覆うようにアイレット部5の端面5aにハンダ付けをすることにより行われる。
【0036】
アイレット部5の突出部分は、ソケット部への挿込方向へ向けテーパ状に先細った断面略台形状をなしている。本実施形態では、ランプ中心線C1と直交するアイレット部5の端面5aの直径W1は10mmに設定されている。
【0037】
次にランプ1の製造方法について説明する。従来同様、電球本体2内に、LEDや点灯回路、リード線等を収容した後、口金3を電球本体2のネック部2aに装着する。次いで、一対のリード線をシェル部4及びアイレット部5にそれぞれ接合することにより、ランプ1が完成する。
【0038】
本実施形態では、リード線をアイレット部5に接合するアイレット部ハンダ付け工程(以下、単にハンダ付け工程という)に主たる特徴を有しているため、以下、当該ハンダ付け工程について詳しく説明する。
【0039】
まず、当該ハンダ付け工程に使用するハンダ付け装置について説明する。図1は、ハンダ付け装置11を説明するための概略構成図である。図2は、そのハンダ付け作業位置付近の要部を拡大した一部破断拡大図であり、図3は、さらにそのアイレット部5付近の要部を拡大した一部破断拡大図である。
【0040】
図1,2に示すように、ハンダ付け装置11は、ランプ1を把持し所定の作業位置に搬送する保持手段としてのチャック12と、ハンダ(糸ハンダ)13を供給するハンダ供給手段としてのハンダ供給装置14と、ハンダ13等を加熱する加熱手段としてのジェットヒータ15と、主にジェットヒータ15から噴射される高温気体を遮る機能を有する遮蔽部材としての遮蔽板16と、これらの動作を制御する制御手段としての制御装置17とを備えている。
【0041】
チャック12は、図示しない駆動手段により駆動される。そして、チャック12は、口金3(アイレット部5)を上向きにして、ランプ中心線C1が上下方向に沿うようにランプ1を保持する。
【0042】
ハンダ供給装置14は、ハンダ13が巻回されたボビン20と、当該ボビン20を回転駆動しハンダ13を送り出す図示しないモータと、当該送り出されたハンダ13がチューブ21を介して案内されるガイド部材22とを備えている。なお、便宜上、各図面において、ハンダ13に相当する部分には散点模様を付す。
【0043】
ガイド部材22は、変位不能に所定の基台25に固定されている。ガイド部材22は、その供給ノズル22aの軸線がランプ中心線C1と重なるように配設されている。これにより、上方の供給ノズル22aから送り出されたハンダ13は、ランプ中心線C1に沿って、下方の作業位置に配置されたランプ1のアイレット部5に向けて真っ直ぐに送られる。本実施形態では、端面5aの直径W1が10mmのアイレット部5に対し、太さ0.5mm〜2.0mmのハンダ13を用いている。
【0044】
ジェットヒータ15は、電熱線等により加熱した高温気体を噴射ノズル15aより噴射することで、ハンダ13等の加熱を行うものである。本実施形態におけるジェットヒータ15は、温度調節機能を備えており、加熱温度を任意に変更可能に構成されている。
【0045】
ジェットヒータ15は、噴射ノズル15aの軸線C2がランプ中心線C1(上下方向)及び遮蔽板16(水平方向)に対し傾斜し、かつ、噴射ノズル15aの先端が後述する遮蔽板16の貫通孔16aの中心部へ向くように配置されている。
【0046】
また、ジェットヒータ15は、図示しない駆動手段により上下方向へ変位可能に構成されるとともに、遮蔽板16との前記位置関係が変化しないように、制御装置17の制御により遮蔽板16と一体に変位する構成となっている。
【0047】
遮蔽板16は、ハンダ13が付着しにくい材質、例えばセラミック、アルミニウム、ジュラルミン等により略平板状に形成されてなる。
【0048】
遮蔽板16は、上記基台25に取付けられた可変手段としての駆動シリンダ27のロッド28に取付けられており、作業位置にて保持されるランプ1の口金3の上方位置にて、上下方向に変位可能な構成となっている。
【0049】
遮蔽板16には、作業位置に配置されるランプ1のアイレット部5に対応する位置において、上下方向に貫通する貫通孔16aが形成されている。本実施形態では、アイレット部5の端面5aの直径W1が10mmであるのに対し、図3に示すように、貫通孔16aの直径W2がこれよりも小さくかつハンダ13を挿通可能な8mmに設定されている。
【0050】
次に、上記のように構成されてなるハンダ付け装置11を用いたアイレット部5へのハンダ付け工程について説明する。
【0051】
まず、図4に示すように、ワークとなるランプ1が搬送されてくる前段階において第1予熱工程を行う。当該第1予熱工程では、ジェットヒータ15から噴射される高温気体(以下、ホットエアブローという)により、遮蔽板16、特に貫通孔16aの周縁部の予熱を行う。この段階では、ハンダ13の下端がホットエアブローの影響を受けない比較的上方に位置する。
【0052】
次に、図5に示すように、ランプ1が作業位置まで搬送され、口金3のアイレット部5が遮蔽板16の貫通孔16aの直下に配置されると、第2予熱工程を行う。なお、本実施形態では、遮蔽板16の下面16bとアイレット部5の端面5aとの隙間、すなわちランプ中心線C1方向における距離X1が0.5mmに設定されている(図3参照)。これは、ハンダ付け装置11の駆動精度の悪さやランプ1の製造誤差等による遮蔽板16とアイレット部5との無理な接触を避けるためである。
【0053】
第2予熱工程では、ホットエアブローや、予熱された遮蔽板16の輻射熱等により、アイレット部5の予熱を行う。この際、ハンダ付け対象部となるアイレット部5の端面5aに対しては、貫通孔16aを介してホットエアブローを集中して吹き付けることができるため、効率よく加熱を行うことができる。一方、ハンダ付け対象部とならないアイレット部5の側面やシェル部4等に対しては、ホットエアブローが直接的にはあたらないため、当該部位の急激な温度上昇を抑制することができる。つまり、遮蔽板16は、ホットエアブローを遮る遮風部材としての機能のみならず、遮熱部材としての機能を有する。
【0054】
続いて、図6に示すように、ハンダ供給装置14を駆動させ、ハンダ13を所定量送り出す第1ハンダ送出し工程を行う。当該工程において、貫通孔16a内及びその近傍へ送出されたハンダ13は、順次、ホットエアブロー又は接触したアイレット部5の端面5aの熱により溶融し、図7に示すようにアイレット部5の端面5a上に溜まっていく。つまり、これら一連の工程が本実施形態における一次工程に相当する。但し、初期段階では、アイレット部5の端面5aの温度が十分に上昇していないため、溶融してアイレット部5の端面5a上に溜まったハンダ溜り(溶融ハンダ)13aは、すぐにはアイレット部5の端面5aに付着せず、略球状となってアイレット部5の端面5a上に載っただけの状態となっている。従って、このような状態において、直接、ハンダ溜り13aに対しホットエアブローが吹き付けられると、その風圧によりハンダ溜り13aが飛ばされてしまうおそれがある。しかし、本実施形態では、アイレット部5の端面5aの周囲が遮蔽板16の貫通孔16aの内周壁により囲まれ、ガードされている。従って、その内部にあるハンダ溜り13aに対するホットエアブローの吹き付けは、上方からのみで横風を受けないため、当該ハンダ溜り13aが飛ばされるおそれは小さい。
【0055】
また、本実施形態では、遮蔽板16の下面16bとアイレット部5の端面5aとの間には僅かな隙間が存在するが、その隙間(ランプ中心線C1方向における距離X1)が0.5mmと非常に小さいことに加え、ハンダ13の粘度が非常に高いため、当該隙間からハンダ溜り13aがアイレット部5の端面5aから流出するおそれも低い。つまり、遮蔽板16(貫通孔16a)は、当該ハンダ溜り13aを保持する役割も果たす。
【0056】
この状態で、しばらくハンダ13、ひいてはアイレット部5の端面5aの加熱を続け、アイレット部5の端面5aが十分な温度に達すると、球状のハンダ溜り13aがアイレット部5の端面5a全体に溶け広がり、付着することとなる。
【0057】
次に、図8に示すように、遮蔽板16及びジェットヒータ15を一体に所定量上昇させる変位工程を行いつつ、併せてハンダ供給装置14を駆動させ、ハンダ13を所定量送り出す第2ハンダ送出し工程を行う。これら一連の工程が本実施形態における二次工程に相当する。
【0058】
そして、第2ハンダ送出し工程により、貫通孔16a内及びその近傍へ送出されたハンダ13は、ホットエアブローにより溶融して滴下し、アイレット部5の端面5a上のハンダ溜り13aに加わる。これにより、アイレット部5の端面5a上には、図9に示すように、最終的に必要な量のハンダ溜り13aが載ることとなる。
【0059】
その後、当該ハンダ溜り13aが固化することにより、ランプ1におけるソケット接触部となるハンダ付け部13bが形成され、最終的にハンダ付け工程が完了する。
【0060】
なお、本実施形態では、上記変位工程により、遮蔽板16の下面16bとアイレット部5の端面5aとの間の距離X1が初期設定時の0.5mmよりも大きい、1.0mmとなるように設定されている。
【0061】
ここで、遮蔽板16等を上昇させる変位工程を行い、2回に分けてハンダ付けを行う理由は、貫通孔16aの直径W2を、アイレット部5の端面5aの直径W1よりも小さく設定するとともに、ハンダ付け完了時のハンダ溜り13a(ハンダ付け部13b)の高さX2が、遮蔽板16とアイレット部5との間の初期設定時の距離X1よりも高くなるためである。
【0062】
当該条件の下、仮に上記変位工程を行わず、第2ハンダ送出し工程のみを行った場合、すなわち遮蔽板16を上昇させずに元の状態のまま、1回目のハンダ送出しに連続して2回目のハンダ送出しを行うと、図10に示すように、貫通孔16aが邪魔をして、完成時のハンダ付け部13bの形状が適正形状とならないおそれがある。これに対し、本実施形態では、このような不具合の発生を防止することができる。
【0063】
一方、仮に遮蔽板16を省略した場合には、直接、ホットエアブローが吹き付けられ、ハンダ溜り13aの表面が波打つ、又は、ハンダ溜り13aがアイレット部5の端面5a上からこぼれ落ちるなどの不具合の発生が懸念される。しかし、本実施形態では、アイレット部5の端面5aの周囲が遮蔽板16の貫通孔16aの内周壁により囲まれ、ガードされているため、そのような不具合が発生するおそれは少ない。
【0064】
また、遮蔽板16等を上昇させた際、遮蔽板16とアイレット部5との間の隙間も大きくなるため、当該隙間を介して下方へ抜けるホットエアブローの量が増加し、上記同様の不具合が発生することも考えられる。しかし、貫通孔16aを介することによりホットエアブローの風圧が弱められることに加え、遮蔽板16とアイレット部5との距離X1も大きくなるため、ハンダ溜り13aの表面が波打つほどの影響を受けることはない。
【0065】
このように、本実施形態では、ハンダ付け開始当初は、遮蔽板16とアイレット部5とを近接させることにより、アイレット部5等の加熱効率を高めるとともに、貫通孔16aの内壁及びアイレット部5により囲まれた空間内にハンダ溜り13aを安定して保持しつつ、1回目のハンダ付けを行い、その後、遮蔽板16とアイレット部5との距離をより引離すことで、ハンダ溜り13aと遮蔽板16とが接触するといった不具合を防止しつつ、2回目のハンダ付けを行うといったように、ハンダ付け工程を複数回に分けることで、適正でかつ生産効率のよいハンダ付けを行なっている。
【0066】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ジェットヒータ15から噴射されるホットエアブローがアイレット部5に直接吹き付けられるのを、遮蔽板16により遮ることができる。これにより、ホットエアブローの風圧によりアイレット部5の端面5a上に載ったハンダ溜り13aがこぼれ落ちたり、ハンダ表面が波打つ等するのを防止することができ、ハンダ付け不良の発生を低減することができる。結果として、ハンダ形状を安定させ、ハンダ付け品質の向上を図ることができる。ひいては、ランプ1の接触不良の発生を低減し、製品品質の向上を図ることができる。
【0067】
また、ランプ1の上方を覆う遮蔽板16を備えることで、仮に溶融したハンダ13が飛散した場合でも、ランプ1や他の機構にハンダ13が付着するのを防止することができ、メンテナンス性が向上する。
【0068】
さらに、遮蔽板16を備えることにより、ジェットヒータ15から噴射されるホットエアブローが電球本体2など意図しない部位に吹き付けられ、当該部位が加熱されてしまうといったおそれを低減することができる。結果として、熱の影響による製品不良の発生を抑制することができ、製品品質の向上を図ることができる。
【0069】
加えて、貫通孔16aに向けホットエアブローを噴射する構成とすることにより、貫通孔16a内への熱の集中及び熱の拡散防止等を図ることができるため、貫通孔16a及びその近傍において効率よくハンダ13やアイレット部5等の加熱を行うことができる。結果として、生産性の向上を図ることができる。
【0070】
尚、上述した実施形態の記載内容に限定されることなく、例えば次のように実施してもよい。
【0071】
(a)上記実施形態では、LED電球よりなるランプ1を製造する構成に具体化しているが、これに限らず、白熱電球や電球形蛍光ランプなど、他のランプを製造する構成に具体化してもよい。また、口金3に関しても、ねじ込み式のものに限らず、挿し込み式のものであってもよい。
【0072】
(b)上記実施形態では、遮蔽板16が上下方向に変位することにより、当該遮蔽板16とランプ1との相対位置関係が上下方向に変更される構成となっているが、これに限らず、例えばランプ1を上下方向に変位させて、両者の位置関係を相対変位させる構成としてもよい。
【0073】
(c)上記実施形態では、遮蔽板16の変位に合わせて、ジェットヒータ15の高さ位置を変位させ、両者の位置関係が維持されるように構成されているが、これに限らず、例えば遮蔽板16の昇降量が比較的小さい場合には、ジェットヒータ15を固定して変位させない構成としてもよい。
【0074】
(d)上記実施形態では、遮蔽板16の下面16bとアイレット部5の端面5aとの間に隙間が生じるように設定されているが、これに限らず、例えばハンダ付け工程の開始当初は、遮蔽板16の下面16bとアイレット部5の端面5aとが当接する構成としてもよい。遮蔽板16を当接させることで、当該遮蔽板16からの熱伝導により、アイレット部5の予熱を効率よく行うことができる。
【0075】
また、遮蔽板16の下面16bとアイレット部5の端面5aとの間の距離X1も上記実施形態の値に限定されるものではない。但し、上記実施形態と同様の作用効果をより確実に得るためには、前記距離X1が初期設定時においては0.5mm以下に設定されることがより好ましい。この程度の隙間であれば、アイレット部5の端面5a上のハンダ溜り13aが、その粘性や表面張力等により、当該隙間から流れ出すおそれは極めて小さい。また、ハンダ付け工程の開始当初において、前記距離X1が0.5mmよりも大きくなると、熱の漏れ量が多くなり、加熱効率が低下するおそれもある。
【0076】
(e)遮蔽板16の貫通孔16aの大きさ等は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、アイレット部5の端面5aの直径W1が10mmであるのに対し、貫通孔16aの直径W2がこれよりも小さい8mmに設定されているが、これに限らず、貫通孔16aの直径W2が、アイレット部5の端面5aの直径W1と同一又はそれよりもやや大きい構成としてもよい。但し、貫通孔16aの直径W2を、アイレット部5の端面5aの直径W1以下に設定すれば、遮蔽板16によりアイレット部5上方を覆う面積をより大きくすることができ、熱や風の遮蔽効果をより高めるとともに、アイレット部5等に対する加熱効率を高めることができる。
【0077】
(f)上記実施形態では、ジェットヒータ15の噴射ノズル15aの軸線C2の傾斜角度について特に言及していないが、ホットエアブローの風圧やアイレット部5等に対する加熱効率等を考慮した場合には、ランプ中心線C1(上下方向)又は遮蔽板16(水平方向)に対する噴射ノズル15aの軸線C2の傾斜角度が30度以上60度以下となることが好ましい。
【符号の説明】
【0078】
1…ランプ、2…電球本体、3…口金、5…アイレット部、5a…端面、11…ハンダ付け装置、12…チャック、13…ハンダ、13a…ハンダ溜り、14…ハンダ供給装置、15…ジェットヒータ、16…遮蔽板、16a…貫通孔、W1…アイレット部の端面の直径、W2…貫通孔の直径、X1…遮蔽板の下面とアイレット部の端面との間の距離、X2…ハンダ付け完了時のハンダ溜りの高さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプの口金に対しハンダ付けを行うためのハンダ付け装置であって、
前記口金のハンダ付け対象部を上向きにして前記ランプを保持する保持手段と、
前記ランプの上方に配設される遮蔽部材と、
前記遮蔽部材における前記ハンダ付け対象部に対応する位置に設けられた貫通孔と、
前記貫通孔の斜め上方位置から当該貫通孔及びその近傍に向け高温気体を噴射する加熱手段と、
前記貫通孔を介して上方から前記ハンダ付け対象部に向けてハンダを供給するハンダ供給手段とを備えたことを特徴とするハンダ付け装置。
【請求項2】
円形状の前記貫通孔の径が、円形状の前記ハンダ付け対象部の径以下となっていることを特徴とする請求項1に記載のハンダ付け装置。
【請求項3】
少なくとも前記ランプと前記遮蔽部材との相対位置関係を上下方向に変更可能な可変手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載のハンダ付け装置。
【請求項4】
前記ランプと前記遮蔽部材との相対位置関係が変更された際に、前記遮蔽部材と前記加熱手段との相対位置関係が維持されるようにしたことを特徴とする請求項3に記載のハンダ付け装置。
【請求項5】
前記ハンダ付けの開始時には、前記遮蔽部材と前記ハンダ付け対象部とが当接又は近接した状態となることを特徴とする請求項3又は4に記載のハンダ付け装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかに記載のハンダ付け装置を用いて、ランプの口金に対しハンダ付けを行うハンダ付け工程を備えたランプの製造方法であって、
前記ハンダ付け工程において、
前記遮蔽部材と前記ハンダ付け対象部とを当接又は近接させた状態で、前記ハンダ供給手段より送り出された所定量のハンダを前記加熱手段により溶融して前記ハンダ付け対象部にハンダ付けを行う一次工程と、
前記遮蔽部材と前記ハンダ付け対象部との距離を前記一次工程よりも離間させた状態で、前記ハンダ供給手段より送り出された所定量のハンダを前記加熱手段により溶融して前記ハンダ付け対象部にハンダ付けを行う二次工程とを少なくとも備え、
複数回に分けて前記ハンダ付け対象部に対しハンダ付けを行うことを特徴とするランプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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