説明

ハンドヘルドターミナル装置

【課題】プラントなどの現場作業者が危険な状況を知ることが可能なハンドヘルドターミナル装置を提供する。
【解決手段】信号線を介してこの信号線に接続されている制御対象機器と通信を行なうハンドヘルドターミナル装置において、該ハンドヘルドターミナル装置にガスセンサ、温度センサを含むセンサの少なくとも一つを搭載した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドヘルドターミナル装置に関し、詳しくは、温度センサおよびガスセンサを搭載し、作業者の安全性の向上を図ったハンドヘルドターミナル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントや工場ではフィールド機器により圧力や流量、温度などのプロセス値を測定し、これらのプロセス値を上位機器である中央制御装置へと伝送し、この中央制御装置によってプロセス値の制御や監視を行っている。中央制御装置は通常現場ではなく中央制御室に設置される。
【0003】
このような制御システムではフィールド機器と中央制御装置を接続する信号線にハンドヘルドターミナル装置を接続し、このハンドヘルドターミナル装置とフィールド機器との間で双方向通信を行い、フィールド機器の各パラメータの設定や調整(レンジ設定やゼロ点調整)や保守情報の読み出し(タグ番号、保守点検日情報)を行っている。
【0004】
図3(a,b)はこのようなハンドヘルドターミナル装置を使用した制御システムの一例を示すブロック図である。
図3(a)において、制御システムは現場側と中央側とを接続する信号線/電源線1(以下、信号線)と、中央側に配置され、前記信号線1を介して現場側に電源電圧を供給する電源2と、現場側に配置され、監視対象となるプロセスの状態を監視してプロセス量を示すアナログ信号を生成し、これを信号線1を介して中央側に伝送するフィールド機器3と、このフィールド機器3の遠隔設定や各種情報の読み出みを行なうとき、前記信号線1に介挿された負荷抵抗4に並列に接続されるハンドヘルドターミナル装置5とを備えている。
【0005】
そして、電源2によって得られた電源電圧を信号線1を介してフィールド機器3に供給してこれを駆動するとともに、このフィールド機器3によってプロセスの状態を監視し、この監視動作によって得られたプロセス量を示すアナログ信号を信号線1を介して中央側の中央制御装置6に伝送する。
【0006】
この状態で、前記フィールド機器3の保守や点検を行なうとき、前記信号線1に介挿された負荷抵抗4に対し、ハンドヘルドターミナル装置5を並列に接続し、このハンドヘルドターミナル装置5によってデジタル信号を生成し、これを信号線1を介して前記フィールド機器3に供給し、このフィールド機器3の遠隔設定を行なったり、信号線1を介して前記フィールド機器3から出力されるデジタル信号を取り込んで前記フィールド機器3の情報を解析して表示したりする。
【0007】
図3(b)は図3(a)に示すハンドヘルドターミナル装置5の詳細な構成例を示すブロック図である。
ハンドヘルドターミナル装置5は装置各部に電源電圧を供給するバッテリィなどの電源回路2と、キーボード(図示省略)などを有し、このキーボードなどが操作されたとき、この操作内容に応じた制御信号やデータなどを生成する入力回路7と、各種データ処理を行なうマイクロプロセッサなどによって構成されるCPU回路8と、前記信号線1に着脱自在に接続され、前記CPU回路8と前記フィールド機器3との間の通信をサポートする通信回路9と、前記CPU回路8の動作を規定するプログラムの格納エリアや作業エリアなどとして使用されるメモリ回路10と、LCD表示器などを有し、前記CPU回路8から出力される表示データを取り込んで表示する表示回路11とを備えている。
【0008】
そして、通信回路9が信号線1に接続され、入力回路7のキーボードが操作されて遠隔設定指令と、遠隔設定データとが入力されたとき、CPU回路8によってこれを取り込んで遠隔設定指令信号と、設定データとを生成し、これを通信回路9を介して前記フィールド機器3に供給し、また前記入力回路7のキーボードが操作されて、フィールド機器3の情報読出し指令が入力されたとき、CPU回路8によって読出し信号を生成し、これを通信回路9を介して前記フィールド機器3に供給した後、前記通信回路9によって前記フィールド機器3からの出力されるデジタル信号を取り込ませるとともに、CPU回路8によってこれを解析して表示データを生成し、これを表示回路10の表示器上に表示させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−21216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述の従来技術においては、ハンドヘルドターミナル装置には作業者の周辺環境を確認する機能が無い。
即ち、プラントや工場に設置されるフィールド機器は、高温でガスが充満するような危険な環境に設置されることが多く、作業者の作業中に何らかの事故が起きることが考えられる。そのような際にアラームを発報する機能がないと、他の作業者が気付くまで事故に遭った作業者は放置されることになる。その結果、最悪の場合死に至るような事故につながるという課題があった。
【0011】
従って本発明は、ガスセンサと温度センサをハンドヘルドターミナル装置に組み込み、アラーム機能をもたせることで、プラントなどの現場作業者が危険な状況を知ることが可能なハンドヘルドターミナル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載のハンドヘルドターミナル装置においては、
信号線を介してこの信号線に接続されている制御対象機器と通信を行なうハンドヘルドターミナル装置において、該ハンドヘルドターミナル装置にガスセンサ、温度センサを含むセンサの少なくとも一つを搭載したことを特徴としている。
【0013】
請求項2においては、請求項1に記載のハンドヘルドターミナル装置において、
前記ガスセンサ、温度センサに設定範囲を設け該設定範囲を超えたときは警報を発するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したことから明らかなように本発明の請求項1、2によれば、
プラントや工場内のガス濃度および温度を測定できる機能を持つことで、ハンドヘルドターミナル装置の所持者が現場作業中に危険を察知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のハンドヘルドターミナル装置のブロック図である。
【図2】本発明のハンドヘルドターミナル装置の警報のフローチャートである。
【図3】従来のハンドヘルドターミナル装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明のハンドヘルドターミナル装置を示すブロック図である。
図において、ハンドヘルドターミナル装置100は、フィールド機器(図3参照)との間で双方向通信を行い、フィールド機器の各パラメータの設定や調整(レンジ設定やゼロ点調整)や保守情報の読み出し(タグ番号、保守点検日情報)を行う。
【0017】
CPU回路101は、各データの処理を行なう。本発明においては、通常のハンドヘルドターミナルにおけるデータ処理に加えて、ガス検出回路108と温度検出回路109の出力値によって、アラームを発報するための信号を出力できる機能を備えている。
メモリ回路102は、CPU回路101の動作を規定するプログラムの格納やハンドヘルドターミナル装置の動作時の作業エリアの確保を行う。
【0018】
表示回路103は、LCD表示器などを有し、CPU回路101から出力される表示データを取り込んで表示する。
アラーム発報出力回路104はガス検出回路108と温度検出回路109の出力値によって、アラームを発報するための機能を備えている。
【0019】
通信機器制御回路105は、ハンドヘルドターミナル本来の機能である、フィールド機器との双方向通信を行なう。
無線通信回路106は、通信信号を無線で送受信する。
有線通信回路107は、通信信号を有線で送受信する。
ガス検出回路108は、ガスセンサ110で検知した物理信号を電気信号に変換する。
【0020】
温度検出回路109は、温度センサ111で検知した物理信号を電気信号に変換する。
ガスセンサ110は、ハンドヘルドターミナル装置周辺の雰囲気のガスを検知する装置であり、例えば、水素を取り扱っているプラントや工場の場合には、熱線型半導体式のガスセンサなどを使用する。
【0021】
また、取り扱うガスが塩素である場合には、例えば、薄膜型半導体式のガスセンサを使用する。センサはモジュール化しておき、ハンドヘルドターミナル装置100にコネクタ等で接続するだけで、取り扱うガスに応じたガスセンサを用いることができる。
【0022】
もしくは、ガス検出回路108の部分をガスセンサ用の入力回路とし、既設のガスセンサと接続することで上記同様の判定をすることが可能である。
温度センサ111はハンドヘルドターミナル装置の周辺雰囲気の温度を検知する装置であり、外気を測定するための温度センサや数m〜十数m離れたところにある機器の温度を測定する放射温度計測センサである。
【0023】
例えば、周囲温度が高温の場合は外気測定用の温度センサを使用し、プラントに発熱機器がある場合は、放射温度計測センサを使用する。もしくは、温度検出回路109の部分を温度センサ用の入力回路とし、既設の温度センサと接続することで上記同様の判定をすることが可能である。
【0024】
電源回路112は、ハンドヘルドターミナル装置内の各ブロックに電源を供給する回路である。
アンテナ113は、無線通信した場合に信号を送受信する装置である。
発報ブザー114はアラームを発報するが、その発報の方法は1種類に限定するわけではなく、例えばブザーによる発報、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)など表示器による表示、無線および有線通信信号伝送等を用いることができる。
【0025】
図2はハンドヘルドターミナル装置の警報のフローチャートである。工程に従って説明する。
ステップ1:ガス濃度と温度の上限値をCPU回路101で設定する。
ステップ2:CPU回路101がガス濃度と温度を確認する(ガス検出回路、温度検出回路から情報を得る)。
【0026】
ステップ3:ガス濃度又は温度が上限値を超えていないか否かを判断する。
ステップ4:ステップ3によりガス濃度又は温度が上限値を超えていた場合(yes)CPU回路101からアラーム発報出力回路104へアラーム信号を出す。超えていない場合(no)はステップ2に戻る。
ステップ5:アラーム発報出力回路104が作業者へアラームを出す(ブザー、表示器での表示、無線通信回路106、有線通信回路107への伝送等)。
ステップ6:終了。
【0027】
本発明を実際に適用する例としては、爆発性のガスであるアセチレン(発火温度305℃)が存在するようなプラントの、空気中濃度が2.5%になると爆発する危険性がある(爆発下限界)場所で、アセチレンのガスセンサの検知濃度2.0%(2.5%以下の値)を検知した場合に、アラーム発報出力回路104で、アラームを発報する。これにより、危険濃度になる前に危険な状況を知ることができる。
【0028】
また、防爆規格における温度等級T6(電気機器の最高表面温度85℃以上)のガスを取り扱うプラントの場合においても、例えば、周囲温度が65℃(規格値より20℃低い温度)となった場合に、アラーム発報出力回路104で、アラームを発報することもできる。
【0029】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。実施例ではガスセンサと温度センサを取付けたがいずれか一つであっても良く、他のセンサ、例えば、放射線センサ等であっても良い。
また、実施例では有線通信回路、無線通信回路の両方を設けたがいずれか一つ又はなくても良い。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【符号の説明】
【0030】
1 信号線/電源線
2 電源
3 フィールド機器
4 負荷抵抗
5、100 ハンドヘルドターミナル装置
6 中央制御装置
7 入力回路
8、101 CPU回路
9 通信回路
10、102 メモリ回路
11、103 表示回路
104 アラーム発報出力回路
105 通信機器制御回路
106 無線通信回路
107 有線通信回路
108 ガス検出回路
109 温度検出回路
110 ガスセンサ
111 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号線を介してこの信号線に接続されている制御対象機器と通信を行なうハンドヘルドターミナル装置において、該ハンドヘルドターミナル装置にガスセンサ、温度センサを含むセンサの少なくとも一つを搭載したことを特徴とするハンドヘルドターミナル装置。
【請求項2】
前記ガスセンサ、温度センサに設定範囲を設け該設定範囲を超えたときは警報を発するように構成したことを特徴とするハンドヘルドターミナル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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