説明

ハンドル

【課題】面状発熱体をリム部の所望の位置に確実に固定できるとともに、見栄えを向上したステアリングホイールを提供する。
【解決手段】操作用のリム部15の少なくとも一部に凹部25を凹設するとともに、凹部25により囲んで凹部25に対して相対的に表面側に突出する凸部26を設ける。面状発熱体28は、凹部25に嵌合した状態でリム部15に位置する発熱体本体31と、発熱体本体31を凹部25に嵌合した状態で第1及び第2の凸部26a,26bが挿入係止するスリット32とを備える。面状発熱体28をリム部15に対して確実に位置決めして所望の位置に固定できる。リム部15と面状発熱体28とを表皮材によって覆った状態での段差が生じにくくなり、見栄えが向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リム部に配置された面状発熱体を有するハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両において、円環状をなし運転者によって把持操作されるリム部と、このリム部の内側に位置しステアリングシャフトに接続されるボス部と、これらリム部とボス部とを連結する複数のスポーク部とを備えたハンドルであるステアリングホイールが用いられている。
【0003】
そして、例えば冬期の屋外のような冷所、あるいは寒冷地などで車両を使用する場合、リム部の冷たさに起因する不快感を抑制して始動後に快適に操縦できるようにするため、リム部を運転者の把持操作に適した温度に加熱する構成が知られている。このようなステアリングホイールとしては、例えば、導電性材料により形成された発熱体である加熱用エレメントを、粘着体などの支持体を介してリム部に固着し、この加熱用エレメントを表皮材により被覆する構成(例えば、特許文献1参照。)、あるいは、不織布からなる支持体に線状ヒータを配置した面状発熱体をリム部に被覆する構成などが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−183378号公報 (第6頁、図4)
【特許文献2】特開2007−290685号公報 (第4頁、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の構成では、滑らかな表面のリム部に対して加熱用エレメントを固着するため、表皮材により加熱用エレメントを被覆する際、あるいは長年の使用により、加熱用エレメントがリム部に対して滑って移動したり、粘着体が剥がれて加熱用エレメントがリム部に対してずれたりするおそれがある。このように加熱用エレメントがリム部に対してずれると、所望の発熱特性が得られなくなり、あるいは、表皮材に段差が生じて見栄えが低下するため、加熱用エレメントをリム部に対して強固に接着する必要がある。
【0006】
また、特許文献2記載の構成では、面状発熱体をリム部に取り付ける際の位置決めが容易でなく、所望の位置に固定することが容易でないとともに、線状ヒータが表皮材の表面に段差を生じさせる、いわゆる「浮き出た」状態となり、見栄えが低下するおそれがある。
【0007】
したがって、面状発熱体をリム部の所望の位置に確実に固定できるとともに、見栄えを向上したハンドルが望まれている。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、面状発熱体をリム部の所望の位置に確実に固定できるとともに、見栄えを向上したハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のハンドルは、操作用のリム部と、このリム部に配置された面状発熱体と、少なくとも前記リム部と前記面状発熱体とを覆う表皮材とを具備し、前記リム部は、少なくとも一部に凹設された凹部と、この凹部により囲まれてこの凹部に対して相対的に表面側に突出する凸部とを備え、前記面状発熱体は、前記凹部に嵌合されて前記リム部に配置される発熱体本体と、この発熱体本体に設けられこの発熱体本体が前記凹部に嵌合された状態で前記凸部の少なくとも一部が挿入係止される挿入受部とを備えているものである。
【0010】
請求項2記載のハンドルは、請求項1記載のハンドルにおいて、凸部は、凹部に対して発熱体本体の厚みと等しい寸法で表面側に突出しているものである。
【0011】
請求項3記載のハンドルは、請求項1または2記載のハンドルにおいて、挿入受部は、発熱体本体に互いに平行に複数設けられた孔部であるものである。
【0012】
請求項4記載のハンドルは、請求項1ないし3いずれか一記載のハンドルにおいて、リム部は、円弧状に設けられ、面状発熱体は、前記リム部に配置した状態でこのリム部の内周側に対応する位置で発熱体本体に設けられた切欠部を備えているものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のハンドルによれば、リム部の少なくとも一部に凹部を凹設するとともに、この凹部により囲まれて凹部に対して相対的に表面側へと突出する凸部を設け、面状発熱体の発熱体本体を凹部に嵌合するとともに、この発熱体本体に設けた挿入受部に凸部の少なくとも一部を挿入係止することにより、面状発熱体をリム部に対して確実に位置決めして所望の位置に固定できるとともに、発熱体本体が凹部に嵌合することで凹部を埋めるので、リム部と面状発熱体とを表皮材によって覆った状態での段差が生じにくくなり、見栄えが向上する。
【0014】
請求項2記載のハンドルによれば、請求項1記載のハンドルの効果に加え、凸部が凹部に対して、発熱体本体の厚みと等しい寸法で表面側に突出することにより、凹部に発熱体本体が嵌合した状態で発熱体本体と凸部とが面一となり、リム部と面状発熱体とを表皮材によって覆った状態での段差を確実に防止できる。
【0015】
請求項3記載のハンドルによれば、請求項1または2記載のハンドルの効果に加え、挿入受部を発熱体本体に互いに平行に複数設けた孔部とすることにより、発熱体本体を孔部と交差する方向へと伸張させやすくなり、リム部が湾曲している場合でも発熱体本体を伸張させて面状発熱体を隙間なく配置できるとともに、面状発熱体での発熱むらを抑制できる。
【0016】
請求項4記載のハンドルによれば、請求項1ないし3いずれか一記載のハンドルの効果に加え、面状発熱体を円弧状のリム部に配置した状態でこのリム部の内周側に対応する位置で発熱体本体に切欠部を設けることにより、孔部により発熱体本体を伸張させることでこの発熱体本体に生じる皺あるいは捻れを切欠部によって吸収でき、面状発熱体をリム部に対して、より確実に沿わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のハンドルの一実施の形態の一部を示す分解斜視図である。
【図2】同上ハンドルのリム部に対して面状発熱体を取り付けた状態の一部を示す斜視図である。
【図3】同上ハンドルの図2のI−I相当位置の断面図である。
【図4】同上ハンドルの面状発熱体を示す平面図である。
【図5】同上ハンドルの一部を拡大して示す斜視図である。
【図6】同上ハンドルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のハンドルの一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図6において、10は自動車などの車両のハンドルであるステアリングホイールで、このステアリングホイール10は、ハンドル本体であるステアリングホイール本体12と、このステアリングホイール本体12の乗員側に装着されるパッド体としてのエアバッグ装置(エアバッグモジュール)13とを備えている。なお、ステアリングホイール10は、通常傾斜した状態で車両に備えられるシャフトとしてのステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、エアバッグ装置13の乗員側すなわち正面側を上側、ステアリングシャフト側すなわち背面側を下側、車両の前側すなわち前側上方のフロントガラス側を前側、車両の後側すなわち後側下方を後側あるいは手前側として説明する。
【0020】
そして、ステアリングホイール本体12は、円弧状、本実施の形態では円環状(ドーナツ状)をなす把持部である操作用のリム部(グリップ部)15と、このリム部15の内側に位置するボス部16と、これらリム部15とボス部16とを連結する複数の、本実施の形態では3本のスポーク部17とを備えている。また、ボス部16の車体側となる下部には、ステアリングシャフトに嵌着される略円筒状のボス18が設けられているとともに、このボス18に、ハブコアとも呼ばれる芯体を構成するボスプレート19がマグネシウム合金などをダイカストで鋳ぐるむなどして一体的に固着されている。そして、このボスプレート19から、スポーク部17の芯金17aが一体に延設され、あるいは溶接などして固着されている。さらに、このスポーク部17の芯金17aには、リム部15の芯金15aが溶接などして固着されている。また、これらリム部15は、芯金15aの全周の表面側が、例えば軟質の発泡ポリウレタンなどからなるリム部表皮部としての内側被覆部20により覆われて構成されている。この内側被覆部20は、スポーク部17の芯金17aのリム部15側の部分の表面側も一体、あるいは一体的に覆っており、リム部15の位置において、断面が上下方向に沿って長軸を有する楕円形状、あるいは略楕円形状となっている(図3)。また、このステアリングホイールのボス部16には、裏カバーあるいはボディカバーとも呼ばれる図示しない下部カバーが取り付けられ、ボス部16の下側部が覆われている。
【0021】
なお、エアバッグ装置13は、図示しないが、スイッチ装置としてのホーンスイッチ機構が一体的に組み込まれ、このホーンスイッチ機構を介して装置本体を支持したもので、装置本体は、金属板などからなるベースプレート、袋状のエアバッグ、折り畳んだエアバッグを覆う樹脂製のカバー体、ガスを噴射するインフレータ、インフレータ及びエアバッグをベースプレートに固定するリテーナ、カバー体をベースプレートに固定する金属製の筒状のベルトなどを備えている。一方、ホーンスイッチ機構は、支持体としてのホーンプレート、両側一対のスイッチ機構、4個の付勢手段としてのコイルばねであるホーンスプリング、3個の連結手段としてのトルクスボルト、及び両側一対のハーネスなどを備え、ボスプレート19に取り付けられている。そして、このエアバッグ装置13を押動することにより、ホーンスイッチの接点同士が接触し、ホーンが吹鳴される。一方、車両が衝突した際などには、インフレータからエアバッグの内部にガスを急速に噴射し、折り畳んで収納したエアバッグを急激に膨張させ、カバー体を開裂させて、エアバッグを乗員の前側に膨張展開させるとともに、ホーンプレートが塑性変形して、乗員を保護するようになっている。
【0022】
また、図1に示すように、ステアリングホイール本体12のリム部15及びスポーク部17のリム部15側の一部を構成する内側被覆部20の表面側には、凹部25が設けられており、この凹部25により囲まれた複数箇所がリム部15の内側被覆部20において凹部25に対して相対的に表面側に突出する凸部26となっているとともに、凹部25の縁部でかつスポーク部17の両側のリム部15側の部分が、例えば三角形状で凹部25に対して相対的に表面側に突出する係止部27となっている。そして、この内側被覆部20の表面側には、リム部15及びスポーク部17のリム部15側の位置に面状発熱体28が配置され、さらに、この内側被覆部20と面状発熱体28との表面側を覆って表皮材(表皮部)29が配置される。
【0023】
凹部25は、面状発熱体28が嵌合するもので、例えばリム部15及びスポーク部17のリム部15側の一部の内側被覆部20の表面に凹設されている。また、この凹部25は、各凸部26に対して、面状発熱体28の厚み寸法と(ほぼ)等しい深さ寸法に凹設されている。換言すれば、各凸部26が凹部25に対して、面状発熱体28の厚み寸法と(ほぼ)等しい寸法で表面側に突出している。さらに、この凹部25は、リム部15及びスポーク部17のリム部15側の一部を構成する内側被覆部20の各凸部26を除く全体に亘って設けられている。換言すれば、リム部15及びスポーク部17のリム部15側の一部において、内側被覆部20は、各凸部26を除く全体が凹部25となっている。
【0024】
また、各凸部26は、面状発熱体28をリム部15及びスポーク部17(ステアリングホイール本体12)に対して位置決め保持するものである。これら凸部26は、任意の形状とすることができるが、例えば本実施の形態では、それぞれ島状すなわち互いに離間された形状で、かつ、帯状に設けられ、リム部15の外周側を経由して連続している複数の第1及び第2の凸部26a,26bと、リム部15の内周側に沿って帯状に設けられた複数の第3の凸部26cと、例えば後側に位置する一のスポーク部17の位置にてリム部15に帯状に設けられた第4の凸部26d(図5)とが設定されている。
【0025】
各第1及び第2の凸部26a,26bは、例えばリム部15の内側被覆部20の正面側(上側)から裏面側(下側)に亘って、リム部15の経線D1方向すなわち断面視での周方向に沿って設けられている。したがって、各第1及び第2の凸部26a,26bは、リム部15の内周側で両端部が離間されている断面視C字状(逆C字状)となっている。また、各第1及び第2の凸部26a,26bは、リム部15の緯線D2方向すなわち正面視での周方向に互いに離間されて配置されている。そして、各第1の凸部26aは、リム部15のスポーク部17と接続されている部分に対応する位置に配置されており、各第2の凸部26bは、リム部15の外周側の第1の凸部26a以外の位置、すなわち各第1の凸部26aを挟む両側に配置されている。
【0026】
ここで、第1の凸部26aは、第2の凸部26bに対して相対的に長手寸法が短く、両端部がスポーク部17側から離間されている。また、第2の凸部26bは、両端部がリム部15の内周側まで延びて位置しており、リム部15の経線D1方向のほぼ全周に亘って連続し、かつ、両端部間は凹部25となって互いに離間されている。さらに、各第3の凸部26cは、各スポーク部17,17間に亘って、リム部15の内周側に緯線D2方向に沿ってそれぞれ設けられている。そして、図5に示す第4の凸部26dは、一のスポーク部17とリム部15とが連続する位置において、リム部15の経線D1方向に沿って設けられ、第3の凸部26c,26cと連続している。
【0027】
また、図1に示す各係止部27は、各凸部26と同様に面状発熱体28を位置決めするものであり、スポーク部17のリム部15側の両側に位置している。
【0028】
また、面状発熱体28は、例えば炭素繊維、黒鉛、あるいは金属粒子などの粉体状の導電体を含むシートである。そして、この面状発熱体28は、図1、図2及び図4に示すように、長手方向及び短手方向を有する四角形状とした発熱体本体31と、この発熱体本体31に凸部26に対応する複数設けられた挿入受部としての孔部であるスリット32と、発熱体本体31の短手方向の端部に複数設けられた切欠部(ノッチ)33とを有している。
【0029】
発熱体本体31は、例えば炭素繊維紙であり、短手方向の両端(図2に示す上下両端)全体に一方及び他方の電極部31a,31bが設けられ、これら一方及び他方の電極部31a,31b間に電流を流すことが可能となっており、図1に示すように、これら一方及び他方の電極部31a,31bを接近させるように筒状に湾曲させて(丸めて)リム部15の凹部25に嵌合される。すなわち、この発熱体本体31は、短手方向がリム部15の経線D1方向に沿い、長手方向がリム部15の緯線D2方向に沿うようにリム部15(の一部を構成する内側被覆部20)の凹部25に嵌合される。
【0030】
一方及び他方の電極部31a,31bは、発熱体本体31の短手方向の両端全体に、この発熱体本体31の長手方向に沿って連続してそれぞれ設けられている。また、これら一方及び他方の電極部31a,31bは、発熱体本体31をリム部15(の一部を構成する内側被覆部20)の凹部25に配置した状態でリム部15の内周側の各第3の凸部26cの上下両端に沿って位置し、互いに離間されている。そして、これら一方及び他方の電極部31a,31bには、図5及び図6に示すように、一のスポーク部17のリム部15側に対応する位置において、一方及び他方の配線35,36がそれぞれ電気的に接続されている。これら一方及び他方の配線35,36は、温度検知素子(温度制御素子)であるサーモスタット37に電気的に接続されており、このサーモスタット37は、コネクタ38と電気的に接続されており、このコネクタ38は、図示しないハーネスなどを介して図示しない温度制御装置に電気的に接続されている。この温度制御装置は、例えばステアリングホイール本体12側に配置されており、面状発熱体28の温度を所定の温度の範囲に制御するように構成されている。なお、一方及び他方の電極部31a,31bは、いずれが正極でいずれが負極でもよいが、例えば本実施の形態では、一方の電極部31aが正極、他方の電極部31bが負極となっている。
【0031】
また、図1、図2及び図4に示すように、各スリット32は、発熱体本体31が凹部25に嵌合した状態で各凸部26が挿入係止されるものであり、発熱体本体31の長手方向と交差する方向、本実施の形態では発熱体本体31の長手方向と直交する短手方向に沿って、換言すれば、発熱体本体31に電流が流れる方向に沿って長手状に設けられている。したがって、発熱体本体31は、各スリット32によって長手方向に伸張可能となっている。さらに、これらスリット32は、互いに平行、あるいはほぼ平行に離間されて配置されている。そして、各スリット32の形状は、各凸部26の形状に対応して任意に設定可能であるが、例えば第1の凸部26aに対応して第1のスリット32aが設定され、第2の凸部26bに対応して第2のスリット32bが設定されている。例えば第1のスリット32aは、例えば第2のスリット32bに対して相対的に長手寸法が短く設定されている。
【0032】
また、各切欠部33は、発熱体本体31を変形させることでリム部15の形状に沿わせるためのもので、面状発熱体28(の発熱体本体31)をリム部15に配置した状態でこのリム部15の内周側に対応する位置、すなわち発熱体本体31の短手方向の両端の位置に、例えば三角形状に切り欠き形成されている。すなわち、各切欠部33は、発熱体本体31の長手方向に対して交差(直交)する方向に沿って設けられている。これら切欠部33は、任意の位置に設けることができるが、例えばリム部15の各スポーク部17と連続する部分に発熱体本体31を沿わせるための第1の切欠部33aが第1のスリット32aに対応する位置に設定されているとともに、緯線D2方向の曲率に発熱体本体31を合わせるための第2の切欠部33bが第1の切欠部33a以外の発熱体本体31の短手方向の両端に設定されている。各第1の切欠部33aは、各係止部27が嵌合することにより、面状発熱体28をリム部15及びスポーク部17(ステアリングホイール本体12)に対して位置決めするように構成されている。また、各第2の切欠部33bは、例えば発熱体本体31の長手方向に等間隔、あるいはほぼ等間隔に設けられており、発熱体本体31を長手方向に変形させることで、リム部15の内周側と外周側との寸法差を吸収可能となっている。なお、各切欠部33(第1及び第2の切欠部33a,33b)に対応する位置において、一方及び他方の電極部31a,31bは、これら切欠部33によって発熱体本体31の長手方向に分断されないように連続して構成されている。本実施の形態では、一方及び他方の電極部31a,31bは各切欠部33の縁部に沿って屈曲しているが、例えば一方及び他方の電極部31a,31bの幅寸法を、発熱体本体31の短手方向の端部からの各切欠部33の切り欠きの深さ寸法よりも大きく設けることによって、切欠部33によって発熱体本体31の長手方向に分断されないように構成してもよい。
【0033】
また、表皮材29は、例えば天然あるいは人工の皮革などのシートであり、全体として略帯状をなし、リム部15を覆う本体部と、この本体部から延設され各スポーク部17を覆う延設部とが一体、あるいは一体的に構成されている。また、この表皮材29は、両側の縁部近傍が、全長に亘って接合、例えば縫製された接合部としての縫製部39となっており、この縫製部39での縫製によってリム部15の全体及びスポーク部17のリム部15側を覆うように構成されている。
【0034】
そして、ステアリングホイール10の組み立て作業については、まず、図1に示すように、予め凹部25及び複数の凸部26を設けたリム部15の内側被覆部20において、略帯状をなす面状発熱体28の発熱体本体31を、リム部15の緯線D2方向に沿わせるようにスリット32により長手方向に伸張させることで、各スリット32(第1及び第2のスリット32a,32b)を幅方向に拡開させて、リム部15の経線D1方向に巻き付けるように、すなわち短手方向の両端に位置する一方及び他方の電極部31a,31bをリム部15の内周側で互いに接近させるように円筒状に丸めながら凹部25に嵌合させる。なお、四角形状の面状発熱体28を円筒状に丸めながらリム部15に巻き付ける際には、リム部15の緯線D2方向の内周側と外周側との寸法差により皺や捻れが生じるものの、これら皺や捻れは、各切欠部33(第1及び第2の切欠部33a,33b)によって発熱体本体31を長手方向に変形させることで適宜吸収する。
【0035】
この状態で、図2に示すように、各スリット32(第1及び第2のスリット32a,32b)に対して凸部26の第1及び第2の凸部26a,26bが挿入係止され、面状発熱体28の発熱体本体31の短手方向の両端の一方及び他方の電極部31a,31bが各第3の凸部26cに対向するとともに、図5に示すように、発熱体本体31の長手方向の両側が第4の凸部26dの両側に対向する。また、図2に示すように、各第1の切欠部33aに対して、スポーク部17の両側の各係止部27が嵌合される。この結果、面状発熱体28がリム部15及びスポーク部17(ステアリングホイール本体12)に対して位置決め(位置規制)されて保持されるとともに、面状発熱体28(の発熱体本体31)が各凸部26及び各係止部27の表面に対して面一、あるいはほぼ面一となる。
【0036】
この後、発熱体本体31の一方及び他方の電極部31a,31bに対して、図5及び図6に示すようにコネクタ38と電気的に接続されたサーモスタット37に対して電気的に接続された一方及び他方の配線35,36を電気的に接続するとともに、図2及び図3に示すように、リム部15及びスポーク部17のリム部15側の内側被覆部20の表面と、面状発熱体28の表面とを表皮材29で覆い、この表皮材29をリム部15の内周側の各第3の凸部26cに対向する位置及びスポーク部17のリム部15と連続する位置で縫製部39によって縫製して接合する。なお、図5及び図6に示すコネクタ38は、ボス部16に対してエアバッグ装置13を取り付ける前にハーネスなどを介して温度制御装置に適宜電気的に接続する。
【0037】
このように、本実施の形態によれば、リム部15に凹部25を凹設するとともに、この凹部25により囲まれて凹部25に対して相対的に表面側へと突出する凸部26を設け、面状発熱体28の発熱体本体31を凹部25に嵌合するとともに、この発熱体本体31に設けたスリット32にそれぞれ第1及び第2の凸部26a,26bを挿入係止することにより、面状発熱体28をリム部15に対して確実に位置決めして所望の位置に固定できる。特に、面状発熱体28は、リム部15に対して確実に保持されるため、この面状発熱体28とともにリム部15(の内側被覆部20)を覆って表皮材29を取り付ける際に、表皮材29によって面状発熱体28がリム部15に対して移動してしまうこともない。
【0038】
また、発熱体本体31が凹部25に嵌合した状態でこの凹部25を埋めるので、これらリム部15と面状発熱体28とを表皮材29によって覆った状態で、この表皮材29の表面に、面状発熱体28や凸部26がいわゆる「浮き出た」状態となったり、段差が生じたりしにくくなり、見栄えが向上するとともに、例えば運転者の指先が表皮材29の表面側からリム部15に触れたときに段差による違和感などが生じず、触れたときの感触などの外観性能が向上する。
【0039】
特に、凸部26が凹部25に対して、発熱体本体31の厚みと等しい(ほぼ等しい)寸法で表面側に突出することにより、発熱体本体31が凹部25に嵌合した状態で凸部26と面一(ほぼ面一)となるため、面状発熱体28をリム部15に配置した状態で表面側に突出する部分がなく、表皮材29の表面に段差が生じることがないので、リム部15と面状発熱体28とを表皮材29によって覆った状態での段差を確実に防止できる。
【0040】
さらに、面状発熱体28は、リム部15の外周側から内周側に亘ってほぼ全体に配置されるので、運転者がリム部15を把持したときの指先に対応するリム部15の内周側まで温度調整が可能になり、より快適にステアリングホイール10を操縦できる。
【0041】
そして、スリット32を発熱体本体31に互いに平行に複数設けることにより、発熱体本体31のスリット32と交差する方向(長手方向)への伸張が滑らかとなり、曲率を有する、すなわち湾曲しているリム部15に対しても発熱体本体31を長手方向に伸張させて面状発熱体28をリム部15に隙間なく配置できるとともに、面状発熱体28での発熱むらを抑制できる。特に、炭素繊維紙で構成した面状発熱体28の発熱体本体31は伸張させにくいため、スリット32を複数設けることで、このスリット32の幅方向へと発熱体本体31を容易に伸張させることができる。
【0042】
また、面状発熱体28を円弧状(円環状)のリム部15に配置した状態でこのリム部15の内周側に対応する位置、すなわち発熱体本体31の短手方向の両端に切欠部33を設けることにより、スポーク部17に対応させるためにスリット32により発熱体本体31を伸張させることでこの発熱体本体31の緯線D2方向の内周側と外周側との寸法差によって生じる皺あるいは捻れを切欠部33によって吸収でき、面状発熱体28をリム部15に対して、より確実に沿わせることができる。しかも、各切欠部33のうち、各第1の切欠部33aには、各係止部27が嵌合することにより、面状発熱体28を、より確実に位置決めした状態で凹部25に固定できる。
【0043】
さらに、面状発熱体28は、1枚の炭素繊維紙を直線状の形状として構成することにより、歩留まりが良好で製造コストへの影響が少なくなるとともに、リム部15の緯線D2方向に繋がった一体形状であるため、導通不良などの原因となりにくい。
【0044】
なお、上記の一実施の形態において、各スリット32は、発熱体本体31の長手方向に平行、あるいはほぼ平行でなければ、この発熱体本体31の長手方向に対して傾斜状に交差する方向に沿ってそれぞれ設けてもよい。
【0045】
また、凸部26の形状は任意の形状とすることができ、全ての凸部26がスリット32に挿入係止されるように構成してもよい。
【0046】
さらに、面状発熱体28に設ける挿入受部としてはスリット32に限定されず、凸部26の形状に対応した任意の形状とすることができる。
【0047】
また、面状発熱体28(発熱体本体31)は、凹部25に対して例えば両面テープなどの固着部材を用いて固着してもよい。
【0048】
そして、面状発熱体28(の発熱体本体31)は、リム部15の緯線D2方向に複数枚を接続してリム部15を覆うように構成してもよい。この場合には、少なくともリム部15にこれら発熱体本体31を装着した状態で、各発熱体本体31の一方及び他方の電極部31a,31bが電気的に接続されるようにすることで、上記一実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、自動車に備えられたハンドルに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 ハンドルであるステアリングホイール
15 リム部
25 凹部
26 凸部
28 面状発熱体
29 表皮材
31 発熱体本体
32 挿入受部としての孔部であるスリット
33 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作用のリム部と、
このリム部に配置された面状発熱体と、
少なくとも前記リム部と前記面状発熱体とを覆う表皮材とを具備し、
前記リム部は、
少なくとも一部に凹設された凹部と、
この凹部により囲まれてこの凹部に対して相対的に表面側に突出する凸部とを備え、
前記面状発熱体は、
前記凹部に嵌合されて前記リム部に配置される発熱体本体と、
この発熱体本体に設けられこの発熱体本体が前記凹部に嵌合された状態で前記凸部の少なくとも一部が挿入係止される挿入受部とを備えている
ことを特徴とするハンドル。
【請求項2】
凸部は、凹部に対して発熱体本体の厚みと等しい寸法で表面側に突出している
ことを特徴とする請求項1記載のハンドル。
【請求項3】
挿入受部は、発熱体本体に互いに平行に複数設けられた孔部である
ことを特徴とする請求項1または2記載のハンドル。
【請求項4】
リム部は、円弧状に設けられ、
面状発熱体は、前記リム部に配置した状態でこのリム部の内周側に対応する位置で発熱体本体に設けられた切欠部を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載のハンドル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−171551(P2012−171551A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37468(P2011−37468)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.トルクス
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】