説明

ハードコートフィルム、偏光板、前面板及び画像表示装置

【課題】基材フィルムとハードコート層との密着性に優れるとともに、干渉縞が発生することがなく、更に、耐湿熱性、平滑性に優れ、シワの発生を好適に防止することができるハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルムと、上記基材フィルムの一方の面上に形成されたハードコート層とを有するハードコートフィルムであって、上記ハードコート層は、5員環構造を有する環構造成分を含有するハードコート層用組成物を用いて形成されたものであり、上記環構造成分は、窒素原子及び/又は酸素原子を単位構造中に少なくとも一つ含むことを特徴とするハードコートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルム、偏光板、前面板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、電子ペーパー等の画像表示装置においては、一般に最表面には反射防止のための光学積層体が設けられている。このような反射防止用の光学積層体は、光の散乱や干渉によって、像の映り込みを抑制したり反射率を低減したりするものである。
【0003】
従来、このような光学積層体としては、トリアセチルセルロース(TAC)基材の表面にハードコート層を形成したハードコートフィルムが知られている。
ところが、トリアセチルセルロース基材は、耐湿熱性に劣り、ハードコートフィルムを偏光板保護フィルムとして高温多湿の環境下で使用すると、偏光機能や色相等の偏光板機能を低下させるという欠点があった。
このような問題に対して、アクリル系樹脂及び/又はメタクリル系樹脂を主成分とする透明プラスチック基材を用いることが提案されている。
【0004】
しかしながら、アクリル系樹脂及び/又はメタクリル系樹脂を主成分とする透明プラスチック基材の片面若しくは両面にハードコート層を形成した場合、基材とハードコート層との密着性に劣るという問題があった。
【0005】
このような問題点に対し、例えば、特許文献1には、ポリオールアクリレート及びポリオールメタクリレートの少なくとも一方の成分を含む材料を用い、ハードコート塗膜の乾燥温度を80〜120℃とし、乾燥時間を1〜10分行うことで、基材フィルムとハードコート層との密着性の向上を図ることが開示されている。
また、例えば、非特許文献1には、(メタ)アクリレート系光硬化型樹脂を用いて、当該樹脂を塗工後、紫外線を照射する前に、前加熱を60℃、10分で行うことで、基材フィルムとハードコート層との密着性の向上を図ることが開示されている。
更に、特許文献2には、基材フィルムにコロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理のほか、アンカー剤又はプライマーと呼ばれる塗料の塗布を行った後、ハードコート層を形成することで、基材フィルムとハードコート層との密着性の向上を図ることが開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の方法では、乾燥温度が高いため、ハードコートフィルムの製造コストが高くなるという問題があり、また、非特許文献1に開示の方法では、加熱時間(乾燥時間)が長くなるため、ハードコートフィルムの製造に長時間を要し、また、製造コストが高くつくという問題があり、いずれの方法も生産性に欠けるものであった。
また、特許文献2に開示の方法では、ハードコートフィルムの製造に必要な工程が増え、特別な処理をする必要があることから、やはり生産性に欠けるものであった。
【0007】
更に、アクリル系樹脂及び/又はメタクリル系樹脂を主成分とする基材フィルムを用いたハードコートフィルムでは、基材フィルムとハードコート層との間に屈折率差が生じ、当該ハードコートフィルムを用いて偏光板を形成した場合、干渉縞が発生して外観不良になるといった問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−185282号公報
【特許文献2】特開2011−81359号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】(メタ)アクリレート系硬化型樹脂の密着性(東亜合成グループ研究年報、2006−9号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記現状に鑑み、基材フィルムとハードコート層との密着性に優れるとともに、干渉縞が発生することがなく、更に、耐湿熱性、平滑性に優れ、シワの発生を好適に防止することができるハードコートフィルム、該ハードコートフィルムを用いた偏光板及び前面板、並びに、画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ハードコート層を形成するハードコート層形成用組成物として、単位構造中に環構造を有し、かつ、該環構造中に窒素及び/又は酸素原子を含む環構造成分を含むものを用いることで、上記基材フィルムが(メタ)アクリル系樹脂からなるものであっても、該基材フィルムとハードコート層とが優れた密着性を有し、更にこれらの層間で干渉縞が発生することを防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルムと、上記基材フィルムの一方の面上に形成されたハードコート層とを有するハードコートフィルムであって、上記ハードコート層は、5員環構造を有する環構造成分を含有するハードコート層用組成物を用いて形成されたものであり、上記環構造成分は、窒素原子及び/又は酸素原子を単位構造中に少なくとも一つ含むことを特徴とするハードコートフィルムである。
【0013】
本発明のハードコートフィルムにおいて、上記環構造成分は、上記ハードコート層形成用組成物に含まれるバインダー樹脂固形分100質量部中、30〜70質量部の割合で含まれていることが好ましい。
また、本発明のハードコートフィルムは、上記環構造成分の5員環構造中に、窒素原子及び/又は酸素原子を少なくとも一つ含むことが好ましい。
上記環構造成分は、マレイミド基含有アクリルポリマー、マレイミド基含有アクリルモノマー、オキサゾリドンアクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン及びγ−ブチロラクトンアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、偏光素子を備えてなる偏光板であって、上記偏光素子の表面に本発明のハードコートフィルムを備えることを特徴とする偏光板でもある。
また、本発明は、本発明のハードコートフィルムを表面に保持することを特徴とする前面板でもある。
更に、本発明は、最表面に本発明のハードコートフィルム、若しくは、本発明の偏光板、又は、本発明の前面板を備えることを特徴とする画像表示装置でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明は、(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面上に形成されたハードコート層とを有するハードコートフィルムである。
上記(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルムを備えた本発明のハードコートフィルムは、TACからなる基材フィルムを備えたハードコートフィルムと比較して、耐湿熱性及び平滑性に優れるとともに、シワの発生を好適に防止することができる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」を意味する。
【0016】
本発明において、上記基材フィルムは、アクリル系樹脂からなるものである。
このような基材フィルムを構成するアクリル系樹脂としては、例えば、環構造を有するアクリル系樹脂であることが好ましい。
上記環構造を有するアクリル系樹脂としては特に限定されないが、例えば、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、又は、イミド環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が好適に用いられる。これらの(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルムは、TACからなる基材フィルムと比較して、機械的強度及び平滑性に優れ、また、透湿度が低く、高温環境下における耐熱性、高湿環境下における耐湿性等の耐久性に優れたものである。
【0017】
上記基材フィルムの厚さとしては、20〜300μmであることが好ましく、より好ましくは上限が200μmであり、下限が30μmである。上記基材フィルムの厚さが20μm未満であると、本発明のハードコートフィルムにシワが発生することがあり、一方、300μmを超えると、本発明のハードコートフィルムが厚くなり、光透過性等の光学特性に劣ることがある。
【0018】
本発明のハードコートフィルムは、上記基材フィルムの一方の面上にハードコート層を有する。
上記ハードコート層は、5員環構造を有する環構造成分を含有するハードコート層用組成物を用いて形成されたものであり、上記環構造成分は、窒素原子及び/又は酸素原子を単位構造中に少なくとも一つ含むものである。
上記ハードコート層用組成物が上記環構造成分を含むことで、本発明のハードコートフィルムは、基材フィルムとハードコート層との密着性が優れたものとなり、また、これらの層間の屈折率差に起因した干渉縞の発生を好適に防止することができる。これは、上記環構造成分を含むハードコート層用組成物を基材フィルムの一方の面上に塗布してハードコート層を形成することで、該基材フィルムのハードコート層側の界面付近に、後述する基材フィルムを構成する材料とハードコート層を構成する材料とが相溶した相溶層が形成されるからであると考えられる。なお、上記環構造成分として、5員環構造を含まないもの(例えば、6員環構造を有するもの)や、単位構造中に窒素原子及び/又は酸素原子を含まないものを用いた場合、本発明と比較して、基材フィルムとハードコート層との密着性が劣るものとなる。
【0019】
上記環構造成分は、上記ハードコート層用組成物に含まれるバインダー樹脂固形分100質量部中、30〜70質量部の割合で含まれていることが好ましい。30質量部未満であると、本発明のハードコートフィルムの基材フィルムとハードコート層との密着性及び干渉縞防止性が不充分となることがある。一方、70質量部を超えると、鉛筆硬度・耐擦傷性等、ハードコートフィルムとしての硬度が不充分となることがある。
【0020】
本発明のハードコートフィルムにおいて、上記環構造成分は、窒素原子及び/又は酸素原子を単位構造中に少なくとも一つ含む5員環構造を有するものである。このような環構造成分としては、例えば、マレイミド基含有アクリルポリマー、マレイミド基含有アクリルモノマー、オキサゾリドンアクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンアクリレート、ポリビニルピロリドン等が好適に挙げられる。
これらの化合物を含むハードコート層用組成物を用いてハードコート層を形成することで、本発明のハードコートフィルムは、上記基材フィルムとハードコート層との密着性が極めて優れたものとなる。
上記環構造成分は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0021】
上記ハードコート層用組成物は、上記環構造成分以外のバインダー樹脂(以下、他のバインダー樹脂ともいう)を含有することが好ましい。
上記他のバインダー樹脂としては、透明性のものが好ましく、例えば、紫外線又は電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物、又は、熱硬化型樹脂を挙げることができる。より好ましくは電離放射線硬化型樹脂である。
なお、本明細書において、「樹脂」は、モノマー、オリゴマー等の樹脂成分も包含する概念である。
【0022】
上記電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート系の官能基を有する化合物等の1又は2以上の不飽和結合を有する化合物を挙げることができる。1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン等を挙げることができる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能化合物、又は、上記多官能化合物と(メタ)アクリレート等の反応生成物(例えば多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートエステル)等を挙げることができる。
【0023】
上記化合物のほかに、不飽和二重結合を有する比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も上記電離放射線硬化型樹脂として使用することができる。
【0024】
上記電離放射線硬化型樹脂は、溶剤乾燥型樹脂と併用して使用することもできる。溶剤乾燥型樹脂を併用することによって、塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。上記電離放射線硬化型樹脂と併用して使用することができる溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。上記熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、製膜性、透明性や耐候性のという観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0025】
上記他のバインダー樹脂として使用できる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0026】
上記ハードコート層用組成物は、更に、レベリング剤を含有することが好ましい。
上記レベリング剤を含有することにより、ハードコート層の平面性を良好にし、ハードコートフィルムのブロッキングを防止することができる。
上記レベリング剤としては、例えば、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤等の公知のものを挙げることができる。なかでも、少ない添加量でのインキの安定性、塗工面の安定性を確保できる点で、フッ素系レベリング剤が好ましい。
【0027】
上記レベリング剤の含有量は、ハードコート層用組成物のバインダー樹脂固形分100質量部に対して0.1〜1質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると、ハードコート層の平面性が悪くなり、ヘイズやムラが生じやすく、ブロッキング防止性が充分に発揮されないおそれがある。一方、1質量部を超えると、ハードコート層用組成物の分散性やポットライフが悪くなりやすく、後述するブロッキング防止剤の凝集や塗膜への悪影響でハードコート層のヘイズが高くなるおそれがある。
【0028】
上記ハードコート層用組成物はまた、ブロッキング防止剤を含有していてもよい。
上記ブロッキング防止剤としては、反応基を持たない、平均一次粒径が100〜600nmのケイ素又はスチレン等の粒子を挙げることができる。
上記平均一次粒径が100nm未満であると、ブロッキング防止性が発揮されないおそれがある。600nmを超えると、ヘイズが高くなるおそれがある。上記平均一次粒径は、100〜350nmであることがより好ましい。
なお、上記平均一次粒径はメチルイソブチルケトン5重量%分散液の状態でレーザー回折散乱法粒度分布測定装置により測定して得られる値である。
【0029】
上記ブロッキング防止剤の含有量は、ハードコート層用組成物のバインダー樹脂固形分100質量部に対して0.5〜3質量部であることが好ましい。0.5質量部未満であると、ブロッキング防止性が発揮されないおそれがある。3質量部を超えると、分散性が著しく悪化し、凝集・ゲル化の原因となり、結果として本発明のハードコートフィルム表面の外観上の欠点やヘイズの上昇につながるおそれがある。
【0030】
上記ハードコート層用組成物は、更に、光重合開始剤を含有することが好ましい。
上記光重合開始剤としては、公知のものであれば特に限定されず、例えば、アセトフェノン類(例えば、商品名イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モリフォリノプロパン−1−オン)、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を挙げることができる。なかでも、アセトフェノン類であることが好ましい。
【0031】
上記光重合開始剤の含有量は、ハードコート層用組成物中のバインダー樹脂固形分100質量部に対して、1〜7質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、光重合開始剤の量が不足し、硬化不足となるおそれがある。7質量部を超えると、光重合開始剤が過剰となり、過剰であることによる光重合反応の違いが生じ、かえって硬度不足を引き起こす、溶け残りによる欠点が生じる、といったおそれがある。
上記光重合開始剤の含有量は、上記樹脂固形分100質量部に対して2〜5質量部であることがより好ましい。
【0032】
上記ハードコート層用組成物は、上述した成分以外に、必要に応じて他の成分を更に含んでいてもよい。
上記他の成分としては、熱重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、架橋剤、硬化剤、重合促進剤、粘度調整剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防汚剤、スリップ剤、屈折率調整剤、分散剤等を挙げることができる。これらは公知のものを使用することができる。
【0033】
上記ハードコート層用組成物は、総固形分が20〜50%であることが好ましい。20%より低いと、残留溶剤が残ったり、白化が生じるおそれがある。50%を超えると、ハードコート層用組成物の粘度が高くなり、塗工性が低下して表面にムラやスジが出たり、干渉縞が発生するおそれがある。上記固形分は、30〜45%であることがより好ましい。
【0034】
上記ハードコート層用組成物は、上述のバインダー樹脂、及び、レベリング剤、ブロッキング防止剤、光重合開始剤、並びに、他の成分を溶剤中に混合分散させて調製することができる。
上記混合分散は、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー等の公知の装置を使用して行うとよい。
【0035】
上記溶剤としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)等を挙げることができる。
なかでも、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミドは、後述する相溶層を基材フィルムに好適に形成し得ることから特に好適に用いられる。
【0036】
上記ハードコート層用組成物を、上記基材フィルム上に塗布して塗膜を形成し、必要に応じて乾燥させた後、上記塗膜を硬化させることでハードコート層を形成することができ、本発明のハードコートフィルムを製造することができる。
ここで、上記ハードコート層用組成物は、上述した環構造成分を含有するため、上記基材フィルム上にハードコート層を形成することで、該基材フィルムのハードコート層側の界面付近に、基材フィルムを構成する材料とハードコート層を構成する材料とが相溶した相溶層が形成される。この理由は、以下のとおりであると推測している。
すなわち、本発明において、基材フィルムを構成する(メタ)アクリル系樹脂は、ラクトン環やイミド環といった環構造を有するものが好適に用いられるが、このような環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルム上に、上記ハードコート層用組成物を塗布すると、上記ハードコート層用組成物に含まれる環構造成分により、上記(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルムの表面が浸食、溶解される。そして、上記(メタ)アクリル系樹脂中の環構造と近しい構造を持つ上記環構造成分が、上記基材フィルムに浸透し、その結果、基材フィルムを構成する(メタ)アクリル系樹脂と環構造成分とが相溶した相溶層が形成されるものと推測される。
【0037】
上記相溶層が形成されることで、本発明のハードコートフィルムは、基材フィルムとハードコート層との密着性に優れ、また、これらの層間での屈折率差に起因した干渉縞の発生を防止することができる。
上記相溶層は、厚みが100nm〜1μmであることが好ましい。100nm未満であると、上述した本発明の効果を充分に得ることができないことがあり、一方、1μmを超えると、鉛筆硬度等のハードコート性の低下、ヘイズの上昇等が起こることがある。
【0038】
なお、本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層のバインダー樹脂を構成する環構造成分が上記基材フィルムに浸透し、相溶層が形成される。このため、本発明のハードコートフィルムは、その厚み方向で環構造成分の濃度勾配が形成されている。
【0039】
上記ハードコート層用組成物を塗布して塗膜を形成する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の公知の各種方法を挙げることができる。
【0040】
また、上記ハードコート層用組成物の塗布量(乾燥塗布量)は、5〜15g/mであることが好ましい。5g/m未満であると、所望の硬度のハードコート層が得られないおそれがある。15g/mを超えると、カールやダメージの防止が不充分となるおそれがある。上記塗布量は、6〜10g/mであることがより好ましい。
【0041】
上記乾燥の方法としては特に限定されないが、一般的に乾燥温度30〜80℃で、乾燥時間3〜120秒で行うとよい。上記乾燥温度が30℃未満であると、ハードコートフィルムの製造に長時間を要し、また、製造コストが高くなることがある。一方、上記乾燥温度が80℃を超えると、ハードコートフィルムの製造コストが高くなる問題があり、かつ、開始剤、溶剤等が乾燥炉内等に付着し外観を悪化させる恐れがある。
また、上記乾燥時間が3秒未満であると、充分な厚さの相溶層が形成されず、基材フィルムとハードコート層との密着性に劣ったり、干渉縞が発生したりするこことがある。一方、上記乾燥時間が120秒を超えると、上記塗膜の乾燥に長時間を要し、製造コストが高くなることがある。
【0042】
上記塗膜を硬化させる方法としては、上記ハードコート層用組成物の内容等に応じて公知の方法を適宜選択すればよい。例えば、上記ハードコート層用組成物に含まれるバインダー樹脂が紫外線硬化型のものであれば、塗膜に紫外線を照射することにより硬化させればよい。
上記紫外線を照射する場合は、紫外線照射量が80mJ/cm以上であることが好ましく、100mJ/cm以上であることがより好ましく、130mJ/cm以上であることが更に好ましい。
【0043】
上記ハードコート層は、層厚みが5〜15μmであることが好ましい。
5μm未満であると、硬度が不充分となるおそれがある。15μmを超えると、残留溶剤が残ったり、塗膜密着性が低下するおそれがある。上記ハードコート層の層厚みは、下限が5〜10μmであることがより好ましい。
上記層厚みは、ハードコート層の断面を、電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)で観察することにより測定して得られた値である。
【0044】
本発明のハードコートフィルムは、硬度が、JIS K5600−5−4(1999)による鉛筆硬度試験(荷重4.9N)において、3H以上であることが好ましく、4H以上であることがより好ましい。
【0045】
本発明のハードコートフィルムは、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。90%未満であると、ディスプレイ表面に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがある他、所望のコントラストが得られないおそれがある。上記全光線透過率は、91%以上であることがより好ましい。
上記全光線透過率は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に準拠した方法により測定することができる。
【0046】
また、本発明のハードコートフィルムは、ヘイズが1%以下であることが好ましい。1%を超えると、所望の光学特性が得られず、本発明のハードコートフィルムを画像表示表面に設置した際の視認性が低下する。
上記ヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7136に準拠した方法により測定することができる。
本発明のハードコートフィルムは、また、本発明の効果が損なわれない範囲内で、必要に応じて他の層(防眩層、帯電防止層、低屈折率層、防汚層、接着剤層、他のハードコート層等)の1層又は2層以上を適宜形成することができる。なかでも、防眩層、帯電防止層、低屈折率層及び防汚層のうち少なくとも一層を有することが好ましい。これらの層は、公知の反射防止用積層体と同様のものを採用することもできる。
【0047】
本発明のハードコートフィルムは、偏光板に好適に用いることができる。
本発明のハードコートフィルムを用いた偏光板としては、偏光素子を備えてなる偏光板であって、上記偏光素子の表面に本発明のハードコートフィルムを備えるものが挙げられる。
このような本発明のハードコートフィルムを用いた偏光板もまた、本発明の1つである。
【0048】
上記偏光素子としては特に限定されず、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を使用することができる。上記偏光素子と本発明のハードコートフィルムとのラミネート処理においては、光透過性基材にケン化処理を行うことが好ましい。ケン化処理によって、接着性が良好になり帯電防止効果も得ることができる。
【0049】
本発明はまた、最表面に本発明のハードコートフィルム、若しくは、本発明の偏光板、又は、本発明の前面板を備えてなる画像表示装置でもある。
上記画像表示装置は、LCD、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT、タッチパネル、電子ペーパー等が挙げられる。
【0050】
上記LCDは、透過性表示体と、上記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、本発明のハードコートフィルム若しくは偏光板又は前面板が形成されてなるものである。
【0051】
本発明が上記ハードコートフィルムを有する液晶表示装置の場合、光源装置の光源はハードコートフィルムの下側(基材側)から照射される。なお、STN型の液晶表示装置には、液晶表示素子と偏光板との間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。
【0052】
上記PDPは、表面ガラス基板と当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又は、その前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述したハードコートフィルムを備えるものでもある。
なお、このような本発明のハードコートフィルムを表面保持した前面板もまた、本発明の1つである。
【0053】
その他の画像表示装置は、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質等の発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRTなどの画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各表示装置の最表面又はその前面板の表面に上述したハードコートフィルムを備えるものである。
【0054】
本発明のハードコートフィルムは、いずれの場合も、テレビジョン、コンピュータなどのディスプレイ表示に使用することができる。特に、液晶パネル、PDP、ELD、タッチパネル、電子ペーパー等の高精細画像用ディスプレイの表面に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明のハードコートフィルムは、基材フィルムの一方の面上に設けられたハードコート層が、上述した環構造成分を含むハードコート層用組成物を用いて形成されたものであるため、基材フィルムとハードコート層との密着性に優れ、また、これらの層間の屈折率差に起因した干渉縞の発生を好適に防止することができる。このため、本発明のハードコートフィルムは、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、電子ペーパー等のディスプレイ、特に高精細化ディスプレイに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例のみに限定されるものではない。
なお、文中、「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。
【0057】
(実施例1)
イルガキュア184(光重合開始剤、BASFジャパン社製)4質量部を、メチルイソブチルケトン(MIBK)15質量部中に添加して攪拌し溶解させて、最終固形分が40質量%の溶液を調製した。
この溶液に、樹脂成分として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)とアロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)とを、固形分比で、PETA:UVT−302=70質量部:30質量部となるように添加して攪拌した。
この溶液に、レベリング剤(製品名:メガファックF−477、DIC社製)を固形分比で0.2質量部添加して撹拌し、更に、シリカ微粒子(SIRMIBK15WT%−E65、CIKナノテック社製)を固形分比で2質量部添加して攪拌し、ハードコート層用組成物を調製した。
このハードコート層用組成物を、アクリル基材(厚み40μm、Tg=125℃)上に、スリットリバースコートにより、乾燥塗布量8g/mとなるように塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を70℃で1分間乾燥させた後、紫外線照射量150mJ/cmで紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み7μmのハードコート層を形成し、実施例1のハードコートフィルムを得た。
【0058】
(実施例2)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)とアロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)との配合量を、固形分比で、PETA:UVT−302=50質量部:50質量部となるようにした以外は、実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして実施例2のハードコートフィルムを得た。
【0059】
(実施例3)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)とアロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)との配合量を、固形分比で、PETA:UVT−302=30質量部:70質量部となるようにした以外は、実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして実施例3のハードコートフィルムを得た。
【0060】
(実施例4)
アロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)に代えて、NVP(日本触媒社製、N−ビニル−2−ピロリドン)を用いた以外は、実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして実施例4のハードコートフィルムを得た。
【0061】
(実施例5)
アロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)に代えて、NVP(日本触媒社製、N−ビニル−2−ピロリドン)を用いた以外は、実施例2と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして実施例5のハードコートフィルムを得た。
【0062】
(実施例6)
アロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)に代えて、NVP(日本触媒社製、N−ビニル−2−ピロリドン)を用いた以外は、実施例3と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして実施例6のハードコートフィルムを得た。
【0063】
(実施例7)
ハードコート層用組成物の溶剤として、メチルイソブチルケトン(MIBK)12質量部、及び、ジメチルホルムアミド(DMF)3質量部の混合溶剤を用いた以外は、実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして実施例7のハードコートフィルムを得た。
【0064】
(実施例8)
アロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)に代えて、M145(東亜合成社製、アレイミドアクリレート)を用いた以外は、実施例2と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして実施例8のハードコートフィルムを得た。
【0065】
(実施例9)
アロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)に代えて、MT1000(東亜合成社製、オキサゾリドンアクリレート)を用いた以外は、実施例2と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして実施例9のハードコートフィルムを得た。
【0066】
(実施例10)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)に代えて、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を用いた以外は、実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして実施例10のハードコートフィルムを得た。
【0067】
(実施例11)
ハードコート層用組成物の溶剤として、メチルイソブチルケトン(MIBK)12質量部、及び、ジメチルホルムアミド(DMF)3質量部の混合溶剤を用いた以外は、実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例10と同様にして実施例11のハードコートフィルムを得た。
【0068】
(参考例1)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)とアロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)との配合量を、固形分比で、PETA:UVT−302=80質量部:20質量部となるようにした以外は、実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして参考例1のハードコートフィルムを得た。
【0069】
(参考例2)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)とアロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)との配合量を、固形分比で、PETA:UVT−302=20質量部:80質量部となるようにした以外は、実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして参考例2のハードコートフィルムを得た。
【0070】
(比較例1)
アロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)に代えて、BS577(荒川化学工業社製、IPDP誘導体6官能ウレタンアクリレート)を用いた以外は、実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして比較例1のハードコートフィルムを得た。
【0071】
(比較例2)
アロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)に代えて、U−15HA(新中村化学社製、イソシアヌル骨格含有15官能ウレタンアクリレート)を用いた以外は、実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして比較例2のハードコートフィルムを得た。
【0072】
(比較例3)
アロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)に代えて、ACMO(興人社製、アクリロイルモルホリン)を用いた以外は、実施例2と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例2と同様にして比較例3のハードコートフィルムを得た。
【0073】
(比較例4)
樹脂成分として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)10質量部のみを添加し、溶剤として、メチルイソブチルケトン(MIBK)12質量部、及び、ジメチルホルムアミド(DMF)3質量部の混合溶剤を用いた以外は、実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして比較例4のハードコートフィルムを得た。
【0074】
(比較例5)
樹脂成分として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)10質量部のみを添加し、溶剤として、メチルイソブチルケトン(MIBK)12質量部、及び、ジメチルホルムアミド(DMF)3質量部の混合溶剤を用いた以外は、実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして比較例5のハードコートフィルムを得た。
【0075】
(比較例6)
樹脂成分として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)とD41(日立化成社製、アクリルアクリレートポリマー)とを用い、これらの配合量が、固形分比で、PETA:D41=70質量部:30質量部となるようにし、溶剤として、メチルイソブチルケトン(MIBK)12質量部、及び、メチルエチルケトン(MEK)3質量部の混合溶剤を用いた以外は、実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして比較例6のハードコートフィルムを得た。
【0076】
(比較例7)
アロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)に代えて、FA−511AS(日立化成社製、ジシクロペンタニルアクリレート)を用いた以外は、実施例2と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして比較例7のハードコートフィルムを得た。
【0077】
(比較例8)
アロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)に代えて、FA−512AS(日立化成社製、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート)を用いた以外は、実施例2と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして比較例8のハードコートフィルムを得た。
【0078】
(比較例9)
アロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)に代えて、FA−BZA(日立化成社製、ベンジルアクリレート)を用いた以外は、実施例2と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして比較例9のハードコートフィルムを得た。
【0079】
(比較例10)
アロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)に代えて、DMAA(興人社製、ジメチルアクリルアミド)を用いた以外は、実施例2と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして比較例10のハードコートフィルムを得た。
【0080】
(比較例11)
アロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)に代えて、DMAPAA(興人社製、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)を用いた以外は、実施例2と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして比較例11のハードコートフィルムを得た。
【0081】
(比較例12)
アロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)に代えて、NIPAM(興人社製、イソプロピルアクリルアミド)を用いた以外は、実施例2と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして比較例12のハードコートフィルムを得た。
【0082】
(比較例13)
アロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)に代えて、HEAA(興人社製、ヒドロキシエチルアクリルアミド)を用いた以外は、実施例2と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして比較例13のハードコートフィルムを得た。
【0083】
(比較例14)
アロニックスUVT−302(東亜合成社製、マレイミド基含有ポリマー)に代えて、PPZ(共栄社化学社製、2,2,4,4,6,6−ヘキサ{2−(メタクロイルオキシ)−エトキシ}−1,3,5−トリアザ−2,4,6−トリホスホリン)を用いた以外は、実施例2と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いて実施例1と同様にして比較例14のハードコートフィルムを得た。
【0084】
得られたハードコートフィルムについて、下記の項目において評価した。評価結果を表1に示した。
【0085】
(相溶層の厚み)
基材フィルムのハードコート層側の界面に形成された相溶層の厚みを、ハードコート層の断面SEM観察により測定した。
【0086】
(密着性)
JIS K5600に準拠し、クロスカットCCJ−1(コーテック社製)を用い、ハードコート層の表面に碁盤目状の切り傷を入れ、1mm角の100マス作製する。ニチバン社製工業用24mm幅のセロテープ(登録商標)を碁盤目の上に貼り、その上からヘラで往復10回擦って、密着させ150°方向に急速剥離を行ない、同様の動作を5回繰り返し、残った升目の数をカウントする。残った升目の数を分子、升目の全個数を分母にして、以下の基準で評価した。
A:100/100
B:50/100〜99/100
C:0/100〜49/100
【0087】
(干渉縞)
各ハードコートフィルムの裏面(基材フィルム側のハードコート層と反対側の表面)に黒テープを貼合し、暗室蛍光灯下で干渉縞を確認し以下の基準により評価した。
○:干渉縞が観察されない
×:干渉縞が観察される
【0088】
(鉛筆硬度試験)
各ハードコートフィルムを、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JISK5600−5−4(1999)が規定する鉛筆硬度評価方法に従い、4.9Nの荷重にて、ハードコート層が形成された表面の鉛筆硬度を測定し、以下の基準により評価した。
○:鉛筆硬度がB以上
×:鉛筆硬度がB未満
【0089】
【表1】

【0090】
表1より、実施例に係るハードコートフィルムは、いずれも基材フィルムのハードコート層側界面付近に相溶層が形成されており、密着性、干渉縞の防止性に優れたものであり、更に、表面硬度も優れたものであった。
比較例1〜3に係るハードコートフィルムは、ハードコート層に、単位構造中に窒素原子及び/又は酸素原子を含む環構造を含む環構造成分を有するため、相溶層が形成され干渉縞防止に優れるものの、該環構造成分は6員環構造であったため、形成された相溶層は僅かであり、密着性に劣るものであった。
また、比較例4〜14に係るハードコートフィルムは、いずれも基材フィルムのハードコート層側界面付近に相溶層が形成されておらず、密着性及び干渉縞の防止性に劣るものであった。
また、参考例1に係るハードコートフィルムは、ハードコート層に5員環構造を有し、窒素原子及び/又は酸素原子を単位構造中に含む環構造成分を有するため、相溶層が形成され、また、充分な含有量のPETAにより鉛筆硬度に優れたものであったものの、上記環構造成分の含有量が少なく形成された相溶層は僅かであり、密着性に劣るものであった。
また、参考例2に係るハードコートフィルムは、ハードコート層における5員環構造を有し、窒素原子及び/又は酸素原子を単位構造中に含む環構造成分の含有量が多く、充分な相溶層が形成されて密着性及び干渉縞防止性に優れるものの、PETAの含有量が少なく鉛筆硬度に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のハードコートフィルムは、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、タッチパネル、電子ペーパー等のディスプレイ、特に高精細化ディスプレイに好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系樹脂からなる基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面上に形成されたハードコート層とを有するハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層は、5員環構造を有する環構造成分を含有するハードコート層用組成物を用いて形成されたものであり、
前記環構造成分は、窒素原子及び/又は酸素原子を単位構造中に少なくとも一つ含む
ことを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項2】
環構造成分は、ハードコート層形成用組成物に含まれるバインダー樹脂固形分100質量部中、30〜70質量部の割合で含まれている請求項1記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
環構造成分の5員環構造中に、窒素原子及び/又は酸素原子を少なくとも一つ含む請求項1又は2記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
環構造成分は、マレイミド基含有アクリルポリマー、マレイミド基含有アクリルモノマー、オキサゾリドンアクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン及びγ−ブチロラクトンアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1、2又は3記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
偏光素子を備えてなる偏光板であって、
前記偏光素子の表面に請求項1、2、3又は4記載のハードコートフィルムを備えることを特徴とする偏光板。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4記載のハードコートフィルムを表面に保持することを特徴とする前面板。
【請求項7】
最表面に請求項1、2、3又は4記載のハードコートフィルム、若しくは、請求項5記載の偏光板、又は、請求項6記載の前面板を備えることを特徴とする画像表示装置。

【公開番号】特開2013−50641(P2013−50641A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189446(P2011−189446)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】