説明

ハードコート塗液、ハードコートフィルムおよびタッチパネル用上部電極板

【課題】低コストで干渉ムラが目立ちにくく、視認性にすぐれたハードコート層を形成するためのハードコート塗液、ハードコートフィルムおよびタッチパネル用上部電極板を提供する。
【解決手段】少なくとも電離放射線硬化型材料と溶媒とを含み、前記溶媒として、25℃での表面張力が28mN/m以上40mN/m以下の溶媒を含むハードコート塗液。フィルム基材11の少なくとも一方の面にハードコート層12を備えるハードコートフィルム1であって、該ハードコート層12が、前記ハードコート塗液をフィルム基材11上に塗布し塗膜を形成する工程、前記塗膜を乾燥し溶媒を除去する工程、前記塗膜に電離放射線を照射し硬化する工程により形成されている。該ハードコートフィルム1のハードコート層12の反対面側に、少なくとも透明導電層が積層されているタッチパネル用上部電極板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低コストで干渉ムラが目立ちにくく、視認性にすぐれたハードコート層を形成するためのハードコート塗液に関する。また本発明は、該ハードコート塗液を用いて形成したハードコート層を備えるハードコートフィルムに関する。さらに本発明は、該ハードコートフィルムを用いたタッチパネル用上部電極板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック製品は加工性、軽量化の観点で良好であることから、様々な製品がガラス製品からプラスチック製品に置き換わりつつあるが、これらプラスチック製品の表面は傷つきやすいため、表面硬度や耐擦傷性を付与する目的で表面にハードコート層を設けたり、ハードコート層を設けたフィルムを貼合して用いる場合が多い。
【0003】
また、従来のガラス製品についても、破損した際の飛散防止のためにプラスチックフィルムを貼合する場合が増えており、これらのフィルム表面の硬度強化のためにもその表面にハードコート層を形成することが広く行われ、特にLCD、PDP、FED、EL等の表示装置、タッチパネルなどの最表面等に用いられている。
こういった構成の場合、ハードコートを視認した時に虹色のムラ(干渉ムラ)が生じ、視認性を劣化させたり美観を損なう場合が多い。
【0004】
ここで、干渉ムラの発生要因について説明する。基材の表面にある透明層が設置され、これらの両者に屈折率に差がある場合、例えば透明層側からの入射光に対し透明層表面で反射する光と透明層を透過し基材と透明層の界面で反射された光がその光路差(透明層の膜厚)のため干渉を起こし。反射スペクトルにうねり(リップル)が発生する。ここで透明層の膜厚にバラツキがある場合反射スペクトルが膜厚に対応して変化し反射色が異なる部分が発生する。
例えば、ハードコート層は、基材上に基材より硬度の高いアクリル系の電離放射線硬化樹脂を塗布して生産する場合が多い。この、一般的なアクリル系の電離放射線硬化樹脂硬化物は屈折率が1.51〜1.54程度である。しかしながら、透明性の高いフィルムとして一般的に用いられるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの屈折率は1.62程度であり、また、同様に用いられるトリアセチルセルロース(TAC)フィルムの屈折率は1.49程度であって、前述の電離放射線硬化樹脂硬化物の屈折率と差がある。また、種々の基材でも前述の電離放射線硬化樹脂硬化物と同等の屈折率に合わせることは、他の機能との両立の面や、生産性の面から困難である。この干渉ムラを抑制するために、下記技術が発明、開示されている(特許文献1〜4)。
【特許文献1】特開平8−197670号公報
【特許文献2】特開2000−111706号公報
【特許文献3】特開平7−151902号公報
【特許文献4】特開2003−205563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の干渉ムラ低減技術は、基材上に凹凸を設けることによってハードコート層と基材との界面での光の反射を散乱させる技術である。しかしながら、基材上に凹凸を設けるためにハードコート層を塗布する前に、基材表面に凹凸を設ける工程を入れており、この方法では工程数が増え、コストアップにつながるという不具合や、表面に凹凸構造により、画像の鮮鋭性が低下する不具合があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の干渉ムラ防止技術は、基材とハードコート層の屈折率差を緩和するために、基材とハードコート層の間に屈折率中間層を設けるというものである。この技術では中間層を設けても段階的に屈折率が変化するに過ぎず、干渉ムラは少なくなっても無くなるまでには至らない。また中間層を設ける工程が必要となるためコストアップにつながるという不具合があった。
特許文献3は、ハードコート層の屈折率を基材と同等に合わせるため、金属酸化物超微粒子を含有する電離放射線硬化型樹脂を用いてハードコート層を形成する技術を開示している。しかし、粒径数十nmの金属酸化物超微粒子を電離放射線硬化型樹脂に分散させる場合、超微粒子材料、分散工程ともにコストアップにならざるを得ない。
なお干渉ムラの課題は、上記従来技術ではいずれも完全に解消されていない。
また、干渉ムラを解消した例として、特許文献4には基材を溶解又は膨潤させる溶剤を含む樹脂を用いてハードコート層を該基材に塗布することによって層界面からの反射が無く、干渉ムラを防止する技術が開示されている。しかしながら、溶解、膨潤法では溶解、膨潤し難い二軸配向したポリエステルフィルムなどでは適用できる溶媒がクロロフェノールのような特殊で有害性の高い溶剤に限定される。また、溶解、膨潤し易いトリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどでは基材の溶解によりハードコートの硬度低下につながるという不具合があった。
【0007】
本発明の目的は、低コストで干渉ムラが目立ちにくく、視認性にすぐれたハードコート層を形成するためのハードコート塗液、該ハードコート塗液を用いて形成したハードコート層を備えるハードコートフィルム、および、該ハードコートフィルムを用いたタッチパネル用上部電極板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、少なくとも電離放射線硬化型材料と溶媒とを含むハードコート塗液であって、
前記溶媒として、25℃での表面張力が28mN/m以上40mN/m以下の溶媒を含むことを特徴とするハードコート塗液である。
請求項2に記載の発明は、前記ハードコート塗液の溶媒が、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジオキソランおよびエチレングリコールモノメチルエーテルから選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のハードコート塗液である。
請求項3に記載の発明は、フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、
該ハードコート層が、請求項1または2に記載のハードコート塗液を前記フィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程、前記塗膜を乾燥し溶媒を除去する工程、前記塗膜に電離放射線を照射し硬化する工程により形成されていることを特徴とするハードコートフィルムである。
請求項4に記載の発明は、前記ハードコート層の層厚が4μm以上25μm以下であることを特徴とする請求項3に記載のハードコートフィルムである。
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載のハードコートフィルムのハードコート層の反対面側に、少なくとも透明導電層が積層されていることを特徴とするタッチパネル用上部電極板である。
請求項6に記載の発明は、前記ハードコート層の反対面側に、粘着剤層、透明樹脂フィルムおよび透明導電層をこの順で設けたことを特徴とする請求項5に記載のタッチパネル用上部電極板である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低コストで干渉ムラが目立ちにくく、視認性にすぐれたハードコート層を形成するためのハードコート塗液、該ハードコート塗液を用いて形成したハードコート層を備えるハードコートフィルム、および、該ハードコートフィルムを用いた、低コストで干渉ムラが目立ちにくく、視認性にすぐれたタッチパネル用上部電極板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のハードコート塗液、ハードコートフィルム、タッチパネル用上部電極板について説明する。
【0011】
本発明のハードコート塗液は、少なくとも電離放射線硬化型材料と溶媒とを含み、前記溶媒として、25℃での表面張力が28mN/m以上40mN/m以下の溶媒を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明者らは、ハードコート塗液の溶媒成分を25℃での表面張力が28mN/m以上40mN/m以下とすることにより干渉ムラが目立ちにくく、視認性にすぐれた透明ハードコート層を形成することができることを見出した。さらに好ましい表面張力は31mN/m以上37mN/m以下である。 ここで表面張力はウィルヘルミ法で測定したものを用いた。
【0013】
本発明にあっては、ハードコート塗液に含まれる溶媒のうち少なくとも1種類は上記28mN/m以上40mN/m以下であればよいが、特に好ましくは下記の溶剤が挙げられる。
【0014】
表面張力(mN/m) 沸点(℃)
シクロペンタノン 36.2 131
シクロヘキサノン 34.5 156
ジオキソラン 34.1 76
エチレングリコールモノメチルエーテル 31.8 125
【0015】
本発明にあって、膜厚バラツキによる干渉ムラを解消ができる原因のひとつとして、塗膜乾燥過程において塗液に局所的な表面張力差が生じにくいことがあげられる。表面張力が28mN/m未満の溶媒を用いた場合にあっては、ハードコート塗液がフィルム基材に塗布された後の乾燥工程において、塗膜に局所的な表面張力差が生じることによって膜厚ムラが発生し干渉ムラとなる。
【0016】
本発明にあっては、ハードコート塗液に含まれる溶媒にあっては、28mN/m以上40mN/m以下の範囲内に含まれない溶媒を含んでいてもよい。このとき、28mN/m以上40mN/m以下の範囲内の溶媒はハードコート塗液の全溶媒に対し50wt%以上含まれていることが好ましい。
【0017】
本発明にあっては、ハードコート塗液には表面調整剤が添加されても良い。表面調整剤は、その働きに応じて、レベリング剤、消泡剤、界面張力調整剤、表面張力調整剤とも呼ばれる。ハードコート塗液を塗布して形成される塗膜の表面張力を低下させてハジキやムラ等の塗膜欠陥を抑制したり、形成されるハードコート層に防汚性を付与することを目的として塗液に添加される。
表面調整剤による表面張力の低下は干渉ムラには影響しない。
【0018】
図1は、本発明のハードコート塗液を用いて形成されるハードコートフィルムの模式断面図である。本発明のハードコートフィルム1にあっては、フィルム基材11上にハードコート層12を備える。ハードコート層12は、本発明のハードコート塗液をフィルム基材11上に塗布し塗膜を形成する工程、前記塗膜を乾燥し溶媒を除去する工程、前記塗膜に電離放射線を照射し硬化する工程により形成することができる。
なお、本発明のハードコートフィルムにあっては、ハードコート層12とフィルム基材11の間またはハードコート層12が設けられていない側のフィルム基材表面に他の機能層を設けても良い。機能層としては、帯電防止性能、電磁波シールド性能、赤外線吸収性能、紫外線吸収性能、色補正性能、偏光性能、ハードコート性能、クッション性能、防眩性脳等を有する機能層が設けられる。これらの機能層としては、帯電防止層、防汚層、電磁波遮蔽層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層、偏光層、ハードコート層、クッション層、防眩層等が挙げられる。機能層は複数設けられていても良い。
【0019】
また、本発明のハードコートフィルムにあっては、ハードコート層の層厚が4μm以上25μm以下の範囲内であることが好ましい。ハードコート層の層厚が4μmに満たない場合、ハードコート層が十分な耐擦傷性を有することが困難となる場合がある。一方、ハードコート層の層厚が25μmを超える場合には、ハードコート層の硬化収縮により、形成されるハードコートフィルムのカールの度合いが大きくなり、ハードコートフィルム製造時においてハンドリング性が低下することがある。また、ハードコートフィルムは他の部材と貼りあわせて使用されるが、他の部材と貼り合わせることが困難となる場合がある。
【0020】
本発明のハードコートフィルムにあっては、LCD、PDP、FED、EL等の表示装置、タッチパネルに好適設けることができる。とくに好ましくはタッチパネルである。
【0021】
本発明のハードコート塗液に用いられる材料について説明する。本発明のハードコート塗液は、少なくとも電離放射線硬化型材料と溶媒とを含む。
【0022】
電離放射線硬化型材料としては、分子内に2個以上、より好ましくは3個以上のアクリル基、メタクリル基を有し、電離放射線により硬化可能な多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサア(メタ)クリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラア(メタ)クリレート等のポリオールポリアクリレートや多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレート多価アルコールと多価カルボン酸及び/またはその無水物とアクリル酸とをエステル化することによって得ることができるポリエステル(メタ)アクリレート、ポリシロキサンポリアクリレート等を挙げることができる。
【0023】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
【0024】
なお、多官能(メタ)アクリレートは、単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。その含有量はハードコート塗液の表面調整剤を除いた固形分100重量部に対して、50重量部100重量部以下の範囲内であることが好ましい。多官能(メタ)アクリレートが50重量部未満の場合、ハードコートの硬さが十分ではなく、ハードコート層を十分な硬さとする場合にはより大きい層厚を有するハードコート層が必要となり、コストアップに繋がる。
【0025】
また多官能(メタ)アクリレートは硬化により収縮する。そのためフィルム基材上にハードコート塗液を塗布、乾燥、硬化した場合には、得られるハードコートフィルムがカールし、その後の作業性が問題となることがある。そのため必要に応じてその収縮量を調整する目的で非重合性ポリマーや分子内にアクリル基、メタクリル基を有する重合性ポリマーをハードコート塗液に添加することができる。その含有量はハードコート塗液の表面調整剤を除いた固形分100重量部に対して、好ましくは50重量部以下であることが好ましい。ハードコート塗液の表面調整剤を除いた固形分100重量部に対して、非重合性ポリマー乃至ポリマー成分が50重量部より多い場合、ハードコート層の硬さが十分ではなく、ハードコート層を十分な硬さとする場合にはより大きい層厚を有するハードコート層が必要となり、コストアップに繋がることがある。さらに、50%より多い場合ポリマーの粘度が高く均一な塗布が困難となる。
【0026】
本発明のハードコート塗液にはフッ素系表面調整剤あるいはシリコーン系表面調整剤を添加するのが好ましい。フッ素系表面調整剤としてはパーフルオロアルキル基を備える化合物が用いられる。シリコーン系表面調整剤としてはポリジメチルシロキサンを基本構造とする誘導体であり、ポリジメチルシロキサン構造の側鎖を変性したものを用いることができる。これらのフッ素系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤は、分子内に炭素−炭素不飽和二重結合を有していることが好ましい。分子内に炭素−炭素不飽和二重結合を有し、架橋型の表面調整剤とすることにより、ハードコート塗液からなる塗膜を硬化させる際に電離放射線硬化型材料のアクリル基もしくはメタクリル基と反応してマトリックスを形成することができ、化学的に結合するため、形成されるハードコート層から表面調整剤が脱落しにくくすることができる。
【0027】
また、本発明のハードコート塗液にあっては、他の添加剤を加えることもできる。他の添加剤としては、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、硬化剤、他の表面調整剤などを使用できる。また、ハードコート塗液に粒子を含ませることによりハードコート層表面に凹凸を形成し、ハードコート層に防眩機能を付与してもよい。ハードコート層に粒子を含有させることにより表面に凹凸を形成しフィルム表面に移りこむ反射像の眩しさを抑えることができる。また、ハードコート材料との屈折率差のある粒子を用い透過光を拡散することにより、表示画像のギラツキを抑えることができ、液晶表示装置特有の斜め方向から視認した場合の色変化や、階調変化を抑えることができる。
【0028】
また、電離放射線硬化型材料を硬化するための電離放射線として紫外線を用いる場合、ハードコート塗液に光重合開始剤が加えられる。光重合開始剤は、公知の光重合開始剤を用いることができるが、用いる電離放射線硬化型材料にあったものを用いることが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−ヒドロキシケトン、ベンジルジメチルケタール、α−アミノケトン、アシルフォスフィンオキサイド等を混合することが望ましい。光重合開始剤の使用量は、電離放射線硬化型材料100重量部に対して0.5重量部以上20重量部以下の範囲内であることが好ましい。さらには、1重量部以上5重量部以下の範囲内であることが好ましい。
【0029】
本発明のハードコートフィルムについて説明する。本発明のハードコートフィルムは、フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備え、本発明のハードコート塗液をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜を乾燥し溶媒を除去する工程、塗膜に電離放射線を照射し硬化する工程により形成される。
【0030】
このとき、フィルム基材としては、ガラスやプラスチックフィルムなどを用いることができる。プラスチックフィルムとしては適度の透明性、機械強度を有していれば良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等のフィルムを用いることができる。
【0031】
中でも、本発明のフィルム基材としてはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを好適に用いることができる。ポリエチレンテレフタレートフィルムにあっては、透明性が高く、ハンドリング性が良く、また、安価であるといった特徴を有する。しかしながら、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにあっては屈折率が1.62であり、多官能(メタ)アクリレートからなる電離放射線硬化型材料を硬化したハードコート層の屈折率1.51〜1.54と比較して高く、0.1程度の大きい屈折率差を有する。透明フィルム基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた場合にあっては、本発明の課題であるハードコート層の膜厚の不均一性による干渉ムラが発生しやすい。本発明のハードコートフィルムを用いることにより、透明フィルム基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いる場合であっても、干渉ムラのないハードコート層を形成することができる。
【0032】
ハードコート塗液はフィルム基材上に塗布され、フィルム基材上に塗膜が形成される。フィルム基材へのコーティング方法は、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、バーコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等を用いることができる。
塗布時のハードコート塗液の固形分は、例えば30〜70重量%に調整しておくのが好ましい。
【0033】
ハードコート塗液を塗布し、フィルム基材上に形成された塗膜は溶媒を除去するために乾燥される。塗膜中の溶媒を除去するための乾燥工程が設けられる。なお、乾燥手段としては加熱、送風、熱風などが例示される。また、自然乾燥により溶媒を除去することも可能である。
【0034】
続いて、フィルム基材上の塗膜に対し、電離放射線を照射することにより塗膜は硬化され、ハードコート層は形成される。電離放射線としては、紫外線、電子線、あるいはガンマ線などを用いることができる。電離放射線として電子線あるいはガンマ線を用いた場合、必ずしも第1ハードコート層形成用塗液に光重合開始剤や光開始助剤を含有する必要はない。紫外線を発生する光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を用いることができる。また、電子線としては、コックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。以上により、本発明のハードコートフィルムは形成される。
【0035】
次に、本発明のタッチパネル用上部電極板について説明する。本発明のタッチパネル用上部電極板は、前記ハードコートフィルムのハードコート層の反対面側に、少なくとも透明導電層が積層されている。なお、ハードコート層の反対面側に、粘着剤層、透明樹脂フィルムおよび透明導電層をこの順で設け、タッチパネル用上部電極板としてもよい。
粘着剤層としては、アクリル系粘着剤もしくはゴム系粘着剤からなる層を挙げることができ、厚さは10〜50μmである。さらには、アクリル系粘着剤からなる層を好適に用いることができる。
また、透明樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等のフィルムを用いることができ、中でもポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを好適に用いることができる。
また、透明導電層としては、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛等の酸化物あるいはその混合酸化物等の導電性材料からなる層を挙げることができる。特に酸化インジウムと酸化錫の混合酸化物(ITO)が好適に用いられる。また、この導電性材料には、必要に応じて、Al、Zr、Ga、Si、W等の添加物を含有させることができる。透明導電層にあっては、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等の真空成膜法により形成される。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0037】
フィルム基材として、PETフィルム(東洋紡社製A4300−125μm)を用いた。(実施例1)〜(実施例6)、(比較例1)〜(比較例5)において、(表1)に示した電離放射線硬化型材料、光重合開始剤、溶媒を用いそれぞれ調液した。PETフィルム上にダイコーター塗布装置により塗布し乾燥をおこない塗膜に含まれる溶媒を除去し、その後、高圧水銀灯を用いて酸素濃度が0.03%以下の雰囲気下で400mJ/cmの紫外線照射により、塗膜を硬化させハードコートフィルムを作製した。
【0038】
以下の評価をおこなった。
[干渉ムラ]
裏面反射の影響をなくすために測定面(ハードコート層面側)の裏面をサンドペーパーで粗面化した後、黒色艶消しスプレーにて着色してサンプルを調整した。サンプルを、暗室にて、3波長蛍光灯( 松下電器産業株式会社製ナショナルパルック3波長形蛍光灯(FLR40S・EX-N/M-X)の直下40cmに置き、サンプルを目視したときに、干渉ムラが視認できるか否かで評価した。結果を表1に示す。
【0039】
干渉ムラが見えない : ◎
非常に弱い干渉ムラが見える : ○
弱い干渉ムラが見える : △
干渉ムラがはっきり見える : ×
【0040】
【表1】

【0041】
表1において、使用した材料は以下の通りである。
PE−3A:(ペンタエリスリトールトリアクリレート)共栄社化学株式会社。
UA−306I:(ウレタンアクリレート)共栄社化学株式会社。
IRGACURE184:(光重合開始剤)チバ・ジャパン株式会社。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のハードコート塗液を用いて形成されるハードコートフィルムの模式断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ハードコートフィルム
11 フィルム基材
12 ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも電離放射線硬化型材料と溶媒とを含むハードコート塗液であって、
前記溶媒として、25℃での表面張力が28mN/m以上40mN/m以下の溶媒を含むことを特徴とするハードコート塗液。
【請求項2】
前記ハードコート塗液の溶媒が、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジオキソランおよびエチレングリコールモノメチルエーテルから選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のハードコート塗液。
【請求項3】
フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、
該ハードコート層が、請求項1または2に記載のハードコート塗液を前記フィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程、前記塗膜を乾燥し溶媒を除去する工程、前記塗膜に電離放射線を照射し硬化する工程により形成されていることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層の層厚が4μm以上25μm以下であることを特徴とする請求項3に記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
請求項3または4に記載のハードコートフィルムのハードコート層の反対面側に、少なくとも透明導電層が積層されていることを特徴とするタッチパネル用上部電極板。
【請求項6】
前記ハードコート層の反対面側に、粘着剤層、透明樹脂フィルムおよび透明導電層をこの順で設けたことを特徴とする請求項5に記載のタッチパネル用上部電極板。

【図1】
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【公開番号】特開2010−59280(P2010−59280A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224960(P2008−224960)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】